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ファルまろ

天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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ウルベスでの独断専行が家臣達の反感を買い、しばらく国内で大人しくすることにしたウェイン。
その矢先、大陸西部のデルーニオ王国より式典への招待が届き、妹のフラーニャを派遣することに。
しかしそこでフラーニャを待ち受けていたのは、数多の思惑が絡み合う国家間のパワーゲーム。一方で国内に残ったウェインの下に、大陸東部にて皇子達の内乱が再燃という報せが届く。
「どうやら、東西で両面作戦になりそうだな」
グリュエール王の失脚。皇子達の陰謀。東レベティア教の進出。野心と野望が渦巻く大陸全土を舞台に、北方の竜の兄妹がその器量を発揮する、弱小国家運営譚第十弾!

うわーーっ、今回はウェインは完全に盤外にあって、一から十まで主役はフラーニャだ!!
マジかー。これまでも一部の局面でフラーニャ主体となって状況を動かす事もあったし、物語としてもフラーニャ主役で動く場面もありましたけれど、一冊丸々フラーニャ主人公として描くとは。
それだけ、王女フラーニャの役割がこの作品の中で重要も重要、最重要になってきたという事を意味しているんだろうけれど、それにしてもフラーニャの活躍が予想を遥かに上回るもので、まだまだこの娘の事を見縊っていた事を思い知らされた。
今までも既に政治の表舞台に立ち、戦火の最前線に立たされた都市で演説をふるって市民の指示を取り付けたり、意外なカリスマや政治センスを見せてくれていたし、お飾りを脱して自分で考える事が出来る王族として、ウェインの代理で外国に使節として派遣されるなど、大きな仕事をこなせるようになってきたフラーニャでしたが、それでも今までは兄ウェインの指示を受けていたり、突発的なことに襲われても受動的に対処する、という方向に徹していたんですよね。
でも今回は……間違いなく、自分で考え自分で介入し政略謀略が渦巻く国同士のパワーゲームのという盤上で自ら局面を動かす「プレイヤー」の一人として動いていたんですよね。
それはウェイン王子やロワ皇女、グリューエル王といった世界を動かしせめぎ合うプレイヤーたちと同じ土俵の上に立ったということ。
それどころか、同じようにシジリスの後を継いだデルーニオ王国の宰相や、王女という立場から国を動かし世界情勢に関与するウェインたちと同じ立場に立とうとしたトルチェイラ王女といった野心家どもと同じ盤面で指しあった結果、役者が違うとすら言っていいかもしれない手練手管を見せつけてくれたのですから、もう刮目して瞠目ですよ。
まさか、ウェインのプレゼントという決め手があったとはいえ、トルチェイラを手玉にとって見せるとは。トルチェイラにとっては敵として相対したいのはウェイン王子であって、フラーニャなんて眼中にもない、と思いたがっていたのに、完全にしてやられたわけですからね。実際は、色々と着実に実績を上げていたフラーニャのことめっちゃ意識していたくせに、取るに足らない相手と無視するから。油断であり傲慢であり、プライドの高さが足を引っ張ってしまったか。
その点、フラーニャは素直で人の話も良く聞きますし、一方で自分の意見をちゃんと持っているし、兄ウェインを尊敬している分、自分の能力を過信しませんし。
何より、その善良さが悪い嘘をつかない姿勢が、騙そうとしないあり方が、人から信頼を寄せられ、味方を増やすカリスマになっていて、こればかりはウェインを含めて他のプレイヤーにはないフラーニャ独自の武器なんだよなあ。
ロワも表看板では似たような路線で評判上げてますけれど、中身がウェインと思いっきり同類なだけにフラーニャと比べるとすげえパチモン感がw
いや、ちゃんとロワはウェインと同レベルの大陸屈指の謀略家であり政治家なのですけれど、あの中身のポンコツさを見てるとなあ……パチモン感あるよなあw
今回もウェインの謀略の片棒担いで悪巧みしまくって、他の皇子たちの勢力を削ぎまくった挙げ句帝国の実権をほぼ握るという躍進を見せているのに、「だるーん」とか言ってるユルユルの姿を見せられるとねえ……ロウェルミナってもしかしてこの作品のマスコットじゃないのかと思えてくる。
……かわいい。

今回の一件でシリジスの心からの忠誠を勝ち取ったフラーニャですけれど、実際にプレイヤーとして動いたことで、遠く離れた土地で事の推移をすべて見通していた兄の凄味を本当の意味で思い知る。同時に、彼女の知見が高くなり鋭くなるほどに、ウェインという兄の真の姿が見えてくる。
果たして、あの愛する兄にナトラという国を預けていて、本当に大丈夫なのか。そんなフラーニャの心のなかに芽生えた僅かな疑念に、シリジスの野心や復讐心からではない心からの忠信ゆえの指摘が突き刺さる。
プレイヤーとして立ったがゆえに、フラーニャ自身自分が歩むべき道、その岐路に立たされるという凄まじい回でありました。
でも、そのフラーニャの選択ですら、ウェインの思惑の上っぽいんだよなあ。いったいどの段階からフラーニャのことをここまで成長すると見込んでいたんだろう。当初は政治の何も知らないお兄ちゃん大好きなふわふわとした王女様だったのに。そんなフラーニャをただ猫可愛がりしているだけに見えたのに。
まあ、猫可愛がりしているのは今も変わらないのですが。

ついに毒蛇にニニムの正体がばれ、彼女がウェインの心臓というのみでなくこの大陸の行く末を握る心臓であることが発覚し、表舞台に引きずり出されそうな気配が漂ってきたことで、さて事態はどう動いていくのか。
いやー、先が読めないしドライブ感のとどまらない政治劇、謀略劇に、ワクワクが止まらんですわー。


天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 9 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「よし、裏切っちまおう」
選聖侯アガタの招待を受けウルベス連合を訪問したウェイン。そこでは複数の都市が連合内の主導権を巡って勢力争いに明け暮れていた。
アガタから国内統一への助力を依頼されるも、その裏に策謀の気配を感じたウェインは、表向きは協調しながら独自に連合内への介入を開始する。それは連合内のしきたりや因習、パワーバランスを崩し、将来に禍根を残しかねない策だったが――
「でも俺は全く困らないから ! 」
ノリノリでコトを進めるウェイン。一方で連合内の波紋は予想外に拡大し、ニニムまでも巻き込む事態に!?
大人気の弱小国家運営譚、第九弾!
ウェイン王子、お見合い斡旋仲人オジさんと化す!
いやなにやってんだ、と言いたくなるけど、これ真っ当な勢力間の際どいパワーゲームが繰り広げられている中で三面指しで盤面しっちゃかめっちゃかに蹂躙しているの図なんですよね。
ともあれ、選聖侯アガタの協力を得るために彼の領地であるウルベス連合の政争に助っ人として介入する事になったウェインですが、この巻における肝ってウルベス連合云々じゃなくて、ここでのウェインの行動、或いは事件の推移が将来起こる大戦の過程や結果を示唆している、という話が冒頭から置かれたことである。
話としては徹底してウルベス連合という国の旧弊的な柵と閉塞感、自分達ではどうにも出来ない雁字搦めの凝り固まってしまった関係を、ウェインという外部からの刺激物を通り越した劇物、毒物のたぐいによって引っ掻き回されたことで、ようやく突破口が見えてきた、というこの国のお話になっている。将来を暗示するような露骨なエピソードや情報は描かれていない。
ただ、後世にウェインの妹であるフラーニャがこの連合国で起こった出来事が、のちの大戦でのウェインたちの結末を暗示していた、と述懐しているとの記述を見るに、直接は関係ないけれど過去から続く旧弊に捕らわれて身動きが取れなくなった柵を、暗黙の了解を、破壊してしまうにはどうするべきだったのか。とか、一時連合所属国の首班の二人が駆け落ちして行方不明になった、という展開とか。色々と先々に起こりそうな顛末の中でウェインとニニムに当てはめて起こりそうな出来事、というのを想像してしまうのでした。
これまで言葉を濁してきた、ニニムたちフラム人がどうして被差別民になったのか。彼らがフラム人が民族結集して作った国がどうなったのか。そういったかなり重要そうな歴史の話も出てきたわけですしね。
それに、ここにきてウェインの動きがやたら怪しくなってきたんですよね。フラーニャが幾度かの外交で成果をあげ、諸外国でも名望を高めつつあるのにともなって、フラーニャ閥というものが生まれ始め、ウェインではなくフラーニャの方を女王として擁立しようという動きが出はじめているわけですが、これまでもウェインはそれを不自然なくらい「黙認」という形で見逃していたのが、さらに暗に後押しすらしているような素振りを見せ始めているんですよね。
元々、売国しようぜ、なんて言ってたように国民に対して責任は感じて放り投げようとはしていなかったものの、国王という立場に拘りは見せていなかったウェイン王子。むしろ、ナトラ国の王というのは彼にとって足枷になりかねない、とでも思っているのだろうか。
彼の本当の目的がどこにあるか、によるのだろうけれど。
その目的というのも、ほぼ「ニニム」に絞られるだろう事は想像できるんですけどね。
そう言えば、ウェイン王子が「いい人」「優しい人」と思われているという話にちょっとびっくりしてしまったのですが、彼の公的な言動を見ていたら確かに彼のそれは客観的に見て善良公平な賢王(まだ王子だけど)と見られても不思議ではないんですよね。直接対面した人は彼の空恐ろしさを実感するだろうし、決していい人などではない事は理解しているんだろうけど。
でも、彼が売国上等とまで言ってのけるほど、ある種他人に対してどうでもよい、という考えを根底に持っているようなタイプの人間だとわかっている人はどこまでいるのか。
いくらやばくても、王として国を背負って立つ覚悟と責任を持った人物だ、と捉えられているのはおかしくないですしね。実際、ナトラの国民に対して責任を投げ出していないし。
身内に対しては優しいのは間違いないんでしょうけどね。その身内認定がどの範囲までなのか。
今回、ちょっとニニムの身柄に危険が迫っただけでも国一つ潰しかねないラインを綱渡りしたように、ニニムが関わると途端に狂気の魔王化するウェイン王子。こいつって、もしシリーズ開始以前にニニムを喪ってたりしたら、普通によくRPGゲームとか長編大作とかで世界を破滅に追いやるラスボスとして登場してきそうなキャラなんだよなあ。
そんなラスボス系主人公が、果たして一体何を目論んでいるのか。むしろ、このシリーズここからが本番と考えていいのかも知れない。


天才王子の赤字国家再生術 8 ~そうだ、売国しよう~ ★★★★☆   



【天才王子の赤字国家再生術 8 ~そうだ、売国しよう~】 鳥羽徹/ファルまろ GA文庫

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選聖会議。大陸西側の有力者が一堂に会する舞台に、ウェインは再び
招待を受けた。それが帝国との手切れを迫るための罠だと知りつつ、西へ
向かうウェインの方針は――
「全力で蝙蝠を貫いてみせる! 」
これであった。
グリュエールをはじめ実力者たちと前哨戦を繰り広げつつ、選聖会議
の舞台・古都ルシャンへと乗り込むウェイン。だが着いて早々、選聖侯
殺害の犯人という、無実の罪を着せられてしまい!?
策動する選聖侯や帝国の実力者たち、そして外交で存在感を増していくフラーニャ、天才王子の謀才が大陸全土を巻き込み始める第八弾!

大陸の東側を占める帝国と、西側諸国の間でずっと綱渡りを強いられてきたナトラ王国。ウェイン王子の活躍の元、領土も増えて景気も活況を迎え、数々の戦争での勝利と外交交渉で見せた存在感は既にナトラ王国を小国と侮るものは大陸全土に存在しない。ましてや、それを手動してきたウェイン王子を況や。
前回名を成し始めた際におまけで呼ばれた選帝会議と違って、今回のそれはナトラを、ウェイン王子を狙い撃ちにした彼を追い詰めるための招待である。これを断れば、ナトラ王国は帝国側に味方したとして西側全土を敵に回し、しかし会議に出席すればどうやっても帝国との手切れを迫られ西側諸国の尖兵として帝国との敵対を強要される。
まー、どうやったって詰んでる状況なのだこれ。
それを顔色を無くして絶望感に苛まれながら西に向かう馬車の中で鬱屈する、なんて事もなく「コウモリ外交を貫いてやるぜー!」とテンション高々なウェイン王子。いや、どうやったらそんな意気揚々と会議に赴けるのか。まあ、もはや頭の抱えようもなくて開き直ってる、とも彼のキャラクターからは言えるのだろうけれど。本当なら頭抱えてのたうちまわってても不思議じゃないもんなあ。
ただ、今回わりと余裕ありそうだったのは、それだけ想定して会議を乗り切る自信があったからだろう。まあ、いつものように想定外に全部台無しにされてひっくり返されるのだが。

ただ、今回彼を狙い撃ちにした謀略は、ある意味明確な悪意と企図によるものだったんですよね。何気にこれまでウェインを追い詰めてきたどんでん返しって、誰の意図というものではなく偶然の産物だったり関係者の思惑を超えた事態だったり、馬鹿がバカバカしいにも限りある事をひょいっと越えてやらかしてしまったり、複数の意図が絡み合った挙げ句に訳わからんことになってしまったり、と本当に誰にとっても予想外想定外、という事が多かったわけです。
そういう事態って、人の思惑が入っていない分もう道理も何もあったもんじゃないからマトモに対処のしようがないケースだったんですよね。それを人智を超えたリカバリー能力で対処しきった上に逆に利益引っ剥がしてきたのがウェイン王子の凄まじい才覚であったわけです。
今回のある意味ストレートなウェイン王子を狙い撃ちにした謀略って、むしろ思惑が分かっている分彼にとっては対応が容易だったのでは? とすら思えるんですよね。それくらい、どう転がってもウェイン王子が詰んでいるはずの状況が、片っ端からひっくり返されていく様は鮮やかなものでした。
相手の思惑、狙いを読みきった上でそこから仕掛けられているだろうさらなる謀略、そして起こり得る展開を予想し読み切り、対処するどころかそれを利用して逆に全部自分以外の会議参加者に有無を言わせぬ決着へと持っていく。
今回の会議参加者は一人残らず凡人無能はおらず、将来を嘱望された辣腕の政治巧者であり、それ以上の怪人怪物魑魅魍魎たちが揃っていたにも関わらず、である。いや、ある意味全員が無能ではなく有能である、というのはそれだけ彼らの思考を読みやすい、という意味でウェインにとってはやりやすくすらあったのか?
参加者の中でも特に怪物たる一人であるグリュエール王は、もう主導的にウェインにちょっかいを掛けるつもりはなく、変に肩入れはしないものの、ウェインに自由にさせて彼のやらかす事を楽しむ方に好奇心が寄っているようですし、隙を見せれば食いついてくるとは言え大きく見れば味方側と言えなくもないですし、そうなるとやはり相手はカルドメリアとシュテイル、そして聖王シルヴェリオとなるのか。この三人はある意味わかりやすい現世利益や権力とは違った所に重きをなしている節があって、ウェインとは価値観が違っている所がある分、思惑が読みきれないところがありますし。
今回の謀略は、言わば西側諸国、教会としての真っ当な、というとあれですけれど、政治家として順当な価値観に基づく動きであった、というのもウェインが掌の上に乗せやすい状況であったとも言えるのでしょう。
言わば、ウェインの土俵の上だったんだよなあ。
既にウェインの手、というのは帝国中枢や大陸外縁にまで及んでいて、会議に影響を及ぼすためにロワに遠方で動いてもらったり、先に深く関わることになったパトゥーラのフェリテ首長やミールタース市長のコジモにも協力を求めたり、とその手は長く大陸全土に及ぶようになっている。
どうやら今回の会議の結果として、大陸西側の奥地の方にもツテは広がりそうだし。

ウェイン王子の思惑が、帝国側にも西側諸国にも河岸を預けることなく、その間でフラフラと行き来して利益を甘受する事にある、と会議参加者の誰もがわかっている、どころかウェインも堂々と表明、まではしていないもののその思惑を隠しもせずに胸を張っている。
にも関わらず、彼を糾弾しきることも出来ず、彼に旗幟を鮮明にすることを強いることも出来ない。本来なら2大勢力の間に存在する小国なんて、食い物にされ良いように利用されるのがイイ所なのに、主導権を握っているのは明らかにナトラ王国であり、ウェイン王子なのだ。
彼のコウモリ外交を、誰も非難できない、指摘すらし切れない。有無をも言えず、首根っこを押さえられ、彼の思惑に振り回される。何をやっても、その手のひらの上から逃れられないと思い知らされる。
これほど堂々と立場を曖昧にして立つ蝙蝠がいただろうか。
並み居る猛獣猛禽どもに、心底恐れられ戦慄される蝙蝠がいただろうか。
こんな凄まじい暴威を振るうコウモリ外交があっただろうか。
会議は踊るよグダグダに。
何も決まらず進行もせず時間ばかりが無為に流れていくばかりのグダグダ会議。普通なら、誰も目的を果たせない無駄で無能の結果、のようにしか見えないグダグダ会議が、これほど明確な意図を持って引きずりこまれた結果だと、これほど凄味を感じさせられるモノになるんだなあ、と感嘆してしまいました。

とまあ、西側諸国とウェインとの会議における壮絶な綱引き、駆け引きを中心に描かれた本編ですけれど、冒頭では拡大するナトラ王国の中で大陸全土で被差別民であるフラム人がどう影響力を及ぼしていくかでフラム人たちの間で意識の変化があったり、妹姫であるフラーニャが順調に成長することでナトラ王国内でフラーニャ派閥というものが生まれ始めていたり、とナトラの拡大のお陰でまた別の問題が起こり出していることが描かれているのだけれど……。
うーむ。
どうにもね、このあたりってウェイン王子には想定済み、な節があるんですよね。それどころじゃなくて、大陸全土を股にかけてナトラ王国の影響力を拡大させていっているウェイン王子の活動、これってスケール的にマクロに思えるんだけれど……ウェイン王子的には今やってることってマクロじゃなくてミクロな事じゃないのか、と思える所があるんですよね。
彼って、ウェイン王子って、ナトラのために動いてるんだろうか。もう随分昔のことで忘れてしまいそうになりますけど、最初ウェイン王子、この国派手に売っぱらおうとしてたんですぜ? タイトル「そうだ、売国しよう!」なんですぜ?
実のところ、この初志、王子は忘れてない気がするんだよなあ。
そもそも、ウェインはびっくりすることに「王子」であって「王」でないのだ。もうやってることは王様以外の何者でもない権限と責任を振るって負っているにも関わらず。
ここに来てのフラーニャの躍進は、そして彼女がウェイン王子に遺恨ある他国の追放された宰相を参謀に迎え入れたのも、それをウェインが許可したもの、そしてかの宰相がフラーニャを担ぎ上げるつもりであるつもりなのも。こうなってくると、ねえ。
そこに一番重要になってくるのが、なるほどフラム人に秘められた、ニニム個人に秘められているはずの秘密、となっていそうなんですよね。
そもそも、ウェインの初志って一貫して、そう、ニニムについてなんだもんなあ。
会議は踊る、の裏側でこのシリーズの根底に関わるものがついに動き出した気がするぞ。

しかし、馬車で移動してる時、ウェインが眠り込んでいるときのニニムがこっそり甘え尽くしている姿、可愛いなんてもんじゃなかったなあ。ダダ甘えじゃあないですか。
一方で、ニニムの髪染めしてるときの二人のイチャイチャは、二人の中ではイチャイチャにカウントされないという、妹たちに見られても何もおかしいと思っていない、あの甘々な雰囲気。フラーニャがこりゃあ邪魔しちゃいけねえや、と赤面しながら逃亡するのも無理からぬ特別感。
昔からこんなの見せられてたら、そりゃあ妹姫も兄にはニニムしか居ないし許さん、とニニム贔屓になるのも当たり前だよなあ、うん。


魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる ★★★   



【魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる】 クボタロウ/ ファルまろ 角川スニーカー文庫

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異世界に『忌み子』として転生してしまった少年アルは両親に捨てられてしまい、拾ってくれたのは『禍事を歌う魔女』と世界から忌み嫌われる女性であった。愛情を与えてもらった少年は【魔女】を殺すことを誓う――。

タイトルからすると、随分と悲劇的な顛末を予想させるものでしたけれど、もっと穏やかな内容でしたね。と、油断させておいてどうなるかはわかったものじゃないのですが。
何しろ、話が全然進まなかったからなあ。
タイトルでいうところの【魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる】のうちの【魔女に育てられた少年】までで終わってしまった感じで。
魔女メーディと狼のヴェルフに拾われて育てられた少年アル。本当に赤ん坊だった頃に捨てられたアルにとって、メーディはお母さん以外の何者でもないはずなので、お姉さんを主張する魔女さまには多分に無理があると思われる。と、イイたい所なのだけれど、転生者として赤子の頃から意識があったアルにとって、メーディは家族であってもそれほど「母」を意識させるような存在とは認識していないみたいなんですよね、彼の様子を見ていると。
そもそも、魔女のことを名前で読んでいる時点で、母親とは思ってないですよねこれ。メーディとしてはそのあたりでおかしいなあ、と気づいていてもおかしくはないと思うのだけれど、本当に気づいていなかったのか、アルの事を可愛がるのに目いっぱいでそれ以外に意識が向かなかったのか。
ともあれ、メーディは拾った赤子に情を移しまくりヴェルフと共に過保護なくらいに愛を注ぎまくってアルのことを育てていく。この赤子が忌み子であった事が彼女の罪悪感を掻き立てた、という事もあるのかもしれない。何しろ、この国で忌み子という概念が生まれてしまったのは魔女のせいでもあったようだから。
そうして彼らはお互いに秘密を抱えたまま、それでも家族として暮らしていく。アルは自分が転生者で赤子の頃から明晰な意識があり、前世の記憶があることを。メーディは自分が魔女であることを。
もっとも、それがこの家族のすれ違いの発端になる、という訳ではなかったのだけれど。
アルは転生者であることが知られることで忌避される事を恐れていたけれど、秘密にしている事自体に罪悪感に苛まれ、結局決壊するようにとある事件をきっかけに告白してしまうわけですけれど、それが家族の絆に罅を入れるなんてことは全然ありませんでしたし。
ふむ、こうしてみるとアルって素直で善良な子なんですけど、素直でいい子すぎてダークサイドがなさすぎるんですよね。もうちょっと性格悪い部分とか、癖があった方が自分にとってはとっつき良かったかもしれない。比べてメーディの方はわりとショタ好き面のダークサイドがだだ漏れで欲望に素直というか逆らえない面が続出するので……うん、これはこれでダメな人ですね。
ともあれ、アルの人となりにまつわるエピソードは純真なものが多くて、逆に起伏が少なく感じるんですよね。旅先で出会う冒険者のアランや、商人の娘のソフィアなんかもとてもいい人なんで、上積みの部分で噛み合ってしまってアッサリと良い形で話が転がっていきます。それ自体、爽やかで穏やかで苦い部分のない良い話ではあるのですけれど、同時に味気ない盛り上がりにいささか欠けるように感じるもので、自分にとってはちょっと薄味だったかなあ、と。
彼がメーディが実は昔話で忌まれる魔女その人だった事を知り、その災厄の逸話が誤解でありメーディの人となりが当時から変わっていない愛すべき人だと確信した上で、魔女メーディその人を殺すのではなく、自分はその魔女の逸話を、信じられている魔女の伝説を殺して、メーディを苛む記憶を消し去ろう、そう決意するわけですけれど、そこに至る過程もアルが素直で純真で善良であるが故に悩みも葛藤も迷いもせず即座に決心するんですね。いや、愛する家族の、大事な人のことだから迷いもしない、というのはそれはそれで大切な事なのかもしれませんけど、溜めらしい溜めもなく、ストンとあっさり決めてしまったなあ、と。
それに、彼女の過去については実際何が起こったのか、何が原因なのか、何もかもさっぱりわからないのです。メーディの意図したものではなかった、というのは彼女の寝言から推察されるくらいで、本当に何も情報がない。その段階で走り出してしまうのは、それもメーディに相談とか話もせずに自分の目標を決めてしまうのは、この子の道はその素直さそのままに真っ直ぐで逸れる分かれ道も、思わず立ち止まってしまうような所も先の見えない曲道も、あまり無いのかなあと思ってしまった。
と、この一巻がちょうどそのアルが自分の歩む道を決めてしまったところで終わってしまったので、え?そこで終わるの!? と、面食らう羽目に。
プロローグにしても、もうちょっと舞台設定とか登場人物の配置が揃えられてから、なんじゃないだろうか。だいぶスロースターターというか、話始まらなかったですよ?
とりあえず、テーマというか話の前提となる「魔女を殺す」の意味が明らかになったので、それをどうやって成すかも全く決まって無くて、方法についても随分とフワッとしたものしか考えてないみたいでちょっと不安。兎にも角にも次回以降はどういう話になっていくか、はわかってくると思うのですけれど。

天才王子の赤字国家再生術 7~そうだ、売国しよう~ ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 7~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ ファルまろ GA文庫

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ディメトリオ皇子とその家臣達は、会議の場で困惑していた。
(どうしてこいつがいるのだろう)
会議に参加しているナトラ王国王太子ウェインも思っていた。
(どうして俺がここにいるんだろう)
三皇子のいがみ合いで長らく膠着状態が続いてきた帝国の後継者争い。だが、長兄ディメトリオが戴冠式を強行するため兵を挙げたことで、状況は大きく動き始める。
ロウェルミナ皇女から協力要請を受けたウェインは帝国に向かうが、なぜか一番勝ち目が無さそうなディメトリオ派閥に参加する羽目に!?
「だが、最後に笑うのはこの俺だ」
謀略と戦乱が渦巻く第七巻!

ロワとウェインが仲良すぎて、ほんとなんだコイツらw
ウェインに協力要請しておいて帝国に招き入れておきながら、速攻で自分の所に着く前にとっとと陥れるとか、ロワさんウェインの事好き過ぎるでしょう。
相変わらずなんでだー! と頭を抱えながらロワが何かしてくるのに備えてちゃんとカウンター仕込んでるウェインもウェインなんだけど。君ら、相手が絶対仕掛けてくると信頼した上で嬉々として謀(はかりごと)を投げつけ合ってまあ、なんというか海辺で水を掛けあってキャッキャとはしゃいでいるカップルか!
ロワもウェインも相手への悪意とか黒い感情とか皆無なんですよねー。これだけ後ろ暗い気持ちも悪意も善意も皆無で、めっちゃ楽しそうに相手を陥れようとするの、もう仲良しか!てなもんである。
だって、本当に楽しそうなんだもの。ウェインって誰彼相手問わず四六時中謀略を張り巡らせてるタイプのヤベー人間ですけれど、別に謀略そのものを楽しむ質でも相手を陥れる事に喜びを感じるような性癖の持ち主ではありません。でも、ロワ相手のときはやたら楽しそうなんですよね。
勿論、本気ではあるのですけれど二人してどこか通じ合っている。お互いに盤面を挟んで向き合って駒を指しあう盤上遊戯に興じているかのような、思いっきり遊んでいるかのような。
二人して相手を崖っぷちに追いやって蹴落とそうとドタバタ走り回った挙げ句、二人してやべー事になったら途端にこれまで相手を蹴り落とそうとしていたのをなかったかのように、息ピッタリ以心伝心で見事な連携での共闘を見せた、と思ったら危地を抜けた途端に事前に仕掛けていた相手を出し抜く謀略を発動させて「ざまぁ!」とドヤ顔する始末。
お互い、ドヤ顔して相手に「ぐぬぬ」と悔しがらせるためにやってんじゃないか、というどこか子供っぽい稚気があるんですよね。なので謀略にありがちな陰湿さが殆ど感じられない。だからこそ、遊んでいるように見えるし、君たち仲良すぎ! となってしまう。
まあ、三人の皇子はいい面の皮である。ウェインもロワも自分自身も駒として盤上にあがってはいるのだけれど、実際の所三人の皇子はロワとウェインの対局の駒としてイイように好き勝手に振り回され利用され、結局二人の蹴り落としあいの煽りを食ってこの三人の皇子が崖下に転がり落ちていったわけですから。
とはいえ、変な遺恨は残さないのがウェインらしくて、あれだけ散々利用したとも言える第一皇子のディメトリオに恨まれる事なく、むしろ彼を捕らえていた柵、或いは呪いのようなものを解くきっかけを与えてるんですよね。駒として利用しながら、不思議とウェイン王子って相手のことちゃんと人として相対している所があるのが面白い。
しかしロワはあれですねー、詰めが甘い。言葉としては変なんだけど、勝負に勝って勝負に負けた、みたいな。目的は達したはずなのだけれど、ディメトリオの最後の一指しのお陰で目も当てられない負債を抱えさせられた上での目標達成で、むしろロワさん涙目みたいな。
結局、ウェインにも毟られること決定で、帝国の後継者レースという観点では見事に皇子三人を出し抜いて勝負に勝った! はずなのに、ディメトリオには最後に出し抜かれ、ウェインには美味しいところ持ってかれる事になり、勝負に勝って「ぐぬぬ」なロウェウミナ皇女、なんかもうロワだなー、という愛嬌があってこの娘ほんと好きです。
まあウェインが毟り取った功績、ちゃっかりフラーニャが立てた功績に仕立ててるあたり、ただでは転ばぬ皇女様である。

そして、ウェインとロワがバチバチと張り合って遊んでいる一方で、ナトラ王国の妹姫フラーニャがウェインの言う通りに動くだけではなく、自分で考え独自に動き出してるんですよね。マスコットではなくちゃんとした王族として兄を助けたいという想いからであると同時に、兄に縛られない独自の派閥を持とうとしはじめている所に、この妹姫さまの急激な成長を感じさせられる。
フラーニャに関してはウェインとは別のアプローチから「フラム人」問題に関わってきそうな気配もあるんですよね。彼女が聞いた、かつて西側にあったとされるフラム人の国、そしていつか現れるとされるフラム人に百年の繁栄をもたらすとされる赤い髪のフラム人の英雄の伝説。今後物語のなかでフラーニャがどんな役割を帯びていくのか、興味深いところです。

次回、舞台は再び西側へ。何だかんだと友情と親愛と信頼あるロワとは異なる、人面の妖怪どもの巣窟である選聖侯らが一同に集う選聖会議に参加することになったウェイン。さあ荒れも荒れたり激動波乱の幕開けだ。



天才王子の赤字国家再生術 6 〜そうだ、売国しよう〜 ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 6 〜そうだ、売国しよう〜】 鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「さて、どうしたもんかな」
青い海と白い雲、燦々と輝く南の太陽を鉄格子越しに眺めながら、ウェインは牢内で呟いた。
ソルジェスト王国との一戦に勝利し、不凍港の使用権を得たナトラ王国は、新たな交易相手を
開拓するため大陸南方に位置する海洋国家パトゥーラに目を付ける。ウェインは一気に話を
まとめるため自ら交渉に赴くが、アクシデントの発生で、なぜか投獄される羽目に!?
パトゥーラ諸島における覇権の象徴・虹の王冠を巡って繰り広げられる骨肉の争い。嵐のような
戦火の中、天才王子が新たな傑物との出会いを果たす、弱小国家運営譚第六弾!
ニニムのピンチに、自分のみを危険に晒すこと一瞬たりとも迷わなかったなあウェイン王子。
やはり彼にとって一番優先スべきは国よりも自分の身すらよりも、ニニムなのか。彼女に匹敵するのって、妹のフラーニャくらいじゃないんだろうか。自分に何かアレばナトラ王国がどうなるかなんて彼には容易に想定が出来ているだろうけれど、そんな万が一すら考慮に値しない。国よりも、あるいは世界の秩序よりも優先スべきものがある。
ウェインの優先順位というのは、やはり物語の根幹に関わるだろう事は忘れないようにしておこう。

今回の地は本国ナトラより遠く離れた南のパトゥーラ。丁度大陸中央の北部、西部と東部の間に位置する小国ナトラですけれど、パトゥーラはそのまま真っ直ぐ南に大陸を下ったその先にある諸島群。直線距離ならともかくとして、海洋貿易を考えるなら大陸を東回り西回りどちらでもグルリと半周しないといけないわけですから、遠いなんてものじゃないんですけれど……同じ東部と西部の交易路を繋ぐ位置にある、というのは実はかなり大きくて重要なポディションにあるんじゃないでしょうか。
これ、直接的な通商面での利益はもちろん無視できないですけど、遠近外交の面で見ると先々考慮して滅茶苦茶重要なお話だったんじゃないだろうか。
そんな船乗りたちの国で出会い友誼を結んだのは、彼の国の第二王子であるフェリテ。丁度内乱中の只中にあったパトゥーラにおいて、クーデターを起こして暴れている兄に抵抗しながらも独自の勢力を持たず、本人も優男で船乗りとしても名声はなく、カリスマにも乏しい。けれど賢明であり物事の見方がウェインによく似たタイプ。でも、性格は素直で穏やかで優しいという男性で……。
これ、綺麗なウェインじゃね? と、ついつい思ってしまったり。
優しくても優柔不断とは程遠く、意志は強く根性もあり、とむしろコヤツのほうが主人公気質なんじゃないだろうか、というくらい真っ直ぐで誠実で知的な青年なんだけど、だからこそウェインの黒さが目立つというか、ウェインって詐欺師だよね、とか乱世の奸雄っぷりが際立ってきてしまうこの対比w
ただウェインの場合、裏表が激しいけれどオモテでもウラでも、どちらの顔でも何気に信頼度は高いんですよね。奸智に長けていても、陥れるのは敵だけで一旦味方になった人は容易に切り捨てない。もちろん、本当にやばくなったら優先度に基づいて切り捨てるんだろうけれど、ウェインの場合はとかく切り捨てなきゃいけない状況まで追い詰められないし、そうならないように二重三重の保険をきかせている。必要とあれば切り捨てるけれど、切り捨てることを前提とした策は立てない。そういう所が信頼感につながっているのだろう。策通りにいかないどころか、想定の斜め上のトラブルが舞い込んできてえらいことになるのも珍しくないどころか、毎回なんだけれど。
とはいえ、今回の大トラブルはあれどうだったんでしょうね。フェリテは実はわざとウェインがやらかしたんじゃないか、と疑ってましたけれど。今回はニニムと一緒の時も顔を青くしてやっちまった!みたいな慌て方はしていなかったので、フェリテの予想は合ってそうなんだけれど。

このパトゥーラでの内乱の顛末は、終わってみると積み重ねた歴史という情報の集積を分析した上での結果。つまり、誰でも利用できる集合知は個人の天才に勝る、という結果だったのは注視しておきたい。虹の王冠という特定の物質による権威の否定であったのも、唯一無二の存在など無い、と主張しているようにも捉えられる。とはいえ、フェリテは無能とは程遠い有能な人物でしたし、見事にカリスマを発揮して思惑様々な海師と呼ばれる独自の船団を有している豪族みたいな人たちを取り纏める統率力を見せているわけで、個人の才能が無意味、と言っているわけではないんですよね。
実際問題、ウェインなんぞ今回率いる兵も王子としての背景もほとんどない状況で、その智謀と腹黒さでフェリテを勝利へと導いたのですから、特異なる才はやはり見過ごせない力を持っているわけで。
今回の一件を裏で糸を引いていた西部諸国の連中だって、キワモノ的特異な才能の持ち主たちなわけですし、グリュエール王なんぞその最たるもの。こういう連中を無視、できるわけないんですなー。
そして、帝国にも才人は無数にいるとウェイン自身も認めているわけで。その筆頭格であるロワ皇女さまはというと……今回、基本帝国関係ないから出番ないはずなのに、チラチラとオチ要員で引っ張られてきてスットボケた顔見せてくれたのは、なんというか嬉しいけど扱いどうなんだろうw でも、トータル1ページくらいの出番だったにも関わらず、ずいぶんネタ的に美味しい振る舞いを見せていて、目立ちまくっていたので優遇されている扱いなんでしょう。うん、ニニムに並ぶヒロインとしての面目躍如だよ、多分。
次回は再び帝国がメインの舞台となるようなので、存分にロワの出番もあるはず。彼女のネタキャラ以外での活躍、期待したいところであります。


学園最強の異能ハッカー、異世界魔術をも支配する ★★★☆  



【学園最強の異能ハッカー、異世界魔術をも支配する】 真野真央/ファルまろ MF文庫J

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「私を──殺してください!」
異世界からやってきたという儚げな少女は出会って早々、俺にそんな言葉を吐きやがった。
なんでも、異世界とこちらをつなぐための大規模魔術の“生贄”から逃げてきたらしい。
その儀式を止めるために、こちらの世界で死にたいのだとか……。
「改竄」という力を使い、異能力を開発するこの学園都市で消化試合のような生活をしていた俺だが、「異世界転生」への手掛かりとなるコイツは何としても助けなくてはならない。
「世界の命運なんて知ったこちゃないが、俺の目的のためにお前のことを守ってやるよ」
電子と魔術、二つの力の邂逅が紡ぐ、運命を改竄する学園バトルファンタジー開幕!

異世界魔術と現代科学をベースにした異能力とのバトルもの。異世界側が一方的に侵攻してくる側になっているので、戦う理由には事欠かないようになっている。その戦端を開く鍵となるのがサクリファイスと呼ばれる生贄の少女なわけだけれど、彼女が生贄として正規に機能するまでは異世界側から同時に送り込まれる人数が限定されている、というのがバトルものとしての舞台設定がうまいこと整えられているんですよね。
なぜ、異世界側がこちらに侵攻してくるのか、という理由にもどうやらちゃんとしたこの物語の根幹に関わるものがあるようですし、何気に設定周りはしっかりしてるんですよね。
ただその分、魔術と異能力の区分について全く異なるルールによって成り立つもの、となり得なかったのは正直惜しいな、と思う部分なのだけれど、異世界側が異能力についてまったく無知であり、完全に未知の力として捉えているので異種格闘技戦的なアプローチとしては十分とも言える。
やっぱり文化圏文明圏から異なる、戦闘法や魔法魔術による異種戦闘ものは燃えるものがありますからねえ。
ただ主人公の能力である「改竄」がタイトルにあるようなハッカー的な要素を存分に発揮できていたかというとかなり微妙ではあるんですよね。彼の能力的にはほんと、何でも出来る予想もできない方向からの絡め手とか、相手に何もさせない完封劇も色んな形で出来たと思うのですが、なぜ同じ方法が何度も通じると思ったしか。そのへん工夫がなさすぎて、学園都市で勇名を成したにしては老練さが足りないなあ、と思ったり。ほんと、その能力に関しては自由度がやたら高いだけに使い方が実に勿体ない。
一方で、決死の思いで異世界から逃れてきたサクリファイスというヒロインに対してのアプローチは満点に近いんですよね、この男。
諦観と絶望と一片の希望を胸にようやくたどり着いたこの世界で、初めて見る科学文明の光景に目をキラキラさせて生気を取り戻して、キャッキャとはしゃぐサクリファイスの姿の尊いことと言ったら。
妹を亡くした一件ですっかりやる気を失ってた在真がようやく手に入れた妹に繋がる異世界という情報源に発奮するのは当然なのですが、向こうから生贄を連れ戻すために現れるだろう異世界の刺客たちの囮としてサクリファイスをぞんざいに扱うのではなく、かと言ってただの庇護対象として守るだけの存在にせず、彼女の生きる意思を沸き立たせ、自ら戦う意志を尊重してあれこれと手を尽くす姿は、ただ優しいだけではない甲斐性が見えてくるんですよね。最後、サクリファイスに対して追手として現れた兄貴に言いたいことを言ってやれ、とお膳立てするあたりとかねえ。
サクリファイスのお陰で、彼自身立ち上がる気力が湧いてきたというのもあるのでしょうけれど、お互いに良い影響を与え合うという意味で、実に良い主人公ヒロインカップルなんですよね。
しかし、サクリファイス以外の女性陣が色んな意味で病んでる、病んでるw
幼馴染もヤバいけど、何気にうまいこと扱ってる在真くん。ヤンデレの操縦法がよくわかってると言えるのかもしれないけど、でも幼馴染への気遣いもちゃんとしているのが大した人物なんだよなあ。
まあ、それ以上にヤバかった妹のおかげで鍛えられたのかもしれないが。いやもう、あれはあかんやろう、というレベルだよね、妹ちゃん。普通、目の前で自殺とかされたらお兄ちゃんトラウマになって当然ですから。
そしてサクリファイスの兄ですよ、こいつ。サクリファイスことリファが自分でも罵ってますけど、生贄で死んじゃう妹に将来のこと嬉しそうに語るとか、自分好きな人が出来て両思いになれたから、そいつと幸せになるんでお前は使命に準じて立派に死ねよな、とか言われ続けたら、レイプ目にもなりますがな、どんな鬼畜やねん。本人、妹を揶揄したり見下したりしてるのではなく、真剣真面目に言ってるあたりがまた救いがないというのが。
在真くんが、こいつ殴る、と物理に偏ってしまったのもわかってしまいますがな。
次はもう少し、改竄という能力をうまいこと使った展開を持ってきてほしくあります。キャラ同士の関係の情勢は丁寧ですらあるので、このままメインを掘り下げていってくれたらなあ、と。

真野真央作品感想

天才王子の赤字国家再生術 5~そうだ、売国しよう~ ★★★★☆   



【天才王子の赤字国家再生術 5~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ファルまろ  GA文庫

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『やはり手を組むべきは、グリュエールだな、間違いない! 』
ミールタースでの騒動を機に、大いに知名度を上げたナトラ王国は、空前の好景気を迎えていた。
追い風に上機嫌なウェインにとって気がかりなのは、西側への玄関口として成長著しいマーデン領の存在。
国内のパワーバランスを調整するため、ウェインはグリュエール王が治めるソルジェスト王国と手を結び国全体を底上げすることを画策する。
折しもグリュエールからの招待を受け、意気込んで外交に向かうウェインだったが、
そこでは予想外の展開が待ち受けていた! 戦雲垂れ込める、弱小国家運営譚第五弾!

この作品、傑物怪物妖怪と呼ぶに相応しい国主、政治家、聖職者と幾人も登場してウェインの前に立ち塞がり、もしくは手を差し伸べてくるのだけれど……忘れていたわけじゃないけれど、主人公のウェイン王子こそがそんな人中の怪物の中でも屈指の化物なんだよなあ、というのを改めて思い知らされた感がある。人前で見せる理知的で切れ者な有能王子の顔も、プライベートでの剽げて戯けた間抜けな顔も、彼の一面でしかなく、その本質は……。
そして、その本質に気づき覗き込んだ者ほど、彼に惹かれてしまうんですよね。
今回、ウェインの前に立ちふさがるのは前巻で不穏な事をのたまっていたグリュエール王。完全にウェインにターゲティング決め込んでいただけに、すぐに戦争でも吹っ掛けてくるかと思ったのですがこの人そういう単純なバトルジャンキーなんかじゃなかったんですよね。ただの戦争屋ではなく、政治謀略外交戦略も含めて相手を陥れ、徹底的に弄ぶ万能の人なんですよね。この人、いろんな方面に圧倒的すぎるだろう。そりゃ、敵になれる相手がいなかったのもよくわかる。自分に抗し得る相手として、ウェインに目をつけたのはそれこそ目の付け所が際立っている、と言っていいのかもしれない。
ウェインからすると、大迷惑極まりないのだけれど、わざわざ自分の国に一度招いてから、というのがたち悪いですよね、これ。しかも、訪れて直接対面してみれば、どこからどう見ても名君ですし。そのくせ、大食感でブクブクに太りきった肉塊というキャラの濃さ。いや、ただ太っているだけならともかく、この人の場合「太っているにも関わらず」という冠がつくあれこれが多すぎるくらいなんだよなあ。その太っているという姿にも様々な意味が込められているし。そのうちの料理に関する件については、ウェイン完全敗北、完落ちアヘ顔ダブルピース状態だったじゃないですか、いやだもうw
宴で供される料理は外交交渉における最も偉大な武器の一つ、という事実をグリュエール王はまざまざと見せつけてくれたわけで。いや実際、この料理だけでこれまでも様々な外交交渉を有利にまとめてきた実績もあるんだろう、と思わせてくれるくらいのパーフェクトゲームでありました。
それ以上に、これまでの歴史や現状から見えているはずの国際情勢を全く無為にしてくる外交戦略が凄まじすぎたのですが。
そんでもって、相変わらずどう考えても詰んでるだろう、という状況から相手を根絶やしにする勢いで状況をひっくり返してしまうウェイン王子の得意技がまたも炸裂するわけである。
いや今回は特にすごかった。最近忘れられガチだけれど、このウェイン王子は真性の売国奴であるんですよね。国を売ることに、自分の立場を失うことに何らの忌避も抱いていない人間でなければ、絶対に繰り出せない策でありました。ってか、脅し方が勝利を後ろ盾に、じゃないどころか逆張りなのがもうとんでもねーんですよね。なにその発想。
「――俺はやるよ?」
このセリフに、ここまで凄絶さを、おぞましさをまとわせる主人公の化物っぷりよ。そう、こいつはヤるヤツなんだよ。
あれを目の前で見せつけられて、むしろ彼の眼鏡に適いたいと思うようになるゼノは見込みありますよ。或いは、アテられた、とも言えるのかも知れませんが。
そして、ウェインの才気以上の制御された狂気とも言える部分に今回もっともアテられたと言えるのがグリュエール王なのでしょう。いや、この展開は予想外だった。このグリュエール王、前回の様子からどう転んでも味方にはならず、ライバルか場合によってはラスボス級にウェインの前に立ち塞がりつづけるキャラクターになるかと思ったのですが……。うん、今後も決して味方とは言えないでしょうし仲間とも言えないでしょうけれど、絶対に信頼できないけれどこの上なく信用できる最大の同盟者……いや、この場合は共犯者と言うべきか、になってくれるんじゃないでしょうか。ウェインがその狂気を抱き続ける限り、この人は絶対に裏切らなさそう。裏切らなくても、常に試しいらんちょっかい掛けてきても、おかしくはなさそうでもあるのですけれど。
さてこれで、周辺国いつの間にかある程度掌握してしまった、ということになるのでしょうか。一旦どこかで整理したいくらいだけど。
次回は日常回という話ですが、さて「日常回とは!?」という内容にならなければよいのですが。わりと緩い話も多い作品なので、その危惧は杞憂でしょうけど。

シリーズ感想

天才王子の赤字国家再生術 4~そうだ、売国しよう~ ★★★★☆  



【天才王子の赤字国家再生術 4~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ファルまろ  GA文庫

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妹が帝国で大丈夫か心配すぎる!


「心配だああああああああああ! 」
新たな皇帝を決めるため、三人の皇子による会談が持たれることになったアースワルド帝国。
ロウェルミナ皇女からその舞台となるミールタース市に招待されたウェインは、これを華麗にスルー。するはずが、なぜか代わりに妹姫のフラーニャ王女が出席することに! 一体、どうしてこうなった!?
懐刀のニニムを付けて送り出すも、不安のつきないウェインは結局自らも帝国に向かうのだが――
新たな外交の舞台で待ち受ける旧友たちとの再会。燻る戦争の火種。そしてもう一人の怪物が歴史の舞台に姿を現す、弱小国家運営譚第四章、開幕!

妹であるフラーニャ王女が最大のウェイン×ニニム派閥の領袖というのはポイント高いよなあ(なんの?)
だが待って欲しいフラーニャ姫、実はロワ皇女も実は何気に濃厚なウェイン×ニニム派なのですよ? ただチビっとそこに自分の分の席もお裾分けいただけたら、という嗜好があるだけで。
というわけで、これまでウェインやニニムのマスコットで癒やしという立場だった妹姫フラーニャが、一躍王族として外交デビューするお話である。そこで、彼女もまた「あの」ウェイン王子の妹だ、と評され讃えられる才能を開花させていくことになる。
ウェインと違って才気煥発という風情ではないフラーニャ。これまで王国内で大事に育てられてきた彼女は、王族として仕事を任せられるのはこれがはじめて。なので、ウェインの代役として会談に出席して面通しするのがお仕事で、それほど難しいことは求められていなかったんですよね。求める方がこの場合おかしいわけですが。それでも、王族が出席するだけでこの場合は十分だったわけです。ミールタースの市長やロワ皇女という曲者たちを相手にして器用に立ち回れるはずもなく、兄ウェインに事前に教えられた通りに振る舞うだけで精一杯、帝国の皇子たちとの面会では自分を保つだけでも一杯一杯だったわけですが……。
ミールタースで行われている市民会議、その様相に興味惹かれてのめり込みはじめてから、彼女の成長がはじまるのである。ウェインと違って智謀策謀を巡らすような性質ではないフラーニャですけれど、いざ何かに集中した時の集中力と理解力、そして一旦こうと決めた時の度には目を見張るものがありました。何より、その真摯さとひたむきさはウェインとはまた全く異なる種類のカリスマだったんですよね。この娘はこの娘で、予期せぬトラブルに対して本領を発揮してしまうタイプだったのか。
それにしても、相変わらずウェイン王子は何もかもが事前の思惑通りに行かないですねえ。いや、実際のところウェインは自分と同じ策士タイプ、それでなくても合理的に物事を捉える人種の思考や行動の予測に関しては神がかりに正確なんですよね。武断派の第二王子や陰湿な謀略家の気質である第三王子の動向なんぞはほぼトレース出来ていますし、だからこそその思考を誘導するのも容易くあるわけです。ロワ皇女なんか、ウェイン自身と傾向がそっくりなせいか以心伝心レベルで意図を読み取ることが可能ですし。多少振り回されるきらいがあるとはいえ、その意味でもロワとは相性いいんだよなあ。
しかしその分、論理的とは程遠いバカや狂人相手だと見事に予想の斜め下をいかれてしまうために、毎度そのおかげで大変な目に遭ってしまうわけですなあ。
そして、何気にこの手のバカや狂人が周辺諸国の権力者にわんさと居るのがなんともはや。
しかし、終わってみると帝国内の後継者争いはもはや後戻り出来ないほどの混迷を深めてしまう
一方で、ウェインてば帝国内にしっかりと足がかりを作っちゃう結果になってるんですよね。ロワ派との人脈のみならず、ミールタース市という交易拠点がフラーニャを通じて相当の王国シンパになっちゃったわけですしねえ。
ロワも、前に出た時の宣言からするとかなり野心あらわにガツガツと動くのかと思ってたら……。いや、これを日和ったというのは可哀想ですよね。大国一つを兄弟と争って自分から奪い取って背負うという重圧は、余程の覚悟と野心がなければ躊躇うのも仕方ないものがあるでしょう。彼女自身のモチベーションとなるものが、今のところまだそれほど確固としたものがあるというわけではなさそうですし。その意味でも、以前からウェインを欲しているのは共犯者を欲していたとも言えるのではないでしょうか。あるいは、ウェインがその本心を明らかにすれば、彼が目的としているものに帝位が必要とわかれば、ロワもガチになりそうなんですけどね。この皇女さまも、ウェインとニニムのことほんと好きですからねえ。いずれにしても、皇子会談の失敗によって否応なくロワ派閥の権威はあがっているわけで、いつまで中立でいられるか。ウェインも、後継者争いに無視できない影響力を及ぼすことになっちゃいましたしねえ。帝国留学中に友人となった二人、前に話題になってた連中がついに顔を見せましたけれど、彼らは第二、第三皇子の派閥の一員ということでロワやウェインとは物理的にも組織的にも離れた位置にいるわけですけれど、そこに文官、武官の親しい人物が配置されている、というのが物語上けっこう重要なキーワードにも見えるんですよねえ、将来の布石みたいな。

その前に、もう一度西のレベティア教と本格的にやり合うことになりそうですけど。それに、まだ匂わされる程度ですけれど、南の方でも何やら動いているようですし、どんどん動乱が大きくなっているなあ。
さて、今回もウェイン×ニニム派にはシーンこそ少ないものの美味しくいただける場面があってよかったです。ウェインが過労で倒れたあとのニニムの様子は、普段の毅然とも飄々ともした姿が完全に崩れたものがあって、ほんとニニムはウェイン命なんですよね。
そして、さり気なくフラーニャ×ナナキも実はニニムたちに負けず劣らずいい雰囲気だったりするんですよねえ。ナナキくんもクール少年に見えてフラーニャ命ですし。自分よりも実力上の相手だろうと、フラーニャが関わるなら絶対負ける気なし、というあたり凄く男の子してますし。フラーニャの方もナナキのこと男の子として意識している部分が見受けられるので、こっちも大変ご馳走様なんですよねえ。フラム人関係の問題、是非ウェイン王子には頑張ってほしいものです、妹たちのためにも。

シリーズ感想

ヴァルハラの晩ご飯 3.金冠鳥と仔鹿のグリル ★★★   



【ヴァルハラの晩ご飯 3.金冠鳥と仔鹿のグリル】 三鏡 一敏/ファルまろ  電撃文庫

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イノシシのセイです! 世界樹倒壊の危機も、ヴァルハラの動乱も落ち着いて、平和な日々が戻ってきました。でも、そんなボクの前に、恐るべき強敵が現れたんです。その名は―ヴァルハラ大農園を管理する鹿のイクス!
彼の肉を食べたオーディン様が「ンまぁ~い!!」となってしまったからさあ大変!
ボク、『晩ご飯』をクビになっちゃうことに…。もちろん死に続ける日々にはうんざりだったけど、このお役目から外れたら、ブリュンヒルデさまに会えなくなっちゃう!待ってろ、イクス!ボクは必ず、君より美味しくなってみせる!
第22回電撃小説大賞“金賞”受賞作の『やわらか神話』ファンタジー第3弾!
本来、死とは恐ろしくおぞましく、また尊くかけがえのないものである。しかし、本作においてセイの死んでも復活する能力のおかげか、主人公本人からしてホイホイと毎食の晩ごはんへと自ら死んで食材となり調理されて食べられる毎日。
セイ本人は自分が食材になることについてしんどいとは思っているものの、決して深刻に考えていないし仕事として一廉のプライドを持っている(単にブリュンヒルデの近くに居たいからというだけの理由ではない、かもしれない)。
ジャンルとしても、これはコメディなのだから死んでも復活できるならそれは別に深刻に考える問題ではないのだろう。と、思っていたのだが。
冒頭でロキが見た冥界での真実。セイの持つ能力が蘇生でも復活でもなく創生であることから生じるあの結果たち。
それは、あのロキがおぞましさに息を呑んだことからもわかるように、ひどく……「グロテスク」な有様だ。それは死への冒涜である。この場面を、冒頭に描かれたことは大きな意味があるのだろう。これ以降、本巻ではこの問題には一切触れることなくあくまで明るいコメディものとして最後まで通したことが逆に「忘れるな、これが真実だ」という楔を打ち込まれたようだった。
真実を目の当たりにしたロキの苦悩は、普段の彼の様子からはうかがい知ることは出来ない。あれを目にして悩んでいながら、セイ本人には知られないようにしているあたりに、この作品に出てくるロキが誠実で友達思いの本当にいいヤツだというのが伝わってくるだけに、或いはこれこそがロキの行く先を決定づけたのかもしれないと思うと、なんとも複雑になってしまう。
イイやつだからこそ、友達思いだからこそ、ロキの中に叛意が芽生えつつあるのだろうか。
ロキってば、冥界であれを見ていながら、晩御飯としての立場を後輩に奪われて迷走しているセイに、諸々をおくびにも出さずにちゃんとアドバイスしてくれてるんだもんなあ。
なにげに創生以外にも、セイのわけのわからない能力がどんどん開花していってて、それは目先の問題を解決するために使える手段として、セイは特に深く考えずに利用しているのだけれど、これって明らかに不穏な要素なんですよなあ。
イノシシと思っていたセイだけれど、両親だというイノシシ夫婦は本当は実の親じゃなくてセイは養子だというのがロキの調べて明らかになってしまったし。
じゃあ、セイってそもそも何者なの? という問題がじわりじわりと物語の中で鎌首をもたげはじめているようだ。

それはそれとして、三巻ともなるとワルキューレ9姉妹も出揃ってそれぞれ個性を発揮しだしていて、ヒロイン戦線賑やかになっていたものです。まあでも、どうやっても妹たちは賑やかしだし、ガチなのはブリュンヒルデなんですけどね。あそこまでガチでセイにべったりだったら、別にセイがキッチン担当から離れても会えなくなるとか絶対なさそうなんだけどなあ。知らぬはセイ当人ばかりなり、か。

シリーズ感想

天才王子の赤字国家再生術 3 ~ そうだ、売国しよう ~ ★★★★☆  



【天才王子の赤字国家再生術 3 ~ そうだ、売国しよう ~】  鳥羽 徹/ファルまろ  GA文庫

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宗教勢力を利用して国の価値を爆上げだ!」

 帝国皇女との結婚話に端を発した騒動を切り抜けたウェイン。そんな彼の下に隣国カバリヌより使者が到着する。大陸西側の一大宗教・レベティア教の主催する『聖霊祭』にウェインを招待したいというのだ。
 絶大な影響力を持つ『選聖候』たちが集うイベントということもあり、ろくでもないことに巻き込まれることはほぼ確定。それでも隣国と友好関係を結ぶため、ウェインは渋々西へと向かうのだが――!?
 クセ者だらけの国際舞台に、天才王子が本格デビュー! 大人気の弱小国家運営譚第三章、ここに開幕!

相変わらずニニムに関することに関しては沸点が低いどころか無いんじゃないか、この王子。神算鬼謀深慮遠謀を地で行くウェインだけど、あの場面のあの行動は絶対策ありき、ではなかったよね!?
ただ、彼が尋常では無いのはその応急対応能力なのだろう。
前回もそうだったけれど、思い通り作戦通り行かなかったあとの立て直しの精度と速さが人間離れしてるんですよね。あの皇女さまも謀略家としてはウェインに伍するレベルにあったけれど、この事前に用意していた作戦も謀略も全部潰れてまっさらどころか窮地に追い詰められた際に、元から全部予想していました、と言っても不思議ではないくらいのレベルで作戦を即座に改めて復旧できる能力がウェイン王子、人外レベルなんですよね。そして、その能力こそ実戦的であり現場的であり戦乱の世に何より対応した能力なのでしょう。
この王子が偉いのは、それだけ場当たり的に深度の深い策を練って実行できるにも関わらず、事前の準備を決して怠らないし、効果があるか定かではない迂遠な策を幾つも展開しているところなんですよね。そして、この王子がエラいのは、それだけ事前にあらゆる対応が出来るように準備していながら、かなりの頻度で予想外の顛末に襲われてしまうところなのでしょう。
普通なら、すでに何回死んでるか、国が滅んじゃってるんだろうか、という段階で。毎回、頭抱えてなんでだー!?と断末魔に近い悲鳴をあげて転がりまくる王子、厄がついてるんじゃなかろうか。
まあその分、死ぬがよい展開を避けきったご褒美で彼が事前に確保していた以上の報酬が国単位で得られてしまうわけですが、お陰様で国は富んで飛躍してもその分王子の仕事が余計に増えてしまうという顛末は、本質的に自堕落に過ごした王子さまとしては地獄案件なんだろうなあ。だからといって放棄してしまわない責任感が、彼の首を絞めているわけですが。

しかし、果たしてどこまで選帝侯の推薦を受ける気があったのか。うーん、わりと本気ではあったと思うしなったらなったでその地位を利用しまくる算段はあったんだろうなあ。他の選帝侯の常軌を逸した人間性と政治力を見ると、この段階で正対するのはかなりキツイものがあった気もするのだけれど。フラム人差別がきつい大陸西部に深入りするということは、差別問題への対応に直面しなきゃいけないわけですし……ニニムに害意持つやつは絶対殺すマンなウェインが首突っ込むにはまだちょっとヤバすぎますよねえ。いやいや、絶対殺すマンなウェインでもマジガチであそこまで絶対殺すマンとは思わなかっただけに、尚更にまだ早いまだ早い。
でも、終わってみればまたえげつない結果なんですよね。結果として殆ど軍を動かさずして、西方を平定してしまった、とすら言えるんじゃないだろうか、これ。ウェイン王子はそんなつもりサラサラなかっただろうけど! 本来ならもっと堅実に物事を進めるつもり、場合によっては後退させるつもりだったのだろうけど!
まだまだウェイン王子の自身の異常性と能力に対する評価が低すぎる、低すぎるというかまっとうに評価しすぎているというか。決して過小評価とか卑下してるわけではなく、冷静冷徹に客観的に見て判断しているつもりなんでしょうけどね。ある意味その客観性こそが目を狂わせてる気がするなあ。
他から見たら、紛れもなく化け物ですよ、この王子は。
そんな化け物がまったく思い通り予定通り作戦通りにいかないシッチャカメッチャカに陥る状況を、なんでこうなったー!?と悲鳴を上げながらさらに改めて打ち立てた神算鬼謀で快刀乱麻に平定していくのは、やっぱりべらぼうに面白いですわ。傑作♪

1巻 2巻感想

始まりの魔法使い 4.魔術の時代 ★★★☆  



【始まりの魔法使い 4.魔術の時代】 石之宮 カント/ファルまろ 富士見ファンタジア文庫

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竜歴900年。村では、精霊魔法の発展による弊害として精霊の暴走による事件―精霊災害が頻発していた。その対策として、“私”は、免許制度や対精霊魔法の研究を進めることに。ある日、ヒイロ村は死骸を操る黒い影―屍鬼の襲撃を受ける。その犠牲として残された赤子を拾った事で、“私”は―
「クリュセがハイハイしたわよ!」
「おつかれさま、おとうさん」
ニーナと初めての子育てに挑戦することになり!?魔法の時代が終わる時、幸福な最果ての村に、災いを報せる鐘が鳴り響く。これは、すべての“始まり”を創った竜の魔法使いと、その家族の物語。
一気に竜歴1000年台にまで突入。精霊の利用と免許制の構築によって一気に利便性がよくなって、これまでずっと村規模だったヒイロ村、ついに先生やニーナが全住民を把握出来ない規模にまで大きくなりつつあるんですよねえ。彼らの目が届かない、愛情が届かない相手が出てくるということはその影響力からも脱しつつあるということでもあり、先生やニーナは全然そんなつもりはないんだろうけれど、これまで彼らの存在こそが統治の要になっていた以上、これからは緩やかに村の在り方も変わっていくんだろうなあ。
先生がこの頃から表舞台から姿を隠すことを考え始めているのは印象的な出来事でもあった。シリーズの冒頭では、竜とその一党の存在は表舞台からすっかり居なくなって市井に紛れていたわけですしね。
しかし、この頃になると悠久を歩む先生とニーナたちの永い旅に付き添ってくれる面々が増えてきていることは喜ぶべきことなんでしょう。これまで1000年近く村の面々をずっと一人残らず覚えて忘れていない彼らですけれど、やはり死に別れは辛いでしょうし、今となっては忘れる以前に知ることのない村人も増えてきたわけで、永遠に近い時間をともに過ごしてくれる家族が増えるというのは大事なことなんでしょう。
その中に、娘という存在まで加わるのは尚更に。嫁に出さなくていい娘って、お父さんとしてはどうなんですか、これ?
しかし、同じ時間軸の中で過ごしていくとなると、やっぱり先生とニーナの関係って気になってくるよねえ。性急に答えを出す必要がまったくない関係だから、短い寿命の中にいる人たちは敢えてそこを突っ込むこともなく、見守っているうちに通り過ぎてしまったけれど、同じ悠久に付き合える人たちからすると、答えは出さなくてもその行き先くらいは気になってくるよねえ、と。
だから、先生がニーナのことああいう形ではあっても明言してくれたのはちょいと嬉しかった。同じく彼らの悠久に付き合っているのは読者であるこっちだって同じわけで、気になっていたのは間違いないものねえ。どうやらエルフの寿命問題は相手の寿命に合わせる形になっているようで、それなら人間ではなく竜である先生なら、ニーナの寿命を縮めてしまうなんてことはないでしょうし。
にしても、寿命問題クリアした面々、みんなそのクリアの方法が違うのが面白いなあ。真っ当な人間であるイニスが、まさかこっちサイドに来るとは思わんかったけど。でも、寿命が伸びると恋愛面での思い切りに著しく欠けてしまうのは難儀な話である。彼女の場合、不老を達成してなくてもヘタレたままアラに告白できないまま終わってしまいそうなので、挑むチャンスが伸びたのは良いことだったのでしょう。
ユウカについては、彼女あれだけ「ユウカ」では知りえないことを口走っているにも関わらず、何百年も先生気づいていないというのは、このドラゴンぇという気持ちにさせられてしまいます。これだから寿命がない種族は、とディスるとドラゴンに怒られそう。これはもう先生個人の問題だわさね。

いくつもの事件は魔法におけるブレイクスルーがあり、魔術が誕生し文明が発展し、幾つもの出会いと別れが繰り返され、先生とニーナは家族を増やしながら愛する人の生まれ変わりを探しながら時代を旅していく。その中で、もしかしたら最悪であり最凶であったあの敵再び、という事態があったものの……なんか拍子抜けというくらいあっさりかたがついてしまったなあ、という印象。
アレに関しては、当時はどう対処したらいいかわからない恐ろしさがあって、不安となってこびりついていたものだけれど……アレが進化したのと同様にこっちだって技術的に躍進は続いていて、それ以上に助けてくれる一緒に戦ってくれる、皆を護ってくれる存在の多種多様さについては、大昔とは比べ物にならないものになってたんですねえ。その意味では、先生たちは正しく良い発展を促し続けた、その証明がこのあっさりした結末だったのではないでしょうか。
でも、これで相いれぬ不倶戴天の敵との決着はついてしまったので、これからは外敵の脅威には怯えなくて済むようになるのかなあ。いや、外の世界は更に広がっていて人間の国家なんかも生まれているらしいし、内側だって先生やニーナの目が届かない広く深い世界になりつつあるわけで、先生たちも呑気にしていられない時期に来ているのかなあ。

シリーズ感想

天才王子の赤字国家再生術 ~そうだ、売国しよう~ 2 ★★★★☆   

天才王子の赤字国家再生術2~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

【天才王子の赤字国家再生術 ~そうだ、売国しよう~ 2】 鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「私と一緒に帝国を奪りませんか?」
次代の名君として臣民に慕われつつ、楽隠居を目指して日々売国を画策する小国ナトラの王太子ウェイン。
僅かな手勢で隣国との戦争に勝利し、その名を内外に響かせた彼のもとに突然舞い込んだのは、後継争いに揺れる帝国の皇女ロウェルミナとの縁談話だった!?
うますぎる話に警戒するウェインだったが、周囲は帝国との関係が深まるとお祭り騒ぎ。しかも非公式のお見合いに訪れた皇女から提案されたのは、野望に溢れたもので――。
「超断りてえええええええええ! 」
天才王子による七転八倒な弱小国家運営譚第二章、ここに開幕!
ううん、面白いよう、面白いよう!
以前、帝国に身分を隠して留学していた件、多少のコネの取得や帝国の内実の情報収集、制度などの学習なんていう当たり前の成果とは異なる、でっかい伏線が仕込まれてるとは考えていましたけれど、この二巻で早速皇女ロウェルミナとの縁という形で打ち込んできました。ただ、このロウェルミナ皇女ことロワが、ただのヒロイン、ただの外交上の足がかりでは全然収まらないポテンシャルの持ち主だったんですよね。良い意味での刺激的なキャラクターでした。
ニニムなんか、ロワとウェイン王子って似たもの同士と評していて、確かに性格のネジ曲がり方や裏表の激しさとか似てるんですけれど、ニニムが想定していないレベルでこの二人ってそっくりなんですよね。
もっとも、この二人が似てるのって、元の素養はあったんだろうけれど、ロワの方がウェインのマネをしている、或いは大きく感化されたというところがあると思うんですよね。
だからこそ、ロワにはウェインの秘めたる目的を察することができたんだろうし、なんていうんでしょうね、自分の一番の望みを自分のために費やす生き方を選べたんじゃないでしょうか。
ロワやウェインにとって、国とは愛し守るものでありながらもそれに囚われていない。
皇帝になりたいという野心、のんびり悠々自適に暮らしたいという野心に邁進しながら、そのためにそれ以外のすべてを捨て去ろう、なんて全然思っていない。
二人共、多くを取りこぼさないようにしながら、でも一方で世界の在り様を壊しかねない大きな変化をもたらそうとしている。それは、とてもとても些細な願いを叶えるためで、そのために二人共人知れず、凄まじい戦いに挑んでいる。
それは、価値観や常識、という社会の根幹を根こそぎぶち壊そうという戦いだ。
ただ一人を余すことなく幸せにするためだけの戦いだ。それによって、自分も幸せになれる、からこその戦いだ。
だから、ロワとウェインは同志であり共犯者でもあるのだろう。時として、お互いを利用しあい、ときに蹴っ飛ばしあい、大迷惑を押し付けあったりする、でも余裕があれば助け合い、そして最終目標はとても似通っている、そんな同じ方向に肩寄せあってぶつかり合い戯言をぶつけ合って、手を握りあいながら進み続ける、そんな二人なのである。
というのは、ロワの理想なんでしょうかね。現実として、皇女はまだ彼の傍らに肩を並べられずに悔しがり歯噛みしながら、前を行く彼の背に頬を紅潮させながら目をキラキラさせて、懸命に追いすがっている、といったところか。
人が当たり前のものとして受け止めていたものを、ぶち壊してその先を手に入れようとしているロワの意志と願いをニニムは知っている。
ニニムの想いは尊いものだ。彼女の従者としての覚悟は透徹としていて美しいとすら言えるかも知れない。ウェインの妹姫にニニムは自分のお義姉さまになると思っていた、と告げられた時の決然とした宣言、そしてウェインの唯一無二の心臓であり続けられることへの誇りと喜びはいっそ神聖とすら言えただろう。
決して結ばれることのない、しかし誰にも引き裂かれない絶対不可侵の主従の絆。それは、ニニムにとって揺らぐことのない最善にして至上、完全なる幸福な在り方だったのだ。
既存の価値観、常識のなかで折り合った、たどり着ける最高の高みであったのだろう。
ロワが、そんな価値観、常識を越えた先を目指していると知るまでは。いや、そんな彼女の原動力となっているのが、被差別民である自分と王族であるウェインの二人の関係への憧れにあると知るまでは。
ニニムの心情は語られていない。でも、ロワの告白を聞いたあとの彼女の沈思には彼女の揺らぎを感じるのだ。
果たして、ロワが想像したようにウェインが目論んでいるものを、ニニムが気づいているかどうかはわからない。

ニニムの心臓の誓いは、ある意味停滞ではなかろうか。主君ウェインが望む世界を作り上げるための計画に、彼女の在り方はただ立ち止まったまま見送っているだけではないか。
ロワは、必死についていこうとしているのに。ロワはウェインだけを見ているのではなく、ニニム自身も一緒にと望んで、憧れて、そのために邁進しているのに。
彼女は現状に満足して、完結してしまっているんじゃなかろうか。

ロワの告白にニニムが察するものがあったかはわからない。あのお茶会のときにロワは、この件について探りを入れていたようだけれど。
わからないけれど、でもロワが帰ったあとのニニムの沈思は、繰り返しになるけれど、あの神聖な宣誓への揺らぎに思えてしまうんですよね。
それほどの影響を与えただけでも、ロワというヒロインの作用はとてつもないものでした。
もちろんそれだけじゃなく、直接の彼女……取り澄ました顔をさいごまで崩さずにキャラ保ってたのに、ニニムに突かれただけであっさり素の顔を見せてしまったところなんぞ、可愛いなんてものじゃなかったですし。あれで、あの告白ですもんね。あれをウェインじゃなくて、ニニムにある意味直接言っちゃうところなんぞ、かなりズルいですよ。あそこらへんで、皇女の本音にキュンキュンさせられてしまいましたし、ちゃんとあの二人をセットで、とか自分も入れてもらいたいとか、健気というか可愛げありまくりというか、色々とたまらんでしたし。ニニム好きすぎるでしょう、この人。
だからこそ、ロワだったからこそ、彼女のあの告白だったからこそ、ニニムの揺らぎの物思いだったように思うのです。
小国の王子が国際的な動乱を前に表向きな快刀乱麻に、実際は顔芸しまくりながら半泣きの綱渡りで乗り切って、動乱の主役へと立ち上っていく、という謀略戦記的なドラスティックな展開も非常に面白い作品なのですが、個人個人の関係や心情にしっかり踏み込んだ描写もこうしてみるととても丁寧に掘り下げて、その上で激しく動かしてきていて、期待していた以上に面白い話になってきました。
いやいや、あのウェインとロワのお互いに振り回し合いながら、凄まじい読み合いと駆け引きを繰り広げて主導権争いをしているところに、バカのバカゆえのあまりにも予想外の想像の斜め下を行く展開に、計画が全部盛大にぶち壊しになって、王子と皇女の稀代の策士二人が白目剥いてひっくり返るような有様になってしまうところとか、もう笑うしかなくてほんとに爆笑ものの面白さでしたよ。
現実は小説よりも奇なり。バカは本当に何しでかすかわからない、を地で行く展開で面白かったー。想定通りいかないところからの、カバーリングにアドリブでの謀略立案能力が、この王子並外れているのを思い知らされた形ですけれど。あそこまで思惑外されてえらいことになったところからの立て直し、まさに神がかってましたし。
皇女も能力的には引けをとってないのですけれど、彼女の場合大国の皇女でありながらも、後ろ盾がなくて自前の戦力が殆どない徒手空拳、というところで小国なりとも一国の王子で摂政で自国の組織を自由に使えるアンド情報収集の分野で極めて優れた組織を抱えている、というアドバンテージが差をつけた感があります。もっとも、下手な手を打たずにさっさとウェインと一蓮托生になってしまうあたりに皇女の強かさを見ますけれど。
んで、ここで突き放さずに留学時代の約束をしれっと守ってるあたりに、王子のイケメン力が見てとれてしまうんですよねえ。そりゃあねえ、ロワもそんなんされたらねえ。
色んな意味でロワが持っていってしまった感がありますので、ニニムもちょいとこれは考えどころじゃないでしょうか。ウェイン王子にとってニニムの存在が絶対であることは変わらないだけに。
ある意味安穏とできるからこそ、現状とどう向き合うのか。
無事に出る第三巻は、件の差別が激しい大陸西側が中心となる話のようですし、なおさらに注目です。

1巻感想

我が姫にささぐダーティープレイ ★★★★  

我が姫にささぐダーティープレイ (講談社ラノベ文庫)

【我が姫にささぐダーティープレイ】 小山 恭平/ファルまろ 講談社ラノベ文庫

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文武両道なエリート少年・鎧塚貝斗は、生徒会副会長として『王』たる存在を支えることに喜びを見出していた。
だがある日、彼は異世界に転生してしまう。
そこで出会ったのは、騎士公爵家の一人娘、ラライ・アッフィードだった。
名門王立女学園に通う彼女は、家柄だけは優秀なものの、学問ダメ武芸ダメ努力なんて大嫌い、さらには性格も悪くて友人もゼロな問題児。
それでも生徒会長になりたいという彼女。
そんな彼女が、執事となった貝斗に下した命令は――
「執事くんが私のライバルみーんなの足を引っ張ればいいんだよ!」
そして貝斗は、ダメお嬢様のためライバルの少女たちを籠絡し……!?
いずれ王とならんとする少女のために執事が暗躍する物語、開幕!
おおぅ、これマジもんの汚れ仕事、汚れ役、ダーティーのタイトルに偽り無しだわ。
面白いのは、この汚れ仕事を請け負うカイトは決して悪人ではなく、他人を貶める事を喜ぶ悪意の持ち主でもないというところ。なので、彼に騙され籠絡されていく少女たちがそれで不幸になり堕落していくかというと……いや、堕落と言えば堕落するのかもしれないけれど、むしろ彼女らの人生は好転することになるのだから興味深い。当然、彼女たちだけが幸せに感じる特殊な環境や状況、というわけじゃありませんよ? 一般的に見ても、色んなすれ違いや硬直化や取り巻く状況の劣悪さが改善されて、より良い状況へと転がっていっているのは確かな話ですし。
ただ、その彼女たちの幸せが目的で彼のダーティープレイがなされたのではなく、あくまでそれは姫の目的を叶えるため。姫たるラライの邪にして堕落した思想を、実現するための道路の舗装に過ぎない、というのがまた実に歪んでいる。実際、カイトってば何人か食っちゃってる(性的に)わけだし、口八丁手八丁で騙しているのは事実ですしねえ。
仏心もある、罪悪感もある。ただし、それを帳消しにしてでも面白さ優先、興味関心優先。その最優先が、今や彼の姫たるラライの人並み外れたクズい野望を自らの力量で実現させる、という方向へと向かってしまっている。
有能な人が陥りがちな、自分の能力をフルで使い尽くしてみたい、それも馬鹿げてるくらい野放図な目的を達成するために……という、野望・欲望。それも自分の目的ではなく、自分が王と認めた相手の野望を叶えるという王佐の欲。
まあ彼の場合、とても王佐なんてものではなく……なんだろうね。黒幕、というには王に目的も野望も預け切っているし。まさしく、汚れ役というのが相応しいのか。しかし、ただただ自分の力だけで無能な王を一代の英傑へと仕立て上げる、というのは彼のような人間をして、身震いするほどに楽しいお仕事なようで。そのためなら、どんな悪事もどんな善行も変わらぬスタンスで成し遂げ利用し切る、というのだから……前言を翻すことになるがこの男、やはり稀代の悪人である。
しかし、あとがきにもあるようにどんな裏の思惑、裏の意思があろうとも、その行為に救われた人にとっては救世主以外の何者でもないわけだ。そんでもって、この娘らの場合、それが利用するために行われた救済であると知ったとしても、それで裏切られた!と怒ったり反意を示すかというとそんな事はなさそうなんですよね。それくらいに、彼女らの人生は大きく好転していて、過程の事情に揺るがされないほどに彼女らにもたらされた結果の状況は決定的なものになっている。
カイトのいわゆるダーティープレイ(汚れ仕事)が決して軽薄でも生半可なものでもないことがよく分かる話だ。ちょいと騙して利用して、使い捨てにするつもりならこうは行かないだろう。
このクズいことこの上ない主従の顛末、どうなっていくか大変見もので面白そう。続きが楽しみ楽しみ。

小山恭平作品感想

始まりの魔法使い 3.文字の時代 ★★★★  

始まりの魔法使い3 文字の時代 (ファンタジア文庫)

【始まりの魔法使い 3.文字の時代】 石之宮 カント/ファルまろ 富士見ファンタジア文庫

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竜歴637年。研究機関として大学を設立した“私”は、その一歩として、研究成果を後世に残すための紙作りに挑んだ。そして、世界で初めてとなる日記帳を物忘れの多い人魚のリンに贈った。
「書いたこと自体を忘れないようにね」
「うん。大丈夫…多分」
それは有史の時代の始まり。紙と文字は、知恵と、そして―記憶を未来に伝えていくことになる。貨幣や交通が急速に整備されていく中、他の「始まりの魔法使い」を始祖とする村の存在を知った“私”は、転生したアイの可能性を感じて、リンと一緒に調査に赴くが―!?これは、すべての“始まり”を創った竜の魔法使いの物語。
物理法則がそのまま成り立たないって、かなり衝撃的なんですけど!
ファンタジー世界って、魔法という別系統の法則があるものの、それとは別に物理法則はきちんと存在しているものが殆どですものね。この世界の場合、基本的には普通の法則が成立はしているものの、ちょっとでも高度だったり複雑だったりする法則の場合、自然霊……精霊の気分によって簡単にかわってしまうということなのか。
川の流れで水車を回す、というおおよそ文明の基礎に近いであろう水力すら成り立たたないとなると、とてもじゃないけど高度な文明を作り上げられる気がしないのだけれど、一応シリーズ冒頭では文明レベル現代相当にまでは達してるんですよね。それだけ魔法ベースで発展していく、ということなのか。
人類史そのものの発展をたどっていくような物語なのだけれど、これ思ってた以上に一筋縄では行かない様相を呈してきたなあ。
そもそも、既に600年以上経っているにも関わらず集落の規模は村の段階からそれほど大きくなってないんですよね。人類以外の種族との交流は広がっているものの、肝心の人間種に関しては他の地方の集落とは交流すらなく、今回はじめて発見した他の人間の集落はほぼ原始時代と変わらないレベルだったことを考えると、相当偏った分布の発展をしてるんですよねえ。
今の所積極的に交流を広げたり、支配領域を広げたりという事は考えていないみたいだけれど、他の人間たちの中に異種族に対する差別意識が蔓延しているのを見ると、将来的にかなり厳しい展開が待っていそう。
衝撃的というと、エルフと人間との交配についても随分と厳しい設定を持ち込んできたものです。いや、これまで数百年、まったくエルフと人間との間にこういう事がなかったんだろうか。エルフの時間間隔を考えるとふと気を抜くとすぐに人間死んじゃってるし、そもそもタイムテーブルが合う機会が少なかったんだろうかなあ。
これは流石にエルフが人間との交流を閉ざすことを選んでしまうのもわかるんですよね。明確な種の存続の危機でありますし。それはそれとして、人間との間の交配ではああした問題が生じた事は理解できるとして、それは相手が人間の場合に限るのか、それともエルフ以外の存在ならどの種族でも同じなのかは気になるところですよね。相手の種族に合わせる形で変質するのならいいのですけれど。
これ、ニナがどういうポディションに最終的に収まるのか、という話にもつながるところでありますし。先生的にも、精神的に変容しているから悠久の時間に対して特に何も感じなくなっているとしても、そこにニナがずっと一緒にいるのと居ないのとでは根本から話違ってくるでしょうしね。
今回、ようやくリンがファイナルメンバーとして登極したので、パートナーの喪失という点は心配しなくてよくはなったのですが。といっても、現段階では問題だらけでアイたちとさほど変わらない状況なのかもしれませんけれど。
不死の副作用については辛かったなあ。何よりも辛かったのは、仲の良かった周りの人たちでしょうけれど。でも、そうか「文字の時代」か。そのテーマにおいては、文明の発展とリンクさせている以上に、このリンの想いが日記によって残ったように、受け継がれたように、文字によってあとの世代に想いが託されていく時代が来たんだなあ、と思うと感慨深い。
それとは別に、村の人たちのことを一人ひとり数百年に渡って1人も忘れること無く、昨日のことのように思い出して思い出話が出来る先生とニナのそれが、本当に尊いのだけれど。
ずっと覚えていてくれる、ということのどれだけありがたいことか。二人が村の人間たちから崇め奉られるのではなく、ずっと敬意とともに親しまれているのは彼らのそういうところなんだろうなあ。

1巻 2巻感想

天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ ★★★★   

天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

【天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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「こんな国、さっさと売って隠居生活だ!」

完全に詰んでる国家の運営、無茶ブリされました!

「さすが殿下! これが狙いとは!」
「どこまでもついて参ります!」
「殿下!」「殿下!」「殿下!」「殿下!」
『(一体どうしてこうなった!?)』
資源も人材も兵力もない弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。

文武に秀で、臣下からの信頼も厚い彼にはひそかな願いがあった。
「国売ってトンズラしてえええ!」
そう、王子の本性は悠々自適の隠居生活を目論む売国奴だったのだ!
だが、大国に媚びを売ろうと外交すれば予期せず一方的に利益を手にし隣国との戦争で程よく勝とうとすれば大勝利。名声は上がるが売国は遠のき、臣民はイケイケ状態で退くに退けない!?
天才王子による予想外だらけの弱小国家運営譚、開幕!
いわゆる「勘違い系」、本人の意図や能力関係なく、周囲が勝手に誤解して解釈したり都合よく物事が転がって成功してしまう類いの話かと思ったら、この王子マヂでスゴイガチの天才カリスマじゃないですかー!!
一番の難点は彼が自分の能力と信望を過小評価してしまっているところなのでしょう。過小評価と言っても無能なダメ王子と認識しているわけではなく、ちゃんと相応に高く評価してるんですよね。
その上で、周囲との国際関係やパワーバランスを考えて極めて現実路線な戦略、政治目標を立てた上で常識的な範疇での妥協点で決着させようとするわけです。
ところが、現実が思惑通りに転がらないのは常のこととして、彼の場合は何気に悲観論者、というよりも上手く行かなかった場合を想定して作戦立てているので、かなりリスクを加味した前提を持って慎重さと入念な段取りを用いているので、全部思惑通りに行ってようやく目的に達する、くらいの期待値なんですよね。都合よく物事が展開する、という想定をしていないのである。
まあその考え方もわからなくはなくて、元々あんまりこのウェイン王子、運がいいという経験してこなかったんじゃないだろうか。変に期待値込みで想定回すとそれが根底からポシャってしまう、というむしろ運が悪い経験を度々してきたんじゃなかろうか。鉱山の一件とか、事前にかなり皮算用してたのがえらいことになってパアになってしまったのを見ると、そう考えてしまうのである。
なので、最初から期待値低くリスクは常に降りかかるもの、という前提であれこれ作戦組み立てている、と思われるわけですが、元々能力値高いところに慎重で油断なくスキのない失敗しても破綻しない戦略を立ててるわけで、それだけ入念にやったら上手く行かないものも上手く行ってしまうわー! ということで、往々にして想定よりも上手く行ってしまうのである。
ただ、問題は下手に勝ちすぎると予定外の展開や相手の反応を引き出してしまう、ということでより情勢が悪化してしまうケースが多々あるんですよね。そして、なまじ勝っているものだから味方サイドは危機感を抱くどころかむしろイケイケ状態になってハシゴを外してくるわけです。
表向きには華麗かつ劇的な勝利を重ねて名望は高まるばかりの王子様なのだけれど、実態を見るとどんどんドツボの泥沼にハマっていき、それから逃れられない悲惨な有様になってってるのがなんともはや。
表向きには完璧なカリスマ王子を演じきっているウェインですけれど、唯一補佐官のニニムにだけはだらし無い素顔を曝け出しているわけです。そのニニムの前でひたすら「ぴぎゃーー」と想定外の連続に頭抱えて泣き言漏らすわ、FXで全財産溶かしたみたいにヘタれるわ、となかなかにみっともない真似を晒しまくるのですが、それがまたなんというか愛嬌なんですよね。
ニニムの前だけ情けない顔を見せつつも、やるとなったらとことんやってのけるそのギャップ。泣き言漏らしながらも、実際問題二進も三進もいかないような状況に追い込まれながらもそれでも想定外を踏み越えて、次々に閉塞を打開し打ち破っていくのですから、いやマジでガチの天才じゃないですか。
件の売国云々も、国を売って自分だけ悠々自適の身分を手に入れようというのじゃなく、どう抗っても巨大な帝国の侵攻に飲み込まれざるを得ない国際情勢の中で、最終的にナトラ王国が解体されるにしても、穏当に帝国の一部となって搾取される非支配地になるのではなく、ナトラ王国だった土地の人間が帝国内でも不当に扱われないどころかなかなかに重要に扱われるポディションを得る、というプランに基づいてのもので、滅亡必至の状況の中での最良の国家戦略だったんですよね。
それなのに、帝国の方で政変が起こってしまい、平和的国家解体プランは見事に瓦解。ナトラ王国は何かしらんうちに漁夫の利を得てしまい、しかし結果として大陸戦乱のさなかに放り出されるはめになり、王子頭丸抱え、である。王子、損して得を取れ、という方針を遵守しているにも関わらず、目先で得して未来のより大きな得を取りこぼしそうになる、という都合よい展開に見えて実際はえらいことになる、という状況ばっかりだなあ、ほんとに。
にも関わらず、より大きな難題が降り掛かってきた上で最終的にも得をもぎ取るというところがえげつないというかスゴイ。
とまあ、そんな感じの綱渡りばかりの王子様なのですが、ニニムとの気心の知れた関係が本当に良いんですよね。
絶対的に信頼できる側近にして、愛する妹にすらなかなか見せない無様な素顔を遠慮なく見せる幼馴染の関係。そして、諸国では被差別民であるニニムを侮辱されると、絶対に許さないという苛烈な一面。普段のカリスマ王子な顔とも、ニニムとの間に見せるすっとぼけた顔とも違う、自分の大事なものを汚された際の絶対零度の憤怒。激情を一切見せること無く淡々と、しかし確実に絶殺する凄絶さ。
ほんま、色んな面がある王子様で、魅力的で面白いキャラクターですわ。見ていて飽きない主人公でありました。
これから彼が率いるナトラ王国がどうなるかも、戦乱の度合いが増していく中での国家の舵取りの行方も非常に興味深いですし、先々楽しみなシリーズの開幕編でした。

始まりの魔法使い 2.言葉の時代 ★★★★   

始まりの魔法使い2 言葉の時代 (ファンタジア文庫)

【始まりの魔法使い 2.言葉の時代】 石之宮カント/ファルまろ 富士見ファンタジア文庫

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竜歴509年。将来の食糧危機を見据え、“私”は新たに農耕と牧畜を始めることを決めた。とはいえ、異世界の動植物に知見がない“私”は、その方法を他種族から学ぶべく、人魚や半人半狼、蜥蜴人の留学生を迎えることに。しかし、価値観の異なる生徒たちとの授業は困難の連続だった!そして、“私”が留学生を世界中から集めたもう一つの理由、それは魔法学校を有名にすることだった。いつか、“彼女”がこの場所に迷わずに戻れるように。―「でも、今はいないじゃない」剣部の一族の少女・ユウキの赤い瞳が真っ直ぐに“私”を映し出す。これは、すべての“始まり”を創った竜の魔法使いの物語。
全部覚えてる。ずっと覚えてる。それはとっても辛くて、とっても幸いなことなのだろう。薄れぬ記憶は、そこに在る人をずっと寄り添わせてくれるから。覚えてさえいれば、その人はずっとそこに居る。
去っていく人も嬉しいだろう。自分のことを覚えてくれている人が、ずっとずっと生きていてくれている、というのは、SFなんかのジャンルではよく語られることなのだけれど、それは一種の至高の希望なのだ。
でも、それじゃあ我慢できない子もいる。耐えられない娘もいる。もっと具体的に、傍に居続けたいと思うこともまた、間違いではないのだろう。アイはいつか還ってくると約束したけれど、ユウキは変転を続けながら傍に居続けることを選んだのだ。それは、彼女が先生の心を掴んだやり方であり、だからこそそれを貫こうとしている。
ユウキであり続ける、その後の子供たちはまたどういう思いを抱くのかは複雑なのだけれど。彼女たちはユウキであって、そうではない。その矛盾をどう処理していくのか。
心がつながっていても、同じにはなかなかなれないもんである。
言葉ならば、尚更だ。
人魚や人狼、リザードマンなど他種族の子供たちを留学生として招いて、本格的な学校を開始した先生とニーナ。他文化交流は、問題はあれど概ね上手くいっていた、と言っていいのだろう。言葉が通じるということは、意思が通じるということ。心も通じるということ。ならば、言葉が通じるのなら、価値観も共有できるはずだ。
という友好的な進化進展は、しかし言葉が通じるのに意思も想いも価値観も、何もかもが通じず繋がらず理解できない相手との遭遇によって徹底的に破綻させられる。
時に心しなければならない。
違う存在は、どうやったって違うのだ。
それは竜と人、それ以外の生き物とも通じること。人と竜との寿命の違いは自明なことであったけれど、今回長命種であった人魚の、そうかつて少女だったあの娘との永き別れを通じて、竜は自身の悠久の存在たることが、他とあまりにも隔絶していることを改めて思い知ることになる。そんな彼に寄り添い続けるニーナは、果たしてどこまで行けるのだろう。それは序章に描かれた未来の姿によってある程度確定していることとはいえ、エルフと竜ともまた違うことを忘れてはいけないような気がする。今はまだ、エルフのみんなは数百年経てもなお何も変わらず元気だけれど。
それでも、竜の先生が見守り支え、一緒に作り上げながら時代は進んでいく。今はまだ、時代は竜を置き去りにしていない。竜歴と名付けられた歴史の名前通りに、時代は竜と共に進んでいく。
いつ、世界が竜から巣立つのか。時代は新石器時代から鉄の時代へと移行しようとしている。農耕や放牧が未知なるモンスター、あのネズミに象徴される理解を越えた存在によって果たして成立が「地球」のものよりも或いはかなり困難で、自然発生的に広まるか悩ましい難易度になっているけれど、さてどうなることやら。鉄の時代は、どれほどの速さでやってくるのだろう。
個の寿命は短くても、種として確かに代を重ねるごとに技術も経験も着実に積み重ねていく人間は、果たしてどこまでたどり着けるのだろう。この人間たちも、あの剣部の一族の異様なまでの研鑽度合いをみると、生中な存在じゃないんだよなあ。あれやこれやであんな存在になってしまったユウキみたいなのもいるのだから、当然なのかもしれないけれど。
しかし、この時代って後代からみるとまだ神代に掛かってるんだろうから、シグとかルカ、リン、紫といった学校に関わった子供たちは、みんな未来では神様の一柱的に語られてそうだなあ。それはそれで想像が羽ばたくものじゃないですか。

1巻感想

始まりの魔法使い 1.名前の時代 ★★★★   

始まりの魔法使い1 名前の時代 (ファンタジア文庫)

【始まりの魔法使い 1.名前の時代】 石之宮カント/ファルまろ 富士見ファンタジア文庫

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かつて神話の時代に、ひとりの魔術師がいました。彼は、“先生”と呼ばれ、言葉と文化を伝え、魔法を教えました。そんな彼を人々はこう呼びました。―始まりの魔法使い、と。そんな大層な存在ではないのだが―「だから火を吹かないで!」「ごめんごめん。私にとってはただの息だからさ」竜として転生した“私”は、エルフの少女・ニナとともに、この世界の魔法の理を解き明かすべく、魔法学校を建てることにした。そこで“私”は、初めての人間の生徒・アイと運命の出会いを果たした―。これは、永き時を生きる竜の魔法使いが、魔術や、国や、歴史を創りあげる、ファンタジークロニクル。
壮大、いや雄大な話だなあ。
異世界転生モノ、と限定せずとも大体の物語は既にある程度の文明が築かれた、形作られた世界に転生にしろ生誕にしろ、降り立ってはじまるものであるのに比べて、この作品の主人公である「先生」が降り立った世界は、まだ確固とした「世界」が形成されていない原始の世界。有史以前、人にも他の知的生命にも「歴史」というものが存在せず、文明はなく、ともすれば「言葉」ですら僅かな種のみが操るのみ、という原始時代。それはもう、神話すらない時代なんですよね。
神代よりも前、というべきか。
もちろんそこは、原始時代であっても惑星・地球のそれとは違い、元が猿なのかネアンデルタールなのかは定かではないものの、人類種が居ると同時に「先生」がそうであったようにドラゴンが居て、エルフが居て、魔法らしきものがまだ体系化されていないものの、存在している。
異世界の原始時代なのである。
面白いのは、悠久の時間を生き続けるエルフですら、この時代に置いてはまだちゃんとした歴史を形成せず、種として若い方である、というところなんですよね。ましてや人など、まともな言葉すら持たず、意思の疎通も僅かな短い単語でやりとりするのみ。文化も文明も持たない、原始人なのである。
そんなまだ何もない時代、なにも始まっていない時代にドラゴンの子として降り立ってしまった主人公。では彼が神として、まだ何も持たない生命たちに、知識の果実を与えていくのか、というとそういう話でもないんですね。
彼は神ではなく「先生」であるのです。
ドラゴンとしてはまだ子供で、大きなトカゲ程度でしか無い先生。この世にある魔法の理についても何も知らず、体感的に使っているニナなどと、手探りで真理を紐解いていく日々。そう、彼は授ける側ではなく、探求者なのである。人と共に過ごし、共に学び、共にこの世界に「世界」と認識できるものを形作ってく、時代の開拓者なのである。
後世からすれば「神代」と呼ばれる時代を、この時代に生きる人々と共にゼロから一つ一つ作り上げていく日々。それまで存在しなかった「精霊」と呼ばれるモノが生まれていき、この世に魔法が発動する様々な法則、ルールを一つ一つ試し、創造し、探求することで体系化されていく知識。

そう、誰もが思い描く「異世界」の姿が、なにもないところからどんどんとその萌芽が現れていく、作り出されていく、広がっていく。まさしく、始まりの物語なのである。

しかしこれは同時に、そんな始まりから悠久の果てである遠い未来までを見守り続けるドラゴンの物語。ドラゴンと同じく悠久の時間を生き続けるエルフのニーナを除き、恋人であり兄弟であり家族であった、同じ始まりの時代を歩き出した大切な人々は、短い時間しか行きられない「人間」であるが故に、先生とニーナを置いて去ってしまう。人と竜の種属を超えて愛し合った人の娘もまた、老いさらばえ、しかし最後まで妻として夫である竜に寄り添い、朽ちて行ってしまった。
始まりと同時に、これは別れの物語なのである。悠久を生きる生命の物語としては、その流れる時間の違い、生きる時間の違いは常に主題となって、突きつけられる。
しかしこれは同時に、魔法の物語でもある。
去っていったヒトたるカノジョが残した最後の言葉は、再会への誓い。最初に描かれた、はるか未来の到達点における、とても幸せそうな光景を思い出すならば、これは哀しい悲劇の物語ではなく、幸福へと至る物語なのだと信じることが出来る。
だからこそ楽しもう。悠久を見守り続けるドラゴンが、どのように世界を形作っていくのか。歴史に関与していくのか。物語を紡いでいくのか。思い描くだけでワクワクしてくる、そんな話のこれがはじまりはじまり。

ヴァルハラの晩ご飯 2.オオカミとベルセルクの野菜煮込み ★★★☆  

ヴァルハラの晩ご飯 (2) ~オオカミとベルセルクの野菜煮込み~ (電撃文庫)

【ヴァルハラの晩ご飯 2.オオカミとベルセルクの野菜煮込み】 三鏡一敏/ファルまろ 電撃文庫

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イノシシのセイです! 前回世界樹を倒壊の危機から救って主神オーディンさまから英雄認定されたけど、結局ご飯になって生き返る毎日は相変わらずです……ひどいや! まあブリュンヒルデさまはじめ、戦乙女9姉妹との距離が近くなってきた(気がする)のは嬉しい限りだけどね! ヤッタ―! でも最近『選ばれし人間の英霊(エインヘリヤル)』たちに妙な空気が漂ってるし、オーディンさまの機嫌も悪い気がする……何でだろう?
そんなある日、戦乙女(ヴァルキューレ)9女のロスヴァイセさまが巨大な狼へ変身する神技を失敗したショックで引き篭ってしまわれた。《狼のことは狼に聞け》。そう考えたボクは、一吠えで島一つを吹き飛ばすという魔狼"フェンリル"に会うべく、ブリュンヒルデさまたちと共に出発する。待ってて下さいロスヴァイセさま! あなたの心は、このボクが救ってみせます!

一巻からこっち、フワッとしたハートフル系の話だと思ってたら、なにやらずんどこ怪しい雰囲気になってきましたよっとな。基本的にヴァルキューレ姉妹たちはみんないい娘たちばかりであり、主人公のセイも素朴な倫理観に準じている子のためか、彼女たちと戯れているときはキャッハウフフな和やかというか甘酸っぱいというか、ややも下心もありなセイくんと戦乙女娘さんたちとのラブコメを素直に楽しんでいられるのです。それに、周りの同僚たちや神様たちも基本良い人ばかりなので、不穏な空気なんて感じられないはずなのですけれど……。
これが、神の世界。このオーディンを主神とするヴァルハラの秩序に基づく規範や理念に触れることになると、途端にヤバい領域にツッコんでくるんですよね。というのも、セイくんがある意味純朴すぎて、当たり前の倫理観を神々の権威などに揺るがされないというところにあるのでしょう。オーディンが決めたルールや、神々が正しいとした選択、結末に対して反抗しているという意思すらなく、え?でも普通に考えてこうじゃないのかな。こうした方がいいんじゃないかな。こうした方が喜ばれるんじゃないかな? とこれはもう無視に等しい意識で易易と突破し、良いと思ったことをやっちゃうんですね。これ、独善とかそういうんじゃなくて、本当に素朴な正しさであって、むしろ理不尽なのは既存の在り方の方なので、それを問われた周りの人たちも思わず黙っちゃうのですよ。ロト神はともかくとして、決してルールに対していい加減ではなく秩序に忠実なブリュンヒルデがぎゅーっと目を瞑ってしまったのはあれ、単にセイくん可愛さに血迷っただけではないのでしょう。いやまあ多少、のぼせてるフシがないでもないですが。
ロト神と違うのは、ロトの方は自覚的に反逆行為、ルール破り、秩序に喧嘩売ってる、という意識を持った上でやらかそうとしているところで、だからこそロトの方からセイに対して一目置いているところがあるんだろうなあ、あれ。無自覚ほど凶暴なものはない、と。
息子であるフェンリル狼が、あれだけ誑し込まれてしまったのを目の当たりにしてしまったわけですし。ただ、基本良い奴っぽいロトなんだけれど、根があれだけトリックスターであることだし、何より今回のベルゼの変貌の仕方を見ると、これまでの姿から突然ガラッと変わっても何もおかしくない、という作品の展開上の前例が出来てしまっただけに、ラストで未知の現象を目の当たりにして色々と察したロトが何か思惑を抱いている様子なんざ見せられてしまうと、果たしてこのまま味方でいくのかどうか信じられるかどうか、という疑念が。
と思うところでもあるんだけれど、何しろ主神のオーディンが一番胡散臭いというか、器が小さそうな側面が今回色濃く魅せられてしまったからなあ。フェンリルと友達になってしまったように、むしろセイの方がどっちにつくか、という展開もありそうな感じだし。
そもそも、セイの正体がそこまで未知係数高いものだったとは。ってか、あのラストの展開なにげにえげつなくないですか? よく考えたら、死んでも復活する不死だの完全蘇生能力とかそっち傾倒の能力は多々見受けられるけれど、死んだらその死体は残ったまま新しい肉体で復活する、って無茶苦茶もいいところですよね。あんまり聞いたこと無いぞ、そんな能力。

とまあ、話の核心の方は不穏な空気が流れつつあるのですが、もう一方のメインであるヴァルキューレたちとのラブコメの方は安定の流れで、セイくん小動物な見た目利用してちょっと美味しい真似しすぎじゃないですかね? 人間形態になったらなったでショタっぽいし。そりゃあお姉さんたちに大人気だわ。
ブリュンヒルデ姉様、末妹ロスヴァイセの恋を無理やりなかったことにしてセイくんキープしようとしているの、けっこう鬼畜な所業ですよねw

1巻感想

ヴァルハラの晩ご飯 イノシシとドラゴンの串料理 ★★★☆  

ヴァルハラの晩ご飯 ~イノシシとドラゴンの串料理~ (電撃文庫)

【ヴァルハラの晩ご飯 イノシシとドラゴンの串料理】 三鏡一敏/ファルまろ 電撃文庫

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神界の台所“ヴァルハラキッチン”の夕飯時はいつも大忙し!ボク、喋れるイノシシのセイは主神オーディンさまの指名を受けて、そのお手伝いに来たんだ。―『料理される側』としてね!いや、確かにボクは「一日一回生き返る」っていう不思議な力を持ってるけど、でもだからって「毎日死んでご飯になれ」ってひどすぎない!?…まあそのおかげで、美しくて可愛い戦乙女・ブリュンヒルデさまのお傍にいられたりするから、すべてが辛いわけじゃないんだけど…。って、あれ、神界ナンバー2のロキさまがなぜここに?え、神界のピンチだから一緒に来い!?いやぁ、ボクただのイノシシですからってうわあああぁー。第22回電撃小説大賞“金賞”受賞作!神々の台所を舞台に贈る“やわらか神話”ファンタジー!
あれ? てっきり天界を舞台にした「料理」を作るのを主題にした料理モノかと思ってたんだけれど……、料理を作るんじゃなくて、料理されちゃう話なのかー。食べられちゃう話なのかー。それも性的に食べられちゃうのではなくて、食材的にガッツリ食べられちゃう話なのかー。
なんとーー!?
うははは、これは予想外だった。主人公は一日一回死んでも生き返る「イノシシ」の少年。その特性を活かして、神界にラグナロクに備えて招かれた地上の勇者たち、エインヘリヤルたちの宴の食材となるべく、毎日サクッとぶっ殺されて調理されちゃう仕事をしている、何気にウルトラ超ブラックな業務内容に勤しむイノシシなのである。
いや、これ普通精神病むでしょ。料理長がいい人で、なるべく苦しまないように殺すすべをちゃんと工夫し続けてくれているのだけれど、煮殺されるとか焼き殺されるとか、ハードワークどころじゃないし。
それを、わりとのほほんとこなしているこのセイくん、タフガイなのかそれとも極めつけの能天気なのか。ブリュンヒルデの色香に惑わされて自分で志願して仕事についてしまった子なので、まあ自己責任の範疇なのだけれど。それでも、その苦しさを他人への負の感情に押し付けないでのほほんとしているあたり、大したイノシシである。むしろ、ブリュンヒルデで釣るという策を巡らしたロキ神が結構気にして気に病んでいるあたり、このロキさまトリックスターという役回りの神様のわりに根っこ真面目なんですよねー。
もちろん、ロキ神らしく遊び心満載なのだけれど、セイの身の上のことを一番真剣に考えてたり、福利厚生に気を使ってくれたり、今回の世界樹の一件でも率先して解決のために尽力しているわけで……えらい働き者のロキ神である。頭脳明晰で真面目で全力を尽くす気配り上手なロキ神って最強じゃね? しかも、オーラスで味方である。これほど頼もしい味方はいないですよー。
さて、食べられるのがお仕事のセイくんなのですが、ロキ神に気に入られたせいもあってか、ひょいひょいとロキのお遊びに付き合わされ、連れ回されることに。その出先で、個性的なヴァルキュリアたちのお仕事を手伝ったりと、別に戦闘力が高いとかは全然ないくせに小器用で立ち回りが上手いので、役に立つ小動物なのである、この主人公。お陰で、ヴァルキュリアたちには弄り回され可愛がられ、おのれイノシシのくせに。いや、イノシシという動物の身なりを利用して、ナチュラルにセクハラしまくるこの小僧、かなりのやり手である。天然ではなく、意図的に小動物なのを利用してセクハラしまくるあたり、かなりの強者である。ヴァルキュリアたちが、小動物相手にガードが緩すぎる上にチョロすぎるのもあるんだけれど。おまけにこのイノシシ、ドSで調教が趣味、みたいなところもあるだけに……あれ? この主人公わりとゲス系?
いやいやいや、良い子ですよー。自己犠牲精神たっぷりの前向きで快活で困ってる子を助けずにはいられない良い子ですよー。かなり助平なだけで。よこしまくんなだけで。下心で駆動しているだけで。
まあまあ、愛嬌と可愛げたっぷりの子なんで、許してあげてください。ヴァルキュリアたちも満更じゃないようですし。
軽妙なリズムが心地よい、読むと楽しくなる良いお話でした。

 
12月3日

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