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ルルル文庫

封殺鬼 数え唄うたうもの4   

封殺鬼 数え唄うたうもの (ルルル文庫)

【封殺鬼 数え唄うたうもの】 霜島ケイ/カズキヨネ ルルル文庫

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『本家』の二人の鬼・聖と弓生が使役の任から解放されて半年。相変わらず新宿で拝み屋をやっている野坂三吾のもとにある日、仕事の依頼が舞い込む。依頼主は女子大生、高階結衣。大学の探検サークルに所属している学生がつぎつぎに不審な死を遂げているので、助けてほしいという。三吾は二人とともに、調査を開始した。
事の起こりはサークルのメンバー九人が、『埋蔵金探し』と称して瀬戸内海にある恵比子(えびす)島の禁忌を破ったことだった。島の岬には七体の地蔵が並んでいて、その場所に近づいた者は、祟りを受け島に伝わる唄の通りの死を迎えるという。この島は潮の流れの関係で昔から水死体が流れ着くことが多く、地蔵はそれを供養するためのもの――だがなぜ、それが祟るのか。
謎を解明する過程で、三吾と二人の鬼は、島のもうひとつの言い伝えを知るが…!?

『薄桜鬼』などで大人気のカズキヨネを新イラストレーターに迎え、大人気シリーズの現代編新作がいよいよ登場!!
封殺鬼シリーズ、続行だけでも嬉しいのに、まさかの現代編。そう、近年続いていた戦前を舞台にした桐子編は、いうなればスピンオフであって封殺鬼の本編は元々この現代を舞台にした時代の話だったんですよね。その本編も星神編の終結と共に聖と弓生が本家の使役から解き放たれ、自由を得るとともに幕引きと相成っていたわけですけれど、あれから何年ですか? 七年? 八年ですか。2005年にシリーズ完結となったので、もうそんなになるのか。それだけ久々の現代編、しかも時系列を遡るのではなく、終わった後の続きですよ。続いてくれるんだ、と思うとうれしくて仕方がない。
残念ながら、封殺鬼シリーズを出版していたキャンパス文庫は現在潰れてしまって、現在シリーズを入手するのは極めて難しい状況で、新装版も確か何巻か出したあとは音沙汰なくなってしまっているのですが、この作品はホントに素晴らしい傑作なので、是非手に入れる機会があれば手を出してもらいたいものです。というか、新装版改めて出しましょうよw 
さて、もう現代は随分と久しぶりで、聖と弓生はというと桐子様に構いっ放しの親ばか状態でしたから、こっちに戻るにもブランクは大丈夫なのか、と心配する余地もなく、懐かしい三吾や佐穂子たちとのどこかのほほんとしたやりとりは相変わらずで、ブランクなんか全然感じませんでしたよ。暴走する聖にマイペースな弓生、そんな二人に振り回される苦労人の三吾。この構図はやっぱり変わらんのだなあ。そこに佐穂子や成樹が加わって、ワイワイと賑やかに鍋パーティーしている姿には、ほっこりすると同時に安堵感も湧き上がります。一時期から、風雲急を告げる展開の連続にみんな色々と切羽詰まり追い詰められて、こんな風に和やかに過ごせる時間はいつの間にかなくなっていましたからね。改めてこうして騒げるというのは、それだけちゃんと平和が取り戻せて、それぞれの関係にも決着がついて憂いがなくなった、ということなのですから。特に、聖と弓生を取り巻く重苦しい環境が、先のシリーズ関係である程度綺麗に払拭された事も大きいのでしょう。弓生がこれだけリラックスしていられるのって、桐子が鬼使いであった頃を含めても、清明の時代からホントに数えるほどしかなかったでしょうし。まだ佐穂子が、微妙に聖のこと気にしている風だけれど、この二人の関係もある程度決着ついているので、今更ごちゃごちゃもめるほどでもないですし。ってか、あの男前なちびっ子の千冬が出てこないかとちと期待したのですが、さすがに今回は出番なかったか。どちらかというと、今回は三吾がメインで佐穂子はサポート役でしたもんね。
というわけで、今回は桐子さまみたいにラブコメしてくれるキャラがいないもので、もっぱら内容の方は島を訪れた大学生たちを様々な方法で殺して回る怪異の真相を探るミステリー形式。このベールに包まれた怪異の真実をフィールドワークなどでコツコツと探り当てていく形式は、まさに封殺鬼シリーズ本編の主軸と言ってもイイ方策だったので、これもまた懐かしいやら面白いやら。
序盤は、岬にある7つの地蔵や、順番に殺されていく被害者たちなど、あからさまに「七人ミサキ」を連想させる展開だったのですが、何気に一筋縄ではいかなかったりするのがこの作品。いや、普通に七人ミサキじゃないの? と思ってて、なんでプロである三吾たちが言及しないのかと首を傾げていたら、どうやら早々にその可能性は排除していたようで、途中でさっさと七人ミサキじゃないと断言されてしまいました、参った。
やっぱり、この怪異との対決を絡めた謎解きは面白いなあ。一つ間違えれば陰惨極まりない鬱な話になろうというものなんですけれど、そういう時、聖がいい意味で空気を読まずに重苦しい空気を吹き飛ばしてくれるので、救われる思いです。それに、結末も古いものも新しいものの、残された想いも今を生きている人の想いも否定せず、柔らかく包み込むような優しい終わり方で、思わず和やかな余韻に浸ってしまうものでした。
三吾も佐穂子も、いい加減ぶらぶら出来ずにそろそろ御景、秋川本家を継がなきゃいけない時期に来ていますけれど、こんな風に聖や弓生が使役ではなく、友人として見守っていてくれるなら、滞りなくうまくやってけるんじゃないかなあ。神島達彦も、いい意味で食えなくなっているようですし……戦隊物の陰陽セブン、いいのか? 吹っ切れた後の達彦のキャラが、微妙に怪しくなってきてないだろうか、これ。聖と波長合ってなきゃいいんだけれど。やっぱり、色的にはブラックなんだろうかw
あと、聖さん、御師さんはそろそろ許してあげてください。あんたのノリについていけるほど、もう若くないんですから。どれだけご老人の血圧あげたら気が済むんだw 緊急の連絡かと慌てて電話口に駆けつけて、出てきた話が陰陽セブンとか、罰ゲームにも程があるだろう。中央のえらい人なんですよ、その人w

ある意味、再スタートという感じのきりの良いお話で、これは改めて続編期待出来るんでしょうか。期待したいですねえ。

封殺鬼 クダンノ如シ(下)4   

封殺鬼 クダンノ如シ 下 (ルルル文庫)

【封殺鬼 クダンノ如シ(下)】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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闇の陰陽師・桐子編完結! 志郎との恋は?

聖や弓生とともに怪異の根源である穂積関係の周辺事情を探る桐子。やがて彼女は穂積妙子に「寄生」しているものの正体が祟り神であり、このままでは妙子の生命力が喰らい尽くされるということを知る。桐子は祟り神を祓い落とすため、穂積逸人によって閉じ込められている塔から彼女を連れ出すことにした! ついにクライマックスを迎える神島桐子編。桐子と 志郎の恋にもようやく決着が!?
ルルル文庫に場所を移して描かれてきた神島桐子を主人公とするお話はこれが最後、なんて言われて納得できるカー! と思ってたんですよ、最初は。またまた〜、そうは言いつつまだ続きは出るんでしょ? と思ってた。少なくとも、神島桐子と武見志郎の物語がほんとうの意味で決着する、あの封殺鬼シリーズ本編にてわずかに触れられていた二人の話の顛末、そこまでは描かれるものだと思っていたのでした。
描いて欲しいと思っていた。
でも、それを願っていた私の気持ちとは、決して単純にそのシーンを目の当たりにしたかった訳じゃなかったんだ、というのを今回の話を読んで気付かされたのでした。
私はただ、桐子と志郎の、二人の気持ちを知りたかったのでした。どんな想いで志郎があんな選択をして、桐子がどうしてあんな態度を取る事を選んだのかを、ただただ知りたかったのだという事に気付かされたのです。その想いは、ルルル文庫にて神島桐子という少女の成長を目の当たりにするにつれて募ってきたものなのでしょう。桐子がこんなにも純粋に恋をして、そこらへんの年頃の乙女のように胸を高鳴らせ、芳醇な感性を育んでいくのを見るにつれて、疑問が募っていたのでしょう。このシリーズでの変遷を見るまで、私は神島桐子という人物はもっと冷徹なほど理性的で、情は厚くてもそれを表に出すことをしない色々な意味で徹底した人物なのだろうと思い込んでいましたから。齢十歳の時に、お家騒動の渦中で非情な決断し、自分は二度と泣かないと誓った少女。その頑ななまでに強くあろうとする姿は荼吉尼と呼ばれるに相応しく、後の封殺鬼シリーズの本編で畏怖しか抱けないような凄まじい存在感で若者たちを圧倒した、神島の元当主として姿を現した桐子婆さんと直結して見えたものでした。あの頑なな幼女は、そのまま強大にして伝説の、神島家に隆盛をもたらした稀代の当主へと変わらずに成っていったんだろうな、と思っていたのです。そんな神島桐子のイメージと、あの連れ添いとなった男との顛末で見せた態度は、決して違和感なく、ああ彼女ならそうして不思議はないなあ、と受け止めていたのでした。
でも……神島桐子は思っているような恐ろしい人物でもゆるぎもブレもしないひたすらに冷徹な女でもありませんでした。ルルル文庫に移ってからの、桐子を主人公にしたシリーズが始まった当初の私の混乱と悶絶っぷりを御覧ください。そりゃもう、ガラガラと桐子のイメージは崩れていきましたとも。そして、武見志郎との出会いと交流、そして育まれていく温かな恋心、真っ白な乙女の心情。まるで普通の女の子と変わりない、しかし神島の当主として誇り高く強く在り続ける桐子の姿を見るにつけて、建前に隠れない、ちゃんと男と女として心通わせる恋を育む二人を見て……疑問は募っていたのでしょうね。
以前のイメージなら違和感のなかった、二人の結末に対する桐子の態度。でも、本当の桐子は昔のイメージとは全然違っていて、だったらこの桐子は、桐子を想う青年・志郎は、あの事件の時、本当はどんな想いを抱いていたのだろう。どんな思いで、その時を迎えたのだろうと。
多分それを……二人の本当の気持ちを、知りたかったのだと思います。
そして、実際にその顛末は描かれることはなくても、二人の心情はここで描かれました。

「どうすれば、俺は君の役に立てる?」
「何かあった時のために、私のそばにいて私を守れ」
「わかった」
 わずかの躊躇もなく、志郎は応じた。
(中略)
「俺は、君を守ろう」


「泣かないからな。絶対に、おまえのためになんか泣かない」
 強い声で、きっぱりと。
「万が一だか何だか知らないが、そんなことがあったら思い切り罵倒してやる。けして許さない」
もう二度と泣かないと誓った少女が泣いた夜。彼女がその決意を綻ばせたのは多分、この一度だけ。この優しい青年の胸の中でだけ、少女は当主である事を止められたのだ。
けして許さない、その一言に篭められた桐子の気持ちを思いめぐらすたびに、涙が出てくる。
……武見志郎には言いたいことが山ほどできた。多分、聖も弓生も同じ気持だろう。貴方は約束を守り誓いを果たしたつもりなのかもしれないけれど、この子が貴方にして欲しかったのはそういう事じゃなかったはずなのだ。この子は情が厚い分、一途である分、根に持ち続けるぞ。多分、平成の今の世に至ってもまだ許していないに違いない。神島桐子は、決して前言を翻さないのだから。それができたのは、貴方の前でだけだったのだから。そんな意地っ張りさが哀しくて微笑ましくて、余計に有言を実行させてしまった志郎に憤りともどかしさと、男としての羨みを抱いてしまう。

答えは得た。疑問は晴れ、万感だけがここにある。ならば、一番幸せだったこの時期を最後にして、過去を閉じるがよろしかろう。
孤高で孤独だった幼い少女は、親代わりの人を得て、損得抜きの親友を得て、信頼出来る部下を得て、本当の恋を知り、愛に包まれ、幸せを得ていたのだと、その事実を得た時点で十分です。
神島桐子は幸せだった。幸せになった。それで、十分です。その事実があれば、十分です。
それでも、だからこそ……思いを馳せるたびに泣いてしまうんだろうなあ……。

重ね重ね、聖と弓生が封殺鬼シリーズ本編にて、あれほどまでに神島にこだわり続けた理由が身に沁みた。彼らにとっても、この時代は本当に幸せな時代だったんだろうなあ。
納戸にこもってしまった桐子さま、ほんに可愛いものでした。清香は、最後までいい友達になってくれたなあ。この子は、長い人生の先の先まで桐子の味方で、親友で居てくれたに違いない。宇和島のミカさんは、色々な意味で無敵でした。神島でこの人に勝てる人いないんじゃないだろうか。

……語りたいことは尽きず、万感交到るばかりではありますが、一先ずはここに頁を閉じたいと思います。
本当に、素晴らしい過去編でした。
願うならば、再びこの【封殺鬼】のシリーズを何らかの形で続けていただけたら、と想うばかりです。
出来たら、短くてもいいので現代編。秋川佐穂子や御景三吾にもう一度出会いたいなあ。也さん絵の佐穂子とか、めっちゃ見たいですよ〜。

霜島ケイ作品感想

封殺鬼 クダンノ如シ(中)4   

封殺鬼 クダンノ如シ 中 (ルルル文庫)

【封殺鬼 クダンノ如シ(中)】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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鬼を使役する少女が女学院の怪異に迫る!

帝華女学院に潜む闇。その鍵を握ると思われる穂積妙子が、ついに桐子たちの前に姿を現した。しかし普通の少女にしか見えない彼女は、自分がなぜ魔性と呼ばれるのかを知らないという。桐子と清香が学院内で調査を続ける一方で、学院の外では弓生と聖が動いていた。それぞれが得た情報を重ねあわせた時、隠れていた真実が見えてくる――。桐子と清香、そして妙子の恋心にも要注目な第二弾!
おいおいおいおい、ついに桐子が「男なんて!!」なんて年頃の女の子みたいな事を言い出しましたよ!! マジかー。つい先日まで普通の若い女性らしい感性どころか、一般的な価値観からも遠ざかった浮世離れした闇の担い手だったのに。
なんか、視点が弓生や聖と同じく完全に保護者ポディションにハマってしまって、桐子の一挙手一投足にハラハラドキドキしてしまっている自分が居て、なんだかおもはがゆい。これが親心というものか。宇和島夫婦みたいにどっしり構えられたらいいんだろうけれど、こればかりは年季の差だなあ。って、弓生と聖は千年来生きてるから年季で言うなら誰にも負けないはずなんだがなあ、なんでああも腰が定まらないんだか。桐子が、なんで長生きしている連中ほど成長しないんだ、と愚痴るのもあの二人などを見ていると、しみじみと納得してしまうばかりだ。
さても、時代は昭和の動乱期。この頃の都市部の庶民の生活風景や、新たに出回り始めた新商品など、興味深い時代風俗の話も散りばめてあって、そんな観点からも実に楽しませて貰っている。バスクリンって、こんな戦前の昔に登場してたんだ。てっきり、戦後も戦後。自宅に風呂が普通に常備される時代に入ってからの商品だと思っていた。
そんな物品豊かな都市部と違い、田舎や農村部は貧困が進み、都市部との格差が大きく広がっていたのもまた事実。そうした過酷な生活状況は、華やかなはずの帝華女学院にも反映されていて、異能の力を求められてこの学園に集められた女子には、実家が困窮を極めている者も少なくなく、支給される奨学金を細々と実家に送り続けている子も珍しくないという。この時代、口減らしのために子を奉公に出すどころか、遊郭まがいの場所に身売り同然に流される事も多々あったわけで、女学生にして貰えて奨学金まで貰えるという帝華女学院はマシな境遇どころじゃない、非常に恵まれた場所なのでしょう。たとえ、強大な魔の存在の気配に怯えながらも、逃げられない理由が彼女たちにはあったわけだ。
時代の歪みが、こんな場所にも形を変えて跳ね返ってきている。
軍国主義が徐々にはびこり、5・15事件の勃発も相まって、破滅の気配が暗雲よろしく中、それでも少女たちにとって十代のその次代は青春の時代でもあったのでした。三人女がよれば姦しい、なんて事は言わずもがなですが、何故か予言を為す怪異「件」を巡るはずの一連の自体は、何故か非常に入り組んだ三組の男女の恋模様の話へとスライドしていたわけで……どうしてこうなった? まるで少女小説のような展開じゃないか!! いやこれ、ルルル文庫なんですけどね! カグヤのあの桐子と志郎への不可解な態度の謎は、そういう事だったのか。これは、カグヤ本人が自分はちゃんと当主になれないんだ、みたいな事を言い出してくれたお陰で、ようやく「あれ?」と思えたぐらいで、それまでは端から疑問を抱いてなかったんですよね。まったく疑っていなかった。そういうことだったのか。そりゃあ、清香も曖昧な態度を取るわさ。と、思ったら清香もそういうことだったの!? 
この先、数々の難事が待ち構えている桐子にとって、同性の気のおけない親友がいる、いないはとても大きな違いがあると思うんですよ。裏の大家、神島家の当主として闇を仕切っていかなければならない桐子は、必ず孤独を強いられることになります。その彼女に、思い出としての友人ではなく、立場を超えて繋がる何十年にも渡って続く友誼があるかないかは、本当に大きな違いだと思うのです。だからこそ、清香との関係は大事にしてほしい。桐子の初めてにしておそらく最後の学園生活が、哀しい断絶で終わらないことを願うばかりです。
なんか、桐子については心配してばっかりだなあ。ある程度、彼女を待っている顛末を既に知っているからなんでしょうけれど。
ともあれ、早く志郎は態度をハッキリさせて、桐子の不安を拭ってほしいものです。最近、温厚で物静かなはずの柳の精さんが、あまりに昼行灯な志郎に若干キレ気味なのが心臓に悪いんですよ。そのうち、本気で枝とかで首とか絞めてきそうでw


霜島ケイ作品感想

封殺鬼 クダンノ如シ(上)4   

封殺鬼 クダンノ如シ 上 (ルルル文庫)

【封殺鬼 クダンノ如シ(上)】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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闇の陰陽師少女と千年を生きる鬼達の物語!

時は昭和初期。陰陽道の影の部分を受け継ぐ神島家の当主桐子は、見合い話から逃げるため東京の女学院に通うことに。しかし軍が絡んでいると見られるそこには、精神に変調を来す生徒が出るという穏やかでない噂が流れていた。自らが使役する二人の鬼、聖と弓生の協力を得ながら噂の真相を探る桐子。どうやら学院の敷地内の塔に潜む何者かが鍵を握っているようだった――。そして桐子の恋に進展!?全三巻刊行開始!
もう、桐子があまりにも幸せそうで、なんだか泣けてくるんです。てっきり、桐子と志郎の恋物語って幸せのピークは前回の【帝都万葉】だと思い込んでいました。だって、あんなにも初々しく恋のときめきに陶酔し、幸せそうに今の時間を楽しんでいる桐子の、それ以上なんて想像も出来なかったんですよ。ところが、さらに桐子を取り巻く環境は彼女に得難い幸福を味わわせていくのである。あの桐子が、女学校に通って、しかも友達が、同性の友人が、親友が出来るなんてこと信じられますか?
本当に、普通の年頃の女の子みたいじゃないですか。みたいじゃなくて、そのものじゃないですか。宇和島の奥さんが感無量となるのも当然ですよ。桐子が、友達を家に連れてくる。それも謀り事や政治的駆け引きのためなんかじゃなく、これからの事について相談するつもりであったとしても、本当にただ友達を家に呼んでお茶会をする、なんてことを、あの桐子がすることになるなんて。
初めての同世代の友達とのやり取りに戸惑い、照れたり拗ねてみたり。そして、周囲に女の影を匂わせる志郎に嫉妬したり、落ち込んだり。
荼枳尼と呼ばれ、忌み嫌われた、恐れ畏怖された闇の当主が。本当に、普通の女の子のように振舞ってるんです。恋に胸を高鳴らせ、頬を染め、ツンデレをかまして、好きな男に構って欲しい素振りを見せているんです。
こんなにも微笑ましく、甘やかで、いとおしく、幸福感を分けて貰っているかのようなホワホワとした温かさに包まれながら……どうしてこんなに泣けてくるんだろう。胸が押しつぶされそうなほど苦しいんだろう。

もうね、桐子が幸せであればあるほど、よかったねと思うと同時にそれが失われた時のことを思ってしまうのです。幸せであれば幸せであるほど、そこから突き落とされた時の痛みを思い描いてしまい、泣きそうになってしまうのです。いつか来る幸福の揺り返しがとても怖い。闇に属するものの宿命が彼女に降り掛かる時が恐ろしくて仕方がない。
今となってみると、どうして聖と弓生があれほど神島の家にこだわっていたのか、よく理解できる。千年生きた彼らにとっても、この時代は黄金だったんでしょう。掛け替えのない思い出だったのでしょう。その要であった桐子から受け継がれたものを、どうしてこの二人が見捨てられようか。

思いを馳せれば馳せるほど辛くなってくるので、今はただ少女・桐子の幸せな時間だけを見つめていたい。
いつの間にか桐子にベタ惚れな志郎には笑ってしまったけれど。もう事細かなところまで桐子のことよく見てるじゃないか、この男。そのくせ、肝心な所では昼行灯で。不器用な二人のやり取りを毎回自分のたもとで見せつけられる「柳の精」の心労にはいたく同情いたします。そりゃ、柳も呆れるわw

前回登場した竹取の一族。彼女らはのちのちも深く関わるキーパーソンになるとは思っていましたけれど、まさかこういう形で桐子の懐の内に飛び込んでくるとはなあ。ってか、あんたたち、桐子のこと好きすぎだろうw 可愛い可愛いって、そりゃ桐子可愛いけどさ。聖と弓生が過保護だろうってくらいに構ってしまうくらい可愛いけどさ!! 彼女たちも闇側に属する一族だけに、重い宿命を抱えている節があるけれど、それでも桐子の味方で
いて欲しいなあ。最初、周りに誰もいなかった桐子にも、聖と弓生が付き、志郎という人が傍に現れ、宇和島夫婦という親代わりが出来、そして今、損得抜きの友達が出来、と裏表なく味方になってくれる人がこんなにも沢山できたことは、本当に感慨深いです。そこに、最後に登場したあの娘もまた、加わってくれればいいのだけれど。悲劇で終わってほしくはないなあ。
この「クダンノ如シ」は上中下の全三巻構成で、中巻は来月連続刊行とのこと。下巻はいつだよ! なんて野暮な事は言わずに素直に中巻が即座に続くことをよろこびたいと思います。

しかし、桐子さんや、あんた女学校にはその学校の制服を着て通い、帰宅後はいつもの黒のセーラー服に着替えるって、どういう了見なんだ!? セーラー服は普段着なんですか。どういう拘りなんだ、それw

シリーズ感想

プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻4   

プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 大いなる愛をきみに贈ろうの巻】  高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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『ルシードはアジェンセン大公の血を引いていない』その秘密を知ってなお、支持すると言ったはずのリドリスの裏切りに、意気消沈するルシード。一方ジルは、ジョングー=ガーグと共にテジムに捕らえられてしまっていた…。王座奪取へ邁進するルシードに贈られる、リドリスの、メリルローズの、…そしてジルの贈り物。全ての謎が明かされる中、ふたりの運命は!?王宮ロマン、グランド・フィナーレ。
前巻の感想で、血縁関係が入り組みすぎてもうわけがわからない、助けてーー、と悲鳴をあげたら、ちゃんと最後の巻で家系図をつけてくれました。ありがとうございます。
って、改めてこうして整理された血縁関係見ると……見ても訳わからん!! ちょっとこれ、入り組みすぎだろう!! しかもこれは血縁だけなので、さらに個々の人間関係まで絡めると、本気で網目状の関係図になってくる。高殿さんは、よくまあこれ把握して書いてるよなあ。自分の作品とは言え、前後不覚に陥らないのだろうか。高殿さんは、このプリンセスハーツだけにとどまらず、銃姫世界の前史からバルビザンデの宝冠に至るパルメニア全史を掌握していらっしゃるのですから、プリハの1シリーズくらいどうって事ないのかもしれませんけどね。でも、この家系図見ると絶対吹くよ。もうこれ、どうしてこうなった、という凄まじい代物だもんなあ。その「どうしてこうなった」というすべての事情が、この最終巻で殆どすべて種明かしされているので、この幾多の偶然と思惑と必然が解けないほどに入り組んだ真相を御覧じろ。ほんと、頭痛くなるから。誰か個人の、或いはひとつの組織の思惑が強く作用しているならば、それを黒幕として固定し、その思惑に対して抵抗することで悲劇と立ち向かうことが可能なのだけれど、このお話のように無数の想いが複雑に絡み合ったが故に生まれてしまった時代の流れというものには、明確な悪意や目的のない分、逆に抗いがたいものなのだ。それも、功利や損得の計算に基づいた流れではなく、個々の思いが深く刻み込まれた感情主体の流れともなればなおさらに。
だからこそ、過去から押し寄せてくる因果の嵐に負けることなく、自分たち自身の想いを失わずに貫き通して幸せを掴んだ人たちの強さには、敬意を抱く。その幸せは奇跡なのだろう。でも、奇跡とは待っているだけでは飛び込んでくるものじゃないのですから……ハクラン王は待ってたら飛び込んできたような気もするけど!!
そんな中で一番無茶苦茶やってたのって、ナンセ公爵夫妻だよなあ。てっきりこの二人は、自分たちの想い人との関係をちゃんとして別れるのだと思ってたのに、まさか結婚したまま子供作るとは。特にケイカ。こっちはもっと揉めると思ってたのに、オース王子とそんな事になってしまうなんて。もうねー、夫妻両方が子供産むって何サ(笑
でも、ふたりとも幸せそうで良かったよ。

そんな風に現世での幸せをてに入れた人たちがいるのと同時に、幸せの形を別のところに求めた人たちも。リドリスは死ぬしかなかったにしても、一人で境遇を満喫しすぎだ。あれじゃあルシードが可哀想だよ。生きたとしても、ルシードやジルがどれほど庇ってくれたとしても、正当なアジェンセン唯一の後継者が生き残っていたら、どうしても権力闘争の焦点になって、兄のパルメニア統治のウィークポイントとなってしまう。最良は、やはりリドリスが思っていたように、幽閉されたまま消えるように死ぬことだったのだろう。リドリスが牢から出され、兄弟が和解して子供時代を取り戻すように仲良く過ごしてしまったからこそ、リドリスの裏切りと死はルシードをさらに傷つける事になってしまったのだから。でも、この交流がなければリドリスの愛情は伝わらなかったわけだから、ルシードはどれだけ辛くても悲しくても、リドリスと一時でも一緒に過ごせた事を尊ぶのだろう。本当なら、やっぱり生きて欲しかったんだろうけどなあ。辛いよなあ。
そして、もう一人の愛に殉じた人、メリルローズ。一時はすべての陰謀の黒幕か、ヤンデレか、と疑ったこの人でしたが、この人はこの人で純粋にルシードを一途に愛しただけだったんだなあ。ルシードの記憶にあった、一心に彼を愛してくれた少女の姿が、嘘でも偽りでもない本当の姿だったことに、悲恋とは言えホッとした。
その最期もまた、ルシードの腕の中で逝けたのなら幸せだったのだろう。ただその時を待ち望んで、現世にしがみついていたようなものなのですから。願いが叶ったのなら、幸せだったのだろう。

様々な因果の荒波を乗り越えて、ついに本当の夫婦になれたルシードとジル。感動のシーンだったはずなのに、一夜明けたあとのドタバタに……脱力。マシアスよりもあの場面はリュリュカだよ。そりゃ、これまでずっとルシードとジルのどうしようもない夫婦関係に一番胸を痛め、心労をためていたのはリュリュカさんですけど……あの雄叫びは年頃の女性としてはどうなんでしょう。オッサンか、あんた(爆笑
ジルに課せられた運命と、ルシードとの別れ。二人の愛の行方もまた悲恋に終わるのか、と息を飲んで見守ったエピローグの、想像以上の幸せな結末に、そしてこの大河ロマンスの完結に心震わせ感動に万感の吐息をこぼしながら、あとがきに目を通そうとページを開いた。そして目に飛び込んできたあとがきの最初の一文……

うおい!!!

あまりにも身も蓋もないシリーズ全体の要約に、もう息が出来なくなるほど爆笑。さっきまでの感動を返せーー!! なんか納得しちゃったじゃないか! ああ、そういう話だったんだ、って刻み込まれてしまったじゃないか。
それでも、感動の結末でした。感慨深いです。感無量です。終わったなー。終わっちゃったなあ。
大満足です、ご馳走様。

高殿円作品感想

プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜4   

プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 〜たとえ遠く離れていてもの巻〜】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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恋と野望の王宮ロマン、クライマックス直前!

全ての謎を解くために、【墓場】へ向かうジル。一方、シングレオ騎士団でマシアスと再会したルシードは、騎士団と星教会の後ろ盾を手に入れ、一路、パルメニアの首都ローランドを目指していた。パルメニアの王座奪取に向けて、なにもかもが順調に見えたその時―あるまぎれもない真実―が、離れ離れのジルとルシードに明かされる。二人の運命ははたして……? 身代わり王女の王宮ロマン、怒涛のクライマックスへ!
怒涛のように明かされていくこれまで謎とされてきた血縁の真相。王女メリルローズの相似であり、義母の想いもよらぬ正体、実の両親が誰かも不明、と身辺が派手な秘密と謎に彩られていたジルの方にばかり気を取られていて、まさかルシードの方にも秘密が隠されていたとは思いもよらなかった。完全に意識の死角だったな。あるいは、囮として、ジルの方の事情に余計に注目が集まるようにしてあったか。それに、誰と誰が双子である、実はあの二人は双子でした、という話があちこちで暴露され始め、さらには双子を利用した陰謀を歴史の裏側から企てていた墓場なる組織まで出てきて話のメインになっていたので、まさか逆に逆に双子じゃありませんでした、という展開が待っているとは思いもよらず。
ただこうなってくると、登場人物の血縁関係がすさまじい勢いでからみ合っていることになってしまい、ちゃんと整理しないとかなり訳の分からない事に……ってあれ? 事実がこの通りだとすると、ジルとルシードって従兄妹になるのか!?
さすがにルシードの秘密は想定どころか予想だにしていなかったので、相当に驚かされた。何しろ、作中で一番情報に精緻していたジルが全くコレに関しては知らないどころか疑うことすらしていなかったからなあ。オース王子も噂が出回るまで全く感知していなかったようだし、秘密は元から知っている人以外にはほぼ完全に守られていたようだ。それを、何故パルメニア王が知っていた、かもしれないというのはなかなか大きな疑問点だぞ。

と、この時点でもこの急展開には相当ドギマギさせられたのだが、ルシードは一旦凹みまくって折れそうになるものの、ジルに鍛えあげられた心身とリドリスの応援もあって何とか立ち直り、王の器量を証明してくれるのだけれど……まさかの止めのちゃぶ台返し。一度ひっくり返されたちゃぶ台を直してくれたと思ってホッとした途端にもう一度ひっくり返されたよ!!
ちょ、直前までのやり取りはなんだったんだ!? いや、だからこそ明らかにこれはおかしい。どういう意図があるっていうんだ!? 
一応、ルシードがアジェンセン大公でなくなることはないはずなんですよ。だって、パルメニア王国の史実でそうなってるわけですし。彼の孫のあたるオリエ――遠征王アイオリアはパルメニア王であると同時にアジェンセン大公の位にも付いていますから。ここはまず揺るがないはず。だからこそ、歴史の真実はいったいどうなっているのか。
史実といえば、ミゼリコルドの主が誰か、というのも問題なんですよね。ミゼリコルドの言い分からすると、メリルローズっぽいような気もするんだよなあ。ただ、遠征王ではミゼリコルドはオリエの祖母にあたる女性を守護していた、と語られているっぽいんですよね。普通に考えたらジルなんでしょうけれど……今回ようやく初登場となったメリルローズ、やはりというか浮世離れした人ではあったんですが、思ってたのと違ってちゃんとルシードを愛してるようなんですよね。単にルシードが片思いを高じさせ、拗らせた挙句に一方的に求婚していた、という勘違いではなかった模様。ちゃんと両思いだったのか。そうなると、これまでジル応援一辺倒だったのが、ルシードが変心してメリルローズからジルに乗り換えた事にモヤモヤした気持ちを抱いてしまうのでした。ずっと迎えに来てくれると信じてた人が、自分の偽者に心奪われて挙句に見捨てられた、という形になったらそりゃ哀れですよ。尤も、そんな単純な乙女ではなさそうですけれど。
一方で、こちらは紆余曲折の上でちゃんと両思いになったジルとルシードですが……りょう、おもい? なにかこう、本質的にはちゃんと両思いなんだけど、ギャグ的な意味で相当すれ違ってないか、この二人の恋愛感情。主にジルさんが変なんですが。そもそも変なんですけどね、この女。だいたい、食欲に色々と傾きすぎだろう、この女。食い物に釣られてプロポーズをOKするなよ!! 今はルシードに夢中になってしまったのはいいのだけれど、それが食欲として表現されるのはなんなんだ!? 「恋の感覚は、食欲に似ている!」 けだし名言である。このままだとルシード、男と女の意味でじゃなくて普通に食事的な意味で喰われかねないぞ。ジルの妄想がある意味女体盛りと変わらないものになってて危ないんですがw 夢でとはいえマジで齧り付いているし。飢えてる飢えてる。なるほど、これが冬眠明けの樋熊というやつなのか。

それに比べると、同じ両思いでも、感情的に拗れまくっているとはいえ、まだオース王子とケイカの方が健全に思えてくる。あのケイカの反応見ると、明らかに王子にベタぼれだもんなあ。オース王子だって何気にベタぼれだし。この二人、どうなるんだろう。ケイカ、仮面夫婦とはいえ公式に結婚しちゃってるんだもんなあ。こっちの決着もどうするのか気になって仕方がないですよ。

ともあれ、一番気になるのは最後の一文の真相に尽きるのですけどね。こればっかりはどこにどんな真意があるのかサッパリですよ。
というわけで、早く続きぷりーず。

高殿円作品感想

封殺鬼 帝都万葉4   

封殺鬼 帝都万葉 (ルルル文庫)

【封殺鬼 帝都万葉】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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「鵺」の事件から1年。東京で邪気に憑かれる者が続出し、桐子とふたりの鬼が調査を開始する。志郎が知り合いから譲り受けた黒い気配をまとう簪が、事件解明の鍵になるかもしれない。簪にまつわる因縁をたどる桐子たちの前に、謎の虚無僧が出現して…。待望のシリーズ最新刊。桐子と志郎の関係にも、ついに変化が訪れる!?
来た、来ましたよ、鵺子ドリ鳴イタの続編。続きを見てみたいと思いつつも、逆に続きを見るのが怖いという気持ちがあったシリーズですが、いざ読めるとなるとやはり嬉しい。鵺子ドリ鳴イタのラストに二人が結婚するという記述があったので、もしかしたらあそこで話を締める事もあるのではと勘ぐっていたんですけどね。どうやら、桐子と志郎の物語、最後まで書き切るつもりの御様子。ならば、最後まで見守るしかあるまいて。
今回の話は闇の世界のそのまた奥底を除くようなダークなお話とは少し違って、この世に未練を残した幽霊も絡んでの、桐子に恋とはなんぞや、異性を想い焦がれるとはなんぞやと教授するかのような、ちょっとポップなラブコメモード。暗く切ない幽幻の空気感を自在に扱う作家として印象の強い霜島さんですが、これでノリの良い、惚けたコメディタッチの話も抜群に上手い人なんですよね。古いけど【琥珀のティトラ】シリーズなんか明るく突っ走る作品で好きだったなあ。
と、話を戻して今回はこれまでの桐子の物語の中では頭ひとつ抜けて穏やかで、淡い人の想いが優しく交錯するお話でした。お陰で桐子も神島当主として、闇の秩序を司る長としての振る舞いに終始する事もなく、自然と年頃の女の子としての顔がこれまでよりも前面に出ていたような気がします……って、これまでよりもって、これまでなんかそんな少女の顔なんか滅多に表に出てこなかったのに、凄く変わったな、桐子。彼女がそういう顔を見せるのって、本当に心を許した僅かな人の前だけだったのに。それも、彼女自身が意図して緩めて垣間見えるのではなく、もはや金型のように固まった神島当主としての在り方の隙間から、一瞬零れ落ちる、とでも言うかのような僅かなものだったのに。
桐子が、普通の女の子みたいだ。
その事実が、結構な勢いでショックだった。
それ以上に、桐子と志郎がこんなにも当たり前の情熱で恋心を育んでいた事がショックだった。自分、二人の関係ってもっと熟成して落ち着いた愛情によって成立していくものなのだと思い込んでたんですよね。こんなにも熱に浮かされたような、初々しくも情熱的な想いが交錯しているなんて。桐子はもっと恋愛に対してはクールだと思ってたし、志郎だって、あんな浮世離れして俗世から乖離してるような執着心とは程遠い性格をしてたのに。
桐子も、志郎も、そんなにお互いの事、好きだったのか。当たり前の恋人のように、相手に夢中だったのか。
……ヤバいなあ。
二人のやりとりって、もう傍から見てるだけでホッペタが緩みっぱなしで、甘甘の糖分過多で、ニヤニヤしっぱなしなんですが、だからこそ……泣きそうになってくる。
多分、恐らく、きっと、昭和6年、今この時こそが、桐子と志郎にとって思い返すだけで幸せで胸が一杯になる思い出で成り立った、最良の時間だったのだろう。
異界のお堀で逢瀬し、猫叉と戯れ、志郎を引っ張りまわして資生堂パーラーでアイスを頬張り、銀ブラを楽しみ、可笑しな幽霊の願いを叶えるために帝都中を連れ立って歩きまわる。立場も柵も介在せず、想いの綱引きもまだ生まれていない、ただ手を繋ぐだけのような心だけが浮き立つ時間。人を好きになるという今を噛み締めるだけで良かった時間。
折しも志郎が予感しているように、きっと今この時が二人にとって何の憂いもなく満ち満ちて居られた時間だったのだろう。
まったく、この二人がこんなにも当たり前に強く恋しあっていた事に、こんなにショックを受けるとは思わなかった。
未来で、桐子が吐く事になるあの言葉の重み、痛みが全然違って見えてくるじゃないか。どんな思いで、彼女があの言葉を呟いたのか、想像するだけで泣きそうになってくる。
ああ、聖と弓生はもう千年も、こんな光景を見続けてきたのか。二人の抱える孤独と絶望が、今さらのように実感できた気がする。いや、この二人が生きた長い人生の中でも、桐子と志郎のように親しんだ人たちは殆ど居なかったようだから、その痛みは想像するに余りある。封殺鬼シリーズで、病床にあって特に目立った活躍のなかった隆仁がどこか特別な扱われ方をしていたのは、聖たちが神島から離れること無くあの人にこだわり続けた理由がようやくわかった気がする。

と、ついつい悄然としてしまうのはこちらの勝手で、繰り返しますが今回のお話は最後まで明るいです。勿論、伝奇小説らしいおどろおどろしい話も、関東大震災の地獄とその後処理の話などで触れられていますが、音吉姐さんと嘉助のおっちゃんという幽霊二人組が、お前ら幽霊のくせに存在感ありすぎ! という明るいキャラクターで、相変わらず脳天気な聖と合わせて今回の話の明るさを支えてくれてました。二人とも、死んだ理由からしてアレだもんなあ(苦笑
幽霊の恋の未練というと、随分とドロドロとした話になりそうでしたけど、音吉姐さんの抱えていた未練は幽霊としては場違いなほどに粋なもので、その解決は爽やかで清涼感のある清々しいものでしたし。恋を知らない桐子の良い相談役として、明後日の方向に行ってしまいそうな桐子をきちんと正しい恋する女の子の道へと導いてくれたことからも、ある意味半端ない重要なキャラだったのかも。桐子には聖や弓生のような兄貴分の保護者は居ても、また母替わりとなってくれる人は居ても、同性の年上の姉的な人ってこれまで皆無でしたからね。一期一会とは言え、桐子には良い影響になったんじゃないでしょうか。

ああ、やっぱり無茶苦茶可愛いなあ、桐子様。先々の切なさなど吹っ飛ばすくらいに、今の桐子様は可愛らしい。最後の志郎とのやりとりの時の彼女など、仕草の隅々まで反則レベルである。
巻末の掌編【夢見月】も、素敵極まってます。もう、でたらめにかわいいなあっ!


霜島ケイ作品感想

プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜4   

プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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ついに暴かれ始めたジルの正体、マシアスの目的…! 
“あの夜の約束”を胸に、それぞれの戦いに乗り出した
ジルとルシードだが……


パルメニア王冠を目前についにシングレオ騎士団攻略へ歩を進めたルシード。世界会議の舞台で自分の正体を知る他国王たちに挑むジル。“あの夜”の約束を胸に、それぞれの戦いに乗り出した二人だが、大公夫婦のいないアジェンセンにはオズマニアの脅威が迫り……!? さらに姿を消していたマシアスも再登場! ジルとルシードに協力していた理由もついに明らかに……! 王宮ラブロマン、いよいよ怒濤の最終章へ突入!
そうかっ、ジルの正体がパルメニア王女メリルローズの偽物であり娼婦の娘という事実は、もう秘密にならなくなってきたところで、さらに当人も知らないジルの本当の出自の秘密こそが、これ以降重要なキーワードになっていくのか。
そもそも、ジルたちの母親だったクリスの正体が、びっくり仰天だったよ。いきなりハクラン王の過去回想が始まった時には、今になっていったいどういう話なんだろうと思って読んでいたのだが、まさかそんな所に着地するとは。あの人がハクラン王の前から姿を消した、という話になった段階でも全然気付かなかったし。実は彼女はあの人だったのです、と答えを提示されて、ようやく「えええっ!?」と驚いた次第。この件に関しては恐ろしく自分は察しが悪かったみたいだ。
しかし、ジルと二人の姉妹の血が繋がっていない事はだいたい予想がついていたけど、まさかキキとあの男女が……ねえ。びっくりだよ。びっくりだよ。
そうなってくると、気になってくるのがジルの正体だ。彼女が思わず漏らしているように、この物語には双子が多すぎる。いつの間にか、分たれた兄弟姉妹こそが秘められていた主題だというように浮き上がってきている。あの「墓場」という存在がこんな形で深く関わってくるとはなあ。
となると、メリルローズとジルは、単に他人の空似じゃないと考えるべきなのか。場合によっては、ジルはメリルローズの身代わりやニセモノとしてではなく、ジルとしてルシードの本当の王妃になれる可能性も出てきた、って事になるんですよね。ある意味前途は開けてきたと言えるんだろうけど……まだ、何か予見できない恐ろしいトラップが潜んでいる気がする。
なんにせよ、ハクラン王がどちらかというと、ジルの味方になってくれる人で良かった。ルシードと離れて行動しないといけない今、これまでになくルシードと心つながった今のジルは、だからこそ一人で頑張らせるには不安な所があったから。
と、心配する必要もなかったんですけどね。まだまだ、この女の恐ろしさを甘く見ていたかもしれない。オズマニアの鍍金王と雹王子の巧みにして嫌らしい攻勢は、ジルとルシードにとって瀬戸際に追い詰められるものであり、今の状況下において最悪のピンチなのだとばかり思っていたのだけれど……なんだよこれ、全部ジルの手のひらの上だったんじゃないか。
まさに、コテンパンに打ちのめされるオズマニアの親子の惨憺たる有様に、喝采をあげるよりも呆気にとられたのであった。隙に見えた所には、全部ジルが罠をしかけていたんだな。でも、尋常な罠ではない。まともな罠に、あのオズマニア王と雹王子が引っかかるはずがないんだから。一癖も二癖もある人物だけど、二人とも飛びっきり有能で優秀な指導者であり王族だったのだから。それが、ああも鮮やかに引っ掛けられるとはなあ……参った。

一方でルシードも、宝剣エヴァリオットこそゲット出来なかったものの、無事シングレオ騎士団の忠誠を得る事ができ、さらには……。
まさかまさか、ですよ。マシアス、ただ姿を消していたんじゃなかったのか。それはもう、これ以上ないルシードへの助けを携えての再登場。正直、シングレオ騎士団を味方に付けることは大きいけれど、それだけでパルメニアを掌握できるか、というといまいち条件を満たしていない気がしていたんですが、マシアスが携えてきたものは、シングレオ騎士団を指揮下に収めること以上に、パルメニアの王冠を手に入れるためのお墨付きとなるもので、これ両方揃ったら情勢は一気に変わり、ルシードの野望は夢物語などではなくなるはず。
同時にそれは、ルビコンを渡るということでもあり、もはや後戻り出来ないところまで踏み込んでしまった、という事。尤も、ジルの為にももうルシードに躊躇や迷いはない。あとは突き進むのみ。
マシアスも、居なくなったことで散々とルシードとジルを悩ませ苦しめた罪は、これだけのものを持ってきてくれたなら清算してもらっていいよ、許す。おかげで、ルシードも独り立ち出来たわけだしね。

あとはジルの正体を明らかにし、メリルローズとの直接対決を待つばかりか……いや、それが一番怖いんですけどねッ。

高殿円作品感想

プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜4   

プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ〜今宵はせめて夫婦らしくの巻〜】 高殿円/明咲トウル

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ああ、ついに……。長らく、契約上の仮面夫婦という建前に縛られて、自分の気持に気づくことすら出来なかったジルとルシードの二人が、ついについに、恋を自覚し想いを繋げることに。
いやあ、ぶっちゃけもしかしたら二人の気持ちが通じ合うなんて無理なんじゃないかと思う時期もありました。なにしろジルがなあ(苦笑
この女の恋愛スキルの酷さは凄まじいとすら言えるレベルでしたから。いい雰囲気に盛り上がっても、平然と踏み出す一歩を間違えた挙句に踏みつぶして蹴っ飛ばして台無しにしちゃってたもんなあ。
実際、もう大丈夫だろうと思われた今回だって、盛大にやらかしてくれたわけですし。なんだよ「山盛り!」って。幸い、もう何度も痛い目を見ていたルシードが、ジルの恋愛関係にまつわる内心の気持ちを言語化する機能が致命的に破綻していることを実感して理解していたお陰で、最大のピンチも乗り越えられたわけですが。ルシードえらい、ここまで彼が男前に見えたことはなかったよ! もう随分と前から普通にかっこいい、女も男も惚れるような男っぷりを見せてくれた上に、献身的とすら言えるジルへの態度もあって、男前としては上等以上に上等だったんですが、なにしろ相手があのジルだったからなあ(苦笑
とはいえ、こいつはこいつで偏屈者で多少ヘタレの入ったひねくれ者の僻み屋なところがあるから、ルシードもジルへの想いがなんなのかを自覚するのを拒否していたところがあったのですが、うん、リドリスが今回いい仕事してたなあ。彼に関しては腹に一物あるんじゃないか、とずっと疑ってたわけですけれど、ルシードとジルの間を裂くどころか取り持とうとしている姿を見ている限りは、ルシードに変な執着を持っているわけでもなく、本当に信頼できる弟としての立場を続けるつもりなのかと思いたくなってくる。でも、彼のその態度の根拠がまだわからないので、信用しきれないんだよなあ。

さて、二人の想いが通じたのはいいけれど、それは同時に二人が目指すパルメニアの打倒という目的を叶えるためには許されない関係であるんですよね。
パルメニアと対決するということは、偽のメリルローズであるジルはどういう形にしてもルシードの前から立ち去らなければならない。
念願叶う状況がようやく見えてきたときに、いつの間にか自分にとって一番大切になっていた者を引換にしなければならなくなっていたなんて、大した皮肉じゃないですか。
特にルシードにとっては複雑でしょう。パルメニアを乗っ取ろうとするのは、愛するメリルローズを手に入れるためだったのに、今や彼女よりもジルの方を愛するようになってしまっていた自分に気づいてしまった。それでも、アジェンセン大公として、彼の国のため、彼についてくる国民のために、彼はもう止まれない。大公としての責務を放り出せるような、彼は無責任な王ではないがために。
果たして、彼はどうやってこの難局を乗り越えるのか。さすがに、彼が最後にジルに誓ったよなことは、幾ら何でも難しすぎるように思えるのだけれど。それでも、言われたジルとしては死ぬほど嬉しかっただろうなあ、あれは。
そんなジルは、今回もうエンドレスで可愛かった。もう、恋する少女そのものみたいで。あのジルが、ですよ?
出来れば、想いは遂げさしてあげたかったけれど、せめてあと小一時間は待てなかったものかしら。

しかし、いつの間にかジルの正体を知る人が増えてきたものだ。以前はマシアスを含めた三人だけの秘密だったのに。でも、ここであの四騎士団長にそれを打ち明けるとはなあ。ルシードも思い切ったもんだ。彼の人間不信の深さを思えば、それがどれだけ勇気のいることだったかが想像出来るだけに。大きな男に、なってきてるじゃないか。
一方でオース王子の方も、今更ケイカに執着を示しだして……。こいつ、自分がケイカに対して抱いている感情について一切言及していないんだけれど、意図的に目を逸らしてるのかな。傍から見てると、どう見ても惚れているようにしか見えないんだけれど。
もしかいたら本当に、サラミスが言うように二人の間に新しい恋が始まる可能性もあるのかしらねえ。

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プリンセスハーツ 君は運命の人だからの巻4   

プリンセスハーツ〜君は運命の人だからの巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 君は運命の人だからの巻】 高殿円/明咲トウル  ルルル文庫

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プリンセスハーツ第七段(でいいんですよね?)は短編集。本編での政治的な綱引きが無い分、どの話もラブ成分が濃い目に設定されております。

【恋のたまご】
王妃付きの女官としてレギュラー出演しているリュリュカが主人公の話。王宮で働く女官さんいうのは良いところの家柄の娘さんが花嫁修業と中央の良い血筋や役職の人と結婚して実家のためにコネ作るのが目的みたいなところがありまして、リュリュカもさっさといい人見つけないと実家に連れ戻されて、従兄弟の若ハゲと結婚させられてしまうというので、焦りに焦って相手を見繕うために走りまわる事になったのでした、という話。
元々リュリュカってテンション高い元気娘というイメージはあったんだけど、仮にも貴族の娘さんだからそれなりに上品な印象があったんですよね。それが……うははは(笑
この娘、切羽詰まると内心の言葉遣いがえらい荒れるんですよね。スラングが入る入る。あげく、付き合ってる人がいるから大丈夫、と親元に手紙送ったらひょいひょい親父殿が恋人と合わせろと上京してきたときのセリフがもう最高。あんた、仮にも上流階級なのに(爆笑
いやあ、ちょっと見損なってました。挿絵のデザインも快活そうでバイタリティに溢れてそうだし、この娘って高殿さんが好みの主人公タイプなんじゃないだろうか。そのときシリーズのフランチェスカっぽいし、この元気よさは。
それ以上に見直したのが、彼女が本当に恋をしてしまった瞬間からの、彼女の無心の心から出てきた言葉。この娘、こんな事を言える子だったのか、と正直驚いてしまいました。元からそれだけの資質はあったんでしょうけれど、相手が持つ闇の深さを感じ取りながら、いや感じ取ったからこそ必死に光の下に手繰り寄せようとする本能の働き。
いやね、その相手というのがあのマシアスなのですが、彼の壮絶極まる過去からして、彼にはとてもじゃないけどお相手になるような女性は出てこないだろうな、と思ってたんですよね。高殿作品の中でも屈指の壮絶さだもんなあ。
それが、リュリュカのおかげでちょっと考え変わりましたよ。彼女は基本的に平和に幸せに苦労なく暮らしてきた子なんですけど、むしろだからこそ、マシアスを無明から救い上げられるんじゃないだろうか、とマシアスに自分自身をもっと大切にして欲しい、と必死に訴えかける彼女を見て、思えたんですよね。本編ではマシアスがまたえらいことになってますし、彼には幸せな結末はないんだろうなあ、と思ってたのが、ちょっと希望が持てるようになりました。このリュリュカなら、やってくれるはず。
この話の素晴らしいところは、まさに恋に落ちる瞬間が描かれているところなんですよね。話の前半でマシアスと遭遇したときにはリュリュカ、マシアスには何も関心抱いていませんでしたし。その恋も、自分の欲求や感情を押し付けるものとは少しベクトルが違っていて、マシアスのもつ闇を垣間見てしまったことで、彼が自分を蔑ろにしているのに気づいてしまったことで、矢も盾もたまらない感情に駆られてしまったところから、駆け巡って広がっていくんですよね。まず衝動があり、そこから気持ちが付いて行き、そこに名前が生まれていく。彼を見て、彼を見る自分の至らなさに気づき、もっと彼を知りたくなり、彼を知るために自分の在り方を見つめ直す。この流れがとても秀逸で、輝かしかった。恋が生じる物語としては、とても凝縮された刹那を切り取ることに成功した逸品じゃないでしょうか。
この話で、モブキャラとしか認識してなかったリュリュカが、すごい好きなキャラの一人になりましたよ。


【月色賛歌】
ルシード、貴方は何も間違ってない。気になる女性に対するアプローチとしてはほぼ完璧にやり遂げてる。途中まで確かに上手くいっていた。それに変なオチがついてしまうのは、絶対にジルが悪い、このアホが悪い(笑 この女、女として根本的なところでズレてるよ!!
なんでこの女はいつもいつもあれだけいい雰囲気になりながら、最後のところで思考がわけのわからないところに飛ぶんだ!? いっそ、彼女なりの防衛反応だと解釈すれば格好もつくのかもしれないけど、どうも素の天然っぽいもんなあ。
ルシードがまいどがっくりと肩透かしを食らうのも仕方ないよなあ。貴方は悪くない悪くない。この女に普通の女の反応を期待する時点で間違ってるのかもしれないけど、じゃあどうしろといわれたら、どうしたものか全然思いつかないもんなあ(苦笑
最初からズレてたら諦めもつくけど、殆ど最後までは上手くいってるんだから、やり方としては概ね間違ってないはずだし。
結論は変にしても、気持ちはきちんと伝わってて、感謝されてるし喜ばれてるし、関係は進展していると思えなくもないんだから、我慢しないと、うん。

しかし、ここに至ってルシードはジルのこと、ほんとどう扱うつもりなのかね。もし、ジルがあの雰囲気の良さの結末を、普通の女性のように受け止めてしまったら、それは仮面夫婦の終了を意味するんだし。
メリルローズのことがある以上、この二人の関係というのははっきりさせてしまうことが非常に危険なのも確かな話。ジルが自分の抱く感情の、ルシードが自分に抱く感情の結論を無意識に回避しているのは、やっぱり防衛反応なのかもしれない。でも、それもそろそろ限界に来てるんですよね。ルシードは自分の気持ちに名前をつけることこそ避けているものの、ジルに自分に振り向いて欲しいという気持ちを押えきれなくなっている。現に、彼女のために、彼女のためだけにアジェンセン大公としてではなく、ルシード個人として何度も動いているんだし。
あとがきによれば、ジルもそろそろもう、自覚の大波が押し寄せてくる予定らしいし。波乱含みだよなあ。
二人の関係ってのは、メリルローズが存在する限り、どうやっても落ち着かないものなわけだしねえ。


【ひとたび、王女に生まれたならば】
今は険悪極まりない関係になってしまったオズマニアのオース王子と、彼の従姉妹であるケティクークの、まだ仲の良かった幼い頃の物語。
今となっては雹王子と呼ばれるほど無感情の冷徹者として知られる王子だけど、まあ昔からあんなではあったのね。でも、生真面目でプライドが高く澄まし屋のくせにちょっと抜けてて、本人は不本意だろうけど、愛嬌のある子だったんだなあ。ケイカはケイカで気の強い子で、いい意味での喧嘩友達。そんな二人の仲が、ああいう形で引き裂かれ険悪化してしまったのは、哀しい話である。オースは何考えてるかわかりにくいのは昔からで、ケイカは彼の分かりにくい感情を察せられるほど感情の機微に優れている子でもなかったわけで、うん、でもわかったからと言って上手く言ってたかというとそうでもないだろうし、難しいところだ。理解しあうことが余計に拗れる結果になってしたかもしれない、あの情勢を考えると。
オース王子の本当の気持ちはどこにあったんだろう。姉姫に淡い思いをいだいていたのは間違いないんだろうけど、ケイカが思っているほどにはオースはケイカの事を邪険にはしてなかったように見えるんですよね。それどころか、非常に大事にしていた素振りすらある。ええい、オースも不器用だよなあ。姉姫に対してもケイカに対しても、もっと上手く出来なかったものか。
まだ、ケイカに対しては希望はあるのかもしれないけど。ふたりとも、まだ生きているんだし。ケイカの心は、ただ憎むことだけを生きる糧とししがみついていた頃に比べれば、オズマニアを出て、サラミスと寄り添うことで余裕を取り戻すことができたみたいだし。
どうやらまだ、オース王子の逆襲が待っているみたいだし、いい意味で二人の仲が近づいてくれればいいのだけれど。オースは敵だけど、こういう面倒くさい不器用な男の子はやっぱり嫌いになれないし。


【大公殿下の温泉休日】
気楽に読める短編、というか掌編。ルシードがジルを振り回しているのか、ジルがルシードを振り回しているのか、二人の関係ってなかなか判別しにくいや。とりあえず、女が無理ならガチムチを送り込んでくる王妃はパねえっす!!


【私の願いを叶える者よ】
前々から疑問だったんですよね。ミゼリコルドがジルに代償を要求し、彼女の表情や涙を奪ってしまったこと。星石の精霊って、別に力を振るうのに持ち主に代償を要求するなんてことなかったはずなのに、と。
なるほど、ジルはミゼリコルドの本当の主人じゃなく、他にちゃんとした主人がいるのか。
ヘスペリアンが誕生する理由というのも興味深い情報。これって、他でも書かれてたっけ。やっぱり細かい設定はさすがに憶えてないんだよなあ。


本編の方はあまり間を置かず、7月には出るみたいなので、待たされることはなさそう。なかなかすごいところで終わってたもんなあ。

高殿円作品群感想

プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻4   

プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻 (小学館ルルル文庫 た 1-7)

【プリンセスハーツ 誰も代わりにはなれないの巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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これって、もしかしたら何にも事情を知らない他人の方が、ルシードとジルの関係を本質的に把握出来るのかも知れないなあ。いや、それとも分かっていないのは当人たちだけで、周りの人間はみなちゃんと分かっているのかな。少なくともリドリスはちゃんとわかっているみたいだし。
既にお互いをこれ以上無く愛してしまっているにも関わらず、二人の関係の発端である仮面夫婦という軛が、ルシードとジルに相手が自分のことを本当に愛していること、それ以上に自分が相手を愛してしまっている、という事実に霧を吹きかけ、誤解に誤解を重ねる結果となってしまっているのが、なんとももどかしい限り。
二人とも、相手のことを一心不乱に見つめ続け、その人のことばかりを考えているにも関わらず、前提として相手は自分を愛していない仮面の結婚相手だ、という意識があるだけに、肝心なところで相手の考えや想いを誤解して受け取ってしまっているんですよね。こんなにも気持ちが通じているのに、どうしてこんなにもあの人の考えていることがわからないのだろう、とジルが思い悩むシーンがあるのですが、そりゃあ貴女、分からないのも無理ないて。どんなに簡単な方程式だって、入力する元の数字が間違えていたら、そりゃあ正しい答えが出てくるはずもない。
本来それを正してくれる可能性のある、唯一の仲間であり共犯者でもあるマシアスは、今回えらいことになってて、それどころじゃなくなったもんなあ。彼がああいうことになってしまった影響で、ルシードもずいぶんメタメタな精神状態になってしまっているし。
ルシードは元々人間不信、というかこれは自己不信、自分は愛されない人間であるという意識があるのか、唯一心を許せる相手となっているマシアスとジルに対しても、いつか自分から離れていく人間だ、と受け止めていて、本当の意味で相手の心の中まで踏み込むことができていなくて、その御陰でルシードがどれほどマシアスという人間に対して、自分の魂の比重を置いているのかわからなかったのだけれど、これほどヘコむほどだったのかぁ。それこそ、自分ひとりでは立っていられないほどの。
だからこそ、ああやってリドリスへと傾倒していくことになったんだろうが。

今回、マシアスの過去が明らかになったわけですけど、これは想像を絶したなあ。確かに、今のマシアスからはまるで連想できない。ほとんど別人に近いじゃないか。
まさにかつての彼は一度粉々に打ち砕かれ、ほぼ零から再構築されたのが今のマシアスなんだろうか。となると、今のカレを形作ったのは間違いなくルシードであって、彼の独白からも伺えるけど、ルシードの存在はマシアスにとって、丁度【銃姫】のエピソードに当てはめると、彼の中の神、と言うことになるのかもしれない。元々星教会の使徒である彼が、与えられた神ではなく、こうして自分自身の中の神をみつけると言うのも、星教会の祖となった女性の物語を知っていると、因果を感じてまた面白いなあ。

そう、今回はちょうど【銃姫】の最終巻と刊行時期が重なたせいか、関連するエピソードや史実がふんだんに盛り込まれているんですよね。悪神ゼフリートの正体とか、ここではもろに書いてあったもんなあ。彼がやった事を客観的に事実のみ羅列して並べてみたら、そりゃあ悪神としか言い様がない凄まじいことやってるといえばやってるんですけど。
それから、ミゼリコルドの目的が人間になること、というのもまた感慨深い話なんですよね。ただ、それが目的となるとミゼリコルドのやり方というのは盛大に間違っている気もするんですけど。ここでジル相手に契約と称して様々な感情などを代償として奪い去っているミゼリコルドが、後世を舞台にした別のシリーズでは、こういう事をしていないのを考えると、また色々となんかあるんだろうなあ、ミゼリコルドに関しても。

リドリスは、勿論このままじゃ済まないんだろうなあ。どうも、彼の中には通り一辺倒の復讐心や利己心というものがなさそうなのが、余計にたちが悪そうなんだよなあ。彼が敵意を持っていないことは、ルシードの本能やジルの洞察力が断定しているように、間違いないんだろうけれど、時として敵意の無い相手の方が厄介だというケースもあることだし、リドリスの場合、どうも兄であるルシードに対して異常な執着があるみたいだし。ジルが、何となくルシードとリドリスの仲の良さに嫉妬心や危機感をいだいてしまっているのは、決して的外れなんかじゃないんですよね。彼女の女の勘は、ここでは正しく機能していると見てよさそう。問題は、それがどういう形で発露するのか、と言うところだけど……。
やっぱり、ここでマシアスがいないのは痛すぎる。

と、身内のゴタゴタと並行して、国際情勢は複雑怪奇、ルシードもいくつかの政治的決断を要求される事態に陥っている。これ、かなりシビアな情勢だよなあ。わかりやすく現状と選択肢の内実について説明してくれているおかげで、ルシードやジルが抱く切実感が実感を伴って伝わってくる。問題はこの選択肢、外すと彼らの目的からするとかなり致命的な事になりかねないにも関わらず、正解を導きだすための情報が少なすぎる所なんだよなあ。でも、情報を得ようとすると逆にやぶ蛇になりかねないという危険性もあるし。ジルのパペットを使った情報収集力は強力だけれど、ここで必要なのはどこまでも届く長い手、というよりもとても広い範囲まで聞こえる耳の方なわけだし。私的ではなく公的で大規模な情報収集システムが欲しいところだよなあ。まだルシードの力では公国にそれだけの機関を作るには至らないか。味方、まだまだ少なそうだし。
それでも、ジルが得てくる情報は確実に、不鮮明な状況に色を加えてくれるのだから、とても頼みになるのだけれど。


巻末の短編は、短いながらこれは面白かったし、何気に次の舞台の主のお話でもあるから、先々の話を見る上でもかの人の人柄を知る上で、かなり興味深い話でもある。
これって、純愛だよなあ、ひとつの。現実に疲れ愛に疲れたひとりの王を癒すのは、無邪気で気まぐれな猫一匹。それが、ジルのもう一人の姉妹、というのは運命なのか、因果なのか。
どうでもいいけど、キキとジルとヒース。この三姉妹って、ホント、どういう姉妹だったんだ? 三人ともあまりにも個性的すぎて、一緒に居る姿が全然想像できないんだが(苦笑

封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 54   

封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈5〉 (ルルル文庫)

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 5】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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桐子婆さまの若かりし頃。時代の闇が世に影を落とし始めた昭和の初めを舞台とした封殺鬼シリーズの番外【鵺子ドリ鳴イタ】もこの五巻でついに完結。
僅か10歳で神島家の当主を継ぎながら、その際の継承者争いで兄を喪い、深く心に傷を負っていた桐子も、聖と弓生に支えられ、宇和島夫妻の親愛を受け、なにより志郎との出会いによって、一巻の時とは見違えるようにその在り方を変えたように見える。
他人を寄せ付けず、全部一人で抱え込もうとしていた彼女が、兄や従兄の裏切りとその死の影響で、他人を信じられず、なにより自分のために誰かが傷つくことを過剰な位に怖れていた彼女が、今回神島の当主として乙夜の儀式を破壊する際に家人たちに出した命令には随分と驚かされた。
確かに、あの命令は酷薄にすら見えるけど、家人たちを信じていないと決して出せないものなんですよね。以前の彼女なら、絶対に口にしなかった令なのです。なにより、乙夜に神島家の者たちが馬鹿にされた時には、敢然とそれを否定して見せ、その力を誇って見せている。
いつもどこか張り詰めて、いつかひび割れて壊れてしまいそうな危うさの上に立っていた桐子だけど、今の彼女は名実ともに当主として相応しい在り方を身に付けたんじゃないだろうか。
それと同時に、宇和島の奥方の前や、志郎の前では歳相応の子供らしい顔、我儘で気位の高い年頃の女の子らしい顔を素直に……ではないけれど、隠しきれないほどあからさまに見せるようになってきた。
当主としての桐子と14歳の少女としての桐子。その二つの顔が矛盾なく両立するようになってきて、以前の不安定さはもう見えなくなっている。
桐子の傷は、信頼できる人々との出会いによってようやく癒えたのかもしれない。彼女の奈落のようだった洞は、埋まったのかもしれない。
そういえば、前の巻での感想で悠久の時を生き続ける聖と弓生の絶対に届かない絆にこそ、あれほど二人に大切にされながら彼女の空隙が埋まらなかった理由があると書いたけれど、ここで彼女は彼女だけの絆を、ついに手に入れたんだろう。
自分の友達は君だけだ、と言われてこっそりと喜び、幽玄の狭間で捨てた想い出を取り戻してもらい、さらに未来の約束を交わして……。
志郎は今まで、どうにも桐子の扱いがそっけない向きがあったけど、あの桐子の洞を目の当たりにして怒ったあたりから、明確に態度が変わってきた。それでも、まだあまり彼女を女の子として見ている素振りは少なかったんだけど……此方もちょっと変わってきたのかも。
少なくとも、とても大切な存在だと明言するほどには。
この巻の末に、二人がやがて結婚することが明示されている。二人の行く末がどうなっていくのか、【封殺鬼】シリーズを読破した方ならご存知の事だろう。桐子が言ったというあのセリフ、シリーズを通読していた時には神島桐子という人物の峻厳さを示すエピソードとして捉えていたのだけれど、実際にこうして彼女の少女時代、そして志郎という人との絆の在り様を知ってしまうと、どれほどの想いを抱えてあの言葉を発したのか、胸が震えて仕方がない。

二人の物語はまだ始まったばかりなのだという。二人のその後、それこそ結婚に至るまでのエピソードなんかも読みたいのは言うまでもなく。できれば、もう一シリーズ桐子様で行って欲しいなあ。
それこそ、桐子さま一六歳! とかで。
と、云いつつ、本編の方の後日譚あたりでも大歓迎なのだけれど。最近、佐穂子分が足りないんだもんね。


にしても、あの人の正体については、もうまったく最後までまるで気がつかなかっただけに、あっと言わされた。それこそ、見た通りの人だと思っていただけに。言われて振り返ってみると、確かに伏線らしきものはそこかしこにあったんだけど、いやもうさっぱり気がつかなかった。やられたなあ。どうにも軍人だけが一方的に時代の闇に蠢く悪役にされて微妙に違和感感じてたんだけど、見事にひっくり返された。
そのうえで、その彼の口から語られることによって、どうしようもない時代の流れ、妖怪や怪異とは全く別の、不気味で如何ともしがたい人間の社会の蠢き、というものを示されたみたいで、この時代の名状しがたい重たい雰囲気がひしひしと伝わってきたように思う。


この巻は短編のCDドラマが付属していたのですけど…また沢城さんかい! この人、最近はほんとに売れっ子だなあ。まあ、それだけの実力者だと言うことなんでしょう。毎回驚かされっぱなしだし。
聖の人はかなりぴったし。弓生は思ってたより渋いなあ。
話的には桐子さまをもう存分に堪能できたので、大満足。まあ、志郎はああいう怒り方はしない変人だと思うんだけど。


そういえば、作中で本物の鵺が鳴いてたけど……いいのか、あれで?(爆笑
仮にもシリーズタイトル【鵺子ドリ鳴イタ】なのに。志郎も呑気というか、わざわざ本物連れてこなくてもよかろうに。いや、でも実際あれは腹立つ。あの鳴き声はイラッとくる。源頼政の鵺退治・新説だなw
しかし、この封殺鬼に出てくる妖怪たちって、けっこうコミカルというか、天然というか。一反木綿なんか、けっこうヒドイ扱いだぞ、あれ。幾ら文字が書けるからって手紙扱いって。挙句、洗濯してOKなのか、一反木綿w

プリンセスハーツ 初恋よ、君に永遠のさよならを の巻5   

プリンセスハーツ―初恋よ、君に永遠のさよならをの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 初恋よ、君に永遠のさよならを の巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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いやすげえ。前巻でのジルとオース王子との熾烈な外交戦争、あれほどのレベルでまだ前哨戦なのか、と前の感想で書いていたのだけれど、本気であれで前哨戦のレベルでした。
凄まじいまでの、あらゆる手段を使い、タイミングを掌握し、搦め手、正攻法、口八丁手八丁、国情や国際情勢をも加味した外交闘争、謀略の嵐、苛烈な駆け引き。いやはや、凄かったー。時に形勢が片方に傾き、また思わぬ一手で状況がひっくり返り、と息をのむような緊張の連続。
ここでジルとオースのみがやりあうのかと思いきや、帰還したルシードの活躍がまたハンパないんだわ。まさに王の威厳。この存在感には圧倒すらされる。この男、まさかここまで王としての大きな器を有した男だったのか。
いや、それ以上に今回ルシードが輝いていたのは、ジルへの想いと、ジルのための行動そのものでしょう。ルシードがジルに訴える言葉の多くは、今回至言というべきものばかりで、この男は決して知恵者ではなくても、賢者が得てして見失いがちな真理を、純真な目で真っすぐ見つめている、というのが良く分かった。
ジル、今回ほんとにメロメロにされたんじゃないのか、これ。
オース王子との対決で頼もしく支えられ、またトーナメントでは思いもよらぬ形で彼が自分をどれだけ大切に想い、気遣い、守ってくれているのかを思い知ったのですから。
この時のジルは、まるでときめく少女のようで、なんかすっごい可愛かったなあ。最後のあのセリフは反則だろう(笑
本人、自分が言ってる言葉の意味、まるでわかっていないのはひっくり返りましたけど。この点に関してはルシードの方が常識人だ。普通はそう考えるって。しかし、どうしてこの女は甘酸っぱい恋や愛情の言葉じゃなくて、管理だとか調教だとかいう物騒な単語しか頭の中から出てこないんだ。

もうどう見ても、仮面夫婦なんか今更の話。それぞれが想いを寄せている相手、メリルローズとグリフォンに匹敵する大切な存在として、お互いの想いは繋がっているはずなのに……。

それなのに、不穏の影は消えないんですよね。高殿さんって、ときどき思いっきりハッピーエンドとは真反対の方に決着持ってくときあるからなあ。いや、ハッピーエンドに終わる場合も多いんだけど。それだけに、どこに落ち着くか予想がつかん。


今回の一件の真相に関しては、殆ど最初でバラしてましたよね。彼の独白を読めば、だいたい想像はつく。それだけに、ジルの最後の一手には仰天させられましたけど。なんで!? と思った。思わされた。これは、うまい事逆手に取られた。
オース王子もなあ……この子は器用なんだか不器用なんだか。13歳にしてあれほどの才を見せ、大人の振る舞いを見せつけながら、それを成し得た動機というのは実に大いなる不器用の結果だものなあ。
彼の想いが真に彼女に向いていたら、というのは考えてしまうことだけれど。オズマニア王女の複雑に絡みきってしまった想いと言うのも、ひたすらに重たい。結局、ほどけないほどに絡まりきってしまったんだなあ。あれは、もう切って捨てるしかなかったのだと、考えざるを得ない。その意味では、ジルの一手は彼女にとって本当に救いとなったわけだ。
その派生として、サラミスたちの人生は大いに変転してしまったのだけれど。味方の少ない、というか殆どいないに等しいジルとルシードだけに、この二人については真に味方になって欲しかったところだったんですよね。二人とも、若いながらも才能は実に豊かで個性的だったんだし。
まあ、味方にはなりつつも、すべてを打ち明けあう仲間にまではならなかったか。惜しい話だけど、あの男の子の気持ちはわからないでもない。男って、ああいう風に考えちゃうんだよなあ。ダメだよなあ……。
でも、二人ののちのちの話を読むに、二人にとって最良ではなくても、なんだかんだとうまく結ばれたみたいだし。うん、良かったなあ。


さて、物語の方は、最後の最後にまた大きな進展を迎えることに。これ、パルメニアシリーズを読んでる人なら、あの騎士団からああいう申し出が来た、というのは、ほんとに衝撃的で仰天するような事だとすぐにわかるでしょう。
遠征王にしても、マグダミリアにしても、その時…シリーズでも、この儀式に関しては何度も繰り返し語られてる、国事に関わる最重要の一件ですもんね。そのパルメニア王国の最重要秘事が、アジェンセン公国のルシードに向けて発せられたわけですから。
これは、ほんとに大事だわ。

プリンセスハーツ 恋とお忍びは王族のたしなみの巻4   

プリンセスハーツ―恋とお忍びは王族のたしなみの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 恋とお忍びは王族のたしなみの巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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前巻であれだけ管理の徹底を誓ったくせに、管理できてないよ! 管理が足りない!(笑

しかし、ルシードとジルの仮面夫婦生活がはじまってからもう二年になるのか。二人の当初の利害関係だけで繋がった冷たい関係を思い起こせば、随分と変わったものです。思慕するメリルローズの偽物ということでジルにつらく当たっていたルシードも、今となってはジルの事を誰よりも信頼し、頼りにしているわけですし。ジルだって、最初はルシードを自分の目的のために利用するだけの相手、として感情なんかこもってなかったはずなのに、今の彼女の行動原理って本来のパルメニア打倒の目的からずれて、純粋に王妃としてルシード第一。ルシードを名君として盛りたてていくことしか考えてないみたいになってる気がします。
もちろん、アジェンセン公国の戦略目標としてパルメニアの併吞があるわけですから、彼女の目的としてはズレてはいないのでしょうけれど。今の彼女はその前にルシードありき、の感じがするんですよね。
そのわりに、自分のルシードへの感情、彼からどう思われているかの認識が相当鈍い。今のルシードにとって、半身といったら誰がどう見てもジル本人しかいないじゃないか。
二人の関係性については、むしろルシードの方が正確に把握しているのかもしれない。彼がマシアスに語ったトーナメント出場の動機なんて、ちょっと感動ものだったですよ。よっぽどジルのこと想ってなかったら、あんなこと言えないですよ。
でも、彼の場合複雑なのは、その感情を認めるわけにはいかないってところなんでしょうね。ジルはあくまで彼が愛したメリルローズの偽物として送り込まれてきた存在。その彼女を愛してしまうのは、メリルローズへの裏切りになってしまうわけですし。彼にとっては辛い現状なんですよね。もしメリルローズの存在がなければ、ジルが本当の意味で王妃でも何の問題もないのだけれど、そもそもメリルローズの存在がなければジルが王妃としてルシードの前に現れる事もなかったわけで。
結局のところ、この二人が本当の意味で夫婦になれるには、メリルローズとの決着が必須となってくるんでしょう。
それに加え、ジルにはグリフォン、という心を占める男性がいることをルシードは知っているわけで。それが、ジルをいずれ自分から離れていく存在だと思い込んでる要因となって、彼が躊躇する鎖となっている。自分にとってのメリルローズ、ジルにとってのグリフォン。二重の鎖は、ルシードに二の足を踏ませる戒めとしては重すぎるくらいのものだ。

そのルシードだけど、前回で一気に単なる脳筋君主からいっぱしの王の器を示したわけですけど、やっぱり王としての存在感が増してます。
今までだったら、今回のケースだとジルが一人で対処しても、こんな風にルシードの不在を心細く思うようなことはなかったはず。ルシードは決して智者でも政治家として傑出した存在でもないけれど、居ると居ないとではジルの判断に迷いが生じるほどの重きを為すようになっている。
この辺は、ジルの女性としての感情を抜きにした、純粋な王としての重みに見える。成長したなあ、うんうん。

そのルシード不在の中での、オズマニア王子オースとジルとの剣を持たない戦争は、もう凄まじい見応え。こうしてみると、武力による戦争というのが単なる政治の延長の一手段に過ぎない、というのも納得の、言葉と言葉のギリギリの鬩ぎ合い。この手の国家間で手持ちのカードを切り合う外交戦は、やっぱり読んでて面白いったらありゃしない。並みの合戦よりも手に汗握る緊張感ですしね。
これでも、ある意味前哨戦。あくまで本番前の主導権争いですからね(それでも、場合によっては息の根止めにきてますけど)。実際、政争の本番となったらどうなることやら。

帰城が遅れているルシードの方も、意外な人物との出会いで面白いことになってるし。味方の少ないルシードだけど、ここで何とか身内が増えることになるんだろうか。
しかし、ほんとに女に見えんな、あの人。

封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 44   

封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈4〉 (ルルル文庫)

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 4】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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ああ、そうだったのか。以前から幾度か触れられてきた桐子の心の洞。埋まることのない空隙。
どうして、聖と弓生という存在が傍らにいながら、桐子の心の空隙が埋まらないのか不思議に思っていたんだけど、確かにこれは聖たちでは決して埋められないわなあ。切ない。
悠久の時を生き続ける鬼である聖と弓生にとって、一番大切なのはお互い通し。二人であったからこそ、この無限の時を生きてこられた。だからこそ、片割れがいなくなれば残されたもう一人は狂うしかない。
人間であり、百年も生きていないだろう桐子では、絶対に届かない絆。どれほど自分を大事に思っていてくれても、大切にしてくれても、それは彼らが相棒に抱くそれには決して敵わない。自分は選ばれない。
その天性の才ゆえに、わずか十歳のときに、愛する兄を殺し、従兄を殺してしまった桐子。ダキニの異名をとるほどにその冷酷さと凄まじいまでの力で恐れられる少女だろうと、まだ十四歳の女の子であることに違いはないのですよ。自分を、愛してくれる人を求める女の子でしかない。
だけど、彼女はそれを諦めてしまっている。優しかった兄の幻影を封じ込め、見ないふりをして諦観を身に宿し、神島当主としての自分に徹している。
確かに、洞だ。
そんなものを目の当たりにして、やはり志郎は傍観者を気取っていられるほど世捨て人ではなかったな。
常から穏やかな彼が本気で怒り、悲しみ、他人の心を土足で踏みにじる行為と知りながら、桐子の欺瞞を彼女に突きつけた彼は、もうぼんやりと事態を眺めていることを、許容し続けてはいられないだろう。
もっとも、彼女と<友達>になった段階で、そんな立場は遥か彼方のことなんだろうけど。

一方で、そんな使役でも部下という関係でもない志郎という男の存在は、桐子の心に多大な影響を与えつつあるように見える。
なんとなく、はじめの頃は頑なだった彼女の態度の中に、屈託のないものや十四歳の少女に相応しい言動が増えてきたように思うのは気のせいだろうか。
宇和島夫婦など、当主としてではなく桐子個人を心配し、心から尽くしてくれる相手が現れたことも大きいのだろうけど。
宇和島の奥さんなんか、桐子にとって母親みたいな感じすらあるのかも。全然敵わないって雰囲気だしね、あの桐子が。
そんで志郎といるときとか、志郎のことを考えてる時の桐子は、本当にとびっきり子供っぽい。これがあの桐子か、と思うくらいにw
あとがきで作者氏も、甘え我儘言える相手、なんて言ってるけどまったくそのとおりだわ。甘えてる甘えてる。接し方がまたぶっきらぼうで攻撃的だから気づきにくいけど、桐子からすれば立場を越えてこうして受け止めてくれる相手というのは、やっぱり初めてだからよくわからんのだろうなあ、接し方とか相手への感情とか。
志郎は志郎で、桐子の弱い部分とか目を見張るような強い部分を見つけるたびに、彼女のことが気にかかってきているようにも見える。まだ異性とかそういう風ではなく、放っておけない女の子、といった感じだけど。
でも、聖や弓生、宇和島たちでは決して立てない場所に、彼女が求めているものがある、と彼は知ってしまったわけで。
ああ、これがフラグ立ったってやつなのかしら(笑

今回の座布団は弓生さん。自爆した桐子はまあ自業自得として、乙女小説を朗読させられて悶えている桐子を見て、密かに楽しんでる弓生はけっこうひどいSだと思う。Mじゃなかったのか、こいつww


プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻5   

プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-4)

【プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫



くわぁぁぁっ、キタ、キタキタキタ、これはキタ!

MARVELOUS!!

産休明けで育児も大変でしょうに、高殿先生、完全にギア入ってきました、これは。何気にルルル文庫最厚をぶっちぎったらしいし。
実に、実に読み応えのある政争劇!!

いやはや、今回のルシード陛下の成長ぶりには目を見張りましたよ。この野郎、王様で主人公格だというのに、これまでいわゆる<脳筋>でかなり頭使う作業についてはダメダメだったんですよね。
光栄シミュレーションゲームの数値でいうなら武力80以上、知力政治力30〜40、みたいなww
かといって人間的魅力にあふれてて、自然と他人を惹きつける君臨するタイプかというとそうでもなく、コンプレックスが強く野心家で、色々と心にひずみを抱えて容易に他人に心を開かない、わりと屈折したタイプなんですよね。
そのせいもあってか、味方がとにかくいない。政略的味方はそりゃいますけど、いざって時に心から信頼して頼りにできる相手がいない。
その数少ない仲間が、王妃であるジルと秘書官のマシアスだったわけですけど、当初はこの二人だってお互いの目的のためにお互いを利用し合うドライな関係だったわけです。
おまけに、男としても未熟者でジルに対しても何度も心無い言葉を投げつける始末(まあ、ジルと結婚するにいたった過程や関係、お互いの性格を鑑みるに仕方ない部分はあるんですが)。このルシードの女性に対する接し方の歪さは、今回さらりとジルが分析してたりしますけどww

そういう、わりと武張った不器用な王様だったルシードなのですが、ジルが感慨深く思うように、彼は今回の一件を通じて確かに草原の民を束ねる族長から、近代国家の国主として発想、着眼点、行動力の方向、我慢強さに腹芸と、べろりと一皮剥けた感があります。
政治の相談役であり知恵袋であるジルが、傍にいないという緊急事態であり、すべて彼が判断しなければならなかった、という状況があったにしろ、今回はルシード、ほんとに必死で頭使ってたもんなあ。
ただ、それが単にジルに頼れなかった状況が導きだしたものではなく、ジルを助けるため、さらにはジルを危険にさらし国家の危機を招いてしまった自分の王としての不甲斐なさへの憤りからきた覚醒だったのは、なんとも感慨深い。
これって、ジルが不要というのではなく、ジルが自分にとってかけがえのない存在だという思いが引き出したようなパワーだったわけでして。

しかし、クライマックスの緊迫感あふれる政争劇は二重三重に仕掛けられた罠といい、ギリギリの綱渡りの駆け引きといい、素晴らしかった。剣と剣のファンタジーも面白いけど、こういう歯応えのある政略戦・謀略戦、情報戦、頭脳と知略と機転がカチ遭い攻防優劣が二転三転する戦いも面白いったらありゃしない。
とはいえ、なかなかここまでガッチリ政争を書ける人はいないので、今回は大変満足でした。数ある高殿作品の中でも今回は屈指の攻防だったんではないでしょうか。
一方でルシードとジルを中心とする恋愛模様も今回のジルの危機を機会に一気にガツガツ進展したみたいだし。ルシード、あの言動を見る限りもうジルのこと十分意識してしまってるようですし。むしろ、恋愛感情への自覚のなさからいったらジルの方が遥かに鈍チンなのかも。
なんだよ、管理って!! (爆笑
ルシードずっこけるのも無理ないですよ。なに勝手に自分の感情理解した気になってスッキリしてるんですか!!
コイツ、ひどい女だ(笑

でも、この二人の関係が進展すればするほど、二人の間に前提として横たわっている爆弾が、威力を増していくんですよね。
元々は偽の夫婦。愛する女性の偽物として送り込まれてきたジルと愛情を育むことは、やがて本当の姫・メリルローズが登場することで個人間の関係も国家の政治体制にとっても致命的な爆弾として作用するわけで。
真打ち登場、メリルローズ……この人、なんか物凄くこえぇぇぇ!

封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 35   

封殺鬼鵺子ドリ鳴イタ 3 (3) (小学館ルルル文庫 し 2-5)

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 3】 霜島ケイ/也 ルルル文庫


すげえ、志郎すげえよ。あんたすげえ(爆笑
大した男だとは思ってたけど、凄い。あの桐子さまに「友達」と言わせるとは。「ありがとう」と言わせるとは! しかも無理やり(笑
ある意味、聖よりすごいかもしれん。
言ったあとで荒れ狂う桐子(14)が可愛くて仕方がない。荼吉尼の異名で恐れられた少女がこんな顔を見せるとは、色々と感慨深いなあ。
いやでも、無理矢理でもなんでも、桐子が思ってもないことを口にするわけがないので、あれは本心なんだろう。それだけに、八つ当たりしまくってるんだろうけど(笑
しかし、あの桐子がこれほどいいように振り回されるとは。聖相手にだって、もう少し体を為してるのに、志郎相手だとほんとに形無しだ。
これで、志郎が将来の桐子の旦那だと確定しているだけに、逆に分かっているがゆえの楽しみというべきか。この二人の関係は本当に面白い。ニヤニヤが止まらん。
あの釣り堀での一件以来、どうやら志郎は聖の頼みとは関係なく、桐子という少女に関心を抱いたみたいで。なるほど、幽明の境をフラフラと行き来する男にも関わらず、決して他人に無関心ではなく、すっと手を差し伸べてしまえる優しい男なんですねえ。その上、けっこうしたたかだし(笑
いや、本当にあの桐子を手玉に取ってしまえるんだから、凄いなあ。

「人食い」事件の方は、ついに敵の正体と目的が薄らと見えてきた。闇の闇。異端の外法か。この国の闇を憎み呪うもの。その発端は悲劇かもしれないけど、やってることは外道以外の何物でもない。やがて狂気に侵され暴走を始めるこの国の、もっとも深き闇の奥底に潜り込み、うごめく邪悪。
立ち向かう桐子は、ついに覚悟を決める。周りを遠ざけ孤独に生きるのではなく、周りを守り、責を負う当主としての覚悟を。
だが、それはやはり孤高の道。どれほど桐子のことを思おうと、聖も弓生も宇和島も、支えとはなれても、傍で寄り添うことはできない。上下ではなく、命じ命じられる関係ではなく、傍にいられる関係。聖は、それを志郎に期待したのか。
まだ14歳にすぎない桐子が抱える洞は深く底が見えない。その洞に気づいてしまった志郎は、もう彼女を無関心に見過ごすことはできない様子。その関心が、お節介がやがて彼女自身に惹かれていくことになるのか。
桐子もまた、この不思議な男に心惹かれていくのか。
結末が分かっているから面白くない、なんてことは一切ないのが人間関係の面白いところ。その変化の過程こそが興味の中心。
さあ、どうなるどうなる?

……って、今度は聖がっ!!

プリンセスハーツ 両手の花には棘がある、の巻  

プリンセスハーツ 両手の花には棘がある、の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-2)

【プリンセスハーツ 両手の花には刺がある、の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫


ちょっ、そこで終わるのか!? やられた。完全に前後篇じゃないですか。こんな場面で終わられたら、どれだけやきもきして待たないといけないんですか!!

それにしても、このプリンセスハーツのジルは、歴代の高殿円作品のヒロインの中でも一番可愛いんじゃないでしょうか。いや、可愛い。かわいすぎる(言い切る
自覚症状の無い嫉妬心が飽和しきった途端、やけ食いに走る鉄面王妃(笑
元々ルシードとは利害関係に割り切った共犯者に過ぎず、仲間ですらないという間柄に、双方ともが自分をはめ込んでますからねえ。それに片やルシードは戦場でこそ活き活きとする完全脳筋系で頭固いは依怙地だわ女心はさっぱりな上に、精神面は少年そのままの純朴さで繊細ですらあるという厄介な性格。片やジルの方も政治的辣腕や宮廷内の陰謀を未然に防いだり操ったりする狡知に長けてるくせに、根はお人好しで人の善意をあんまり疑わないわ、勉学ばっかりにかまけて年頃の女性としての振る舞いには疎いわ、感情の動かし方が不器用すぎるわ、男心はさっぱり理解してないわ、とてつもない厄介な性格をしているわけで。
そんな二人じゃ、うまくいくものもいかないですわな(笑
その上、ルシードが本当に愛しているのは、ジルと全く同じ容姿をしたメリルローズなわけで。ルシードがジルに抱き始めている感情がどういうものなのか、分からないほど鈍くて不器用というのもあるんでしょうけど、それ以上に非常に認めがたいものがある、というのもわかるんですよね。
だから、ルシードがジルに辛辣にあたったり、逆に気を遣ったりと支離滅裂な対応をしてしまうのもわかるし、傍目には自分が愛妾の方に靡いてることにジルが表面的にまったく反応を見せないことに拗ねる姿も、まあ可愛いんですよね(苦笑
いや、ジル嫉妬してるから。めちゃめちゃ機嫌悪くしてるからw
破滅的なのは、そうした自分の感情にジルが事態が致命的な展開を迎えるまでまったく気がついていないあたりですけど。

でも、この二人にマシアスを加えた三人の同盟関係は非常に興味深いですね。パルメニアを滅ぼすために結んだ手。余人には知られてはいけない秘密を共有した共犯関係。で、あるからこそ逆に言えば本心から相手に気を許してはいけない関係、という形になってしまっているところとか。
ルシードも、ジルも、おそらくマシアスも、お互いを建前の関係以上に信頼し、親愛を感じて、できうるならばもっと近しい関係になって欲しいと思っているにも関わらず、それぞれが抱えた闇と秘密、そして互いに規定してしまった関係と念願叶えばそれぞれ違う道を行くはずという未来が、お互いの距離を近づけるのを阻んでいる。
何もかもを取っ払ってしまったら、きっと彼らはとても近しい距離にいるはずなのに、実際はそれぞれ孤独感を募らせ、罪悪感を抱きながら、それを抑え込むだけの決意や決心に突き動かされている。
まったく複雑怪奇な関係で、雁字搦めで容易なことでは解けないようなものになってしまっているわけですけど、やはり突破口となるのはメリルローズの真実と、ルシードとジルの間に芽生えつつある恋心となるんでしょうか。

なんにせよ、あんなところで終わられたら気になって仕方ないじゃないですか。続きをはやく、はやくーー!!

封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 2  

封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ 2 (小学館ルルル文庫 (ルし2-2))

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 2】 霜島ケイ/也 ルルル文庫


神島桐子十四歳!

すみません、なんか無性に大文字で叫びたくなってしまいました。
そんなニヤニヤがとまらない【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ】の第二巻。
今回の桐子を見てると、聖や弓生が彼女のことを過保護に扱ってるのもよくわかります。これほど手のかかる面倒な子は、放っておけないですもんねえ。
良きにつけ悪しきにつけ、本家の正統たちは当主に就くことで庇護を必要としなくなり、たとえそれまで親しくしていたとしても二人の鬼を遠ざけることになっていきます。
遠く平安の頃から、のちの桐子の息子として神島の当主になる隆仁も幼いころは二人に懐いていたにも関わらず、当主となるとともに二人と距離を置くことになります(それが彼ら二人との絆の喪失を意味するのでないことは、彼のその後の当主としての生き様と最期からも明らかなのですが)。
ですが、このシリーズの主人公である桐子は、当主の座に就いてからもう何年も経っているにも関わらず、身近に二人を置いている。いや、桐子本人はあっちいけ! と喚いているわけですけど(笑 でも本心からそう思ってるなら聖たちは言われずとも距離を置いていく人たちですし、結局のところ聖が偉そうに言う、あいつが寂しがるから傍にいるんやんか。という言葉こそが真実なんでしょうね。
まだ、この時点で桐子は二人の庇護を必要としている、本家の当主として足りていないところがある。
今回のあまりにも人との接し方の不器用さ、見方によっては実に可愛らしい周囲へのツンツン振りは、その辺を顕著に表わしているのではないかと。
もうね、どうしていいかわからなくて動揺して狼狽して周りに八つ当たりしてる桐子も、聖に拳骨で頭ゴツンとやられて叱られて激怒してる桐子もかわいくてかわいくて(ゴロゴロ
でも、同時にそれだけ今まで桐子の周りには信頼できる人がいなくて、自分を利害抜きに心配してくれる人たちに、そのひたむきな思いにどうこたえていいのかわからず戸惑うしかない彼女のこれまでの人生がどれほど陰惨なものだったかが胸に響いてくるのです。

愉快で温かく光のように周囲を輝かせる聖と、静かにそっと大切に見守ってくれる弓生。そんな二人に守られながらも心の虚ろな洞を消せずにいる桐子という少女が負ったもの。それがどれほど重く辛いものなのか。そんな武見志郎の言葉がジワリと沁みます。

それだけに、身内にも本心を見せようとしない頑なな少女の心の殻をわずかなりともフワリと引っ張り出してみせた志郎の存在は、これから桐子の中で大きなものになっていくに違いありません(断言
いいなあ、このカップル(笑 
いや、まだ友達か。しかも、志郎からの一方的なw 聖はめちゃくちゃなんだけど、やることなすことキッチリストライク突いてるんだよなあ。桐子に友達を作ったろう大作戦、成功してるじゃないですか(笑
幽世で二人きりで会っている時の桐子は、確かに神島の当主ではなく一人の少女でしかなったように思います。ああいう、自分の好奇心を表に出すような言動は、たとえ聖や弓生の前でも見せなかったように思います。
まあ、ただの少女の顔になっても、横暴で我儘でえらそうなのは変わりませんでしたけど(笑

この【鵺子ドリ鳴イタ】シリーズは次の三巻で終了らしいけど、なんとなく少女桐子の話はもう少し続くような気がします。ただの願望かも知れませんけど、私としたら志郎との関係を行き着くところまではっきりと読みたいです。読みたいです。読みたいのです!

どうやら神島桐子10歳の物語である前シリーズ【封殺鬼】の中編『花闇を抱きしもの』がルルル文庫で新装されるらしいですし、これからも【封殺鬼】シリーズは何らかの形で続いてほしいなあ。

封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 1  

封殺鬼鵺子ドリ鳴イタ 1 (1)

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 1】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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すみません、これ読んだとき悶死しそうになりました。
だって、だって。桐子さまがっ、あの桐子婆さまがっ!

今は亡き小学館キャンパス文庫の看板作品であり、先年見事に完結を果たした傑作伝奇小説【封殺鬼】の、予想もしていなかった復活新刊。
もう、正直これが新作と知ったときは泣きそうでした。読んでる最中はあまりの懐かしさと相変わらずの内容に、悶えまくりでしたけど。
封殺鬼ファンとして嬉しいのが、新たなレーベルで心機一転再開ということで、この新作が前作シリーズをまったく知らなくても入っていける話になっていることで。これを機会に封殺鬼を手に取ってくれる人、増えないかなあ……。
いや、問題は元々マイナーなレーベルな上に既に無くなってしまってるキャンパス文庫という前作シリーズの入手が非常に困難なんじゃないか、という点なのだけど。


舞台は現代だった前作から半世紀以上遡った昭和初期。主人公は相変わらずの弓生、聖のコンビに加えて、あの先々代神島家当主の神島桐子。
前作の中篇(といっても文庫本三冊分あったわけですが)【花闇を抱きしもの】で、彼女が齢十歳にして自分を利用しようとした身内、側近を粛清し神島家の当主に座ったエピソードから四年後の話になるわけですけど、この花闇の話は人間の怨念がドロドロしていて、桐子もまだ幼い身で、過酷すぎる顛末に痛々しいばかりだったのですが。
この十四歳になった桐子婆ちゃん、いいなあいいなあ!!(婆ちゃん言うな)
表面上はあの冷酷で感情の一切を表に出さない荼吉尼の異名を異名を欲しいままにした女帝そのものなんだけど、能天気な仮面ブレイカーの聖と相対した途端、癇癪持ちで意地っ張りで強情な14歳の少女の顔が曝け出されて……って、もうこの辺で読んでて自分の頭がどうにかなってしまったのかと。
だって、あの桐子様ですよ。前作読んでりゃ伝わるでしょうが、あの冷たく怖ろしい婆様だった人が、聖相手に声を荒げて怒鳴り散らすわ、豆をぶつけて追い回すわ、露骨にシカトここうとして失敗するわ、ブチ切れて沸いてる鉄瓶投げつけるわ。

「おまえなど、バカなケダモノ、略してバケモノで十分だ !  二度とこの私を『ちゃん』づけで呼んだら許さぬぞ! このうつけ鬼!」

あの桐子さまがですよ!!!
反則、もうこれ反則。ぶっちゃけありえない。
若い、若いよ、少女だよ。

クラクラです。

しかし、聖はいつの時代も聖だなあ。弓ちゃんも、時代的には前作より此方のほうが過去なんだけど、聖への対応がこっちのほうがなんか達観しちゃってるように見えるのは気のせいだろうか(苦笑
桐子への接し方も、前作では三家の次期当主たちと最後まで距離を置こうとしていたのに比べると、わりと親身だし。

相変わらず、幽玄と現実の境目を漂うような、薄ぼんやりとした暗がりのような作品の雰囲気は素晴らしく、時代背景が混沌とした昭和初期というのも相まって、この怪しさがたまらなく五臓六腑に染み渡ってくる。
でも、ふとそのまま暗闇の奥へ奥へと沈んでいってしまいそうなところを、聖の突き抜けたような明るさが太陽の風のように全部吹き飛ばしてくれるんですよね。聖が現れると、他の登場人物までふわりと明るい光を帯びていきます。お陰で、空気自体は暗いのに、話は何故か明るく楽しい、という不可思議極まりない作りになっている。
花闇だと、あんまり聖の明るさが発揮される機会がなかったので、本当に悲壮な話に終始していたのだけど、今回は聖に引き摺られて桐子の魅力が大爆発してますなあ。

恐らく、将来的に桐子の連れ添いになるのだろう新登場の武見志郎も、つかみ所の無いふわふわとした綿雲のような人物で、非常に魅力的。仮面は冷徹、本性は短気で横暴、という桐子とどういう関係になっていくのか、この第一巻では最後の方にようやく顔をあわせたところという段階なので、楽しみは次巻以降か。
歳の差も十歳以上というのは……(にやにや
しかし、志郎ってまんま、今で言うニートだなw

神島家の家人である宇和島夫婦も、予想外にキャラ立ても良くって話や人間関係に食い込んできて、これは驚きでした。
なるほどなあ。こういう信頼できる側近を見つけることが出来たからこそ、桐子の時代の神島家は隆盛を高め、後々苦労していくわけか。

ともあれ、期待していたものの何倍も面白いものを出してきてくれました、帰って来た封殺鬼新シリーズ。この調子で、桐子の時代の話だけでなく、さらなる過去や、完結したけど現代のあの連中の話とかも書いてくれないかなあ、と期待を募らせつつ、まずはこれの続き、早く読みたいです。
いや、堪能した。
 
12月2日

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