ユウナラ

RE:異世界から帰ったら江戸なのである ─女天狗昔物語─ 1 ★★★★☆   



【RE:異世界から帰ったら江戸なのである ─女天狗昔物語─ 1】  左高例/ユウナラ カレヤマ文庫

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小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載、書籍化していた人気の異端時代小説が再び蘇り、奇跡の電子書籍化!

魔法のあるファンタジーな異世界から、現代日本にようやく帰ってきたと思ったら江戸時代だった九子。やむを得ず江戸で暮らすため、魔法の力を天狗の妖術だと名乗って蕎麦屋の主、六科の元へ居候になることに。生活のため蕎麦屋を繁盛させ、悪党を退治し、時に男たちから助平な目で見られ、江戸の美味と酒を楽しむ女天狗の日常物語。

この作品は小説投稿サイト『小説家になろう』に連載、及びKADOKAWAエンターブレインが書籍化した作品『異世界から帰ったら江戸なのである』のリブート小説です。
続きではなく再構成作品なため、本作から読み始められます。以前の書籍と内容も大きく異なります。
WEBに投稿している内容と一部重なる部分もありますが、全編約20万字書き下ろしでここでしか読めません。本にして約600ページの文量となっています。
また、前の書籍化から担当しているイラストレーター・ユウナラ氏の挿絵、扉絵が合わせて25点と豪華仕様!続きを読む

神聖じゃないよ! 破門皇帝フレデリカさん上巻: 〜中世欧州、教皇最盛期の終わり〜 ★★★☆  



【神聖じゃないよ! 破門皇帝フレデリカさん上巻: 〜中世欧州、教皇最盛期の終わり〜】 左高例/ユウナラ Kindle

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13世紀イタリア、中世ヨーロッパに『世界の驚異』と呼ばれることになる皇帝がいた。シチリア王にして神聖ローマ皇帝、エルサレム王も兼ねるその人物の名はフリードリヒ2世。しかしこの物語では女の子フレデリカとして誕生したことに。史実沿いだが破天荒な彼女は自由気ままに行動し、権力を手に入れるためアイドルの如き活動を行う。時のローマ教皇、通称最強教皇(オーバーロード)イノケンティウス3世もそんなフレデリカを支援してくるので皇帝目指し躍進することに。家庭教師のグイエルモ司祭、テンプル騎士団の隊長、そして大勢のファンになった部下たちとフレデリカは自分の道を突き進む。シチリア王国、ローマ教会、神聖ローマ帝国を巻き込んだ彼女の人生の物語。その上巻である。
フレたんイェイイェイ〜〜!!
【異世界から帰ったら江戸なのである】【オール・ユー・ニード・イズ・吉良】の快作で鳴らす左高例さんのオルタナ歴史大河小説再び。
主役は中世ヨーロッパにおいて、こいつ転生者なんじゃね!? との疑惑が出るほどに先進的なスタンスで欧州を席巻した神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世。が実は女の子のフレデリカだったんだぜ。別に秘密じゃなくてみんな知ってたんだけど、なんやかんやでイノケンティウス三世の勘違いと権威で男扱いになっちゃったけど全然構わないよね、的なエキセントリック天真爛漫少女皇帝が征く、な物語である。
TSでもなく、秘された男装令嬢でもなく、フレデリカはまんま性的指向もノーマルな女の子で世間の皆様も彼女が彼女なのを知っているけどスルーという、なかなかとんでもない環境で話は進んでいってしまうのだが、まあ些細なことである。じゃあ子供はどうするんだよ、という問題については謎の錬金術で誕生した現在では製法も原理も不明な神秘の秘宝「フリードリヒ棒」が大活躍!! フリードリヒ棒! これはもう、フレたんが後世ゲームキャラになんかなったりしたら真っ先に宝具とかで使われちゃうあれですな。効果、女同士でも子供が出来る!! イェイイェイ〜!
なんかフレデリカ、一応自分ではノーマルだって言ってるけど別に男が好きという様子は一切見せていないんですよねえ。「隊長」と一緒にお風呂する日常風景でもエロスはないよ、と双方断言してますし。
ともあれはっちゃけた娘さんである。その境遇、何の権限も兵力も財力も持たないシチリア王から神聖ローマ皇帝へとなっていく変遷がまた面白いんですよね。当時のヨーロッパの国際情勢の複雑さと、彼女の後ろ盾となっていた史上最強の教皇イノケンティウス三世の権威が絡み合い、彼女の飛躍のための土台となるものが構築されていくのだけれど、むしろ兵力も権力もないことがフレたんを守り、彼女が力や能力を蓄えるための重要な要因となっていく、というあたりなども本当に面白い。
第三次十字軍遠征において、綺羅星のごとき英雄たちが活躍した時代がまだ人々の記憶に強く残る時代。尊厳王フィリップが健在でフランスふぉぁー!!と暴れまくり、獅子心王リチャード三世の後継たるジョンくんが盛大に全力全壊で負けまくり失地しまくってえらいことになっている時代。ある意味、歴史のスポットライトがあたっていた時代から少しずれることで印象の影に入る時期であるんだけれど、だからこそ混沌とした情勢が発生して歴史としての面白さは何一つ変わらないまま盛り上がってるんですよね。そんな時期に少女時代を過ごし、やがて新たな時代のスポットライトを強引に自分中心に照らし出そうという新世代の英傑。それが神聖じゃないよ皇帝フレデリカたんイェイイェイ〜!なわけである。イェイイェイ〜!
とはいえ、この上巻ってフレデリカに全く負けず劣らず存在感を爆裂させてるのが、史上最強の教皇(オーバーロード)イノケンティウス三世なんですよね。ってか、あらゆる一挙手一投足が史上最強すぎて、登場しただけで笑ってしまう。
それでいて、全然暴君じゃなくて理知の人ナんですよねえ。寛容の人でもあり、情と理を見事に使いこなす人でもある。彼こそが教会であり、彼が在ったからこそ教会の権威が正しく機能していたのだとわかってしまう。だからこそ、彼が認め慈しみその成長に目を細め、期待し、もたらす未来に想いを馳せたフレデリカたんに、なんか太鼓判が押されたような気がするんですよね。イノケンティウス退場後の教会とフレデリカたんは激しく対立していくことになるんだけれど、イノケンティウスの後ろ盾というお墨付きは、読み手側にすらフレたんの正当性みたいなものの支えとして感じられて、ずっと彼女を護ってくれる感じがするんですよね。親と縁がなかったフレたんだけど、イノケンティウスは彼女の、孫に甘いお爺ちゃんという感じがして、本当に好きなんですわ。
だからこそ、フレたんにはもうちょっとイノケンティウスお爺ちゃんに孝行しても良かったと思うんですよね。まあ実際逢う機会は一度しかなかったわけですけど。フレたんにとって身内と呼べるのはグイエルモ先生こそ、でしょうし。
さて、フレデリカのパートナーとなり、この物語においても重要な役割を果たし続けることになる謎の騎士「隊長」。テンプル騎士団の創設から存在し、あれ?年齢的におかしくね? という発言をポロポロとこぼす正体不明の彼の正体については、別に秘密でも何でも無いと思うので、前日譚にして彼の誕生譚でもある過去編『隊長、或いはニコラウス、或いはゴーティア、或いは名無しの騎士の物語』を読むと、彼についての印象も深まると思うので、是非に一読あれ。
この物語がフレデリカの物語であると同時に、独りの虚ろな男の生の、運命と出会った物語であると知るための下拵えが出来るのだと思うのです。
フレデリカと隊長と征く、中世というワンダーランド。痛快なる大河ロマンの開幕であります。

左高例作品感想

異世界から帰ったら江戸なのである 第弍巻 5   

異世界から帰ったら江戸なのである 第弍巻

【異世界から帰ったら江戸なのである 第弍巻】 左高例/ユウナラ エンターブレイン

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今度は江戸でピッツァ!

九郎が異世界から持ってきたカバンの底には、1本のコーラがあった。
コーラといえば、ピザ!
ふいに食べたくなった九郎は、鳥山石燕や阿部将翁の手を借りてピザ作りを開始!
江戸時代の食材と環境で、ピザはおいしくできるのか?

そして九郎が気を失った時に見る異世界の情景――
旧友が口にした言葉は江戸につながってゆく。
はたして石燕の正体とは…!?
おお、快なり!! 絶品じゃあッ。
というわけで、異世界から日本に戻ってきたら現代ではなくて江戸だったけれど、そこで暮らすとぼけたお江戸の連中と、のんびり愉快に隠居生活な九郎爺ちゃんの大江戸ハッピーライフ第二弾。
ウェブ連載からの単行本化における見どころというと、やはりイラストがついてキャラクターにデザインが出来るというところでしょう。その点において、本作のユウナラさんは素晴らしい仕事してます。ってか、素晴らしすぎるざんしょ。
ジャケットデザインで二階からバンザイしている少女、これ玉菊ですよ、あの玉菊。参ったね、なんという男の娘! 他にも石燕の弟子の百川子興(女)や隣家の按摩さんのお雪嬢といったメンツもデザインついてるんですけれど、子興さん思いの外ネコ娘っぽい!? ちゃんと、というには多少変だけれど、日本髪結っているにも関わらず、こんな猫っぽくできるのが凄い。



もう一枚、カラーで異世界側の宴会の様子も描いているのですけれど、主だったメンバー以外にも背景にちゃんと今後の異世界でのお話に出てくる連中がしっかりと描かれているのが、嬉しいじゃないですか。ゴーレムの人とかほんとちらっとしか出てないのに。あと、蛇女の人とか。
異世界組のビジュアル出たのは魔女イリシアや魔王組の連中以外、元の傭兵仲間たちは今回が初めてだったと思うんですけれど、なにより衝撃だったのがイートゥエさんでしょう。呪われて鎧を脱げなくなったデュラハンのお嬢さん、というちょっと残念な人なんですけれど、想像してたのよりも遥かに鎧が巨大すぎて、吹いたw 三メートルって。サイズが、首とのサイズの違いがすごすぎるww
うわぁ、スフィがべらぼうに可愛いじゃん、という衝撃を塗りつぶしてしまうビジュアルインパクトでした、イートゥエさん。

さて、冒頭からはじまるのは、まず現代に生きていた九郎がいかにして異世界に飛ばされるはめになったのか、というところから。昨今、安易にトラックだのダンプだのに轢かれて死んでしまったら気がついたら異世界に居た、というワンパターンというべきか様式美になっているというべきか、ともかくおんなじようなシチュエーションでまずその段階でテンションを下げられてしまうのだけれど、やるならこれくらいやれ、というお手本……いや、お手本にしてはまずい例なのか。
おしぼりを飲食店などに卸す会社で働いていたら、なんやかんやでほとぼりを冷ますために北方海域でカニの密漁船に乗ることになったら、ロシアの国境警備隊の船にメチャクチャ撃たれてさあ大変、という類を見ない異世界転移である。
別に九郎、グレたり悪道にハマったような人物ではなく、ごくごく真面目に不遇な境遇の中で家族を養うために働いていたら、何故かその筋にまつわるような働き口にばかり割り振られるようになって、というまあなんというか、アレな感じである。むしろ、異世界にいってからの方が騎士として役所勤めを長年やってたように真っ当な仕事についてたんですよね。九郎の現代日本における職業遍歴はウェブ連載では度々言及されることがあって、かなり面白かったりします。


第一章の「江戸の街歩き ―忍者は居ない―」

末法の世ではありませんのでー。でも、実はけっこう出てくるんですよね、のちのちw
ちなみに、九郎が流れ着いた江戸は、八代将軍吉宗の時代だったりします。南町奉行はかの大岡越前守忠相です。別に、大岡裁きとかしてないのですが。
居候先の蕎麦屋の娘、お房とぶらぶら江戸の街を散策する話。しっかり者で本作でも有数の賢者のごとき聡明さの持ち主であるお房ですけれど、まだまだ年齢は二桁にものぼらぬ子供なのも確かなので、たまにこうして九郎に連れられ、遊びにいくこともあるようで。食べ歩きというか、ウィンドウショッピングってな感じなのですけれど、時の江戸の街の風俗、景色、その賑やかさをしっかりと感じ取れる描写がいいんですよねえ。色々とさり気なく九郎たちの散策に合わせて、当時の江戸の風俗や流行りなどの薀蓄や語りなんかが入るのですが、これが本当に面白い。知識を押し付けがましく見せつける、というんじゃ全然なくって、思わず興味を引かれて覗き込んだ際にさらっとそれについての雑学や説明をしてくれて、楽しい気分に実を与えてくれるという感じ。ほんと、江戸をぶらついているような気にすらなってくる。にしても、九郎はぶらつきながら酒飲みすぎ!! そして、出てくる小料理がまた美味しそうなのよねえ。


第二章 「江戸の日常的に起きる事件」
この頃はまだそれほどの頻度ではないのだけれど、火盗改の中山影兵衛や見廻同心の菅山利悟などと知り合うことで、九郎は彼らの捕物を手伝うことも多くなっていくのですけれど、今回は道場主の録山晃之介も巻き込んで、辻斬り集団と渡り合うことに。けっこう切った張ったもやるんですよねえ。ってか、挿絵! 影兵衛の描き方がこっちサイドじゃなくて、完全に辻斬り集団の親分なんですけどww
そして、辻斬り集団をとっ捕まえたその報奨金で飲み明かす九郎と晃之介w さらに、ヒで始まりモで終わる名前の立場らしく、石燕と一緒に飲み倒して代金を払ってもらう九郎ww
さらり、とここで江戸に転生している魔女イリシアの生まれ変わりを探せ! というミッションを魔王ヨグから与えられるのだけれど、何気にこれ最重要ミッションなんですよね。これが未達成だと、どうなるかが最新のウェブ更新の方で明らかになってるし。


第三章 「江戸のピザ作りと宴会の思い出」

異世界から戻ってきた際に持っていた荷物の中に入っていた一本のコーラの瓶。おそらく二度と飲むことではないだろうコーラのアテとして、ピザを食いたい! という欲求をもとにして、江戸で知り合った連中に協力してもらい、この時代この江戸で手に入る食材をやりくりしてピザを作って宴会だー、という賑やか話。トマトが実はこの時代既に日本に入ってきていた、というのはわりと知られている話かも、観賞用として、だけれど。その他、チーズやら何やらも伝手をたどって手に入れて、と阿部将翁さん便利すぎるww
いやあ、しかし江戸で食べるピザというのも乙なものであります。ってか、この江戸だとピザもあんまり場違いには見えない不思議。
回想で、異世界での思い出、あっちに飛ばされた時に拾ってもらった傭兵団の連中と宴会している時の話が出てくるのだけれど……なるほど、「彼女」については書籍版では徹底的に伏せるのね。ウェブ版だと、異世界の回想で極々初期にちゃんと登場し、九郎やイリシアとの関係性も含めてしっかり描いた上で、その後が描かれていたのだけれど、こうして「彼女」について一切伏せたまま、という体で話を進めていくのも面白い。ちゃんと話の筋立ても仕立て直しているし、このぽっかりと魂に穴があいているようなもどかしくて寂しくて切ない感覚の表現はある意味素敵でもあるんですよね。これは、思い出した時の感動は尚更大きくなるかもしれない。
誰も覚えていないけれど、絶対に居た誰か。九郎にとって、おそらく最もかけがえのなかった存在。
描かれていないにも関わらず、その存在感が刻々と大きく深くなっていく様子は、焦れるけれどいいなあ、いいなあ。

そういえば、この幕間であの「同心二十四人衆」の全貌が明らかになってるんですよね。ちゃんと、二十四人分設定あったのかww
変な二つ名はともかくとして、こうしてみると、同心にも様々な種類があるというのがわかって、興味津々。そういえば、町奉行所が一月ごとに南・北で交代で業務行っていた、という話も本作で知ったんですよねえ。


第4章 「鳥山石燕奇怪録 「海坊主、或いは尼彦」」
江ノ島に現れたという海坊主を、石燕と九郎で見物しに小旅行に行くお話。お雪ちゃんがお房の父親の六科を好いていて、必死にアプローチしているお話もうまいこと盛り込んでるけれど、各章わりとウェブ版の数話分をくっつけてアレンジしてるんですよねえ、これ。ただ、そうした改稿だけじゃなくて、はっきりと加筆修正されている部分もあって、石燕ことお豊の持つ能力と、前巻で彼女が自分は本当は石燕じゃない、と言ってた話の真相については、この段階では殆ど触れられてなかったはずなんですよね。というか、ウェブ版では極々最近、そのネタが明かされたはず。これについては、石燕の本名と彼女の名前からして、最初から考えられていた設定ではあるんだろうけれど。石燕姐さんは、もうほんと最近までただのアル中のダメ女以上でも以下でもなかったもんなあ……いや、最近でも全然変わらないというか、もっと残念でダメになってる気もするけれどww
書籍版では、若干陰と謎のあるそこはかとなく艶と哀がなくもないんじゃないかしら、という程度にはヒロイン補正受けてる気がしないでもない! ……気のせいか!
なにしろ本作のヒロインときたら誰も覚えてない「彼女」と未だ覚醒していない「彼女」以外は総じて残念ヘタレの行き遅れガールズだもんなあ。スフィ含めてww というか、意気地なさに関してはスフィはぶっちぎりなんですけれど。その点、まだお八や石燕姐さんの方がナチュラルにスルーされるような有り様ながら多少アプローチしている感じがする分、マシかもしれない。


しかし、書籍版、若干食事シーン増えてる気もするなあ。酒飲んでるシーンは相変わらずだけれど。うむ、こうして何度読み返すことになっても、その度におもしろく思うというのは、それだけハマっているというべきか、好きすぎるというべきか。
ほんとにもう、大好きなのよねー。
まだ天爵堂のところの子どもたちとか、利悟のところの同心仲間など出てきてない人たちも居ますし、まだまだ読み足りないくらい。九郎もまだまだヒモ度が深刻になっていきますし、異世界IF版もこうなると書籍版でも見たいですし、十手持ちとなったあとの活躍やらあれこれ、うんうんまだまだネタもあることですし、続きが楽しみ楽しみ♪

1巻感想

異世界から帰ったら江戸なのである 第壱巻4   

異世界から帰ったら江戸なのである 第壱巻

【異世界から帰ったら江戸なのである 第壱巻】 左高例/ユウナラ エンターブレイン

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長年の異世界生活からついに日本へ帰還した九郎。しかし時代は想定外の、江戸。
閑古鳥が鳴く蕎麦屋の店主と出会い、そこで蕎麦づくりと飲食店経営の指導をしながら居候をすることに。

ときに挑戦金を賭け道場破りに臨んだり、ときに妖怪画家に連れられ飲み歩きしたり、ときに火付盗賊改と共に
悪漢を倒したり、ときに乳飲み子の世話を仲間とみたり。小さくも賑やかな九郎の世界を描く、珍奇な時代小説風日常コメディ第一弾。

異世界よ、これが江戸だ。
異世界もビックリのワンダーランド、それが大江戸八百八町! というと、江戸とは名ばかりの謎世界だと勘違いさせてしまうかもしれませんが、これがまたしっかりとした、ともすればそんじょそこらの時代劇なんかよりもよっぽどちゃんとした骨組みの江戸時代が描かれてるんですよね。情緒たっぷりの江戸の風情は、本格時代小説と言っても過言ではないほど。それはもはや【剣客商売】や【鬼平犯科帳】などの池波正太郎を彷彿とさせるほど。
ただし、登場する人物たちは川上稔クラスの奇人変人ばかりだけれどな!!
いやでも、カワカミンレベルのフリーダムなコメディタッチの【剣客商売】と表現しても、これあながち間違ってないんじゃないだろうか。さらっと語られる江戸の街の風景や土地の様子、生活に根付いた風俗の薀蓄なんかは、テレビの時代劇なんかをすっ飛ばす勢いで、あざやかに当時の江戸の人達が生活する日々の喧騒が目に映るかのよう、なんですよね。それを、どこかスットボケた愉快なキャラクターたちが縦横無尽に動き回る、この色彩のあざやかさ。コメディ押しばかりではなく、時にはしんみりと心に沁み入るような人情話や、切なさに思わず溜息が漏れてしまうようなエピソードもあり、また思わず腹の虫が鳴るような、口の中にヨダレが溜まってくるような、美味そうな料理の描写もあって、その意味でも池波正太郎テイストが盛りだくさん、て感じなんですよね。
そもそも主人公の九郎からして、見てくれこそ小僧なものの、中身は剣客商売の老剣士、秋山先生みたいな感じの悠々自適の老後を過ごす遊興老人なのです。
転生や若返り主人公というと、前世での年齢とプラスして実年齢はおっさんおばさん、既に老人で云々とうそぶく割にメンタルは別に若者となんら変わらなかったりするのですが、この九郎は異世界でキチンと一度ガチで定年退職して老後は魔法学校の用務員をしながら余生を過ごす、というところまで行っていたガチ老人経験者なんですよね。その後、紆余曲折あって魔女の保護者となって若返らされて不老の魔法をかけられ、ワールドエネミーの一人として駆けずり回ることになるのですが、肉体は若くてもその精神面は老人のまま。そして何より、九郎にとって今現在というのは、江戸にやってきてからも、「老後の余生」なのであります。その辺が、根本的に普通の主人公と違うところなのでしょう。
そのせいか、ヒロインとなり得る女性は結構登場するのですが、九郎当人が性に枯れちゃってるので相手を見る目はヤンチャな孫娘だったり、気のおけない飲み友達だったりして、女性サイドからすると暖簾に腕押しな調子にヤキモキするばかりなのですけれど、いわゆる鈍感主人公的な嫌な感じは全くしないのであります。だって、中身お爺ちゃんだし!
それに、九郎にはちゃんと人生のパートナー、というべき人が居たんですよね。この1巻では、彼女についてはちらりと魔女関連でそれと書かれるわけではなくさらりと触れられているくらいなのですが、彼女についてのエピソードは本当に切なくて胸が締め付けられるような話になるので、今から読むのが楽しみでもあるのです。
だから、巻末のキャラクター紹介の魔女イリシアの項目には泣かされたなあ。何も具体的には書いていないのですけれど、あれこそが魔女イリシアの根源なんですよねえ。

さて、どうやらウェブ公開版とはエピソードの順番を色々と入れ替えているようですけれど、元々一話完結の日常話を積み重ねていく構成ですので、多少順番が入れ替わっていても殆ど気にならない。それで話の筋が通らない、という事には全くなっていませんしね。それに、どうやら主だったメンツを先に登場させて一揃えしておく意図があるようで、登場そのものがまだもうちょっと先だった人も居ましたし。武芸者で道場主の録山晃之介さんなんかは本当はまだしばらく初登場は先でしたもんね。とはいえ、天爵堂のところの子供たちや同心二十四人衆、戦闘民族サツマ人など、異世界側でもまだまだ出てきてない人も多いのですけどね。それでも、概ねこの1巻で登場した人たちで話は繰り広げられていくのです。
うむ、それにしても改めて見てもイラストのユウナラさんは素晴らしいです。おそらくはメインヒロイン???な残念系アル中未亡人妖怪絵師の鳥山石燕なんて、びっくりするくらいイメージ通りだったもんなあ。逆に自分のイメージと全然違ったのが火盗改同心の中山影兵衛か。オンオフのスイッチがない脈絡のないヤバさから、もっとニヤケ顔の似合う細身の蛇っぽい感じなのかと思ってたのですが、なるほど髭面の豪傑風なのか。一度見てしまうと、もうこっちでしっくり来てしまった。いやあでも、ウェブ版での最近のこの人の充実ぶりを見てると、こんな髭面で胸毛もわっさーとしてる男のくせに、おのれー、となるじゃないですかw
それにしても、こうしてエピソードを通しで読んでると……九郎の呑兵衛ぶりが本当に目につくのです。爺ちゃん、毎度毎度酒ばっかり飲み過ぎ!! 昼間から酒ばかり飲んで泥酔しているというと、アル中の石燕姐さんが作中でもこき下ろされてるのですけれど、深酒こそしないものの暇さえあれば昼間から酒呑んでるのは九郎爺ちゃんも一緒じゃん!! ひたすら酒ばっかり呑んでるよ、この人!?
あらすじ見ても、九郎、江戸に来てから色んな事をやってるのがわかると思いますけれど、
閑古鳥が鳴く蕎麦屋の店主と出会い、そこで蕎麦づくりと飲食店経営の指導をしながら居候をすることに。
ときに挑戦金を賭け道場破りに臨んだり、ときに妖怪画家に連れられ飲み歩きしたり、ときに火付盗賊改と共に
悪漢を倒したり、ときに乳飲み子の世話を仲間とみたり。
これ、上記でのエピソードの後、いや後に限らず何がしかが起こる前だったり、その最中だったりもするのですが概ね酒呑んでます。一人でちびちびとやることもあれば、知り合った人と呑みに行ったり飲み明かしたり、とシチュエーションは様々なのですが、概ね呑んでます。
……そのツマミがまた美味しそうなんですけどね! 自分、酒呑まんのですが、これをつまみながら、或いはこの料理に箸をつけながら一杯やったら美味いだろうなあ、と思わず目を細めて思い描いてしまうほど、料理ネタは素晴らしいです。蕎麦食いてえ、特に天ぷらそば。
悠々自適の毎日を送ることになる九郎爺ちゃんですが、うん、まあ色々と巻き込まれて頼まれ仕事をしたり、フラフラしてるところを捕まえられて仕事を手伝わされたり、と決して働いていないわけじゃあないのですが、基本定年退職後の自由気ままな余生であります。しゃかりきになって何かをするということはなく、しかし見てくれはまだ小僧もいいところの若者なので、たとえばお金持ちの未亡人からお小遣いを貰って悪い友達と博打ですかんぴんになって戻ってきたりして、さらに追加で貰ったお小遣いでお酒なんか呑んでたりすると……完全に見た目「ヒモ」w
いや、まだ今のところはそんなにヒモっぽくないのですが、今後どんどん石燕姉さんがすごく良い顔で何も言わずにお小遣いをくれはじめるので、そうなるともう素晴らしく「ヒモ」っぽくなっていって、色々素敵です、九郎さんw いや、九郎本人全然お金困ってないんですけどね。なんやかんやとお金は手元に転がりこんでくるので。

「小説家になろう」からの書籍化作品も増えてきましたけれど、まさかこれが世にでるとは嬉しい限り。数あるなろう小説の中でも、一番「好きな」作品はどれか、と問われればこれを挙げたいくらいには大好きな作品であり、無茶苦茶楽しく面白いお話ですので、これを機会に手に取る人が増えてくれたら、と願うばかりです。
わたくし、超おすすめ♪

 

12月8日


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