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ガガガ文庫

霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない ★★★★   



【霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない】  綾里 けいし/生川 ガガガ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

その少女は「かみさま」のなりそこない――

藤咲藤花の元に訪れる奇妙な事件の捜査依頼。
それは「かみさま」になるはずだった少女にしか解けない、人の業が生み出す猟奇事件。

人の姿を持ちながら幽世のものに触れる異能をもつ彼女は、事件の解決に自分の居場所を求めて歩む。
そして、その隣には「かみさま」の従者として彼女を守る役目を負うはずだった青年・藤咲朔の姿が常にあった。

数奇な運命のもとに生まれ――そして本来の役割を失った二人は現世の狂気のなかで互いの存在意義を求め合う。
これは、夢現の狭間に揺れる一人の少女と、それを見守る従者の物語。

思えば、綾里けいしさんの描く物語の多くが、主人たる少女と従者たる青年の二人を中心として描かれる物語だ。そして、その主人たる少女たちの多くがまた超常の存在である。存在以上にその精神性が人並み外れた強靭さ、或いは異常さを有している特異な人物だった。
【B.A.D】の繭墨あざかも、【アリストクライシ】のエリーゼも、【異世界拷問姫】のエリザベートも、狂気であり誠実であり残酷であり異質であり優しくもある突き抜けた人物だった。従者たる青年たちは、彼女らに振り回されながら彼女らを追いかけ付き従い、支える者だった。【B.A.D】の小田桐くんについては異論多々あろうが。
「かみさまのなりそこない」藤咲藤花もまた、そんな人外たる女主人の列に連なるヒロインだと思っていた。なにしろ、かみさまのなりかけ、だ。この場合の神様というのは、人の身でありながら人でなくなる、生きたまま幽世の住人になるような、俗世から完全に隔離されてしまうような、超常の存在だ。人としての人格も、人としての人権も、人としての柵も、何もかもから解き放たれた、贄のようなカミのような、祭り上げられた祀り上げられた神秘。
そんなモノになりかけた、なるはずだった、そんな少女はやはりそもそもが超常の存在なのだろう、と。超然として達観して透徹として、ふと目を離すと消えてしまいそうな浮世離れした儚いカゲロウのような少女なのだと、勝手に考えていた。

まさか、こたつから出てこないただの引きこもりニートだとは思わなかったさ。
食べ物に関してだけはアグレッシブになる、食物を買いに行くのなら積極的に外に出る種類のニートだとは思わなかった。
ただの食っちゃ寝してゲームして遊んで、従者の朔くんに衣食住ぜんぶ依存しているダメニートだとは思わなかった。
そして朔くん、厳しいことを言っているようでこの男、藤花にだだ甘である。甘やかしまくっている。口を開けて餌をねだるヒナにせっせと餌を放り込む親鳥のごとくである。なんだかんだ辛辣な文句を言いながら、一生彼女が引きこもりでも嬉々として養いそうな、人をダメにするたぐいの男である。
「少女たるもの」
それが藤花の口癖、或いは決め台詞だ。
かみさまになれなかった彼女の能力は中途半端。霊能探偵を名乗って看板を立てているけれど、聡明ではあってもカミソリのように謎を事件をズバッと解決するような切れ味はなく、自称かみさまの劣化品である彼女の精神性は、自分で宣うように当たり前なほど少女だ。ただの15歳の少女なのである。そこに、かみに連なる神秘も超常性も、異常性も狂気すらも持ち得ていないかもしれない。
本当に、ただの女の子なのだ。
だからこそ、藤花は傷ついている。現代の残酷な御伽噺のような、この異能と超常の世界に生まれるにはあまりに普通の少女だったが故に。かみになれなかった、成り得なかった自分への意味を、存在意義を見失っている。
いや、すべての真相が明らかになったあとに振り返ってみれば、彼女が苦しんで自分に価値を見い出せずにいたのは、かみさまになれなかったからではないのだろう。かみさまにもなれなかったにも関わらず、かみの従者となるはずだった「彼」藤咲朔を自身に縛り付けてしまったから。彼を自由にしようともがきながら、結局誰よりも自分が彼を縛り付けてしまったから。そして今この瞬間も彼にすがりついているから。もうかみさまでもないというのに。
つまるところ、藤花の想いはただただ朔一人に向けられていたと言っていい。藤花の振る舞いは、そのたどった歩みは、徹頭徹尾ひとりの青年を想ってのことだった。
それはもう少女以外の何者でもない在り方である。到底かみさまになんてなれるはずがない、ただの女の子のありかただった。
好きな人のためならば、たとえ自分を殺しても。たとえかみすら殺しても。

だからきっと、そんな彼女を救うには、かみさまでもかみさまの劣化品でもなりそこないでもなく、ただの無意味な少女をこそ守るのだという青年の想いを伝えることが必要だったのだろう。
従者という役割だからじゃなく、ただ単に藤花だから傍にいるのだと、そんな当たり前を彼女に信じてもらうことが必要だったのだろう。
でも、この異常で残酷で半ば狂った異形の世界で、そんな当たり前こそが普遍的ではなくそう在る事は難しい。こんな歪んだことわりが罷り通っている世界の中で、ただの少女であったというのはいっそ惨劇ですらあったかもしれない。

霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない。
当然だ。人の惨劇を嗤えるような、そんな歪んだ存在では彼女はなかった。本当に、ただの少女だったのだ。
少女はただ恋をして、恋に殉じた。それこそが、彼女自身の惨劇だったのかもしれない。
それがただの惨劇で、悲劇で、末路として終わらなかったのは、朔もまた、かみの従者になりえなかったからなのだろう。
彼もまた、最初から役目など意味をなしていなかった。彼にとってかみさまなんてどうでもよかった。最初から、彼の目にはかみさまではなく少女しか映っていなかったのだから。
与えられた役目によって結ばれた二人は、最初からかみさま候補とその従者という役目など関係なかった。最初から、お互いしか眼中になかったのだから。
でも、それを二人共知らずわからず理解せず、そのまま拗れて固まり、どうしようもないまま藤咲の因果としがらみに囚われて、彼らもまた惨劇の道をたどるはずだったのかもしれない。

そう考えると、本物の「かみさま」になったあの名前も語られぬ少女は、役割としてのかみさまではなく、彼女自身の意思と力で「縁結び」の神様と成ったのかもしれない。ほんの些細で親切なおせっかい。意地悪で迂遠な依頼にして道しるべ。傷ついて向き合うことのできなくなっていた少女と青年に、真実をたどる道筋を示すことで、お互いの想いを伝え合えるきっかけを与えてくれた。
彼女は狂ったかみであり、正しいかみであり、だからこそ血を厭わずまともな倫理に縛られず、でも友人だったひとりの女の子の恋を、大切になるはずだった青年の想いを、そっと結ぶ機会をくれたかみさまだった。
それはかみというより、少女のようで。名前も語られぬ彼女もまた、かみさまとなった彼女もまた、少女たるもの、だったのだろう。

かくして、これは最初から最後まで徹頭徹尾、純粋な恋の物語でありました。幾多の惨劇の上を歩んでいくものだったとしても、穢れを感じさせない純愛の物語でもありました。
死がふたりを分かつまで、或いは死すらも分かてぬ、この世界にただ二人きりであるような恋人たちの物語。




ここでは猫の言葉で話せ ★★★★★   



【ここでは猫の言葉で話せ】  昏式 龍也/塩かずのこ ガガガ文庫

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命懸けの猫ミッションをクリアせよ!

日本のひなびた地方都市の女子高校。
寒い国からやってきた小さな転校生アーニャことアンナ・グラツカヤには、誰も知らない二つの秘密があった。
一つは、ロシアの犯罪組織に属した殺人マシーンであったこと。
もう一つは、猫アレルギーの猫嫌いなのに、その猫をモフらなければ自分が死ぬ……という、他人から見れば謎だが本人だけは必死な使命を帯びていること。

猫好きの同級生・小花や謎多き年上の女・明良たちに囲まれた、平和で少し奇妙な毎日の中、ひたすら猫を追いかけるアーニャのインポッシブルなミッションは始まった!
猫が導く少女達の出会いと喧騒――コミカルでデンジャラスな新感覚ガールミーツガール開幕!

ううっ……か、感動した。感動したぞ。なんてこった、これは傑作だ。傑作だ。

猫とはすなわち人生である。

いや、別に猫礼賛の作品じゃないんだ、これは。猫を崇め奉る話ではない。ここに出てくる猫たちは、ただ猫に過ぎない。猫たちはただあるがままに猫であるだけで、それ以上でもそれ以下でもない。
だからこそ、素晴らしい。これ以上無い猫小説だ。

これ、コメディじゃないんですよね。むしろ、ハードボイルドだ。日の当たる世界に迷い出てきた殺人マシーンの物語だ。
彼女、アーニャが生きてきた、今も囚われているその世界は、仄暗く冷たい心に澱が積もる夜の世界だ。ただ機械のように与えられた任務をこなし、淡々と人を殺してきた殺し屋、それがアンナ・グラツカヤである。
それが何の因果か、日の当たる世界に迷い出てきた。いや、導き送り出されてきた。親友である、姉のような人の願いによって、彼女は機械から人になるべく日本という平和な国にたった一人、ただの女学生として生きることになった。アーニャ自身、そこに何の意義も見いだせないまま。
殺し屋の物語、その世界観というのはニトロプラスの傑作ゲーム【PHANTOM OF INFERNO】の頃から、哀愁と惜別という切々とした空気に彩られたものだと思ってる。絶望するほどの感情もなく、希望を抱くほどの未来もなく、淡々と寒さに身を震わせて、僅かな温もりを無意識に求めて人恋しさに身を寄せ合う。その僅かな温もりもすぐに遠ざかり、消え失せて、そうして胸の奥から産まれてくるのは虚無の空白。
そんな無常に囚われながら、硝煙の中を刹那的に駆け抜ける殺し屋たちの生き様に、どうしようもなく惹かれてしまう。
そんな世界観を、このアーニャもまた生きてるんですよね。いや、彼女はまだ生きてすらいなかった。ただ、囚われたまま義務的に存在しているだけだった。
それでも、彼女はユキという友と組織を抜けて行くことを選び、彼女が死んだあともその願いに従って、この日本まで逃げてきた。そこにはもう、萌芽はあったのだろう。

アーニャにとって、猫とは単なる生存を伸ばすための手段に過ぎなかった。彼女に投与されている毒薬は、定期的に解毒薬を摂取しないと宿主を殺す、裏切り防止の抹殺薬だ。ユキは研究の末に、どの毒を無効化する効果が、猫アレルギー物質にあることを発見し、彼女らが組織から逃げ出す大きな要因の一つとなった。
つまり、猫にむしゃぶりついてアレルギー症状になると、発症した毒薬が無毒化されるという仕組みである。
だから、別にアーニャは猫が好きではない。その気ままで何も束縛されない在り方を不愉快にすら感じている。それでも猫に触れなければならない彼女は、必然的に猫という生物の生態に近づくことになる。猫に触れ、猫を知り、猫を感じることになる。
「猫がきっと、君の失ったものを取り戻してくれるだろう」

マインドコントロールによって不要な感情を封印され、戦闘機械として完成されたアーニャにとって、平和な日本での学生生活は戸惑いの連続だ。猫を追いかけるアーニャを、猫好きと勘違いした学友達はすぐにアーニャと親しくなり、特に家で猫カフェを営む小花はアーニャに猫成分を提供してくれる欠かせない友人となり、アーニャに猫の知識を、猫との付き合い方を、猫と共に寄り添う生き方を教えてくれることになる。
他にも、猫を通じて、アーニャの他者との交流は増えてくる。また、ユキの協力者としてアーニャの逃亡を手助けしてくれた子が直接尋ねてきて、同じ部屋に暮らすようになる。いつしか、我が物顔で部屋に入り込むようになった野良猫も、一匹同居するようになった。二人と一匹の共同生活である。
アーニャにとって、猫との繋がりが、人との繋がりとなっていく。
疎んでいた猫の自由さが、彼女の心を解きほぐしていく。猫の姿に、いつしか安らぎを抱くようになってくる。なついてくる猫に動揺し、そっけない猫の一挙手一投足に身体をこわばらせ、それは解毒のためという必要性ゆえではない、猫と共にある日々がアーニャにとって当たり前になっていく。
それは同時に、誰かと一緒に過ごす日々、それを温かく心地よいと感じる日々のはじまりだった。

重ねていうが、これは猫を過剰に持て囃す物語ではない。猫たちは、それぞれ思うがままに振る舞っているだけだ。生きるも死ぬも、猫たちは何にも縛られず在るが儘にただ猫として在るのみ。
そこに自由だの不遜さだの、何かを見出し当てはめ感じ入るのはいつだって人間の勝手である。
猫に癒やされるのも、猫に救われるのも、猫を愛するのも愛されるのも、人の勝手な思い込みだ。勝手に猫に投影しているだけだ。
猫は、ただただ猫である。
でもその猫こそが、アーニャに他者と繋がるカスガイだった。猫を通じて、猫を介して、アーニャは人を感じることが出来た。人の感情に触れることが出来た。人の愛情に自分を重ねることが出来たのだ。
小花の友情も、明良の好意も、コーシカの親愛も、そしてユキの切なる想いも。
アーニャは猫を通して、実感することになる。それが、眠っていたアーニャの根源を目覚めさせることになる。
アーニャがあの日流せなかった涙を流せたとき、猫との別れが彼女を再び人間として生まれ変わらせたのである。
哀愁も惜別も、哀切も諦観も、猫と人の温もりが洗い流してくれたのだ。そうして、これは殺し屋の物語ではなく、猫を愛する人々の物語になっていく。
その仄暗い寒色の空気感が柔らかな暖色の世界へと移り変わっていくその行程が、アーニャの感情が目覚めていく様子が、猫とともにある姿が、美しいほどに自然で見惚れるほどに綺麗だったのでした。
ああ、猫こそが人生なる哉、人生哉。
【ここでは猫の言葉で話せ】、見事な一作でありました。




ちなみに、私は犬派である。悪しからず。

剣と魔法の税金対策 4 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 4】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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「税天使」ゼオスが絶体絶命のピンチ?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」
「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀が交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。
絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!え、神様に税金とられるの!?
“世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者♀は税金逃れのために魔王♂と偽装結婚!そして、そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女も登場!
みんなでいろいろ頑張って、超赤字経営のトンネルの先の光が見えてきた!と思いきや、なぜか、城の設備が次々と「テキタイテキバイシュウ」され始めた!
そんなことをするやつは…え!!魔王たちに恨みを抱く、元魔族宰相のセンタラルバルド!?
こんな時にはこわーい税天使ゼオスが味方になってくれる!ゼオス召喚!…ところがなぜか、ゼオスが現れない。ゼオスに一体何が起こった??
こうしている間にもどんどん「テキタイテキバイシュウ」は進んでいく…!「異世界初の異世界税制コメディ」、グイグイきてる第四弾!

敵対的買収ってのは、本来は目的の企業の株式を買い集めることなんですが、魔王軍って株式上場してたっけ? と思ったら、なんか直接魔王城の施設を勝手に値段つけて所有者に無断で買収しはじめて、何じゃそれー!?となったんですが。
いやそれはさすがにルール無用すぎるでしょう。税悪魔きたない! そりゃ邪法だよ、なんでもありじゃないか、それ。
ここまで無法を押し通せる税悪魔に対して、法の執行者として非常に厳密な中立性を強いられる税天使とでは税悪魔の方が有利すぎないだろうか、これ。実際、前回クゥたちに立場で許されない以上の肩入れをしてしまったためにゼオスは罰せられてしまい、封印刑に処せられてしまったわけですし。
もちろん、恣意的な運用を法の執行者が出来ないように、その振る舞いが厳しく監視されるのは当然なのですけれど、法の悪用をこれほど大仰にやってしまっている税悪魔に対して、マルサのような積極的能動的に違反者を摘発して回る税天使はいないのだろうか。
ゼオスがその権限も持っている税天使なのかもしれないけれど。

さて、今回はそのゼオスの過去がメインとなってくる。数百年前、まだ彼女が人間だった頃の昔の話。敵対的買収という現代の経済活動と、徴税人という近代には消滅した過去の税法の徒花が同じ巻で語られるというのは面白い構成ではあるんだけれど、過去の戦乱の時代に徴税人という制度を廃止したザイ・オーの先進的な思想をより引き立てさせるためにも、現代パートではもっと徴税人制度などと対比させる形での現代の税法を見せてほしかったかなあ、とちょっと思った。今回は現代パート、ちょっと税法とは関係ないかなりハチャメチャな邪法がまかり通っていましたし、あんまり税法の勉強にはならない展開でしたしね。
しかし、ゼオスの過去があんなだったとは。今のクールで融通の聞きにくい堅物天使とは、人間時代はキャラが違っていた、みたいな話は前からありましたけれど、キャラが違うどころじゃなくてもう別人じゃないですか。
これはブルーやメイが気づかなかったのも無理はない。ってか、完全にメイ互換の考えるより手が出る方が早い脳筋キャラじゃないですかー。これがどうやったら今のゼオスになるんだ? その変遷が想像できなさすぎる。
それだけ、彼女が税天使になるに至った後悔が大きく、人格を変えるほどのものだったのか。まあそりゃそうだろうね。彼女が自ら語った過去からすれば。
メイも、ブルーを喪ってそのきっかけに自分の判断があったとしたら、ゼオスみたいになる可能性もあるんだろうか。
いや、それよりも「手段を選べないときほど手段を選ばなければならない」というゼオスの後悔。それに反する形でかつてのザイと同じように、手段を選べないほどの大ピンチの中で手段を選ばなかったクゥ。その判断がどう影響してくるのか。これって、大きなターニングポイントだったんだろうか。

ところであの赤毛繋がりなど共通性の高さは、メイとゼオスに何らかの血縁関係とかあるんだろうかねえ。ゼオスとザイが実際どういう関係になったか、についてはゼオスは語ってくれませんでしたしね。それこそ無二というほど親しく近しい関係だったことは間違いないのですが。
で、過去の世界ではブルーたち魔王の一族の始祖となった少年タスクと、その兄貴分であり盟友でもあったザイ・オーという魔界統一の立役者であり改革者、と将来になる若者たちと出会うのだけれど……、これってモデルは徳川家康と織田信長ですよね。エンド国って思いっきり尾張だし、トライセン国って三河じゃまいかーw



変人のサラダボウル ★★★☆   



【変人のサラダボウル】  平坂読/カントク ガガガ文庫

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異界の麒麟児、混迷の時代に笑顔をお届け!

貧乏探偵、鏑矢惣助が尾行中に出逢ったのは、魔術を操る異世界の皇女サラだった。

なし崩し的にサラとの同居生活を始める惣助だが、サラはあっという間に現代日本に馴染んでいく。
一方、サラに続いて転移してきた女騎士リヴィアは、ホームレスに身をやつしながらも意外と楽しい日々を送る。

前向きにたくましく生きる二人の異世界人の姿は、惣助のほか、鬼畜弁護士、別れさせ工作員、宗教家といったこの地に生きる変わり者達にも影響を与えていき――。

平坂読×カントクコンビがこの時代に放つ、天下無双の群像喜劇、堂々登場!

国が滅びた際に「門」を通って逃げてきた帝国の姫サラがたどり着いたのは、現代日本の岐阜であった。どこだよ岐阜って。と言われれば、美濃ですと返します。少なくとも、関西者としては関東圏に比べればまだ良くわかる。歴史ものでも信長主役となると、一番最初に濃厚に描写されるところですもんね。
でも、信長って尾張出身だからね! 美濃は斎藤さん家じゃないですか。まあ岐阜城築いて拠点としたのだから、信長の本拠というのは間違いじゃないけれど。
いやでも、あんな堂々と黄金の織田信長像を駅前に建ててるのってなんか凄いですよね。あれ、実際にあるのか。存在するのか。凄えな。凄えな。色んな意味で凄いとしか言いようがない。
ああでも、サラがどうして岐阜に現れたのかはちゃんと理由があったのか。

さても、異世界から現代日本に異世界の姫と女騎士が現れて、となると現代日本と異世界とのギャップによって生じるドタバタ劇が、と言いたい所だけれど、この姫サラと騎士リヴィアと来たら速攻で現代に馴染み、或いはサラに至ってはおっさんの領域に足突っ込んでいる探偵鏑矢惣助よりもよほど現代のツールに通じてしまうくらい、まあ毒されてしまうので、あまり異世界の少女達、という風情ではない。魔法とか使えるけどね。
リヴィアに至ってはなんでか練達のホームレスへと馴染んでしまい、たくましく現代日本の一番底らへんの世界を生きている。いや、異世界人にしても元はエリートだった騎士なのに、どうしてホームレスなんて生き方に慣れ親しんでしまったんだろう。素質があったらしいのだが、ホームレスの素質才能って……。
ともあれ、サラは貧乏探偵の居候兼助手として事務所に潜り込み、リヴィアも一度はサラと再会したものの鏑矢の元に転がり込むには鏑矢の稼ぎでは二人を養うことは出来なかったので、早々に事務所を出て再びホームレス生活に勤しむことに。いやさ、わりとハマったんだろうかホームレス生活。
まあ戸籍もなければ外国人としてのビザもない者としては、定住も難しいしまともな職につくのも難しいので仕方ないのだが。
というわけで、リヴィアの元には胡乱な仕事やちょっと法律に引っかかりそうなヤバいあれこれ、さらにはカルトの勧誘など、東京みたいな大都会じゃないけれど、地方都市でもありえるアングラな仄暗い事案が次々と飛び込んだり巻き込まれたりすることになる。
ホームレスに馴染んだとは言え、リヴィアはある意味現代社会とは隔絶した世界で生きてきた人間だ。適応力は十分にあるが、現代社会の闇を見るにはその視点はまだまだフラットだと言える。そんな彼女から見た、仄暗い真っ当ではない生き方をせざるを得ない人々の姿、そんな彼らへのリヴィアの好悪のない率直な感想はなかなか来るものがあるし、彼らからみたリヴィアという馴染みながらも染まらない得意な目立つ存在は色んな意味で注目を引いていくのである。

一方でサラの方はというと、案外マトモに鏑矢の探偵業の手伝いをしてるんですよね。食っちゃ寝してばかり、なんてことはなくなんだかんだと生意気言いながらもお手伝いに勤しんでいる。好奇心の為せるところだろうけれど、それなりに働き者とも言えるじゃないか。むしろ探偵の方が、あんまり教育に良くない探偵のお仕事にまだ子供のサラを連れ歩いていらんものを見せるのを忌避している。
いやしかし、探偵がメインの話で浮気調査や民事トラブル解決など現実の探偵らしい探偵業にひたすら勤しんでいる探偵って、何気に珍しいんじゃないだろうか。
事件を解決したり謎を解いたりする探偵こそフィクションの存在、というのは周知の事実だけれども、創作物に出てくる探偵ってのはまさにそっちの探偵ばかりだから、むしろ現実の探偵業の地道な仕事っぷりが描かれる本作は新鮮でもあり、探偵業務のあれこれが相応にちゃんと描かれているので、知らなかった事を知れるのは面白いなあ。
しかし、アラサーのおっさん予備軍が、名探偵コナンのコナンくんに憧れて探偵を目指してしまった、という話にはちょっとじゃない衝撃を受けてしまった。
え? もうコナンくんに憧れるような子供がおっさんになるような時代なの!? コナンくんって、はじまったのまあまあ前だとは思ってたけれど、まあまあ以前どころかもう大昔なの? いやそりゃもう100巻達しちゃってますけれど。
……そうかー(ショック

サラ姫は御年13歳。対して人生にうらぶれている探偵鏑矢は29歳。まだまだ若いよ! しかし、もう子供が居てもおかしくはない年齢でも有り、でもまだ13歳の子供がいるには若すぎる。
生意気で偉そうで、でも何だかんだと懐いてくれているサラに対して、探偵が抱くのは慈しみの感情であり、自分の子供を見守るような父性、とまあ本人は思っているようだけれど、さてその真実はいずれにあるのか。まあ少なくとも女性を見る目ではないわなあ。若いお父さん的な感情と言えばそうとも言えるし、でも年齢差からいうと兄妹でもおかしくはないんですよね……かなり年齢差あるか。
16歳差、というのは何とも絶妙な塩梅ですよね。サラの13歳という何とも言えない年齢も相まって。
丁度主だった登場人物が出揃ったようなところなので、本格的に話が動き出すのは次回からなのか。
それとも、ずっとこんな調子で日常が続いていくのか。いずれにしても、ついつい目で追いかけてしまいそうな、地方都市に生きる人々のあるがままの日々である。


公務員、中田忍の悪徳 ★★★☆  



【公務員、中田忍の悪徳】  立川 浦々/楝蛙 ガガガ文庫

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未知との遭遇ーー地方公務員×異世界エルフ

区役所福祉生活課支援第一係長、中田忍(32歳独身)。
トレードマークは仏頂面、責任感が強く冷酷で誠実、他人に厳しいが、自分自身にはもっと厳しい男である。
無感動、無愛想、無慈悲の三拍子揃った生き様は、他の職員に“魔王” “爬虫類” “機械生命体“などと評され陰口を叩かれているが、忍はどこ吹く風であった。

ある日の深夜。
仕事から帰宅した忍は、リビングに横たわるエルフの少女を発見した。
濡れタオルで鼻と口を押さえつつ、知恵の歯車を回し始める忍。
仕方あるまい。
忍は、地球の危機を悟ったのだ。

異世界からの来訪者と遭遇した際、まず警戒すべきは“異世界の常在菌”である。
仮に異世界エルフの常在菌が、人類絶滅系の毒素を放出していた場合、焼却処理では間に合わない。ダイオキシンの如く、半端な焼却処理が土壌を侵し、その灰が風に乗り雲になり、毒の雨となって大地に降り注ぐ可能性も否めないのだ。
ならばエルフを即座に、極低温で凍結し、最善で宇宙、あるいは南極、最悪でも知床岬からオホーツクの海底へ廃棄するしかない。

必死に足掻く忍の前で、エルフの両瞼がゆっくりと開きーー

第15回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞した、紛うことなき問題作。
……こりゃあまた、とんでもねー奇作怪作問題作だわー。
落ち物系ヒロイン、あるいは異世界や別世界から突然自分の部屋に見知らぬ女の子が現れて、というわりと古典にもなるだろう古くからある物語の導入から始まる異様な展開。
これ、まず前提として突然部屋に見知らぬ宇宙人だか魔物だか女神だかエルフだか、人間じゃないけど可愛い女の子が現れて、という物語のテンプレートが存在するという共通認識がないと「テンプレートを思いっきり外している」という掴みが得られないんですよね。逆に言うとテンプレートとして周知される展開であるからこそ、幾多の類似して差異がわからなくなってしまうほどの大量の同類項の中から派生形としてこうしたぶっ飛んだものが生まれてしまう、というのもまた面白い話で。
いやいや、まずは本作の話をしよう。
まず、おかしいのは主人公の公務員中田忍の在り方である。生真面目で誠実で面白みのない四角四面の性格をした公務員、というだけでは計り知れない、どこか思考がいつも限界ギリギリかそこを突破した所を歩んでいるかのような特異な人物である。有能ではあるが人の心がわからない、なんてわかりやすく分類できない。人の心がわからないパターンとしても、機械みたいとか怪物みたい、という種類があるけれど、この中田忍の場合人の心がわからないというよりも解釈が違っているというか、感情の存在を知っていてもちろん彼自身もそれを備えているし、理解もしているはずなのだけれど、理解の仕方がちがうというか、同じのハズで他人と共有も出来ているはずなんだけれど、どこか激しくズレているというか。わからん。非常に表現が難しい人物である。
冒頭の、生活保護受給者に対して暴走して入れ込んでしまっていた部下に対して叱責した中田忍は、決して人の心がない、情がない人物じゃないんですよね。むしろ、暴走してしまっている部下の危うさを見抜き、厳しくも鋭くフォローしていたと言っていい。対処法として、それは正しい解釈のはずだ。でも、そこにある真面目さ、硬質さ、理論武装された在り方はどこか非人間的ですらあり、彼の正しさを周囲の人間は畏れてすらいる。
とてもじゃないけれど、付き合いたくない人間だ。プライベートでも仕事でも、だ。
気難しいわけじゃない、話せばわかってくれる。理路整然と説けば、理解して受け入れてくれる。自分が間違っていると思えば素直に正してくれる。でも、その正しさすら四角四面すぎて、なんだか困惑してしまう。
彼に、学生時代から続いている親友関係の人物がいる、という事実にすら驚きを覚えてしまう。まあ、付き合い方さえわかっていれば付き合いやすい人物なのかもしれない。義理堅く友情に厚いとすら言えるだろうし。その発露の仕方は常人の温さと異なっているかもしれないけれど。硬すぎて、痛いかもしれないけれど。親友・直樹義光氏が非常によく出来た器の大きい人物であることは満場一致で賛成をいただけるだろう。もっとも、おおらかに中田忍の言動をニコニコと全部受け入れていられるほど異常人でもなく、ごくごく普通の常識人であるが故に中田の余りにも四角四面なやり方についていけずに振り回されることになるのだが。ほんと、よく友達やってるなあ。
それ以前に、中田にはかつて同棲寸前までいきかけた恋人までいたらしい。ありえない。よほど奇矯な人物か趣味人なのだろう。ある種の生物観察の趣味でもないと付き合えないと思うのだが。
そう考えると、中田忍の特異性をいじって遊ぶ、という楽しみ方を見つけ出している一ノ瀬由奈という人物は、中田への理解の深さも相まって付き合い得る可能性のある人物なのかもしれないけれど、これが恋愛に発展すると安易に考えてしまうこともできにくい。はっきり言って、遊びならともかく真面目には真面目すぎて付き合いきれないんじゃないだろうか、一ノ瀬由奈でも。

さても、本作はエルフという現実の世界には存在しないはずの異生物が突如部屋に現れた際に、中田忍が取ったテンプレとは大幅にハズレた対応を懇切丁寧に描いた怪作である。
異世界交流というよりも、宇宙人との第三種接近遭遇とか第五種接近遭遇とか、そんな方向性の話である。E・Tだって、事態が発覚した際は防護服着込んで家はパッケージングされて封鎖されたよね、というたぐいの話だ。
まああらすじ見ただけで、中田の突拍子もない反応は見て取れるだろう。
一言だけ言わせてもらうと、それだけするならまず警察だか保健所に電話しろよ。自分ひとりで対処しようとするなよ! と言いたい。
その意味では、この中田忍もまた歳こそ行っているものの、悪名高き独善独行的ラノベ主人公を名乗るに相応しい人物なのかもしれない。
社会秩序を独りで背負おうとしなさんなって。防疫の専門家に任せなさいって。

強いて言うなら、それをしなかった、あるいは出来なかった。そうしてしまった場合の「エルフ」の末路を考えた時に本来彼が当然のように行うべき社会秩序を護るための行動を取れなかったことこそが、彼の悪徳のはじまりだったのかもしれない。
荒唐無稽で現実的に実行不可能もいいところな、凍結して知床湾に沈める云々と言い募っていたのも、自分の中に生じた悪徳を誤魔化すためだったのかも知れない。
彼にとって正しいこととは、社会を保全することだ。自分たちが生きているこの社会を、安定させつづけることだ。彼の務める役所の、生活保護受給関連の仕事も突き詰めればこの国の安定を担う仕事であり、彼はその仕事を正しいものとして行っている。
彼が暴走した部下を叱責したのも、それが彼女の独善であり自己満足であり、生活保護受給の理念に反するものであり、彼女自身も生活保護受給者自身も救われない、真っ当な人間として扱われない自分を認められなくなるものだったからだ。国も国民も、損なわれる行為だったからだ。
それは、彼が考える正しさに則っている。
そして、中田の在り方にとっては、エルフは存在してはならないものだった。エルフを保護し守るということは、彼にとって独善であり自己満足であり正しくない、悪徳であったのだ。
それは、形こそ違えども先日部下に叱責した内容がそのまま自分に返ってくるものだった。少なくとも、彼自身はそう捉えていたのではないだろうか。あの部下の自分に酔いかけ暴走しかけていた仕事の内容とは、情けのかけかたが全然違うとは思うのだけれど、それでも彼にとって自分の行いが社会正義に反するという負荷を感じていた事は否めないだろう。
彼の苦悩は、公的機関の介入を許さず、親友の義光と一ノ瀬由奈という部下の意見と手を借りる事となってしまい、悪徳を成す言い訳を手に入れてしまう。
混乱し悩みながら、エルフとコミュニケーションをはかりながら、彼は悪徳を受け入れる。エルフを保護するという選択肢を選んでしまう。それは、軽く見ればどこかで拾ってきたペットをこっそり飼うようなもので、未だ対等な人格を持つ異世界の人類との接触とは言い切れないコミュニケーションにも見えるのだが、それでも彼は悪徳を成した。
彼もまた、ただの情持つ人間だったのだ。どれほど特異で異常に見えても。この物語は、その証明であったのかもしれない。


剣と魔法の税金対策 3 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 3】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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今度はマンドラゴラ商売で税金対策!?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀が交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!
え、神様に税金とられるの!? “世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚!
そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女!いろいろ頑張っても焼け石に水の税金対策(泣)。とにかくお金を稼がなきゃ!ということで思いついたのが、魔族・人族共同の産業振興計画!
不思議の妙薬の原料マンドラゴラ栽培・輸出でがっぽりだ!しかし、そこに、高級マンドラゴラブランドを持つエルフの国から横槍が!
「ぶっ飛ばす!」とイキりたつ妻メイを宥めてなんとか挑んだ国際交渉。しかしその先に待っていたのはめんどくさーい「関税」がらみの陰謀だった!!
せっかくのマンドラゴラ事業がふいになるどころが、またまた魔族の国がすっからかんになるピンチ!!
「異世界初の異世界税制コメディ」、待望の第三弾!
今回のテーマは関税!
……いや、関税って一般家庭関係なくないですか!? 強いて言うなら企業法人で輸出入に業務での関わりがある場合は、税理士によるアドバイザリーやコンサルティングなどが設けられる場合があるみたいですけど。
って、そう言えばこれってブルーとメイのご夫婦の家庭内のお話じゃなくて、魔王を頂点とする魔族国家が主体なのですから、他国との貿易に際しての関税問題というのは出てきますか。いや、そこまで行くと税理士は関係ないような気がするのですが、専門家として適切な知識の開陳と助言を行うという意味でクゥはすでに魔族国家の重要なポディションについている気がします。これ、税理士としての契約だけじゃなくて、政策スタッフとしてのお給料も払わないとダメなんじゃないだろうか。前からだけど、がっつり国家運営の方に噛んでますしねえ。
というわけで、今回も「関税」という貿易にかけられる税金について色々と詳しいお話がありました。知識皆無のメイを出汁にして、非常にわかりやすく簡潔端的に例えを用いて噛み砕いて教えてくれるので概略としてこんなもんだよー、というのがすんなり頭に入ってくるのはホントありがたい。
ついでに、今回はなかなか忙しくて折角の新婚生活の甘酸っぱさを味わえなかった今までを取り戻すように、新婚旅行であーる!
と、言っても貿易問題の解消を兼ねてのお仕事兼任だったので、そんなゆっくり出来る展開はなかったのですけれど、それでも今回の話にはブルーとメイが夫婦、という点が大きなポイントになっていた気がします。それに、ちゃんと夫婦っぽい雰囲気も醸し出してましたもんねえ。
というか、ちゃんともう夫婦という関係、二人の間でも定着してるんだ。嫁さんにダダ甘なブルーは元よりメイの方も照れはするものの、今更夫婦という関係について他人から言われても否定とか誤魔化したりとかしないですし、妻、奥さんという立場で紹介されても受け入れてるんですよね、照れるけど。
いやー……新婚生活、思った以上に順調なのでは、これ?
何気におっとりとして庶民的だけれど、ちゃんと魔王として王侯貴族の品格や立ち居振る舞い、貴種としての視点を持つブルーと、最下層から生きるためになんでもやって這い上がってきたが故にアンダーグラウンドというアウトローの世界を熟知しているメイが、それぞれの持ちえる知見、スキル、ネゴシエーションスタイルによって、この貿易問題がどこから生じているのか、の真相にそれぞれのルートから手繰っていって辿り着くの、これはこれで面白い形の夫婦の共同作業だったんじゃないでしょうか。
それにこれって、異種族間の結婚という以上に貴種と最下層民の身分違いの結婚という側面があったんだなあ、と改めて認識させてくれた気がします。
そもそも、生き方が違っていた二人が同じ道を歩き同じ幸せを共有しあう、という姿こそが、今回の問題を突破する鍵になっていたのでしょう。
そう考えると、その鍵と鍵穴を無視しして強引に扉をこじ開けようとしたクゥは、まだまだ人生経験が足りていない、という事になるんでしょうかね。呪いの魔具に引っ張られてしまっていた、にしても。
そこは、敢えてメイとブルーが止めてあげるべきだったのかもしれませんけれど、何気に二人共クゥには甘いからなあ。これまでの実績もあることで、彼女に絶対の信頼を寄せていた、というのも大きいのでしょうけれど。
だから、ブルーとメイはクゥの家族には成れても、彼女の師や先生にはなれないのかもしれません。まあ、基本クゥはむしろこの夫婦に助言し知識を授け方針を告げる立場なわけですしね。
クゥの未熟な部分を教え導く立ち位置は、ずっとゼオスがやってくれていたということか。
彼女も、なかなか思いもよらぬ過去を持っているようで。ってか、ゼオスが過去にどういう存在だったかって、明かされたのこれが初めてですよね。まさか、そうだったのか。
これまでも、何くれとなくアドバイスしてくれてたゼオスですけれど、今回はほんと無関係のところで私的にあれこれと手助けしてくれたのは、税天使としてはそりゃ拙かったですよね。
法に携わる人は、だからこそ厳格に恣意を排し無くてはいけないのですから。今までもめちゃくちゃ贔屓してくれてた気もしますけれど、あれギリギリセーフだったの多分に有情ではあると思うのですが、今回そのライン超えちゃったかー。
ゼオスがどうなったか、それも気になるところですけれど、何気に天使と反対側となる勢力が出てきたのは気になるところだなあ。ってか、あいつらって「ゼイホウ」的にはどういう存在になるんだろう。




魔女と猟犬 2 ★★★★   



【魔女と猟犬 2】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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静寂に包まれた“氷の城”で巻き起こる殺戮

“鏡の魔女”テレサリサと共にレーヴェを脱出したロロは、魔力の影響で眠り続けるデリリウムを連れてキャンパスフェローへと戻ってくる。だが、王国アメリアによって陥落された故郷は、流血と破壊に蹂躙され見る影もなかった……。

ロロとテレサリサは城下町に作られた隠れ処にて、城から逃げ延びた者たちと合流する。領主バド・グレースの留守を預かる宰相ブラッセリ―と、<鉄火の騎士団>の副団長であり、ハートランドの妻であるヴィクトリアをはじめとする九十二名の者たち。

彼らは隠れ処を捨て、<北の国>へ向かうことを決断する。そこには、バドが生前に同盟を結んだ雪王ホーリオが治める<入り江の集落ギオ>がある。きっと助けになってくれるはずとの目算からだった。そして、ロロには<北の国>へ行くもうひとつの目的があった。それは、氷の城に住むという“雪の魔女”を味方につけること――。

その頃、王国アメリアの王都にあるルーシー教の総本山“ティンクル大聖堂”には、魔術師の最高位を冠する九人の者――“九使徒”が集められていた。

これはッ、マジかーー!
いやあ、これは驚いた、マジかロロよ。一巻のあの怒涛すぎる展開もあまりにも予想外で驚愕させられたけれど、今回のそれも常道からは大いに外れていって、まさかそんな事に!? と、唸らされる事になってしまった。
容赦ないと言えば容赦全然ないよなあ。というよりも、主人公であるロロに優しくないというべきか、或いはロロにとって彼に背負わされてしまったものが重すぎた、という事なのかもしれない。
当代黒犬。殺す覚悟を決めた彼の実力は、それこそ比類なきものなのは疑いようもありません。アメリアに対抗するために魔女を集める旅ですが、ぶっちゃけ黒犬ロロはその魔女に引けを取らない「戦力」でもあるんですよね。魔法という未知すぎる力に惑わされ苦境に立たされますけれど、テレサリサが丁寧に魔法について講義してくれたお陰で、何もわからない意味不明の存在ではなく、ちゃんと戦う前から相手を考察する余地ができた。それは黒犬にとってゼロからとてつもないアドバンテージを得たも同然のことで、歴戦に魔術師を相手にしても一方的にやられてしまう可能性は大いに減じたのではないだろうか。
とはいえ、九使徒に連なるアメリアの魔術師たちは、謎多く対峙して相手の必殺を躱しながらその正体を見極めなければならないというハードルの高さなのですが。
突然、首が90度捻られる、とか完全に初見殺しじゃないですかー、怖いなんてもんじゃねえ。ホラー映画かよ。
そういうのを相手に出来るだけでも、化け物じみた戦力なんですよね、黒犬。
でも、戦闘力が高いこととロロという人間が強いことは、また別の話だったんですよね。真面目で責任感が強く、忠誠心も高く……それでもまだ十代の幼さが拭いきれない若者だったのだ、このロロという少年は。
そんな彼に、王の遺命が背負わされた。王が殺され使節団は全滅し、生き残った姫も目を覚まさず、それでもなお姫を守り、魔女を集めろ、という王の遺命に従い、アメリアの追手と戦いながら蹂躙された故郷を後に戦い続ける日々。
そんな素振り、一切見せていなかったけれど、見せていなかったことこそがロロがどれだけ張り詰めきり、限界に達していたかの証左だったのか。
我武者羅に必死に限界を踏み越えて頑張り続け……でもその重さに苦しさに辛さに、どこかで楽になりたいという願望が鈴を鳴らし続けていたのだ。
稀代の暗殺者、その後継であろうとも。この子は思いの外、普通の子だったのだ、きっと。

テレサリサにとっては、これはしごを外されたようなものなんだろうか。でも、ロロが本当はもう疲れ切り心折れて死にたがっていた事に気づいたテレサリサは、そのまま彼を死なせてあげたほうがいいんじゃないだろうか、と思ってしまうんですよね。そう考えてしまうところが、この魔女の優しさなんでしょうね。
それでも、彼女は雪の魔女ファンネルと共に彼の生命をつなぐことになる。それは、ロロがテレサリサの目的に必要な人間である、ということも理由なのだろうけれど。
それ以上の想いも、ロロに抱きつつあるのだろうか。ファンネルもそうだけれど、ロロへの「よすが」が感じられるんですよね。そこまで深く心交わらせるような関係はまだ無いはずなのだけれど、魔女となり人との交わりを絶たれていたテレサリサにとって、ファンネルにとって、ロロは魔女を恐れず怯えず人として接してくれた数少ない一人。それが使命ゆえであったとしても、ロロは常に誠実だった。そんな彼によすがを感じてしまう。心を幾ばくかでも寄せてしまう。それは、とても人間らしい情動なんじゃないだろうか。

魔女とはなんなのか。
同じ人と隔絶した存在として、アメリアの九使徒たちがいるけれど、あれらは本当に不気味で人として完全にハズレきってしまっているのがよくわかるんですよね。異常者たちであり異端であり、人の心を感じさせない、或いは人としての心を修復不可能なまでに歪めてしまっているかのような、異なる者ども。
それに比べて魔女たちは……その心根が人としてあまりに情深かったが故に魔女になった、そんな存在にも見えるんですよね。あまりにも人らしいからこそ人でなくなってしまった者たち。
その壮絶さは、美しさとなって容貌に映し出されている。表紙絵に描かれた一巻のテレサリサ、この二巻のファンネル。ともに、目に焼き付くような強烈な存在感であり、息を呑むような凄絶なまでの美しさだ。
そこに垣間見えるのは、一心不乱の生き様か。
こうして読み終えてみると、タイトルの魔女と猟犬というそれがすごくしっくり来る。確かに、この物語は魔女と猟犬が主人公の物語だ。彼と彼女らの切々とした在り方を書き記した物語だ。

個人的には、あの雪の国の姉と弟には、もう一歩踏み込んだ再会が欲しかった。別れも、再会も、弟はついに姉と向き合うことが出来ないままだったのだから。姉は、弱虫だからべつにいい、と言うのかもしれないけれど。この姉弟のお互いに対して抱いているだろう複雑な情念を、ぶつけることも交わすこともなく、通り過ぎていってしまったから。願わくば、もう一度何らかの形で再会と決着があれば、と思わずにいられない。

そして、まさかのカプチノ一人旅。しぶとい、このメイドしぶとい!


董白伝~魔王令嬢から始める三国志~ 4 ★★★★   



【董白伝~魔王令嬢から始める三国志~ 4】  伊崎 喬助/ カンザリン ガガガ文庫

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孫家の姫、現る!

拉致された董白は、曹操の根拠地である許昌に連れてこられる。
そこに現れたのは、孫家の姫、孫尚香だった。
「ここから出て自由になりたいなら、わたしと来い」
曹操は、袁術と呂布が手を組んだ“長江同盟”と対立しており、そこには彼女の父、孫堅も参加しているらしい。
しかし、その同盟も一枚岩とはいかないようで……?
董白の身柄を押さえた曹操、袁紹軍の客将となった劉備、そして長江同盟で機を窺う孫堅――形を変えた“三者鼎立”は、歴史に新たな風を吹かせるか。

打擲幼女の覇道ファンタジー、動乱の第4幕!

主君である劉協陛下もあちらこちらにお持ち帰りされた人だけれど、董白ちゃんはさらにミニマムで持ち運びしやすいせいか、単体で軽々と携帯されてお持ち帰りされること度々。
確かになんかこう、持って帰りやすそうな体型してたけどさ。あんまりデカくないとはいえ男の曹操はともかくとして、同じ幼女っぽい孫尚香にもお持ち帰りされてしまうとは。
こんな事なら劉協くんも遠慮してないで、さっさと董白ちゃんお持ち帰りしておけばよかったのに。

というわけで、本拠である長安から強制的に引っ剥がされ、群雄たちが割拠する中原へと引っ張り出されてしまった董白ちゃん。人材マニアな曹操が董白ちゃんをただの人質なんて扱いをするはずもなく、彼女の才覚を試すように様々な難題を突きつけてくる。突きつけてくるだけならまだマシで、取り敢えずなんかやれ、とばかりに渦中に放り込んでくるのだからたまらない。いきなり戦場に放り込まれて部隊を率いさせられるわ、先日反董白連合で盛大に戦った相手の頭目であるところの袁紹の前に連れてこられた日には、董白ちゃん白目である。
凡人らしく目まぐるしすぎる上に過酷過ぎる状況に狼狽えてるばかりだと、曹操ってば露骨に白けた様子を見せだして、飽きたらポイするぞ、とばかりに強制的に才を示せ、な状況に追い込まれて、これってどう考えてもブラックですよね?
曹操陣営、こんな主君に仕えて常に試されているのだとしたら、相当に過酷である。精神病みそう。
況してや、仕えたつもりなんかない董白ちゃんである。ってか拉致られて無理やり連れて来られた挙げ句にいきなり最前線送りですもんね。董白ちゃん、少女なのに。さらにいうと漢の相国なのにw

このまま曹操陣営に抑留されていたら、それこそ絞りカスが出ないところまで絞られ尽くされそうだったので、孫尚香ちゃんが目ざとく董白ちゃん、掻っ攫っていってくれたのは結果だけみたら幸いだったのかもしれない。
少なくとも孫尚香はアホの娘で人の言うことをまったく聞かなくても、コントロールは出来る娘だったし、その親の孫堅はというと野獣みたいな男ではあるが狡猾な獣らしく話は出来るし交渉も効くタイプだったんですよね。いやあ、孫堅もその荒さやずる賢さは奸雄と言っていいヤバい人だったのかもしれないけれど、人を限界まで追い込むような狡猾さは曹操以上にヤバいやつはいないし、暴力の権化としては呂布以上の凶暴な輩はいないだけに、相対的にまともに見えるんですよね、孫堅は。
義理堅く、身内家族に対しては情が厚い、というまっとうな感性の持ち主ですし。
不義即斬、という関羽みたいなホントの意味でまったく人の話聞かないし、自分の正義だけしか見ていないようなヤバい奴に比べれば、ほんとにマトモな人だった、孫堅は。
でも、逆にここまで突き抜けた輩が跋扈する三国志の世界においては、まともであるというのはむしろハンデだったのかもしれないが。
それでも、董白ちゃんの唯一の武器であった口撃が、前みたいにコントロールできない自爆技だった頃に比べると、ある程度制御できる上に自力で発動させるようになってきたのはちょっとした安心感である。口八丁で切り抜けるだけでなく、相手を騙す云々ではなくその鋭い舌鋒で相手の精神を切って捨てる武器なだけに、痛快でもありますし。

さても、中原の戦況は群雄割拠の様相を呈しつつ、袁紹を中心とした華北連合と、袁術・呂布・孫堅による長江同盟という二大勢力が成り立ち、対立を深めつつあるという董白ちゃんの未来知識が通用しない展開に!?
と、思ったら、その内実はなかなか混沌としていて、完全に史実ルートから外れた、というわけでもなさそうなんですよね。というよりも、皮だけは妙なことになっているけれど、中身に関しては思いの外ルートこそ紆余曲折経ているけれど、結果として史実通りに進んでいるのかもしれない。

それでも、趙雲・馬超・甘寧という三人が董白ちゃんについてくれているのは、明確に史実と異なっている部分なので、そこが頼りといえば頼りだよねえ。
特に趙雲はある意味本作のもう一人の主人公、みたいな展開になっていているし。
今回も、ついに天下無双・人中の呂布という三国最強の武将と直接槍を交えることで、もう自分の才能の乏しさというものを嫌というほど痛感させられ、悔しさに惨めさに半泣きになりながら、それでも自身の乏しい才にしがみつき圧倒的すぎる呂布に、犬猿だった馬超と協力して立ち向かう姿は、ちゃんと英傑の一人に相応しい勇姿だったじゃないですか。
うまいこと董白ちゃんが退けた呂布ですけれど、こと暴力、こと戦闘に関しては今まで無双無敵無敗でありつづけ、その驕慢な余裕自信は揺るぎないものがあっただけに、ここでようやく呂布に武で勝利した、痛めつけてやれた、というのは大きいなんてものじゃなかった。どれだけ強くても、こいつチンピラなんだよなあ。それに比べれば、趙雲はどれだけ雑魚で弱くて情けない性格していても、その根底は見事な武人なんだよなあ。
ようやく馬超がそれを認めてくれたのはちょっとうれしい。ってか、馬超と趙雲にフラグ立った?

無事孫堅を助けることが出来、袁術ともなんとか対等に結べ、傍若無人の呂布を退け、東に追いやられていた長安勢力として、南側と盟を結ぶことが出来てよかったよかった、希望が湧いてきた! と、なったところでラストの「ゴンッ」である。
よ、容赦ねぇーッ!! うわー、そう来たか。本作、全然ゆるゆる三国志してくれないじゃないですか。曹操、打つ手打つ手が詰め手すぎて、こいつホントにやっばいわー。
これ、董白ちゃんどうやって生き残れるんだ? 


俺、ツインテールになります。18 ★★★☆  



【俺、ツインテールになります。 18】  水沢 夢/春日歩 ガガガ文庫

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決戦の時。アルティメギル基地へ突入せよ!

ツインテイルズとの激闘の果てに、ついに集結した四体の神のエレメリアン。自分たちを「終の零星」と名乗る彼らは、テイルレッドらの実力を認め、この世界に侵攻しているアルティメギル基地への転送ゲートを手渡す。最後の幹部戦士、そしてアルティメギル首領との対決が目前に迫り、総二たちも緊張を隠せない。
一方で残存軍のエレメリアンたちは「終の零星」が勝手にツインテイルズを基地に招待したことを知り、テイルブルーが乗り込んでくることに怯え、大混乱に陥ってしまう。追いつめられた仲間の姿を見た隊長スワンギルディは、一つの決意を胸にするのだった。
総二は敵の基地へと乗り込む前に、心残りがないよう日常を謳歌しようと提案。トゥアールが、慧理那が、イースナが、思い思いに総二との時間を過ごす。愛香もまた、少しでも総二との仲を進展させたいと奮い立っていた。
しかし、そんな彼らの願いを余所に、世界ではツインテールの地上絵が現れ、ツインテール型に火山が噴火するなど、徐々にカタストロフィーの前兆が起き始めてしまう……!
決戦の時、来たる。ツインテールへの愛を胸に、今こそ敵の本拠地へ突入せよ、ツインテイルズ!!

変態とは、真の変態とは修行し特訓して為るものではないのだ。いつの間にかごく自然に成っているものなのだ。結果として、変態と呼ばれる者に成るだけなのだ。
そこが心得違いだったんだな、スワンギルディ。君は真面目すぎたのだ。その真面目さを、自分の趣味趣向にのみ突き詰めていたら、君は並ぶもののない変態になっていただろう。だが君は、その真面目さを勤勉さを、憧れの人たちを真似ることその背を追いかけることに費やしてしまった。彼らが何を愛し、何にその全身全霊を捧げていたのかには着目せず。
だが、そんな彼を皆が愛していたのだろうな。そんな彼が、みんな可愛くて仕方なかったのだ。
残念ながら、ツインテイルズはそこまでの縁をスワンギルディと結ぶことは叶わなかった。結翼唯乃が健在だったなら、フェニックスギルディとも親しかったスワンギルディと何らかの形でもう少し関わりも増えていたかもしれない。
アルティメギルの中で最初期から着々と成長を続けたスワンギルディ。逆に言うと、ほぼアルティメギルの中でのみ彼の物語は進んでいて、ツインテイルズとあまり深い関わりのないままここまで来てしまったんですね。もし、彼とツインテイルズと橋渡しとなる人物が居たならば。彼との最後の戦いももう少し噛み合うものになったんじゃないだろうか。
ドラグギルディをはじめとする、折に触れてツインテイルズと激闘を繰り広げたライバルたち。敵でありながら戦友と呼ぶに相応しかった彼らとは、戦いながらも魂から相通じるものがあった。だからこそ、彼らとの戦いは滾るように熱いものになったのだ。
それが欠けていたスワンギルディとの最後の戦いが、熱量に欠けたものになってしまったのは、彼の成長を見守ってきた身としても些か残念と言ってしまっていいものだった。
願わくば、この戦いこそが因縁と成り得るものであれば、と思うばかり。彼の好漢の消え方が特殊だったのは、再登場フラグだと思いたい。

さて、ついに敵首領からの招待状が届き、最終決戦が間近と迫る。敵の本拠地に乗り込む、というと敵勢力を追い詰めているようにも見えるけれど、同時に敵地に乗り込むわけで、帰ってこれないかもしれない、という決死感も漂っているわけですね。
だからこそ、決戦前夜は思い残すことがないように未練を果たすのが、これまでつけていなかった決着を、精算を果たすのが王道というやつなのです。
相変わらず蛮族が暴れ、変態が壁に埋まり、露出狂が脱ぎ、という荒行のごとき穏やかな日常を、かけがえのないものとして大切に過ごしながら、終わりの予感を噛みしめるテイルズたち。
この戦いが終わったら。これまでがむしゃらに戦ってきた、その後を、これまであまり考えてこなかった「未来」へと思いを馳せる。
そして、告げられないままずっと平坦な胸に秘めていた想いを、打ち明ける勇気を振り絞るタイミングでもあった。
愛香出陣、というには切羽詰まってもヘタレる蛮族である。トゥアールがせっせと塩を送るんですよね。煽り倒しながら促すわけですよ。ほんと、トゥアールって場合によっては総二よりも愛香の方が好きなんじゃないか、と思うくらい愛香にだだ甘なんですよねえ。
ただし、最近ヒロイン感がとみにましていたのは、尊先生の方なのですが。婚期を逃しかけて狂乱していたのも今は昔。最近は本気で落ち着いちゃって、婚姻届ネタも本気のままではあるんだけど、以前のような殺気や切羽詰まった問答無用さもなく。ちょっとした冗談交じりながら、深い愛情の籠もった、でも押し付けがましくなくむしろ包容感のある穏やかな雰囲気が、なんだか自然に婚姻届にサインしてしまいそうな流れを感じてしまうんですよね。
なんか、いつの間にか他のヒロイン差し置いて総二と添い遂げてるの尊先生なんじゃないか? と思わせるようなナチュラルさが。
元々、婚期云々を除けば人格的に非常にまともなのは折り紙付き。健全で正常で精神的にも安定していて家庭的で女性の魅力に溢れていて……瑕疵が見当たりません! 瑕疵しかないほかのヒロインと比べて……比べて……比べるのが間違っています!
まあ愛香も女の子としては非常に可愛らしいですし。あの蛮族さは総二に対しては一切発揮されないので、総二に対しては純粋に幼馴染としてイチャイチャしえる人材なのですけど。
ただ、ここに来て総二はもう今までと比べてもちょっと大丈夫か? と思えるくらい、認識力がツインテールになってるんですよね。思考もあらゆるものがツインテール互換になっているし。
大丈夫か? まだ人間か? いい加減、侵食が完了に近い所まで来ている気がするんですよね。とはいえ、ここから人間の側に後戻りするというのも、総二らしくないですし。この主人公、どうなってしまうのが一番良い形なんだろう。
愛香は本当に頑張って勇気出しましたけれど、総二はそれに男として応える感性を持っているのだろうか。

首領との初対面は、消化不良のまま一旦仕切り直しになりましたけれど。本当の最終決戦となるには、やっぱりまだまだ手札が足りないですよね。

シリーズ感想

時をかけてきた娘、増えました。 ★★★★   



【時をかけてきた娘、増えました。】  今慈 ムジナ/木なこ ガガガ文庫

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未来からの娘、来る。え? 一人じゃない?

気になるクラスの女の子、安達藍に話しかけることもできず、特別なことなど何もない高校生活。

でもある日、自室に発生したワームホールから、未来から来た僕の娘が現れる!?
「わたしは安達七彩。大女優、安達藍の娘です」
未来から娘が来たこと。そして奥さんが、あの安達!?
混乱する僕をよそに、七彩は安達と僕をくっつけるために奔走する。

そのお陰か、安達とも少し親しくなり未来への希望が見えた、ある日の夕方。
七彩と公園を歩いていると……
「あたしとママがいながら一体どういうわけ!?」
また突如現れたワームホールから、別の娘が現れた!!

僕が未来で浮気しているかもしれないということはさておき、もう一つの運命の相手に出会いに行くことに。
まさか、これが未来での浮気につながるんじゃ……?

――運命の相手が二人!?
今、未来の娘も参加した、時空や恋がみだれるラブコメディが開幕する!!
未来から自分達の子供を名乗る娘が来て、まだ現在では恋人同士じゃない主人公とヒロインの間を取り持とうと奔走する、みたいな展開の話は定番の一つとして存在しますけれど、それが異なる平行未来から母親の違う娘が自分の母親とくっつけるべく現れる、というパターンはなかなか珍しい。
場合によってはどちらかの存在が消えてしまう、という修羅モードになってしまいますもんね。幸いにして、この作品においては主人公の清水くんがヒロインのどちらを選ぼうと、選ばれなかった側の娘は二度とこの時間軸に接続できなくなる、というだけで歴史自体が消滅してしまうようなえげつない展開にはならないようなので一安心ではあるのですが。
下手をすると、自分達の世界を守るために殺伐を通り越して血風が舞いかねない案件になってしまいますからね。主人公もそんなんなったらラブコメとかしてられませんから、気分的にも。
しかし、二人の娘たちの奔走のおかげで強制的に「二股」を掛けかねない立場に立たされてしまう清水くん……のはずなんですけど。
……いやこれ、片方のヒロイン、安達藍がちょっと強烈すぎやしませんかね!?
元々清水は彼女に片思いしていて、もう一人のヒロインとなる小日向の方は認知すらしていなかった、というスタートラインの差があるのですが、そういう清水の認知や恋心の問題じゃなくてただただひたすらにこの「安達藍」という娘のキャラクターの存在感が激烈すぎるんですよ。
彼女・安達は天才である。未来においては大女優として大成することになる演技の天才。全国に知られた名門演劇部ではあるものの、高校の部活程度に収まる器ではない本物。
この天才キャラ、というのが曲者なのだ。天才という冠を被るキャラは多かれど、本当の意味で「天才」である事を描かれたキャラクターは少ない。並の筆力、並の感性では「本物の天才」というものを表現しきれないからだ。自然、天才と言っても普遍的な理解の範疇に収まってしまう。
しかして、この安達藍という人物はどうだろう。
彼女が本当に天才なのかはわからない。だが、この少女が見ている世界は常人が見ている世界と全く異なる地平に存在しているのは確かだ。同じ言葉を喋り、同じ世界を見ているはずなのに、彼女と他の人間が見ているもの、聞こえているものは決して合致しない。逸脱してしまっている存在だ。
その回路の接続を間違えてしまったかのような在り方は、作者のデビュー作である【ふあゆ】に出てくる登場人物たちを想起させられた。あれらこそはまさに正気と狂気の地平を揺るぎなく綱渡りする者たちだったけれど、それと比べると安達は決して怪物のような類ではない。自分が食い違ってしまっている事に怯え、不安に苛まれながら、自分の世界と繋がる人に恋い焦がれるただの少女だ。
彼女にとって、演技とは生きがいであると同時に他者と世界を接続させるツールでもあるのだろう。「演じる」という行為を通じて、何とか安達は他の人達と意思疎通を図ろうとしているのだ。
親友である持田恵はその「演技」を抜きにしても自分と繋がろうとしてくれる人だ。その恵相手ですら意識の地平が違うことでコミュニケーションを損失する事が度重なり、何も動じていない感じていないような無表情の奥で彼女がかなりの悩みを抱え、模索している事が伺える。
そんな中で、安達は清水という同級生と出会ったのだ。演技抜きで、何もかもが食い違ってしまう自分の言動を、そのまま受け入れてくれる少年に。
実のところ、清水は安達の世界の理解者ではない。彼は他の人と何も変わることなく、安達が存在している地平を認識できない。別に理解したから彼女の言動を受け入れているわけじゃないのだ。
わからなくても、通じていなくても、ただあるがまま受け入れているだけに過ぎない。流されているだけ、とも言えるかもしれない。そのため、なあなあで対応したために致命的な錯誤をおかしてしまう事が度々繰り返される。
それでも、安達にとって清水という人物はある意味ちゃんと自分と繋がろうとしてくれた数少ない人であり、きっと初めての異性だったのだ。
気になるし、意識する。興味を抱き、関心が注がれ、彼のことを目で追うようになる。よくよく見ると、安達が彼女にとってはかなり必死に懸命に、清水と意思疎通を図ろうとしているのが見て取れる。身振り手振りで言葉の通じない相手に何とか意思を伝えようとするように、安達藍にとってはあの唐突で何を考えているかわからないマイペースの言動は、必死のコミュニケーションだったではないだろうか。
そう考えて見ると、途端に安達の宇宙人めいた不思議ちゃんの在り方に、生の感情が透けて見えてくる。彼女は本当に、懸命だったのだ。必死だったのだ。
だからこそ、清水の主体性に欠けた応答に真面目に取り組み、彼の言葉を真剣に捉え、結局どうしても彼と地平を同じくできず、どうしようもない錯誤がお互いの間に横たわっているのだと思い知った時、演じるという行為を突き詰めて自分自身を消し去って徹底改造してしまおう、とまで振り切ってしまったのではないだろうか。
彼女の切実さ、必死さが見えてくると、なんかどうしようもなくこの娘の事が可愛らしく魅力的に見えてきたんですよね。
彼女のそれは、恋だったのだろうか。ただ自分の存在している地平に同じように立ってくれる人を探し求めていただけだったのか、本当の意味で理解してくれる人を求めているだけだったのか、自分を受け入れてくれる人を求めていたのか。演じている自分ではない、素の自分に触れてきた相手への好奇だったのか。
ただ、人が恋しかったのか。
まあそれはどうでもいいことだ、きっと。そのはじまりがどのようなものだろうと、その中身がどのような理由で形成されていようと、さして関係はない。
清水は本当の自分をみつけてくれた。自分自身すらも知らなかった安達藍を引き出してくれた。演劇を手段としてだけではなく、ただただ好きで夢中になれる自分を引っ張り出してくれた。
そうして安達が清水に抱いだ言葉にできないふくらむ気持ち、それはどの地平においても変わらない。恋と呼ぶのだろう。
清水の方も、ただ曖昧なままあるがまま受け入れるのではなく、彼女の見ている地平を理解できなくても、そこに立っている安達を見つけることはできた。理解は出来なくても、見つけて、掴まえて、一緒にいる事が出来たのだ。安達藍はどうしたって一人だろう。でも、孤独にはさせないように寄り添えたのだ。

この二人を取り持つ存在として、娘たちの活動があったわけだけれど、いやでもやっぱりこれ、安達藍というキャラクターの存在感の強烈さが、他の諸々の要素をだいぶかき消しちゃってると思うんですよね。娘たちが引っ掻き回すラブコメとか、ダブルヒロイン制の二股展開とか、安達の存在の眩しさにどうしてもそれ以外が薄くなってしまった印象だったんですよね。
これ、もし続編があったとして小日向ちゃん、巻き返せるのか? 安達以上の存在感を出せるのだろうか。ラストにさらにどかんと大きな爆弾を投じてきましたけれど、果たしてこれが燃料になるのか。なんか、これはこれでオチとなってて、ある意味キレイに終わらせた感もあるんですよね。1巻完結なんだろうか。
いずれにしても、特に安達と清水による独特のコミュニケーションに基づいたラブコメという所にのみ焦点を当てても、それだけでかなりグッと惹きつけられ魅入らされるものがある、思わず低く唸りながら、面白れえぇ、とこぼしてしまうようなお話でした。


剣と魔法の税金対策 2 ★★★☆   



【剣と魔法の税金対策 2】  SOW/三弥 カズトモ ガガガ文庫

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勇者&魔王の偽装夫婦。税金対策は宝探し!

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ?わかった!」
魔王♂と勇者♀、交渉成立!と思ったら、天から「贈与税がかかります」の声。絶対なる税金徴収者である「税天使」が現れた!
え、神様に税金とられるの!? “世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚!そんな二人を助ける『ゼイリシ』の少女!
いろいろ頑張っても焼け石に水の税金対策、次なる一手は、埋蔵金を掘り当てて一発逆転完納作戦!
ところが蓋を開けたら税は増えるわ、おっかない呪いの「負債」はついてくるわで、もっとピンチ!!

「異世界初の異世界税制コメディ」、勢いに乗って第二弾!

税天使さま、メチャメチャ贔屓してくれるな! そもそも役所が向こうから出向いてきて助けてくれる、なんてのはないですからね。取り立て督促は向こうから来るけれど、控除やら救済、過払返金なんかはこっちから言わないと知らんぷりしてスルーするのが常套なのが役所だ、という認識!
でも税天使様のゼオスときたら向こうからわざわざ来てくれて、露骨にクゥたちが陥っている問題を解決するためのあれこれにヒントくれるわけですから。
どれだけクゥたちのことご贔屓にしてくれているのでしょう。
まあそこまでやってくれるのなら、ヒントを匂わして気づかせようなんて回り道をせず、ストレートに助言くれても良かろうに、と思うのですから。税制に反しているわけではなく、法制度に則った解決法なわけですしね。税天使という中立の立場でどこまでの範囲、アドバイス出来るかというのは難しい所なのか。税制が必要に応じてとはいえ複雑難解になってしまったが故の弊害なのだろう。近代税制はこうしてみると決してただ毟り取るだけじゃなく必要以上に毟り取らないための制度である事がわかるのですけれど、税を収める方も収められる方もどうにもそれを忘れがちなんですよね。
ともすればどこからどこまでが中立かもわからなくなる。だからこそ、依頼人の側に立って税制を解釈する「税理士」という存在が必要になってきてしまうのでしょうけれど。
そんでもって、ゼオスが全部助言してくれちゃうと、クゥの出番なくなっちゃいますもんね! それにしても、ゼオスのお膳立てが万端行き届いているのですが。

しかし今回の黒幕、かなり陰険でしたたかなヤツで周到な罠も相まって勇者メイと魔王ブルーの夫婦は大ピンチに陥ってしまうのですけれど、逆に言うと力押しに転じるとまるでこの二人には敵わなかったとも言えるんですよね。特に勇者メイは正面からの切った張ったはやっぱり滅法強いんだよなあ。魔王ブルーの世界半分あげるよ、の取引に危機として応じてしまうような銭ゲバな所がピックアップされてしまっているせいで、身内以外では色眼鏡で見られて場合によってはナメられてる節もあるようなのだけど、事戦闘という事に関しては劣勢に陥ったこともないんじゃないだろうか、この娘。
とは言え、初手に罠によって「負債」を押し付けられてしまった事はあまりにも致命的で、相続税という税制によって掴まされた絶体絶命の危機は、やはり同じ税制をもって取り組み対抗し逆転するという制度解釈バトルへと突入するのである。
そして、ジャッジメントである税天使による露骨なヒント! あからさまな示唆! 無言のアピール! 中立?なにそれ美味しいの? というあからさまなご贔屓があったものの、今回は相手があまりにも税制の悪質な悪用をしていたというのもありましたからね。税制をプラットフォームとして利用した殺人事件ですもんね。そりゃ税天使としては、制度を凶器として利用されるのは不本意極まりないでしょうし。

しかし、ギリギリの綱渡りをしながらの法解釈バトル、というのは類を見ない法廷バトル的なノリがあって面白かったのですけれど、初手からかなり緊急事態に見舞われたせいもあってか、ブルーとメイのせっかくの新婚生活が殆ど色気も甘酸っぱさも味わう間もなかったのが結構残念でもありました。ラブコメ分が足りなかったって事ですよぃ!
ただでさえ資金難でそれどころじゃない状況で、ブルーがあんなんなっちゃいましたからね。キャッキャウフフする余地がなかったが故に仕方ないのですけれど。子供の話になって夫婦である事をなんかすごく意識しちゃったり、ブルーにすがって泣きじゃくっていたというメイの姿はなかなかキュンキュンくるものがあるだけに、次回あるならラブコメ成分もうちょい濃い目だと嬉しいなあ。




筺底のエルピス 7.継続の繋ぎ手 ★★★★★   



【筺底のエルピス 7.継続の繋ぎ手】  オキシ タケヒコ/ toi8 ガガガ文庫

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終わりを拒み、未来を繋げ。

殺戮因果連鎖憑依体――
古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた、殺意の媒介者を狩る三つのゲート組織が、突如陥落した。月に鎮座する異星知性体によって、三体の地上端末が一斉に掌握されてしまったのだ。彼らのネットワーク攻撃によって、ローマの祓魔師たちと全世界の不死者が瞬時に制圧されてしまうという危機の中、同様に沈黙した《門部》本部の地下聖域では、阿黍宗佑が第二心臓を埋め込まれ、無敵の刺客として復活しようとしていた。

異星知性体の目的は、悠久の時と歴史を使い捨ててまでして求め続けた宝――白鬼の奪取。
超人と化した阿黍が復活し、朋之浦結の確保に動き出せば、すべてが終わる。白鬼である彼女が星の彼方に連れ去られてしまうことになれば、三つのワームホールゲートも地上から撤去され、残された人類は鬼への対抗手段を失い、滅亡が確定するのだ。

打開のために残されたタイムリミットは、わずか数十分。すべてを託された百刈圭と、彼が率いる狩人たちは、断ち切られた希望の糸を繋ぎ直すべく、伏魔殿と化した《門部》本部の攻略戦に、いかに挑むのか――。
人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。終焉を拒絶する、反撃の第7弾。


この娘にしてこの親あり。朋之浦結という娘は、その立場上悲劇のヒロインでありあらゆる意味で守護される存在であり、薄幸のお姫様的な立ち位置にあるはずの娘なんですよね、本来なら。
でもこの娘と来たら、いざとなればポイッと生命を捨てるだけの覚悟完了キメちゃっているにも関わらず、自分の境遇に対して悲壮感を持たず、むしろどんとこいとばかりに腕組んで仁王立ちしているような娘であり、それどころか自分が関わることになった超宇宙的な現象や存在に対して好奇心を剥き出しにして目をキラキラさせている始末。現実逃避しているわけじゃないのだけれど、現実と夢を一緒に見られる娘なんですね。或いは現状現在現実を取り敢えず棚に上げておいて、自分の好きなことに夢中になれる変人のたぐいというべきか。
こんな娘を生み出してしまった両親ってのはどんな人なんだろう、という疑問に答えるのがプロローグにおける朋之浦夫妻のアメリカ珍道中である。半ば巻き込まれたとはいえ、諸手を挙げてわーいとばかりに目をキラキラさせてやべえ案件に突っ込んでいくこの夫妻、確かに結の両親以外のなにものでもない。
でもこのバイタリティの塊みたいな所といい、人並みにビビるしやべえ事に首を突っ込んだ事に怯えているのだけれど、いざ好奇心を刺激されたら大概のことはスルーして夢中になっちゃう所とか、なんかもう楽しそうでねえ。娘置き去りにして好き勝手やってるだけあるなあ、と思うんだけど、ここまで人生と仕事を心の底から楽しんでたら、もうなんも言えないですわ。
それは人の業かもしれないけれど、人間という種の幸でもあるのでしょう。人ってこういうハッピーな生き物なんだよね、と改めて教わった気がします。こうしてハッピーでいられるってのは、絶望に負けない強さなんだよなあ。なんとかなる、なんて楽観持ちようがないはずなんだけど、この夫妻の明るさというか生命力の強さは、ネガティブを吹き飛ばすものがありました。
この二人が元気なら、なんか今回は負ける気がしなかった。

というわけで、前回提示された現状は控えめに言って無理ゲーであり、詰みであったはずなんですよね。
全面核戦争が起こる核ミサイルの発射スイッチが押されてしまったのと大して変わらない状況だぞ、これ!?
と、前回の記事では自分こんな風に書いちゃってますけれど。
人類滅亡確定までの残り時間、一年とか数ヶ月とか数週間とかじゃなく、いきなりあと数時間……でしたからね。おまけに、今まで人類史を支え続けていた人類最強の男が敵に回るわ、戦力となるはずの能力者の殆どが一斉に機能停止するわ、青鬼の一本角が出現してリーゼント兄ちゃんを乗っ取るわ、いやこれどないしてもどうにもならんやん!
という意味不明なデッドラインを突きつけての幕でしたからね、前巻。

前提条件が最初から鬼畜すぎる。

ただ、この作品、その前提条件が常に鬼畜なので、登場人物たち今更動じたり絶望しないのが、安心材料というかいい加減ぶっ壊れてるなあ、と思わされるところで。
このどう考えても詰んでるしかない状況を次々にひっくり返していく百刈圭さんが、もうとんでもねーです。
今回実質、圭さん無双。作戦面でも個人戦闘でも、ほぼ全部彼の手のひらの上。むしろ状況が状況だけに、これを片っ端からひっくり返していく圭さんの意味不明さが引き立つぐらいで。
ほぼ最初から最後まで彼の思惑通りにコロコロと事が進んで転がっていったんじゃないだろうか。指し手としても理想的な筋である。さすがは太公望の孫弟子、というべきか。

問題は、にも関わらずなぜか圭さんが肉体面でも精神面でもフルボッコになっているあたりですが。
……いや、なんで無双してるのに、圭さんが一番ボコボコにされてるんだ?
奥菜パパが文字通りグロゲチョに一度死んじゃってるのを除けば、一番ボロカスにされて死にかけてたのも圭さんですし、半分以上死にかけてましたよね、これ。場合によっては後遺症がバーゲンセールなみに残りそうな塩梅ですらありそうですし。
なんでほぼ想定通りに事が進んで、死にかけてるんでしょうねこの人。想定通りに死にかけてる、というべきなんだろうけど、なんでこうそう簡単にポンポンと死にかけるの前提の作戦立てるかなあ、それしかなかったとしても。
まあ、当然怒られます、叱られます。
登場人物のほぼ全員から、片っ端から怒られて叱られて怒鳴られて正座させられて説教されてる主人公。こいつ、別の世界線の自分からすら「クソ童貞」と罵られてる始末ですもんね。自分からすら!
違う組織だろうと敵だろうと味方だろうと生命を救った相手だろうと年上だろうと年下だろうと関係なしに、片っ端から叱られてボロクソに罵られてやんの。
フルボッコである。
まあ、当然なのですが。叱られて然るべきなのですが。
人類の破滅を瀬戸際で回避せしめた英雄のはずなんですが、まあ叱られるよね。

そんなあらゆる人から詰められて正座してるところを囲まれて説教の嵐くらってるようなダメな人からすら、クソミソに貶せれてアホ呼ばわりされてるようなアホが一人いるんですけどね。
百刈燈という、世界を裏から支える三大組織の一つのボスなのですが。圭さんの妹なのですが。

別世界線の圭さん、どうやら結局、燈が本当は変わっていなくて人間だった頃と変わらない心と愛情を持っていた、と気づかずに終わってしまった、このシリーズの1巻で叶と会わなかった圭さんらしいのですが……人形に成り果てたと思っていた妹と別の世界とはいえ再会したと思ったら、こんなアホの娘だった、と知った日にはそりゃ……引きこもるわな。
ちょっとショックが大きすぎてえらいことになってしまった別世界線の圭さんこと「V」には同情を禁じえない。いやこう、突き放して見捨ててしまった妹に虚無を得て行き着くところまで行き着いてしまったのが「V」の末路だったのに、その妹の本性がこれ、だったと見せられたら、もうなんか世界の終わりみたいな絶望だよね。うん、これも絶望絶望。

と、思わず絶望探しをしてしまうほどに、今回の一連の話は何から何まで上手く行った、犠牲もなく助かるわけがないと思っていた人まで救ってしまったわけですから、白昼夢でも見ているのかと疑いたくなるほど理想的な展開だったんですよ。大丈夫なのか、と逆に心配になるのも無理ないよね。
今までのどうしようもない絶望具合を覚えていれば。
でも、そんな奈落の底のように何も見通せぬ、救われる世界が存在しない深い深い絶望の暗闇を、これまで諦めず諦めず突き抜けて突っ切ってきたからこそ、たどり着けたこの最適解とも言えるのです。
いわば、此処こそが希望の切っ先。突端。一番深い闇を突き破ったからこそ、一番明るい光の場所に到達した、と言えるのではないでしょうか。
どれだけ絶望させられたでしょう。どれだけ深淵に突き落とされたでしょう。こんなんどうしようもないじゃないか! と、何度叫ばされたことか。もうダメだ! もう無理だ。こんなの耐えられない、と何度嘆かされたか。
それを、彼らは何度も何度も諦めずに打ち破ってきました。切り裂いてきました。乗り越えてきました。落として無くして喪われたと思ったものを、全部拾い集めながら、無くさずに辿り着いてきたからこそ。
此処なのです。
終わりの見えない無明の絶望は、しかし今どれだけ遠く遥かはてにあるのだとしても、目標が生まれました。先延ばしにするしかなかった終焉に、どれだけ無理で無謀だとしても、ケリをつける可能性が芽生えました。これほどの希望はありません。無・ゼロに比べれば、どんなに僅かな可能性でも「在る」ことがどれほど救いになるか。

……在るんですよね?

盛り上がっといてなんですが、次回最終章のタイトルが「絶望時空」ってなんかもう「わははーぃ♪」て感じになりません? 1巻以来の絶望タイトル。これ希望の切っ先、ペキッって折れちゃいません? 大丈夫?
ここまで来ても不安に心ひしゃげそうなの、これまでのトラウマって感じがして引きつった笑いがこみ上げてくる感じです。 
もうギス猊下に癒してもらわないと。


双神のエルヴィナ ★★★☆   



【双神のエルヴィナ】  水沢 夢/春日 歩 ガガガ文庫

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ヤバい女神と契約した少年の恋と戦いの日々

遥かな昔。あらゆる世界の支配者の座を巡り、美しき女神たちが争いを繰り広げた時代があった。いつしか牙の抜けた女神たちは、愛という虚飾で自らを偽り、穏やかに人間界を見守るようになる。

幼い男の子・創条照魔は、地上にお忍びでやって来た女神と出逢い、恋をした。いつか再会する約束を交わして別れ、女神にふさわしい男になろうと努力を重ねて逞しく成長。小学生にして一企業の社長を任されるまでになるのだった。

しかし現代。照魔の淡い初恋を余所に、神の国・天界では女神が異常発生してしまっていた。収拾がつかなくなった女神たちは、次の創造神――すなわち天界の支配者を決めるため、太古のように暴力で覇を競い始め、その争いの炎は人間界にまでも及ぼうとしていた。それを知った照魔は、自分の初恋を叶えるため、世界の平和を守るため、自らの会社を女神に特化した運用をすることを決意。利害が一致した最強の女神の一人・エルヴィナとともに、社長として戦いに臨む!!

『俺、ツインテールになります。』の水沢夢&春日歩コンビの最新作は、世界を超えた、少年と女神の恋と戦いの物語。その女神たちは美しく、そしてヤバい! 今ここに、女神大戦の幕が上がる―――!!

【俺、ツインテールになります。】の水沢夢×春日歩コンビによる新シリーズ開幕! って、まだ俺ツイの方最終巻まで追いかけきれてないんですけどね! それでも、新作の方も追いかけていきましょう。
俺ツイが広義の変身ヒーローものと定義するなら、これは巨人化ヒーローものにあたるのか。
ヤバい女神と契約した、とあらすじにはあるけれど、正確には女神=ヤバい、なんですよね。むしろ、ヤバくないと女神じゃないというべきか。その中で照魔と生命を共有することになるエルヴィナは、性癖がぶっ飛んでないし拗らせてもいない、という点でむしろ全然ヤバくない部類なんじゃないだろうか。自分の心情を表に出せない不器用な側面はあるものの、純情一途なわけですし。
女神たちの世界である天界に男が存在しないことから、男日照りになって肉食系を通り越して餓鬼亡者みたいになってるヤバい系女神さんたちに比べたら、すごく乙女。純情乙女!
まあそんなエルヴィナの心情が明らかになるのは最終幕での彼女のパートなのであって、それまではぶっきらぼうでどこか突き放したような態度にしか見えないんですけどね。幾ら出来物とはいえ、小学生の男の子に女性の複雑な思いはなかなか察してあげろなんて言えないですよね。まだまだお子様だもの。その信念や心映えは立派で大人びているけれど、同時にまだ幼いがゆえの無垢さ純真さはそれだけ物事を見たとおりに受け止めてしまう、という側面もあるわけで。
よく見ると、エルヴィナめっちゃサイン出してるんですけどね。なにかとビシッと正装で決めた照魔のスーツ姿をよく似合っている、と褒めるのなんか彼女の精一杯のアプローチだったりするの、ものすごく可愛らしいですし。恋なんて自分には理解不能だし、男女の機微とか意味不明、常識的な付き合い方も知らない、というそもそもそっち方面に興味薄そう、という素振りを見せておきながら、よく見ると何かと不器用に距離詰めようとしてるんですよね。彼女なりに凄く頑張って、自分の中に芽生えた恋に殉じようとしている。めちゃくちゃ乙女してるんだよなあ。
一方で照魔の方は、さらに幼い幼児の頃に出会った女神に恋をして、そこから人生の大半を費やして自分を高めていつか女神を迎えに行く、恋を成就させると決め込んで自分を高めてきたわけですけれど。肝心の女神については、記憶を封じられ相手の女神の方も同じく記憶に蓋をされている状態で、相手の女神が六枚翼の存在だったとしか覚えていない。つまり、彼自身の熱烈な恋情は未だ向ける先を見失っている状態である。エルヴィナはその有力な候補の一人ではあるものの、決定ではない。だから、照魔は世界の広さに匹敵するような凄まじい恋をしているけれど、それはまだ自分の中に抱えたまま。その膨大なエネルギーを原動力にして、今起こりつつある世界の危機に立ち向かおうとしているけれど、恋を叩きつける相手がいない。
照魔に、この小学生に、彼個人に恋をしたエルヴィナとは、ある意味両思いに至らない関係なんですよね。それどころか、エルヴィナの気持ちを知らない照魔は彼女を信じきれていない。あれほど女神に思い入れながら、生命を共有するパートナーとなったエルヴィナには複雑な思いを抱えてしまっている。でも照魔から見たら自分と一定の心の距離を感じてしまっている、また彼女の方からもどこか突き放しているように見えるエルヴィナは、実は照魔に一途に恋をしている。このもどかしいような複雑に行き交った関係、ここから進んでいけば行くほどこんがらがって面白くなっていきそう。
一方通行の恋心、としてはメイドの詩亜と執事の燐くんもなんか面白いことになりそうで、こっちも興味津々になってるんですよね。

ドタバタなラブコメな様相を呈しつつも、世界観はかなりシビアというかシリアスに緊迫している、というのも特徴かもしれません。
小学生の段階で大企業の長に、という突拍子のなさも、微妙に子供が子供のままで居られない切羽詰まった世界、というような雰囲気が感じられるところがあるんですよね。
一度、滅びかけた世界。それも侵略者や天災によるものではなく、人の生きる気力、やる気そのものがごっそりと失われていった事により社会そのものが一端崩壊しかけてしまった世界。ある発明によって、それらは一応克服されたもののどこか薄氷を踏むような、ほんのちょっとのきっかけで再び何もかもが壊れてしまいそうな危うさが感じられるんですよね。
どうにも、人類の平均寿命そのものが大幅に減っちゃってるんじゃないか、と思わせられるところも。実際、世界崩壊期には平均寿命が20年近く下がっていた、という事も明記されていますし。照魔の境遇は元から特別で、彼が小学生なのに社長になんかなれたのは彼個人だけの特別な事情である、と捉えるのが普通なんでしょうけれど、時折それだけではないのでは、と思わせられる描写があるんですよねえ。
侍従長の里茶さん、ご年配で還暦前というからまだ五十代なんですけれど、彼女が照魔から祖母のように慕われているのって……いや、彼の12歳という年齢からすると至極妥当ではあるですけれど、なんかこう、社会における年齢のピークがやたらと前倒しになっているような感じがしてならないんだよなあ。
物語の核となる部分は、かなり徹底してシリアスに進行していくと思わせられるものがありました。
社長をやる云々どころじゃなく、僅か12歳にしてこの小学生、重いものを背負いすぎだろう! せめて、彼の人生の原動力が「恋」にあるというのが救いなのかもしれないけれど、今はまだその一途な恋の向かう先が見つけられていない、すぐ隣にエルヴィナという人がいるにも関わらず、という状況環境がまた、彼には酷な話だよなあ、と思うのでした。彼が恋の行く先を見つけるには、それこそ本当の大人にならなくてはいけないのかもしれないなあ。
頑張れ、頑張れ男の子。

水沢夢・作品感想

ホラー女優が天才子役に転生しました 2 〜今度こそハリウッドを目指します!〜 ★★★★☆   



【ホラー女優が天才子役に転生しました 2 〜今度こそハリウッドを目指します!〜】  鉄箱/きのこ姫 ガガガ文庫

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ホラー女優が転生した天才子役、無双す!

貧乏育ちの苦労人ホラー女優の鶫(30歳。努力の甲斐あって演技力はピカイチ)が、自動車事故で即死。
転生した先は碧眼ハーフの超美少女つぐみ(5歳)で、ドのつくお金持ち令嬢だった!!つぐみの両親はつぐみに「注入された」演技の才能をすぐさま見抜き、テレビドラマの子役オーディションへ飛び入り参加させる。
天使そのもののつぐみの身体を得た実力派ホラー女優鶫は、その奇跡に感謝し、誓った。「今度こそハリウッドを目指します!」。
3人の仲良し子役美少女、凛、珠里阿、美海とはぐくむ幼い友情。行き違いから、深く落ち込んでしまったその親友を救うためにつぐみにできること、それは、度肝を抜く演技!
ドラマ、バラエティ、CMに演技無双する天才子役つぐみ(5歳)の進撃が止まらない!!

鶫さん、あなたが死んだおかげで人生ネジ曲がっちゃった人がえらいたくさんいるんですけど!? ホラー女優というその道では第一人者であっても、ある種ニッチなポディションの女優で、決して芸能界の大御所とか業界の売れっ子トップ女優というわけではなかったはずなのだけれど、それだけ影響力が強かった、個々の心の奥まで食い込む何かがあったという事なのか。
なんか、人によっては人格まで歪んでいる節があるんですよね。桜架さん、ちょっと鶫という女優に対して美化が進みすぎて狂信入ってませんか!?
幼い頃の憧れが高まりすぎて、桐王鶫という女優を神格化してしまっているようじゃないですか。
なんだよ、微笑むだけで相手の役者を信者にしてしまうとか。鶫さんならCGなんて使わなくても空だって飛べただろう、って。いやいやいや、空は飛べないから。どんなすごい役者でも、空は飛べないから! 
……飛べないよね?
ちょ、ちょっと待って、さすがに妄想ですよね、これ。鶫でも、そりゃ空は飛べないだろうし。でも、空を飛んでいるように見える演技技法とかならやりかねないんじゃないだろうか、という可能性が。
なんかつぐみって時々素で意味不明な人外魔境のアクションができるような素振りを見せるだけに、ちょっともしかして、と思ってしまうんですけど!? いやだってさ、普通に何の器具も使わずに天井に貼り付いたりとかできるみたいな事言ってるし、逆ブリッチで階段移動とかしやがったし、歩法でまったく足を動かしているように見せずにすすーっと滑るように移動してみせたり、とかしちゃってるんですよね。
……マジに空を飛べる、とは言わないけれど、カメラ越しだと幽霊みたいにふわふわと浮遊して移動してるように見える、みたいな技持っててもおかしくないんだよなあ!
実際、鶫が死んで壊れてしまった人たちは慕っていたを通り越して信者みたいになっていたとも言えるかもしれませんし。珠里阿のお母さんの早月も、鶫を慕っていたからこそその拠り所を失ってしまった事で転落してしまったようにも見えますし。
現在進行系で桜架さんよりもヤンデレ拗らせていると思しき人も現れてしまいましたし、桐王鶫の死は演劇界の損失という以上の被害をこの業界に与えてしまっていたんじゃないだろうか。
その鶫の復活が、果たしてそれら歪んでしまった人々の救済と成り得るのか。
まず旧世代の人たちよりも先に、同世代の子役たちが友人としてライバルとして、「つぐみ」の洗礼を浴びることになってしまうのですが。
1巻で登場した時点では、夜旗凛という子以外は、珠里阿も夕顔美海も親が役者の二世というだけで確かに技術として上手いものはあったかもしれませんけど、色んな意味で普通の子だったんですよね。
しかし、彼女たちは幼くして「本物の演技」を、「本物の女優」を目の当たりにしてしまった。その世界に飲み込まれ、味わってしまった。まだ5歳6歳の幼子が、役者とは、演技とは、という哲学に本気で向き合うことになってしまったのです。
その時点で既にこの子たちは本物の役者としての道をこの年齢にして、自分の意思で歩みはじめているのですけれど、それだけでは済まずに「人生の壁」にぶち当たってしまうんですね。
いや、早いよ! 幼稚園とか小学生になったばかりのちびっこだぞ!? まだ理性とか知性も普通なら育ちきっていない自分の感情を制御できずに振り回されるばかりの「動物」に近い生物なのが、この年代の子たちのはずなのに。
早くても思春期、或いは青年期にぶち当たるだろう人生の壁、行き詰まりに、彼女たちは行き合うのである。それはコンプレックスだったり家庭環境だったり人間関係の歪みだったり。
まだ向き合うにはあまりに早いそれに、この子たちはもう一廉の役者として生きる意思を持ってしまったが故に、壁として認識してしまうんですね。いや、立ち向かわなければならないもの、として認識したというべきか。
つぐみの手助けがあったとはいえ、珠里阿も美海もそれらに真っ向から立ち向かい、克服してみせるのである。超克、と言っていいくらいに乗り越えてみせたのだ。それは役者としての成長という以上に、人としての一皮剥けたなんてレベルじゃない成長であり覚醒であったのでした。
……いや待って、あのね、まだ6歳の時点でこんな人生の壁超えちゃったら、人間として出来上がって立派になってしまったら、思春期とかどうなるんですか? まだ10歳にもなってないのよ? 超人か? 完璧超人の誕生か? まだ小学校一年生になったか、というくらいでこの人格面での仕上がりだと、小学校の高学年とか中学生とか高校生とか、どうなっちゃうんでしょう。
想像するだけで、なんか変な笑いが浮かんできてしまうのですけどw

……つぐみ、確かに他者への影響力がヤバいわ。これ、また鶫のようにつぐみが途中でどうにかなってしまったら、この子役の子たちの精神面、えらいことになってしまいそう。

そんな「つぐみ」の本質を本当の意味で見抜いているのは、どうやら夜旗兄妹だけっぽいんですよね。感覚で捉えている、というべきか。面白いことに、「つぐみ」が抱えている違和を、つぐみ本人も自覚していないということ。それを、この兄妹はどうにもはっきりと感じとっているようなんですよね。
この二人こそが本物の天才、ということなのか。つぐみは自分でも語っているように、あくまで努力型であり、前世の鶫の遺産を受け継いでいるからこその現在の天才性、でもあるわけですしね。
虹が感じているつぐみのチグハグさ、というのを読者の側である自分も未だによくわからないのだけれど、どうにもつぐみの中で「つぐみ」と「鶫」が完全に同化していない、ということなのか。ふとした瞬間に一人ではなく二人を感じる場面が、ちらほらと見受けられるのも確かな話。
もっとも、その微かな分裂がどうなれば正解なのかもわからないのだけれど。完全に同化してしまえばいいのか、或いはどちらかが主導権を握れば良いのか。片方を消し去ってしまえばいいのか。
いずれにしても、まだつぐみ自身自覚がないだけに彼女自身がそのあたり把握しないとどうにもならないか。どうやら虹との演技勝負で「引き出された」そうなんだけど……何が引っ張り出されたのか。
「鶫」に執着する人たちの不穏な影が見えてきて、展開も面白くなってきましたけれど、やはり同じ演者や撮影班みんなを魅了し引き込み「世界」を創り上げてしまう空星つぐみのこのゾッとするような演技空間、やはりインパクトがすごい。読んでるこっちまで引き込まれそうで、ゾクゾクさせられました。くぅぅ、おもしろい、面白かったぞ!!







剣と魔法の税金対策 ★★★★   



【剣と魔法の税金対策】  SOW /三弥 カズトモ ガガガ文庫

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勇者と魔王、税金対策のために偽装結婚!?

「我が配下となれば世界の半分をくれてやろう!」「え、マジ! わかった!」
とある“奇妙な法則”が支配する世界。勇者と魔王が手を取り合いかけたとき、現れたのは「贈与税がかかります」絶対なる税金徴収者である天使。
そう、この世界の“奇妙な法則”とは、神への“税金”であった。“世界の半分”という莫大な資産にかかる超高額の贈与税に焦った勇者は税金逃れのために魔王と偽装結婚をする!
そんな二人を助けるのは『ゼイリシ』の少女?
お人好し魔王と銭ゲバ女勇者の財産分与と偽装結婚からはじまる、異世界税制コメディ!

国とか魔王軍が、神様に税金払わないといけないの!? しかも、お金で。
いやそれって国民とかからすると、二重課税って事にならないの!? と、思ってしまったのだけれど、話を読んでいくうちに作中の国家や魔王軍は「国」じゃなくて「企業」と捉えるべきなんだな、と理解した。法人税は!? とも思ったけれど、それはそれでちょっと棚上げしておいて、はい。
細けーところはいいんだよ、てなもんである。
つまるところこれ、税制とは単なる理不尽な富の収奪ではなく、社会が叡智を集めて築き上げた誰もが幸せになるためのシステム。徴収と分配の機構なんだ、ということがわかってくる。
ただし消費税、テメーはダメだ!w 
あと、人類の叡智を結集しすぎていて、常人にはまったく理解できない難物になっているので、素人では対処できません。ちゃんと専門家、税理士に頼りましょう、という話にもなっている。
先日、支配というのは本来「配って支える」ことなんだよー、という言説を目にする機会があって、なるほどなあ、と思った所だったのですが、こうしてみると税制というのもまた、再分配にまつわるものなんですよね。単純に税を集めてそれを徴収した人たちに還元する、というところに留まらず。
税天使による税務調査によって発生した魔王軍の未納の税金の追徴課税を解消するために、納税控除が可能になる項目を、税理士の女の子とともに辿っていくことになるんだけれど、その控除内容って大半が経費計上から福利厚生、超過勤務手当といったもので、言わば税金を経ずに直接企業の財産を還元してるから、わざわざ税金を減る必要ないよね、というものなんですよね。これもまた、分配。
途中から、これ税理士の範疇じゃないよね、という国家規模の財務の話にもなってくるのだけれど、ってかゼイリシのクゥ・ジョちゃん、それ財務大臣のお仕事じゃないですか!? というくらいのすさまじい財政出動をやりはじめるのですけれど、彼女の目的こそは「誰もが幸せになれる状況」の構築だという。あくまで「状況」の構築であって、手ずから幸せを配るわけじゃないのですけれど、ある意味「ゼイセイ」と同じ分配のための状況の構築なんですよね。これもまた、言わば「支配体制」の構築なわけだ。
翻ってみると、銭ゲバ勇者メイが漠然と抱いていた大目標ってのは、最底辺の環境で一方的に搾取されていた幼い頃の自分のような人間を減らすために、富がかつての自分のような者にも行き渡るような再分配を行えるような立場を手に入れたい、というものでした。
そんな彼女にとって、魔王による世界の半分上げるよ、というお誘いはある意味渡りに船だったのでしょう。彼女が世界の半分の「支配」にあれだけ拘って、贈与税をかわすために魔王と偽装結婚してでもしがみついて確保しようとしたのは、まあ一度手に入れたものは離したくない銭ゲバ根性もあったのでしょうけれど、それ以上に彼女メイの最終目標にダイレクトに近づけるのが、世界の半分の支配だったからなのでしょう。
もっとも、その支配のやり方を彼女は何も知らなくて、だからクゥや魔王ブルーと一緒に追徴課税の解消のために駆け回るなかで、税理士クゥが教えてくれる税制の実態を通じて、具体的に富を分配するというのはどういう事なのか、というのを体験していくわけですなあ。

その過程で、一緒に駆け回ることで魔王ブルーと親密になっていき、彼の人となりを隣で実感し、また彼と自分が同じ方向を向いて走っていることがわかってきて、と偽装夫婦が段々と偽装じゃなく成っていくラブコメ成分もまた濃厚で素晴らしかったんですよね。
魔王よりも魔王らしいと魔王から太鼓判を押された苛烈過激なワンオペ勇者メイ。彼女もまた、幸せの再分配の当事者だった、というのもお話の妙でありました。
敵の黒幕達の陰謀を打破するきっかけが、魔王ブルーがお忍びで配り歩いていた「不幸をせき止める幸い」のおかげだったんですよね。これも、魔王の支配、の一つだったと思えば面白く。そのブルーの分配が回り回って、みんなの幸せへと還元されていく。メイも、そのサイクルの中に入っていた一人で、魔王が配った幸いのおかげで志を得て、勇者になって、その結果ブルーの元に幸せを運び一緒に受け取る人になる、というのはなんともこう、微笑ましいというか素敵なお話じゃあないですか。

実際の税制がそんな有徳なシステムになっているかというと、まあそこは人間社会の限界とか不具合とか理不尽が相まって、どうしたって機能不全を起こしていて、不満がたまるものになっているのですけれど。現実は厳しい、辛辣。でも理念、そう理念として税制とは、支配のシステム、幸せの分配機構として在るのだと、それを感じることが出来ただけでも、なんか読んで良かったなー、と思える作品でした。
いやほんとにこの理念的なもの、財務省各位には是非とも身に沁みてほしいなあ。

ツボったのが、勇者専用装備が個人専用のために市場価値がまったくなし、資産価値ゼロ! と評価され、芸術品、歴史的遺物としての価値を問われても、人類共有財産なので、つまり勇者へ貸与、レンタル品だから、税の徴収対象には当たりません! と味方のはずのクゥちゃんに無茶苦茶言われてて、メイがへこむシーンでした。いやこれ、ドラクエなどのRPGで専用装備が店で売れないの、そう理由だったからなのか! と、めっちゃ納得した。そりゃ、リース品だったら売っちゃダメだよね!


董白伝~魔王令嬢から始める三国志~3 ★★★★   



【董白伝~魔王令嬢から始める三国志~3】  伊崎 喬助/ カンザリン ガガガ文庫

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“神算の軍師”、きたる!

長安に都を移し、いよいよ“新・三国志経済圏”の構築に乗り出す董白。
必要なものは、塩、そして銀。

そんな折、曹操に仕えた軍師、荀攸が近くに逗留していることを知る。
経済のアドバイザーとしても是非とも味方に引き入れたい董白だったが、荀攸は想像以上の変わり者で――。

涼州、そして益州からの使者団。都周辺で暗躍する“鈴鳴り”の賊。そして、暴走の気配を強める舌の悪癖。
山積する懸案のなか、つながる点が導く真実とは――?

新たなる史を目撃せよ! 打擲幼女の覇道ファンタジー、第3幕!

全部放り出して西域にとんずらする計画もポシャってしまい、本格的にこの三国志世界で漢王朝の相国として生き残りを図らなくてはならなくなった董白ちゃん。
長安を基盤に経済圏を構築して生存圏を確保する、という目標を立ててようやく腰を据えて領地の統治に勤しみだす。一端の乱世における君主としてのデビューと言っては過言であろうか。
ただこれ、文官内政官のたぐいが董白ちゃんの部下には全然いないんですよね。周りは李傕や馬超をはじめとして武官ばかり……言葉を繕わなければ脳筋ばかり。漢王朝の重臣たち、王允をはじめとする連中は獅子身中の虫である以前に名家と儒者ばかりなので、董白ちゃんが推し進めたい経済政策に対しては無知を通り越して穢らわしいものとして認識しているので、役立たず、どころか影に日向に邪魔してくる可能性すらある。
軍師が、軍師がいない! いや、まじでいねえ。三国志といえば、いっそ軍師たちが主役と言っていいくらい百花繚乱の軍師たちが並居っているはずなのに、董白ちゃんの周辺には頭を使える人たちが一人もいないものだから、董白ちゃんが全部一人でやらなきゃならなくなっている。敷いて言えば蔡琰ちゃんが文官として極めて優秀で、実務は彼女で回っている節があるのだけれど、逆に言うと実務以上の政策立案や長期の国家戦略、企画についての相談まではちょっとむずかしい感じなんですよね。軍略に至っては門外漢でしょうし。
軍師が、やはり軍師が足りない!
そんな切実に頭脳担当の配下を欲する董白ちゃんのもとにひょいと現れたのが、自分の暗殺を図って投獄されているという荀攸。いや、キャラ濃すぎないですか、この荀攸。わりと温厚というキャラ付けがされがちな軍師ですけれど、確かに董卓暗殺を図ったりとバリバリの行動派でもあったんですね、この人。ただ烈士というべき姿勢で董白ちゃんの姿勢を詰めてくる彼ですけれど、彼女が真面目に長安周辺の慰撫に努めているのを見て、助言をくれるようになる。
おおっ、ついに軍師参入か!?

ただ、董白ちゃん。あの追い詰められると豹変して自分でも止められない勢いで相手を口撃して叩き潰してしまう、という悪癖がさらに悪化して魔性の女になってしまう、という作用が出てきてしまったために、貂蝉に頼って呪術によって豹変そのものを封印してもらうことになる。
これ、ヤバい時にあの暴走状態によって危地を強引に突破してきた董白ちゃんにとって、切り札を封印する、という意味でもあったんですよね。自分でコントロールできない、というのは確かに怖いし、さらに女を武器にしだした上になんか自分の人格そのものが乗っ取られたみたいな感覚に襲われたら、そりゃもう二度と発動させたくない、と思うのも仕方ないのだけれど、あれこそが今の董白ちゃんを形作ったとも言えたんですよね。彼女が魔王の後継として畏怖されるのは、あの状態の董白ちゃんが暴虐を尽くしたからとも言えるわけで。
あれがなくなってしまうと、どうしても心許なくなってしまう。追い詰められても激高せずにブチ切れもせずに、穏やかに理性的に対処しようとする董白ちゃんは、何をしでかすかわからないヤバさこそなくなったものの、逆にスケールが小さくなったとも言えるんですよね。壁を打破できない惰弱さが垣間見えてしまった、とも言える。おかげで、麾下の兵士たちを含めて交渉相手にも段々となめられだす董白ちゃん。ままならないものである。

ままならなさに苦労しているのは、前回董白ちゃんにスカウトされて部下になった趙雲くんも同様で。
陰キャな彼は念願の将軍候補として董白ちゃんに指名されて、部下も与えられるも、こちらもその陰気さとやる気のなさが部下たちに舐められてしまって、統制もままならずに、はたして自分は将軍の器じゃないんじゃないか、と悩む羽目になる。
そもそも、自分が将軍になりたい、という夢を抱いたのも師匠に言われたからという受動的なものであって、自分が心から欲したものはなにもないんじゃないか、とどんどん後ろ向きになっちゃんですね。元から前向いてたことがないじゃないか、という陰気キャラだったのだけれど、それでも将軍になる、という目標があったのでそれを目指すことが出来ていたんですけどね。
それも、雑に董白ちゃんに叶えられてしまって、当面の目標も見失ってしまって、さらに鬱々と……という負のスパイラル。
ただ、実際には趙雲くん、董白ちゃんからはえらい頼られてて、今長安周辺を混乱に陥れ、彼女の経済政策の障害となり、また彼女を取り巻く陰謀の要ともなってる鈴を鳴らす盗賊団の調査、追跡に重宝することになるんですね。
趙雲くんって、董白ちゃんにとっては初めて得た直臣なんですよね。李傕はあれ、董白ちゃんに幻想抱いていて、董白ちゃんからすれば自分の実態をわかって心酔してくれているかわからない部分があって怖いだろうし。馬超も、どちらかというとあれ董白ちゃんが可愛い女の子だからべた惚れしてる、守護らねば、と思っている感じで、主君として仕えてくれているかというと微妙なところがある。所属としても、涼州サイドとの二足のわらじで、いざとなればどちらにつくかわからない部分があるし。その点、董白ちゃんが自らスカウトした趙雲は、掛け値なしに相国・董白の臣なんですよね。
もっとも、趙雲はそこまで別に思い入れていたわけではなく、自分を評価してくれたから仕えてみた、というくらいの軽さだったわけだけれど……。
件の盗賊、甘寧を追撃していく上で自分の将としての未熟さを痛感し、また自分の夢や志の実際の空虚さを実際に部下を率いて働くことで実感したあとで、それでも頑張ろうと陰キャな彼が思えたのは、董白ちゃんの期待と信頼ゆえだったのです。あの自分を認めてくれる主君を助けるために、自分なんかでも出来ることがあるみたいだし、頑張ろうと、あの後ろ向きな趙雲が思うようになるんですね。
武の才能もなく、内功という気の総量が生来乏しい趙雲は、まさに凡夫。でも、諦めず黙々と努力し続け叩き上げで技を鍛え上げ、超一流の武人に立ち向かえるだけの実力を鍛え上げた彼は、これもうもう一方の主人公と言ってもいい活躍だったんじゃないでしょうか。
溢れんばかりの才能を傍若無人に振り回す甘寧との、ヒリヒリするような殺し合い、真剣勝負。圧倒的に上回る才を、丹念に丹念に折りたたむよに捻り潰していく趙雲の、凡人ゆえの凄みある戦い。
今回は、彼の見せ場たっぷりで、大満足でした。
そんな彼こそが、董白ちゃんを色目で見ず、勝手に飾り立てて信奉するわけでもなく、暴走状態の彼女に魅入られたわけでもなく、等身大で素の董白ちゃんを主君として認め、彼女のために頑張ろうと思って仕えてくれた初めての臣、だったんじゃないでしょうか、これ。

そして、一連の董白ちゃんを狙い撃ちにした謀略の黒幕。これは、さすがにまさかそこか!? と、かなりギリギリまで気が付きませんでした。さすがにこれは予想外だよ!!
いや、これ気づく董白ちゃん、普通に凄いですよ。
あと、馬超ちゃん。もしかして、馬超じゃない可能性あるのか、これ?



妹さえいればいい。10 ★★★☆   



【妹さえいればいい。10】  平坂 読/カントク ガガガ文庫

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妹がいる生活、はじめました。

ついに千尋の抱えていた大きな秘密が、伊月たちの知るところとなってしまった。千尋から事情を聞かされ、表向きはそれを喜んで受け容れた伊月は、これまでどおり那由多とイチャイチャしたり、千尋を可愛がったりして、妹がいる生活を満喫する。『妹すべ』のアニメも好評を博し、招待された台湾のイベントでちやほやされるなど、売れっ子作家としても満たされた日々を送る伊月だったが……? 一方、重荷から解放された千尋にも、新たな物語が始まろうとしていた――。大人気青春ラブコメ群像劇、運命の第10弾登場!!

ウチの弟が妹だった件について。
改めて伊月のお父さんが奥さんを喪い傷心しながら幼い息子のために一心不乱に働く中で、今の新しい奥さんに出会うまでの回想を見せられたのだけれど、伊月パパも、千尋のお母さんである義母も真面目な人なので、千尋の性別を誤魔化すなんて非常識なこと余程のことがないと一蹴してただろう事がよくわかる。
それだけ、伊月のデビュー作の衝撃がよほどの事だったのだろう。まあ、性別を偽るのは伊月に対してだけで、学校など公共の所では普通に女の子として過ごしているのだから、書類を偽装したりという危険な行為に手を染める必要はなかったので、親側のハードルは低かったのだろう。
ただ、千尋は学校に通う制服はともかく、普段は外出する時なんかでもユニセックスな服装を心がけてただろうから、結構大変だったんだろうな。まあそれが日常と化していたから、はじめのころはともかくいい加減慣れてはいたのだろうけれど。
しかし、パパの回想を見ると伊月との断絶はかなり厳しいものになってますね。新しい奥さんとの出会いを中心に描いているので、息子に向ける気持ちなんかはあまり描かれていないから、なのかもしれませんけれど、パパの方には伊月を放置していたという自覚は殆どないようでしたし。

さて、千尋の性別がバレた、じゃなくてあれは千尋が我慢しきれずにバラしてしまった、が正しいか。ともあれ、ついに千尋が弟ではなく妹だと発覚する……この作品が【妹さえいればいい。】というタイトルであることの意味を思えば、妹バレというのはこのシリーズはじまった当初から最大の山場であり最大の修羅場、と目していたものでした。
ただシリーズはじまった序盤の頃の狂的な妹属性だった伊月と違って、今の彼は小説家として幾つもの経験を経て、ついにアニメ化という目標まで達成するに至り、自分の中の妹狂いをある程度飼い慣らして小説にアウトプットする事が出来るようになっているかに見受けられていました。
さらに、私的にもカニ公と正式に交際をはじめ、恋愛感情も健全に進捗させ、彼女への愛情に小説家としてのコンプレックスも自分の中に呑み込んでおけるだけの制御が叶うようになっているようでした。
さらに、千尋との関係は年単位で密接に積み上げられ、再婚の連れ子同士という関係は今や父と疎遠になっている以上、唯一の大切な家族、という認識に至るまで育つものになっていました。
千尋が、自分が弟ではなく妹なのだと我慢しきれずに暴露してしまったのも、家族ゆえの距離感だったのでしょう。彼女なりの親愛であり、兄への我儘で甘えでもあったわけだ。それが出来るほどの距離感になっていた、とも言えます。
伊月の人格的にも、千尋との関係としても、この上なく安定を見ていたのが現状でした。
ここまで安定していると、とてもじゃないけれど弟が妹だったという事実を突きつけられたからといって、そうそう揺らぐものではないんですよね。今更、修羅場になりようがなかった、とも言えます。
だから、千尋の暴露が大した騒ぎにならず、知らなかった面々を仰天はさせたものの、ある意味伊月たちを驚かせただけで終わったのでした。拍子抜けなくらい、そうだったのかー、で終わっちゃったんですね。
これまでのシリーズの積み重ねて、前述した安定性について実感していた読者側の身としても、そのあっさりとした特に波乱もないまま終わってしまった展開は、まあそうなるな、という妥当と感じる反応で得心のいく結果だったと思います。
むしろ、変に拗れずに安堵した、と言ってもいいかもしれない。
だから、ラストの展開には「そう来たかー!」と思わずのけぞってしまいました。うん、そっちは不覚にも想定していなかった。
なるほど、これは「安定」していたからこそ、千尋の性別告白が伊月が致命傷になってしまったのか。小説家としての伊月が安定してはいけなかった部分まで、見事に真っ当に安定してしまったのか。それは、千尋が本物の大切な家族になっていたからこそ、でもあるのか。
これはちょっと……どうしようもないんじゃないか? 現実の妹と願望の妹はまったくの別物、と頭じゃなくハートと下半身で感じることが出来るようにならないと、もう無理でしょう。
というか、これはもう性癖を推進力にして感性を変換器にして書いていたがゆえの躓きか。
原因が明らかなのに、対処の方法がまったく見当たらない、というのがこれは辛いなあ。伊月も八つ当たりなんか出来ないだろうし。カニとの関係も順調だったのに。
取り戻すのか、それとも一から全く別物になるか、それとも潰れるのか。小説家としての岐路に立たされた伊月の明日やいかに。

ちょっと驚きだったのだけど、千尋……気になってるのまさかその人なの!? これも全然想定してなかったんだけど。
そしてえっらい実感の篭もってる台湾レポート。これ、実質ノンフィクションじゃないんですか?
前にもラノベ作家が主人公の作品で海外のイベントに招待される話見ましたけれど、ほんとにVIP扱いで大歓迎されるんですなあ。


俺、ツインテールになります。17 ★★★☆   



【俺、ツインテールになります。17】  水沢 夢/春日歩 ガガガ文庫

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危うしレッド!最強最後のエレメリアンたち

トゥアールが奇跡の復活を果たして誕生した戦士・テイルホワイトの活躍で、長きにわたりツインテイルズを苦しめてきた最凶の敵・エンジェルギルディはついに完全消滅した。そして訪れたしばしの休息。愛香はホワイトとの手合わせを熱望するも、あと何回変身できるか保証がないトゥアールはそれを拒否。代わりに、新たな装備の開発に着手することに。ともあれ総二たちは、久方ぶりの穏やかな日々を満喫する。そしてやってきたバレンタインデーをチャンスとばかりに、愛香たちは大暴走。それぞれが、あらためて総二への思いを募らせていく。
一方アルティメギルには、続々と神の力を持つエレメリアンが合流していく。中でも組織一のイケメンであり成功率100%を誇るナンパ師だと自称するポセイドンギルディが、部隊の怨敵テイルブルーをメロメロにして仲間に引き入れると豪語。だが、思わぬところからテイルレッドの正体へと近づいていってしまう。果たして、秘密を探られ始めたテイルレッドの運命は……!?
最強最後のエレメリアンたちが、アルティメギル首領の名の下に侵攻を開始する。決戦の時は近い――今こそ結集せよ、ツインテイルズ! ツインテール最終章へ!
満を持してのテイルホワイト、表紙を飾るの巻。こうしてみるとちゃんと美人なんだよなあ。まるで普段が美人じゃないみたいな言い方だが。
ともあれ、トゥアールが精神的にも復調して元の調子を取り戻してくれて本当に良かった。なんだかんだと彼女がツインテイルズのムードメーカーであったのは間違いなかったわけで、トゥアールが空元気だったり落ち込んでいたりすると、本当にお話の雰囲気から暗くなってしまいましたからね。
一番露骨に影響を受けてしまうのが愛香でしたし。一番うるさい二人が元気ないと、どうしようもありませんでしたし。
おかげで、トゥアールの復活でむしろ愛香の方が元気マシマシになっていたのが微笑ましい。いつの間に、こんな親友ムーブかますようになったですかね。わりと最近までゴキブリを踏み潰す勢いで本気で殺しに掛かってた気がするのですが。むしろ、総二相手よりもトゥアールと愛香でイチャイチャしてる場面のほうが増えてたもんなあ。
トゥアールに関しては、もとに戻ったという感じなんだけれど、愛香はさらに復調と同時になんかピュア度があがってる気がするんですよね。精神的に素直になったというか、建前に拘泥しなくなったというか。思いの丈を恥ずかしがらずにストレートに出すようになった気がします。特にトゥアールに対して。
……ピュア度が増すほどに、女の子らしくなるより蛮族色がむしろ濃くなるのはあれですか。愛香の根源が蛮族そのものということなんですか? 純粋無垢なキラキラした目で、全力で殺り合いたいの、とか言い出しやがってますよ、この神をも覆せぬ貧乳は。
全身にチョコを塗りたくって板チョコ! は、不覚にも笑ってしまったw

と、トゥアールと愛香の話ベースに今回は進むのかと思いきや、後半に入ってスポットがあたるのはまさかの尊先生。齢29歳の崖っぷちで婚姻届を無差別にばら撒いて婚活に勤しんでいたのも今は昔。そう言えば、最近はとんとあのどぎつい婚活は鳴りを潜めていたんですよね。焦りも見せなくなって、むしろ落ち着きある大人な態度で慧理那に侍りつつも、総二にも品の良い女性らしい態度で接してくれるから、癒やし担当なんじゃないかと思えるくらいになっていたのでした。
ツインテイルズのメンバーはみんな少女であると同時に変態だし、大人なお母さん連中はさらに輪をかけた騒がしい変態たちなものだから、尊先生っていつの間にかメガ・ネと並んで良識枠になってたんですよね。
彼女をあの無差別の婚活に走らせていた焦りって、そうか単純に年齢によるものじゃなかったのか。自分自身のためではなく、慧理那を慮ってのことだったのですね。だから、慧理那が総二との仲を深めていき、新堂家としても総二の婿入りを諸手を挙げて歓迎し始めたおかげで焦る必要はなくなったのか。
そうなってくると、彼女の中の結婚願望は余計な要素がなくなって、より自分自身の中の純粋な思いに磨き上げられていったのですね。最近はもう婚姻届は、総二にしか渡してない、ってもうそこに気持ちが現れてるじゃないですか。それに、渡すだけで初期のように署名させようという素振りはないんですよね。ただ、受け取って貰えたらそれでいい、という控えめなものになっていたし、回数も減っていた。一回一回に、楚々とした淡い想いが篭もっていたんですね。それでいて、慧理那の幸せを思い自分の気持ちが叶うことは望んでいなかった、と。
色んな意味で欲望がほとばしりすぎている、ツインテイルズの面々と違って尊先生の淡い恋心がむしろ少女性というか乙女度が凄いことになっていて、ここにきてヒロイン株があがりまくってしまったんですけど!?
いやもうこれ、まず最初に尊さんと結婚するべきじゃないんですか、総二くんは。来年三十になるわけですし、本人はもう焦っていないとはいえ、あんなに可愛らしく控えめに恋を打ち明けられてしまうと、先生を優先させてあげてください、と言いたくなる。とりあえず、童貞だけでも譲ってください、と喚いている変態と比べてしまうと、比べてしまうとw
あの愛香がストレートに直球でプロポーズまでしてきたのにはちょっと驚かされましたけれど、それでもここは尊先生に。尊さんなら、優しく母性で包んでくれそうじゃないですか。今の総二でもうまく受け入れてくれそう。まだ他の娘たちは、小娘すぎてなんともはや。

さて、敵サイドも神のエレメリアン、ポセイドンとゼウス、ハデス、アポロの四人が揃い踏みとなり、今度こそ最後の幹部エレメリアンとなりそう。まさか、ゼウスギルディが女性人格エレメリアンというのは予想外でしたけど。マーメイドギルディが最後の女性エレメリアンではなかったのか。
ついに、向こうもレッドの正体に近づいてきて、とうとう禁断の秘密がエレメリアンたちに明らかになってしまう時が近づいているのか。
そして、歴代テールブルー三人の揃い踏みという戦隊モノの劇場版的花形展開はやっぱり燃えますなあ。

水沢夢・作品感想

物理的に孤立している俺の高校生活 3 ★★★☆   



【物理的に孤立している俺の高校生活 3】  森田 季節/shirakaba ガガガ文庫

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残念系異能力者でも友達と文化祭回りたい!

波久礼業平には友達がいない……わけでもない。むしろ、あわやぼっちで過ごすと思われた夏休みを人研メンバーとともに無事乗り越え、本人はなんとなく成長した気さえしていた。
しかし、業平の持つ異能力「ドレイン」はもちろん健在で、オン・オフができるようになったわけでもなんでもない。やっぱり学校レベルで物理的に孤立している。せつない。
それでも、これなら二学期の文化祭も乗り切れると安心していた中、同じく不遇な異能力に悩む高鷲えんじゅから脈絡もなく連絡が来る。
「男友達作り、早くしないとまずいことになるわよ。うちの高校って修学旅行が二年生の二学期途中にあるから」
いやいや、そんなこと言ったってお前も人研メンバー以外の友達いないじゃんと思う業平だったが、高鷲の言葉は確かに事実。蘇る中学時代のトラウマ。現状、限りなくぼっちな二人は、売り言葉に買い言葉で「文化祭が終わるまでに友達を作れるか」勝負をすることになってしまう。
お互いこいつにだけは絶対負けないよなと思うのだが……あれ、そもそも友達ってどうやって作るんだ!?
残念系異能力者たちだって友達と文化祭を回りたい! 大人気青春未満ラブコメ第3弾!!

友達ってどうやって作るんですか?
いや、真面目な話、学生時代友達どうやって作ったか、とか覚えてないですよ。何となく喋ってたら一緒に遊んでいたらいつの間にか友達になってた、て感じですよね。友達になってください、友達になってよ、みたいに直接言葉にして「友達」という関係になった事はなかった気がする。
でも彼ら、業平と高鷲にとっては友達という関係はそんなに簡単でも軽いものでもなかったのだ。これまで友達という存在が出来なかったコンプレックスもあるのだろう。でも、それ以上に友達という存在に対して真面目なのだ。真剣なのだ。何となくいつの間にかなっているものではなかったのだろう。それこそ、彼氏彼女の関係に勝るとも劣らない、人生における重大事だったのだ、友達を作るという事は。
もっとも、彼氏彼女の関係ですら人種によっては気軽にホイホイとくっついたり離れたり何となくで始めたり終わらせたりしてしまうものなのだけれど。
人間関係というものは本当に人それぞれで同じ名称の関係ですら中身は、いや中身ではなく受け止め方、というべきだろうか、受け止め方が全然異なってきてしまうものなんだなあ。
文化祭の折に、人研部以外の友達をどちらが先に作るか、という勝負をはじめてしまう業平と高鷲。それからのこの二人のノリはというと、完全に男女交際の相手をゲットするつもりみたいな本気度、真剣さなんですよね。形は違えど、仲の良い友達とどっちが先に恋人を作るかの勝負をガチではじめてしまった、みたいな感じになってるんですよね。
そう、冗談ではなくガチで。だから、勝負しているはずなのに、業平ときたら高鷲がクラスの女の子となんだかうまくいきそう、性格に大変問題のある高鷲でも何とか友達になれそうな雰囲気、というのを見て取った途端、内心で応援し始めてしまうのですよ、こいつ。
勝負を忘れているわけじゃないんだけれど、高鷲に感情移入してうまく行ってほしいと本気で祈り始め、便宜だって図り始めてしまう。
イイ奴なのだ。拗らせているけれどこの男、いいヤツなのだ。
その業平も、生徒会から応援できてくれた大福という男の子と、これまでになく自然に気負いなく会話できることで、これ友達になれるんじゃないか、と浮かれだしてしまう。いや、いいんですよ。友達になれそう、と思うことになんの悪しきもない。
実際この大福、いいヤツなんですよ。1メートル以内に近づいた他人の生気を吸い取ってしまうという「ドレイン」の異能を持つがために、タイトル通り物理的に孤立してきた主人公。物理的のみならず、やっぱり近くとヤバいということで心理的にも距離を置かれ、場合によっては拒絶されてきた業平くん。でも大福はもちろんちゃんと距離には気をつけているけれど、業平がドレインという異能を持つ事に対しては常にフラットな対応で、同情も嫌悪もなく、自然とそういうものとして捉えた上で自然に付き合ってくれる人だったんですね。
別に内心で違うことを考えていたりとか、なにか企んでいたり、とかいうこともなく、本当にただいいヤツだったのです。
ただ、彼はそういう業平みたいな人間とも何の偏見もなく付き合える人だからこそ、他人との距離感が軽い人でもあったんですね。人と人が繋がることに、深い意味も重たい価値も特に見いださない、普通に仲良くなって簡単に恋人という関係を作ることの出来る人種だったわけである。
業平とは、どこか価値観が異なっている相手。
軽々に、あの娘なら付き合えそう。別に好きじゃなくても告白されたら、相手が可愛いなら付き合うよ、という大福に違和感を感じてしまう業平。相手に対して、それは真剣じゃないんじゃないか。真摯じゃないんじゃないか、と考えてしまうわけだ。
でも、それはちょっとした価値観の違いなんですよね。どちらが悪いとか間違いだとかいうわけじゃない。はじまりのきっかけや態度が軽いものでも、友達として恋人として付き合いだしたら何かが変わってくるのかもしれない。そもそも、軽い関係ってのが悪いかどうかって話もある。軽くて、なにがダメなんだ? そういう関係も、あっていいじゃないですか。
そういう事は、業平もちゃんとわかってると思うんですよね。彼が、嫌な思いを感じてしまったのは、実は大福に対してじゃないんですよね。好みの問題というのを踏まえた上で、そういう人との接し方が好きではない、と業平は感じたその時に、彼は自分を省みるのである。
あれ? 大福のそういう人との接し方に嫌悪を感じている自分は、大福のことを友達になれるようn相手か「品定め」していなかったか? と。大福が、あの娘なら付き合えるんじゃないか、と思っているのと同じように、こいつなら友達になれるんじゃないか、と打算で考えていなかったか、と。自分のことしか考えずに、友達を作りたいと大福をはじめとする周りの人間たちを選別の目線で見ていなかったか、と。

ちなみに大福くん、業平がどもりながらもそういう見方はよくないんじゃないか、相手に対して失礼じゃないか、という言葉にちょっと驚きながらも真剣に受け止めて、確かに自分も親しい人をそんな風な見方で言われたらあんまりいい気分じゃないよね、と反省してくれるんですよね。
特に何の気もなしに軽く雑談めいて喋っていた内容に、そんな真面目なトーンで反駁されたとして、反発したりドン引きしたりするのは論外としても、曖昧に流してしまったりなんか悪いこと言っちゃったかなと取り敢えず謝ったり、というくらいの対応は珍しくないと思うんですよね。
彼のように、本気でちゃんと考えて、良くなかったと謝ってくれる人は決して多くないと思う。大福くん、マジでいいヤツなんだよなあ。
でもあそこで、迷いどもりながらも、ちゃんと苦言を呈することの出来る業平もまた、大した人だと思うんですよね。それも、大福のことをそれはダメだろうと否定的に思いながら、じゃないんですよね。あそこで彼は、自分を省みて、自分もまた大福以上に失礼な事を考えながら彼に近づこうとしていた、と恥じ入りながら、その大福に対して苦言を呈するという事に何様だとさらに恥じ入りながら、それでも告げているのである。
あの違和感から嫌な気分を感じてしまった場面で、一方的に相手の上位に立った気になってしまうのではなく、そこで自分を省みる業平が。恥じ入りながら、それを自分の中に押し込めてしまうのではなく、相手に告げることの出来た彼が、本当にえらいと思うのですよ。
敬意を抱く。

そして、高鷲もまた、無意識に友だちになろうとしていた娘にマウントを取ろうとしていた事に気がついて、咄嗟に身を引いてしまうんですね。彼女の場合は、ココロオープンという目を合わせると自分が心のなかで思っている事が全部テロップに出てしまうという異能のせいで、相手との関係が決定的に壊れてしまう事を怖れてしまった、というのもあるのだけれど。
業平にしても高鷲にしても、本当に友達という関係に対して真剣だからこそ、真面目だからこそ、その関係に対して真摯すぎるほどに誠実足らんとしてるんですよね。異能のせい、というのも大きいでしょう、適当にこなせない不器用さ、というのもあるのでしょう。性格がこじれてたり捩じれてるのもまあ致命的ですよね。
でも、この誠実さは、真面目さは敬したい。これはたしかに意識高い系の範疇なのかもしれないけれど、胸を張って意識高い!と言ってもいいんじゃないかしら。
それでも、二人はこれまで、ずっと人間関係に惨めな思いをしてきた。異能によってハンデを負って、寂しい思いをしてきた。こうしてみると、誰よりも相手のことを理解しわかっている二人なんですよね、高鷲と業平は。だからこそ、勝負しているのに相手を応援してしまう。挫けそうになっている高鷲を、一生懸命フォローして自分たちは同盟者じゃないか、と背中を押す業平はお世辞抜きにカッコいい……いや、カッコいいというのとは違うかもしれないけれど、高鷲にとっては彼の必死さは胸が一杯になるものだったんじゃなかろうか。

お互いに支え合って、友達作りという一歩を踏み出せた業平と高鷲。そこで友達作りの勝負をなかった事にしないあたりがさすが高鷲えんじゅ、と思う所だけれど……。この勝者の権利を保留にしたの、あとあとに大きな影響をもたらしそう。業平への命令権。この文化祭の中で生まれた二人の間の「空気」の様子に、本当に「ここぞ」という場面が巡ってきそうで、ちょっとワクワクしてしまうラストでした。


友人キャラは大変ですか? 10 ★★★★   



【友人キャラは大変ですか? 10】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫

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友人キャラよ、永遠なれ。

最終決戦目前。
ソロモンと化した阿義斗によって、龍牙が能力を封じられちまった!

やむなく俺は「代理主人公」をつとめることになるのだが……きたぜパワーアップイベント!

お袋いわく、鬼には秘められた能力があるらしい。
それは、口づけした相手から異能を借り受ける力で、人呼んで「窃吻」――っておいコラ、なんだそのトラブルの予感しかない能力は!

龍牙と四神ヒロインズ、あと三姫まで俺を睨んでるから!
これ、ハーレムラブコメ主人公しか許されないやつだから!

――最後まで、笑って泣いて、熱くなれる最強助演コメディ。ここに堂々完結!!

結局、シリーズ通して真面目に敵キャラやってたのって、ほんとに阿義斗だけだったじゃないか。本人はどちらかというと主人公のつもりの節もあったので、それ故の真面目さでもあったのでしょうけれど。
小林少年もいざ主人公キャラやろうとすると、遊び無しで兎に角敵を倒して終了、という行動になってしまうと自分でも認識していたけれど、阿義斗も彼視点からすると殆ど無駄なことはせずに目的を達成するために必要なことを選んでやってたんだなあ、と。
ほんと、彼だけである。他の連中ときたら、片っ端から無駄なことしかしてねー。
キュウキはその意味ではわりとマメに物語を盛り上げるために敵のときも味方になってからも頑張ってくれてたのを見ると、小林少年の相棒として一番ぴったりだったのってキュウキだったな、と。
テッちゃん? 彼はもうなんというか、漫才コンビの相方でしょう、ボケ担当の。
というか本当にボケキャラしかいない敵キャラたちでした。使徒たち、まともに敵として立ち回ってくれたやつって殆どいなかったんじゃないだろうか。一応バトルモノ、と小林少年は定義していたみたいだけど、ちゃんとバトルやってたことってあったっけ? 使徒連中ろくに敵対もしないままなし崩しに全員味方になっていっちゃてたじゃないですか。
敵としてはポンコツなのに、味方になると使徒連中みんなわりと頼もしかったり頼りになったりちゃんと有能だったりするあたりが、なんか小憎たらしいw
結局、使徒たちの親玉だった四凶の魔神たちと来たら、片っ端から小林少年にさっさと取り付いてホームコメディの仲間入りしてましたしねえ。
挙げ句に最後の黒幕たるソロモンまで、あれでしたもの。ソロモンが一番適当で酷いんじゃないですかこれ!?
一応、テッちゃんとコントンのおっさんが洗脳されて敵に回る、という展開は早々に味方キャラになってたボスキャラが敵味方入れ替わり、今度はトッコとキュウキが味方側として相対するという展開になってたのはなんか面白かったです。テッちゃんとコントンってほんと相応に身内になってボケ倒すばかりのキャラになってたんで、ボスの貫禄全然ないし部下である三姫たちにも家庭内序列で下に置かれて、最強キャラの一角だというの完全に忘れ去られていたのですが、いざ敵キャラとなるとほんとに強かった。いや、外見は完全に機能停止仕掛けのポンコツロボなのですが。洗脳が、洗脳が雑すぎるw
まー、何にせよ龍牙たちの力が封じられたため、阿義斗と決着をつけるために今度こそ自分の意志で主人公キャラとして彼と対決する決意を固める小林少年。今までもずっとなし崩しに友人キャラを逸脱してどんどんと主人公の位置に押しやられていくのを無駄な抵抗し続けていた小林少年が、ついに自分から、というのはやはり最終回ならでは、なのか。
でも、主人公キャラ慣れてないから、いざ自主的にやろうとするとなんかぎこちなかったのは仕方ないのか、これ。むしろ、龍牙の方がナチュラルに友人キャラの役をこなしてたぞ。自然に解説を挟み込むとか、実はセンスあるだろう。
それよりも、完璧な友人キャラをやってのけてたのが、阿義斗の親友であるバアルだったわけですけれど。ちょっとこの人文句のつけようのない友情に殉じる友人キャラだったじゃないですか。彼のパーフェクトな掛け替えのない友人であるからこそ、彼を裏切り友のために友の敗北を願い、しかし最後まで友と行動を友にする、という友人キャラの鑑みたいなムーブしちゃってまあ。
彼と比べると、小林少年は友人キャラ芸人に見えてくる不思議w あかん、友人キャラとして小林少年、形無しやん。
友人キャラとしてはやりきれず、バトル主人公としても慣れない事に戸惑うばかりで、何を十全やれてたかというと、これハーレム主人公じゃないですかね、小林くんw
見事なまでに龍牙に四神ヒロインズに三姫と添い遂げることになりそうなどう言い繕ってもハーレム主人公一直線な小林少年でありました。亀さんだけは完全に場の勢いだよねこれ。小林くんからすると、ほかはともかく亀は勘弁、じゃないのかこれw
と、ヒロインはこれで打ち止めかと思いきや、まさかの遅れてきた真打ち、人妻属性未亡人属性の麗斐堕の参戦である。小林少年を父と慕うシズマの実の母なわけですから、夫婦になってもおかしくないのか? 何気にイラストで一番気合入ってた疑惑が湧くんですけど、麗斐堕さん。超絶美人で清楚な色気の塊という、何この儚げな人妻美人はw
女子高生嫁として若くてハツラツとして家庭的、というパーフェクトさで圧倒的正妻感を出していた魅怨に真っ向から太刀打ちできる逸材でありました。
いやでも、やっぱり個人的にメインヒロインは魅怨だったなあ。
BookWalkerの限定書き下ろしでは、後日談の使徒たちの大将軍決定トーナメント(なんでか四神ヒロインたちも参戦)の模様と、ヒロインの誰かを選んだら、という夢という形ですが未来絵図を見せてくれる短編……7万字もあるのを短編と呼んで良いのかわかりませんけど、ってか殆ど本編並にないですか、この分量w 少なくとも本編の半分くらいのページ数はあるぞw
まあこれで見ても、魅怨が一番家庭的で平和な家族作れそうなんですよね。まあ、なんでか魅怨選ぶと他の使徒もついてくる模様ですけど。それなら、龍牙たちも一緒でええやない、となってしまいそうなんですけどw
他の娘も嫁として地雷っぽい所があるのが雪宮さんくらいで、他の娘らは普通に幸せな家庭築けそうなのがなんともはや。いや、黒亀はもちろん除く。あれはこう、駄目だろうw
まー、最初から最後までどんちゃん騒ぎのお祭りみたいな作品でしたけど、テンション最後まで落ちずにどのキャラも暴れっぱなしで、いやはやお疲れさまでした、と思わず言ってしまいたくなります。
こうしてみると、やはりテッちゃんことトウテツのボケキャラっぷりが際立っていて、彼と小林少年のコンビがなんだかんだとこのシリーズを愉快に牽引していたなあ、と思う所。
実に気持ちよく笑い倒せるコメディ作品でありました。あー、面白かった。

伊達康・作品感想
 
12月3日

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