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丈月城

異世界、襲来 03.星を呼ぶもの ★★★  



【異世界、襲来 03.星を呼ぶもの】 丈月城/しらび MF文庫J

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

着装者vs着装者。ヒーローは、人間同士の戦いに巻き込まれる。

激化する異世界文明の猛攻に対し、各国はアスラフレームの配備を推進していた。そんな中、アリヤの持つ「休眠状態のアスラを覚醒させる力」を検証するために水上都市《エリクシア》を訪れたユウたちは、中国の着装者四号・雪麗、インドネシアの着装者候補・シャンティと出会う。一方の日本では、福岡の臨時政府が着装者三号の身柄を要求していた。断固拒絶するユウたちだったが、《福岡》が隠し持っていた七号フレーム《アグニ》とその着装者・巻志摩レオの手によりアインが囚われてしまう。大魔術師クアルダルドの奸計も蠢く中、同じ着装者を相手取ったユウの戦いが始まる──ヒーローVS異世界の革命的戦記、第3巻!

アスラフレーム装着者が続々と登場。なんだけど、マトモな奴が全然いないじゃないですか。それも自我が肥大化しているような連中で、まあ人格的にもとてもじゃないけれど好感を抱けないようなのなので、どういう目的でこういうキャラにしたんだろう。仲間にするには此方からご遠慮したいし関わり合いになりたくない、かと言って敵対するにしても面白みを感じる相手じゃないんですよね。
戦う価値のある良い敵、ライバルって感じじゃ到底ないですし。どうにも魅力を感じにくいキャラなのです。
特にレオくんね。日本が壊滅する過程において、酷い体験をしてきて人間にも世界にも三行半を突きつけている、という境遇もわからないでもないのだけれど、この世界のご時世ではそういう体験をした人は珍しくもないでしょうし、ガキが拗ねて斜に構えてイキっているようにしか見えないのが余計にタチが悪い。年上のお姉さん上司に宥められて多少のコントロールを受け付けるあたりなんぞも中途半端ですし。これで、悪いところばかりじゃない、と言われてもねえ。

肝心の敵である異世界の方も、なんかクアルダルド一人だけがウキウキと暗躍しているばかりで、地球を侵略してきている異世界、という敵側の様子が全然見えてこないものだから、地球サイド、人間側が勝手に内部分裂や権力争いで自滅しているようにしか見えない、というのもスッキリしないところ。そのクアルダルドはというと、いつもの愉快犯型戦闘狂で独りで勝手に遊んでいるだけで、こちらもユウたち主人公サイドと噛み合っているかというと、グアルダルドの一方的な片思いでユウの方はなんか強い敵、という認識しかなくて此方も好敵手とかお互いしのぎを削りあう噛み合った敵同士、という感じもなく。そのせいか、グアルダルド自体があんまり印象に残らないんですよねえ。

今回はユウたちもいまいち行動に指針が見られず、明確な目標や意思が感じられず、周りの状況に流されてるうちに各地でなんとなく戦いになって、という風情で全体的に中途半端に見えちゃったんですよね。なにやってたんだろう、今回。
アインが囚われた事で、ユウがアインの存在の大きさに気づく、という展開もあったのだけれど、そこに感情が行き着くまでが結構唐突感あって、そこに至るまでの丁寧な積み重ねがあったんだろうか、これ。クライマックスの展開も同じく唐突感があって、え?どうなったの? と戸惑ううちに何もかもが終わってしまっていて、作中の登場人物たちの感情についていけずに、あれ?と思ううちに終わっちゃったりして、なんか置いてけぼりだったなあ。

なんか今回は全体的に焦点がぼやけていて、いまいちノリ切れませんでした。あと、時事に関しての作者の考えをキャラに語らせるの、あれは激烈に冷めるので勘弁してほしいものです。


カンピオーネ! ロード・オブ・レルムズ 2 ★★★☆  



【カンピオーネ! ロード・オブ・レルムズ 2】  丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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英雄界ヒューペルボレアの異常事態に立ち上がった勇者・物部雪希乃。
彼女はその異常の原因であり、英雄界で勢力を伸ばしつつある「神殺し」たちを討伐する旅を決意する。

雪希乃は六波羅蓮、鳥羽梨於奈を旅の伴にし、「神殺し」を探す中で、海賊に襲われている国に辿り着く。
海賊退治をした雪希乃たちは、その海賊が「神殺し」のひとり、羅翠蓮の手下だと知る。
罪なき民を苦しめる羅翠蓮を討伐するため、3人は海賊の本拠地へと乗り込む…。
そこで待ち受ける試練は想像を絶するものであった。

時を同じくして、英雄界は各地で不穏な動きが出ていた。
邪教カルト「反運命の教団」、裏社会を統べる組織「影追いの森」、英雄界の交通を牛耳る「旅人のギルド」…。
強大な組織同士の勢力争いの火種がくすぶり始める。

「神殺し」たちの力と覇権を懸けたバトルロワイヤルと、「神殺し」討伐に命を懸ける勇者の運命が交錯する!!

犬猿雉をお供に引き連れ、いざゆけ桃太郎の鬼退治。てな具合に、物部雪希乃が六波羅蓮、鳥羽梨於奈、あとステラを引き連れて世直しの旅よろしく剣をぶんぶん振り回して各地を収める神殺したちに挑んで回る、というのはなんというか、ドン・キホーテ的な滑稽さもあるけれど子供のヤンチャのような微笑ましさもあり、みたいな感じでなんともはや。
雪希乃の師匠であるラーマが桃太郎を名乗っていたのって、雪希乃のこうした世直し旅を暗示していたのでしょうか。それにしては、お供のはずの六波羅蓮が爆弾すぎるのですけれど。
雪希乃は世間知らずの迂闊者で、そこに粗忽乱雑短絡的と三拍子揃えた上にポンコツで未熟者、と剣腕こそ秀でているものの、カンピオーネと戦うにはあまりにも足りない娘さんなんですよね。魔王殲滅の運命を課せられた救世の勇者を名乗るには、あまりにもあまりにも未熟すぎる。
本物の神殺しとの格の違いを知らしめるには、護堂さんみたいなよくわからないけど意味不明に強い、という相手よりも翠蓮姐さんのように誰がどう見てもわけわからんくらいちゃんと強い、という正統派の相手の方が彼我の力量の差というのが明確に伝わるのでしょう。あれで翠蓮姐さんは理不尽だけど師匠として一定のルールを持っている人なので、ちゃんと相手してくれる人でもありますし。
これがヴォバン狼侯なんかだと適当に踏み躙って潰してしまうでしょうからね。ドニはドニで興が乗ってざくざく斬っちゃうかもしれないし。
ただ、なるほど雪希乃の資質が救世の勇者というよりもカンピオーネ寄りにあるとしたら、このあっけらかんとした雑な性格も相まって確かに、そう簡単に死なないし心も折れないしメゲないし闘争心も失いそうにないように見えてくる。
梨於奈ともいいコンビですし、まだまだ半端者で梨於奈と組んででないと抗し得なかったとはいえ、翠蓮姐さんを封じてみせたのは大金星でありました。まあこの女仙、封じられているという体でもひょいひょいと封じられたまま出てきちゃうんですけど。
そんな雪希乃の世直し旅ですけれど、どう考えても獅子身中の虫が傍にいるわけで。
純真な世間知らずの娘さんが、チャラ男の軽薄な態度に呆れ忌避しながらもその馴れ馴れしさにちょっとずつ慣れてきてしまった上に段々とちょっといいな、なんて思う場面がちらほらと出てきてしまって徐々に惹かれ出しているという様子は、完全に悪い男に無垢な少女が騙されて食い物にされそうな構図です。なんか微妙に背徳感が漂ってきたぞw

さて、英雄界に新たに乗り込んできたカンピオーネがまたひとり。黒王子アレクサンドルも見た目若いけどもう壮年か。ともすれば、神の正体の解体を剣をする能力を持つ護堂よりも、神話や神そのものの謎や秘密を解き明かすことを得意として趣味にしている探索者アレクが、この英雄界の混沌としながら何らかの意図が感じられる情勢を見て、探らないはずがなく。
今回はアレクが謎解きおじさんとなって英雄界を駆け巡って現状を紐解いていくぞ!
いや、おじさん扱いは本気で怒られるかもしれないけれど、彼も若い頃に比べると丸くなった、というのとは少し違うかもしれないけれど結構性格も練れてきた感もあるんですよね。青年時代はもっと刺々しくて対人対応ももっとザクザク斬るような感じがあったぞ。そもそも、護堂と顔を合わせて普通に雑談できる時点で、落ち着いたと言ってもいいんじゃなかろうか。
そう言えばアレクって、プリンセスアリスとはどうなったんだろうか。
ともあれ、アレクが追って見出した護堂の足跡と、そこから見出した半運命の気運によって魔王殲滅の盟約の大法が弱まっているという考察には瞠目させられた。これだけ神殺しが揃っているにも関わらず、雪希乃がさっぱりパワーアップしないのは彼女が未熟なだけが理由じゃなかったのか。なるほど。間近にひとりカンピオーネが侍っているにも関わらず、あの反応ですからね。
逆にそういう世界だからこそ、勇者というよりもカンピオーネとしての性質を持つ雪希乃が選ばれた、という鷹化くんの考察も面白く、やはり彼女が今後も騒動の中心になっていくのか。
あと、久々にエリカが登場。いやあ、大人になった彼女の美人なこと美人なこと。その上、ここで生き別れになった子供たちと再会していたのか。珍しくアレクが仰天する姿を見られたのは貴重でした。あんなあからさまに驚くキャラじゃないのに、まじでびっくりしてたもんな。


カンピオーネ! ロード・オブ・レルムズ ★★★★   



【カンピオーネ! ロード・オブ・レルムズ】 丈月 城/BUNBUN  ダッシュエックス文庫

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神殺しの集う異界。そこへひとりの勇者が――。 アテナによる地球滅亡を懸けた決戦を制した六波羅蓮たち。戦いの傷が癒えない中に、驚愕の報せが舞い込む。英雄界ヒューペルボレアの異変。そこに「神殺し」たちの影がうごめく。蓮たちの先が読めない冒険が始まる――。 その時、ひとりの「神殺し」が動き始めていた。「魔王」と称され「神殺し」として数々の功績を残す草薙護堂である。彼もまた異界での異変を耳にしていた。その足は異界へと向かっていた。蓮たちとの邂逅はあるのか…。 そして、異界の異常事態に対してそれを収めるために新たなる勇者が立ち上がる! 英雄界ヒューペルボレアにおける神殺したちの新たなる戦いと冒険の幕が開ける――!

護堂さん、16歳で神殺しになってからもう十数年、って年齢三十路前後ですか。いい歳じゃないですか。そして、言動がなんだかおっさんくさくなってない!?
ニュービーな神殺しである六波羅蓮との対面でも兄貴分というよりも若い蓮に対してロートル感が出ちゃってて、さて貫禄が出てきたというべきなのか。
ただもう行動原理が完全にカンピオーネなんですよね。今はお供も連れ添いも誰もいないから尚更に、根無し草でどこにでもふらりと現れては大混乱を引き起こす大迷惑存在そのものだったかつての同輩カンピオーネたちと同じような有様、有様になっているわけで。自覚あるのかなー。
権能も、かつてはウルスラグナ縛りみたいなものがあったのに、今となってはわりと奪い取った権能使い放題使ってますし。
まあ若い女の子に手を出すような節操なしではなさそうなので、そのへんはちょっと安心ですけれど。嫁さんたちも、いい具合に熟成された年齢になってるんですねえ、そう言えば。妹ちゃんがどれだけ女帝と化しているかが楽しみのような恐ろしいような。

さても今回のお話、というかシリーズは護堂さんが主人公というわけでもなく、さりとて六波羅蓮が引き続き主人公、というわけでもなさそうで、新たな魔王殲滅の勇者と相成った物部雪希乃でもなさそうで。あっちこっちから神話世界ヒューペルボレアに集った神殺しや英雄英傑どもで、オールスター感謝祭をやろうってのかこれ。主人公を特定しない群像劇。まさにオールスターキャストでお送りする劇場版、って感じなんですよね。
確か蓮くんが主人公の作品では、神話の原型となる世界ということで神様や神代の英雄たちが主体の世界だったはずのヒューペルボレアなんですが、興味をそそられるものがあれば遠慮呵責なく首を突っ込んでくるカンピオーネどもが、あちらこちらかの世界からたかってきたお陰で、もうこれヒューペルボレア乗っ取られてますよね。神殺したちの遊び場みたいになってるのですが。
まあ最初にやらかしたの、カンピオーネじゃなくて鳥羽梨於奈の妹の鳥羽芙実花ちゃんなんですけどね。厩戸皇子とセットで、と言うべきなんでしょうけれど。まあ好き勝手に土地こねくり回してリアルシムシティはじめちゃったお陰で、その真似をしていろんな面々が自分の好き勝手に土地を作り出して、自分の都市を築き始めちゃったものだから。
最新のヒューペルボレアの地図が、もはやテーマパークの案内図みたいになってるんですけど。ディズニーランドさながらに、各都市がアトラクションかイベントゾーンみたいになっとるしー。
とまあ、神話世界をそうやってわやくちゃにして好き放題しているお陰で、他の次元世界がえらいことになってしまっているようで。神話の原型となる世界ということは、ここが改変されると多次元にまたがる神話そのものが変わってしまい、人類史そのものがねじ曲がった挙げ句に煽りを食って幾つもの次元が消滅するという過程を辿ってしまっているわけか。
そりゃカンピオーネぶっころ!機運高まりますねえ。しかし、魔王殲滅前殺し、の運命さんは護堂さんがラーマくんを解放するためにサクっと殺っちゃったわけで……ああ、やっぱり元凶になっちゃってるじゃないですか、護堂さんてば。
お陰様で、新規魔王殲滅の勇者に選定された雪希乃ちゃんは、あからさまに勇者レベル1なんですね。アリアハンから旅に出た、という風体で。まあレベル1であれだけワケワカラン剣才を漲らせてしまっているのですが、本人がポンコツ粗忽者迂闊者だからなあ。彼女の世界、もろに滅びかかってるにも関わらず、本人にそこまで深刻さを感じないあたり、大物なのか頭空っぽなのか。どっちもあるんでしょうけれど。しかし、彼女自分の世界では敵うもの無しというばかりの無双状態にも関わらず、しかも神の末裔でほんと敵無しなのに、それでもまつろわぬ神にはほぼ敵わないし、カンピオーネ相手じゃあ子供扱い、というあたり、カンピオーネがわんさといる世界ってどれだけインフレ状態だったんだろう。護堂さんとこの世界ですよ。蓮くんの世界でも、梨於奈がやたらでかい顔してましたもんね。カンピオーネが君臨している世界そのものが、結構珍しいのでしょうしましてや複数のカンピオーネが徘徊している世界とか、ゴジラが生息している世界とあまり変わらないんだろうねえ。
とかく、居るだけで目立ちまくるカンピオーネの中で、神殺しであるという存在感を消せる六波羅蓮という子はかなり同類の中でも特異ではあるんですよね。さらに、裏に回って暗躍までしているわけですし。あの要領の良さはやはり曲者だよなあ。
しかし、カサンドラを女王に仕立てて、ちゃっかり自分の国作っちゃった蓮ですけれど、カサンドラとは懇ろになりつつ、婚約者の梨於奈の方はというとなんか人間に戻れなくなってるし、おもしろ枠のキャラになっちゃってません? 登場当初の傲岸不遜で偉そうなお嬢様はどこへいってしまったのか。いや、今も傲岸不遜で偉そうなのはさっぱり変わっていないのだけど、コメディリリーフになってるもんなあ。せめて人間に戻れないと、ヒロインにも戻れないですよ梨於奈さん。蓮くんの婚約者どころか、なんか勇者さまに食われかかってますし、恋愛的にw

他にも、まったく世界観の違うはずの【クロニクル・レギオン】の方から、リチャード獅子心王と黒太子エドワードまで参戦してきていますし。あちらの作品から、というわけではないのでしょうけれど、キャラクターや二人の関係性なんかはそのままでしたしね。このコンビ、お気に入りだったのね。
しかし、その二人の上に立つ新たなカンピオーネのテオドリックですけれど、今のところはあんまり目立った個性感じないんですよね。いや、他のカンピオーネたちが目立ちすぎて頭おかしい個性の持ち主ばかりなのもあるのですけれど、あんまり特徴的なものがまだ見えてきていないような。特にカンピオーネとしての強かさというかしぶとさというか、殺しても死ななそうな意味不明の生き汚さが。
っていうか蓮の支援あったとはいえ梨於奈と雪希乃の二人に苦戦しちゃってたらなあ。今回は顔見せ程度でもありますし、今後に期待というところでしょうか。

なにはともあれ、このごった煮感たっぷりのオールスターにはやっぱりワクワクしてしまいます。これからどれだけしっちゃっかめっちゃかになるのか、楽しみ楽しみ。
にしてもラーマくん、今は弟と一緒に護堂をファミリーネームにしてるのか。どんだけ護堂のこと好きなのかw まあ今度はその護堂を狙う雪希乃を送り出したりしているのですけれど。護堂の名前を彼女に教えなかったあたり、運命に任せてという感覚もあるのでしょうねえ。


異世界、襲来 02.王の帰還 ★★★☆   



【異世界、襲来 02.王の帰還】 丈月城/しらび  MF文庫J

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激化する対異世界革命的戦記。舞台は関西へ――

水上租界《那由多》に辿り着くもその矢先、分断された一行。ユウとアインは大魔術師クアルダルドの《ポータル》に囚われ、伊集院たちは《那由多》を統治している亡命エルフの理事会と接触していた。理事会と国防軍との間に生じる不穏な空気を感じながらも、久々の文化的な生活を満喫する伊集院たち。一方のユウとアインはクアルダルドの歓迎に戸惑いつつ脱出方法の模索を開始する。そんななか、ユウは三号を継承することに対して抵抗を感じていた。皆の希望となって戦うこと、ヒーローとしての資質に対して悩み始めた彼が出した答えは……。丈月城×しらびによるヒーローVS異世界の革命的戦記、怒濤の第2巻! 今、王は帰還する――。


正義のヒーローになんかなれない。国が崩壊してからこっち、人間の、大人の醜い行いに何度も痛い目を見て、嫌な目にあわされ、傷つき続けて。きっと彼は失望していたのだろう。
そんな嫌な人たちまで、なんで身を挺して守らなければならないのか。それは至極当然な気持ちだ。
ユウは今、アスラフレームという誰にも有無を言わせない圧倒的な力を持ってしまった。それを如何ようにも振るえるのが今の彼だ。そして、着装者3号という偶像に人々は期待を重ねヒーローが助けてくれると願い信じている。
その期待に応えることが嫌だからこそ、ユウはずっと不調だったんですよね。そこからどうやって折り合いをつけるのか。
丈月さんの描く物語の主人公は、みんな精神的にタフ、を通り越してどこかしらに突き抜けたメンタルを持つある種の超越者でもあり、自分の行動の芯の部分に不動の揺るぎないものを持っている完成した人間でも有りました。
だから、ユウが普通にこうして悩むというのはいっそ新鮮ですらあるんですよね。分不相応の力を手にしてしまったものの、当たり前の苦悩。
尤も、そこで等身大の少年らしい答えを出してしまうのではなく、ある種の突き抜けた着地点へと到達してしまうところが、さすがというべきなのでしょう。
仮面の英雄、という正体不明で個人の特定がかなわない存在であるからこそ、誰もが望む偶像になり得る。ユウ個人が受け入れられない理不尽も、着装者3号という英雄ならば呑み込んで守ることが出来る。
あれほどの力を得ながら、その力と自分とを分けて考えることにした、という事なのだろうか。その在り方は戦士というよりも、まさに王。個として威を発する存在ではなく、集の意を束ねる王様という座こそが、ユウが継承したものだ。
同じ王……門主たるダルヴァの大魔術師たちとはまったく正反対の在り方なのだろう。
それに着装者3号はユウが身に纏うとは言っても、ドローンなどの運用含めてアインや伊集院などの仲間たちのサポートがあってようやく万全の力を振るえる存在でもある。ユウ個人ではなく、仲間たちとともに着装者3号というヒーローを創り上げ、形成する。そこにはエルフの賢人たちの支援も必要で、国防軍の軍人たちや市民の協力だって必要だ。そうして、バラバラだった衆を束ねて一つの意志に基づく集団となっていく。
今までユウたちが遭遇してきた人々は、国や組織の統制を失い無秩序にバラバラに動き回り、末端の人たちに負担を押し付けながら、バラバラの方向を向いたまま小さく固まって結局千々に砕けて滅びようとしていた。
だからこそのとにかく皆を守るのだというヒーローであり、希望を集めることで皆を束ねる王という偶像だったのだろう。
かつてユースのサッカープレイヤーだったユウが、途中で野良サッカーの試合に参加するシーンがありましたけれど、そのサッカーのシーンこそが示唆でもあったのでしょうね。チームの指令塔として、その意図を理解する者も理解しない者も含めてまとめあげ、誘導していく姿。パス出しに徹するようで、最後に自分でゴールを決める戦術。チームで唯一ユウの意図を理解して支援してくれていた最大の味方であった人物が、現実ではユウたちの今を一番理解しておらずぶち壊そうと動いてる国防軍の佐久間だったというあたりなど。
何事も表裏一体。それをどう呑み込んでいくか。元々の資質ももちろんあったのでしょう。アインが見込んだのもそのあたりでしょうし。しかし、苦悩する少年に道筋をつけてくれたのは、なつきさんなんですよねえ。この傾奇者な女子高生、年齢的にも姉御になるのか。その明るい性格とは裏腹に、あっけらかんと喋ってくれますけれど国家崩壊からこっち彼女がくぐり抜けてきた修羅場は、ただの生き死にの場どころではなく、津波のように押し寄せてくる人間の悪意そのものを切払いながらのすさまじい経験だったはず。ゾンビ映画にたとえてますけれど、相手は生身の人間だったはずですしね。
それでこれだけ明るさと豪快さを保って、ユウたちに対してもどんと構えてくれているのですから、頼もしいなんてものじゃないんだよなあ。女子高生というキャラの枠組みから完全に中身が溢れかえってますよ。
彼女自身、もうヒーローそのままで偶像になりそうなものなんですけれど、敢えてこの娘は戦士の方向に突き進むのか。まさかこんなに早々に強化イベントが来るとは思いませんでしたけど。これ、実質ユウと同格なんですよね。ちょっと特化しすぎではあるんでしょうけど。
アスラフレームって、全部スーツタイプだと思ってたので、これは予想外だった。
アリアも何気に重要なポディションであることが発覚しましたし、アスラフレーム12体が全部揃うのそれほど遠くはないのだろうか。何体かは情報出てますし、最後は別の着装者も出てきましたし。
まあ、全部が味方ってわけじゃないのでしょうけど。一致団結して最強の敵にあたろうか、というシチュエーションで速攻嬉々として同属で潰し合いの内戦はじめたカンピオーネは忘れんぞw




異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース ★★★☆   



【異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース】 丈月城/しらび MF文庫J

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世界を救うのは、いつだってヒーローだ。

突如、現代社会に現れたポータルから、異世界文明は人類への侵攻を開始。ドラゴンが飛来し、大魔術師が襲撃する世界へと変貌した。中学生の一之瀬ユウは国家プロジェクトの幼年従事者として、国防軍所轄のナノテクノロジー研究所に徴用される。彼は運命の導きにより、かつて国防の要であった人型戦闘機械『アスラフレーム三号』の継承者として選ばれる。それは『着装者三号』の愛称で親しまれ、日本に平和をもたらす救世主としてグッズ化、映像化もされるなど、社会現象になるほどの人気だった。大人も子供も憧れた彼はまさしく、ヒーローだった――。丈月城×しらびによる、ヒーローVS異世界の革命的戦記、ここに開戦!

こりゃあもう、アポカリプス・デイ……「黙示録の日」のその後だ。
異世界文明の襲来によって崩壊した現代地球文明。描かれているのはとりあえず日本のみだけれど、国防軍は組織だった反抗が粉砕され、首都圏は水没。政府は九州に疎開したものの、統治能力を失い、他の本土大都市も大規模魔術によって壊滅。社会体制は崩壊し、日本国内で難民が発生。もはや治安は守られず、異世界から送り込まれてくる魔獣たちの襲撃に怯えながら寄り集まって暮らす市民たちからはモラルは消え去り、暴力で弱い人々を従える組織構図が自然とできあがっている。
荒廃した未来なんて世紀末絵図ではない。現在が、現代が、今こうして日常を失い荒れ果てていくその最中なのだ。
ゾンビパニックなんかでも起こりがちな人心の荒廃だけれど、ニンゲンの手ではどうしようもない上位存在からの徹底した攻撃、文明そのものの破壊という意味ではまさに黙示録の日なんですよね。

そんな絶望的な天意に抗えるのは、亡命者であるエルフたちが持ち込んだ技術などによってもたらされた「アスラフレーム」。その装着者のみ。
人形戦闘機械というけれど、乗り込むんじゃなくて着込むようなタイプなんですよね。そして見た目はまさに仮面のヒーロー。黄色いマフラーが聖骸布として意のままに動くどころか自律して動く武器であり防具というあたりも、まさに仮面のヒーローなんだけど……。
ここまで社会体制がボロボロにされてしまった状態から果たして挽回できるんだろうか。
偶然なのか運命なのか、前任者の戦死から稼働する事なく沈黙を続けていたアスラフレーム三号と、眠らされていたエルフの姫のクローンとに認められ、新たな装着者となった少年兵の一之瀬ユウ。中学生の彼は、決して才気煥発とした意気軒昂な主人公というわけではないのだけれど、年齢の割にクレバーで強かなんですよね。こういうさっぱりとした粘り強さを感じられる主人公は、丈月さんらしい。同時に、この絶望的な状況に心折れないソルジャーとしての気質の持ち主でもあると言えるし、絶望的な状況に達観し割り切っているとも見て取れる。しかし捨て鉢になってるわけじゃないんですよね、いざというときの覚悟を決めているとは言っても。
中学生にここまでの覚悟をさせてしまうほどの、どうしようもない状況であり、それまで彼とその友人である伊集院が経験してきた世界が亡びていく日常が鏖殺されていく現実の過酷さ、凄惨さがそれほどのものだった、とも言えるのでしょう。
果たして、たった一人のヒーローと僅かな数の仲間たちとで、この終末極まった世界を救うことなんて出来るのだろうか。異世界側も、何気に少数の超強力な魔術師のもとに侵攻を行っているみたいなので、首刈り戦術を行っていけばワンチャンあり、なのかもしれないけれど。
仮面のヒーローと言っても、パンチやキックで怪人をぶっ飛ばすどころじゃなく、殆ど戦略兵器なみの強力さを誇るだけに。まあ敵側も同レベル以上に単体で戦略兵器そのものなんですが。
アスラフレームの話題からして、少なくともあと二体は3号と同レベルで似たコンセプトの機体みたいなので仲間か味方になりそうではあるのですけれど。

尤も、この一巻に関しては強大な敵と戦うよりも前に、モラルが崩壊してしまった同じ日本人たち相手にどうやって日々を無事にやり過ごし、また生き残るかという方にエネルギーが費やされていた気がします。それだけ、荒廃した現状を噛み締められたとも言えたのですけれど。
同時に、そんな世界でユウと伊集院、研究所仲間のハーフエルフのアリアとエルフクローンのアインの四人で、サバイバルしながら逞しくなんだかんだと賑やかに生きていく姿がなんとも心惹かれるものがありました。
この四人の関係、ここにあとで波多野なつきという姉御が加わるのですが、この仲間たちの一蓮托生で運命共同体でこの亡びかかった世界で一緒に生きていこうというパーティーとも家族とも取れる関係は、なんか凄く好みでした。不思議と誰かがリーダーシップとるわけではなく、みんなで色んな意見出し合いながら方針決め合うのとか、下手すればグダグダになるし人間関係も難しくなるパターンもあるのかもしれませんけれど、この子たちはある意味現状や生き死にに腹が据わっている分、結束が強く自然なんですよね。
彼らのこの黙示録後の世界での旅は、あまりに絶望的なんですけれど同時に生きるために前に前にぐんぐんと歩いていく冒険譚でもあって、うんなんか好きだったなあ。
とはいえ、ここからは本格的に異世界側の勢力との対決になっていくのでしょうけれど。えらいところで次回に続く、となってしまっているけれど、2巻は速攻来月刊行みたいなので待たされずに済みそう。

神域のカンピオーネス 5.黙示録の時 ★★★☆  



【神域のカンピオーネス 5.黙示録の時】 丈月 城/ BUNBUN ダッシュエックス文庫

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ヒューペルボレアで繰り広げた太陽神アポロンとの戦いによってカサンドラを奪還した蓮たちは、芙実花と厩戸皇子を羅濠教主の下に残し、地球へ帰還の途につく。しかし、その際に「聖ヨハネの魂」に出会う。聖ヨハネは蓮たちに、地球滅亡の兆しがある、と告げる。聖ヨハネの警告を受け、地球に戻った蓮たち。地球はかつて無い程の異常気象に直面し滅亡の一途を辿っていた。その時、蓮の目の前に女神アテナが姿を現す―!!彼女は蓮に宣戦布告をし、地球に終末の時を迎えさせるべく、世界各地を駆け巡る!!蓮は、アテナと終末の時を阻止することが出来るのか…!?地球滅亡を懸け、「神殺し」とアテナとの決戦が始まる―!!

蓮とカサンドラ、こそこそチュッチュしすぎ! 梨於奈がいるところでも構わず、彼女が見てない後ろでじっと見つめ合ったり、ハグしたり、チュッチュしたりとイチャイチャイチャイチャ。
完全に二人の雰囲気作っているにも関わらず、全くその空気に気がついていない婚約者(笑)の梨於奈さん。後ろでチュッチュしているのにも全く気がついていない梨於奈さん。さすがです、さすがの恋愛リテラシーの低さに定評のある梨於奈さんである。
一方で、これ蓮とカサンドラはそんな梨於奈を出汁にして楽しんでますよね、これ。バレてはいけないというスリルを味付けにして、背徳感をスパイスにして、コソコソイチャイチャ。バレたらバレたで全然気が引けた様子もなく、むしろ堂々と見せつけてさらにイチャイチャ。
そんなのを見せつけられて、婚約者(笑)であることも論破されて、色んな意味でメタメタにされてしまう梨於奈さんが不憫、に対して思えないのがこのお嬢様のイジられ上手なところなのでしょうか。怒るよりも動転してしまってあたふたしているところが可愛らしくもあります。以前みたいに、蓮に対してサバサバした関係でいられたのなら、別に蓮とカサンドラがどうこうしようが関係なく動じる必要もなかったのにねえ。
あのチャラ男くんにまんまと落とされてしまっていたお嬢様キャラなのでした。

とかやってるうちに、アテナによって着々と滅亡の一途をたどる世界。物理的な破壊ではなく、これってもう神話的終末なものだから、人類にどうこう出来るたぐいの話じゃないんだよなあ。わざわざヨハネ黙示録の著者とされる聖ヨハネさんご本人が登場して、終末のはじまりじゃー! と宣言してもらうほどでしたし。
ここまでくるとアテナをどうこうする他ないのだけれど、ぶっちゃけここまで世界の破壊神にして新たな世界の創造神となるまで発展しきっちゃった神様相手だと、蓮じゃあ役不足感は否めないところがありました。彼、やっぱり歴代のカンピオーネと比べるといささかデタラメさというか無茶苦茶さというか、理不尽さや生き汚さが足りない感じだったんですよね。実際、死にかけた時もあっさり受け入れて死にそうになってましたし。蓮くんってどうも責任感とか使命感とか好奇心とか独善性とか、ガツガツした意志力や強い動機、目的意識に欠けるところがありましたから。その何物にも囚われない飄々とした流転の生き様こそが、チャラ男を自認する彼の特徴であり長所でもあったのでしょうけれど、果たしてカンピオーネとしてはどうだったのか。
おかげさまで、よりにもよってアイーシャ夫人なんていう決して触れてはいけない最終兵器に神殺し殺しの剣に修正力さんに運命力さん、という厄災そのものだったりカンピにとっての天敵、或いはカンピが天敵!な存在に総掛かりで支援してもらって戦うことに。
特に歴史の修正力さんとか、カンピオーネにいつも泣かされてガン泣きしながらシッチャカメッチャカにされた歴史を必死に修正してまわって、片っ端から台無しにされるという酷い目にあってるにも関わらず、今回は手を貸してくれたという器の大きさには敬意を抱いてしまいました。
しかし、よりにもよってアイーシャ夫人に手伝ってもらうとか、いくら切羽詰まってたからって。とはいえ、蓮のキャラってアイーシャさんとは何気に波長合うんですよね。彼女が何やらかしても蓮の場合気にしなさそうだし。
ただ、ラスボスがアテナだったのはなあ。アテナについてはどうしても護堂さんの好敵手というイメージが強いだけに、最後まで微妙にしっくり来ないなあ、という感覚がつきまとったような気がします。
さて、これで終わりかと思いきや、いや蓮が主人公のストーリーはこれで終わりみたいですが、さらにカンピオーネたちを総浚えしての新展開がある模様。
どう転んでも元凶がアイーシャさんになりそうなのは、色んな意味で流石すぎる。今回のシリーズで起こった事件もみんな根本を遡ると全部アイーシャさんに行き着くわけですし。とんでもないキャラを生み出してしまったものである。

シリーズ感想

カンピオーネEX! 軍神ふたたび ★★★★   



【カンピオーネEX! 軍神ふたたび】 丈月 城/シコルスキー  ダッシュエックス文庫

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六人のカンピオーネが消息を絶って、五年後。行方不明のアイーシャ夫人が『空間歪曲』なる傍迷惑な超常現象を起こし、軍神ウルスラグナも甦る。護堂と仲間たちはウルスラグナとその主ミスラが拠点とする『無限時間の神殿』に乗り込むが、アイーシャ、ミスラと時間神ズルワーンの裁きで『カンピオーネになる前の一六歳』に巻き戻される。そこは『倒せる神のいないパラレル地球の18世紀』だった。個人の力では埒が明かない護堂達は、魔術結社カンピオーネスを創設し、護堂は『総帥チェーザレ・ブランデッリ』と名乗る。そのころ、世界中を破壊しまくる神獣軍団が誕生する。アイーシャとの関係はあるのか。そして、世界を破壊する神獣に対し、護堂は意外な存在と共闘をすることに。『カンピオーネ!』と「神域のカンピオーネス」を繋ぐ、神話ファンタジーの幕が開く。

護堂さん、完全にイタリア男になってるーー!?
女性への接し方に高校生の頃の初々しさが全く見られなくて、ほぼ別人。これが大人になるということか。
元々、そのフットワークの軽さは日本人離れしていた護堂さんですけど、大学生になって完全に根無し草の風来坊になってるんですよね。所属しているイタリアの大学には殆ど居着かず、世界中を放浪しているのですから。
帰るべき家を持たず、必要とせず、勝手気ままに自由に世界中のどこでも、場合によっては世界の外にまで足を伸ばして、自分のいる場所が自分の居場所という生き様は、ライトノベルの主人公としても破格の在り方なんですよねえ。
多くのライトノベルの主人公って、自分のホームや居場所となる場所や関係というものを強く意識して求めているケースが少なくないと思うんですよね。そんな中で護堂さんほど自己の確立と落ち着くことに縛られない自由の気風を保っている主人公というのはやっぱり珍しいと思うんですよね。まあ丈月さんの手がける作品の主人公のフォーマルとも言えるのかもしれませんけれど、こういう生き方は憧れるものがあります。
それに、この物語のヒロインたちはじっと待っていることなんてせず、彼の自由な旅路に同じくフットワーク軽くついてくることを厭わない女性ばかりですからね。それに、彼に引っ付いてくるばかりではなく、各人それぞれ護堂さん抜きで自由に世界を飛び回ってもいるだけに、重石や錨になるような女性たちではないんですよねえ。だからこその、ヒロインなのでしょう。
幼馴染の明日香は、その意味では落ち着くところに落ち着いたというべきなのでしょうか。いやまあ、大学生で年上の男性相手にさっさとくっついちゃうところなんぞ、凡百よりよっぽどアグレッシブで闊達だと思うのですけど。

魔王内戦でアイーシャ夫人の暴走によって次元の狭間へと吹き飛ばされてこの世界から消えてしまった魔王たち。その殆どが数年経たずサラッと自力で戻ってきちゃってるあたり、この連中の無茶苦茶さが伺いしれます。いや、そこは普通絶望するところですから。ケース如何ではラスボス封印の手法ですよ、異次元への追放とかって。帰ってこなかったアイーシャ夫人とヴォバン公爵も、前者はそもそもフラフラと旅に出たらいずこともしれず果てしなく行き着いてしまう人だし、ヴォバン公の方はあの戦いで滅びたはずなのに、しれっと復活してパラレルワールドの方で遊び回ってるし。
どう考えても、ある意味真面目な神々よりもふざけた生態してるんだよなあ。

ともあれ、異世界というかパラレルワールドの方へと飛ばされてしまったアイーシャ夫人。当たり前のようにそのままあっちこっちの世界を渡り歩き、その痕跡がまた厄災を呼び起こすという歩く大迷惑っぷり。カンピオーネスでの「神話世界」との連結ってもろに夫人が原因だったんかい!!
【カンピオーネス】とこの【カンピオーネ】の物語のミッシングリンクを描くのが、この巻の主題ともなっているのですが、いわば本編の完結よりもこの巻こそが【カンピオーネ!】の正式な完結編とも言うべき物語になっているのです。
というのも、そもそものはじまりである草薙護堂がカンピオーネになったウルスラグナとの邂逅と対決。護堂の最大の宿敵であり、そして最も親しき友であるウルスラグナとの決着こそが物語を〆る上で相応しいものだと思ってたんですよね。
本編最終巻は、カンピオーネという存在の敵である最後の王との決着という意味では万事やり通し、ラーマともある意味最初のウルスラグナとの戦いで果たせなかった結末を迎えられたのですが、ウルスラグナ当人とは結局相まみえることが出来なかった、とも言えました。
それを、この巻では十全やれたんですよね。宿敵としてのウルスラグナとの決着、親友としてのウルスラグナとしての決着の両方を。ウルスラグナが言うところの、逆縁と順縁ですか。
特にまつろわぬ神としてのウルスラグナではなく、ただ護堂と意気投合し心からの友誼を結んだ一人の男ウルスラグナとしての、あの神殺し誕生の回では果たせなかった結末をここで手繰り寄せることが出来た、というのはカンピオーネ!という作品での僅かな心残りを全部晴らしてくれたような感無量だったんですよね。最大のピンチで、もうひとりの掛け替えのない友となったラーマから支援される、という展開もほんと嬉しかったところでありますし。
なんかもう、満願の完結編でありました。
カンピオーネスの方で抱いていた疑問点も、ほぼ解消されましたし、微妙に不安に思っていた護堂たちが既にカンピオーネスでは過去の存在として退場しているのではないか、という危惧も解消されましたし。でも、まさかブランデッリ家がああいう形で誕生したというのは凄いなあ。護堂さんもエリカも、親としてこれもまた格別の在り方ですよねえ。これってどちらかというと、主人公の両親の方によく見られる生き方だよなあ。
しかし、ついにはひかりにまで手を出すとはこの男w
オーディオドラマでは、カンピオーネスの方に登場しているようですがさらにこの調子だと小説本編の方にも顔を出してもおかしくなさそう。ですが【カンピオーネ!】という作品としてはこれにて本当の完結。基本常識人にも関わらず、他に類を見ないぶっ飛んだ在り方に魅了されるいやまあとんでもない主人公でありました護堂さん。護堂さんに限らず、カンピオーネという存在自体がとんでもなさすぎて、ほんと面白かった。シリーズ完結お疲れ様でした。

シリーズ感想

神域のカンピオーネス 4.英雄界ヒューペルボレア ★★★☆   



【神域のカンピオーネス 4.英雄界ヒューペルボレア】 丈月 城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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女神イザナミの日本侵攻と黄泉醜女と呼ばれる凶悪ゾンビによる未曽有の危機を救った六波羅蓮たち。しかし太陽神アポロンに王女カサンドラを奪われてしまう。神々の遠い故郷ヒューペルボレアに向かったという情報をもとにふたりを追って、六波羅蓮と鳥羽梨於奈は未知なる神域の門を探す。鳥羽茉実花、聖徳太子、そして『謎の貴婦人』に助けられ、ついにやってきた世界。そこはほとんどの陸地が水没した“滅びたあとの世界”であった…!果てなき海を渡り、島から島へと巡る蓮。恐るべき障碍を乗り越えアポロンとカサンドラを探し出すことはできるのか―。新たなる「神殺し」との出会いが神域でのバトルを過熱させる!!

この主人公、あれだな、悪い男だな! 決していい加減な男ではないというのは、その軽薄な言動とは裏腹の姿からわかってはいるんだけれど、もうすでに婚約者がいる身でわりと平然と「こういう気持ちに順番つけるの、僕は嫌だな」とか言っちゃえるのはさすがにちょっとマズいと思うぞ。そこはまず、梨於奈の許可をとってからでないと。
その点、かの別世界の魔王様はエリカにそのへんの管理を任されてたというか舵を握られていたので奥の院に関しては比較的安定していたのですが。
でも蓮の口八丁はペロッと梨於奈くらいは真正面から承諾させてしまいそうですが。
その梨於奈さんといえば、王子様を待つ囚われのお姫様を地で行っているカサンドラと違って、愛しの婚約者さまに身代わりの生贄としてえらい目にあわされていましたが、まあこの娘もこれまで傍若無人にあれこれやらかして来た身ですから、ここいらでちょいとビシッと決して敵わない先達から指導いただけたというのも良い経験になったんじゃないでしょうか。まったく懲りてなさそうなところが、このお嬢様のさすがというところであいますが。
その梨於奈を弟子として鍛えることになったのが……またぞろ、狼公に引き続いて別世界から平然と現れてくれた白蓮王さま。案の定、天上天下唯我独尊なあのお姐さまであります。
バージョンチェンジして出ていたヴォバン公と違って、この人そのまま素で出てきたぞ。素で、というと物凄い大災厄として封印措置されてたあのプロの迷子もしれっと登場していましたけれど、あの調子だとこの作品中は封印されっぱなしなんだろうなあ、あれ。まあ、しれっと自分で封印なんとか解いてフラフラ最前線のど真ん中に迷いでてくる可能性もなきにしもあらずですけれど、そのときは世界滅亡待ったなしの状況なんでしょうねえ。
そんな世界滅亡させる気満々なのが、こちらの世界のアテネとアポロン。アテネに関しては前作カンピオーネでもだいぶページを割いて殆ど準ヒロイン的な立ち位置で活躍もしていたので十分その来歴については語られているのだけれど、アポロンに関しては前作でヴォバンの権能であったことからそれを通じて色々と興味深い内容が語られはしたものの、アポロンの神話をその原型から追う形での詳細な話は未だされていなかっただけに、今回は存分にアポロンについて語り尽くしたという感じである。やっぱり太陽神としての姿はほとんど見られることはなかったんだけれど、ヒューペルボレアをはじめとして彼の神としての歩みの話は興味深かった。内容に関しては作者独自解釈のトンデモ話、という作者自身のお墨付きではあるものの、こういう神の原型をたどる話というのは前作から実に楽しませてもらっている。
しかし、ヴォバンや翠蓮姐さんは魔王内戦の時のあれで飛ばされたというのはわかっているんだけれど、槍の女神さまはどういう経緯あってこっちのブランデッリ一族の守護神なんかやってるんだろう。

1巻 2巻 3巻感想

神域のカンピオーネス 3.黄泉比良坂 ★★★★  

神域のカンピオーネス 3 黄泉比良坂 (ダッシュエックス文庫)

【神域のカンピオーネス 3.黄泉比良坂】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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北欧神話の世界から帰還した蓮たち一行は、梨於奈との婚約話を進めるため日本の魔術組織「神祇院」の本拠地・京都を訪れていた。梨於奈の妹・芙実花も登場し、将来の家族と仲を深めていく蓮。だが京都に新たな空間歪曲が発生し神話の世界と繋がってしまう!!サンクチュアリ・黄泉比良坂―日本神話の世界を瞬く間に滅ぼした女神イザナミは日本へ侵攻、黄泉醜女と呼ばれる凶悪なゾンビたちで関西地方は溢れかえってしまう。未曾有の危機に為す術のない神祇院は、唯一神に対抗できうる“神殺し”六波羅蓮に日本を託すのだった…!女神イザナミ、英雄スサノオ、八岐大蛇…日本を舞台に新たなる神話級バトルの幕が上がる!!
ちょっ、神殺しさまに対してなんという対応を。
流石は神殺しやまつろわぬ神々の脅威に見舞われずに来た世界である。カンピオーネの世界の業界関係者なら真っ青になって逃げ惑うような対応を神殺しとなった蓮たちにやってしまう神祇院。神話世界の侵食に関しても認識が非常に甘いし、かなりぬるま湯に浸かってきたんだなあ、というのがよく分かる。カンピの正史編纂委員会は極めて優秀だったのに。
これは梨於奈が舐め腐ってしまうのも仕方ない。一見増長している風にすら見える梨於奈だけれど、あれで彼我の戦力分析は冷静極まるんですよね。自信満々だけれど、自分の能力の限界を見誤らないですし。あかんものはあかん、と割り切って暴走する心配はありませんし。
まあ、そんな彼女に見下されきっている、という時点でお察し、というところなのですが。それでも、日本の魔術組織として統制力を持つ神祇院は敵に回すよりも利用できるなら利用するのが一番言い訳で……、この点ではコミュニケーションの化物でもある蓮の方が交渉役として結構な役に立っている気がするぞ。結局、お飾りだった当主さまを絶対的な味方に引き入れた上に実権もたせたわけですから。
とはいえ、ある程度計算してそういう小細工できる人である一方、社会的だったり倫理的なものに対して極めて大雑把になれる、というのも神殺しの特徴なわけで、蓮って建前なんて全然気にしないというところで、カンピの護堂さんよりも質悪いんですよねえ。わりと平気で建築物や史跡もぶっ壊しちゃうしなあ。大阪がえらいことになってしまったじゃないですか。まあ大阪城くらいなら立て直しも容易かもしれませんが。あの城も頻繁に怪獣の類にぶっ壊されるところですし。
恐ろしいのは、相方である梨於奈もステラもイケイケドンドンで街や建物を破壊することに何の痛痒も感じないどころか、やっちゃえやっちゃえ、というタイプの人たちなんですよね。今回のパーティって、止める側の常識人タイプが一人も居ないw
どうやら霊媒であるらしい梨於奈の妹の芙実花はまだマトモなタイプのようですけれど、怖いお姉ちゃんに対して意見言えるような娘でもなさそうですし。
今回は日本が舞台ということで、出てくる神様・伝説上の人物もみんな和モノ、というわけでイザナミやスサノオはともかくとして、味方サイドに厩戸皇子と役小角というチョイスは渋くて好きです。役小角が賀茂氏の人というのは知らんかった。そう考えると、八咫烏を祖とする血統は日本の呪術を司る系統に位置している、というのもまんざらでもないのか。八咫烏の化身である梨於奈がめっちゃ胸そらしてドヤ顔しているのも、そこらへんの自負があるからなのね。
でもまあなるほど、そこまで梨於奈が自負を強くしているのなら、地元である大和こと奈良を差し置いて、京都が日本の都であり魔術の本拠を自称していることに、不満をいだいているのもわからなくはない。いやでも、この奈良県推しはなんなんですかねw 確かに、近畿圏の各府県はお互いわりと隔意持ってるところは無きにしもあらずですけれど。
さて、ズンドコ進展してしまった挙げ句に、早々に実家にご挨拶、というところまで進んでしまった蓮と梨於奈の婚約者関係。別に表向きだけ、というわけではなく、両者ともに乗り気というのが恐ろしい。いや、梨於奈はともかく蓮は微妙にどう考えているのかわからんところがあるのだけれど、結婚してしまうことに対して特に嫌がってる素振りもないからねえ。こうなると、ニコニコと見守っているカサンドラはともかくとして、ステラは穏やかならず。でも、そうか。ステラって体が小さくなっているということ以外に、人妻というハードルがあるのか! ステラ本人は全く気にして無くて浮気する気満々なようだけれど、蓮としては人妻相手はポリシーに反するようで……でも、いざとなったらまあいいか、で済ましそうな気もするんだよなあ、この男。
とりあえず、現代の軽トラックを乗り回して戦車戦車ヒャッハーしてるカサンドラさんが楽しそうでよかったです。一台くらいお持ち帰りさせてあげてもいいんじゃないですか?
とか言ってるうちに、そのカサンドラさんがえらいことになってしまったわけですが。やはり本作は梨於奈とカサンドラさんの二大ヒロインぷらすマスコットという構成で行くのか。

1巻 2巻感想

神域のカンピオーネス 2.ラグナロクの狼 ★★★★   

神域のカンピオーネス 2 ラグナロクの狼 (ダッシュエックス文庫)

【神域のカンピオーネス 2.ラグナロクの狼】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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新たなる旅の舞台は、北欧神話!
サンクチュアリ・トロイアから帰還した蓮と梨於奈は、結社カンピオーネスの本拠地バレンシアにてつかの間のバカンスを楽しんでいた。結社の力をさらに強めるために、蓮との"政略結婚"を提案されて動揺する梨於奈。
だがそんな二人の前に、「侯爵」を名乗る新たなる神殺しが出現! 圧倒的な力で蓮たちを退け、北欧神話の世界「サンクチュアリ・ミッドガルド」に通じる空間歪曲を発生させ、姿を消してしまう。彼の地に眠る魔狼フェンリルの復活と神話世界の崩壊「ラグナロク」を防ぐため、ミッドガルドに乗り込む蓮と梨於奈。だが、侯爵を名乗る神殺しには恐るべき能力と秘密があった……!!
雷神トール、戦女神ヴァルキュリエ、主神オーディン……新たなる敵と味方、神話世界の英雄が入り乱れる! 「カンピオーネ! 」の丈月城が贈る、"神話を旅する"究極のファンタジー、早くも第2巻!!
ヴォバン侯爵、間違いなくこの世界の神殺しじゃなくって、護堂さんところのヴォバン侯だ!! 性懲りもなく世界も神々も関係なくご迷惑をおかけしてる!!
カンピオーネ同士のバトルロイヤルとなった魔王内戦のラストで、異世界に吹き飛ばされたときにどうやらヴォバン侯爵は死んだっぽい描写があって、ついにあの爺さんも年貢の納め時だったか、と思うはずもなく、やっぱりというかわかってたというか、こいつらどうやっても死にそうにないし、たとえ死んでも死なないな!
それどころか、なんか肉体年齢若くなって復活して、気持ちも若々しくなっちゃってるし。いや、若かろうが老いてようが基本的にこの爺さんなんにも変わらず、ビーストモードなんだけれど。
いわゆるパンドラによる神殺し育成システムが生成されていないこの世界では、どうやら神殺しという存在は本当に希少なようで、史上においても殆ど記録にも残ってないっぽいんですよね。どの年代でも一人以上、場合によっては数人、作中においては七人も魔王が勢揃いしていた護堂さんの世界は、なんで滅びてないのか不思議です。しょっちゅうあっちこっちでまつろわぬ神が発生して大破壊起こしているわけですからねえ。
その意味では、神話世界と繋がってそちらの影響が現実世界にも及ぼされる、というこの世界の模様というのはわりと迂遠ちゃあ迂遠と言える。神話レベルの激闘もちゃんと神話世界でやってくれるので、現実世界の方にはそれほど直接的な被害は出ませんものねえ。いやまあ、災害レベルの被害は出るかもしれなくても、怪獣襲来レベルの被害がぽんぽこ出るよりはよっぽどマシ、という考え方で。
しかしそれも、ヴォバン侯爵が闊歩し始めるとどうなることやら。あっちの魔王さまはいるだけで大破壊だもんなあ。まあ、戦いの対象となるものが基本的に神話世界側にしかいないのなら、それほどえらいことにはならないか、と思わないでもないのだけれど、神話世界の住人がこっちに来られない、というわけではない、というのはラストで証明されちゃいましたもんね。世界同士のシンクロ、なんて遠回しは影響じゃなくても、神様の誰かが乗り込んできたらそれだけで偉いことになるわけですし。
果たしてそれに対抗するだけの力を、現行の魔術結社が持っているのか。梨於奈とかちゃんと力を発揮できれば下手な神獣よりもよっぽど強いみたいですし、ジュリオの所属するカンピオーネスもちゃんと切り札持っているみたいなので、なんとも言い難いのですけれど。ってか、カンピオーネスのあの守護女神って容姿とか武器とかからして、なんかあの人っぽいんだが。これも繋がりあるんだろうか。
とか言っているうちに、ずんどこ進展する蓮と梨於奈。そもそも蓮さんが護堂さんと別の意味で女慣れしすぎてる! 爺様の薫陶行き届いていた護堂さんと違って、蓮くんはそもそも女性観が全然違いすぎてヤバイw
遊んでいるわけじゃない、けどハードルがめちゃくちゃ低いんですよね。イタリア人か、この男。
軽いけど薄くはないので、梨於奈さん的にはどうなんだろうと思うところなんだけれど、アカン意味でブーストが掛かっちゃってる! そして梨於奈の思いっきりの良さというか割り切りの速さがイケイケドンドンに拍車かけてる! まさか、そこまで平々といってしまうとは。動揺し動転しながら受け身じゃなくて積極的に攻めまくる梨於奈という構図がまたなんとも妙味を感じさせて、それをさらっと受け止めてるのか受け流しているのか微妙なラインでキープする、キープというと言葉が悪いか、お楽しみあそばされている蓮くんが、実に悪い男である。こいつ、人生楽しんでるなあ。

1巻感想

神域のカンピオーネス トロイア戦争 ★★★☆  

神域のカンピオーネス トロイア戦争 (ダッシュエックス文庫)

【神域のカンピオーネス トロイア戦争】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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『世界は神々で満ちている』

神話の世界と繋がり、世界中に災厄をもたらす異空間「サンクチュアリ」。
ギリシア神話に語られるトロイア戦争の世界「サンクチュアリ・トロイア」と繋がった日本の神戸市には、様々な魔物が現れ、甚大な被害が出ていた。
事態収拾のため、日本最高の陰陽師にして神の生まれ変わりを名乗る美少女、鳥羽梨於奈が派遣される。
だが、彼女の「ご主人さま」六波羅蓮は魔術界で最も権威ある結社《カンピオーネス》に所属しながら、何の力も使えない"素人"だった。
逃げ足と口のうまさだけが頼りの蓮に呆れる梨於奈。しかし、蓮には「神の召喚」をも可能にする切り札があった……!
「必ず神話の筋書きを変えろ。必要なら――神さえも殺せ」

神々の王ゼウス、女神アテナ、英雄アキレウス……神々と英雄が入り乱れる世界で、蓮と梨於奈はおよそ人間には不可能なミッションに挑む。
任務のためには《神殺し》さえも辞さない、神域への挑戦が今はじまる! !
果たしてアテナのビジュアルは【カンピオーネ!】と一緒なんだろうか。絵師が違うのでそのへん判断しにくい。
どうやらこの世界にはパンドラはおらず、エピメテウスとプロメテウスの兄弟もいないらしい。いや、居ないことはないのかもしれないけれどカンピオーネの後援者として動いた彼らは居ない、というべきか。しかし、それでも神殺しが誕生する仕組みじたいは存在し、実際にそれを成し遂げた「魔王」は史上に幾人か存在する、というようで。まあ【カンピオーネ!】の世界のように常時何人もの魔王が世界に君臨している、なんてわりとえげつない状況ではないみたいですね。あちらの世界のように頻繁にまつろわぬ神が降臨して暴れまわる、という怪獣映画の世界みたいなことになっていないからこそ、とも言えるのだけれども。それでも、神話世界と直結してその影響がもろにこっちの世界にまで波及してくる、なんていう異世界災害が勃発している、というだけでもまあ大概である。
果たして、どれくらい【カンピオーネ!】の世界が関係してるのかは一巻の段階ではよくわからないのだけれど。平行世界、というのは間違いないみたいだけれど。ってか、二巻で「侯爵」なる人物の登場が示唆されているのだけれど、もろにあのひとだよね!という状況ではあるのですが。
さて、今代の神殺しであるところの六波羅蓮くんである。自称平和主義者でありつつも色んな意味で「魔王」そのものであった草薙護堂氏に比べると非常に軽薄というくらいには軽妙としていて、それでいて強かな立ち回りとウィットに富んだ物言いで物事を飄々と捌いていく姿は、なかなか掴みどころのないキャラクターであると言える。ぶっちゃけチャラい。それでいて、妙に信のおける雰囲気を備えていて、これはこれで王様の領域にあるといえるのかもしれない。敢えていうなら、ジョン・プルートー・スミスのごとき粋人、というと傾向にそぐうものがあるかもしれない。或いはドニのような自由っぷりといべきか。そんな彼と、在る種の自信の塊、不遜なる婦人である鳥羽梨於奈とのコンビは妙な丁々発止が噛み合う面白いコンビであると言える。ステラの存在もいいアクセントになっているというべきか。決して仲良しトリオ、ではないあたりが尚更に。
そんな彼らが乗り込むのは、ギリシャ神話群の一端にあたるトロイア戦争の世界である。もろに神界に属する神様たちがたくさん出てきたり、英雄英傑の類がわんさかと出てくるあたりまさに神代そのもので、とにかく真正面からぶち当たってぶっ壊せばとりあえずなんとかなるし、なんとかならなくてもぶっ倒す、という塩梅だったカンピオーネ!と違って、こっちの蓮くんはそこまで無茶苦茶出来るような神殺し具合にはなっていないので、今ある力と人脈ならぬ神脈を駆使してうまいこと立ち回っていくことになる。それは、神話の物語の登場人物の一人となってあるべき物語の流れに介入していく、ということでもあり、ちょっとした神話に対する二次創作みたいな展開でもあるんですよね。今回も、トロイア戦争において英雄ヘクトールが討ち取られたあとの展開にもろに介入して、本来あるべき話の流れをひっくり返していくわけですから。
しかし、トロイア戦争。あのトロイの木馬の逸話のある神話、考えてみると大まかにしか知らなかったんだよなあ。子供の頃に、子供向けの大雑把な話を読んだくらいで。わりとちゃんと読むと、ギリシャの神々の無茶苦茶さと、ギリシャの英雄たちの蛮族っぷりがもろに見えてきてしまって、わははは、ってなもんである。まあ客観的に見てあのギリシャ神話群の話の内容っていろいろとアレだもんなあ。まあ神話って往々にして程度の差はあれ、アレなんだけれど。
それにしても、世界変わってもアテナは常に敵役なのか。あの女神様はどうにもこうにも男前すぎて、なかなか味方にし辛いのもあるのかもしれない。それに比べてステラのポンコツぷりときたら……。アフロちゃん呼びじゃなくてよかったね。

丈月城作品感想

カンピオーネ! XXI 最後の戦い ★★★★   

カンピオーネ!  XXI 最後の戦い (ダッシュエックス文庫)

【カンピオーネ! XXI 最後の戦い】 丈月城/シコルスキー ダッシュエックス文庫

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カンピオーネ7人によるバトルロイヤルは辛くも護堂の勝利で幕を閉じた。だが息つく間もなく、別時空から帰還したハヌマーン&ラクシュマナが立ちふさがり、エリカたちを追い詰めてしまう! 一方、アストラル界にて女神パンドラから神殺し生誕の秘密にまつわる真実を知った護堂は、ラーマとの決戦を前に、パンドラとある「取引」をするのだった。ついに決戦をむかえる護堂と最後の王ラーマ。熾烈を極める戦いの中、護堂は予想もできない行動に出るが……!? 神と神殺しをめぐる世界の真相がすべて明らかになる時、最後のカンピオーネ・護堂は「運命」のその先をつかめるのか……!? 超人気ファンタジー、ついに決着!!

まあそうだよなあ。数々の時間跳躍モノ作品において無敵無双を誇った「歴史の修正力」さんですらけちょんけちょんに踏みにじったカンピオーネである。たかが運命ごとき、敵ではないわな。とかく強いられる事を嫌うのが神殺しの本能である。本作における神殺しって、この最終巻で描かれたプロメテウス、エピメテウス、パンドラの兄弟夫婦による神殺し誕生のエピソードからもわかるように、神殺しの能力を人間が与えられるのではなく、神を自力で殺した人間に対して祝福、恩寵、報酬としてカンピオーネの力を与えるというものであって、そう端から運命に打ち勝った人間の可能性の権化がカンピオーネなんですよね。
他の作品に出て来る神殺しの多くが生来のものだったり運命によって役割付けられた能力だったりするのと比べれば、その在り方は正反対のものであったと言えましょう。
だから、カンピオーネが神を殺すのは、決して運命でも宿命でもない。ただ、好きでやってるだけなのだ。だからこそ余計に始末に悪い、とも言えるのだけれど、だからこそ神を殺すも殺さないも結局好き好きなんですよね。カンピオーネの自由なのである。パンドラ義母さまは力を与えてくれるだけで、なんかしろ、これしろあれしろ、あれを倒せとかは絶対言わないし。そう考えると、パンドラ含めて、プロメテウスとエピメテウスの兄弟は真の意味で人間の味方だったんだなあ。手取り足取り人間を導くのではなく、ただ火という可能性を与えてくれただけ、神に打ち勝つほどの人間にはそれに相応しい力を与えるだけ、という人間側の自主に任せてくれたという意味でも。
まあ、おかげさまで人間界には魔王なんて存在が乱立するはめになり、今回の魔王内乱では別の平行世界にまでこの迷惑千万な魔王たちを撒き散らしてしまったわけですけれど。それはそれ、これはこれ。自主独立には自己責任が伴うのである。
とまれ、神を殺すも殺さないもカンピオーネの自由、護堂の自由ともなれば、最後の王ラーマチャンドラとの決着がこうなった、というのはよくわかるんですよね。
もう十分やったもんなあ。
作中でも本人たちが語っているけれど、都合四回にも渡ってすでに鉾を交えているんですよね。そして、最後は強いられた戦いではなく、最後の王としての責務でもなく、運命によって縛られたものではなく、ラーマ本人も存分に心から護堂というライバルと戦いたいという欲求に基づいての戦いでしたから。ある意味これは、護堂が最初に出会った神、ウルスラグナとの間に成したかった決着だったんでしょうね。それを思えば、ラーマとの決着をこういう風につけられた、というのは護堂にとっても万感だったんじゃないでしょうか。護堂って同じカンピオーネの男とは凄まじく仲悪いけれど、何故か神様相手だと仲良くなっちゃってましたし。ってか、護堂って同じカンピオーネ以外だったら男の親しい友人、歳の上下関係なくかなり多いのよね。あれで、同性からも好かれる性格してるもんなあ。
ともあれ、神との決着も振り返ってみれば第一巻で叶わなかった復仇を果たしたとも言えますし、これはこれで最後の戦いに相応しいものだったんじゃないでしょうか。ボスラッシュはあんまりいらなかったような気もしますけど、結構中途半端でしたし。だいたい呼び出された相手、みんなやれと言われてやりたがるような連中一人も居ないですし。その意味では真のラスボスさん、無駄な足掻きだったな、と。
女性関係もついに決着。チーム草薙の四人娘たちを無事娶ることになって、ってか法律的にはあれなのでこれ内縁の妻扱いですか? 個人的には護堂が寄り切られてしまう決定的シーンを見たかった、という気持ちもありますけれど。
平行世界にぶん投げた他の魔王たちも……別に回収せんで良かったんじゃないですか? と思わないでないですが、放っておくと他の世界への迷惑が途方もないことになってしまってそうでしたし、ってか手遅れか、護堂が回収に向かった段階で既に半数が次元渡りが出来るようになって自力で飛び回ってる、とか聞いて正直怖いw
その能力獲得していなかったプルートーとドニも、飛ばされた現地で遊ぶのに夢中であっただけでその気になったら次元渡るくらい平気で出来そうだもんなあ。実際、ドニとか戻ってきてから次元渡りの能力獲得しようとはしゃいでるみたいだし。ハチャメチャすぎるw

21巻という長期に渡るシリーズになりましたけれど、ふつうとは違うアプローチというか、カンピオーネたちの他に類を見ないキャラクター性、精神性、無茶苦茶っぷりが本当の面白いというか楽しいというか、乾いた笑いが浮かんでくるというか、なんとも凄くて味わい深いものでした。刺激物としてはトビッキリでした、ともいえますか。
それでも、こうして見事に決着してくれて良かったです。感慨深いというかなんというか。なにはともあれ、おつかれさまでした。次回作も早速スタートしているようで、またぞろ楽しみ♪

シリーズ感想

クロニクル・レギオン 7.過去と未来と ★★★★   

クロニクル・レギオン 7 (ダッシュエックス文庫)

【クロニクル・レギオン 7.過去と未来と】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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過去と未来、すべての因果が激突する!! 女皇照姫(じょおうてるひめ)と平将門(たいらのまさかど)の反乱を抑えきり、ついに皇都の覇者となった征継(まさつぐ)と志緒理(しおり)。衛青(えいせい)とも協力して陣営を整えていたが、ついにカエサルが皇都へ向けて出撃。数千騎のレギオンが迫るなか、潜んでいたカエサル派による奇襲で皇都は大混乱に陥ってしまう! 衛青、大英帝国のエドワード黒王子率いる軍団と、カエサル軍が激突するなか、総大将である征継はローマの切り札、神箭(しんせん)ジェベと対峙する。悠久の時を越えて導かれる前世の因縁。かつての盟友との決戦に征継のとった行動は……!? さらに、まだローマ軍には謎多き不気味な英雄、ブルートゥスが残されていた……。 過去と未来、英雄たちのすべての因果が激突する第7巻!!

ああ、やることはちゃんとやってたんだ。そりゃあするよね。征継の素性からして女性の扱い方について我慢する、という文化はなさそうだし、そもそも抑制する必要性も理由もなにもないんだから。征継、オープン助平だし。
というわけで、女皇照姫の宮廷内クーデターにかこつけて、戦略的大転換を果たしてローマ帝国はカエサルの保護下から敵対していた大英帝国へとパートナーを取り替えた志緒理姫。ここで肝なのが、あくまで敵対のターゲットをカエサルのみに絞っていて、東ローマ帝国本国に関しては根回しをちゃっかり進めていて、カエサルを政治的にも戦略的にも孤立させてしまったところでしょう。謀略戦も然ることながら、こうした外交戦に関しても妖怪じみた辣腕さを見えた上に、宮廷政治においてもきっちり照姫の首根っこ押さえつつ、強硬手段で監禁、などという強引な手段に任せず、ある程度以上照姫の自由度を高めているあたり、加減をよく心得ているというか。実質、照姫はクーデター前よりも自身の勝手できる範囲は広がってるんですよね。おかげさまで変な属性はつくわ、けっこう志緒理とバチバチやりあってはいるんだけれど、ネガティブな方にどツボはまらなくなっただけでもだいぶマシなんですよね。照姫のキャラクターも相当面白いことになりましたし。以前が根暗で嫉妬深い小物っぽさからどうしても足抜けできない姫様だったことを思うと、これはもう一種の覚醒と言っていいくらいの変化ですし。あかん意味でも覚醒してる気がしますが。
これ、教育係の衛青将軍、苦労するでー。ただ、彼の場合その苦労を望んで買っているので、それこそ大船に乗せた気分なのですけれど。
徳川家康と天海という超大物政治家にしてネゴシエーターが手伝ってくれてる、というのも途方もなく大きかったんでしょう。ぶっちゃけ、徳川家康ってもっと信長とか秀吉みたいに召喚とか憑依とかされてもいい日本史上でも最強な偉人だと思うんだけどなあ。と、昨今の研究によって浮かび上がってる徳川家康の人物像を見るとそう思います。今回、ラストで美味しいところ持ってったのも大御所様だったしなあ。
こうしてみると、世界史上における最強クラスの将帥であろうジェベと征継の間に生まれた差、というのはそれこそ今世における充実感、だったのかもしれません。二度目の生に何を求めるのか。本作において活躍した復活者というのは、それぞれみんな今世に意義を見出し、また謳歌する人たちばかりだったんですよね。
どこか茫洋とした衛青将軍ですら、カエサルを裏切った理由を見てもわかるように前世における未練を今世で果たす道筋を見つけ、それに殉じたわけです。生きる目的を得、生きる楽しさを謳歌した。
その点、ジェベ将軍はそこに確固としたものを見いだせなかった。これはカエサルの抱え方の問題もあると思うのだけれど、飼い殺しみたいな真似をしてしまったからこそ腐らせてしまった、とも言えるんですよね。ジェベの将帥としての力量は一切衰えなかったかもしれないけれど、貪欲なまでの闘争心や野心、叶えるべき欲がなければ最後の最後の一線において及ばず開いてしまう差がある。
結局カエサルの致命となったブルートゥスの扱いにしても同様で、カエサルの弱点は同格たる英傑と肩を並べる、ということを知らなかった、というところにあるのかもしれません。黒太子エドワードは、ずっと獅子王リチャド1世と一緒に戦ってましたしね。征継もまた、前世から英傑たちとともに駆けるを人生としてきたわけですから、衛青将軍との息なんぞピッタリでしたし、共闘となったエドワード王子に対しても見事な任せっぷりでしたし。
皇帝の語源となったカエサルは、唯一無二の皇帝でありすぎたのか。征継の仮名となった土方歳三もナンバー2でしたし、衛青将軍もエドワードも何気に王にはならなかった人物。いわんや平将門なんぞは……アレはまた別の意味で王様ではありましたけれど。
それでも、偉大過ぎるカエサルを相手の闘争は、実に見ごたえのあるものでした。勝ち抜けたのは、これは愛の力と言っていいんでしょうかねえ。女の強かさのおかげ、とも言えそうです。
強かさばかりではなく、竜胆先生みたいに凄まじいデレっぷりなんぞも拝めたわけですが。いやあ、あのデレっぷりは凄まじかった。まさしく陥落じゃないですか。なんですか、あれ、もう本当にwww
もうちょっと日本を飛び出すスケールでのお話も見てみたかったですが、レギオンというシステムの面白さといい、最後まで楽しませていただきました。
レギオンシステムとか、あれ信長の野望形式のシミュレーションにも流用できそう。

シリーズ感想

クロニクル・レギオン 6.覇権のゆくえ ★★★★   

クロニクル・レギオン 6 覇権のゆくえ (ダッシュエックス文庫DIGITAL)

【クロニクル・レギオン 6.覇権のゆくえ】  丈月城/BUNBUN  ダッシュエックス文庫

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照姫と平将門の暴走により混乱を極める皇都東京。ついに全ての騎力を取り戻した征継は、志緒理と共に反撃の機をうかがっていた。だが京都遠征より突如折り返したローマ帝国の将軍・衛青が皇城を制圧、女皇を従え実権を握ってしまう!一方、水面下で征継たちと協力関係にある大英帝国軍は、関西方面で総大将・カエサルとの決戦に挑む。だが、ローマが新たに召喚した正体不明の英雄“ネモ”により、リチャード獅子心王が倒されてしまい…!?志緒理は起死回生を懸けて、江戸城址に眠る聖獣・大国主命を復活させ、新たな力とすることを試みるが…!?復活せし英雄たちの過去と現在がクロスする極大戦記、第6巻!
志緒理姫、ガンガン寿命削っていくなあ。この姫さんの凄いところは追い詰められて、他に選択肢がなく寿命を捧げるのではなく、ここぞという場面においてここで勝負かけなあかん! と、惜しげもなく自分の寿命を課金してしまえる勝負勘なのでありましょう。ガチャじゃないよ!? 運を天に任せているわけじゃあない。
一方で、大勝負を仕掛けておきながら自分がリスクを負うタイミングを追い詰められるまで慎重に取り回して温存してしまったのが照姫なわけですね。彼女に勇気や無謀がなかったわけではなく、これはもう生き馬の目を抜く生き方をしてきた志緒理と、飼い殺しにされてきた照姫の人生経験値であると同時に、志緒理の場合は心身を捧げ尽くせる相手と敷いて絶対的に信頼できる征継が傍らに居たのが大きいのでしょうなあ。これは、征継の真名がカエサルや黒太子のような王たるものたちではなく、大業を支えた功臣であったというのもあるかもしれません。それも、文字通り世界に覇をなしたチンギス・ハーンの臣下たる大将軍ですからな。男女としても君主としても、これほど稀有壮大な心持ちにしてくれる支えはないでしょう。
その意味では衛青将軍も同系統なんですよね。才能から人品からこれほど清廉にして鮮烈な人が歴史上どれほどいるものか。ただ、その外戚となりながら一族の権勢を高めることなく清廉に徹したことが、彼の一族の政治力を損なわしめてしまい、衛青将軍没後に一族が族滅させられたという事実が、彼に思うところを与えてしまっていた、というのはなかなかに予想外の展開でした。
彼のような人物が禄を食んでいたローマ帝国から離反して自由に振る舞い出す理由が想像つかなかったのですが、これはなんとも思わぬ方向から攻められたという意外感と同時に、衛青将軍の人となりが変貌してしまったのではなく、彼らしい清廉な在りようが変わることなくある種の稚気と後悔の発露だったとするのなら実に面白いところである。ってか、この期に及んで野心を滾らせるでもなく、ああいう涼やかな振る舞いを自然とこなしてしまう衛青将軍が好人物すぎて、なんかもう眩しい。
今回の行動を見ていると、決して腹芸や策謀を巡らすことの出来ない人ではなく、やろうと思えばスルッとこなせて、宮中の掌握の手際なんか見ても権力握ろうと思えばサラッと魔窟だろうと万魔殿だろうと仕切れてしまいそうな、このやり手風味たるや。本気で野心持ったら容易にカエサルとでも対抗できそうな君主になれてしまいそうなんだよなあ。それでも、根本的にその気にならない野心の無さが衛青将軍の根底であり、また魅力なんだろうけれど。この人が結果的にとはいえ敵に回らなくてよかったと心底思う。ってか、人類史における騎馬機動戦の最高峰にあたるだろう二人が両翼に侍るって、志緒理姫贅沢過ぎるくらい贅沢ですぜ。
とか言っている間に、カエサルの隠し玉であるネモ将軍の正体が明らかになって、ヤバさ待ったなしになってしまったわけですけれど。
あのネモ将軍の正体開陳、攻撃開始のシーンのイラスト、めっちゃカッコよかったですなあ。あれこそ、悠久の大地を駆け抜ける大将軍の姿でありますよ。ってか、浪漫だな。
衛青将軍の独自介入というイレギュラーに翻弄されながら、時間的にも戦力的にも瀬戸際を綱渡りしていく志緒理陣営なのだけれど、無い時間の合間を縫って飄々と志緒理姫をはじめとしたヒロインたちを喰っていっちゃう(性的)征継、まさに肉食の馬というかこいつユニコーンの一種なんじゃないだろうか。澄ましたスケベ馬。
挙句ついにアル中で女としてどうなの!? という有り様に徹していた竜胆先生にまで女の顔をさせてしまうという、やりたい放題だね!
しかし、一方でさすがはカエサルというべきか。志緒理がなんとか陣営を固めて権力と実動力を掌握していく一方で、着々と手をうち詰将棋のごとく見える手と見えざる手を同時に指し勧めていくこの政治家としても軍人としても人類最高の一柱たるを思い知らせてくれる手腕で。
逆にそうした頂上たる一柱だからこそのウィークポイントを攻めようとしている志緒理や大英帝国もまた、謀略戦では負けていないという、この政軍謀のあらゆるを駆使した鬩ぎ合いが大いにクライマックス感を高めてきている。
次回がラストというに相応しい盛り上がりだこれ。

シリーズ感想

カンピオーネ! XX 魔王内戦2 ★★★★   

カンピオーネ! XX (ダッシュエックス文庫)

【カンピオーネ! XX】 丈月城/シコルスキー ダッシュエックス文庫

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草薙護堂は神殺しである。『最後の王』ラーマとの決戦を賭けて激突する魔王VS魔王。混戦の中、なんと羅濠教主とヴォバン、最古参のカンピオーネふたりがまさかの同盟!迫り来る最凶タッグに、護堂はやむなく手を組んだドニと共にこれを迎え撃つ!一方、ラーマに寄り添う黒き影にしてその実弟、ラクシュマナも顕現。魔王内戦の裏で、怪しい動きを見せ始める。さらに激戦の最中、導かれるようにしてアストラル界にたどり着いた護堂。そこで、ラーマの圧倒的な力の源『盟約の大法』を無効化するための、ある驚愕の秘策を知る。そのための鍵を握るのは、やはりあのカンピオーネで…!?地上も霊界も全てを巻き込んで加速する魔王内戦、ついに決着!!
時間の果てに飛ばしても、「ただいまー」とばかりにあっさり戻ってくるカンピオーネ諸氏w
いやあ、事前に対策打っていたとはいえあそこまで簡単に1万2000年前から戻ってこられると笑ってしまうしかない、ジョン・プルートー・スミス氏。このシリーズ読む度に言わざるを得なかったんだが、重ね重ねこいつらデタラメすぎるww
一応事前のこの魔王内戦の決着策として、夫人の能力で過去に飛ばして、というのは容易に想像出来たんだけれど、ビンビンにやる気なってるカンピオーネ相手だと過去に飛ばす程度だとほとんど意味ないんだもんなあ。
いやね、普通はラスボスクラスでも時間の果てに飛ばされたらそれでそのまま物語としてエピローグに突入してもおかしくない展開なんですよ? 実際に飛ばされたのは今回スミス氏だけだったとはいえ、他の連中も飛ばされたとしてもまず間違いなく長くても数時間で戻ってきそう、というこの確信の揺るぎなさには笑ってしまうしかない。
その現状でもデタラメなカンピオーネ諸氏が、このカンピオーネ同士の全力闘争によって軒並みガンガン自分の権能磨き上げ、めきめき目に見えてレベルアップしていくんだから、手に負えるってなもんじゃないでしょう。
護堂ですらここに来て、今まで持っていたウルスラグナの権能の使い方が工夫レベルじゃなく熟練度があがってより上位の使い方が出来るようになりました、って感じで使えるようになってしまったし。古参であるはずの姐さんですら、新たな技を開発する始末。
個人的には斬る専門でなかなか手の内を見せなかったドニが、ここに来てほぼ使える手を全部見せてくれたことにワクワクでした。ってか、流星剣ってなんじゃーそりゃー! 
ものすごいのは、ここまでやっておきながらカンピオーネ6人、誰一人格落ちを感じさせず、それどころか全員ヤバすぎ、と今まで嫌というほどわかっていたはずのカンピオーネの脅威をさらに盛り込んでワサビ刷り込むように味わわせてくれたことでしょう。そりゃ、これ機会にカンピオーネ全員この世から抹殺してしまった方がいいんじゃないだろうか、と色んな人が思うのも無理ないわなー。よっぽど神様たちよりも質悪いもの。
ついに歴史の修正力さんが実際に現れてしまって、ガチで泣き入れてきてしまったわけですしw
うん、これはもうどいつもこいつもどれだけ戦い尽くしても死にそうにないわー。残念ながら内戦のガチ勝負でとてもじゃないけれど決着がつくとは思えないし、ついた時点で地球が環境を保っているかどうかも怪しくなってしまう。こいつら、アイーシャ夫人のアレなく本気で続けてたら百日戦争くらいなってたんじゃなかろうか。
そう考えると、スミス氏の作戦はもうさすが賢人ですね、としか言いようがない。なんだかんだと、カンピオーネの中ではこの人まともな部類だよなあ……実はスミス人格よりもアニーの方がやべえんじゃないだろうか、という疑惑が発生してしまったわけですがw

決着はあくまで草薙護堂で。これは、神を獲物としか見ていないカンピオーネの中で唯一護堂さんだけが、神の中に友情を見る故、なんですよね。ウルスラグナの権能を得たきっかけもそうだったし、ランスロットの権能もそう。そして、アテナとのライバル関係もそう。
カンピオーネのみならず、鋼の英雄として女神の眷属からも嫌われ、精霊種たちからも排除されようとしているラーマ王子。そんな中で敵でありながら、護堂だけがラーマに対してそれだけではない違う顔を見出してるのである。
でも戦うんだけどね!

シリーズ感想

カンピオーネ! XIX 魔王内戦 ★★★★   

カンピオーネ! XIX 魔王内戦 (ダッシュエックス文庫)

【カンピオーネ! XIX 魔王内戦】 丈月城/シコルスキー ダッシュエックス文庫

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かろうじて一度は『最後の王』ラーマを退けた護堂。だが、ラーマは“盟約の大法”により、カンピオーネが存在する数だけ強さを増し復活する。それを防ぐためにカンピオーネたちが考えた方法は、やはり相当にろくでもないことで…!?「剣の王」サルバトーレ・ドニ。“黒王子”アレクサンドル・ガスコイン。ロサンゼルスの守護聖人ジョン・プルートー・スミス。武林の至尊、羅翠蓮。最凶の老魔王サーシャ・デヤンスタール・ヴォバン。妖しき洞穴の女王アイーシャ夫人。そして日本のカンピオーネ草薙護堂。七人の魔王が東京に集う時、かつてない戦いが幕を開ける!魔王VS魔王!!最高に悪魔的で魅惑の魔王内戦が、今始まる!!
もうこれ、完全に怪獣映画ですよね!!
普通の異能モノだったら、どれだけ最強の能力者や魔術師なんかが集まっても、都市への被害なんかあんまり考えないし、可能性があってもビル一棟とか一部区画がヤバイとかなんとか被害を減らそう的な発想が飛び交うものなんだけれど、本作の場合はもうカンピオーネが七人上陸してしまった段階で、どう考えても「東京オワタ」としか思えないのである。
さながらゴジラ上陸である。怪獣が上陸したら、もうその地域は絶対に壊滅なんですよ。防ぐなんて絶対無理。そんな怪獣が七匹も上陸して、その上お互い暴れまわる前提なんですから、もうそこは更地前提じゃないですか。怪獣総進撃ですがな。むしろ、なんで東京都民に避難勧告が発令されていないのか不思議なくらい。
360万人強制避難させないと、被害が、被害がー!
戦闘予想地域を封鎖とか、人払いの結界とかそういう規模やレベルじゃないし、こいつら平気で数百キロ単位をポンポン移動しまくるし、普通の人間・魔術師が対処できるレベルを完全に逸脱している、というのが否応なく認識させられる魔王総集合の回。
いやほんと、出来れば日本以外でやってほしいんですけれど! 日本、オワタ。
案の定酷いことになってるし。もう本当に酷いことになりまくってるし。これだけ魔王が集まると、護堂さんの破壊行為がそんなに目立たないですね、と言いたいんだけれど、むしろ護堂さんが七人いるぜ、という話なんで目も当てられない。一人ひとりが盛大に東京各地をどうしようもないくらい破壊し、有名建造物や名のある土地を取り返しのつかない状態にして、それどころかそこに居る人々まで遠慮なく巻き込みまくって……だから避難勧告っ!!
彼らが怪獣と変わらないのは、その破壊行為に対して全く何の感慨も抱いていないってところなんでしょうね。罪悪感を抱けとなんて間違っても言わないけれど、怪獣が歩くだけで街をどうしようもないくらいに破壊していくのと同じで、ぶっ壊すことに対して怒りも快感も感傷らしい感傷を抱かないのが、さすがはカンピオーネたちとしか言いようがない。ヴォバンも翠蓮姐さんもジョン・プルートーも片っ端からだもんなあ。

というわけで、誰も相談もしていないのに一致団結してつぶしあいをはじめるカンピオーネたち。こいつら本当にあかんわー。でも、一斉にみんなアイーシャ夫人を狙い撃ちにしはじめるのには笑った。並み居る魔王たちですら、彼女に関してはイレギュラーすぎて先に潰すべし、という意識が働かざるをえないわけで。それだけ、アイーシャ夫人無茶苦茶すぎるんだよなあ。
そして、魔王からは逃れられない、じゃないけれど高みの見物を決め込んでいた甦った神々たちまで巻き込み事故食らってしまったあたりは、もうどうしたらいいものか。
しかし、護堂さんもいつの間にか権能だいぶ増えましたよね。今まで全然増えなかったのが不思議なくらい。まさか、ランスロットまでああいう形で使えるとは。あの権能はかなり頼もしいよなあ。
でも、これだけ乱戦を繰り広げても、まともに誰も脱落してくれないのは魔王さまたちしぶとすぎるというレベルじゃないですよね。ジョン・プルートー・スミスだって事前の準備の様子を見ているとむしろああなったことを奇貨としてあとでやらかしてくれそうですし。
一応、この魔王内戦のゴールの形は出来上がったものの、果たしてどうやったらそのゴールへと状況を放り込めるのか、未だに想像もつかないんですがw
さすがにアイーシャ夫人はここでアウト……にはならんのだろうなあ(苦笑
ただ、彼女をあそこまで持っていけるというだけでも、翠蓮姐さんとヴォバンの老練さは若手世代カンピたちとまた違う貫禄を感じて、さすがというべきか。

シリーズ感想

盟約のリヴァイアサン 8 ★★★★  

盟約のリヴァイアサンVIII (MF文庫J)

【盟約のリヴァイアサン 8】 丈月城/仁村有志 MF文庫J

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「ふふふふ。どうにか我―雪風の前に立つ資格を得たようだな、春臣よ」
辛くもパヴェル・ガラドを討ったハルたちの前に宿敵、雪風の姫が再び立ちはだかる。どうにか勝機を見出すための時間稼ぎに休む時間がほしいと嘯いたハルは、雪風から三日間の猶予を得る。願いを聞き入れた雪風に、アーシャ、織姫の二人と共に連れてこられたのは彼女の領土、なんと月面上だった。刻一刻とタイムリミットが迫るなか、最終決戦への切り札を模索するハルたちだったが―。シリーズ最大級のスケールにしてクライマックス!至高のドラゴン・エンタテイメント、堂々完結の第8弾!!
作者の描く主人公ってみんなエロスの権化みたいなところがあるけれど、その中でもこの晴臣は一番自分の欲望に忠実なところありますねえ。その割に一番一線を超えられなさそうなのが、ヘタレというよりもエッチさが子供っぽいというべきか。織姫、ほんとどんだけ揉まれたんだ。ってか、二人とも若いのによく揉むだけで我慢出来たなあと思わないでもないけれど、それだけ夢中というか集中してたんでしょう。揉む感覚と揉まれる感覚にw
パヴェル・ガラド相手でもギリギリの綱渡りだったのに、その直後に竜王たる雪風が喧嘩を仕掛けてきた状況は、ハッキリ言って勝てる可能性ゼロ。こればっかりはいくら小細工を弄してもどうにもならない相手で、それでも口八丁に手八丁、あらゆる手練手管をこの短時間で用意して見せたハルの小賢しさが際立っていました。やっぱり力任せではなく、何としてでも真正面を回避して策や詐術をろうしまくる方がいくら僭主として成長してもハルらしさが出てて、この雪風との決戦は実にらしい戦いぶりで見応えがありました。
そして何より生き汚い! ハルの場合って切り札を幾つも用意している、というよりもいざ負けてもリカバリーできるかもしれない可能性を常に準備しておく、という感じで負けた場合を想定しておくことを恐れないところが、実にクレバーというか戦士とも策士ともまた違う、彼の本質が冒険者やトレジャーハンターという生還することを最優先にする生き物であるというのがよく滲み出ていた気がします。
生き残るためならなんでもやらかす、というあの無茶苦茶さはいい具合にマトモじゃないです。
その点、アーシャの方は真っ当に魔女であり戦士であるんですよね。ハルよりもよっぽど竜に親しい性質なんだろうなあ。ハルが度々戦うセンスについてはアーシャの足元にも及ばない、彼女こそが本物の天才、と繰り返していたのをこの一戦で嫌というほど実感させられました。当人は雪風にはどれだけ授業しても強くなっても届かない、と感じてたようだけれど現時点ではともかくとして、僭主としてもっと伸びていったら、そして竜にまで至ったら遜色なさそうなんだよなあ。
少なくとも、あれだけ女子力を損失してしまっている以上、等価交換じゃないですけれど魔女として天元突破する可能性くらいないと可哀想すぎるじゃないですかー。
結局、ヒロインとして成立しないくらいに女子力損なってしまったんだし。うん、ここまでどうしようもないポンコツは類を見なかったなあ、うんうん。
まあ相手がパーフェクトヒロインである織姫であった以上どうやったって太刀打ち出来なかったのでしょうけれど。包容力といい女子力といい清純さといい性格の良さといい聡明さといいスタイルといいエロエロさといい、まさに非の打ち所が無い完璧さでしたものねえ。
むしろ、最後に横から殴り込めた雪風がそれだけ大したものだった、と言わざるをえない。個人的には別シリーズのアテナのリベンジみたいな感じがして嬉しかったですけどね、この顛末は。
ラストは随分とハンニバル氏が美味しいポディションに食い込んでた気がしますが、こういう渋いナイスミドルがやりたい放題しているのは気持ちいいです。エンディングもスッキリ飛躍する未来へと繋がっていて、キレイな幕引きでした。
何気に、作者の完結作品ってこれが初めてなのか。

シリーズ感想

クロニクル・レギオン 5.騒乱の皇都 ★★★☆  

クロニクル・レギオン5 騒乱の皇都 (ダッシュエックス文庫)

【クロニクル・レギオン 5.騒乱の皇都】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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征継の記憶を取り戻すため、皇都東京への訪問を決意した志緒理。だが、時を同じくして皇都東京では女皇照姫が災厄の英雄・平将門を復活させてしまう!!将門の率いる二千騎ものレギオン“零式”により、武力で実権を握る照姫だが、将門にはさらにおそるべき秘密が隠されていた…!!志緒理と共に皇都入りした征継は、ついに記憶を取り戻す鍵となる人物、神君徳川家康と邂逅を果たす。だが家康の放つ意外な言葉に迷いを感じて…!?いっぽう虎視眈々と巻き返しを狙うエドワード率いる大英帝国も、ある密約をもとに次なる計画を立てていた…。幻想と歴史がクロスする覇道戦記、混沌と激突の第五巻!!
志緒理姫、黒い、黒いよ! 闇堕ちしかかっている照姫を助けるどころか、むしろ煽りに煽り倒して闇落ちを促進させようという容赦なさには惚れ惚れしてしまった。政敵でもあり、性格的にも感情的にも相容れない不倶戴天と言えど、イイ性格してますわー。思慮が足らず、感情的でコンプレックスにゆがんでしまっている照姫では、ちょいと役者が違い過ぎますなあ。将門公を呼び出して、調子乗っちゃってる照姫をこの場合哀れんであげるべきなのでしょうけれど、この姫様も小物なんですよねえ。小物らしい味わいのある人ではあるのですけれど。小物であるからこそ、考えが浅く感情任せなぶん、コントロールしやすく利用のし甲斐がある一方で、小物であるからこそ英雄・賢人の想像の埒外とも言える理に合わない暴挙を易易とやってのけてしまう。愚者ではあるのですけれど、舞台上の役者としては意外なほど存在感があるキャラクターなんですよねえ。
世界は英雄だけで動いているわけではない、というのを示しているキャラなのかも。
しかし、将門公はもうこれ完全に人間じゃないじゃないですか。まともな人格が残ってなさそう、という意味においては正しく怨霊のままなんですよね。そして、その装束は旧陸軍の軍服。将門公というと、軍服姿が思い浮かんでしまうというのは、帝都物語の影響凄いなあ、と思う次第。
さて、この悪霊を侍らして如実に精神を汚泥に浸しつつある照姫を、志緒理姫は煽りに煽り倒して混乱をもたらそうとしているのですけれど、一方でカエサルはこれどうするつもりなんでしょうね。この超絶自信家は、わりと行き当たりばったりだからなあ。彼の人生、概ねそんな感じであるのは作中でも描かれていますけれど、それでなんとかなっちゃうのがこの人の凄いところで。色々と想定はしてるんでしょうけれど、想定外の事が起こっても本気でなんとかなるだろう、と思ってるっぽいのよねえ。かと言って、ラストのあの出来事については流石に想定外にも程がある気がするけれど。
いや、実際これについてはびっくりさせられたんだけれど、この人がどう動くのかというのは予想がつかない分、ドキドキさせられる。
予想外というと、征継の選択も予想外だったなあ。順当に、英傑としての過去を取り戻してカエサルやエドワードなどと伍していく、と思っていたのだけれど。
なるほど、彼が過去を取り戻そうとしていたのは強くなるためで、なぜ強くなろうとしていたかというと、志緒理たち愛する女性たちのため、という極々シンプルな目的だったんですよね。それが、強くなったはいいが過去を取り戻したおかげで、彼女たちを守るために不必要なしがらみを得てしまったり、彼女たちを大切に思わなくなってしまうのなら、本末転倒。それならば、過去の記憶など不要、と言ってのけて揺るぎもしない征継の漢っぷりは、そりゃもう前世の記憶なんぞなくても稀代の英傑そのままですわー。
なぜ、土方歳三の再来などと呼ばれ、彼の刀やレギオンも引き継ぐ、という余分な要素を兼ね備えているのか、以前から不思議だったのですが、今回の選択とさらに神君家康公からも新たに頂いたモノを見て、大いに納得させられた次第。なるほど、過去の英雄の復活者でありながら、彼はこの時代における橘征継という新たな英傑として誕生しようとしているのか。

それにしても、そろそろレギオンを運用するための霊液補充のため、という建前名目を脇において征継さん、女性陣に手を出しはじめたなあ。

シリーズ感想

クロニクル・レギオン 4.英雄集結 ★★★☆  

クロニクル・レギオン4 (ダッシュエックス文庫)

【クロニクル・レギオン 4.英雄集結】 丈月城/BUNBUN  ダッシュエックス文庫

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箱根での決戦を制した征継たち新東海道軍は、着実に日本での存在感を増していた。だが、そんな志緒理の躍進を好ましく思わない現女皇・照姫は、志緒理への対抗心から恐るべき復活者を新たに召喚していた!!一方、間近に迫ったミスコンに志緒理、立夏までもが出場することになり、学園祭は大波乱!!さらにミスコンで征継が不在の隙をついて、大英帝国軍の獅子心王リチャード一世がついに箱根奪還に乗り出してきて!?列強国の思惑が入り乱れる中、皇国日本の運命を担う復活者・橘征継は何を思う…!?復活せし英雄たちと美少女が繰り広げる極大ファンタジー戦記、かつてない衝撃でおくる第4巻!!
男風呂のなんという密度の濃さよw
いやマジで、本当に濃い。この作品に登場する男のキャラクターって、比喩抜きで歴史上の本物の大英傑、大将軍ばっかりなんですよね。それも、一つの戦史で主人公やラスボスを担うレベルの。超大物で一筋縄でいかない食わせ物ばかり。そういうキャラがたくさん登場する戦記モノ、というのは決して珍しくはないのかもしれませんけれど、本当にラスボスしかおらず余人を交えずヤンヤと暴れてる作品はさすがに見当たらないんじゃないかなあ。歴史上の偉人達が一処に集まって暴れまわる作品群でも、ある程度役割分担があり、駒として動くキャラクターなども居ますからね。
でも、本作の復活者たちと来たら、それぞれ好き勝手に思うがままに、もしかしたらかつての自分の時代の頃よりも自由に、その英傑としての有り様に耽溺してるんですよねえ。誰かの思惑に理不尽に動かされるのではなく、思うように動いている。一人ひとり、ラスボスみたいな在り方してる連中が、です。
それは、狗と呼ばれる橘征継も、純粋に将帥として上意下達に徹していた衛青ですら同等で、それぞれ狗であること、従順であることを思う存分闊達に楽しんでいる。
この作品の恐るべきは、男キャラにそういう連中しか、「しか!」いない、という所なんですよ。だから濃い。なにをするにも、濃くて大仰であり優雅であり遊戯のようですらある。正しく、英傑たちの遊技盤として、世界が成立してるのである。
だからこそ、征継にしても大英帝国軍との闘争と学園祭でのミスコンに存念の比重をつけようとしていないわけである。日常を大事にしよう、という観念すらなく、まったく自然に戦争とミスコンが同等なんですなあ。
こういう有り様は、リチャード1世やエドワード、衛青やカエサルも似たようなもので、だからこそ今のような戦争が成立している、と言ってもいいのでしょう。
その意味では、女皇・照姫の呼び出した復活者は異質のものとなりかねないファクターなのだけれど、果たして「彼」がどのような存念を持ってこの世に現れ出でたのか、作品の方向性そのものに対する大きな刺激となりかねないだけに、非常に興味深い。
興味深いというと、照姫の呼び出した復活者と、ラストに征継の前に現れた復活者はけっこう関わりが深いんですよね。そのあたり、決して無関係には進行していかないでしょうし、さてどう関わってくるものか。
という以前に、あのラスト登場の復活者には驚愕させられました。同時代において、まさに頂点に立つ大英傑にも関わらず、どうしてもこの人って現代やら異世界に復活させてもらえることのない偉人でしたからねえ。
近年、あまりイメージが良くなかった、というのもあるのでしょうけれど、最近ちょっと評価の筋が変わってきてるようなんですよね。自分なんかも、かなりこの人に関しては印象がガラッと変わってきてる最中なので、この参戦はとてもおもしろく感じてます。

しかし、征継と女性陣の儀式はあれですよね、もうどう見ても普通にナニするのと変わらんノリというか雰囲気ですよねえ。いや、ここまでするならもう普通にイタしてても構わない気もするんですけれど、そんなに建前が大事か!(笑
征継さんはあれですよねえ、女好きなのにそのへん淡白というか、誘い受けを楽しんでいるというか、女性陣が恥ずかしがりながら求めてきつつ、一線を超えるのは意地張って我慢しているのを、めっちゃ堪能して味わってますよねえ。なんというイジメっ子w さすが、女性を尊重しながら甚振るのが得意なだけあります。すごいね!

シリーズ感想

盟約のリヴァイアサン 7 ★★★☆  

盟約のリヴァイアサン (7) (MF文庫J)

【盟約のリヴァイアサン 7】 丈月城/仁村有志 MF文庫J

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竜の力を使いすぎた結果、ハルの身体のドラゴン化は進行の一途を辿っていた。事態を重く捉えた織姫たち魔女は、ハルに人間としての強い充足感を与えることで、どうにか症状を回復させることに成功していた。しかしその脅威はやがてハルの記憶さえも蝕んでいくことになり…。時を同じくして東京湾に突如、小島が出現する。直ちに調査を開始するハルたちだったがそこで出会ったのは、「ひさしいな、春賀晴臣。弓の竜弑しを継承した者よ」人間界に潜伏し続け、傷を癒したパヴェル・ガラドだった。そんな最中、ガラドに続き雪風の姫も現れ、東京湾上に嵐が吹き荒れる―!至高のドラゴン・エンタテイメント、決戦の第7弾!
こ・い・つ・はー! 丈月作品の主人公は多かれ少なかれ女好きだけれど、このハルはその中でも一番すけべえだよなあ。しかも、ムッツリスケベ。一見、淡白そうに振る舞っておきながら、その実一番エロスへの執着心が強いというのは……。ドラゴン化によって完全に人間としての理性を喪ってその本性が剥き出しになった時に、ひたすら女の子の裸体に興味津々になって鼻息荒くしているのを見てしまった時は、さすがに力が抜けてしまった。でかい図体して、その仕草が小動物チックで何となく可愛らしく保護欲抱かせるあたりが、なんかむかつく(笑
にしても、本当にこいつはー。完全正統派ヒロインにして清純の極みであり貞淑で本来ならエッチな事には遠慮がちで縁遠いであろう十條地織姫に、なんつー事をさせるのか。元より羞恥心に難がある肉食系のルナや、従順で何でも言うこと聞いてくれそうな妹系の羽純だと、ここまで唆られないのですけれど、織姫がああいうことをしてくれると価値が違うというか、あの恥ずかしさを我慢して頑張ってる感が素晴らしい。ガードが固い子が無防備に全部受け入れてくれる態勢に入ってる時ほどソソられるものはありませんなあ。

さて、ドラゴン化の進行が早まり、人間としての記憶を失いつつあるハルに対して、パヴェル・ガラドからの再戦要求。正々堂々の真っ向勝負、という脳筋勇者プレイを一旦畳み、ハルを見習ってなりふりも手段も選ばぬ戦術と作戦と小細工を練りに練って挑んでくるガラドは、これまでの力押しの面々と違う手強さで、でもある意味ハルと噛みあう戦闘が繰り広げられた、と言えるんじゃないだろうか。これまで圧倒的に力で上回る相手に対して、手を変え品を変えて主導権を握り、翻弄し、勝利をもぎ取ってきたハルだけれど、こうして相手の手を読み合い、策を潰し合い、という作戦面での攻防はこれまであまりなかったシチュエーションでしたからね。これはこれで、今までになく噛み合った戦いだったんじゃないでしょうか。それだけに、人間としての智を喪った時のハルの弱体化は目を覆わんばかりでしたが。いかに迦具土の竜体をベースにしているとは言っても、ハルが人間としての狡っ辛さを失ってしまうと途端に並以下のドラゴンになってしまうんですよねえ。怒りや魔獣化によってパワーアップを果たすシチュエーションは山程ありますけれど、本作に関してはそちらの強化は逆に弱体化になってしまう、というのが今回の一件でハッキリしてしまったわけで、ハルのドラゴン化はぶっちゃけ良いこと何もない、という事になってしまうんですよねえ。
だからこそ、女の子たちには頑張ってエッチい刺激をハルに与え続けることで、ハルのムッツリスケベ心を満足させて、人間側に引き止めて貰わないといけないわけで、よしもっとどんどん殺り給え。

と、そんな女の子同盟から見事にはじき出されていたアーシャ。昨今の急激な女子力アップが、ヤバイドーピングの結果というのが明らかになってしまい、ヒロインたちが女の子として頑張ると同時に魔女としてもメキメキ力を伸ばしている一方で、このダメっ子は真逆の方向に進んでいたわけかw
魔女としてもダメになってちゃ、本当にダメじゃないかw

挙句に、一人でさらに軽々と飛び越えてはいけないところを飛び越えて、女の子どころか人間辞めちゃうし。これも一つのやりたい放題、ということになるんだろうか。まあ、アーシャは女子力高いよりはこのどうしようもない残念感をまとっていた方が、存在感は全然高いんですけれど。女子力の向上とともに「こいつだれ?」的に存在感が薄まってたもんなあ(苦笑

女子力じゃなくて、魔女力の方だけれど以前から心の闇や暗黒面が殆どない為に魔女としての資質に欠ける、と言われていた織姫と羽純。一応、ハルからのフィールドバックで一流の線上に乗っかっていたけれど、このままだと魔女としての成長に何らかの支障が出るのか、と危惧していたら土壇場でまさかの展開に。なるほど、織姫たちを黒化させるのは彼女たちの清純な魅力を損ないかねないからどうするんだろう、と思っていたんだけれど、魔女としての短所をそのまま反転させて長所にする形でのパワーアップがあったか。でも、これってもう魔女じゃなくて、聖女様ですよね!

シリーズ感想
 
12月3日

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