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オーバーラップ文庫

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1 ★★★☆   



【月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1】 黄波戸井ショウリ/アサヒナヒカゲ オーバーラップ文庫

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社畜の松友裕二(まつともゆうじ)が残業から帰ると、隣に住むOLの早乙女ミオ(さおとめみお)が家の鍵をなくして立ち尽くしていた。雨でずぶ濡れのミオが不憫になった松友はベランダからミオの家に入り、玄関を開けて言う――「おかえりなさい。今日は大変でしたね」
そんな何気ない「おかえり」が心に刺さったミオに、松友は衝撃の提案を受ける。
「私の月収は五十万です。月に三十万円であなたを雇います」
実は生活力ゼロで極度の人間不信だったミオと、彼女の身の回りの世話をする仕事を引き受けた松友。ゆっくりと距離を縮めていく二人の間にあるのは単なる雇用関係かそれとも――。孤独なお隣さんとのアットホームラブコメディ。

お隣さん、ミオさん本気でいっぱいいっぱいだったんだにゃー。
生き甲斐がないどころか、もう精神的に死にかけてたんじゃないだろうか、これ。30万で裕二を雇うというのも、金持ちの道楽なんかじゃなくて溺れる者は藁をも掴むという方が相応しい縋りなんですよね。
本気で、ただ家で待っていてくれて「おかえり」と言って欲しい、それだけだったんじゃないだろうか。それ以外何も望んでいなかった、というより望む余裕もなかったように見える。
幸いというかなんというか、裕二は家事も一通り出来るしこれ以上無く気配りできる面倒見の良い男だっただけに家政夫的な事もするようになったのだけれど、ミオさんが求めたのは「癒やし」だったんだよなあ。
もっとも、当初ミオさんが求めた「癒やし」と裕二と過ごすようになってから日々が過ぎてから裕二から与えられるようになった「癒やし」とは違ったもののようにも見えるけれど。
さて、裕二が得た仕事というのは結局具体的にはなんなんでしょうね。
ヒモ? 家政夫? 疑似家族? 
どれも少しずつ違うような気がする。或いはそれらすべてをまぜこぜにしたものか。
ストレスを負えば負うほど家の中では精神年齢が退行してしまうミオさん。辣腕のキャリアウーマンとの生活ってどんなものになるのか、と思ったら家での彼女は舌っ足らずな幼女みたいな感じになってしまっていて、裕二は甲斐甲斐しくそんな彼女をお世話するという、良い年した大人同士じゃなくてベビーシッターな裕二である。この男も嫌な顔一つせず、若干壊れてると言っても良い彼女の世話をまめまめしくこなすんですよね。そこまで付き合わなくても、と思うくらい。
仕事に対して真面目、というのもあるんでしょうけれど、さて彼自身はどこまでこれを仕事と捉えているのか。ビジネスライクに割り切っているようには全然見えない。むしろ、彼女への親愛がこれだけ彼に甲斐甲斐しさをもたらしているようにも見える。恋とかじゃあないんだよなあ。もちろん、女性として魅力は感じているけれど、普段の幼児退行の相手をしていることもあってか保護者のような微笑ましく見守る、守ってあげたいという感覚が強いようにも見える。
それに、本当に楽しいのだろう。彼女の面倒をみることにやりがいを感じているのだろう。
そんな彼の気持ちは、ミオにも伝わっているはずである。それでも、雇用関係に拘ってしまうのがミオが患っている宿痾なのだ。
彼女の人間不信は、相手への不信というよりも自己不信の方が近しいように思う。相手に信じてもらうに足る人間だと自分を思えないのだ。何かあったら相手じゃなく自分が悪いと思ってしまうのだ。そんな在り方がどんどんと彼女自身を追い込んでいき、彼女を孤独にし、寂しさに打ち震える日々を招いてしまったのだろう。
どれほど相手が良い信頼に足る人物だとわかっていても、そんな立派でイイ人に相手される人間じゃないのだと自分のことを思い込んでいるミオにとって、金銭による契約関係というのはあくまで賃金に寄って結ばれた関係だからこそ、自分という人間性を担保にせずに済む。だからこそ、雇用関係にこだわり続けるし、デートにも出張費や休日出勤手当てをあててしまう。
いやそこまでせんでも、と誰もが思うのだろうけど、彼女にとってそれが拠り所なのだ。
裕二が偉いのは、そのへんごちゃごちゃ言わず、お金なんて要らないなんて御高説をたれず、彼女の怖れを尊重したところなんでしょうね。彼女のよすがを、自分の価値観で破壊して押し付けようとせず、一方的に否定してしまわず。大切に守り続けた。
でも、何もせず従順に従っているのではなく、ちゃんとそんな彼女の怖れやトラウマを解消するために手を回し、動いているのだ。こっそりと、雇用関係を逸脱しながら。こういうのが、気の利いたイイ男って奴なのでしょう。
幾ら大金を払っても続けていきたい大切な時間。ミオにとって、裕二が待っていてくれる生活というものはどんどん掛け替えのないものになっていく。いつしか、彼の存在はいっときの慰めや癒やしでは収まらないものになっていく。
そうなった時、彼との間を繋いでいた雇用関係という間柄は、逆に行き詰まりになると思うんですよね。より踏み込んだ関係になるためには、お金を払って一緒に居てもらうという繋がりがむしろ障害になってしまう。裕二の方はそのへん最初から気にしていないので、あまり問題にならないと思うのですが、ミオの方こそが自分から望んだ関係だけに、拘った関係性だけに、そして彼女自身の対人能力の不器用を通り越したポンコツなところをみると盛大に迷走しそう。
まあ、今の所は現状でこの上なく幸せに至っているだけに、しばらくこの状態を維持することになるのだろうけど。

大人の女性の幼児化というのは絵面としては若干キツイものがあるのかもしれないけれど、字面だとあの理屈じゃないフリーダムっぷりと大人としての体裁を持たぬが故の甘えっぷりが、裕二の甲斐甲斐しいお世話も相まって大変可愛らしかったです。外ではカッコいいくらいの女性に、これだけ無防備に甘えられたら男の方もなんかこう、くるものがありますよね、うん。確かに、楽しいでしょうw

現実主義勇者の王国再建記 13 ★★★☆   



【現実主義勇者の王国再建記 13】 どぜう丸/冬ゆき オーバーラップ文庫

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敵対国家・九頭龍諸島連合へフリードニア王国艦隊の派遣を決定したソーマ。
故国を救うべく身を捧げた九頭龍諸島の姫シャボンを味方に付けたソーマは、彼女の手引きで王国艦隊の到着前に島へと潜入する。
――目下の問題は諸島連合艦隊よりも、近海に出没する謎の巨大生物。そう睨んだソーマは敵国内で巨大不明生物の情報収集にあたる。かくして判明したその実体は常識を逸脱した怪物で……!?
敵国艦隊と巨大生物、迫る二つの脅威にソーマが講じた策略とは!?
革新的な異世界内政ファンタジー、第13巻!

ああっ、そこまで昔から連絡取り合ってたのか。いやこれ、相当以前からじゃないですか。これは相手さんの先見の明を褒め称えないといけないでしょうし、余程の根気と忍耐と粘り強さがないとこの段階まで引っ張れないですよ。
やたらとソーマたちが和平を求めて飛び込んできたシャボンたちに辛辣だったのもわかります。献身的で現状を行き止まりと感じて打破するために自分から動く、というのは都合の悪い事実に目をそらしてなあなあで流れに身を任せてしまう事に比べれば上等この上ないとは思うのですけれど、危機感に対して深い考えなく動いてしまった、とも言えますからね。特に、深い思慮と遠謀とともに強かに交渉を続けてきたという比べる相手が居るのですから。
まあそれ以上に、何年も掛けて練り上げただろうシナリオに則って準備を整えていざ幕をあけたら、突然脚本も何も知らない役者が舞台に乱入してきて引っ掻き回されてはそりゃあ、何しに来たコイツ、てなりますよね。しかも、その乱入目的が計画の破綻に直結しているのですから、邪魔しないでおとなしくしててくれ、って事にもなりますか。
とは言え、なんにも知らないシャボンとしてはソーマたちに縋るという以外何も考えていなかったにしても、戦争を止めようという目的自体は彼女の立ち位置からすると間違ってはいないですからね。全然足りないにしても、彼女は自分の身でやれることをやろうとしたわけですから。
ただまあ、知らないとは言え自分から見事に地雷を踏み踏み踏んづけまくってしまったのは確かなのですけど。それでも、もうちょっと優しくしてあげてw

しかし、長年かけてシナリオ練り上げたにしては、本番での演技は大根もいいところだったような……。まあ、別に演技うまかろうが棒だろうが、ファニーウォーとして建前さえ成立すればよく、要は現場に王国と諸島連合の艦隊が勢揃いすればよかったのだから、別に演技力は求められていなかったのだろうけど。
それでもソーマはテレビ出演も多いんだから、もうちょっと頑張りなさいよw

その分、実戦の方で今までになく活躍してた気もしますが。あれをソーマの活躍というべきなのかは定かではありませんが。
というわけで、今回の本題は特撮怪獣映画。冒頭の嵐に襲われた島で未知の存在の痕跡が、というのはまさにゴジラ以来の伝統ある導入でもありましたしねえ。
いやでも、メカドラ出撃! には吹いた。完全にメカゴジラだこれ。漫画が違うw
これ九頭龍諸島連合の連中、魂消たどころじゃなかったでしょう。あんなの見せられたら。世界観が違うw
ソーマのあの人形の遠隔操作の能力の可能性については常々様々な形でアプローチされていましたけれど、あんなデカイの操作できるんだったらそれこそ戦争感が変わってしまい兼ねないですよ。あとドリルは定番、うんわかる。わかるんだけど、メカドラの腕に装着じゃなくてちょっと戦艦の艦首に取り付けて「海底軍艦突撃!」なノリも見てみたかった気がする。特撮でドリルだとやっぱり軍艦の艦首でしょう、定番は。

ただ今回注目すべきは派手なメカドラよりも、島型空母「ヒリュウ」の実戦投入でしょう。本来、海を嫌うワイバーンの部隊を搭載して、海上を自由に移動し好きな所からワイバーン部隊による航空攻撃をぶつけることが出来る海洋機動力の顕在化。
ソーマはここで、国家の方針としてシーパワー重視で国際関係の主導を握っていくことを明言しています。ちゃんとここで列島国である九頭龍諸島連合と盟を結んで海洋同盟を締結しているあたりが偉いんだよなあ。ランドパワーの超大国である帝国とは裏で密かに協力関係結べているし、もし大陸で大規模な紛争が起こって内陸の交通網が機能不全を起こしても、海洋交通網を握っている限り海運を通じて友好国との連絡や商業ルートは確保し続けられますし、空母の運用は常に攻撃のイニシアチブを握り続けることが出来るということでもあり、本当の最悪の場合でも九頭龍諸島連合という後背地が出来たというわけで。まともに戦わずして海洋の支配権、並びに九頭龍諸島連合という精鋭かつ多数の艦船群の協力を得られるようになったのですね。大陸中央ではいままさにフウガが勇躍をはじめている真っ最中ですけれど、こうしてみるともう既に着々と何が起こっても対処できるような、価値観の異なる者からすると全く視界に入らないところで盤石の包囲網が敷かれつつあるんですよね。
ユリガちゃんは、王国に居て間近に見えているから、また彼女自身の柔軟な視点からソーマの戦い方を理解しつつあるけれど、これを伝えるのは難しいだろうなあ。フウガもまた野性的な感性で何となくソーマの脅威はわかっているものの、わからないものを理解できるタイプじゃなさそうなんですよね。果たして、いつかあるだろう彼らの激突は、激突足り得る形になるのだろうか。
なにはともあれ、ジュナさんオメデタ!


虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.2 ★★★★   



【虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.2】 蓮見景夏/こーやふ オーバーラップ文庫

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周囲の心を殺すほどの圧倒的な才能『虐殺スペック』。
低スペックな俺、九木野瀬伊吹は、【万能】の虐殺スペックを持つ絶対的美少女・赤三月朝火の攻略本制作に巻き込まれてしまった。
夏休み前の休日に出かけた俺は、本屋で出くわした朝火に誘われ、黒花とともにテニスの試合を見学することに。
試合を優位に進めていた朝火だが、あろうことかケガをしてしまう。
真意を問いただすと、「人間関係」の攻略法のためにサンプルを取ったとか言い始め!?
そして、『あいつ』も学校にやってきて――。
低スペックが虐殺スペックと挑む人生攻略本制作、第2巻!
あー、これ終盤あたりから展開に巻きが入っている様子が伺えるんですが。歌ノ森という赤三月に匹敵する総合虐殺スペック・戦争の持ち主の登場までは予定通りだったのか、それとも九木野瀬伊吹の過去に因縁を持つ彼女の出現自体がクライマックスへのトリガーだったのか。
九木野瀬くんの容姿と恋愛に関しての人生攻略本作成、黒花に宿題出されてまだそれがはじまった所で急転してしまいましたからね。いや、ここで状況がそっちに急転してしまうのは、九木野瀬の変化の分量が足りない、少なくとも人生攻略本の作成が全然進んでなくて、赤三月が密かに抱えているだろう問題や悩みに対してのアプローチ、或いは攻略の材料が全然足りないままポイント・オブ・ノーリターンを越えてしまったんじゃないだろうか。

……黒花夜はアホかわいいなー(現実逃避)

赤三月朝火が九木野瀬伊吹に何を求めていたのか。詳しい所は結局の所わからない。話はそこまでいかなかったし、そこに行くにはまだ赤三月も九木野瀬もスタートラインに立っていなかった、というのがラストの展開で明らかになる。
ふたりとも、お互いの実像をちゃんと直視しきれていなかった。相手に幻想を押し付けて、そうして出来た虚像を見ていただけだった。いや、それは赤三月朝火という人物を、九木野瀬伊吹という人物を形作る様々な側面の中の一つであり、実像でもあったのだけれど、その一面だけを見ていることでやはり本来の姿とはまた違った虚飾をかぶせた上っ面だけ。その内実を無視していた、目に入っていなかった、というべきか。
九木野瀬伊吹の場合は、赤三月たちを虐殺スペックなんて言葉で繕って自分とは根本から存在が違うという線引きしていた。というよりも、あれは憧れに近い特別視、いやここまで来ると神聖視していたとすら言えるのかもしれない。信奉に近いナニカ。
しかし赤三月だろうと、中学時代から近しい仲だった歌ノ森だろうと、彼女らがどれだけ特別な存在で世間からも隔絶している能力の持ち主であり、実績を伴う才能の塊であったとしても、一皮剥けばただの年相応の女の子だ、という当たり前の事実を、この男は信じていなかった。
彼女らは本当に特別で余人とは違う存在なのだと、本気で思っていたのだ。
それが間違いだということを、すでに彼は中学時代に歌ノ森との出来事でわかっていたはずなのに。痛感していたはずなのに。
彼は未だそれを「裏切り」だとしか感じ取れていなかったのか。
だから、赤三月で同じことを繰り返し、また戻ってきた歌ノ森にすらもう一度それを求めてしまった。
特別な人間なんて、いなかったのに。
一方でまた、赤三月の方も何もかも投げ捨ててこの世からおさらばしてしまおうと思った瞬間に、自殺してしまおうとした瞬間に、自分の前に現れた九木野瀬のことを特別視していたのか。他と違うナニカを持った特別な存在。彼のことを中学時代から実は知っていて、中学時代の歌ノ森を思いも寄らない形で変えてしまった謎の男。それがすべてを終わらせようとしたときに、自分の前に現れて、こう言っちゃなんだけれど、自分を救ってくれた。止めてくれた。もう一度始めさせてくれた。
ああ、舞い上がってたのか赤三月朝火は。
そのわりに、扱いが酷いなんてものじゃなかった気がするけれど、それだけ気のおけない素の顔を見せていた、他のクラスメイトには見せないような姿を預けていた、というのはそりゃあ特別視だ。
そんな特別なナニカなのに、この男は何もかもがうまくいってない。この自分が特別な存在だと思っている男がそんな体たらくというのは納得できない。そのための、彼がうまく人生を歩けるための人生攻略本、というわけだったのか。いやはや、浮かれまくってるじゃないか。
しかし、その男は一皮剥けばただ挫折して、一方的に憧れて神聖視していたものに裏切られたと思い込んで人生すねてしまっただけの、ただのつまらない普通の男だった。
ただの人間だった。
失望、と彼女はそう評して、そう語ったけれど……。
でも、切り捨てたわけじゃあないんだよなあ。あの日の再現で身を投げて、でも普通のつまらない人間の男にすぎなかった彼はもう一度必死になって、今度は自分と空を飛んでくれた。
テニスのとき、己を顧みずにわりと自業自得なことをしていた自分のことを守ろうとしてくれた。
幻想から目が覚めて、憧れに冷水を浴びせられて、現実に立ち返って、彼がただのその辺にいるのと同じ人間だと失望して、でもそうしてただの人間の彼と向き合ってみれば、彼がしてくれたこれまでの事は何一つ失われてなかったんですよね。
だから、赤三月の心は死ななかった。同じように、今度こそ自分の中の幻想を失いながら九木野瀬伊吹も素直にそれを受け入れることができた。

熱が冷めて、痛々しい妄想から解き放たれて、誰も特別なんかじゃないと理解して、ようやくスペックだとかそういうのを抜きにした、ただの人間として向き合うことができるようになった。
ようやくここで、赤三月朝火と九木野瀬伊吹はスタートラインに立てたのだ。

……ってところである意味ここからが本番のはずなのですが。わりと酷いことを言ってしまって泣かせた歌ノ森へのフォローとか、赤三月が自殺しようとしていた本当の理由、彼女の中の爆弾とか大事なことはまだまだ残っているし、何より人生攻略本の中の「恋愛」項目。ラブコメがはじまりそうで始まらないまま。
終わりっぽいなあ、これ。てか事実としてこの2巻が出たの一年半近く前なので、こりゃあ続きは出なさそう。
ある意味、終盤に巻きを入れつつこの物語の趣旨にラストで見事に切り込んで、なんだかんだと綺麗に着地させて余韻を感じさせるエンディングに持ち込んでみせたのは結構凄くね、と思ったり。
ここで終わるのは非常にもったいない作品でした。次回作にも大いに期待したいなあ。


信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 5.竜に呑まれし水の街 ★★★☆   



【信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 5.竜に呑まれし水の街】 大崎アイル/Tam-U オーバーラップ文庫

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最強の古竜から――故郷(マッカレン)を護れ!

太陽の国にて「蛇の教団」の陰謀を阻止した高月マコト。
水の国崩壊の神託を受け、水の街へ帰還したマコトは、懐かしき面々と再会する。
不吉な神託とは程遠い、慣れ親しんだ街での平和な時間。しかし、“崩壊"が始まる。
ついに魔の森にて大規模な魔物の集団暴走が発生してしまい、水の街は一気に戦場と化す。
さらに予期せぬ「幻の古竜」の襲来により、仲間たちは為す術なく倒れていく――。
危機に直面したマコトは形成逆転の裏技をノアから告げられるのだが……?
「マコト……あなたの命を私に捧げなさい」
クラスメイト最弱がマイナー女神と最強へ至る異世界攻略ファンタジー、第5巻!


フリアエさん、もっと気難しくてパーティー入りしても距離置こうとするのかと思ったら、案外とすぐにルーシーとすーさんと打ち解けたのね。ルーシーたちが積極的、というか相手が月の巫女とかあんまり考えずに素で突っ込んでいったから、というのもあるのだけれど、拒絶せずに誘われたら普通に一緒に買い物に行ったりもしているし。
こうしてみるとフリアエさん、ただの寂しがり屋という側面が見えてくる。まあ月の巫女なんて生まれで迫害され忌避される一方、信者からは変に崇められてなかなか親身になってくれる相手もいなかったようですし、多少仲良くなっても迫害を受ける身の上としてそれを理不尽に失う事も多かった。
仲良くなっても相手を名前で呼ばず、マコトの事も私の騎士、ルーシーたちの事も魔法使いさん、戦士さん、なんて風に呼ぶのもいざという時少しでも自分の心を守るために一線を引いているらしいですし。桜井くんだけが、殺しても死にそうにないから、という事で名前で読んでそれだけ心も寄せていた、ということみたいで、そりゃ彼女みたいな境遇だったら唯一味方してくれた桜井くんに好意を抱きますわなあ。
これがヤンデレ気質だったりすると、そこから執着に走ってしまうのですがフリアエはそのへんサッパリとした性格のようで、ある種の吊り橋効果という認識も自分で持っていたのでしょう。マコトとルーシー、さーさんの三人が彼女の味方になってくれたことで余裕が持てたというのもあるでしょうし。あれはノエル姫への対抗意識みたいのもあったんじゃなかろうか。
それで急にマコトの方にベタベタしだす、なんて事もないフリアエのさっぱりした、でも情の厚いところのあるキャラは結構好みです。名前で呼ばないことで線を引いてると言いつつ、魔法使いさん、戦士さんという呼び方にはあれはあれで情愛が籠もってて、フリアエさんルーシーたちの事だいぶ好きでしょう、というのが伝わってきますし。

さて、桜井くんやふじやんくん、それにコチラで親しくなった冒険者のジャンと言った友人たちが結婚していくのを目の当たりにして、そろそろ自分も責任を取る時期に来ているんじゃないか、と思い出すマコトである。でも責任と言ってもちゃんとした恋人らしい事もルーシーたちと出来てないんですよね。お互い青信号なのに、どうしてか肝心な時にお邪魔が入ってしまうパターン。いや神様邪魔してないよね、それどころかノア様とエイル様興味津々で生放送かぶりつきじゃないですか。ってか、エイル様水の女神なんでマコトとは関係ないはずなのに普通にずっとノアと一緒に覗き見してらっしゃるな、あの人。一応、マコトが水の国の勇者になったからか?
というかこの水の女神、邪神ノア様よりも奔放というか自由人というか緩くないだろうかw
まあその緩さというか適当さが、堅物な水の巫女のソフィア王女をけしかけてなかなか距離を詰められない彼女を強引に婚約者に仕立て上げる後押しになったと思えば、あれはあれで良い所も多いんだろうけど。
しかしマコちゃん、ずっと女神たちに覗き見されててルーシーたちといい雰囲気になり場合によっちゃあベッドイン、なんて状況になっているのも出歯亀されているのをちゃんと気づいていながら、もう平然と気にしなくなっているあたり、明鏡止水スキルが行き着く所に行き着いちゃってるんじゃないだろうかw 

今回は精霊使いというマコトの戦い方のアンバランスさ、というか使い勝手の悪さが伝わってくる展開でもありました。自由に思う通りにいつも使いたい魔法を使えるわけじゃないし、威力も思い通りにままならない。相性やら土地効果なんかがハマったら尋常じゃない規模の術を使える一方で、精霊さんたちの気分次第の所もあるし相性の悪い土地柄だったりすると、ほんと魔法使い見習い程度の力しか出せなくなってしまう、という不自由さ。
それを補う意味でも、ヒロインたちとの同調というのは思いの外重要な鍵となってきた感がある。単体でも強力なユニットとして動けるヒロインたちだけれど、余計にマコトと一緒の場所で戦う理由が出来てきたな、と。マコトの場合、ずっとその精霊使いとしての能力をフルに出せたら単身でどこまでもイケちゃう、なんでも出来る、という所がありましたし。

今回書き下ろしで商業の国にまで出張ってましたけれど、今度は女神さまたちの依頼もあって木の国に行くことに。この調子で世界中めぐることになるんだろうか。それはそれで楽しそう。


死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く V ★★★★  



【死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く V】 彩峰舞人/シエラ オーバーラップ文庫

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ノーザン=ペルシラ軍を退け、国の再起に活路を見出したファーネスト王国は、脅威であるアースベルト帝国に対抗するため、メキア神国との同盟を結んだ。
第八軍の総司令官であるオリビアは、王国代表としてメキア神国の国主・ソフィティーアに招かれる。
表敬訪問と銘打ち、手厚い歓待を受けるオリビアたちだったが、ソフィティーアの狙いは圧倒的な武力を誇るオリビアを自国へ引き込むことだった。
オリビアの悲願とも言える死神の捜索を条件に交渉を試みるソフィティーア。
魅惑の条件を前に、心揺れるオリビアが下す決断は――?
王国軍“最強の駒"として、常識知らずの無垢な少女が戦場を駆ける、第五幕!




いや、アシュトンくん、君ってオリビアがいなくても相当にしぶといよ? というか、なんでアレで死なないどころか大した怪我も負ってない上に絶体絶命から逃げ延びる事が出来たのか、主人公並の天運がなければ普通に死んでてもおかしくないんですけどね!?
クラウディアなんか、完全にアシュトン死んだー! と自失しちゃってましたし。あれでクラウディアが自分の気持ち、アシュトンに知らず知らず好意を抱いていたことにアシュトンが死んだと思った事で気がつく展開になるかな、とちょっと期待したのですが、この娘も筋金入りの鈍感娘でした。
傍から見たらどう見てもべた惚れなんだけどなあ、自覚がまったくないという。
そしてアシュトンの方も軍師として頭は冴えてるのに、クラウディアの気持ちについては全然気がついていないというコチラも筋金入りの朴念仁。いやまあアシュトンの方は恋愛感情についてはフラットか、若干オリビアに惹かれている、という具合なのでアンテナ高くなくても仕方ないのかもしれませんけど。察しが悪い方じゃないのですが、何しろクラウディアの方に自覚も何もあったもんじゃないので、むしろクラウディアの認識の方を察して無自覚の好意には気がついていない、というきらいもあるんじゃないか、と。
ただまあ、このオリビアとアシュトンとクラウディアのトライアングルは、天然に鈍感に無自覚というポンコツ揃いのお陰でお互いの関係を深く考えることがないゆえか、距離感に遠慮がなくてほんと仲良いんですよね。大人の酸いも甘いも噛み分けた仲の良さ、というよりもどこか幼さすら感じられる子供同士の純粋な仲の良さ、というふうな感じで。アシュトンもクラウディアも本来は年齢よりも大人びた性格の若者なんだけれど、天真爛漫なオリビアに引きづられたというか染まったというか。上司と部下でありながら、同世代の友達という側面を深く内包している密接な関係になってるんですよね。見ていても微笑ましいというか、いいなあと思えるトリオで。これ、見方によってはアシュトンくん両手に花なんだけど、不思議とそうは見えないのよなあ。
まあアシュトンとクラウディアは特に、なんだけれど、身近に接した人たちとこうして心寄せあえる関係になれたからこそ、ソフィティーアの勧誘を蹴っ飛ばせたのでしょう。
オリビアにとってゼットの存在は絶対で、彼を探すことこそが至上命題だったはず。王国軍に参加したのも、ゼットを探すためという理由だけで何の思入れもなかったはずなのに。そもそも、死神のゼットに育てられた自分と「人間」とはどこか別の存在として分けて見ていたオリビアが、今こうしてゼットを探すよりも優先したいこと、彼を後回しにしても一緒に居たい人たちが出来た、というのは何とも感慨深いものがあります。
面と向かって、君たちが大事、と言われたアシュトンやクラウディアもこれ嬉しかったんじゃないかな。どうしたって人外とも言える力を振るうオリビアは、まともな人間からは忌避されそうなものだけれど、オリビアの無邪気さとこんな風に衒いなく率直に偽ることなく心ぶつけてくるものだから、どうしたって恐れを抱けないんですよね。
第8軍の指揮官に任命されて離れてしまいましたけど、元々所属していた第七軍のパウル将軍以下の幹部のおっさん連中が揃って、オリビア居なくなって寂しい、と愚痴こぼしてあっているのを見ても、戦力云々だけじゃなくてオリビアってムードメーカーでもあったし、老若男女問わずに部下からも上司からも好かれ親しまれてマスコットめいた扱いもされてるんですよねえ。
これだけ特異で異常な存在でありながら、こういう風に好かれるのはやっぱりあの天真爛漫な性格ゆえなのでしょうなあ。七軍のオットー副官とか本気で怒ったクラウディアとか、無敵に思えるオリビアがガチでビビって頭上がらなかったり、という隙があるのもむしろ親しまれる理由なのかもしれません。
ただ彼女を強大な戦力、としてしか見ていないメキア神国の者たちがオリビアを引き入れようとしながら、一方で畏怖を押さえられずにオリビアを一人の少女として見ることをしないのがまた対照的だったりするんですよねえ。

さて、帝国の侵攻をオリビアの活躍に寄って辛くも退け、なんとか体制を立て直すことに成功し、逆に帝国に対して乾坤一擲の大勝負に打って出た王国軍。
その要となるのが、オリビア率いる新設第8軍。いやこうしてみると、オリビアの武力をただ利用して使い倒してやろう、みたいな考え方じゃなくて、適切に最大戦力を運用しようという戦略を立てて実行する王国軍の将軍たち、みんなホント優秀ですし人格的にも他人の足を引っ張るようなのが居ないんですよね。或いはこれまでの激戦で淘汰されたか。オリビアがどれほど強くても、周りが足を引っ張って力を発揮できない、というような場面を殆ど見ることなく、自由奔放なオリビアの理解者が部下にも上層部にも同僚にも揃っている、というあたりにオリビアの快進撃の大きな理由が伺えるのではないでしょうか。いくら彼女でも周りに足引っ張られて思うように動けなかったら、力をどれだけ発揮できるか。こうしてみると、随分とオリビアが恵まれているのがわかります。そういう立ち位置を自分で築き上げてきた、とも言えるのでしょうけど。

一方で帝国の方はというと、内部で不穏な動き在り。これまで人知れず暗躍するに留まっていた宰相がついに動き出したことで、迷走がはじまっているんですよね。帝国軍の支柱というべき人物が、突然排除されたりもしていますし。動乱の種が芽吹き始めているさなかに、王国軍の攻勢がはじまったわけで、果たしてこの作戦、成功するのか。
オリビアに相対するのは帝国最強の蒼。ついにはじまる頂上決戦、ということで次回への引きに際しての盛り上がりとしては十二分。というか、ここで切るのは何ともいやらしいじゃあないですか。続きが出るのを待つのがまた長く感じてしまいますなあ、これ。
うん、面白かった♪


王女殿下はお怒りのようです 5.邂逅、そして ★★★☆   



【王女殿下はお怒りのようです 5.邂逅、そして】 八ツ橋皓/凪白みと オーバーラップ文庫

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明かされる転生の真実――

公爵家の領地において妹のクリスタと対峙したレティシエルは、未だ見ぬ『ドロッセル』の記憶に触れた。
『ドロッセル』の過去とクリスタの抱えていた想いを知ったレティシエルは、彼女へと歩み寄り、二人の関係は新たなものとなる。
だが、黒い霧を巡る謎が解決されたわけではない。ジークと共に、霧についての調査を続けるレティシエルは、自身を幾度となく襲撃した『白の結社』と、それを従える仮面の少年と相対する。
そして少年は、この時代において誰も知らないはずの名を呼んだ――
「君に会えることをずっと待っていたよ、レティシエル」
その邂逅が意味するものとは。
転生王女の最強魔術譚、核心に迫る第5巻!
赤い目を持つ人についてのお話とか前々から出てましたっけ? 寿命の件も含めて、えらい唐突感があったんですが見逃してたのかな。ロシュフォール王子もさることながら、国王陛下もそんな業背負ってたとか全然頭の中に入っていなくて、あれ?そうなの!? と、びっくりしてしまったのですが。
さてもその暗躍する『白の結社』を動かしている幹部たちの姿が見えてくる。と、同時にその黒幕がどうやらレティの前世に関係ある人物である、というのは当初から匂わされてきたのだけれど、正体に関しては明かされてこなかったんですよね。それどころか、レティに執着はしているもののその方向性が正負どっちなのかも、どちらのようにも見て取れる言動を繰り返してきたわけで。
うん、普通に「彼」を想像してしまいますよね。
場合によってはレティシエルは、前世から抱き続けている大切な人への想いと、ドロッセルとして生きる現世で出会った人々との絆との間に板挟みになって苦しむ展開も予想できたわけで。それどころか、前世の旦那と今世の想い人とが違うお陰でドロドロした修羅場に! という仄暗い期待もあったりして。まあ白の結社がどう考えても悪役ムーブな悪いことをしている連中なので、どうあっても対決は避けられなかったのですから、レティシエルがどちらを選ぶかは疑いようのないところではあったものの、それでも良くメンタルを揉まれて苦しむ羽目になるのかな、とは危惧してたんですよね。
どうやら危惧で終わってしまいそうですけど。案外とひねらずに進むのか。
でも黒幕の正体に関しては、ちょっと「え?」と意表を突かれたというかその人は想像していなかったというか。いやだってねえw

まあそっちの可能性はパッと排除できたので、落ち着いて今世でのドロッセルとしての今の立場を振り返ってみると、あれ? 結構男の影があるぞ、この娘さん。
実家の公爵家の失墜によって、身内は貴族位を取り上げられて追放の憂き目にあい、自身も身分を剥奪されたわけだけれど、今の所平民になって困ることはないんですよね。国王陛下は、状況いかんによっては貴族位の復活、もしくは新しい陞爵も考えているようなので、いつでも貴族に戻れるチャンスはあるようですし。
となると、再会なって以来なんだかいい雰囲気になっている幼馴染のエーデルハルトとも身分差ゆえの弊害は最小限で済みそうですし、逆に平民であるジークとの仲も現状身分の壁がなくなった、と言えるわけで、さらに使用人のルヴィクとも何だかんだと自分に前世の記憶があり、昔のドロッセルとしての記憶がなくなってる……最近朧気に思い出してきているけど……という事情を打ち明けて、しばらくギスギスしていた分逆に関係が密接になったきらいもありますし。
どうやら、レティシエルが転生した件については明確な理由があり、それに伴ってかつての旦那も転生している可能性が高まっているのだけれど、この中ではジークがどうにもそれっぽいメモリーを垣間見せているのですが、エーデルハルト王子の寄せはなかなか強烈にも思えるんですよねえ。

さて、件の事件によって明暗別れたフィリアギス公爵家の一族ですけれど、自ら事件の解決に動いたドロッセルは当然として、クリスタが思いの外救済されてるんですよね。ってかロシュフォード王子ヤバい存在として目が覚めたのかと思ったら記憶障害はあるものの当人の意識は保っているのか。彼の側に残れるのなら、クリスタとしてはむしろ良かったという立ち位置なのでしょう。逆により泥沼にハマってしまったのがサリーニャの方で、なんか過去の不始末を隠そうとしてどんどん余計な罪を背負っていっているような。でも本人、いい加減振り切って小悪党でしかなかったのが濃密な悪女めいたキャラになってきて、そんな悪女ムーブ楽しいみたいなのでそれはそれでいいんじゃないだろうか。
あのしょうもない雑魚両親から、三姉妹全員これだけ濃いキャラに育ったというのは何とも面白い事なのかもしれない。

しかし、もうレティシエルは自分がドロッセルであるという事実に疑問も違和感も抱かなくなったのか。最初は、自分をレティシエル以外のなにものでもなくドロッセルって誰? という感じで、自分の肉体だった少女の事は話を聞いても他人事でしかなかったのに、いつの間にかドロッセルという少女に興味をいだき、彼女が何を考えどのように生きてきたのかを追いかけるようになり、それがいつしかドロッセルの記憶が断片的にでも蘇るようになり、いつしかドロッセルもまた自分なのだという同一性が進み始めて……、とここまでじっくりと時間をかけて前世と今世の自分をすり合わせていく展開というのは結構珍しいんじゃないだろうか。ルヴィクやエーデルハルトにレティシエルという前世の記憶がある、と告白するに至ったのは、自分がドロッセルであるという認識あってこそでしょうし。
もし最初の頃なら、自分は本当はレティシエルという違う人間だ、なんて言ってたかもしれませんしねえ。ドロッセルの記憶がもっと沢山戻ってくれば、完全な同一化が進むのだろうか。


TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 2 ~ヘンダーソン氏の福音を~ ★★★★☆   



【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 2 ~ヘンダーソン氏の福音を~】 Schuld/ランサネ オーバーラップ文庫

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この出会いは致命的(ファンブル)!?

魔導師アグリッピナに窮地を救われたデータマンチ転生者のエーリヒ。彼はアグリッピナから、妹のエリザが「半妖精」であると告げられる。
そして「半妖精」の悲惨な運命を避ける唯一の道として、契約を結ばないか、と――。
契約により、エリザは弟子として、エーリヒは丁稚としてアグリッピナと帝都の魔導院へ行くことに。
故郷を離れるエーリヒは、マルギットに一つの誓いを捧げるのだった。
一路帝都へ向かう旅路の中、エーリヒの前に現れた妖精。
彼女がもたらす新たな物語の行方は、どうしようもなく致命的……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、待望の第2幕!


わりとこれ、アグリッピナとの出会いをきっかけにしての、故郷との離別は「ヘンダーソンスケール1.0(致命的な脱線によりエンディングに到達が不可能になる)」に該当するようにも見えるんだけれど、そうはならないという当たりにエーリヒの冒険者になるという夢が行き詰まったわけではなく、またマルギットとの約束が不履行となるわけでもないことが、示唆されていると思われる。
まあエーリヒのやりたいようにやるのだ、という生き方の中には愛する末妹のエリザの良き兄として彼女を守る、という事も多分に含まれているので、エリザが半妖精として生まれていた以上は、アグリッピナ師の提案は、エリザの行く末を思うなら唯一無二の道ではあったんですよね。
それでも、将来の展望、力を蓄えてある年齢に達したら冒険者となり村を出て、思うがままの旅に出る、そこには幼馴染の少女の姿も隣、というか背中にあって、という確かなそれなりに細かく予定を敷き詰めた計画が建ててあったにも関わらず、それらを全部放り捨てて、故郷を出るはめになってしまったわけですからね。人生うまくいかないものである、特にTRPGプレイヤーなら尚更にここぞという時にファンブルかますのは必然とすら言えるのである。
とはいえ、溜まったもんじゃないのは家族であり、人生を共にする約束をしていたマルギットなんですよねえ。アグリッピナ師の提案は、まあ自分の都合優先、引き篭もり欲求を叶えるためにエリザを弟子として招く、というのは大変に自分に利のある事ではあるんだけれど、この人にしてはエーリヒやエリザたちにも配慮しまくってくれてる取引ではあるんですよね。
それでも、普通ならばエーリヒの丁稚契約というのは要求される金の単位からして永久雇用である。辺境の農民が左右できる金額と、魔導師の弟子となるエリザが必要となる金銭の桁は文字通り、2つ3つ異なってくるわけで、それを稼がないといけないエーリヒは当然雇用主であるアグリッピナ師にそれだけ奉仕し続けないといけない。
本来なら、これはもう二度と故郷には帰ってこれない、と思われても仕方のない旅立ちなんですよね。マルギットも、エーリヒに会いに来た時の悲愴さからしてそのあたり、覚悟はともかく理解はしていたんじゃなかろうか。でもこの少年と来たら「5年かそこらで上がれたらいいなあ」である。
しかし、5年ですら今14歳のマルギットからすると待つには長過ぎる年月。そもそも5年で年季明けるかどうかすら、普通に考えたら一生涯借金地獄から逃れられない金額を思えば怪しい所。
でも、信じるわけですよ、この娘は。行き遅れになっても、冒険者になると誓った幼馴染をここで待っている、と約束するのである。もうなんか、敵わないよね。
子供同士の拙い約束ではないのは、マルギットとエーリヒの間で交わされた誓いの儀式でまた明瞭なのである。ただの子供の約束で、あんなふうに重く妖しく神聖な「交換」は成せないですよ。
ある意味、どれほど時間が流れても、どれほど距離が離れても、彼女マルギットこそがその定位置を据え定めた、と言える一幕でありました。
でもしばらく、この幼馴染とは残念ながらお別れ、となってしまうんだよなあ。うん、大丈夫、彼女これでフェイドアウトということはないので。その場所は譲らんのでありますよ。

この別れのシーンでもうひとつ印象的だったのが、親父さんとのシーンなんですよね。秘められた父親の過去がその口から語られ、末妹を守って旅立つ我が子に己の過去の夢の残滓と拠り所を託して送り出す。それが、息子が夢を叶えるための旅立ちならば、大いに祝福してのことなのだろうけれど、誰の意にも沿わぬ苦しい別れとなるのなら、そこに託す思いの痛切さはいかばかりか。
しかし、愛娘を託せるに足る男に育ったという末息子への信頼もあり、忸怩たる思いを抱きながらも安心がある。父から子へ、家族の一幕としてはこう染み入るシーンだったんですよねえ。
本作はこういう何気なくもじんわりと染み入る交流のシーンが多くて、なんか熟成が進んで出汁でも溢れ出てきそう。それくらい、味わい深い情緒があるんですなあ。

そして、そういう情緒をさっぱりと理解しないし出来ないアグリッピナ師みたいな、人間とは根本的に異なる価値観の元に生きている長命種、みたいなのがどんどん出てくるのが、種の坩堝となる帝都なのですが……おおう、そこまでたどり着かないのか、お話。
まあアグリッピナ師みたいなの、早々居ないんですけどね。居てたまるか、というくらいなのですけど。長命種というのがどれほどイケててイカレた種族なのかは、実にしみじみと作中でも語り尽くされるのですけれど、その中でもとびっきりの変人極まっているのがこのアグリッピナ師であり、変人=魔導師という基本方程式の中ですら「アグリッピナ」という特別枠で括られそうな人なのである。
まあエーリヒの方も「エーリヒ」という特別枠で括らないとアレすぎる人種なんですけどね。魔導師の丁稚なんてものにならなきゃならなくなり、故郷も出て、まだ7歳の分別もつかない妹の面倒もいなくちゃいけなくて、人生オワタ、みたいな境遇に陥ったにも関わらず、後ろをまるで振り返らずにグジグジと思い悩まず、至極前向きに現在の境遇でバリバリビルド鍛え上げるぞー、とワクワクしているあたり、何気にどんな人生歩んでても幸せになれる奴なんだろうなあ、と実感する次第。
実際、ヘンダーソンスケール1.0が発生して、IFルートに突入する際もどんな境遇立場に陥ってても、ほぼほぼ人生満喫してるもんなあ、こいつ。
しかし、そういう前向きの権化のような人物でも、耐え難い試練というものはあるもので。
実質初陣となる戦いで、そのラスボスがこれ、というのは厳しいにもほどがあるでしょう、居るのならばGMさん。ゲームバランスとして反則、というのではなく精神を摩耗させるという意味で。
というか既に戦闘に関しては、この段階で意味分からんレベルなんですよね、エーリヒって。比べる対象が殆ど現れない上に、居てもアグリッピナ師みたいな超絶存在だったりするのでエーリヒも自分の現在の立ち位置把握しきれてないようだけれど、現段階でちょっとおかしいですもんね。
それに、アグリッピナ師によって魔法のロックが外されて、魔法が使えるようになったという所で、覚えた魔法がアレである。炎とか氷、とか定番のそれではないというのは、フワフワとした魔法使い像に引っ張られるTRPGプレイヤーではないのですよ、と言わんばかりで。というか、よっぽどキャラビルドについて日頃から練りに練って思い巡らせてなかったら、こんな発想そうそう出てこないでしょうしねえ。いやまあ、人生そのものを費やしてビルドに勤しんでいる人物なので、それこそ息を吸い息を吐くようにビルド練ってるんでしょうけれど。
でも、この発想は面白いよなあ。後々までエーリヒの戦闘面のみならずあらゆる場面に置いて得難い効力を発揮し続ける「見えざる手」とのファーストコンタクトである。いや、能力にコンタクトというのも変だけれど、ある意味彼の相棒みたいな能力になりますからなあ。
しかして、初期段階から既にわけのわからないレベルの汎用性を見せてるんですよね。どんだけ便利で応用範囲が広いんだか。ここらへん、プログラムの組まれたゲームではなくTRPGというGMとの駆け引きでどのようなケースにも対応できるゲームのプレイヤーならではの発想の自由さと、それをシステムに組み込んで、はめ殺しを図る応用力か。

ヘルガ編については、書籍用の書き下ろしでウェブ版にはなかった展開なのですけれど、エーリヒにとってはきつい試練でありました。あのラストシーンもさることながら、そのあとの「Tips」の語りがまたここでは凄く優しいんですよね。ただの説明文のはずなのに、ヘルガの想いを伝えてくれているようで。
ここに限らず「Tips」は時にウィットに富んでいたり、アイロニーをきかせていたり、と実に表情豊かで、話の余韻を際立てせてくれる。この作品の色彩の鮮やかさを担う特徴の一つでもあるんですよねえ。

さて、次こそはようやく魔都たる帝都を舞台にシティーアドベンチャー! まではいかないか。それでも、この世界の不可思議で魅力的で怪しげな設定群の精髄が詰まったような都市であり、その情景描写、街を歩き人と出会うシーンだけでも凄まじい情報量が飛び込んできてワクワクしてしまうような舞台がここからはじまるわけです。いやあ、ここまでで楽しかったという余韻に浸るまもなく、ついつい次回に思いを馳せてしまいます、ワクワク。


異世界迷宮の最深部を目指そう 14 ★★★★   



【異世界迷宮の最深部を目指そう 14】 割内タリサ/ 鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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『告白』の末、晴れてラスティアラと恋人同士になったカナミ。マリアとリーパーに再会し、ノスフィーとの決着をつけるため、一行は『本土』の大聖都フーズヤーズに辿り着く。訪れた冒険者ギルドにて『世界樹汚染問題』という依頼を発見したカナミ。なんでも、鮮血属性の魔法を得意とする男が世界樹を真っ赤に染めているという。その男は、七十層の『理を盗むもの』で―。そしてノスフィーは、自身の記憶を呼び起こす。『光の理を盗むもの』として生まれた日を。―愛を知ったあの日を。

挿絵の鵜飼沙樹さんのツイッターで目撃したアリ得たかもしれないもう一つの14巻表紙絵「血の海と太陽と空で、水遊びするカナミファフナー」が、見たときは意味不明だったのだけれど、読み終わってみると概ね間違ってなかった事を理解したときの思わず遠い目になる自分w
というわけで、70層「血の理を盗むもの」ファフナー・ヘルヴィルシャインの登場である。いやもう、なんだろうねこの人。今までで一番イージーモードを自分から進呈しているような人なんだけど、どう判断したらいいんだろう。実は地雷とか、裏があるとかは絶対ないようで信頼できる人物なのは確か。結局面倒くさいことになるにしても、彼の協力的な姿勢がまがることはないんだろうけど、ノスフィー次第になるのか。
そのノスフィーはというと、案の定仕掛けてきたのだけれど、準備万端であらゆる展開に備えた網を張っている、というふうでもなく、なんか「その話聞いてないんですけどー!?」というような反応を度々見せていて、彼女の企みって穴だらけなんじゃないの実は? と思わされてポンコツ属性があるんですかもしかして。洗脳して手駒にした戦力たちも、なんかさっぱり思う通りに動いてくれなくて、洗脳しているはずなのにみんな各々好き勝手に動いていて、ノスフィー振り回されてる感あるし。カナミとライナーへの嫌味っぽい言動はともすれば子供っぽくすらあって、もっとクールビューティーというか底冷えするような怨念で駆動しているのかと前は思っていたのだけれど、ちょっとイメージがわからなくなってきたぞ。
カナミとライナーは多分、自分と前まで自分が抱いていたような印象をノスフィーに持っていたからこそあそこまで警戒しているのだろうけれど、今の姿しか知らない女性陣が彼女をあまり危険視している様子がないのもわかるんですよね。別に仮面をかぶっている、という風でもないんだよなあ。
とは言え、カナミたちと敵対していて彼らを陥れるために動いているというのは確かで、まあ最終目的がどうなっているかはともかく。
それに今のノスフィーは、ラスティアラの皆仲良く思想に激しく反発している様子なので、むしろみんな仲良くの反証を成立させる方を重視しての、あの仕掛けだったのかしら。事前に仕掛けてた事はないのだろうけど、結局カナミのパーティーを壊滅させるためには仲間割れが一番ではあるんですよね。
ただ、うーん。ノスフィーがありえないと、心の奥底では許せないと思っているに違いない、という主張は今のカナミパーティーの女性陣に対して周回遅れな感じはあるんですよね。
数年前の、みんな一緒に船で旅に出たあたり。全員集合で漏れなくカナミが修羅場で頓死しそうな時期だったら、当てはまりそうではあるのだけれど。今となってはみんな多かれ少なかれ、精神面の不安定さの原因だった部分を解消して成長しているだけに、ノスフィーの指摘もそれって何時のこと? みたいな的外れ感があったんだけど。実はやっぱり内に、ラスティアラと結ばれたカナミという関係を認められない受け入れられない許せないという感情を滾らせていたのだろうか。皆無ではないのだから、それをアルフィーの魔法で無理やり掘り起こされた、という事なんだろうけど。正直になったくらいで、今の彼女達がそんな仲違いするまでになるんだろうか。現場を見れていないので、実際の所はまだ判断がつかない。

でも、ラスティアラのみんな一緒思想がないと、現状でもカナミが生命途絶の危機の警告が自動発令してしまうほどのヤバいバランスで保たれていたのはまあ間違いないんですよね。スノウとかディアとか見事に爆弾が破裂しそうにはなってたわけですし。
そう考えるとカナミの愛する人は唯一一人だけ。一人だけを永遠に愛するのが正しい姿、という思想は見事に起爆スイッチでもあるんですよね。
どうしてそこまで頑なに、そう思い込んでいるんだろう。いや、愛する人は一人という考え方自体は不思議でも不自然でもないのですけれど、ラスティアラの趣味嗜好と比べると、カナミのそれはある一線を超えると激烈に拒否反応を示していて、妙に自動的なところがあるんですよね。
それに、永遠、とかいくらカナミがロマンティストで厨二病気味でも、ちょっと彼のキャラクターからはズレている気がするんですよね。その考え方は、彼らしくない。
という違和感を補強するような情報が次々と舞い込んでくる。というか、明らかに外からの誘導じゃないか、というもろな話が色々と。わーい、ラスボス確定じゃないですかこれー。ってかラスボスもほぼ作中で明言指摘されてますもんね。
となると、カナミがなんか妙にせかせかと、或いは視野を固定しているようにゴールを妹ちゃんを起こす事に定めているのも、封印を解くように意識誘導されているように見えてきてしまうわけで。
なるほど、今ラスティアラが座っている椅子、座す人物を入れ替えるのはわりと簡単そうだ。
いやこうなってくると、ノスフィーの立ち位置ってどこにあるんだろう。彼女の過去にしても回想はまだ生まれてからしばらくのものだけで、カナミと結婚したという経緯もわからないし、今現在の真意がまだわからないので、判断が難しい。いや、「素直」になったノスフィーの本音からして、愛されなかったと思って拗らせまくったネガティブな感情の賜物なんだろうけどさ。それだけなのかしら。
それに、今回新たに名前が明らかになった80階層、90階層の理を盗むもの、たち。こうなってくると、むしろラスボス戦を前にした味方、なんだろうか。
なんにせよ、判断材料がまだ出揃わない状態なので、兎にも角にもノスフィーとの決着がつかないと目の前は開けないように思える。
しかし、洗脳されてるはずのグレンさんや、世界樹の前に立ちふさがっているファフナーといい、敵対しているわりに協力的な人がやたらと多くて、変な感じだ。悪意や敵意がほぼノスフィーだけに集中していて他の人からはおおむね好意しか向けられていないんだもんなあ。ノスフィーにしても、好意の裏返しみたいな所が見受けられるし。
じゃあ状況はヌルいのかというと、順調に最悪な方に転がっているようにも見えるし、いやでも大丈夫なのか? ともかく、混沌だなあこりゃ。

シリーズ感想

外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 2 ★★★☆   



【外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 2】 鴨野うどん/雫綺一生 オーバーラップ文庫

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最強パーティー『到達する者』の一員となった“外れスキル保持者”ノート・アスロン。最高到達階層の更新に挑む一行だったが、ダンジョンのトラップにはまり、ノートとエリンは別の場所へ転移させられてしまう。『ようこそ、ここは20階層』未知の強敵。出口不明の未踏階層。圧倒的な戦力不足。頼り切れないスキル。そして生還を目指すノートとエリンの前に、最凶の敵が立ちはだかり…!?「心配いらないよ。絶対に二人で生きて帰ろう」最強パーティーの少年が、やがて高みに至るファンタジー成長譚、第2幕!

ロズリアのこの聖騎士正装の衣装はカッコよくて好きだなあ。軍服風のデザインにちゃんと僧侶っぽいあしらいもあって見た目かなりグッと来るものがある。
それはそれとして、加入当初の様子が完全にサークル崩壊五秒前なんですけど、なぜこれでメンバー入り認めようと思ったしw
女性陣からは総スカンだわ、男性陣はジン以外メロメロだわ、速攻で和に乱れが、軋みが、ひび割れが! おまけに、ロズリアが話すのはノートばかり、という歪さ。
逆にここまで最初から人間関係ギスギスしていながら、ロズリアがその実力を示せばシブシブとはいえ仲間入りを認める空氣になるあたりは、大学のサークル活動レベルの話ではなく命掛かった実戦主義実力主義の世界ということなのか。まあ、命掛かってるからこそ、人間関係大事という向きもあるとは思うので、どちらが正解かはシチュエーションによるのでしょうけれど。
でもこの段階ではノート自身もまだパーティーに溶け込めていない面があるので、下手をするとロズリアとセットで浮いちゃう危険性もあったんだなあ。
ただノートはロズリアが周りと打ち解けられない事は気にしながら、自分が周りの超一流の冒険者たちとは違う人種なんだ、という僅かな意識の壁を生じさせている事には無頓着だったわけだ。いや、無頓着ではなくむしろ気にして、必死に彼らの域に達しようと焦りすら憶えて、がむしゃらに自分を鍛え続けていたのですけれど、それで実力が追いついたからといって果たして彼らと自分が同等である、と思うことが出来たかどうか。ノートがこぼした本音、メンバーのことを心から尊敬してはいたけれど親しみのようなものは抱いていなかった、というのはそれだけ幼馴染と決別した時の自分のダメさ加減が頭に残っていたからなんでしょうね。それを払拭しようにも、一度自分につけてしまったレッテルは剥がせない。挫折を克服しても、挫折したという事実は消せない。それが僅かな壁となって、仲間たちとの間を隔てていたのでしょう。
そんな中でひょいっと向こうから壁をまたぎ越してきたのがまずフォースだったですよね。前回の一件でこいつはダメな野郎だ、と新入りのノートにすら刷り込んでしまったパーティーのリーダー。どう見てもジンの方がリーダーやってて、こいつなんにもしてないどころか盛大に足引っ張ってんじゃん、というキャラだったのですけれど、この二巻では戦闘面で最強剣士の面目躍如。さらにはジンの教えをうまく消化できなくて悩んでいるノートに、不器用にも親身になってヒントをくれたりする仲間思いな面を見せてくれるんですね。男の仲間としていっしょに肩組んで歩けそうないい意味で身近な親近感を感じさせてくれて、どこかお客様な感じだったノートがようやくパーティーの仲間として馴染んできた、その過程を感じさせてくれるフォースの接し方だったのです。

と、ユルユルと進むかと思いきや急展開するのがこの作品の特徴的ムーブメントなのか。
ダンジョンもので転移罠、というのは往々にして劇的な展開の作用をもたらすもので。エリンとたった二人きりでダンジョン未踏の深度へと飛ばされてしまったノート。前衛なしのたった二人きりで、未だ潜ったことのなかった階層で生き残りをかけたサバイバルである。
ここで、二人は心身の限界まですり減らし、各々上っ面で覆い隠していたものすべてをぶちまけ、さらけ出すことになるのである。抱え込んでいた弱さも、傷も剥き出しにして、見せつけ合うことになるのである。そうして何もかもを見せ尽くして、出し尽くして、恥も外聞もなくした先に露呈してくるものがある。それでも、どうしてもしがみついてしまうものがある。それを、ここでノートとエリンは共有することが出来たのだ。出来たからこそ、生き残れたと言っていい。
まあでも普通、この手の遭難、一週間でも無理ですよね。さすがにこの日数は盛りすぎたんじゃないだろうか、と思ってしまった。いや、水を魔法で生成でき、食べ物は食用に出来る魔物を狩って、と最低限の補給はまかなえるとして生存条件は整えられたかもしれないけど、常にモンスターが徘徊している場所で数カ月間生き残ってた、というのはなあ。
とはいえ、この吊り橋効果は並大抵じゃないですよ。吊橋を端から端まで渡る時間だけで人が恋に落ちるのなら、この限界を明らかに通り過ぎたギリギリをはみ出してしまった精神状態で、さらにお互いの弱みと罪をさらけ出しあい、受け入れあい、支え合ってしまったわけですから。
エリンがああも、デロデロになってしまったのも無理からん。
ロズリア加入の際にパーティー内恋愛禁止! とエリン自身がぶちあげてしまったがために自爆的に自身を縛ってしまってる状態になってますけど、これどうなるんすかね。色んな意味で振り切って自分の枠を壊して突破したエリンとしては、そんなん知るか! というテンションでぶち抜いてきてもなんら不思議ではないくらいには、変わっちゃったと思うんですよね。
なかなか、恋愛面でも面白くなってきた。ノートもあれ、完全にエリンに傾いちゃってますし。


犬と勇者は飾らない 1 ★★★☆   



【犬と勇者は飾らない 1】 あまなっとう/ヤスダスズヒト オーバーラップ文庫

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中1の夏、幼馴染に振られたその日に勇者として異世界へ召喚され、魔王を倒して数年ぶりに帰還した佐藤草介―18歳、小卒、老け顔。どこにも就職できずバイト生活を送る草介は、幼馴染との距離感に悩んだり巨乳な同僚(JK)と仲良くなったりと穏やかな日々を送っていた。しかしそんなある夜、地球には存在しないと思っていた“魔術師”と“魔物”の戦闘に遭遇!魔物をあっさり倒した草介だったが、その力を見込まれて魔物討伐に巻き込まれることになり…!?無職と魔術が交差する時、勇者の拳が炸裂する!小説投稿サイト「エブリスタ」で話題沸騰の最強ヒーロー譚、ついに登場!!


小卒で帰還も辛いけど、幼馴染のこと振ったらその日に行方不明になってしまったこづみはこれ辛かっただろうなあ。決して嫌いだとかで振ったわけじゃなく、家の事情でお付き合い出来なかったというのが真相で当人はむしろ魔術サイドから日常側に引っ張り込んでくれた草介の事を本当に特別に思っていたわけですから尚更に。
それでも中学から高校までの六年間なんて青春真っ盛りですから、それだけの間会わずにいたら心残りではあっても現実現在の付き合いもあるから気持ちも遠ざかっていく、となるのが一般人なんでしょうけれど、こづみちゃんの場合家が財閥だったり魔術の名家だったり、という家庭環境もありますから、これ青春なんか送ってる暇なかったんじゃないだろうか。そりゃ6年の空白あっても草介の事一途に思ってたというのも不思議ではないかも。彼女には、他なにもなかったんだろうし。

しかし、草介は草介でいきなり異世界飛ばされるわ、いきなり前触れ無く今度は戻されてしまうわ、帰ってきたら両親亡くなってるわ、自分中学も卒業してない小卒だわ、でまあそりゃ生活基盤整えるだけで精一杯ですわ。周りに気を使っている暇ないよなあ。
ただ相当殺伐とした異世界での戦いを経てきたわりに、草介悪い意味でスレてないんですよね。根性もひん曲がってないし、神経すり減らして日常生活戻れなくなっているみたいな症状もない。
幼馴染に振られて事情も聞かずに海まで突っ走ってしまうような男ではありますけど、基本こいつ精神金属製だったんじゃないだろうか。叩いても折れず曲がらず傲然と自分を維持し続ける鋼の男。
実年齢よりも一回り年嵩に見られてしまうのって、単に老け顔だからじゃないですよ。普段からの物腰が凄く大人びている、というか兄貴じみているというか。どーんと落ち着いていて、揺るぎなさそうなんですよね。それでいて喋ってみると礼儀正しく丁寧な物腰だし、厳つい図体だけど人当たりも穏やかで柔らかい。バイト先のスーパーでよく働けてるのも、店長はじめ従業員がみんなイイ人というのもあるんだろうけれど、草介がそれだけ周囲から信頼されるような振る舞いを普段からしているから、なんでしょうこれ。履歴書で小卒、とか書かれてたらそりゃ書類選考でちょっとご遠慮、となってしまうのも仕方ないかもしれませんけれど、もう適当に高卒、くらいの詐称ならあんまり調べられないでしょうし、通っちゃうんじゃないだろうか。面接、ないしは実際働かせてみたらその実直さはすぐに伝わるだろうし、現場仕事ならすぐに色んな所顔広げられるだろうし、就職はそこまで難しくはないんじゃないだろうか。
てか、強化魔術使えるならもっと体力仕事のバイトすればいいのにw

というわけで、バイト帰りに遭遇した魔術案件に、死にそうになってるヤツがいたものだから首突っ込んで助けたら、その海人な魔術師の学生兄ちゃんに懐かれてしまい、彼ら魔術学生の実習を外部支援者として手伝うことに。
異世界帰りの草介の力は、初見の地球側の魔術絡みのトラブルにも十分通用、どころじゃなく発揮されてしまうのですけれど、最初の高槻くんに先生と慕われてしまうのも、ピンチを助けたティアに深く信頼を得てしまうのも、草介がそれだけ飛び抜けた力を見せたからこそ信用されたという向きはあるんでしょうけど、好意は力を見せたからじゃなくて草介の人柄と頼りがい故、なんですよね。
ただ力の強いだけの得体の知れない男だったら、こうも高槻くんもティアも出会ったばかりの彼に信頼は寄せなかったでしょう。なんとなく、彼があっちの世界でどんなふうに勇者やってたのか思い浮かぶようじゃないですか。
やはり主人公がこの手の好漢だと、話自体が痛快にかっ飛ばしたものになりますねえ。
とはいえ、鋼の男佐藤草介にも柔らかい脇腹はあるわけで。大切な人、幼馴染に拒まれたり否定されたらそりゃ傷つくし、怒ることもあるってなもんです。でも、そういう弱い部分があるのも強いだけじゃない魅力があって、実に良い。
それに、喧嘩になってもちゃんと面と向かって自分の悪かった所を堂々とごめんなさい、と謝れるんだから男前はぴくりとも揺るがない。

しかし、圧倒的な草介の勇者力ですけれど、決して地球側の魔術が貧弱だったり出力弱かったりするわけじゃないんですよね。こづみやティアたちが学生の中でもトップクラスの優秀な連中、というのを差し引いてもかなり強力な魔術をぶちかましてますし、見た目も派手、破壊力も青天井、敵さんときたら下手な軍隊なら一撃で吹き飛ばし、街ごとぶっ飛ばしかねない規模の魔術を揚々とぶちかましていたのですから、決して尋常なレベルじゃないんですよね。
これもう、草介が規格外すぎる。ほんとにチラッと話の中に出た草介の向こうの仲間も、訳のわからん規模の魔法使ってたみたいだし、いったい何と戦ってたんだ、草介たち、異世界で。
魔王じゃなくて、宇宙怪獣とか邪神群じゃないのか?

なにはともあれ、好人物な主人公が実に気持ちよくやることちゃんとやってくれる痛快さで、実に面白かった。異世界帰りの勇者、地球の魔術世界に遭遇してしまう、という導入っちゃ導入な展開でもあり、幼馴染の事情含めて深入りするのはこれからなだけに、次もに期待です。

外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 1 ★★★☆   



【外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 1 】 鴨野うどん/雫綺一生 オーバーラップ文庫

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15歳のノートが『贈与の儀』で与えられたスキルは“地図化”―レア度は高いが他のスキルより使いどころがない、いわゆる外れスキルと呼ばれるものだった。幼馴染みに見限られ、失意のどん底に落ちたノートは、冒険者として稼いだ日銭を酒に溶かす日々を送るが―そんな毎日はしかし、唐突に終わりを告げた。
「そのスキルを持つキミを、ボク達は必要としているんだ」
最強パーティー『到達する者』に所属するジンから勧誘され、ノートの運命は大きく変わり始める―今度こそ、努力することを諦めず、足掻ききろうと。最強パーティーに入った少年が、やがて高みに至るファンタジー成長譚、開幕!「小説家になろう」発、第4回WEB小説大賞“大賞”。

ふと夏目漱石の【こころ】の中で描かれた「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という台詞が思い浮かんだ。言葉の強さとは裏腹に、この言葉を発したKは紆余曲折の末に自死を選んでしまうし、決して字面そのままだけではない意味合いを作中の登場人物の中に残し続ける台詞ではあるものの、やはり字面通りの言葉の意味がもたらす強烈さは否めない。
主人公のノートは、「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」というその言葉通りの後悔を自分自身に向けて痛切に抱えている少年だ。彼の失態は外れスキルを引いてしまった事ではなく、そんなノートを見捨てずに居てくれた少女に甘えきり精神的にも能力的にも頼り切り、怠惰を極め寄生するだけのクズに成り下がってしまった事だ。
あらすじには幼馴染に見限られ、と書かれているけれど実際は際限なく依存し堕落していくノートのためにも自分は離れるべきだ、と考えたのではないだろうか。描かれている限りにおいては、自分の都合や利益を優先して役立たずを切り捨てていく、というタイプの娘さんではなかったですし。
実際、幼馴染と別れてようやく彼はそれまでの行状を後悔し、独り立ちするのである。そのままズルズルとノートを甘やかしていたら、彼は際限なくダメ人間になっていたのではないだろうか。
彼の得たスキルである【地図化(マッピング)】は、近似スキルと違って既存の地図がない未踏地であるダンジョンにおいて非常に有効である事が、彼をパーティー誘う『到達する者』によって教えられるのだけれど、よくあるような実はチートスキルでしたというような話は「今の所」ない。ダンジョン探索に極めて有用ではあっても、そこから派生して様々な恩恵が得られるものでは今の所だけれど、なくてノート自身は最上位冒険者パーティーの一員となるにはあまりにも力不足だった。
それを補うのは克己しての努力しか無い。結局、彼が『到達する者』の足手まといにならず不足分を補うために鍛えたのは、スキル【地図化(マッピング)】とは直接関係ない部分だった。
ただただ努力と研鑽によって、自分を最上位パーティーについていけるだけ磨き上げたのだ。その向上心は称賛に値するだろう。言われたことだけやっていてそれに満足して自分は頑張っている、なんて思い込んでしまうのも「あるある」なんですよね。
妥協するのもありでしょう、自分の限界を見定めるのもありでしょう、この程度で十分と判断するのもいいのです。自分のポディションを決めるのは自分であり、どんな位置をどんな状態を選ぶのかも根本的に自由です。良い悪いの問題ではなく、満足も幸福もそのヒト次第だ。
でも、ノートは選んだのです。自分で、もっと高みに行くのだ、と選択したのです。ならば、妥協は自分への敗北だ。仲間になってついてくると決めて宣言したノートのために、先に進むことを止めて彼の成長を待ってくれている新たな仲間たちへの裏切りだ。
そんな自分への妥協、自分に負けることなく、奮い立って努力し続けた。良き、男の子だ。
おんぶに抱っこではなく、自分自身で最高のパーティーの一員である参加資格を手にしたんですね。
ただまあ、きっちりと育成プラン立てている教導役のヒトに無断で自分で自主トレしてしまったのはあかんと思いますけどね。自己流に勝手に訓練して、場合によっては変な癖ついて取り返しのつかない不可逆のいびつな成長をしてしまった可能性もあるわけだし。報連相はほんと大事、大事ね。

しかし、この『到達する者』の人たちも最強パーティーという立ち位置に奢らない凄い人たちなんですよね。いくら必要だからってスキルを持った素人同然の冒険者をほんとうの意味での仲間にしよう、なんて凄い忍耐力と先を見据えた展望力ですよ。実際に、ノートがものになるまでダンジョン探索を止めちゃってるわけですし、手取り足取り協力してノートの育成に勤しんでくれてるわけですし。もっと便利使いする事も出来たでしょうに、本当に冒険の醍醐味を分かち合う仲間として扱ってくれたわけですから。そりゃ、ノートも頑張らないといけないですわ。

とまあ、第一巻では結局ダンジョン探索まで行くこと無く終わってしまった上に、パーティーメンバーの女性問題が拗れに拗れてすげえトラブルになってしまう、という顛末が待っているのですが。
ノートが囮になって逆美人局みたいなことするわけですけれど、ノートくん堕ちかかってる堕ちかかってるw
ガチの魔性、ガチの傾城じゃないですかー、このビッチ聖騎士。何気にこんなヤベえ女仲間になってしまって、大丈夫なんだろうか。サークルクラッシャーどころじゃなさそうなんですがw


信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 4.死を纏う亡国の巫女 ★★★☆   



【信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 4.死を纏う亡国の巫女】 大崎アイル/Tam-U オーバーラップ文庫

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水の国の危機を救い勇者の称号を得た高月マコトは、大陸一の栄華を誇る太陽の国の王都に到着する。
王女への謁見を終え、城下街を巡る中で、種族差別や麻薬の蔓延、そして蛇の教団の暗躍といった王都の闇を知るマコト。
蛇の教団の手掛かりを求め調査していると、繁栄の陰で滅ぼされた月の国の存在がにわかに浮上し!?
さらに、蛇の教団による王都壊滅のシナリオが発動し、マコトは窮地に陥るが――
打開の鍵となるのはフリアエという呪われた『月の巫女』で……!?
「水の国の勇者さん。私の守護騎士になりなさい」
クラスメイト最弱がマイナー女神と最強へ至る異世界攻略ファンタジー、第4巻!

光の勇者の桜井くんの太陽の国での扱いがガチの種馬扱いすぎる。こういうどんどん女性を充てがわれて血を残す種馬みたいな扱いを受けるようなキャラって、その行為や立場を楽しみ耽溺してるような欲望全開のヤツとか疑問にも思わないロクでなしとかが多いのだけれど、桜井くんの場合はどちらかというと義務感でやってるポイのですっごいキツそうで可哀想になってくる。桜井くん、爽やかな好青年で本気でいいヤツだからなあ。
ただ、地球に居た頃から女性に対しては来るもの拒まず、モテるのは当然として求められると拒否らないタイプみたいだったので、微妙にモヤモヤはするのだけれど桜井くん本人は女性に対して何も求めて無くて、ただ優しく紳士に接して求められれば受け入れるタイプのようで、何気に女性問題拗らせてトラブルになってるフシが見当たらないのが、色んな意味ですごい。

で、その桜井くんが一番好きなのが、幼馴染のマコトなんですよね。マコトに対してのあの好き好き光線出しまくりで、マコトのこととなると顔をキラキラさせて嬉しそうにしてる桜井くん、ちょっと可愛いとすら思うくらいなんですけどw
万能で物事に対しても真面目で勤勉で人当たりも良く善良な桜井くんは、幼い頃から常に人の中の中心に居て、周りに頼られ期待され続けてきたわけですけれど、そんな中でマコトだけは桜井くんへの距離感違ったようなんですよね。友達ではあったんだけれど、寄りかかってくるようなことがなく何ともフラットな距離感で、周りと違ってマコトだけは彼に頼ってこず、むしろその突拍子もない行動で桜井くんを助けてくれる事もしばしばあったようである。
面白いことに、桜井くんの中ではマコトは地球に居た頃から「ヒーロー」だったみたいなんですよね。それはこの異世界に飛ばされてからも変わらぬどころか、その期待を上回る突拍子もない実力を見せてくれて、もう桜井くんの中でマコトの信頼度は天元突破である。
マコトが近くにいるだけでもうニッコニコな桜井くん、普段相当にストレス溜まってるんだろうか。マコトがもう癒やしみたいになってるんですけど。マコトが水の国に帰る事が決まった時の寂しそうな様子ときたら。
でも、変に引き留めようとしないあたりが彼らしくて、いじましい。
いやもうマジで良い子なんで、桜井くんには幸せになって欲しいものです。ノエル王女や横山さんのように、肩書や上っ面じゃなく桜井くんという人をちゃんと好きでいる女性もいるわけですし。

で、元は敵、というか過去の歴史から差別対象となっていて、太陽の国によって討伐された一団の神輿となっていた月の巫女フリアエ。桜井くんの捉えられ、でも本来何の罪もないのに討伐してしまった事に苦悩する桜井くんと接するうちに、案の定ツンデレしながら落とされてしまったフリアエなのだけれど、あれ? この娘って桜井くんのヒロインじゃなくて、マコトの方と絡んでくるの!?
表紙絵をようやく飾れた水の国のソフィア王女なのですが、サブタイトルがやたら物騒な文言なものだからソフィア姫闇落ちするの!? と一瞬危惧したのですが、この死を纏う亡国の巫女というのがフリアエの事だったんですね。って、このシリーズって2巻からずっとサブタイトルと表紙を飾るヒロインが一つずつズレてるんだよなあ。
ともあれ、このフリアエが桜井くんにほのかに懸想しながらも、マコトと色んな意味でガッツリと絡んできて、立場的にはソフィア姫の向こうを張るような深い間柄になってしまうんですね。深い間柄なんて言うと意味深になってしまいますけれど、契約関係になったという意味では、女神ノアとの関係と比べられるくらいにはガッツリ離れられない間柄になった、とも言えるんですよね。
別の男性に心惹かれている女性キャラがヒロイン入りって、なかなか唆るシチュエーションじゃあないですか、これ?w


現実主義勇者の王国再建記 Ⅻ ★★★☆   



【現実主義勇者の王国再建記 Ⅻ】 どぜう丸/ 冬ゆき オーバーラップ文庫

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傭兵国家ゼムから『大武術大会』への招待状を受け取ったソーマ。その大会は優勝者に「願いを叶える権利」が与えられるゼムの一大イベントであった。ソーマは国交が途絶えたゼムの招待に応じない構えであったが、元王国陸軍大将ゲオルグの娘が大会に参加すると報告が上がり!?
かつて王国の内乱で反逆者として処分されたゲオルグ。その娘が優勝して復讐を願えばゼムを率いて王国に戦争を仕掛ける可能性もある。彼女の真意を探るべくソーマはゼムへ赴くが、彼女に接触したゼム王もその思惑をはかりかねており……!? 革新的な異世界内政ファンタジー、第12巻!

いや、すっごい今更なんだけどまるっきりライオンの顔してる獣人が虎のマスク被って隠密やってるって見た目シュールですよね。カラー口絵にゲオルグの思いっきりライオンな顔が描かれてる所に、作中に黒い虎のマスクしたカゲトラが挿絵で描かれてたもんだから、ちょっと吹いてしまった。しかも、ライオン顔だと結構鬣のボリュームがすごいだけに、普段どうやって虎マスクの中にあの鬣収納してるんだろうと疑問に思ってしまって……。あの虎マスクかなりぴっちりした作りですよ? 見た目からして。もしかして鬣切っちゃったの? 散髪してスッキリしちゃってるの?
ともあれ、以前傭兵国家ゼムからの使者としてチラリと登場したカーマイン公ゲオルグの娘ミオ。内乱前にゲオルグから縁を絶たれて他国へと流れていたわけだけれど、この度ゼムの所属として出てきたわけです。叛乱者の娘という立場上、父親を討ったソーマと現在のフリードニア王国に対して思う所ありやなきや。いずれにしても、彼女を鍵として傭兵国家ゼムとの国家間の駆け引きが行われるかと思ったのですが……。あくまで、ミオ個人の考えによるフリードニアへの接触だったのか。
とは言え、ゼムの国家システムが武術大会の優勝者が国王と戦って勝ったらそいつ国王な、という強者勝者絶対主義、みたいな所があるので、ミオが優勝して国を手にしてしまえばそのままゼムとフリードニアの国家間問題へと発展しかねない状況だったわけです。
ゲオルグの反乱が、言わば国内の不満分子不穏分子を一手に集めて処分するためのゲオルグが仕掛けた策略だった事は国の中枢にいる人間はみな知っている事ですけれど、世間では未だ旧世代の叛乱者という扱いのままだったんですよね。彼の名誉回復についてはソーマも時期を見計らっていた、と言いますけれど、ミオに代表されるように関係者も決して少なくない以上、もうちょっと早く出来ていても良かったんじゃないでしょうか、と思わないでもない。現に、こうしてミオが行動に出ちゃってましたしね。彼女に野心や復仇の念、復讐心の類がなかったからまだ良かったものの、神輿として担ぐには便利な立ち位置の縁者を放置していたのは後手に回った、と言われても仕方ないような気がします。まあ今更、内乱の関係者が外からちょっかいかけてきても小揺るぎもしない程度には王国も安定していて、危機感を抱く対象ではなかった、というのもあるんでしょうし、裏方のカゲトラがそういう兆候を見逃すとも思えないので、予防措置はしていたのかもしれませんが。
でも、カゲトラって妻子の事ちゃんと様子見守っていたかというと怪しい気もしますけど。結局ミオが行動に移して姿を公に表すまで、カゲトラから妻子に関する報告がソーマの方にあがっていた様子もなかったですし。
まあミオってどう見てもアイーシャ系だったんで、放置してもよし、という考えだったのかもしれませんが。

さて、渦中におかれた傭兵国家ゼムですけれど、何気にこの国の位置って王国と帝国を挟んだ場所にあるだけに、現在王国と帝国の上層部が密に連絡を取り合う非常に仲の良い関係にある以上、ゼムが怪しい動きしても速攻で両側から潰されるだけなので、さほど怖いものじゃないんですよね。ゼムの王様は彼もかなり現実主義者の寝業師みたいですし、両国の仲が非常に良いものだと今回ゼムの国土で実現した両国首脳の会談を通じて悟ったでしょうから、よほど国際情勢が荒れない限りは自発的に地雷の上をスキップするような行動には移らないでしょう。
個人的にはマリアと対面しての、彼女と交わすことになった約束、それも口約束、が気になるところですけれど。帝国の行く末が微妙に見えないんですよね、現在。マリア陛下が健在である間はまったく問題なさそうではあるんだけど、彼女の配偶者候補に関してはさっぱり名前出てきませんし。
思考レベルと言い思想の方向性といい性格の相性といい、敢えて誰がいいかと言えばどう見てもソーマがピッタリではあるんですけど、それぞれの立場があるからなあ。帝国の帝妹将軍であるジャンヌと王国の宰相であるハクヤのいい雰囲気っぷりを見ると、本来立場上絶対に結ばれないだろう二人がどうにかなれるだけの何かが帝国と王国の間に起こりそう、などとうがってしまうのはメタから見過ぎかしら。

さて、話は東に移り、九頭竜諸国連合と王国との領海問題からの戦争を、ソーマたち王国側から仕掛けるような話になっていて、さて裏で一体なにが企まれているのか。またぞろ状況が動き出したところまで話を進めたところで次回へ続く、となっていて、この引きは相変わらず勿体ぶりますなあw



王女殿下はお怒りのようです 4.交錯する記憶 ★★★☆   



【王女殿下はお怒りのようです 4.交錯する記憶】 八ツ橋皓/凪白みと  オーバーラップ文庫

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屋敷を襲った謎の青年と黒い霧の関連を知るため、レティシエルはジークと王立図書館へ向かう。
秘書庫を訪れ、ついに黒い霧との関係がある力の正体に近づいたかと思った矢先、レティシエルは不可解なメッセージを発見し……?
なかなか答えにたどり着けない中、レティシエルの元に、公爵家の領地内で発生した暴動の報せが届く。
その中心がニコルの故郷近くと知ったレティシエルは、原因である公爵家の圧政を終わらせ、暴動を収束させるべく領地へ赴いた。
そこに現れたのは公爵家の長男・フリード。
黒い霧を操り、民草を道具と切り捨て蔑ろにするフリードを、王女殿下が断罪する――!
ドロッセルとは何者なのか。
前巻あたりから、レティシエルは自分の器となったドロッセルという少女がどのような娘だったのかに今更ながら興味を抱き、会う人によって異なるドロッセルという少女の顔に驚かされながら、ようやく彼女が決定的に変わり壊れてしまった事件に行き当たる。
第一王女の事故死。親しき人々にとってはまさに光そのものだった王女、ドロッセルにとってもかけがえのない親友であった少女の死は、多くの人の人生を捻じ曲げてしまった。ドロッセルが直接関わった訳ではないものの、近くに居ながら大切な人を助けられなかった事は聡明で優しかった少女の心を決定的に追い込んでしまう。そんなドロッセルの姿は、幼き頃にレティシエルが経験した絶望と罪悪感に重ね合わせることのできるものだった。
図らずも、自分の実家である公爵家の領地で起こった圧政による暴動騒ぎに、現地に飛んだレティシエルはその地こそが第一王女が亡くなった場所であることを知り、ドロッセルの絶望を体験することになる。
同時に、この地がかつてレティシエルが生きていた小国の在った土地の近くであり、またレティシエルという放浪の聖女が人々を救い信仰の元となっている場所だという事実も知ることになる。
また、今回の暴動の裏側には長兄フリードの愚かな暴走という側面が強いものの、その裏には暗躍する影があり、第三王子が密かに内定を進めていた怪しい集団も活動していた、という様々な要素が固まっていることが明らかになる。
今の所、ようやく見えてきた様々な事実はそれぞれが別々の話として独立していて、バラバラに色んな秘密やら真相やらが降って湧いてきて、まとまりのないまま散りばめられているような状態でちょっと混乱もしているのだけれど、それぞれが全く関係ない事かというとどうにもそうは見えないんですよね。
ナニカ一つきっかけがあれば、全部が一気に連鎖的に繋がっていき、全体像が幕が落ちるようにして見えてきそうな予感もあるんですよね。ドロッセルの中の人であるレティシエルに気づいている人物、どうやらレティシエルが生きていた時代に関係ありそうな人物も暗躍して、レティシエルに執着している様子も見えるだけに、もうちょっとで色々と見えてきそうなので次回がなかなか楽しみになってきた。

しかし、今まではドロッセルとレティシエルは全くの別人、精神が死ぬか心を封じてしまったか、いずれにしても眠ってしまったか消えてしまったドロッセルの代わりに、過去に死んだレティシエルの意識だか魂が空っぽになったドロッセルの肉体を器として目を覚ました、みたいに捉えていたのですが……。
第一王女の事故死を思い出した途端にドロッセルの記憶をも目覚ましたレティシエルは、どうにもドロッセルと別人には思えなかったんですよね。或いは、シンプルに死んだレティシエルが転生したのがドロッセルであって、一時的にドロッセルの記憶が喪失した上に前世の記憶と人格だけが浮かび上がっただけで、元々同一人物だった、という可能性も出てきたという事なのでしょうか。
このまま行くと、ドロッセルとレティシエルが混ざりあったような状態になりそうだし。明らかになってきたドロッセルという少女は、思いの外レティシエルと似ていなくもない共通点の多い人物でしたし。元々同一人物だったのなら、レティシエルが好き勝手行動してもあまり怪しまれなかったのわからなくはないんですよね。
でもそうなると、第三王子のエーデルハルトがホントのお相手、という事になっていくんだろうか。前世の旦那が今現在どうなっているのか、という疑問もあるし、そっちも気になる様相になってきた。


TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜 ★★★★★  



【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜】 Schuld/ランサネ  オーバーラップ文庫

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データ廃人(マンチ)、異世界を命がけで遊び尽くす!

「データマンチ」――それは、データ上可能であれば神殺しにさえ興じる変人。
そんな「データマンチ」だった前世を持つ少年・エーリヒは、異世界への転生時に授かったキャラビルドの権能を活用して理想の強キャラにならんと画策する。
妙に蠱惑的な幼馴染との遊戯やブラコンな妹のお世話をする中、頭を捻ってデータを隅まで舐め回し、熟練度をやりくりしながら極悪コンボを模索していくエーリヒ。
しかし彼が思うよりも早く物語(セッション)が動き出し、エーリヒは大切な者を守るため戦いに身を投じる(サイコロをふる)ことになり……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、ここに開幕!
うははは、これ相当に加筆とかしてますよね。
それでなくても、一気に読むとこの作品の凄まじい「濃厚さ」に酔っ払いそうになる。読んでても、文章内の情報密度が半端なくてそれでいて目が滑る事無くグイグイと読み込ませてくれるだけに、読み応え歯応えが尋常ではないんですわ。
お陰で満腹感満足感がまたとんでもねー事になってます。

事前に書いたピックアップの記事でも書きましたけれど、キャラビルド、ステータスやスキルの数値を貯めた熟練度から好きに振り分けられるという展開は転生モノでは珍しくもないけれど、それを生粋にして屈指のTRPGプレイヤー。人生の趣味の時間の大半をTRPGに捧げた粋人、それも和マンチなどと言われるシナリオとルールとデータ傾向を舐め尽くすように吟味して、常識にとらわれずにやらかす人種が異世界転生して自分のキャラビルドをはじめてしまったら、というTRPGを嗜む人には垂涎の作品なんですよね。
サブタイトルの「ヘンダーソン氏の福音を」とかTRPGを嗜んでる人でなかったら意味わかんないんじゃないだろうか。ちなみに私はこの作品読むまで知りませんでした。あいにくとTRPGはやった事ないもので。でも、リプレイなんかは読んでても腹抱えて笑い転げたり手に汗握ったりとメチャクチャ面白く楽しめるものが多々あるだけに、色々と追いかけたものですのでどういうモノかというのはわかっているつもりなんですけど。
ヘンダーソンというのは作中の人物でなく、TRPGというジャンルにおける、プレイヤーを全殺しするつもりしかなかったGMのシナリオに参加して、その物語を見事にきれいな形で完結させた伝説のプレイヤーであり、彼の名を元にした「ヘンダーソン・スケール」というストーリーがシナリオの本筋からどれだけ離れてしまったかを示す指標のもとになった人物だそうです。
このヘンダーソンスケールは作中でも幕間でたびたび登場し、サブストーリーの展開やシナリオの展開が完全に本来のエンディングから逸脱してしまったいわゆる「IFストーリー」を示すものとして登場します。
本巻でも「ヘンダーソンスケール 1.0」という「IFストーリー」が描かれていて、これ今後もストーリーがもしこんな風に転んだら、こんなエンディングが待っている、という風に描かれるので続刊出たらお楽しみに♪

さて、この1巻ではデータマンチであるエーリヒ、データマンチってのがどういう輩なのかはあらすじ以上に本編で熱く語られているのでそれを参照してもらうとして、そんなビルダーな彼の幼少期から少年期の田舎の農村での生活が描かれることになります。
実のところ、派手な立ち回りが要求されるイベントはラストの一幕だけだったりするのですけれど、ただ辺境の農民の四男坊であるエーリヒの日々の生活、これがまたメチャクチャ濃厚なんですよ。
というのも、世界観の設定がとてつもなく緻密なのである。ライン三重帝国というエーリヒが暮らす国において、農村部の人々がどんな風に暮らしているのかというのが風俗風習からわりとシステマティックな社会体制、統治の仕組み、子供の育ち方や教育方針など様々な観点から緻密かつ非常に面白おかしく描かれていて、エーリヒを含めた子どもたちが成長していく様子を見ているだけでもこれめちゃくちゃ面白くて読み応えあるんですよね。
エーリヒたち家族のヒト種のみならず、この三重帝国は様々な種族が混在して当たり前に共存している、というごった煮感も素晴らしく、幼馴染でこの巻のメインヒロインともなるマルギットなんか、アラクネだったりしますからね。その蜘蛛人であるアラクネですら幾つかの人種があって、マルギットは蝿取り蜘蛛のアラクネという事で小柄で俊敏に飛び回る天性の狩人、という側面があり、ある意味凄まじい観点での種族あげての合法ロリだったりします。合法? もう尋常じゃなく色っぺーんですよね、この幼女風幼馴染。二歳年上の姉さんではあるんだけれど、見た目は幼く、しかし幼い容姿とは裏腹の妖艶さと一途さの持ち主で、幼女にして既に男の狩り方を母君から教授されており、エーリヒとの関係はもう小さい頃からたまらん状態だったりします。
「ヘンダーソンスケール 1.0」でああなってしまうのも、まあ仕方ないかなあ、と思わざるを得ない!
とは言え、マルギットがエーリヒに夢中なのもよくわかるんですよ。この主人公、可愛げの塊みたいな所がありますし。まさに人生を謳歌しているというか、周りを巻き込んで楽しそうに遊んでいるわけですよ。決してこの人生をゲームだと想っているわけではなく、家族を含めて知人友人への愛情タップリですし、最強ビルドを目指すぜーと人生の目標を立てているわけですけれど決して効率厨になっていなくて、ついついその場のノリで余計なスキルやらに熟練度を消費してしまって、素敵な笑顔を浮かべながら無駄な言い訳を自分に繰り返しちゃってるところなんぞ、まあ愛嬌たっぷりなんですよ。あるある、わかるわかる、と思わず頷いちゃう欲望に流されちゃうスタイルは共感すら覚えますし。でも、子供同士の隠れんぼで隠蔽系スキルをあれこれとっちゃったりするのは大人げないぞw

今はまだ辺境の田舎から見た世界という視点からの世界観描写ですけど、その時点でこれだけ密度濃く社会の仕組みの重厚さ、巧みさ、歴史の奥深さを感じさせてくれるのですが、これが先々またエーリヒが置かれる立場から、三重帝国の国家構造や民族、都市部の社会体制や人々の暮らし、娯楽風俗なんぞがまたたっぷりと描かれていくので、もう堪能し甲斐があるのなんの。
また世界観の解説として挟まれる「TIPS」と呼称される解説文章も、これ単なる説明文じゃなくてその場面に応じた諧謔、ウィットに富んだ詞になっていて、作中の雰囲気をより弾ませ撹拌し、匂い立たせることに一役買ってるんですよね。物語を綴る上での「間」を取る作用にもなっていて、読むテンポを調節する上でも重要な役割を負っているようにも見えます。この「TIPS」の使い方も何気にセンスの塊に思えるんだよなあ。思わず、ニヤリとさせられることも度々ですし。

いやあ、面白かった。この濃厚さは物語の世界の中に首まで浸かって思う存分スイミングしているような満足感を与えてくれます。掘れば掘るほど、掘っても掘っても宝がザクザク出てくるような、それがいつまでも終わらないような濃密さ。まだ村から旅立ちすらしていないにも関わらず、並のシリーズなら第一部完、までやっとこ読み切ったような読み応えでありました。うん、ウェブ版既読済みで、書籍化なる前からイチオシの作品だったのですけれど、こうして一気に読むとまた密度の濃さを改めて思い知らされた感があります。読んでるあいだじゅう、楽しい楽しい時間だった。
まだまだ、この世界を、エーリヒの愉快な旅路を堪能し続けたいと思わせてくれる作品でした。
まさに、至福の時間でしたよ〜。最高♪

アガートラムは蒼穹を撃つ 1.三日月学園機関甲冑部の軌跡 ★★★☆   



【アガートラムは蒼穹を撃つ 1.三日月学園機関甲冑部の軌跡】 山口隼/たかまる  オーバーラップ文庫

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空を飛ぶ鎧“機関甲冑”の開発により、簡単に空を楽しめる世界。そんな機関甲冑を身に纏って空で競い合う、流行のスポーツ“機関甲冑競技”。高校2年生のHQ・松原優が、幼なじみでプレイヤーの少女・高坂凪と挑んだ全国大会は準優勝に終わった。雪辱を果たすため、今度こそ優勝を誓う優たち。しかし、競技人数の変更によって部員不足となり、部は大会出場すら困難な状況に陥ってしまう。一度は辞めたプレイヤー復帰の選択を迫られた優は、前回覇者であるフェリシアたちとも競い合いながら、再び全国の空を目指す―!蒼穹に憧れた高校生たちの織り成す青春ストーリーが幕を開ける!第6回オーバーラップ文庫大賞・銀賞。
ロボットもの、なんだけれど大きさも2メートルから2.5メートルくらいと本当に小さいので着込むという感覚で甲冑というのは正しい表現なのでしょう。
それに戦闘シーン、空中戦の様相を見ているとロボットものというよりも戦闘機のドッグファイトを連想させられるんですよね。より「飛ぶ」という側面に力が入った描写ですし、人型の印象があまりなくて戦闘シーンをイメージするのが結構難しかった。頭の中に浮かんでこないというか。
いっそ、馬上槍試合(ジョスト)的なものだと思えばいいんだろうか。一瞬の交錯の際の攻防がメインですし。かと言って一直線にぶつかり合うのではなく、広い空の三次元を十分に使い、速度をいかして相手の認識外から一気に詰め寄るのはまさに航空戦のドッグファイト。もうちょっと戦闘シーンのイメージが湧きやすかったらもっと熱くなれたかもしれない。
一度中学で選手として退き、HQ……試合を管制して選手に指示を飛ばす司令の役を担っていた主人公優が、大会規定変更から大会参加のための選手不足に陥ってしまった状況から現役復帰することに、という展開なのだけれど。
かつての名選手が復活して、というわけではなくブランクもあり元々普通に優秀な選手というくらいで壁にもぶち当たっていたレベルなので、復帰したとしてもまず元の技量を取り戻すのに一苦労、センスを取り戻してもそこから伸び悩み、と決して優れた選手とは言えないんですよね。
そもそも、中学の時に一度選手としての自分に見切りをつけてしまった身。潔く見切ったというよりも、心折れてしまったという方が正確な結末を一度迎えていたのである。その折れた心はまだ繋がっていなくて、一番踏ん張らないといけない場面で逃げ腰になってしまう、諦めてしまうくせがまとわりついているのである。そういう悪癖が露骨に露呈してたら対処もしやすかったのかもしれないけれど、この主人公って理屈屋で理論家、ロジック重視の人間なんですよね。だもんだから、一瞬の判断における退きの選択にも、やたらと完璧な理論武装を自然としてしまうのである。冷静に考え分析して判断した結果、退く事にしたのだ、負けてもいい場面だったのだ、と踏ん張れずに諦めて逃げてしまった事について上手いこと言い訳して理由づけして、糊塗してしまう。それも無意識に。だから、自覚もなく薄々気づいてはいるのだけれど直視しなくて済むだけの言い訳を用意できてしまう。それが彼の迷走を長引かせるのである。
そう、イイわけではあっても筋は通っているわけだ。一面において正しいのである。だから、指摘され否応なく自分の心がまだ折れ続けていることに気付かされても、なかなかそれを克服できない。気合と根性は十分で、憧れと目標はちゃんと目の前にあり、それに手を届かせるための努力は欠かさず、必死に身も心もイジメるのだけれど……なかなかそう簡単に一度ハマってしまった陥穽を克服するのって出来ないんですよね。
思考力分析力に優れていて戦闘中でも様々な戦術を練り、状況を考察し可能性を走査していく。頭の良さを現場で活かせる人材である事は確かでHQとしても本当に優れているのだけれど、そのひたすら考える深く思考するというスタイルが、彼の場合戦いにおける集中力を阻害していたんじゃないでしょうかね。秋子を部活に勧誘したさいの勝負で見せたあのギリギリでの局面での集中力はまさしく彼の武器であっただけに、彼の思考が逆に目の前のことに意識散漫になってると思わせられる場面も多かった。なかなか難しいもんですねえ。
そんでもって、理論家であっても感情的にはクールと真逆の激情家な面もある主人公なだけに、鬱屈はわりと用意に表に出る。そうなると、仲間同士の関係も不用意な衝突が発生する。それが幼馴染相手となると、そりゃもう拗れる拗れる。なまじ何でも曝けあってきたと信じるもの同士。一緒に暮らすて気楽に部屋に入り浸るほど、もうビタビタの間柄だからこそ、隠し事したり相手への過剰な感情を持て余して自然に振る舞えなくなると、そりゃもう酷いことになる。
これも幼馴染という関係故なのだろう。でも、そんな拗れた関係を簡単に修復できてしまうのもまた幼馴染という特別な関係ゆえなんですよね。自身の不調、停滞ごと乗り越え克服し、自分をまっさらにして新しく出来るのも、心から信頼して過去から未来までずっと一緒に居続けるという確信があり、望みがある比翼の関係だからこそ、一緒に飛べる空がある。幼馴染万歳三唱、だわねこれ。

現実主義勇者の王国再建記 Ⅺ ★★★★   



【現実主義勇者の王国再建記 Ⅺ】 どぜう丸/ 冬ゆき オーバーラップ文庫

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国民の祝福を受けて戴冠式と婚礼の儀を終えたソーマ―その義妹であるトモエは今日、王立アカデミーの入学式へ向かっていた。正門をくぐり、学園生活の第一歩を踏み出したトモエを待ち受けていたのは―「っ!ねぇ、あれってもしかしてトモエ様じゃない!?」「元難民でありながら才を買われて前国王夫妻の養女に迎えられた…」「それってとんでもなく有能ってことよね」唯才令以降、階級主義から実力主義へ変わりゆく王立アカデミー。ソーマに直々に才を見抜かれたトモエは、多くの生徒達から注目を浴びて…!?革新的な異世界内政ファンタジー、第11巻!

この巻こそ、トモエちゃんが表紙じゃないのか、と思う所だけれど7巻ですでに表紙飾っているので再登場とは行かなかったのか。現状、二回表紙を飾っているのはリーシアだけですしねえ。
でも、それならヴェルザちゃんの方でも良かったと思うのだけれど。ルーシー、今回からのぽっと出でしたし。というか、この子ロロアのリスペクトはいいんだけれど自分からキャラ被せに行くのはどうなんだろう。ホントに被っちゃってるしw
ヴェルザちゃん、最初ちょっと混乱したのだけれどハルに助けられたダークエルフの子だったんですね。ってかキャラ全然違うじゃん! というのも結構大人びていて身長も高めだしダークエルフらしい身体能力の高さもあって、トモエちゃんの護衛役としてしっかりとした頼もしいお姉さん風になっていたものですから、いや誰!?と。
まあ、速攻でボロ出まくってたのですけどね。
同世代の子供たちの中に入ったら与えられた役もあって相応の振る舞いが出るものです。家族の前で子供然としていても、友達の前でもキャピキャピ子供子供してられないですしね、子供としても。
まあ、速攻で甘味の前でユルユルになってましたけど!
言うてしまえばトモエちゃんだって、年上のお兄さんお姉さんたちの前での振る舞いと、ユリガやイチハの前で見せ始めた年相応の顔は全然違いましたからね。
一方でトモエたちの前で打ち解けた顔を見せながらも、王女として仮想敵国に居るという意識を常に持っているユリガはそんなに態度や振る舞いは変わっていないだけに、彼女がまた違う一面側面を見せ始めたら、それは本格的にデレはじめた証左となるのかもしれません。

物語としては戴冠式を済ませて、次のシークエンスに向かう前の準備回とも言える所だったのですが、その分世界観の核心にガンガンと踏み込んでいった印象です。イチハくんの見せ場となる魔物研究のシンポジウムですけれど、以前のリザードマンの件などから生命としていびつであるのは伝わっていたのですが、ここまで徹底してキメラっぽいとは思わなかった。
これ、魔族と魔物って知性の有無どころではなく全く違う存在なんじゃなかろうか。ソーマが抱いた印象から見ても、獣人やエルフ側でしょうし。というか、魔物の存在自体想定外のイレギュラーという可能性も強いんだよなあ。
今の所、どんどんと魔族と争う必然性は状況が紐解かれるにつれて一つ一つ潰されていってる感じなので、もし戦争になるにしても種族の存亡を賭けた生存競争ではなくあくまで通常の国家同士の戦争紛争の範疇に収まりそうなのは安心材料なのでしょう。少なくとも、話が通じる相手ならソーマの分野でありますし、直接槍を交える接触点の遥か外側で誘導しまとめてしまえる、盤そのものを作ってしまえる為政者ですからね、ソーマは。
その意味でも、今回のおばけ祭り。魔族と接触する前に異形としての見た目に親しみを感じるように印象を刷り込む、一般庶民の感性のキャパシティを広げる狙いのソフトパワーによるアプローチは下準備にしても面白いんですよね。こういうところ、実にこの作品らしくて好きですわー。

しかし、今回は話が落ち着いていて国内の治世にスポットを当てていたせいか、余計にソーマの妃である嫁さんたち四人の働きっぷりがよく見えた気がします。というか、この奥さんたち奥に引っ込まずにそれぞれ仕事受け持って外に出て働いているので、なんか四人も奥さんいるにも関わらず共働き夫婦感が出ていてなんだか面白いです。リーシアとソーマがよく子供たち両親などに預けてあっちこっち出向いては、帰ってきてちゃんと子供の面倒見ている、という行動も共働き夫婦っぽいのでしょうけど。
それに、嫁さんみんなが外に出て自立して自分の仕事持ってるせいか、妃同士が仲が良くても自然発生的に生じてしまう閨閥争い、争いまで行かずともせめぎ合いみたいなのが一切見当たらないのも、この王族一家の面白いところですねえ。

異世界迷宮の最深部を目指そう 13 ★★★★☆   



【異世界迷宮の最深部を目指そう 13】 割内タリサ/ 鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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ジークを主とする騎士、ライナー・ヘルヴィルシャイン。
それが僕の名前だ。
迷宮から一年の時を経て帰還し、再びフーズヤーズの騎士に戻った僕は、ラスティアラの密命を受け、任務に励んでいた。
内容は魔石人間に流れる『ティアラ様の血』の回収。その任務にも目処がつき、あとは『再誕』の儀を待つばかり。
だが、そんな僕の前にティアラを名乗る人物が現れる。
彼女は『ティアラ様の血』を全て僕に受け取って欲しいと言い始め――。
「君に『異世界迷宮』の『最深部』を目指して欲しい」
このフーズヤーズ十一番十字路から、僕は『プロローグ』へと歩み出す。

これは酷い!

これってよくまあ使われる言葉だけれど、今回これほどピッタリの言葉はないでしょうよ。
いやホントにもうさ、一体何を見せられたんだろうと天を仰いでしまった。まあこれを今回一番しみじみとこぼしたいのはライナー君だろうけどさ。でも君、自業自得だぜ。散々、ジークやラスティアラのこと愚痴ってたけど、君だってそういう人たちをわざわざ主に選んで命賭けちゃってるんだから大概だよ?
というわけで、ライナーくん。千年越しの厄介事にさらにラスティアラがややこしく拗らせて引っ掻き回しているトラブルを密かに収集解決してまわる後始末役を拝命する、のまき。
ラスティアラのやつ、ジークの事振るわ戦線離脱して引っ籠ろうとするわ、なにかよそよそしさも感じられる態度は深刻な問題とか体質体調の不調を抱えているとか、何がしかの予言とか悪い予測が立ってしまって奔走してるとか自分だけで抱え込んでなんとかしようとしているのか、とか色々心配してたのに。この女……アホだった。ただのアホだった。加えて、完全に駄目女だ。スノウとは別のベクトルで同じくらいダメ人間だ。
ほんともうなにやってんの、この娘!? なにやってんの!?
うわーー、もう面倒くせーー! 話を聞けーー!! なまじ昔のマリアとかみたいにヤベえ感じ、薄氷を踏むようや危うさがなくてガンガン殴っても応えなさそうな頑丈そうな分、コメディタッチになってしまってるんだけれど、なんだかんだとやらかし切ってしまうとえらいことになってしまうのは変わらないどころか、国際紛争とか世界の危機とかジーク爆発みたいなところまで発展しかねない顛末になってしまうだけに、おバカが爆弾の導火線に火をつけて騒いでるようにしかみえない、とにかくヤバいことになっているのが、なんかもう脱力してしまう酷さなんですよね。
そういうヤバい話を、こんなアホなことでやらかすなー!
まあね、うん、この物語のヒロインは総じて話まったく聞かないんですけどね。ほんと、馬耳東風というかスルーというか都合の悪いことは聞こえない作りになっているというか。何気にヒロインだけじゃない気もするというか、登場人物おおむねそんな感じなのは、アイド先生とか振り返ってもそうだったので、もう誰も彼もが重い! で片がつく話なのかもしれないけど。
今回またぞろ話ややこしくした魔石人間の女の子も、重すぎるの! なんでそういう事しちゃうの!? そこまで変に思いきれるのなら、普通に頑張りなさいよ! 相方の男の子、完全に置いてけぼりじゃないか。相談しろ! 話を聞いてもらえ、それ以前に相手のこと考えてあげて!

その点、ライナーくんは昔こそこいつも話聞かないやつだったけど、今は話は早くて行動も早くて決断も早くて、と三拍子揃った思い切りの良さで頼もしいったらありゃしない。ティアラ様もよい人材を見つけたものである。ティアラ様的には時間もなかったことだしウダウダウクズクズ迷い悩まれてる暇なかったところに、パッパッと決断してくれる信頼できる頼もしい騎士様の登場ですから、諸手を挙げての万歳三唱だったんじゃないだろうか。わりと、騙しやすいし騙されたことに対してネチネチイジけるような子でもないし。
ほんと、なんでこんなイイ子がラスティアラとジークに仕えてくれてるんでしょうね。だめな子ほど可愛いのだろうか。ライナーくん、完全にラスティアラとジークの保護者扱いだもんな、これ。
ジークとラスティアラも、ライナーくんに頼りすぎである。

まあラスティアラに増して酷かったのが、ジークなんですけどね。あの登場シーンにはひっくり返りましたがな! ガチでひっくり返りましたがな! なんで来る! そのタイミングで来る!?
すげえ勢いで、一生懸命ライナーが用意したお膳立てを出会い頭に蹴っ飛ばしてひっくり返して台無しにして、おまけに自分でひっかぶってしまうという、ほんと何しにきたの!?
ここもう神業みたいな場面でしたよ。ジーク出現してからのあれやこれやはもう伝説級のシッチャカメッチャカだったんじゃないだろうか。あれほどガチで「自分は何を見せられているんだろうか」と真剣に思ったのは初めてだよ。この台詞ってこういう心境の時に使うのか、と変に感心してしまいましたがな。
表紙絵の二人、ジークとラスティアラのこの神秘的とすら言える睦み合いに見合う感動的なシーンが見られるのかと思ったら。

これだよ!

このありさまだよ!

いやわりとこのイラストなで合ってるのかもしれないし、おおむねこんな感じの構図の話な気もするんだけど……おおぅ。
本当に、これは酷い。見るたびに、思わず顔を覆ってしまいたくなる顛末でありました。
でも終わってみると、最良の形になっているというのはジーク、ズルいよねえ。主人公だよねえ、これが主人公のパワーというものか。運命力というものか、引きの強さというものか。引きすぎて、本人もエライ目に遭いまくって被害がえらいことになってるけど。
もう無茶苦茶になってしまったのだけれど、それでもライナーとティアラ様が目指した最善が、大混乱の挙げ句に最良の結果に落ち着いてしまった、というわけの分からなさがなんかもう、笑ってしまうのだけれどすごいなあ、と惚れ惚れしてしまう展開の流れで。
うん、いやすげえわ。
わりと深刻に拗れきってた状況と拗らせきっていたラスティアラの心が綺麗サッパリうまく片付いちゃったんですもんね。懸念だったラスティアラ関連の話、おおむね着陸できちゃったわけですし。
ほんと、なんで無事着陸できたんだこれ? 不思議だ、謎だ、意味わからん!? アクロバティックすぎて、一部始終見てたのにわからん!(笑
とにかく凄かった。

しかしこれ、なんぞ妹・陽滝がすげえラスボス的な空気出してきてるんですけど。そうなのか? 最後の最後に一番とびっきりにヤバい、中身ヤバいヒロインが目を覚ますのを待っているという事なんだろうか。うん、ヤバいね。

シリーズ感想

死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く 4 ★★★★   



【死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く 4】 彩峰舞人/シエラ オーバーラップ文庫

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中央戦線でアースベルト帝国軍と対峙し、窮地に陥るファーネスト王国第二軍。王国は第一軍、さらにはオリビアが率いる別働隊の救援によって帝国軍を退けることに成功していた。しかし、未だ劣勢を覆せずにいる王国を追い詰めるかの如く、南の雄・サザーランド都市国家連合が動き出したとの凶報が届く―。その折、先の戦功によってオリビアは少将への昇進を果たす。加えて任ぜられたのは、新兵揃いの第八軍総司令官。そんな第八軍の初陣は、王国の南部に迫る脅威、サザーランド都市国家連合の迎撃任務で―!?王国軍“最強の駒”として、常識知らずの無垢な少女が戦場を駆ける、第四幕!

ついに1兵士の叩き上げから十代で将軍位を頂き、新生第八軍を率いる事になったオリビア。この昇進が国王の強権的後押しとかじゃなくて、軍部の将軍たちの推薦でというあたりが興味深い。
というかファーネスト王国軍って、少なくとも今生き残ってる軍司令官たちはみんな優秀なんですよね。それがこうも一方的に帝国に押し込まれてしまったのは国王の優柔不断に振り回された結果なのを見ると、トップの判断がどれだけ重要なのかがよく分かるというもの。
オリビアの活躍によって絶体絶命のほぼ詰んだ状態から何とか息を吹き返すことの出来た王国だけど、あの国王が頭に居る限りあんまり見通し良くないんだよなあ。まあ優柔不断なだけで無茶苦茶なことするわけではないだけマシなのかもしれないけれど。今は軍の統帥権もコルネリアス将軍に預けられて軍の意志統一は図られてるわけですし。ただ、神国メキアの同盟要請やサザーランド都市国家連合の蠢動など外交交渉に重きが置かれる状況になると軍の方は口出しできないし、国王の軽挙がもろに影響してしまうだけに不安がたっぷりすぎる。
後継者については語られたこともないですし、第六軍司令官のサーラ王女は第四王女でどうも政治中枢からは距離を置いているみたいだなあ。
メキアを統べるソフィティーアが王国チョロい、オリビアとかすぐに引き抜けるわー、とか思うのも無理ないのかもしれない。ただ、オリビアが王国に所属している理由ってのは想像の埒外だろうし、今のオリビアは軍の人たちやアシュトン、クラウディアといった仲間たち、部下たちに強い愛着を抱いているようだし、普通の引き抜き条件じゃあ全然引っ張れなさそうなので、オリビアの自由気ままな言動にどう振り回され、振られたときにどんな顔をするのか楽しみですらある。
そんな振り回す側のオリビアですけれど、来た当初には何言われても馬耳東風……いや、結構叱られたら言うとおりにしてたので素直に聞いていたと言えば聞いていたのですが、あんまり応える様子もなく叱った方が頭抱えているような状態だったのですが……。
最近はお説教モードのオットー副官や激オコモードのクラウディアには全く頭あがらなくなってしまっているようで。特に昇進して階級逆転したオットー副官には、偉そうにふんぞり返って調子に乗ったはいいものの、慇懃ちゃんと階級が下らしく丁寧な物言いながら、やっぱり容赦なくお説教でフルボッコにされて、這々の体で逃げ出すはめに。
クラウディアにも、踏んではいけない地雷や超えてはいけないラインや関わってはいけないトランス状態なんかを察知出来るようになって、やばくなったらそそくさと逃げる知恵をつけましたし、エリスの好き好き攻撃の変態性にはドン引きしたり、とオリビアもそろそろ人間の恐ろしさというものがわかってきたようで。
なんで敵じゃなくて、味方や仲間や友人からばかり教わるはめになっているかは不思議ですけど。相変わらず敵相手には無敵無双なのですが。
ともあれ、将帥にまで昇進し一軍を率いるようになっても、場の空気を読まない自由人さは相変わらずであり、そんなフリーダムさをパウル将軍やコルネリアス将軍に愛され孫のように可愛がられているのがこの子のカリスマなのでしょう。
おじいちゃんのみならず、老若男女問わず好かれてますもんねえ。オットー副官みたいな規律に厳しい人ですら、お説教は欠かさないですけど能力を認めている以上にオリビアという人を好ましく思っているからこそ、小言を欠かさないという感じですし、クラウディアがあっちふらふらこっちふらふらして落ち着かないオリビアの世話焼きに終始してるのも、その際立った強さ美しさに魅せられているのもあるけれど、あくまで導入であってこの子は放っておけないという思いからでしょうし。
死神呼ばわりされて他国からは畏怖されているオリビアで、実際浮世離れしている以上に人間からメンタルがズレている人外めいた化け物じみたところがあるのですけれど、排斥でも利用でもなく上官同僚部下たちから愛され好かれ慈しまれているというのが、オリビアに血生臭さに付きまとう仄暗さ陰惨さを感じさせない要因なのでしょう。

しかし、今回は他国の動向もメキアやサザーランドなど内実とともに描かれて、王国の一方的な敗勢がひっくり返った影響が大陸全土に広がっている感があり、時代が動き出したうねりを感じさせる展開でありました。
本作って、小国でも軍司令官はだいたい優秀なのが揃っているので、戦争パートに見応えあって面白いんですよねえ。サザーランド都市国家連合から攻めてきたノーザン=ペルシラ軍のアーサー重銀将なんかは情報収集怠ってたり楽観的な思い込みで軍を進めてしまったり、と凡将の誹りは免れないかもしれないですけど、本来はそこまで無能な将軍ではなかったみたいですしね。まあ見事にオリビア、いやこの会戦では軍師アシュトンの噛ませになってしまいましたが。アシュトンもクラウディアも、オリビアに伴ってわけのわからんレベルの昇進を果たしてしまっているのですけど、それに見合う実力を魅せているのが頼もしい限り。ってか、クラウディア前からアシュトンの事気にしてたけれど、周りの人たちが気づいて生暖かく見守るくらいにはバレバレになってるのかー。というか、クラウディア自身も自覚なさそうだけど、この二人は微笑ましいので上手いこといってほしいなあ。

面白いのは、メキアが味方側として参戦しそうな件もだけれど、帝国サイドでも単なる敵役という風情ではない描写がされてるところなんですよね。特に蒼の騎士団の団長のフェリックスはもうひとりの主人公なんじゃないか、と思えてしまうほど周囲の人間含めて興味深い動向を見せていますし。
やっぱり、死神の力を密かに借りて怪しい動きを見せている帝国宰相が鍵になるのかしら。

次回はついに王国の総力を結集した反攻作戦の開始なので、戦場描写もダイナミックになるはず。楽しみ楽しみ。

シリーズ感想

現実主義勇者の王国再建記 10 ★★★☆   



【現実主義勇者の王国再建記 10】 どぜう丸/冬ゆき オーバーラップ文庫

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「今日この日より、私はこのフリードニア王国の正式な国王となる」
東方諸国連合から帰還して一息ついたソーマに、暫定国王から真の国王になるための戴冠式が迫っていた。日を同じくしてソーマと婚約者たちの婚礼の儀が執り行われることで、王都はかつてない活気を帯び始め―!?一方でソーマは自身の婚礼を機に、臣下にも結婚式を挙げるよう勧めていた。既に結婚を決めている者、夫婦になる覚悟ができていない者、自身の恋心に気づいていない者―それぞれの事情を抱える臣下をソーマは憂慮していて…!?革新的な異世界内政ファンタジー、第10巻!

ハルくん、思いっきりマリッジブルーじゃないか。フウガ・ハーンの覇者としての威風に戦士として惹かれそうになったのをまだ引きずっているのかと思ったら、既婚者諸氏から単に嫁さん貰うプレッシャーにビビってるだけ、と否定されてしまうハルくん。若いんだから仕方ないよねえ、男の子はナイーブなのさ。その辺、既にソーマはクリアしてしまっているので友とは言え同じ結婚前の男同士、肩組んで酒飲みながら不安と不満と愚痴こぼし合う、というわけには行かないのが若干寂しい。
同世代じゃなくて、既婚者のおっさんたちにアドバイスもらって回るあたりが、ハルくん何だかんだと優等生なんだと思うよ。
というわけで、ソーマの正式な国王即位と正妃側妃候補者たち五人との結婚式に合わせて、麾下のカップルたちも一斉に結婚する運びに。何だかんだと同時に結婚できるくらいに若い世代に重臣やその候補たちが揃っているというのは、国の未来の明るさを感じさせるものじゃないですか。かと言って、年嵩のベテランが払底しているのかというとちゃんとしっかりいい歳した大人どもも現役で頑張ってくれているわけですし。
とはいえ、ハルのように結婚前に不安定になってウロウロさまよいだす奴もいれば、なかなか踏ん切りつかない所もあり、そもそも自分の恋愛感情に気づかないまま傍に侍っているメイド長みたいな人も居て、結婚にこぎつけるまで紆余曲折あるのでした。
こうして一組一組丁寧に結婚に至るまでに生じているトラブルや問題の解決、感情的な行き違いの調整なんかを描いてくれるというのは良かったです。それぞれに人生があり、今その転機を迎えているというのを実感とともに描いてくれると、それだけキャラクターに愛着が湧くというもの。ただでさえ登場人物が多いのですから、雑に扱ってしまうとすぐに物語の進行の中に埋もれてしまい兼ねないですし。
その点、この作品はひとりひとりの存在感が薄れないんですよね。それだけ、細部に至るまで丁寧に描いてくれている、という事なのだと思いますよ。早速、ソーマとリーシアの間に生まれた双子の赤ちゃんも個性が出だしていますし。

そう言えばユリウスくんもしっかりティア姫と結婚して国を継いだのか。あそこも東方諸国連合の一角、しかも魔王領に隣接している北側となると、国内の統一を終了し魔王領への領土拡大政策に打って出たフウガの脅威に真っ先に晒されている、ということになるんだよなあ。一番危ないポディションだけれど、どうするんだろう。既にソーマと密接に情報のやり取りをしていて、もう完全に盟友の立ち位置だと思うんだけど、そこ。


番外編の先代王妃のエリシャの中編が、ソーマが召喚されるまでの国情の危うさを肌で感じられる内容でなかなか面白かった。エリシャ様も、またえらい能力を持っていたお陰で内実は壮絶な人生を歩んできたんですねえ。そうしてようやく手に入れた平和な日常と愛する夫。それもまた、自分以外の王族が全滅してしまったために国を継ぐはめになり、さらなる苦難の道を歩み始めることになる。
今となっては安定した大国となっているフリードニア王国だけれど、ソーマが改革するまではどれほどやばい国だったかよく分かる。というか、先代とエリシャさまはよくまあこれを維持してきたものだと思うし、ゲオルグ将軍がどうしてあんな自分を犠牲にする暴挙に打って出たのかも、彼が経験してきた内乱の酷さと親友である先代国王陛下アルベルトとの友情を思うと、わかってしまうんですよねえ。
何だかんだと、リーシアの子供の誕生と結婚を祝って、アルベルトと酒を酌み交わす事が出来る今はようやくたどり着いたハッピーエンドの向こう側なんだろうなあ……ゲオルグ将軍、娘さんの件が片手落ちではあるんだろうけど。
しかしエリシャさまの能力、死に瀕してパラレルワールドの自分に記憶を送る能力、なのかと思ったら、正確には違うのかー。記憶の様子からして大半は実際に死んじゃってるんだろうけれど、そうかー、生きてその先を続けているケースもあるというのがわかったのは、決して今のエリシャさまが自分や国の屍の上にたどり着いたわけじゃない、という意味でも救いになるのか。まあ、受け取った側のエリシャさまには関知出来ないことなだけに、なんとも言えないのだけれど。生き残ったエリシャさまは、さらに強く生きれるだろうなあ、これ。



 
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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