【サクラコ・アトミカ】 犬村 小六/文倉 十 星海社文庫

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畸形都市、丁都に囚われた美貌の姫君・サクラコの“ありえない美しさ”から創られた「原子の矢」は、七つの都市国家を焼き払う猛威を秘めていた…。その抑止のために各国の軍が丁都に迫る中、サクラコの護衛にして牢番、「無機物から創造された生命特性を持つ短期システム」、通称“バケモノ”と呼ばれる少年・ナギはいつしか彼女に魅せられていくのだが…!?「とある飛空士」シリーズの犬村小六が放つ、愛と青春のボーイ・ミーツ・ガール!

あれ? この文庫版って「星海社FICTIONS」版とはラストシーン違っているんだ。あちらの方は読んでいないのでどう違うかわからないんだけれど。
犬村さんの描く世界の果てを超えていくようなボーイ・ミーツ・ガールの原型、と言いたいところなんだけれど、実のところ「とある飛空士への追憶」や「とある飛空士への恋歌」シリーズの方が先なんですよね。
かの人が描く最果ての儚くも力強い恋の物語のプロトタイプのような力強さと荒々しさを持つ作品だと、今になって読むとそう感じたんですけどね。
「とある飛空士」シリーズへと続く様々なボーイ・ミーツ・ガールの派生の元というか源泉のような感じがありましたし、同時に犬村さんのオリジナルの初期作品である【レヴィアタンの恋人】から【とある飛空士】シリーズへと繋がる過渡期の部分を担っているような世界観でありましたし、キャラクターの造形を感じさせてくれましたし。
逆にこれが追憶の後、恋歌の初期が書かれている頃に手がけられた、というのは興味深くもある。
命とはなんだろう。ラストシーンで一人の登場人物のなかから、主人公とヒロインの命を燃やし尽くした恋、世界を変えた恋を前にして浮かんできた自問。
その疑問、その不思議さへのアプローチこそが、犬村作品の根幹を担い続けているように思うのだ。物語を紡ぐと同時に、真摯にその問いへの答えを探し続けている。
そうやって、命のきらめきを描き出しているのだと。
だから、一冊で終わるからこそ脇目も振らず焦点をそこに当てて描ききった本作は、すべての作品のプロトタイプに見えるのだろうか。ここからすべてが派生していくように見えるのだろうか。
これもまた疑問は尽きない。
その答えを追うには、やはりすべての物語を追っていくしかないのだろう。過去に翻って【レヴィアタンの恋人】の続きも読みたいんだけどね!!

犬村小六作品感想