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三上康明

限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない 2 オーバーリミット・スキルホルダー ★★★★   



【限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない 2 オーバーリミット・スキルホルダー】  三上 康明/大槍 葦人 富士見ファンタジア文庫

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お嬢様に迫る危機を払いのけ、全知全能者として世界を救え!

全知全能の天賦珠玉を手に入れてから4年ーー。成長したレイジはラルクの情報を求め、貴族のお嬢様・エヴァの護衛の任についていた。幼き彼女に迫るは魔の手、レイジは命を賭し彼女を守り切ることができるのか!?

全知全能者ってまたこのあらすじ、強い言葉を使うなあ。確かあらすじ限定で、本編ではこんな風な書かれ方はしていなかったと思うけれど。
こういう風に書かれると、それこそ神様みたいな強大な力を振るえるみたいに見えてしまうけれど、全知全能というにはだいぶ機能も弱いし限定的だし、何よりレイジは「森羅万象」の天賦珠玉に依存することも驕ることもなく、うまく利用することで自分を研鑽することで、「森羅万象」に頼り切りにならない、場合によっては使えない場面でもなんとか出来るように頑張ってるんですよね。
もともと謙虚であり善良な子ではありましたけれど、こういう直向きな所はやはり最初に出会ったダンテスさんたち「銀の天秤」の影響は大きいのでしょう。
彼らの優しさ、心の健やかさに助けられ、守られ、救われたレイジにとって、彼らは恩人である以上に憧れであり、彼らのような在り方こそレイジの人生の指針になっているのではないでしょうか。
それが、「冷血卿」と呼ばれるスィリーズ伯爵とその娘であるエヴァとの関わり方に垣間見えるような気がします。
襲われていたスィリーズ伯爵を救った縁から、エヴァの護衛に雇われることになったレイジ。情報の扱いに長けたスィリーズ伯に報酬として姉と恩師の孫娘にまつわる情報を引き換えに、彼の依頼を受けたレイジにとって、最初はエヴァの護衛というのはまあ仕事にすぎなかったわけです。
まあ仕事に過ぎないというのは言い過ぎで、まだ12歳の少女を守るのにビジネスライクも何もなく、もとより聡明で良い子であったエヴァを危険から遠ざけるのに否応などあるわけがなく、身を入れて彼女の護衛に徹するレイジなのですけれど、エヴァという少女の魂の輝きはそんな気持ちの入り方じゃ全然足りないものだったんですね。
一つ経験を得るごとに、見違えるように大きく翼を羽ばたかせていくエヴァ。その心の成長は、見る人の鼓動を激しく高鳴らせてしまうような、そんな素晴らしいもので、見守るレイジをして思わず魅入られてしまうような、夢中にさせられてしまうような、そんな眩しいくらいの輝きだったのです。
そんな今鳥かごの巣の中から飛び立とう、羽ばたこうとしている雛を目の前にしたら。
かつて、鉱山から逃げ出して右も左もわからなかったレイジを拾い、救って、守って、導いてくれたダンテスさんたち「銀の天秤」のように、レイジもまた憧れ尊敬する彼らの姿に倣うことに何の躊躇いもなかったのではないでしょうか。
純粋に、この姿以上に心の美しく強い少女と、不器用に娘を愛する父親を応援してあげたい、彼らがより良き未来へ歩めるように細やかでも手助けしてあげたい、と善良なレイジが思うことは自然ではあったでしょうけれど、かつて庇護される側だった自分がしてもらった事を、この素敵な父娘に同じようにしてあげたい、そう倣うことで「銀の天秤」の人たちに胸を張れる、そういう思いもあったんじゃないかなあ、と。
幼い頃、レイジはずっと守られる側でした。姉ラルクに対しての親愛の想いも、ずっと自分を弟と呼んで庇い守ってくれたことへの感謝が多分に含まれてるんですよね。そして、「銀の天秤」のメンバーに対してもそう。
四年という月日が流れ、レイジは大人と言うにはまだ幼いけれど、少年と青年の境というくらいには大きくなって、無力であった悔しさを乗り越えるように強くなりました。
そうして今、一人の少女と一人の父親の人生の岐路に関わり合うことになった時、レイジはかつてと違って今度はそっと手を差し伸べて支える側になれたのです。
尊敬と憧れ、親愛に満ちた最愛の人たちに倣うように、四年という月日は一人の少年にそれだけの人としての大きさを蓄えさせてくれたわけです。
エヴァは立派でした。大人でも心折れそうな大きな事件、災厄の渦中をくぐり抜けながら、むしろ蛹から羽化するように、父であるスィリーズ伯爵の予想を遥かに上回る形で、レイジの期待を軽々と飛び越えるように、目覚ましい成長を遂げていく。それは、レイジが手取り足取り引っ張ってのことではなく、全部彼女自身の意思であり勇気であり思慮であり、自立した決意でもありました。
レイジは側で見守り続けただけ。そっと手を差し伸べて、支えただけ。それこそが、エヴァにとってかけがえのないものであったとしても、主体は常にエヴァにあったんですよね。
個人的に、ラストシーン。レイジとエヴァが手をつなぎ父親という庇護の鳥かごから出て夜明けの静かな街を歩いていくシーン、とても美しくて心に焼き付いています。
そして、そのまま二人で自由な空に旅立つ、のではなく、ここでレイジが繋いでいた手を離す展開には驚愕と言っていいほどの驚きと同時に、感動のような想いが湧き上がったんですよね。
この別れと旅立ちは、ボーイ・ミーツ・ガールとしても父と娘の物語として最上級の美しい情景だったように思うのです。
いつか再び出会ったとき、今よりももっと素敵で幸せな二人になれることを約束するような、皆の未来を祝福するようなお別れ、そんなシーンでした。

スィリーズ伯爵家での経験は、レイジという人間の心に大きく真っ直ぐな柱を立たせるものだったように思います。伯爵とエヴァだけではなく、この聖王国で幾多の出会いを得ることになるのですが、なんていうんだろう、そうして出会った人たちは聖王陛下をはじめとして人間的にも魅力的な人たちでしたし、エヴァと同じように幼子から自覚を持って一廉の大人へと成長しようという眩い子供たちの姿もあり、名もなき一騎士や使用人でありながら人としての良き姿、心すくような在り方を見せてれた人、親愛や友誼を交わしてくれた人が沢山いて、レイジの人生の中でも最良のひとときであり思い出と成り得る時間だったんじゃないでしょうか。

また、このクルヴァーン聖王国で対することになった大事件。天賦珠玉と、調停者と呼ばれる世界にまつわる秘密に関わる出来事は、この世界そのものがなにか一筋縄ではいかない大きな思惑、そして想像を絶する仕組みによって成り立っている事が垣間見えて、なにかとてつもない事が動き出しているという感覚と共に物語が動き出したという雰囲気が走り始めるんですよね。

……しかし、素晴らしきは大槍葦人先生のデザインですよね。このレイジの衣装とか、なんかもうカッコいいとか通り越して、呑まれそうです。エヴァのドレスも、そこらのドレスとは一線を画していますし、ファンタジーとしての奥行きへの味わいが半端ないですわー。

そしてゼリィ姐さんのダメ人間っぷりがちょっと好きすぎるw 
レイジくん、結構ダメ人間好きでしょう、君w


限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない 1 -オーバーリミット・スキルホルダー- ★★★★   



【限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない 1 -オーバーリミット・スキルホルダー-】 三上 康明/大槍 葦人 富士見ファンタジア文庫

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全てを司る森羅万象者として立ち塞る敵を滅し仲間・世界を救え!

レイジと少女・ラルクは人に能力を付与する天賦珠玉の発掘を行っていた。ある日最高レアリティの珠玉を見つけたレイジ。それは森羅万象を理解するもので、鉱山で別れてしまったラルクを探すため彼の冒険が始動する。
ウェブ版読了済み。現在ほぼ毎日連載中で、欠かさず追っている次第です。ベテラン作家ながら小説家になろうなどでの連載作も幾つも持っている方ですけれど、個人的には本作が一番面白いですわー。
あらすじからすると、まるで万能全知のスキルを手に入れたように語られるレイジですけれど、その森羅万象のスキルは決して万能無双なものではなく、便利は便利ではあるんですけれど使う人次第、なんですよね。まだ身体は10歳の子供に過ぎない、いや鉱山奴隷として劣悪な環境で育ったレイジくんは実年齢よりも発育不良の肉体で、得たスキルを使いこなせているかというと全然そんな事なくて。むしろ、自分の未熟を痛感することばかり。そして自分が分不相応のとてつもない天賦珠玉を手にしてしまった自覚もある。度々、天賦珠玉を外す機会があってその際に自分の中からごっそりと力が抜ける感覚を思い知っているので、それが自分の努力で身につけたものではない借り物の力だという恐れと自覚をちゃんと感じ取って、戒めてるんですね。
だからか、万能の力を振りかざすというよりレイジくんのスタイルはコツコツと自分の中に取り込んだスキルを努力して鍛え上げていく、センスよりも地道な叩き上げの熟練者という風情になっていくのである。もっとも、この段階ではまだまだ子供に過ぎず庇護される存在、自分が取り込んでしまった森羅万象の天賦珠玉の使い方を模索しつつ、周りに助けて貰いながら戦う術を身に着けていっている段階。といっても、そうは言ってられない局面へと、クライマックスにはなっていくのですが。

とまあ、こんな風に主人公のレイジくんの性質って、兎に角イイ子なのである。それも無差別の善良さや薄っぺらな正義の持ち主とかじゃなくて、人の心に寄り添える、相手の心を感じて、相手の思いを汲んで、それを力に変えることのできる子。素朴な勇気を振り絞れる子。懸命で献身的な子なのである。だから、そんな子の頑張りを間近で見て感じてしまった人たちは、この子のために何かをしてあげないと、という気持ちになる。こいつを守ってやらないと、と思ってしまう。この子が向けてくれる好意や善意を倍返しにして与えたくなる。そんな子なんですね。
利益だの恩義に報いるだの、そういう理屈抜きに、このレイジくんという子は咄嗟に人のために動ける子なのである。思わず、動いてしまう子なのである。森をさまよっているときに、たまたま見かけた冒険者パーティー、銀の天秤のメンバー。その彼らが気づかぬまま危地に陥りそうになったのを、自分の置かれた状況や立場も忘れて、思わず咄嗟に頭で考えるよりも早く、声を掛けてしまった場面が彼の本質を象徴しているのではないだろうか。
鉱山を逃げ出すときに、余命幾許もないヒンガ老人を陽の光の元へと連れて行こうとした行為に、打算などがあっただろうか。
そんな彼の行動、思いに応えるように、彼と知り合った人たちは目一杯の善意や信頼をレイジへと向けてくれる、与えてくれる。そんな時、少年の小さな胸の内は喜びや誇らしさで一杯になるのだ。優しく頼もしく尊敬できる人たちの在り方に、打ち震えるのだ。そんな彼らもまた、この小さな子どもの勇気と健気さに満ちた姿に胸打たれ、感動し、勇気をもらい、なんとしてでもこの優しい子のために、という思いを抱いているのと同様に。
そんな温かくも力強い思いが、両者の間を行き交っていく様子には思わず読んでいるこっちもグッとくるんですよね。
あの頼もしくとてつもなく大きなダンテスさんが、子供に過ぎないレイジを信頼して何も聞かず何も問わず、レイジに任せて預けてくれる姿も。
荒れ狂う嵐を心の奥に秘めたライキラさんが、いつしか生意気なガキなレイジを弟のように慈しみ、レイジの方も最初は刺々しい態度を取るばかりだったライキナに兄のように懐く姿も。
そこからより、相手の心のうちに踏み込んだ時。揺るぎない生き様を目の当たりにした時、決して余人には明かさないだろう自身の深い部分を曝け出すのを受け取ったレイジが強くも切ない想いを溢れ出させる時、心が激しく揺さぶられるままに叫んだ時。
ほんとに、胸に来たんですよねえ。グッと締め付けられるような、温かく擦られるような。ダイレクトに心に響く感触に、思わずこみ上げるものがあったのでした。
そして、折ある度にレイジが胸の内で反芻する姉・ラルクとの思い出。彼にとっての人格形成が、価値観が、その優しい在り方そのものがラルクとの思い出を根幹にしているのが伝わってくる。彼にとって、姉がどれだけ大事な人なのかが伝わってくる切ない想い。彼女を探してもう一度会うことが、レイジにとって人生の目標なのだというのがよく分かるんですよね。
これはレイジという少年の成長譚であり、広い広い世界をめぐる旅の話であり、彼を導き慈しみ様々なものを与え示し教えて注いでくれる素晴らしき人たちとの出会いを語る物語なのだ。

汝、隣人を愛せよ

ふと、そんな言葉を思い浮かべて噛みしめる機会を得る事の出来た作品であり、登場人物たちでありました。この次の巻にあたる第二章は、この作品でも最も好きなエピソードなだけに、是非続刊して欲しいです、いやほんとに。

 
12月3日

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