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ミユキルリア

七つの魔剣が支配する ★★★★   



【七つの魔剣が支配する 察曄 ̄野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第7弾!

キンバリーの今後を左右する一大イベント、決闘リーグの開幕が迫る。三年生に進級し成長を見せるオリバーたちは、そのために三人一組のチームを組むことになった。同学年の中でも実力上位と目されるナナオらは、他チームから徹底的にマークされて厳しい戦いを強いられる。
一方で、例年以上に豪華な報酬と特殊なルールは、教師殺しの犯人を探すための教師陣の罠でもあった。さらに次期学生統括の座を巡る選挙戦もその影響を受け、駆け引きは激しさを増す。
そんな中、ユーリィが追いかけていた「骨抜き事件」の犯人、サイラス=リヴァーモアが動き出す。激動のキンバリーで、屍漁りの魔人は何を企むのか――。

決闘リーグというか、なんかアスレチック競争みたいな……そう、これってなんか大昔の大人気ゲーム「熱血硬派くにおくん」シリーズの「熱血大運動会」をちょっと思い出してしまったんだがw
それはともかくとして、キンバリーの生徒たちが一年生を除いて各学年が全部参加する決闘リーグというイベントが開幕。図らずも次回生徒会選挙の行く先を占う代理戦争、派閥戦の様相をも内包するイベントになってきたのだけれど、それはそれとしてオリバーたちもそれぞれ三人一組のパーティーを作って参加することに。いつもなら、剣花団の6人が3人ずつに別れてパーティーを編成するんだろうけれど、ミシェーラが家の事情もあってステイシーとフェイと組むことに。家の事情とか関係なく、かつて揉めてた従姉妹とこうして仲良く組めるようになったというのは素直に嬉しくなりますなあ。
また、カティとガイ、ピートが3人で組むことになったので、自然オリバーとナナオが前回登場したあの「探偵」ユーリィと組むことに。
剣花団では特に戦闘面ではまだまだ未熟のカティたちが、3人で頑張る、となったのは相変わらず向上心が高くて微笑ましくなる。未熟といっても最初の頃から成長著しく、それぞれの得意分野を順調に伸ばしているだけに、優勝候補のアンドリュー組といい勝負になっていて見ごたえある対戦でした。
アンドリュー、ロッシ、オルブライトの同年代ではオリバー、ナナオ、ミシェーラと並ぶ最強格の三人がチームを組んだのは面白いなあ、と。彼らも最初の頃は色々と能力的よりもむしろ人格的に甘いところや隙や油断、傲慢さが見られたものですけれど、そういった余計なものが削ぎ落とされてホントに強いキャラになりましたよね。アンドリューなんて話の転び方によっては噛ませ犬のまま小物落ちしそうな危ういポディションだったのに、見事に立て直して風格すらある強キャラになりましたし。
なんて、感慨深く思ってたらオリバーたちが戦うことになったバトルロイヤルの他の三組を率いるリーダー格含めた面々が、これまたモブとはとても思えない凄味を見せてくれることに。
いやマジでミストラル、リーベルト、それにメカクレ剣豪ことエイムズの三人にリーベルトチームの狙撃手カミラはこれまで名前を聞かなかったのが不思議というかありえないくらいの強キャラで、特にカミラの狙撃は戦闘中も神業の連発で背筋がゾクゾクするほど研ぎ澄まされたプロのお仕事だったんですよね。
そしてまさかのオリバーやナナオに比肩するほどの剣士だったジャスミン・エイムズ。あとがき読んでびっくりしたんですけれど、ミストラルやエイムズって前に読者から募集していた投稿キャラだったんですね。そうとはまるで想像できないくらい作り込まれたキャラクターに、主人公たちと対等に渡り合う能力以上にその個性と存在感が作者の手の内にあって、まさか投稿キャラとは思いませんよ。
オリバーやナナオの実力はこれまでに嫌というほど知らしめられているにも関わらず、静かに剣でなら渡り合えると自負する、おとなしそうに見えて結構強気でメンタルも動じない不動感があるキャラクターはまさに強キャラでしたよ。ナナオとは違うタイプの静の型の剣客という風格で。
実際、同年代ではまじで最強の一角に入るみたいですし、出番がここだけ、というにはあまりにももったいないので、せめてロッシくん並には今後も登場して活躍してほしいですね。

他の3チームが結託してオリバーのパーティーが集中的に狙われることになったバトルロイヤル。カマセ役とは程遠い練達の技、急造とは思えない巧みな連携、そして得意の分野では他の追随を許さない魔術の粋を見せてくる怒涛の攻勢を、ギリギリの瀬戸際でしのいで3チーム相手に渡り合うオリバーたち。躍動感あり、頭脳戦あり、詰将棋さながらの指し合いあり、と思っていた以上に読んでる側をぶん回してくる楽しさ満載の攻防で、いや満足の面白さでした。
これは観客も盛り上がっただろうなあ。見た目も派手でしたし、見応えたっぷりでしたよ。

まだまだ決闘リーグは開幕したばかり、とこんなガッツリと続く、になるとは思っていなかったのですが、ラストでイベントとは無関係の、以前から起こっていた骨抜き事件がイベントの最中に発生、その被害者があの人、ということでイベントの裏の意義でもある生徒会選挙にも影響が出そうな勢いなんですよね。
それよりも、犯人であるリヴァーモア先輩の目的がなんかヤバそうなのですが。またぞろ魔術の闇を覗き見る展開になりそう。

それはそれとして、先生がちょっと大暴れしすぎである。最上級生含むあの大多数相手でも無双するのか。お互い、殺し合いじゃないので切り札は切らないにしても、化け物しか残っていない上級生相手に、手も足も出させない、というのはさすがキンバリーの教師ということか。
ってか、これらを殺さなきゃならない、以前に二人すでに殺ってるのよねえ。
こんなん相手にしてたら、あと何人犠牲者が出るものやら。その犠牲者候補であるあの子を、成長譚のなかに組み込んでいるの、結果次第では邪悪極まるやりくちですよねえw

あと、今回オリバーたちと同じパーティーで戦ったユーリィ。今まで得体のしれないというか掴みどころのないキャラでいまいちどういうキャラなのかわからなかった所に、前巻の最後でその正体が明らかにされた事で、どういう取り扱いのキャラになるのかと思っていましたけれど。
結構、がっつりとオリバーとナナオのコンビにからめて一緒に戦うことになって、掘り下げたみたいな感じになってるんですよね。正体わかっているにも関わらず、なんか仲間感が出てきてしまったのとか、それこのやり口よw
こうなってくると、ユーリィは正体が明らかにされて底が知れた、のではなく与えられた役割に留まらない可能性を持ってるんじゃないか、と思いたくなってくるんですよね。無知の知であり真理に届くための存在だからこそ、本来の役割を越えた彼だけの発見、到達があって欲しいなあ、と。

なんにせよ、ストーリーとしては続く、になったので早い目に次巻が来てくれることを願うばかりです。6巻と7巻の間そこそこ空きましたしね。まあ、私自身7巻発売されてから読むまでちょっと間あいてしまいましたけど。って、9月にもう出るんだ。ありがたや。


七つの魔剣が支配する VI ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する VI】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第6弾!

エンリコの失踪はキンバリーに衝撃をもたらした。二年連続の異常事態に教師陣も犯人捜しへと動き始め、ついには学校長自らの尋問が生徒へと及ぶことに。
不穏な情勢下で近付く統括選挙の時期。後継者を決めあぐねるゴッドフレイ陣営の前に、因縁の対抗勢力が立ち塞がる。
そんな中、人生を懸けて箒競技のタイム更新に挑むアシュベリーは、大きな壁にぶつかり苦しんでいた。彼女の助けになろうとするナナオだが、ふたりの華々しい活躍は選挙と無縁でいられず──。
一方でオリバーたちの前には、転校生の少年・ユーリィが現れる。軽いノリとは裏腹に高い戦闘能力を持ち、楽しげに校内を探って回る彼の目的とは──。


あの3巻でのオフィーリアとカルロスの美しい破滅を目の当たりにして以来、未だにどう整理していいのかわからない感情の行所が、またぞろこの巻を読んで胸の中に渦巻いている。
わからない。悲しいのか感動しているのか、当たり前の喜怒哀楽では表現しきれないどう捕らえて良いのかわからない複雑な想いが、激しく胸をかき乱す。
彼ら魔法使いたちの価値観は、この物語で描かれる登場人物たちの価値観は大きく一般的なものとは異なっている。それが常識として描かれることに、どうしても混乱が生じてしまう。置いてけぼりにされるのならそれはまったく違い世界の出来事として分けて捉える事ができるだろう。でも、この物語は凄まじい勢いで読んでいるコチラの気持ちを引きずり込んでいく。共感にも似た網でこちらを捕らえて、彼らが感じたであろう想いを共有しようとしてくる。読んでいるこちらの価値観では理解しきれないはずのものが、感覚的に同期されていく。だから、わけがわからなくなるのだ。この情動を表現する言葉がなくて、混乱する。でも、確かにそれを、感じている。それがどうにももどかしい。

彼ら魔法使いは、その在り方からして人外の存在だ。自らが見出した命題にそれこそ魂から殉じて捧げ尽くす理外の存在だ。しかし、同時に凄まじいほどの深い情を持つ者たちでもある。これは年齢の上下に関わらず、学年の上下も関係なく、教師たちもまた同様に、きっと普通よりももっともっと情によって形成されている存在なのだ。狂うほどに、愛に生きている。魔道の追求のためにすべてを捧げているようでいて、きっと彼らは愛のためにすべてを投げ売って在る存在なのだろう。今までずっと彼らの在り方を見てきて、そう思う。そう思うようになった。
だからこそ、道を踏み外す。だからこそ、憎悪に呑まれる。オリバー一党が復讐に狂奔することも、またその原因となったオリバーの母の死も、魔法使いたちのあの想像を絶するほど深い情愛こそが根底にあるじゃないか。
オリバーたち剣花団の関係を見てみるといい。あれが、ただの友情、ただの親愛で結ばれた関係だろうか。あのオリバーが自分の弱さを泣きじゃくるという幼い子供みたいな姿で曝け出してしまえるほど深く繋がった関係。それを見て取り乱すようにしてオリバーのもとに寄り添う面々。
あんな、深い深い情愛で重なり合った友情が、一対一ではなく6人のグループで結ばれ合う、いや溶け合うというほどになっているものを、自分は見たことがない。親友や一心同体どころじゃない。
でもきっと、彼ら剣花団ほどの関係はこの世界でも貴重ではあっても特別ではないのだろう。この作品で描かれた魔法使い同士の人間関係は、繋がりは、どれもが勝るとも劣らない深度の情で紡がれている。
元生徒会長のあのゴッドフレイへの敵対と執着ですらそうだ。いやあれは、勘弁して欲しいほどヤベえんだけれど、あの元生徒会長があの執着を剥き出しにさらけ出しながら、どちらの陣営も異常に思っていないあたり、あれですらも決して珍しくはない魔法使いの在り方なのかもしれない。

そんな彼ら魔法使いの、情を燃料として焚べるように駆け抜ける人生において、だからこそ「死」もまた無慈悲な悲劇、ではないのだろう。
魔法使いにとって、きっと死ぬことそのものは忌避するではないのだ。それは受け入れるべき結末の一つであり、それが自分の魔法使いとしての人生、在り方の完結としての死であるなら、寿ぐべき祝福ですらあるのだろう。哀しく寂しくとも、それは良き旅立ちなのだ。
だから当人たちにとって満ち足りた幕引きならば、見送る者たちはそれを黙して受け止める。それが連れ添う者の居る孤独ではない旅立ちなら尚更に。
死という完結は、完成は、だから神聖ですら在る。
なればこそ、その神聖を穢すことへの呪いは如何ばかりか。寿がれるべき死を、無残な形で台無しにし、そこにいたる魔法使いの人生そのものを踏みにじった事への憎悪はどれほどのものになるのだろう。
オリバー一党のあの妄執とも狂奔ともいうべき憎悪の所以が、少しわかった気がする。そして、オリバーを愛する従兄姉たちが、どうしてあれほどオリバーの苦しむ姿に魂を引き裂かれながらこの復讐を止めないのかも。
それがもう、オリバーにとっての魔法使いとしての命題となっているから。
それを輔けることこそが、従兄姉たちの魔法使いの人生となっているのだ。

でも、いつかオリバーはその歩むべき人生を引き裂かれるような気がする。情愛の深さこそが魔法使いの業ならば、剣花団の中での日々はオリバーの中に新たな命題を産み始めているのではなかろうか。それは、ナナオとはじめて剣で相対した日をはじまりにして。
それとも、この物語における魔法使いたちの価値観は、在り方は、オリバーの復讐と友情を、両立して果てさせる事が叶うだけのものを内包しているのだろうか。

ただ一途に魔法使いとしての生きて生きて、駆け抜けたアシュベリーの姿に、魔法使いの在り方の結晶を見た。その結末は、きっと満ち足りたもので幸福だったのだろう。きっとあれこそが、ナナオの思い描き目指すべき魔法使いの完結だ。
果たして、ナナオはあのように生きて、死ねるのか。
命を文字通り圧縮して、生き急ぐオリバーはそんなナナオに応える事が出来るのだろうか。二人は、剣花団の6人は、あのオフィーリアとカルロスのように、アシュベリーとモーガンのように、あの先輩たちのように存分に生きて、思い残すことなく共に逝ける相手を見出すことが出来るのだろうか。
アシュベリーとモーガンの最期の挿絵は、本当に幸せそうであのシーンの印象を決定づけてくれたように思う。
……ああもう、どんな最良の結末でも彼らが生きて幕引かれる姿が思い描けない。そして、それが哀しくともハッピーエンドなのだろうと感じてしまう時点で、この物語に随分と毒されてしまっている。
どうか彼らに幸せな良き結末を。ただただそう願うばかりだ。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する V ★★★★★   



【七つの魔剣が支配する V 】 宇野 朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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勉強と鍛錬を重ねて己を高めつつ、時には後輩たちを相手に頼れる先達としての一面も見せ始めるナナオたち。困難を増す魔法生物学の課題でグリフォンと格闘し、新たに加わった天文学の授業では、『異界』と『異端』についての過酷な現実を教わる。そんな中、迷宮に連れていかれたピートを追ってエンリコの研究所に辿り着いたオリバーとナナオ。彼らはそこで恐るべき魔道の深淵と、長きに亘る魔法使いと『異端』の対立の一築を垣間見る。一方で、次の仇討ちの相手をエンリコに定め、オリバーは同志たちと共に戦いの段取りを詰めていく。刻々と迫る決戦の時。彼のふたつ目の復讐の行方は―。

なぜこんな事になってしまったのだろう。それは誰よりもオリバー自身が抱いている思いなのだろう。なぜ、なぜ、なぜ。
彼の中で再演される母の記憶の中で、後に彼女を責殺する事になる裏切り者たちは決して鼻持ちならない相手などではなかった。もちろん、一巻で討ったダリウスのような人間もいるのだろう。でもエンリコやエスメラルダはそうじゃなかった。そこには友情があり、愛情があった。確かな絆があった。
はたして、それを容易に覆してしまうのが魔法使いの業なのだろうか。いや、そうであってもそれだけではあるまい。魔法使いとしての業は逃れられないものかもしれないが、人としての愛もまた逃れられない業である。今なお、鮮烈だったクロエの残光は彼女の復讐を企む者たちのみでなく、復讐の対象である裏切り者たちの中にも、生前の彼女を知る大人の世代の中にも色濃く焼き付いて、魂を奪い続けているのがエスメラルダやセオドールの姿からも垣間見える。
それほど強烈な光を、なぜあんな形で殺さなくてはいけなかったのか。否、そんな彼女だったからこそそうやって殺さなければならなかったのだろうか。その理由はどうやら個人個人によって異なるらしい。その理解に辿り着くにはあまりに遠い距離がある。
その断絶が、オリバーを苦しめ続ける。
彼らの栄光と末路が、今オリバーと掛け替えのない友誼を繋ぐ剣花団の行く末にどうしても重なってしまうのだ。あれほどの友情を交わしている相手と殺し合うことになるのだろうか、と疑問は絶えないが現に、オリバーはすでに彼らを裏切っている。彼らと歩む道にすでに背を向けている。
今はまだ対立にも敵対にも至っていないけれど、オリバーたちの歩む道がキンバリーそのものとの対決に至る以上、いずれ本当に道は分かたれる。後戻りするには、もうオリバーは進みすぎてしまった。標的を二人殺しただけじゃない、同志たちが命を捨てて切り拓いた道である以上、そこを進まぬ選択肢はなく、同志たちはオリバーをそんな道を歩ませてしまった罪からもう逃れられない。
オリバーの従兄弟であるシャーウッド兄妹は家族愛を持ちつつももうちょっと組織寄りの考え方をしているのかと思っていたんだけれど、今回の姿を見るともう本当にオリバー個人のために身も心も捧げ尽くしているのがよくわかった。愛して慈しんで、だからこそオリバーに、オリバーという優しく復讐なんて似合わない少年に君主の役割を与えてしまった事に狂死しかねないほど血涙を流していることもよくわかった。
彼らはオリバーのためならなんでもするだろう。同志たちは目的を達するためには本当に命すら惜しまない。そんな彼らのためにも、オリバーは突き進むだろう。もうそうするしかないのだ。
そのオリバーたちの後戻りできない在り方は、どうなのだろう……七人の裏切り者たちがクロエをあんな風に殺すしかなかった在り方と、どこか重なってきてしまうのではないか、とそんな想像が脳裏をよぎる。
復讐の連鎖などよりももっと始末に負えない、救いのない連環じゃないのか、これは。
だからこそ、オリバーの魂の奥底に大切に残されていた素朴な願いに、心奪われる。それは叶わぬ願いだ。こうなってしまった以上、手遅れ過ぎてもうどうにもならない未練にすぎない。
でも、本当に。そうであったら、どんなに良かっただろう。そうであったら、本当に少しだけでも誰もがそうであったなら、こんな誰も救われないありさまになんかならなかったんじゃないのか。
未練である。でも、まだそこに至っていない剣花団にとっては、希望であってほしい。か細くも叶い得る望みであってほしい。切に、切にそう願う。でなければ、あまりにも辛い。
それに、ナナオの着目のされ方が不穏どころじゃないんですよね。ナナオをこの学院につれてきたセオドールの意図がどこにあるのか。どうやら、エスメラルダの頭痛の理由を彼が知っている以上、あの夜の真相もまたセオドールは知っているはずなんですよね。それでいて、エスメラルダの側にいる。そして、そんな彼がクロエを幻視するようにナナオの在り方に執着している。そして、誰よりもクロエに執着していただろうエスメラルダの、ナナオに見せた顔。
純粋な感情こそが狂気に密接につながっていく。その在り方が狂っている魔法使いならば、尚更に。
エンリコの最後の忠告。教師として生徒を思う真摯な言葉が心に沁みる。そう、もう出会っているはずなのだ。オリバーとしての、掛け替えのない出会いを。
それが、果たして救いへと繋がるのか。そうであってほしい。それもまた、願いだ。祈りですらあるかもしれない。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する IV ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する IV】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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再び春を迎えたキンバリー魔法学校。オリバーたちは二年生に進級し、新入生たちの世話に新たな科目、それぞれの修行と、目まぐるしい日々を送っていく。そんな中、ひとときの休息を魔法都市ガラテアで過ごすことにした6人。空飛ぶ絨毯に乗り、買い物や名物料理を楽しみ、魔法生物のお店を覗く。が、穏やかな時もつかの間。夕食の席でキンバリーの校風を嫌うフェザーストン魔術学舎の生徒たちと揉めてしまい―。一方、シェラの父であり、ナナオをキンバリーに招いた教師・セオドールにも接触を受ける。暗い夜道を歩きながら、彼は突然「この街には人斬りが出る」などと不穏なことを言い出し―。

これ、ほんとにベースとなっているのはハリーポッター的な魔法学園ものなんだけど、同時に比較にならないくらいダークでディープでアダルティな世界観というのを思い知らされる巻でした。2年生に進級して一応大きな事件もなく穏やかな日常の風景が広がる話であっただけに、なおさらキンバリーでの「平穏」が通常の感覚と全く異なる危険で殺伐としたものであることが浮き上がってくるんですよね。かつての自分たちと同じように様々な想いを抱きながら不安を胸に入学式を迎える新一年生たち、そんな彼らを優しく迎え入れる一方でほぼ時を同じくしてその裏ではこの一年間で死んだ生徒たちの合同葬儀、なんてものを行うこの対比ですよ。しかも、死者数がまた生々しい数でキンバリーの危険性というものをよりリアルに感じさせるのである。
オマケに、2年生に進級したことで授業内容もより危険なものに。一応死なないように配慮しているみたいだけど、ほんとに死なないだけ、なんですよね。場合によっては死ぬし、死ぬより酷いことになるような内容が散見されるわけで。これ、授業中居眠りとかお喋りとかしてる余裕絶対にないですからね。死ぬから。ガチで死ぬから。普通に下半身グシャ!って潰れてる人もいるんですけどー!?
授業なので、逃げられずに毎日続くわけで、精神的に死ぬ。これを受け続けられているだけで、キンバリーに染まっていると言えるでしょう。そりゃ、イカレるわ。頭おかしくなるわ。魔法使いが人外になるのも当然だわ。日常風景なんだぜ、これ?
ここまでイカレた日常が続くと、同じ生徒たちの間は徹底的に破綻するか、或いは結束が深まるか。少なくともオリバーたちは、剣花団の五人のみならず、ロッシ、リチャード、ステイシー、フェイ、ジョセフと言った一年時には揉めることもあった実力者たちともある種の信頼関係を結べるようになってるんですよね。彼ら彼女らとこうして認め会える関係になれた、というのは随分とこう……頼もしいんだけど、同時に死なれたときのダメージががが。
そして、今回一番度肝を抜かれたのが、キンバリーのというよりも魔法使いの性事情、というところでしょうか。なんだよ、三年になったら妊娠出産が解禁!って!? そう言えばお腹おっきくした上級生がけっこう歩いてるって!?
びっくりですよ!!
魔法使いとしては、何より血統を残し継がせることが推奨されるというのは理解できるけれど、学生のうちからここまで積極的に優秀な血を取り込もうという活動が行われているとは。
これ、性に緩いとか奔放とかではなく、徹底して魔法使いとしての在り方に則った厳格ですらある実情と言えるのでしょう。でも、性行為に対してタブーとされるどころか推奨されるような環境ですから、貞淑であることや恋人になってから結婚してからという考え方は珍しい方ですらある。
こうなってくると、剣花団のグループ内の人間関係も違って見えてくるわけで。
とはいっても、名家であるシエラも含めてそこまで魔法使いとしての価値観にはみんな囚われているわけではないのだけれど、それでもキンバリーでの常識は上記した性行為を推奨するようなものだけに、どうしたって影響を無視できないんですよねえ。
正直、パヒュームの影響残っていたオリバーへのシエラの医療行為とか、具体的な行為としては大したことしてないはずなのに、尋常じゃなくエッチすぎてヤバかったくらいですし、ってかヤバいヤバい。
それだけ、体の関係というものを意識させられてしまうと、異性として相手をどう思うか、という点についてもどうしたって強く意識の上に登ってきてしまう。その意味でも、今回は剣花団のメンバーの恋する気持ち、という所にもスポットが当たっていたのではないでしょうか。
その最たるものが、ナナオの恋と狂気の撹拌でありましょう。元々純粋で、オリバーになついていた彼女ですけれど、この2巻になって彼女の様子と来たらただ懐いているのとは隔絶した、一途なくらい慕い寄り添おうとする健気なくらいのワンコな姿なんですよねえ。いやもう、誰が見てもオリバーの事好きだろう、というような。オリバーはオリバーでナナオの事誰から見てもわかるくらいに大切にしてるし、彼女にちょっかい掛けられた時の脊髄反射的な過剰反応ももうアレなわけで、オリバーの嫁呼ばわりも当然な二人なんですよねえ。
しかし、一方で一巻の時に剣を交えあった時のように、ナナオの深層にはオリバーと死合い、彼を斬り殺したい、彼に斬り殺されたい、という魂に根ざした欲求が今もなお絶え間なく胎動している。それを自覚しているナナオは、果たして自分の気持ちが恋と言えるのか自信が持てずにいたわけだけれど、カティがナナオの問いかけに咄嗟に答えられなかった沈黙は、ある意味致命的な錯誤をナナオに与えてしまったんですよね。でも、これカティがあそこでナナオの恋を肯定していた所で行き着く先は「殺し愛」なわけで、どっちにしても行き止まりなんですよねえ。いずれにしても、デッドエンド。ハッピーデッドエンドになるかどうか、の違いでしかないのか。
ナナオの魔を、誰よりも深く理解してしまったカティ。彼女が、果たしてオリバーとナナオの顛末のキープレイヤーになるのか。カティ自身、自分の沈黙がナナオに与えてしまった誤解を理解しているわけだし、それをそのままにしておけるような性格でもないんだよなあ。
一方で、カティ自身もオリバーに惹かれている事実が混沌に拍車をかけている。まあ、なんか女性陣みんなオリバーに惹かれているっぽいのだけれど。シェラも、自分にもっとも親しい魔法使いとしての価値観を有する、波長が合うオリバーに惹かれているようだし。まあ、その波長が合う部分こそがやがて二人を、魔法使いであるからこそ敵対へと導きそうでもあるのだけれど。
そんでもって、ピートもまた両極往来者(リバーシ)、男性と女性の性別を行き来する特殊体質の影響もあるのか、なんかオリバーにべったりなところありますし。
ガイくんも滅茶苦茶イイ男なんだけどなあ。こればっかりは今のところ仕方ないのか。

そんなみんなに惹かれているオリバーだけれど、彼こそが魔法使いの闇をすでに体現している一人。仲間たちという光に目を細め、安らぎを得てこの上なく彼らに惹かれながら、背を向けざるを得ないもの。ついに、二人目のターゲットに狙いを定める。最も、次の標的を仕留めるのは、仲間を守るためという意義もあるので今のところは後押しする要素しかないのだけれど。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する 3 ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する 3】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第3弾!

オフィーリアが魔に呑まれ、ピートがその使い魔に攫われた。キンバリーの地下迷宮に消えた生徒数の多さに、学園内は厳戒態勢が敷かれる。学生統括のゴッドフレイをはじめ、上級生らが奪還に向かうも救出活動は難航していた。
 迷宮の深みに潜む魔女を相手に、自分たちに何が出来るのか? 苦悩するオリバーらに、ある人物が取引を持ちかける。それは彼らにとっての光明か、それとも破滅への誘惑か。
 目指す場所は地下迷宮の更にその奥。想像を超えた環境と罠、恐るべき合成獣たちが行く手を阻む。果たして彼らはサルヴァドーリの工房にたどり付き、友人を取り返すことができるのか──。


魔に呑まれ、人からハズレて朽ち果てる。それは魔法使いの一つの末路であり、オリバーたちの未来の姿。ここで語られるオフィーリアの物語。彼女の青春と恋と友情と、そして絶望にして最期の物語は眩しいくらいに輝いていて、そしてあまりにも儚かった。
一巻でダンジョンにて遭遇した彼女は、まさに怪物だった。この学園で魔法を学び続けるということが、魔の道に進み続ければ果たしてどうなるのかを示唆するような存在であり、やがてオリバーたちもみな、このような怪物へと成り果てるものなのかと恐れおののいたものである。
でも、ここで語られたオフィーリアは決して怪物ではなかった。どれほど道を外れようと、魔に魅入られようと、彼女がこの学園で歩んできた軌跡は今オリバーたちが歩いている道となんら変わることのない輝かしい青春の中にあり、その只中から足を踏み外して奈落へと堕ちた今となっても、その在りようは人からハズレた怪物などでは決してなく、哀しいほどに人間であったのだ。
そしてそんな、人として藻掻くオフィーリアを命を賭けて救おうとするのも、彼女の破滅に殉じようとするのも、彼女の青春を共にした友人たちだった。友として、ゴッドフレイもカルロスも最期まで彼女を見捨てることはなかったのだ。たとえ、どんな形だったとしても。
その姿は、今この時ピートを助けるために命を賭けているオリバーたちと何が違うのだろう。何も違わない。あれは、将来のオリバーたちの克明なほどの未来の姿の一つである。
オフィーリアが人の心を摩滅させて真に怪物に成り果てたのならば、オリバーたちはそうならないと信じることも出来ただろう。
だが怪物に成り果てるのではなく、人であり続けたからこそ、余計にあのオフィーリアたちの末路はオリバーたちの未来を映し出しているかのように見えてしまうのだ。
オリバーも、ナナオも、ミシェーラも、彼らが人であるからこそ殉じるべき破滅を既に内包している。ピートを救うために見せた彼らの情熱も、純真さも、眩いほどの魂の輝きも、彼らだからこそ陰らせることもなくくすませることもなく、いつか己の道の前に友が立ちふさがった時、友情の厚さそのままに切り伏せて進むことの出来る強さであるように見えた。
きっと、彼らは友情も絆もそのままに、壊すこと無く歪めることなく、友と討ち合える強い「人間」なのだと、このピート救出行でのオリバーたちの必死さ、懸命さ、聡明さ、賢明さを見れば見るほど確信が深まった。オフィーリアとゴッドフレイ、カルロスという上級生たちの友情の成就を見れば、それはダメ押しのようだった。
オリバーは、彼女らの絆の証に何を見たのだろう。何を抱いたのだろう。何を得て、何を喪ったのだろう。今は思い巡らせることしかできない。
願わくば、そこに焦がれてほしくはない。ナナオと切り結んだときのように、そこに惹かれていってほしくはない。でも、美しい末路ではあったのだ。羨望を抱いても仕方ないことなのかもしれない。
オリバーやナナオ、ミシェーラの、前に進めてしまえる強さに対して、ピートやガイ、カティの思う通りに進めない弱さ故のひたむきな強さが、彼らの内包する破滅に対して良き作用を起こせればと願うばかりである。
……いや、どうなんだろう。そんな結末を自分は望んでいるのか? 願っているのか? 心の何処かで、そのようなわかりやすい救いなど望んでいないのかもしれない、と感じる部分がある。
だってオフィーリアの破滅は、孤独ではなかったその破滅は、哀しくも美しかったのだ。どこかで、それに魅入られている。オリバーたちの内包する破滅にもまた……あのナナオとの決闘で垣間見た刹那の破滅に、同じ美しさを垣間見ているのかもしれない。
この物語に魅入られて、闇に呑まれかかっているのは、果たして誰なのか。
ああ、じわりじわりと胸の奥へと仄暗い甘さが広がっていく……。

1巻 2巻感想

七つの魔剣が支配する 2 ★★★★☆  



【七つの魔剣が支配する 2】 宇野 朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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学園内の事件を解決し、一目置かれる存在となったナナオとオリバー。しかしそれは、魔法使いとしての研鑽に励む同級生たちの、矜持と野心に火を点けた。誰が一年生でいちばん強いのか?その問いに結論を出すために、お互いのメダルを奪い合う、バトルロイヤルの開催が告げられる。ナナオやオリバーを倒すべく、次々と名乗りを上げる強者たち、そしてこの機に乗じる存在が動き出し―。一方、その盛り上がりをよそに、ある大きな変化がピートを襲う。彼の体に隠された秘密が明かされ、それは大きな可能性を少年にもたらすのだが―。運命の魔剣を巡る、至高の魔法×剣術バトルファンタジー第2巻!

ヤバイこれヤバイこれ、おもしろいー、本当に面白いぞ!
凄まじく語彙が貧困になってしまったのですが、まずはゴチャゴチャと言葉をひねるよりもシンプルに言ってしまいたかったんです。
うー、なんかすごい密度で読んだ気になっているのですが本の厚さ結構なものだったんだろうか。電書で買ってるとそのへんがわからないんですよね。
さて、先だっての第一巻の感想では楽しい楽しい阿鼻叫喚の地獄絵図と称した学園生活ですが、ほんと殺意高いわー。常時命がけ、というのは比喩ではないのでしょう。油断すると即座に死んでしまいそうだし、油断してなくても不可抗力で死にそうだし、一年時は比較的安全を取り計らってもらっているのだけれど、これ学年が進むとどんどん自己責任になっていくんですよね。というか、学校側で生徒を守ろうという積極的な意志をまったく感じないんですよ。どんな危険地帯に学校が存在していても、学校側に生徒を守ろうという意志と体制があるならある程度の秩序だった安全な道筋というものが出来るものなんだけれど、ここまで生徒を突き放している学校というのはそうそう見たことがない。まあ、学校の上層部が主人公にとっての敵サイド、というのも大きいのだろうけれど。
問題はやはり、彼らが主人公にとっては敵であっても、皆にとっての敵ではないというところなのか。ミシェーラとは登場人物たちにとっては密かに、しかし状況的にはもろに敵対フラグ立ってるもんなあ、これ。ナナオとに関してはなおさらに。
そうなんだよなあ、面白いことにオリバーのカリスマ性とナナオのカリスマ性って並び立っていなくて、それぞれ独自に深く接して言葉を交わした相手を魅了しているのである。なんていうんだろう、オリバーとナナオの二人が一緒にその人を落とすのではなく、あくまで別々に、なんですよね。同じ相手であっても、オリバーとナナオ、二人の言葉が響いているのはその人の中の別の部分のような気がするのです。二人共、その言動は魂そのものを揺さぶるような、その人のそれまでの価値観そのものを覆すような、行き詰まった閉塞を切り開くよう……な鮮烈であり、重厚そのものの衝撃なんですけど、その届いている場所が異なっているような感覚がするんですよねえ。
それは相容れぬものではなく、並び立つことが可能な異なる別位であるのでしょうけれど、だからといって混じり入って一つになるようなものでは決してないような。
なんだろうね、これ。将来、オリバーとナナオが死命を賭すことになったとき、それはただ二人の間のことだけに収まらないのだという示唆なんだろうかこれは。
そうなんですよねえ、この物語ってオリバーとナナオのものであるのだろうけれど、彼ら二人に限定してしまうにはあまりにも他のキャラクターにもスポットがあたり、掘り下げが積極的に進められているんですよね。入学の際に意気投合してグループと相成ったミシェーラやピート、ガイにカティという六人組だけでも凄まじい密度でガンガン掘り下げ、お互いの関係をぐいぐいと縮めて絡めて昇華させていっているのみならず、周りの同じ一年の同学年の面々や上級生たちも取りこぼすことなく一人ひとり丁寧に取り上げて、彩り鮮やかにキャラクターを立たせていってるんですよ。
コーンフォリスとフェイのコンビなんか、あれズルいくらいじゃないですか。あれだけ覚悟決めきって頑張る幼馴染二人とか、感情移入しちゃいますよ。
カティのバイタリティはますます図太さと現実性を増してますし、ピートとシェラもなんかすげえ要素ぶっこんできましたし。一年生同士の本気の勝負は実に見応えありました……ってところで終わっていれば、まだ普通の魔法学園ものっぽかったんでしょうね。
最後の最後に、このキンバリーという学園の闇を、生徒たちが自ら選び自ら踏み入る闇の濃さ、深さ、おぞましさを「さあ、めしあがれ」とばかりに差し出してきましたよこのやろう。
あとがきの煽りがまた効くんですよね、これ。好きに生きて好きに死ね。その意味と味わいを、次巻にて堪能させられそう、ワクワク。

1巻感想

七つの魔剣が支配する ★★★★☆  

七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

【七つの魔剣が支配する】 宇野朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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春―。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。そんな魔法使いの卵たちを迎えるのは、桜の舞う満開街道と魔法生物たちのパレード。が、希望に胸躍らせるのも束の間。キンバリーの孕む数々の脅威が彼らに襲い掛かる。気まぐれに生徒を飲み込む地下迷宮、怪物じみた上級生たち、亜人種の人権を巡る派閥の対立―。そんな魔境を仲間と生き抜く中、オリバーは一人の少女と縁を結ぶ。腰に日本刀を提げたサムライ少女―ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今、始まる。
ひゃあ、ひゃあ、ひゃあ。
またごっついのが来よったでぇ。
ああしかし、痛恨である。アルデラミン完結巻来てるのに、まだ読んでない。最終巻どころか第二部から積んだままなのである。そうこうしているうちに新シリーズが来てしまったじゃないですか。
とはいえ、そっち読み終えるまでこっちを待てというのも酷な話。なので、そろりと新作に手を出してしまったのでした。
ひゃあー。
まずもって地獄である。キンバリー魔法学園。学園モノとなるとそれは青き春の物語であるはずなのだけれど、控えめに言ってここは地獄だ。あとがきにもこうある。「魔法使いのための地獄である」と。無論、望んで地獄に落ちてく度し難い者どものための楽園だ。
卒業までに二割が落命するというとんでもない場所、と入学式では公に宣言されているけれど……いやいやいや、ちょっと待って? これ二割で済むの? 逆に八割は死んでない? 魔法使いは頑丈なので、多少内臓引きずり出されたり体半分になりかけたり、半身ぺちゃんこになっても治療が間に合えばなかなか死なないらしいけれど、それでも死ぬだろう、という難易度が一年生から降り掛かってくる。難易度というよりも理不尽が降り掛かってくる、というべきか。先輩がたが言うところでは四年生くらいまでは大丈夫だよー、とのことだけれど、大丈夫でこれってどうなんだろう。
そもそも……出てくる先輩、四年生時点でほぼまともな人いないんですけれど。在学七年生まであって、上にまだ5・6・7年生がいるはずなのに4年生でこれである。能力的に図抜けているとか化物じみている、という話ではない。
そもそも「人」じゃなくなってるんですけど!?
狂気の沙汰が当たり前、ただ人間やっているだけでは生きていけない、目的を達せない、そも魔法使いとは人外の領域の生物である、というのを地で行くような人外魔境。それがこのキンバリー魔法学園。これで、なんで表向き普通に授業してハリー・ポッターの魔法学園のごとく日々が過ごされていくのか、真剣に理解できない。平穏と狂気が当たり前のように並存しているのである。
まだ入学したばかりの一年生たちはその意味では正しく人間である。魔法使いであってもその在りようは人間であり、一般的な学生であり、普通に笑って泣いて喧嘩して、自分の中の善性と負の感情のバランスに苦しみながら、人間関係と将来への展望に悩み楽しみ、学校の生活を謳歌する少年少女たちである。
であるがゆえに、上級生というその末路なのか進化なのか、未来の姿形をあからさまに目の前に並べられると、これがああなっていく、という明らかな実証を前にして怖気を震うしかない。
そして、その兆候は皆にあるのだ。
この物語のメインキャラクターとなるだろう六人の少年少女たち。アルデラミンでもそうだったけれど、5,6人の少年少女たちを一つのグループとしてまとめて、物語の中核に放り込んでそのグループのキャラたちを以って物語の推進力としていくの、宇野さんの真骨頂になったなあ。六人という数はけっこう多いはずなんだけれど、この一巻で初対面の六人の関係を醸成し凝縮し踏み込ませて、一気に仕上げてしまった手腕には感嘆を否めない。この子などんな娘、どんな少年か、というのを一気に見せるだけではなく、掘り下げて初登場時点から早速成長させるわ、発展させるわ、どん詰まりからすくい上げるわ、なんちゅうか数巻分の密度があったんじゃないか、という進展を見せてるんですよね。それも駆け足じゃなく、地に足をつけた、どころかグイグイと下に中に掘り下げる形で。
それをして、前提である。それをして、スタート地点へとようやく辿り着く、という体なのである。
スタート地点でこれほどの規模と密度の舞台設置をしてしまうというのは、一体全体トータルではどれほどのスケールを臨んでいるのか。想像するだけで身震いしてくる。
そして何より構成である。
今回、幾つものある種のネガティブな感情、魂が堕するに足る停滞や狂騒を、すごく丁寧に解きほぐして、解き放ってるんですよね。善性と真っ当なロジック、そして心意気と素朴な格好の良さ、真心や誠心、人生を賭すに足る友情、そういう心地よい正の在り方によってそのまま放っておけば、むごたらしい末路、或いは人が堕ちるべきではない魔の領域へと転げ落ちてしまっただろう幾つかの心や魂を、体当たりでぶつかって、すくい上げている。或いは、自覚を促し、自力で再生するのを支えている。
とても良い、気持ちの良い、良き方へと転がる回転を促す物語になっているのです。地獄のような学園で、しかしこの善き良き仲間たちが力を合わせて乗り越えていく、そんな若者たちの陽の光に照らされた物語……。
と、見せておいてこれである。
これである。
一転反転瞬転変転。転転転と転がって、見上げてみればそこに飾るは凄まじきまでの「暗黒面」。
凄絶なまでの漆黒暗座の未来絵図。真っ当ならざる奈落の魔剣。
果たしてこれは真っ当な人間からは程遠い。どころか、人であることを踏み外すことが魔法使いの在りようとするならば、正しく狂人たちの物語なのである。7年だろうと教師だろうと、4年生だろうと、魔法使いであるならば、すなわちその誰もが正しい資質を持っている。その資質を活かすものだけが、この地獄で生き残れる。この地獄を堪能できる楽しめる。ここを、楽園と興じれる。
それは、新入生だとて変わらない。入りたてピチピチの一年生だとて、何一つ変わらない。
何一つとて変わらない。
魔法使いである以上、彼らもまた「人でなし」たる資質持ちの同類なのだから。

ひゃあ、ひゃあ、ひゃあ。
全く以て、ゾクゾクするほど愉しい愉しい地獄の始まりだ。
七つの魔剣が支配する、阿鼻叫喚の楽園の始まりだ。


宇野朴人作品感想

黒鋼の魔紋修復士<ヒエラ・グリフィコス> 134   

黒鋼の魔紋修復士13 (ファミ通文庫)

【黒鋼の魔紋修復士<ヒエラ・グリフィコス> 13】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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ディヤウスとしての己の出自を知った上で、その手でメルディエトを葬ったディー。彼の苦悩を包み込むかのように、ヴァレリアはディーと結ばれる。一方その頃、カリンと決着をつけたいと願うダンテと、ついにルオーマに直接攻撃をかける用意を整えたルキウスとオルヴィエトはユールローグを出立する。それぞれの相手を迎え撃つべく、カリンが、シャキーラが、そしてディーとヴァレリアが最後の戦いに臨む!大人気ファンタジーアクション、堂々最終巻!!

結ばれちゃってたんかーー! しまった、あそこから勢いで雪崩れ込んでしまってたのか。若いなあ。いや、ディーといえど身内を手に掛けた衝撃を受け止めるのに、ヴァレリアの愛情を肉の感触として必要としたのは仕方ない事なのか。元々覚悟を決めていたディーだけれど、家族だったルキウスとオルヴィエトに対するのに今回まったく動揺しませんでしたからね。その意味では、ディーにとっての至上をヴァレリアに揺るぎなく固定するのに、これは必要なプロセスだったのかも。
いやしかし、今に至ってなお、ディミタールとヴァレリアがこんなに情熱的なラブロマンスへと揺蕩う関係になるとは信じがたい結果ですよねえ。
第一巻を読んだ時の感想で自分、こんな風に書いてるんですよ。
ここから、二人に恋愛感情が芽生えるとか、まるで想像できんな!! あり得んよな!! あり得んだけに、見たくはなるんですけどね。想像できないだけに、そうなっていく時の過程がまた面白そうなんですよねえ。
まあ現段階ではやっぱり無いよなあ、というレベルの断絶が二人の間には横たわっているのですけれど。いやあ、無いよなあ。

ここから、あれだけどうしようもないくらい険悪だった段階から、本当にロマンスに至ったんだから本当にすごいですよ。それも、安易に一足飛びにではなく、一つ一つ積み重ね、徐々にお互いへの認識を変えながら、ですからね。まさに、険悪な仲から家族も国も敵に回しても構わないというほどの深い愛を抱くまでの過程を、余すことなくじっくり丹念に描き切って見せたのだから、感嘆の吐息をつかざるをえません。
その代わりと言っては何なのですけれど、一番可哀想だったのはやはりルキウスでしたね。彼自身、何も悪くはなかったのに、兄弟同然だったディミとたもとを分かつことになり、覚醒してしまうことで元の人格も殆ど変わってしまって、敵という立場に置かれてしまったわけですしね。
彼の真面目でちょっと苦労性で優しくて、イザーク王子に振り回されながらもテキパキと有能に仕事をこなしていくキャラクターは好きだったので、やはり可哀想だったなあ、と思ってしまうところであります。尤も、彼の性格からしてそんな運命ですら、割りきってしまった後となると粛々と受け入れてそうなのですが。いかんせん、彼には欲というものが良くも悪くも薄かったんだろうなあ。せめて、ティアルの想いに答えて忘れ形見を残してくれただけでも、良かったのか。

こうしてみると、色んな所で家族仲が深まったり、カップルうまく行ったりとわりと全体的にハッピーエンドなんですよね。
ついに全身鎧ガチャピンクから姿を現し、その容姿をイラスト化してくれたベッチーナ。以前、イザーク王子がその中身を覗いて驚いてたのって、そういうことだったの! イザーク王子も一目惚れだったの!? なるほど、それで自分以外顔見せないようにもっかい鎧の中に押し込めてたのね。
まさか、この世界でも有数の美少女だったとは。イラストの方も本当に可愛く描いてくれていて、嬉しい限り。まさに玉の輿で、ちゃんと正式にイザーク王子との婚約にまでこぎつけるに至るとは思わなかった。でも、頑張ってたもんねえ。
一番驚いたのは、カリンの好きな人でしたが。ちゃんと他に好きな人が居る、と言っていたけれど、まさかねえ。そう、好きな人が居るのに、自分に対して因縁を晴らそうとするダンテとちゃんとケリをつけに行ってあげるあたり、あれは優しいというよりもカリン男前って言うべきなんでしょうねえ。
いやしかし、まさかあの人だったとは。言われてみると、カリンの登場時からあれこれと絡んでいるので、そ、そうだったのかー、と思ってしまうんですけれど。でも、恋愛感情があると知ってるのと知らないのとでは、あれらの接触、見ても全然意味の捉え方変わっちゃいますよねえ。
ラムピトーもクロチルドも、順調に思いを遂げれそうですし、最大の問題は先送りとなり子孫にお任せとなっちゃいましたけれど、そこまで面倒は見きれんですし、概ねハッピーエンドだったんじゃないでしょうか。
長いシリーズでしたが、それに見合う濃厚で読み応えのあるストーリーで、大満足。次回作も既に準備済みということで、実に楽しみです。

シリーズ感想

黒鋼の魔紋修復士 12 4   

黒鋼の魔紋修復士12 (ファミ通文庫)

【黒鋼の魔紋修復士 12】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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教えてやろう。“ディヤウス”として生まれた意味を。

オルヴィエトの命により、各国の拠点破壊と神巫襲撃を続けるユールローグ一派。
それに合わせるかのように、ディーはかねてより自分を苦しめる悪夢の真実に気づき始める。
予断を許さない状況の中、ディー、ヴァレリアを含めたアーマッド首脳陣を招集した国王とシャキーラは、
ついに神聖同盟とレドゥントラの、本当の歴史について語り出す。
一方、虚無に囚われ圧倒的な力で殺戮を続けるルキウスにも変化が訪れ――。
真実、歴史、そして宿命が翻弄する第12巻!


なるほど、なるほど、そういう事だったのか。今までずっと謎だったオルヴィエトたちの目的とその動機が、アーマッドを始めとする国々が継承していた秘密や神巫の成り立ちとともに明らかになったことで、これまで意図がわからなかったり、意味が捉えられなかった出来事や言動がほぼ明快になったんじゃないだろうか、これ。ルキウスがどうしてあんな風になってしまったのか。なぜ、ディーが母親から殺されそうになったのか、についても明確な答えが。これは、どちらが悪とかそう単純な話ではないんだけれど、過去においては人間たちが、今においてはオルヴィエトたちが、様々なものを踏みにじってるんですよね。これで、ディヤウスとやらがまったく情を持たない存在だったとしたらもうちょっと割り切れるんだろうけれど、人間の持つ感情や価値観とは異なる理を持って動くのだといいながら、オルヴィエトにしてもメドウにしてもディーに対してちゃんと情らしいものを持っているだけに、決別せざるを得ない状況にやるせなさを感じてしまう。シャキーラとオルヴィエトにしても、本当にその間になんの友情もないままだったのか。その突き放せない、割り切れない繋がりこそが、この先のルキウスの対決に憂鬱さを抱かせる。ルキウス当人は元々すごく良いやつだったし、ディーとの友情や親愛は本物だったのに、その身の上やディヤウスに覚醒したことで立ち位置や価値観が変わってしまったが故に敵対することになってしまったけれど、彼個人には悪いところは何もなかったもんなあ。それでも、まだ本当に別人になってしまったのなら、人格から変わってしまったのなら割り切れるかもしれないけれど、ディヤウスになったからといって人としてのすべてが失われてしまうのかというと、オルヴィエトたちが緩やかながらそうと言い切れない態度をとっていることからしても、決して絆は全部切れてしまったわけではないのだろう。それが辛い。もう二人共、殺しあうことを覚悟し確信しているからこそ、尚更に。
もう、ディーは選んじゃってるしね。
人として、すべてを賭して守るべき、手放せないものをもう見出してしまっている。ヴァレリアとの関係、もっとラブラブになるかと思ってたんだけれど、嬉野さんのラブストーリーって意外とこう……愛が重たいのよね。【戦争妖精】の常葉さんとの恋愛や先生と叔父さんのそれもそうだったけれど、恋だの愛だのに浮かれている余裕がなくて、切実であり切羽詰まっていてそれ故に必死なんですよね。だからこそ、力強いとも言えるのですけれど。
素朴な正義感の持ち主で、国の事情や理不尽さによる不誠実さ、間違ったことに対して嫌悪を抱くような濁を飲むのが苦手であるヴァレリアが、ディーが傷つくと感じたら自ら手を血で汚すことを厭わないような、あの覚悟ですらない必死な想い。ヘヴィーな愛ですよ。
ヴァレリアって、もっと頭軽くて脳天気でふわふわしていたのをディーにメタクソに叱られ嫌味言われて怒られて、涙目でグギギギと悔しがっているのが当たり前だった娘さんだったのに。恋に恋するような女の子だったのに。
いざ本当に愛する人が出来てしまったら、ここまで女っぷりをあげてくるとは。もう、少女じゃないですね。神巫としての自覚や成長も著しかったけれど、ソレ以上に女として幾つも階段をかけあがってしまった。それが眩しくて、少し悲しい。
まだまだ二人して傷つくことが多く待ってイそうなんだけれど、なんとか二人には幸せになってもらいたい。切実にそう思う。
カップルというと、ベッチーナやクロチルドなど、わりとうまくいきそうな組み合わせがいるのに対して、カリンあたりはどうなんだろう。あとがきで、彼女には好きな人が居る、と明言されているんだけれど……。まーちゃん枠がこの作品にも存在するのにはびっくりしましたけれど。シリルとのあれは、読んでて変な声が出てしまった。クロチルドといい、けっこうイイ趣味してる人たちがいるものです。

シリーズ感想

黒鋼の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 11 4   

黒鋼の魔紋修復士11 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 11】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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カリン、シャキーラを一蹴しアーマッドを去ったオルヴィエトとルキウス。重鎮であったリヒテルナッハ家の罪を問う声は大きく、連座としてディーも獄中の身となってしまう。誰よりも信頼していたふたりを失い捨て鉢になるディーだが、彼の下を訪れたカリンから、同盟各国で起こる破壊活動にルキウスが加担していること、さらに自分への恩赦のため、ヴァレリアがイサークと婚約するという噂を知らされる。気持ちの揺らぐディーは決死の行動に出るが…!
えええっ!! ええんかい! 別にかまへんかったんかいっ! 衝撃の事実すぎて、変な笑いが。ちょ、この設定ってわりと重要というか、揺るぎないものだと思い込んでいただけに、シャキーラさんのあまりといえばあまりのぶっちゃけに、ひっくり返ってしもうたわ!
これ、絶対ディーとヴァレリアに教えたらいかんですわ。今のこの二人にこんな事実を教えてしまったら、歯止めがなくなるぞ。この男ならやる。今の此奴なら、躊躇いなくやる!!
しかしもう、嬉野さんの書く主人公というのは、前作の【彼女は戦争妖精】の伊織くんといい、マジ凄いわ。ライトノベルの主人公で、これほど女の扱いというものに対して容赦ないやつ、他に居ないよ。始まった時はさ、ディーとヴァレリアが、ラブロマンスに至るなんて有り得ねえ! と、喚いてしまうくらい二人の仲って最悪だったんですけれど、だからこそ嬉野さんならこの二人の恋愛、書くだろうなあと感じたんですよね。その予想というか直感を、思わず「やっぱり無いんじゃね?」と否定してしまいたくなるほど、二人の断絶は凄まじかったんですけどね。あれだけ容赦なく、ヒロインこき下ろす主人公とかw
でもでも、このあり得ないからこそやってくれたら面白くなるに違いない、と感じたのは間違いじゃありませんでした。最初の断絶が大きければ大きいほど、相手を認め、受け入れ、それがロマンスへと発展した時の激烈さ、濃厚さたるや、生半可なもんじゃありませんぜ?
だいたいあのディミタールが、普通にデレるとお思いか。あの男が、恋する男の子なんて可愛い顔見せるもんですか。デレたらデレたで、凄まじい獰猛さであるこの男。デレ方が人喰い狼みたいな獰猛さって、どういう主人公だよ。ヴァレリアが自分を助けるためにイサークと婚約するという噂を聞いた後のディーのとった行動を目の当たりにした時は、もう呆気にとられてしまいましたがな。あの冷徹と言っていいくらい冷静で、クレバーだった男があれですよ、これですよ。完全に理性焼かれてるし。頭おかしくなってるし。メーター振り切るにしても、ぶっちぎりすぎである。でも、こういう獰猛さはやっぱりカッコイイのよ。若いなあ、いいなあ。あれでディミタール、思いっきりテンパってるんですよね。テンパったら襲い掛かってくるって、獣か!!

しかし、シャキーラ様も思い切った手をとったもんだ。前回いい所なかったのを大いに挽回してくれた。さすがにここで国内でグダグダやってたら、致命的な事になりそうでしたもんね。イサーク王子の小細工といい、国王陛下の一刀両断の喝破といい、色々と煮詰まり行き詰まりかけてた雰囲気に、風穴があけられたような気分でしたよ。淀んでいた空気が吹き払われましたなあ。
同時に、これ王子とベッチーナのフラグが確定したような。イサーク王子とヴァレリアの婚約話、こうしてみるといろんな方向に影響力及ぼしてたのね。
でも、こうなるとルキウスの方がちょっとかわいそうになってきた。あんな状態になってるとはなあ。危なっかしいどころじゃないですよ。

シリーズ感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 104   

黒鋼の魔紋修復士10 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 10】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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可哀相なディミタール。あの子には、過酷な運命が待っているでしょう――。

ダンテ逃亡の件でディルマに向かったカリンたち。
一方シャキーラの元を訪れたディーは、ヴァレリアではなく自分の紋章官にならないかと誘われる。
自身に下される危険な任務、そして、いまだ御しきれない左腕の暴走がヴァレリアを巻き込むことを懸念し思い悩むディーだが、
そんな折、ルオーマの中枢である魔法院から火の手が上がる。
その紅蓮の炎は、アーマッドに突如の訣別と大いなる混迷をもたらす戦いの合図だった――。
逃れられない宿命、第10巻登場!
ええええ!? これは、激震も激震。巻数も二桁に至ったところで、思いもよらぬ裏切りがディミタールを待っていたわけだけれど、こればっかりは幾らなんでも予想がつかなさすぎる。
今にして思えば、と振り返ってみることで伏線ともいうべき動向は幾つもあったんだろうけれど、そのどれもが後になって照らしあわせてみたらそうだった、というような事ばかりで、当時としては不審に思うこともなかった出来事や傾向に過ぎなかったんですよね。
そもそも、伏線だって事にすら気づいていなかった。最大の違和であったろう、オリヴィエがかつて神巫の候補者をいきなり降りて、結婚してしまったというのも彼女なりの事情があったんだろう、としか作中の人物の殆ども読者である自分も深く考えていなかったわけだし。その彼女なりの事情が、まさかこんな所でルキウスやディミを巻き込んで動き始めるなんて、想像もしていなかった。イサーク王子が、魔法院から徐々に権限を剥がそうとしていたのも、決して魔法院に何か怪しい動きがあったり、逆に魔法院が謀略を仕掛けられているというわけではなく、単なるイサーク王子の政治的バランス感覚の賜物であって、ルキウスやオリヴィエも特に反発している風でもなかったので、それらの件についても一切特別視してなかったんだよなあ。
そもそも、オリヴィエからして怪しい動きは微塵も見えなかったんだし。それどころか、ディミの家族として彼が捧げる献身に値する親愛を彼に寄せていたものだから、彼女に対して何らかの不審感を抱く、なんてことは本当に事ここに至るまでなかったんですよね。まあ、彼女のディミへの親愛は決して嘘ではなさそうなので、騙していた訳ではないのだけれど。
実際問題として、もしディミがヴァレリアの紋章官にならず、彼女と一緒に幾つもの事件を解決していくという「時間」がなかったとしたら、家族以外に何のしがらみもこだわりも持たない彼は、そのままオリヴィエたちと行動を共にすることを迷わなかったんだろうし。
すべては、ディミタールとヴァレリアが出会ってしまったことが運命だったのか。
いやしかし、前回でヴァレリアとディミ、二人共にお互いに対して火が付いてしまっていたのかもしれないけれど、今回の一件は否応なくお互いの気持を決定的なものにしてしまった。消えない炎になってしまった。二人共に平静で居られない激震の状況の中で、さらにヴァレリアの生命が掛かった選択の中で、ディミは何を選び、何を捨てるかの選択を強いられ、そして選んだわけだ。誰が一番大切なのかを、誤魔化しようのない決断として選んでしまったのだ。もう、これは燃え上がるしかない。
元々、内向的とは正反対の、苛烈なほど性格をした男である。正直、決断を下してしまった後の高まりすぎたテンションのせいだろうけれど、それでもあの生存本能を奮い立たせた結果の、強烈なまでの「この女は俺のものだ」という独占欲には滾らされた。この作者の主人公は、前作もそうだったけれど、この上なく冷静で強かで理性的にも関わらず、いざとなると女性に対して凄まじいまでに肉食系なのが、何とも頼もしい。

しかし、事は起こってしまったとはいえ、何が起こっているのか、オリヴィエが何を目的にしているのか、なぜあのルキウスが苦悩しながらも諾々と母に従ったのか。まだ何も明らかにされていないので、果たして何が起ころうとしているのかもわからないんですよね。尤も、世界を揺るがすであろう大事件の発生とは裏腹に、潔いくらいに主人公とヒロインはお互いを請い求める展開になりそうですけれど。濃厚と言ってイイ情熱的なラブストーリーですよ、これ。
1巻では絶対に有り得なさそうだった展開へと、見事に突入してきたなあ……。素晴らしい。

シリーズ感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 83   

黒鋼の魔紋修復士8 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 8】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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あの女を馬鹿にしていいのはおれだけだ。
圧倒的な力を見せたギャラリナを逃がしたとはいえ、アーマッド一行は見事ロマリックの叛乱を鎮圧した。しかし妙に冷たいディーの態度の変化に、ヴァレリアはもやもやした思いを募らせる。そんな折、ビトーの神巫ソルグンナが亡命を望みアーマッドに逃げ込んでくる。
国家間の信頼維持のためソルグンナを返還したい首脳陣の意向に反し、臆病な彼女を助けたいと考えるヴァレリアだが、その気持ちがディーと決定的な溝を生んでしまい……!
謀略疾る第8巻!

イサーク王子、黒いなあ。確かにこの人、政治的に有効なら手段は選ばないだけの冷酷さは垣間見せていたけれど、いくら有効とはいえあそこまでの事をやらせるほどとは思わなかった。ただ、効果を考えると凄まじいんですよね。この一手で政治的劣勢が一気に覆ったどころか、その相手の政治的な立場すら足元から崩してしまったわけですから。正直、今回の対局者は誰が見てもやり手で隙の見えない辣腕の政治家であり謀略家だったと思うのですけれど、乱暴な手とはいえイサーク王子はこれを完全に上回ったと言えますね。
やはりプレイヤーとしては、イサーク王子という人は逸材ですわ。ただ、この人が本当に黒いな、と思ったのはこの一手をわざわざディミタールにやらせた所でしょう。彼に汚れ仕事を押し付けたことで、国内の政局に対しても色々と杭を打つ形になってるもんなあ。
ディミタールとしては、ヴァレリアをこうした権力の闇からは遠ざけたいところなんだろうけれど、なんにも知らないお馬鹿だと、いつ知らずに地雷を踏んでしまうかわからないし、しかし段々と現実の汚さを知るようになると、無邪気に憧れていた部分にも黒いものが蔓延っている事が理解できるようになってしまうわけで、気づく余地が増えていってしまうという事でもある。そして、このヴァレリアという娘は、そうした闇に対して自分の信じた正義を主張しちゃう娘でもあるんですね。お馬鹿のままでも賢くなっても、結局危なっかしいことには変わりないという二律背反。この娘の場合は、賢くなることは正義に妥協を強いる事とは異なっちゃってるからなあ。それに、ヴァレリアの正義って、大仰なものじゃなくてほんとに素朴で人間としての基本的な部分に根ざすものなんですよね。だからこそ、政治的判断という現実が往々にしてこうした正義を踏みにじるものだと理解し実践している人種から、ヴァレリアは……だからこそ、好まれている部分があるんですよね。何も知らず知ろうとせず、ただ善意を振りかざす者は蔑まれるけれど、ヴァレリアみたいにちゃんと勉強して現実の冷たさを思い知った上で、しかし芯を曲げない人というのは結構好意的に見られるんですよね。もちろん、苦言を呈し、皮肉で蹴飛ばし、現実を思い知らせて踏みにじったりするんだけれど、この作品でも彼女に対して本当に冷ややかに接する人って殆ど居ないんですよね。
とはいえ、まだまだヴァレリアは世間知らずで政治力学を本当の意味で理解しているとは言いがたい小娘で、だからこそ今回は今までで一番致命的な事をやらかしてしまうわけです。今まではわからないからこそ身の程を弁えて余計なことに首はツッコんでも、ディミくんにお伺いは立ててましたしね。
うーん、だとすると今回の暴走は変に距離を置こうとしたディミくんにも責任があるとも言えるんですよね。果たしていつも通りだったら、ヴァレリアもディミくんに事前に一言相談してたような気もするし。
……いったいこれ、いつの間にこんなラブロマンスになったんだ?
よほど前回のロマリックの内乱での絶体絶命の危機が障ったんだろうか。ヴァレリアのディミタールへの感情は、もっと迷いが絡んでたと思うんだけれど、今回の様子見てたら自覚は無いにしろ、少なくとも無自覚の上では完全に定まっちゃってるじゃないか。一方で、ディミタールの方も彼は彼でかなり変なことになってるし。
もし、ヴァレリアからの一方的な感情だったらば、ディーもあそこまで露骨に距離置こうとはしなかったと思うんですよね。いくらなんでもあからさまな上に露骨すぎて彼にしては下手を打ちすぎてますもん。前回、ヴァレリアが傷つけられてブチ切れていたのは、やっぱりそういう事だったのか。今回の台詞なんか見てたら、それ以上に、こう、独占欲みたいなもんが根ざしてるもんなあ。
まさか、本当にここまでロマンスになってくるとはなあ。1巻の時は、あまりの仲の悪さに果たしてこれ、恋愛感情芽生えるんだろうか、と本気で首をひねったものですけれど……。

シリーズ感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 73   

黒鋼の魔紋修復士7 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 7】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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ボクは知りたい。“神"と“魔"、そして“魔紋"のはじまりを。

昏睡状態のヴァレリアを逃がすことには成功したものの、敵の手に落ちてしまったディー。
彼を連れ出したギャラリナは、それぞれの魔紋、そして神話について、不可思議な議論を求めてくる。
一方、街道が封鎖されたことにより混乱に気づいたアーマッド首脳陣は、
ガリード卿率いる軍の出陣に加え、ロマリックの魔法士に対抗するためカリンの同道を決定する。
“辺境伯"の野心が暴かれた敵地で、ヴァレリアとディーを待つ命運とは――!?
絶体絶命の第7巻!
ギャラリナさん、情に厚いのか冷酷なのか判断しづらいなあ。個人的にはあの弟をあの段階まで見捨てなかったのは十分情に厚いと思うところなんですけど。はっきり言ってアレ、使うにしてもメリットよりもあれが仕出かすトラブルとか損害を考えるとデメリットの方がどう考えても多いんですよね。姉弟だからって、決して姉を大事にしているとか愛しているという素振りもなく、本心では利用価値のある相手くらいにしか思ってないことも明白だし。それを、あそこまで見過ごしてあげたうえに、何度も忠告を繰り返してなお、それを徹底的に無視されて好き勝手やられたんだから、そりゃ切り捨てて当然です。切り捨てられて当然です。もっと早く切り捨てておけよ、とイライラしてくるくらいに、あのファティフという輩は最悪でした。もう此処まで存在がムカつく敵も珍しいですよ。こういう奴こそ、ディミタールの口撃でメッタメタに切り刻んでくれないと。結構ズタボロに言い返せずに顔を真赤にするほどネチネチ切って捨ててくれてましたけれど、それでも物足りないと思ってしまうくらいですから、ホントに最悪でしたよこのファティフは。
まあそれでも、思い上がったこの自信過剰野郎を真っ向から叩き潰してくれたディミタールはホント頼もしいったらありゃしません。捕まってどうなるかと思いましたけれど、彼のクレバーさは虜囚の身でも全く陰りを見せず。捕えられた相手がファティフなだけに何をされるかわからず、相当にハラハラさせられましたけれど。まあ一番生きた心地がしなかったのは、ファティフのおぞましさを身をもって体験したヴァレリアでしたのでしょうけれど。離れ離れになって初めて、というわけでもないんだろうけれど、こうしたディミタールが危ない、という形で別れ別れになったケースは初めてだったはずで、そうなって見て改めて今のディーとヴァレリアの関係みたいなものが透けて見えてきた気がします。ってか、この二人の関係っていつの間にか当初から随分変わったよなあ。それだけヴァレリアの成長というか、心構えが見違えてきたんだろうけれど、ヴァレリアを傷つけたファティフに対してディーがあれだけ憤怒してみせたのは、決して仕事上の都合だけではないはず。いや、怒ってた、あれは怒ってたから。一方のヴァレリアも、捕まったディーの心配の仕方を見るとねえ……あながち、ピンクの妄想も下衆の勘ぐりじゃないんじゃないかね。
正直言って、ヴァレリアとディーは性格的に合わないし、ぶっちゃけ相性悪いと思います。喧嘩や言い争いは絶えないでしょうし、喧嘩するほど仲がいい、などと言うにはディーの口の悪さはアレすぎますし。この二人が甘い雰囲気になるなんて、今もって想像だに出来ないんだけれど、嬉野さんって意外とビターテイストだったり、渋目の恋愛を書いちゃう人なので、ディーとヴァレリアの行く末については色々と期待しちゃうなあ。
うん、改めて見てもヴァレリアって面白い娘ですよね。聖人君子でも何でもない短気な娘なのに、普通の人でもまともに付き合えないようなディーに対して、逃げず避けずずるもせず、真っ向から言われたことに対してなんぼのもんじゃ、と向き合うわけですから。あのカリンが、マジでヴァレリア不慮の方に顔色をなさしめていたことからもわかるように、意外と人望があるというか、他人を寄せ付けないタイプの人間に対して案外受け入れられてるんですよね。カリンさま、本気でヴァレリアのこと友達だと思ってたんだ。結構今回、友達のピンチに果断に動きまくってた気がします、カリンさま。

さて、状況が動いているようでハッキリと今まで先が見えてきていなかったこの作品ですけれど、ギャラリナが残した示唆は、この作品の最終的な目標というか、倒すべき敵の姿がようやく見えてきた気もしますし、果たして相手はそんな超常の相手なのか。それより、国と国との質の悪い駆け引きの合間に、ヴァレリアたちが突っ込まされ続ける展開が続くんじゃないか、とも思えますし……いや、やっぱり何も見えてないじゃんw

嬉野秋彦作品感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 63   

黒鋼の魔紋修復士6 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 6】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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“紋章魔法"VS“邪術"! 緊迫の第6巻登場!

アーマッド南部の大都市、ロマリックを訪問することになったヴァレリア。“神巫"の行幸という形式ゆえに、同行するのはごく少数の護衛と侍女に限られることを懸念したディーは、ルキウスに頼みティアルを一行に加える。アーマッドに併合されたという歴史のため、独立の気運が強いロマリック住民の視察、慰撫を目的として現地を訪れた一行だが、ロマリックと裏で通じるビゲロウの者たちの罠が、彼らを陥れようと待ち構えていた……!
あれ? これはディミタールは自分の判断ミスと思ってるようだけれど、あそこでヴァレリアが付いてくると言ってきたのを跳ね除けて宿に置いて行ってたら、これ最悪の事態になってたんじゃないかしら? ヴァレリア、完全に殺されてたでしょう。
結果としてディミタールがヴァレリアの責任感に絆されたのが正解だったわけですけれど、これは知らず知らずとはいえ相当に綱渡りのところを歩いていたんだなあ。こればっかりは、ロマリックとビゲロウがこれほど密接にコンタクトを取っていたと把握していなかったアーマッドの情報網にも問題があるのだけれど、ビゲロウの密偵の実行部隊の中に論理性の破綻した殺人鬼が混ざっていて、誰もコントロール出来ていなかったところまで予想していろ、というのはさすがに酷か。ただ、ディミタールが純粋な護衛官として専念出来ていたらもうちょっと何とかなったのかもしれないけれど、ディミって使い勝手が良いせいか、何かと諜報官紛いのことも任務として請け負っちゃってるので結構出先で二重三重の任務の重複が起こってるんですよね。彼、優秀ですから両方を並行してこなしてはいるんだけれど、思い返してみるとヴァレリアの側を離れるケースはわりとあったんですよね。ヴァレリアが度々自分から首を突っ込もうとしなければ、その頻度はもっと増していたかもしれない。
図らずもそのお陰でヴァレリアも政治や統治のウラ舞台について見識を深める事にもなり、ただのお飾りの神巫に留まらない成長を遂げており、ディミタールも当初と比べてヴァレリアについてはだいぶ認めてきている節もあるので、悪いことではなかったのかもしれないけれど、でも同じ人物にあれもこれもと仕事をやらせようというからには、どこぞで齟齬が出てくるもんなんだよなあ。こればっかりはその人が優秀であるとか有能であるというのは関係なく、その人が人数として一人である、というところが問題なのでどうしようもないんだが。
それにしても、あのオカマは久々に癇に障るというか、こいつは盛大にやっつけてくれないとストレスが溜まって仕方ない、という悪人だったなあ。いや、実際これほど任務実行にも支障が出る上に、外交関係や国家戦略まで台無しにしかねない無軌道で思慮に欠けた振る舞いをする人間を、好き放題やらせてしまっているという時点でこの姉のギャラリナもどうかと思う。この愚弟に愛情なんて感じていないようだし、一族も持て余しているみたいだから、現場指揮官の判断としてちゃんと処断しないのは、果たして甘さなのか何らかの思惑があるのか。正直、任務の邪魔ばかりされていい加減キレそうなもんなんだけどなあ。

そして、まさかの絶体絶命のピンチ。今回の行幸についてはさして危険もなし、と油断していたのでこのハードな展開は予想外だった。ディミがああなってしまった上に、ヴァレリアも人事不省となるとベッチーナ頼りになるんだけれど、ガチャピンクじゃとてもじゃないが頼りにならねえ!! あとはティアルさんがどこまで働けるか、というところだけれど、本職メイドのこの人じゃ事態を全面的に打開するのは厳しそうですし……ここはヴァレリアの復活と大活躍を期待するしか無いのか。というか、ティミ不在のここでしょう、ヴァレリアの見せ場は。頑張れ、女の子!

シリーズ感想

黒鋼の魔紋修復士 5 3   

黒鋼の魔紋修復士5 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 5】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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忌まわしき記憶にふりそそぐ、“永世神巫"の光――。大人気シリーズ第5巻!

アーマッドが誇る“筆頭神巫"シャキーラの里帰りのため、護衛に就く封印騎士団。その中には、紋章官になる前のディーの姿が――【永世神巫と落第騎士】
国王より、静養先から帰還する王妃アルムデーナの護衛を命じられたディーとヴァレリア。一方その裏では、ルキウス率いる“青の右手"にも密命が下され――【蜜月の終わり、雨の日に】
甲冑娘ベッチーナが抱える切ない事情――【花々の宴、夏の日に】
本編を結ぶ、重要な三編のエピソードで贈るシリーズ第5巻!

【永世神巫と落第騎士】
ディミタールがどうして封印騎士団を退団するはめになったかという大人の事情のお話。案の定頭が悪くて度し難いほど愚かな貴族の坊ちゃんが絡んでいたか。意外だったのは、ディミタールがもう少し冷酷な立ち振舞に徹するかと思っていたところをかなり甘い対処に甘んじていたところ。あっさり見捨てると思ったんだがなあ。いい意味で彼はドライだと思っていたので、生かしておいても害しかなさそうな連中は消極的に始末していてもおかしくないと考えたんだが。もっとも、それが彼の温情かどうかはわからない。むしろ、恩ある叔母や従兄弟の為に自重して危ない橋を渡らなかった、と見たいところだけれど。
しかし、こういうくだらない連中が蔓延ってたんじゃあ、イサーク王子があれこれ封印騎士団の改革に乗り出そうというのもよく分かる。役に立たないどころか害悪にしかならないものなあ。たとえ、貴族からの集金機関として割り切るにしても限度というものがあろう。その点、集金機能を保ったまま実践能力をもたせようというイサーク王子の目論見は非常に食えないなあ、と感心させられる。

【蜜月の終わり、雨の日に】
王妃を囮に、進行している陰謀を暴き出そうという国王陛下の謀の尖兵として働くことになったディミタールとヴァレリア。何だかんだと華やかな仕事よりも裏方仕事が多いヴァレリアである。それも、ディミタールという使いやすく潰しの効く駒があるからこそなんだろうけれど、きっちり役割を果たせるようになっているあたり、お飾り同然だった当初と比べてかなり使えるようになってきたな、巫女様。しかし、生々しい現実をきっちり把握できるようになってきたとはいえ、その素朴な正義感はいささかも陰っていないのは、ディミタールが口うるさく現実を教えながらも、変に穢れてしまわないように気を使っているからとも言える。何だかんだととても大事にされていることを、ヴァレリアもあれでちゃんとわかってるんですよね。わかっているからこそ、悔しいんだろうけれど。だからこそ、彼に認められたいんだろうな。

【花々の宴、夏の日に】
なんでよりにもよってガチャとイサーク王子にフラグ立ってるんだ!?(笑
いやいや、そのつながりはあまりにも予想外だった。だって、ガチャだぜ? 未だに誰も中身を見たことのないという鎧の小娘に、なんでイサーク王子とのフラグが立つと思うか。まあ、実際はあまりにも身分違いすぎてどうやったってくっつきようもなく、ガチャも自分の恋が夢物語だとわきまえているし、イサーク王子に至っては別にガチャをそういう目で見てすらいない。ただ、イサークが素の顔、油断したというか余裕のない顔を見せたのは本編含めてもガチャが絡んだこの話が初めてなだけに、恋愛感情は抜きにしても結構本気でガチャとの人間関係は大事に思っているフシが在るのがまた意外。何気に王妃さまがガチャを気に入っているだけに、本当にただの夢物語で終わるかどうかは、まだまだ予断を許さないかもしれない。

嬉野秋彦作品感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 4 3   

黒鋼の魔紋修復士4 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 4】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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その牙は幼く、汚れなく。彼女こそ--“いつわりの神巫"

隠されていたディーの紋章魔法により辛くも危機を脱したヴァレリアたち一行は、ユールローグの手の者を追いハイデロータの都・オーリヤックへ向かう。一方、国王の命を受けたイサークも今回の内紛に乗り出していくことに。ハイデロータとの関係を優位に進めるため、イサークとともに仲裁役としてユールローグへ向かったヴァレリアたち一行だが、そこにはディ-と死闘を繰り広げたあの少女の姿が……! “神巫"の誇りを懸けた戦いが、いま幕を開ける!
えええ!? クロチルドってそうだったの!? 無能な王子に振り回されて、要らない苦労を強いてられている可哀想な子、と思っていたら、どうも自ら好んで苦労を買っていた模様。なんだ、ダメ男属性だったのか。なまじ出来る女だと、出来ない男の子を可愛く思ってしまうものなのか。
いやでも、シジュベールくん、イサーク王子と比べると頭の回転も遅いしプライドばかり高くて空回りしているし鈍くさいし、といいところ無しの無能王子に見えるんだけれど、実はヴァレリアたちが思っているほど無能じゃないんじゃないかな。少なくとも、クロチルドのサポートをキチンと受け入れて機能させているというだけでも完全な無能とは言いがたい。本当の無能は周りがどう頑張っても全部台無しにしてしまいますからね。その点、シジュベールは足りない所だらけだけれど、その足りない部分をクロチルドによって補えているし、目に見える形でクロチルドの足を引っ張るようなマネはしていない。結構頑張り屋な側面も見受けられるし、その頑張りが無能な働き者という無残な方向に向かっていないだけでも評価に値する。ハイデロータの王族貴族のレベルが総体的に低いことから見ても、シジュベールはそこそこイケてる方なんじゃないかな。そう考えると、クロチルドの男を見る目も趣味もそれほど悪くはない気がする。
だいたい、結果としてみると今回イサーク王子の方がやらかしちゃってるんですよね。彼がわざわざ独断でハイデロータとユールローグの内紛に首をツッコんだ理由を鑑みれば、むしろ彼がでしゃばったお陰でやぶ蛇になってしまってるんですよ。その口八丁手八丁に遠大な戦略眼や捻くれた謀才によってハイデロータとユールローグを引っ掻き回し、いいように振り回していいとこ取りをしたように見えるイサーク王子だけれど、最後に油揚げを掻っ攫ったのはとんだ間抜けを晒し続けていたシジュベールだった、というのが何とも面白い。
クロチルドの助言があったのかもしれないけれど、意外と抜け目なかったじゃないですか、シジュベール。正直、かなり見直した。

とまあ、国同士の影に日向にの激しい駆け引きが続く中、巫女であるヴァレリアやカリンたちは否応なくその渦中に取り込まれていく。巫女それ自体が政治的な象徴を担っている以上、戦力として以上に象徴として相応しい行動を取らなければならない、というものなんだけれど、大変なお仕事だなあと感心してしまう。その政治的な象徴に徹してもいいはずの巫女さんを、積極的に活用しまくるイサーク王子も王様もまあ強かな人たちである。まあ他の国の巫女たちも、見る限りは使えるだけ使い倒されているので、有能なものはそれだけ酷使される運命なのだろう。逆に言うと、これだけ良いように使い倒されているということは、ヴァレリアもそれだけ使える人材と認められているとも言えるんですよね。術だけはよく使えるけれど、実践力も見識も何もないだけの巫女さんだったらば、それこそお飾りにしか出来ない、というかお飾りにして安置しておかないと下手に失われてしまったら困ったことになりますからね。幾ら補佐につくディミタールが有能とはいえ、限界もあるでしょうから。
そのディミタールの嫌味と皮肉と罵倒と嘲りが入り混じったお小言も、ここ最近はめっきりなくなってしまいました。いくらディミタールの口が悪くても、無理やり粗をほじくりだして罵ってくるような人間ではないので、ちゃんとしてさえいれば何も言われないのです。実際、傍から見ててもヴァレリアは先立っての世間知らずなお嬢様が嘘みたいに、キチンとしだしていますし。まあ冒頭からこの子、向上心はたっぷりありましたし、ディーの悪口にもめげずナニクソと努力を欠かさない子でありましたから、この成長は当然といえば当然なのでしょうけれど、それでも大したものです。反発が少なくなりお互いを認める機会が増えてくるに連れて、ヴァレリアとディーの間にも段々ともにょもにょっとした空気が流れるようになってきましたし、これは進展も期待できる状況になってきたのかしら?
きな臭い国際情勢と合わせて、二人の関係にも要注目。

嬉野秋彦作品感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 33   

黒鋼の魔紋修復士3 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 3】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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クロチルド――ハイデロータに咲く、誇り高き“鋼鉄の白薔薇"

セリバ・ビラノバの件のねぎらいのため、国王ジェフレン一一世より王宮に招かれたヴァレリアとカリン。
その最中、同盟国ハイデロータから、新たに神巫として着任した彼女たちを正式に披露するよう催促の書状が届けられる。
アーマッドを目の敵に軍拡を推し進める相手の目論見を察しながらも、あえて二人を差し向けることにする国王とオルヴィエト。
イサーク率いる“封印騎士団"も共にした、この外遊の背後に潜む陰謀とは!?
混迷へ向かうシリーズ第3巻!
ヴァレリアとカリンのあの衣装については、やや露出過多な薄手の衣装、で全然納得できるんだけれど、このハイデロータの神巫用の服は完全に下着に軍服の上着だけ、にしか見えないっすねえ。しかもハイレグ仕様w
さて、そんなハイデロータですが、アーマッドとは同盟国にも関わらず、虎視眈々と同盟内での第一勢力を狙っている良からぬ野心に身をひたしている不穏な国であると同時に、内政の方も軍事優先で治安も悪化しているという、なかなか困ったちゃんの国なのでした。これが歴とした仮想敵国ならば堂々と警戒すればいいものの、なまじ同盟国であるだけに相応に気を遣わなければならないのがまた厄介な話なのである。時に、味方であるほうが面倒で鬱陶しくて邪魔な存在って、ありますよねえ、うんうん。まあウンザリするような厄介な味方に振り回される、ほどには我がアーマッドも素直でも純朴でもなく、むしろ一癖も二癖もある食わせ者が国王やイサーク王子、国の上層部に揃っているのは頼もしい限り。逆に、ハイデロータと来たら下は優秀でも頭にあたる人材は清々しいほどの無能揃いのようで、そういう無能集団の中では逆に優秀な人材というのは余計な苦労を背負ってしまうものらしい。表紙絵にもなっているハイデロータの神巫であり「疾風騎士団」の副団長であるクロチルドは、文句なしに優秀な逸材のようなのだけれど……まあ、無能王子に振り回され足を引っ張られ、とこれはこれで見ていてかわいそうになる苦労っぷりである。これでディミタールやイサーク王子みたいに「イイ性格」をしていたら、口八丁手八丁でハイデロータのバカ王子を操って自分のやりやすいようイイように出来るんだろうけれど、どうもこの子は堅物の生真面目ちゃんのようで……要らん苦労を背負っているご様子。もうちょっと強かさを身につければと思うところだけれど。もう一人のハイデロータの神巫の子も、ヴァレリアの方がまだだいぶマシだと思えるくらい、神巫としての自覚の足りない子のようで、足を引っ張ってますしねえ。
こうして見ると、ヴァレリアとディミタールは相性悪いように見えるけれども、これはこれで悪くない組み合わせだったのかもしれない。一巻当初と比べても、ディミタールがヴァレリアを容赦のない正論で打ちのめすシーンも減りましたし……いや、ホントにだいぶ関係穏やかになりましたよね!?
それというのも、ヴァレリアがあれだけてひどく罵倒されながらも、指摘された件についてはちゃんと律儀に次の機会には直すようにしてたからなんでしょうね。この子、確かに世間知らずで無知で考えは浅いし頭の回転も決して早くはないんだけれど、怠惰では決してないんですよ。むしろ勤勉で直向きであることは疑いようがない。普通、たとえ正論だったとはいえあそこまでディミタールに悪し様に言われりゃ不貞腐れそうなものだし、実際ヴァレリアもあの言い草には反発し怒り心頭で、そりゃもうギスギスしまくった関係になってたんだけれど、それでもディミタールの言い分が正しいことはちゃんと認めて、負けず嫌いもあったんだろうけれど指摘された不見識の部分を一生懸命補填しようと努力してるんですよ。
そうしたヴァレリアの努力と向上心、そして確かな成長はディミタールもちゃんと見ていて、自然とヴァレリアへの苦言も減ってきてるんですよね。いやあ、ディミタールがようやくヴァレリアを認めてくれだした日には、なんだか嬉しくなってしまいましたよ。この子への罵倒はそのまま読んでるこっちにもダイレクトで突き刺さるようなものばかりでしたしねえ。
そんなこんなで、ディミタールの辛辣な性格はヴァレリアを外敵から守る方へと比重が置かれ……こいつの性格のキツさって、敵に向かい出すと頼もしいってものじゃないですねえ。もう、ギッタンギッタンだもんなあ。
当初はこの二人が仲良くなるなんて姿、想像も尽きませんでしたけれど……現状でも恋愛関係になるなんて思いもよらない状態ですけれど、それでもなかなか相棒同士としては良い形になってきたんじゃないでしょうか。少なくとも、ヴァレリアはキツい事ばっかり言ってくるけれど間違った事は決して言わないディミタールに対して、そりゃもう苦手だし嫌いだし色々勘弁して欲しいという気持ちはあっても、信頼出来る相手、あれだけズタボロに貶されちゃあ繕うものも纏えなくて素で接する事のできる相手として、受け入れ出しているような雰囲気になってきているような気がします。なんか、こいつに認められたい! という気持ちになってきているような……。
それって、何だかんだと肯定的な関係なんですよね。わりと、ヴァレリアがころっと行く日は近いのかもしれない。
さて、物語の方はというと、ハイデロータの内紛にヴァレリアたちが巻き込まれた形になってきているのだけれど……ぶっちゃけ、アーマッドの立場からすると現状のハイデロータ政府よりも、反乱軍の支援した方が良い気がするなあ。裏でこう、上手いこと工作して。バカな相手のほうが対処しやすいとは言っても、制御不能なほどのバカになると、手に負えなくなりますしねえ。とは言え、優秀すぎても困りものなんですが。イサーク王子がそのへん、どうするつもりなのか、彼の次に打つ手がなかなか興味深いところである。

1巻 2巻感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 23   

黒鋼の魔紋修復士2 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 2】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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妖艶なる“氷のまなざし”――カリン・ルドベック出戦!
最低最悪の相性ながら、何とか初任務を成功させたヴァレリアとディー。その一件から“魔紋”を消す力の存在を知ったイサークは、ディーの愛剣ジャギエルカの開発者であるキケから、かつてともに“魔法工学”を研究していた人物の情報を入手する。そしてその者が滞在していたというビラノバへ、ヴァレリアたちに加え、もう一人の“神巫”カリンを派遣することに決めるのだが――!
正反対の二人の“神巫”が、“神聖同盟”を取り巻く暗雲に迫る第2巻!

あのヴァレリアの「〜〜だし」という語尾が思いの外頭悪そうな印象を付与するのに効果を発揮してるんだよなあ。何を喋っていても、この語尾のお陰で言葉が軽くなり、どれだけ一生懸命発言しようとも薄っぺらなイメージばかりが重ね塗りされていくのである。さり気ないけれど、この印象操作はなかなか見過ごせない。実際は中身の無い言葉しか語らなくても、喋り方が知的に見えるだけで何か意味深い言葉を発しているように見えてしまうように、ヴァレリアだってもっと普通のお嬢様っぽい喋り方だったりしたら、ディーにやり込められる姿にももう少し違和感やディーへの反感が付きまとったかもしれない。そう考えると、ヴァレリアのキャラクターというのは見事なくらいにバッサリ切られるための仕様にカスタマイズされている。

ヴァレリアって、ホントにあそこまでディーにギッタンギッタンに言われるほどどうしようもないアホの子じゃあないんですよ。そりゃ、認識は甘いし世間知らずだし察しは悪いし自分の立場がよくわかってないところは多々ありますが……なんか見てて身につまされるんだよなあ。人間誰でも、一を聞いて十を知る、なんて出来るわけじゃないんですよ。一から十まで全部聞いて、やっと半分解かるくらいが精々の人だってたくさんいるんです。自分とか! そんな、解って当然、事前に準備してて当然、それぐらい察して当然、みたいな顔しないでください。そりゃ、努力がたりないのは事実です。やるべきことを何もしてなかった、何をしていいのかもわかってなかったというのもその通り! 悪いのは自分であって、要求を満たせないのは自分であって、別に無理難題を言われているわけでもなく、自分のできる範囲のことをしっかりとやれ、と言われているのも当然わかるんです。能力的なものじゃなく、単純に心構え、心掛けの領分なんですよね。才能とか関係ない、仕事への姿勢や向き合い方の問題。
それがわかるからこそ、ヴァレリアだってキャンキャンと犬みたいに吠える事なく、ぐぬぬ、と悔しさと恥ずかしさを噛み締めてうつむくほかないんですよね。もう、その姿が身につまされて身につまされて……胃が、痛いです先生(笑
彼女をアホだの無能だのと軽蔑したり罵ったりするのは、モロに天に唾するような行為なので、とてもとてもw
むしろ、一緒になってディーのザクザクとナイフで切り刻むような辛辣な指摘の数々に、ヴァレリアと一緒になって涙目です。もう勘弁して下さいw
さらに、今回はカリンというヴァレリアと同期で同世代で同じ神巫という実にわかりやすい比較対象が居るために、どうして彼女にはできているのにお前は出来ないんだ? という強力極まりないボディーブローがこれでもかと叩きこまれて、完全にグロッキー状態。
よくまあ、ヴァレリアは心折れないよなあ。
むしろ、元々は普通のお嬢様なのに、あれだけ普通に隠密働きが出来るカリンのほうが変なんですよ、うんうん。などと、自分を慰めないヴァレリアはそれだけで偉いと思う。いや、この娘ホントに偉いですよ。確かに今は何にもできないし、自分のできる範囲のことすらちゃんとできていないんだけれど、そもそもこんな影働き、どころか現場や実戦とは縁のない世界で生きてきたヴァレリアには、何が自分にできる範囲のことで、意識を高く持つにしてもいったい何を意識すればいいのかもわからない。絶対的に知識と経験が足りていないわけです。でも、それを絶対に言い訳にはしないんですよね。出来ないことを当然と開き直らずに、この娘は恥ずかしいと思い、悔しいと唇を噛み締めてみる。勿論、滅茶苦茶バッサリと言ってくるディーのことはもうむかついて仕方ないんだけれど、言っている内容について反発したり拗ねて受け入れなかったりすることはしないんですよ。
確かに、今は「使えない奴」なのかもしれませんけれど、きっと「今は」にすぎないんでしょうね。時間は掛かるかも知れませんが、あれだけ自分を恥じる事のデキる子が、負けず嫌いでめげなくて反骨心にあふれた子が、いつまでも現状にとどまっているとは思えませんし。
ディーは、優しくしろとは言いませんけれど、いつかは認めてやってほしいなあ。
それに、本当にどうしようもない子だったとしたら、あのカリンが友達付き合いしてるわけないですもんねえ。一時は、ヴァレリアが一方的に友達だと思い込んでいるだけで、カリンは全然友達だとか思ってないんじゃないかと心配もしたのですが、ラスト近辺の様子を見ていると思いの外カリンの方もヴァレリアの事信頼している、というか親友として心を預けている節が伺えて、安心したというか肩の荷が降りたというか。いったいどれだけヴァレリアに共感だか肩入れしてるんだか(苦笑 だから、ヴァレリアは仕事は出来ない子かもしれないけれど、ちゃんと気配りも出来て勇気もあり決断力も身を賭す気力も、友を慮る優しさもある、いい子なんですよ。普通はそっちが強調されるんだけどなあ……嬉野さんの手にかかると、見事にメッタ打ち要員に(笑
なんかこう、カリンにしてもディーにしても、あの皇太子様にしてもみんな並外れて「デキる」人達ばっかりなだけに、ヴァレリアみたいな子はある意味癒しでもあるんですよねえ……別にヴァレリアみたいな子が正論で論破され辛辣にされて涙目になっているのが好きだとかそんなんじゃないんだからね♪
同じ出来ない人でも、今回の哀れな黒幕さんみたいな自意識ばっかり肥大してしまった人は、目を覆わんばかりの痛々しさばかりが募って、共感どころじゃないからなあ。あれこそはヤラレ役である。しかし、あの御仁への言い方を見てると、ディーって単に口が悪いだけじゃないのかとも思えてくる。いや、実際単純に口が悪いだけなんだろうけどw

で、肝心のヴァレリアとディミタールの関係だけれど……なんか、さらに仲悪くなってないか?w
カリンの方も、相棒で従姉妹の魔紋修復士の人と微妙に仲良くないというか、ギスギスまではしてないけれどえらくサバサバとして距離置いた関係なんですよね。こいつら、こんなんばっかしかよ(苦笑

一巻感想

黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 13   

黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 1】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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純潔乙女に刻まれた"魔紋"の力、見せてあげる――!

"神聖同盟【リガ・サントゥレアール】"に12人しかいない、憧れの"神巫【ドミナス】"に任命された少女ヴァレリア。しかしその美しい肌に刻まれた"魔紋【ヒエラティカ】"を委ねる紋章官【ヒエラ・グラフィコス】は、よりにもよって男、かつ超性格の悪い少年ディミタールだった。純潔の肌を男にさらす乙女心と、各々の立場から対立してしまうふたりだが、そんな彼らに初仕事となる任務が与えられる。それが"贖いの主"たる神、レドゥントラを巡る壮絶な争いへ続くとも知らず……。妖艶な"紋章魔法【ヒエラ・マレフィカ】"が世界を彩るファンタジーアクション
気が強くて気位が高くてプライドの塊みたいな女の子が、正論で言葉攻めにされて悔しいっ、でも言い返せないっ! と涙目でへこまされるドS仕様のお話です……いやいや。でも、概ね間違ってないぞw 天才だろうと偉かろうが現場を知らない新人は勝手がわからず右往左往するばかりで、現実が伴わない判断は経験者であり先達であり指導役であるパートナーにバッサリ切り捨てられ、こき下ろされ、叱られ呆れられ見下げられ、と可愛いは正義、という真理は一切通じない、ある意味当たり前の光景が繰り広げられる。
まあ、ヒロインにここまで甘い顔を見せない主人公を描くのは、この嬉野さんくらいだよなあ。
でも、散々その現実を伴わない言動をこき下ろされてしまうヴァレリアですけれど、決して彼女が無能でも我儘でもないんですよね。単に世間知らずでやや無鉄砲であるだけで、とにかく経験が伴っていないだけで当人に悪意があるわけでもない。これまで神巫【ドミナス】になるためにひたすら頑張ってきた、という箱入りな身の上なのですから、現場について何も知らない、というのは当たり前なのです。言うなれば、今回の任務はそうした世間知らず、経験不足を補うための経験値を得るための新人研修の色合いが濃いものだったといえるのでしょう。このヴァレリアって娘、ディミタールに悪し様に罵られても、その内容が正論ならば内心で呪詛をまき散らしてても、無意味な反発を表に出して抵抗したりはしないんですよね。ちゃんと納得はするんです。プライドも身分も高いだろうに、その点は非常に偉かったと思います。ディーの言いようってホントに腹立つ言い方するし、カチンと来る態度なんですよね。それを大方こらえただけでも、充分偉いと思う。
それでも自身の性格心情を裏切る判断は蹴飛ばすあたり、結果として状況を悪化させてしまったとはいえ、自分の中に譲らない一線を持っている、というのは大事な事なんじゃないでしょうか。
一方で、護衛対象であり身分も上の神巫【ドミナス】に対して、辛辣過ぎるくらいの接し方をしているディーですけれど、彼は彼で非常にプロ意識が高く、彼は一貫して彼女の身を守り、神巫【ドミナス】としての立場を守れるように、任務も無事達成できるように、と立ちまわってるんですよね。その為ならば、自分の身を犠牲にする事を一切鑑みていないくらいに。もっとも、最初はヴァレリアという少女個人には一切関心がなく、あくまで神巫【ドミナス】という肩書きに対するプロ意識だったようですけれど。むしろ、ヴァレリア個人に感情移入することなくあそこまで仕事に徹せられるというところが、凄いプロらしいといえるんでしょうが。
それでも、ヴァレリアにしてもディーにしても、一緒に行動しているうちに、それぞれが自分の立ち場や役割に対して非常に高い意識を以て、献身的なほどに向き合い熟そうとしているのだと認め合うようになっていきます。まあ、感情としては気に食わない、大ッキライ、ムカツク、死ね、むしろ殺す、というくらいに仲の悪さは折り紙つきと言っていいほどに、むしろ最初より高まっていたような気もしないでもないですけどw
認め合うことと、好きになることってまた違う話なんですよねw
ここから、二人に恋愛感情が芽生えるとか、まるで想像できんな!! あり得んよな!! あり得んだけに、見たくはなるんですけどね。想像できないだけに、そうなっていく時の過程がまた面白そうなんですよねえ。
まあ現段階ではやっぱり無いよなあ、というレベルの断絶が二人の間には横たわっているのですけれど。いやあ、無いよなあ。
 
12月6日

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11月20日

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11月19日

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11月18日

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11月16日

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11月12日

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11月11日

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11月10日

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11月9日

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