ジャスティンミラノ

第91回東京優駿 日本ダービー G1 レース回顧  

3歳 オープン (国際)牡・牝(指定) 馬齢 東京競馬場2,400メートル(芝・左)

デサイルっ、デサイルっ、ノリさんだーーーっ!!!

直線最後、ミラノが前を捉えようとしたその時に、既に内ラチ沿いをシュガークンとエコロヴァルツを食い破るように突き抜けようとしていたダノンデサイルの方に目が釘付けにされました。4ハロン棒の時点でこれはデサイル、勝ち負けだ! と確信させられる迫力でしたし。
うおおお、ダノンデサイル、多くの人が口を揃えて調教ヤバい、変わり身凄い、と発していたので注目はしていたのですけれど、それでも3着までと思ってたんですけどね。ここまで強かったとは。

ダノンデサイルは、1月の京成杯で今回4番人気となっているアーバンシックを二着に退けて皐月賞に挑みました。が、レース直前鞍上の横山典弘騎手が歩様に違和感を感じて、出走を取りやめちゃったんですね。生涯に一度しかチャンスがないクラシックレースで、明確な異常がないにも関わらず馬の安全を考慮して出走を断念する。なかなか出来ない決断だったのですが、今回この結果を持ってその判断が正しかったのだと証明する形になりました。馬のことを第一に考える横山典さんらしい英断だったわけですけれど、その返答がこういう形で返ってくるとはねえ。武騎手の記録を超えて最年長G1記録の更新、さらに最年長ダービージョッキーの誕生ですよ。御年56歳。レジェンド武豊が目立つけれど、このヒトもまー意味わからんレベルのレジェンドだよなあ。
でも重賞は毎年相応に獲ってるものの、G1はほんと久しぶりだ。中央のG1となると2017年のNHKマイルカップのアエロリット以来。アエロリットかー。この馬も古馬になってからもずっとマイルから中距離戦線の牝馬のトップランナーとして活躍したいい馬だったなあ。


さて、改めて今回の日本ダービーについて語っていきましょう。
まずはレース当日までの各馬の情勢などから。

クラシックの一冠目。皐月賞、これを制したのはジャスティンミラノ。
ちなみに皐月賞が行われる前の雰囲気としましては、どんぐりの背比べ。むしろ紅一点殴り込んできた牝馬のレガレイラが一番人気になってたんですよね。というのも、彼女は2歳の頂点を決めるホープフルSを牝馬ながら参戦したうえで完勝。この時点でどの牡馬よりも自分が上だと証明してみせたわけです。
一方で2歳時に将来のクラシック候補として評判を集めた馬たちは、いまいち評判通りに活躍できず、また成長が遅れていて二の足を踏んでしまい、前哨戦は思わぬ伏兵が勝つことも多くて、果たしてトライアルレースを勝った馬は本当に強いのか、負けてしまった評判の馬たちは評判倒れなのか。ともかく評価が混沌としてしまったわけですね。
そんな中で、朝日杯を勝ったジャンタルマンタルを共同通信杯で下したジャスティンミラノが、強い相手に勝ったしこの馬もかなりのもんじゃあないか、とされて2番手評価を受けていたわけです。
ただ皐月賞の時点ではミラノはスローペースしか経験しておらず、ハイペースが想定されていた皐月賞向きではない、とされてたんですね。そもそもペース早くなったら追走できるのか、って。また走法や血統もどちらかというと東京2400向きだからダービーが本番、なんて言われていたわけです。
ところが、ミラノはそうした評判を覆してべらぼうに早くなって向かないと思われた展開を、余裕で前につけてあっさりとレコードでぶっちぎって勝ってしまった。
ちなみにこの時3着になったジャンタルマンタルは先日のNHKマイルで快勝しましたから、距離の問題はあったとはいえ文句なしに強い馬です。
そんなジャンタルに共同通信杯に続き完勝してみせた。向かないはずの展開をもろともせずに、向かないはずの舞台で。あれ? ジャスティンミラノってべらぼうに強いんじゃないのこれ!?
と、皆が新星の出現に愕然とさせられたのが、皐月賞だったのです。
亡き藤岡康太騎手が調教パートナーを務めたこともあって、感動の皐月賞制覇となったんですね。

ちなみに皐月賞のレース回顧がこれですね。



というわけで、大勢としてこのダービーはジャスティンミラノの一強だよっ! という声が強かった。まああれだけのパフォーマンスをみせたミラノ、むしろジャストフィットするのはこのダービーの方だよ、となればそれも当然。
戸崎騎手のダービー初制覇も間際だよ、という雰囲気……かというと、うむ。実のところ、2.2倍という人気は十分ではあるんだけれど、圧倒的とまではいかないんですよね。
実際にレースを迎えるとなるとあらゆるデータをほじくり返してくるのが、予想屋さんたちです。
ミラノは血統的にもダービー向き、とされながらも、焦点を父キズナに絞ってみるとこれがまた東京競馬場で全然重賞成績良くないんですよ。いや、それに関しては他のキズナ産駒……今回やたらとキズナ産駒の出走馬多かったので、そっちは気にしておいて良かったんでしょうけれど、ミラノに関しては共同通信杯で東京競馬場走って完勝してるんで、彼個人はあんまり考慮しなくていいデータだったかもしれません。ただ戸崎騎手が、ダービー勝ってない。初勝利間近、というのは期待膨らみますけれど、一方でこれまでずっと勝てなかった、という事でもあり……こういう勝てない呪いってほんとに続くんですよね。そういう意味でも、馬自身よりもそれ以外の要素で微妙な不安が消しきれない、という雰囲気はあったと思います。
間違いなく強い! しかし絶対視は出来ない、という塩梅ですか。

皐月賞とは違うんだよ皐月賞とはっ、と意気込んでいたのが2番人気レガレイラです。牝馬ながら牡馬クラシック参戦した紅一点、2歳チャンピオンでしたが。皐月賞では相棒のルメール騎手がドバイで怪我、という影響がこっちにも波及していて、皐月賞本番では乗り替わりが発生。馬群を縫って前に出るのに少し手間取り、結果6着に終わってしまいます。回顧記事にも書いてますけれど、皐月賞のハイペースも合わなかったんじゃないでしょうか。
しかし、今回は鞍上のルメールが戻りました。これは大きいです、ほんと大きい。ルメール買っときゃだいたい当たる、は真理です。それくらいほんとにこの人は上手い。
それに、今回は切れ味勝負になりそうですし東京競馬場向きという意味ではスワーヴリチャード産駒の彼女はミラノ以上だったかもしれません。

また、三歳のこの時期ってまさに成長期の真っ只中なんですよね。夏を経て秋に別の馬みたいになって現れる、みたいなパターンも多いのですけれど、皐月賞からダービーまでの一ヶ月前後でまさしく一変してしまう、という馬も少なくありません。
先週、オークスを勝ったチェルヴィニアなんかもそうでした。
今回も前走からまるで見違えた、という馬が何頭かいたようです。ちなみに、自分は馬体とか調教とかパドックとか返し馬とか見てもさっぱりわかりません、けっこう長い年月競馬見てきましたけれど、未だにさっぱりですね!
というわけで、自分で見て確認したわけじゃないのですが、こういう時は情報の集積です。昨今は競馬新聞だけではなく、ブログやSNS、コラムにYouTubeと様々なところで色んな人がコメント出しています。同じ調教見てもみんな見解違ったりするのですけれど、それでも集まった情報を俯瞰してみると傾向というものは見えてきますし、あれ?この馬ちょっと今回凄そうだぞ!? という意見が多方面から吹き上がっていることも観測できます。
今回特に前走とまるで違うぞっ!? という声が多方面からあがっていたのを観測できたのが、5番ダノンデサイル。8番アーバンシック。13番シンエンペラー。そして14番のゴンバデカーブースでした。9番のダノンエアズロックも一度調子を崩していたのを前走のプリンシパルSで快勝したように復調してきた、という向きの話は盛り上がってましたけれど、明らかに以前よりもワンランク上に覚醒したような話題があがっていたのが上記四頭でしたね。
コンバデカーブースは中2週でNHKマイルカップを激走したばかり。正直NHKマイルの時は調子かなり悪かったみたいで、それでも4着に入ったのはむしろ能力凄いよね、という話になっていたのですが、まさかのダービー参戦。いや流石にローテきつすぎない?と思ったのですが、これがむしろNHKマイルの出走が休み明けの一叩きになった感があって、ここにきて急上昇、本格的に二歳時に世代最強の一角と言われた才能を発揮できる態勢になってきている、というご様子でした。
体がようやく仕上がってきた、という意味ではシンエンペラーもそうで、これまで体がまだできあがっていなくて才能だけで結果を残してきたのが、皐月賞のあとようやくこれ本格化してきたよ。本気で走れる体になってきたよっ! と心身の充溢を伝える話が聞こえてきたわけです。
んで、とにかく調教の走りがヤバい、なにこれ凄い走ってるよ!? 別馬!? 別馬!? とあちこちから驚き混じりの声が飛び交っていたのがダノンデサイルであり、同じく今回の仕上がりが一等ヤバいっ、打倒ミラノがあるのはこの馬だろう、という凄まじい強者感を出していたのがアーバンシックでありました。
特にアーバンシックは、皐月賞で六番人気と脇ポディションだったのが、今回四番人気ですけれど明らかにミラノの対抗馬候補という雰囲気でしたね。或いはレガレイラすら上回る形で。
あ、最終オッズシックスペンスと並んで三番人気になってたのか。

そのシックスペンスは、というと……三番人気なんですけれど、不思議と自分の観測範囲ではほとんど話題にもあがってなかったんですよね。なんでだろう。ただ戦歴もスプリングSから皐月賞も出ずにダービー直行というローテ。これが満を持して、という感じでもなくて。ミラノと並んで二頭だけの無敗馬だったのですけれど鞍上・川田ゆえの人気、という印象でした。
ダービー直行という意味では皐月賞回避したダノンデサイルの方が休養期間長かったんですけどね。実際、九番人気というのはそこらへんにも原因はあったのでしょう。ノリさんも、G1という事を考えると最近の成績を見てもなかなかプラス要素とは言えなかったからなあ。

取り敢えず人気で並べると
一番人気ジャスティンミラノ
二番人気レガレイラ
三番人気アーバンシック
同率シックスペンス
五番人気ダノンエアズロック。エアズロックは鞍上がマジックマン・モレイラというのも大きかったんでしょう。トライアルがプリンシパルS経由の馬は歴史的にも成績よくありませんから。エアズロックが高額購入馬としてデビュー時から評価も高く、プリンシパルSの勝ち方も強かったですから、過剰人気とは言えないですけれど。
六番人気がコスモキュランダ。皐月賞で2着に入った実績を考えるならこの評価は低いっちゃ低いとも言えるのですけれど、鞍上がモレイラで皐月賞の乗り方が神騎乗と呼べるものだったのを考えると、妥当とも思えます。アルアイン産駒の星なんですけれど、距離的に皐月賞がベスト、という向きもありましたし。ただ、アルアインってダービー馬シャフリヤールの全兄であるので適正がないかというと……。でもアルアインとシャフって兄弟なのに全然違うんだよなあ。
7番人気がシンエンペラー。この馬も才能は認められながら、それを発揮しきれないでここまで来た……って、いや戦歴みると悪くは全然ないんですけどね。7番人気は低いだろう、と思いつつも上の並びを見ると、まあ、うん、となってしまうわけで。でも、本格化の気配はあったわけですしね。この時期の馬の成長はほんと三日会わざれば刮目して見よ、なくらい急変があるだけに油断できません。
8番人気はシュガークン。武豊のお手馬ですね。デビュー当初からあのキタサンブラックの弟だっ!てことで注目は集めていたのですけれど、この血統は総じて晩成型が多かったんで、むしろ新馬戦で2着。2戦目で勝利、とかなり早く勝ち上がったなあ、くらいの印象でまさかクラシックに参戦してくるとは思わなかったんですよね。それが参戦どころか青葉賞を快勝。だいぶ驚かされました。
とはいえ、青葉賞組の関西馬はなかなか実力を発揮できないのが長年の傾向です。馬としての人気はけっこうあると思うのですけれど、それが馬券の人気につながるかというとそのへんはシビアな競馬ファンなのであります。
ちなみにシュガークンのクンってなかやまきんに君とかの君じゃなくて、フィンランド語で「時」を意味する言葉だそうで。砂糖時間……甘い時って、めちゃくちゃスイートな名前だなw

あとは、皐月賞まで無敗だったサンライズアース。
トライアル京都新聞杯の勝馬であるジューンテイク。
世代でも最強クラスの追い込みを決める脚を持つきさらぎ賞馬ビザンチンドリーム。
これまた2歳時には世代最強候補の一角だったミスタージーティー
クラシックの登竜門で後に歴代勝利馬には名だたる名馬が並んでいる若駒Sの勝ち馬サンライズジパング。
これがダービー初騎乗となる鮫島克駿騎手がまたがるショウナンラプンタ。
そして朝日杯FSでジャンタルマンタルの2着に入る実績があるエコロヴァルツ。

この18頭で日本ダービーは行われました。



……違う、18頭じゃないんだ。
一頭メイショウタバルが挫石…蹄が炎症、内出血を起こす症状だそうで。のために金曜日に出走取消になっちゃったんですね。毎日杯で凄い逃げて勝った馬。皐月賞でも大逃げをカマし、このダービーでもこのタバルがレースを引っ張ることになる、と目されていた馬でした。

そう、直前でレースを牽引する予定の馬がいなくなっちゃったわけです。
シュガークンをはじめとしてこれまで逃げた事がある馬はいましたが、どれも本職ってわけじゃありません。
明確な逃げ馬不在、かわりに引っ張るような馬も不在。となると、誰かがやったるぜーっ、と一発逆転を狙ってか逃げを打つという奇策にうって出ない限りは、お互いに様子を見ながらのスローペースが予想されました。

この時点で騎手や関係者諸氏は頭悩ませたでしょうね。はたして、この予想される展開でどう立ち回るべきか。

天気は快晴、馬場良好。内外はもう関係なかったかな。
レースは大方の想定通り武豊のシュガークンが端を切るかな、と思った所で大外18番から岩田康誠騎手騎乗のエコロヴァルツがまさかの強襲。一気に先頭に立ち、エコロヴァルツが馬群を引っ張ることに。シュガークン武豊はこれを見て、さっと前に出る動きを抑えて先行集団に落ち着けるんですね。
注目はこの時点でノリさんがデサイルを番手につけたこと。場合によっては自分が先頭に出ることも辞さないつもりだった事はインタビューでも語っていますが、この時にもう絶好の位置につけてたんですね。
これは予想外に荒れる展開になるか!? と、思ったのですが、岩田パパはそこから無理に飛ばすことなく、すぐにスピードを絞ってペースを落とす。
その後ろにデサイルがつき、だいぶペースが一気に落ちたのを見たのかシュガークンもデサイルの外側に、エコロヴァルツを見る形で。
スローペースを見越したんでしょう、ミラノ戸崎も早めに前につけようと馬を押し上げてきます。
コーナーの時点で川田が武豊の真後ろに付けているのも、この展開を見るに最良のポジショニングと言えるでしょう。実に川田らしい位置取りであります。
意外だったのがルメールレガレイラ。1コーナーから2コーナーの時点で11番手あたり。中団後方。思ったよりも後ろだった。レガレイラの脚や馬群の捌きの上手さを考えるなら、確かにそこは悪くない位置なんだけど、ペースを考えるとそこはちょいと後ろだ。
アーバンシックはさらに後方。いや、レガレイラはともかくとしてアーバンシックの方はほんと後ろすぎない!? 脚質考えるとどうしても追い込みなんだろうけど。出遅れというほど出は悪くなかったし、エコロヴァルツが果敢に前にいった事でスローペースにはならない、と見たのかな。
実際は、向正面での馬たちのあのゆるゆるの走り方を見て、これ明らかに遅すぎじゃない!? と素人目にもわかるくらいのスローペースに。いや、ほんとに見るからに遅いよ!という走り方でしたからね、あれ。ハロンタイムに13.1と13秒台が入ってる。昨今3000メートル以上のレースでもあんまり見ない数字だぞ。結局1000メートルの通過タイムは1分2秒2。凄まじいスローペースになりました。
こうなってしまうと、馬群の後ろの方に居る馬は直線でどれだけ追っても前に追いつけなくなる。スローなんで全頭余力を残したままヨーイドン、となるために差し脚に差がつきにくくなるから、ギアを入れる位置取りが前でないと届かないのです。
あっ、これはあかんぞ!? と気づいて迅速に方針転換したのが、最後方とブービーの位置にいたコスモキュランダのミルコ・デムーロとサンライズアースの池添くんでした。彼らは後方一気に早々に見切りをつけて、向正面で加速、馬群を外から躱して一気に先頭集団に取り付きます。
その判断が間違っていなかったのは、コスモキュランダが6着、サンライズアースが4着まで粘って入っている事からもわかるでしょう。この時動かなかった後方集団はレガレイラを除いてほぼ下位に壊滅しています。その中にはダノンエアズロックやアーバンシックも数えられます。まあエアズロックはあの内側の位置からあの時点でお仕上げていくのは難しいからなあ。
アース池添が一気に先頭にまで襲いかかったことで、ここからペースは急上昇。直線入ってからヨーイドン、とならずその前の段階から皆が加速し始めたのである。ペース遅かったわりにこっからスタミナも要求されたことになるのか。
キュランダもアースも脚を使った分消耗はありますし、前で引っ張ったエコロヴァルツも後ろを引き離してのスローペースじゃないんで、彼もオツリはそこまで残っていなかったでしょう。
こうなると、ベストもベストの位置で力を貯め発揮できたのはジャスティンミラノであり、ダノンデサイルだったわけです。シュガークンも武さんベストを尽くしたよなあ。これは文句なしの騎乗でした。あとはまだ馬の力が足りていなかった。デサイルとミラノの強襲に耐えられずに後退。シュガークンはやっぱり秋以降か古馬になってからが期待ですかね。
直線残り400の位置でミラノがGOサイン。前は大きく進路が拓き、エコロとシュガーはまだ余力はあれどここから切れる脚はない。ここより後ろの連中はそれこそ位置が後ろ過ぎる。豪脚を見せてもミラノがミラノの走りを見せたら届かない。これは再び完勝かっ、と思った瞬間、視界の右端に内ラチ沿いからエコロとシュガーの塊を抉るように内に潜り込む赤い帽子が映り込む。
その勢い、その迫力たるや、外からまくってくるミラノを上回るオーラ。俄然、視線は内ラチ沿いを食い破ってくるダノンの勝負服に惹きつけられる。

「デサイル、デサイルだっ!」

思わず声が出た。
ミラノも伸びてるんだが、完全に脚が違う。ほぼ同じ位置から加速したのに残り200の時点で明確な差がついていた。
これは届かないっ。無理だ。

「デサイルだっ、ノリさんだぁぁ!!」

残り100メートルの時点で絶叫してしまった。
早めに前に出て粘った勝ちじゃない、明らかに強者よりも凄い脚で突き抜けた。9番人気人気薄でも、間違いなく強い勝ち方。ここだけの一度の輝きじゃない、世代最強を名乗るに相応しい、ダービー馬らしい勝利だった。
ダノンデサイル。安田 翔伍調教師に初の中央G1で初のダービーを送ることになりました。そしてダノンの冠についにクラシックを、それもダービーの冠を与えることになったわけです。
ダノンというと、朝日杯やホープフルは勝ててたんですけどね。クラシックではどうしても届かなかったのが、ついに届いたか。

2着にはジャスティンミラノ。戸崎、ダービーは遠かった。乗り方しくじったようには見えなかったんだが、1着は遠いなあ。
とはいえ、まだまだこんなもんじゃない。繊細な皐月賞馬だけで終わる馬じゃないので、これからですよ。

3着にはシンエンペラー。上り2位の差し脚で追い込んできた。ここで3着入るだけの実力を示せたのは大きいよ。本格化はマジですよ。秋以降は最上位の一角に食い込んでくる。

4着サンライズアース。序盤最後方にいたのに、向正面で十数頭抜き去って逃げてるエコロとその後ろのシュガーに並ぶまで食いついてきたという凄まじいレースをしながら、そのまま落ちていったエコロとシュガーを尻目に最後まで粘りきった。何気にエグいレースしてませんかね!?
調教でも抜群の仕上がりをみせていたようですし、馬を仕上げたスタッフと池添騎手の好騎乗の賜物でしょうか。皐月賞では惨敗しましたけれど、この馬もこれは逸材ですよ。

5着にはレガレイラ。これはポジショニングにつきるなあ。あの位置に入ってしまったのが辛かった。途中で動かせなかったですもんね。
にも関わらず、他の後方勢が壊滅する中でなんできっちり5着まで食い込んでるんですかね、このお姫様は。上り3F33.2で17頭中最速を記録。バタバタせず、直線で前があくまで我慢し、外を回さず当初の予定通り内側から食らいついていったルメールのリカバーも考慮に入れねば。
実力不足ではなく、展開が向かなかったなあ。

6着はコスモキュランダ。展開や距離の不安を考えれば、皐月賞2着の実力は証明できたと思われる。デムーロも出遅れなければもう少し前の位置から競馬出来たかもしれないのがちと勿体ない。

7着にシュガークン。これはもうちょいおとなになってからですねえ。
8着エコロヴァルツ。最低人気だった事を考えるなら、逃げに打って出てこの位置に残した岩田パパの判断は正しかったのでしょう。果敢に攻めた結果であります。朝日杯FS2着ですからね、このまま沈むのも勿体ないですよ。
9着にシックスペンス。位置取りは十分上位に食い込めるポディションだっただけに、ズルズルと沈んでしまった以上は現状ではまだ力不足か、仕上がっていなかったか。折り合ってもいなかったみたいですし、さすがに3番人気は過剰だったかと。

アーバンシックは11着。さすがにこのペースであんな後ろではさすがに勝負にならなかったか。
ゴンバデカーブースは13着。道中までいい感じに思えたんですけどね、直線で息切れしてしまったみたいで。調子が良かったのは間違いないみたいなので、やはり距離が長かったか。レースの疲労って調子とはまた別の、ここぞというスタミナに出ることもありますからねえ。

ダノンエアズロックはレース後のコメントみるとずっとテンション上がっちゃってたみたいですね。こっちもレース間隔の短さがこういう形で出てしまったんでしょうかね。


なにはともあれ、横山ノリさん、ダノンデサイルおめでとうございます。世代の頂点ですよ、頂点。
新たな主役の登場ですなあ。これは秋以降も盛り上がってくるぞ。3歳ってのは次々新星が現れるのが毎年楽しいや。




第84回皐月賞 G1 レース回顧   

3歳 オープン (国際)牡・牝(指定) 馬齢 中山競馬場2,000メートル(芝・右)

藤岡康太騎手が亡くなられてから最初の競馬開催週。今まで見たことのないピンと張り詰めたような沈んだような空気感でした。騎手の方々もスタッフの方々も緊張感というよりも、グッと溢れ出てくるものを我慢しているような雰囲気で。
それが決壊したとき、もう耐えられん感じでみんなボロボロ泣いてた。月曜日の合同葬のときもみんな泣いてたし、テレビやYouTubeなどでも堪えきれんと泣いている人たくさん居ました。
ほんと、それだけ藤岡康太くんの人柄が偲ばれるというものです。辛いなあ。

悲しみを飲み込んで、皆さんは競馬を続けていかれます。
クラシック第一弾、皐月賞です。

今年の前評判としては、3歳世代は牝馬の方が強くて牡馬の方はちょいといまいちなんじゃないか、みたいな言も流れていました。
ホープフルステークスを牝馬ながらに勝ったレガレイラが桜花賞ではなく皐月賞に参戦、というのも勝てると踏んだからなのでしょう。尤も、阪神芝1600メートルよりも中山芝2000の方がレガレイラの適正に合っているから、という判断だったからなのでしょうけれど。
いずれにしても単勝1番人気が皆がその実力を認めていた、という事を証明していたと思います。

2番人気はジャスティンミラノ。まだ2戦ながら2戦目で共同通信杯を勝利。この馬、友道厩舎の馬なのですが、友道厩舎では有力馬の調教を藤岡康太くんに頼むことが多く、ミラノの仕上げに跨ったのも康太くんだったそうです。
無敗で皐月賞に挑んだ馬はミラノの他にサンライズアーズ、きさらぎ賞を勝ってきたビザンチンドリームと他に二頭いましたが、共同通信杯で2歳牡馬チャンピオンのジャンタルマンタルを下して勝ち上がってきたミラノは、1段階強い馬と見られていたと思われます。
ただ不安点としましては、新馬戦、共同通信杯ともにかなりのスローペース。特に後者は勝ったミラノが上り32.6を記録。というか全頭33秒台で上がってきた完全後傾戦だったんですね。
つまり、速い流れのレースを今まで走った事がない馬だったのです。血統的にも良馬場のスローが一番力を発揮できるレースだろう、と言われてた感じで。

そして、この日の中山は爆速速い馬場でした。8レースの2勝クラス 牝馬限定戦で1:58.2と余裕で2分台を2秒近くぶっちぎるようなレースが出てましたからね。
とかく前目につけておかないと、とても後ろからはまくっても追いつけないのが今日の中山であり、そうなるとどの馬も前につけたがるので全体的にまた速くなるという、まあ馬のスピード、巡航速度が試される皐月賞だったんですね。

とどめに、逃げるだろうなと思われていて実際に逃げたメイショウタバル。これが重馬場の毎日杯を良馬場かよという好時計でぶっ千切って勝ってしまった馬で、4番人気と人気も高めでした。
ところが、このタバルがテンション上がってしまって、掛かってしまったんですね。鞍上の浜ちゃんも康太くんの同期という事もあって気合はいりすぎてたんじゃないか、みたいな事も言われてたりもしますけど、さすがにそんな事はなかったでしょう。向正面入る辺りで重心が後ろによって手綱引いて押さえようとしているらしき所が伺えます。でも全くペース落ちず息を入れられないまま、1000メートル57秒5という超ハイペースの時計を叩き出してしまった。
タバルは直線で早々に力尽き、最下位にまで落ちてしまいます。実力は間違いなくあるんでしょうけれど、これはまたコントロールが難しそうな馬が出てきたなあ。

ともあれ、ただでさえ速い馬場で暴走気味に先頭が逃げたために、完全にこれこの早い流れについていける馬と、ついて行けない馬に別れちゃったんですよね。
レガレイラは、この速いペース無理だったんでしょう。スタッフの人がまだトモが鍛えきれていなくてスタートが遅れてしまい二の足がつかない、というような事を仰っていましたからね。北村騎手が最後大外ぶん回さなくてはならなくなったのも、このハイペースでの位置取りがあそこになってしまった以上、仕方ない部分もあったかと。うまい騎乗ではなかったかもしれませんけれど。

んで、これまでゆるい流れしか経験したことがなかったのに、あっさりとこのハイペースに追走して前目につけてしまったのが、ジャスティンミラノなのであります。
元々距離不安もあり、限界ギリギリのタイミングで攻めて前残りを狙ったジャンタルマンタル・川田をゴール前で悠々と躱して、1:57.1というレコードタイムでクラシック一冠目を戴冠。
……あれ? ちょっと待って。このジャスティンミラノって……無茶苦茶強くない? スロー展開で後方から強烈な末脚を決めることもできれば、追走できない馬も出てくるほどのハイペースの流れに悠々と乗って、ほぼほぼ馬の現状の最大能力を引き出し、これしかないという展開に持ち込んだであろう、モレイラのコスモキュランダ、川田のジャンタルマンタルを相手に完勝と言ってイイ勝ち方をしちゃったんですから。
思ってたよりスケールが2周りくらい大きい馬なんじゃないの、この子。
ストライドも大きいですし、本来なら中山2000よりも東京府中は2400の方が合ってるタイプと言われていたにも関わらず、中山の方でこの勝ち方。じゃあダービーになったらどうなるんだ!?
これは下手をするとソングラインを超えてキズナの代表産駒になるかもしれない器ですよ。クラシックはじまって、牡馬の方にも大物感感じさせる馬が出てきた。

2着は弥生賞勝馬のコスモキュランダ。なかなか最近では本番に繋がらないステップレースなんですけれど、今の中山のスピードに乗れるタイプの速い馬だったんじゃないでしょうか。それ以上に、モレイラ騎手のポジショニングがちょっと極まってるんだよなあ。ルメールが怪我でしばらく休養する以上、これモレイラ騎手無双になりますよ、さすがマジックマン。
3着はジャンタルマンタル。正直絶対距離持たないと思ったし、実際1800で限界っぽい走り方だったんだけれど、それでも踏ん張るマンタルの根性とそれを引きずり出す川田の騎乗の凄まじさ。
ただこれ、本当にここが限界の限界、上限でしょう。もう2000メートル走らすこともないかもしれない。そして最大限の力を発揮しても3着というところ。いやむしろよく3着持ってきたよ。

4着はアーバンシック。レガレイラと血統的にほぼ同じ、母が姉妹で8分の7一緒なんでしたっけ。そういう話で話題にあがってたんですけれど、現段階の完成度でいうならレガレイラより上だったかもしれない走りっぷり。そして伸びしろもこれ、レガレイラに負けてないでしょ。将来性で言うなら、ミラノに追随するのがこの馬なんじゃないだろうか。
5着には最優良血馬のシンエンペラー。兄姉がアメリカやヨーロッパのG1勝ちまくってる、世界でも頂点級の良血馬です。全兄がフランスダービーに凱旋門賞勝ったソットサスですよ。
とはいえ、さすがに欧州血統にこのウルトラハイペースをどうにかせい、というのは酷。むしろ展開も馬場も向かないだろうに能力だけで5着まで持ってきているあたり、よう走っとる。ってか、この子もう海外中心で走らせた方がいいんじゃないだろうか。超赤字になるかもしれないけど。
そしてレガレイラは6着。上り最速でここまで繰り上がってきたのですから、能力不足ではないでしょう。木村調教師は調教の仕方間違えてた、と仰ってますけれど、はてさて。まあ馬の調子自体満足いってなかった感じの物言いでしたね。これはオークス路線になるのかな。






第58回共同通信杯 G3 レース回顧   

3歳 オープン (国際)(特指) 馬齢 東京競馬場1,800メートル(芝・左)

クラシックを目指す3歳馬たちの登竜門の一つ。ここを勝って名馬の列への名のりをあげた馬も昔から今にいたるまで沢山いるレースです。
このレース面白いのが、同じ週の土曜日に行われるクイーンカップが、こっちはマイルなんですけれどかなりの高速レースになるのに対して、1800のこっちは毎年スローペースになる傾向が多いってお話。
過去十年の1000メートル通過タイムの平均が61秒超えてるとかなんとか。1800なら60秒は切らないと遅い方なのが、さらに1秒以上遅いんですからそりゃスローペースだ。

んでもって、本年度も同じようにスローペース。そして直線揃ってヨーイドンの前残り瞬発力勝負レースだ!!

わっちゃーーー。やっちゃった。


事前の圧倒的人気は、去年の2歳牡馬チャンピオン。朝日杯を勝ったジャンタルマンタルでした。3戦3勝の無敗!
とはいえ、まだ体の方は成長しきってなくてまだまだ緩いというのがホースマンたちが各自述べている。ってか、調教師先生もまた前の方が強くて後ろ脚のトモは出来上がってないと競馬番組のインタビューで答えてましたからね。全然才能だけで走っている段階なんじゃないでしょうか。
おまけに、前進気勢が強くなっているそうで。どんどん前に前に行きたがる傾向が強くなってるってことですな。
……今日のレースはスローペースになりますよー? ってレースでしたよね、確か。
うん、案の定というべきか。序盤、ジャンタルマンタルと武さんのエコロヴァルツが揃って並んで手綱引かれて首上げてるシーンが。エコロの方もかよ!
こっちは朝日杯2着で3番人気。若い、こっちもまだまだレース覚えれてない感じか。
能力においては新馬戦でその底知れなさを見せつけ、ホープフルでは鞍上の坂井くんが盛大にやらかしてしまったものの、ちゃんと走ってたら勝ち負けあったよ、と言われているミスタージーティー。こっちが2番手だったのですが。
矢作先生、前走レース後めっちゃ坂井騎手叱ってたのに、次もこうして坂井騎手乗せてくれるあたりいい先生なんだな、と思うと同時に結果出さなきゃいけない若手騎手はプレッシャー、プレッシャーであります、これ。
でもあれだね、入れ込みきつかったみたいで。自由に行かせると変な癖ついちゃうし、かといって押さえて押さえて後ろになっちゃうと、こうなっちゃうし。
ここで瞬時に宥めて落ち着かせてよいポディションを取ってしまうような騎乗技術を身に着けていかないといけないんでしょうなあ。ハードル高いなあ。

1000メートルは62秒6。超スローペース。
この時点で、逃げは9番人気単勝倍率151.2倍のパワーホール。少し離れて二番手はジャスティンミラノ。
直線入ったくらいでヨーイドンでしたから、こりゃもうミラノがベストポディション、ベストペースですよ。
こうなると、どこに居ても脚色変わらない羽目になる。これで後ろからぶっちぎるみたいな意味不明な展開で勝てるのはイクイノックスくらいである。
あがり3F、全頭33秒台。2番手につけていたジャスティンミラノが32秒6でジャンタルマンタルと同じで上がり最速。2番手で最速出されたら、追いつけませんよ。
ジャンタルマンタルは川田が比較的前目につけていましたけれど、4番手5番手あたりの外。勝つためにはもう一段列前にいないと無理なところでした。
3着には逃げたパワーホールが粘りきり、ゴールに滑り込み。後ろは追いつけず。
けっこうな荒れたレースとなってしまいました。
エコロヴァルツは5着。ミスタージーティーは7着。ショーマンフリートは最下位か。ここで跳ねるか、と狙い定めていた馬だけにこの結果は……超スローペースが耐えられんかったのかしら。

勝ったミラノは新馬戦からこれが2戦目で2戦2勝。ただ今回は展開にばっちりハマった感も多分にあるだけに、まだちょっとその強さが本物かは次以降で見極めていかないといけないと思う。
ジャンタルマンタルは逆に展開に負けた感じ。それでも2着にくるのは才能でしょう。ただ、ここで負けがついちゃったのは不安ではあるなあ。事前にあがっていたマイナス要素をそんなもん関係ないわ‐っと勝っちゃう馬がやっぱり強いだけに、事前に言われてたのがそのまま出て勝てなかった、というのはこの時期の馬としては気になる所ではある。朝日杯の勝ち馬はその後の戦歴色々難しいところあるし。
エコロはまだ幼いです、それがスローペースでもろに出ちゃったなあ。次回次回。
ジーティーはなあ……。コメント見てパトロールビデオを見ると確かにスタート直後にエコロに盛大に寄られて、道中も囲まれて突かれてパニックになってたそうですし。精神的に大丈夫だろうか。







 

6月25日


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