【クレイジー・キッチン】 荻原 数馬/ジョンディー カドカワBOOKS

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ビジネス街に佇む洋食屋『ひだるまキッチン』。店主の天才料理人、日野洋二は2つの業を抱えていた。(1)自分で作った飯を客に食わせたい。(2)自分で作った飯を自分で食いたい。その為ならば注文無視、監禁となんでもござれ。しかし黙って従うような客たちでもない。不良サラリーマン、食事をたかる従業員―彼らを巻き込み、飲食店の常識を破壊する騒動が次々と勃発するのであった―!WEB掲示板発の伝説的料理コメディ、まさかの登場!

「陽だまり」じゃなくて「火達磨」キッチンなのか、この洋食屋。頭のおかしい洋食屋の店長が思うがままに自分の作りたい料理を自分が食べたい料理を自由に作り、それをやっぱり頭のおかしい傾向にあるお客たちに食わせる。時に強制的に食わせる。
しかし客たちも頭がおかしいだけあって唯々諾々と大人しくは食わされない。むしろ、自分から食う。「無理矢理にでも食わせてやるぜ!」に対して「応、喰ってやるぜ」という客たちである。常連客以外はちょっと泣きそうな環境である。
が、美味い。そういう環境を無視できるくらいに美味い。トロトロの牛すじや角煮は自分も喰ってみたい。
ともあれ、従業員もお客もわけのわからないハイテンションでひたすら作り、ひたすら食う。それ以外にどうせい、という作品であった。元はアスキーアート掲示板の伝説的作品だそうで、このノリはなるほどAAでキャラ立てて相互にぶつけ合って暴れ倒すタイプのそれだったなあ、と。なんとなく、場面場面でAAのキャラが叫んでるのが頭に浮かんでくる、くらいにはそれっぽさが残っている。
一方でAA掲示板の独特のノリはやはりそのまま移植、とはいかないようでテンションこそひたすら高いものの、キャラは濃いように見えて何気に掘り下げは少ない。AA掲示板で使われるのが版権キャラであるからこそ、登場時点で既にそこにキャラ立ては済んでいる、というのもありますしね。その元の版権キャラのキャラクターをあわせつつどれだけぶっ飛ばせるか、というのもこの手の作品の妙でありますから、それを抜かしてしまうと表面上の騒々しさしか残らない、というのはある程度仕方ないものなのかもしれない。
それでも、店長日野洋二のキャラは楽しいものでしたし、むちゃくちゃしているようで料理学校時代の先輩後輩とは今でも仲良く同志としてはしゃぎあい、気の合う常連客との丁々発止には強引であるけれど愛が溢れている。お客も、女子高生コンビなど後半に行くほど味が出てきますし、この娘ら高校生のくせに洋食屋に通い詰めるとはなかなかハイソでありますなあ。
料理モノとしては、料理そのものの描写には凝ってもいないし、食べる時のリアクションや反応も派手なものではありませんけれど、美味いぞーー! というノリを楽しめたら勝ちなのかもしれません。
しかし、指パッチンしたらシャッターが閉まるプリズンモードは、いい趣味してるゼw
そしてウェイトレスのカナさんは、あれ働きに来てるんじゃなくてタダ飯食いに来てるだけなんじゃないだろうか。