徒然雑記

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ドラゴンノベルス

田中家、転生する。2 ★★★☆   



【田中家、転生する。2】 猪口/kaworu ドラゴンノベルス

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平凡一家、社交界デビュー!? 王都での学園生活始まります!

辺境を襲った魔物災害から一年。
田中家は3兄弟の入学のため一家総出で王都にお引っ越しすることに。
もちろん猫達も一緒です。
しかし待ち受けるは右も左もお貴族様だらけの学園&社交界。
試される礼節(マナー)、派閥争いの影も忍び寄る王都で、元庶民の一家は目立たず平穏に暮らすことはできるのか!?
転生一家の異世界奮闘記、第二弾!

猫、普通サイズならともかくあんなクマみたいなサイズの猫たち、王都につれてってどうやって飼うんだよ! と思ったら郊外にとんでもない広い屋敷を買ってしまってまあ。いや、マジでデカすぎてこれって王族の別荘か大公爵の屋敷とかじゃないの? というくらいなんですが。
でも、最初一家揃って御用商人のヨシュアの本邸に下宿させてもらうつもりだった田中家の面々。
いや、さすがに大商人の屋敷がでかくて部屋も空いてるにしても、貴族じゃなくても一家揃って下宿はあかんてw
いつも騒動を連れてくると家族からも呆れられているエマだけど、いやいやお父様も大概ですよこれ。ヨシュアのパパの大商人ロートシルト氏が身分差も忘れて、いつの間にかお父様にタメ口でツッコミとお叱りの言葉を飛ばすようになってるのも仕方ないよね。
ロートシルト氏に一から十まで面倒見てもらえなければ、今でも高級商材となる地元の産物持て余して貧乏生活してたんだろうし。幾らでもお人好しで世間知らずで金銭感覚ガバガバなスチュアート家から毟り取れただろうに、本当にお世話になりっぱなしじゃないか。
こうしてみると、スチュアート家の人々って基本的に振り回されながらも面倒見てくれる人と相性イイんだろうなあ。ヨシュアみたいなエマ信者で自分を顧みずに尽くし献身しちゃうタイプはちょっとあかん気がする。イエスマンじゃなくて、ついついお小言を言ってしまったり、常識をフォローしてくれたり。
その意味では、フレンチェスカ・デラクール嬢は最初虐めてくる令嬢という立場で、紆余曲折あって貴族社会での立場を失って孤立しかけた所をエマがお友達として守ってくれた事で救われたわけですけれど、エマに凄く感謝して上っ面じゃない本当の友達という関係に親愛の情を深く注いでくれながら、一方で一番常識的な貴族令嬢として、何かあると突拍子もない事を始めたり非常識な行動にでてしまうエマに、最低限越えてはならないラインを死守して、フォローしてくれるので地味ながらかなりエマが貴族社会で注目を集めるのに助けになってるんですよね。
エマ本人は自分の感性で突き進んでいるだけなのだけれど、周りがいい意味で勘違いしてくれて評判になっているのは、祖母の調教によって仕込まれたマナーの良さとフランチェスカのフォローが効いてると思うんですよね。礼儀作法とか基礎的な良識の部分がしっかりとしてなかったら、どうしたっていい印象は残らないですからね。基本的な部分がちゃんとしているように見えるからこそ、エマの突拍子もない言動も好意的に見られる余地が生まれるのですから。
いやしかし、エマたちスチュアート家の三兄弟の学園生活なんて、そもそもマトモに過ごせるのかと思ったら……いや、予想通り決してマトモには過ごせてないのだけれど貴族社会の中で浮いてしまうのではなく、第二王子の派閥の中の一方の旗頭的な立場に立ってしまうとは。それ以上に、エマが貴族令嬢として持て囃されることになるとは。あれ、野猿系だぞ。まあ、上記したように黙って大人しくしていれば楚々とした礼儀作法の整った絶世の美少女に見えるのだけれど。
中身はアレなのにねー。いや、まさか枯れ専のイケオジ趣味とは思わんかったよ、エマさんw
幸い、なのか恋愛対象ではなくあくまで推しとして愛でる対象みたいだけれど。
前世のOL時代からの趣味なんだろうけれど、現世の美少女なのに枯れ専となると倒錯的だよねえ。
エマって前世との混ざり方がちょっと面白くて、年齢相応の少女的な考えるよりも即動いてしまうような忙しない感覚とOL時代の大人の女性としての視点と、年配のおばちゃん的な保護者的な目線というのがまだら模様に介在してる感じがあるんですよね。
別個に別れてるんじゃなくて、コロコロと入れ替わるような感じでもなくて、マーブル模様に様々な側面が同時に垣間見えているような。普段一番強いのはやっぱりエマとしての暴走少女な面なんでしょうけれど。
だからか、これはエマに懸想している男の子連中としては難易度高いだろうなあ。いまいち恋愛的に捉えどころがないですし、いつも自分のほうが振り回しているくせに唐突に保護者目線になってきますし。それに恋愛に対して、前世で疲れてしまって面倒くさいと敬遠気味になってるにも大きいですなあ。前世ではOL時代にそれなりにお付き合いがあったみたいで、実感籠もってるしなあ。イケオジ相手にテンションあがりまくるのも、外から愛でる方に傾倒しているから、とも言えるでしょうし。
ゲオルグ兄ちゃんと弟のウィリアムにもさっぱり彼女になってくれそうな相手の気配がないのは苦笑してしまいますけど。エマの同じグループの令嬢たちとは接触も多いだろうに、ゲオルグは残念お兄ちゃんすぎて、ウィリアムは微妙に気持ち悪くてw やっぱり女性に縁がなさそうなんだよなあ。
いや、ゲオルグ兄ちゃんはついついダメ男の面倒見ちゃう系女子なら良い物件に見えるけれど。フランチェスカが何気に危ない位置にいそうだぞ。
まだ可能性がありそうな兄ちゃんに比べて弟の方はなんか絶望的な気がしてきたぞw



厄災の申し子と聖女の迷宮 1 ★★★☆   



【厄災の申し子と聖女の迷宮 1】 ひるのあかり/桜瀬 琥姫  ドラゴンノベルス

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死闘と混沌に満ちた迷宮を攻略する最強冒険者は現地生まれの狩人だった!

神が創りし迷宮のある世界。狩人の少年シュンは、現代日本から召喚された双子の少女ユアとユナと成り行きでパーティを組んで迷宮を攻略することに。銃と剣と魔法で戦うRPGのような迷宮で、シュンの"狩り"が始まる! しかし、それは、異世界からの召喚者、果ては神までもが驚愕を超えて苦笑するほどの超絶廃プレイそのものだった――!?
コミカライズの連載がはじまったのを見たのですが、これが一話からえらい面白い内容だったので、原作の方はどうなのかな、と読んでみた次第。
なぜか、漫画が連載されているのは【B's-LOG COMIC】だったりするのですが。まあ【カドカワBOOKS】などからも漫画化されて連載されてる作品が多い雑誌なのですが、だいたい女性が主人公の作品が多いので、本作みたいに男の子が主人公で、というのは珍しいというのもあったのですが。
そもそも、異世界転生モノでありながら純粋な現地人が主人公という点から結構珍しいと思うんですよね。それも、転生者の若者とパーティーを組む形での。
主人公のシュンは、若いながらも育ての親たちの仕込みで名うての狩人として、そしてソロの冒険者として活動する少年でした。
この世界では、孤児にはダンジョンを探索する義務が課せられていて、シュンもその義務を果たすために故郷から旅立ち、潜ったダンジョンでこの世界の神が行っている悪趣味な遊戯の存在を知ることになる。自分たちもまたその神の遊びの駒であるということも。
そして、異世界……この場合は地球から神が毎年のように集団召喚によって、少年少女たちを呼び寄せ、無理矢理に神がプロデュースしたダンジョンの探索に投入されているということを。
シュンは、そこで召喚された学生たちに混じって、ダンジョン攻略を行うように命じられるのだった、という内容。まあそこまでも細かく紆余曲折あるわけですけどね。

このシュンという少年が歳のわりに達観しているというか、ずっと独りで活動してきたせいか非常に狩人として研ぎ澄まされていて、まさにプロフェッショナルなんですよね。
突然、異世界に転生させられチートを与えられたといっても右も左もわからないところから、いきなり命がけのダンジョン攻略を強いられた学生たちの素人丸出しの姿を比べると、転生モノのテンプレとかスラング、用語、概念から全然知らないものの、冷静さを失わずにじっくり観察を重ねながら黙々と目的を達していくシュンの様子がまた頼もしいのである。
狩人という生業ゆえの我慢強さ、慎重さがそのまま廃人プレイ紛いの行動に繋がっていくのは面白かった。予断を持たないが故に安易に不可能と判断せず、検証と実証を繰り返していくところとか。
また現地人で銃なんて存在自体知らなかったのに、弓や弩の延長にある遠距離武器だと把握するやどんどん使いこなしていくところとか。

そして興味深いのがヒロインとなる双子の姉妹なんですね。双子キャラにも色々あると思うのですけれど、双子といっても個性が正反対だったり見た目は一緒でもキャラや性格は随分違っていたり、とヒロインとして扱われるキャラクターは特に個々の個性を重視した形で描かれることが多いと思うのですけれど、本作のユアとユナはぶっちゃけ全く差別化する様子がないのである。
双子二人セットで描かれると言うと、最近では【クロの戦記】の双子エルフのアリデットとデネブが思い起こされるけれど、二人セットで掛け合いという点でもユアとユナはアリデットとデネブもコンビと良く似てるんだけれど、なんだかんだと姉と妹で性格が違っててちゃんと二人別々にわかるように描写されている双子エルフと違って、こっちの二人は完全に不可分の二人一組で描かれていて、区別する様子が見受けられないんですよね。完全に二人で一人、という様相を呈している。
挙句の果てには、あの合体ですからね。あんなの、個々に自律した意識があったら出来ないことでしょう。生まれる時に無理やり二人に分けられた、という双子の妄想はあながち間違っていないのかもしれない。
いや、こういう自分自身と双子の姉妹との間で自己と他者であるという認識が曖昧になっている、という双子キャラはたまに登場したりしますけれど、それがメインヒロインとなるとちょっとお目にかかったことがない気がする。
とはいえ、二人差別化されていないとはいえ、双子というひとくくりでみるとこれが面白いキャラなんですよね。喋ってる内容はアーパーでお調子者というのは、プロというか職人気質なシュンと案外相性が良くってこの双子がいると雰囲気も自然と明るくなっていますし。
見るからに幼く実年齢からしても同世代と比べてもかなりちんまい双子は、シュンをして庇護欲を湧き立たせるのか面倒見よく扱っていますしね。……まあ過労死寸前になりそうな何日も跨ぐような長時間戦闘を当然のように強いたり、と現地人らしく労働基準法の概念は存在しないので、儲かるし強くなるけれどブラック!という環境なのですがw
とはいえ、双子もクラスメイトたちから見放され、そのままなら衰弱死するか魔物に殺されるかという運命を辿るはずだったところを、シュンに拾って貰って生きる術、戦う術を教えてもらい、一緒にパーティー組んでくれたという恩もあり、最後まで運命を共にする気満々なのですが。

しかし、悪質なのがこのダンジョンを運営して、無理やりプレイヤーを現地や異世界から引き込んで遊んでいる神様である。シュンたちがゲームマスターが本来想定していないクリア方法やモンスター攻略を行った際は、あとで修正してモンスターの強化をしてたりするんですよね。
バグや不具合をなくすのはわかるんですけれど、攻略されたから二度目はないように強化するって単純にGMとしてズルいし卑怯な気がするんですよね。
本気でダンジョンを攻略させる気があるとは思えないムーヴしてるんですよね。とにかく、どんどん脱落者を出すような運営ばっかりしていますし。
でも、シュンの国の偉い人には日本人らしい名前の人もいるらしく、ちゃんとクリアしてダンジョンから出ることの出来た者はいる、という体になっていて、それが新たに召喚された若者たちの希望になっているんだけれど……どこまで本当なのやら。
今の所駒に過ぎないシュンたちは、神様の言われた通りにダンジョンを攻略していくしかないし、シュンからして孤児の義務を果たしてダンジョン攻略を終えてさっさと帰る、くらいしか思っていないようなので、神様への反発とかはないみたいだけれど、さて果たして本当にダンジョンの攻略は可能なのか。
あとがきだと、どんどんとあの少年神の顔色が青くなっていくそうなので、ちょっとザマァ展開も期待できるかも?

刹那の風景 1.68番目の元勇者と獣人の弟子 ★★★☆   



【刹那の風景 1.68番目の元勇者と獣人の弟子】 緑青・薄浅黄/sime  ドラゴンノベルス

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二度目の人生は棄てられ勇者、三度目の人生は獣人のわんこ族と旅に出ます。

68番目の勇者として異世界に召喚されつつも病弱で見放されていた杉本刹那は、23番目の勇者カイルからその命と共に大いなる知識と力を受け継ぎ、勇者の責務からも解放される。三度目の人生にしてようやく自由を得た刹那は、冒険者として生きていくことに。見るもの全てが新しい旅の中で生まれる出会いと別れ、それが彼とそしてこの世界を変えていく。

不知の病で若くして死んで、異世界に転生させられたと思ったらそこでも同じ病気で動けず、ってどんな地獄なんだ。
絶望のダブルバインドですべてを諦めてしまった刹那の前に現れたのは、23番目の勇者だというカイル。かつて、同じように勇者から力と知識を受け継ぎ悠久の時を生きてきたカイルは、二人分の勇者の力と長く生きた知識と経験を刹那に託してこの世界から消失する。
一時間にも満たない僅かな邂逅でありながら、まるで生来の親友のように或いは兄弟のように打ち解けたカイルと刹那。それでいながら、同じ時を生きることが出来ず、託すという形でカイルは刹那に未来を与えて去っていった。
まさに、一期一会の邂逅だったのだ。
世界を旅したい、生まれてこの方病室に閉じ込められつづけた刹那が抱いた願いは、こうして異なる世界で叶えられることになった。でもそれは、一所に留まること無く流離い続ける旅から旅への人生が約束された、ということでもあるんですよね。
実際、最初に冒険者ギルドに登録して居を構えた街では、良き出会いに恵まれ続ける。ギルド長には随分と親切にされて良く面倒を見てもらったし、宿では女将(?)に我が子のように慈しんでもらった。そして、まだ冒険者として右も左もわからない刹那に、臨時パーティを組んだベテラン冒険者は冒険者としての様々な心得や心構え、ノウハウを教授してくれて、先々の心配までしてくれた上で刹那を一廉の男として見込んでくれた。
それでも、刹那は居心地のよかったこの街を、旅立っていく。それはこの国ではひどい扱いを受ける獣人の子アルトを拾い弟子にした事がきっかけだったかもしれないけれど、アルトと出会っていなくても早晩旅立っていたのは、ベテラン冒険者のアギトの誘いを丁寧に断っていたことからも明らかだろう。
刹那の風景というタイトルは、主人公である刹那のいる風景というだけではなく、彼の一所に留まらない人生の常に移り変わる景色を表してのことなのかもしれない。
悠久の時を生きることになる青年の人生の旅路を、刹那の風景と名付けるのもまたどこか詩的じゃないですか。

この物語は、主人公刹那の人生の旅路を描いたお話だ。きっと、長い長い話になるのだろう。人と違う時間を生きることになった刹那は、本質的に人の集まりの中に留まることが出来なくなった存在だ。彼の人生は、一つの場所で送られることはない。でもだからなのだろうか、彼の物語はどこか人との出会いに比重が傾けられているように見える。
上記したように、彼の旅立ちは最初からかけがえのない出会いに恵まれ、そして別れを内包していた。長く付き合うことも出来ただろうギルド長やアギトさんと言った人たちとも、惜しみながらも手を振って別れを選んだ。これからもきっと、刹那の旅には出会いと別れが寄り添い続けるのだろう。
そんな中、奴隷商人に虐げられていた獣人の子供を刹那は引き取ることになる。アルトという名の獣人の子は刹那に懐き、この子は弟子という形で刹那の旅に連れ添う。
最初、もしかして実は女の子の可能性も、とボロボロの風体や栄養不良からの成長不足から性別がわかりにくくなっていたものだから、ちょっと期待したんですけれど、一緒にお風呂に入って丸洗いする、という誤解しようのない入念な確認作業が介在してしまったために、性別誤認という可能性はきっぱりとなくなってしまった。
とはいえ、男の子だろうと女の子だろうとアルトの可愛さはかわらない。なんかもう、健気で一生懸命慕ってくる幼い子供の可愛らしさはなんなんでしょうね。無条件で庇護欲が湧いてくる愛おしさに、ギューッと抱きしめてあげたくなる。きっと、そうすれば向こうも嬉しそうに抱きついてきてくれるだろうから。
でも、刹那はアルトを目一杯可愛がりながら、最初からいつか大きくなって自分の手元から巣立っていく日の事を考えているんですよね。アルトが一人前になり、師匠の自分が心配する必要がないくらい自立して、旅立っていく日のことを思い描いている。それを、とても嬉しいことだと考えながら。
それは、刹那にとっては寂しくても哀しくはない、良き別れ、なのでしょう。今は、懸命に離れまいと抱きつき手を握ってくる幼子を優しく包み込みながら。
刹那のこの穏やかで優しく、しかしどこか遠い精神性がこの作品の空気感を形作っているような気がします。
果たして、刹那が一人の弟子を連れながら歩く世界が、次に見せてくれる風景はどんなものなのか。
どこか切ないような、落ち着くような、穏やかな気持ちにさせてくれる作品でした。


田中家、転生する。 ★★★☆   



【田中家、転生する。】 猪口/kaworu ドラゴンノベルス

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家族いっしょに異世界転生。平凡一家の異世界無双が始まる!?

平凡を愛する田中家はある日地震で全滅。
異世界の貴族一家に転生していた。
飼い猫達も巨大モフモフになって転生し一家勢揃い !
ただし領地は端の辺境。魔物は出るし王族とのお茶会もあるし大変な世界だけど、猫達との日々を守るために一家は奮闘 !
のんびりだけど確かに周囲を変えていき、日々はどんどん楽しくなって――。
一家無双の転生譚、始まります !

一家丸ごと異世界転生! いやこれはなるほど。異世界転生モノでまず最初に気になってしまうのはやっぱり元の世界に残された家族の事なんですよね。特にまだ十代の若者、それも一人っ子なんかが事故やらで死んでしまったら、残された家族のそれからの事を思うと胸が痛いものがありました。
それを思うと、一家丸ごとで転生してしまうというのは、元の世界への心残りが一つ解消されるパターンなんですなあ。まあ冷静に考えると、元の世界では一家丸ごと全滅しているわけですから、悲惨極まりない話では在るんですけれど。
まあ、転生することになった田中家の人たちは楽天的と言うか根っから明るく呑気な性格なのであまり引きずることはないようですけれど。
ある日突然、前世の記憶を一家みんなが思い出す、という展開はまあ生まれた時から記憶があるとこの場合混乱してしまいますので、自然な成り行きというべきなのでしょうか。
でもこれ、ある意味パパさんとママさん、生まれ変わっても結ばれていたということなのですから、何気にロマンチックなシチュエーションなんじゃないですか?
あと、特徴的なのが猫である。猫でかいな!!  完全に猫という名の巨大生物じゃないですか。これだけデカイ猫ってもはや虎なんじゃないですか? 猫科がデカイとそれもう猛獣ですよ? じゃれつかれると普通に死にそうなんですけど。
幸い、この猫たちは元の世界に居ることから半ば妖怪みたいな存在で非常に知性的であり、田中家の人々を慈しんでいたので、ちょっと機嫌が悪くなると猫パンチ、などという危険もなさそうなのですが。
でもこういう人間よりも巨大な質量を備えてしまうと、不思議と猫というよりも犬的な挙動に見えてしまうんですよね。犬みたいな忠実な振る舞いとはもちろん違うのですけれど、自由気ままで自分たちこそが一番偉くて人間たちは下僕!という風な振る舞いを見せる猫らしいところが目立たず、自分よりも小さな存在を護るように気を配って動くようすなんか、大型犬っぽく見えるんだよなあ。

とまあ、記憶が戻ったことで皆の無事(?)を喜ぶ田中家の人々。呑気だ。
でも、本人たちのこののんびりした善良温厚な気質とは裏腹に、田中家が転生したスチュワート伯爵家は、魔物が侵攻してくる辺境を任された貴族であり、これが想像以上に過酷な土地なんですよね。
実際、周りの辺境領は統治する貴族家が軒並み破綻していて、スチュワート伯爵家も長女のエマが偶々開発に成功した高級絹と、商材を的確に稼ぎに変換してくれるお抱え商人がいなけりゃ、一家総出で内職してても早晩財政破綻していたくらいですしね。
それに、魔物の恐ろしさがゲームのモンスターのようなちゃちなものと違って、まさに存在そのものが厄災級。突然、湧いて出てくるところといい、強さの基準がまともに人間の手に負えるものじゃないところといい、魔物の侵入が「ハザード」と呼ばれるのに相応しい脅威であり、それと真正面から向き合っているのが辺境地域なんですよね。
スライム戦でここまで絶望的でエグいことになる戦いは、早々見たことなかったですわ。場合によっては生きたまま喰われるの前提で生き残りの選別をしなければならない、ってそれまでのんびりコメディやってたのが嘘のような緊迫感と絶望感で、そのギャップが凄かった。普段あれだけ呑気にすごしているのに、いざという時あれだけの覚悟を備えていたわけだ、スチュワート伯爵家の人々は。

彼らと知り合い、それまで宮廷政治の陰湿さから精神の均衡を崩し家族間の仲も壊れかけていた王妃とその子供たちは、スチュワート家の人々の明るさと善良さ、その純朴さに心救われることになるのですけれど、それだけではない辺境に暮らす者たちの覚悟と、彼らの置かれた過酷で理不尽な状況を目の当たりにすることで、国内の政治的な不均衡と向き合うことになっていくのか。
ちなみに、スチュワート家こと田中家の人々は腹芸とか全然できないので、政治的にはまったくアレなのですが、彼らの場合はそのアレさがまた武器となっていくんだろうな、これ。
次からは辺境から王都に一家乗り込んでの大騒動になるようなので、彼らの動向によって何がどうシッチャカメッチャカになるのか、楽しみです。
しかし、長男と次男と結婚してくれそうな相手、出てくるんだろうかw

異世界転移、地雷付き。2 ★★★   



【異世界転移、地雷付き。2】 いつきみずほ/猫猫 猫 ドラゴンノベルス

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異世界に送られたナオ、トーヤ、ハルカの幼馴染3人衆の冒険は続いていた。そんな中、離ればなれとなったクラスメイトたちと再会を果たすも、忌まわしい地雷スキルのせいで、すんなり“仲間”とはいかなくて…。魔導書探しに武器選び、猪狩りに物件見学。果ては喫茶店の経営立て直しも請け負うことになり―!?ほのぼの開拓スローライフ第2弾!

これ、スキル取得で地雷スキル取っちゃうケース以外でも、飛ばされた場所によって結構なハンデありますよね。ユキとナツキも、若林くんも地雷スキルは基本取っていないけれど、ハルカたちに出会わなければ詰んでた状況でしたし。特にユキとナツキは生き残るためにおおよそ間違った選択肢は取ってなかったにも関わらず、ハルカたちが探しに来てくれなければ勝ち目の薄い博打に出なきゃならない所まで追い詰められてた訳ですからね。あれ、もし二人だけでもあの街じゃなく、ハルカたちと同じ街くらいの経済規模、雇用状況が良好な場所だったらもう少し地道に活動のための余力を貯められてたでしょうし。なので、自力ではどうにもならない運の要素が結構絡んでる事になるんだよなあ。
それとも、飛ばされる場所に関しても何らかの条件があったんだろうか。

ともあれ、何とか生活に余裕が出来たハルカたちが、隣接する街にまで足を伸ばして現世でも特に仲の良かったユキとナツキを探しにいったら、運良く速攻で見つけられました、合流しました良かったね、というお話でした。現世でも、この五人でつるんで遊んでいたというけれど、女子三人男子二人という構成はなかなか珍しいんじゃなかろうか。しかも、ナオとトーヤの二人は女性陣の用心棒というかお供、みたいな感じだったようだし。
まあなかなか気が利くし出しゃばらないし絡みやすいし女性陣には優しいしいい意味で遠慮なく付き合えるし、いざという時頼もしいし、と一緒に居てストレスフリーで楽しい関係だったんじゃないだろうか。これで恋愛絡むと面倒くさくなってしまうんだろうけれど、基本ナオとトーヤ二人共ハルカにべったりだったわけだしねえ。
しかし、現世はそれで良かったかも知れないけれど、この異世界ではこの五人で生きていかなければならないわけですから、長い人生の大半を共にすることになるわけで、さてどうなるものか。
もっとも、ナオはハルカに一途ですし、トーヤはさっさと自分はケモミミ派と一線引いちゃってるので……ユキとナツキも獣人じゃないんだよなあ。別にハルカの逆ハーレムでもいいのに。

ともあれ、懸案だったユキたちとも合流できましたし、収入も安定して確保できるようになり、じゃあ今度は安心して寝泊まりできる拠点、ホーム、我が家を手に入れようということになり色々と物件を探すことになったのですが、ホームを手に入れたらそれからはどうするんでしょうね。年金も生活保障もなにもないこの世界、先々を見据えてしっかりと蓄えを、なんて事も言っていますけれど、同時にこの世界には銀行などの貯金を預かってくれる金融機関もないのですから、資産は全部手元においておかないといけないわけで。ホームが出来たらそこに置いておけばいい、とも言えるのですけれど、防犯とかどうなってるんだろう。盗みに入られたら終わりのような気もしますし。
……銀行大事、よくわかります。
別に大きな目標もなく、普通に生きていければいい、というのもまた立派な生存目標だとも思うんですけどね。物語としては、そういう平穏な日常、を面白おかしく描くのは相応の手腕が必要だと思いますし。
そういえば、新たにもう一組新たなパーティーをメインに描いた幕間がありましたけど、あっちも今後絡んでくることになるんだろうか。


七つの鍵の物語 2 ぼっちな僕の異世界領地改革 ★★★☆  



【七つの鍵の物語 2 ぼっちな僕の異世界領地改革】  上野 文/屡那 ドラゴンノベルス

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飢えた民も枯れた大地も、狂った邪竜も――すべて救ってみせましょう!

人なし金なし資源なしの絶望領地を運営することになった少年クロード。
襲い来るテロリストを撃退し、名実ともに領主となった彼は、急速に領地を発展させつつ、諸悪の根源"邪竜ファヴニル"討伐に挑む!
異世界から召喚された侍の少女と人語を解す虎(?)の少女を仲間に加え、いざ決戦へ!
大逆転救済ファンタジー、第二弾が堂々登場!


何気に部活時代に瀬戸際ギリギリ崖っぷちの状況を切り盛りする経験はすでに足りていたのか、クロード。学校内のイザコザではなく、部員の親が引っかかった新興宗教絡みのトラブルだっただけに本気で一家離散や人死が出かねない危機だったと思われる。カルト教団の方に乗り込んで元凶ぶっ潰したという部長も大概高校生じゃねーけど、ほぼ新入部員だった所に部長から丸投げされて部員たちの家庭もメンタルも崩壊させずに守り通した実績は、クロードの資質を現しているのではないだろうか。
だからといって、財政も破綻し外交も社会体制もほぼ崩壊しきった領地を、それを破壊したクローディアス当人の悪名を引き継ぎながらなんとかしろ、というのは大概無理ゲーだと思ったのですが、最初に仲間になり、クロードが悪徳貴族当人ではない偽物だと気づいてくれた四人組と女執事となったソフィ、そしてメイドのレアが最初の助けとなり、そこからなんとか手蔓を引っ張ってきて立て直しに徐々に成功してきた。ところに、外国の息のかかったテロリストが攻めてきて、という展開だったんですよね。
そのテロリストたちも、元は貴族支配を打破するための社会革命を志した一党だった、にも関わらず現実を前に理想は破綻し、革命ではなく目の前の利益と欲望にかまけた暴力集団へと堕ちてしまった、という体の集団だったわけで。
内部では古参の革命闘士と後期加入の外国の手が入った山賊同然の面々が入り混じって、混迷を深めている。
ともあれ、襲われた側からするとテロリスト以外の何者でもなく、その襲撃が領民の一致団結を生んでくれたのだから、被害は大きかったけれど不幸中の幸いだったのか。
それでも、何だかんだと領主となったクロードに恨み骨髄の領民たちが素直に従ってくれたのって……実は、いつの間にかクロードが偽物だと知れ渡ってたからなんですよね。
人が変わりすぎ、というのもあるんだろうけれど、実際に身近で確かめた面々から情報が積極的に流出してたっぽいのだ。クロードが引き継いでからの献身的な働きという土台があってこそ、ではあるんだけれど、噂レベルの拡散ではなく表に出ないネットワークで情報が広がっていたようで、それをクロードが知らず自身の言動で証明していっていた、という感じなんですよね。
知らぬはクロード本人ばかりなり、という感じで。

それでも、途中からトントン拍子で話がうまいこと転がりだしたなあ、と思ったらこれ纏めに入っていたのか。今巻で打ち切りじゃないですか、やだもー。
レアの正体がいきなりバレたり、ラスボスのはずのファブニルが邪竜と化した過去が明らかになったと思ったら即座に対決の方向に舵が切られたり、無理ゲーから一転クロードにとって都合の良い展開がポンポンと放り込まれるようになったので、あれ?と違和感は感じていたのですが。
セイという女侍、というよりもこの娘個人的な武芸もさることながら、指揮官として際立った才能を持っていたので、姫将軍というべきか。そんな娘の異世界からの来訪とか、これも異世界から落ちてきた会話ができる知性あるトラのモンスターのアリス、と強力な仲間が加わったにも関わらず、二人に対して腰を据えたより良く仲良くなるエピソードもそれほど熟せないまま、話進んじゃいましたしねー。セイは特に元の世界では偶像として持ち上げられ、しかし主家滅亡を防げず失意のまま自刃したところで召喚され、という過程を辿っているからか、皆から持ち上げられ期待されその才能を頼まれて、という状態に対してかなり精神的な傷を持ってるようで、繊細な扱いが要される立ち位置だったんですよね。それを、セイに対してその才能を求めるのでも、価値を見出すのでもなく、友達という個人同士、一対一の人間関係を持って接しようとしたクロードに感じ入るところあって、とこれから色々と行程を踏んでいく導入編でもあったんですが、その矢先にまとめに入ってしまい、という感じだったのがまた残念無念。
ファブニルも、彼の抱えている鬱屈、人間への憎しみ、かつて大切だったものへの未練や愛情など、その内面は複雑に煮えたぎっていて、彼との対決はそれだけ彼との対話が多く費やされていくことになっただろうだけに、性急にゴールまで送り込まれてしまったのはこれもやはり勿体なかった。
また、肝心の部長以外の部員たちもお目見えできず、タイトルにもあった7つの鍵についても……、とまあ未練は多く残るものの、話としては終盤まとめに入って展開は早かったものの、非常に綺麗にまとめきったとも言える話のたたみ方ではあったので、これはこれで跡を濁さず丁寧に片をつけた、と感心するところだったんですよね。

幸い、小説家になろうではウェブ版がずっと連載続いているようなので、話も色々と変わっている部分も多いようですけれど、続きはこちらで読んでいきたいと思います。



異世界転移、地雷付き。 ★★★☆   



【異世界転移、地雷付き。】 いつきみずほ/猫猫 猫 ドラゴンノベルス

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地雷有り、チート無しの異世界転移なので、無理せずスローライフ始めます!

「やあ! 僕、邪神! でも、悪い邪神じゃないよ!」
不慮の事故で死んでしまった俺たちクラスメイトを転移させたのは、そんなことを言う邪神(仮)。
希望のスキルを作ってくれてサポートもバッチリ。これって邪神じゃ無いよな?
――そんな風に思った時もありました。
甘かった。安易にチートで無双とか考えたクラスメイトはたぶん、残念な結果が待っている。
だって、彼はチートなんて無いと最初に明言していたのだから。自業自得なんだろうけどな。

俺? 俺は幼馴染みたちと、堅実にのんびり生きていきます。ゲームっぽい世界でも、ゲームじゃ無いんだからさ。

特別枠の選択スキル、これは確かに地雷そのものだよなあ。取っても意味がないどころか命すら危ういとは。でもこれ、なかなか回避はできないですよ。取得経験値2倍とか、ゲームしてたら普通にある付与能力ですもんね。チートとは思わない。
とはいえ何にも説明せず、ではなく邪神さんちゃんと忠告はしてくれているし、事前にヘルプをとっておけばスキルの具体的な内容についても閲覧できる、というのは結構親切な部類のように見える。基本的なスキルは全部有用極まりないものばかりで、どれ取っても理不尽! というわけではないですし。そう思うと、邪神さん意地も根性も性格も悪いけれど邪悪!という程には思えない。大きい葛籠ではなく、小さい葛籠を選びましょうってな話の類ではなかろうか。
それはそれとして、「ヘルプ」はなかなか取りづらいなあ。ウインドウズとかエクセルのヘルプで???となってあんまり役立った覚えがない身としては、ヘルプなんてスキルがあっても「えー? そんなん使えるでござるかぁ?」という塩梅なんですよね。
お前のことだよ、イルカくん!(エクセルのヘルプアシスタント)

ともあれ、目先の誘惑に負けずに堅実なスキル構成を取得して転移した幼馴染三人組。女1に男2というメンバー構成はなかなか珍しい。しかも、女性のハルカが事実上の親分なのね。
ヤッターマンの古来より、そのメンバー構成では女性が引っ張っていく役が一番しっくり来るのかもしれない。それだけの信頼関係にないと難しいんだろうけど、それはそこ幼馴染同士の絆ということで。
そもそも、ハルカなんか最初から幼馴染三人で行動する前提でスキルを取得しているあたり、他の二人への信頼感が半端ないんですよね。これ、三人一緒でなかったら詰んでたかもしれない思い切った後衛構成ですし。
自分的には男が複数の女性に好かれるハーレムものと同じくらい、別に女性の逆ハーレムも行ける口なので、と言ってもどっちも相応の甲斐性見せてくれたらの話ですけど、ともあれ自分的には全然アリの方なので、別に獣人のトーヤくんの方獣耳のお嫁さん貰うんだー、という予防線張らないほうがニヨニヨ出来たんですけどね。トーヤとナオくんの仲の良さなら三角関係にはならなさそうだし。

とまれ、冷静沈着なハルカの先導によって、着の身着のまま手持ちの金も少しだけという途方に暮れそうな状況から、なんとか生活基盤を確立する三人。幾らスキルが使えるし言葉も文字も通用すると言っても、この状況から普通に生活いていくための衣食住と収入を確保するって高校生でなくてもホントどうしたらいいかわからなくなりそうですよね。これ、異世界知識というスキル取ってない人、その時点で詰んでないだろうか。そう思うと過酷極まりない。
普通に赤ちゃんから生まれ変わったり、身元引受人がいる召喚の方がそれなりに保証はきくってことなのか。
あとこれだけ地に足がついた展開だと、サクッと流されるだろう「生き物を殺す」という行為への忌避感が実感として想像してしまう。ここで挫折する子も結構いるんじゃないだろうか。生きてる動物殴って殺すのって、ちょっと無理めかも。
そして、生活していく上でなかなか楽観的になれないのが、やはり将来の不安である。日本で暮らしていたときのような社会保障なんぞ欠片も存在していない異世界。ちょっとでも怪我とか病気して働けなくなったら、その時点で詰みかねないという不安感というのは想像するに余りある。貯金、貯金はこういうケースでは大事、本当に!
意外と将来の展望を計画を立てられない、立てても目先の欲望に負けてしまう、という人は多いみたいで、その点ハルカがしっかり管理運用してくれるというのは大変な安心材料で、この幼馴染三人組の安定感に繋がっているようだ。お金の管理やその使い道について、トーヤとナオが要望は出しても基本的にハルカに任せて信頼している、というのも大きいのでしょうけれど。他人同士だと、友達同士でだってなかなかお金の管理まで任せる気にならないですしね。大事で必要とわかっていても、どうしても自由に出来ないという現状には不満というのは募ってくる。そのあたりの感情の縺れがないというだけでも、幼馴染三人組の安定感は図抜けていると言っていいんじゃなかろうか。
ただその分、ハルカに責任が一身に集まっちゃっている気がするのだけれど、幼馴染特有の物心ついた時からポディション編成がこうなっていたからか、それが当たり前になっているのでしょうね。ハルカもあまり負担を感じていない様子ですし。
ただ、もうちょっと男連中はハルカのメンタルサポートに気を遣ってあげてもいいんじゃないかな、というくらいの甲斐性は期待してしまう所です。かなり頼り切りだもんなあ、彼女に。

彼らと普段から仲の良かったもう一組の女性二人組は、ハルカたちと比べるとそれなりに過酷な状況のようで。これは単純に、ハルカたちが三人で夕紀と那月が二人だった、というのも大きかったかと。邪神さんが持たせてくれた準備支度金が少なすぎるんですよねー。
スキルコピーについては、言うほどデメリットないんじゃないの? と思っていたら、コピーしたスキルはコピーさせてもらった人に教授してもらわない限りは、自然習得も出来なくなるのか。どれだけ努力しても自力では覚えられなくなる、というのは確かに安易にコピーしまくるわけにはいかないよなあ。
ただ、親しい人から教えてもらう分には制限はないのですから、結構役に立つんじゃ、と思ったらスキルによっては教え方がわからないものもあるのかー。そりゃ素質系のスキルとか教えようもないですもんね、なるほど。

さて、ハルカたちの方も順調に生活基盤を整えて、このままコツコツと危なくない仕事で稼ぎながら安定した生活を続けるのか、と思いきやそうもいかないようで。結構なフリで終わっちゃったな。ギルドの受付嬢のお姉さんなんかとは長い付き合いになるかと思ったのだけれど。


七つの鍵の物語 ぼっちな僕の異世界領地改革 ★★★☆   



【七つの鍵の物語 ぼっちな僕の異世界領地改革】 上野 文/屡那 ドラゴンノベルス

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クワ一本から始める神殺し。絶望領地を救う、大逆転救済ファンタジー開幕!

レーべンヒェルムという地があった。意志持つ武具"神器"に支配され、土地は枯れ、人は飢え、叛意は全て討ち取られた絶望の地。そんな地に、一人の少年が召喚された。不要となった領主の代わりとして。
死んだ目をした彼の名はクロード。彼には知恵があった。異なる人類の歴史を知る彼は、神殺しの革新者として、歴史に名を刻むことになる。
支配? 飢え? 異邦の少年は、その全てを打ち砕く! さあ、大逆転を始めよう。

これは酷い! 何もないゼロからはじめる、という異世界改革モノは多いけれどクロードが押し付けられることになった地は、圧政によって荒廃し人民の生活は破綻し人心は荒れ果て、間違った農法によって土地は死に、生命線となるだろう港湾は外国に租借され、領内の経済は異国の尖兵である外資に牛耳られ、とゼロどころか圧倒的なマイナス状態からはじめろ、と言われる始末。
そして、クロードが成り代わることになった先代領主クローディアスは凄まじい苛政で無辜の民を苦しめ抜いていた悪魔のような男であり、しかも領主としても無能であらゆる意味で領地を疲弊させきっている、もちろん民からは恨み骨髄、恐ろしく憎まれ恐れられ悍ましがられていた人物。まだこれなら見ず知らずの余所者として赴任してくる方がマシ、という憎まれっぷりである。
領地を運営する官僚たちは、当然皆殺し済み。現在は隣国の企業が援助として内政を乗っ取っているような状態。そしてクロードを呼び出した神器ファブニルは悪意の塊であり人々の悲嘆と苦しみを浴びて喜ぶようなまさに悪魔そのもので、もちろんクロードの味方どころか彼の邪魔をし、間接直接を問わず悪意の手を伸ばしてくる。

無理ゲーじゃね?

領主としての立場と権力こそあるものの、それは恐怖政治で手に入れた権力だし、その根源である暴力の担い手であるファブニルはなにかあると虐殺をはじめる悪魔であり、クロードの思い通り動くどころか敵に回る始末。彼の手足として動いてくれるような人物も、わずかに館に残っていたレアというメイドの女性ひとりで……。いやこれ、どうしろ、と。
クロードは辛うじて自分がかつて日本人でまだ学生で、破天荒な同じ部活の仲間たちと走り回っていたという記憶をたぐりよせている意外は、本名も思い出せないくらい曖昧な記憶喪失になってしまっている状態。部活仲間の影響か、彼らの暴走を押さえて後始末してまわっていた経験からか、根性は据わっている上に凄まじく博覧強記なところがあって、確かに学生離れしたところがあるのだけれど、それにしても難易度がハードモードを通り越してルナティックモードである。

それでも逃げろと逃亡を促してくれるレナに逆らい、この世の地獄のような領地と人々を、クローディアスによって尊厳を奪われてきた人たちを見捨てられず、足掻き出すクロード。

不幸中の幸いというべきか、先代のクローディアスがあまりにも破滅的な人物すぎたせいか、まともに領地改革に奮闘しだすクロードが、早々に「別人みたい」じゃなくて「こいつほんとに別人じゃね?」と気づかれるんですよね。それだけ彼が必死に献身的に不眠不休で走り回る姿を見せ続けたおかげではあるんだけれど、その姿を見てみんな影武者なのか、それとも秘された兄弟なのかはわからないけれど、暗黙の了解で口は噤んで協力してくれるようになるのである。
特に、クロードが成り代わった直後に領主の館を襲撃してきた暴動者の中で、館の地下に捕らわれて人倫を蹂躙されていた子どもたちを救出に来た四名の若者。クロードがなんとか撃破し、しかし殺さずに済まし、ファブニルの手からも守って捉えた彼らが、早々にクロードの真実の姿に気づいて同志となり、手足となって動いてくれる側近になってくれたのが大きかったのでしょうけれど。

それにしても、出発地点の奈落っぷりからするとある程度組織だって領地運営ができるまでに人をまとめられたの、ちょっとスムーズに行き過ぎたんじゃないかしら、とも思うんですけどね。前提条件が酷すぎたんだって、これ。まともに人を集められるとは思えない状態だったもんなあ。集めたとしてもまともに働いてくれるとは思えない環境でもありましたし、ちょっと指先でつついたら弾けて割れて中身をぶちまけてしまいそうなほどぼろぼろになった血袋みたいな有様でしたし。
ほんと、それだけ献身的に死にものぐるいだったんでしょうけど。見た人がこの人絶対別人だ、とすぐに気づくくらいには。そしてその姿に打たれて励まされ、生きる希望を掻き立てられるくらいには。
しかし、環境だけならまだしも、常にファブニルが暴動をそそのかしたり異国を唆したりして阿鼻叫喚地獄を作り出そうとするのが、状況として最悪すぎるんですけど。しかもクロードの強大な力はファブニルから与えられてるもので、彼の意志一つで簡単に元栓締められて出せなくなるもんだし。
その事実を初期から弁えて、ファブニルを敵認定して動いているあたり、クロードの希望的観測なしの現実主義は実際大したものなんだけど。
彼の心の支えになってる演劇部の部長、本当に対して人物みたいなんだけれど、どうせなら他の演劇部の仲間たちについてももっと言及してほしかったなあ。殆ど記憶に残ってないとはいえ、そのかすかな記憶の部長を心の拠り所にしすぎである、部長部長って部長ばっかりw 他の部員たちもこの世界に招かれてしまっている可能性は高いっぽいですし。或いは「まだ」こちらに来ていない、これから来る可能性というのもありそうだけれど。

最初から唯一の味方になってくれたメイドのレア。ただ使用人の中で優秀であったために生き残っていた、という人なのかと思ってたら……ファブニルの関係者っぽい様子も見せていて何者なんだろう。ともあれ、レアと地下から救出され、最初にクロードが先代と別人だと見抜いてくれたソフィが数少ない癒やしである。あの若者四人組もいい奴らで、この巻のラストには強化イベントなんかもあったりして、仲間としても信頼できるよい連中が周りに居てくれるのは、クロード孤独になりすぎずに色々と救われる部分が多くて助かっているのですが。ここで心理的にも孤立してたら、さすがに耐えられんでしょう、これ。

とりあえずようやくマイナスを帳消しにして、プラスを見出せるところがチラホラと見えてきた段階から、果たしてどうやって本格的にこの行き止まりの地を立て直していけるのか。次もまだまだハードモードだこれ。

ソード・ワールド 蛮王の烙印 古の冒険者と捨てられた姫騎士 ★★★☆  



【ソード・ワールド 蛮王の烙印 古の冒険者と捨てられた姫騎士】 北沢慶/グループSNE/黒井 ススム ドラゴンノベルス

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世界を救って300年。目覚めたら戦乱の世でした――なので、ぶっ潰します

文明を破壊した蛮族大侵攻〈大破局〉に抗い、その身を捨てて世界を救おうとした冒険者エルヴィン。後の世に“破界の魔王”と呼ばれる彼を、小国の姫が蘇らせた。
文明は衰退し、未だ蛮族と争う世界。
身内に捨てられ、魔王にすら縋る彼女のため、古の英雄は嗤う。

「さあ――冒険を始めようぜ」

最古最強の冒険者はその力で覇道を為す。今度こそ、平和を創るために。
何気にソードワールドが2.0以降になって以来長編小説として世に出たのって、同じ北沢慶さんの手掛けた【剣をつぐもの】以来になるんじゃなかろうか。短編集なんかはちょこちょこと出てたみたいですけれど。
ちなみに本作はバージョン2.5だそうで。いずれにしても、蛮族の設定などソードワールド2.0以降の世界観を把握した前提での話になっているのでその辺わからないとちょっと混乱するかも。
主人公のエルヴィンは300年前の大破局の只中で蛮王と直接対決した英雄の一人。そこで相打ちとなり死の眠りについたものの、それが姫騎士ヘドウィカの手によって現代に蘇り、ってこれ確かに異世界転生じゃないけれど、過去の英雄が復活してという主人公最強モノですねえ。だってこれソードワールドのロードス島戦記で例えるなら、魔神討伐の六英雄のひとり、例えば暗黒皇帝ベルドとかを復活させて仲間にしました、みたいなもんじゃないですか?
強いよ、そりゃ!
姫騎士ヘドウィカとそのパーティーが挑まないといけないクエストは、そりゃ初心者パーティーが挑戦するような簡単なものではなく、なかなかのハードモードなわけですけれどそれでも主人公がこれだと頼もしさがありすぎるw
しかし肝心の主人公エドウィンは、蘇生の影響でほとんど記憶がなく自分が何を成しどんな人生を歩んでいたかも覚えていない状態。なぜか、世界を崩壊させた【破界の魔王】呼ばわりされてるんですよね。かつて勇者エドウィンと呼ばれ、実際大破局のラスボスと思しき相手と戦って相打ちになっている様子が冒頭で描かれているのだけれど、それがどうして魔王と呼ばれ忌み嫌われる羽目になったのか。そのへんがさっぱりわからないので若干もやもや。いや、伝承でも何でも何があったのか語ってくれればいいのに、魔王と呼ばれているという話だけで具体的な話はさっぱりなくて触れられないままだったものですから。リカントのガイの居た集落ではまた別の伝承が残っていたみたいだけれど、魔王扱いは一緒だしやっぱり具体的な話はなんにも語ってくれないので、せめてもうちょっとエドウィンの過去については踏み込んで描いてくれたほうが嬉しかった。
でないと、ヘドウィカの血筋やどうして彼女が追い詰められていたとしても世界を崩壊させたとされる魔王を復活させたのか、その彼女の秘めた憧れのもっと強く感じ入ることが出来たのではないかと。
ともあれ、エドウィンってば魔王呼ばわりされるのだけれど、その性根と来たら元冒険者らしいあらっぽさこそあるものの、悪行に憤り善行に笑みを浮かべ、結構温厚で穢れものとして理不尽な扱いを受けてもまあそういうものか、とあんまり怒らないですし、物の道理というものを弁えてて、どちらかというと理性知性の人物なんですよね。基本いい人。
なので、どこが魔王なのかと。まあ魔王云々はどこかで情報がねじ曲がって伝わった結果に過ぎないので本人関係ないのですけれど。
とはいえ、魔王本人がそういう理知的な人物なので警戒バリバリな姫様のそれ、ほぼほぼ空回りなんですよね。まあ姫様も自分の家に伝わる伝承から、魔王というのが偽りで本当は勇者という話を信じていたからこそ復活させたわけですから、どう接したらいいかわからないと空回りしていた部分もあるのかもしれませんが。それこそ、毛を逆立てて警戒していいのか受け入れていいのか迷ってる猫、みたいな感じでしょうか。そんな姫様を鷹揚に受け入れて、言う通りしたがってあげているエルヴィンがこの場合、大人だなあ、と思ってしまうわけです。本人、記憶喪失なのに能力的のみならずメンタルの方も余裕たっぷりじゃないですか。
嫡流にも関わらず父王に嫌われて、死ねと言わんばかりの難題を突きつけられて自暴自棄になりかけていた姫様。捨て鉢になっていたからこそ、魔王復活なんて手を選んだわけですけれど、復活してきた魔王は記憶こそ喪っていたもののその人柄は密かに自分の血筋に伝えられてきた憧れの人その通りで、荒み諦観におかされていた姫様にとってそれはどれだけの救いであり希望であったか。俄に受け入れられなかった、というのもわかるところであり、傷ついてきたからこそその懐に潜り込むのも恐る恐る、というのもよくわかるんですよね。
捨て姫さまが拾われる話、と見ればこの姫様の初々しいまでの頑張りも実に可愛げがあって、姫と魔王のある因縁に結ばれた関係が徐々に進展していく様子も、パーティーでの冒険も素直に面白く、堅実といっていいくらいの良作ファンタジーだったんじゃないでしょうか。
パーティーの行動、ちゃんとTRPGでちゃんと実際にセッションしてみてる、というのはさすがです。

北沢慶作品感想
 
9月21日

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8月26日

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