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ヒーロー文庫

異世界食堂 6 ★★★☆   



【異世界食堂 6】 犬塚 惇平/エナミ カツミ  ヒーロー文庫

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オムニバス形式のエピソード集としてお届けする待望の第6巻。
時に森の中に、時に海岸に、時に廃墟に……その扉は現れる。
猫の絵が描かれた樫の木の扉は、「こちらの世界」と「あちらの世界」をつないでいる。
扉を開けて中へ入ると、そこは不思議な料理屋。
「洋食のねこや」。
「こちらの世界」では、どこにでもありそうだけど意外となくて、生活圏に一軒欲しい小粋な洋食屋として、創業五十年、オフィス街で働く人々の胃袋を満たし続けてきた。
グルメの井之頭某が孤独にメンチカツを頬張っていそうな、高級すぎず安っぽくもなくイイあんばいの店内は、昼時ともなるとサラリーマンで溢れかえる。
「あちらの世界」では、「異世界の料理が食べられる店」として、三十年ほど前から、王族が、魔術師が、エルフが、究極の味を求めて訪れるようになった。
週に一度だけ現れる扉を開けてやってくるお客が求めるのは、垂涎の一品と、心の平穏。
美味いだけではないその料理には、人々を虜にしてしまう、不思議な魔力が宿っている。
誰が呼んだか「異世界食堂」。
チリンチリン――。
今日もまた、土曜日に扉の鈴が鳴る。
オムニバス形式なんで一気に読まず、休憩時間なんかでぼっつらぼっつらと読んでたからか気づかなかったんだけれど。
この6巻、クロ出てないのか!?
カラー口絵には居ましたよね? それなのに、本編の方では存在消されてしまっているのがなんともはや。元々ウェブ版の方ではお客さんとしてちらっと登場しただけのクロが書籍版でウェイトレスになったのは、アニメでアレッタの同僚として女給さんとしてレギュラーに加わったのに合わせて、書籍版でもクロが3巻から加わったわけですが。
ウェブ版の更新は最近では滅多となくなってしまい、作者さん多忙からか執筆から遠ざかっているようなのですけど、今回アニメの二期の開始に合わせて新刊となったのですけれど、加筆修正ほとんど出来なかったんでしょうね。ウェブ版をそのまま持ってきたがために、クロの存在が消えてしまったということなのでしょうか。
アニメに合わせて新刊を出す、というのはまあ当然の事なんでしょうけれど、こうしてみるといささかやっつけ感があるなあ。
とはいえ、この巻ではついに「ねこや」の後継者候補が登場するんですよね。店主の姪にあたる女子大生の山方早希さん。料理人志望で修行中の身なのですが、暦婆ちゃんの推薦を受けてこのねこやのバイトに現れるのであります。
実質、このねこやの創始者にして管理人でもあるヨミこと暦婆ちゃん公認なので、お婆ちゃんとしては将来的に彼女に店を継いでほしいなあ、という想いはあるんでしょうねえ。現在の店主は、もう結構いい年になりますけれど独身のままで、このままだとねこやは店主に何かあったらそのまま閉店になることは避けられませんものねえ。
店長、昔の恋を大事にしていてもう恋愛する気なさそうだしなあ。
アレッタが早希にコンプレックス感じちゃうのはちょっと意外でしたね。そういうネガティブな感情を抱えちゃうタイプではないと思っていたのですけれど。いやでも、劣等感感じるのは仕方ないよなあ。早希は料理人志望でもあるから、料理についても詳しいどころじゃなく店主を追いかける形でその精髄を学んでいるわけですし。
それでも、そんなネガティブな感情を維持し続けられないのはアレッタのいいところ。早希も、あっさりとアレッタがご飯食べて幸せそうにしているのが一番かわいい、と早々に見抜くあたり、ねこや店主の後継者としての才は十分ありそう。

今回はねこやという中継点にして特異点、という世界中のあらゆる人種、種族が同じ場所にいる、という特異性が与える影響についてよく書かれていたような気がします。
普通に暮らしていたら絶対に知ることがないだろう遠い異国の地の風俗や文化を直接目にすることが出来る。それどころか、人間じゃない魔物なんかの性質や意外な知性、独特の文化なんかも知る機会になるんですよね。
未知こそが恐れを呼び、不信を招き、偏見を産んでしまう。そういう意味では、このねこやのお客たちって、この店での交流や見知ることでそういう未知によって生まれるねじ曲がった知識や感情を解消できる人材に知らずなっていっているわけだ。そんな人達が、この店から世界中に隈無く散っていく。知っているということは理解できるということ。そんな理解できる人たちが影響を及ぼして既知を広げていく、知見を束ねていくことによって、起こる必要のない争いが避けられたり、積極的な交流が育まれたり、それが国同士の平和に繋がることもアレば、個々人の不幸を回避する要因にもなったりする。
あのハンバーガートリオの少年冒険者たちだって、ねこやを知らなければ世間に根強く残る偏見を持ったままラミアの少女と出会った時、そのままただの魔物として討伐してしまう顛末もあり得たでしょう。
でも、彼らはねこやで穏やかに理知的にご飯食べてるラミアたちを見知っていることで、巡り合ったラミアの少女が危険な魔物なんかじゃなく当たり前に話が通じるただの女の子だとわかっていて、だから仲良くなって一緒に旅する仲間になる、なんて幸福な顛末をたどることが出来たわけだ。
そんな大げさな話でなくても、生で魚を食べる文化を自ら挑戦することで知り得たり、アレッタの真面目で誠実な働きっぷりから、魔族への偏見を薄らげたり。何気に国の要人や大商人、宗教関係者も多く出入りしている店だけに、アレッタを通じての魔族への忌避感の減少は世界中に少なくない影響を及ぼしそうなんですよねえ。
ともあれ、今回はそんな横のつながりというか、文化交流、未知の駆逐というささやかながら大きい変化が端々に感じられる話が多くあったような気がします。

それにしても、フルーツグラタンって存在自体知らんかった。そんな食べ物があったのか。
いやでも、想像してみると美味しそうだなあ、これ。




薬屋のひとりごと 9 ★★★★   



【薬屋のひとりごと 9】 日向 夏/しのとうこ ヒーロー文庫

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壬氏の一世一代の行動の結果、とんでもない秘密を共有することとなってしまった猫猫。
折しも後宮は年末年始の休暇に入る時期。実家に帰りたくない姚は、猫猫の家に泊まりたいと言い出した。とはいえお嬢様を花街に連れていくわけにもいかず、姚と燕燕は紹介された羅半の家に泊まることになる。
一方、口外できない怪我を負った壬氏のために、猫猫は秘密裏に壬氏のもとに通わなくてはならなかった。
できる範囲で治療を施していくが、
医官付き官女という曖昧な立場に悩まされる。壬氏が今後さらに怪我を負わないとも限らないが、医官にはなれない猫猫は医術を学ぶことはできない。
そこで、羅門に医術の教えを乞おうと決めるのだが――。

そう言えば、前回って結構なとんでもない引きで終わったんだった。自らに焼印を押す、という自傷行為によって自分を後継者にという陛下の思惑を引き剥がし、ついでにこの秘密を守るために同席していた猫猫しか治療出来ないようにした……ついでというか、こっちが本命?
つまるところ、猫猫を逃げられないように囲い込んだわけですが。
猫猫からすると、自分は薬師であって医師ではないし医術をちゃんと学んでいるわけじゃないのだから、いきなり自分一人で壬氏の火傷の治療を、とか言われても応急処置しか出来んがな! と、わりと真っ当なお冠状態なのである。それに、火傷に限らず今度壬氏の病気や怪我などを自分が見ないといけない、となると正式に医術を学ばないと、となってしまったわけですね。
さらに、数カ月後に壬氏が玉葉妃の故郷である西都に使節団の長として派遣されることになり、もちろん猫猫もこれについていなかくてはならなくなる。つまり、早急にとりあえずでも通り一辺倒の医術を修めないといけなくなってしまったわけだ。
ここで、知らんがな! と放り出さずに養父の羅門に頼んで女官の身でありながらも医術を教えてもらおうとするあたり、猫猫ここでもう自分が壬氏を看ないといけないと受け入れてはいるんですよね。壬氏が自傷行為に走ったことにはもう怒り心頭ですし、この一件でてんやわんやで医術を修めないといけなくなった件についても愚痴は出てくるのですけれど、不思議とこれからずっと自分が壬氏のことを診続けないといけない、という件に関してはあまり文句らしい文句は出てこなかったのです。
もう猫猫なりに、覚悟は出来たのかな。
相変わらず、猫猫には壬氏に対しての熱量とでもいうのか。恋する乙女のエネルギーみたいな迸りは皆無に等しく、好きなんですけどー好きなんですけどーと鬱陶しい感じでチラチラ構ってくる残念イケメンに対してのあの塩対応、なんだこいつ、みたいな態度は変わらないのですけれど、ついになんというか……。
……仕方ないなあ。的な受け入れ体制に入ってしまったような、そろそろ本気で絆されてきてやしませんか、猫猫さん。
いや、これまでの塩対応を通り越したナメクジ見るみたいな視線であしらってた頃と比べて、壬氏さまドM疑惑が生じてしまうほどの塩っけだったのと比べると、なんか猫猫の対応甘いですよ。壬氏さまに対してダダ甘じゃないですか?
……もちろん、一般的な視点からではなくあくまで当社比です。普通に見たら普通に塩対応に見えるかもしれませんが、当社比! 当社比的にはダダ甘!

なんかちょうど、真横にすんげえ夫婦が現れてしまったのも、これと比べると甘酸っぱい雰囲気じゃね?と感じてしまう原因かもしれませんが。
いやなんですか、あの馬良と雀の夫婦関係。愛がない夫婦というのは全然珍しくないはずなんですけど、それを通り越してなんか変ですよ、この夫婦!?
雀さんのキャラが濃すぎるというか、ぶっ飛びすぎているのが最大の原因なんですが。人妻子持ちのキャラとしてはパラッパラッパーすぎやしませんかね、雀さん!
ここまでのフリーダムファイターはシリーズ始まって以来ですよ。羅漢の変人がある意味真っ当な変人に見えてしまうくらい。だいたいの事ならスルーしてしまえる猫猫が唖然として一方的に振り回されてるくらいですからね。
この雀さんと馬良の意味不明な夫婦関係を目の当たりにさせられると、わりと壬氏と猫猫の関係ですらもまともに見えてきてしまう不思議!

しかし、壬氏さまの身の上については、全然想像していなかったんで結構マジで驚いたんですが。普通に皇弟だと思いこんでた。言われてみると、なんで皇帝陛下がそんなに弟のことを気遣うというか、跡を継がせたいみたいな事を考えるのか不思議ではあったんですよね。
ただ一方で猫猫の言う通り、この人は国のトップには向いてない雰囲気はあるんですよね。確かに苦労性ですし、何かと仕事抱え込むわ気苦労は耐えないわ、全然わがままに振る舞えない人なんだよなあ。
老若男女を問わず籠絡してしまう絶世の美貌の持ち主でそれを利用してネゴシエーション出来る才覚を持ちながら、その顔を利用して自分の都合の良いよう、自分の利益や楽するためのツールとしては全然使わないんですよね。あくまで仕事上のツール。
彼の中身はというと、ヘタレだしジメッとしてるしドMだし自分から地雷を踏みに行くタイプだし、概ね残念イケメンなんだよなあ。そんでもって、傲慢さとか自信過剰な面が全然なくて、自ら貧乏くじを引いていくタイプ。自分から苦労を背負ってしまうタイプ。そして何より、冷酷に切り捨てることが出来ないタイプ。
今回、猫猫を西都につれてきたのも、彼の我儘という体裁を取ろうとしているけれど、羅漢の身内である彼女に危険が及ぶ可能性があったから、側に置いて目に見えるところで守ろうとしていた、なんて話が出てくると、なんてこの人迂遠なんだろうと思えてくる。猫猫だけじゃなく、ほんと色々と権力闘争のとばっちりで被害があちこちに及ばないように手を回して気配りしたおして、結局自分の方にツケが回るようにしてるんですよね。
そういうのがわかってしまうのが猫猫の聡さなんですよねえ。そして、わかってしまえば彼女としても、あかんこの人は自分が見ておかないと、と感じてしまうのもなんかわかるんですよね。
猫猫が、養父の羅門を尊敬している一方で彼の自分から貧乏くじを引くところ、そうした人生を歩み続けてきた果てで今擦り切れたみたいな在り方になっている事はどうしても受け入れがたい、納得がいかないと思っていたわけで。
そんな養父によく似ている、似てしまっている壬氏を目の当たりにして、猫猫が何を思ったか。何を感じたか。
まあ最後のシーンは壬氏さまには過ぎたご褒美だった気がしますが。めっちゃ喜んでるじゃん、あのドMw

にしても、壬氏さまの火傷の肉が焼けた匂いを嗅いで、焼き肉とか食べたいなあ、とか思ってしまう猫猫は、多分医者には向いてる、うん向いてる。この娘のメンタルもやっぱり凄えよな。




薬屋のひとりごと 8 ★★★★   



【薬屋のひとりごと 8】 日向 夏/しのとうこ ヒーロー文庫

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毒で体調を崩した姚が医局勤めに戻れるようになった頃、猫猫のもとに大量の書物が届いた。
送り主は、変人軍師こと羅漢。碁の教本を大量に作ったからと、猫猫に押し付けてきたらしい。
興味がないので売り飛ばそうかと考える猫猫の考えとは裏腹に、羅漢の本によって、宮中では碁の流行が広がっていくことになる。
一方、壬氏はただでさえ忙しい身の上に加えて、砂欧の巫女の毒殺騒ぎや蝗害の報告も重なり、多忙を極めていた。
そんな中、宮廷内で碁の大会が企画されていることを知った壬氏は、羅漢のもとに直接交渉をしかけに行く。
開催場所を壬氏の名前で提供する代わりに、さぼっている仕事をこなすように説得するのだが――。

変人軍師、酷い言われようだし(一番酷い言い草しているのは娘の猫猫なんだが)、実際まともに仕事もせずにフラフラしているろくでなしなんですよね。そもそも、頭の中身が常人と違いすぎるので、これに通常の仕事を期待するほうが間違っているのでしょうけれど。
というか、なんでそんな人を「太尉」になんかしてるんだ!?
太尉と言えば、古代中国では軍事を司る大臣みたいなもので、三公の一つにも数えられた王朝もある役職だ。偉いのである。超・偉いのである。
まあこの人、その偉さを活用するタイプではなく、派閥にも属さず中立らしいのだけれど、決して影響力が皆無ってわけじゃないんですよね。むしろ、影響力はワケワカランほどある、というべきなのかもしれない。だからこそ、太尉に祭り上げられているのかもしれないが。
そんなのが親父なのですから、猫猫も妓楼育ちのどこの馬の骨とも分からない下民出身の女官、というわけにはいかなくなっちゃってるんですよね。中立であろうと太尉の娘である。それも変人軍師の娘である。必然的に派閥争いと無関係とはいかなくなってしまっている。
身分としては、皇弟である壬氏さまとも釣り合いが取れなくない、という所ではあるんですけどね。ただこうなると、気楽に后の女官にする、という訳にはいかなくなったのか。玉葉様は猫猫をもう一度自分の所の侍女にしたかったみたいだけれど、猫猫をつけるということは必然的に中立である羅一族がその后の派閥についた、と見做される可能性が高くなってしまう、となるとそりゃ難しいよなあ。
玉葉さま、精神的にもタフで鷹揚としていてどんな難事にも堪えず物事を楽しめる、という大物感をずっと漂わせていましたけれど、今回彼女に迫っている危機というか圧迫は彼女をして相当にキツいものがあるみたいでかなりへこたれていただけに、猫猫を側に置きたいという気持ちはわりと切実なものがあったと思うのですけれど、さすがにこうなると難しそうだなあ。
まあ猫猫も、今は医局の手伝いに充実感を感じているようですし、それを途中で放り出して、というのは気持ちも進まないでしょう。玉葉后のことは結構好きみたいですし、あそこの侍女たちとも仲良くて居心地も良かったとは思うのですけれど、今回の医局の仕事はちゃんと正式に試験通って就いたものですしね。同僚の姚と燕燕ともここで離れ離れになるには惜しい関係を築いていますし。
て、猫猫とちゃんと友達になったのってこの二人が初めてなんじゃないだろうか。友人と呼ぶに足る相手は今までもいましたけれど、猫猫自身も認めていますけれど、一人はああなっちゃいましたし、もう一人も仕事の合間に顔を合わせるくらいの頻度でしか会えなかったですし、今は宮廷離れちゃってますしね。これだけいつも一緒に行動して、休みの日もたまに一緒に遊んだり、みたいな本格的な友人関係って姚と燕燕がはじめてと言っても過言ではないはず。
猫猫本人も、この淡白な娘が意外なほどこの二人を気にかけてますし、わりと素直に友達と思っているみたいですし。希少な関係だ。

とまあ、女三人寄れば姦しい、というにはちょっとあれな個性の三人ですけれど、猫猫が同世代の女の子と一緒に働き一緒に休み一緒に遊ぶ姿はなかなか眼福でありました。出会いから事件を経て関係も落ち着いたのがこの巻だっただけに、そのへんの三人の描写も多かったような気がします。
大きな事件もなく、囲碁大会の開催にまつわる諸事がメインでしたし。いや、三つ子兄弟の事件とかちょっとしたミステリーっぽい事件簿はありましたけれど。これ、羅門叔父さんがだいたい解決しちゃっているのを見ると、確かに羅一族ってみんな優秀なのなー。

羅漢軍師は別格にしても……あれは天才という以上にバカの方に一線越えてる気がするし……秀でた才覚の持ち主はあちらこちらに見受けられるわけで。
そういう際立った人物たちが目立ち始めると、確かに壬氏さまって有能では在るんだけれど柔軟さが足りてない所はありそうなんですよね。顔の良さが並外れて魔性の域に達しているだけに、人外魔境の一人のように見られてしまうけれど、中身は凡人という自己評価は間違っていない気がする。仕事の割り振りとかできなくて自分一人で抱え込んでパンクしかけてたり、かなり間が悪くて肝心なものは手に入れられないとか、結構ぽんこつな所も多いんですよね。当初から猫猫を振り回そうとして、逆にいつも振り回されてましたしw
さて、そんな壬氏さまもそろそろ形振り構わなくなってきたわけで。この囲碁大会で大人気なく策を弄しまくって盤外戦術に全身全霊注ぎ込んでしまっていたのには、なんとも微苦笑ものでしたわ。
それも、一見すると政治的な利益を得るための深慮遠謀に見えるんだけど、実質は一人の女性をゲットするための完全な私利私欲に全振りしてた、という残念っぷりは何とも壬氏さまだなあ、と。
それでうまくいくどころか、目的だった羅漢に娘さんをください、というお願いを聞いてもらう件については全く叶わなかった、というあたりなんぞは特に。
ラストの、あの自分の体を傷つけても、という周到かつ自分を追い詰め後に引けない事までして、皇族から離脱するという政治的決断も、難しい皇弟という立場での振る舞いや後継争いに関するスタンス、兄である主上に自分のことを諦めてもらう、など様々な思惑あってのことでしょうけれど……結局あれって、それら全部建前なんですよね。本当の目的は、猫猫を嫁にするための外堀を埋めることだったんですよね。
あそこまでどえらいことしでかしておいて、全部猫猫がどうやっても逃げられないように囲い込むため、というあたり、壬氏さま必死過ぎるw
いやもう完全に開き直ったというべきか。色んな意味で袖にされすぎて限界突破してしまったというべきか。ちょっと変なスイッチ入ってますよね!?
これはそろそろ猫猫も観念のし時、年貢の納め時じゃなかろうか。
やたらいい笑顔で猫猫を抱え込んでいる表紙絵、まさにこの巻を表している絵だったように思いますぞw


薬屋のひとりごと 7 ★★★☆   



【薬屋のひとりごと 7】 日向 夏/しの とうこ ヒーロー文庫

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里樹妃との一件が片付いたのもつかの間、
猫猫の元に高順が厄介ごとを持ってやってくる。
どんな用事かと言えば、猫猫に女官試験を受けないかというものだった。
猫猫は、半ば強制的に試験を受ける羽目になる。
新しく医官専属の女官となった猫猫の前に現れるのは、
面倒くさい変人軍師に厳しい上司の医官たち、それと同僚たる同じ女官たちだが――。
猫猫は同僚たちにお約束の通り嫌がらせを受ける。
特に、女官の首領である姚(ヤオ)は猫猫に対して突っかかってくるのだった。
出てったと思ったら、また戻ってきて、と後宮の人たちもなんだこの女、て感じでしょうね、猫猫に対して。
しかも、今度は医官付き女官。結婚までの腰掛けではなかなか出来ない専門職である。最初は攫われてきて、下女からだったのに。
とはいえ、ここで同僚になった姚と燕燕はこれまで仲良くなった女官たちよりも縁が深くなりそうなんですよね。これまで猫猫って、所属きっちり固定されずにあっちこっちにフラフラとたらい回しにされたり、引っ張ってこられたり、と落ち着いて同じ所で一緒に仕事する仲間というのが出来にくかったんですよね。相手の立場が上だったりすることもあったし、仲良くなっても違う場所で働いていたり。一時的に一緒になっても、猫猫がすぐ違うところに行くので縁は続いていてもそんなに頻繁に顔を合わせられなくなったり。
まあ猫猫がそもそも愛想良くなくて仲良くなってもそっけないままだから、よほど懐っこい子相手でなければ縁も続かなかった、というのもあるのだけれど。
ただ、今回の場合は姚も燕燕も医官専属女官として同じ職場でそれなりに専門的な仕事に携わるし、薬関係は猫猫の本職ということもあって、彼女もわりと腰を据えて掛かっていることもあって、彼女たちとのやり取りがかなり多かったんですよね。
向こうが、というよりも姚が、ですが。猫猫に突っかかってきていましたけれど、元々裏表のないお嬢様なので、猫猫もけっこう好感抱いていたみたいですし。
猫猫ってこういうパリッとした子好きですよね。男女問わず、パリッとしているというかシャキッとしてる人相手だと、結構面倒くさいような相手でも好感を持ちやすいような気がします。高順とかオヤジとか、この手の人たちも穏やかだけどシャキッとしてるというか、グジグジしないせいか、敬意を持って接してますし。
逆にねちっこいというか鬱陶しい系は対応が塩。軍師さまとか、わりと壬氏もねちっこいところある気がする。
ただ、猫猫はほんと考えてること、というか特に対人関係なんだけれど、相手のことどう思ってるのかわかんないんですよね。塩対応がデフォルト、というのもあるんだけれど、喜楽の感情がにじみ出るのって薬とか毒関係のことでご満悦になってるときくらいだもんなあ。
ただ、他人に興味が全然なかったり、何も感じていないというわけじゃなくて、過去に親しい人を亡くした件については今も時々思い出して物思いにふけってるし、好感を抱いている人が理不尽な目にあったら珍しいぐらいに怒ってましたもんね、今回なんぞ。
でも、こと女の感情、異性に対しての感性に関しては元々が変人極まっているせいか、どうも常人とはズレている節があるし。子供は一度産んでみたい、と思ってるけれど、それも妊娠出産というものへの興味好奇心が主であって、その相手に対してはまったく関心抱いてないみたいだもんなあ。
壬氏のことどう思ってるのか。嫌いとか鬱陶しいとかはさすがに思ってない……いや、めんどいとか鬱陶しい、とかはかなり思ってる感じだけれど、毛嫌いはしていないはず。ただ、猫猫が壬氏のこと好きか、と問われると……この女が好きとか恋とか愛とか感じる生物なんだろうか、と真剣に首を傾げてしまうところがありますし。実は、密かに、というのもちょっと想像つかないもんなあ。
だから、幾つか疲労やら苛立ちやらタイミングが重なり精神的にキレてしまった、にしてもあの猫猫が、グチグチ遠回しにばかり言ってないでちゃんとハッキリ告白しろ! という趣旨の言葉を壬氏に叩きつけたのは意外も意外で。たまたま神経に触ることを言われたからって、キレて皮肉やら毒舌やら批判をぶつける方が彼女らしいわけで、それが「ハッキリしろよ、おい!」ですもんね。
そんなん言ったら、ずっと自重していた壬氏を煽った意外のなにものでもなく。そりゃ、壬氏さまも渡りに船ですよ。言いたくても言わないでずっと我慢してたのを、向こうから言えって言ってきたら、そりゃ言いますがな。
それでも、ついにですからねえ。壬氏さま、ついに言いやがった! コクったーー!! やっはー! プロポーズだ、ひゃっほーい!
それで、やっべえ、と顔を赤くするのではなく青ざめさせるのが猫猫なのですが。にしても、ほんと珍しく感情的になったなあ。感情的になったとしても、ここまで墓穴堀ったのは初めてじゃないだろうか。
で、どうなんだよ、プロポーズだぞ。嬉しくないのか、と聞きたいところだけれど、当人からすると「死刑宣告」なのだそうです。いやうん、この娘の性格からしてそう捉えるのもわかる、凄くわかるのだけれど……本当にこれっぽっちも「乙女心」関連は稼働しないのだろうか。そもそも、存在しないとか言われても、そうなのかー、となりそうなのが怖いのだけれど。
まあ、壬氏さまもこれまでの経験の積み重ねから、この女がこういう人間だというのは嫌というほどわかった上で、ずっと粘ってきて苦労してきたわけですからね。今更どういう態度取られても気にしないだろうけど、いやこっそり気にしながらも堪えきるんだろうけど、それにしても趣味変わってるよなあ、この人は。

突如、後宮入りした愛凛妃の目的と、突如外交訪問してきた愛凛妃の故国の政治的象徴たる巫女の来訪と合わせて起こった事件。
猫猫としては、違和感と気づきそうで思い当たらないもどかしさが色んな場面で介在していて、今回はすっきりと真相にたどり着けなくて、けっこうもやもやしたんじゃないだろうか。
結果として事件が起こってしまって、姚が大変な目にあってしまう、という猫猫としても痛恨の事態になってしまったわけですし。真相としてはかなりびっくりする展開ではありましたけれど。宦官が当たり前にいる環境であるからこそ、その視点はけっこう死角だった気もするんですよね。あと、そんな簡単に、いや簡単じゃなく長年の積み重ねあってのことかもしれませんけれど……豊胸って出来るのか。
……燕燕、これガチで姚は儂が育てた、ってやつなんですか、あなたw
使用人というか従者にも関わらず、主人を弄って愉悦に浸る、でもぞっこん愛している、というドS系百合のやばいヤツじゃないですかー。ただ、男にもイケメンにもまったく興味なし、ということも相まって、顔の良さのおかげで災難が日常的に降り掛かってくる壬氏に目をつけられたのは、ご愁傷様でした。自分にまったく興味を示さない燕燕に、おまけに女色の卦ありと知った途端に、身の回りの世話をする女官として「採用!!」と食い気味に叫ぶ壬氏さま、相変わらずこう顔の良さと裏腹の残念さというか、毎日苦労してるんだなあ、と同情したくなる所がまた見れて、なんかもう貴方はそのままで居てください。

このシリーズ、ウェブ版の方ずっと追いかけていて、書籍版の方は積んだままだったのですけれど、いい加減シリーズ長期化してしまって最初から書籍版読んで追いかけるの大変になっちゃったんですよね。なので、もう途中からでいいから読み始めよう、と七巻から途中乗車しました。
ウェブ版の方、ちょうどこの7巻分のところまで読んで、そのさきは書籍版で追いかけるつもりでしばらく前から読むの止めているので、この先は何も知らないまっさら。というわけで、次巻すでに出てますけれど、遠からず続き読みたいところ。楽しみ楽しみ。


日向夏・作品感想

皇女殿下の召喚士 2 ★★★☆   



【皇女殿下の召喚士 2】 長野 文三郎/はるのいぶき ヒーロー文庫

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「異界からの召喚」というギフトを手に入れたレオは、召喚した不思議なアイテムを用いて活躍し、皇女フィリシアのプリンセスガードという役職についた。恋仲のフィリシアとの婚約を皇帝に認めてもらうため、辺境のカルバンシアの地を開拓していく。ある日、故郷の友人から召喚した果物が収穫できそうだという手紙が届き、レオたちは里帰りも兼ねてラゴウ村に向かうことになる。旧友たちはレオの変化に驚きつつ、秘密のお楽しみを共有したりして、楽しいひと時を過ごす。そして、レオが召喚したマスクメロンの種はしっかり実を付けていた。その味と効能の高さを実感し、皇帝に献上しようと決めるのだが―。

皇帝陛下がアグレッシブでパワフルで精力的すぎるw そりゃ、こんなスケジュールで働きまくってたら帝国発展するし、その上でこれだけハッスルしてたら子供もわんさかできますわい。
ヒロインのフィリシア様からして皇女は皇女でも第十八皇女ですからね。これだけ下の方だと、政治的にもそれほど重要な立ち位置じゃないので、だからこそレオにも婚約者となるチャンスがあったわけですけど。
でもフィルが末妹の方、というわけでもなさそうなんだよなあ。現役でなおあれだけ励んでるとなると、多分フィルで真ん中かちょっと上の方になるんじゃないだろうか。それだけ皇族が増えるとなると、お金も掛かりそうだし権力争いもえらいことになりそうだけれど、フィルの姉のメダリアのように成人の儀で宮廷から離れる子供も少なくないようなので、変に権力を持たせる事無く皇帝陛下がうまいこと皇室を統制しているのがなんとなくわかる。
後継者の皇太子もしっかりと定めているみたいだし。この皇太子も、直接登場はしていないもののかなり優秀かつ温厚な人物みたいで、さらっとレオが皇太子のことを尊敬しているとのたまっているのは印象的だった。
レオ自身、皇帝陛下のお気に入りであり、功績も多々あって目をみはるような出世を果たしているある意味皇帝の子飼いみたいなところのある新貴族だけれど、この様子だと皇太子とも良い関係でいそうなんですよね。まあ、彼自身性格の良さと同時に立ち回りも上手くて人好きする性格なので敵を作りにくい人物なのですけれど。アリスがハーレムルートハーレムルートと拳を振り上げているように、彼を慕う女性も多いのですけれどそれに負けないくらい男友達も多いですしね。
何気にこの2巻の新登場キャラでヒロインはいなくて、異国の同じプリンセスガードのイケメン騎士と意気投合して仲良くなってるくらいですし。田舎の親友たちとは今なお得難い交流を続けていますし、その中からまさかの出世、貴族にまでなる人も出てきてますし、メダリア姉さまの恋人であるレレベル準爵ともかなり親密な友達付き合いしてますしねえ。
こういう男相手の関係も疎かにしてなくて、気持ちの通じ合った人間関係を欠かしていない主人公というのはやっぱり好感を抱いてしまいます。
ヒロイン相手の方も順調で、フィルとはついに一線を越えてしまうほど仲睦まじいですし、陛下から押し付けられた殺し愛がモットーなアニタの方も、ある意味再度落としなおして図らずも真っ当な愛情の方も獲得してしまいましたし。レオの方は別に節操がないわけじゃなく、フィルに対して一途なのですけれど、皇帝陛下の肝いりとかアリスがマメに唆して攻略ルートにレオを蹴り込むので、どんどん各ヒロインのルートが進展していっているという風情で。その中でも初めの方から片思い風味に恋情を募らせているレベッカがいじましくてねえ。レオとフィルの関係を一番近くで見ていてわかっているからこそ、無理には踏み込まないのだけれど、あれだけ好き好き光線出してたらねえ。アリスも煽るし。このオートマタ娘、本当に煽るよなあ。それでいて、わりと自分自身も遠慮せずにグイグイ押し込んでいきますし。
この未来型オートマタメイドのイイ性格したアグレッシブさが、ただでさえテンポのよいこの作品の回転力をアップさせている気がします。どんどん回転させて勢いつけてるもんなあ。
何にせよ人間関係にギスギスしたところがなく、どの方面でも思わず微笑んでしまいそうな温かい関係や篤い友情、淡い愛情が育まれててて、心地の良いお話でした。その上で軽快でリズムテンポ良くてグイグイ引っ張っていってくれますし、うん楽しかった。


ナイツ&マジック 10 ★★★★   



【ナイツ&マジック 10】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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第10弾の舞台は、空に浮かぶ広大な大地。噂に導かれ冒険心からやって来たエムリスとアーキッドは、辿り着くなり争いに巻き込まれてしまいます。混迷を深める空飛ぶ大地に、彼が現れます。
銀の光に蒼き刃。新婚旅行中の銀鳳騎士団団長、エルネスティ・エチェバルリアが。
空飛ぶ大地の戦いは活発化してゆきます。空には史上最強の対飛空船戦闘艦である飛竜戦艦。大地からは絶えたはずの超巨大魔獣、竜の姿が現れます。人とハルピュイア、飛竜と魔獣。
大地の支配者の座を巡り激戦が繰り広げられる中、エルネスティの眼前に思いもよらぬ因縁が現れます。
「できるならばあなたとは戦いたくなかったですが……。勝つか負けるか。
トイボックスマーク2、最期まで全て魅せて差し上げなさい!」
戦いの決着へと向けて、覚悟を乗せた蒼き騎士が空を翔ける――!

このあらすじの文章、なんでこんな自動翻訳みたいなんだ?
ともあれ、久々二年ぶりですか。アディがついにエルを落したというインパクトがすごすぎて、細かいところ忘れていたのですが、そう言えばエルたちが帰還した時にはもうエムリス王子とキッドは国飛び出しちゃってて、エルたちが帰ってきていたの知らなかったんだ。
前回の記事でも触れていましたけど、ほんとキッドが真っ当な主人公やってるんですよね。彼の誠実さと勇敢さと優しさのお陰でハルピュイアの氏族の一つと信頼を得られ、ハルピュイアと昔から友誼を結んでいたというシュメフリーク王国とも協力関係を結ぶことが出来たのですから。おまけに、ハルピュイアの娘さん二人にも懐かれちゃって。一人はお子様なのでどこまで女の子のそれなのかわからないですけれど、もう一人のホーガラはちゃんとした淑女ですし、気が強くて戦士としての誇りを持つ女性でありつつ、めっちゃキッドの事意識してて、アディが現れた時に妹と知らないが故にやたらとキッドとの関係を警戒して問い詰めてきた様子とか見ると、完全に乙女心全開でしたし。
いや、ほんとどうするんだ? エレオノーラ女王陛下がいるのに、いるのに!
まあそこは当人同士で何とか決着つけてもらうとして、いやまだホーガラに関してはキッドがまだまだ追い打ち止めかけそうな予感もあるんですよね。今、ホーガラは戦士として打ちのめされて密かにメンタル追い詰められてる最中で、それにキッドだけが気づきかけているという状況ですし。完全にフラグ、フラグw

ともあれ、あの飛竜戦艦が再び出現。とはいえ、前にこれを運用していたジャロウデク王国とは別口だったんですよね。ってか、そのジャロウデク王国の面々も久々に登場してきているし。あの【狂剣】グスターボが再登場してくれるとは思わなかった上に色んな意味で活躍してくれたのは嬉しかった。敵キャラとはいえ、あれほど個性的で特徴的でド派手なやつもイなかったもんなあ。ある意味イカレっぷりに関してはエルくんに匹敵するものがありますし。今回のエルくんとグスターボの遭遇戦からの激闘と、その後のあっさりさっきまで殺し合ってたのがなかったみたいにくつろいだお茶会してた様子なんか見てると、この二人明らかに同類だし! ここまでエルくんと同じ世界というか感覚で居られるキャラって、まず居なかったもんなあ。ほぼアディだけじゃない。
なんにせよ、ジャロウデク王国の派遣部隊、というか収奪出張部隊? グスターボたちに関しては少数部隊なんだけれど、それに飛竜戦艦を運用し大規模な飛行艦隊を持ち込んでいる北の強国パーヴェルツィークが浮遊大陸争奪戦に本格参戦したことで、これまで暴れに暴れていたイレブンフラッグスが一方的に叩かれ始め、いずれにせよ幾つもの勢力が首を突っ込んできた混迷の空になってきたのである。
エムリス王子とキッドたちは浮遊大陸に冒険しにきたのであって、資源収奪に来たわけではなく、シュメフリーク王国も原住民であるハルピュイアとの友誼優先なのですけど、他の勢力は浮遊大陸で発見された飛行艦の燃料である源素晶石の大鉱脈の奪い合い、ということで資源収奪戦争の様相を呈したわけである。
とはいえ、一方的に奪うばかりだったイレブンフラッグスと違って、パーヴェルツィークは強権的ではあってもハルピュイアに対しても一定の配慮はあったし、話し合いもできそうな余地はあったのですけど。
ってか、エルくんが絡まない間はわりと真面目に国同士の駆け引きとか信義のせめぎ合いとか真っ当なやり取りが進んでたんだよなあw エムリス王子も破天荒で大雑把なキャラなんだけれど、王子としてマトモでもあり義を見てせざるは勇なきなりの英雄でもあり、とキッドと合わせて実にちゃんと話を進めてくれてたんですけどねえ。
いや、別にエルくんがぶち壊しにしたというわけではないのだけれど。作中でもちらっと触れられているけど、エルくんって勝手にむちゃくちゃするのではなく、ちゃんと言質取ったり根回ししっかりしてフリーハンドを握った上で、誰も想像していない斜め上のレベルでむちゃくちゃやり始めるだけであって、ぶち壊しにはしないんですよね。いざ動き出すと、雰囲気とかこれまでの流れとか全部ぶち壊すけど。
というわけで、均衡をぶち壊したのは浮遊大陸に乗り込んできた各国の派遣隊ではなく、元から浮遊大陸に存在した謎の存在……というわけでもなかったのか、これ。まさかのエルくん因縁の相手が、それもごく最近因縁できましたばっかり、という相手の再登場である。しかも、交渉中に横からぶん殴ってくる形で。
そんな、みんなの尽力で整えられた舞台を盛大にぶち壊されたら、大混乱に陥ってしまったら、もうエルくんがどれだけ自由にやりたい放題やっても止めるやついないじゃないですかー。止める理由がないというか、免罪符を与えてしまったというべきか、エルくんを解き放ってしまったというべきか。
そして実に実に可愛そうなことに、その自由に解き放たれてしまったエルくんの機体には、交渉相手だったパーヴェルツィークの総司令官であり姫でもあったフリーデクント姫が助けられたついでに同乗するはめに。
あのエルくんの機体に同乗するはめに!!
死ぬる!
それまでは、峻厳にして英明、冷静沈着の氷の姫、という感じだったフリーデクント姫が典型的エルくんに巻き込まれ、えらい目にあってしまう人たちのパターン入りました。しかも、遠くから見ているだけじゃなくて、自分自身彼の機体に乗り込んでしまっているわけですからね。
死ぬる。
こうして一般人がエルくんの機体に乗っていると、彼がどれだけ意味不明な戦闘機動をして戦場を飛び回っているのかがその悲鳴とともによく伝わってくるのです。ってか、一人だけ出てる漫画が違うw
目まぐるしく全く予想できないというかわけわからない動きをするエルくんの機体に振り回されて、あぎゃーーとなってる姫様が同乗してくれているお陰か、いつもより尚更エルくんのはちゃめちゃっぷりが体感できるんですよね。
映像作品でもない、ただ文章として描かれているアクションを文字で追っているだけなのに、なんだかエルくんの機体トイ・ボックス2の動きが目で追いきれずに、辛うじて見える残像を必死で追いかけているような気分になってくるんですよね。うぉぉ、あっち飛んだ、いやこっち? どこ行った? なんでそこにいるの!? とまあそんな感じで。本を読んでて光景がありありと目に浮かぶ、という事はまあまあありますけど、ここまで動きが激しくて意識引っ張られて持ってかれて引きずり回されるのはちょっとなかなか経験ありませんでしたわ。凄かった、面白かった、読むジェットコースター体験である。
そして、エルくんにまったくお荷物が乗っている、という意識も配慮もないあたりがこの美少年め。どれだけぶん回しても平気でほんとにまったく気にしてないですからね。それでいて、姫様を助けるためという緊急避難の理由付けはしっかりしているし、当人からもちゃんとこういう行動とりますよー、と事前に許可と言質はとっているあたり、悪辣なのである。実際、どれだけむちゃくちゃされても、たしかに姫が事前に許し、また自身が彼に頼んだ行動でもあるわけですから、やめてーとは言えないんですよね。言わせないようにして好き勝手してやがる。そこまでしろとは言ってない、とどれだけ言っても暖簾に腕押しw
ただ機体の動きだけなら、肉体的にダメージ受けて精神的にPTSDになるくらいでまだ済んだのでしょうけれど、さらにそこからいきなり攻めてきた敵の正体と直面ですよ。しかもエルくんのお知り合い。同乗してるから否応なくお互いの会話が耳に飛び込んできて、そのあまりの突拍子の無さにむちゃくちゃさにデタラメさと伝説神話に至ろうかという規模の話に、姫様白目w
わけがわからない、意味がわからない、聞かなきゃよかった、もう質問とかするのやめようかな、と姫様がどんどん死んだ目になっていく姿に、なんかもう笑うしかなく。
全部終わったあとは、はい名物の遠い目をしたエルくん被害者の会新規加入者の出来上がりーである。こうなると、もう同情と共感で同志みたいな感覚になる不思議。確か、つい先程まで交渉決裂寸前で相容れぬ敵として目の前に立ちふさがりそうな雰囲気だったのに、雰囲気さん見事に消し飛ばされてしまいました、ご愁傷様です。

いやでもこれで実際パーヴェルツィークとの全面対決は避けられそう。でもそうなると、飛竜戦艦の製作者であるあいつはどうなるんだろう。一応、この戦いでシリーズ通してのラスボスが定まった感もありますし、あれとの本格対決になっていくのでしょうけど。今回はエルくん、実験機のトイ・ボックス2という、あれ実戦用じゃねえだろうという仕様の機体でしたから、本番はイカルガを持ってきてからでしょうしね。
次はさすがに2年は長いのでもう少し短い間隔で出してほしいなあ。


皇女殿下の召喚士 1 ★★★☆   



【皇女殿下の召喚士 1】 長野 文三郎/はるの いぶき ヒーロー文庫

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十五歳を迎えた子供たちは、女神様から「ギフト」と呼ばれる特別な能力を与えられる。ラゴウ村に住む少年レオが手に入れたのは「異界からの召喚」というギフトだった。周囲が期待に沸き立つ中、さっそく能力を使ってみると、出てきたのは小さな洗濯バサミ一つ。その結果、人々は期待外れだとレオを蔑むようになった。しかし実は、召喚は一日一度、様々なものが呼び出せる能力だと判明する。レオは召喚した異世界産のアイテムを駆使して、徐々に強くなっていく。ある日、いつものように能力を試していると、一人の少女が召喚された。オートマタのアリスと名乗った少女と行動することになったレオは、二人でダンジョンに潜り、アイテムを使って特訓を続けていく。やがて帝国の皇女と出会い、世界へと羽ばたいていく少年の冒険譚が幕を開く!
DVD! DVD! 
村のみんなが期待はずれのギフトのせいで離れていってしまう中で、態度を変える事無く慰め励ましてくれて今まで通り、いや今まで以上に親密に接してくれるようになった三人の友人たち。こうなって初めて「本当の友達」が出来た、主人公のレオもそのありがたさを噛みしめるのだけれど、ほんとにいい奴らなんですよね。実は洗濯バサミ以外のものも召喚できる事を彼らを信用して打ち明けるのですけれど、やっぱり態度を変える事無く良かったなあ、と喜んでくれる。レオが一人暮らしというのもあって、レオの家を溜まり場にしてワイワイと管を巻くこの友人たちとのひとときが前半の癒やしでありました。そんでもって、召喚されるはまさに友情のアイテム! DVD再生用ポータブルプレイヤー(イメージDVD付き)!
エロDVDの鑑賞会で盛り上がりまくるのって、もうザ・アホな男友達! という感じでほっこりしてしまった。中盤で村から出て王都で暮らすことになるのですけれど、各種有用なアイテムなんかと共にちゃんとDVDプレイヤーも彼らに託していくのホント好きです。召喚で新しいDVDが出たら速攻で持って帰郷するつもりなのも大好きですw
さて、レオの能力ですけれどこれ召喚士というよりも一日一回ランダムで異世界からアイテムを召喚できる、言わばガチャなんですね。ただ、引き寄せてるの現代地球のもの、と見せかけて電化製品系のものなんかも魔力で動いていたり、多脚戦車なども魔力が燃料だったりするので地球に似た別の世界か、召喚の際に現地用にカスタマイズされる仕様なのか。いずれにしても召喚はしたものの、電源がなくて使えないというケースはないので便利極まる。もちろん、ポータブルDVDプレイヤーも魔力充電で見放題。
そんな召喚物の中で、アリスなるオートマタを引き当てたのが運の尽きか、転換点か。この自称メイドなオートマタのアリスがまたメチャクチャいいキャラしてるんですよ。
イイ性格している、というべきか。
この作品そのものの狂言回しという立ち居振る舞いで、レオを弄くりおちょくり慇懃無礼に引っ掻き回してくれるのです。各種ツッコミも常設装備。色んな意味で危険なネタにも躊躇なく踏み込んで、地雷原でタップダンスを踊りまくる強キャラっぷりで、物語そのものをワッショイワッショイと盛り上げて加速させていってくれるのである。
実際、アリスが登場してから一気に物語のテンションそのものがあがりましたからね。レオくんもいい意味でぽややんとした子なので、アリスのかなりパワフルな弄り倒しにも目を回しながらもニコニコと鷹揚に持ち上げられて放り投げられているので、テンションは上がりつつ和やかに進行するのである。もうひとりのメインヒロインの皇女殿下のフェリシア様も、わりとレオと似たタイプのぽや病んと温厚なタイプなので、アリスがもうやりたい放題で二人を引っ張り回すのである。実に楽しそうでよろしいかと。
これでアリスってば自他共認めるチョロインでもあるので、隙あらばわたしチョロいですアピールに余韻がなく、引っ掻き回すかチョロいアピールかで実に忙しい娘さんである。
まあチョロさに賭けては、現れた途端にツンデレかまして秒で堕ちたレベッカが、アリスも喝采するほどのチョロインだったので、かぶる部分は欠かさずアピールしていく所存なのかもしれない。
まあレオくんもわりとアリスには積極的にスマッシュショットを頻繁に叩き込んでいるので、否応なくデレてしまうのかもしれませんが。
なにはともあれ、話のテンポもよくキャラもいい感じに弾けていて、実に楽しい作品でした。


第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 3 ★★★   



【第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 3】 翠川 稜/赤井 てら ヒーロー文庫

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温泉、プール、娼館経営…。キュートで聡明なお姫様が、コワモテ騎士とともに辺境開拓で大活躍!じれじれラブコメ第3弾!

ウィンター・ローゼに到着した第六皇女ヴィクトリアは、魔術を存分に使って温泉掘削をしたり、次々に新しいアイデアを出したりと、辺境開拓を進めていた。このまま順調に計画が進むかと思われたが、残酷な事件が起きてしまう。
その事件の真相を知ったヴィクトリアは、街を観光業で発展させるためには娼館も必要なのではないか、と思い至り、アレクシスには内緒で娼館設立のために動き始める。
しかし、ヴィクトリア本人が帝都の娼館街に出かけたことを知ったアレクシスは、危険なことをしないでくれとヴィクトリアに怒ってしまう。
二人は初めて衝突してしまうのだが――。

ヴィクトリア皇女殿下、御年十六歳なんだけど魔力の作用の影響なのか成長に乏しく見た目が幼女、なのを本人も大いに気にしていらっしゃるのですけれど……ちびっ子なのって見た目だけじゃないですよね、これ。
これまでも元気いっぱいなお嬢さんだったのですけれど、この巻でのヴィクトリアはひたすらテンションマックスのままアクセル全開まで踏み込んだ状態で駆け回ってる感じなんですよね。アイデアを思いついてははしゃぎ回って周りの人たちに語って聞かせる、現場に出れば全力全開で魔術をぶっ放して開拓作業に従事し、あっちこっちに突撃し思いつくまま声を張り上げて喋り倒し、ともう何をするにも全力なんですよね。
これって、幼い頃の全力で遊び回りはしゃぎ周り走り回って、大人もついていけないくらいどこにエネルギーが詰まってるのか、と思ってしまうくらいエネルギッシュなちびっ子たちそのままなんじゃないでしょうか。幼稚園とか小学生の低学年の頃の子供って、ほんともう信じられないくらい最初から最後までアクセルベタ踏みでしょ。そんで、突然パタンとスイッチが切れたみたいに止まっちゃってすやすやとおやすみモードに入っちゃうの。マックスからオフの間が全然無いのよね。
ヴィクトリア皇女も、今回は似たようなものでいきなりパタンとお休みになってしまうケースが見受けられて、なんか既視感があるなあと思ったらちびっ子の生態そのままなんじゃね、と思い至って思わず「ふふっ」と微苦笑してしまうのでした。
いやでも、今回は特にテンション高くなかったですかね、皇女殿下。お膳立てもすんで、あとはひたすらやりたいことをやりたいだけやり倒す、という段階に入ってしまったのでよっぽど浮かれてしまったのかもしれませんけど、さすがにずっとこれだと疲れないのかしらと心配になった所でさすがにお疲れモードに入る場面がありましたけど、黒騎士さまがお出かけに誘ってくれただけで疲れが吹き飛んでしまうのですから、回復力が若い、若い。
ただまあこれ、やっぱりどれだけ叡智を感じさせる行動結果だとしても、傍から見ているとお子様が元気いっぱいはしゃぎ回っているようにしか見えないので、乙女力とか女子力的にはどうかというものだった気もするんですよね。バリバリ仕事する姿に惹きつけられるというよりも、子供頑張ってるなあと微笑ましくなるような感じでしたし。
ただ、肝心の黒騎士さまはというとそんな姫様に純粋に敬意を抱き、同時にちゃんとレディに対する接し方をしていたあたり、主君への対応云々だけではなく子供に対する庇護者としての振る舞いでもなく、ちゃんと女性扱いしてたように見えるんですよね。
でも、今回の姫様の様子を見てその対応はむしろルーカスじゃないけれど、ロリコンか?とちょっと言いたくなるぞw
ただ、黒騎士さまの場合はどうにも姫様にどういう立ち位置で接したらいいか未だに定まらないが故に迷走している所もあるんですよね。自分に言い聞かせる建前と内実の変化がそろそろ明確に食い違ってきた、と言えるのかも知れません。この期に及んで、未だ自分の建前を信じているがゆえに自分の中から湧き上がってくる感情を持て余し、適切に処理できないまま見ないふりをして曖昧に対処してしまったが故の、今回の姫様との喧嘩でありますけれど……姫様もまだまだその対応はお子様ですよね、あっさりムキになってしまって。なにげにまだまだレディには遠いぞ、それじゃあ。
むしろ、姉姫のエリザベート殿下とハルトマン伯爵の何かがはじまりそうな関係の方が興味をそそられます。ヴィクトリアがめっちゃ煽ってましたけれど、確かに今の情勢だとエリザベートが選べばそこに異を唱えるのって難しいのだから好きに選んじゃえばいいんですよね。それがワガママになるかどうかは相手次第。その点、ハルトマン伯爵は王配としては文句なしに最適の人材ですしねえ。
このカップルの顛末がどうなるかは非常に楽しみです。
しかし、変なところに転生者が散らばってるなあ。アメリアとルーカスの凸凹コンビは結構好きなんですけど、それにしてもデジカメはさすがにオーパーツすぎません?

1巻 2巻感想

嘘つき戦姫、迷宮をゆく 5 ★★★★★   



【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 5】 佐藤 真登/ 霜月えいと  ヒーロー文庫

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クランバトルで『栄光の道』に勝利したリルドールたちはコロネルを取り戻し、クラン『無限の灯』として慌ただしく活動を続けていた。そんな折、リルドールは決闘で負けて追放されて以来、一度も戻っていなかった実家から呼び出しを受ける。そこで父親から、五十階層主討伐の褒賞として、叙勲の話が来ていると聞かされた。リルドールは家族との確執に揺れながらも、ようやく手にし始めた栄光に、明るい未来を思い描いていく。叙勲式当日。華やかなドレスを身にまとったリルドールたちはそこで、すっかり破壊され、血に塗れた会場を目にする。呆然とする彼女たちの前に現れた男は、コロネルの育ての親のような存在、クルクルだった―。

……凄かった。
もう、クルクルおじさんことクルック・ルーパーが凄すぎた。とんでもなかった。なんちゅう圧倒的な存在感。その言葉、その行動、その強烈な意志すべてが火花を飛ばして猛り狂っているかのようで、その一言一言に横っ面をひっぱたかれたようだった。
敵役として、悪役として、文句なしに魅力的で衝撃的で圧巻で、その生き様在り方の凄まじさにもうなんというか、引き込まれて引きずり込まれて飲み込まれて、言葉もないくらいに絶句させられて、ただただ魅了されてしまう。
この巻は、世界の謎の一端が明かされる巻である以上に、クルック・ルーパーという世紀の大悪人、歴史に燦然と輝く史上最悪の虐殺者の、独壇場でありました。
この人の戦う理由、人を憎み世界を呪うその動機は完全に狂ってはいるのですが、でも一切ブレることなく一貫していて、筋が通っていて、説得力があって、納得させられてしまうんですよね。
その在り方を許してはいけないけれど、これ以上なく共感してしまうのはダメなんだろうか。クルック・ルーパー自身は自分を大悪人と自称して胸を張り、彼の目的からすればその称号は汚名ではなくむしろ奨励すらするべきものなんだけれど、その根源はあまりにも純朴で……純粋で、だからこそ尊敬すらしてしまう。その在り方に尊さを見てしまう。
この人は、ただ友達が大切だっただけなのだから。
そして、この人は汚泥のように人という存在を憎みながら、その心の輝きに関しては常にリスペクトし続けているんですよね。根本的に、人を小馬鹿にしたような言動を取り続けながら、常に誰に対しても真摯で誠実で在り続けているのである。カニエルたち50階層主たちに関しても、甘言を弄して唆して彼らの秩序を崩壊させてしまっているにも関わらず、本気で彼らのことをクルック・ルーパーは尊敬してるんですよね。そして、この世に生まれる強者たちを、本物の英雄たちに敬意を隠さない。
それは、そんな本物たちを切り捨てることで自分の悪名を更に轟かせ、自分の悪名が轟けば轟くほど自分が決して勝てなかった親友の名があがるからこそ、なんだろうけれど、そんな理由抜きでこの人は本気で英雄たちを敬愛してるのが伝わってくるのです。彼が人を憎むのは、人を信じているからこそ、なんじゃないかと思ってしまう。狂気の淵に沈みながら、一方でこの人はあまりに理性的だ。世界が滅ぶことを納得しながら、自分を乗り越えていくモノたちにずっと期待している。
いや、その期待が産まれたのは、彼がコロを拾ったときからなのかもしれないけど。あの子を拾って育てて愛情を抱いた時にはもう、彼には不必要を切り捨てた余分が生じてしまっていたのだろう。
しかし、その余分を取り込んでクルック・ルーパーはさらに強くなったに違いない。コロネルたちの前に立ちふさがったクルック・ルーパーの威勢は、コロたちと関わったからこそより熱くなった。より強大になった。より鮮烈になった。
クルック・ルーパーは、誰よりも凄かった。それだけは、間違いない事実だ。

しかし、お互いに成人した時に名付けあったというイアソンとクルクルおじさんだけど、親友にしてライバルであった相手に、クルクルパーなんて名前つけるあたり、イアソンって相当に食わせもんだったんじゃないだろうか、これw


剥き出しにされたクルクルおじさんの心情の激烈さに震えた今回だけれど、彼に限らずその内側を剥き出しにされ無造作に曝け出されてのたうち回った、といえばリルドールも凄まじいものがありました。
いつものたうち回っているリルですけれど、クルック・ルーパーの出現という狂乱の中で、彼女は全く別のものにその全存在意義を踏み躙られてしまうのです。
ライラ・トーハ。現代最新の大英雄にして、リルドール没落のきっかけになった人物。彼女につっかかりながら一顧だにせず一蹴されあしらわれ、プライドというプライドを粉々にされた挙げ句にそれでも残されたプライドの断片にしがみついて、ライラと同じ冒険者として身を立てて、彼女を見返してやると醜く無様に意気込んだのが、リルドールのはじまりでした。
その歪んだ執念はコロネルとの出会いによって解消されていくのですが、それでもライラという存在はリルにとって根源であり原動力であり、彼女によって否定されたものを覆し、彼女に認めてもらうことこそが、コロネルに相応しい存在になるという理由と並び立つ、リルドールの根源だったわけです。
そうして頑張ってきたことを、仲間たちと証明してきたことを、死ぬ気で身を立て確立してきたものを、そしてリルにとっての密やかな憧れを、すべて全否定され徹底的に踏み躙られたのが、あのライラとの再会であり、かの英雄の本質があらわになってしまったシーンでした。
そのライラもまた、信じてよすがにしてきたものを、かろうじてしがいみついていたものを徹底的に全否定され、その在り方を木っ端微塵に打ち砕かれてしまうのですが。

これ、今回そうやって自分が信じて拠り所にしていたものを木っ端微塵に砕かれて、全否定されて、その後がコロネルとリルドールとライラでは、正反対になってしまうんですよね。
それこそが、クルック・ルーパーをしてコロネルとリルには期待を込めて、ライラにははっきりと期待はずれと見なした理由であり結果であったのかもしれません。
とはいえ、これはライラにとっては酷な話でもあるんですよね。ライラにとって、リルにとってのコロ、コロにとってのリルはもういなかったのですから。だからこそ、クルック・ルーパーも自分の同類と見なしたのでしょうから。もし、同じようなシチュエーションになって、ヒィーコやムドラがセレナと同じような態度を見せたとき、リルやコロは果たしてライラと違う反応が出来ただろうか、と考えてもしまうんですよね。
それでも、あのライラの自分に対する無関心さを目の当たりにした時のリルドールのショックの描き方は、この作者が描く心を剥き出しにしてそれが罅割れる描写の生々しさ、本当に凄いと思うのです。この痛みの描写があるからこそ、それを乗り越えていく姿の熱量と瑞々しさが、心が一つ強くなる重さが、ダイレクトに伝わってきて、胸を打ち震わせてくれるのです。
メインのキャラたちの、強烈なシーンのみではなく、例えばリルが愚直に下手くそなレイピアの練習を続けるシーン。あそこで、リルドールが不器用に練習する姿にニナファンがリルの本質を知ってこれまでの英雄としてのリルに抱いていた尊敬が、全く異なるでももっと深い尊敬に変わるシーンなんか、密やかでありながら味わい深く、またリルという存在が他に追随を許さない輝かしい英雄であるコロやライラとはまた全く別の、普通の人々の心に火を灯してくれる存在なのだというのが伝わってくる、細やかで静かだけれど良いシーンだと思うのです。
非日常の中での激しい動きと、日常の中での静かな浸透、静と動どちらもがしっかりと書き込まれ、描きこまれているんですよねえ。

ちなみに、エイスの魂の叫びに関してはおおむねスルーの方向で、見たママを受け入れましょう。なんか完全にみんなから、アブノーマルな趣味と認識されてしまっていて哀れではありますが、まあエイスですし、うん。でも、これウテナがハマってしまって結構ヤバいことになるんだよなあw

カラー口絵見ると、何気に一番美人さんな仕上がりのドレス姿になってたヒィーコ。この娘も元の素材がいいからか、化けると凄いよなあ。そんな彼女ですけれど、ウェブ版には居なかった仲間であるムドラとのコンビで、ウェブ版よりもさらにパワーアップしてるんですよね。まさか、変身ヒーローバージョンを上回るところまで行くとは思っていなかった。
しかし、リルたちのパーティー、リルの縦ロール多脚走行モードなんかも加味すると、今度のヒィーコとムドラのコンビと合わせて普通の四人パーティーにしては占有面積というか、サイズがでかすぎませんかね!?

第七七階層の門番となっていたクルック・ルーパーが明かしてくれた歴史の真実、そして世界が現在置かれている状況は、まさにこの世界のタイムリミットが間際に迫っているという絶望的なものであり、今百層を占拠している謎の化け猫の存在、そしてその猫の犬に収まった裏切り者というあまりにも大きな壁の連続が、リルたちの前に示される。
しかし、逆に言えばはっきりと目標となり突き進むべき方向が明らかになった、というべき状況であり、何よりリルドールにとって果たすべき、付けるべきケリというものがその百層に生じたのですから、あとは突っ込むのみ。本当の意味で世界を救う戦いが、リルが掲げる「無限の灯」を先頭に今始まるのである。クライマックス、ここからさらに盛り上がるぞ!!

佐藤真登作品感想

異世界食堂 5 ★★★☆  



【異世界食堂 5】 犬塚 惇平/エナミ カツミ  ヒーロー文庫

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オフィス街に程近い商店街の一角、古い雑居ビルの地下一階にある『洋食のねこや』。
平日はサラリーマンが多く通うありふれた洋食屋は、一週間に一度、土曜日にだけ「特別」なお店になる。先代の頃より三十年間「向こう」の客を絶品料理でもてなしていた『異世界食堂』は、『異世界料理のねこや』として新装開店する。
それは、店の主が変わった一つの区切りの証。
けれど、新たな看板を掲げて名前が変わっても、小さな食堂の営みは変わらない。ちょっと変わった給仕とともに、訪れた人々に美味しい料理をふるまい続ける。チリンチリン――。そうして今日もまた、土曜日に鐘が鳴る。
異世界との扉を閉ざすことの出来るマスターキーを、祖母から引き継いだことで正式に異世界食堂としての「ねこや」を継承した店主。とはいえ、これまでと何が変わることもない、と思っていたのだけれど結構思い切ってスタンス変えてきたんですね。
とはいえ、それは異世界側の人たちからはわからないだろう違いなのでしょうけれど、洋食のねこやではなく「異世界料理のねこや」としてやっていこうという考えは、店主としては一新に近い気持ちだったんじゃないだろうか。
これまではあまり積極的でなかった、洋食以外の料理を出すことにも拘りがなくなった感じですしねえ。まあ、以前までも請われれば洋食屋には似合わない和食系の料理も出していたわけですから、正式に解禁、という体なのかもしれませんが。
店主って修行時代は中華料理店で働いていたのですから、バリエーションとして中華料理の話も増えていってくれたら嬉しいのですけれど。でも、中華まで手を出すと料理器具や調味料までだいぶ違うから難しいのかな。中華粥なんかは出てますが。すでに現時点で一店舗で出すには難しいんじゃないか、というくらいのメニュー量である気はするのですけれど。「おでん」とか、仕込みに時間掛かる分、コンロを一つ長時間占領してしまうわけですから、結構大変でしょうに。前日から仕込んでおけばともかく、今回なぞ急遽の注文だったわけですしねえ。しかし、7日に一度の異世界食堂が生きる上での生命線、という人が少なからず居るあたり、異世界は過酷である。常連でなくても、命の危機に見舞われている時に目の前に扉が開いて命を繋ぐ、というケースが異世界食堂とお客さんが巡り合うパターンとしては少なくないだけに、それだけ死にかけるシチュエーションに遭う機会が多い世界とも言えるわけですしね。
しかし、ヨミさんてば異世界との扉が開く条件として、そのまま放置すると死んじゃう可能性がある人の近く、という設定を付け加えたのだとしたら、何だかんだ親切というか、先代の意志を慮ってのことなのか。

今回はおなじみの常連さんのお話をもう一度、という以前出た料理の二回目、という話が多めにあって、彼らのその後の動向が伺える。その中でも帝国の皇女であるアーデルハイド関連の話が目につくんですよね。彼女と砂の国の王子との婚姻話が順調に進んでいるのに加えて、彼女の知己も何人もお客として訪れているせいか、けっこう他の話でも彼女が登場してたりするんですよねえ。
彼女の婚約のみならず、この店での出会いが人生の岐路となっているケースがまた幾つも散見される
。でも、あくまでそれぞれの人生の主役はお客さんたち本人。彼らにとってのこの店での出来事や出会い、料理の体験は大切なものだけれど、それはきっかけの地であり思い出の舞台なんですよね。
そういうあくまで舞台としてのスタンスを崩さないからこそ、この異世界食堂というお話は色々と沁みるものがあるんだろうな、と改めて思った次第。なんか、同じようなことを以前も書いていた気もするけれど。
ただ、店主自身が主役である話、このねこやが舞台装置ではなく主体そのものである話もあるわけで、前回から続く新装開店の話なんかはまさにそれ。ねこやが舞台装置として切り離されている存在ではない、というのは妙な安心感があるんですよね。アレッタが従業員側としてねこやの側にいるのも結構大きいのではないでしょうか。アレッタ自身は、お客側と従業員側の両方を行き来する結構特別な立ち位置でもあるのですけれど。クロはあれはあれでまた特別だしなあ。
とはいえ、そろそろ「ねこや」側の物語を進める上で進行上重要なあのキャラの登場が待たれるところなのですが、書籍版ではここまで全然姿を見せてないのはどういうことなんだろう。てっきり、マスターキーを引き継いだこの巻あたりから顔見せあるかなー、と思っていたのですが。

しかしこの店、料理の種類が多いのは凄いんだけれど、それ以上にデザートの種類の豊富さは瞠目に値するんじゃなかろうか。ってか、パフェだけでも種類ありすぎじゃないですかね!? プリンパフェとかなかなかお目にかかったことないですよ?
今回はタツゴロウさんの初来店の話などもあり、特に古参のお客である彼の来店時はお客さんなんて他に殆ど居なかったんだなあ、というのが改めてわかるんですよね。先代の頃は少数の常連がポツンポツンと訪れるだけだったんだろうなあ。今の引っ切り無しに客が訪れ、席が埋まっている賑やかさとは隔世の感があるのもまた、感慨深いんですよねえ。

シリーズ感想

第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 2 ★★★☆  



【第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 2】  翠川 稜/赤井 てら  ヒーロー文庫

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帝国の第六皇女ヴィクトリアと、屈強な強面騎士アレクシスの婚約発表は成功に終わり、二人は新しく辺境領を治めることになっていた。「何もないところなんだから、何でも作っていい」とワクワクするヴィクトリアは侍女のアメリアの提案も入れつつ、どんどん開拓計画を進めていく。しかし一方で、隣国から留学しているイザベラ王女の暴走は続いていた。一国の王女である自分を差し置いて、子供にしか見えないヴィクトリアばかりチヤホヤされる現状は屈辱そのもの。苛立つイザベラのもとに、イザベラに熱を上げる男、シュレマー子爵が現れて…。

ヴィクトリアのアレクシス好き好きっぷりが微笑ましい。あからさまなくらい好意を振りまいているので、ようやく周りの人たちもヴィクトリア……トリアが本当にアレクシスの事を好きだというのを理解して、小さな姫から無辺の愛情を差し向けられているというフィルターを通すことでアレクシスという騎士が恐ろしい怪物ではなく、不器用ながら実直な男だというのが彼を詳しく知らぬ人々の間にも広まっていったの、若干トリアの思惑もあったんですかねえ。あの好き好きっぷりはわざとではなく素のものなんでしょうけれど、自分のそうした態度がどういう作用をもたらすのかについては、この聡い姫様は承知の上ではあったんだろうなあ、と思えるくらいには強かさが垣間見えるんですよね、このヴィクトリア姫。
ただ、一方のアレクシスの方はトリアに対する感情は忠誠以外のなにものでもなく、かろうじてそのか弱い見た目から庇護しなくてはならない、という使命感が寄り添っているようなもので、その可憐な容姿に見合わぬ統治者としての才覚に対して尊敬の色を隠さないのだけれど、どこからどう見ても彼の態度は主従のそれであって、自分の奥さんになる人に対するものではないんですよねえ。
女性に対する接し方、レディの扱い方以前の問題であることは明らかなんだけれど、アレクシス自身はまったくそのあたり自覚も認識もないんだよなあ。
幸いにして、彼の周りの人間が正確にアレクシスの錯誤を認識して積極的にフォローし、彼の思い違いをその度ごとに指摘し修正し説教しているので致命的なことにはならず、なんとかうまくまとまってはいるのだけれど……。
これだけ指摘されていながら、根本的な認識が揺るがずにこの姫様を娶ることの意味とか夫婦とは!というあたりの事についてわかっていない、或いは認識するのを無意識に拒否しているのか、どうやっても理解できない筋金入りの朴念仁なのか、理由はともかく打開の隙が見えないアレクシスはこのままだとちょっと危ういんじゃないだろうか。
トリア、今領地の開発の件とアレクシスの婚約がうまくいっていることで舞い上がってテンションMAXですけれど、彼女も一番根底のところで自分に自信がないところがあるし、アレクシスに自分は似合わないんじゃないか、というコンプレックスもあるだけに、どこかで大きな齟齬が生じてしまいそうで怖いところである。ただの痴話喧嘩とか誤解とすれ違いの結果とかじゃなく、これに関してはアレクシスがヴィクトリアを主君ではなく一人の女性として愛することが出来るのか、というところがスタート地点でゴール地点なだけに、今の状態から一度食い違うと簡単に仲直りして終わり、といかないだけに……。まあ、今から心配しても仕方ないのだけれど。

しかし、帝国は戦勝国であるはずなのになんで敗戦国のイザベラの国にそんなに気を使う必要があるんだろう。いやまあ、良識的に勝った国だろうと何やっても良い、という野卑な認識を持たずに負かした国に対しても礼節を持って接しているというのは尊敬に値する態度だとは思うのだけれど、あれだけ無分別無神経に振る舞われて黙っているのも、どうなんだろう。いや、黙ったままでは終わらなかったのだけれど、これを奇貨としてさらなる要求を突きつける、みたいな交渉材料にしてしまうくらいの強かさはあってもよかろうに、と思ってしまった。気を使うべきは本来ならあっちだろうに。
帝国の姫様たち、みんな有能優秀極まる傑物姉妹なわけですし。
そもそもイザベラの物語の中での役割がよくわからなくて、単なるトリアの噛ませかと思ったら意外にもちょろっとイザベラにもフォローがあったのには驚いた。でも、トリア関係ないところで姉姫さまがやったことなので、あとで敵が翻って友達に、みたいな流れでもなさそうですし。

ちょっと面白いのが、メインのトリアとアレクシスとは関係ないところで、いや関係なくはなく彼らの身近な人間、ということになるんだけれど、そこにチラホラと前世が現代地球人、と思しき人たちが散見されるのが面白いアクセントになってるんですよね。今の所アクセント、くらいの影響力ではあるんですが。いや、あの発明姫さまは影響力だけなら完全にやりたい放題ではあるんですが。
姫様の魔法もちょっと便利がすぎる。あれ、何気に今まで街道工事に携わっていた現場の人たち立つ瀬ないんじゃないだろうか。ちょっとした工事関係者へのフォローやこのまま派手に魔法を使い続けていることへの危惧みたいなものは挟まれてはいましたけれど、あの一瞬で道が完成してました、ってのは結構キツイものがあると思いますよ、なかなか好意的にすごいすごいと言えるだけの感情では済まないものだよなあ、とちと想像してしまいました。そのへんのさじ加減、果たしてトリア姫の無自覚の僅かな無神経さにつながるのか、単なる姫様凄いのシーンなのか。はてさて。

1巻感想

嘘つき戦姫、迷宮をゆく 4 ★★★★   



【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 4】 佐藤 真登/霜月 えいと ヒーロー文庫

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縦ロール(物理)で闘う熱血ファンタジー第4弾。最愛の妹分がパーティを抜けた理由とは? クランバトルで仲間を奪還せよ!

五十階層の試練を突破したリルドールだったが、コロネルの突然の脱退によりパーティは一時解散状態になってしまう。現在東の迷宮では、五十階層以下が開放されたことで、普段は南の迷宮で活動しているクラン『栄光の道』が東の迷宮に参入し、『道化猿』率いる中級冒険者達と資材の利権争いが起きていた。
ヒィーコ達にとって普段ならば興味がない話題だが、『栄光の道』――そのクランこそが、コロネルが移籍したクランであった。ヒィーコとムドラはコロネルの真意を確かめに、『栄光の道』の元へ向かうのだが――。
コロネルの脱退で腐れワカメになるリルさま。腐れワカメw
コロに見栄を張ることで自分を支えてきたリルさま、その芯棒であるコロが居なくなるだけで腐れワカメになってしまうのかw メンタル弱々の根性なしなのみんなに知れ渡ってるなあ。それにしても酷い腐れワカメである。ってかもはや縦ロールが触手みたいになってるんですけど! 縦ロールを武器に、って最初はまだこうちゃんと(物理)みたいな感じだったのに、最近もはや縦ロールとは?という概念崩壊を交えながら物理の範疇逸脱しつつあるんじゃないですかね、その縦ロール!!
あと、こう言っちゃなんですけど、コロの髪型ポニー縦ロールよりも普通のポニーテールの方が圧倒的に似合ってますよね。コロナってわりと真っ当な英雄だったんだよなあ。
それに比べて、コロネルは容姿からその甘ったれた性格に至るまでどうしてこうなった、という有様で。コロナがお姉ちゃん主張するのもよく分かる。コロナの場合は、リルを甘やかしてくれそうな妹になりそうですけど。
ともあれ、腐れワカメと化していたリルドールがちゃんと一人で復活出来たのは偉かった。一人と言っても、ある人の声援を受けたからなのだけれど。あの人はリルにとって強さというものに対する指針を与えてくれたという意味で、コロと違う今のリルの根幹を形作った人なのだろう。コロに対する見栄だけではない、リルドールという少女の偽物でも嘘でもない本物の強さを育ててくれた人なのでしょうね。
彼女を人間としてダメダメなクソ雑魚お嬢様時代からずっと間近で見続けて、結局彼女を変えることが出来なかったアリシアとしては、リルの成長には思うところというか忸怩たるものがありそうですけど。
でも、アリシアの思考を追っているとこの侍女ってかなり甘やかし体質っぽいんですよね。というか、わりとお嬢様のダメなところを愛してたんじゃないだろうか。危ないことはしないで欲しいという願いはよくわかるんですが、どうにも自分がこのダメダメお嬢様を保護して囲って面倒見続けたいというかなりアカン嗜好みたいなものがちらほらと垣間見えるようなw
まあちゃんとリルの成長を喜び、自分の手元を離れていくことを寂しく思う健全な考え方の方がメインを張っているので大丈夫そうですが。

さて、リルの奪還のためにクラン・バトルを挑むという方法を取ることになったために、急遽幾つものパーティー、というか十人のメンバー登録が必要になるクランを設立することになったリルドールたち。
ここでそれまで仲の良い友達という体だったカスミたちと本格的に合流することになるわけで。カスミたちのパーティーの男連中の扱いが相変わらず雑なのがなんかかわいそうでもあるんですが。
ってか、ウェブ版ではもう少し必要人数少なかったんですよね。ムドラは存在自体なかったですし。さらに、道化猿という中級冒険者たちのクランも書籍版からなので、当然フレーズも居なかったんですよね。道化猿自体が思いの外物語上でも重要なポディションを担い続けていて、これがちょっと驚きだったんですよね。フレーズという有望株の参入もそうなんですけど、それ以上にモーメツのおっさんが夢破れてなお夢を追う若者たちを支える大人という枠で色んな所に影響及ぼしてるんですよねえ。てっきり、リルたちの通過地点の噛ませ犬ポディションかと思ってたのに。
何気に、ウェブ版とのストーリー上での改変点でも大きな役割を担ってますし。クグツさん、ある意味自分と似ていると自身で認めているモーメツが居なかったら、フクランとエンジュという仲間たちが居てもダメだったんじゃないだろうか。我が身を省みる、というのは本当に難しいことだから、フクランたちが自分の傍らに居ることの意味ですら、気づかないまま終わったかもしれなかったので。
これ、変わった内容で一番救われたのフクランさんかもしれんなあ。あの人、一番大変な役目背負わされることになってたわけですし。クグツの話を聞いていると、フクランのキャラクターって他人に責任を追うことを好むタイプとは程遠いみたいだったわけですから。

クラン同士のこの大人数同士のぶつかり合いというのは、やっぱり燃えるものがあります。ってか、リルドール多脚歩行モードのやりたい放題っぷりはどうしようもなく面白い。
それ以上に、今回はカスミパーティーの本格大暴れ。そして伝説の「不死鳥」エイスの覚醒回ですからね。何気に、今回のエイスの扱い方でウテナが別の意味で目覚める萌芽となってしまった気もするがw
でも、ウテナの魔法ってあれ何気に尋常ではない特殊系ですよね。魔法が発現してそれほど経ってないはずなので、なるほど将来的にこれは伸びるよなあ。
エイスはエイスであれまた別次元なんですけど。

コロナは、もう良い娘すぎて英雄なんだからもっとスレてても良かったのに、本質的に彼女もコロなんだよなあ。むしろ、頭の良いコロということで余計に物分りが良すぎたのかもしれません。ずっと先頭に立ち続けた彼女を、リルが受け止めてくれたときにはリルさま身内ごとに関しては器大きいなあ、と感嘆させられました。コロナも嬉しかっただろうなあ。
『無限の灯(ノー・リミット・グロウ)』というクラン名については、掛け値なしにいい名前だと思うんですよね。語音の良さもそうですけれど、リルがその名前に込めた想いがまたいいんです。
自分が輝くだけではない。自分の輝きで他者をもまた輝かせる。リルとコロがお互いの輝きに魅せられて、憧れて、正史にはない成長を見せたように。彼女たちの輝きに照らし出されて、自身の壁を乗り越えて、墜ちた闇の底から抜け出て輝き出した、ヒィーコやムドラ。カスミたち周囲の人々。
そんな無数の輝く灯火を引き連れて、ついにリルたちは迷宮の最深部へ。立ちふさがるは、これもまた伝説。史上最悪の英雄クルックー・ルーパー。
物語の中でもっとも魂震わせる戦いの開幕である。勇んで待機、待機ぃぃ!

1巻 2巻 3巻感想

嘘つき戦姫、迷宮をゆく 3 ★★★★☆   



【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 3】 佐藤 真登/霜月 えいと ヒーロー文庫

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迷宮「最難関」の試練に挑む! 凶悪な刃を持つ魔物の正体とは? 街への魔物の逆走を止められるのか! ?

ムドラを仲間に加え入れ、四人パーティとなったリルドール一行は縦ロールと魔法を駆使して怒涛の勢いで迷宮を攻略していた。だが、次の目標を確認していたリルドールは、今の迷宮では五十階層の試練には挑戦出来ないことを知る。五十階層主の討伐に失敗すると、とあるデメリットがあり、国が挑戦させてくれないのだという。
実力も上がり、既に上級者となっていたリルドール達は、今探索している東の迷宮から、既に五十階層以下が解放されている南の迷宮へ、探索の場所を移すことを決める。次の迷宮に向けて準備をしていたリルドール達は、小さい頃にコロネルの世話をしていたという男・クルクルと遭遇する。
コロネルは偶然の再会に喜びはしゃぐのだが、リルドールは、妹分が自分よりも懐いている男をやっかむ。
そして、四十九階層を見てから新天地へ旅立とうと、最後に東の迷宮へ向かうのだが――。
カニーー!! カニーーーィッ!(号泣
宇宙一格好良いカニの登場である。カニの怪物というかもうカニ以外の何者でもないカニなんだけど、こんなに凄いカニが居てもいいのかと心臓を撃ち抜かれてしまうカニなのである。
50階層主カニエル見参!!
某おじさんのセリフからすると、五十階層主という連中はどいつもこいつも(各迷宮に一体ずつ存在するらしい)カニエルみたいな生き様在り方をしているモンスターのようなので、おじさんじゃないけれど自分もファンにならざるを得ないんですよね。
意志もなく知性もなくただ与えられた役割を本能のままに果たす魔物とは一線を画する、それは原初より知性を宿し個性を持つ迷宮の最難関にして、人類に与えられた最大の試練。それが彼ら五十階層主。ただそれだけでも敬するに値する敵なのですけれど、カニエルは本来与えられた役割に収まらなかった敵でもあるんですよね。
某おじさんに唆されたとは言え、世界の滅びまで役割に殉じて何もなせずに消えていくのではなく、自由を望んだモンスター。ただ迷宮を出て空を見たい、という願いに駆られてシステムへの反逆を試みた、というだけならただの逸脱者で終わったかも知れない。
でも、彼はその過程で自分に課せられた魔物というカテゴリーすら乗り越えていくのである。主人公たちがそうするように、絶対的に立ちふさがる壁を前にして、自分の夢を踏み潰そうという強大すぎる敵を前にして、彼は倒される魔物ではなく、主人公のように、英雄のように、人間のように、その想いを爆発させるのである。この世界において、思いの強さは「魔法」へと成り代わる。一人ひとりが胸に宿した強き想いが魔法へと変じ、その想いがさらに強まれば強まるほど魔法は変化し進化していく。その未来を願いを祈りを掴む証である魔法を、彼は諦められないことで挫けないことで絶望を覆すことで、掴み取るのだ。
だからこそ、挫折を乗り越えて今一度立ち上がったリルドールたちと、カニエルの決戦は英雄と倒されるべき魔物との戦いではない。互いに譲れない願い、夢を胸に燃やし滾らせ、それを叶えるために刃を交える対等の敵同士の決闘であったのだ。
お互いをとんでもない奴だと讃えすげえやつだと尊敬し、その上で打ち倒そうと自分の全身全霊を振り絞る、己が誇りを切っ先に掲げて、今いる場所を飛び越えて、限界なんか突き破って、ありえない可能性を手繰り寄せる。それをお互いに成し遂げながら、競って鈴嶺の頂きに登るような戦いがここには在ったのであります。
熱い、なんてもんじゃぁなっかったんだ!!
この作品の階層主たちは決して倒され打ち捨てられる敵なんかではなく、贄なんかではなく、死闘を繰り広げたリルたちに笑いかけながら、彼女たちの背中を押していってくれる連中なんですよね。
その勇気を讃え、その意志を後押しし、その願いを祝福して送り出してくれる奴らなのである。だから、その決戦のあとはどこか寂しく、それ以上に胸が暖かくなるのです。
カニエルは、その意味でも本当にとびっきりでした。

最初に彼に全く太刀打ちできず、自分たちを逃がすために犠牲になった兵士たちのこともあり、盛大に挫折を食らったリルさまですけれど、むしろ生まれたときから挫折し続けていたとも言えるリルはもう二度と本当の意味で心折れることはなかったのでしょう。彼女の八つ当たりも、よくよく聞けば決して感情的になっただけのものではありませんでしたし、それ以上にちゃんと遺族に自分から挨拶に行くこの娘は立派ですわ。
そして、そこで目撃した能力の強さとは全く意味を異にする人としての強さ。リルの中にはっきりと刻みつけられることになった強さの意味は、表面上の強さの意味しか知らないコロにとっても、とても重要な意味を持つことになるのでしょう。ある意味、今回本当の意味ではじめて挫折したのはコロの方だったのかもしれません。
でも、コロが教えられている強さというのも間違いじゃないんですよね。クルクルおじさんってそりゃもう悪い人では在るんだけれど……コロとかに教えているアドバイスとか人生訓って、何一つ間違いではなく、真摯ですらあって、コロを成長させるという点に関しては全力なんですよね。それも間違った方に歪めて成長させるとかそういう目論見一つなく。自分の信念や思想を押し付けるでもなく、極々自然な在り方を指導してるわけで。
これほどの悪人はおらず、実際に暗躍しまくっているにも関わらず……この人への信頼はまったく揺らがないし、頼もしさは確かなものなんですよね。作品通じて、クルクルおじさんが一番好き、という人は少なくないはず。
今回はついにカスミの挿絵もつきましたし、カスミチーム全体の出番も増えてきましたし、ある意味作中一番の怪人なエイスもそろそろ挿絵ほしいなあ。次巻あたりあるのかなあ。
しかし、この巻の表紙にもなっているヒィーコとムドラ。ヒィーコのツインテール縦ロールはまだしも、ムドラのアホ毛ロールはかなり苦しくないですか!? なんか、ガチなアホい毛になっちゃってますよ!?
いや、この二人に関しては変身ヒーローみたいで、その魔法すごく好きなのですけど……ヒィーコ、髪伸びてないですか!? 彼女の肩口あたりまでのウルフヘアだと、全然表紙絵の長さには足りてないと思うんですけどw
まあ、彼女の場合は「伸びた」で表現できそうだからいいんですけどね。
リルの方は伸びるじゃなくて「生える」だからなあ……縦ロールが生えるw
縦ロールの使い方も四足歩行モードや水面歩行、水中潜航モードだけじゃなく、ついに飛行モードまで発現させてしまって、本当にどこに行こうとしてるんだリルドールw


1巻 2巻感想 

嘘つき戦姫、迷宮をゆく 2 ★★★★  



【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 2】 佐藤 真登/霜月 えいと ヒーロー文庫

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迷宮で誘拐事件が発生! 元・魔物の少女が仲間になる!? 縦ロールを武器に戦う熱血冒険ファンタジー、第2弾!

迷宮三十三階。そこは階層主たる六つ首の魔物ヒュドラーが待つフロア。本来、訪れた冒険者にとっての試練となるはずのヒュドラーは、謎の男によってあっさり首を斬り落とされ、人知れず蹂躙されていた。最後に飛ばされた首は、何故か少女の形を取り、その場に残された。やがて目を覚ました少女は「英雄の種を探す」という記憶を頼りに、迷宮を彷徨い始める。
一方、リルドールはコロネル、ヒィーコとともに順調に迷宮を攻略していた。縦ロールを武器として動かす魔法を使いこなし、強敵を薙ぎ倒していく。三人が迷宮を探索していると、道中で一人の少女と出会う。服はボロボロ、そしてコロネルに抱きつくように駆け寄ってきた少女を見て悪漢に襲われたに違いないと、三人は正義感に燃える。
ひとまず少女を保護することに決めたのだが――。
泣いた。泣くよね、泣いちゃうよね。
ほぼ全編ウェブ版にはない書き下ろしに加えて、完全新キャラクターとなるムドラの登場ということで新鮮な気持ちで読ませてもらったのだけれど、まさかこれほど泣かされるとは思わなかった。
本作の特徴にして魅力として、迷宮の魔物たちの物語があるんですよね。本来なら迷宮というシステムのなかに構築される駒にすぎない彼らたち。英雄を選抜するために戦い英雄を育てるための糧となる、生命と呼ぶのもおこがましいただのシステム。
だけれど、先のアステリオスがそうだったように、彼らに知性が宿った時そこには意識が生まれ魂が生じる。そして、彼らは与えられた役割をただ機械的にこなすものではない、自分の生きた証を、誇りを、矜持を、信念を示すために抗い、戦うのである。やらされるのではない、彼らは自分たちでそうするのだと決めて、その決意を果たそうとするのだ。
彼らはだから、魔物であり門番でありながら、戦士であり勇者なのである。その生き様は熱く、死に様は尊く、敵であり倒すべき存在でありながら、あまりにも眩しく、尊敬に値するモノなのだ。
このシリーズの愛すべき、敬するべき敵たちはだからあまりにも魅力的すぎて、そんな彼らを乗り越えていくという事績は、故にこそ偉大として誇れるものになる。リルドールたちがやり遂げる冒険はだからこそスゴいものなのだと実感できる。それだけ、倒した敵から託された想い、というものは途方もなく重く大切なものだから。
でも、同時に大きな喪失感を伴うものでもあったんですよね。乗り越えていくということは、そこに置いていく、置き去りにしていくということ。
決して忘れてしまう、ということではないのだけれど……。でもやっぱり離れていくものなのだ。大切に心の中に、残してくれたものを宿していても、やっぱり寂しいものなのだ。
その寂しさに、傷つく人もいる。決して許せない人もいる。
だから、というわけではないのだろうけれど。今回の話は象徴的だったかもしれない。明確に、彼らヒュドラは残してくれていったものがあるのだから。リルたちに、託していってくれたものがあるのだから。
ムドラが自分で決めて、自分で選んで、自分で欲した「人間」としての道だとしても、家族として彼らはリルたちに託して、残してくれたのだから。
触れられる形で、優しい願いを残してくれていったことに深い安堵とも感謝ともつかない想いを抱いてしまった。新しい可能性を、この書き下ろし版で見せてくれたことに感じるものがあったのだ。
きっと、残されたものをうまく受け取れなかったキーパーソンたちの傷を、余計に浮き彫りにするになるかもしれなくても。

しかし、ムドラは割り込みという形で物語の中に入ってきたキャラクターとしては、びっくりするくらいいいキャラしてましたなあ。ってか、この作者さんホントキャラ立てうまい上にほぼほぼ取りこぼしなく育てていくんですよね。前巻でもほんのちょっとすれ違うだけだったカスミたち初心者パーティーも順調に話に絡むようになってきて、この娘たちもリルたちに負けず劣らずの熱くもぶっ飛んでるパーティーになっていくんですよね。ってか、エイスがこの頃から既にアレの萌芽がw

この世界の魔法って、ある種の方程式や秩序あるルールに基づく現象や作用ではなく、あくまで個人の想いによって発現するものだけに、縛りみたいなものはなく、だからこそ熱い想いに反応してどこまでも強くなり、どこまでも自由に変化するものなんですよね。
だからこそ、ヒィーコの衛兵だった父への想いから生じたあの変身フォームから、さらに大事なものを守りたいという強く切実な想いから、自分を救い育て導いてくれたギガンのそれを踏襲する新フォームが発現するところなんか、めちゃくちゃ熱いんだけれど。
一方で自由過ぎるのがリルの縦ロールなんですよねw ドリル程度じゃ収まらなかったよ、この縦ロール。そんな発想は限定的過ぎる、狭すぎる、固定観念すぎる、とばかりにもはやなにやってんのかわからん状態にまで好き勝手編み上げていく始末。なにその、四足歩行モードw 挿絵になったのを見ると想像以上にめちゃくちゃすぎて、これは笑うってw
そりゃみんな逃げ惑うわ。おまけに水面をアメンボみたいに移動可能って、いったいどこに行こうとしてるんですかw 一番ツッコミそうなヒィーコがすでに慣れちゃって何がアレなのかわからなくなってる時点で朱が混じり切っちゃったよ。

次巻はついに50階層。ターニングポイントとなる場所であり、物語が激流へと飲まれていくスタート地点。既にウェブ版読んでいるにも関わらず、ワクワクしてくるこの期待感、たまりませんなー。

1巻感想

第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1 ★★★☆  



【第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1】 翠川 稜/赤井 てら ヒーロー文庫

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天使のような王女が降嫁された相手は強面の騎士!? 恋には年の差も身長差も関係なし? あま~いラブコメディが登場!

リーデルシュタイン帝国は隣国との戦争に勝利し、戦勝の式典のために慌ただしい時を過ごしていた。そんな中、第六皇女であるヴィクトリアは父である皇帝より、先の戦争で武勲を挙げた第七師団師団長のアレクシス――通称「黒騎士」に降嫁させると告げられる。
ドラゴンすら屠ると言われる剣の腕に加え、その鍛え抜かれた大きな体躯と厳しい風貌は、令嬢なら顔を見ただけで泣いて逃げ出すと恐れられている黒騎士。
対するヴィクトリアは16歳という実年齢に反して、10歳程度の子供にしか見えないほどに、幼くあどけない少女だった。
政略結婚にしても可哀想だと、周囲は結婚に反対するのだが、当のヴィクトリアは何故かアレクシスとの結婚に前向きなようで――。
女の人が泣いて逃げ出す強面って、まだ今の年齢(28歳)と師団長という立場故の貫禄でまだ格好がつくけれど、まだ何者でもなかった少年時代から女性に逃げ回られてたのなら、そりゃ思春期の繊細な頃の内面ズタズタでそれを今まで引きずっていた、というのもわからなくない。特に貴族様となれば一定の年齢になれば社交界にもデビューしないといけないわけで、惨劇が容易に想像できてしまう。
ただまあ、この国の貴族のご令嬢たちと来たら軟弱ですよねえ。強面ならまだましで、ブクブクの脂ぎった肉塊みたいな狒々爺にだって相手が偉い貴族だったりしたら問答無用で嫁がないといけないケースだって珍しくもないでしょうに。まあ、アレクシスの家が拒絶しても許されるだけの家格だったと言えばそれまでなんだけど、思いっきり悪役令嬢な役割が振られて思いっきりその役割を果たしまくってるイザベラ嬢が、なんだかんだと全く怖がりもせずにアレクシスにちょっかいを掛けているのを見ると、このクソ雑魚お姫様に根性で負けてるこの国のご令嬢方と来たら、と思ってしまいますがな。
まあ、イザベラ嬢は根性がある云々ではなく単なる無神経と考えなしゆえにアレクシスの強面に反応していないような気もしますが。
それにしても、このイザベラ嬢ってどういう立ち位置なんだろう、物語的に。ヴィクトリアのライバルというには、あまりにもあんまりなクソ雑魚っぷりですし、アレクシスとの間に割って入ることもまるで出来ていないわけで、そのくせアレクシスとヴィクトリアが直接関与しない場外ではやりたい放題やり倒して悪評ばかりは盛大にトロフィーの如く勝ち取りまくってますし。いや、なにしに現れてるんだ、このキャラ。彼女の起こしたトラブルの影響が回り回ってヴィクトリアたちが介入して解決する問題に発展しているのは確かなんだけれど、えらい遠回りと言えば遠回りな関与しかしていませんし。というか、敗戦国の人質同然に来た人間にこんな好き放題させて、帝国としても威信の問題とかあるんじゃないだろうか。いい加減、誰か偉い人ビシッとなにかしないと。
肝心のヴィクトリアとアレクシスの関係は、アレクシスが女性に対する自信のなさから及び腰なんだけれど、ヴィクトリアが積極的な分変にこじれることなく順調に進展していて、殆どノープロブレム。わりと16歳だけど10歳ぐらいの容姿でしかない、というのは難しい問題をはらんでいると思うんだけれど、アレクシスが及び腰な分婚約者というよりも姫に仕える騎士として振る舞うことで何とか自分を保とうとしているので、見た目もギリギリセーフになってるんじゃないでしょうか。28歳のいい男が10歳の女の子に本気で愛をささやくというのは、なかなか犯罪的な構図になってしまいますしねえ。まあイケメンならそれも許されてしまうのでしょうが。
それでも、王族として統治者しての資質を多分に見せつつ、年頃の女性として花嫁であることを公に、そしてアレクシスにも直接にアピールしてみせるヴィクトリアに、事態についていけていないアレクシスも段々とああこの人と自分は結婚するのだ、という自覚が芽生え、尊崇と敬愛の中から親愛とそれ以上の萌芽が育ち始める姿には、なんともときめきのようなものを感じる次第であります。
強面のおっさんにときめいてどうするんだ、と思わないでもないですがそれもまた良し。

嘘つき戦姫、迷宮をゆく 1 ★★★★  



【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 1】  佐藤 真登/霜月 えいと ヒーロー文庫

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嘘つきな令嬢が、縦ロールを武器に迷宮で成り上がる! 美少女たちが戦う熱血冒険ファンタジー!

見栄っ張りで嘘ばかりつく貴族の令嬢リルドールは、自分で仕掛けた決闘で敗北し、実家を追い出されてしまう。迷宮都市で謹慎処分を受けるのだが、リルドールは挫けない。
周囲を見返すため、冒険者としての成り上がりを決意し、街で出会った少女コロネルとともに迷宮へ挑む。温室育ちのリルドールは自分よりも才能のあるコロネルに嫉妬し、現実に打ちのめされ挫けそうになるも、自分が持っている、とある「武器」に気がつく。
艶めく髪は女の命、ドリルロールは美の結晶。
女の誇りが詰まったこの髪に、貫けぬものなどありはしない。
見栄と強がりしかなかった少女が自分の嘘を真実へと変える覚悟を決めたとき、縦ロールは最強の武器として変化し、無敵の輝きを放つ。
これは、ただの小娘だった少女が英雄になるまでの熱血冒険ストーリー。

ウェブ版既読済み。完結まで読破しましたけれど、自分が今まで読んだ中でも屈指の傑作でありました。もうとにかく熱いのなんの。
というわけで、再度あの熱量を味わいたく電子書籍化されたのを機に一揃えすることにしたのですが。読んでびっくり。なんか、加筆分が凄くないですかこれ!? 特に世界観に関する部分については別物かというくらいの肉付けがしてあって、この特殊な世界のありようがしっかりと感じられるように語られてるんですよね。
本作において、迷宮と世界の関係というのは非常に重要である意味作品の根幹を為している部分でもあり、ここの肉付けというのはそのまま物語そのものの厚みへと繋がってくるだけに、これは良き増量分だったんじゃないでしょうか。
それ以上に驚きだったのは、結構キャラデザインとか変わってるところですか。コロネルなんて確か銀髪じゃなくて赤毛でしたもんね。銀髪はヒィーコの方じゃなかったかしら。加えてセレナです。一番変わったの彼女じゃないの!? なんかロリ化してるし。ウェブ版では自分、20代前半のお姉さんのイメージで見てたんですよね。黒髪で背も高めのお姉さん的な。ライラとの年齢差考えると、本作での15歳というのはともかくとして、もう少し下の十代後半だったのかもしれませんが。作中で年齢って出てたっけ。

ともあれ、久々に最初期のリルドールを見ることになったのですが、ほんと最初の頃のリルって酷い小娘なんですよね。見栄と自己顕示欲と虚栄心でガチガチに心を鎧って、現実に背を向けて高慢ちきに他人を見下すことで自分を持ち上げようとする、どう言い繕っても最低としか言えない貴族の小娘さまなのである。
でも、この小娘さまは馬鹿で愚かでみっともないろくでなしではあったのですけれど、自分の矮小さを痛いほど理解しているからこその、愚かさでもあったのです。バカさ加減であったのです。
そうでもして、虚栄心で身も心も覆っていないとこの娘は耐えきれなかった。常に惨めに敗北し続ける現実に向き合えなかった。そうやって、わかっている自分のみっともない有様から目を背け逃げ続けるしかなかった弱さが、惨めさが、さらに彼女を追い詰め破滅へと追いやっていく。
もし、リルドールが冒険者ギルドでコロネルと出会わなければ、間違いなくリルドールは自分でも理解していながら止めることの出来ない破滅へのアクセルを踏み込み続けるしかなかっただろう。
だからそれは、紛うことなき運命の出会いだったのだ。そう、運命の出会いだったのである。リルドールにとってだけではなく、コロネルとリルによって成人としての名を与えられた少女にとっても。
コロネルから注がれる純真な憧憬は、リルの虚栄心を満足させ誰知らずとも追い詰められていたリルの心に一滴の余裕をもたらすのだけれど、コロの戦闘面での優秀さはレベルばかり高くて実戦では対して役にも立たないリルをまたぞろ追い詰めていくのである。ほんと、もう何にでも追い詰められて自滅型の破滅へとひた走ろうとする貴族様である。
でも、彼女の見栄っ張り、虚栄心はともすれば自身の矮小さに打ちひしがれて蹲り身動きすら取れなくなりそうなリルの心を奮い立たせる最後の、なけなしの燃料であり炎であり原動力でもあったわけです。それをなくしてしまえば、リルドールは本当に何も出来ない引きこもりの無能な小娘になってしまう。
リルの破滅を食い止めるために放たれた、せめて籠の鳥でも何も出来ない娘になろうと平穏に暮らすほうがマシだろうと、身内から放たれた彼女の見栄を、心を折るための刺客によって追い詰められ、自分の卑しさを、醜さを、おぞましさをもう目を背けることが出来ないくらいまざまざと暴き立てられたリルドールを、それでもなお立たせたのは。
コロネルからの憧憬だったのです。それも、無知で見当違いの憧れでも尊敬でもない。リルドールという少女の弱さを、愚かさを知った上でなお、その弱さのなかの輝きを、コロが知っている、身につけている強さとは質の違う強さを、リルの中に見出してくれた上での本当の意味での憧れだったのです。
純真で真っ直ぐな、そして誰よりも、リル自身ですら信じられなかったリルの強さを肯定してくれる、そんな憧れを目いっぱいに注がれて、稀代の見栄っ張りがここで見栄をはらずになんとする!
歪んだ見栄は、その当人を不幸にするでしょう。ですが、正しき憧憬に中てられて奮い立つ見栄は、正しく人を立たせるのではないでしょうか。
本当にクソつまらない雑魚にすぎなかった人間が、本当の輝きを手にする瞬間のなんて熱く眩しいことだろう。
自分がつき続けたつまらない嘘を、心の底から信じてくれた人がいるのなら、その嘘を真実とすることに何の迷いがあろうものか。
そんな類の覚悟こそが、魂の叫びこそが、己の内から掻き毟るように湧き出した願いこそが、この世界においては魔法となって発現するのである。
彼女の場合は縦ロール。よすがであり誇りであった縦ロールこそが、彼女の最強の武器(物理)となって彼女の大進撃を穿っていくのである。
まだこの頃は縦ロールの使い方も最初ということで大人しいというか常識的? いや、縦ロールが武器としてぐるぐるドリドリぶん回され回転している時点で常識的からは大いに足を踏み外しているのだけれど、これでまだ序の口なんですよね。リルさまのドリルの進化、その使い方のぶっ飛んだ発想はまさに怪物的変遷を辿っていくわけだが、まあそれはまだ将来の話。
この時点ではまだコロのシングル縦ロールブースターのほうがビジュアル的におかしいのです。あれ、位置的にブースター点火したら思いっきり地面にグルンって頭ぶつけそうなんですけどね!! コロってばよっぽど首が強いに違いないw
ただ、でもね。この一巻で一番好きなシーンは。縦ロールで派手に暴れるシーンではなく、才能の欠片もないレイピアの練習を、リルが愚直に続ける場面なんです。縦ロールの魔法は大切にしながらも、出会った時にコロについた嘘と見栄を本物にするために、諦めずに投げ出さずに下手くそなレイピアの練習を続けるシーン。ヒィーコが本当の意味でリルという人を好きになった場面。ここに、リルドールという人の大切な全部が詰まっているようで、この先の彼女の在り方を追い続ける上でも大事な、そしてとても好きなエピソードなんですよね。それを、この一巻のエピローグ、締めで描かれたのはなんとも嬉しい限りなのです。
次の巻では完全新キャラも登場するようですし、シリーズ屈指の人気を誇るおっさんやこの巻でもチラ見的に登場した同世代の冒険者チームの面々もじきに本格登場するはずですし、書籍版のここからも実に楽しみ。期待さらに膨らみます。

ナイツ&マジック 9 ★★★★   



【ナイツ&マジック 9】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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ボキューズ大森海での騒乱を終え、銀鳳騎士団は巨人族と共に王都に帰還する。巨人族、そしてエルネスティを襲ったという第一次森伐遠征軍の末裔の存在は、フレメヴィーラ王国にとってまさに寝耳に水。突如もたらされた途方もない話に、もはや既存の価値観は通じず、王国は新たな時代へと踏み出していくことになる。そして銀鳳騎士団にもまた、巣立ちの時が迫っていた。此度の事件で銀鳳騎士団の影響力を重く見た国王リオタムスは、エドガー、ディートリヒ、ヘルヴィらが率いる各中隊を新たな騎士団として独立させるよう告げる。エルネスティの下に残る者、騎士団長としての道へ踏み出す者、新たに入団を目指す者―それぞれの想いを受けて銀鳳騎士団は形を変え、新たな飛翔の時が訪れる。

リオタムス王がご苦労さますぎる! 破天荒な先代と比べて地味というか堅実な現王さまだけれど、エルくんが持ち込んでくるトラブルは先代の頃よりも更にスケールアップしてるんで、大変極まるのである。今回なんて、大陸の歴史そのものを確実に変えてしまう案件ですものなあ。それを思えば、これだけの大業を堅実に受け止めて前に進めているリオタムス王はまこと名君なのでしょう。
……よりにもよってエルくんから「自重してください!」と説教される先代と比べるのがまあ間違っているのかもしれません。
でも、巨人族なんて存在にパニックにならずになんだかんだと受け止めるフレメヴィーラ王国の人々は、国ごとエルくんに毒されてる気がしないでもないですが。
これほど異なる種族と、初遭遇でこうやって友好を結び、将来の展望を語り合いつなぎ合う、という展開はなんとも眩しい限りです。こういう未知との遭遇はどうやったって衝突から始まってしまうもので、巨人族の戦士的好戦的な在り方からすれはそれは必定であったでしょうに。
エルくんがアディを連れてたとはいえほぼ単身で接触したのが、これ幸いになってしまったのか。

その意味では、後半の方ではキッドがエルくん以上に真っ当に主人公してるんですよね。久々に登場したと思ったら、いきなり主人公やりだしたからびっくりしたよ!
エルくんの一番弟子らしい破天荒さと、エルくんや妹と比べるとまだ落ち着いている常識人なところがうまいことブレンドされて、派手にやらかすけれど真っ当なところに収めるという良い主人公に収まってるんじゃないでしょうか。派手にやらかして派手に拡大させて着地すらさせずにそこから更に大気圏外に打ち出してしまうエルくんと比べるとまあ穏当である。
でも、いいのかキッド。なんか勝手に自分のヒロイン増やしちゃってるけど! エレオノーラ女王陛下はどうするのさ! 既に飛び出してった現状で激おこなのですが。
こうしてみるとキッドはかなり真っ当な部類なので、モテるのはわかるんですよねえ。それに比べてエルくんと来たらとてもついていける人間がいないだけにアディの独壇場ではあったのですが、この度ようやくアディがエルくんの捕食に成功して、結婚と相成ったわけですが……ぶっちゃけ何が変わったんだろうというくらい何も変わらんな、この二人は。それでもまあ、収まるところに収まったのはめでたい話です。

巨人族との友好宣言に森を開拓していく何世代にも渡って続いていくだろう大事業の始まり、という時代の転換点とも取れるイベントにワクワクをつのらせていたら、一方で畳み掛けるように浮遊大陸とそこで暮らすハルピュイアというまたぞろ新しい人種との遭遇、という冒険心を擽るイベントが巻き起こり、大航空時代の名にふさわしい大空を駆け巡る飛空艇同士の空戦まで勃発して、この一巻で盛りだくさんも良いところ。
巨人族の方、落ち着いたとは言え終わってなくて一緒に連れたまま浮遊大陸編まで突入してしまうあたりのごった煮感、正直大好きです。

しかし、ヘルヴィはちゃっかりうまいことエドガーの隣に収まったなあ。いやもう、アディが結婚するくらいなんだから、こっちの二人もくっついちゃっていいと思うんですけどねえ。エドガーの甲斐性次第か、こっちは。

シリーズ感想

異世界食堂 4 ★★★★   

異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)

【異世界食堂 4】 犬塚惇平/エナミカツミ ヒーロー文庫

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家族を持ったことのない、遠い異世界からやってきた女。家族を失い遠い大陸から戻ってきた男。終戦間もない混沌の時代に二人は出会った。女ができた仕事はただ一つ。魔王を狩ることのみ。男ができる仕事はただ一つ。料理を作ることのみ。やがて女と男は店を持ち、家族を作り、そして異世界の客を招く。かくて始まりし『異世界食堂』。毎週土曜日にだけ開くこの店は、絶品の料理で、多くの客をもてなす。『洋食のねこや』、創業五十年。『異世界食堂』、開店三十年。今日も、チリンチリンと扉が開く。

あれ? けっこう先代店主が勇者だったと思ってた人多いのかしら。先代のキャラからしても根っからの料理人っぽかったのだけれど。
というわけっで、洋食屋「洋食のねこや」の成り立ちと「異世界食堂」誕生の謎が描かれた第四巻。偶々、異世界とねこやがつながってしまったのではなく、ちゃんと明確な理由と意思があってのことなんですよねえ。
人に歴史あり、店にも歴史あり。
この作品は、過去から未来へ、次世代へと残し受け継がれていくもの、というテーマみたいなものが色んな場面から伺うことが出来るのだけれど、「異世界食堂」のはじまりとそこに込められた願いがこうして語られ、そして時代である今の店主によって続けられている今の「異世界食堂」に暦お婆ちゃんが現れて、改めて店のマスターキー。異世界へとつながる扉を閉めることの出来る鍵を託して、今の故郷である日本の孫とともに住む自宅へと戻っていく姿は、なんとも象徴的であり印象的でありました。
先代の爺様と、かつて邪神を封印した四英雄の一人であり、この異界である日本に流れ着いて、一人の暦という女性として生きることになったヨミという女の出会いと、二人によって育まれた願い。
でも、それを引き継いだ今の店主が、異世界のお客さんたちに料理を供しているのは先代たちのそれとは、また少し形を変えて成り立ってるものなんですよね。アレッタを給仕として雇っているのもその一貫だし、久々に店に訪れた暦さんが、「ねこや」が先代と自分の手を離れたんだなあ、と実感している様子に何か沁み入るような感慨を抱いてしまいました。
確かに受け継がれるものがあり、しかしその先で時代や人に合わせて変わり適応していく。変わりながらも変わらず、変わらないまま変わっていく。歴史や伝統って、そんなものなんですかねえ。
王妹であるハーフエルフの先祖返りであるヴィクトリアと、彼女の小さな甥っ子と姪っ子のエピソードもまたそんな変わるものと変わらぬものを併せ持った家族の話ですし、帝国から広がった「ダンシャク」の芋の真実なんかも、知られざる歴史の1ページであると同時に、店主の幼いころのヤッチャッタエピソードでもあるわけで。
そんな店主ですが、わりともういい歳にも関わらず、まだ未婚で子供もいないわけですよ。かつて居たらしい恋人に関しては、なにやら悲恋めいた話があるらしいですけれど、現状後継者いないんですよね。
これについてはウェブ版ではちゃんと答えが提示されているのですが、書籍版だと影も形もないんですよね。今後、どうするんだろう。掲載エピソードからすると、まだ書籍版だとそこまで行ってないのか。では、これからに期待でしょうか。
それにしても、先代とヨミお婆ちゃんの若き頃の質朴としたラブロマンス、これはこれでいいもんだなあ。先代は、過去の異世界食堂のエピソードでも感じたけれど、粋な人なんですよねえ。それでいて、戦前生まれの人らしい逞しさも迸っていて、まあヨミお婆ちゃんからすると運命の出会いだわなあ。
意外と、今の店主とはかなりキャラも違っているのも興味深い。
そして、客同士の間でも広がっていく人間関係。本来なら遠い異国の地で消息を絶ってしまった親族とか会えるはずがないのに、ねこやでばったり再会して、生存確認! とか、この異世界食堂でないと成立しない話ですしねえ。エルフのフェルダニアにも旅の連れ、いや新たな家族が出来たり、スイーツを通じて新たなパーディーが生まれたり、とここにも「変わっていく」ものがあり、そこに「異世界食堂」が素知らぬ顔をして大きな存在感を齎している。
いやしかし、改めて原作というか小説版はこれ、飯テロパワー高いですわ、強いですわ。読んでてめっちゃお腹空く。ぶっちゃけ、お子様ランチとか凄い食べたくなってしまったのはどうしてくれよう、ってなもんですけれど。パフェやスイーツは食べれても、お子様ランチだけはもう頼めないもんなあ。どれだけ恥じらいを捨てようともw

シリーズ感想

ナイツ&マジック 8 ★★★★   

ナイツ&マジック 8 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 8】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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穢れの獣による襲撃から飛空船団を護り、ボキューズ大森海に墜ちたエルネスティとアデルトルート。
森に暮らす巨人族――カエルレウス氏族と出会った彼らはやがて、巨人族の間で起こる戦いの流れに飲み込まれていった。一方の銀鳳騎士団は飛空船団を再編成、森の奥深くを目指して進む。騎士団長を探す彼らの行動は森に様々な影響を及ぼしてゆき、ついに巨人族が最大氏族であるルーベル氏族が動き出すに至った。
圧倒的な力、さらに穢れの獣を引き連れたルーベル氏族の暴虐に立ち向かうため、エルたちは各氏族を糾合し諸氏族連合軍の立ち上げを計画する。小魔導師とともに空を行く二人は、道の途中で銀鳳騎士団と合流。その協力をもってついに諸氏族連合軍の結成を成し遂げたのだった。
銀鳳騎士団とエルくんとの再会、劇的なものになるのかと思ったら、全然別の意味で劇的だったよ!!
なんで、連絡手段が無いからって銀鳳騎士団の飛空船団を襲撃するんですか、このエルくんは!?
エルくんの方から攻撃しない、というのは良心的と言っていいんだろうかこれ。でも、森の奥深くまでわざわざ探しに来た団長様に襲われるとか、普通は思わんよなあ。ってかね、連絡手段がなかろうが、手振り身振りで意思の疎通を図ろうとか出来なくもないだろうに、嬉々として自分の騎士団と本気でやりあえるのってワクワクしましね、と突っ込んでいくこの銀髪、相変わらずぶっ飛んでイカレてる。
でも、そう言えばエドガーたち今の中隊長クラスの面々とエルくん、実際に剣を交えるようなことはしてないんですよね。学生時代からこっち、ずっと仲間としてやってきましたしねえ。昔と比べて、エドガーもディー先輩も別次元と言っていいくらい腕を上げているのを思えば、いっぺん本気でやってみたい、というエルくんのロボット脳も気持ちわからなくはない。
まあ銀鳳騎士団の連中も朱に交われば赤くなるじゃないけれど、完全にエルくんとベクトル一緒の頭おかしい集団になっちゃってるわけで。いきなり襲い掛かってきたエルくんの正体もすぐに察するし、襲われたこと自体みんな全然気にもしないし、いや普通もうちょっと怒るよ? なんか、当たり前みたいに受け入れちゃってるけれど、誰か叱らないの?! ダメだ、作品始まって以来、エルくんにはストッパー役って居た試しないんだった、そう言えば。
毎度おなじみやりたい放題である。
巨人編では、そのやりたい放題にも物資面などの制約もあり、さらに相方がアディしかいないという状況でけっこう不自由していたのだけれど、銀鳳騎士団と合流してしまうともう手がつけられないありさまに。こうしてみると、銀鳳騎士団ってエルくんにとってもなくてはならない存在になっているのがよく分かる。やりたい放題やるにも、必要なものはたくさんあるんですよね。それを、銀鳳騎士団はあらゆる面で、物資面でも支援体制としても戦力としても、一緒にはしゃいで大騒ぎする同類としても完全に賄い切ってるのよねえ。
まさに、銀鳳騎士団あってこそのパーフェクト・エルくんなのである。
これが西方諸国の標準的騎士団、と勘違いされてしまうと、西方諸国みんな大迷惑なんでしょうけれど。巨人同士の大戦争というさなかに喜々として飛び込んで、引っ掻き回して、大暴れして、色んな意味で全壊させていく銀鳳騎士団諸氏。
だから、騎士団規模でエルくんレベルの「やりたい放題」を当のエルくんと一緒にやらかしたら、えらいことになるって、というのを本国の手の届かないこの辺境でやってしまってる彼ら、いい具合に頭おかしいです。エドガー隊長、確か良識派だったはずなんだけれど、銀鳳騎士団での常識がもう染み込んでしまってて、何が変かわからなくなってないだろうか、このヒトもw

肝心のロボット。シルエットナイトも、一度大破してしまったイカルガを親方が予備機持ってきてくれたお陰で復活。ただ復活で済まないのがまたエルくんで。
合体だ!! ロボットらしくついに合体モードが登場してしまったぞ!! イカルガで到達点ではなく、さらにその先が出来てしまったのって、相当に恐ろしいんですが。
巨人族の新入騎士団員まで加えての凱旋というオマケつき。帰っていたエルくんたちを迎える王国の人たちの仰天っぷりが容易に想像できるんですが。って、エルくんの故国たるフレメヴィーラ王国なら、もうこれくらい慣れっこですか。あの国も相当おかしいなあ、うん。

シリーズ感想

ナイツ&マジック 7 ★★★☆  

ナイツ&マジック 7 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 7】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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ボキューズ大森海へと乗り出したフレメヴィーラ王国飛空船団は、未知なる魔獣との遭遇により撤退を余儀なくされた。エルとイカルガは皆を護るべく奮戦し、無事に船団を逃がすも森へと墜ちてしまう。追いかけてきたアディも一緒に、二人は森の迷子となった。彼らを待ち受けていたのは予想だにしない出会い―『巨人族』との遭遇であった。巨人氏族同士の争い。普きものの大敵、穢れの獣。そして陰で蠢く小鬼族なる者たち―。巻き起こる戦いがエルとアディを呑み込んでゆく。孤立無援の二人は、しかしあきらめ止まることなどない。「ここで幻晶騎士を、作り上げます」生み出されるは驚天動地の異形の機体。争いの只中へと向けて飛翔する!
アディがいつもより倍増の勢いでキモいw
図らずも二人きりというシチュエーションに加えて、巨人族との交流の都合からエルくんから奥さんとして紹介してもらったお陰で有頂天極まってしまって、ほぼ終始げへげへ言ってるような始末で、女性としてアウトな顔しっぱなしだったんじゃないだろうか。彼女、メインヒロインなんだぜw
まあアディとしても、奥さん扱いも然ることながらこれだけエルくんと二人で一緒に居られる時間というのは子供の頃以来だったでしょうからね、気持ちはわからなくもない。最近までエルくん、ずっとヒャッハーしっぱなしでなかなかアディに構える時間なかったですからね。
一方で、ヒャッハーできなくなったエルくんはというと相当に鬱憤溜まっているようで。補給も修理もできない大森海の只中に取り残されてしまった以上、幻晶騎士には乗れない状態になってしまいましたからね。これほど幻晶騎士と関われない時間というのも、これを組み上げて以降なかったんじゃなかろうか。
というわけで、迷った先で出会った巨人の小さな氏族と交流を重ねながら、試行錯誤であるものを駆使して幻晶騎士を作り上げようとするエルくん。てっきり、巨人族に新たな幻晶騎士を作るための新技術を保有していて、みたいな話になるかと思ったらそう簡単にはいかなかった。まあ巨人族のあの質量を考えると、とても産業が発達しているとは思えないですもんね。消費資源が大きすぎて、少なくとも森のなかで暮らしているような種族では難しいものがあったか。
でも、ここで出会った巨人族は気のいい連中で、脳筋ではあるものの素朴で素直でまっすぐな気持ちのよい心根の持ち主であったわけですよ。まあ、脳筋な分、最初は殴り合わなきゃいけなかったわけですが。幻晶騎士使わなくても、生身で楽勝で巨人族の勇者と渡りあうエルくん。幻晶騎士乗りとしての無茶苦茶さに最近は目を奪われガチでしたが、そういえばこいつ生身でも変態機動の持ち主だったw
エルくん自身としてはロボットである幻晶騎士に騎乗しての戦いじゃないと納得行かないというか不満なんでしょうけれど。
ともあれ、巨人族の村に滞在しながら、そこで得られた素材で試行錯誤を繰り返すものの、どうにも上手く行かずに停滞していたさなかに、巨人族における古くからの掟を破って権力を握った大氏族と旧来の伝統を守ろうとする諸氏族との争いがエルくんたちをも渦中へと巻き込んでいく……というよりも、エルくんが積極的に首を突っ込んでいくことに。まあ、色々と触れてはいけない部分にあっちの大氏族が触れちゃったからなあ。ただでさえ幻晶騎士乗れなくてカリカリ来ていたエルくんの虎の尾を踏んでしまうことに。
この時点であちらの方をご愁傷様、と思ってしまう程度にはエルくんの色んな意味での酷さは身にしみてしまっていますな。そして、そんな奇妙奇天烈破天荒なエルくんのやり口に染め上げられていく、純朴だった巨人族さんたち。わりとヤバゲな武器まで供給されてしまって、巨人族たちがエルくんに魔改造されていく〜。
さらに、反撃を企てる中で、大森海の中に居るはずがなかった人間族のコミュニティーと接触し、そこの鍛冶の手を借りて、ついに現地供給応急型の変則イカルガ……カササギが誕生してしまう。ってか、このジオングに足は要らんとですよ、のノリがすげえw
ただ、これまでの新型機みたいに次世代型の最強機、というわけには行かない現地生産の無理やり動かした改造機なだけに、あのエルくんが苦戦することに。幻晶騎士に乗ってのこの手の苦戦はもしかして初めてだろうか、と思うくらい。
総じて、このようにエルくんがいつものようにやりたい放題出来ない手足を縛られたような状態だけに、動きとしてはやや停滞気味だったかも。それでも、これまで大らかに過ごしてきた巨人族にとっては劇的すぎる変転だったんでしょうけれど。エルとアディの騎士団に入れてもらって、もれなくかつてのアディとキッドのように順調に魔改造されていく巨人族の少年少女二人が可愛らしいやらご愁傷様やらw
特に、村を襲った悲劇によって急遽氏族を率いる羽目になってしまった幼き少女魔導師ってば、エルとアディに弟子入りしてしまったが為に、巨人族の魔導師としてはなんか完全に間違った方向に突進している様子がなんともはやww

まあエルくん大暴れは次回以降でしょうから、彼を舐めてる連中が食らうだろうしっぺがしがどれほどの規模になるか、実に楽しみである。

シリーズ感想
 
12月1日

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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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