徒然雑記

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王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~ ★★★   



【王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~】  yocco/純粋 カドカワBOOKS

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ハズレ職だけど家族や精霊に支えられ、ほのぼのモノづくり生活!

ハズレ職を理由に家を追い出され、孤独に生を終えた少女は、子爵家の次女・デイジーとして転生する。
だが、今世の職業もハズレの「錬金術師」。怯えるも、今世で待っていたのは家族からの温かい言葉と、真新しい錬金道具!
しかも、希少な「鑑定」を持つデイジーにとって、実は天職で……!?

国家相手にポーションを売ったり、精霊の加護で楽々素材が集まったり、たまにはパンを作ってのんびりしたり……。

チートな錬金術師の明るく楽しい毎日が始まります!

前世で家族から望まれぬ職業を神から授かってしまい、家族から捨てられ病で寂しく孤独にこの世を去ってしまった主人公。生まれ変わっても、前世の記憶があるからこそ、その時のトラウマが彼女を怯えさせていたのも無理ない事なのでしょう。
それが、今世でも同じように望まれた魔術師ではなく、錬金術師というハズレと言われている職業を授かってしまったなら、なおさら前世の恐怖が蘇ってきてもおかしくないはず。
魔術師の家系であるプレスラリア子爵家は、宮廷魔術師を排出する魔道の大家でもあり、一族はみんな魔術師の職業を受けていた中での、全く別の職業ですからね。
さらに錬金術師という職業は、過去には多大な業績が残っているものの、誰もそれを引き継いでおらず、今いる錬金術師はせいぜいが低品質のまともに使えないポーションを作るくらいで、一般にろくでもないハズレ職と見做されているらしい。
それにも関わらず、怯え悲しんで部屋に閉じ籠もってしまった娘を普通に心配して、傷ついただろう彼女のことを絶対守ってやるのだ、と両親が決意するあたりはまだ、親として当然のこと(その当然を出来ない貴族も多いのでしょうけれど)、としてそれだけではなく、デイジーが就いた錬金術師という職業そのものも否定せずに、デイジーが望んだからではありますけれど、娘が錬金術師として学ぶための教材をかき集めてきて、彼女が自分の職業を誇れるようになるための環境を整えてあげようとした、というのは魔術師という別系統の大家であるからこそ、そこにこだわらない柔軟性はお父様尊敬できる人だなあ、と思う所でありました。
デイジーとしても、前世とは裏腹の家族の厚い愛情はトラウマを払拭する温かいものだったでしょう。嬉しかったでしょうね。それどころか、錬金術師として大成するために手厚い援助までしてくれて、とやる気MAXになるのも無理からぬこと。高価な道具類も揃えてもらい、古い錬金術の本なども手に入る限り入手してもらったわけですから。

しかし、デイジーに鑑定という余人にない精密というか解説付き測定方法が備わっていたからとはいえ、錬金術初心者向けの本を読んで作れる程度の普通のポーションも、現在の錬金術師は作れていなかったって、どれだけ他の錬金術師は不勉強で怠け者で不見識だったんだろう、と首をひねってしまいます。
肝心の錬金術も、蒸留水を作ってそこに草をみじん切りにして容器に放り込んで、加熱するだけ、というのが基本ベースなんですよね……小学生の理科実験でしょうか?
沸騰するかしないかの瀬戸際を見極めて火力調整しつつ、数時間ほど温めるだけで素材から抽出できるエキスが、高品質のポーションとなるという……なんだろう、このコストのわりに得られるリターンの破格さは。部位欠損の回復までできるポーションが水に漬けて温めるだけで出来るって、簡単すぎないですかね!? これなら、鑑定なくても普通に試行錯誤してたら易易と出来るレベルに見えるんだけれど。もうちょっとこう……錬金術というからには高度なそれを見せてほしかった気がします。繰り返しになりますけれど、これなら小学校の理科室でできそうw

錬金術の内容はともあれ、両親の手助けもあり、幼い時分にもう将来の夢を描いてそれに邁進できる、というのは幸せな人生でありましょう。錬金術のアトリエを作って、そこでお店をやるんだ♪ とだけいうと、子供の夢のお話そのものなのですけれど、彼女は既にポーションを含めて、この国にはないパンをはじめとした食べ物を作って国王一家に献上したり、モンスターとの戦いでポーションを配り歩いて後方支援で実績をあげたり、と功績をあげてるわけで、夢物語じゃないんですよね。
幼女が戦場に勝手に入ってきて、ポーションを配り歩くとかちょっとどうかしてる状況だとも思いますけれどw

デイジーはまだ年齢二桁になる前に、献上品などで得た収入を家で貯蓄してくれていたものを使って、早々にお店を建てて独立。他の子供達、デイジーの兄や姉たちも学校の寮に入ることになり、一気に幼い子供達が手元から離れていき、寂しそうなパパさんの姿がちょっと沁みるシーンでした。
まだ年齢でいったら小学生くらいだろう子供達が、みんな家を出ていっちゃうって親としては寂しいどころじゃないだろうなあ。いくらなんでも早すぎて、若干かわいそうになってしまった。子供達に深い愛情を注ぐことを厭わない両親なだけに、なおさらに。
こうなっては、もっとどんどん子供を作って寂しくないようにするしかないよね♪

 


サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと ★★★★   



【サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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奇跡に詠唱は要らない――気弱で臆病だけど最強な魔女の物語、書籍で新生!

〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレット。無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師で、伝説の黒竜を一人で退けた若き英雄。
だがその本性は――超がつく人見知り!? 無詠唱魔術を練習したのも人前で喋らなくて良いようにするためだった。
才能に無自覚なまま“七賢人”に選ばれてしまったモニカは、第二王子を護衛する極秘任務を押しつけられ……?
気弱で臆病だけど最強。引きこもり天才魔女が正体を隠し、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快ファンタジー!

コミュ障ッ!! いやもう筆舌に尽くしがたいコミュ障ッ!!
ってかこれもう対人恐怖症の域じゃないですか? 人見知りとかいう段階じゃないんですけど。人混みとかで死んじゃいそうなんですけど!?
人見知りとか内気とかコミュ障を標榜するキャラクターというのは珍しくないですけど、ここまでガチに他人とコミュニケーション取れないレベルで怯えてキョドってアバババ、となってるキャラはそうそういないと思いますよ。だって、コミュできないもん! それが況してや主人公て!
これは同じ七賢人のルイス氏のあのパワハラ紛いの上からガンガン命じて叱って怒って、というのがある意味正解なのかもしれない。やりすぎるとストレスで死んじゃいそうだけど。
何かと問題はあるけれど実は最強、というキャラクターは大体能力を発揮するときはキリッとなるものなんですけど、モニカの場合はそれすらもないですからね。
世界で唯一無詠唱魔法を使えるようになった、というのも人前でマトモに喋れないから、喋らなくていいように、という理由があるように、キョドって狼狽えている時でも魔術使えるようしてるだけで、魔術使うときだけ冷静になるとか意識が切り替わる、という事もありません。ひたすら、アババババとなりながら魔術使ってます、この娘。
しかも、無詠唱なものだからナニカ起こってもこの娘が魔術使っているとは一切疑われないし、本人は本気で怯えてビクついているのも確かなので、確かに完璧なサイレントだなあ、これ。

こんな娘を、人が一杯居て他人と嫌でもコミュニケーションを取らなければならない学園に放り込んで、さらに王子の護衛だか監視だかをやれ、と命じて放り込むルイス氏、ガチ鬼畜である。わりと真面目にモニカのストレス死を望んでるんじゃないだろうか。
とはいえ、モニカの実力を一番理解しているのも同僚であり同期でもある彼なわけで、本人の臆病な性格をして諸共しない、そんな状態ですらしっかりと成果をあげてしまう、結果を伴ってしまうモニカのスペックの高さ、能力の際立ちを、ルイス氏が一番わかってるんですねえ、これ。
ルイス氏自身は本気で不本意みたいですけれど。

というわけで、同僚に無茶振りされて無理やり学園に放り込まれたモニカ。任務とか言われても何も出来るはずもなく、周りに絡まれ鈍臭さからトラブルに巻き込まれ、怯え慌てて逃げ惑っているうちに、強引に無茶振りされた問題解決を半泣きになりながらサクッと成し遂げてしまったために、なぜだかトントン拍子に王子に近づき生徒会の役員に就任してしまうことに。
本人意図せず、右往左往してたり、現実逃避して得意な数学に没頭してたら、なんでか上手く行ってただよ、というなかなかに意味不明なムーブである。
この娘、本気で能力は抜群に高いだけに、無茶振りされるのが一番イイんだろうか。ビビリだから、命じられたら逆らえないし。七賢人という魔術師として最高峰の地位にあり、一代ながら貴族位も貰っているだけに本来なら学園でも王族以外なら誰にも謙らなくていい地位にあるはずなのに、徹底したパシリ根性、何かあったら這いつくばってごめんなさい、してしまう卑屈さがこびりついちゃってる娘なだけに、言われたら逆らえないという所がありありと。
なんか、ギャップがほんと面白いなあ、モニカは。

どうやら、彼女の対人恐怖症気味な性格には過去に受けたDVの影がまとわりついていて、ある種の精神的外傷がもとになっているっぽいんですよね。さすがに原因が原因なだけに、簡単に他人に慣れろ、とは言えないですし早々変わることは無理でしょう。数少ない友人とも決裂してしまった、という傷も抱えているみたいで、誰かと仲良くなる事自体怯えている節がありますし。
それでも、当たりこそキツいものの率直に物言ってくれて色々とかまって世話してくれるクラスメイトがいたり、厳しいものイイながら誠実に対応してくれる生徒会の先輩がいて、と……なんか当たりキツい人ばっかりだなあw
ただ、こういうキツい人は正直な人とも言えるので、むしろ当たりが柔らかかったり親切で優しかったりする人の方がどうにも怪しい気配がプンプンするんですよね。顔は笑っているけれど目は笑っていない的な。その筆頭が第二王子で、明らかに闇深そうな何を企んでいるのかわからない怪しい人物なんですが、この人が一応のヒロインになるんですかねえ。
他にも何を考えているかわからない怪しそうな人がわんさかと居て、モニカに心休まる暇なさそう。いやまあ、相手が怪しかろうがそうでなかろうが、誰だろうと人である以上心休まらないっぽいのですが、モニカさんは。
でも、ナニカ助けられたり好意で何かしてくれたりしたとき、その時は慌てふためき何も言えなかったとしても、ちゃんと後でも「ありがとう」と必死にどもる口を動かしてお礼を言う勇気を持ち、それを果たすことが出来るだけ、モニカは臆病なだけな心の弱い娘じゃないんだなあ、というのがわかって、あのシーンは何気にくるものがありました。
ありがとうと言われた方は特に響くものはなかったのかもしれませんけれど、モニカ本人は大変に勇気を振り絞って発した一言だったんですよねえ。

さても、言動はポンコツを通り越してもう不審人物なモニカが、そのくせやってる事を見るとテキパキと眼の前の問題を解決して、陰の任務も着々と成功させるための立ち位置を確保している、という本人まったく意識していなくて半泣きでもうやめたい帰りたいと嘆き呻いてやっぱり泣いているのに、結果だけみると有能極まる動きしている、というギャップの面白さ。
ストーリーとしては、まだ導入編。あれ?こんな途中で終わってしまうの?と驚いてしまったほど、話のキリもつかないところで終わってしまった1巻ですが、これシリーズ通して大きな一つの話を終わらせるロングスパンな作品なのか。ともあれ、続き気になります!

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん [Disc 2] ★★★★   



【ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん [Disc 2]】  恵ノ島すず/ えいひ カドカワBOOKS

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破滅の元凶と直接対決! ゲーム実況が導くエンディングの行方は……!?
 現実世界のゲーム実況が神々の声として聞こえるようになったジーク。神託を通じ婚約者リーゼロッテが【ツンデレ】だと知った彼は、その可愛さに悶え、誓った。
 ——彼女の命を奪う元凶【古の魔女】を許さない。
 しかしその討伐のため、神託に従い国の最高戦力を集めたはいいが、婚約者本人まで戦う気満々なのはなぜなんだ……?
 遂にバッドエンドの黒幕と直接対決! ゲーム実況が導く先に不遇な悪役令嬢のハッピーエンドは訪れるのか……!?

「はー、かわいい」
ジーク、しみじみ堪能しすぎであるw
リーゼロッテがもう何を言っても何をしても可愛いしかない存在であることを実況解説神によって知ってしまい、いちいち遠藤くんと小林さんの解説を待たずして彼女のツンデレ、発言とは裏腹の本心を理解できるようになったジークくん、もう毎日毎時リーゼのこと堪能しすぎである。ひたすら、リーゼを愛でて可愛いなー、可愛いなー、と悶える日々。
幸せか!
この娘、私の婚約者なんだぜ!? と内心絶叫し、もういいから早く結婚しよ! と出来る限り早く結婚してしまいたい気分で浮かれている王子様。
だいぶ頭の中、春真っ盛りになってきてお花畑が咲き誇ってるなー、と思っていたのだけれど、実際はリーゼの方も大概だったみたいなんですよね。リーゼの方の内心については、その言動から推察するしかなかったのだけれど、彼女の本心というか意図は理解できていたものの、頭の中でどんな精神状態だったのかについてはわからなかったんだけど、リーゼと繋がっていたあの神様が暴露してくれた話によると、相当こっちもお花畑満開でジークに対して黄色い声を張り上げて、ジーク様素敵! ジーク様かっこよすぎ! とか悶絶しまくっていたらしい。
わりと似たもの夫婦なのかもしれない、この二人。
まあジークの方も結構嫉妬深いところが見えましたしねえ。フィーネと姉妹になって仲睦まじくしている様子にすら嫉妬するくらいですし、さらにショタっ子に姉さまと呼ばれて慕われるようになった際には、小林さんたちに未だ嘗てない表情と評されるくらいの独占欲をたぎらせていましたし。
古き魔女による呪詛でネガティブな感情を掻き立てられていたのをずっと耐えていたリーゼですけど、ジークの方にこの呪詛がキてたら一発で闇落ちしてストーカー化してたんじゃないだろうかw
でも、変に溜め込まずに、自分の嫉妬心を曝け出してリーゼに自分の醜さを見せつつ甘えて見せるあたり、ジークたんはやり手なのである。リーゼに関してはもう手段選ばなくなってたよなあ、コヤツ。
バルの方もフィーネ愛を自覚して以降、完全に開き直ってグイグイ押してくる困ったちゃんになってたし。ラスボスも含めて、この作品の男連中はわりとみんなダメ夫の資質が垣間見せるんですけどw
女性陣の甲斐性を期待するしかないよなあ。幸いにして、女性陣の方は色んな意味で女傑ばかりでいい意味で男連中を尻に敷ける逸材ばかりなので、そっち方面の心配はそれほどしなくて良さそう。
いや、そういう甲斐性を持ち得ていなかったばかりに、痴情のもつれの果てに世界滅ぼしかけるわ、リーゼ破滅させかけるわ、という迷惑極まりないことをしでかしてしまった女性もいるのですが。

……女神様、土下座似合いすぎなんですけどw
開幕、土下座登場した創世神はさすがに初めて見た。なんかもう腰の低さというか、謝罪の堂の入りっぷりは見事というほかなく、このまま宗教図として描き残すか世界中の御神像を土下座ポーズに作り直すの、マジでありなんじゃないだろうか、と思えるくらい彼女の象徴的なポーズになっていました。
いや、この展開はさすがに予想外でしたけれど、元々オーバーキルすぎる陣容! だっただけに、変にバトルにならずにこういう形で収まったのは作品の雰囲気的にも良かったんじゃないでしょうか。
女神も大概でしたけれど、元凶となった輩のどうしようもなさは目を覆わんばかりでしたが。
でも、遠藤くんと小林さん側からの一方通行の力関係で終わらず、双方向で小林さんたちをリーゼたちが助ける展開になったおかげで、両者が本当の意味で心通じ合った友達になれたという形に至ることが出来たのは、とても素敵な結末でした。
これ以上なく素晴らしい文句なしのハッピーエンドでございました。色んな意味でごちそうさま♪






悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~ ★★★   



【悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~】 七夕 さとり/Tea カドカワBOOKS

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RPG系乙女ゲームに悪役令嬢ユミエラとして転生した私。でも実はユミエラは、本編ではショボいが、エンディング後には裏ボスとして再登場し勇者と渡り合うキャラで――つまり超絶ハイスペック! ついゲーマー魂に火がついて鍛えた結果、学園入学時点で私はレベル99に達してしまっていた。
ゲームのストーリーには関わらず目立たず平穏に過ごすつもりが、入学早々レベルがバレて、ヒロインや攻略対象達には魔王と疑われてしまい……!?

パトリック、作中の印象だともっと大柄でガタイ良さそうな大人びた男性なんだけど、デザインだと普通に優男だなあ。
生まれたときから両親の顔も知らずに育ったユミエラ。一度も会いにも来ない両親に対して寂しいとも思わず、自分に向けられる悪意にも敵意にも無頓着なユミエラは感情がないわけじゃないのだけれど、どうにも淡々としている。感情の抑揚が少なく、どんな言葉をぶつけても暖簾に腕押しな彼女。これで行動も大人しかったら、存在感の薄い子かいじめられっ子ルート、或いは孤高の美少女というところなのだけれど、彼女の無頓着さは常識の方にも大いに発揮されていて、平穏に暮らしたいとか思っていながらレベル99の力加減をあんまり考慮せず、普通の人からするとわけのわからない規模の力をポンポンと炸裂させ、それはないだろうという行動を悩みもせずに行ってしまう。結果、だいたい盛大にやらかすことになるのだけれど、それでやっちまったと焦ったり後悔したりもせず「……まあいいか」くらいの適当さで流しちゃう子なのだ。
おかげで周囲の人間はユミエラの事をいつなにをしでかすか分からない導火線に火がついたまま自由気ままにその辺を転がりまわる爆弾岩みたいに畏怖されることになる。魔王呼ばわりされても仕方ないよね? これで目立たないで平穏に、のつもりがわりとあるあたりその時点で常識がない。まあ出来てないなあという自覚があるあたりはマシなのかもしれないけど。

ただまあ、こうして見ているとユミエラって他人にも世界にも対して興味がないのだろう。無関心ゆえに、何を言われても気にしないし、動じないし、結局どうでもいいのだ。一人であることを寂しいなんて思わないし、自分が他人からどう思われていてもわりとどうでもいい。彼女の淡々とした態度があんまり乾いていたり冷たい感じがしないのは、それなりにお一人様でレベル上げしたりやれる事を楽しんでいるからなのだろう。別に、世界がつまらないとか退屈している、という風に現状に飽いていたり絶望していたりするわけじゃないのだ。だが、他人と繋がることだけは最初から諦めている。期待していない。そして関心を抱いていない。自分の異常性については、ちゃんと自覚しているのだ。まあ治す気もさらさらないし、どこが他人と違うのかについても比べるつもりもないし、だからこそ常識はずれのことをやり続けるのだろうけど。

しかし、そんな他人との壁を埋めるつもりがないユミエラに、何故だか近づいてくる人間が学園に通うようになってからちらほらと出始めるようになった。その筆頭がパトリックだ。
彼の存在を意識しだすことによって、初めて他人との人間関係、そして世界との関わり方について彼女は考え始めることになる。
パトリックとの関係について、しばらくしてよく一緒に居るようになってからも、彼との関係が友人関係ではなく、知り合いレベルだと発言してパトリックをへこませていたのは、あれユミエラが鈍感だとかではなくて、それだけ自分が他人から距離を置かれる存在であるという自覚が深くに根ざしていたからなのではないだろうか。人間関係そのものに関心や興味がないからどうでもいい、と思っていたのだろうけれど、自分が普通の人間から受け入れられる存在ではないのだという思いはあったはずなんですよね。自然とフィルターがかかってしまう。
だから、パトリックがどれほど好意をぶつけてきてくれても、それをうまく理解できないし、自分自身に隔意ある解釈で納得してしまう。パトリックの苦労が忍ばれる。
でも、他人からの好意は理解できなくても、自分の中から生じて湧き上がってきた感情、好きという思いには目を逸らさず受け止めるユミエラは、傍目のアレっぷりとは裏腹に純真で素直な娘なのだろう。単純明快シンプルな生き方考え方をしている、とも言える。
何気に、同じ貴族令嬢でアホの娘を極めているエレノーラと同類なんじゃないだろうか、ユミエラって。
エレノーラの方も、ユミエラの突拍子の無さの影に隠れているけれど、この娘はこの娘でだいぶぶっ飛んでいるんですよね。アホの娘すぎるが故にユミエラの異質さ、異常性、普通の人間との差異について全く理解していなくて、だからこそ一度打ち解けてしまったら無邪気に無防備にじゃれついてくる。ユミエラがどれほど途方も無い事を仕出かしても、エレノーラはそれがどれだけ大事だったり常識はずれなのか理解してないので、ほいほいと受け入れてしまうのである。この娘はこの娘で作中でも随一の大物な気がするなあ。作中でも随一の常識人であるが故に、ユミエラのしでかすことに毎回目を回しているパトリックの苦労が忍ばれる。あれだけヒーヒー言いながらも、直向きにユミエラについていくパトリック、こいつはこいつで充分大物だと思うのだけど。

ともあれ、パトリックとの交流やエレノーラに懐かれ纏わりつかれて、国王夫妻や学園長からは(生)暖かく見守られ、という学園に入るまでは経験したことがなかった人との交わり、好意を向けられるようになったユミエラは、徐々に人の心を学んでいく、とまで言ったらさすがに過言でしょうか。
でも、いざ面倒くさいことになったら国を出奔して自由に生きたいように生きればいいさ、というある意味自分の一人の世界を生きていた彼女が、他人との関係を意識し感じることになったそんな折に、自分と同じような黒髪故に差別されイジメられる男の子と出会ったことで、世界に蔓延る一方的な差別意識に自分なりに出来ることがあるんじゃないか、と模索をはじめる。世界に対して自分が出来ることを考え始めるのである。
自分以外のことに対して関心を持たず、興味を持たず、最初から諦めて期待をしていなかった彼女が、自分から世界に関わり始めた。誰かを好きになって、その人から好きになって貰いたいと思うようになった。
能力的には最初からカンストしていたユミエラだけど、こうしてみるとちゃんと彼女の成長物語にもなっていたんだなあ。

クレイジー・キッチン ★★★  



【クレイジー・キッチン】 荻原 数馬/ジョンディー カドカワBOOKS

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ビジネス街に佇む洋食屋『ひだるまキッチン』。店主の天才料理人、日野洋二は2つの業を抱えていた。(1)自分で作った飯を客に食わせたい。(2)自分で作った飯を自分で食いたい。その為ならば注文無視、監禁となんでもござれ。しかし黙って従うような客たちでもない。不良サラリーマン、食事をたかる従業員―彼らを巻き込み、飲食店の常識を破壊する騒動が次々と勃発するのであった―!WEB掲示板発の伝説的料理コメディ、まさかの登場!

「陽だまり」じゃなくて「火達磨」キッチンなのか、この洋食屋。頭のおかしい洋食屋の店長が思うがままに自分の作りたい料理を自分が食べたい料理を自由に作り、それをやっぱり頭のおかしい傾向にあるお客たちに食わせる。時に強制的に食わせる。
しかし客たちも頭がおかしいだけあって唯々諾々と大人しくは食わされない。むしろ、自分から食う。「無理矢理にでも食わせてやるぜ!」に対して「応、喰ってやるぜ」という客たちである。常連客以外はちょっと泣きそうな環境である。
が、美味い。そういう環境を無視できるくらいに美味い。トロトロの牛すじや角煮は自分も喰ってみたい。
ともあれ、従業員もお客もわけのわからないハイテンションでひたすら作り、ひたすら食う。それ以外にどうせい、という作品であった。元はアスキーアート掲示板の伝説的作品だそうで、このノリはなるほどAAでキャラ立てて相互にぶつけ合って暴れ倒すタイプのそれだったなあ、と。なんとなく、場面場面でAAのキャラが叫んでるのが頭に浮かんでくる、くらいにはそれっぽさが残っている。
一方でAA掲示板の独特のノリはやはりそのまま移植、とはいかないようでテンションこそひたすら高いものの、キャラは濃いように見えて何気に掘り下げは少ない。AA掲示板で使われるのが版権キャラであるからこそ、登場時点で既にそこにキャラ立ては済んでいる、というのもありますしね。その元の版権キャラのキャラクターをあわせつつどれだけぶっ飛ばせるか、というのもこの手の作品の妙でありますから、それを抜かしてしまうと表面上の騒々しさしか残らない、というのはある程度仕方ないものなのかもしれない。
それでも、店長日野洋二のキャラは楽しいものでしたし、むちゃくちゃしているようで料理学校時代の先輩後輩とは今でも仲良く同志としてはしゃぎあい、気の合う常連客との丁々発止には強引であるけれど愛が溢れている。お客も、女子高生コンビなど後半に行くほど味が出てきますし、この娘ら高校生のくせに洋食屋に通い詰めるとはなかなかハイソでありますなあ。
料理モノとしては、料理そのものの描写には凝ってもいないし、食べる時のリアクションや反応も派手なものではありませんけれど、美味いぞーー! というノリを楽しめたら勝ちなのかもしれません。
しかし、指パッチンしたらシャッターが閉まるプリズンモードは、いい趣味してるゼw
そしてウェイトレスのカナさんは、あれ働きに来てるんじゃなくてタダ飯食いに来てるだけなんじゃないだろうか。

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん ★★★★   



【ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん】 恵ノ島すず/えいひ カドカワBOOKS

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隠したい本心がゲーム実況のせいでダダ洩れ!? 今最もカワイイ悪役令嬢!

王太子であるジークは突然聞こえた神の声に困惑した。
神曰くジークの婚約者・リーゼロッテは【ツンデレ】で、【破滅】を迎える【シナリオ】らしい……?
彼女のキツめの言動は、全て照れ隠し!? 神が解説する彼女の本心が可愛くて一人悶えるジークは、知る由もなかった。実は神の正体が、ゲーム実況をするただの高校生だと……。
神託(※ゲーム実況です)を頼りに婚約者を救え! 隠したい本音がダダ洩れな悪役令嬢、バッドエンド回避なるか!?

これ、タイトルが結構なインパクトで印象に残りますよね。語呂もいいですし、一発で頭に残る。昨今、どれがどれかわからないような似たようなタイトルが氾濫する中で、頭に残って忘れないというのは大きいです。
そのタイトルにもなっているリーゼロッテ、よりも先に言及してしまいますけど、小林さん。この娘、本当に普通の女子高生なんだけど、普通の女子高生とは思えない包容力の持ち主なんですよね。いえ、普段は好きなことになると早口になってしまう、明るくて溌剌としたどこにでも居るような女の子なのですが、遠藤くんを放送部に招いたきっかけになる出来事で見せた、あの慈母のような包み込むような優しさは十代の女の子とは思えないものでした。同級生の男が胸にいだいていた深い傷をあんな風に受け止めてあげられるって、どれほど徳を積んだのでしょうか。遠藤くんも、仮にも年頃の男の子、なかなかあんなふうに人前で泣くことは出来なかったでしょう。ましてや、同い年のクラスメイトの前でなんて。それを、一生懸命縛っていただろう心の紐をスルスルと解かれて、自分の中で澱として淀んでしまっていたものを吐き出せた、というのは相手が小林さんだったからこそ、なのでしょう。
そりゃあ、惚れるよ。
下手をするとそのまま崇拝してしまいかねないレベルの出来事だったような気もしますが、普段の小林さんはほんと、付き合いやすくて話しやすく親しみやすい、隣に並んで一緒に歩いたり向き合って座ってお茶しながらおしゃべりしたりするのが楽しい普通の女の子なので、変なふうに拗れずに純粋な恋心の芽生えになったのは良かった、のでしょう。というか、普通にしてるだけで楽しいのだから、それだけでも好きになるわなあ。
ともあれ、そんな二人が遭遇するはめになったのが、乙女ゲームの登場人物に自分たちの声が届くという怪現象。そういえば古の初代ファミコンにはマイクがあって、それに向かって喋るとゲーム内に影響がある、というゲームがあったけど、ドラえもんとか。昨今のゲームのハードってそういうのついてないですよね。ついにPS3に触ったことないままPS4の時代を迎えてしまったおじさん
です。
ともあれ、そんな二人のお陰で照れ隠しや素直になれないがゆえのツンデレな言動がすべて暴かれてしまうリーゼロッテちゃん。そんなリーゼロッテの本心にトキメキまくってしまうジーク王子、という展開に。これ、実況解説の二人が的確に指摘してくれたからとはいえ、ジーク王子の理解力も高いし早いですよね。いや、本心を暴かれた時のリーゼの赤面姿が最強だった、というのもあるんだけれど、あれ?この娘凄く可愛くね!?と気づくジークの速さがまた。
そこで躊躇わずにグイグイと攻めまくるあたりが、さすがは乙女ゲームの王子様というべきか。イケメンの王子でなければ許されないようなストレートな褒め言葉や口説き文句、さらにはスキンシップなどで滅多打ちされていくリーゼちゃんがもう可愛そうなのかお幸せに、というべきなのか。
ツンデレ防御は実況解説によって一瞬にして無効化されてしまうので、実質防御力ゼロ状態ですもんねえ。
王子の理解力、ほんと高いのですぐに特に小林さんたちの助言なくても、王子が誤解するような事はなくなりましたし。後半からはリーゼのツンデレな言動の解体ではなく、もっと複雑に入り組んだ誤解に繋がりそうな出来事の指摘だったり、リーゼの状況に対する助言だったり、とより重要な件についてシフトしていくので、賑やかしになったりはしませんでしたし。
リーゼロッテも、段々と本音とは裏腹の言動を取ってしまうことも少なくなってきましたしね。というか、意図が伝わりすぎて周りから生暖かい眼差しが向けられてしまうことになってしまうのがなんともはや。本来のメインヒロインのフィーネも、リーゼのひねくれた優しさに気づいたあとはむしろグイグイとリーゼに懐いていくものだから、そのうちリーゼもストレートにフィーネに構い出すものだから、後半ちょっとベタベタしすぎじゃね?となるほど仲良しになるのは微笑ましかったです。リーゼちゃん、ツンデレもいいけれどこの娘の場合素直に好意を見せながら接する方が、頼もしいお姉さんという感じでキラキラ輝いていたように思います。
あんまりフィーネとキラキラしているものだから、ジーク王子が嫉妬しだすのもまあ無理からぬところかと。逆ハーレムエンドでリーゼもフィーネにベタベタになる、という展開がなるほどこうなるのか、と想像できるようなイチャイチャっぷりでしたし。
そのフィーネ、プレイヤーからも作中の登場人物たちからもゴリラ扱いなのはちょっと吹いた。なんかステータスカンスト状態の最強モードらしいけど、ゲーム始まるまでの彼女がこれまで生きてきた人生を聴いてみると、ハードモードすぎてゴリラじゃなかったら生きてけなかったんじゃなかろうか、というぐらいの話だったんですよね。
むしろ、ゲームでのノーマル時はどうやってゲームスタート時点まで生き残ってたんだろう、と不思議になるくらい。
彼女と、同じバルトジャンキーのきらいのあるバルくんとのデコボコな恋模様も、こっちはこっちで面白かった。バルくんが従姉妹のリーゼのみならず親族中、知り合い中、果てはフィーネからすらアホの子扱いされてしまうのだけれど、確かにもう少し脳みそを筋肉以外で柔らかくシたほうがいいよね、このひと。
フィーネが、バルのこと好きになりつつも、こいつの扱いについて本気で困っていたのには何とも苦笑してしまうものでしたけれど、自身もゴリラだし彼女の母親もどうやら腕力勝負なところのあるパワー型だったのを見ると、バルくんみたいなのの扱いに慣れているというか、相性的にはやはりピッタリだったのかもしれない。

リーゼ自身に対する誤解は、ジークのみならず周りの人からも解けて順風満帆なものの、ゲームで彼女を見舞う災いについては未だ避けられないまま、ジークが直接対決する流れになりそうだけれど、むしろここから本格的に二人のイチャイチャがはじまりそうでもあるので、期待期待♪

加賀100万石に仕えることになった4   

加賀100万石に仕えることになった (カドカワBOOKS)

【加賀100万石に仕えることになった】 シムCM/上田夢人 カドカワBOOKS

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生まれかわって気がつけば戦国時代。前世の記憶を使って信長に仕えて、秀吉に近づき、家康に従って東軍についてオレ勝ち組!と思いきや、開始前に野望が潰えて寺で坊主にジョブチェンジ。そんな折、ひょんな縁から前田利家に仕えることに。ここからオレの武勇伝が始…まらない!?殿は脳筋。領土は問題だらけ。大殿からは無理難題。年貢納入と補給物資管理と悲鳴を上げる男、三直豊年(←オレ)。ソロバン片手に文句をたれつつ(数字と)戦う男の物語である。

ウェブ版既読。ウェブ版では一話一話が少量でひたすらデスマーチしている印象だったんだけれど、まとめて読むとトシ君が地道にやってる仕事が覿面に効果をあげているのが如実にわかって面白い。
軍師モノというと、だいたい戦場で采配を振るうか或いは戦略を立てる立場に立つか、なんだけれどこの主人公の三直豊年の役割は戦場に立たない事務官僚。ひたすら蔵に篭って兵糧と金の勘定をする会計管理者なのである。いや、マジでひたすら勘定してるんですよね。内政官、なんて言ったらあれこれ未来的な画期的な政策で生産力を爆上げしたり、なんて仕事を期待してしまうのだけれど、彼が行っているのは本当にひたすら兵糧管理なのである。
この当時の税収が主に米であることを考えるなら、税収・総資産・兵站全般の管理のすべてを担うことになるのである。事実上、前田家の進退は彼の差配次第になってるんですね。勿論、前田家の戦略方針は信長
からの指示に基づくんだけれど、どんぶり勘定だった兵糧管理が、彼の労力と彼が構築したちゃんと覚えたら誰でも使える管理システムと彼が育てた内政団によって、大きな無駄をなくした形で自由に動かせることになったことで、前田家という戦力の自由度が爆上げされた結果、織田家の中での前田家の地位というか使い勝手が滅茶苦茶あがってしまったんですよね。んでもって、いつの間にか史実における柴田勝家ではなく、前田家が北陸方面軍を担当することになってしまっているのである。
これに関しては、織田信長の見る目というか、視点の置き方、適材適所の駒の配置の仕方が抜群な気もしますけれどね。単純に率いる兵力があがっているとかじゃあないはずなんだけれど、前田家の有用性のどの部分が上昇しているかをちゃんと把握した上で、その使い方を決めている節が伺えるので。
トシ君の功績というか能力というのは、武功のようなわかりやすい部分じゃないので、非常に把握しづらくてぶっちゃけ殿様こと前田利家もよくわかってないっぽいのだけれど(彼が偉いのはわからなくても、信頼して責任は負った上でかなり好きにやらせてるところなんだけれど。結果、デスマーチ&デスマーチ化してるとも言えますが)、信長についてはぶっちゃけ現場で目の前の仕事を捌くことに必死になってるトシ君よりも高い視点で彼のしていることを理解した上で、方向を指し示しているんですよねえ。

トシ君のやり口で実に面白いのが、相手が望むものを与えることでより大きな成果を得る手法である。これ、味方に対してだとWin−Winの結果になるのだけれど、えげつないのが敵に対してのもので、敵さんに目先の利益を与えることで、思う通りに動かした挙句に、気が付くと敵さん泥沼にハマって二進も三進も行かなくなっているのである。場合によっては、最後までイイように自由に操られた、ということに気が付かないで終わる場合すらあるのだから恐ろしい。傍から見ると、餌に釣られた間抜けに見えてしまうケースもあるんだろうけれど、実際その立場に立たされると、自分や自分サイドの勢力にとってプラスになり、敵対勢力にはマイナスになるだろう成果を、見逃すというのはありえないんですよね。これはまだ単行本化されてない先の話なんですけれど、恐ろしいことに差し出された餌を受け取ってしまうと詰みだと、釣られる側が完全に理解しながらそれでも餌に食いつかない以外の選択肢がない、という凄まじい展開すらある、というまあとんでもない手法なのである。
戦う前に既に結果は決まっている、という言葉はよく聞くけれど、ここまで見事に相手の動きを誘導して用意していた結果の穴に落としてみせる業師は、なかなか見られないんですよね。そりゃあ、わざわざ戦場に立つ必要がない。
甲賀への謀略なんかは、自分から足を運んでハメているのでまだ序の口の類なんですよね。筒井家への働きなんか、この人本当に兵糧をあっちからこっちへと動かすだけで、敵さん詰めちゃいましたしね。
いや、この兵糧を正確な数量、あっちからこっちへ動かす、というのが本来難しいを通り越してる難易度なんですけどね。ゲームなんかだと、数値打ち込んでそれで終いなんですけれど、現実ではそんな簡単な話じゃないわけです。ましてや、まともな管理の為の理論が成立していない中近世なら尚更に。
ラストの撤退戦「引き鳥府中」なんかは、この兵糧の出し入れの精確さと適確さ芸術的な差配が導き出したものですしねえ。彼の謀略は、個々の武将相手じゃなくて、一般兵や農民たちの群集心理、組織内のパワーゲームにおける人間心理を相手にしているというのも、面白いというかソソられるところである。対象を一人や個人に絞った謀略は、防ぎようというのはいくらでも方法はあるのだけれど、この心理誘導はほんとどうやって防いだらいいかわからないたぐいのやり口なんですよね。イニシアチブをどの段階まで繰り上げないと取り返せるかわからん。

ともあれ、普通の軍師モノ、戦記モノと比べて着眼点がかなり違っているので、その点だけでも本当に面白いし興味深い。しかし、こういう戦国モノって前田慶次郎は使い勝手愛嬌のあるイイキャラなんだろうなあ。特にこれは前田家が舞台の話だけあって、前田慶次が絡みやすいという下地はあったにしろ、ただでさえデスマーチで死にかけてる主人公にちょっかいかけて弄って遊んでくるキャラで、いつもくっついてくるんでぶっちゃけ、殿様の利家よりもでかい顔してますww


 
9月21日

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