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フルーツパンチ

ロープレ世界は無理ゲーでした 領主のドラ息子に転生したら人生詰んでた ★★★★   



【ロープレ世界は無理ゲーでした 領主のドラ息子に転生したら人生詰んでた】 二八乃端月/フルーツパンチ ファミ通文庫

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冴えない営業マンの俺は外回り中に階段から転げ落ち、目覚めると昔ハマったRPGに登場する領主のドラ息子ボルマンになっていた!父の勧めで貴族の娘エステルと婚約を結ぶことになった俺。ゲームの世界も悪くないなと思ったのも束の間、この世界がシナリオと同じ運命を辿ると村は魔物に襲われ滅びてしまうことに気づく。十二歳に転生したおっさんが努力と友情と舌先三寸!?でロープレ世界を生き延びる、チート不足の崖っぷちゲーム世界冒険譚!
よくある転生と同時に特殊能力特典貰えたり、転生したキャラが特に優秀だったりするような展開が一切なく、素のスペックだけで勝負させられる系統かー。しかも、最初の悪役キャラでシナリオ序盤に退場予定、という置かれた立場、状況が底辺から立て直していかないと行けないというハードモード。
ただ、タイトルにあるような無理ゲー、というほどではないと思うんですよね。将来滅びる予定の領地は現状では田舎だけど豊かで経済力もありそうですし、仕えてくれている隊長はかつては都でも鳴らしたツワモノらしいですし。
とはいえ、領地のトップである両親が俗物の底辺みたいな小物悪党なので、それをなんとかしなければ全部が瓦解してしまい、将来約束されている破滅を回避などとてもできないわけですが。

こういう原作シナリオが前提にあり、それを覆すために幼い頃から改革していく系の話って、結局正史と未来の結末を知っている人間が主人公本人しか居ない以上、結局全部独りで頑張って変えていく、というパターンが多い気がするんですよね。もちろん、仲間や協力者はたくさん作るんだけれど、本質的に彼ら正史改変者たちは孤独であることが多い。それも仕方のないことで、彼ら主人公の根源となっている情報であり原動力を誰も共有できないんですもんね。
でも、本作が少し違うのはボルマンが早い段階でヒロインであるエステルと、ゲームのシナリオとかそういう話はしていないものの、将来の破滅の情報に関しては秘密にせずに共有してるところなんですよね。それほどの秘密を打ち明けてでも、ボルマンはエステルと一緒になることを望んで、エステルの方もそんな破滅を知った上でボルマンの元に居ようとする。
幼い二人の恋と情熱、それを燃料に焚べて原動力とする努力と直向きさ、一途な健気さがほんと微笑ましくも応援したくなるんですよね。
漠然とした破滅への忌避、死への恐怖といったものが原動力ではなく、ただただエステルを幸せにするために、死に物狂いで頑張るのっていいじゃないですか。男の子、って感じが凄く出てて。
エステルの方も、最初は子豚姫みたいに言われてる節制出来ない女の子だったのに、ボルマンと出会って彼に恋して、彼とともに頑張るために自分を変えて、という努力する系の一途なヒロインでまた可愛いんだ。
ボルマンの中の人が目覚めるまで、本来のボルマンはまだ小さい子供にも関わらず悪行の限りを尽くしていて、他領にまで名前が響くほどの悪名を響かせていたのだけれど、それによって憎悪すら抱かれていた領民たちに、彼は誠実に償いを遂げていくのである。勿論、拭えない罪というものはあるし、ボルマンも自分のしでかしてきたことの大きさに痛感するはめになるのだけれど、彼は言葉や金銭だけではなく、ちゃんと体を張って罪の清算以上の領主の息子としての責任を果たすことで、許し以上のものを獲得していくのである。
自分のための破滅の回避ではない、彼の頑張りは見ていて心擽られるものがあるんですよねえ。
なんとか、エルテルと幸せになってほしいものである。
そう言えば、冒頭にちらっとだけ登場した本来のシナリオの主人公、全然姿を見ないけれどそのうち出てくるんだろうか。

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 2 3   

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 2 (このライトノベルがすごい!文庫)

【Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 2】 只野新人/フルーツパンチ このライトノベルがすごい!文庫

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VRMMORPG“DEMONDAL”そっくりの異世界に転移してしまったケイとアイリーンは、タアフの村での騒動を片付け、城郭都市サティナへたどり着いた。物資補給と情報収集を進めるうち、街の暗部を垣間見、そして知り合った子どもの誘拐事件に直面する。許されざる所業に、アイリーンは走りだした。その先に待つ苛酷な現実も知らず―大人気異世界ファンタジー第2弾登場!
異世界に転移したての一番きつい時期にへばっていたアイリーンと、殺人も含めて冷徹に自分とアイリーンを守るための決断をし続けたケイ。二人の覚悟というか身の危険への危機感の差は、深刻な錯誤となってもっと二人の関係に影を落とすのかと思っていたんだけれど、考えていた以上にアイリーンは覚悟が決まっていた。というか、心根が強かった、というべきか。この二人の差は仲違いへと転がっていくのではなく、アイリーンが良心であり指針としてケイを引っ張っていくことになるのか。
1巻の感想でも触れたことなのだけれど、正直ケイの酷薄さ、自分とアイリーンの身の安全をはかるためなら他人の事など一顧だにしていないというガチガチに守りに入ったハリネズミみたいな姿勢は、幾らなんでも過敏すぎると思える反応だったんですよね。よっぽど酷い目にあった後ならともかく、彼の場合は異世界に転移した直後からびっくりするくらい警戒心丸出しだったですし。ただ、あそこまで徹底的に自分たちと他人を区別して、他人から寄せられた好意すらも計算で選り分ける姿勢は、まあ気持ちのよいものではなかったわけです。
もともとケイがそういう性質の人間だったなら、そういう姿勢も仕方ないと嫌悪混じりに受け入れられたのでしょうけれど、自然にそう振舞っているというには徹底しすぎているところがあったんで。
一応ながら安全が確保できる場所であるサティナに辿り着いた後に、ケイが殺人などを後悔はしていないものの、それでも引きずるような感情が滲み出始めているのを見て、どうやらケイが普通以上に臆病というか、生命の危険に対して過敏であることが感じ取れたんですけれど、あれはやっぱりリアルでの状況とか生い立ちとかが関係あるんでしょうね。ともあれ、ケイ自身も自分のやりようが正しいと思いつつも、まともな感性を持つものとして違和感みたいなものはあったのでしょう。それをズバリと突いたのが、アイリーンのあの率直な一言だったのでしょう。ケイの内心を知らずにいたからこそ、自然に出てきたあの言葉。「ひとでなし」というヒトコトがケイをどれだけ打ちのめしたか。あのままだったら、ケイは自覚がないまま人であることを踏み外していた感が非常に強かったので、アイリーンは知らず彼を引き戻したことになるのでしょう。それも、安全なところから理想をうたうのではなく、自ら傷を負い血を流し人の命を奪うことによって覚悟を示し、それでもケイが避けようとしていた道を敢然と突き進めるのだ、と証明してみせたわけで。正しく人として生きる、というのは困難だし危険も多いでしょうけれど、気分的にはやっぱり楽なんですよね。これまでケイはゴリゴリとなんか大切なものを削っていってヤバい感じになりつつあったので、アイリーンが引っ張っていく先は多少なりとも彼を均衡危うかった心を守ってくれるのではないでしょうか。
二人は、思いの外良いコンビだと思いますよ、これ。

しかし、あの誘拐された子の、助けだされた後のあの台詞って、暗喩が入ってるわけじゃないですよね? 言葉通りに受け取ったら、微笑ましい要求なんだけれど、あの飴がそのままの意味で飴じゃなかったら……鬱になるじゃすまないんですけど。

1巻感想

コートボニー教授の永続魔石 3   

コートボニー教授の永続魔石 (オーバーラップ文庫)

【コートボニー教授の永続魔石】 桜山うす/フルーツパンチ オーバーラップ文庫

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「よろしい。さっそく設計してみせるのだ、スービ・キュージット」
冒険に欠かせないアイテム収納ボックス、全方位カメラ、空を飛ぶ船――これらの発明をたった1人で成し遂げる男がいたとしたら?
彼こそスービ・キュージット。大学10年生、憲兵局の法改正を強いた回数4回、異常なネコミミ偏愛者にして、魔法学界の奇跡。
そんな彼はある日、100年先の技術を持つコートボニー教授と出会う。
スービは魔力の永久機関といわれる“永続魔石"を彼女と共に探すことになるのだが――。
これは大発明家の若き日の物語。
第1回オーバーラップ文庫大賞“金賞"受賞作、ついに登場!
これはなあ……新人作品でしか書けないような無分別に書き散らした作品ですねえ。これが作風として確立できるなら需要が出てきてもいいかもしれないけれど、どうも確固とした自分の中の基準があってこういうとっ散らかったスタイルにした、という風情でもなさそうだし。小説として、物語としての連続性が中盤辺りから適当にほっぽり出されてるんですよね、これ。なんでこれ、いきなりビックリは発明とか頻発しだすのかしら。永続魔石はどこいった。まさか面倒くさくなった、とは思わないけれど、後半に行くほど内容がとっ散らかっていき、つまみ食いみたいに書きたいものを好きなようにぎゅーぎゅー詰め込んでいく形式は、一種の妙味を感じるものの、一方でお話としての目標を見失ったというか無視したというか興味も関心も失ったみたいな無軌道さは、まあやらかしたもんである。そしてとってつけたような、ようやく最後に見つけた宝箱の中に、「これまで頑張ってきた君の努力、仲間たちとの絆こそが最大の宝物だよ」と書かれた紙切れ一つ、なごとき結論はなかなかろくでもなかった。ろくでもなさが素敵、と思うかどうかは人それぞれか。純真にその内容に感銘を受ける人もいるかもしれない。うむむ。
これが一旦魔工制作に夢中になると、他のこと全部放り出して掛り切りになってしまう人間失格なろくでなし、スービ・キュージット氏の手記という形式であるなら、この集中している部分と適当な部分が露骨なくらいに浮き彫りになってしまっている書き散らしっぷりは、見事に彼らしさを表しているとしてさもありなんと受け入れるべきなのか。
面白いっちゃ面白く感じたんだけれどさ、なんか無責任で居られる他人ごとだからこそ笑っていられる感じなんですよね。これ、面白く感じていい部分なのかしら。芸ならあとあと引っ張れるんだろうけれど、事故なら後始末大変よ?
じゃあきちんとまとめろ、というと途端につまらんものに成り果ててしまいそうな感覚もひしひしと感じるわけで、難しいバランスよね。
コートボニー教授が小人マスコットかわいいというのは正義。そして、彼女が人妻であるというのは革新。……時代である。時代の要求を先取りしてるのか、それとも過去から取り戻しているのか。人妻もロリな時代の到来である。

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ 3   

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ (このライトノベルがすごい! 文庫)

【Vermillion 朱き強弓のエトランジェ】  只野新人/フルーツパンチ このライトノベルがすごい!文庫

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朱き弓使いが転移したのは、ゲームに酷似した苛酷な異世界だった――

硬派なゲームシステムで知られる海外産VRMMORPG【DEMONDAL】。騎射の達人にして廃プレイヤー・ケイと相棒のロシア人“NINJA"・アンドレイはゲームプレイ中、【DEMONDAL】そっくりの異世界に転移してしまった。
不意に盗賊に襲われ、瀕死の状態になった相棒を救うため、ケイは単身、盗賊のアジトに乗り込む。手には朱色の強弓、“竜鱗通し"を携えて……。
応募総数2200作品から選ばれた、第二回なろうコン大賞受賞作品!
ウェブ小説だった作品の特徴というべきか、はたまた逃れられないさがというべきか。元々本としての一冊の分量を意識していないせいか、第一巻の内容がどうしても盛り上がりどころを迎える前に、或いは構成としての起承転結が成立する前に話が区切られちゃう場合があるんですよね。あれ?もう終わり?てなところで、一冊読み終えてしまう。
じゃあ内容弄って、1巻の中でちゃんと起承転結つけよう、なんてことをすると、これはこれで見るも無残なことになってしまったケースも往々にして見受けられるので、難しい話なのである。
ウェブ小説として書いている時点で、本の一冊分の分量を意識して書く、というやり方もまああるのでしょうけれど、ウェブ小説の長所となり得る点として、分量に縛られないからこそ自由かつ大胆に書ける物語があると思っている。こういう自由さの中でなければ生み出されない傑作、というのもあると思うんですよね。この辺りはフレキシブルにやって欲しいなあ。
しかし、そうは言っても書籍化するとなると、1巻での掴みの弱さはやはりキツいものがある。2巻、3巻までとりあえず読んで欲しい、と後々素晴らしい作品になっていくことがわかっていると、そうお願いしたくもなるけれど、最初からそれを前提にして読者に期待するのはなあ……。
と、前振りも随分と長くなってしまったのですが、本作もつまるところそういう、スタートダッシュがかなり鈍いタイプの作品だと思うんですよね。特に苦しいのが、ヒロインであるロシア少女が出鼻から昏倒してしまって、意識を失ったまま殆ど出番がないところか。元々ゲーム内で相棒同士だったし、こちらの世界に来てからある程度お互いの事情みたいなのを話し合っているので、コンビとしてはすでに関係は出来上がっているのですけれど、片方意識を大方失っていたせいで、異世界に対する認識、心構え、殺人への意識などのすれ違いの要素がまだ萌芽として出てきはじめた段階であり、同時に信頼関係についてもまだ本当に通じ合っている段階では全然なく、手探りをはじめようか、というつまるところ本当の意味でスタートする前の段階、何もはじまっていない状態なんですよね。うん、仕方ないとはいえ遅い。世界観、この異世界についての探索、文化レベルやモンスターなどの生体、社会情勢や元のゲームとの差異なんかの調査も、最初にゴタゴタがあったせいか遅々として進まず、まだ右も左もわからないまま、ですしね。
ほんとに、導入も導入編のところで終わっちゃっているので、さすがにこれは盛り上がりどころがなかったかなあ。確かに、盗賊団との戦いもあるんですが、プロローグでやるようなプレイベントレベルとして捉えうる出来事なんで、盛り上がりどころとも見えないですし。
まあこれは構成の問題なので、上記したように難しい所で、現状どうしようもないといえばどうしようもないんでしょうけれど。
世界観自体は、昨今ゲームの延長みたいなイージーな異世界が多い中で、本格的な臭い汚い血腥い、というのが伝わってきそうな中世欧州風の異世界。元が洋ゲーという趣もあるのでしょうけれど、村人の生活感なんかからしても、相当リアルな中世の雰囲気を感じます。
秀逸だったのが、ゲーム内から異世界にトリップしてしまう時の出来事のあの不気味さ加減ですね。かなり気持ち悪くホラー感覚な体験を経て、異世界へと転移してしまうだけに、えらく不吉な感覚を抱いたま「DEMONDAL」の世界に降り立つことになるわけで、どこか陰鬱で重苦しいさがこびりつく雰囲気は作品の風味としてはなかなか重厚感みたいなのを醸しだしているんではないかと。
問題は、主人公のキャラクターだわなあ。これは、完全に好みの問題なのですけれど、自分は彼の酷薄さには忌避感を抱いてしまった。その身の上や、突然の事態に対する余裕の無さや、アイリーンを守らなきゃならないという必死さ、右も左もわからない世界で生き残っていかなければならないという算段からからくるものだというのは理解は出来るのですけれど、優しさや厚意、親切というものに対してあれだけそっけない態度をとられてしまうと、やはり共感や感情移入はしにくいですからね。割り切りというか、人殺しに対しての無情さも、なんか距離感感じますし。決して、殺人を忌避しろとか思わないですし、殺っちゃう事を全然気にしないキャラも気にならない時は全く気にならないんですけれど、彼のやりようはどうも過敏な感じがして、嫌悪感を感じてしまったんだなあ。主人公に対して言うようなことじゃないですけれど、信頼しにくいキャラクター、という感じで。
ともあれ、本番はこれからでしょうし、コンテストの大賞を受賞したという作品なのですから、ここから盛り上がっていくのでしょう。ちゃんとした物語としての感想は、それからになりますか。

彼女は戦争妖精 94   

彼女は戦争妖精 9 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 9】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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望んだものは――。

半年前、あの荷物を受け取っていなかったら。余計な同居人にも、襲いかかる刺客にも悩まされることはなかっただろう。恋をすることも、その相手を守るために人を斬ることもきっとなかっただろう。それまでのように、ひとり静かな毎日を過ごせていたに違いない。しかし――それでも伊織【いおり】は思う。自分とクリスは出会うべくして出会ったのだと。たとえ向かう先が"妖精の書【レボル・シオグ】"の残酷な導きだとしても、必ず家族を守ってみせると――。伊織とクリス、最後の物語。
彼女は戦争妖精も、これにて完結。でも、本当の意味での終わりは既に前巻で伊織とクリスが抱きあって泣いた時に終わり果てていたのだろう。
ここで描かれたのは伊織とクリスを戦いへと導いた因縁との決着であり、因果の後始末。長い長い、エピローグに過ぎない。
そう、後始末だ。
自縄自縛に陥った哀れな薬子先生を解き放ち、伊織を苛むあらゆる原因となった男との関係に蹴りを付けるための。

結局、伊織は父親と理解し合うことはついになかった。幼い頃から母親を捨てて自分の研究にかまけた挙句に失踪してしまった父親を恨み、憎み続けた事が今の人格を形成するに至った要因とも言っていい伊織だけれども、彼の父親への憎悪というのはこうしてみると全然的外れではなかったんだな。
過去編で宮本康頼という男は自分の研究にしか関心がないろくでなしとして描かれていたが、吟遊詩人のシリーウォークとして蘇った彼の知的好奇心に基づいた行動は、ろくでなしどころじゃない、自分の興味のためには自分を慕ってくれた娘を利用し、自分の家族を苦しめ、息子を殺めようとすらする本物のクズでしかなかった。最後の最後まで、同情も共感もいっさい湧かない、本物の下衆野郎だった。
伊織と彼の闘争は、本来なら父子が争わなければならない、という葛藤が介在して然るべきなのに、伊織にも、弟である頼通にも、シリーウォークを倒すことに、殺すことに一片の躊躇いも生まれないんですよね。そして、読んでいるこっちもそれに疑念を覚えないほどに、シリーウォークは伊織とその家族を脅かす敵でしかなかったのである。憎むべき、此処で討っておかなければならない怨敵でしかなかったのだ。
薬子先生の道を過たせ、エルクに辛すぎる決意を抱かせ、何より同志としての常葉先輩とリリオを永遠に失わしめた仇として。
彼がシリーウォークに止めを刺すシーンには、思わずため息を付いてしまった。仮にも、父親と息子である二人の決着である。それがこんな一片も気持ちも心も交わらない冷たいものになってしまうなんて、どうにかならなかったのだろうか。とは言え、伊織には何の非もない以上、父親のクズっぷりを恨むしかないのか。本当に、伊織にあんな残酷な顔をさせたこの男には、恨みつらみしか浮かばない。

父親との因縁を振り切り、「死の蛇」としてミンストレルに狙われる事もなくなった伊織だけれど、今後も楽園を目指さない以上、常に他のウォーライクに狙われ、戦い続けなければならない。かつて、終わりのない戦いの日々に、たまに死にたくなるとまで漏らしていた伊織の気持ちを唯一共有してくれ、支えてくれるはずだった常葉先輩は、戦いに敗れ書をめぐる戦いの記憶を失ってしまった。
それでも、伊織はこれからも死に心惹かれる事無く、クリスを守り続ける事が出来るのだろうか。
出来ると信じたい。
戦いの記憶を失ったとはいえ、常葉先輩は大事な想いの記憶だけは失わずに、彼を愛して寄り添ってくれている。支えには、クリスがなってくれるだろう。幼いながらも、彼女は、常葉とリリオの為にいっしょに涙を流し、ともに仇を討った戦友同士だ。今の伊織とクリスなら、もう死にたくなるなどという弱音をこぼす事もないはずだ。

むしろ心配なのは薬子先生の方だけれど……エルクの献身を思えば、彼女にはなんとか幸せになって欲しい。幸薄く、それが故に自分からさらに報われない道へと進んでしまった彼女だけれど、その弱さは責められないもの。頼通叔父とよりを戻さなかったのは寂しいけれど、仕方ないんだろうなあ。過去にどれだけひかれあっていても、もしかして今もひかれ合っていたのだとしても、切れてしまった男女の仲というのは元には戻れない。あの時、薬子が決別を申し出た時が、引き返せないターニングポイントだったんだろう。

心の慰めは、やっぱりマハライドと健二の二人である。ウォーライクの戦いの運命から地力で抜け出し、自分たちの幸せを掴んだ二人の様子は、救いでもあるんですよね。
ちょっと経済的な意味で将来が心配だけれど、何気にラ・ベルが二人のこと見守ってくれているようなので、そちらの方も一安心。過去の人間だった頃の記憶を取り戻したからか、ラ・ベルも優しくなって。いい女になりましたよ、彼女も。

優柔不断とは真逆の、ヒロインに振り回されないきっぱりとした性格の、今まで見たことのないような主人公の存在感に瞠目させられたこのシリーズ。正負を問わない人間の情念をむき出しにしたようなドラマティックな展開にハラハラどきどきさせられた、迫真の物語でした。面白かった。今はただ、満足です。ああ、あのフレンチトーストはぜひ食べてみたいや。伊織の作る料理が実に美味しそうな、読んでてお腹のすくお話でもありました。
ご馳走様でした。

嬉野秋彦作品感想

彼女は戦争妖精 85   

彼女は戦争妖精8 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 8】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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わたしの好きな伊織くんへ。

さわから譲り受けた"妖精の書【レボル・シオグ】"とともに、無事帰還した伊織たち。岩手での戦いを経験した伊織は、なるべく常葉を戦闘から遠ざけるよう、自分とクリスだけで、襲いかかる"鞘の主【ロード】"を返り討ちにしていく。そんな伊織の優しさに、常葉は喜びと不安を感じていた。一方、ついに現れた六人目の"吟遊詩人【ミンストレル】"シリー・ウォーク。他の"吟遊詩人"たちとの対面を済ませた後、薬子に接近した彼の目的とは!? 近づく終局、交錯する心。人気シリーズ第8巻。

今回ネタバレ抜きに書くのはどうやっても不可能だったので、下に収納。思いの丈をぶちまけてます。







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彼女は戦争妖精 小詩篇 34   

彼女は戦争妖精 小詩篇3 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 小詩篇 3】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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薬子とエルク、そして、すべてのはじまりの物語。

バイト帰りの大学生、早瀬薬子が助けたのは、妙な口調の美少年。そして彼は囁いた。「姐さん、殺したい相手はおりやせんか?」――【Lebor Fragarach】病から逃れるため"楽園"を目指すリュクレーヌ。一方その頃"世界の果て"では、ひとりの学者と彼を愛するウォーライクの元に"妖精の書"を抱いた少女が現れて――【Lebor Meabhal】岩手での出来事に思い悩む伊織。散歩の先で、偏屈な老婆と出会うのだが――【Lebor Bricriu】真実に近づく小詩篇第3巻!

ここで書かれている物語を思い起こすたびに、ため息がこぼれてしまう。人間ってものは、なんて儘ならないものなんだろう。もっとシンプルに割り切れたなら……でも、その割り切れない所こそが人の本質なのか。
薬子先生と頼通叔父貴の関係が思っていた以上に親密で深いものだった事がわかって、少々ショックを受けてます。これまでも散々恋人じゃなかった、と二人とも主張してたのですけれど、なんだよ、あんたたち、それ以上の仲だったんじゃないか。
早瀬薬子は宮本頼通が好きだった。
たぶん、宮本頼通も早瀬薬子のことが好きだろう。
ことさら口にしたことはないし、周囲からそういうことをいわれるたびに、お互い否定はしてきたが、それは間違いのない事実だった。
――と、薬子はそう思っている。

ただ、二人がそういう仲にならないのは、それぞれの順位が一位でないということを、二人が何となく判ってしまっているからだった。
お互いがお互いを好きでも、成り立たない関係ってあるんですね。立場や地位なんかの外的要因を抜きにしても、想いが通じ合い、結ばれて、幸せになりましためでたしめでたし、にならない、なれない関係がある。それでも、薬子にとって頼通は大切で、頼通にとっても薬子は特別だったはずなのに。先の本編で、二人は本当の意味で決別してしまったのだ。きっと、薬子にとって頼通との決別はこの過去編の段階で既に決めていた事だったんだろうけど。はー、叔父貴が本気で凹んでたわけだよ。こっちもショックだわ。なんでこう、上手くいかないんだろう。絶望的なのは、この二人の決別については回避できる可能性が全く見えないことなんですよね。何か明確な理由があって、二人が決別しなきゃならなかったのなら、解決策はあったはずなんです。でも、これってちゃんとした論理的な理由って、実のところないんですよね。薬子はそもそも、決断を下すことを決めただけでどういう決断を下すのかは保留したままなわけだし。今回の話で、薬子の目的とか戦う理由なんかがわかるのかと思ったけれど……いや、ちゃんと明かされたは明かされたのか。彼女の中でもまだ決まっていないということが。それとも、今の彼女は、もう決めているのだろうか。
何れにしても、彼女は頼通ではなく、エルクを選んだのだ。弱い自分を庇護して貰うことを避けて、怒りや復讐心を向ける方向も決めないまま、刃として振るう道を、戦う道を選んだのだ。それが、早瀬薬子の在り方だった。自分の在り方を曲げてまで他者に依存して、それを幸せと呼ぶことを選べなかった時点で、二人の決別は避けられないものだったのだろう。
頼通と薬子は頼通と薬子だからこそあんな関係になったのに、そんな二人だからこそ道別れるしかなかったなんて、儘ならないよなあ。
今回の話は頼通と薬子だけじゃなく、伊織にとっても重要な話でありました。まだ小学生だった彼に、こんな失われた過去があったとは。小学生の時からスレてるとは思ったけど、やっぱり子供は子供だったんだなあ。ちょっと安心すると同時に、まだこんな幼い時分に哀しい経験をしすぎているよ、この子は。でも、こうして彼のあの頑ななまでの責任感が培われたわけだ。そして、紅茶好き、年上好み、という趣味も。


もうひとつの中編は、音信不通になった伊織の父の失踪の真実と、七年も経ってからクリスが送られてきた理由が描かれている。妖精の書に纏わる話でもあるんだけれど、やはり本筋は伊織の父親の人でなしの一面だよなあ。悪意が無い分、これは余計にたちが悪い。伊織が実の父を毛嫌いしているのは、肉親ゆえの過剰な憎しみ、というわけじゃなかったんだなあ。頼通叔父貴も兄貴に対して随分冷めた見方をしてたけど、こんな人が相手なら仕方ないわ。そりゃ、叔父貴も伊織も自然とあんな風にはなりたくない、と反面教師にしてしまうわ。

ラストは、時系列は本編最新刊の直後。というわけで、一番新しい話しになるのか。正直、この展開は意外だった。てっきり、ロードに手を掛けたも同然な以上、伊織を取り巻く環境はドツボにハマるみたいに悪化していくのでは、さらにそれに伴って常葉先輩もどんどん危ういところに追い込まれていくのでは、と危惧してたんですよね。それを、こんな横合いからえいやっ、と支えてくれる人が現れるとは。なんて小憎く小粋な人なんだろう。この人の登場と親交を得るということは、伊織の鬱積を幾らかでも軽くしてくれるという意味合い以上に、常葉の身内側から二人の関係を庇護してくれる人物が現れたという意味で、常葉先輩の死亡フラグがかなり回避されたんじゃないでしょうか、これ。死亡フラグと言わずとも、ロードとして破れて伊織との記憶を失ってしまうような展開も。


あとがきでは珍しく、主人公の伊織についての語りが。ああ、作者からしても伊織って、鳳月くん並みにお気に入りだったんだなあ。鳳月くんとは性格やキャラのベクトルがまったく異なっているにも関わらず、描き方の熱量、というか描く感触がしっくり来てる感じがどこか似たようなものを感じていただけに、これには納得。

嬉野秋彦作品感想

彼女は戦争妖精 74   

彼女は戦争妖精7 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 7】 嬉野秋彦/フルーツポンチ ファミ通文庫

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信じあえるこの手を離さないように。

イソウドの奸計によりペルスヴァルを倒した伊織たち。その数日後、伊織はクリスと、そして偽書の一件で薬子と袂を分かった常葉とリリオーヌとともに、母方の曾祖母の住む岩手へ旅立つ。しかし執拗なまでに伊織を狙うイソウドの刺客が彼らに迫っていた──! 一方ふたりの不在を怪しむさつきとルテティア、薬子の真意を問いただす頼通はこの戦いの終局を考えはじめ、"吟遊詩人"たちにも最終局面を予感させる出来事が……! 佳境を迎えるシリーズ第7巻!
もしかして、鳳月くんと麗芳もヤッてたんかもしれんな、あれ……。
正直、今回の展開には驚かされた。前の感想でも書いたように、伊織と常葉の関係は決定的な変化を見た、とは考えていたけれど、事実はこちらの想像を上回っていた。二人の意識が変わったとしても、それが行動としてお互いに対して示されるか、それ以前にまず自分の中で消化出来るのか、という点において私は疑問を抱いていたのである。言わば、この巻においてようやく二人の中で変化が定着する、その経過が描かれるものだと思っていた。ところが、事実はそんな悠長な流れでは進まなかった。当然かも知れない。伊織も常葉も、いつ命を奪われても仕方がない戦いの中に身を置いているのだ。明日をも知れない身なのだ。大きな味方であった薬子先生と訣別してしまった以上、頼るべき味方もいなくなった。伊織の精神が密かに限界を迎えていたように、彼らはとうの昔に常在戦場を強制させられている状態だったのだ。悠長に、恋愛ゲームを楽しんでいる余裕など、何処にもアリはしなかったのだ。やはりさつきは何も理解していなかったと言っていい。恋の駆け引きなどして遊んでいる余裕など、最初から何処にもなかったというのに、彼女だけは最初から最後まで何も理解していなかった。だから、自分から伊織たちの世界に飛び込んできたというのに、パートナーであるルテティアからすらも戦力外通告を受け、すべてから置いてけぼりにされようとしている。自業自得だ。
そして、渦中にある伊織と常葉は、一度視界が開ければ一途だった、そういう事なのだろう。二人とも、本来は決して恋愛に対して積極的な性格ではない。むしろ奥手で、鈍く、迂遠であったはずだ。特に常葉は随分残酷な失恋をしてから間が経っておらず、誰かに恋をするなどという事に対して強烈な罪悪感が伴っていたはずなのだ。その理由の全てを知っている伊織もまた、彼女を異性として見る事にブレーキが掛かっていたはずである。
それなのに、彼らが一度堰が切られたあと、躊躇いも後悔も駆け引きに興じる間も惜しむようにお互いを求めたのは、それだけいつ命が失われても、ロードでなくなり関連するすべての記憶が奪われる可能性を強く感じていたからなのだろう。
二人が結ばれた事は、むしろ前巻の伊織の絶望感を垣間見た時よりもこの戦いの過酷さを目の当たりにさせられたような気にさせられた。
に、しても。キスだけで終わらなかったとはなあ。伊織もちゃんと年頃の男の子だったんだなあ。これまで見せていた彼の常葉に対する特別な態度が、単なる自分の勘違いでなかったのにはちょっと安心した。伊織はなかなか内心が読みにくい主人公くんだったので、間違いないと思いつつも絶対の自信はなかったんだよなあ。
しかし、そうかー、常葉先輩にほんとに行ってしまうとはなあ。常葉先輩が登場したときは、まさかメインヒロインの座に収まるとは思わなかったんですよね。伊織がある特定の女性と結ばれる可能性が、あの当時はあまり感じられなかったし、そもそも常葉先輩のキャラクター像ってフォーマルなスタイルだとどうしても3番手から4番手のヒロインとして位置づけられるキャラっぽかったんですよね。先輩であり凛々しい剣道少女であり、同性に人気の王子様タイプ。しかも、最初は主人公と面識も無し。ヒロインとして一定の人気は確保するものの、なかなかメインヒロインにはなりにくいキャラクターなのではないでしょうか。それがこんな形で収まってしまうとは、驚きとともに元々常葉派だった身からすると、やっぱり嬉しい。
とはいえ、喜んでばかりも居られない。どうやったって、この話の展開からして結ばれてしまうというのはそれだけで死亡フラグですもの。正直、後半はハラハラしっぱなしでしたがな。辛うじて最初の山場は乗り越えられたものの、それで死亡フラグを潰したわけでもなく、まだまだ危険は幾らでもあるわけで、胃が痛いです。

伊織と常葉の関係の変化以外にも、前巻から引き続き物語は激動を続けている。吟遊詩人たちの正体こそまだ不明なものの、その出自は明らかになりましたしね。自分、あれらは妖精の変化したものだと思い込んでいたんだが、まさかそっちだったとはなあ。その発想はなかった。
そして、もうひとつの一線を越えてしまった伊織。常葉の覚悟といい、いつの間にかこの【彼女は戦争妖精】という作品、とてつもないハードな物語になってしまってたんだなあ。

常葉と決定的な訣別をしてしまった薬子先生の本当の目論見も見えないまま。どうやら頼道叔父さんは、ほぼ確信しているみたいだけど……。この二人の関係も、なんか思ってた以上に複雑だった。オトナになる前の若かりし頃の関係というのは、そのままでは居られないのかねえ。人間、大人になんかいつまで経ってもなれないし、変われないものなのに、人間関係だけはそのままじゃ居られない。もしかしたら、普通の恋人になり得ていたかもしれない二人。肉体関係もあったというけれど、彼らの場合頼道叔父さんの話からして、時期がまずかったみたいだし。
もとの関係には戻れない。お互いに懐いている気持もあの頃とは違う。それはもう、恋でも愛でもないのだろう。それでも、何かしらの想いはお互いの間に割り切れない何かとして交錯しているはずなんですよね。でないと、二人の話し合いが決裂したあと、頼道も薬子もあんな風に沈んだ姿を見せる事もないでしょうし。

儘ならないものだなあ。

嬉野秋彦作品感想

花守の竜の叙情詩 34   

花守の竜の叙情詩3 (富士見ファンタジア文庫)

【花守の竜の叙情詩 3】 淡路帆希/フルーツパンチ 富士見ファンタジア文庫

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「テオバルト。愛しているから、あなたを忘れる」
 囚われの王女アマポーラと、王位継承に敗れた王子テオバルト。支配した者とされた者として出会った二人は、長い旅の果てに恋に落ちた。だが運命は、二人が互いに守ろうとする気持ちすら弄ぶ。
 アマポーラのため、テオバルトは人外のものに。そんなテオバルトを救うために、アマポーラは彼の記憶を捨てた。それでもなお平穏は遠く、アマポーラは命を狙われ続ける。懸命に守ろうとするテオバルトだが、彼女はその存在すら拒むのだった……。
 たとえ同じ時間を生きられなくても、たとえすべてを忘れてしまっても、君を守る――。宿命の愛と冒険の三部作、ついに完結!

神とは得てして理不尽な存在だと謳われるけど、この月神はちょっと酷いな(苦笑
神の理において人間を斟酌しない類の理不尽さではなく、単純にやること為すこと理不尽なんですがw 二巻では彼女の事情というのも分かって、ジレーザの取りなしもあったものだからちょっとは同情してたし、ある程度彼女の態度も仕方ないものがあるのかな、とも思ってたんだが、肝心の悪魔の大元キャンディットの視点に立ってみると、諸悪の根源はどう見ても月神じゃないかい! キャンディッドが暴走してしまったのが悪いんだけれど、そうなってしまう前になんとか止められなかったのか、とかいきなり銀竜使って襲わせるのってどうなのよ、とかあれだけ献身的に月神の為に働いてきたのに、これじゃあ裏切られたと思っても仕方ないところがある。
挙句が最後、あれですよ?(苦笑
ラシェルなんて、結構切実に月神に対して心ひらいて貰おうと働きかけてたはずなんだけど、もうなんて言うかねえ、この神様は……。

まあそれでも、神様の身勝手を除けば、物語はおおよそ望むべき最良の結末を迎えたのではないだろうか。アマポーラがテオバルトの記憶を失っただけでなく、それ以上の代償を支払わなければならない状態に陥っていた事が分かったときには、もう呆然としてしまったのですけれど。
ラシェルなんか、ほんと可哀想じゃないですか。彼女なんて、弟の為に銀竜になったようなものなのに、弟が幸せになるように人間である事を捨てたのに、肝心の弟はラシェルを助ける為に彼女の記憶を無くした挙句に、あの結末ですよ。報われないにも程がある。
それでも、彼女は悪魔を狩り続け、人を守り助け続けたのですが、よく心が擦り切れなかったものです。折角助け、親しくなった人たちも次々と老いて去っていく。彼女自身がテオに疲れきったように漏らしたように、もう限界だったのかもしれないなあ。神様も、それが分かっていたから彼女にあんな事をしたのかもしれないけど、でもいきなり放り出すなんて無いと思うんだ、うん(苦笑
それでも、最後には彼女のこれまでの生き方が、放り出されたラシェルを救う事になるのですから、これも一つのハッピーエンド、ということになるんですかね。ある意味、彼女は最後で報われた事になるわけですから。結構楽しそうですしね、新たな人生。あとは、早くいい男見つけろってことで。
と、話がラシェルの方に逸れてしまいましたが、記憶を失った事による弊害と復活したキャンディッドの攻撃によって、災禍に見舞われ続けるアマポーラには、平穏なときは訪れない。彼女の記憶から消えてしまったテオは、彼女の傍に居る事もできず、もっぱらラシェルが傍について守ってくれていたのだけれど……ええっと、正直言っていいですか? ラシェル、全然役に立ってねえ(苦笑 姐さん、幾ら何でも尽く出し抜かれすぎですw
概ね好意から守ってくれているので、テオも文句をいう筋合いはないとグッと我慢してたけど、ちょっとくらいは苦言を呈しても良かったんじゃ、と思うくらいに、ほんとに出し抜かれまくったもんなあ。対応は裏目裏目に出てしまうし。
正直、記憶が失われても二人の絆があれば、記憶なんかすぐもどるんじゃないかと楽観的に構えていたのですが、記憶が戻ろうとする事そのものにあんなトラップが仕込まれていたお陰で、逆に絆がアマポーラを脅かすというまさかの展開。でも、ここでも欠落した記憶に苦しむアマポーラと、それを見ているしか無いテオを救うのは、二人の娘であるエレンなんですよね。
いっそ古典的とすら言えるほど王道な純愛ラブストーリーである本作なんですけれど、その上で独特だったのは、若いふたりの男女の間に、旅路の途中で一人の幼女を娘とする展開でした。エレンのお陰で、テオもアマポーラもお互いへの愛だけに没頭するのではなく、父親として母親としての意識を持ち、愛した人の他にもう一人掛け替えの無い守るべきものを得るわけです。そして、その守るべきものこそが結果的に、運命に引き裂かれてすれ違い続ける二人を絶望させず、支え続ける事になり、離れ離れになっていく二人の間にたって繋ぎ止める役割を果す事になるわけです。
エレンは一巻ではアマポーラとテオの人間としての在り方を変えて二人に愛を芽生えさせ、二巻ではアマポーラの心を支え続け、そしてこの三巻では心交わることの出来ない二人の間を健気に立ち回り、本来なら離れ離れとなるしかなかった二人を繋ぎ止め、再び結びつけたのですから、このわずか5歳にもならない幼女が成した偉業のなんと大きいことか。
アマポーラの「あなた」という呼びかけの台詞なんて、ねえ。王女と王子のラブストーリーだったら、多分出てきませんでしたよ。あらゆる意味において、この物語で一番活躍したのはエレンで間違いないんでしょう。イイ子ですよ、健気で献身的で聡明で。
この子は羊飼いの娘もいいけれど、王城にはちょうど近い年頃の賢そうで優しげな王子様が居ましたし、見初めてくれませんかねえ。

兄への歪んだ愛情と憎しみによって狂い、闇に落ち、悪魔に身を捧げてしまったテオの妹ロゼリー。救われなかった彼女の顛末にも、きっちりと手を差し伸べてくれたのは良かったなあ。本当にハッピーエンドを迎えるには、彼女の魂を救ってやることが必要条件でしたしね。でないと、テオもアマポーラも心晴れなかったでしょう。それに、テオたちに無理やり助けられるという形ではなく、アマポーラの愛の形を目のあたりにすることで、ロゼリーが自分から過ちに気づき、純粋な兄への想いを取り戻すという形も、本当の意味でロゼリーを、そしてテオを救う事になったように思います。救いとは、押し付けるものではなく、自分で掴むもののはずだから。

一巻における、哀しくも美しい結末もまた素晴らしく、あのまま終わっても良かったと思うのです。正直、続きが出ると決まったとき、あそこで終わっておけばよかったのに、という声はあったと思います。私も、思いました。その分、ハードルは随分高かったはず。
ですが、完結を読み終えた今となっては、少なくともあれで終わっておけばよかった、などとは口が裂けても言えません。見事にハードルを越えてみせてくれたと思います。まさに堂々とした完全にやるべきをやりきった渾身のハッピーエンドでした。
素晴らしい、美しいお伽噺のようなラブストーリーでした。
良かったよー。

1巻 2巻感想

彼女は戦争妖精 6 4   

彼女は戦争妖精6 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 6】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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さつきまでもが"鞘の主【ロード】"となり、ますます不安の種が増えてしまった伊織。そんな彼に、敵対関係にあると思われていた由良健二とマラハイドが接近してくる。イソウドの強引な介入により、他の"吟遊詩人"たちもそれぞれ"妖精の書"を巡り行動を始めたのだ。北への旅路を往く"男爵"、頼通とルテティアの前に姿を現すラ・ベル……。対照的に、不本意な戦いを続けることへの疑問が膨らむ伊織だが、突然のあの男の声に感情を抑えきれず──混迷の第6 巻。


伊織という主人公は御覧の通り冷静沈着で、精神的な動揺を表に出さないタイプで、クリスという異分子を懐に抱えてしまい、"鞘の主【ロード】"としての戦いに身を置くことになっても、これまでの学生としての生活を乱すこと無く、淡々と日常を送っていたんですよね。学校の成績など、落ちるどころか上がっているほど。
だからなのだろう。彼がゴールの見えない戦いに、実際は精神的に追い詰められているということにまったく気付かなかった。
彼が叔父である頼通に漏らした弱音は、辛いや苦しいを遥かに通り越した、生きることに疲れ果てたような凄まじいまでの暗黒で、背筋が寒くなるほどだった。何も堪えていないようにみえていたけれど、彼も本来なら一介の高校生なのだ。本当に、危うい線一本でギリギリ保っているような状態だったんだなあ。もし、そのギリギリ保っている一本の線が切れたとき、この少年はこれまでと全くかわらぬ冷静沈着な態度のまま、直滑降で自ら破滅に身を投げ出しかねないガラスのような危うさを垣間見てしまった。
頼通は、良いタイミングで帰ってきたのかもしれない。もしくは、ギリギリのタイミングで。
薬子先生に全幅の信頼を寄せられない中で、終わらせ方のわからない、延々と続くウォーライクとロードとの戦い。あともうちょっと頼通が帰ってくるタイミングが遅かったら、伊織の精神はもしかしたら保っていなかったのかもしれないなあ、とあの告白を聞いて思ってしまった。

んー、しかしなるほどなあ。伊織が実際はそんな精神状態だったとすると、彼にとって常葉先輩という人の存在は、思っていた以上に大きかったのかもしれない。頼通が帰ってくるまで、この人だけが本当の意味で拠り所となれた人だったわけだし。
この巻における彼女への伊織の微妙な反応を見ていると、もしかして彼の中の感情というのはコチラが思っているよりも遥かに明快に、カタチになっていたのかもしれない。さつきへのあの無関心というか辛辣な態度も、さつきという異性に対する関心の無さ、拒絶感以上に、彼女を相手にすべきではないとする理由が、伊織の中にもうあったからなのかもしれない。
間違いない。伊織という男は、主人公でありながら読者にすらその心底を伺いしらせない、本心が見えにくい男だが、間違いない。常葉先輩は彼にとって特別だ。
そして、それはどうやら、常葉先輩の方も決定的になってしまっていたらしい。彼女と伊織との出会いは、ちょうど彼女が悲惨で残酷な失恋をしてしまった最中でのこと。恋愛に対して一定の距離を置くことを誓った彼女は、その後のいくつもの戦いやその合間の平穏な時間を、伊織と共に過ごし、その中で信頼と親愛を築いていったのだけれど、彼への特別な感情については否定し続け、首を横に振り続けていた。
でも、その否定はいつしか、無いものを無いと言うものではなく、有りだしてしまったものを無いと言い張るものに変わっていったように思う。そして、いつしか彼女の中では周りに対してはともかく、自分に対しては否定を続ける意志も意味も見失ってしまっていたようだ。
彼女が、さつきにこぼした羨望の言葉からは、そんな彼女の心情が伺える。そして、戦いのさなかでの命の瀬戸際の危地における、彼女が叫んだ悲鳴のような、伊織の名前。
もう、決定的だ。
常葉にとって、伊織は特別な存在になっている。

だが、その事実が今は恐ろしい。その事実の先に、常葉先輩の運命が透けて見えてしまったようで、恐ろしくて仕方ない。彼らにとって、本当に残酷な時間はすでに始まってしまっているのではないだろうか。
自らの同胞すら贄にして、執拗に伊織たちの抹殺を狙うイソウド。彼女の狂気は先鋭すぎるほど鋭く、しかし狡猾でずる賢い。なによりその無邪気なまでの自己中心さと執着心は、暴虐そのものだ。とてもじゃないが、ただで済むとは思えない。
そしてなにより、クリスが楽しそうに、今のままでずっと居たいと語るほど、今の生活が何時までも続かない事が現実としてのしかかって来る。楽園へと辿り着く事を目的として戦う事を決定づけられたウォーライクの中で、すでに楽園を望むことを忘れて今を続けようとするウォーライクたち。でも、クリスにしてもルテティアにしても、どれだけ時間が経とうとも一切姿形が成長しないまま、という時点で普通に生活していくことは不可能なのである。クリスを守り続ける限り、いずれ伊織は今の生活から踏み外さなければならなくなる。
何らかの形で、今後に対して答えを出さないといけない時期に来ているのかもしれないなあ。

それでも、今のところは断固として日々の生活を崩さず、楽園に背を向ける伊織の姿勢は、あの健二とマハライドにも指針となるものを芽生えさせたようだ。マーちゃんを守るためとはいえ、流されるようにラ・ベルの麾下に入り、彼女の言うなりにやってきた健二にとって、伊織の姿は一つの可能性に見えたのかもしれない。彼が、今回率先して自分の意志で伊織に力を貸してくれたのは、彼の可能性が自分たちの可能性にも繋がることを確信したかったのかもしれない。
この感触だと、今後も彼らは少なくとも伊織たちとは敵対はしないでいてくれそうだ。この二人は、作中でも好きなコンビなので、出来れば無事でいて欲しいのだけど。

そろそろ、クライマックスも近いのか。誰にとっても、相応に幸せな結末があって欲しいところだけれど……。

筆者作品感想

彼女は戦争妖精 小詩篇 23   

彼女は戦争妖精 小詩篇2 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 小詩篇 2】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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短編集と言いつつ、実質は中編一本と短編一本という二本構成。この中編も150ページ超あるので、実質は大中編と呼んでもいいかもしれない。なんだよ、大中編って(苦笑
この巻の主人公は、二編ともにルテティア――ルゥとなっている。中編の方は公式サイトに掲載されていた、ルゥがまだパリに居る頃、伊織の叔父である宮本頼通と出会い、一人の家族のようだったウォーライクとの別れを経験し、日本へと旅立つまでのお話。
未だ全貌が伺えないウォーライクたちに課せられた闘争の謎だけれど、この中編ではこれまで登場したウォーライクの中でも屈指の古参が出演する。彼の言が確かなら、このウォーライクたちによる戦いは、200年以上前から行われてきた事になる。数百年に渡る戦いの中で、目的を達したウォーライクは一人もいなかったのか。そもそも、この戦いの最終目的が未だ不明の段階では、どうにも判断出来ないのだけれど。
我が儘で自己中心的で他人を振り回す事に何の罪悪感も抱かないような傍若無人なルテティアだけれど、決して自分以外の人間を虫けらのように思っているとか、そんな訳じゃないんですよね。登場した当初はそのわがままっぷりからなんてヤツだろうと思ったものですけど、何故か嫌いになれなかったのは、きっちり伊織にやり込められていたのと同時に、決して他人に対して冷たい娘じゃないのが、その言動の端々から伝わってきたからかもしれません。本編でも彼女の本質というのは段々と良く見えるようになってきましたけれど、この彼女がメインとなる中編を読むと、彼女がむしろ情の深い娘だというのがよくわかる。
日本に来た当初の事件では彼女、伊織達を見捨てて一人で逃げ出し、自分を守ろうとしたけれど、あの時も何だかんだと危険を承知で舞い戻り、伊織達に手を貸してくれたんですよね。
覚醒した当初からロードもなく、身一つで逃げまわる日々。彼女の慎重すぎるほど過敏な自己防衛の行動はこの過酷な逃亡生活で培われ、パリでの事件で生まれて初めて自分を大切に守ってくれた家族を失った事で、その性状は決定的なものになっている。臆病と呼ばれても仕方の無い自己防衛本能は、もう彼女とは切っても切れない根っこに根づいてしまったものなのに、土壇場になるとどうしても親しくなった相手を見捨てられないんですよね、この娘は。きっと、それは一番大切だった人を失った痛みと恐怖を覚えているからなんでしょう。
伊織なんかはまだ、ルゥのことを誤解していると思うんだよなあ。まあ、普段のひどいとしか言い様の無い態度を見てたら、仕方の無いことなんだろうけど。実際、ルゥは伊織のこと、嫌いだろうし。でも、嫌いでも長らく孤独だったルゥにとって伊織はもう、失ってしまったら痛くて耐えられない人になってるんだろうなあ。
頼通おじさんが本格的に登場したのはこの短編が初めてか。いや、本編では5巻でも本格的に出てるのか、先に公式サイトでこの話を読んでたので、印象的にはこっちが先なんだよなあ。この人、生真面目な伊織と違って軽いし飄々として女癖も悪いアレな人なんだけれど、根本の頑固でこうと決めたら譲らないという芯の固さは、確かに伊織とよく似てるんですよね。やっぱり血を分けた叔父と甥だなあ、と。


もう一本はルゥと彼女のロードになったさつきの話。時系列的には5巻のあと、最新の話になるわけか。
未だにルゥがなんでさつきをロードに選んだのかわからんよなあ。ルゥの性格からして、面倒くさいことこの上ない鬱陶しいさつきとの相性は決して良くないように思うんだけれど。でも、意外とルゥはさつきのこと、いちいち細かいところまで指摘して構ってるんですよね。普段の生活面でも、戦闘時でも。戦闘時はちゃんと現実と常識を弁えさせないと生き残れないというのもあるんだろうけれど……。
案外、ルゥは自分よりもどうしようもない相手には世話好きな面があるのかもしれないなあ。あのお子ちゃまクリスに対しても、普段から妙に優しいし。相変わらず相手の話を聞かない自己中心的ではあるんだけれど、さつきに対してはわがまま言って振り回すのではなく、終始彼女のためのアドバイスに徹しているのだし。
さつきはもう、本当にどうしようもない娘なんだけれど、ルゥが放り出さずに今回みたいにきっちり指導し修正してくれるなら、少なくとも伊織たちの足を引っ張らない程度までには成長してくれる、とありがたいと期待したいw なんだか、こうなってしまうとルゥが頼もしくなってくるよ(苦笑

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 小詩篇感想

彼女は戦争妖精 54   

彼女は戦争妖精5 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 5】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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ウォーライクとその主たるロードたちの戦い。そこに歴としたルールが存在するなら、それはルールを選定した戦いの監督者がいるということ。
それがあの老紳士であり、ラ・ベルだったわけか。お互いに警戒しあい、むしろ敵対者のような雰囲気で並び立ち、ロードたちの動向を見守っていたので、どちらかというとロードたちの戦いには元々関係ないものの、外部から虎視眈々と何かを狙っている連中かと考えてしまっていた。
そもそも彼らがこの戦いを仕組んだグループだったのか。ただ、決して仲間や共同体じゃないんだな。そもそも敵でありながら協定を結んで同じ目的を果たそうとしている集団のように見える。
それが、楽園を目指すという事なんだろうけれど、ロードたちが妖精の書を手に入れ、ウォーライクが楽園へとたどり着く、そこにどんな意味が隠されているのか。
ミンストレルの連中も一人ひとり、思惑や見ている方向が違うみたいだし。だいたい、監督者であり、戦いには介入せず、ロードたちには自ら手を下さない、とお互いにルールで決めているにも関わらず、こいつら裏では個々に色々と無茶苦茶やってるもんなあ。はっきり言って不干渉の協定は有名無実と化しているし。

何にせよ、黒幕が出てきたことで事態は大きく動き出したと言える。
積極的に敵のウォーライクを倒そうとしない伊織たちを、忌避すべき「死の蛇(クロウ・クルーワッハ)」と呼び露骨な敵視を隠さないミンストレル「イソウド・オブ・ホワイトガントレット」。彼女とは正反対に、むしろ伊織たちのそのやり方を支持する素振りをみせている老紳士。
殺し合いの輪に加わろうとしない伊織たちの存在が、どうやら単なる戦いを避けようとするやる気の無い不参加者、というだけじゃない意味を持っているような感じもある。
とはいえ、今のところ黒幕に抗えばいい、という流れにもなっていない。今のところ成り得ない、と言った方が正確か。ミンストレルと呼ばれる存在たちはどう考えても人間じゃなく、さりとてウォーライクでもない。さらに言うと、単体でウォーライクを携えたロードを完全に圧倒する力を秘めている。それこそ象が蟻を踏みつぶすかのような絶対的な力の差がある。
動きようがない、というのはつらいよなあ。結局は、襲いかかってくる敵ロードを迎え撃ち続けるしかないわけだし。
この状況を打開するための突破口は、やはり8年前に失踪し、クリスを送り込んできた伊織の父親、ということになるんだろうが。
その辺は学生という立場と、クリスやルテティアを食わせなければならないという主夫としての立場がある日常生活から逸脱出来ない伊織ではなく、ようやく帰ってきた自由人、叔父の頼通の役割になるのか。
このおっさん、物腰はだらしないんだが、やっぱり帰ってきてくれると非常に頼もしい。大人だなんだというより、その食わせ者で強かな存在感が大きいんですよね。これまで怪しい動きを続ける薬子先生に対して、伊織や常葉は不信感を抱きつつも動きようがなかった所に、頼通叔父は帰ってきた途端にきっちり掣肘を加えてくれたもんなあ。
どうやら、彼女の事情にもいささかなりとも通じているみたいだし、きっちり薬子の思惑についても警戒して、防衛線を張ってくれている。これで、不意に一方的にメチャクチャなことになる危険性はぐっと減ったんじゃないだろうか。

しかし、この叔父と甥の関係も面白いなあ。二人の性格からしてベタベタと仲がイイ、とは思ってなかったけれど。ある種のそっけなさと身内ゆえの気安さが同居している、とでも言うんだろうか。
伊織の性格からして、頼通って人は相当に癇に障りそうな性格なんだけどなあ。いや、実際あの女癖の悪いところなどについてはかなり軽蔑してる風ではあるんだが(伊織の女性に対する姿勢には幼い頃から見てきた頼通の行状からくる影響が大きいようだし)、それ以外の面についてはしっかり認めているようだし、ちゃんと頼りにしているようにも見える。伊織って気難しいけど、極端ではないんだよね。中庸を心得ているというか、拒絶するところは徹底的に拒絶するけれど、それが全人格の否定などといった極端な方向には突っ走らないんだよなあ。その辺は、バランス感覚が取れていると言っていいかも知れない。まあ、気に入らなかったら突きはなしまくるんだけれど。

その伊織の性格だけれど、この他人に甘えを許さないところ、きっぱりと辛辣で女の子に対しても断固とした姿勢を崩さず、まったく妥協しないというところ、これを何と言い表していいのかずっと頭をなやませていたんだけれど、作中で見事に言い表わしてくれる表現があって、思わず手を叩いてしまった。
そうか、伊織はつまり「自分にも他人にも厳しい」性格ということだったのか。
厳格な主人公って、珍しいよなあ。
伊織があれだけさつきに対して辛辣な態度を取り続けているにも関わらず、決定的には拒絶しないのも、その厳格さ故なのかな。他人だけでなく自分にも厳しいと言うことは、気に入らないというだけで他人を拒絶し突き放すことを甘えと捉えているとも考えられるし。
さすがに、本当は嫌いじゃないんだよ、と言われても信じられないけれど。さつきの性格や態度に対する伊織のイライラを見てたら、どう見てもこいつウゼえ、鬱陶しい、嫌いだ、と思ってるようにしか見えないしw
いや、四章冒頭の一節を読むと、伊織はさつきに対して一種の恐れを感じている節もあるんだよなあ。まあ、あのねちっこさは矛先をこちらに向けられると確かに怖い。

最初は妹の事件に絡んで一旦ウォーライクの世界に関わり合っただけで、あとはモブキャラへと移行していくのかと思ったさつきだけれど、やはりというべきか、こんな形で踏み込んできたかー。ルテティアもいらん事をしてくれたもんだわ。
ロードとして覚醒したさつきの、これまたウザいことウザいこと(苦笑
普段の彼女が陰性のウザさなら、ロードの時の彼女のウザさは陽性にもの。明るくなっても暗くなってもウザいって、どんなだよw もう、半分ヤンデレに足突っ込んでるなあ、これ。あと二三歩間違えたら、悲惨な事になりそうだ。
そもそも、ウォーライクであるルテティアと仲が良いワケでもないし。ルーもいったい何を考えてこんなことをしたんだか。おもしろ半分、というだけじゃないと信じたいけど。
ルーも悪い子じゃないんだし。我侭で自己本位、自分が一番大事という娘だけれど、今回伊織とクリスが大ピンチに陥った時、思いっきりビビリながら、腰が引けながら、自分が助けに入ってもどうにもならないと理解しながらも、それでも助けに行こうという意志を示したもんなあ。あそこは、ちょっと感動した。ルーもちょっとずつ変わっていってるんだろうか。


もう一人の多分ヒロインであるだろう常葉先輩は、今回あまり伊織との絡みはなかったんだけれど、カラー口絵で描かれてるシーンなんかを見ると、もう玄関で旦那様をお迎えする若奥様といった風情で、似あうのなんの。この先輩、ほんと美人なんだよなあ。和装は似合うし。そもそも、伊織とほんとにお似合いだと思うんだが。
リリオを守るために、そして心の奥底に秘められた醜い嫉妬心のために、妻を救うために戦っていた想い人を打ち破り、彼の最後の希望を打ち砕いてしまった常葉。この痛切すぎる失恋のために、今まで頑なに立ち止まっていた何かが、今回グレアムとの生命を以て鍔迫り合いする戦いに勝利し、その結末と選択を老紳士に肯定されたことで、彼女の中で何かが吹っ切れたんだろうか。
最後に、彼女はこれまで足を向けることが出来なかった想い人…滝沢の奥さんのお見舞いに赴いてるんですよね。彼女の中で、区切りをつけることが出来たのか、トラウマを乗り越える事が出来たのか。
ともあれ、これまで伊織に対しての自分の感情をきっぱりと線引きしていた常葉の在り方に、大きな変化が訪れるような気がする。お見舞いの件を伊織に伝えたのは、彼女の覚悟を示すと同時に、伊織に対するある種の宣言とも勘ぐれるんだが、さすがにそれは穿ち過ぎか。
前まで、常葉先輩にはちょっとした危うさを感じていたんですけどね、グレアムとの決着の付け方を見て安心した。この人はどれほど思いつめても、追い詰められても、ちゃんと正道を行ってくれそうだ。

新章になり、黒幕「吟遊詩人(ミンストレル)」が前面に現れだし、これまで怪しい素振りを見せるだけで動かなかった薬子先生も、ミンストレルとの接触によりてひどい目に合わされ、どうも余裕がなくなってきた気がする。さつきが加わったことで逆に不安要素も倍まし。
さあ、面白くなってきた。

1巻 2巻 3巻 4巻 短編集感想

花守の竜の叙情詩 24   

花守の竜の叙情詩2 (富士見ファンタジア文庫)

【花守の竜の叙情詩 2】 淡路帆希/フルーツパンチ 富士見ファンタジア文庫

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これも続編が出ると聞いて驚いた口なんですよね。一巻の終り方はとても切なく物悲しいものの、透き通るような美しさが心を鷲掴みにする悲恋の物語だっただけに、それを敢えて続けると言うのはかなり難しいことだったはず。
あとがきを見る限りでは、当初は著者もどうやら続きを書くつもりはなかったみたいだし。
その意味では、あの終りの余韻を台無しにすることなく、きっちり仕上げてきた淡路さんには自然と頭がさがります。これは御見事と。

銀竜となったテオバルトと別れ、エレンと二人着の身着のままで野に下ったアマポーラ。その後、優しい羊飼いの老夫婦に拾われ、住処と家族を手に入れて、なんとか暮らして行く算段をつけられ、いつ帰ってくるともしれないテオバルトを何十年経とうと、それこそ死そうとも待ち続ける日々に至ったアマポーラですが、ここで物語として終わっていればともかく、現実に彼女は生活を続けていかなければいけません。元々我儘な王女であり自らは何もせず暮らしていたアマポーラは、村落に住まう女が最低限しなければいけない仕事どころか、日々の生活を営むために必要なスキルや知識すら何も持たない状態。老夫婦はアマポーラを娘のように可愛がり、彼女に生活に必要な様々な知識や技術を教えてはくれるのですが、この時代、日々の生活と言うものは一個の家族内に収まるものではなく、ひとつの共同体の中で営まれるもので、特に過酷な使役が日常的な荘園の中ではよそ者であり、なんの役にも立たないアマポーラは自然と爪弾きにされてしまいます。
それでも、テオとの約束を信じ、老夫婦の愛情に報いるために、エレンを守り育てるために、母親として、必死に前向きに挫けることなく頑張り続けるアマポーラですが、やっぱりつらいことがとても多いんですよね。
もし、今回の歌姫の一件がなかったとしても、テオを待ち続けるアマポーラに、果たして幸せはあったんだろうか、とどうしても思ってしまいます。でも、彼女は挫けないだろうことは間違いないと、彼女をおそう理不尽に毅然と立ち向かう姿を見ていれば、それは確信として理解できる。彼女にとって、待ち続けることはつらいことではあっても不幸ではなかったんでしょう。苦しくても悲しくても、待ち続けることができたのは幸せだったのかもしれません。
その意味では、再会なったにも関わらず、テオとアマポーラの二人の間に訪れた転機は、彼女にとって苦しみや悲しみ、辛さが取り払われるとしても、とてつもない残酷な事だったのかも。
あの展開は、ラブストーリーにおいてわりと王道というかありがちというか、ここで続けるならまあこういうパターンが多いだろうなあ、特に少女系レーベルのだと、というものだったんだけど、アマポーラの寄って立つものを考えるなら、やっぱり凶悪にして強烈に残酷で悲劇なんだよなあ。

辛いといえば、アマポーラ本人は大丈夫だとしても、彼女を見守る老夫婦やエレンにとっては彼女が毅然としている事自体が見ていて辛い事だったんだろうなあ。エレンは事情を知っているし、アマポーラと思いを共有しているからイイとして、事情を何も知らずアマポーラに喪った娘を透かし見ている老夫婦からすれば、アマポーラの姿は痛々しいなんてものじゃなかったんだろうし。
この二人がいなかったらアマポーラとエレンは野垂れ死んでいてもおかしくなかったので、なんとかもう一度家族として一緒に暮らしていけたらいいのに、と思わずにはいられません。

しかし、改めて見直してみても、この物語、悲恋ものにも関わらず、アマポーラを支えているものはテオへの想いだけではなく、エレンを守る母親としての愛情、というのが他とは少し違う特徴なんですよね。この辺が、そこらのライトノベルとちょっと違う所なんだと。
一巻でも、エレンへの母性こそが、我儘で世間知らずだった彼女を大きく変えた要因でしたけれど、この二巻でも苦しい生活の中、アマポーラに力を与え続けていたのはエレンへの母親としての愛情でした。ほんと、もうしっかりと母親してるもんなあ。エレンも健気で小さいのにとても聡明で、本来は他人だったはずのアマポーラを母として慕い、幼い身の上ながら必死で母を守ろうとする姿は、本当に愛しい限りで。
この年の近い母娘が、本当の親子のように寄り添い合う姿は、見ていて心温まるものでした。だからこそ余計に、ここに父親の姿が無いのが物悲しいんだよなあ。


物語は、一巻では伝承の彼方にしかなかった女神と銀竜と悪魔たちの神話の真実と世界の今の有り様にまでスポットがあたり、テオ以外の古参の銀竜も登場することで大きく動くことになります。
女神がいかにして世界を形作り、悪魔がいかにして生まれ世に災いを無し、銀竜がいかにして誕生し悪魔を狩ってきたか。伝承の彼方に曖昧模糊として映っていたものが、具体的に表されたことで、テオが使命を果たしアマポーラの元に戻ってくるために何が必要なのか、それがどれだけ困難な事なのかが、詳らかになったわけですけど、さらに予想外のファクターが混じることで連綿と続いてきた銀竜と悪魔の戦いに大きな転機が訪れたわけです。
テオにとってはチャンスなんだけど、また残酷な話だわなあ。
他の銀竜たちにもそれぞれ悲劇と遺してきた想いがあり、二人ともイイ人なだけに、胸に来るんですよね。特に、テオが銀竜に為ることを選んだきっかけとなった伝説である聖女本人の物語も。
なんだかんだと、悪人罪人は多けれど、イイ人がそれと同じくらい多いのも、この物語の救いですねえ。たとえ罪を犯しても、今は悪心に身を引きずられても、人の心には良き部分があり、罪は濯げるのだと、子どもたちの悪戯から、王の悔恨、歌姫の復讐に到るまで、そしてかつて王族として多くの罪を犯してきたテオとアマポーラからして、人は善き方へと変われるのだという可能性を、この残酷で理不尽がはびこる世界観の中でしっかりと示している事こそが、この作品の雰囲気を切なくも暖かくココロ洗われるようなものにしている要因なのではないでしょうか。

うーん、二作目への不安を綺麗に払拭してもらいました。このシリーズ、次の三巻ですっぱり終わってくれる、というのも安心材料。きっと、感動的なクライマックスが待っていると信じて、最終巻を待ちたいと思います。

一巻感想

彼女は戦争妖精 小詩篇 14   

彼女は戦争妖精 小詩篇1 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 小詩篇 1】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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本シリーズ初の短編集。ああ、ファミ通文庫の公式サイトで連載していたルテティエの話は今回は収録されずか。あれはルテティエという娘を形作っているものの本質が良く分かるし、話自体も叙情的で雰囲気があって好きだったんですが。まあ、次回には掲載されるみたいだから、楽しみに待っておこう。

しかし、こうして常葉先輩がメインの短編を読むと、このシリーズのメインヒロインはどうにも彼女以外にないように見えてくる不思議。
一応伊織の相棒となるクリスは、精神的にも肉体的にも完全に幼女で伊織にとっては大事な家族とは成り得ても、それ以上はどう考えても無理だし、当初ヒロインかと思われた牧島さつきは、本人は御執心だけど伊織はまったく相手にしていないし、ルテティアとは色恋以前に性格の不一致が酷すぎて本気で仲が悪いし、とまともに付き合える相手がいないんですよね(笑
その点、常葉先輩は気難しいはずの伊織の性格となんか相性がいいんですよね。どこか斜に構えた伊織の態度の真意をさらっと見抜いて、それを嫌味に感じさせない風に指摘し、同時に許容する。それは冷静かつ知的な論理性に基づいた態度でありながら涼やかな包容力と相手を尊重する距離感を備えていて、伊織に不快感を感じさせない。
あの伊織に、怪我と疲労で満足に動けない状態とはいえ、自宅の家事や動けない自分やクリスたちの食事の世話を任せる事を受け入れさせる、というのは結構とんでもないことのように思えるんですよね。伊織って、絶対パーソナルスペース他人より広いし、踏み込ませまいとしそうな所あるし。
尤も、伊織当人も常葉の世話になり繋がりが深く濃くなっていくことに、元々他人との付き合いを倦厭する性質のせいか、戸惑いや不安を覚えているみたいだけれど、この時常盤当人をどう思っているかの自問自答がなかなか意味深なんですよね。
前から敬意と信頼を寄せている相手ではあるんですけど、ちょっと頭の上がらない所といい、着実に伊織の中で大きな存在になっていってる気がするなあ。それを、まだ伊織はしがらみと捉えたがっているようにも見えるけど。
対する常葉先輩も、既に伊織に対してかなり大きめの好感は抱いているんですよね。ただ、つい最近、酷い、というよりも惨い形での失恋をしているだけに、早々に新しい恋にかまけるつもりが更々無いという心持ちでいるので、伊織をそういう対象として見る事はしていないのですけれど。とはいえ、お手伝いさんの静子さんが考えるように、少女が少年に見栄を張りたがるというのには色々と意味があるもの。特に、常葉のように虚栄心とは縁の無いサッパリとした女性にとっては。
二人とも今のところ、お互いを異性として意識することに必要性を認めておらず、信頼して共闘できるウォーライク同士であり敬意と好感を抱きあう先輩後輩、というスマートな関係にとどまっているけれど、既にもう飛び越える壁の高さは軽々とまたげる程度にまで下がっているようにも見える。
まー、この二人の場合、まかり間違ってお付き合いを始めても、ラブラブカップルなどという類のそれとはかけ離れたものになりそうだけれど。ライトノベルの主人公とヒロインで、双方がこれほど大人びて落ち着いた関係と言うのも珍しいくらいだし。

と、常葉先輩のヒロインとしての立脚について触れてきたのだけれど、実のところ彼女がこのままメインヒロインとしてそのまま伊織の隣に立ち続けるかと言うと、一抹の不安があるんですよね。
この女性は、親しい相手のために命を投げ出すことも厭わないような真摯さ、誠実さを持つと同時に、自身の執着を優先して他を切り捨てる決断を下しかねない、女としての怖さを備え持ってる気がするんですよね。自分の選択がどれほど愚かで虚しいモノかを理解していながら、あとで悔やみ苦しむことを承知していながら、敢えて堕落してしまうような。
でもそんな危うさこそが、この大路常葉という女性にただの涼しげでカッコイイ和風美人というだけではなく、ある種の壮絶な色香を感じさせる要因となってるようにも見えるのです。
実際、ミステリアスな色気のある薬子先生に、常葉先輩って女としての雰囲気じゃ全然負けてないもんなあ。


女の情念と言えば、健二とマハライドを主人公とした短編も、全般色濃くそんなのが漂ってるわけで。健二の母親との陰惨な過去といい、そのトラウマを引きずったまま続けていた多種多様な女性関係。そんな相手の一人に向けられるほの暗くも無責任で我儘な女の情念との対決。最近、というわけでもないんだろうけど、嬉野さん、こういうドロっとした感情をねちっこく、でも語り口としてはさらっと書く事が多くなってきたなあ。大好物なんですけどね、私そういうの。
そんな中で、屈託の無い健二とマーちゃんのやり取りが微笑ましい。このウォーライク同士の終わりの見えない闘争にまつわる真相に近い部分に関わってくる陰謀に、図らずも関わることになってしまった二人だけど、速攻で退場することが予定されていたところを思わぬ流れで生き残り準レギュラー化してしまったという存在感の強さを生かして、このまま頑張って欲しいなあ。

そういえば、表紙絵は初めて伊織とクリスのコンビではなく、この健二とまーちゃんの二人組。願わくば、次は常葉とリリアーヌを見たいところではあるけれど、カラー口絵の方で充分堪能させてもらってるともいえるので、我儘は言うまい。
作者もあとがきで書いてるけど、口絵のよだれたらしているリリアーヌが素敵過ぎますw あー、和装の常葉もやっぱり美人だなあ。どうしてこの人が学校で王子などというあだ名がついているのかわからんわからん。

そして相変わらず、食い物の描写が上手すぎる。というか、美味しそうすぎる。ベン・トーほどじゃないけど、この本も読んでたらお腹がすいてくるんですよねー。いつもは伊織が色々と作ってるのですが、今回は常葉先輩が作っている描写も多く、それ以外にもアイスとかハンバーガーなどのジャンクなども、食いっぷりの素晴らしさ故か、食卓の描写ゆえか、とっても美味しそう。

彼女は戦争妖精 44   

彼女は戦争妖精 4 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 4】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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しまった、ファミ通文庫の公式サイト上で連載していた短編、というか中編、ちゃんと短編集として書籍化されるんだ。普通に考えたら当たり前なんだが、そうと気づいてたら読まずに温存しておいたんだけどなあ。
でも、由良健二とマハライドの出会いの事件に、ルテティアが日本に来る前のお話、両方とも読んでおいたことでそれぞれのキャラクターへの理解が進んで、この巻でも言動に対する行動原理もよくわかったので、読んでて良かったとは思うんだけど。
特に、ルテティアは本編だけだとかなり無茶苦茶我儘なだけの娘にしか見えないんだけど、フランスでの過去編を読んでると彼女が自分の自己中心的な行動原理に確固とした責任を負う覚悟を持っている、というのと、あれで本気で仲が悪いのは伊織だけでクリスのことはわりと可愛がってる、というのが分かってくるんですよね。
ルゥって、もう本当に我儘でどうしようもないんですけど、ちゃんと自覚的なところと、その我儘によって見捨てられる事見切られる事も覚悟の上で自己中心主義を貫いているところ。伊織がきっぱりと一切甘やかすことなく冷厳に対処してるのでイイ目にはあってない、ってところで案外嫌いじゃないんですよね。ここまでくると、いっそ清々しいと思うくらい。
まー、とてもじゃないけどまともにお付き合いしたくなるような娘じゃないですけど。デレても別に我儘が治るわけじゃないのは、叔父さんとのやり取りをみてると明らかですし。
ただ、彼女の場合、裏切ったり見捨てたりする事はあっても、騙し討ちとか味方のふりしてはかりごとを巡らす、ということは絶対しなさそうなので、その点でもわりと信頼に足るような気もするし。
ぶっちゃけ、現状で敵ではない女性陣、ヒロインたちか。彼女たちって、みんな信用できないからなあ。
あからさまにあやしい行動をとりだした薬子先生はもとより、実のところ常葉先輩も、もしものケース、というのが考えられるんだよなあ。先輩の場合、現状はまったく全面的に心から信頼できる味方なのは間違いないのだけど、彼女の場合どうも条件が揃ったら手段を選ばなさそうな危うさがあるんですよね。根っから真っすぐで嘘や謀は苦手な彼女ですが、一途だからこその危険性が。
願わくば、そんな状況にならない事を祈りますけど。今のところ、伊織が心底から信頼できるのは、常葉とリリオーヌのコンビだけなわけだし。実のところ、伊織ってちょっぴり常葉先輩の事、好きとまでは行かなくても意識はしてると思うんだよね。常葉がつい先ごろ、ヒドイ失恋をした事に配慮して、そうした素振りは一切見せないようにしてるけど。彼女も自分で口にしてるけど、当分は異性の好意を持てないと言ってるし。ただ、彼女の場合は恋愛に臆病になってるだけのようにも見えるけど。兄弟子との一件は、トラウマものだしねえ。
個人的には、伊織と一番相性良さそうなのは常葉だと思うんだけどね。裏表なく素直で言動も明快。それでいて抑制がきいていて理性的という常葉は、伊織のメンタリティとかなりフィットしてるんですよね。牧島さつきやルゥとの対応を見てると、余計にそう思う。まあ、常葉もそういう出来てる部分だけの女性じゃないのも確かなんですが。彼女の一途な狂的な部分は、伊織が不快感や嫌悪感を抱くタイプのものじゃない気がするし。
それに比べて、牧島さつきは、あまりにも相性悪すぎるよなあ、これ(苦笑
ただ内省的で引っ込み思案なだけじゃない、というのは分かったけど、この巻で表に出てきた部分は、ちょっと色々ヤバすぎるような……。あの妹をしてこの姉あり、だったわけだ。
なんでわざわざルテティアがさつきにちょっかい出してたのか、ルゥの普段の行動原則からかなりハズレてて、首を傾げてたんだけど、カラオケルームでの一件で納得。
なるほど、ルゥはさつきにそういう可能性を感じてたんだ。ただそれ、なんとかに刃物になりかねないぞ。

薬子先生は、ほんとに意図が読めなくなってきたなあ。何が目的でなにを考えているのか。
どうも彼女って、どっぷりとウォーライクの闘争に浸かってる連中とは一線を画してる部分があるんですよね。以前書かれていた母親と一緒に暮らすつもりだった、というのは真実みたいだし。母親の急逝に伴う、身辺の慌ただしくも不穏な動き、というのもウォーライクに関わるものとは、なんか雰囲気違うし。
その現実社会での部分と、ウォーライクの戦いの中で見せるあやしい動き。それがどう繋がってくるのかわからないので、彼女が何を企んでいるのか、どういう動きの中にいるのかがさっぱり見えてこないのが、かなり不気味なんだよねえ。
面白いのが、その不穏な動き、というのが伊織や常葉たち、一応の同盟関係を結んでいる仲間たちに、ばっちり認識され不信がられているところ。普通のパターンだと、この手の仲間のあやしい動きというのは、ほぼ完ぺきに仲間うちには悟られずに進行するケースが多いんだけど、これだけ怪しまれてると、逆にどう展開が転ぶかまったく予想がつかないんだよなあ。薬子本人も、怪しまれても構わない、というスタンスだし。何を考えているのやら。

まあ、ウォーライクにまつわるヒミツそのものが、まだまだ殆ど伏せられていて、謎に包まれている、という理由も大きいんだろうけど。
マダムや老紳士の正体や、そのポディションもまったく謎だもんねえ。


ストーリーの方も混迷を深めてきましたが、相変わらずこの作品、食い物がべらぼうに美味そうなんだよなあ。食事の描写の丹念さは、より濃くなってきている気すらする。とにかく、カルボナーラといい、BLTサンドといい、様々なバリエーションが登場するフレンチトーストといい、材料をそろえて調理していく過程が丁寧に描写されているんで、出来上がりが本当に美味そうなんだわ。
それを、クリスがおいしそうに食べるもんだから、余計に美味そう。
伊織の、クリスの面倒の見方も、食事の用意以外に身の回りの世話とか、しっかり描かれているせいか、家事育児してるなあ、という実感が恐ろしいほど感じられる。生活感が、そんじょそこらの作品とはケタ違いに、濃く漂ってくるんですよね。飯が美味そうなのも、そのせいかな。伊織も、家事育児に追われてヒーヒー言ってるかと言うとそうでもなく、愚痴や皮肉を言いつつも、テキパキと計画的にこなしながら、そこはかとなく充実してそうな感じなので、何となく楽しそうだし。

何気に、【ベン・トー】に伍するくらい、読んでて腹が減る作品になってきたなあ。次回もわりと、そっちの方面でも期待してしまう自分がいるのでした。

花守の竜の叙情詩(リリカ)5   

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)

【花守の竜の叙情詩(リリカ)】 淡路帆希/フルーツパンチ 富士見ファンタジア文庫

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参ったなあ。これは参った。
人の醜さを目の当たりにし続け、人間を嫌い疎み、妹であるロザリーだけを愛し拠り所にしてきた王子テオバルトと、王女としての日々にただ耽溺し、無知のまま生きてきたエパティーク。
国を滅ぼされ虜囚となった姫君と、周囲を疎み疎まれ国に居場所のない王子。亡国の王女と侵略国の王子。お互い相容れぬ関係でありながら、王太子の謀でともに旅をする羽目になった二人。
互いの愚かさ、人間性の欠如を目の当たりにしながらの旅は、二人の仲を狭めるどころか憎しみと侮蔑を膨らませ、怖れと拒絶を募らせていくばかり。それが、変わっていったのは、やはりエレンが旅路に加わって以降のことでしょうか。二人の身分をカモフラージュするために、人買いからかった幼い娘。まだ5歳にも満たないこの聡くも健気な少女を通すことで、お互いに抱いていた固定観念が徐々に崩れ始め、崩れた隙間から本人たちもすらが忘れ、遠ざけていたテオバルトとエパティーク、彼と彼女が本来持っていた人としての眩い輝きを、二人は垣間見始める。
徐々に変わってくるお互いへの見方。それとともに浮き彫りになる、今までの自分の生き方への悔悟。それを踏まえてそれぞれの心に宿り出す未来への意志。その意味が根底から覆り出す旅の目的。

出会ったがゆえに、それまでの歪み蹲り周りから目を逸らした虚しい生き方から脱却し、それぞれが備えていた人としての輝きを取り戻せた。でも、出会ってしまったからこそ避け得られなかったこの結末。真実の愛を知ることが、この結末とイコールで結ばれていたのだとしたら、この二人にとってこの出会いは幸せだったのか不幸だったのか。
本人たちは、幸せだったんでしょうね。本当に愛する人に出会い、これまでの自分とは違う、本当に誇り胸を張れる自分を手に入れたのですから。
それでも、これはあまりにも切ない悲恋だよなあ。
個人的には、ただただ一人の人を想い続ける人生というのは、あまり受容したくないシチュエーションの一つなのですが……今回に関しては最後に彼に願った彼女の想いが、あまりにも強く尊く神聖に感じられて、胸を突かれて……。それが彼女にとっての幸せかはやっぱり分からないんだけど、こればっかりは否定もなにもできないよなあ、とすんなりと思ってしまったのでした。

この作品の特徴は、二人の男女の悲恋を描いているにも関わらず、エレンという少女を介在させることによって、二人で閉じてしまった恋物語にせず、テオとエパティークとエレンによって擬似的な家族を構成、特にエパティークの母性を強調していたところでしょうか。世間知らずな無知で愚かな王女でしかなかった彼女が、強さと勇気と賢明さを掴んでいったのは、恋による力ではなく、むしろエレンを守ろうとする母性からの愛情でしたし、最後に彼女が強く生きる事を選べたのは、やはりエレンがいたからですし。テオも、侮蔑の対象でしかなかった彼女への意識が劇的に変わってしまったのは、エレンに対するエパティークの態度が彼が抱いていた人間そのものへの不信感を払拭するものだったからですし。そう考えると、エレンの存在はとてつもなく重いものだったんだなあ。この幼女、ほんと滅茶苦茶健気なんですよね。パねえくらいに。幼さゆえの愛らしさと、歳不相応の賢明さは、とにかくギューと抱きしめて守ってあげたくなるもので、テオとエパティークの出会いが運命だったとしたら、この二人とエレンの出会いも運命だったとしか言えないんじゃないでしょうか。

できれば、本当に、この三人で家族になれればと、願わずにはいられないのですけれど。切ないなあ。


この絵師さんは、ファミ通文庫の【彼女は戦争妖精】を手掛けてた人と同じ人ですか。この人の絵、目茶目茶綺麗で好きなんだよなあ。特にカラーは別格。今後、もっといろんな作品でこの人の挿絵、見たいところですねえ。

彼女は戦争妖精 34   

彼女は戦争妖精 3 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 3】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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前々から伊織の女性への温度の低さ、ドライさには瞠目させられてきたけど……いやはや、すげえなこいつ。
未だかつて、ラノベの主人公でこれほど女性に対して辛辣で容赦なくてキツい人がいただろうか。少女系レーベルの作品に出てくるようなクール系の男連中だって、もう少し女性に対して甘さがあるだろうに。
そう、この伊織。女性に対して女の甘えを一切受け入れないんですよね。別に性格が冷徹だとか女が嫌いだとかそういう話ではなく、男だろうが女だろうが良識のない言動に対しては、単にそれに相応しい敢然とした態度を崩さないだけ。だから、薬子や常葉らに対してはきっちりと礼儀と敬意を払った姿勢を崩さない。多少、伊織には年上好みのきらいはあるかとは思うけどw
クリスの我儘を受容しているのは、それが幼児に不可分な行動原理だと納得した上で、自分が世話したことに対してクリスがちゃんと感謝を示しているから、という当たり前の論理なんですね。ちなみに、クリスの我儘をそのまま受け入れているのではなく、彼、いちいちちゃんとダメなものはダメと躾けてますし。仕方ないと妥協しないあたり、偉いよなあ。
さつきへの態度は、少々辛辣すぎるようにも思うけど、ちょっと痛快でもあるんですよね、というと我ながら矮小な気もするけど(苦笑
鈍感故ではなく、好意を匂わせて気づいて貰おうという態度に対して、虫が良すぎる、と一刀両断して無反応でいる、ってのは年頃の男の子にしちゃあ、やっぱりすげえよなあ。
そんな伊織だから、新しく現れたウォークライ。叔父が預かってくれと送り届けてきたルテティアとの相性は最悪。ほんとに最悪。一応、新ヒロインなんだよね、この子。自己中心的で自分本位。男にちやほやされるのが当たり前、という環境で過ごしてきたような少女であるがために、伊織とは完全に険悪な関係で、衝突してばかり。普通、年頃の男女がぶつかれば、女の方が優勢になってしまうものだけど、この伊織はそのへんの軟弱な男子とは一線を画しているせいか、常に正論でルテティアを叩き伏せるんだから、ほんとに凄いなあ、こいつ。
いや、ほんとに凄いのは、伊織にはまったく甘さがない所なんだよね。普通ならルテティアの我儘に対して文句はいいつつも、最終的には何だかんだと妥協しそうなもんだけど、伊織はほんとに一切妥協無し。容赦なし。文句があるなら出ていけ、という態度を微塵も、一ミクロンも崩さない。仲良くするつもり一切なし。この手の主人公に見られるデレの傾向が一切なし。完膚なきまでになし。実に徹底している。
とはいえ、完全拒絶じゃないんですよね。常識の範囲内で譲る部分は譲ってる。感情的には嫌い抜いてても、嫌いというだけで相手を全否定しない公平さと叔父に頼まれたという責任感。それがこれほど対立しながらも、ルテティアから居場所を奪う形にならない要因に見える。もし伊織が完全に拒絶するつもりなら、どれほどルテティアが傲岸で自己中であろうとあの家にいることに耐えられなかっただろうし。
これほど険悪な関係だったにも関わらず、ルテティアが最後にああいう行動を取ったのも、そのへんに理由があるんじゃないかなあ。とてもデレたとは思えないけど。でも、伊織の信念に、自分が頑なに正しいと信じている生き方よりも眩しいものを感じ取ったからこそ、ああいう行動に出たんじゃないかなあ。でなきゃあ、あそこで伊織に対して悔しいとか勝ち逃げされるようだ、と思う事はないだろうし。
ただし、今のところは間違いなく、伊織のこと、嫌いだぞ、ルテティア。

しかし、けっこう驚きだったのは伊織がクリスの面倒を見ることを面白いと思いだしてることだよなあ。あれほど幼児のお世話、うんざりしていたのに。ただ単に無責任だった父親への反発だけで、意固持になってクリスを放り出さないようにしていただけじゃなかったわけだ。グチグチ言いながらも、細々と気を使って面倒見ているあたり、本来は世話好きなのかもね、伊織は。

あと、叔父さんと薬子先生って本気で何にもなかったのか。絶対、過去に付き合ってたと思ってたのに。それどころか連絡も取っておらず、疎遠だったというのは驚いた。となると、じゃあ薬子が伊織に近づいたのがはたして本当に親切心からだけだったのか、というところに疑問が出てくるわけで。今のところ、尻尾らしいものは全然出してないけど、怪しいところあるのは確かなんだよなあ、先生。
常葉先輩も、こちらは基本的に信頼できる人なんだけど、伊織が微妙に感じている不安。彼女の強さ、揺るがなさこそが脆さなんじゃないだろうか、というところ。この人、そのあたりから崩れてきそうで怖いんだよなあ。
今のところ仲間、同盟関係ともいえるこの二人だけど、信頼は出来てもはたして信用しきれる相手かと言うと微妙に不安定。ある意味、伊織が本当に間違いなく味方と言えるのは、やっぱりクリスしかいないのか。ルテティアは微妙なところだけど、相性や性格の不一致、険悪な関係性というのを無視すれば、ある意味薬子や常葉よりも信用は出来るのかも。
でも、クリスも彼女本人が知らないところでウォーライク全体に繋がるような大きな秘密を抱えているようだし、伊織の負担は増える一方だな、こりゃ。

彼女は戦争妖精 24   

彼女は戦争妖精2 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 2】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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おかしいとは思ってたんですよね。この手の強制バトルフィールドものには付き物の、参加者への報償の有無が第一巻では語られなかったのですが、ここにきて明らかに。
ウォーライクだけでなく、ロードもまたこの戦いを勝ち抜くことで得られるものがある。それは、どんな願いでも一つ叶う、というあまりにも大きな報償。

となると、常葉が言う「薬子先生を信じるな」という言葉が俄然、真実味を帯びてくる。歴戦の鞘の王である彼女が、どうしてその事実を伊織に告げなかったのか。
前回、絶体絶命のピンチを助けてもらい、文字通り命の恩人となった薬子先生。このウォーライクを巡る戦いについて何一つ知らなかった伊織とクリスに知識と戦い方を教えてくれた彼女。彼女がいなければ、まず初っ端から脱落していた事は間違いない。
それに、薬子先生は伊織の叔父と過去に何らかのにゃんにゃんがあったような雰囲気もあったので、甥ッ子である伊織には何かと目をかけてくれているのかと、常葉に言われるまでは全然疑いもしてなかったんですよね。
いや、常葉に言われた時ですら、何言ってんだ? と、あまり気に留めることもなかったのだけれど……。

今回、薬子先生は前半中盤と物語に現れない。私生活の方で、長らく病を得ていた母親が亡くなり、その葬儀と後始末で慌ただしいことになっていたのだ。
彼女の、一教師には相応しくない高級マンションという住居に私生活(教師の仕事中は非常に野暮ったい格好をしてるくせに、私生活ではビシッと高級品で決めている)。身近に見え隠れする親しげな男性の影。
不審というほどではないけれど、彼女に不安のようなものを抱きはじめる伊織。

伊織って、巷じゃ滅多に見られないほどドライな主人公で、前回のメインヒロインかと思われた牧島さおりが向けてきた仄かな好意への、バッサリとした断ち切り方、無関心さは呆気にとられるほどだったんですけど、薬子先生に男性の影が見えた時の微妙な態度見てると、彼って先生に対して無自覚なレベルで好意みたいなものを抱いていたのかなあ、という気になる。
だってあれ、どう見ても嫉妬だもんなあ。


その薬子先生、クリスと伊織を狙って襲ってきたウォーライクとロードと戦闘を行うのですが、そこで彼女が伊織に語っていた自身のこの戦いへのスタンスと食い違う言動が垣間見える。
というか、なんか辻褄合っちゃうんですけど、色々と。うわぁ。これはちょっと、本気で油断ならないことになってきたかも。


一方、もう一人のヒロインたる新登場の大路常葉。登場シーンや途中のたち振る舞いからして、「王子」の名に相応しい、典型的な剣道少女。この人の場合は薙刀少女か。古風で規律正しいさっぱりとした気風のヤマトナデシコかと思っていたのだけれど、いや本人もそうあろうとしていたし、周りもそう受け取っていたんだけれど。
土壇場で彼女が見せたものは、ドス黒いまでの女としての情念。
その浅ましい考え、好きな人の幸せを踏み躙るような有り様、反吐が出そうな自分勝手な振る舞いに、自分自身で苦悩し絶望しながらも、暗く醜い自身の情念に身を委ねてしまう常葉。
いやね、むしろ清廉潔白な娘より、私はこういう自分の醜さに苦しみもがく娘の方が好みなんですよね。
自分にそういった感情があることを偽らず、目を背けず、直視して自分の浅ましくも醜い想いを裏切れないあたり、この娘は本当の意味でまっすぐな心根の娘なんでしょう。

彼女はもし、今後伊織たちと袂を分かつことになっても、まず正面からきっぱりとそのことを告げ、正々堂々と敵対してくれるように思います。
まあ、そうならず、まず頼もしい味方として。クリスにとってはリリオは初めての身近な友人として、助けになってくれるのでしょう。
クリスなんか、リリオと交流することでメンタル的にもただのお子様から多少戦うことへの自覚が生まれてきてるみたいだし。

それにしても、毎回冒頭で伊織が作るフレンチトーストは美味しそうだなあ。

彼女は戦争妖精 14   

彼女は戦争妖精 1 (ファミ通文庫 う 1-6-1)

【彼女は戦争妖精1】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫


冒頭で、主人公が訪ねてきた同級生の女の子に振舞ってるフレンチトーストが、やたら美味しそうなんですけど。
本を貸し借りする関係、というのもどこか上品な匂いがしていいんですけど、本を借りにきた女の子に、さらっとこうした軽食を調理して振る舞える主人公が、何気にスペック高いよなあ。しかも、別室に幼女に猿轡まではめて閉じ込めてる状態なのにw
しかし、ダッツか。ハーゲンダッツなんか、高くてフレンチトーストなんかには使えないよ。それだけに美味そうだ。この本読んでから、朝食や間食にフレンチトーストを作る機会が多くなったのは統計的な事実でござる。

嬉野作品では久々に、冷めたタイプの主人公がきたなあ。わりと何事にも淡々とした反応を示すタイプ。とはいっても、表面に出てくる感情の起伏が少ないだけで、内面はけっこう普通にいろいろ感じ、考えてる。
でも、全体的にみるとやっぱり冷めてる方か。
こういうクール系に対するヒロインが、年頃の女の子じゃなく完全幼児というのは、なんかこう…意地悪だぞ(笑
行方不明の父親が送ってきた十年越しの宅配便の中から出てきたのは、戦争妖精ウォーライクを名乗る十歳前後の外見容姿の女の子クリスタベル。
とはいえ、ウォークライとは何なのか、本人もさっぱり覚えておらず、記憶しているのは名前だけ。要求するのはお腹すいたーの食欲ばかり。精神年齢は外見の十歳にも満たない完全幼児。
とてもじゃないが、女の子だとか異性がどうのというレベルではない。育児レベル(笑

お前、いきなりボンキューボーンの美女とかに成長したりしないのか? などと主人公宮本伊織、年頃の青少年としてはわりと切実な期待を幼女にかけたいところですが、そんな傾向は一切なし。
でも、こいつ、冷めてるわりに冷血漢ではないんですよね。どこの誰とも知れない、それどころか人間ではない存在を、しかも生死のやり取りとなる「鞘の主」の戦いに問答無用で巻き込むクリスを、なんだかんだで見捨てられない情の持ち主。
本人も自分がいささか温度の低い人間である自覚があるのか、自分が厄介者であるクリスを処分してしまうような冷酷な考えを浮かべなかったことに、ホッとするシーンがあるんですよね。あそこで、この主人公のこと好きになりましたわ。主人公たるもの、変に熱血でなくてもいいんです。グチグチ文句言いながらも、人当たりが冷たかろうと、人としての当然の情をどんな状況でも失わず、自分の指を掴んでくる小さな手を振りほどかない意志の力があるのなら。
うん、その意味では口絵で描かれたワンシーンも良かったなあ。

一方で、同級生の読書好きの女の子。ヒロインとしてのスペックは高くて、いや本気でかなり可愛かったんだけど……伊織、相手の好意を知った上であの態度ですか。こいつ、マジで温度低いなあ(苦笑

何気に重要なキャラクターとなりそうなのが、保健の先生。この人、もしかしたら叔父さんとけっこうイイ仲なんだろうか。単に知り合い、友人、先輩の甥っこに対する手助けにしては、身が入りすぎてるようにも見えるんだけど。
単に先生、傍目と違ってホントの世話好きお人好し、という線もありそうだけど。イイ人なのは間違いないか。

 
12月2日

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(電撃コミックスNEXT)
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(電撃コミックスNEXT)
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(アクションコミックス)
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11月26日

(エンターブレイン)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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11月25日

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(ガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ビッグガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(コロナ・コミックス)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(MF文庫J)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(オーバーラップノベルスf)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(MFブックス)
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(KADOKAWA)
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11月22日

(MFC)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスpixiv)
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11月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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