【パワー・アントワネット】 西山暁之亮/ 伊藤未生 GA文庫

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「言ったでしょう、パンが無いなら己を鍛えなさいと!」
パリの革命広場に王妃の咆哮が響く。
宮殿を追われ、処刑台に送られたマリー・アントワネットは革命の陶酔に浸る国民に怒りを爆発させた。自分が愛すべき民はもういない。
バキバキのバルクを誇る筋肉(フランス)へと変貌したマリーは、処刑台を破壊し、奪ったギロチンを振るって革命軍に立ち向かう!
「私はフランス。たった一人のフランス」
これは再生の物語。筋肉は壊してからこそ作り直すもの。
その身一つでフランス革命を逆転させる、最強の王妃の物語がいま始まる――!!
大人気WEB小説が早くも書籍化!

16世陛下、処刑されちゃってるんですけど!?
力こそパワー、筋肉こそフランス。おー、筋肉万歳(ヴィヴ・ラ・フランス)。
そう、究極にまで鍛え上げられた筋肉には美が宿る。
王族として民の声に殉じてギロチン台の露と消えるつもりだったマリー・アントワネットは、己の子供たちをも虐げ貶めようとする民衆の声に憤激し、ついに立ち上がる。
その太首を切り落とすはずだったギロチンブレードを逆に武器として握りしめ、いきり立つ革命の歌声にそのバルク(筋肉量)のみで立ち向かう。
目指すは王政復古。なぜならば我が筋肉こそがフランス、我こそがただ一人のフランスだから。

うん、ある意味一発ネタですね。ヨーロッパ各国の宮廷はどんな虎の穴揃いなんだこれ? 王家とはあれか? 連綿と武を伝える筋肉戦士の血族なのか? ロイヤル・ファミリー=コナン・ザ・グレートなのか? ハプスブルク家とか、そんな武門の家系とは程遠いはずなのに完全に世紀末覇王の家系じゃないですかー。
まー、わりと最初から最後まで同じノリの連続ではあるんですよね。最初のインパクトで最後まで押し通すパターンの作品であるので、さすがに慣れてくると言いますか。
それに、ラスボスの革命軍が完全にヤラレ役のゲス野郎というのも、いささか盛り上がりに欠けたかもしれません。
最高潮は、同じ宮廷武闘の体現者であるデュ・バリー夫人との頂上対決。
あれこそは、女として至高の地位に立とうというデュ・バリー夫人の気高き闘争心に対して、マリー・アントワネットという女性が何を心に戦い、筋肉をバキバキにしているかを突き詰める戦いでもありました。
彼女が死を拒絶し立ち上がった理由、我が子テレーズとシャルルを守るという母親としての決意。そして愛する我が子に国を引き継がせるため、愛するフランスという国を守り導くためという王妃としての矜持。女を貫く女と国母となった女とのプライド決戦。あれこそ誇りをもってお互いを高め合った至高の戦いであり舞踏であり、マッスルファイトでありました。
それに比べて共和制の共和筋肉は、筋肉に対するスタンスが曖昧で、単に筋肉と名乗ってるだけの肉なんですよね。肉になにも宿っていない。意思も魂もなにも宿っていない。
高潔なる筋肉義務(ノブレス・オブリージュ)がどこにもない。中途半端で貧相なものでしかなかった。あれでは少々、役者として足りない。
民衆の掌返しも、あんな程度の説得で転向するんだったら市民、ただのアホじゃんw 
というわけで、クライマックスはちとお粗末だったかな。スタートダッシュの勢いがラストまで持たなかった、とも言えるのかもしれませんが。おー、シャンゼリゼ(ゴリ押し)。
ローズ・ベルタンやシュヴァリエ・デオン、フェルセン伯爵、デュ・バリー夫人など革命当時の著名人が色んな意味で活躍してたのは、まあ歴史モノの醍醐味でありますなあ。
しかし、処刑人サンソンがこの場合ヒロイン枠なのか? 実際デオンよりもまっとうに男の娘してましたし。
出色だったのがイラストで、カラーはちょっと濃ゆくて自分的には「おおうっ」ってなったのですが、挿絵の方はマリーの女性としてのスタイルと鍛え上げられた筋肉のラインの調和がなかなかに美しくて思わず唸ってしまいました。
デュ・バリー夫人との決闘舞踏のシーンは二人揃ってるシーンで見てみたかったなあ。というか、デュ・バリー夫人のイラストなかったし。
ともあれ本作、このひたすら筋肉なノリが面白ければ、楽しめるのではないかと。