徒然雑記

終日のたりのたりかな  
  オロチのまどろむ庭TOP  読書メーター  月刊書籍発売カレンダー  書籍感想・殿堂作品
  書籍感想・著者索引(表紙絵附) 書籍感想・著者索引(シンプル版)  書籍感想・作品タイトル索引(シンプル版)
  11月の漫画新刊カレンダー  11月のライトノベル新刊カレンダー
  12月の漫画新刊カレンダー  12月のライトノベル新刊カレンダー
 

ニリツ

処刑少女の生きる道(バージンロード) 6.塩の柩 ★★★☆   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 6.塩の柩】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

彼女が彼女を殺すための物語、破戒の第6巻。
「お前は、忘れない。ここで死ねるのなら、お前は幸運だ」

メノウと導師「陽炎」。
塩の大地での師弟の戦いは、メノウへと天秤が傾きつつあった。
アカリとの導力接続で手に入れた膨大な導力と、行使可能になった疑似概念【時】。
新たな力を得たメノウの勝利で終わるかと思われた訣別の戦いは、しかし、見え隠れする【白】の存在により予想外の方向へ向かいはじめる。

その頃、“聖地”跡では万魔殿が「星の記憶」へ足を踏み入れていた。
マノンの遺した一手が彼女に致命的な変化をもたらすことも知らず――。

そして、最果ての地にひとつの破局が訪れる。
彼女が彼女を殺すための物語、破戒の第6巻。
そして貴女は落ちていく。
地面に横たわる姿にはじまったこのシリーズの表紙絵は、5巻でついに立ち上がり戦う決意を見せた。そこから立つべき地面を失ったようにメノウはどこかへ落ちていく。墜ちていく。堕ちていく。

メノウは自分の生きざまをふらふらと蛇行しながら前進していると言っていたけれど、同時に師匠のことを悪でもなく前でもなく中道で、合理的で残酷でありながらも人間的だと語っている。フレアは、冷たく硬い鋼のような人間だった。その在り方は最初から最後まで変わらなかった。
でも、彼女は冷たいまま、金属のように硬いまま、無二の友情を得て、一人の弟子を慈しんだ。
友を殺し、弟子も利用した挙げ句に殺そうとして、そこに後悔も罪悪感も持たないのに、それでも彼女にとってあの日本人はたった一人の友人だったのだ。メノウは、自分の手で育てた娘だった。
だから、友人を殺したことを後悔もしていないのに、彼女の敵を討つために20年を費やした。その20年掛けた罠のためにメノウを育てて、利用して殺すつもりは一切揺らがずやり通したのに、フレアは娘を愛していた。その双方が矛盾せず両立していたのが、フレアという人物だったのだろう。彼女はあまりにもその在り方が一貫しすぎていて小揺るぎもしなかったが故に、矛盾すらも貫いてしまったのか。
後悔も罪悪感もなかったフレアにとって、自分の人生に不満も痛みもなかっただろう。彼女は最後までゆるぎもしなかった。ただ、揺らぎたかったのだろう、という願望だけは透けて見えた。友人と旅していた頃、自分の人殺しの生き方にずっと罰を欲していたことを思えば、メノウの在り方はかつて自分が望んだものだったのだろうか。
最後に至っても、フレアの心のうちは理解の遠く向こうだ。フレア自身が自分をわかる必要を認めていなかったように、自己分析の欠片も思い描いていなかった事もあるのだろうけれど。その奥底にある真実は彼女の言動や回想の欠片から一つ一つ拾い上げていかないと見えてこないし、そうして組み上げたものが本当の真実かなんてわからない。
ただ、事実だけを見るならば、フレアは自分の人生の大半をかけて、自分が友人を殺すことになった原因である白を討とうとしていた。そして、そのために利用し尽くすつもりだった弟子に、彼女はずっと選択肢を与え続けていた、ということだ。
彼女が最期に撫でようとした腕の位置は、幼い女の子の頭の位置だった。
その事実さえ覚えていれば、きっと事足りるのだ。

これまでずっと鳴りを潜めていた勇者・白。それが、アカリという少女がこの地に降り立ったことで、そして日本帰還の術式の準備が整ったことで、ついに千年の長き時を経て動き出す。
あの白の名前とは裏腹の凄まじい黒穴の如き眼が描かれた姿の挿絵は、やべえの一言。これ、夜中に見たら本気で「ひぇ!」となる絵だったりする。マジ怖い。
こんな眼をしているやつがやばくないわけがないという逆説が成り立つくらいヤバイ。どういう塗り方したんだ、この眼。

しかし、白が動き出したことでアカリとメノウの繋がりが断ち切られたと同時に、一気にパーティーの再編が行われるんですよね、これ。
シャッフルされたというべきか。モモと姫様が現場を一旦離れたのに合わせて、まさかの人災(ヒューマンエラー)サイドからの参入である。そのおぞましいというほかない、存在自体が災害であり呪いであり破滅そのもの、という悍ましさをこれでもかと今まで見せつけてきた以上、人災たちの存在というのは倒したり乗り越えたりするべき敵であるか、それ以上に逃げなければならない厄災天災そのものか、というスケールだったのに、まず最初にそれをひっくり返したのがマノンだったんですね。
まさか、あんなあっさり退場するとは思っていなかったのだけれど、それ以上に置き土産が盤上をひっくり返すどころじゃない、とんでもねー一手だったわけだ。
ある意味それは神を零落させたようなもので、理解が全く出来ないが故に脅威だったものを理解できるものに堕としてしまった、或いは昇華させてしまったとも言えるんだけれど。いずれにしても、話ができる相手になった、というのは大きいどころじゃないんだよなあ。
そして、なんであんな根っからの小物なのに、大きな仕事ばっかりするんでしょうかね、サハラさんは。こいつ、自分では何しようとしてもろくなことにならないんだろうけれど、他人から強制されながらイヤイヤやる気なくむしろ失敗してしまて、と思いながらやると大成功するみたいな業を持ってるんだろうか。
なんか思わぬところからお姉ちゃんが出来てしまったところとか、笑っていいのか呆れていいのか、わからんのですけどw まるで話が通じなさそうなところとか、サハラにばっちり合いそう。しかし、このお姉ちゃんも所謂計り知れないヤバイ枠なのだから、メノウの新パーティーってかなり意味不明なことになってるんですがw
いや、相手が相手だからこれくらい揃ってないといけないのかもしれませんけれど。
というか、これ人災両方サハラに紐付きになっちゃったんだけど、この小物どこまで行ってしまうんだw

そして、モモはまだ正期の昇進を果たしたのでいいのですけれど、姫ちゃまの行く末がかなりヤバそうなことになってるんですよね。あの姫ちゃまが大人しく他人のイイようになるとはこれっぽっちも思わないのですが。むしろ、待ち受けている使徒の方が酷いことになりそうな予感w



処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地 ★★★★   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 5.約束の地】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「私は清くもないし、強くもないし、正しくもない。そんな悪い奴だもの」
アカリを連れ去った導師「陽炎」を追い、“聖地"に足を踏み入れたメノウ。せめて自分の手でアカリを殺す。そう決意した彼女の目的は、【白】の遺物・塩の剣の確保だった。
幼き日のメノウと導師がかつて辿った旅路の果て。塩の剣が眠る、清浄なる塩の大地。第一身分に封印されたそこへ至るには、【使徒】魔法使いが守護する聖地の中枢・大聖堂の突破が絶対条件。「陽炎」によるアカリ処刑のタイムリミットが迫るなか、圧倒的戦力差を覆すためにメノウが選択した禁忌の手段とは――。
師を超える時は、今。彼女が彼女を殺すための物語、決別の第5巻!!


アニメ化ですって! これはびっくり。これにはびっくり。GA文庫が怒涛の7作品アニメ化(続編含む)に打って出た一環なのですが、それにしてもこの作品が選ばれるとは……。でも、本作もGA文庫の大賞作品なんでしたっけ。それに、この作品のストーリー展開と世界観、ビジュアルはアニメ映えするものだと思うので、これは素直に期待してしまうなあ。

かくして、物語はクライマックスへ。

……クライマックス? いやいやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って?
最後の最後で今までの前提全部真反対にひっくり返されちゃったんですけれど。なにこの構成? 本当に全部裏返しになったぞ!?
これ、終盤まで見事なくらいにメノウという少女の成長譚であり覚醒の物語であり、革新に至る真っ当なストーリーだったはずなんですよね。いびつながらも美しく磨き抜かれた師弟愛の物語であり、尊いまでのメノウとアカリの二人の少女の友情を超えた友情の物語であったはず。
二人の間に育まれた絆によって、メノウは自分に課していた枠組みを壊して、人として生きる道をついに見つけた、ついに掴み取った。この5巻までの間に丁寧に丁寧に積み重ねられていったものの集大成であり、メノウが自分を見つめ直して本当の望み本当の自分の姿に気づく、そんな話だったはず。お互いにどこか一方的だったアカリとの友情が、ついに混じって交ざって繋がった、そんな回だったはず。
克服の物語として、越えられなかった壁を超える物語として、新たな自分に出会う物語として、美しいまでに綺麗な線を描いて辿り着いた、天王山だったはず。

……だったんですよ。

しかして明かされた真実は、メノウのあのどこか寄り固まった在り方もアカリとの深すぎる繋がりにも世界の在り方にすら深い深い納得を与えてくれてしまった。凄まじいまでの納得だ。怒涛のような得心だ。
でもそれは、今まで彼女らが歩いてきた道の情景を根こそぎひっくり返すものなんですよね。彼女たちが旅の中で掴んできたものの意味が、そっくりそのまま反転してしまう。ひっくり返されてしまう。
メノウの原点が「白」にある、というのは半ば承知されていた事でしたけれど……その関わり方はあまりにも予想外でした。そこまで残酷な、酷薄で無情な意味を持っているとは思わなかった。
名前からしてそうですよ。普通メノウって……宝石の名前じゃないですか。なんですか、その意味。酷すぎませんか? 名付けたんじゃなくて、自ら名乗ったという無意識な所が余計に酷薄じゃないですか。でも納得なんですよね。それは、メノウのあの自らをどこか突き放したような淡々とした定義づけに、実に沿う。役割であるという事がこれほど似合う子はなかったんじゃあないだろうか。
サハラのメノウへの嫌悪や敵対心の根っこって、実は良いところ突いてたんだなあ、と。今回この巻だけでも、感性感覚のまま振る舞っているサハラだけれど、なかなか侮れないんですよね、この人。

でも、メノウは人形じゃなく、そのはじまりから師匠に憧れあの人のようになりたいと望んだ。役割でありながら、あまりにも彼女は人として生きる道を求め続けてた。
その最果てでアカリと出会い、自分の根源を揺さぶられひっくり返され、自分に課していた壁を乗り越えることが出来た。
その全部が、意味を失いかねない。一番大切なアカリとの繋がりですら、嘘になりかねない。アカリと繋がることで望むことが出来た、善き人を殺さずに世界を変えるという願いも……善き人ってなんだよ!? てことになる。
メノウの覚悟も決意も望みも願いも、これまでのメノウの全部が、ここまで至ったメノウの人生の何もかもが、無価値にされるようじゃないですか。無意味へとひっくり返されたみたいじゃないですか。無造作に踏み躙られたようじゃないですか。
幼い頃から師匠に憧れあの人のようになりたいと思い、成った処刑人としての在り方。それを自分で粉々に砕いてしまい、なにをどうしたらいいのかわからなくなって途方にくれたことも。
虚無の虚脱に呑まれながら生きたいという衝動にすがりついたことも。
ゼロの中から本当に大切なものを見つけて、アカリのもとに辿り着いたことも。
アカリと手を携え一緒になれて、彼我を混ぜ合い分け合って、一心同体というほどにお互いを理解し合えたことも。
二人で自分の生きる道をついに見つけて、そこを歩いていこうと決意して覚悟して、立ちふさがる師匠を超えていくのだと決心したことも。

マノンが見つけた「彼女」は、その登場とともに、その存在を知らしめることで、メノウが示したそれらの意味を、勇気も愛情も友情も罪悪感も、ぜんぶが裏返り台無しにししまった。

きっとこれを冒涜というのだろう。

それをまだ、メノウは知らない。アカリも知らない。フレアですらも知らないのかもしれない。いや、師匠は「知って」いるのかもしかして? 彼女のセリフは、ラストを見てから振り返ると意味深に取れる部分が幾らでもあるように見えてくる。だからもしかして?

そしてそれを知ったマノンは、文字通り……白紙になった。いやマジで? これ本当に? 

未だ知らないメノウたちにひたひたと近づいている真実は、試練と呼ぶには余りにも悍ましい。果たして、メノウたちはこれに耐えられるのだろうか。ここでメノウたちが結実させた輝きは、その真実を前にした時一切の光を泥でもぶちまけられたみたいに無価値にされてしまうだろう。
見事なまでに力強くあげて美しいまでにあげて、見事なまでの落とし方。いや、奈落の落とし穴を開いてみせただけで、未だそこに足を踏み入れず、その少し手前で走り出しているというのが現状か。敢えて未だ落としていないのが逆にエグい。えげつない。

あと、みんなもっとフーズヤースさんに優しくしてあげて! 今回一番ひどい目に遭いまくってたの、この人なんじゃないだろうか。彼女自身、あんまり酷い目にあってる自覚なさそうなのが、自分の有能さに気づいていないところも相まって、不思議な愛嬌と絶妙の存在感がのってるキャラだったんですよね。良いように振り回され翻弄されまくってたフーズヤースさんですが、ある意味一番今回美味しいキャラだったのかも。それにしても、モモはもうちょっと本当に他人に対して丁寧に、というか他人を人間扱いしましょうよw
そんな人非人なモモに対して、メノウちゃん幻想を抱きすぎ!!
 

処刑少女の生きる道(バージンロード) 4.赤い悪夢 ★★★★   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 4.赤い悪夢】 佐藤真登/ニリツ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「メノウちゃんが死んじゃうくらいなら世界なんて滅んでもよくない」?
アカリとモモが消えた。信頼する後輩の裏切りに混乱するメノウは、教典から響くサハラの声に悩みつつも2人を追跡しはじめる。
その頃、アカリとモモは、衝突を繰り返しながらもメノウからの逃亡を続けていた。絶望的にウマが合わない2人による、異世界人×処刑人補佐の禁忌のタッグ。しかし、“メノウ第一主義"な2人がなぜか逃亡中に始めたのは、モモによるアカリ強化スパルタトレーニングで――?
交錯する異世界人、「第四」、そして第一身分。少女たちを待つのは希望か絶望か――。彼女が彼女を殺すための物語、赤に染まる第4巻!

混ぜるな危険、の典型的……いや、見事なくらいの傑作例というべきか。モモとアカリの相性が素晴らしく悪すぎる! 
険悪で仲が悪い、どころじゃないじゃないですか。二人が一緒に居るシーン、ほぼすべて罵倒で埋め尽くされてるんですけれど。ひたすら罵り合い煽りあいマウントを取り合いながら、他のことをしているという感じで、移動している時も食事している時も観光している時も暴漢に襲われている時も逆に暴漢を襲っている時もひたすら罵り合ってるこの二人。いやちょっと黙ったら? と、思うほどお互い無視せず、ちょっとでも会話が途切れると別のメノウネタで突っかかる、というループである。
というか、殆ど話題がメノウだけで埋め尽くされているあたり、二人ともメノウ好きすぎてキモい。
ほんとに嫌いなら無視し合えばいいのに、メノウネタを出されると無視出来ないんですよね、二人共。おかげでやってる事はノーガードの殴り合い。そして牽制フェイントこそ介在するものの、攻撃狙いは殆ど急所。お互い、急所狙いすぎ!! 急所ばっかりエグリすぎ!
自分へのダメージも顧みず、ひたすら相手に痛撃加えられるなら自爆気味の自分も致命傷を負いかねないネタでも構わず叩き込む殺意の応酬である。
それでいて、メノウ命メノウ至上主義は完膚なきまでに一致しているので、行動原理はほぼ一緒、思考パターンもほぼ一緒、なので共感度は留まる所を知らない勢いで高くなる。果たして、これは意気投合していると言えるのだろうか。
今まで考えてみると、自分以外で一番メノウに近しい存在という意味でお互いを察知しながら直接対面せずに、遠回しに牽制や嫌がらせなんかをするくらいだったのが、こうして顔を突き合わせてしまったわけで。まさに不倶戴天、同じメノウを戴けず、なのだけれど同時に同志である事も否応なく実感してしまうわけですよ。これ、一応仲良くなってるんだろうかw
ともあれ、このモモとアカリのコンビは相乗効果で思わぬ面白コンビであることが発覚してしまいました。いやこれは予想外の化学反応。

一方で、置いてけぼりをくらったメノウ。即座にモモの残した妨害……持ち金全部盗んで持ち去る、という悪辣な妨害をクリアして追撃に移るあたり、モモよりも遥かに上手なんだけど、これって結局姫ちゃまに身売りしたってことですよね。男装執事メノウ、ごちそうさまでした。モモとアカリが血の涙と鼻血を出して見れなかったことを悔しがるコスプレである。
そんなこんなしているうちに、同じ街に集まってしまった万魔殿とマノウに第四身分の盟主、そしてメノウの師匠「陽炎」との遭遇を通じて、幾つもの真実に行き当たってしまうメノウ。
ただ、思えば彼女の中で変化は既に3巻で生きたいと願った時にはじまり終わっていたのではないだろうか。3巻の身体を起こしながら、降りかかる光に眩しげに手をかざす姿は思えば、メノウ自身の中からはじめて生まれた願望を、受け止める姿だったのではないだろうか。
ならば、この4巻の膝に手を置き、伝う汗を拭いながら線路の先を見据える姿は、新たに見つけた道を歩みだす、その仕切り直しの瞬間を切り抜いた姿と言えなくはないだろうか。
メノウの前に突き出された幾つもの真実。魔導が生み出される方法、アカリがなぜ見逃され続けたのか、そしてアカリがすべてを知っていてメノウを救おうとしていた事。
メノウは死にたくないと思った。生きたいと願った。それは、いつだって他人の色に染められていた「白」であるメノウにとってはじめて自分の根源から湧き出した想い。
メノウが知った幾つもの真実は、彼女の奥から湧き出した想いを前に踏み出させる後押しになった。彼女の想いをどう叶えればいいのかを示す、道筋になったと言っていい。それが正しいか間違っているかは、メノウにとっては師匠の下す罰によって定まるのだろう。彼女と戦い、生き残れればそれはきっと……。
メノウは言われた通りに生きる道を見つけた。生きてきた意味を見つけた。その先にあるのはアカリと共にゆく幸福な破滅なのか、それとも……。

いずれにしても、終わりは近いに違いない。



賭博師は祈らない 5 ★★★☆   



【賭博師は祈らない 5】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

賭博師と奴隷の少女、二人に訪れる結末は。

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。

――『私は、ご主人さまが好きです』

そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして。

嫁さんになってしまったフランセスを連れて帰って、リーラと一揉めあるかと思ったのだけれど、フランセスもリーラも思ってた以上に大人だった。というか、フランセスがずっと部屋に引きこもって寝倒してたのって、変に自分の存在がリーラの居場所を奪わないようにという配慮ですよね、あれって。かと言って出ていかずにラザルスの家に居続けるというのもラザルスへの配慮だろうし、何気に気を遣ってるんだよなあ、フランセス。もっと色んな方面にマウント取るかと思ったんだけれど、そう言えばそんなグイグイ自分押し出すタイプじゃなかったよなあ。
リーラはリーラで平素と同じ対応で、ホントにできた娘さんである。

そんな女性陣を放っておいて、ラザルスはというとボウ・ストリート・ランナーズと協力して、ジョナサン打倒に駆けまわる日々。その動機が、かつて罪人として街を追放され豪州へと旅立った友人夫婦との約束のため、というのだから……これってロマンチストというのだろうか。
師の言葉に従って厭世的というほどの醒めた生き方をしてきたラザルスが、地べたを這いつくばった先で見つけた自分に正直な新しい生き方は、なんというか裏の世界で生きる賭博師としては望外なほどの、ピュアな生き様なんですよね。約束を守るため、とか信念に殉死しようとしている女を死なせないため、とかあんな人と関わる事自体を忌避し、他人のことを考えること事態膿んでいた男の生きざまとは思えない、光のような在り方なのだ。
多分、それがラザルスにとって「人」になるという事だったのだろう。薄汚れ俯き未来を諦めるゴミクズのような存在だった自分が、真っ当な人になるというのは、そういう眩しいほどの在り方だったのかもしれない。
そうしないと、リーラと対等になれなかったのだ。彼女を人として愛するのなら、自らもまた人にならなければならない。
まあそんなクソ難しいことを具体的に考えていたわけではないのだろうけれど、リーラに恥ずかしくないように、という意識は常にあったはずだ。
だけれどそれは、リーラを愛玩するというくびきから解き放たなくてはならない、という意味でもあったんだなあ。回りの優しい人達の反応から随分と忘れてしまっていたけれど、リーラの立場は異民族の奴隷という社会に公然と差別される対象。ラザルスとリーラの関係は、正しく契約に基づいて結ばれた奴隷と主人という主従関係。どれだけ当人同士が愛し合おうとも、はじまりから二人の関係はいびつなものでしかなかったのである。だからこそ、このままでは二人の関係に瑕疵が生まれる。いずれ、どこかでひびが入る。当人同士がどれだけ固く結ばれていても、社会はそれを許さない。未来は苛まれるだろう。
二人共、このまま一緒にここに居たい、という願いを胸に宿しながら、しかしそれは叶わぬ願いだったのだ。
本当に対等になるのなら。愛玩ではなく、人と人として愛し合うのなら、一度関係を精算しなくてはならない。そして、ラザルスもリーラも「人」に戻らなくてはならない。そうやってはじめて、愛玩の関係ではなく、相手を一人の人として尊重し愛し合う関係になれるのだから。
それでも離れがたい気持ちは強く強くあっただろう。それを手放す勇気を示した二人は、敬服に値する。本当に相手が大事だからこそ、今は一度離れるのだ。それが、永久の別れになろうとも。
もっともその行く先は、まあラザルス曰く、賭け事にもならないのだそうだけれど。なにそれ、惚気け?

シリーズ感想

処刑少女の生きる道(バージンロード) 3.鉄砂の檻 ★★★☆   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 3.鉄砂の檻】 佐藤 真登/ニリツ GA文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

「お願いメノウ……私を処刑して」
すべてを清浄な塩に変える力を秘めるという「塩の剣」。アカリ殺害のため、西の果てに封印されているその剣を目指しはじめたメノウたちは、バラル砂漠で鋼鉄の腕の修道女・サハラと出会う。メノウと面識があるという彼女は、なぜか自らの殺害を依頼してくるのだが――。
一方、東部未開拓領域では、四大人災「絡繰り世」が蠢きはじめていた。あの【白】ですら殺しきれなかったという純粋概念【器】がメノウたちに迫る。
回帰により軋む世界。アカリをめぐりすれ違いはじめるメノウとモモ。そして、動きだす導師「陽炎」――。熱砂のなか因縁が絡み合う、灼熱の第3巻!

醜く惨めで無様な自分の心の有り様が憎かった。そんな自分が嫌いだった。特別になりたいという欲求は、強くなりたいという願望は、だからそんな自分を克服したいという祈りだったはず。
強くなれば、他人にも優しくなれるという思いこそが、彼女の根源だったのだろう。他人に優しくしたい、そんな想いを抱えながらどうして彼女は踏み外してしまったのか。
いや、ギリギリずっと彼女はその境界を踏み越えなかった、と言っていいのかもしれない。ただ憧れを目指すには彼女はほんの少しひしゃげすぎていて、彼女の求めるメノウはあまりに触れざる純白だったのだ。
「白」はどうやったって、触れようとすれば汚れてしまう。あっさりと塗りつぶされてしまう。メノウの白は正しさだ。理不尽なくらいの正しさだ。その白を前にすれば、尚更に自分の汚れを自覚してしまう。悪しきを自覚し、愚かさを自覚し、虚しさを突きつけられる。そうして、目の前の白に魅入られる。
メノウを意識せずに済んだ修道院時代の穏やかなサハラの姿こそ、彼女の本当の姿だったのではなかろうか。
サハラの顛末はある意味、モモの狂信ともアカリの執着ともつながっている。特別ではないと嘯くメノウは、どんな形であれどうしようもなく彼女を前にした者の根源を浮き彫りにしていく。それぞれの中にある色を浮き立たせていく。そうして浮き出た色は、否応なく当人を狂わせる。新雪を踏みにじるように、白紙にペンキをぶちまけたくなるように。塗りつぶしたくなるのだ。それはもう、魅入られていると言って過言ではない。
それはもう「魔」と呼ばれるモノではないのだろうか。

そして現に、メノウという少女はあまりにも染まりやすい。処刑人として陽炎に育成されたお陰でエージェントらしく常に警戒を欠かさず疑り深さは慎重の域を通り越している。それでも、モモをその危険性を承知しながら直視せずに信頼しすぎていたり、容易にアカリに絆されて幾つもの時間軸でアカリに命も魂も注ぎ込んでしまったように、メノウはあまりに他人の色に染まりやすい。
そもそも、処刑人という姿もまたまっさらな白いキャンバスの上に導師「陽炎」が思うがままに処刑人という在り方を塗りたくった結果だ。彼女はその描かれた絵の具をまとって『陽炎の後継(フレアート)』に成りきっているけれど、その色はきっと容易に削り落とせるものに過ぎないのだろう。
彼女の本質は「白」なのだ。
でも、陽炎はそれを知った上で彼女を処刑人にしたようだ。その生き方を以て、彼女の中に何かが芽生えることを期待するように。いや、期待なのかそれとも必然に至るための過程なのか。
師匠の目的がいまいちわからない。なぜ、メノウを育てたのか。最初から殺すつもりだったなら、メノウが辿る道を知っていたのなら、どうして彼女を後継にしたのか。その上で、どうして断ち切るつもりなのか。
いずれにしても、「器」によって絶対的な死を突きつけられた時、メノウの中に確かに彼女自身の意志による欲求、生存への執着が芽生えていた。それは、真っ白な中に彼女の中から滲み出たメノウ自身の色なのか。悪となり正しきを成して悪のまま死ぬのだと、彼女がはじめて抱いた意志と矛盾するもう一つの意志の芽生えは、彼女に何をもたらすのか。
2巻でアカリがすでに行き詰まっていて、どん詰まりの時間軸を突破するのは主人公であるメノウの役割なのだと認識した所だったのだけれど……今回の話を見ているとメノウは物語そのものを動かす主人公である以前に、世界の核心に据えられた重要な鍵そのものである可能性が非常に高まっている。メノウはそもそも何者なのか、彼女が抱えている「白」は禁忌の実験によって単なる後から塗りたくられた残滓ではなかったのか。
メノウの物語とはもしかして、四大人災たちが世界に対する反逆を起こした過去と、本当に地続きで続いているのではないか。
ターンとしては準備回。まだ何もわからない、わかっていない、明らかになっていないと知らしめるためのお話だったと言えるだろう。メノウもまた、世界の謎どころか信頼していた後輩や暗殺対象からも放り出されて、放置である。置きっぱなしの放りっぱなし。途方に暮れるメノウの明日は如何許。
しかし、サラハの顛末はかなり予想外。マノンもむしろ今回からこそ嬉々として好き放題やりたい放題望むがまま思うがままに動き出しているけれど、サハラの物語ももしかしたらこれから、なのだろうか。マノンと違って自由に好き勝手に、とは行かないだろうままならない有様ではあるけれど。いや、サハラの場合ヘタに動けない今のほうが、白色に惑わされずに済むのではないだろうか。

それにしても、モモとサハラの修道院時代のエピソードがエグすぎてちょっとドン引きである。モモってば狂犬どころじゃねーですやんw



賭博師は祈らない 4 ★★★☆   



【賭博師は祈らない 4】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念―。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが…。そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。

師であり義父であった男から引き継いだ「賭博師」としての在り方に殉じて来たラザルス。そのために、これまで手に入れてきた大切な関係を切り捨ててきた。自身の賭博師としての在り方を守るために、友人を見捨て、恋人となっていたフランセスと決別してまで。
しかし、その在り方はリーラを守るために失われてしまった。賭博に対するスタンスに不純物が混じってしまった今のラザルスには、今まで通りの打ち筋はもはや制御できないほどにバランスを崩してしまっている。それでも、今まで通りを続けようとして無理を続けた結果の破綻であった。
それを決定的にしたのが、ラザルスの兄弟弟子とも言える存在であり賭博師として同じ在り方を続け、そうであるが故に決別せざるを得なかったフランセスであった、というのが皮肉なのか因果なのか。
フランセスとしては、引導を渡すつもりだったのかもしれないけど。この女性、ラザルスと同じく冷徹に見えるのはあくまでブラフで、根っこのところは情に厚い人なのよね。だからこそ、既に賭博師としておかしくなっていたラザルスが致命的な失敗を犯す前に、足を洗わせるつもりだったんじゃないかと思う。それをまあ、ラザルスは台無しにしてしまい、自分から本当に致命的な失敗にしてしまうのだけれど。
それでも、彼の生存を信じて、彼が戻ってくるのを賭場で待っている、というのはなんかこうこの女性も不器用に健気だと思うのですけど、どうなんでしょう。
場合によっては、自分の引導を渡してもらう事すらも受け入れて、ですからね。自分の身をチップに乗せるというのはラザルスの弱点をついているのですけれど、彼が賭博師として再生するのなら祖の身を犠牲にしても良い、という考えだったと思うのは考えすぎでしょうか。

甘いだけ、優しいだけではもう賭博師としては死んでいる。でも、果たして義父が残した教え通りの賭博師が、正解の終着点なのか。
ラザルスは逃亡生活でボロボロになる中で、義父が残した一文からようやく師たる彼の本当の苦悩に気づくことになる。たとえ今はやり過ごせても、いつか必ず破滅する賭博師としての生き様。それをかつて義父は体現し、しかし果たして息子たるラザルスにもそうなる果てを望んだだろうか。
こだわり殉じ続けた義父の教えを乗り越えて、今までのやり方とは全く違う新しい自分に相応しい賭博師としての在り方を掴み取ろうとするラザルスの姿は、なんというか今までにない希望を背負っていて眩しいものがあった。これまで、彼の背中には煤けた儚さがどうしてもつきまとっていたものだから。
彼を変えたのはリーラだったけれど、元々ラザルスはそういう人間だったとも言えるんですよね。しかし、そんな自分を認めて受け入れて、立ち上がるのに誰の力も借りずに、リーラも関わらせずに自分一人でやってしまうのが、ラザルスの大人な所ということなのかしら。いや、ジョン・ブロートンという損得関係なしに助けてくれる友人が居てくれて、自分が傷ついても助けてくれるようなクーリィのような人が居てこそ、ラザルス・カインドが粉々に砕け散ってもそこから立ち直る猶予が出来たのだろうけど。自分が思っている以上に、彼は孤独などではなかったわけだ。昔から、今に至るまで。
そして、自分が孤独ではない事に気づき受け入れ、それを力にする事に躊躇う事がなくなった新しい賭博師像を手に入れようとしているラザルスにとって、フランセスもまた切り捨てるべき過去じゃなくなったのか。
てっきり、フランセスの事はかつての自分の賭博師としての在り方を体現するもう一人の自分としてケリをつけ、過去に置いていくものだと想像していたんですけどね。彼のこれからの生き方は、フランセスを捨て置くようなものではなかったわけだ。正直、ラザルスを見縊っていたと言っていいだろう。ここまで器の大きい男として立ち上がるとは思っていなかった。

でもさ。

その方法は良かったの!? と、正直問い詰めたいんですけどね!! 本気で、ブワッ、と奇声を漏らしてしまいましたがな。予想外にもほどがありすぎる方法だわ、それは! いいのかよ、ほんとにいいのかよ!?
どう言い訳するの、それ!?  でも、お似合いの夫婦であることには間違いないので複雑すぎる。あらゆる意味で過去の決別の原因をまるっと乗り越えちゃったわけですし。
街の対立構造をどう捌くかも大変でしょうけど、リーラにどう言い訳するのかが想像つかなくて、ほんとえらいこっちゃやでw

シリーズ感想

処刑少女の生きる道(バージンロード) 2.ホワイト・アウト ★★★★☆   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) 2.ホワイト・アウト】 佐藤真登/ニリツ  GA文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

「この海の近くには、霧があるのよ」
古都ガルムをあとにしたメノウたちは、港町リベールへと辿りつく。
入り込んだが最後、戻ってきた者はいないと言われるリベールの霧。それは、かつて南方諸島連合を食らいつくした、四大人災『霧魔殿』だった。死んでも蘇るアカリを殺しきる手段を求めるメノウは、処刑人としての任務を完遂するため、その魔の霧を利用することを思いつく。
そんななか、メノウたちに接近するリベール伯の娘・マノン。“いなかった"はずの彼女の行動が、メノウたちの運命をアカリですら意図しない方向へと捻じ曲げはじめる――。
彼女が彼女を殺すための物語、急変の第2巻!

これはあかんやつやーー!! やばいやばい、これガチでヤバいやつだ。四大人災ちょっと舐めてた。これはもう強いとか弱いとかの次元じゃないや。本人パニック映画の体現者みたいな事自称してますけれど、もうこれそれどころじゃなくコズミックホラーまで行っちゃってる、イッちゃってるよこれ。
マノンが言ってた通り、これは手に負えない。人間がどうこう出来るもんじゃないですって。見てるだけでSAN値がゴリゴリ削れていく。直葬直葬、頭がおかしくなりそう。怪物だ狂気だという程度のもんじゃないですよ、なんちゅうもんを描いてしまうんだこの作者さん。
生理的に嫌悪感と恐怖感、忌避感が溢れてくる。理解するのを生理的に拒みたくなる。それでいて、注視していないと目を逸らしてしまうと脳みその中にこびりついてべっとりと張り付いて棲み着いてベロベロと目玉を頭の中から舐められるみたいな妄想が剥がれないヤバい怖気を湧き上がらせるような、本物の狂気だ。本物の魔だ。最近、とんと久しくお目にかからなかったガチヤバいやつだ。
これが元は人間だったとか、今でも人間のつもりだとか、冗談じゃねーですよ。成れの果てがこれなのか、純粋概念に呑まれてしまった成れの果てがこれなのか。
他の四大人災(ヒューマンエラー)である星骸も、絡繰り世も、塩の剣も、みんなこんななのか。こんな破滅なのか。どないせいっちゅうねん。これ、人間が触れていいもんじゃないし、どうこうできるもんじゃないですよ。魔王だ邪神だというわかりやすい邪悪だったり強かったり無敵だったりインフレしてたりするような存在の方がよっぽどシンプルで簡単だ。
でもこれはダメだ。世界が歪んでる。在り方が根本的に間違ってる。法則が乱れきって原型がなくなってる。グチャグチャで無茶苦茶だ。
あかんわこれ、世界滅びるわ、それもわかりやすい滅び方じゃなくて人知を超えた形でグチャッと潰れるわ。
そんでもって絶望的なのは、純粋概念を魂に根付かせた異世界人は、もれなく限界を超えるとこれと同じものになってしまうということだ。アカリもまた、その末路はこれなのだ。
これが異世界人の破滅の形なのだ。そして、アカリの消耗はすでにかつて日本に居た頃の記憶をほぼ全損するほどにまで至っている。リミットは近いということだ。
問答無用で召喚された日本人は善悪の区別なく本人に罪はなくとも無関係に鏖殺すべし、という教会の方針、これを見せられてしまうとまったく過剰な反応ではなかったと納得させられてしまう。かの4大人災の狂気を実際に浴びる羽目になった当時の人々がこの結論に至ってしまったのは、もう当然だったんじゃないだろうか。召喚すること自体が大罪というのも重ねて重ねて。

一巻の段階ではほぼ不死身であり、人格の変換もあって裏から状況を操るフィクサーにしてプレイヤーとして物語の行方を引っ張る牽引者にも思えたアカリだけれど、まだただの人間に過ぎない彼女にとってはたとえ時間概念を自由に出来るとしても、意味がない。
パンデモニウムの語る話には多くの示唆があった。アカリの時間操作能力の限界に、純粋概念と呼ばれるものの意味。純粋概念とは使うものではなく、いずれ概念そのものに成り果てるものなのだと。
そして、アカリがもうすでに行き詰まっているという事。
そうなのか。何度も時間回帰によってやり直すことが出来るアカリこそが、アカリとメノウの救いのない破滅をハッピーエンドたる破滅へと進めることが出来る存在なのだと思ってた、思い込んでいたのだけれど。
アカリにはもうその権利はないのかもしれない。アカリの望みは自分の死、メノウによって殺される結末。それは行き詰まり行き止まった結末で、もうアカリに対してなんの裏表もない屈託のない笑顔を向けてしまうに至ったメノウにとっても、どう言い繕っても破滅の結末だ。
だから、そんな時の止まったアカリを動かし変える事が出来るのは、行き詰まった時間を動かす事が出来るのは、メノウの方なのだ。
ゆえにこそ、メノウが主人公だったんだ。
メノウの中にあるという「白」の残滓。悪人という「人」である事を選んだ決意が、この世界の理を・星の定めた運命(システム)を、穿つものになるのだろうか。
生きる道とは、人であるからこそ歩いていけるもの、為せるもの。生きて、彼女は成せるのか。
あの、あまりにも途方も無い人災という概念を前にして、その純粋概念を生み出したこの星の在り方に、翻って人の側の論理を以ってあらゆるすべてを蹂躙するバグみたいな「陽炎」に、果たして彼女は立ち向かえるのか。
メノウとアカリ、それにモモとアーシェナ。メノウだけじゃない、アカリだけでもだめだ。この四人こそが、鍵になるのだろう。きっと一番人間らしさを突き詰めたこの四人こそが。

アーシェナ姫、まさかあそこまでモモのこと執心するに至るとは。何が琴線に触れてしまったのだろう。そして、なんて女の子率が高い物語なんだろう。いやマジで男の登場人物で固有名詞出た人いねーんじゃないだろうか。マノンのお父さんですらなかったと思うし、何気に最初にメノウに殺された男の子も、名前出なかったんじゃなかったか。もしかして、他の四大人災もみんな女性、白の勇者ですらもそうなのか。

今回、万魔殿のインパクトがひたすらとにかくもう絨毯爆撃だったんですけれど、それを抜いても印象強かったのが、導師「陽炎(フレア)」がマノンの母を殺したシーンだったんですよね。死の間際に純粋概念を暴発させそうになった彼女に、陽炎が囁いた一言。それを聞いて、マノンの母が示したもの。それにグッと来ると同時に、そんな母親の強さと愛情を理解仕切りながらそれを利用してみせた師匠……これがあの師匠の在りようなんですよね。なんなんだろう、この人。この人こそ、まだ未知そのものなんだよなあ。一体何を考えているのか、何を目的としているのか、何を望んでいるのか。この人もこの人で、人の成れの果てにも見えてしまうのだけれど。

1巻感想

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― ★★★★☆   



【処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る―】 佐藤 真登/ニリツ  GA文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。
だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。
躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。
しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。
途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。

GA文庫大賞、7年ぶりの《大賞》作品!
――これは、彼女が彼女を殺すための物語。

これ、「生きる道」にバージンロードというルビを振るの、話の内容を読んでメノウとアカリの旅の目的を知って、「生きる道」という言葉に込められた意味を理解したあとにもう一度見直すと、凶悪の一言なんじゃないですかね。
処刑少女 メノウの生きる道をバージンロードと言ってのけるこのセンスには喉の奥から呻き声が漏れ出てしまう。

生きる道を見つけなさい。生きてきた意味を見つけなさい。それが、彼女の遺言であり祝福の言葉だった。その人は正しく強く優しい道を、光の道をあるき続けてついに見つけることが叶わずに、迷い果ててしまった。正しくても、真っ当でも、善き在り方を続けても、生きる道が見つかるとは限らない。
メノウは悪人である。陽の光の下を歩けない、外道であり卑怯者であり、おぞましい人殺しである。それを選んだ。異世界人の人災によって自分も含めて何もかもが漂白された真っ白の果てに、それでも自分でその道を選んだ。復讐のためではなく、憎しみのためでもなく、正義のためですらなく、ただ誰かがやらなくてはならない悪行を、誰かの代わりに自分が引き受けるために。
その意志は尊く、しかしその在り方はあまりにも悪である。処刑人は自らを悪と規定する。言い訳もせず、必要だからと正当化もしない。迷い込んでくる日本人たちに罪はなく、彼らはおおむね善良で決して殺されるべき人々ではないと理解した上で、殺す。その所業を世界のためだとか正義のためだとかと糊塗したりせず、それを悪を見なしてその身に引き受けている。
処刑人とは、そんな存在でありメノウはその中でももっとも純粋な必要悪の概念を体現しているのだろう。だから、彼女は自らが救われることなど、かけらも望んでいない。誰かのために人を殺し続けた彼女は、だから、これまでメノウは自分が生きる道を見つけようだなんて、考えたこともなかった。
そんな彼女の、この物語はそんな彼女の、生きる道を見つけるための旅の物語なのである。今まで生きてきた意味を見つけるための、旅なのである。

翻って、アカリの生きる道はすでに見つけ終わっている。見つけ終わって、そこにたどり着くためのリスタートがこの旅なのだ。彼女の生きる道は、死に至るための道だ。彼女の生きてきた意味は、最愛の人に殺されるためにある。
アカリはとっくに、メノウを許している。彼女の悪を、この上なく受け入れてしまっている。
だから、この旅はメノウにとっても終焉に至る物語になっている。アカリの存在に染め上げられて彼女を喪えなくなっても、アカリに許されて彼女を喪うことになっても、いずれにしても変わらない。
だから、ある意味メノウにとっての幸福は約束されているのかもしれない。だから彼女の生きる道は、バージンロードなのだろうか。
メノウとアカリ、二人にとっての幸福は、二人にとっての終着点だ。そこに広がるであろう光景を、彼女たちは知らずして既に望んでいる。だから、これは二人にとっての破滅の物語なのだろう。二人が幸せな結末を迎えるための、約束された破滅の物語なのだ。二人で歩くバージンロードのその先に、幸福な破滅が待っている。それだけが、二人を救う。

でも……果たして、本当にそれだけがこの物語の約束された結末なのか。
鍵は、導師の言葉にあると思われる。
「いつの日か幸福によってすべてが壊れ、それでもなお生き残ることが出来たなら――」
メノウに悪を説いた、この世の悪を引き受けた導師【陽炎】が本当に望んだものはなんだったのか。
「お前は、その時、私を超えろ」


バージンロードとは、今まで歩いてきた道とも言われている。その上を歩き、その先で待っているのは新たな未来をともに歩む人だ。その先にあるのは未来そのものだ。
決して、終着点などではないはずのである。
処刑少女の生きる道、メノウはそれを本当の意味で見つけることが叶うのか。
永く、困難な旅路のはじまりの巻です。



ヤンデレさではモモばかり目立ってるけれど、あれリボンの件鑑みてもアカリも相当アレだよね。ってかこの二人、絶対仲良く出来ないだろうなあ、というのが透けて見えすぎる。何気に、リボンに対する嫌がらせは、モモのリミッター解除も加味してあの場における最適解なんだろうけど。あとで、メノウからモモに新しいプレゼントが贈られるとわかっているからこそなんだろうけど。
それでも、女の怖さが滲み出ててアカリも能天気なだけの娘じゃないのよ、という闇が……。

アーシュナ姫ちゃまは、瞬間瞬間が生きる道そのものだなあ。ある意味、刹那で完結しすぎていてそれ以上も以下もないというべきか。そして、あの衣装である。作中にて書かれている衣装の形状を忠実にイラスト化すると、あんなんなっちゃったというありさまで。
餓狼伝説の不知火舞の衣装を上回る、動いたらぽろり確実な服を見たのははじめてだw


佐藤 真登作品感想

誰が為にケモノは生きたいといった 3 ★★★☆  



【誰が為にケモノは生きたいといった 3】 榊一郎/ニリツ
 富士見ファンタジア文庫


Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

タビタを連れて現世へと帰るため、指輪の示す方向に向かうイオリたちは、海辺の村で新たな棄界人の少女カチヤと出会う。罪人たちに『聖なる島』を奪われ、現世人を憎んでいたカチヤだったが、なぜかイオリを巡ってタビタと決闘することになり!?さらに『聖なる島』には、タビタを狙う罪人たちが集結していた―。生きるための戦いを決意するイオリは“棄界”誕生の秘密を知ることになり…。少年は誰が為に決断を下すのか!

うわー、これちょっと勿体ぶりすぎたんじゃなかろうか。残念ながらこのシリーズは三巻で打ち切り。さすがはベテラン作家さんということで、本来描くはずだった要素をうまいこと纏めこんできれいにラストシーンまで整えていたんだけれど……。
ラストの現世に戻ってからの展開ってめっちゃ面白そうだったんですよね。
あとがき曰くの国盗り編。棄界で得た新たな仲間たち、世界の真実、そしてタビタに与えてあげたいと思ったもの。野心とも志とも少し違う、でも世界を変える意志。そういうものを武器にして、自分たちを捨てた世界に殴り込み、ってまたワクワクが全然違ったんですよ。これは絶対読みたかった!
でもそういう気持ちがラストシーンで湧き上がってくるのって、構成として自分の興味・盛り上がりをもり立てることには失敗していた、ということでもあると思うんですよね。実際、棄界をウロウロする展開は各巻内ではきれいに一つのお話として起承転結していたものの、シリーズ物として先行きにワクワクをつのらせてくれるものがあったかというと、盛り上がるための積み立てみたいなものがあんまりなくて、若干ダラダラ進んでいたという感触もあったわけです。
じっくり棄界で物語を育て、キャラクターを繋げていくことは先々の展開のためには必須であったでしょうし、それを展開が遅いとは思わないんですけれど、これは読みたいと思わせてくれる国盗り編をチラつかせてくれるような餌巻きは、もう少ししておいて欲しかったように思います。
ちと、タビタがヒロインとしての存在感に欠けていたのも辛かったかな。同じようなタイプの【棺姫のチャイカ】と比べて何が違ったんだろう、と首をかしげるところなんですけれど、チャイカと比べても主体性というか自己主張に足りないところがあったのかなあ。こればっかりは、よくわかりません。ユーフェミアも、彼女の生き方が仕切り直しされるところに終始してしまって、彼女の魅力に切り込んでいくのはこれから、というところだったのでもったいなくはあったんですよね。素直になってイオリとの関係に自分から踏み込んでいく段階と、中の人とのあれこれなど、これからなんぼでもよくなりそうなヒロインでしたし。その意味ではタビタもこれからだったんだよなあ。ラストシーン見ると、彼女の「王族」としての立場って飾りじゃなくて、彼女のヒロインとしての重要な要素になる可能性があったみたいだし。
いずれにしても、どれもが書かれずに終わってしまったという意味で実に勿体無い作品でありました。

1巻 2巻感想

誰が為にケモノは生きたいといった 2 ★★★  

誰が為にケモノは生きたいといった2 (ファンタジア文庫)

【誰が為にケモノは生きたいといった 2】 榊 一郎/ニリツ 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

「美味しいご飯が作れるのは、いい嫁の条件なんだよ?」
新たな街でイオリたちが出会った棄界人の姉妹・ハンネとマルテ。彼女たちへの対抗心からタビタは―
「ん。夜這いする」
イオリに積極的なアプローチを仕掛けてきて!?さらには王族の末裔を探し出すことを命じられた罪人のひとり、ケネスと再会したユーフェミアも、イオリの背負った罪の真相を知り、ある決意を胸に抱くことになり…。
「穢れようが汚れようが生きてくれよ。胸を張って生きてくれ」
交錯する感情。変わろうとする者たち。復讐と贖罪の想いがぶつかり合うとき、イオリたちが進むべき未来とは―!?

イオリがユーフェミアの父親である上司を殺害した件、本当に誰も幸せにならない話でこれはイオリとしてもユーフェミアには言えんよなあ。
でも、ユーフェミアとしても真相を知らないことには中途半端のままどこにも行けなくなってしまっていたので、何らかの形で真実を知ることは必要だったのだろうけれど、イオリに話せよ、とはこれとても言えんですし。
その意味では第三者から教えてもらうというのは最善がどこにもない以上、最低限の条件だったんじゃないかな。ユーフェミアのイオリへの思慕と憎しみが入り混じった自暴自棄は放って置くと治らないまま膿み続ける傷になってしまいそうでしたし。
まあ、知ってしまったら知ってしまったであまりに重たいものを背負ってしまう羽目になったのですが。生きて苦しみ、しかし死んで楽になることは決して許されなくなったわけで。生きることそのものが贖罪、いや彼女自身が原因であっても何の罪もない以上、逆にちゃんと背負いきれない面もあるんですよね。だからこそ、イオリの方もユーフェミアへの対応について悩みきってしまっていたわけですし。
でも、そう考えるとユーフェミアの中のチヅルの存在って、ユーフェミアにとっては呪いではあるのだけれど、同時に言い訳となる存在であり、自分を許してくれる存在でもあるんですよね。チヅルの存在はユーフェミアにとって忌まわしき救いなのか。

しかし、臓器の移植手術まで高度医療とはいえ実現しているということは、イオリたちの世界の技術レベルって相当に高いんだなあ。製鉄すらままなってないゲヘナと比べると、そりゃ天界扱いされるか。
今回は、他に棄界人とイオリと同じ天使と呼ばれる異世界人とのカップルを登場させることで、タビタとイオリに二人の関係について改めて考えさせると同時に、上層への帰還の問題と絡めてユーフェミアの父親、イオリの罪についての真相を明らかにすることで、ユーフェミアとの関係も一気に整理しようという展開ではあったのだけれど、どの場面にもなかなかうまく踏み込めずにサラッとあっさり進んでしまった感が若干ある。特にタビタは終始、自分自身よくわからないままイオリにアプローチするばかりで、この娘の好きは本気ではあるんだろうけれど、まだ無垢なままで火が灯りきっていないままでしたし、ユーフェミアは真実に翻弄されるばかりで彼女自身確固とした想いをまだ抱けてないし、イオリはなんかこう意思がはっきりしないままだし、なんとなく全般的になあなあで進んでしまった感じなんですよね。
肝心の王族の血を引くものを連れて帰る、という一番の目的についても、裏で暗躍しているものがいる、ということが判明しただけで、詳しいところは何もわかってないし、とにかく全体的にはっきりしない感じでした。
もうちょい腰を据えて盛り上げてほしいなあ、と思うものの続き出にくい状況なんだろうか。

1巻感想

賭博師は祈らない 3 ★★★☆   

賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 3】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

賭博師と奴隷少女の物語。舞台は賭博温泉街バースへ。

ノーマンズランドでの負傷も癒え、ようやく当初の目的地バースにやってきたラザルスとリーラ。村から付いてきたエディスとフィリーも道連れに、気儘で怠惰な観光を洒落込むつもりだったが、一つ誤算があった。
温泉とギャンブルが名物のこの街で目下勃発しているのは、賭博を司る儀典長と副儀典長による熾烈な権力争い。バースへの道中で出会った知人からは忠告を受けるも、時既に遅し。
温泉から宿に戻ってみると、部屋には荒らされた形跡。そして一人横たわる血まみれの少女。面倒事の匂いに辟易としながらもラザルスは彼女を保護する。
それは、陰謀張り巡らされたバースにおける長い戦いの幕開けであった。

実のところリーラとラザルスの関係に関しては現状維持、というかはっきりとした関係にはせずに奴隷身分の女を生涯寄り添わせていくのが、アンダーグラウンドの住人であるラザルスにとっては最良なんじゃないか、と前回ある程度二人の仲が纏まったのを見て思ったものですが、当のラザルス自身がそれを良しとしなかったか。
バースの街でリーラに対して危害が及ぼうとした時のラザルスの激烈な反応を見るまでもなく、彼のリーラを大事に思う気持ちというのはもう溺愛と呼んで過言ではなくなってるんですよね。いちばん大事なものの最上位がリーラになってしまったわけだ。
そして、それは場合によっては自分自身よりも上位に位置づけている、ということでもある。リーラの幸せを鑑みて、自分の側にいることは彼女の幸せにとって決して良いことではないと思い定めていることが、リーラに対して奴隷身分の否定と先の選択の提示、そして自分の側には居てはならないという現状を続けることへの否定からも伺い知れるのだ。
愛があれば、すべては解決する、なんてお為ごかしは存在しない。それは、少女ジュリアナの突き詰めた愛情の果てやナッシュの無力さがこの巻の全部を以って証明してしまった。
それ以前に、ラザルスは自分の中に産まれ育つ「愛」から目を伏せ続けている。面倒くさい男、と思わないでもないけれど、そうやって人としてまともになることは賭博師としての堕落であり弱体化であることからすれば、リーラへの愛を受け入れてしまうのは彼にとっては究極の自己否定なのかもしれない。
賭博師として生きて死ぬ、その定めに殉じているラザルスにとって、リーラの存在は甘い毒だ。人としてまともになり、人として幸せになることが、果たしてラザルスという男にとっての幸福なのか。
当たり前の平和で安らかな人生が、彼にとって救いになるのかそれとも地獄になるのか。
それがわからない間は、ラザルスの煩悶も理解せざるを得ない。白黒つけたがるのは、勝負師たちの悪い癖なのかもしれないけれど。もっと曖昧模糊な関係でいいじゃない、はっきりさせなくていいじゃない、雰囲気に流されて、その甘い感情に浸っていればいいじゃない。
あのロマンティックなダンスシーンを見せられては、二人の甘やかな柔らかな思いを目の当たりにしてしまえば、無責任にそう思えてしまうのだけれど、ラザルスという男はそういう意味で
「潔癖」なんだなあ。

1巻 2巻感想

誰が為にケモノは生きたいといった ★★★☆   

誰が為にケモノは生きたいといった (ファンタジア文庫)

【誰が為にケモノは生きたいといった】 榊一郎/ニリツ 富士見ファンタジア文庫

Amazon
Kindle B☆W

「目のやり場に困ってるんだよ。それとも誘ってるのか?」
上官殺しの罪で現世には二度と戻れないという絶対流刑の地『棄界』に送られた魔術猟兵のイオリ・ウィンウッドは、湖で溺れかけていたところを少女に救われる。獣の耳と尻尾を生やし身の丈ほどの大剣を持つ全裸の少女はタビタと名乗り、匂いを嗅いだりとイオリに興味津々で…。
そして父親の仇であるイオリを殺すため自ら『棄界』に来た女騎士ユーフェミアも巻き込んで、タビタの地竜狩りを手伝うことになるのだが…。
「イオリが行く所、私、行く」
生きなければいけない呪いを背負った少年と、ケモノの少女が紡ぐサバイバルファンタジー!
これ、髪の毛と大剣が繋がってるってイラストからじゃわからんなあ、と思ってよくよく見ると、表紙絵にしても口絵にしても巧妙に連結部分を隠すような配置になってて、そもそもわからないようにしてあった、のだろうか。作中ではタビタ登場から程なく髪と大剣が繋がってる描写はあるのでネタバレではないと思うのだけれど。
片言の小動物系ヒロインというと、榊さんの作品ではやはり【棺姫のチャイカ】のチャイカが思い起こされるのだが、こっちのタビタは見事なまでにケモミミ少女である上に大剣使いという属性付き。まあ、チャイカのあの対物ライフル型の魔法杖というアクセントの強烈さをもってするとなかなかインパクト勝負では抗いがたいのだけれど。
個人的には、榊さんの作品では厭世型の青年が主人公の方が真面目だけが取り柄みたいな少年が主人公の話よりも好きなので大いに期待している。このタイプの主人公、みんなその道のプロフェッショナルなので安定感があって、動的な場面でもどっしりとして基盤になってくれるので安心して読める、というのもあるんですよね。
特に今回の物語では、『棄界』という得体の知れない異界を舞台にして、かつてこの地に墜とされた王族の末裔をゲットして地上世界に連れてかえらなければならない。そのためには、同じ任務で落とされた罪人たちに支給された地上帰還用の指輪を連れ帰る王族の分も含めて確保しなければならない、というサバイバルとバトルロイヤル要素が物語の根幹に備わっていますからね。その上、『棄界』に来る際にいきなり想定外のトラブルが降って湧いているあたり、既にこの段階で「陰謀」が巡らされている節もありますし、早々に生き残るための算段と勝ち残るための作戦を練らないといけない状況にあり、そこで主人公のイオリの魔術猟兵といういかにも特殊戦に慣れ親しんでいるようなプロの判断力と決断力は頼もしい限りでしょう。彼と行動をともにすることになるタビタとユーフェミアは「戦闘」に対する適正はともかくとして、それ以外に関しては素人っぽいですし、ユーフェミアに至っては「くっ、殺せ!」が口癖という、そろそろ一周回って珍しくて逆に新鮮味を感じるポンコツさんですし、これイオリ一人だけ負担重くない?
と、思ったんだけれど、なにやらユーフェミアの方に変な「ナニカ」が取り憑いているみたいで。そもそもイオリが犯罪者となった上官殺し、ユーフェミアの父親の殺害に関して一切何があったか語られていない事も含めて、まず主人公の過去、背景周りから殆ど情報があがってきてないからなあ。ここまで殆ど何も明かさないまま話を引っ張る、というのはなかなかに珍しいことかも。特に榊さんはそのあたり明快なことが多いですし。それだけ、根幹にまつわる話なのか。
まあともかく、明かされる情報が少ないだけに物語の大筋としては、前提となる『棄界』に送られ王族を見つけなければならない、という任務の再確認とタビタという少女の出会い、にほぼ限定されるので、敵さんも黒幕からは縁も遠い殆ど現地の山賊、みたいなのが相手だったので、実は物語的には大きな動きはあんまりない、キャラと舞台設定の紹介という導入の一巻らしい内容でした。
あまり掴みのために派手にしない、という意味では堅実というべきか地味というべきか。

榊一郎作品感想

賭博師は祈らない 2 ★★★☆   

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 2】 周藤蓮/ニリツ 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W


奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。
それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが……。
「ねえ、ラザルス。私と結婚しましょ?」
道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは――。
少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。
一巻で自らの生き方を自ら決めたラザルス。でも、そのきっかけとなり助けられた側であったリーラはこうしてみると外側から付与された「奴隷」という在り方に対して、まだ何にも意思表明をしていなかったのでしょう。彼女自身が精神的な奴隷という身分に縛られたままだった。
ラザルスはリーラに一人の人間であることを望んでいたのに、リーラの方はまだ人間であることを選べていなかった。この時代、異民族であり奴隷身分として扱われるリーラの一族は当然のように普通の市民からも人間扱いされません。その現実に、ロンドンを出ることで否応なく直面したリーラは自分の価値というものを見失ってしまうのである。ラザルスが、命を賭けてまで守ったものに対して、リーラ自身が価値を見いだせていなかったわけだ。そりゃあ、ラザルスはへこむよねえ。
ラザルスにしてもリーラにしても、基本的に内向きで他者に対して言葉を費やさないタイプである。リーラに至っては言葉そのものを失っているわけで、何かを伝える意思というものがどうにも薄弱になってしまっているし、ラザルスにはそもそもその手の習慣が存在しない。
二人きりだと何一つ進展しないどころか、自分だけで色々と考え込んでしまって螺旋状にドツボにハマってくという悪循環のスパイラルになってしまうわけだ。この二人、ある意味二人だけで閉じているのに、二人だけだとどうにも上手く回らないペアなんですよね、こうしてみると。
とても対人関係を好まない二人でありながら、どうしようもなく他者の介在が必要な二人、というのがまた興味深い。
一巻においては、あのボクサーの兄ちゃんがなんだかんだとラザルスの思考や意思に風を吹き込み後押しをしてくれたわけだけれど、今回に関してはもうエディスの七面六臂の仲人役である。本人、随分大変な状況に追い込まれているのにも関わらず、なんだかんだと下心ありとか言いながらも実際かなり自分のこと度外視でこじれかかった二人の中を取り持ってくれるあの親切さは、めぐり合わせにしてもえらい人と出会ってしまったものだ、とそう思う。
事実上はともかく、表向きにはちゃんと結ばれることが非常に難しいラザルスとリーラだけに、もういっそ本当にエディスと結婚してしまってもいいんじゃないか、と思わないでもないのだけれど、やっぱりラザルスがまともな生活を送れるとも到底思わないし、そもそも絵面が想像できないので、得難い良き友人ポディションが両者にとっても良い形なのかなあ、と。エディスくらいだと、他にいくらでも良い出会いが待ってそうだし。あのボクサーとか。
結局、ラザルスはどこまでいってもアングラサイドの人間ですしねえ。傍らに生涯奴隷の女一人を寄り添わせて生きていく、というスタイルが一番似合っているじゃあないですか。
同時に、何の後ろ盾もないそういう生き様の人間だけに、あの弁護士を徹底的に敵に回しておきながら、後腐れないケリをつけられなかったのは、あとあとちょっと怖いんですよね。一応脅しはつけて一時的に手出ししてこないようにはなりましたけれど、あれっていつまでも有効というわけじゃないでしょうし、逆に向こうのあの粘着質な性質を考えると一生根に持たれそうなだけに、本当に怖い。今後、まだ出番あるんじゃないだろうか、あの野郎。

前回は18〜19世紀の倫敦という歴史情緒を感じさせる描写が随所に垣間見えた本作でしたけれど、今回は逆に倫敦を離れることで当時の首都以外の都市郊外の当時の様子というのが、色々と描かれていて非常に興味深かった。なんだかんだとあの頃のイギリスを描くと必ずと言っていいほどロンドンが舞台なだけに、それ以外って案外描かれているのを見たことがなかったんですよね。
やはり異世界モノとは違う、外国の風俗というのもを肌で感じられる、これは良い作品だなあ。

1巻感想

賭博師は祈らない ★★★★   

賭博師は祈らない (電撃文庫)

【賭博師は祈らない】 周藤蓮/ニリツ 電撃文庫 

Amazon
Kindle B☆W

十八世紀末、ロンドン。
賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
――それは、奴隷の少女だった。
喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。

おおお……。つい最近19世紀末のロンドンを舞台にしたアニメを見たばかりで、あれも一世紀前のヨーロッパ、ロンドンという都市の独特な異国情緒に心惹かれたものでしたが、そこからさらに百年昔。産業革命の黎明期であり、社会構造が革命的なまでに激変していく過渡期であり、大英帝国がまさに世界帝国へと発展していく時代。
作中で描かれるロンドンの街並みは、主人公が半ば裏社会に足を突っ込んでいる人間であるせいか、光よりも薄闇を強く感じさせるアンダーグラウンドか、貧民街、庶民がしぶとく生きている下町が主たるものなのですが、それでも、いやだからこそか、なかなかに味わえない外国の、欧州の異国情緒というものをじっくりと味わえるようになっている。
さり気ない描写に、当時の文化背景や市民の生活感、今では失われたであろう歴史を感じさせる風俗などが仕込まれていて、これがまた空気を肌で感じさせてくれるような濃厚な雰囲気が漂っている。「異世界」を描く作品は多々あり、また「外国」が舞台となる物語も決して珍しくはないのだけれど、それでも19世紀、18世紀という歴史の向こう側にある近代という時代、その中でも異彩を放つ「欧州」という世界観を現出させることの出来る、ライトノベル界隈で活躍する作家は本当に希少だ。それを、新人作品として一発目にぶっこんでくる本作作者の筆力には身震いさせられるものがある。
そんな色濃いまでの舞台が整えられれば、残るはそこで踊る役者たちの出番である。
栄華の裏側に蔓延る退廃を体現するかのような賭博師の男。その男には夢もなく希望もなく、一攫千金を得るのだという野望すらなく、ただ賭博師として無残な死を迎えるまでの時間を賭博師として過ごしている虚無の男。
あらすじを読むと、主人公ラザルスは図らずも懐に飛び込んできた奴隷の娘リーラに対して随分と親身になって接しているように誤解してしまいそうだが、彼はリーラに対して当初からほぼ徹底して「どうでもいい」という無関心で接している。一方のリーラもまた、施された調教によって心を閉ざし、ラザルスからの無関心にもとづいて生じる「親切」に対してほぼ無反応で応じることになる。
随分と、隔てられた出会いだったのだ、二人のそれは。そして、お互いに積極的にその隔てられた距離を詰めようという意識を持たず、二人の時間は過ぎていく。
いったいいつ、二人の間に「情」というものが生じたのだろうか。厭世と虚無に満たされていた男の内面に、変化が生じていたのはいつだったのか。
それは明確に語られることはないが、見分ける手段として彼の口癖である「どうでもいい」という言葉が発せられるときの様子が、ある意味鮮やかにそれを物語ってるのかもしれない。
何もかもがどうでもよくて、いっそ自分の生き死にですらコダワリがなく、ただ養父の残した願いが彼の賭博師としての生き様をカラカラと回していたに過ぎない男が、「どうでもいい」と心から言えなくなっていく過程が、ここには描かれている。
それは、ラザルスの「生きる」という意思の原点に還るまでの物語であり、かつての自分と似た境遇であるリーラの存在によって、もう一度彼が生まれ直す物語なのだと言えるのだろう。
男が、生き様を決めるまでの物語だ。
それまでの勝たず負けずという賭博師として自身に課したルールをぶち壊し、今までと全く異なる「賭博師」のスタイルで決戦に、無謀すぎる死戦に挑むラザルス一世一代の大勝負。
渦巻く熱量の、なんと鮮烈なことか。クライマックスの盛り上がりとして、これ以上無いものでした。独特の空気感、以上になんとも様々な「匂い」を感じさせてくれる、濃厚すぎるほどにダーティーで味わい深い一作でありました。

大陸英雄戦記 2 ★★★★   

大陸英雄戦記 2 (アース・スターノベル)

【大陸英雄戦記 2】 悪一/ニリツ(アース・スターノベル) 

Amazon
Kindle B☆W
現代日本からユゼフ・ワレサが転生したのは、滅亡寸前の小国だった!? 祖国を守るため、ユゼフは士官学校への入学を決意する。士官学校の卒業を間近に控えたユゼフたち士官学校5年生は教官から「隣国内の独立戦争に義勇兵として参加」するよう言い渡される。大国・東大陸帝国の大軍を相手に、ユゼフたちの“本当の卒業試験”が始まる――。半年で2,100万PV超を獲得したwebで大人気の転生戦記が、アース・スターノベルから書籍化!

ユゼフの参謀としての能力が開花するラスキノ防衛戦編。本格的に戦争に参加するのはこれが初めてとなるのだけれど、その初っ端が士官学校を卒業する前に義勇軍として国外に派遣されて、孤立した独立都市で圧倒的劣勢な戦力比の中で防衛戦、というのだから過酷もいいところなんだよなあ。
しかも、市街戦である。
籠城戦というと、中近世のそれは城に篭って城壁を間に挟んで攻防戦、とイメージしがちだけれど、本作は近現代に足をツッコんでいるせいか、イメージとしてはスターリングラードとかのそれである。
ラスキノって、こっちで言うところのケーニヒスベルク――カーリングラードなんですよね。ドイツ、ロシア、ポーランド間で揉めに揉めまくった紛争地。主人公とはいえ新品少尉にもなっていない士官候補生が最初に首をツッコムにはえげつない場所である。
一方で、身分を隠しているとはいえエミリア王女のそばに居たからか、地べたをはいずりまわって歴戦の下士官に叱咤されながら最前線で震えてチビるという新品少尉にありがちな体験はせず、士官候補生ながらいきなり参謀扱いで使われることになったのは運の高さでもあるのだろうけれど、戦いがはじまる以前から入念に市街戦の可能性を高く見積もって、詳細な作戦案を実際に街を歩いて地形や建築物を把握しながら構築していたあたりに、ユゼフが根っからの幕僚型……というよりも、状況に対応するのではなく自分で状況を掌握して作り出そう、というスタイルが感じられるんですよね。それも、「情報」という武器を収集、集積、分析、運用、応用、利用することでその特質がこのラスキノ独立戦争で浮き彫りになってきてるんですね。
ユゼフもそうなんだけれど、サラやラデック、エミリア王女にマヤさんとその後の得意分野となるものをこの初陣でどんどん掴んでいってるのである。その後の彼らの飛躍を考えると、この段階でラスキノ防衛戦という過酷な市街戦を戦った経験というのは、思いの外大きかったのかもしれない。特に、ラデックのあの兵站参謀としての際立った能力は、便利極まるもんなあ。ユゼフが好き勝手思うとおりに仕掛けを施せるのも、サラが好き勝手動き回れるのも、エミリア王女が思うがままに指揮を取れるのも、それを動かすための物資が必要な時に必要な場所に必要な分用意されてこそなので、それを十全整えられる人材が一番の身内にちゃんと居る、というのはどえらいことである。
ユゼフ自身語っているけれど、この五人組、ユゼフが農民階級出身、ラデックが商人階級、サラが騎士階級、マヤさんが貴族階級、エミリア様が王族と見事に全身分階級が揃ってるんですよね。まあユゼフについては農民と言っても裕福な家ですし、そもそもユゼフは農民詐欺みたいなもんでどう見ても知識階級なんですけど。ここにイリヤ先輩やヘンリク先輩という学識部門、治安部門の各人が参加してエミリア派の中核となるメンバーが揃うのだけれど、決して意図したわけではない関係にも関わらず面白いメンバーが揃ったもんだなあ。
そう言えば、この2巻ではイリヤ先輩とヘンリク先輩がエミリア様と出会ったエピソードが書き下ろしで描かれているけれど、この二人わりと重要なポディションのわりにあんまり描写がなされなかったので、この追加は良かったんじゃないだろうか。ってか、イリヤ先輩思ってた以上に面白い変人なんですけれど、もっと出番増やしてくれてもいいんじゃないだろうか、ヘンリク先輩もだけれどもっとメインで扱っても良さそうな良いキャラなんだけれどなあ。

しかし、近世の市街戦なんて描写難しいだろうに、魔法の使い方を限定というか、利用法を専門化したせいもあってか、攻防が非常にわかりやすくなっている。その上で防衛戦の重要な部分、注視すべき部分、それぞれの戦略目標をきっちり説明した上で、戦術選択の必然性とその実行における効果など、簡易かつ筋立てて描かれているので、戦場の動きが把握しやすくて同時に生々しいダイナミックさがあり、ウェブ版でも読んでたけれど、改めて見ても面白かった。戦記物における実際の戦闘シーンって、わかりやすさと緻密さが並列していてこそ面白いんだよなあ。

さて、士官学校卒業前に実戦を経験したユゼフたち。その勲功は卒業時に反映されて、みんな卒業時には少尉任官どころか、中尉や大尉任官からという……なにそのフライングスタートw
そして、ユゼフ自身はエミリア様の懐刀として、ただの軍人として以上に彼女の政治にガッチリ食い込むこととなり、オストマルク帝国に大使館付武官として向かうことになる。まあ大使館付武官なんて、スパイも良いところなんですけれど。
さあ、そしてそこでサラの存在をメッタ斬りに脅かす、メインヒロインの登場ですよ?

1巻感想

竜騎士から始める国造り ★★★  

竜騎士から始める国造り (ファミ通文庫)

【竜騎士から始める国造り】 いぬぶくろ/ニリツ ファミ通文庫

Amazon
Kindle B☆W
転生後の世界で奴隷として生きていた俺は、あるとき死にかけの貴族の少年と出会い看取った後、彼と入れ替わりを果たした。そして、侯爵家の長男として竜騎士育成学校に入学し、強大なドラゴンを手に入れることに成功した俺は、辺境の田舎町を統治実習の場として選び、改革を開始した。農地開拓、衛生概念や教育の普及、道具類の開発と、前世の知識を駆使して次々に実現していく。この過酷な世界で、自分の居場所を作るために―。異世界成り上がり興国記登場!
平民や奴隷階級の人間が、貴族や王族と入れ替わり成り代わって、その新しい立場で成り上がっていく。成り代わりモノ、とでも言えばいいのか。須賀しのぶ【流血女神伝 帝国の娘】や杉原智則【烙印の紋章】なんかが思いつくのだけれど、大抵こういうケースでは入れ替わるための工作を行う協力者やバックにつく権力者なんかがつきものなんだけれど、ここまで完全に偶然と成り行きで、誰一人協力してくれる人もいなくたった一人で入れ替わりをやってしまうのは記憶にないパターンだ。
実のところ、平民以下の階級の人間が貴族以上の階級の人間に成り代わるのって相応の「教育」が必要であるんですよね。貴族的常識のみならず、教養というものがどうしても必要になってくるから。その点においては、主人公は奴隷階級出身だけれど、貴族の生活の様子を直接見聞きできるところにいた事と、前世の知識があるという要素があったからこそ、バックアップ無しでなんとか貴族のフリが出来たのだろう。
それでも、口裏合わせや入れ替わった人物を知る人間との折衝、書類関係の工作や不都合をねじ伏せる権力の行使など、入れ替わった事実を秘密のまま維持するのには大きな力を持った人間による助力が必要になってくるものなんだけれど、それを持たない主人公は面白いことに秘密を守ることに関してはそれほど神経を費やしてないんですよね。奴隷として生きるのは地獄。死んだほうがマシな境遇なのだから、この偶然手に入った立場を汲々として守るのではなく、行けるところまで突っ走ってダメならそれまででいいじゃないか、というある種の投げやりな、保身を考えないダメで元々という心持ちなのである。なので、貴族らしくとか、入れ替わった元の少年の真似をしようなんてさらさら考えずに、やりたいように振舞っている。
この一歩踏み外せば奈落の底に真っ逆さま、という状況に自分の身の安全を図らずにずんずんと進んでいく怖いもの知らずな主人公の姿は、なかなか小気味いいんですよね。わりと計算高い性格をしているはずなのに、その計算高さを保身に費やさない姿勢というのは、危なっかしいんだけれど面白い。
これだけ怖いもの知らずだと無茶やらかしそうなのに、元々生真面目な性格なのか意外とやることに関しては堅実というか、一度決めた目標に対しては黙々と遊びを交えず勤しんでるんですよね。
勤勉で堅実な野心家の怖いもの知らず、ってまた厄介なのか何なのか。
ただ、その仕事に対する勤勉な姿勢で他者の信頼を得ることは叶うものの、あんまり他人と打ち解けるタイプではないんですよね、この主人公。いや、ちゃんと他者に対して信頼を寄せ、信用を置き、その人の良い点を見つけては好意を抱き、親しくなった相手には手を差し伸べ、困ったら助けることを厭わない、とまあ普通に見たら良い人なんだけれど、一番肝心なところでは一線を引いている感じがするんですよね。学友に対しても領地の人間にも、使用人に対しても打ち解けてはいるものの、微妙な距離感がある。もしかしたら、相手の人は感じていない距離感かもしれないけれど。その距離感こそが、成り代わりの秘密の分なのかもしれないけれど。
唯一、乗騎である喋る竜だけが心を許しあった親友同士という距離感で接しているのは、なるほど竜騎士モノらしいのかもしれないけれど。
さて彼のこの境遇を楽しみ全力を尽くしながらも微妙に冷めた、或いは投げやりな感覚を胸に抱えているような改革物語。それは野心か享楽か。

大陸英雄戦記 1 ★★★☆  

大陸英雄戦記 1 (アース・スターノベル)

【大陸英雄戦記 1】 悪一/ニリツ アース・スターノベル

Amazon
Kindle B☆W
「俺」ことユゼフ・ワレサが現代日本から転生したのは、魔法のある中近世欧州風の世界。
しかも滅亡寸前の小国の農家だった!?

チートも無く、家柄も無く、魔力も人並みな「俺」は、祖国を救うために士官学校に入学。
ハードな戦争と政治の世界で大活躍する!
魔法という要素はあるものの、大陸の地理はまんまヨーロッパ。歴史の辿った経緯こそ異なっているものの、概ね中近世の欧州と同じような国情へと収束していっている。そんな中で、主人公ユゼフが生まれたシレジア王国が該当するのが「ポーランド」なのだ。
ポーランド、また渋いところに的を絞ってきたものである。この国が辿った歴史の紆余曲折は、西北東の様々な大国、勢力から干渉を受け、また逆激する激動の中欧史と合わせて非常に興味深いのだけれど、近代に入ってからの四方八方から食いちぎられていく苦難の時代に代表されるように、全方位を列強に囲まれた小国の、しかも元は強大な国だった過去を持つ斜陽の国の悲哀を背負った国なんですねえ。第二次大戦におけるドイツとソ連による分割が有名ですけれど、それ以前から非常に苦しい舵取りを強いられてきた国でありますし。
この作品の舞台となるシレジア王国も、四方を「東大陸帝国」「オストマルク帝国」「第二キリス帝国」などに囲まれ領土を狙われ、国力は傾き、政情は国王派と王弟派に分かれて暗闘中。まさに滅びに向かって真っ逆さま、という真っ最中。シミュレーションゲームでも、真っ先に攻められ消滅する立ち位置なわけです。
主人公のユゼフくんは、身分は貧乏でもないけれど富裕層ではない農民の出身。一念発起して、士官学校に入学したものの、転生者とはいえ別に何か特別な能力があるわけではなく、実のところ現代知識を利用して云々、ということは殆ど言っていいくらいしてないんですよね。
面白いのが、この作品の時代背景がおおよぞ18世紀から19世紀あたり、というかなり近世に近い時代というところ。銃火器こそ存在しないものの、魔法の存在がおおむね火砲の代わりをなしている、と見れば当時の軍制から突飛には外れていないと見るべきか。
この時代、封建的軍隊から近代的軍隊への過渡期ともいうべき時代で、貴族と平民という身分差が明確に存在すると同時に軍内では尉官佐官将官などの階級制度が徐々に整い出している時期でもあるわけです。この作品を見る限り、国の運営や地方自治はまだ貴族階級が牛耳っているものの、兵力は貴族が独自に有しているのではなく、中央集権化が済んでいるようです。
ともかく、意外とこのあたりの時代を舞台にした戦記モノってあんまり見ないんですよね。だいたい文明レベルで言うと中世か、或いは近現代が殆どで。
ある程度以上に、政府官庁の組織が近代化されていること。国民一人ひとりの生活レベル、国への帰属意識が中世寄りではなく近代寄りであること。それでいて、まだまだ貴族階級による統治が政治全体に及んでいること。この中世から近代の過渡期ゆえのシステムの混在をうまいこと利用して、中世近代の要素のいいとこ取りをしているんですよね、この作品。
シレジア王国のエミリア王女を盛り立てて、滅びの道を辿る故国を守ろうという由緒正しい戦記モノでありながら、その内実として近現代寄りの国家間・国内派閥間の政治外交闘争、或いは情報戦や謀略戦といったパワーゲームが繰り広げられていくわけである。
ユゼフくんは、戦記モノでいうところの軍師ポディションになるんですけれど、彼って軍参謀タイプというよりも……英国エリザベス女王におけるフランシス・ウォルシンガムっぽいんだよなあ。いや、ちゃんと戦場における参謀職としても非常に有能なのですけれど、後々の外交や情報戦での悪辣さを見るとねえ。

ともあれ、彼が国の行く末に手を突っ込めるような場所に立つのはもう少し先の話。この一巻では、初陣にてシレジア王国の一粒種であるエミリア王女との知遇を得て、士官学校で将来に渡って運命を共にする5人の友人たちとの仲を深めていく過程が描かれていく。そして、初陣の時の戦いとはまた異なる、泥沼の闘争の渦中へと放り込まれるまでのお話が。

書籍化にあたっては、書きおろしがさらに二編追加。特に面白かったのは、エミリア王女とユゼフの模擬演習か。このへんでエミリア王女、指揮官としてビシビシ鍛えられてたんだなあ。この時点ですら、既に軍司令官として相当に優秀であることを示してるのに。でも注目すべきは、ラディックの方かもしれませんね。兵站管理者として、こいつが一番チートかもしれん。

ザ・ブレイカー 3.虚ろの神は人世を狂わす3   

ザ・ブレイカー (3) 虚ろの神は人世を狂わす (電撃文庫)

【ザ・ブレイカー 3.虚ろの神は人世を狂わす】 兎月山羊/ニリツ  電撃文庫

Amazon

神を名乗る謎の教祖にカナタとリセが拉致され――!?

林間学校を楽しむ葉台高校の生徒たち150名以上が、まとめて拉致される事件が起こる。犯人は、武装した大勢の信徒を率いる、狐面をかぶった少女。
「我が名は“生虚神”。ヒトの未来を担う神でございます」
そう名乗る狐面の彼女こそ、凶悪なテロ計画を密かに進める謎多きカルト教団・黒陽宗の教祖。
拉致された学生、そしてその中にいるカナタやリセも、否応なく、テロへの荷担を強制されるのだった……。
人気サスペンスシリーズ、第3弾!!
また捕まってる!! 1巻からこの3巻まで、皆勤で敵犯罪集団に拘束される主人公とヒロイン。いや、一巻ではカナタは刑務所から招聘されたので少し違うのだけれど、リセについては、捕まってない時間のほうが少ないんじゃないか、というくらいの頻度で拘束されてます。そのせいか、若干対応に慣れが見えてきた感すらあるのがなんとも。
ともかく、またも拉致され拘束されてしまったせいで、カナタの行動には極端な制限がつけられてしまうのですけれど、史上最悪の犯罪者という触れ込みのカナタの能力がこの場合、殆ど対処療法に費やされちゃってるんですよね。事が起こってしまってからそれをリカバーする事にリソースが費やされてしまっているのが、何とも勿体ないというか、いつも後手に回りすぎじゃないか、と思わないでもない。
今回なんか、結局CIROごと出し抜かれた形となり、学校の同級生たちまで巻き込んでしまったわけですからね。最初から捨て駒にするつもりで、釣餌として級友たちを利用する、くらいの極悪非道な心づもりだったならともかく、犠牲については諦める、くらいの強度だったからなあ。悪を為して悪を討つにしろ、偽悪を持って人を救うにしろ、ちょいと中途半端というか天才のわりに実はあんまり結果出せてないんじゃないかなあ、カナタって。今回なんて、教祖さまが最初から意図的に付け入る隙を与えてくれるずさんな計画を立てていたので収まるところに収まりましたけれど、本当に徹底してやる気だったらまずアウトだったんじゃないだろうか、この一件。
実のところ、犠牲はけっこう出ているにも関わらず、物語としてもやや中途半端なんですよね。洗脳やら生徒たちを使ったテロリズムにしろ、触りだけで済ませているので肩透かしだったくらい。特に洗脳の一件なんて、生徒間でもっと地獄絵図な対立が起こるくらい徹底してやるかと思ってたんで、あれだと思想誘導やマインドコントロールにも届いていないんじゃないだろうか。リセが頑張って洗脳を防ぐ、みたいな事もなかったし。
イーグルアイも、あれ本気で言っていたのか、とガクッとなってしまった。いや、同級生連れてCIRO本部に現れるってあからさまに変じゃないですか。それも、ちょうど黒陽宗の本拠地に査察に向かったタイミングで、ですよ。プロなら察しなさいよ、と嘆いてしまいました。あまりな反応に、そうかカナタの意図を組んで演技してるのか、とも考えたんですけどね。メンバーの個々の能力は凄いんだろうけれど、CIROってこれ対テロ組織としては大丈夫なのか、と心配になってしまいました。
一応、黒幕というかすべてに裏で糸を引いていたフィクサーが登場してきましたけれど、とてつもない大物感、とはあんまり縁がなさそうだなあ、という印象。手の届く範囲に降りてきちゃったら、それはもう倒せる敵ですからねえ。

シリーズ感想

ザ・ブレイカー 2.断罪の処刑人は唄う3   

ザ・ブレイカー (2) 断罪の処刑人は唄う (電撃文庫)

【ザ・ブレイカー 2.断罪の処刑人は唄う】 兎月山羊/ニリツ 電撃文庫

Amazon

ネットで公開処刑を続ける殺人犯に史上最悪の天才と呼ばれる悪魔が挑む!

医療ミスを認めない病院の院長、車で子供をひき殺した女優……罪に問われず、ぬくぬくと生きている人間たち。
そんな「世間から反感を買っている」人々を殺してまわる連続殺人鬼が現れる。
その名は「公共の敵(パブリック・エネミー)」。
残虐な処刑の様子をネット上でライブ放送するという異様な手口で、多くの一般市民から熱狂的な喝采を浴びていく。
「公共の敵に死を」とうそぶく彼の真の狙いとは――?
リセちーの立てこもり事件への巻き込まれ率が半端ないのですがw
と言っても、まだ2巻なので二回中二回というだけの話なのですけれど、ただでさえリセは自身の理由から狙われる可能性が高い身の上なのに、全くの偶然からこんな風に巻き込まれもするのでしたら、そりゃお兄さん過保護にもなるわなあ。それでなくても、責任感が強くて自分から危険に飛び込む事も厭わない娘なのに。
まあリセみたいな頑固な娘は、どれだけ冷たい仕打ちや言動を向けても、傷つくくせに退かないのでカナタがいつまでも強行な姿勢を貫いていても意味はない、とは思っていたのですけれど、思いの外早く諦めたというか、胸襟を開いてみせたなあ、という印象。悪魔と呼ばれる男、というくらいだからもう少し徹底してリセとの間に壁を作り続けるのか、とも思ったんだけれど、やっぱりカナタはダークヒーローではあるものの、リセに対しては相当に甘いんですよね。
それに、悪を倒すのに悪を用いる、みたいな感じで使われる事になるカナタですけれど、彼のやり口というのは実のところそう悪魔めいているわけじゃないんですよね。悪辣でも下衆でも卑劣でもない。まあ外道は結構入っているかもしれないですけれど、どちらかというと公権力・秩序を守る側が出来ないような手段を用いて事件を解決に導いていく、という手法に寄るというべきか。うん、その意味では確かに「悪」と言って過言ではないのかもしれない。どう言い繕っても正義には程遠いやり口ではあったし。とはいえ、嫌悪感をもたらすような手管ではないですし、筋は通っているんだよなあ。まあ、あの犠牲者を少なくする提案については、他に手段がなかったとはいえ、ちょっと生き残った人への心の傷が大きすぎるような気もしますけれど。
前巻は、全く味方の居ない中での孤高の戦い、というイメージのカナタでしたけれど、今回はCIROに所属した事で組織のメンバーとも協力する形となり、主にカナタが牽引しているとはいえ一癖も二癖もあるメンバーがそれぞれ特色を活かした、チームによる犯罪事件への挑戦、という様相を呈してきて、作品のスタイルみたいなものが整ってきたんじゃないでしょうか。
その中で、まだリセがいささか未熟さを垣間見せている気がしますが。今回は彼女の能力を活かして役に立ってはいましたけれど、ちょっと心もとないんだよなあ。ある種カナタと同類の怪物的メンタリティーの持ち主が多いCIROのメンバーの中で、リセだけが余りにも普通の女の子で、必死にカナタのためにも役に立ちたい、と頑張っているのが、どこか一生懸命背伸びしているように見えて、どこか危うい。彼女自身、修羅場くぐってますし弱い子ではないのですが、その真っ直ぐさがCIROという場合によっては容易に非情な手段、決断を下しかねない組織の中で果たして揺らがずに居られるものなのか。カナタが早々に彼女に寄り添う事になったのは、お互い支えあう必要があるからなのか。いずれにしても……この兄妹、次から平然とイチャイチャしはじめそうで、うん、まあそれはそれで。

1巻感想

ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は3   

ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は (電撃文庫)

【ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は】 兎月山羊/ニリツ 電撃文庫

Amazon

醜い人面皮をかぶり「恐怖の顔」と名乗る謎の男が、200人以上の学生を人質に高校を占拠する。交渉人として呼ばれたのは、重犯罪特殊刑務所に収監中の、ある少年だった―。少年の名はカナタ。彼は、100万人もの命を奪った毒ガステロに荷担したうえに、64人の刑事を殺害した罪で死刑判決を受けている「悪魔」だった。人質を殺しながら不自然な要求を突きつけてくる凶悪な篭城犯と、他人の命に価値を見出さない冷酷な悪魔が、手に汗握る知能戦を繰り広げる…!緊張感溢れるクライム・サスペンス!!

悪魔扱いされ、大量殺人犯の死刑囚という肩書を背負って稀代の悪人として登場した主人公のカナタだけれど、純然たる大悪人って、主人公として書くのは結構至難だと思うんですよね。なので、本作の主人公もあらすじから見ても、何かの理由があって罪を背負う事になったか、罪を被せられたかした子なんだろうとは思っていたのですが、案の定であり、もしくは期待以上の事情持ちでした。
前作でも前前作でも、背負うべき罪科から逃げない事、深い葛藤と責を果たす重さ、守るべき者を守る抜く決意について、ブレずに重厚かつ色彩鮮やかに描いてみせた作者ですから、本作のダークヒーロー像も真っ向から描いてくれるんじゃないでしょうか。
ただ、ダークヒーローというだけあって、彼からはもう既に葛藤とか躊躇いとかは振り切れてしまっていて、覚悟完了しちゃってるっぽいんですよね。既に目的を果たすために手段を選ばない決断をしてしまっているカナタは、もはや決戦兵器じみていて、もう迷ったり悩んだりする存在ではなくなっているので、事件解決の主体となる劇薬的主人公ではあっても、物語に感情の色をもたらす存在ではないんですよね。その意味では、カナタの妹であるリセこそが、もう一人の主人公なのかもしれない。
既に振り切れてしまっているカナタに代わり、悩み苦しみ、哀しみ迷い、真相の向こうにある想いの形を手繰り寄せてくる存在こそが、彼女なのです。同時に、彼女の存在こそがカナタという爆弾の起爆装置であり、彼の行動原理の中心であり、全てであり、リセの感情が、祈りが、想いこそがこの最終兵器の動く方向を決めるとなれば、この作品の要こそが緋上リセという少女にあると見做して間違いはないのだろう。

……誰だ、つまりはシスコンだろ?とか思ったやつ。

うんまああれです、ヒロインが妹という時点でもうそれでいいんじゃないかな、と。
妹を狙う下劣な輩共から彼女を守るためならば、たとえ罪に背負おうとも、悪に身を沈めても、いかなる手段を問わずとも、もはや一切の躊躇いなし。
まさに、たった一人のためのダークヒーローである。
終わってみれば、この第一巻は彼がダークヒーローとして再び活動を開始するまでの導入編。彼がCIRO(内閣情報捜査局)の一員として加わるまでの、序章だったというわけだ。
このCIROという組織も、一癖も二癖もある表沙汰に出来ないような集団なわけだけれど、さて仮にも組織の一員となる以上、果たして彼はこれまでのような孤高の存在として居られるのか。CIRO自体、所属するメンバーの殆どが一匹狼みたいなもので、協力しあうというよりも目的のために利用しあうような結びつきに、現状はみえるけれど……。なんというか、作者の前作の充実ぶりを見ていると、個人的にはカナタやCIROという組織のこれからの変化、も期待したくなるなあ。前作は残念ながら途中で終わってしまったのですが、今回は最後まで走りきってほしいものです。

兎月山羊作品感想
 
12月2日

(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(Kラノベブックス)
Amazon Kindle B☆W


(早川書房)
Amazon Kindle B☆W

12月1日

(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(HJコミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月30日

(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

11月29日

(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ファミ通文庫)
Amazon Kindle B☆W


(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W

11月28日

(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月27日

(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月26日

(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月25日

Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(KADOKAWA)
Amazon Kindle B☆W

11月22日

(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス フラッパーシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスpixiv)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月20日

Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(GCN文庫)
Amazon Kindle B☆W

11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月18日

(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月17日

(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W

11月16日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W

11月15日

(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(Gファンタジーコミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月12日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(宝島社)
Amazon Kindle B☆W


(星海社COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーうぇぶりSSC)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(メテオCOMICS)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W

11月10日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W

11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W
11月6日

(角川書店単行本)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

11月5日

エンターブレイン
Amazon Kindle B☆W


(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
Amazon


(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索