ラストラウンド・アーサーズ

ラストラウンド・アーサーズ 4.最弱の騎士と最も優れた騎士 ★★★☆   



【ラストラウンド・アーサーズ 4.最弱の騎士と最も優れた騎士】 羊太郎 / はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

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「ごめんね…凛太朗君…私…約束…守れなかった…」
魔人の力を引き出し覚醒したことで、瑠奈に振り回される賑やかで騒がしくもどこか心地よい日常を取り戻した凛太朗だったが、その代償によって那雪は世界から消失してしまったことを知る。彼女を救い出す唯一の方法は聖杯を手にすること。しかし伝説時代のアーサー王すら手に入らなかった聖杯の探索は、凛太朗たちの想像も超えた困難なもので―。
「私が、貴方を家臣にするのに相応しい、世界一の王になれるってこと…貴方に証明するわ」
聖杯を巡りすれ違う想いはアーサー王とマーリンの命を懸けた決闘にまで発展してしまい!!
もう開き直ってやけくそでビキニ水着営業をノリノリでやってるケイ卿、そんな貴女が大好きです。もう嫌がるのも恥ずかしがるのも擦り切れて摩耗しちゃってるあたり、最高ですよね?
こんなのしてくれる騎士とか居ないからなあ。なので瑠奈の王道にはやはりケイ卿は必須なのである。
……あれ、何気にガラハッド卿もやってくれそうな気がしてきたぞ、それもノリノリで。飄々として超然としたパーフェクト騎士なガラハッドでしたけど、彼女の浮世離れした部分って瑠奈の無茶振りもわりと楽しそうにやっちゃいそうな気配があるんですよね。恥ずかしがったり騎士らしくないとか嫌がったりする姿があんまり浮かばない、どころか面白そうと楽しそうにやってる姿が結構簡単に思い浮かんでしまう。あかん、ケイ卿アンデンティティのピンチじゃないのか、これ。
本来ならケイ卿パワーアップイベントでもあった今回の話ですけど、実際これまで見事なまでの戦闘では役立たずだったケイ卿がガラハッド卿から貰った剣によって限定条件下ではありますけれど大いに活躍できそうな余地ができたわけですけれど、なんだかんだと美味しいところはガラハッド卿に取られちゃってて、クライマックスの方でも目立てていたかというと……やっぱりガラハッドが持ってっちゃってた気がするぞ。しかも、最後瑠奈がやらかしてくれちゃいましたし。あの瑠奈の空気読まねえやらかしで、見事にガラハッド卿にも隙というかギャグもコメディも出来ますよー、という要素がエンチャントされてしまいましたしね。犬神家までやっちゃったら大概なんでもできますよ? 一方でナチュラルにケイ卿にはマウントとっているようにケイちゃんみたいなイジラレ属性ではなく、むしろ瑠奈と一緒にケイ卿の事弄る側であることがすでに発覚していますし、これはケイ卿さらなる受難の時代のはじまりなんじゃないだろうか。

さて、ここまで引っ張ってきた那雪の正体がいつ凛太郎にバレるか、というテーマは那雪を見舞った受難によって一気にシャッフルされることに。正直、那雪の正体であるニニムとマーリンの関係は凛太郎が知ったときにはどうやったって一波乱起こるしかなかったんですよね。凛太郎ってなんだかんだとさらっと水に流せるような爽やかな性格していないし、たとえ許せていたとしてもグジグジと引っ張って拗らせてしまうのは必定だったのです。那雪の方は罪悪感で押しつぶされる寸前で、グジグジする凛太郎をスカッと押し倒せる立ち位置じゃありませんでしたし。色んな意味で状況を吹っ飛ばせる性格の瑠奈が、二人の間を結果として取り持つのかと思ってたのですが。
那雪の置かれた状況が凛太郎をウジウジグダグダしている余裕を一切なくしてしまったわけで。凛太郎って超有能すぎて何もかもが退屈すぎるぜー、というスタンスでこの戦いに首突っ込んできたくせに、わりといつも余裕なくて必死だよなあ、と思うところがあったのですけれどここに来て必死さがカンスト到達してしまったわけで。一切の余裕なく、那雪を救うために達成不可能の試練に突っ込んでいくことに。なんだかんだと、いつもサポートに回って一杯一杯な凛太郎を助けてる気がするぞ、瑠奈王さま。王様なのに。
ここで瑠奈と凛太郎が実は幼馴染で、瑠奈が王様目指したのも凛太郎が自分の能力を鍛え伸ばしてきたのも、根底に二人の出会いと約束があったのだ、というわりと二人にとって重要な過去の出来事をこの段階で凛太郎に気づかせるとはこれも思わなかったわけで。結構急ぎ足じゃないですか? もっとじっくりここぞという場面でもってくるネタだと考えていたのですが。いや、聖杯探索の罠にはまってにっちもさっちもいかなくなった凛太郎、最大の不覚という場面なのでここぞといえばここぞとも言えるのでしょうけれど。
那雪の正体と凛太郎のぼやけた記憶にある大事な幼馴染との約束。これを同時に持ってきたということは、扱いに差を与えたくなかったということなのか。正直、ニニムとマーリンの愛憎塗れの関係を思うと、那雪とニニムはまた別人でマーリンと凛太郎も違う人間だから、那雪は大切な仲間だけれど恋愛感情はない、という凛太郎の態度はええーってな感じなんですけどね。いやそんな割り切れるもんかいな、てなもんじゃないですか。だいたい、いうほどマーリンと凛太郎別人扱い自身がしてないじゃん。めっちゃマーリンじゃん。
さて、そこから瑠奈がどれだけ巻き返せるのか。那雪の献身に全然負けないくらい瑠奈も何だかんだと凛太郎のこと助けまくってますからね、現世では決して引けをとってなくて互角だと思うのですが。

それにしても、冒頭は面白かったなあ。よく、大いなる戦いを前に今まで通りの日常を過ごすことで「こんな事をしてる場合なのだろうか?」と主人公が葛藤したり悩んだり燻ったりしてるシーンは珍しくないですけれど、そうやって穏やかに日常を過ごすのは大事なことで、それを無駄に感じてしまう主人公が焦っていたり考え違いをしていたり、という方向にあるものなのですが。
本作の冒頭での凛太郎の場合はあれですもんね。選挙ポスターの瑠奈の水着写真のおぱーいの部分を画像修正ソフトを使って偽りの大きさに増やすために、黙々とPCに向かいマウスカチカチ鳴らして、ふと我に返り「俺は一体、何をやってるんだーーーー!!」と魂から絶叫。
ほんとそれな! 
いやここまで本当に何をやってるんだ、とこんな事やってる場合じゃねえってな主人公に共感同意できるシーンははじめてだったぞぃw

シリーズ感想

ラストラウンド・アーサーズ 3.雪の少女とアーサー殺しの王 ★★★☆   



【ラストラウンド・アーサーズ 3.雪の少女とアーサー殺しの王】 羊太郎/はいむら きよたか  富士見ファンタジア文庫

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大切なものはいつだって失ってから初めて気付く。魔女とトリスタン卿を従え『正義』を語るアーサー王候補―片岡仁の強襲によって、瀕死の重傷を負ってしまう瑠奈。絶体絶命の危機を救ったのは―冬瀬那雪だった。
「どんな代償を払ってでも、助けるって覚悟はある?」
湖の貴婦人だった彼女の手を借りて、凛太朗は真なる力を求め、魔人であるもう一人の自分と対峙することに!踏みにじられた居場所と大切な人を取り戻すため、そして偽りの正義を打ち砕くため、マーリン覚醒の刻!!

そう言えば、もう当初のクズアーサー要素と外道マーリン要素って殆どなくなってしまったような気がする。凛太朗は真面目に主人公してるし、瑠奈もわりと真面目にヒロインしてるし。変わらず不憫なのって、ケイ卿だけじゃないのかしら。今回なんぞ、ほぼほぼ存在抹消されてしまってましたし。物理的に消えてたしw
ガウェインが毎回やられ役なのは変わらないのに騎士として株をあげ続けてるのに対して、ケイお姉ちゃんと来たら……。まあ今回一番割りを食ったというかえらい目にあってたのはエマな気がするけれど。アーサー王候補から脱落してしまったエマには実質戦う力がなくなってしまっているにも関わらず、狙われる羽目になってますし。あれ、零華の本心を鑑みると那雪がいなくても命だけは大丈夫だったかもしれないけれど。
いや、一番ひどい目にあったのはトリスタン卿かもしれませんよね。騎士の方は誰が主人か選べないわけですから、よりにもよってあんな小物に。しかも、妖女にイイように操られるだけの度し難い愚劣者に従わされてるわけですから。それにしても、諦めて抵抗しなさすぎ、という体でしたけれど。
片岡くん、小物ムーブはいいんだけれどあそこまで英雄願望拗らせるような小僧ってホントにいるんだろうか。あれこそファンタジーに見えるんだけれど、こんなやつホントに居るのかよという奴が実在するのがこの現実世界だからなあ。やられ役としては最高のムカつくアホっぷりだったので、助演男優賞にあたるのかもしれないけれど、あれだけやらかしてたんだからそれ以上にもっとしつこいくらい「ザマァ」してくれても良かったんですよ? ああいう輩は一発殴っておしまいよりも、徹底的に心をべきべきに折ってしまう展開のほうがすっきりするんですよねー。
マーリンも外道を名乗るなら鬼畜外道らしくネチネチと弄り倒してもよかったんですよ?w
でも、凛太朗もなんか自分のダークサイドを封印してしまった節もあるので、妙に素直になっちゃって。あれって瑠奈との過去も思い出したってことでいいんだろうか。でないと、これまでの事で瑠奈のこと気にいっているにしてもあそこまで入れ込むまではまだ深入りしていないもんなあ。
それよりも、那雪の方が中途半端に湖の貴婦人だったと正体を明らかにしてしまったのが気がかりである。普通正体を明かしたならば、それをきっかけに距離感詰まるものなんだけれど、彼女の場合湖の貴婦人というのはバラしても、そのうちの誰なのかについては言えないままなので、逆に距離を置くことになっちゃってるんですよね。もともと、瑠奈との間を取り持ちつつ自分は離れるつもりだったっぽいから仕方ないのだけれど、あそこまで露骨に寂しそう悲しそうにされるとねえ。過去のエピソードにしても、何らかの理由があったっぽいのは明らかなんだけれど、どんな理由があったにしろ実際マーリンのことぶっ殺しているだけに、よっぽどでないと言い訳きかないよなあ、これ。それを理解しているからこそ、なんだろうけれど。

その点、モーさんの方は色々と動機やらがわかりやすい。この子、根本的に性根が正しい騎士なんですよね。反逆の騎士という銘に振り回されて、不意打ちやら闇討ちやらひねた行動取っているけれど、真っ当さでは円卓でも随一なんじゃないだろうか。だからこそ、反逆に走らざるを得なかったというべきか。
ぶっちゃけ、誕生日にかこつけて殺されかかったモーさんとしては、他の円卓やマーリンみたいにアーサーを支えられなかった、という罪については免除してもいいんじゃないの、と思わないでもない。アーサー王がトチ狂って予言にある自分を殺すであろう人物の誕生日の子供を集めて皆殺しにした、という話、マーリンが居なくなったあとらしいし、それで殺されかかってるモードレッドって騎士として仕えだしたのってアーサー王がもう王としてあかんくなりはじめてる時期から、ということになっちゃいますし。ちょっと一切の時系列どうなってるかわかりませんけど。
モードレッド視点からみるとアーサー王って暴君以外の何者でもないもんなあ。モーさんについて反逆した他の騎士たちも、うまく行かなかったからって恨み言ばっかり残してしまうのって根性据わってないよなあ。ああいうのを見てしまうと、思いつめすぎて短絡的にディナダン卿を暗殺せずになんとか説得出来るまで粘れば良かったのに、と思ってしまう。いや、あのディナダン卿の様子からして、真摯に言葉を尽くせば最後にはモーさんの方味方してくれたと思うんだよなあ。
ああいうおっさん、情に流されるんですよねえ。だからこそ、好ましいタイプなのですが。情に流されるからこそ、流されきって自分を殺した相手をすら見捨てられないわけですから。
あのまま脱落、と行かずに彼女らコンビが生き残ったのは結構重要そう。モルガンがあれだけ暗躍しているとなると、頼りになるカウンター勢力は居てくれた方がありがたいですし。まだ、瑠奈自身と零華自身がちゃんと接触していないのが気がかりというか、あの二人が絡むとどうなるんだろう。その化学反応はちょっと楽しみではあります。

シリーズ感想

ラストラウンド・アーサーズ 2.聖女アーサーと赤の幼女騎士 ★★★☆  



【ラストラウンド・アーサーズ 2.聖女アーサーと赤の幼女騎士】 羊太郎/はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

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「5000万あったんだぞ、どうしてそれが0になってんの!?」
“アーサー王継承戦”に備え、一緒に住む提案をした凛太朗に、瑠奈はあろうことか凛太朗の全財産を使い込み屋敷を買うという相変わらずのロクでなしっぷりを発揮する。そして出会う次なるアーサー王候補は―
「師匠!お久しぶりです」
凛太朗がかつて戦い方を教えた弟子のエマ=ミシェーレ。エマに仕える“騎士”ラモラック卿の圧倒的な実力に劣勢を強いられる瑠奈は
「貴方、凛太朗の身請けにいくら出す!?」
まさかの保身と金儲けに走り始め!?納得できないエマは瑠奈と凛太朗を賭けて、王としての器を勝負することになり―。
ガウェイン、掛け値なしのクズじゃねえか!! これが本作ではなく、原作のトマス・マロリー版アーサー王伝説のエピソードなんですよね。
騎士とは!? 騎士とは!? ただのチンピラの所業じゃないですか。これ、モードレッドが加わっているのはともかくとして、さり気なくアグラヴェインまで参加してるのがこやつ……って感じで。
ってか、ガウェイン兄弟こうしてみるとみんなろくでもないな!!
とまあ、ここのマーリンこと凛太郎に敵視され、生前の所業からラモラック卿に八つ裂きにされても飽き足らないほど敵視されちゃっているガウェイン卿だけど……どんまい!
今世ではヘタレな部分もあれこれ見せていますが、なんだかんだ頑張ってますし、頑張ってますよね!? 今回、マスターのフェリシアと小物というかオマケ扱いを終始されながら、何気に美味しいところをたくさん持ってったこの主従コンビ、結構好きです。ってあ、フェリシアってラモラック卿とかからもまったく眼中にない扱いをされてたのに、すげえいい仕事してたじゃねえですか……。
本格的に何もしていなかったケイ姉ちゃんが、メンタルやばくなるくらいにw

それはそれとして、ラモラック卿である。ガウェインがやらかしたせいで知名度超低い、という話で実際自分も全然知らんかったです。昨今超有名なFGOは勿論として、それ以外の円卓騎士団をネタでもなんでも取り扱った作品の中でもちょっと覚えてないんですよね。
しかし、その実力はランスロット卿と伍する騎士団最強の騎士でもあったということ。そうなのかー。
まあ、最強にも関わらずあんな殺され方されたらなあ。
はいむらー氏の描くラモラック卿は、なんというか表紙見たら一発でどんなキャラかわかるような見事なデザインてか佇まいで、ちょっとおっぴろげすぎじゃないですかね!? 体型的には確かに幼女かもしれないけれど、あの態度と言い妖艶さといい雰囲気的には幼女っぽさ欠片もないんですよねえ。
実際、あの倒錯した性格は幼女という特質を完全に塗りつぶしていますし。まあ、幼女だからこそアレさが引き立つのかもしれませんが。

ガウェインの強烈すぎるエピソードと、ラモラック卿の強烈すぎるキャラクターにエマの強烈すぎる境遇を目の当たりにすると、凛太郎と瑠奈って全然外道でもゲスでもないよなあ、と思ってしまいます。というか、普通にいい奴らなんですよねえ……アホだけど。特に瑠奈、アホだけど!
瑠奈は瑠奈なりにアホなりに、凛太郎振り回している方がやっぱり似合います。凛太郎の方の言動に瑠奈が振り回される方になるとなあ……アホが際立ってしまって、なんかもうこの娘誰か介護してあげて! と言いたくなってしまいます。ケイ姉ちゃんだと全く役に立たないし、フェリシアもこういう場合完全に賑やかしも良いところなので、やはり凛太郎にその御鉢を受け取ってもらわないと格好つかないや。でも、だからこそこの二人のコンビは様になるのでしょう。
エマは、素材としては良いところついていたのかもしれませんけれど、なんせ境遇からくる性質が完全にぶっ壊れちゃってましたからね、まずもって土俵に上がれてなかった、というべきなのかもしれません。それを理解していた凛太郎と、アホなので全くわかってなくて独り相撲していた瑠奈とで、まあ見事にすれ違ってしまったのですが。
むしろここからリハビリして立て直したら、エマの出番は周回遅れであろうと回ってくる可能性はなきにしもあらず、と期待したところ。ほんと、素地はピカイチなだけに。

しかし、いきなり円卓一位のランスロットとここで二位のラモラック卿をだしてしまって、後の騎士は実力的に大丈夫なのか!? と言いたいところだけれど、何しろ多士済々なのが円卓騎士団。強い云々は置いておいてもアレなのがまだまだ居るだけに、むしろこれから一筋縄ではいかなくなるかしら。

一巻感想

ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン ★★★☆  

ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン (ファンタジア文庫)

【ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン】 羊太郎/はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

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生まれながらにして、すべてのことが出来すぎてしまうせいで空虚な日々を過ごす高校生、真神凛太朗。暇つぶしのため、あえて“最弱”と呼ばれる瑠奈=アルトゥールの陣営に加わり、来るべき世界の危機を救うため真なるアーサー王を決める“アーサー王継承戦”に参加することになるのだが…。「私のエクスカリバー…売って、お金に換えちゃったから」瑠奈は、聖剣を売り払い、召喚した“騎士”のケイ卿にはコスプレさせて利用したりするロクでなしで!?しかし絶望的な危機に瀕した時、瑠奈は凛太朗さえも認める強さを垣間見せ―。新たなるアーサー王伝説がここに始まる!
作中で引用されるアーサー王伝説の本の著者ジョン・シープって、作者御本人のことですよね、はい。ある程度一通りの文章作ってたりするんだろうか。
アーサー王(ギャル)である。若い女性のお腹だしファッションってエロ可愛いことこの上ないはずなんだけれど、瑠奈っちのそれはすばらしく色気に欠けていますね!!
しかしこれはこれで! 基本的にはいむらーさんの絵は大好物なので、彼女みたいな陽性かつ奔放なキャラクターは主人公らしくていいじゃないですか。
瑠奈っち、確かにクズっぽいロクでなしの類なのだけれど、彼女なりの王様像というのを一貫して貫いている気合入ったネーチャンでもあるんですよね。すべてのクズっぽい言動にはそれを成すべき理由があり、でもイヤイヤやっているわけではなく、心の底から楽しみながら周囲を巻き添えにしつつ、しかし周囲だってノリノリにさせてみんなまとめて暴走させる、という意味ではちゃんと上に立つもの、大衆を率いるもの、皆の想いを背負うもの、としての責任を果たしている。どれほど無茶苦茶に見えても、彼女は立派な王様なわけだ。誰もが彼女のために立ち上がり、彼女の敵に立ちふさがり、彼女のために奮起する。なぜならば、彼女こそ呵々大笑しながら傷だらけになり血まみれになりながら、率先して立ちはだかる壁を切り開いていく道標だからだ。
あのカラー口絵の女の子のくせにボロボロで、それなのにキラキラと輝いて聖剣ぶん回している姿はまさにそれを象徴するものだ、と全部読み終わったあとに納得させられるものだった。あのお腹は良いお腹だ!
それにしても、俺様なんでもできるぜー、俺様の言うこと聞いてりゃ全部勝てるぜー、と調子乗りまくって瑠奈っちに声かけてきた真神凛太朗くん、まったく話を聞いてもらえないどころか途中で遮られて逆に首根っこひっつかまれて、毎回イイように利用され使い倒され振り回されて、???マークが飛び交っている間に見事に便利使いされ倒されてるの、これもまた痛快展開になるんだろうか。面白すぎるんですけどねえ、このあたり。
同じように瑠奈っちに振り回されて毎回「ひーん」と泣いているケイお姉ちゃんが誠に愛しく、この二人の「手下」、うん部下とか仲間とか配下とかじゃなくて手下と呼ぶのが一番相応しい二人を両脇に従わせて、ガハハハと大笑いしている瑠奈っちは、辺境の山賊の親分じみていて、それはそれで一種のアーサー王像なのかもしれない。そこはかとなく蛮族みがあるよね♪
ぶっちゃけ、このアーサー王の継承戦争ってバックグラウンドとか世界観がよくわかんなくて、なんで日本でこれやってんの? とか、そもそもどういうノリでこういうことになってるの? という舞台設定がかなり強引かつ雑にぶっこんできていて、いやほんとわかんないんですけど、てな感じでいまいち乗り切れない部分があるのも確かな話。それを無視して楽しめるほどの野放図な勢いはまだ足りてない。まあそういうもんだからいいじゃない! と思わせてくれるほどのもっとシッチャカメッチャカに楽しくガンガンやっていってくれたら、気にならなくなるかもしれないが。
ケイお姉ちゃんが果てしなく弄られているときこそは、もうなんにも気にならなくなってましたけどね! 瑠奈っち、これだけケイちゃんで遊んでおきながら、自分の行動原理の根源は乙女しまくってるというのはちょっとズルくない? 一人だけ恋する女の子属性あとから垣間見せるとかケイお姉ちゃんにごめんなさいしといたほうがいいじゃない? ケイお姉ちゃんは許してくれるだろうけれど。まあ瑠奈っちはひたすらやりたい放題やってた方が輝いているので、変に物分りの良い良い子ちゃんにならず、この路線で行ってください。今後は真神凛太朗の方もノリノリで付き合いそうな感じなので、より酷いことになりそうでワクワクします。

しかし、モルガンの正体はちょっと予想を外されたというか、え? そっちなの? という人物で、だったらこっちの娘は誰なんだ?? というあたりは次巻以降か。
円卓の騎士たちの中では超有名株のガウェインとランスロットを初っ端から出してしまったので、いやむしろこれからどういうキャラ付けを円卓の騎士たちにしてくのかは逆に楽しみかもしれない。ケイちゃんがある意味はっちゃけすぎてハードルあげまくってる気がしないでもないですけど。

あと、主人公の真神凛太朗。外道呼ばわりされてますし、天才人外扱いですけれど、俺様系なのにメンタル相当繊細ですわねえ。ってか、幼少から天才過ぎて両親からも嫌われて孤独になって寂しい、けど認めるのは癪だから、世の中斜に見て拗ねてます、ってどんだけ真っ当に柔いんだか。天才は天才なんだけれど、バカと紙一重系のそれではなく、根本真面目だし良識的だし頭おかしい系からは程遠いですよねえ。これはもう瑠奈っちに大いに振り回されている方が余計なこと考えなくて済む、という意味でも相性ピッタリなのでしょう。
あの先生のアドバイス、わりと的確に当てはまってたと思うんだけれど、あれが被っていた仮面の方というのは若干首を傾げたくなるんですよね。瑠奈と真神凛太朗のそれぞれの在りようを正確に見抜いて、その上で二人の関係性を深慮してないと、そう簡単にああいうセリフでてこないだろうし。
ああいうセリフを語っていた人が、あとでああなるというのはむしろ演技なんじゃないかと疑ってしまったくらいで。実際はそういうこともなさそうだったのだけれど。
本性の方がよっぽど底が浅くて、むしろ表向きの顔の方が洞察力も人間性も基本的な知性や思想の幅についても広かったり深かったりしてそう、というのはなんともはや。
もう一捻りある登場人物なんだろうか。せっかくだから期待したいところではあるんだけれど。

羊太郎作品感想
 

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11月9日

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