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ユア・フォルマ

ユア・フォルマ III 電索官エチカと群衆の見た夢 ★★★☆  



【ユア・フォルマ III 電索官エチカと群衆の見た夢】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

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過ちと分かってなお手放せない感情には、どんな醜い名がつくだろうか――。

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞のSFクライムドラマ・第3弾★!

――あの日、自分は選択を間違えた。
エチカ自らの意思で抱えた、ハロルドの敬愛規律にまつわる秘密。その重圧からか、電索能力が突如急低下してしまう。
電索官としての復帰が絶望的な状況の中、一般捜査員として新事件の捜査に臨むエチカ。そこで目にしたのは、新たな「天才」と組むハロルドの姿で――。
エチカとハロルドが別々の場所で追うのは、「思考をのぞける人間」を自称するハッカー〈E〉。ネット掲示板に国際刑事警察機構の秘匿事項を次々書き込み、
【真実を追求せよ】とユーザーを扇動する〈E〉の真の標的とは――!?



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ユア・フォルマ II 電索官エチカと女王の三つ子 ★★★★   



【ユア・フォルマ II 電索官エチカと女王の三つ子】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

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謎のアミクスによる連続襲撃事件。鍵を握るのは女王の三つ子、最後の一人!

★第27回電撃大賞《大賞》受賞のSFクライムドラマ★
哀切怒濤の第2弾開幕――!!

再び電索官として。歩み出したエチカに新たな事件が立ちはだかる。RFモデル関係者連続襲撃事件――被害者の証言から容疑者として浮上したのは、他ならぬ〈相棒〉ハロルドの名前だった。

「きみの思考に入り込めたらいいのに」
「あなたに潜れたらどんなにいいか」

ままならない状況に焦るほど、浮き彫りになる<人>と<機械>の絶対的違い。埋められない溝に苦しみながらも捜査を続ける二人を待ち受ける衝撃の真相、そしてエチカが迫られる苦渋の選択とは――!

前回の事件を通じて、心から通じ合い認めあったパートナーとなれたエリカとハロルド……と、思ってたらいきなりぶっこんでくる「アミクス」には心なんてないよ、というRFモデルに携わる技術者の発現。いや、開発者であるレクシー博士の態度はまた違うんだけれど、アミクスに携わる科学者たちの見解は、等しくアミクスというロボットが行っているのはあくまで状況に合わせた言葉を用意された「辞書」から引き出しているに過ぎず、そこに思考や意思は介在しない。「中国人の部屋」というロボットSFで良く語られる設問を引き合いに出して語られるそれは、アミクスに心は存在しない、という大前提に基づくものであったのです。
いや、あるだろう心。ハロルドにも、前回登場したRFモデルにおけるハロルドの兄であるスティーブにも確かに心は存在した。エチカは、それと間違いなく繋がったのだ。だから、彼らRFモデルに心があるのは自明の理なのだ。
でも、RFモデルが通常のアミクスと同じ延長線上にあると考えているアミクスの専門家たちには、そんな見解は端からない。
面白いことに、専門家じゃない素人である捜査関係者たちやAI倫理委員会(素人か?)の人たちにはその絶対の大前提が理解できないんですよね。だから、外部からの干渉によってRFモデルが起こした事件を引き合いに出して、不具合がない他のRFモデルも危険視して停止させるべきだと主張する。
技術者たちは、ちゃんと技術的チェックをして不具合の有無を確認し科学的根拠をもって、RFモデル全体の危険性を否定する。そこにはハロルドへの個人的な信頼とかはなく技術的科学的根拠に基づくものしかない。一方で倫理委員会などの面々たちは、漠然と根拠なくあっちがダメだったんだからこっちもヤバいだろ、と危険視してくる。話がそもそも噛み合ってないんですよね。
でも、ハロルドがアミクスというただのロボット、ただの道具、という見解については一致している。だから、ハロルドを心ある存在と認識しているエチカにとっては、両者とも何をわけわからない事言ってるんだ? と、話の噛み合わなさ理解出来なさに苛立つはめになる。
三者三様、相手が何を言っているか全然理解できていないんですよね。
ロンドン警察の捜査部は、さらにアミクスに人権が認められてるせいか、システムチェックじゃなくハロルド当人と拘束して尋問、という人間にするみたいな事を平気でしながら、一方でRFモデル全体の問題トラブル危険性なんじゃないか、とハロルド個人を認めるでなくロボット扱いしているわけで、いやなんか端から端まで矛盾してませんか?と思うんだけれど、彼らとしては一貫してるんですよね。

人間同士ですら、同じ言葉を喋りながら会話を交わしながら、どこかで根本的に意思疎通すら出来ていない、理解が噛み合わないのに。
そもそも、根本的に違う存在であるアミクスと人間が理解し合えるのか。
そもそも、アミクスであるハロルドに意思がある、心がある、という科学的技術的根拠が存在するのか。

RFモデルが引き起こしつづけている連続傷害事件の捜査を通じて、エチカはほんとうの意味でのハロルドという存在そのものへの理解を迫られる事になる。
一旦はハロルド自身が事件の犯人なのでは、という疑いをかけられ任意同行を求められたものの、その容疑は別の事件が発生したことで早々に拭われるのですが、RFモデルそのものへの危険視は増すことでかなり面倒くさいことになってしまうんですね。
ハロルドの容疑を晴らすため、さらに巻き添えになったハロルドの「家族」のために、真相究明のため捜査を行うエチカなんだけど、その過程でRFモデルそのものの誕生の秘密に踏み込むことになる。
そもそも人を遠ざけてきたエチカにとって、他者への理解は避け続けてきたものだった。人の記憶に潜りその感情そのものを体験する電索官でありながら、彼女は人間そのものへの理解が遠い。
だからこそ、結婚詐欺じみたやり方で近づいてきたハロルドに、なんだかんだと心許してしまったわけだけれど、本当の意味でハロルドの心のうちを理解する事は難しく、でも理解したいと願った、願ってしまった。
電索官として捜査官として以上に、私情でハロルドの心を追いかけてしまった。彼の心が誕生した起源に踏み込んでしまった。いやほんとに私情込み込みで、捜査官としての在り方よりもハロルドを優先してしまうほどに。
ある意味彼女、一線を越えてしまっているとも言えるんだけれど、一線を守ろうとするとハロルドの停止は余儀ないんですよね。彼の在り方を世間は許容出来ないことは、一連の各方面の対応からも明らかなわけで。でも、こうなるとハロルド自身が一線を越えようとしたとき、それに干渉できるのはエチカだけになってしまった、という事でもあり、エチカの葛藤はその時が来るまで止まないことになってしまったわけだ。
アミクスに備わっているはずの大前提が、あそこまで徹底して皆無であることがわかった以上は、もうハロルドの心ひとつ、心ひとつなんですよねえ。
結局、彼の「心」に訴えるしかない、という事なのか。
そのハロルドの心はというと、揺れに揺れまくっているのですが。エチカが片っ端から揺り動かしている、と言えるのですが。グチャグチャじゃないか、ハロルドの心。グチャグチャすぎて、処理落ちしてるじゃないか。エラーが出てるじゃないか。
ハロルドもまた、理解したいと乞い願っている。切ないほどに、心引き裂かれんばかりに、切に切に、求めてる。彼女の辛そうな顔を見たくないと願ってる。
それが心でなくて、何なのか。それが人の心と何が違うのか。ハロルド自身が、その存在を頑として認められなくても。

二人のお互いを想い合う切なる気持ち。それは本来とてもシンプルなものなのかもしれないけれど、それを人と機械の相互理解というSFのテーマとして丁寧に描くことでこんなにも深い沼としてズブズブにしてしまえるのか。
シトシトとした雨に降られるような読後感に、しばし染み入るのでした。





ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 ★★★★   



【ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒】  菊石 まれほ/ 野崎つばた 電撃文庫

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孤独な天才捜査官。初めての「壊れない」相棒は、ロボットだった。
★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!! 

 脳の縫い糸――通称〈ユア・フォルマ〉ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!

おおっ、SFだ! 設定がどうのじゃなくて、作品の雰囲気がライトノベルでありつつも「ハヤカワ文庫」風味が効いてるんですよね。敢えて言うなら、【マルドゥック・スクランブル】風味というべきか。
いや、設定も非常に硬派の近未来SFとしての根が張り巡らされていて世界観だけでもとても読み応えあるのですけれど、そこにガッツリとした外国ドラマ的な刑事バディもの、クライム・サスペンスとしての要素が満載されているので、作品の雰囲気そのものが洋風なんですよね。変に緩い和テイストを混ぜてないのも硬め感があって直球のSF作品としての体となっている。

また、物語の主体が電子犯罪の追跡にある一方で、ガンガンと主人公のエチカの内面へと切り込んでいく登場人物の心理面を丹念に掘り下げていき解体していくテイストになってるんですね。
キャラクターのトラウマ、精神的な傷をグリグリと抉りあいぶつけ合うという、精神的な殴り合いみたいなバディの衝突というべきかコミュニケーションというべきか、ともあれそうした一種の容赦ない対立をもって人間関係を構築していく、そして個々を掘り下げていく手法というのは外国ドラマや外国小説のバディもの、近未来SFでも人間にスポットをあてた作品なんかでは顕著に見られるパターンだけに、余計に洋モノの味わいを感じるのかも知れません。

それはそれとして、エチカの相棒として派遣されてくるアミクス…ここではアンドロイドやロボットというべき機械じかけの存在であるハロルド。彼は人間の隣人にして親愛なる友人たるべき存在として定義されているアミクスの中でも、特別な製造品として作られた存在なのですけれど、彼個人の特別な体験を経ることでさらに特殊な個体へと成長? 進化? 発展? している個体です。
人間味が普通のアミクス以上、というだけでなくちょっとした特技なのか、名探偵めいた観察力と推理力を持ち合わせて、それに独特の話法、よく回る口をもって自分の望む方へと誘導する技法を得意としてるんですね。
それを彼は刑事としてのテクニック、あるいは探偵みたいなスキルとして振る舞っているのですけれど……よくよく見ると、或いは聞いているとこれってある種の「詐欺師」の論法なんじゃないだろうか。それもあれです、結婚詐欺師的な?
女の人をうまく騙して良い気分にさせて、自分の思う通りにコントロールして誘導してしまう、的な?
そんな彼のことを胡乱な目で見ているエチカは、アミクスという存在自体に忌避感を強く抱いている人であり、彼が相棒として派遣されてきた段階から拒絶感をあらわにし、慇懃でありながら妙に馴れ馴れしいというか「イイ性格」をしているハロルドに対して嫌悪に近いものを抱いて、かなり辛辣な対応に終始するところからはじまるのです。
そもそも、エチカはアミクスだけじゃなく、人間そのものに対しても盛大に距離を置いていて、幼少からのネグレイトを主体とした虐待の体験から、深い心の傷を抱いている。人と接するのを毛嫌いしている、或いは恐怖に近いものを抱いているのかもしれない。最初から諦めていると同時に、刺々しい対応をとることで相手からも拒絶されることで、安心感を抱いているような……それでいて孤独感に震えている。人を遠ざけながら、どこかで人を求めている。アミクスへの拒絶感も、かつて父と暮らしていた頃のことが深く絡んでいるんですね。
ともあれ、自身の孤独に翻弄されている、独りである事を強く望みながら独りである事に耐えられない寂しさを抱いてしまっている、そんな女性だ。
こういうハリネズミみたいな人は、決してチョロいとか絆されやすいとかとは程遠い、一種の難しい人間である。この手の人の内側に入るのは容易ではない。
容易ではないのだけれど……往々にしてこういうタイプの人ほど結婚詐欺のカモになりやすい、というパターンだったりするんですよね。
チョロくはない、チョロくはないよ? でも、正しい手順を踏むとびっくりするくらい、コロッと行っちゃうのだ。非常に押しにくいところにあるけれど、押してしまうとコロッと全面反転してしまうスイッチがあったりするのだ。
そして、ロボットにして結婚詐欺師(違)な手法に長けているハロルド氏の登場である。
……なんかこう、エチカさんまんまと餌食になってませんかね、これ?
ハロルドがその心の深奥にそれはもうドロドロとした情念を抱えていて、エゴイスティックな目的を持っていて腹黒一直線だったりするので、余計にその手管に絡め取られてしまった感ががが。
ただ、本来人造の創造物として純真無垢な精神構造をしていただろうハロルドが、ロボットにも関わらず尋常ならざる情念を、狂気を抱えてしまうほどの凄まじい惨劇を味わってしまっているからこその、闇落ちなんですよね。かといって、本当に狂いきってしまっているわけではなく、被造物としての純真さはある意味失われていない。失われていないからこそ、彼は闇をはらまなければならなかったとも言えるのでしょう。被造物であるからこそ壊れてしまうことで、本物の心が芽生えてしまった、というべきか。元々、彼の心は本物だったからこそ、あの惨劇を目の当たりにして壊れてしまった、という順番も考えられるのですけどね。
しかし、どれほど深い情念に囚われていようとも、彼の精神は正常に動いている面も確かにあるわけで。その正常の部分が、エチカという存在に激しく反応してるんですよね。それを、恋と呼んでいいのか。少なくとも、アミクスである彼にとって計算ずくの範囲の外に見つけたそれは、とても素敵で心浮き立つものなのだろう。
不協和音を奏でていた二人が、本当の意味で心から通じ互いを認めたパートナーとなり、再出発を迎えるラストはこれからも続いていくシリーズものとして素晴らしいスタートを切ったような爽やかな幕引きで、実に心地よい幕引きでありました。
この巻ではずっとお互い探り探りで、エチカの拒絶もあって意図も気持ちも混ざり合わない重なり合わないギスギスとした居心地の悪さがずっとつきまとっていたコンビですけれど、次回以降は息ピッタリ、とまでは言いませんけど、同じ方向を向いて呼吸を合わせられる以上の関係にまでは至れたと思うので、そんな二人の事件簿を見るのは実に楽しみです。

 
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