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ハヤカワ文庫JA

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 ★★★★   



【シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱】  高殿円/雪広うたこ ハヤカワ文庫JA

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2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!
登場人物全員女性! 高殿さんの作品はもっとガンガン読みたいんだけれど、なかなかタイミングがなかったんだけれど、いざ読み出すとめちゃくちゃ面白くてサクサク読めてしまうので、まずページさえ開けばいいんだよなあ。

冒頭からアフガン紛争帰りの軍医ジョー・ワトソンの登場で引き込まれてしまう。本来のワトソン君もアフガン戦争帰りの軍医だったのに、舞台が現代になっても変わらずアフガンに首突っ込んでるイギリスになんだかなあ、という気持ちになる。まあ、現代のアフガン紛争は9.11を端緒にはじまった対テロ戦争の一貫でアメリカ主導だったんだけれど。でも、巡り巡ってそもそもこの地域の紛争がはじまった原因はイギリスだからな!
というわけで、時代背景はがっつり現代。2012年のロンドンオリンピックが開催されている真っ盛りの頃。それでももう10年前になるのだが。
高殿先生、めっちゃロンドンに取材にいっている上に短期だけれど実際に旅行じゃなくて住んだりもしてたんじゃなかったっけか。それだけに、ロンドンの情景描写にはリアルな色彩と息遣い、そして生活感を感じさせるものがあって、眼に心地よい。
とはいえ、ワトソンちゃん、戦地から帰って早々就活に失敗して引きこもるわ、金なくて住む所もなくて、モルグ……病院の死体置き場に勝手に潜り込んで、死体袋を寝袋代わりにして宿代わりにする、というすげえことを平然とやらかしてくれるのだが、そこで図らずも同じく死体袋に入って仮眠を取っていたシャーリー・ホームズと運命の出会いをかますのでありました。
出会いの絵面が酷いなんてもんじゃないんですがw
ホームズシリーズのワトソン君と言えば、凡人の聞き役として頭脳明晰なるホームズ氏の推理に実にわかりやすい反駁と疑問を呈してくれる狂言回しの王様みたいな存在で、この作品におけるワトソン女史も普段のホームズの奇行に苦言をていして常識を諭したり、事件の推理パートに際してはわかりやすい答えにとびついて、と実にワトソンしているワトソンなのである。見事なワトソンっぷり、と言っていいでしょう。
しかし、彼女が平凡か、凡人か、というと……実際の所シャーリー・ホームズに勝るとも劣らない奇人なんじゃ、と疑ってしまうんですよね。ダメンズ趣味なのを除いても。
いや、その前に物語の主役であるシャーリー・ホームズを語らねばなるまい。
自分には心がない、と語る彼女は、胸に人工の心臓が埋め込まれた半機械化人間である……いや、マジで。ただ心臓疾患で人工心臓を胸に埋め込んでいる、というだけならアンドロイド呼ばわりはしないのだけれど、彼女の場合その心臓がどうにも特別性である上に、ネットワークと繋がりミセス・ハドソンというAIと連携していたりするんですね。
ハドソン夫人が人間じゃないんですけど! というのもアレなんですが、シャーリーの電脳との繋がりっぷりが、2012年が舞台なのに一人だけ攻殻機動隊!
ハドソン夫人も「Hey Siri!」とかでは済まない異様に高度なAIですし。ちゃんと元のハドソン夫人という人間は居たらしく、亡くなった彼女の人格モデルを用いているAIらしいのですが、いずれにしてもシャーリーってばホログラムとか普通に使ってるし、技術レベルがひとりだけ100年単位でおかしくないですか? という様相なんですよね。
ワトソン、なんで気にしてないんだ? なんかもうそういうものなんだ、とさらっと受け流しているのですが、彼女の受容力ってちょっと異様なんですよね。
シャーリーのどこかロボットじみた非人間的な挙動、停滞した感情、絶世の美貌が余計に人形めいた雰囲気を増しましているところなど、最初の頃こそシャーリーの異様さがワトソンの目を通じて浮き彫りになるのですけれど。
ワトソンとのシェアハウス生活の中で、一見してわかりにくい中でシャーリーは実は結構表情が動いていたり、感情的な部分が見え隠れしてくるんですね。家族……姉の突拍子のなさに振り回され、自分に与えられた役割に頑ななほどに拘る意地の張り方、そして自分の存在意義、生きる価値についての苦悩など、シャーリーの人間性、人間臭い部分は後半に行くほど顕著に見えてくるのである。
んで、面白いことに逆に平凡な人間に見えたワトソンの異様さがチラチラと見えてくるんですね。その人生の岐路に、いつも男の影がある、男運の悪い要領も悪いお人好しのハーレクイン好きの医者崩れ、というわりとダメっぽい女性という姿の奥底に、シャーリーと普通に友人として付き合えている、シャーリーを取り巻く異常な環境を特に気にせず受け入れて何の隔たりもなく一緒に暮らしている、という所からなにやらワトソンという女性の得体のしれなさが垣間見えてくるんですね。
それは、彼女のアフガン紛争での戦地での経歴が明らかになった時に、はっきりと突きつけられるのである。
いや、ジョー・ワトソンのアフガン時代のプロフィールがちらっと開示された時の、あのゾッとするような感覚は忘れられない。アフガンでなにやってたんだ、このワトソン女史!? そして、なんで平然とした顔でロンドンに戻ってきてるんだ?
巻末の中編で、シャーリーの姉がワトソンの人となりを危惧して個人的に喚び出して面談したその気持も、その危惧も、ワトソンという女性の中にある異様さを見せられると、わからなくもないんですよね。
そんな姉に呼び出されたワトソンを、めっちゃ心配するシャーリーが可愛いのですが。あの姉のちょっとやべえくらいの変態っぷり、人間として明らかに踏み外している人格を身内としてこれ以上無く思い知っていたら、そりゃ心配だわなあ。ジョー・ワトソンが喰われちゃうッ!(性的に)と焦りまくるシャーリーは十分以上に人間らしくて、可愛かったです。
個人的に、シャーリーって妹属性強いし、ワトソンからも普段からよくお世話されているのを見ると、妹属性強い感じがして、イメージとしてはチンマイ容姿を連想してしまうのですが、実際はワトソンよりも背が高い女性としては長身のスラリとしたスタイルなんですよね(ブラはしなさい)。
イメージはメチャクチャ綺麗だけれどちびっ子、なんだけどなあ。

っと、事件の方はシャーロック・ホームズ最初の事件である「緋色の研究」のシナリオとはだいぶ異なっていると思われる。主要人物が全員女性になっている、という事もあってかもちろん、刑事であるレストレード警部や被害者、犯人も全員女性となっている。てか、レストレード警部、ママさんデカなんですが。シングルマザーで、子供もいる中国系の切れ者刑事で、仕事が忙しい時はなんでか子供をシャーリーとジョーのアパートメントに預けていく、という最初からの親密さ。
まあそれはそれとして、事件の方は殺害方法がわからない、被害者たちの共通点がわからない、という謎の連続殺人事件。そもそも殺人なのか、それも連続殺人なのかすらわからない状況で、にも関わらず連続殺人事件じゃないかと想定して動いていたスコットランドヤードは素直に優秀なんじゃないか、と思う。被害者の全員が女性ということもあるのだけれど、様々な意味で女性的な事件であり真相であったと言える。これ、解決側が男だったらなかなか平静な顔して推理とかしにくかったんじゃないだろうか。
と、本作の注目点はこの連続殺人事件が単発の事件ではなく、最初から某教授が絡んでいた、という所なんですよね。宿命の敵は、既にシャーリー・ホームズと運命の糸によって結ばれているのである。そして、その運命に対して、シャーリーは決して超然としていられない。彼女は真実に怯え、IFに苦悩し、正義を果たすことが正しいのか迷い果てている。
そんな彼女を、ジョー・ワトソンは傍らで見守ることになる。果たしてジョーは、シャーリーの友人で居られるのか。その異様な受容性は、彼女たちを救うのか突き落とすのか。
いずれにしてもこの物語において、ライヘンバッハは既に約束された未来なのだ。

そこに至るまでに起こるだろう様々な物語が、シャーリーとジョーの冒険は想像するだに楽しみなんですけれど、まだ続刊一冊しか出てないんですよね。コロナが収まらないとロンドンを訪れることも難しいでしょうし、首を長くして待ちたいところです。その前にバスカヴィルを読まねばですが。


高殿円・作品感想

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル ★★★★  



【裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル】  宮澤 伊織/shirakaba ハヤカワ文庫JA

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ネット怪談×異世界探険
「検索してはいけないもの」を探しにいこう。

仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で爐△"を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!

怖ぇぇぇ! なにこれ、何がピクニックですか! 散歩気分で行くところじゃないでしょうこれ!?
昨今氾濫している「異世界」じゃなくて「裏世界」ってなんだろう、とタイトル見る度に思っていたのですけれど、これは確かにファンタジーとしての異世界じゃないですわ。
オカルトだ、オカルトだよこれは。

確かに行ったきり帰って来られない一方通行の世界と違い、裏世界は条件は色々あるものの、行き来は出来るし、扉となっている場所はどうやらあちこちにあるらしい。
かと言って、気楽にピクニック!とばかりに遊びに行くような場所では断じて無い。そこにうごめいているのは、本物の怪異たち。都市伝説やネット怪談で語られたこの世ならざるものたちだ。
ということは、裏世界ってもうあの世とこの世の狭間というような世界なのか。それにしては世界の有り様は生々しく異質であり頭がおかしくなりそうな狂気がべったりと張り付いたような世界だ。
とても好んで自分から飛び込むような世界ではない。どんな理由があるにしても、だ。
それを、この二人の女性は自らの意思で飛び込んでいく。片や、そこで行方不明になった親友を探すため、片やそんな彼女を見捨てられないために。
それだけ見るなら、真っ当な理由に見えるんですけどね。
怖くても恐ろしくても、大事な人のために勇気を振り絞って、悍ましい異形の世界に挑んでいく。
そう聞くと、まともに聞こえるんですけどね。
果たして、本当に彼女たちは真っ当なのか、まともなのか……正気なのか。まだ人間なのか。
この裏世界を知る人はみんな言うのですよ。その世界に関わっていたら、マトモじゃなくなっていく。段々と、人間を逸脱していってしまう。頭がおかしくなる。
そして二人は、初めて出会ったそのときに、もうベッタリとこの裏世界の洗礼を受けてしまうのである。身体に、痕跡が残ってしまうほどに。
それは、裏世界の要素が身体の中に残ってしまったということ。あの世界と、チャンネルが合わさってしまったということ。
それ以降彼女たち、空魚と鳥子は別に裏世界に行こうとしていない時でもふとした拍子にあちらの世界に迷い込んでしまったり、それどころか現実世界の方にあの世界が侵食してくるような、そんな現象に苛まれることになる。現実世界にいるはずなのに、じわじわと常軌が逸していく感覚。狂気に見ている景色が塗りつぶされ、ぐるりと世界が反転してしまうかのような……。

いや怖いから、これ本当に怖いから。
なんかメインの二人の女性がタフなのか精神的に壊れているのか、わかりやすくキャーキャーと怯えずにビビりながらもずいずいと突き進んでいくタイプなために、無為に登場人物を恐怖のどん底に陥れてパニックを誘発させ、恐ろしさを煽るような描写にはなっていないものの、起こっていることだけ見ててもそれだけで怖いから。
てか、もっと怖がれよ、空魚と鳥子も! こっちが泣きそうだよ!
一見まともに見える二人なんですけど、鳥子は危険を感じる感覚がぶっ壊れているのか、何も考えずに突っ込んでいくし、空魚もこの娘はこの娘で唐突に爆弾持ちだというのを暴露してきやがるんですよ。本人、まったくわかってない、自分がどれほど異常なことを平然と口にしているのか自覚してないのが、もうヤバいのなんのって。あれはゾッとした。それまでは本当に感性に関しては普通に見えていただけに、余計に「静かに狂っている」感が伝わってきて、絶句してしまった。
これ、空魚が鳥子のブレーキ役になっているように見えるけれど、もしかしたら鳥子の方がストッパーというか錨になっているんじゃないの? と思えてくるほどのインパクトだった。
空魚がどうしても鳥子を見捨てられず、突っ走っていってしまう彼女を追いかけ引き止めるのは、鳥子の存在が自分にとって「あっち側」に行ってしまいそうな自分を引き止めてくれる存在になる、と無自覚に察しているからなんじゃないだろうか。
その担保となるのが特別な友情、というある意味人同士の絆、繋がりとしては真っ当以外のナニモノでもないものでもあるのですが。いや、だからこそ、か。

ともあれ、正気と狂気の天秤がジェットコースターにでも搭載されているかのように激しく上下して振り回されるような展開の悍ましさ、気色悪さ、恐ろしさは正直マジ怖いです。
裏世界に行くエレベーター、毎回毎回ある特定階で向こうから走って乗ってこようとする女がいるけど、絶対に乗せてはいけない、とか普通に怖くないですか? ちょっと閉ボタン押し損ねたらタイミング的に乗ってくるんですよ、そいつ!? というか、そうでなくても、毎回閉じていくエレベーターの扉の隙間からこっちに走ってどんどん近づいてくる女の姿が見えるとか、怖すぎてもうそのエレベーター絶対乗れないですって!
なんでこの空魚と鳥子の二人、平然としてんの? 絶対恐怖心とか頭の中ぶっ壊れてるってばww
裏世界の方も、まあ当たり前みたいにデストラップやらどう戦っていいかすらわからない怪異がわんさかといて、普通に人が死にまくります。出入り口が世界中にあるからか、迷い込んでくる人も自分から飛び込んでしまう人もけっこう居るみたいで。
これ、異世界のダンジョンとかだったら、脱出さえすればもう安全なんでしょうけれど、この裏世界の場合、現実に戻れても安心できないというのが冗談じゃねーですよ。

うう、ホラーというほど恐怖を煽る内容じゃないのですけれど、都市伝説もの特有の不気味さというか得体のしれなさ、ヤバいところに手を突っ込んでしまったようなゾワゾワする感覚を味わえてしまう作品でした。

星系出雲の兵站 4 ★★★☆   



【星系出雲の兵站 4】 林 譲治/Rey.Hori   ハヤカワ文庫JA

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ガイナスとの艦隊戦に勝利した独立混成降下猟兵連隊のシャロン紫檀大佐らに届いた未知の信号。それは、五年前に遭難したはずの友軍艦の識別コードだった。発信源の天涯へと再び向かったアンドレア園崎少佐らは、地下都市でガイナスの異様な姿を目撃する。報告を受けたタオ迫水筆頭執政官は急遽危機管理委員会を招集、水神魁吾方面艦隊司令長官は戦友を呼び戻し、総力を結集してガイナスとの決戦に赴く。堂々の第一部完結。

これまで発見されたガイナス兵は、人類の死体から生成されたコピーであり、異星人ガイナスの姿を見たものはまだ誰もいなかった。ガイナス原種とはいかなる生命体なのか。どのように生存し、どのように意思疎通をはかり、どのような行動原理に基づいて動いているのか。
何もかもが未知であり、意思の疎通もはかれない。何を目的にしているのかも定かではないし、何を基準にしているかも知れたものではない。
何もわからないという以上、その対処はどうしたって手探りになってしまう。相手が何を考えているかわからなければ、次の行動も対応も想定すら出来ないのだ。そもそも、人類の思考意志想像力の範疇にあるのかすら定かではない。まあ、おおよそこうじゃないかと物資を確保しようとしていたり、ガイナス兵を増やして拠点を奪取しようとしているなど、ある程度その行動から理解できる目的が推察できるようになってきた以上は、人類の想像の範疇外にある行動原理に基づいている、ということではなさそう、というくらいには分析は進んでいたのだけれど。
それでも、人類相手ではない完全な対異星人戦争は試行錯誤の連続で、何をするにも恐る恐る相手の反応を伺いながら何が正解なのかわからないまま、もしかして自分たちは致命的な勘違いをしているのではないか、という恐れを抱きながら戦争でありながら、まず戦争という舞台をガイナスと共有できるのかという段階で模索を続けていたんですね。
そこでようやく、シャロン大佐の率いる降下猟兵連隊によるガイナスの地下都市への攻勢を通じて、ガイナスとは何者なのかいかなる生命なのか、という詳細が明らかになってくる。
ここはほんと、並の軍人では手に入れることのできない成果でしたよね。ただ敵を倒し敵基地を制圧するのとは根本的に違う、ガイナスの様々な反応を引き出してその正体を暴いていく、しかも味方に無駄な被害を出さずにというハードルを超えながら、ですからね。

これまでガイナスも人類側も相互に常に気をつけていたのが、相手に自分たちの情報を与えないこと。極力、可能な限りその正体に行き当たるだけの情報を残さない、これがために多大な犠牲を出すことも厭わなかったわけである。この偏執的にすら見える慎重さは、結果的に見ると完全に正しかったというほかありません。
シャロン大佐の持ち帰った情報をもとにようやく明らかになっていたガイナスの正体。ガイナス原種となる指揮個体や全く人類とは組成から異なるような異星の生命体は存在せず、その正体はもうまさにこれぞSFというようなもので……。
でも、正体が明らかになった途端にガイナスは未知ではなくなってしまったんですよね。未知でなくなった途端に、あらゆる取っ掛かりからその行動原理、思考パターンが解き明かされ暴き出されていき、あれほど苦戦し霧の中でもがきながら見えない敵に相対するようだった対ガイナス戦争があっという間に人類側の優位へと変わっていく様は、圧巻ですらありました。
こうしてみると、ガイナスの正体ってかなりリスクというかハンデを背負ったものでそれを弱点として捉えれば色々と剥き出しであったんだなあ、と。もっとも、わかったからと言ってそれを突けるかどうかは別問題なのですけれど、こうも一挙に形勢が傾いてしまうのを見るとむしろ人類ヤベえな、という風に見えてしまいます。
いや、ガイナスのあの特性を見ると、むしろガイナスVS人類というよりも個対組織の様相もあったのかもしれません。
組織は組織で色々と問題を抱えている構造物ではあるんですけれど、一連の火伏の暗躍やタオの壱岐の掌握などで、組織として血管が詰まったような滞る部分は概ねパージされましたし、対異星人戦という初めての経験に対処するうちに想定されていた中で思いの外機能しなかった部分とちゃんと機能した部分というのが色々と浮き彫りになってきてるんですね。ダメな部分、どうしようもなく機能不全を起こしている部分というのは出てくるのですけれど、それが見えてきた以上は正され適正化され、どんどん最適化されていっているのも確かな話なのです。
この最適化を妨げるような不具合を、火伏やタオやその奥さんたちの活躍が排除していってたんですね、こうしてみると。
壱岐の方はまだ一番重篤な部分はパージしたものの、旧態然とした体制や考え方は残ったままでだからこそタオさんはまだまだ苦労しそうなのですが、彼とその奥さんの優秀さと現状への危機感を見るとなんとかしてくれそうという信頼感は尽きないのです。
それ以上に、火伏さんの暴れっぷりが目立つのですが。いやもうやりたい放題じゃないですか、この兵站監。部下も奥さんも優秀すぎて、もう自分の出る幕ないよね、みたいな無害そうな顔してますけれど、あんたがそりゃもうべらぼうにやりたい放題兵站整えまくって滞りなく何もかもが流れに流れ、必要なものが必要な場所に適時届くように、それどころか戦場で本来なら足りなかった戦力までどこぞに負債を押し付けるのではなく、どこにも利益を出す形で十全ひねり出すような真似までしてしまって。前線の将兵たち、まったく困らないじゃないですかこれ。
一番上の火伏がそんなだから、兵站部門の部下たちにしても奥さんにしても能力フル回転させて、やりたい放題できるのですよ。
一番印象的だったのが、もう自分いらないよね、みたいなことを口走った火伏に対して後輩にして部下である女性が、あなたが一番上にいるから自分や吉住さんが現場に出れるんですよ! という発言。前回絶賛したプロの中のプロ、吉住さんは元より兵站部門の幹部クラスって誰も彼もがトップ張って全体自由自在に回せそうな逸材ばっかりなんですよね。そういう一番上に君臨してもおかしくない特級の人材を、それぞれ現場に出してフル回転させられるんだから、そりゃ火伏さん戻ってきたら兵站部門そのものが機能底上げですよ。能力大拡張ですよ。
その人が居なきゃ成り立たないという一人に頼った組織というのは、そりゃ脆いも脆いし、誰がなっても同じように成果を出せる平均化した組織のほうが、様々な事態に対しても柔軟に対応できる、というのも事実でしょう。でも、上も下も優秀に越したことはないですし、こうしてみたら火伏さんの存在って、やっぱり英雄みたいなもんでしょこれ。
まあ、彼が抜けても危なげなく回っていた兵站部門を見る限り、組織としても健全極まるんだろうけど……いや、危なげなくとは行かなかったよなあ。作戦失敗を前提に独自に保険かけてやたらと伏せ札用意して、さらに結果出てちゃんとした命令出る前に先回りして動き出していたり、とか危なっかしい事しまくってたよなあ、あれ。火伏の薫陶が効いていたというべきか、重石がなくなっていたというべきなのか。ともあれ、やはりこの人が上に居ることで本当に憂いなく十全フル回転できるって事なんだろうなあ。

さて、ガイナスの先遣部隊を打ち破り、またその正体をある程度分析できたことで当面の危機は去ったわけだけれど、そこにガイナスがやってきた本拠地の情報が舞い込んでくる。
なるほど、第二部に「遠征」というタイトルがついているのはそういうことだったのか。
一部完でそのまま終了なんてことにならず、すぐさま第二部開始しているので安心して続きを読めそう。しかし火伏さんところもタオさんところも、夫婦ラブラブですなあ。特に火伏さんはそれこそが人間味の出処なのですけれど。まあ奥様方もそれぞれ怪物級のヤリ手経済人、経営者、組織人なのですけど。当初、この奥様方の活躍は予定に一切なかった、というかメインに近いキャラどころかモブすらも怪しい立ち位置だった、にも関わらずあれよあれよと作中で出番を獲得し、出世していってしまった、というのはお話づくりの面白いところです。

シリーズ感想

星系出雲の兵站3 ★★★★   



【星系出雲の兵站3】 林 譲治 ハヤカワ文庫JA

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天涯でのガイナス戦大敗の責を負い、閑職に移った火伏礼二少将。艦隊再建が進む出雲では、新たに軍務局の吉住二三四大佐が壱岐方面艦隊の兵站監に着任、独立混成降下猟兵第一連隊のシャロン紫檀大佐とマイザー・マイア少尉は、起死回生の新兵器“原子熱線砲”の開発現場を密かに訪れていた。一方、特設降下猟兵小隊を率いるアンドレア園崎大尉は、因縁の戦場、天涯への威力偵察を指揮することになるが―シリーズ第3弾。

新たに着任した吉住兵站監が痺れるほどに格好いい!! 巷では地味で目立った活躍を見せていないことで無名に近い人なのだけれど、知る人ぞ知る数少ない本物の「プロフェッショナル」なのである。
彼の真骨頂はまさにその地味で目立たないところで、これってすなわち彼の管理下では問題らしい問題が何も起こっていないということなんですね。
大きなトラブルが発生した時、これを颯爽と解決する人はそりゃ目立ちますし喝采も浴びるでしょう。しかし、現実には大きなトラブルが起こってしまった時点でそこには問題が発生してしまっているのです。何らかのミスが有り、構造的問題があり、組織的不具合があり、ヒューマンエラーがあるからこそトラブルが発生してしまう。それを解決するというのは、起こってしまったことに対する対処療法に過ぎないわけで、発生してしまった時点で時間的にも費用的にも計画的にも損失は形状されてしまい、しわ寄せは後ろへと回されてしまう。
もちろん、トラブルが起こったことで問題となる部分が露呈してそれを解決するためのきっかけになる、という良い面もあるのでしょうけれど、それらをトラブルが起こる前に処置し調整しまとめてしまうことこそ最上。そして、万事を万難を排してなんの問題も起こさず順調に計画通りに想定外の出来事が起こらないように対処して実行する、これを特別でもなんでもない当たり前のこととして淡々とこなしていく、これこそが本物のプロフェッショナルなのである。
吉住さんは、あの辛口な火伏をしておそらく最高の賛辞であろうこの「あの人は本物のプロフェッショナルだ」という言葉を捧げられるほどの人物なのだ。
自分では、既に出来上がった道の上を予定通りに計画通りに進めるだけしか出来ない、と卑下……卑下だよね、これ。卑下するばかりな吉住さんですけれど、前回のあの行き当たりばったりで何も考えていない作戦計画に、計画失敗を前提とした兵站計画を上の認可なしに無理やりアクロバットに運用してようやく空挺部隊の救出に成功したような無残なドタバタを散々見せられたところですから、吉住さんの絶対にトラブル起こるに違いない欠陥兵器の運用や、かなりタイトな艦隊運用計画をなんの不備もなく安全性もマージンも確保して十分に余裕をもたせながら無駄らしい無駄もなくあるべき場所欲する場所に必要なものを必要なだけ必要なときに用意してみせる、あの完璧な兵站運用の見事さはもう感動すら覚えるほどの機能美で、シャロンが手放しで絶賛するのも水神司令官が感嘆に言葉を詰まらせるのも当然すぎるほど当然と思えるのです。
それをしかし吉住さんは誇るでもなく、やるべき事をやっただけ、仕事をしただけ、というあくまで当たり前のことを当たり前にしただけで褒められることなどなにもない、という淡々とした態度。
これがプロだよ!!
何気にこれ、吉住さん。以前から火伏が主張している「兵站の失敗が英雄を誕生させる」という言葉の意味するところ。すなわち、兵站が万全ならば戦争に英雄の生まれる余地も必要もない、というのを見事にここで体現してみせてるんですよね。ただ、あまりにもそれが見事すぎて、吉住さん自身が彼の成した真価を知る者たちからすると英雄以外の何者でもないという……。
しかし、これだけの事を成し遂げておきながら、ここからのガイナス戦は現状の火伏が作り上げた兵站計画では対処しきれなくなる、と冷静に看破して、その計画に則ってただ動かすだけの自分ではこれからの状況には対処できなくなるであろうから、早急に開拓者である火伏の復帰を図るべき、と自身の地位には全くこだわることなく、それどころか兵站監補に降格して年下である火伏の下について存分に働きますよ、なんて飄々と言ってしまうわけで。
もう仕事への関わり方のスタンスが、プロフェッショナルすぎる!!
誰がどう言おうとこのシリーズ通じての最高の英雄って絶対にこの吉住さんだろうw

さて、火伏の暗躍によって不合理が徹底的に排されて風通しの良い形での再建が進む艦隊に加えて、タオ迫水の妻であるクーリエに、火伏の奥さんである八重さんという二大怖い奥さんズのタッグによって壱岐の政界財界もまとめて対ガイナス戦への最適化が進んでいく。
いやもう、火伏もタオも軍人として政治家としてかなり後ろ暗い謀略に絡んでいるし、火伏なんか自身への暗殺事件を逆に利用して、ガイナス戦に不利益をもたらすだろう人材を根こそぎ排除する、なんて暗躍をかましてたりするのだけれど、それでも奥さんたちのダーティープレイに比べるとちゃんと表の職業でまっとうな仕事をこなしているだけ、のようにしか見えなくなってくる。奥さんズ二人共中央、辺境の違いはあれどそれぞれの地域の中枢に近い財界を牛耳る家の出であり、幼少の頃から伏魔殿を体験してきただけあって、カタギである旦那さん方と比べると闇がフカすぎるw
それでも、二人とも突き詰めると愛する旦那さんのため、という行動理由であり行動規範なんですよね。縁の下の力持ち、というにはアグレッシブすぎて、影響力も支配力も掛け値なしなんですけど。
シャロンなどを含めて、本作に出てくる強くて優秀な女性たちはともすれば男どもよりも遥かに威風堂々と肩で風を切って進んでいるのだけれど、何気にみんな愛する人とはバカップルか、というくらいに仲良くて順風満帆な家庭模様なんですよね。これだけ優秀すぎる女性たちだと、ともすれば男を必要とせずに独立していて、家族仲なんぞ冷え切っていたりするケースが多いのだけれど、本作だとむしろ優秀で個として強い人間である女たちであるほど、パートナーのことは大事にしているのが面白い。まあ、相方となる男性たちもそれこそ彼女たちと肩を並べられるだけの逸材なんですけど。
能力的にも同等で、対等で、だからこそ彼女たちの個を否定なぞせず尊重して尊敬して前にも後ろにも配さず、並んで立ってくれる。そういう男性たちだからこそ、並び立ち対等であるが故に彼女たちの強さ恐ろしさの際立ちかたが、こうした愛する人を守ること、助けること、へと繋がっているのだろうか、興味深いところである。
ガイナスの正体はいまだ定かではないものの、戦闘というコミュニケーション、偵察を繰り返すことで徐々にその幾重にも被せられた未知という幕が引き剥がされていく。そんな中で届いた、在りえぬ相手からのメッセージ。次こそ、ガイナスの正体に向けて大きく事態が動きそう。

1巻 2巻感想

星系出雲の兵站 2 ★★★★   



【星系出雲の兵站 2】 林 譲治 ハヤカワ文庫JA

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準惑星天涯でガイナスに辛勝した人類。しかしその勝利は、出雲と壱岐の政治・軍事各所に微妙な軋轢を生みだした。コンソーシアム艦隊の作戦行動が政治主導で制限されることを危惧する左近健一大将は、腹心の香椎士郎中将を司令長官とする壱岐方面艦隊を編組。一方、壱岐の軍需工場を巡り、タオ迫水筆頭執政官と火伏礼二兵站監は攻防を繰り広げる。さらに天涯の探査システムが正体不明の小惑星を発見し―シリーズ第2弾。

うわー、泥沼になってきたぞ。一巻では各セクションを手動する面々が皆有能であり、そこで自身の能力を存分に揮える環境と適正を得ていたために、かなり瀬戸際の崖っぷちを綱渡りするはめになりながらも、ガイナスという未知の異星人に対して勝利を掴むことが出来たのですが、勝ってしまったからこそその体制に対して手が加えられてしまうのであります。
勝ってるならその体制のまま現状維持でいいじゃないか、と思う所なんですけどね。一概にそれが正しいとも言えず、状況に合わせて体制も人事も対応させていかなくては現状の推移についていけない、というケースもあるわけなんですが、同時にそれは現場で培われた経験をリセットしてしまうことでもあります。
戦訓などが正確に引き継がれれば、そのリスクは最小限になるのでしょうけれど、生の経験でない引き継ぎというものは、どうしてもオミットされてしまう部分が出てきてしまう。余計な解釈や自分のみたいものだけ見て必要ないと思った部分は切り捨ててしまうこともある。そこから戦訓を残した人の意図とは違う意図が汲み取られてしまうこともある。今回は、まさにその最悪のパターンが出てしまった、というべきなのでしょう。
組織において、上の方にある地位に付く人が無能ということはまずありません。なんらかの能力がなければ、よっぽどの血統主義でなければどこぞで行き詰まってしまう。
なので、香椎司令官にしても軍官僚、参謀本部の幕僚としては極めて優秀だったのはそのキャリアと他者からの評価でも明らかでしょう。彼は幾つも失敗を重ねることになるのですがその中でも致命的に失敗した一つは、その参謀本部でのやり方を現場の艦隊司令官という立場で行ってしまったことにあると思われます。コンソーシアム艦隊司令部の「文化」がどのようなものかは書かれてたかな。トップダウン式か幕僚主導かとか国や時代によって司令部の動かし方というのは異なっていたりするものですけれど、香椎さんは艦隊幹部に意見を出させてそれを調整することで艦隊を主導しようとするのですが、作戦を立案したり方針を導き出す後方の参謀本部ならともかく、司令部或いは司令官が明確な方針を示すことでその達成に向かって作戦内容を詰めていく、或いは判断材料を提示していくという形になるだろう現場の司令部でそのやり方は、確かに拙かろう、なんですよねえ。
何をしたら良いか、何を言ったらいいか題材もないのにわからないもの。
ただ、香椎さんに限らず前の部署のやり方をそのまま次の部署に持ち込み、前の通りにやろうとして噛み合わず、全部機能不全していってしまう、というのはまあよくあることなんじゃないでしょうか。前のところではこれで上手く行ってたのに、なんでこっちでは上手くいかないんだろう、ってそりゃ前のところと今のところでは置かれている状況も環境もシステムも体制も様々なものが違うからに決まってるでしょうに。そこに合わせた適切なカスタマイズがなされなければ、前のやり方なんて機能するはずないじゃないですか。それを、今の所の連中が上手くやれないのが悪いのだ、というふうに考えるようになったら、もう最悪です。たいてい酷いことになります。
成功体験というのは、なにげに人の行動や考え方を縛ってしまうこともあるんですねえ。
香椎さんの場合は、そこまで頑なではなかったと思うのですけれど、状況を打開するための能力がやはりなかったのでしょう。本来敵対派閥であった参謀長と意思統一が図れてしまったために、逆に少数での孤立化に進んでしまい、自分にとって楽な方、都合の良い方へと判断や意見の汲み取りを逃がすようになってしまった。
なんというか、ここまで作戦が始まる前にまずこれ失敗するよね、という状態になってしまうのも珍しいような、それとも逆によくあることなのか。大きな失敗が起こるときって、実はこれくらい顕著な有様になってるものなんでしょうかね。
だからこそ、兵站科の連中が事前にリカバリーに動けていたのでしょうけれど。でもこれも、本来司令部の要因だったバーキンから情報が出されたから香椎さんの第一艦隊司令部の状況が外部にも知れたわけで、第二艦隊や方面艦隊の同じ主計関係の連中でも言われるまでどうなってるか知らなかったのだから、意外と一歩でも離れるとこういうゴタゴタや組織の軋みというのは伝わらないのかもしれない。
一方で火伏の奥さんの八重さんが僅かな公式情報から要人である出張中だった夫の帰宅日時まで詳細に予測してしまえるように、ある種の人間なら見える範囲の情報から凄まじいまでの真実や現状まで汲み取ってしまうわけで、その手のトップクラスのバケモノである火伏兵站監のあの暗躍の仕方はちょっとゾッとするくらいである。香椎さんや左近司令官たち地位にこだわる人種とは、明らかに価値観から異なるロジックで動いてるもんなあ、この人。だから、異なる価値観や文化の人からは何考えてるかわからなくて、そりゃ恐ろしく見えるわ。

ガイナスの側の情報は、さらなる交戦を経てもなかなか明らかにならず、ただその脅威度だけが想定を上回り、いやシャロンレポートからすると想定どおりにか、あがっていくばかり。
いや、ブレンダと八重さんの会談を聞いているとそれ以上に分析は進んでいるのかもしれないけれど。
この敗戦や壱岐での暗殺騒ぎは、一度目の勝利によって生じた組織の淀みの発露ではあったかもしれませんが、逆に火伏の暗躍やタオ氏の決断によってこれで膿が出せたとも考えられるわけで、シャロンの再登板もありそうですし、これでもう一度人類側のターンに戻ってくるのか。
しかし、シャロンにしてもバーキンにしても獅子奮迅する女性エリートたち、格好いいんだけれど一方で恋愛的にはポンコツなのがなかなか可愛いです。意外と男連中、うまいことこの女性たち捕まえるんだから大したもんだし、なかなかの趣味だと感心もさせられるのでありましたw

1巻感想

星系出雲の兵站 1 ★★★★   



【星系出雲の兵站 1】 林 譲治 ハヤカワ文庫JA

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Kindle B☆W

人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企図する。壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する―新ミリタリーSFシリーズ開幕。
異星人そう来たかー! 徹底して異星人側が人類サイドに情報を漏らさないように立ち回っている段階から、幾つかのパターン想定はしていたんですよね。
舞台となる五星系文明が地球からの播種船(厳密には移民船とは異なっている)によって植民され、故郷である地球はもはや伝説の彼方にあり、時間的にも数千年隔たっていることからも、ね。最初に発見された人類外の制作物であるだろう無人衛星の構造や材質が、人類が解析でき理解できる範疇であった、というのも大きな要素の一つでしたし。

「英雄の誕生は、兵站の失敗に過ぎない」

このキャッチコピーやそもそもタイトルからして【星系出雲の兵站】である。異星人との宇宙間戦争巨編という本格ミリタリーSFでありながら、そのアプローチは「兵站(Logistics)」というあたりが、林譲治先生の面目躍如というべきか。
そもそも兵站とはなんぞや、というところから大方の人は戸惑ってしまうでしょうし、その定義づけにしても実のところ統一された見解というのは定まっていないんじゃないだろうか。どこまでを兵站の範疇に含めるのか。単純に輸送供給の問題じゃないんですよね。ことは生産体制の確立といったところまで及んでしまう。作中におけるコンソーシアム艦隊による壱岐星系への内政介入もまた、権力争いという俗な話ではなく、徹底した兵站の確保にあるんですよね。異星人……ここではガイナスと名付けられた未知の人類外存在の浸透侵攻に対抗するための確固として万全たる体制の確保のためには、統制された兵站計画が必要になり、そのためには壱岐政府の政体制と協議を進めながらそれを整えていくのは非合理ですらある。のだけれど、それを艦隊側で軍事的圧力でどうこうしたら政治的混乱がとてつもないことになって、結局生産体制の方はむちゃくちゃになるし、そもそも五星系間での政経のことを考えるとただただ合理的な計画で物事を進めるわけにはいかないし、壱岐政府側からすると異星人ガイナスもコンソーシアム艦隊も混乱をもたらす侵略者という意味ではイコールになってしまう。壱岐政府側も超有能なタオ執政官という逸材の辣腕によって、政治的アドバンテージを離さない。
幸いにして、有能な政治家や軍官僚の駆け引きや交渉はただの足の引っ張り合いの泥沼な状況を引き起こすものではなく、お互いに必要なもの、最低限譲れないものを尊重した上で共有できる価値観や欲するべき成果、結果、目的をすり合わせていって妥協点や落とし所を見事に作り上げていくものなんですよね。
艦隊側の鍵を握ることになる兵站監の火伏にしても、タオ迫水にしても非常にロジカルで私欲のない人物なので、事実上政治的には敵対している一方でしっかり意思の疎通、目的の共有みたいなものは出来ているので、その意味では安心できる。
いきなり壱岐の大規模な生産工場に降下猟兵投入して制圧した際はどうなることかと思ったけれど、それすらもお互いの能力の確認と意図の探り合い、妥協点やお互いに掴んでいる情報のすり合わせのキーポイントになっているわけで、この一事だけ見ても兵站の確立という直接的な面への成果のみならず、今後の壱岐の政体の行方を決定するターニングポイントにもなってるんですよね。
単に生産工場を乗っ取ったのではなく、非合理な運営で生産能力を50%も発揮できていない工場の能力を、体制の改善で生産力を確保するように展開してるあたりが、この作者さんらしいというべきか。
ガイナスとの直接戦闘、そしてその正体が明らかになってく降下猟兵による強襲威力偵察の戦闘シーンも面白かったのだけれど、白眉たるのはやはりキャッチコピーである「英雄の誕生は兵站の失敗に過ぎない」この言葉を、その意味とともに痛烈に語る火伏兵站監のシーンでしょう。
この人、決して英雄そのものを否定してるわけでもないんですよね。一連の戦闘で活躍した降下猟兵の隊長や隊員の能力や判断、決断、冷静な戦闘後の分析、その特筆すべき資質を絶賛すらしている。
だからこそ、彼らを英雄にしてしまったことへの回り回って訪れるであろうしっぺ返しの予測が、耳に痛いんですよね。それをちゃんと聞く水神司令官とは、確かにいいコンビでありお互い認める通りの親友なんだと思いますよ、これ。
相変わらずの、ちょっとクスッとなるような登場人物同士のやり取りが良いエッセンスにもなっているんじゃないでしょうか。精鋭たる降下猟兵たちの締めるところは締めつつ、どこかとぼけたところのある掛け合いも好きでした。シャロン中隊長、マッチョな女隊長ってだけじゃない可愛らしいところあって、いいですよね。ってか、マイア兵曹長、それはラムだけじゃなくてこっちも聞きたいです。で、どうだったんだ?

とかまあ、ほんわかしたところで、火伏と水神とのあの暗澹たる会話があり、トドメにラストのあれである。そう来たかー、と最後の最後に強烈なのを喰らいましたよ。ガイナスの姿が実際に描写されたことで思考の方向が一定方向に固定されたところでもあっただけに、尚更に。
まだことは始まったばかり。二巻がどう転がっていくのか、楽しみにならざるを得ない引きでありました。久々に、林先生としてはSFでの大作になりそうで、ほんと楽しみです。

林譲治作品感想

演奏しない軽音部と4枚のCD 4   

演奏しない軽音部と4枚のCD (ハヤカワ文庫 JA タ 13-1)

【演奏しない軽音部と4枚のCD】 高木敦史 ハヤカワ文庫JA

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高校一年の秋、楡未來は亡き叔母が“4枚同時再生が必要な”CDを遺した意味を探るため、軽音部の部室を訪れた。そこで待っていたのは、演奏しない「聴く専門」部員・塔山雪文。挙動不審で怖がりだけど、音楽にはものすごく詳しい塔山の力をかりて、未來は叔母の真意を追う。架空言語で歌う曲を題材に書かれた小説の盗作騒動、壊されたギターと早朝の騒音との関係など、学校で起こる事件を音楽の知識で解き明かす全4篇。
むむむむ……誰だよ、この人にメイド様なんたらという訳わからん全然筆に合ってないのを書かせたの。これ読むと、この人が【“菜々子さん”】シリーズだけの人じゃなかったのがよく分かる。全然、話の艶が違うもの。少なくとも、あのメイド様みたいな作品が全く方向性として合っていなかったのは、これ読んだら一目瞭然ですわ。どうしてハヤカワ文庫まで流れてくることになったのかはわかりませんけれど、こっちの方向でどんどん出してくれるなら大歓迎ですよ。
というわけで、本作は日常の中で起こった些細な事件や謎を、演奏しない「聴く専門」部員・塔山雪文と文芸部の「読む専門」の楡未来が、洋楽の楽曲に絡めて紐解いていく日常ミステリーである。探偵役の塔山くんだけれど、この手の探偵役が才気迸る、と言わずとも往々にして尖った性格をしている人物が多いのに比べると、……なんというか、アホっぽい(笑
肝心の謎解きシーンを見ていても、あんまりキレ者っぽさを感じさせないんですよね。確かに、細かいところまで気がついてるし、幾つかの材料から真実を組み立てていく頭脳の回転力は大したものなんだけれど、導き出した「答え」のカードの切り方が、いわゆる「探偵」のそれとはちょっと外れていて、凡俗じみてるんですね。ぶっちゃけ、演出に長けているわけでも、構成力に長けているわけでも、幕引きまで上手く考慮しているわけでもない。ごくごく普通の高校生の男の子の感性で「答え」のカードを切ってくるわけです。それが、すごく等身大感が出ていて、大仰さがなくていいんですよね。これぞ日常ミステリー、というべきか。塔山くん自身、成績も中の下くらいの、友達とバカやってるのが普通のヘタレで大人げない男子高校生、って感じの子ですしねえ。
まあそれ以上に、ヒロインの未来がアホの子の方向に個性が強いのが、色々と引き立ててる気がします。お嬢さん、その粗忽さでクールビューティーを名乗るのは少々無理があるというものだぜw
第一話を読んだときは、彼女が秘めていた未来の夢の形に、なかなか意識の高いお嬢さんなんだなあ、と感心していたのですが、第二話で彼女が見せた、というか露呈してしまったあまりの「おっちょこちょい」なありさまに、思わずオイオイと爆笑してしまいましたがな。その性格で、一話で話してくれたみたいな、なりたいものになってしまったら、むしろ大変な事になってしまうんじゃないだろうか。世間様に多大な迷惑が掛かりそうなんですけれど。
逆境にもメゲないし、根性あるし、情の厚い良いお嬢さんなんですが、如何せんブレーキがついていないというか、制限速度なにそれ? と、暴走前提みたいな性格と相まって、ブレーキ役が欲しいヒロインなんですけれど、塔山くんだと抵抗してもそのまま引きずられていくことしばしばなので、ストッパーとしては役立たなさそうだしなあ(苦笑
でも、彼女はとても優しくて、その優しさは強い優しさです。「無限大の幻覚」で彼女が選んだ選択は、自分が傷つくにも関わらず、塔山くんが後で傷ついたら嫌だから、とあの選択が出来るというのは、結構とてつもない事だと思うんですよね。いやいや、おっちょこちょいの粗忽者ですけれど、大した女性ですよ、フューチャー。
うん、なんだかんだとモテるのもわかるわぁ。むしろ、これは塔山くんの方が離しちゃいけない縁でしょうなあ。
ちなみに、洋楽については浅学もいいところなので、各話で取り上げられる曲はさっぱり知らず。でも、曲がわからなくても十分面白かったので問題なし。知ってたら、さらに楽しめたのかもしれませんけれど。
できれば、ちょこっとでもシリーズ化してくれたら嬉しいなあ、と思える一作でした。もうしばらく、この未来と塔山くんの軽妙なコンビは眺めていたい楽しい二人でした。

高木敦史作品感想

トッカン 特別国税徴収官4   

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

【トッカン 特別国税徴収官】 高殿円 ハヤカワ文庫JA

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面白くってためになるお仕事小説決定版、待望の文庫化!カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に特別国税徴収官付きの新米徴収官が体当たり!
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者――徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまう鈴宮深樹(通称ぐー子)は、冷血無比なトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も滞納者の取り立てに奔走中。 納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまでS(差し押さえ)したり、貧しい工場に取り立てに行ってすげなく追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、銀座の高級クラブのママと闘ったり。 税金を払いたくても払えない者、払えるのに払わない者……鬼上司・鏡の下、ぐー子は、人間の生活と欲望に直結した、“税金”について学んでいく。
仕事人たちに明日への希望の火を灯す、今一番熱い税務署エンターテインメント第1弾!
ぐわぁ、主人公のぐー子、ずたぼろじゃないか。ここまでギッタンギッタンに切り捨てられる主人公は滅多と居ないですよ。
人間、一番心にダメージ食らうのって、自分の弱さや未熟さを突きつけられた時、じゃなくて自分が不満に思ってた事が全部自業自得だった、とか自分がどれだけ薄っぺらくて中身を伴わない人間だったかを突きつけられた時なのかもしれない。自分がどれだけ恥知らずだったかを思い知らされた時かもしれない。言い訳、きかないもんなあ。自分がむちゃくちゃ嫌な奴だった、と理解してしまった時に生まれる自己嫌悪、立ち直れないですよ。
人間、自分の短所や欠点、嫌な部分をわかっているつもりで、結構本当に分かってない事が多いんですよね。他人から見ると、どうしてコイツわかんないんだろう、と思うようなところでも案外気がついていなかったりする。
人間、言われなきゃわからないんですよ、これ。ところが、そういう根本的な人格に根ざす問題を面と向かって指摘するような事はまずありません。そりゃそうです、そんなの人間関係破綻しますよ、人格否定ですもん。そんなもの、よっぽどの時しか起こらないし、そういうケースではどちらも冷静さに欠けて何を言われようが胸襟を開いて受け入れるなんて出来るもんじゃない。そうじゃなくても、自覚のない欠点はどれだけ指摘されようと、なかなか受け入れられないものです。
そう、人間、言われなきゃわからないようなことは、言われたって分かんないんですよ。たとえ、わかってしまったとしても、なかなか受け入れられるもんじゃない。これまでの生き方、在り方を根本から否定して、変える事の出来る人は、やっぱり滅多と居ないと思うんですよね。
だから、ズタボロになりながら、でも言い訳せずに目を塞がずに、容赦なく自分を切り刻む全否定の言葉を、ああそうだったのか、とガッツンガッツン避けずに全部喰らったぐー子は、偉いんですよ。どれほど傍からすると嫌な子だったとしても、偉い子なんですよ。鏡さんの見立ては、これまた見事に本質を貫いてたんだなあ。
そんでもって、言いたいことを言えなくてグッと詰まってしまうくせのある彼女ですけれど、言わなきゃいけない言葉は決して手放してないんですよね。工場の夫婦に対しても、クラブのママに対しても、そして鏡さんに対しても、自分の誤った対応を無かったことにせず、一線の向こう側に行ってしまいそうだったのを、なりふり構わずしがみついて、言わなければならなかった事を詰まらず全部吐き出すことが出来ているのです、この娘は。恥ずかしかったでしょう、情けなかったでしょう、それでも必死にリカバリーしようとして、それを果たしている。そうして、自分の仕事にキチンと向き直ろうとしている。
それは、尊敬に値する姿でした。どれほどみっともなくて不細工であったとしても。

企業やでっかい脱税を追求するマルサなどの花型と違って、一般市民や自営業を相手にする事の多い税金を徴収する側の人間、というなかなか見ることの出来ない景色の中で務めている人たちの人間ドラマは、生活の間近に根ざした物語でもあり、ぐー子の血を吐くような心の叫びがガンガンと突き刺さり、税金というものを介して彼女と関わることになる人達の人生を目の当たりにする、迫真と切実を以って胸を突く話でありました。

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの4   

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの】 籘真千歳/竹岡美穂 ハヤカワ文庫JA

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人間に奉仕するために造られた人工妖精。その一体の揚羽は、東京自治区の閣僚を殺戮し続けている人工妖精“麝香”の影を追っていた。その頃、揚羽の双子の妹である真白は、自治区総督の椛閣下が暗殺されたことを知る。自治区最大の危機を前に、揚羽と真白はそれぞれ、己の今後の人生を左右する選択を迫られる。守るべき者のために、己の全てを犠牲にする覚悟をした揚羽の運命は…揚羽をめぐるシリーズ4作のフィナーレ。
しばらく、時系列が錯綜している上に揚羽さんが複数人存在していらっしゃったので、大変混乱した。まあ、気づかなかった二巻での真白=揚羽は、今回は違いがよくわかったので致命的な事にはなりませんでしたけれど。ってか、揚羽と真白の違いはこうして並んで書かれると顕著に出てきますよね。思っていた以上に、真白が精神的に未熟だったように思います。それ以上に、揚羽が姉として非常に出来た人物だった、ってことなんでしょうけれど、椛閣下がこの愚妹にブチ切れてしまったのもさもありなんと納得してしまう。その生まれを考えても仕方ないとはいえ、あまりにも未成熟でメンタルが幼いもんなあ。それに、未熟であるという以上に拙いというかスペックが足りないというか、そもそも考えが足りない、というか揚羽を知っている身からするともどかしいし、その程度で揚羽を名乗り、アクアノートを襲名するなんておこがましい、と椛閣下が怒り心頭するのも完全同意なんですよね。揚羽も、結局この娘に身の丈以上のものを背負わせてしまったわけで、罪作りだわ。さらには挙句に、自分が就くはずだった立場に、真白を登らせてしまったわけですしね。椛閣下を除けば、やっぱり揚羽が一番総督の座にふさわしかったと思うんですよね。彼女の自己評価の低さの原因については今回、じっくり語られていますけれど、重ね重ね残念に思う所。
だいたい、揚羽さんは全部背負いすぎなんですよ。ただでさえ、男性側自治区を追放されることになった件だって彼女が全部負っ被った結果だったのに、更にこの上今回これですよ。この娘の献身には、身を切り刻まれるような切なさを感じてしまう。なんでもっと幸せになろうとしないんだろう。本当に細やかな幸福で、この娘は満足しちゃうんだから。せめて、何も期待していないような生き様だったならまだしも、陽平とのデートであれだけ心からの笑顔を浮かべていたのを見せられると、身につまされるなんてものじゃありません。ついに、陽平の旦那が亡き妻の事を棚に閉まって、今抱いている感情を剥き出しにして揚羽のことを掴もうとしてくれたのに。その手を、そっと包み込みぬくもりを刻んでから、握ることなくふわりと遠ざけるように行ってしまった別れ方は、あんまりにも切なすぎて寂しすぎて、ほんとに哀しかった。
鏡子さんが、このバカ姉妹をあれだけいつも怒鳴りつけ、慈しんだのもよく分かる。この娘たちは、本当に馬鹿だったんだから。でも、繋ぎ止められなかったんだよなあ。水淵のお父さんといい、こんなにも色々な人たちから愛されながら、この娘たちはその愛に報いて愛し返すやり方が不器用極まりなく、幾多の人を救いながら多くの人に痛みや苦悩や後悔を刻み込んでいってしまった。そのことに、多少なりとも憤りを感じずには居られない。
水淵先生が語っていたけれど、人類は他の知的生命にその存在を肯定し祝福してほしい、という根源的欲求を持っている、というお話。これは、他のSFでも度々見かける主題であり、すごく共感できる感覚なんですよね。人間という種の存在を知ってほしい、認めてほしい、肯定してほしい、いつまでも覚えていてほしい。いくつかの作品で、このテーマに沿った展開を目の当たりにしてすごく感激したこともありますし、本作でも揚羽という人工妖精という枠組みから外れた本当の意味での人と異なる知的生命体が、人をこれほど愛してくれたことに、水淵先生が抱いた感慨と感動は、とても胸に染み入るものであり、この方が感じた思いに共感できる。
でもね、その肯定は一方通行であって欲しくないんですよ。果たして水渕先生がどこまでもどかしさを感じていたかはわかりませんし、鏡子さんをはじめとする揚羽を知る人達がどれほど唇を噛み締めていたか、わかりませんけれど。揚羽が人を愛し肯定し祝福してくれるように、人と人工妖精の側もまた、揚羽を愛し肯定し祝福したかったはずなのです。もっとちゃんと晴れ晴れと、よくやったねと褒めてあげたかった。それを、きちんと受け取ってくれないことへの、もどかしさ、悔しさは如何ばかりだったか。貴女がたとえどれだけ満ち足りて幸せだったとしても、それに納得できるかは別である。また、納得できたからって悲しくないなんてことはないのです。でも、でも、みんなそんな揚羽の選択を、否定しないで肯定してあげてるんだろうなあ。
陽平も、鏡子さんも、椛閣下もそれぞれに悔しさを胸に秘めたまま、諦めることなく藻掻いて暴れて歩き続けていらっしゃいますが、その姿には敬意を払うと同時にやはり、胸に詰まるものがあるなあ、と思うのです。
真白さん、あーた呪詛ってる暇ないですよ、だから愚妹呼ばわりされるというのに、ほんとにこの娘は……この愚かしさこそが、愛おしむべきところなんだろうなあ。またぞろ、仕出かしそうで怖いのですけれど。

一応、シリーズはこれにてひとまずの完結。でも、場合によってはまた別の形でこの娘たちの行く末を見ることの出来る機会もありそうなので、そのあたりはぜひ期待したいところです。

それにして、まさかの「雪柳」の再登場と、鏡子さん相手の無双には思いっきり吹きました。あの鏡子さんが手も足も出ないとか、どんだけなんだ。なんか、彼女が出てる場面だけ雰囲気がぜんぜん違うあたり、このぶっ飛んだ風気質は、作者のお気に入りだったのかなあ、と思わざるを得ません。勿論、読者たる私も大のお気に入りで御座いましたよw
揚羽が総督で、雪柳が側近になってしまった東京自治区、という五稜郭の悪夢再び、な世紀末も見てみたかったなあ。世界、いい意味で破滅しそうですけどw

シリーズ感想

know 4   

know (ハヤカワ文庫JA)

【know】 野崎まど ハヤカワ文庫JA

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超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった―
世界が変わる4日間……凄い、「すべてを知る」というのはそういう事だったのか。道終・知ルが「すべてを知る」ことによって起こった世界の変容。その意味がわかった時の、体の芯から湧き上がってきた寒気のような、興奮のような、ともかくゾワゾワっと噴き出してくる震えに、しばし呆然。正直言って、ここに現出した世界というのは、もう今まで想像したことのない世界だった。いや、出来なかった、というべきなのか。そんな概念を、発想として抱く余地がなかった。だけれど、知ってしまった。知らないことを、知らない価値観を、知らない概念を、知ってしまった。
凄い、そして怖い。歓喜であり、恐怖である。価値観そのものが揺さぶられる。人間が想像し得る事は実現可能である、なんて風な言葉があるけれど、ならばこんな世界もあり得るのか?
エピローグで、不治の病を患った子供の母親がまくし立てている内容の意味を理解した時の、あの衝撃はしばらく忘れられないだろう。死後の世界、という概念があり、またイザナギ・イザナミの神話を知っていれば、生死をまたぐことは、イメージするにさほど難事ではない。だけれど、ここに現出した世界は、そういう黄泉がえりとかとは全然違うんですよね。そうか、死とはこんな形でも克服できるんだ。

道終・知ルは「すべてを知る」ことを欲するに躊躇いがない。彼女は運命でも宿命でも使命感でもなく、その原動力はひたすらに好奇心であり知識欲だ。よく、全知を得ること、過去から未来まですべてを知ってしまう事で絶望を抱く展開がある。だけれど、「知る」ということは、もっとこう、食べたり飲んだり、性欲を抱いたりすることと同じものなんですよね。根源的欲求であり、たとえこれから起こることを何から何まで知ってしまったとして……そこで欲は尽きるのか? 欲は枯れ果ててしまうのか? 知ってしまった事を退屈だと思うのか? 知った時点で、それ以上知ることに関心をなくしてしまう程度のことなのか? 常々、心の何処かで疑問に思っていたことである。人は、いくらでもひたすらに知り続けたいと願い続ける生命である。その一番純真な部分を、この道終・知ルは体現しているのではないだろうか。そのピュアさが、何故か可愛らしくてたまらない。知る事に終わりはない、知ることに果てはない。それはきっと、宇宙よりも広いもので、どこまでも歩いていけるものである。その終わりのない広さに絶望を抱くか、それとも心をときめかせ目を輝かせるか、その違いこそが境界なのだろう。ここに出てくる人物は、特異である知ルを含め、連レルも常イチも、知ることにひたすら貪欲であり、子供のように目を輝かせて、知る事に邁進している。その結果、生まれた世界の見たことのないあり様に感動し、興奮したのは、それが人間の無垢で無邪気な焦がれによって生まれた世界だったからなのだろう。
そう、きっとこれが人類の、ネバーランドだ。

野崎まど作品感想

富士見ファンタジア文庫他、表紙  


東京レイヴンズは、焦らしてくれますよね。あんな場面で第一部完となってる状態で、外伝だもんなあ。でも、この日常のワンシーンを切り取ったような絵は凄い好きです。鈴鹿のだるだるな姿とか。背筋ちゃんとしなさい!
棺姫のチャイカは、此処に来て紅白連合か! ちょっと予期せぬ人の退場があっただけに、誰が脱落するかわからない危機感があるので、同盟結んでも悲劇が拡大するだけじゃないかとちょっと心配。
神さまのいない日曜日、アニメはじまってますけどちゃんとアリス・カラーもOPに出てるんですよね。出てくるにしても終盤のはずなんだが。
鳩子さん、ちょっと丸顔になってませんか>

東京レイヴンズEX1 party in nest】 あざの耕平(富士見ファンタジア文庫) Amazon
棺姫のチャイカ 7】 榊一郎(富士見ファンタジア文庫) Amazon
神さまのいない日曜日 8】 入江君人(富士見ファンタジア文庫) Amazon
 【冴えない彼女の育てかた 4】 丸戸史明(富士見ファンタジア文庫) Amazon
 【鳩子さんとラブコメ 4】 鈴木大輔(富士見ファンタジア文庫) Amazon
 【アリアンロッド2E・リプレイ・ヴァイス 3.全力少女と純白の絆】 久保田悠羅/F.E.A.R(富士見ドラゴンブック) Amazon



スワロウテイル、続編キましたかー。あらすじ、短いですけれど過去編じゃないっぽいのですが、ここで書かれている揚羽が、いったいどの揚羽の事なのかが疑問であり不安であり。
もう一作は、奇才野まどの初の本格SF、となれば期待せざるをえんでしょう?

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの】 籐真千歳(ハヤカワ文庫JA) Amazon
 【KNOW】 野まど(ハヤカワ文庫JA) Amazon




……ちょっ、部活アンソロジー、これの表紙ラクロス部じゃないですか!! 最初、別に何も思わなかったのですが、作家のラインナップに佐々原史緒さんの名前があることに気がついて、愕然!! 驚愕!! 絶句!!
ラクロス部の話あるの? 新作じゃなきゃ、ファミ通文庫でラクロス部なんて一つしか知らないんですが。ま、まさか級長なのか!? た、たた確かめないと、これは確かめないと、うばばばばw


夜姫と亡国の六姫士 1】 舞阪洸(ファミ通文庫) Amazon
 【ヴァンパイア・サマータイム】 石川博品(ファミ通文庫) Amazon
 【部活アンソロジー 1.「青」】 更伊俊介 ほか(ファミ通文庫) Amazon

星界の戦旗 5.宿命の調べ  

星界の戦旗V: 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA)

【星界の戦旗 5.宿命の調べ】 森岡浩之/赤井孝美 ハヤカワ文庫JA

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〈アーヴによる人類帝国〉が〈ハニア連邦〉を併合するはずの雪晶作戦が発動したが、逆に〈ハニア連邦〉は帝都への進撃を開始していた。作戦に加わった、ラフィールの弟ドゥヒールが乗り組む戦列艦も予定外の交戦状態にあった。一方、勅命にて帝宮に呼び出されたラフィールには、皇帝ラマージュから、新たな艦と任務が与えられる。苛烈な戦闘は、アーヴに大きなうねりをもたらすことになる。〈戦旗〉シリーズ・第一部完結!
え? なに? 8年ぶり? 9年ぶり? 十年には満たないものの、およそそれに比肩するだけの期間をあけての新刊である。なんとまあ、もう待つことも忘れていたほどのお久しぶり。ラフィールと呼ぶがよい! は青春の昔日を彩るセリフの一つだ。なんて懐かしい思いに駆られながら、ページを開き読み始めて……はてと首を傾げてしまった。さすがにこれだけ年月があくと、前巻を読み返していないだけに内容もだいぶうろ覚えだ。それでも、たしかアーヴの帝国は圧倒的優勢に戦争を進めており、三ヵ国連合との戦いもまもなく勝利で終わりそうな勢いで進んでいたはずだったんだが……あれ? なんか、いつの間にか物凄い勢いで末期戦の様相を呈しているんだが。しかも、アーヴが負けて。あれ? 一巻読み飛ばした? 読んだよ? 確か、4巻ちゃんと読んだよ?

えええええーーーっ!?
ええええええーーっ!?

しばらく読み進めながらも何が起こっているのか把握できず、近衛艦隊がエライことになった段階でようやく事態の深刻さに気づいて泡を吹く事に。
ちょっ、なんでいきなりそんな負けてんのさ!? 幾ら陛下が悪手を指してしまったからって、ここまで一気に戦線が瓦解するってどういうことなの!? どういうことなの!?
ちょっ、ラマージュ陛下、なにしてまんねん!? えええええーーーっ!?
将棋やチェスじゃなくて、オセロでも見てるみたいな戦況のひっくり返りように、呆気にとられてしまって、壮絶な防衛戦や、死を前提とした帝都攻防戦という皇族なんかが次々と戦死していくという凄絶極まる戦いも、なんかオロオロと事態を認識できないまま終わってしまった感がある。
ちょっ、ちょっと待って、ほんとにちょっと待って。状況を把握する余裕をくれないから、本気でわけわかんないまま行き着くところまで行っちゃったじゃないですか。
だ、だいたいアーヴの人たちも宿命遺伝子がはっちゃけてるからか知らないですけれど、もうちょっと悲壮感とか絶望感とか慌てふためいてもくれず嬉々として死地に飛び込んでいくものですから、マジで事態の深刻さにギリギリまで気づかなかったんですよ。いきなり帝都まで襲撃食らったのは仕方ないとして、そこまで致命的な事態だったとは思わないじゃないですか。ちょっと避難すればイイ話じゃなかったんですかい。
もう狼狽えるばかりだったので、相変わらずのスポール閣下がまさに相変わらずのスポールだったことに何故か精神的な清涼を得てしまいましたがな。あんたはそのまんまで居てください。
さり気なくゴースロス艦長レクシュ、ラフィールの母親の姪っ子、つまりラフィールの従姉妹が新キャラとして加わったりしてたんだけれど、それどころじゃなかったなあ。ジントの話を聞いていると、こいつ今まで相当楽してたんだな、というのがわかって、緊急出動に必死に山積みされていく仕事をこなす姿に今のうちに苦労はしとけよ、とか思ってたらラフィールにこいつ怠け癖ついてんじゃないだろうな、とか胡乱な目で見られてて苦笑してしまったり。逆にラフィール自身は、ジントからこの娘精神的に成長したなあ、と我が子の成長に目を細める父親みたいな味方をされてて、やっぱり苦笑してしまったり、と。やはりこの二人を見ているのは何だかんだと楽しいです。しかし、ジントがラフィールの想い人ってこれまで言及されてましたっけ。作中で明言されていて結構驚いたのですが、本人たちにその認識があるとは思わなかった。
第一部完結となるシーンには、またまた仰天させられる。ラフィールって確か帝位継承権レースでは殆ど問題にならない位置に居たはずだったのに、今回の大敗戦とそれに伴う凄まじいまでの皇族の人的損失によって、まさかの立太子に。さらに、艦長から一気に提督!? ジントはどうすんのよ!? いきなり一緒にスポールんところの苦労人の人みたいに参謀長になる、ってなこと出来るんだろうか。数が少なくなってしまった貴族とはいえ、ラフィールみたいに三階級特進、というのも難しいでしょうし……それとも、アリなんだろうか。
ここで離れ離れ、というのもまた締まり悪い話ですし、このコンビを解消してしまうと魅力も減じてしまうからなあ、なんとかして欲しいところでありますが。それ以前に、せめてもう少し短いサイクルで続きだしてほしいですね。

スワロウテイル序章/人工処女受胎4   

スワロウテイル序章/人工処女受胎 (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル序章/人工処女受胎】 籘真千歳/竹岡美穂 ハヤカワ文庫JA

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男女別の自治区で性別の違う人間と共に暮らす人工妖精たち。その一体である揚羽は、全寮制の看護学園で同室の連理や義妹の雪柳らと学園生活を謳歌していた。人間に害をなす人工妖精を密かに殺処分する“青色機関”の一員という裏の顔を持つ揚羽は、学園内の連続事件に死んだはずの科学者・不言志津江の陰謀を見出す。それは揚羽の人生に今後降りかかる過酷な運命の予兆でもあった。人気シリーズの前日譚たる連作中篇集。
既に二巻出ているスワロウテイルシリーズの第三弾にして、序章の文字の通りに前二作の時系列的には前に当たる前日譚。なんと、揚羽がまだ学生時代の頃のお話である。揚羽、学生だった頃があったんか!! って、そう言えばそんな事を言及してましたし、真白も看護師になっていましたっけ。ただ、あの揚羽が学生だった。それも、由緒正しき【乙女はお姉さまに恋してる】の聖應女学院みたいなお嬢様学園に通っていたというのは、なんとも不思議な感覚。そもそも、人口妖精が学校に通っている、というイメージがまだ固着していなかったようだ。この人工島においては人口妖精はほぼ人と同じ扱いを受けている、という事実は認識していても、生み出されてから自立するまでにこんな風に学校で教育されている、なんて風に頭が行かなかったので、実際に人口妖精たちが普通の年頃の女の子たちのように活き活きと青春時代を送っている姿は、なんとも感慨深い。
そうか、あの揚羽にもこんな青春時代があったのか……はっちゃけてたんだなあw
この頃から青色機関の末梢抗体として活動しながらも、普通の学生として学業試験に追われ、後輩に振り回され、将来は看護師として働こうとしていたのか、この娘は。色々と外れていたとは言え、こんなお嬢様学校に通っていた娘さんが、一巻ではゴミゴミとした裏路地みたいな界隈であんなうらぶれた刑事のおっさんの相棒みたいな、生活圏に半歩踏み込んで奥さんの真似事をしてみたり、なんてしてたんだなあ、と思うと妙な背徳感がこうゾクゾクっと、ねえ(笑

しかし、これまでの二冊と比べてもこの短篇集はライトノベル寄りなんじゃないだろうか。表紙だけではなく、本巻には竹岡美穂さんの挿絵がところどころに入っていて、揚羽や周りの妖精たちの御姿が拝めます。こうして挿絵で見ると揚羽って完全に美人系なんですよね。これまでの表紙から受けていたイメージからちょっと違っていたのですけれど、むしろしっくり来ましたね。あの苦労性の性格は幼いカワイイ系よりも美人系の方がよく似合うw
逆に、そういう美人系だからこそ、あの黒猫の衣装が最高です! 最高です! 雪柳、あんた最高だよ!! もうあの猫耳尻尾姿をイラスト化するために、挿絵があったといって過言ナシ。
また、あのアクアノートとして活動するときの口上がやたらめったら格好良いんですよ。あの決め台詞は、中二病なハートを絶妙に擽ってくれます。
生体型自律機械の民間自浄駆逐免疫機構(Bio-figures self-Rating of unlimited automatic civil-Expelleres)――青色機関はあなたを悪性変異と断定し、人類、人工妖精間の相互不和はこれを防ぐため、今より切除を開始します。執刀は末梢抗体(アクアノート)襲名、詩藤之峨東晒井ヶ揚羽。お気構えは待てません。目下、お看取りを致しますゆえ、自ずから然らすば結びて果てられよ!
この口上が放たれるシチュエーションがまたしびれる場面なのです。特に、第三話における【蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス】におけるラストシーンは、なまじその辺のバトル系のライトノベルでもなかなか拝めないレベルの「決闘」でした。
しかし、この口上、実に良い感じに見栄が切られて尖っているのですけれど、こういうタイプって殆ど巷では見たことないなあ。あんまり流行るタイプじゃないんだろうか。めがっさ格好良いのに、格好良いのに(笑
このタイプで記憶にあるのと言ったら、あれですよ、秋山瑞人さん。【鉄コミュニケーション】や【猫の地球儀】での前口上。SF的な未来機構と古色蒼然とした漢の字と話法のコラボレーションが実にソソるスタイルなのですけれど、使い手らしい使い手にはとんとお目にかかった事がなかっただけに、此処での揚羽にはキましたねえ。
前二巻までもそういう口上やシチュエーションはあったのですが、どちらかというと全体の大きな流れの中での一場面といった感じのシーンでの事だったので、そこまで印象に残らなかったのです。それに比べて、この短編連作集では、各話に事件の犯人がいて、揚羽がその正体を暴いてラストに対峙するというパターンを採っているので、決め台詞がきっちりクライマックスシーンの盛り上がりに懸かってくるので余計に引き立ったのでしょうね。

そんな青色機関としての働きとはまた別に、学生として過ごす学園生活もまた、これって学園コメディだったっけ!? と思うほどに日常シーンでのドタバタがはっちゃけていて楽しいのなんの。主に、その原因は揚羽の後輩にして「妹」である風気質の(マカライト)の雪柳の暴走に寄るのですけれど……いやもうホントに面白いのなんの。この揚羽の通う学校、まんま【マリア様がみてる】や【乙女はお姉さまに恋してる】みたいな、先輩と後輩で姉妹の絆を結ぶエルダー制を採用している上に、おとボクばりのエルダー選挙まである始末。そこで、なんと落ちこぼれの四等級予定の揚羽が、雪柳の暴走で候補にあがってしまい……という展開もあり、このあたりの雪柳関連のスチャラカネタにはもう笑った笑った。なんか、「ごきげんよう」が合言葉のお嬢様学校はどこへいった、と言わんばかりの60年代の学園紛争みたいな大騒ぎになってるし。
「よくぞ集まってくれた諸君! 君たちは一人ひとりが五稜郭全学生徒から選び抜かれた最強・最精鋭の一兵卒であると同時に、五稜郭の運命を背負った誇り高き勇士だ!」
「「「おおー!!」」」
「敵はこの学園に創立当初から巣くい、生徒(たみくさ)を飢えしめ苦しめながら既得権益の甘い蜜を貪り肥え太り続ける悪鬼亡者の壁蝨・虱蠅、他ならぬ鬼畜生徒会である! 奴らは間もなく思い知るだろう! 我らの軍靴が連中の血に濡れた放埒腐敗の生徒会室を踏み荒らし、子々孫々に至るまで我ら憂学志士の勝利の行進曲に恐怖し怯えることになるのだと!」
「「「おおー!!」」」
「ここで我らが盟主たる、詩藤之揚羽様より激励のお言葉を賜る! 総員踵を揃え刮目して静聴せよ! ……さ、お姉様(エルダー)、マイクをどうぞ」
「……ああ、えっと、コホン。皆さんまだ遅くはありません。一刻も早くこんな馬鹿な真似はやめて元の教室にお戻――」
「総員火の玉となりて玉砕突撃を敢行せよとのお心強いお言葉であった!」
「「「おおー!!」」」
「これより我々は二十四時間の臨戦態勢に入る! 襲撃に備えよ! 立ち塞がる者はたとえ上級生といえども一人残らず駆逐せよ! 我らの進軍を妨げるあらゆる障害はそのすべてが敵か雑草である! 区別なく公平に焼き払え! 学園全土を二度と緑湛えぬ焦土と化せ!」
「「「おおー!!」」」
「では、盟主・揚羽様よりの作戦号令に耳を傾けよ! ……ささ、お姉様(エルダー)、どうぞ」
「……えぇっと、その……い、『いのちをだいじに』」
「作戦名は『ガンガンいこうぜ』に決した!」
「「「おおー!!」」」
「怯むな! 臆するな! 後ろを振り向くな! 正義は我らにあり! 弾丸(チラシ)を手に取れ! 拡声器の撃鉄(でんげん)を上げよ! 戦旗(プラカード)を翻せ! 五稜郭の興廃はこの一戦にあり! 諸君勇者たちの凱歌を学園中に轟かせよ! 総員戦闘開始! これにて本日の決起集会は解散とし、順次作戦行動へ移行する! 各個に突撃せよ! 突貫!」
「「「おおー! 突貫!」」」
「……ゆ、雪柳、あの、あのですね、ちょっと私とあなたたちとの間に横たわる、目に見えない絶望的な溝を埋めるための大事なお話があるのですが……」
揚羽が何度も何度も繰り返し力説することになる風気質の人工妖精のぶっ飛んだ性格を聞いていると、どうやっても風気質って性格が破綻した享楽主義者で社会不適合者に思えてくるのだけれど、外の社会に出た風気質は、ちゃんとやってけてるんだろうか。これまでは、どちらかというと繊細で心か弱く優しい水気質の人工妖精に、より焦点が当てられて語られる事が多かっただけに、この風気質の娘さんたちの面白ければ何でもあり、という性質は傍から見てると楽しすぎです。そばにいると、揚羽みたいにひどい目に合いそうですが。
「まかせて。文句のつけようがないくらい完璧に、五稜郭史上最高の土下座を決めてくる」
のちに、自治区総督にして唯一の一等級人工妖精である椛子閣下に次ぐ、二番目の一等級候補であり、椛子閣下の後継者として指名されるはずだった人工妖精の残した名台詞である。
うん、まあ頑張れ。超頑張れw

とまあ、電撃文庫に戻ってきても全然イイんじゃないかというノリだった本作ですけれど、最終編における自我と意識の境界などにまつわる論談の長さと掘り下げを見ると、やっぱり本作は純然たるSF寄りの作品なんですよね。ここまでしっかりと思想や概念について語り尽くせるのは、ハヤカワ文庫ならではでしょうしね。ほかだと絶対に削らされるパートでしょう。此処こそが肝であるにも関わらず。と言うことは、やはりこの作者さんはこのハヤカワ文庫で書いているのが一番いいんだろうなあ。
個人的には、二巻目よりもこの短編連作形式の三巻の方がストーリーラインがブレずにしっかりと組まれていた印象がありますし、純粋に面白かった気がします。わりと、短く区切って一つ一つのポイントを積み重ねていって大きなデザインに仕上げていくほうが、一気にでっかいキャンバスに一枚絵を描くよりも合っているのかな、この人は。まだ、そう判断してしまえるほど作品も出ていませんから、なんとも言えないのですけれど……うん、だからつまりはもっとどんどんたくさん読みたいです、はい♪

追記:結局、鏡子さんというものぐさは、椛子についても揚羽についても、筆舌しがたいほど親バカなのね。ホント、面倒くさい人だなあw

1巻 2巻感想

スワロウテイル/幼形成熟の終わり3   

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル/幼形成熟の終わり】 籐真千歳/竹岡美穂 ハヤカワ文庫JA

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関東湾の自治区に男女別で隔離されている人間たちは、人工妖精と共に暮らしていた。その一体の揚羽は亡くなった後輩が葬式で動く死体になってしまった事件の謎を追う。一方、自警団の曽田陽平は人工妖精の顔剥ぎ事件の痕跡を捜査していた。どちらも当初は単発的な事件だと思われたが、突如自治区を襲ったテロをきっかけに、これらの異変が自治区の深い闇のほんの一端であることを二人は思い知る…。話題の人気作第二弾。
ああ、なるほどそういう事だったのか。お陰でようやく、冒頭から抱いていた違和感を解消できた。何しろ、読み始めから、「あれ? これって続編じゃなかったっけ?」「スピンオフ? それとも前日譚? なんか前作とところどころ辻褄が合ってないような。キャラが違っているような」と、クエスチョンの嵐でしたから。それでも、違和感を感じるところが限定的だったり、読み進めると確かに本作は前作の【人工少女販売処】の続きであり時系列的にもその次である事を示す内容が確認できて、とりあえず違和感に首を傾げながらも疑問を保留して読み進めることにしたのだけれど……その可能性は頭の中にはなかったなあ。考えてみれば、凄くシンプルだったんですよね。ある一点さえ入れ替えてしまえばスッキリと全部が当てはまったのに、その一点を疑いもしなかったためにずっと首を傾げるはめになってしまった。でも、陽平も悪いんですよ。肝心のあんたが気づいてないんだから、こっちだって疑うわけにもいかないじゃない。このおっさんが、年甲斐もなく浮つきやがって。中学生か、初な中学生かこの。オマエみたいなおっさんが、そんな少年めいたときめきを覚えてるなんて、そりゃ揚羽だって思わんがな。思うはずがないんだから、そんなヤサグレて不貞腐れるんじゃありませんよ、まったく見っともない。
まあでも、「揚羽」ならそんな陽平の不貞腐れっぷりに気づかない、という事もなかったんだろうなあ、と思うとやっぱり結構大きな異なりが隔てているようにも思える。なんか、前作の彼女を美化して見ているかもしれないが。何しろ、読んだのが1年以上前だからして。あの彼女はもうちょっと世慣れていた、というか世間を斜めから見ていた上で、それでもなお人を愛してくれていた、という複雑ながらも奥深く真っ直ぐな熱情があったような気がします。その点、今作の彼女は何かしら初々しく、献身的でありながらも見つめている方向性が以前とはどこか違っていて、愛憎の濃さが薄影っていたように思えたのでした。
端的に言うと、ちょっとキャラ的に幼くなったかな、と。
その原因について、私はあの事件を経た事によってある種の精神的な純度が増した、というか色々と鬱積したものが逆に吹っ切れたのかな、なんて風に考えたりもしてたんですが、よくよく考えてみればこの変化って、成熟とは真反対とは言わずとも似て非なるものだったんですよね。もうちょっと疑ってみるべきだった。

ともあれ、前作で私は揚羽は絶対に幸せになるべきだと思っていたので、途中の展開はかなりショックを受けてへこんでましたし、ラストのワンシーンには心底安堵させられました。まったく、陽平くんはあれだね。もっと献身的に揚羽に尽くすべきだよね。再婚したっていいじゃない。

とまれ、肝心のストーリーですが、どうも全体に散漫としていた気がします。大山鳴動して鼠一匹、じゃないですけれど、国際規模のスケールの大きい政治勢力のぶつかり合いかと思われた展開が、幾つもの流れが1つに修練していくに連れて、逆にスケールダウンしていってしまったのはちと残念。なんか、一気に個人個人の心の置所の問題へと移っていっちゃった気がする。SF作品として前作は大枠に、人類の進む方向性と、人工妖精というパートナーが向けてくる人類への比類ない愛情、という種そのものの行く末に纏わるような大きなスケール感が揚羽という担い手によって表現されていたような印象を今も抱いているのですけれど、今度の揚羽は視点が極々小さな範囲で果たすべき役割に傾倒していたせいか、そのサイズに収まってしまっていた、という感じ。
大きな歴史の流れの上において、本来なら個人の果たす役割など誤差の範囲に過ぎないというAIの、一種のレゾンデートルにもつながる思想の上で、それを覆しかねない存在として定義された、という意味では、彼女個人の果たす役割というのはどれほど意志も言動も動機も個人的なものだったとしても、本来ならそれすべてが大いなる未来に繋がっているはずなんですけどね。

色々とモヤモヤとした部分が残ってしまっているので、それを解消スべくぜひまた続きを出してほしいなあ。ってか椛子のターンをもっともっとw 前半あれだけ煽りに煽っておきながら後半殆ど出番なしってどういうことよw いっそ、彼女を主役にもう一本、と思わないでもないくらい。しかし、鏡子さんてばそこまで娘を愛してたのか。まさかこの人が、椛子のピンチにあれだけ躍起になるとは思わなかった。顔合わせたら、傍で聞いてるだけで余波で精神的に死んでしまいそうなほど、凄まじい罵倒の応酬を繰り広げそうな母娘だっただけに、意外も意外な鏡子さんだった。でも、根本的にひとでなしだよな、この人も。

人工少女販売処 感想

南極点のピアピア動画4   

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

【南極点のピアピア動画】 野尻抱介/KEI ハヤカワ文庫JA

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「ニコニコ動画」と「初音ミク」と宇宙開発の清く正しい未来を描く星雲賞受賞の傑作。
日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え、恋人の奈美までが彼のもとを去った。
省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。
しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による“宇宙男プロジェクト”が開始される……
ネットと宇宙開発の未来を描く4篇収録の連作集
ヤバい、これはヤバい。

wktkが止まらない!!

もう読んでる間じゅうにテンションが右肩上がりでラストまで行ってしまいました。うわあああ!! 
実はこの連作の表題となる【南極点のピアピア動画】って、2008年のSFマガジン掲載なんですよね。およそ四年前ですよ。この手の技術方面に基づくお話って、四年五年の近似でも時代の変転進化を感じる場面があって、技術ってのは日進月歩なんだなあ、と実感する。同時に連作の根幹をなしているピアピア動画こと現実の「ニコニコ動画」がこの四年でどれだけコンテンツとして進化したのか、それに関わる人達の没入具合を改めて眺めてみると、妙に「来る」ものがあるんですよね。これもひとつの感動か。

でもこれって、正しく野尻抱介さんの傑作【ふわふわの泉】を継承する作品だよなあ。基本的に野尻さんが作品に託しているソウルの形って一緒だと想うんだけれど、その中でも【ふわふわの泉】はダイレクトにここにつながっているように思える。
その【ふわふわの泉】における技術インパクトの方向性を導き、さらに連鎖的に起爆するための誘導線として、人類と宇宙を身近な距離に繋いでいくために必要な、人と人との繋がりを生み出す、或いは同じ方向を見るための媒体という観点で、ピアピア動画であり、ボーカロイド小隅レイが在ったのか。
この辺りの「面白いから!」という思いを原動力にして、楽しいという気持ちを炉にくべて、それをみんなで煽って煽って考えられない勢いで突っ走り出す、そうした「文化」が実際に「ニコニコ技術部」にて存在する。才能の無駄遣い、なんてタグを喜んでうって邁進するこれらに関わる人達の楽しげな様子って、傍から見ているだけで閉塞感をふっ飛ばすような愉快さがあり、素直にスゴイスゴイとはしゃいでしまう光がある。そして何より、損得抜きにして、どんどんやっちゃおう、みんなでやっちゃおう、という空気が盛り上がる瞬間が確かに存在するんですよね。そこで生まれ、集まるパワーってのは、時に通常では考えられない想像を絶するものがあるのです。それを一番身近で見聞きし、時に主導すらしていたのが尻Pことこの野尻抱介という人であり、その実感をそのまま近しい感覚のままロケットよろしく宇宙に打ち上げてしまったような作品こそ、この【南極点のピアピア動画】だったのかもしれません。

日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生の蓮見省一。だがクロムウェル・サドラー彗星が月に衝突し、計画は無期延期となってしまった。以来彼は愚痴っぽくなってしまい、しまいには同棲していた恋人の奈美にまで逃げられてしまう。彼女への愛を歌った曲をVOCALOID“小隅レイ”に歌わせた動画をピアピア動画にうpする省一。

ある日省一は親友であり、ピアピア技術部員の川瀬郁夫らのいるピアピア工場を訪れる。そこにあったのはいくつかの工作機械と小隅レイを模した“R・小隅レイ”というロボット。彼らはここでブートストラップの実験をしているという。簡単な工作機械がより複雑な工作機械を造り出し、工場自体が自身を拡張する。そして最終的には工場自体が自己増殖するという壮大な計画であった。

やがて、彗星の衝突により月から放出されたガスや塵が3ヶ月後の地球に降着円盤と双極ジェットを形成する事が判明する。このジェットを利用すれば弾道飛行のみで奈美を宇宙まで連れて行く事が出来る。ピアピア工場ならば宇宙船くらい作る事が可能かもしれない。省一が郁夫に相談すると、郁夫は既にXプライズがジェットを利用した有人宇宙飛行プロジェクトを募集している事を告げる。かくしてピアピア技術部が総力を結集して省一と奈美を宇宙に送り出すための“宇宙男プロジェクト”は開始された! (ニコニコ大百科「南極点のピアピア動画」あらすじより)


表題の、個人で宇宙まで到達するお話にはじまり、ファミマの入店チャイムネタに纏わる出会いから始まる「コンビニエンスなピアピア動画」、鯨を追いかけるために自衛隊まで動員して潜水艦を仕立てる「歌う潜水艦とピアピア動画」,そして、ついに本物のボーカロイドと出会うはめになってしまった人類がやってしまった楽しく面白くがコンセプトのファーストコンタクト「星間文明とピアピア動画」。
どれも読んでいて、ワクワクテカテカが止まらないお話でした。宇宙に飛び出していくような気宇壮大なお話なのに、むしろそこに行くまでの様々な要素は身近でふと周りを見渡せばどこにでも転がっていそうなもので、それは巨大な人類の未来を担うようなプロジェクトになっていたとしても、手の届かない遠くて関係ない違う世界のものになってしまうのではなく、小隅レイというネタを通じてまとまり、特定の天才ではない巷の無名の人たちが我先に手を伸ばし一緒に自由に楽しく、未来を形にしていく姿は、どこか傍らに寄り添った未来への飛翔なんですよね。ただ見上げるのではなく、傍らに羽ばたきを感じる未来。これほど、胸が熱くなるものはありませんよ。

野尻さんは、ホントに寡作なんだけれど、出せば絶対にこんな風にワクワクさせてくれるのだから、色々な意味でたまらんなあ。
ラストシーンは、こみ上げてくる感動に思わず目尻に熱いものが。あいやー、素晴らしき哉素晴らしき哉。

さて読み終わったことですし、土屋つかささんが紹介している関連動画を見に行くか。

「南極点のピアピア動画」読了後に見て欲しい動画を紹介します  (土屋つかさの今か無しか

スワロウテイル 人工少女販売処3   

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)

【スワロウテイル 人工少女販売処】 藤真千歳 ハヤカワ文庫JA

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男女別に生活する人間達に奉仕する人工妖精の、愛と苦悩を描いたヒューマノイド共生SF
〈種のアポトーシス〉の蔓延により、関東湾の男女別自治区に隔離された感染者は、人を模して造られた人工妖精(フィギュア)と生活している。その一体である揚羽(あげは)は、死んだ人工妖精の心を読む力を使い、自警団(イエロー)の曽田陽介と共に連続殺人犯"傘持ち(アンブレラ)"を追っていた。被害者の全員が子宮を持つ男性という不可解な事件は、自治区の存亡を左右する謀略へと進展し、その渦中で揚羽は身に余る決断を迫られる――苛烈なるヒューマノイド共生SF
かつて電撃文庫から異色のSF【θ(シータ) 11番ホームの妖精】でデビューした藤真千歳さん。それからしばらく音沙汰なくどうしたのかと思っていたら、二作目が出てきたのがなんと国内SFの総本山ハヤカワ文庫からでした。これは、本格的にSF路線で行くんですね。
情報の開示の仕方やその演出などにやや拙い面が見られて、上手く話として整頓されていないきらいがあるものの、自分の書きたいものを詰め込んだ、という意味ではやりたい事はやれてる感じだ。果たして、伝えたい事を伝えきれたという事については満足出来ていないかもしれないけれど。
SFって究極のところ、世界をどう愛するのか、世界にどう愛されるのか、という話なんじゃないかな、なんてことをふと思った。サイエンス・フィクションというからには、描かれる内容というものは科学的見地に基づいた空想を下地にするフィクションな訳だけれど、不思議と気合入ったSFほど、そこで描かれるのって人類という種そのものの事であり、すなわち人類に対する愛情だったりするんですよね。
この【スワロウテイル】も、例外にあらず。
人類によって造られた人工妖精たち。人に奉仕し、人を慰め、人とともに寄り添い生きるために造られた心と魂を持つ人形たち。彼女ら彼らは、あたりまえのように人間に対して愛情を抱き、人に尽くし、健気に献身的に人の為に在ろうとするのですが、それは「そう造られた」から、機能としてそう振舞っている……そういう訳ではないのです。人間たちが試行錯誤して創造した人工妖精の四属性からなる心のカタチは、決して偽物などではなく、切ないまでに人に近しく、人よりも純粋なのでした。それが切実に描かれたのが、二部の元から未来を持たなかったはずの妖精と少年との物語であり、人の手で創りだされながら何一つ持たずに生まれてきた揚羽という「落ちこぼれ」の妖精の人間らしさであったのでしょう。
人は愛されるに足る存在なのか。種といての斜陽を迎え、滅びの道を歩んでいる人類を、妖精たちはそれでも愛してくれる。造られた、しかし本物の心のそこから、好きだといって寄り添ってくれている。人類が自分たちに抱いている絶望に、卑下に、この子たちは首を横に振ってくれる。貴方たちは、自分で思っているよりもずっと優しい生き物だと。そう言ってくれるのだ。
人間たちは、果たして彼女らのそんな献身的なまでの思いを、信じてあげられていたのだろうか。妖精たちに縋りながらも、この子たちを作ったのが自分たちである以上、罪悪感ややり切れなさにどこかで打ちのめされていたのかもしれない。人を愛するように作られたから、愛してくれているのだと。その疑念は、この子たちにあるはずの心の存在そのものへの疑念となってしまう事にまた後ろめたさを感じながら。
だから、揚羽の存在は、何も持たず何も出来ない妖精として生まれたが故に、何の制約も持たず思うがまま自由になんでも出来る、無限の可能性を秘めた無地の存在、まるで人間のような揚羽の存在は、新たな乱数を持つ存在という意味以上に、人類の未来にとって救いとなる鍵のように思えるのです。
揚羽は、人に対しても制約を持ちません。妖精が生来持つはずの原則を有さず、人類を否定的に考えることに対して機能が妨害することもなく、やろうと思えば人を殺すことすら出来る。
実際彼女は人類の在り方に疑問をいだき、その不器用さに不満を抱き、時に憎悪し怒り恨むという感情を滾らせながら、しかしその上で人を愛してやまないのです。誰に強制されたわけでもなく、まっさらな心に芽生え育まれてきたものは、人間への圧倒的な好意でした。なおかつ、人とのふれあいの中で彼女はこんなふうに思ってくれるのです。
「生まれてきて良かった」と。
人が作り出したものが、心からそんな風に思ってくれる。これほど、掛け替えのない救いはないんじゃないでしょうか。
彼女が人を肯定してくれている限り、人は自分たちを否定せずに済むように思えるのです。

揚羽自身、決して報われるような幸せな人生を歩んでいるわけではありません。理不尽にさらされ、何事もままならず、自分の使命と決め込んでいたものを見失い、幾度も途方にくれてしまいます。それでも、ささやかな幸せを至上のように堪能し、僅かな救いに心を慰め、愛する人達に愛されている事を喜び、宝物のように抱え込むのです。そのひたむきで健気な姿には、この子にはもっと報われて欲しいという願いが募るばかりでありました。揚羽当人は飲み込んで気にしまいとしているようですけれど、多くの人に認めてもらえた事実に歓喜し満ち足りているようですけれど、けれど彼女にはもっと幸せになって欲しかったなあ。ささやかな夢が一刻だけ叶う、んじゃなくて、それが恒常の幸せになるように。
もし続編があるのなら、そういう平凡で俗っぽい幸せにまどろむ彼女の姿があることを願うばかりです。
 
10月22日

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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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10月18日

(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(裏少年サンデーコミックス)
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10月16日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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10月15日

(ハルタコミックス)
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(KCデラックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス月刊マガジン)
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(コロナコミックス)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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10月14日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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10月12日

(まんがタイムKRコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
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(ガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックス)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(アース・スターコミックス)
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(メテオCOMICS)
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(メテオCOMICS)
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10月9日

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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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10月8日

(カドカワBOOKS)
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(電撃文庫)
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(ニュータイプ100%コミックス)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ヴァルキリーコミックス)
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(ヴァルキリーコミックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(アルファライト文庫)
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(アルファライト文庫)
Amazon

10月7日

(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(ガンガンコミックスUP!)
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10月6日

(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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10月5日

(フロース コミック)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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10月4日

(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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(ジャンプコミックス)
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10月1日

(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(角川スニーカー文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(HJ文庫)
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(角川ビーンズ文庫)
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(角川ビーンズ文庫)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(Kラノベブックス)
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(講談社ラノベ文庫)
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(PASH!ブックス)
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(PASH!ブックス)
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(B’s-LOG COMICS)
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(B’s-LOG COMICS)
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(B’s-LOG COMICS)
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(B’s-LOG COMICS)
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(HJコミックス)
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(PASH!コミックス)
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(FUZコミックス)
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(FUZコミックス)
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9月30日

(バンブーコミックス)
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(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(ヒーロー文庫)
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(モンスター文庫)
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(ファミ通文庫)
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(エンターブレイン)
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(ZERO-SUMコミックス)
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(ZERO-SUMコミックス)
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(ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
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(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
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(楽園コミックス)
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(楽園コミックス)
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9月28日

(ヤングアニマルコミックス)
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9月27日

(まんがタイムKRコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(まんがタイムKRコミックス)
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(電撃コミックスEX)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(バンブーコミックス)
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(バンブーコミックス)
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9月25日

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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルスf)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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9月24日

(バーズコミックス)
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(ライドコミックス)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(メディアワークス文庫)
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(メディアワークス文庫)
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(メディアワークス文庫)
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(メディアワークス文庫)
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(GCノベルズ)
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9月22日

(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(モーニングKC)
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(アフタヌーンKC)
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