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三嶋くろね

ロクでなし魔術講師と追想日誌 9 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌 9】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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私が生きている意味はーーこれだったんだ

「Project: Revive Life」から生まれ、グレンに救い出されたリィエル=レイフォード。しかし、彼女には生きる意志が消えていた。帝国に存在を偽り、彼女を育てることに決めたグレンは……


レーンの受難
あんまりクローズアップされないけれど、システィたちの下の世代、一年生たちもちゃんと学園にはいるんですよね。そりゃ、グレンの実態を直接知らず、その来歴だけみたらポンポンと学園のみならず国の危機まで救ってるとんでもない人物だもんなあ。そりゃ、人気も出るわさ。
そんな一年生の女子寮で発生している下着ドロを捕まえるため、セリカ特製の女性化魔法薬によって再び超絶美人女教師となって女子寮を警備することになったグレン。って、これグレン女性化する必要どこにあったんだろう。生徒たちにも極秘に、というわけじゃなく生徒みんなグレンが女となっているのを承知しているのですから。これって単にサービスなだけですよね?


嵐の夜の悪夢
グレン先生、幼少からのトラウマである首なし騎士にビビリまくるの回。教師としての威厳も大人としての立場も男としての面目も投げ売って、ひたすら幽霊ならぬ首なし騎士にビビり倒すグレン先生の醜態W
いやまあ、霊障とかにトラウマある人からすると、怖いもんは怖いよなあ。徹底してシスティを盾にしてるのは笑ってしまうけれど、それだけ耐久力ある盾だと信頼してのことでしょうW
しかしあれだけ良い反応をしてくれると、ドッキリ仕掛けた方もやりがいあっただろうなあ。
そしてセリアは子供相手に深い心の傷を負わせすぎである。親としてはやりすぎです、それW


名も無きビューティフル・デイ
出るたんびに、神秘が薄れて単に突っ張った小娘(チョロい)という本性が発覚していくナムルスの、初めてのデート回。
いやマジで普通にデートしてもらってるだけじゃないですか、やだもう。口では偉そうな尖ったことをイイながら、本当にチョロい。作中随一のチョロさを露呈しまくるナムルス。おまえ、本当にただの小娘だなあ。
逆に言うと、本当ならただの小娘でしかないナムスルが重い役割負わされすぎている、とも言えるのだけれど。
あとちょっと感心したのが、グレン先生。この人やろうと思ったらちゃんとしたデートのプランニングから実践からそつなくやれるんですよねえ。このへん、その辺の経験不足の子供と違う大人だなあと感心してしまった。
ちなみに、ホテルの寝室に連れ込まれた場合、ナムルスちゃん身を任してしまいそうな流れだった件について。君、それがルミアの身体だというのを完全にスルーしてたでしょう。チョロすぎる。


君に教えたいこと
なかなか将来有望な娘が。グレン先生、才能豊かな天才児とその母である未亡人に引っかかる、の巻き。いや、未亡人ではないんだが。
いやまじでこのママさん、最強の刺客じゃないだろうか。13歳の娘がいる28歳のシングルマザーって……あんた、15歳で娘さん産んだんですか!?
政略結婚の挙げ句DV離婚したというのがまた生々しいというか。28歳って全然若いですがな。
このママさん相手だと、グレン先生本気で更生してしまいそうなのですが。イヴをライバル視している場合じゃないですよ、システィとルミア。
しかしここで将来の学院生を出す、というのは将来を感じさせてくれるのがいいですよね。未来において、グレンはまだ講師やっていてウルが入学してくるのを迎えてやれる、そういう希望が見えるじゃないですか。


迷子の戦車
「Project: Revive Life」によって生み出され、関係者の多くが無念の死を遂げる中、独りグレンに救われた人造生命であるリィエル。その人形でしか無い、自分の生きる意思を持たなかった彼女が、グレンと同じ特務室の一員となるまでの。何のために生きるのかを見つけるまでのお話。
と言っても、リィエルはほとんど無気力に横たわっているだけで、そんな彼女の身の回りの世話をして必死に彼女に生きる意思を持たせようとするグレンの霞を掴むような介護の様子をその奮闘と挫折の繰り返しを描く物語になっているわけですが。
しかしリィエルを助けたはいいけれど、彼女の身分保障の偽造やら何やら全部お膳立てしてくれたのってイヴだったんですねえ。グレンをリィエルの世話に専念できるようにしてくれたのも彼女ですし、お互い反発しながらどうしてかイヴが一番のグレンの理解者っぽいんだよなあ。
グレンは昔からイヴは嫌がらせしかしてこないろくな上司じゃなかった、みたいな言い方してたし、イヴの方もグレンのことをずっと反発してぞんざいに扱ってたみたいな述懐してたけれど、短編集だけ見ていると、なんだかんだグレンのフォローしてくれるし支援やら何やら手厚くしてくれてたりするし、かなり助けられてるんですよねえ。
グレンの切なる思い、生きてくれという願いに応え、ようやく生きる意志を得たリィエル。でも、その生きる目的はグレンのため、というただ一点。それは依存の先を変えただけの生き様。結局、グレンはそれを変えることが出来ないまま、彼女を放り出して特務室から消えてしまうのですが……。
こうしてみると、リィエルの成長はシスティのそれとはまた少し違って、独り立ちするための成長なんだよなあ。彼女は自分で守りたいものを見つけ、誰に寄り掛かるでもなく自分の意志で戦い生きる「人」になった。それはもう彼女の生存にはグレンは必要としなくなったということでもあり、そうしてようやくリィエルは一人の女の子としてグレンを追いかける事が出来るようになったのかもしれないのですね。




ロクでなし魔術講師と禁忌教典 19 ★★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 19】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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幾年の時を超えーー伝説の時代に、グレンが駆ける

ついに姿を現した魔王から逃れ、導かれたのは超魔法文明時代。失踪したセリカを取り戻すため、伝説の時代を駆け回るグレンとシスティ。圧倒的な実力差戦いに巻き込まれる2人は、この時代で新たな力を手に入れる!?

5853年という途方も無い時間を隔てた巡り会い。それは運命の出会いであり、きっと世界を救う出会いだった。でもそれ以上に、ただ一組の家族が生まれた出会いだった。
グレンにとって、セリカは大切な家族と呼んで憚らない相手だった。実際、グレンもセリカもお互いに公言して止まなかったし、お互いがどれだけ大事で掛け替えのない人なのかを、どんな深い想いを抱いているかを彼らはその言葉で、その態度で、その熱量で表し続けていた。
でも、その関係性をはっきりとした言葉で語ることはなかったんですよね。家族といいつつも、どんな家族なのかは言わなかった。もちろん、語らずとも言葉にせずとも、グレンがセリカをどう思っているのかは伝わってきていたんですけどね。グレンをセリカがどんな風に愛しているか、あからさまなくらいでした。
でも、それを言葉にはしてこなかった。
ずっと、この瞬間のためだったんでしょうね。これだけ長くシリーズ続いたにも関わらず、この瞬間のためにずっと温めてきていたのか。

そんな風にグレンが、セリカを呼ぶときは。その関係が終わるときだと考えていたのだろうか。
母さんと、グレンがセリカを呼んだ瞬間、様々なものが決壊した。それはわかりきっていながら、決して二人共表に出さなかったもの。図らずも、セリカを母と呼ぶことでグレンは巣立つ事になったのだろう。親離れで、子離れだ。いつも、最後の最後のラインでグレンのことを見守り続けてくれていたセリカ。時々、最後の最後どころか過保護なモンスターペアレント並にラインオーバーしまくって前に出てきたときもあった気がするが、それはそれとして、本当に最後のところでセーフティーネットとして、グレンの庇護者で居てくれてたんですよね。グレンが心を壊したときも、セリカが守り続けてくれた。
すでに自立し独り立ちしたグレンだけれど、帰る所はずっと在り続けていたのだ。安らかな気持ちで眠ることのできる場所を、セリカはずっと守り続けてくれていた。
そこから、彼はついに巣立つことになる。その胸に、本物の正義の魔法使いの姿を宿して。誰よりもカッコよく憧れた、あの女性の姿を焼き付けて。
グレンにとっての、生涯の命題であるのだろう「正義の魔法使い」としての在り方についても、この超古代文明時代を駆け抜ける中で、一つの答えにたどり着くための道筋を見つけたみたいだし。

グレンにとって、大きな区切りであり、リスタートとなる回だったんじゃないだろうか。
過去の世界に実際訪れることで、これまで謎とされていた部分、様々な伏線がぐるりと円環を描いて繋がった部分もたくさんありますし。だいぶ、ストーリーラインの設定周りもスッキリしたんじゃないでしょうか。ナムルスの正体はもとより、その態度についてもその発端がこの時代に起因していた事がよくわかりましたし。
しかし、イグナイト家はちょっと長く続きすぎじゃないですか!? 実質6000年近く連綿と続いたことになるぞ、あの一族。

そしてもうひとり、ついに魔将星の領域にまで至ることになったシスティ。成長物語として見たら、間違いなくこの娘がこのシリーズの主人公なんですよね。あの、初めての実戦でべそかいて心折れまくって泣きじゃくって何も出来なかった娘が。才能としても、おそらく一般的な秀才の域を出なかった娘が。挫折を繰り返し、努力を重ねて、実戦をくぐり抜け一つ一つ、一段一段着実に堅実に階段を登り続けてきたんですよね。決して一足飛びに段を飛ばさず、本当に一段一段丁寧に。システィがここに至るまで描いた成長曲線は、掛け値なしに美しいと思います。名実ともに、作中でも最強ランクにたどり着いたんだよなあ、この娘。もうすでに特務分室でも十分やってける実力になってましたけれど、ここでガチに次のステージに駆け上がったもんなあ。さながらそれは、星が天に昇るようにして。

ちなみにセリカ、まだワンチャンあると思ってるんですよね。どうにもそれらしい伏線が、この19巻の中にありましたし。
さて、舞台は現代に戻ってついに復活した魔王との決戦に。着々とラストに近づいてきたのが実感されます。


ロクでなし魔術講師と追想日誌 8 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌 8】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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初めて会ったその人は震える程に恐ろしく、本当に優しい人だった

フェジテのみんなが不在のなかで、グレンの家にルミアが住み込み!? まるで新婚夫婦な2人きりの生活に、ドキドキが止まらないルミア。そして思い出す。初めてグレンと出会った、3年前のあの日のことをーー

グレンって色々と巻き込まれて死地や戦場を行ったり来たりしているとはいえ、現在の公式の立場は魔術学園の講師というまっとうな職業についているんですよね。将来の安定性については、実のところ既に保証書がついているようなものなのだ。私生活の方の自堕落っぷりをちゃんと管理できる人が側にいるなら、驚くほど真っ当で落ち着いた日常生活に移行出来ると思うんですよね。その下地はもう既に十分揃えられている。
その意味では、やっぱりルミアが一番家庭的でグレンとなら当たり前の穏やかな日常を築けるんだろうなあ、というのが透けて見える僅かな間の同棲生活、或いは新婚生活でした。
白猫と一緒になると、考古学のフィールドワークなんかが頻繁に挟まれてあんまり家に落ち着かない夫婦生活になりそうなんだよなあ。それはそれで一つの素敵な形なんでしょうけれど。
それにしても、女王陛下やりたい放題だなあ。女王権限をふるいまくって邪魔者を遠ざけた上で愛娘に好きな男と進展するチャンスを与えるとか、これまでルミアの事遠ざけざるを得ず構えなかった鬱憤を晴らすかのようなはしゃぎっぷりで。いや、もうそこまでやれるならもうちょっとルミアとの仲を取り戻す試行錯誤をやっておけばよかったのに。これも和解できたがゆえなのかもしれませんけど。
しかし、これだけ短編でルミア押しが続いているというのは、逆に本編の方でそれだけルミアがヒロインとして存在感を主張しきれていない、という証左なのかもしれません。
最初期はルミアがメインヒロインとして圧倒的なムーブをかましていたのですけれど、白猫が心身ともに覚醒して以来、あらゆる場面でシスティがグレンの側にいる機会が増えてしまいましたからね。公私に渡ってグレンのことを支えられる立場になってしまいましたし。
さらに、そこにイヴというダークホースが躍進してくる一方で、ルミアは物語の核心に深く関わるキャラクターというのが逆に用意に動きづらい立ち位置にハマってしまったかして、本人が戦闘キャラでないというのも相まって、なんとなく場面の後ろ側に立つようになってしまった所があるんですよね。本人も積極的にグイグイいくタイプでもありませんし。
女王陛下が権力駆使してルミアにアピールする場と背中を押す言い訳を与えたのも、そうしないとなかなかルミアのターンが来ない、という感触を得ていたからなのかもしれません。

書き下ろしの、ルミアとグレンがはじめて出会った事件の顛末を見ると、ルミアにとってグレンはもうどうしようもなく運命の人で、特務室の一員から魔術講師となったグレンと再会したときのルミアの心境を思えば、メインヒロインまっしぐらにふさわしかったんですけどねえ。
しかし、ルミアってば白猫の家に預けられた当初はそんなに荒れまくってたのか。昔はシスティがグレてたルミアにイビられいじめられてた、という事実はなかなかびっくりの情報でしたよ。
ルミアもグレンと会わないまま成長してたら、オドオドと内気で大人しい白猫を取り巻きとして引き連れた、居丈高に振る舞う悪役令嬢型ルミアというキャラが爆誕していた可能性もあるんですね、わかります。

ほかは、白猫の小説書きという趣味のお話。この娘、興味の範囲がほんと広いよなあ。大ファンである古典の英雄譚つながりでの小説執筆なんだろうけど、魔術オタク的なところもあるし考古学の知見も深く広いし、この娘体育会系というよりも本来は文系……を通り越して学者方面を歩んでいきそうなタイプなんだよなあ。それがグレンに鍛えられてしまった結果、実戦派魔術師としても大成してしまったわけで。
まあ特務室の面々見ても、あの連中ってリィエルを除けば全員実戦派という以上に知識階級で学識豊かな面々が揃っているので、システィが入っても全然違和感はないのですが。
グレンだって、あれ魔術に関する知識はほんと超一流なんですよね。伊達に魔術講師じゃないんだよなあ。コネだけじゃないんですよね。現場サイドの人間であるけれど、はーなんとか先輩の超高度な魔術論に対等に論を交わしているわけですから引けは取ってないんだよなあ。

魔導探偵ロザリー編、なんか短編集のレギュラーになってきたぞ。
システィはあれミーハー極まってるから絶対乗るだろうなー、とは思ってたけれど、まさかリィエルまでロザリー超有能派閥に与するとは思わんかった。リィエルの野生の勘もこれ大概だなあw




ロクでなし魔術講師と禁忌教典 18 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 18】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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タウム天文神殿、メルガリウスの謎ーー決戦の時、来たる!

天の智慧研究会が、帝国に宣戦布告! フェジテに迫る危機を前に、頼みの切り札・セリカが姿を消した。向かう先はタウムの天文神殿。そこで待ち受ける最高指導者・フェロード=ベリフ。その、驚愕の正体はーー

グレン・レーダスにとってセリカ=アルフォネアとは如何なる存在だったか。
命の恩人であり、育ての親、魔術の師であり、彼が正義の魔術師を目指すきっかけとなる憧れの人だった。
家族であり、母だった。最も大切な人だった、と言っても良い。
そんな彼女が別れの手紙を残して姿を消した。しかし同時に王都を壊滅させた死者の軍団がフェジテに迫る。ここで追いかけなければもう二度とセリカには会えないだろう。しかし、彼女を追いかけるということは、フェジテに迫る破滅を前に教え子や友人たちを残していくということ。
グレン・レーダスは究極の選択を迫られた。その選択に正解はない。どちらを選んでも、生涯傷痕として残る後悔が刻まれる。
それでも、彼は選択した。苦しみ藻掻きながら、心を切り刻まれながら、魂を根こそぎ削り取られるような喪失感に耐えながら、それでも選んだのだ。
痛みを抱える覚悟を決めて、一生悔やみ続けることをわかった上で。二度とあの人に会えないと理解した上で。
それでも選んだ。
後悔の恐ろしさを知っている彼が、それでもさらなる後悔を刻みつけた。
尊ぶべき決断である。敬すべき取捨であった。
最後まで選ぶことができずにズルズルと流されてしまう事もできただろう。自分にはどちらも捨てられないと、意味なく抗う真似をして誤魔化すこともできただろう。
それでも、グレンはきっちり選んだ。それを、彼の成長だというのは、余りにも酷だろうけれど。
でも、彼が選択したからこそ、その大切なものを選別する選択を強要する状況そのものをひっくり返す皆の好意に、価値が生まれたのだ。
何も選べないまま、一方的に選択肢をなくされて送り出されるのと、自ら選択した上で自分たちは大丈夫だから行って来い、こちらは任せろ、と背中を押され託される事とはやはり根本から価値が異なってくるじゃないですか。
信義の問題である。グレンはそれに応え、それに応じて皆もまた信じて義を通して返した。それが彼を究極の選択から開放してくれた。
今まで積み重ねてきた信頼の、友情の、帰結である。長い長いシリーズ物の中で一人ひとり積み重ねて築き上げてきた人間関係の結実でもありました。長期シリーズの醍醐味でもあるんですよね、こういうのって。短いお話の中ではなかなか積み上げられない蓄積です。

しかし、最終的にパーティーはやはりグレンとシスティとルミアになるんですね。リィエルは、どうしても剣姫との対決、剣の究極にまつわる因果が待っているし、イヴはもう軍指揮官としての能力が極まってしまっているのでそちらの役割をどうしても求められてしまっていますし、立場上離れられないのは仕方ないのですけれど。
それに、黒幕との因縁を考えるとどうしても対象はルミアとシスティになってしまいますし。

そのシスティは、再生怪人じゃないけれど、死者から復活したあのジン=ガニスと再戦することに。ジンというテロリストは、システィが本格的に実戦に参加することになったきっかけとも言うべき人物であり、実戦の……殺し合いの恐ろしさをシスティに刻み込んだ人物でした。恐怖に押し潰されたシスティは実力を発揮しきれず、精神的に踏み躙られ泣き喚いて命乞いまでする羽目になった相手である。初期のシスティの精神的な弱さを象徴する相手でもあり、天才と呼ばれていてもシスティはあくまで一般人の少女に過ぎなかったことを示す相手でもありました。この頃のシスティは、グレンが抱えている闇にもルミアの秘められた過去もとてもじゃないけれど向き合える娘じゃなかった。戦いにも真実にも耐えられるような心の強さを持ちえていなかったんですね。
それなのに、本当の殺し合いの中に放り込まれて矜持も夢も意思も何もかもがぐちゃぐちゃに踏み躙られた。その相手こそが、ジン・ガニスだったわけです。
システィーナ=フィーベルがもう幼い小娘ではなく、一人の魔術師であることを改めて示すにはもっとも相応しい相手だったと言えるでしょう。システィの成長をこれ以上なく実感できる相手でした。
もう彼女は本物の魔術師であり、一人の戦士なのですから。今や特務分室の一員に加わっても遜色ない、と皆からお墨付きを得られるほどの、覚悟と実力を兼ね備えた凄腕の超一流の魔術師へと至ったシスティには、かつて自分が怯え逃げ惑ったテロリスト崩れなどもはや敵にもならなかった。ここまで手も足も出させずに一蹴するまでに、実力が隔絶しているとまでは思わなかったけれど。
命乞いをするジンを、一顧だにせず処理するシスティの冷徹さには正直痺れました。もうこの娘を、少女とは呼べないなあ。
黒幕フェロード=ベリフの正体についても、向こうから明かされる前に気づいて、正対することになっても動揺することなかったことも、システィの精神的な成長を感じさせて余りあるところでした。

しかし、ここに来て本格的にクゥトルフ神話要素が強くなってきたな。ジャティスのあの狂気に満ちた正義も、元来のものであるのは確かだけれど、外なる神の情報を直視してしまった事によるSAN値の欠損だと考えれば、よくわかるんですよね。
それ以外にも、歴史上において狂気に侵されたという重要人物たちも、SAN値が減少していき最終的に削れきってしまったと解釈できますし。あの鉄心のアルベルトをして、言葉にして出せずに精神に支障を来す素振りを見せるとか、通常の狂気とはどこか異なっていましたし。
魔王が王家に仕掛けてきた計画など、邪悪を通り越して狂気ですらありますし。
これまで幾つも仕掛けられてきた伏線が次々と明らかになり、この世界に、歴史に沈められてきた秘密が、真実が浮き彫りになっていき、狂気がすべてを覆い隠していく展開はまさにクライマックス。
いや、まだ最終段階に足を踏み入れたところ、なのかしらこれ。
セリカが思い出した真実とは、何よりセイカの本当の正体とは。まだ肝心な所が明らかになっていないだけに、こっからが本番だ。


この素晴らしい世界に祝福を! よりみち2回目! ★★★☆  



【この素晴らしい世界に祝福を! よりみち2回目!】 暁なつめ/ 三嶋 くろね 角川スニーカー文庫

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短編集第2弾! 新規書き下ろし豪華2本収録!!

今回は異世界にもよりみち!? エピソードたっぷり全10編!!

ウィズが仕入れた魔道具で転移した先には、見慣れた日本の風景が広がっていた!?
――『そうだ、異世界へ行こう!』

暴走した嵐の大精霊を相手にアクセルの冒険者たちが【水着】で大暴れ!!
――『レッドストリーム・エクスプロージョン!』

「私……! 私……!! カズマさんのコミュ力が欲しいっ!」カズマとゆんゆんがついに!?
――『ぼっちをプロデュース!』

入手困難だった限定特典に、カズマたちの日常の一幕や本編では明かされなかった
ダクネスとクリスの出会いなどを描く、スペシャル書き下ろしが詰まった、豪華短編集第二弾が登場!

現在では手に入れられない各種特典としてつけられた短編小説を中心に集めた「よりみち編」の第二弾。というわけで、結構作中での時系列的にどのあたりの話なのかわからないものも多いんですよね。序盤の方が多いのかな、作中で語っている内容からして。
ただ、まああんまり時系列わかんなくても支障がない話だったりする。

「拝啓、紅魔の里の皆様へ」
めぐみんがカズマたちのパーティーに加わって、ダクネスも参加してしばらくの頃のお話。ふるさとの紅魔の里の面々へのお手紙という形式で、うちのパーティーの連中ちょっと頭おかしいんですけど、という内容を書き綴っているが、めぐみんがそんな手紙里に送っても、お前が言うな、で終わってしまうと思われるので、まだ序盤も序盤、紅魔の里とか描写されてない頃の作品だったのだろう。カズマたちもマメに冒険しているし。アクアも文句言わず被害を出して泣いてるし。
あ、でももう「ちょむすけ」がいるので、ちゃんとめぐみん主役の外伝が出たあとの話になるのか。


「そうだ、異世界に行こう」
「そうだ、京都へ行こう」とかのキャンペーンってどれくらい昔になるんだろう。このフレーズって今でも通じるんだろうか。
日本に転移する話を神様関係なく、ウィズの謎アイテムでやれてしまう、というのがさすがこのすばというべきなのか。お手軽である。
しかし、折角この面々で日本に行ったのにエクスプロージョンの一発も打たないとは随分とおとなしい話ではあった。アクアも別にやらかして泣き出さないし。アクアが日本に行ったらとりあえず警察のお世話になって留置場に入るくらいは普通にしてくれると思ったのだが。それにこの駄女神、日本担当だったくせに根本的に近代科学文明まったく理解してないやんw


「この過酷な世界に祝福を」

この世界って農作物を相手にする農家の人とか、野生動物を相手にする猟師の人とかって、モンスターを相手にする冒険者と対して難易度というか修羅度変わらないんじゃないだろうか。
特に農作物の凶暴性が段違いなんだが。普通の野生動物の鹿なんかでも、兵器でそこらのモンスターと変わらない凶暴度出しなあ。雑草にも負けるカズマさんw 自宅の周りの草抜きまで命がけかよ。


「白虎に加護を」

白虎の子供をアクアが親から預けられるの巻き。子猫かわいい、のお話。まあ猫派は問答無用で陥落するよね。白虎って結局神獣なの? モンスターなの? とりあえずアクアは相手がなんであろうとナメられてるのは変わらないみたいだが。


「レッドストリーム・エクスプロージョン!」
めぐみんの新技か、進化必殺技か!? というタイトルであるが、あんまりエクスプロージョン関係ないよね。
そしてまさかの水着回である。そう言えば本作って水着になるような回ってなかったんだったっけ。そもそも、海に行く機会がないもんなー。アクセルの街に引きこもり、が基本だし。湖とか言ってもアクアが漬けられるだけだったし。水の女神の癖に水着を着ないとかどういう了見だい。まあ、エリスさまならともかく、アクアの水着とかまあどうでも、だしなあ。
そして空気を読まぬ駄女神である。わりとあのラストのあとアクアってば男冒険者たちからガチ泣きさせられたんじゃないだろうか。

「○○料理をめしあがれ」
クリスって案外出番ないのよねえ。というわけで、今回はがっつりクリスが参加して、ご禁制の品を使った料理会が催されているのではないか、という宴へと潜入捜査。いや、ダクネスはララティーナ様として出席しているので潜入ではないのだけれど、クリスの男装姿が見られるまさに特典回。三嶋くろねさんのイラストも相まって、超絶イケメンのクリスが見られてしまう。これガチで今まで出たキャラの中で一番イケメンなんじゃないだろうか、クリスってば。
カズマと出会うまではパーティーを組んでいたというダクネスとクリスの出会いの話もあって、そこは前から気になっていただけにありがたかった。でも、クリスってばダクネスにまで財布盗んで勝負挑んでいたのか。まともに勝負してもらえないという意味で、クリスのこの財布のパーティーイベント成功した試しないんじゃないだろうか。


「ぼっちをプロデュース」
ゆんゆんが思い余ってカズマにコミュ力をあげてもらう相談をしてしまう話。言われてみると確かにカズマ、男友達多いし結構男同士で飲み歩いたりしている印象あるね。引きこもっているとき以外の遊び歩いている時はけっこう男連中と管巻いていることもあるし。目の付け所は悪くないのか?
むしろ問題はやはりゆんゆんの方にあるわけで、あと余計なちょっかいかけてくるめぐみんと。
既にカズマパーティーの面々とは普通に友達だよね、という爽やかな結末は爽やかすぎてむしろこのすばとしては違和感がw


このすば完結あともこうして彼らのドタバタを堪能できるのは嬉しいことですが、やっぱりちょっと物足りなくもあり、本編完結が惜しまれるところであります。まだよりみち編やるネタは残っているのかしら。


ロクでなし魔術講師と追想日誌 7 ★★★☆  



【ロクでなし魔術講師と追想日誌 7】 羊太郎/ 三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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グレンと結婚した相手は――教え子たちの花嫁の座・争奪戦!?

突如セリカが開催したグレンの花嫁コンテスト。さらに、未来でグレンの子供をチェック!? ドキドキなシスティーナ、気合が入るルミア、食い気優先リィエル。結婚相手は誰に!? 特務分室の絆を描く書き下ろしも!

『最強ヒロイン決定戦』
セリカが主催で行われたグレンの嫁選抜戦のお話。強制招集じゃなくて希望者のみにも関わらず、数十人もの参加者が集まるあたり、グレン先生ってそんなに人気あったの!? と、白猫じゃないけれどちょっとびっくり。というか、セリカお母さんは息子に対して過保護すぎである。
このイベントに対して入れ込んでたのが、白猫じゃなくてルミアというあたりが興味深い。最近、イヴの台頭もあってかなりガチ目にヒロインレースで劣勢に立たされている自覚もあるのだろうか。
初期はわりと余裕を持ってたはずなんですけどねえ。
ルミアがこれだけ必死に見境なくして暴走するのは珍しくて、かなり面白かった。てか、銀の鍵をこんなしょうもないイベントで使うなし! ナムルスまで呼び出すし! 


『さらば愛しの苺タルト』
もうただの苺タルト中毒じゃん、リィエル。それは薬物依存症の症状と変わらんからw
ただ忙しいのに追試の準備やらするの、先生ほんとに大変らしいのでリィエルはもうちょっと恐縮するべき。まあハーレイ先生、私怨絡みで自分から首突っ込んでいるので自業自得と言えば自業自得なのだけれど。
というか、この短編集でみんな最終決戦とか満を持して使うべき切り札をポンポン繰り出しちゃってるの、奥義の無駄遣いなんですけど。ってか、それら減りますからね、色々と。


『秘密の夜のシンデレラ』
イヴ先生、実家を勘当されたのに生活レベルを下げられずに極貧に陥って、バイトをはじめるの巻。
わりとやってることがグレン先生と同レベルなんですけど、イヴさん。
本業の傍ら、こっそりと水商売でバイトとかガチであかんルートに入ってるんですけどー。衣食住のうち、衣の部分身だしなみだけはレベル落とせずに、住居と食生活で極貧を極めるイヴのソースなし塩パスタ生活が色々不憫すぎるw
いや、イヴってイグナイトに引き取られるまでは庶民生活送ってたんじゃなかったっけ。そこで見栄を捨てられないのは、なんともはや。振り幅大きいなあ。
んでもって、同じく魔術で変装してバイトしていたグレンとお互いに正体知らずコンビを組んで上級クラブで働くことに。
イヴはなんというか、もう彼女のエピソードあるたびにヒロイン度があがっていきますなあ。グレンと相性ヨすぎるんですよね、彼女。色々とリズムが合いすぎているというか。これって、お互い正体を知らないまま惹かれていく、という王道パターンだし。そして、実はその気になった相手がグレンだったとわかってときめいてしまうという。
この二人のカップルだと、貧乏暮らしで所帯じみたわりと地に足のついた生活になりそうなんですよねえ。
ガチで大番狂わせあっても不思議とは思わんぞ。


『未来の私へ』

オーウェル教授が天才便利すぎて、この人ならタイムマシン作っても全然おかしくないよね、という認識になってしまう。いやマジでどんな突拍子のない展開になっても、オーウェル教授なら出来るよね、となっているのがなんかもう凄い。異世界転生でも地獄門を開くでも何でもできそうだぞ。
というわけで、システィーナとルミアとリィエルの三人がいつものオーウェル教授の実験に巻き込まれて、いや普段巻き込まれるのはグレン先生なんだが、代わりにこの三人娘が巻き込まれて……未来に飛ばされてしまった、というシチュエーション。
当然のようにそこで出会ってしまうのは、彼女達三人に似ているようで全然似ていない三人娘。いや、さすがに白猫たちからこの娘たちが生まれるのはちょっと信じがたいぞw
いくら何でもキャラが濃すぎるw 白猫とルミア、完全に子育て失敗しているじゃないですか。リィエルはどう考えても血が繋がってないだろw
最初の嫁選抜戦もそうなんだけど、セリカはグレンが嫁を迎えることはむしろ積極的に推してるんですねえ。嫁いびりとか絶対にしないで、むしろ家族が増えたと喜んでて、グレンと一緒に猫可愛がりしている感じで、この人はほんと息子を独占したいとかは全然なくて、彼が幸せになるのが嬉しいんだろうなあ、と思うとほっこりとしてしまうのでした。
なんでイヴだけでないんだろー、とちびっと不満に思っていたのですが、あとがきでバッサリ出番がカットされてしまった理由が書かれていて、それはうん、出ないほうが良かったですね。


『特務分室のロクでなし達』
最新話相当での特務分室って、こうしてみるとほぼほぼ瓦解してるという他ないですよね。残ってるの、クリストフにバーナードにアルベルトの三人だけなんですから。って、そう言えばエルザが「運命の輪」で新加入してたんだったか。
ともあれ、特務分室全盛期だった頃に学生だったクリストフが、卒業を期に特務分室に配属を希望する、そのきっかけとなった彼が特務分室の面々と遭遇するお話。
前々から思ってたんですけれど、色々とおかしい人間しかいない特務分室の中でクリストフってあんまりこう人格に破綻した部分のない普通の人だなあ、と思うところ大きかったのですけれど、こうしてみると確かにメンバーの中で突出してまともな常識人だ。
そんな彼から見た頭のおかしい特務分室のメンバーの活躍は、やっぱり頭おかしいというほかなく、いやこんな事件しょっちゅう解決してたの? 帝国の治安ヤバくない? どれだけ国家に致命的なダメージ与えそうな事件頻発してたんだ?
ともあれ、グレンが現役でイヴが室長で、セラが健在で、ジャティスがまだ在籍していた頃の話。こうしてみると、軒並み分室から居なくなっちゃったわけですからねえ。途中加入してた連中は中途半端も良いところだったし。その意味でもエルザには期待大か。
……そう言えば、忘れてたけどリィエルも一応あれ現役の執行官メンバーだったっけか。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典 17 ★★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 17】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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公爵家イグナイトの裏切り。クーデター『炎の一刻半』

魔術祭典決勝を襲った最大級の悲劇と天の智慧研究会の最高指導者、大導師フェロード=ベリフの登場――歴史の大いなる転換点で、アルザーノ帝国女王府国軍大臣・アゼル=ル=イグナイトもついに動き出す――。

イグナイト卿、クズ野郎、クズ・オブ・クズだとは思ってたけど、そこまでやるか。そこまでやってたのか。「彼女」の言葉じゃないですけど、「ははは、笑えねえ。死ねよマジで」ですよ。
うん、いっそここまでクソ外道だと清々しいですわ。同情の余地が一切なく、理解の必要がまったくない。ただただ己の野心のみに固執してそれ以外の価値を認めないクソ野郎。自分の子供を道具としか考えていない、という毒親キャラは珍しくないですけど、ここまで完全に道具扱いした奴は見たことないですよ。
これでまだ、その野心に見合うだけの才覚の持ち主。自分こそが帝国を率いるに相応しい存在であるという自負に見合うだけの力の持ち主であったのなら、世界の敵、国家の敵として十分だったのでしょうけれど。
権力の握り方も力尽くで凄まじい恨みと憎しみを買いまくってるし、決して権力闘争に長けているという風でもなく、作戦立案能力も消耗戦前提の力押しで、戦闘も火力馬鹿。人の操り方だけ、呪詛を使って小賢しく無理矢理に従わせるのがうまい、というだけのまあ自己評価の高さとは裏腹の人物なんですよね。
イヴからは、冷静に小物と切って捨てられていますし。
でも、そんな無能な小物だからこそ、そんな輩に帝国が食い物にされ、過去からこのクーデターに至るまで無数の兵士たちが無為に死ぬ羽目になり、そして何よりイグナイトの娘たちが無為にその人生を潰されることになった。父親と違って、本物の天才だった三人共が踏みにじられ、苦しみのたうちまわり、その輝かしい道を歩むはずだった人生を泥に塗れさせられた。
怒りもある、憎しみもある、悔しさもある、でもその原因がこの父親だったという、この小物に過ぎない男であるという事実に、虚しさを感じるのである。あまりに、その死が、人生の歩みが徒労すぎて、こんな男に消費させられて、報われなさすぎる。

今回の一件は、イグナイト家を、そして帝国そのものを覆っていた一人の男の醜い野心の呪縛を、それに苦しまされ続けた末娘が、ついに打ち破る話でありました。
「炎の一刻半」と銘打たれた歴史的軍事作戦の指揮を取る、イヴ・ディストーレの慟哭と決別の三時間。
限定された時間内での怒涛の展開だっただけに、まさに凝縮された密度の濃い、そしてスピード感に乗りに乗ったまるまる一巻でした。これ、本番の前哨戦に過ぎないんですけどね。
ジャティスの謀略による天の智慧の首魁の正体の世界への露見からはじまる、世界の終わり。まさにその端緒であり、色んな意味で誰もが躓いたイグナイトの乱。ほんと、他者の足どころか人生そのものを無為に引っ張るという意味で最大級の余計モノでした、イグナイト卿。そのぶん、ちゃんと相応しい末路を辿ってくれて良かったですけれど。
……にしても、イヴにしてもアリエルにしても、目的を達するために進んだ道が迂遠すぎるのはイグナイトの血筋なんだろうか。イヴなんざ、それで一時は目的見失ってるし。
ともあれ、最大のネックでもあったセラの殉職の件も、イヴはむしろ積極的に動こうとしていたのにイグナイト卿に邪魔された結果だった、というのがグレンにも伝わって、二人の間のハードルほぼ取り除かれちゃったんじゃないだろうか。
かつて白猫が、何度も何度も精神的にフルボッコされ、愛情たっぷりの棍棒で滅多打ちにされ、そこから這い上がってきてヒロインとして一枚も二枚も格を上げて覿面に飛躍してきた事を思い返せば、イヴもまた登場時から大転落して、何度もボコボコにされ続けた末にここでトドメとばかりの猛襲を受けてのた打ち回って苦しみぬいての、過去と呪縛からの脱出であり打破の集大成だったんですよね。これまさにまさに遅れてやってきた最強のヒロイン、ワンチャンありですよ。

しかしこれ、イリヤとイヴ、同じリディア姉に救われた妹でありんがらこれだけ歩む道が変わってしまったの、理由は色々あるのだろうけれどグレンと出会っていたかというのは大きな要因だったんでしょうね。たった一人で復讐にひた走ったイリヤに、リディアに代わって真のイグナイトを目指したイヴの違いとも言えるのでしょうし、リディアの末路を知ったか知らなかったかの差でもあるのかもしれませんが。

さて、高笑いしながら次元の向こうに飛ばされていったジャティスですけど、こいつ絶対これで退場とかないよなあ。余裕ヅラの黒幕さんに、ばっ馬鹿な!と愕然顔で言わせてくれそうなの、グレンたちよりも圧倒的に煽り属性持ってるジャティスの方なので復活が楽しみですらある。



ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード)6 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード)6】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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グレンとシスティーナのデートに父親同伴!―『お父様が見てる』。大天使ルミアが、ついにグレる!?―『名無しの反転ルミア』。グレンの仮病を暴くため、三人娘がアルフォネア邸へと突撃!!―『仮病看病☆大戦争』。そして再び登場するフェジテの華麗なる魔導探偵(笑)ロザリー=デイテート、その活躍を描く『魔導探偵ロザリーの事件簿 無謀編』。人気を博した傑作短編を同時収録!そして―「貴女に託すわ…私が誇りに思うイグナイトの名を」魔導の名門・イグナイトの次期当主イヴ=イグナイト。彼女の知られざる過去もついに明らかに。

イヴが実質メインだと思しき本編の最新刊を前に、どうやらイヴの過去編があるらしいこの6巻を先に履修しておかないと、という事でここしばらく積んでいた【追想日誌(メモリーレコード)】を崩してこの6巻まで到達。いやね、本編16巻読んでいたらいきなり知らないイグナイト家のお姉さんが出てきて、誰よこれ!? と、なったんで、これ短編集の方も読んでおかないと、となってたんですよね。
お陰様で突然現れたリディア・イグナイトがどういう人物だったのかわかったわけですけれど、これ本巻読んだ後だったら彼女が本編に登場した時の印象全然違ったんだろうなあ。

と、短編の方はいつもの便利なレギュラー、セリカと教授がほぼお休み、という異色のラインナップながら面白さはさらに勝るという、ここまでシリーズ来るともうキャラが活き活きしていていいですねえ。



『お父様が見てる』
白猫のパパさんが、娘のデートをストーキングする、という展開だけなら馴染みのものだと思うんですけど、まさかのママさんご同伴の夫婦で、という展開にママさんはストッパー役なんですねわかります、と思ってみていたらまさかのママさん、ストッパーどころか何かある度にパパさんの脇腹にナイフぶっ刺してグイッとひねるトドメ役だったよ!
レナード氏、まさかの魔術講師時代に生徒に手を出していた案件発覚である。ママさん、マシンガンさながらの怒涛のパパさんの過去へのアウト判定、笑った笑った。そりゃ、手を出された本人ですもんね。パパさんがグレンにダメ出しするたびに、貴方の時はもっと酷かったですけどね、とばかりにニコニコと指摘されていく黒歴史の数々に、レナード氏完全沈黙である。娘のデート覗きながらここまでボコボコにされるパパさん、はじめてみたよ。
しかしこれ、どう言い繕ってもパパさん、グレンのこと一ミリも非難できないんですけどっ。
とまあ白猫パパとママの方にばかり目がいってしまうデート回でしたけど、白猫パパのプレゼント探しという名目とはいえ、何気にグレンと白猫の雰囲気とても自然でお似合いなんだよなあ。


『名無しの反転ルミア』
悪堕ちルミナ、と見せかけたナムルスのセンスが爆発する回。単にいつも外から見ているばかりなのが寂しくなったナムルスがルミナの体を借りてグレンたちと一緒の日常を体験する、というだけの話しだったはずなのに、ナムルスの訳の分からんファッションセンスと女王様プレイのおかげでまるでルミナが悪堕ちしてしまったかのようになって、学園が阿鼻叫喚に包まれるという。
クールで頼りがいのあるキャライメージ……は、本編でもあんまりなかったか。やたらとチョロいツンデレムーヴを本編でもカマしていたけれど、さらにド級のポンコツ属性までここまで見せてくれるとは。あと、嫌い嫌いと言いながらこの娘、ルミアの事好きすぎである。


『仮病看病☆大戦争』
この教師、薬まで使ってガチで仮病使ってサボりやがったw
ロクでなしの面目躍如である。いや、まじで家でダラダラ過ごしたいだけで、そこまでするか、と。
……うん、まあわからなくもないけれど。休みたい時は休みたいよね。ただそのために生徒の前で急病のふりをして本気で心配させたのはアウトですね。システィが怒るのも無理はなく。
ただ、気づいたシルフィもさることながら、仮病をつかうグレンを見て本当の風邪の前兆症状を見抜いていて本気で看病しにくるルミアさんもやはり侮れません。


『魔導探偵ロザリーの事件簿 無謀編』
名探偵の要素とは推理力云々じゃなくて、事件そのものにぶちあたる引きの強さかー。まず事件を見過ごしてしまったら、推理も解決もあったもんじゃあないですもんなあ。
もっとも、ロザリーの場合はグレンが助手についていないとせっかく事件にぶち当たっても解決能力皆無なので、ほぼグレンに丸投げ、というのがなんだかなあ、という所ですけれど。
とはいえこれ、結局システィのお屋敷侵入編、みたいになってて、システィ、ルミア、リィエルの三人娘の家での様子をグレンが覗き見てしまう、みたいな話になっとるやないけ。


『炎を継ぐ者』
徹頭徹尾、イグナイト卿がクズ・オブ・クズすぎてドン引きである。
先代イグナイト卿、どういう教育施したんだ、この男に。さすがにちょっと歪みすぎじゃあなかろうか、まともじゃないぞ。長姉リディアには尊敬されていたみたいだけれど、息子の教育をここまで過たせた廉は無視できないですよ。
イヴもこれ、酷い境遇じゃないですか。これを見ていると、むしろよくあれだけマトモに育ったな、というふうにしか見えなくなってくる。それもこれも、リディアという姉がいたからであり、イヴがイグナイトに拘るのは父親ではなく姉の愛情があったから、というのはよくわかったのだけれど。
それで真のイグナイトを目指しておきながら、結局最初の志を忘れてしまって父親の劣化イグナイトに成り果ててたの本末転倒すぎて、さすがイヴさん、というほか無い。
まあ父親のプレッシャー、のみならず呪詛での強迫で常に圧迫を受け続けていたのを思えば多分に同情の余地もあるのでしょうが。何気にセラの一件を除けば一線を越えたことはないようですし、セラの一件も援軍を「送れなかった」という方が正しいですしね。

ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード)5 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード)5】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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魔術の失敗で、システィーナがグレンの飼い猫に!?―『猫になった白猫』。惚れ薬によってルミアが、全校生徒から追い回されて!?―『勃発、愛の天使戦争』。あんなに好きだったのに…どうして苺タルトはリィエルを裏切ってしまったのか―『リィエル捕獲大作戦』。そして短編集初主演!特務分室室長時代、イヴの華麗なる日々(笑)を描く『室長サマの憂鬱』。ドラゴンマガジン誌上の大人気エピソード四つを収録!そして―「…人の善悪を、人が推し量ってはならないよ、グレン」それは、グレンとジャティスが同僚であった頃。それぞれの正義を争う因縁の秘話が、ついに解禁―!


『勃発、愛の天使戦争』
短編集ではほぼ皆勤のオーフェル教授。毎回、この人の巻き起こす騒動のお話があるんだが、よくまあ手を変え品を変えいろんなトラブル引き起こせるもので。教授の万能性に頼り過ぎじゃないですか? と、言いたいところだけれど、それだけキャラがハマってしまったんだろうなあ。
惚れ薬ネタはだいたい男がひっ被ってえらい目にあうのだけれど、今回はルミアが浴びてしまい異性同性問わずに追いかけ回されるはめに。いやこれ、真面目な話暴徒に捕まえられてたらルミアさん、18禁な目にあってたんじゃないでしょうかい。
何気にシスティにヒロインレース抜かれ始めた上にセリカやイヴという別方面からの突き上げもあって存在感が薄れだしていたルミアが、自分の気持ちを再自覚する話でもありました。


『室長さまの憂鬱』
グレンが辞めたあと、補充人員もなく人手不足のまま仕事量だけは減らず、どんどん追い詰められていくイヴ室長の憂鬱、どころじゃないドタバタ劇。
真面目に仕事してそうなアルベルトが、他に負けず劣らずの自覚なきトラブルメーカーで、やたらめったらイヴにばかり問題児しかいない部下どものやらかしの負担負債が押し寄せて、えらい目に遭うイヴさん。
頭抱えて、無茶苦茶しでかす周りに酷い目にあわされて泣きながら喚き散らすの、それグレンとかぶってますから、イヴさん。
作者さんの傾向としてお気に入りはついつい酷い目にあわせてしまうドSなところがあるように見受けられるので、イヴのその後の躍進のはじまりがこのあたりにはあったのかも。
あと、こんな問題児どもの管理から解き放たれたことが、先生になってイヴが精神的に解放された理由の一つだったんじゃないだろうか。実家の圧から解放されただけではなかったんじゃないの?
あの連中と比べると、生徒たちは可愛いもんですしねえ。


『猫になった白猫』
このタイトルわりと好きだなあ。というわけで、システィーナが変身魔法で白猫になってしまい、下に戻れなくなったところ、なんやかんやで正体を知らないグレン先生に引き取られて、めっちゃ猫可愛がりされながら飼われてしまうお話。
わりとネコを満喫、というかグレンに飼われるのを満喫していたようなシスティさん。意外とせっせと手をかけてネコの面倒見るグレン先生に愛でられて、この女絶対デレデレしていたよ。


『リィエル捕獲大作戦』
リィエルもリィエルでこうしてみると猫っぽいなあ。虫歯になったリィエルが、治療でガリガリ削られた時の痛みにびっくりして逃げ出してしまい、みんなでそれを追い回すお話。
ガチ泣きのリィエルって、リィエル回の時以来なんじゃないだろうか。それでもまあリィエルを追いかけ回すだけならまだ大騒ぎですんだのに、それを致命的な大騒動に引き上げてしまうのが短編集のセリカさんで……。


『THE JUSTICE』
正義のテロリスト、ジャティスの特務室時代の話であり、彼がそれまで見下していたグレンを逆に見込んでしまうお話。本編ではやたらとグレンに入れ込んでいるけれど、その発端となった話ですな。
しかしこの男、特務室時代からやってること何も変わってないじゃないか。公僕だからと全く自重してないやりたい放題だし。イヴはジャティスがイグナイト卿のイチオシだから、と余計な手出しもできないままで、ってイグナイト卿やっぱり見る目とかないんじゃないの、あのおっさん。
100回中99回失敗する任務で常に最初にただ一度の成功する一回を引き当てる男、みたいな事を言われていたグレン。いやなんでそんな失敗確定みたいな任務ばっかりやらされてるんだこいつ、という疑問を当のグレンは全然抱いてなかったわけで。こいつ、特務室時代余裕なさすぎだろう。
でもその余裕の無さこそが、能力の低さを補うだけの必死さと運だけではどうにもならない事態を乗り越える狂気に近い自己保全を考えない一手を手繰り寄せていたわけで、彼が生き残れた要因でもあったのかもしれない。それをジャティスに見込まれてしまった、とも言えるのだろうけど。
ちなみにジャティスの名前、しばらく本気でジャスティスだと勘違いして思いこんでいました。すげえまんまな名前名乗ってんだなこいつ、と思っててごめんね。



ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード) 4 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード) 4】 羊太郎/三嶋 くろね   富士見ファンタジア文庫

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ホームレス学院生・リイエルの波乱万丈な日常とは!?―『とある少女の素行調査』。グレンに金髪美少女な隠し子発覚!?―『嵐の幼天使』。医務室の女神、学院きっての法医術のエキスパートが登場!―『病弱女神セシリアさん』。今日もまた、ロクでなしが洞窟探索の授業を利用して丸儲け!?―『狂王の試練』。新キャラクターも加わり、人気キャラクターたちの驚愕なエピソードが明らかに!?そして―「大丈夫だよ。僕は絶対に、アルベルト=フレイザーみたいにはならない」遠い未来。伝説となって残る復讐に生きた男・アルベルト=フレイザー。その想いを継いだ少年の、時代を超えた物語―。

リィエル、どう考えても自活できそうにないんだけれど、これ見ると意外と生活能力あるんだろうか。自然の中でサバイバル生活、ならいくらでも想像できたのだけれど、意外と人間社会の中でも逞しく生きてるんですよね。結構、お金もちゃんと稼いでましたし。ただ普通の年頃の女の子の生き方では決してないので、その意味ではシルフィとルミアの屋敷に一緒に住み込むという選択肢は良かったんじゃないかと。ただ、いたれりつくせりの貴族令嬢の生活はリィエルから家事能力を養う余地なくしそう。基本、ペットタイプだしなあ、この娘。

なにかあると勝手に騒動を引き起こしてくれる短編コメディでは欠かせないバイプレイヤー・セリカ。基本的に何でもありで何でも出来る魔女の中の魔女なだけに、色々と制約が多い本編と違って本当にやりたい放題やってもギャグコメディ時空で纏めてしまえる短編だと本気でやりたい放題してしまう便利で困った人である。
表紙絵からてっきり間違って子供化してしまってみんなにお世話されるのかと思ったら、子供化はしたけれど思いっきり自力でだしちゃんと記憶も残ってて、自称でロリカと名乗って完全に自覚的に騒動を引き起こす始末。それも、息子のグレンが最近生徒ばかりに集中してて自分に構ってくれないから子供になって構ってもらいにきた、といういやマジで子供か! というような動機でしたし。このお母ちゃん、息子好きすぎである。
同じ理由で今度は遺跡を大改良してグレンを引きずり込んで遊んでる始末だし。これで暇つぶしとか別の研究の合間に最近没交渉な息子にちょっと絡んでみた、くらいの可愛い理由だったり上からの余裕ある態度ならまだイイのだけれど、セリカてばガチだからなあ。本気で構ってくれないと死ぬ!という勢いでむしゃぶりついてくる勢いだからなあ。ダメ親の極みの一つである。そもそもニートしてたグレンを、無理やり就職させたのセリカなのに、いざ働きだして構ってくれなくなったらこれだものw

さて、注目はやはり巻末の中編でありました。最初、登場人物が全然見覚えない人たちだったので、なんか別の時代のお話か作中作、本編の中に出てくる小説かなにかの話かとも疑いながら読んでいたのですが、アルベルト・フレイザーの伝記の話が出てきてようやく誰の話か悟った次第。
ってかアルベルト、あれ偽名だったのか。それも、そのまま過去の英雄の名前捩りもせず名乗ってたのかー。まあ理由は全然浮ついたものではなく、むしろ重すぎるくらい重くて過去の英雄との自己同一視も、その生き様への強烈な共感とその末路への仄暗い期待を感じさせるものでしたし。
しかし、彼の元々の性格ってここまで別人めいたものだったのか。過去からは今のアルベルトってまるで想起できない性格でしたし。しかし、そんな彼が今のアルベルトになる、成り果ててしまうまでに人格が形成されていくきっかけとなるエピソードは、説得力たっぷりで大いに納得させられるんですよね。むしろ、あれほど酷薄に見えるほど現実主義で合理主義で不必要を切り捨てることに躊躇を憶えないだろう在り方の一方で、根底に人に対する優しさ、誰であろうと見捨てない情理が根付いているの、相反する二面性が不思議と安定して備わっていて、だからこそ冷たいようで心から信頼を置ける人柄を感じさせられた理由がわかって、得心がいったくらいなんですよね。
そして、アルベルトがグレンという友人にどのような重きをなしていたのかも。自分をアルベルトと名乗った時点で、強烈にその末路も意識していたはず。その彼にとって友人という枠は特別であり、グレンの存在は運命に近しいものだと感じていても不思議ではなかったはず。
ただ、その運命であったグレンこそが、アルベルトが自らに幻視していただろうその幕引きを、運命を覆す存在であった、というのは非常に面白い。
しかし、彼の過去というのはホント圧巻というほど壮絶すぎて、ちょっと同僚たちの中でも頭一つ抜けて悲惨だったんじゃないだろうか。これ、色々と全部片付いたあとに彼は幸せになれるんでしょうかね。なって欲しいなあ、でないと彼のために魂を使い尽くした人たちの想いが報われない。


ロクでなし魔術講師と追想日誌 3 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌 3】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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グレンが学生時代の後輩と、フェジテの事件を万事解決!?―『魔導探偵ロザリーの事件簿』。学院の体験学習会に、魔術学院の誇る変態講師陣が登壇!―『魔術学院わくわく体験学習会』。学院のストライキに生徒会長・リゼが暴動鎮圧へ動く!―『生徒会長と混沌議事録』。グレンが想い人(!?)へのプレゼントのためブラックマーケットへ参加!?―『誰がために金貨はなる』。そんなロクでなしな日々が綴られる!そして―「私は…好きだよ。グレン君の夢」正義の魔法使いになろうと足掻くグレンと、それを支えるセラ。二人の足跡を辿る軍属時代のエピソードがついに解禁!

本編の方はもうクライマックス近くまで進んでしまっているのですが、そう言えば短編集のホウを全然読み進めていなかったのでここらで挽回していかないと。本編との時間ギャップがかなり出てしまっているので、本編での人間関係の変化とこっちでの様子がだいぶ違うんですよね。
イヴなんぞ、この頃まだただ野心剥き出しの頭おかしい娘さんだし、白猫はまだまだツンツンしてるし。

【魔導探偵ロザリーの事件簿】
この作品、グレン以外にも立派なロクでなしがちょっと沢山居すぎやしないだろうか。学生時代の後輩ロザリー。グレンよりも魔術の才能無い、という時点で終わっているのに生活力ないのに趣味に生きようとして困窮死しかけてたり、交渉力も観察力も計画性もないのに探偵やってたり、立ち居振る舞いがひたすら貴族ムーブの上から目線だったり、とダメな部分しかないじゃないか。
むしろ、わりと何でもスラスラと熟せてしまうグレンが超有能に見えてしまう。というかグレンってホントにほぼほぼなんでも出来るんだよなあ。こうしてみると探偵も密偵もその分野に集中すれば簡単に名をあげられそうで、生きていく分には苦労なさそう。何気に「ヒモ」の才能もありそうだし。


【魔術学園わくわく体験学習会】
この頃にはグレンも教師として前向きになってた頃なのか。最初の頃なら魔術に対して絶望していて、魔術に対して目をキラキラさせているような魔術学園入学希望者なんぞ、腐った魚の眼で見てそうなものでしたけど。
それにしても、この学園、ろくな教師いないなホント。それらを出汁にして、最後にいい所取りするグレンもまあ大概な気もしますけど。でも、教師としても有能なんだよなあ、この男。


【生徒会長と混沌議事録】
本編でも才知に長け有能さを損なう事無く終盤まで準レギュラーとして活躍し続けているリゼ生徒会長のメイン回。本編ではあんまりサブキャラの単体エピソードが描かれないわりに、一人ひとりイキイキと描かれていたのは、ちゃんと短編集で一人ひとり時間を割いてこうやって丁寧に個人エピソードが描かれていたからなのか。
品行方正でありつつ、事前の裏交渉や寝技も使ってきっちり相手には止めを刺すという清濁併せ持つこの手の資質はなかなかいないスキルの持ち主なだけに、次代の生徒会長は誰がやるにしても苦労しそう。いや、リゼさんの場合はきっちり引き継ぎもやってくれて後継が困らないようにしてそうですけど。にしても、この話読まなかったらリゼ生徒会長の身元とか知らんまんまだったよなあ。
ヤダ怖い人っじゃないですかーw


【誰がために金貨はなる】
オーウェル博士の作るものって、どれも一作品のエンディングに至るための鍵になるようなアイテムだったり、逆に最終戦争を引き起こすようなとんでもない代物だったり、物語の根幹を担いそうなとんでもないものばかりだったりするんだけど、どうやったらそんなものをどれもしょうもない目的で作り出せてしまうんだろう。そしてその価値も自分で理解せずに平気でぶっ壊せるんだろうw
今まで彼が作ったものを保存できてたら、このロクでなし魔術講師シリーズってわりとイージーに世界に危機もクリアできそうな気がするんだけどw
そして、そんな彼の反則品を元手にしたとはいえ、わりと簡単に大金稼いでしまうグレン。だからこの主人公、ただ生きていくだけなら本当に簡単に何でも熟せてしまいすぎる。大金稼ぐのも、ひょいひょいっとやってのけちゃってるわけですからね。その金を惜しげもなく、こういう事につぎ込めてしまうあたりに、彼の金銭に対する価値観が伺えるわけですけど。そのわりに、狡っ辛い真似して小金拾い集めるような真似ばかりしているのは、才能の無駄遣いしてるよなあ、と。


【White Dog】
白犬、というタイトルの通りグレンの中の消せない傷であるセラとのお話。グレンの過去編、特務分室づとめの初期の頃のお話。特務分室で正義の味方の現実を思い知らされだした頃、なわけだけれど、もう初期の段階で既にグレンくんってば精神的に一杯一杯じゃないですかー。理想と現実とのギャップに悩み苦しみ、という段階を既に突破してしまって、溺れて水を飲み沈んでいく体を必死にバタつかせて辛うじて浮き沈みさせているような状況で、既に自分も周りも省みる余裕を無くしているような有様。
これ、普通にもう持たないですよね。これだけ精神摩耗してたら任務中にミスって殉職するのも時間の問題。という限界に達していたグレンを、救ってしまったのがセラだったわけだ。
救って、まだまだ頑張れる、理想を手放さないで、と膝を付きかけていた彼を支えて立たせて背中を押したのがセラだったわけだ。理想以外にすがるものがなくて、もう諦めかけていた彼を救ってしまった。そりゃ、グレンにとってセラの存在は絶対的なものになってしまいますわ。彼女の存在が、グレンにとっての拠り所になってしまった。ドロップアウトも出来ずに、前に進み続けないといけない理由になってしまった。
なるほど、作者の人がわざわざ彼女をグレンにとっての福音であり救いであり、呪いでもある、と語るわけだ。
これ、よくセラが居なくなった時にグレン、心折れただけで済みましたね。これ見てると、心折れるだけですまなくて精神的に再起不能になってもおかしくなかったんじゃなかろうか。
セリカ、相当頑張って息子のケアに務めたんだろうなあ、これ。どれだけダダ甘やかせたなだろう。


この素晴らしい世界に祝福を! 17.この冒険者たちに祝福を! ★★★★☆  



【この素晴らしい世界に祝福を! 17.この冒険者たちに祝福を!】 暁 なつめ/三嶋 くろね 角川スニーカー文庫

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国民的異世界コメディ、遂に完結!

「何の力も無かった最弱職の少年がたった一人で魔王を倒す。……そっちの方が格好良いじゃないですか!」
大量のマナタイトを使用し、めぐみんの爆裂魔法で魔王城の結界を破ったカズマ一行。アクア達とも合流し、目的を果たしたとばかりに引き返そうする面々に対してカズマは――「魔王に掛かった賞金って、いくらぐらいなんだろうな?」
根性なしのニートは、遂に魔王との最終決戦へ挑む!! カズマ・アクア・めぐみん・ダクネス―――アクセルが誇る問題児が愉快な仲間と共に魔王城に集結!! 国民的人気の異世界コメディ「このすば」、堂々完結!

30巻とか50巻までダラダラ続いてくれても全然構わなかったのに、ついに終わってしまうのか、このすばよ! 国民的異世界コメディという冠、誇張じゃなく異世界ファンタジー世界におけるコメディとしては代表作となったんじゃないだろうか。最後の最後までブレることなく「このすば!」でした。掛け値無しに最後の最後までハチャメチャで楽しい時間を過ごさせて貰った。本当に楽しい作品だった。
考えてみると、カズマってギャンブルの街とかアクセル教徒の街とか紅魔族の村とか……わりと遠出してるな。ともあれ、最後まで新人が集まる街アクセルを拠点としたまま、旅行はしても旅には出ず、いきなりスタート地点からラスボスの居城魔王城へと攻め込んだことになるんですね、これは酷いw
いや、ウェブ版読んでたときもこれは酷い、と思ったけれどめぐみんに爆裂魔法際限なく連打させて魔王城の結界ぶち破るのは痛快でしたわ。カズマが時々見せてくれる大金の使い方というのは後腐れなくていいんですよね、実にカッコいいお金の使い方ですわ。
その一方で、魔王城に侵入すればみんなが大バトル繰り広げてる影で、マント被さって隅で小さくなってたりするのですが。転移罠に引っかかって、アクアと二人でマント被って部屋の隅で小さくなってる姿、容易に画像映像が浮かんできすぎて吹いてしまいましたがな。
それでいて、訳のわからん地味なスキルを駆使しまくって、卑劣卑怯の評判なんのそので格上だろうと易易とぶち倒して、逃げまくる姿は余人では真似できません。王城でも、その何してくるかわからないやりたい放題プリはガチで恐れられてましたけれど、魔王城に詰めてるようなラスダン級の魔物たち相手ですら恐慌に追い込むのですから、怖いですわカズマさん。
でも、あっさり死ぬんですよねw
それはそれとして、エリス様もいい加減カズマが死ぬのに慣れすぎてて、一度死んだヒト何度も生き返らすの反則、というルールもうエリス様当人が忘れてるでしょう。無視してるんじゃなくて、普通に忘れてるでしょうこれw
でも、エリス様ってば本当にいい事言うのでマジ女神です。でもそれでカズマがガチで復活できない死を迎えてしまったらどうするんだ、エリス様責任重大じゃないですかー、と思ってたらちゃんと手段は用意してくれたあたり、エリス様抜け目ないですわー。惚れますねー。
対魔王戦は、まさかあのスキル、ネタじゃなかったのか、と思わせてくれるような使い方もあり、攻守交代が完全にターン制で、あの攻撃受ける側がひたすら逃げ惑う行ったり来たりはベタなコメディすぎて、逆に嬉しくなるほどでした。ほんと、隅から隅まで片っ端から「このすば!」でしたわ。
魔王の娘とか、アイリスがどんな活躍してたのか、結局嫁はめぐみんにするのか、エリス様への求婚がマジになってしまうのか、アイリスとの間に結ばれてる婚約フラグとかどうするんだ、というヒロインレースについても決着つかずですけれど、なにはともあれこれで一区切り。
実はまだまだ続くんじゃ、とばかりにスピンオフどころじゃなくセカンド・シーズンがはじまっても全然不思議ではないのですけれど、というかそれを期待してしまうのですけれど、わりとガチで終わる雰囲気を醸し出しての締めでもあったので、とりあえずはコチラとしても拍手喝采で幕が降りていくのを見送りたいと思います。
近年、これだけ底抜けに笑えるギャグコメディ作品はありませんでした。まさに、素晴らしい作品でした。ああ、楽しかった♪


ロクでなし魔術講師と禁忌教典 16 ★★★★  



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 16】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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魔術祭典の準決勝へと駒を進めたアルザーノ帝国代表選手団。日輪の国のメイン・ウィザード、サクヤとの出会いにより、システィーナは魔術師としての在り方―“汝望まば、他者の望みを炉にくべよ”つまりは、己が望みのために、他者の望みを踏みにじる覚悟を試され―一方、ついにアリシア三世の手記の解読を終えたグレンは、“ルミアの異能”、“天の智慧研究会”、“Project:Revive Life”、そして―禁忌教典の謎に至ろうとしていた。魔術師たちの希望と混沌。魔術祭典決勝を前に、世界を揺るがす前哨の火花が散る!

アリシア三世の手記の内容がちょっとヤバすぎた。あれこれ、ガチで世界が滅ぶ案件じゃないですか。それも、ただ魔王勢力に支配されるとか物理的に破壊される方向の滅びではなく、コズミックホラー案件じゃないですかー!? 外宇宙から現れる狂気の向こう側にいるアレじゃないですかー!
これ、あかんやつやー!
いや、そう言えば前から外宇宙の邪神がどうの、とか言ってた気がしますけど、てっきりせいぜいドラクエの魔王様級の敵を評して大げさに邪神とか、何となくスケール感を出すために宇宙とかいう単語を出しているとばかり思ってて、大して実感らしいものがなかったんですよね。
それが今回、アリシア三世の手記の解読をきっかけにして、一気にこれまで謎とされていた歴史上のあれこれの真実や不明だった部分が明らかになって、世界観の全貌を現すピースが粗方盤上にぶち撒けられたわけですよ。突然、ドバーーっと情報がぶち撒けられて、現在という名の狭いお皿の上に被されていたクロッシュ、あのボウルをひっくり返したような蓋。あれがパカッとあけられて、この物語世界のすべてが広がるテーブルの全貌が視界の前に現れたような、目の前に広がっていた霧が突風によって吹き払われてしまったような。
おおう、畳み掛けてきよったぞ!?
まだセリカの正体など、謎のままの情報は幾つもあるものの、どうしてルミアのような異能者が排斥されるのかとか、アリシア三世の真意とか、つまるところ「敵」の正体など重要な情報のほとんどが明かされ、今まで断線していた幾つものラインが一気に繋がっていったんですね。

そうか、これが。これが本当の【ロクでなし魔術講師と禁忌教典】という物語の世界観だったのか!
全然、思ってたのとスケールからして違ってたんですけど。いや、そもそも登場人物たちの殆どがこの世界の本質についていけていないんですよね。彼らの見ている世界の範囲はとても狭く、自分の認識、価値観、知識の範疇にしかなく、その範囲の中でイス取りゲームをしていたに過ぎない。
戦っている盤上がそもそも違ったわけだ。今まで読者の側の自分も、彼らの見ている範疇での舞台でこの世界観を認識していたがために、今回度肝を抜かれてしまった、とも言えるし。
ラストの国際会議で様々な思惑が錯綜し、自分の野望、希望を叶えんと策謀陰謀が振り絞られて結実しようとしたのが、ジャティスの登場によって全部盤面がひっくり返されてしまったのも、彼らと本物の黒幕たちとではステージそのものが違っていたがために、その本物がオモテにその存在を示しただけでアリシア女王の願いもイグナイトの野望も王国の狂信も天の智慧研究会の暗躍も、意味をなくしてしまったわけだ。彼らの戦っていた盤面は、あくまでこの世界の奥底に潜む本物の盤面の上っ面の片隅に乗っかっているだけの代物であった以上、その深淵から本物の盤面が浮上してきた今、あえなく倒れてその上に乗っていた駒たちは無為に転がり落ちていくしかない。
そういう話だったんじゃないだろうか、これ。
ジャティスは、まさにその深淵を覗いて狂ったのだろうか。或いはアリシア三世と同類なのか。それでも、彼は深淵の真実に足を踏み入れ、その盤上にあがろうとしている人物であったのでしょう。だからこそ、彼はあらゆるプレイヤーの上に立てた。
一方で、グレンもまたその深淵の真実に図らずもどっぷりと首を突っ込んでいる。アリシア三世の手記を見たこともそうなんだけれど、ナムルスと繋がっているように彼こそが魔王の正対位置に居ると言っていい。そして、システィーナ、ルミア、リィエルもまたこの邪神の侵攻に対して、必然的にグレンの傍らに並べられる重要なピースとして位置づけられている、のか。
まだセリカの正体とか、イグナイトの後継となったリディアが妙な雰囲気をまとっていることなど、謎も多いのだけれど、システィーナの一族の宿命、ルミアの血に刻まれた破滅、リィエルの覚醒など、味方側にも英傑の駒が揃いつつある感がビシビシ描かれてるんですよね。思えば、今回の大会ってシスティーナを完成させるための舞台だったと言えますし、若き実力者たちを集結させるための研磨の場であったとも言えますし。
いずれにしても、ラストの展開によって一気に話は加速し、クライマックス突入は必定でしょう。さあ、盛り上がってきたぞ。






この素晴らしい世界に祝福を! よりみち! ★★★☆   



【この素晴らしい世界に祝福を! よりみち!】 暁 なつめ/三嶋 くろね 角川スニーカー文庫

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謎の連続爆発事件の容疑者にされためぐみんが真犯人を捜し出す!!―『アクセルの爆裂探偵』。アクセルの街で世直しを繰り返すも、ことごとくアクア達に邪魔されるクリスのお話。―『世にも幸運な銀髪少女』。視察にやってきた冒険者ギルドの上層部が、カズマ達を名指しで呼び出し!?―『アクセルの問題児達』…アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」Blu‐ray&DVD特典小説に、書き下ろしを追加したシリーズ初の短編集!本編からのよりみち―文庫未収録の全8編!

今までのも短編集みたいなものもあったんじゃね? と、思ったら特典小説などを集めたものなのか。
表紙のめぐみん、胸元緩めでなんかエロい娘さんになっちゃって。

「アクセルのアークプリースト」
まだダクネスがララティーナだと知られてない頃のお話でした。最近、貴族としての権力を振るうことに躊躇なくなってきたダクネスだけど、初期からわりと図らずにして結果的にですが貴族の地位振りかざしてしまっているのがよくわかる。
あとこの国の貴族はまともな奴いないのか!? まともに見えても死後に正体を晒してしまうゆるさw

「アクセルの爆裂探偵」
街の周辺で頻発する無差別爆発事件の犯人として疑われてしまうめぐみん。真犯人を探して捜査していくうちにどんどん明らかになる、めぐみんの街での凶状。狂犬か! こいつの場合だけは、誤認逮捕でも捕まえていいんじゃないかしら? 特例で許されると思うぞ!?


「守りたいクルセイダー」
ダクネス、呪いによって弱体化、筋力低下でひ弱でか弱い女性になってしまうの巻。タイトル通り、弱くなったダクネスはどこか儚い深窓の令嬢のような趣きになってしまって、男女問わず異様に庇護欲を掻き立てられる女性になってしまう。何気に、本作でもっともヒロイン力が高いキャラってこの弱体化ララティーナさまなんじゃないだろうか、というくらい真ヒロインの風格が。実際かわいい。
ただ、自分でもちやほやされる事に若干味をしめてるあたりがダクネスである。


「世にも幸運な銀髪少女」
クリスって運高めという設定だけれど、この娘が運の良い描写って特に見たこと無い気がするぞ!? だいたい、カズマたちと絡んでひどい目にあっている節があるし。この頃はまだクリスの正体がエリス様だというのがバレてなかったんか。本人えらい目にあってもなんだかんだと楽しそうなのでいいのだけど。アクアと付き合ってるくらいだからなあ、物好きだよなあエリスさまも。


「不死の王になるために」
リッチーってやっぱり骸骨ですよね、基本。フレッシュリッチーとか希少だよなあ、ウィズは。さすがにそのへんの真祖でもない野良ヴァンパイアとは不死王と張り合うの格違いとは思うけど、ムキになるあたりに大物感が欠けてしまってる。人間の頃のほうが強者感満載だったよねえ。
今のほうが愛嬌あって可愛らしいけど。

「魔王の幹部は忙しい」
おんぶ紐って、めぐみん的にはアウトなのか。いやまあ確かに実物見ると、赤ちゃん向けですね、年頃の女の子がこれで背負われてたら、恥ずかしいどころじゃないですねw
あとバニル、男の子相手にそれはさすがにアウトw ガチ討伐されかねないw


「偽物注意!」
カズマたちのパチもんパーティ襲来の件について。ダイの大冒険とかでもあったけれど、主人公パーティの安いパチもんみたいなのが現れて、詐欺みたいな真似をして回るというネタは古くからの定番だけど……本作の場合、圧倒的にカズマたちの方がパチもんっぽい!
現れた似たものパーティは、名前も普通だし在り方も真面目だし、完全にカズマたちの方が偽物! しかも、本物を真似て詐欺してそうなパチもんくさい!
と、ここまでならまだあるパターンなのかもしれないけど、本作の場合はカズマたちそのキャラこそパチもんなくせに実力だけはやたらあるもんだから、やたらややこしい事になっている。
「やたら偽物っぽいくせに実力だけは本物の、しかしやってる事はパチもんくさい本物パーティ」という、なんだこれ。


「アクセルの問題児達」
アクセルに高レベル冒険者がたまってしまって、他の地域が手薄になってる問題w
これもう、国からお金出してサキュバス支店を各地に出店したら解決するんじゃないかな?
動こうとしない男冒険者に巻き込まれて動けなくなってる女性冒険者たちがちと不憫である。

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 15 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 15】 羊太郎 /三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

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「なんで!俺が!こいつらの総監督を務めにゃならんのよ!?」
帝国代表選抜会を終え、いよいよ迫る魔術祭典。何の因果か、総監督を務めることになったグレン。メイン・ウィザードを勝ち取ったシスティーナと訪れたのは自由都市ミラーノ!平和の祭典に相応しい地に足を踏み入れた帝国代表は、かつてない大舞台で各国代表と激突する!一方、この祭典を台無しにし、戦争をもたらそうとする刺客に気付いたグレンは、教え子たちの思いを守るため、自身も戦いに乗り出して…
「へっ!裏魔術祭典・大開催!ってわけだな」
天使と吸血鬼。芸術の都に高らかに悲劇の歌声は響く―。

ついに世界大会、というわけでなんか中東っぽい所とか日本っぽい所などからもゾクゾクと強豪が登場するのだけれど、本作の文明レベルってどれくらいでしたっけ? 飛行機でもないと、あんまり遠い国からは遠すぎて自国から目的地まで数ヶ月とか半年とか掛かっちゃいそうなんだけど、とどうでもいい所が心配になってしまった。いやこの世界の地理とかよくわかんないんですけどね、一応みんな北セルフォード大陸に存在する国になるのかしら。それなら、距離的にはそこまで離れていない? 密林国家とか砂漠の国とか日輪の国とかこれだけ環境や文化が異なっている国が各所に成り立っているというのは面白いものですけれど。
しかし、これだけ強力なメンツが各国に揃っているとなると、システィと同レベルの術士がもうひとりくらい居ても良かったんじゃないか、と思えてくる。具体的には、エレンの能力リセットしなくても良かったんじゃね? というくらいのレベルの高さで。ナンバー2のレヴィンがもうちょっとでも強かったらなあ。というか、通常彼くらいの力量でも学生レベルでは突出しているはずなんですけどね。あまりにシスティが強くなりすぎちゃってるんだよなあ。学生レベルどころか、実戦レベル、魔導士の一流という枠をすら逸脱しはじめている。
システィがもう現段階で特務分室のナンバーズに加入しても大丈夫なんじゃね? というレベルになっちゃってる件について。これが単なる才能ではなく、システィの不断の努力によるものだというのをこの長いシリーズを通じて、読んでいるこっちもよくわかっているだけになんかもう彼女がバリバリに活躍するたびに感慨深く感じてしまうんですよね。
とはいえ、なんの柵もなくシスティ自身が憧れていた魔術祭典に挑戦できれば御の字なんだけれど、政治的な思惑が介在し余計な妨害が色々と入り込むことに。帝国の代表選考会でも余計な茶々が入り続けていたこともありますから、ほんとシスティには思いっきりなんの憂いもなく試合に挑める環境を与えてやってほしいものですけれど、なかなかそうもいかないんだろうなあ。
それでも、何とかその願いを叶えるため、生徒たちを守るために裏で頑張るグレン先生とイヴ先生。こういう時にルミアが一緒に連れ回せるくらいに頼もしくなった、というのはこれまた彼女は彼女でシスティに負けずに成長してるのだなあ、と実感させられる。システィのように華々しい表舞台には立てない身の上ですけれど、献身的にグレンをサポートし続けるその姿はまさに内助の功。かつて、ただ守られるだけのお姫様だった頃と比べれば、その能力もさることながら荒事に一緒に連れて行ってもらえるくらいにはグレンから信頼もされているんですよねえ。
それにもまして、頼りになるイヴ先生。この人、ほんと実家のくびきから解き放たれて自由になった今、性格的にも能力的にも頼もしいなんてもんじゃなくなってまあ。グレンが度々、前のイヴと同一人物かこいつ? と真剣に首を傾げるくらいには化けてしまっているわけで。いやー、一年生のマリアいわくシスティはグレンの相棒みたいな、とか言ってましたけれど、現状だとイヴが相棒枠にどんと鎮座して不動の安定感なんだよなあ、これ。ここに割って入るのは結構厳しいぞ、システィ。
さて、長年帝国と敵対関係にあった宗教国家レザリア王国。一方的に敵、というわけではなく、その内側では帝国との融和派と敵対派が激しくしのぎを削っている様子で、むしろ意見が纏まっていない現状が先の展開を予想しづらくしてるんですよね。マリアがどうやら重要なポディションにいるみたいなんだけれど、それがどういう意味合いを持っているのか今の所まだ明らかになっていませんし。
そんでもって、例の正義の人も暗躍しているみたいだし、帝国も国内でイグナイト家が蠢動しているみたいだし、結構同時多発的にいろんな思惑があちらこちらで暗躍しているものだから、一筋縄ではいかない錯綜具合にもなっているんだなあ、これ。

帝国代表の生徒たち、なかなか個性的な面々が揃ったものでこれはこれでほんと面白いメンバーになってるんだけれど、ギイブルくんが実にクレバーな活躍をしていてこいつなかなか美味しいポディション確保してますな。

シリーズ感想

この素晴らしい世界に祝福を! 16.脱走女神、ゴーホーム! ★★★★   



【この素晴らしい世界に祝福を! 16.脱走女神、ゴーホーム!】 暁 なつめ/三嶋 くろね  角川スニーカー文庫

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『追伸。探してください』
セレナが起こした騒動の後、手紙を残してアクアが家出した。マスコット的な存在であるアクアの家出によって、にわかに騒がしくなるアクセルの街。しかし、そんな状況にもかかわらず、カズマは『レベル1』であることを理由に追い掛けようともしなくて!?様子のおかしいカズマを気遣っためぐみん達に、原点にして宿敵であるジャイアントトード狩りに誘われ―そこでカズマは、誰も想像がつかないようなパワーアップ方法をひらめく!?
「留守番するのはもう止めだ!あのアホを追い掛けるぞ!」
ついに、カズマがチート獲得!?家出女神を追い掛ける16巻!
カズマって、レベル上がろうが下がろうが結局大して変わらないんじゃあ……。
そもそも、これまでだってレベル上がってたからステータス的に何か変わってたかというと特にそういうのなかったですしね。あえて言うなら、レベルを上げればそれだけスキルを取れてた、というだけで……なるほど、つまるところ彼の強みというのはスキルの多彩さとその応用力であるわけだから、レベルダウンを利用したスキル大量取得というのはそれはそれで強みになるのか。最も、彼の場合高レベルのスキルはそもそもちゃんと使えないみたいなので、結局低レベルスキルの使い方を発想力で勝負、ということになるんだろうけれど。

アクアが家出したお蔭で、特にトラブルが舞い込むこともなくなり、なんとなく落ち着いてしまうカズマたち。結局、毎回トラブル背負い込むことになる原因ってやっぱりアクアだったのかー! あの駄女神がいないとわりと平穏に過ごせてしまう、というのが実証されてしまった。
いやまあ、世間的には魔王軍の攻勢とかあったりして、落ち着いている場合でもないのだけれど。最近度々名前があがってる、いや名前は出てないんだけれど、魔王軍最強の将だという魔王の娘、今後登場する機会はあるんだろうか。何気にウェブ版では確か最終回まで王都の方に掛かりっきりで登場しなかったんですよねえ。
……カズマに関わると、セレナみたくひどい目にあうのは確定なだけに、それはそれであちらさんとしても幸いだった気もするのだけれど、書籍版だと登場しそうだし、そうなるとやっぱりひどい目に遭いそうな気がするなあ。

さて、今回は街ぐるみのカルト教団アクシズ教徒の本当のヤバさが伝わってくる回でもありました。もちろん、これまで出てきた分でも十分アレな集団であり、大変ご迷惑で厄介極まる関わり合いになりたくない人たちナンバーワンだったわけですけれど、その内実を見てしまうと……ガチでやべえ連中だというのが垣間見えてしまうわけで。
いつもの賑やかにバカやってテンションあげあげではしゃいでるアクシズ教徒たちが、一斉に真顔になって沈黙するシーンは背筋がゾクゾクしましたがなー。あ、うん、死ぬね、これは死んだね。
お世辞抜きで、絶賛この人たち狂信者ね。
まだエリス教徒相手の時はじゃれついているだけ、というのがよく分かる一幕でした。アクアのこと、そのバカさをイジって適当に雑に扱うのも全然気にしないのに、本当にアクアのことを虐げたり悪意をぶつけた場合には、絶対に許さないんですな、この人たち。アクアの扱いの基準が相当ゆるゆるなわりに、一線を越えると途端にガチになるところ、これ融通のきく狂信者というやつなんですかねえ。教祖のおっちゃんは生粋の変質者でしかない気がしますけど。あれでこの世界では有数の実力者なんだから、この世界やばいです。うん、実感としてヤバさが伝わる事例ですな。

しかし、アクアが居ないとなんとなく締まらないカズマのパーティー。蘇生できないから緊張感が増すのかというと、そういうわけでもないし、ダクネスがなんか間が持たなくて間女が強くなってしまっている気が。ウィズとバニルに連れられて挑んだ高難易度ダンジョンの最奥で、ダンジョンボスから譲ってもらった鎧をダクネスにプレゼントしてたけど、あれプレゼントというより出張先で買ってきた……買うどころかただで貰ってきたお土産品、という感じだったんですけれど、対してめぐみんへのプレゼントですよ。
気合が違いますよね、あれ。もう完全に勢い任せのノリ任せではあったものの、城をまるごと買えるような全財産を費やして、アクアの救出とか魔王城攻略とかの目的があるとは言えめぐみんの夢とも言える願いを叶えてあげよう、というんですからこれ実質プロポーズみたいなもんですよね。めぐみんからしたら、これ爆裂魔法にかけた人生の集大成みたいなもんですから、もう思い残すことないじゃないですか。
このカズマというオトコ、ほんと大金の使い所を弁えているというか、何だかんだと結果的に女に金貢いでるなー、とか思うんだけれど、ともかく必要な時にバーンと貯めてた金を使っちゃえるのはそれだけで大人物の類ではあるんだろうなあ。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)14 ★★★★   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)14】 】 羊太郎/三嶋 くろね  富士見ファンタジア文庫

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リィエルの一件を乗り込え、ようやく訪れた平穏。女王陛下の尽力により数十年ぶりに開催されることになった魔術祭典に、アルザーノ帝国魔術学院、聖リリィ魔術女学院、クライトス魔術学院―アルザーノ帝国の各地から有力生徒たちが結集する。
「世界の大舞台で魔術の腕を競い合ったお祖父様が見たという光景を、この眼で見たいんです!」
その中には、もちろんシスティーナの姿もあり―。帝国代表の覇を競う中、因縁の少女・エレン=クライトスと再会することになるのだが…。選抜会に潜む卑劣な陰謀、そして失われゆく自分たちの未来を解放するため、システィーナは天高く飛翔する!

白猫成長したなあ。魔術祭典の帝国代表選手を選抜するための国内大会、ということでシスティーナの大会での大活躍が描かれる回なのかと思ってたら……えらいまた変則ルートに。いやもう白猫が既に学生レベルを大きく逸脱する実力を持ち得ているのはわかっていました。仮にもアルベルトの助手を務めましたし、イヴにも認められて実戦にも参加して強敵をその手で下しているわけですから。それでも、正直ここまで名実ともに学生レベルではないとは思わなかった。もう学生しか出ない大会では白猫の舞台としては役不足なのか。
その意味では、既に白猫はもう完全にグレンやルミア、リェエルが在籍している暗部の領域に足を踏み入れているんですよね。本当の殺し合いを前にして怖くて身が竦んで何も出来ず泣いてしまっていた白猫はもう本当に過去になってしまったである。実力も精神的にも足りず届かず、親友や大切な人たちが関わっているだろう事件を前にしても、傍観者でいるしかなかったシスティーナ。余裕もなく自分を突き放す人たちに八つ当たりするしかなかったシスティーナ。そんなかつての彼女を覚えていれば、この巻で見せた彼女の結実は胸が震えるような感動がある。システィーナが見苦しくみっともなくのたうち回り、無様に喚き見れたものじゃない姿を晒しながら、それでも一歩一歩着実に学んで、技を身につけ、恐怖を乗り越えて戦いの場に身を投じ、自分を切り売りしながらグレンたちがいる場所に這いつくばりながら登ってきたのを知っている。
知っているからこそ、エレンが言っていたような苦労知らずの天才だなんて、間違っても思わない。真実の修羅場に自ら飛び込み、命をすり減らして飛躍し、そうして開花した今のシスティーナの凄みを、実力を天才の一言で片付けられてなるものか、と言えるのである。
それはただ実力能力だけの問題ではなく、脱出できない永獄ループに囚われて二進も三進もいかなくなって行き詰まってしまったグレンに対して、精神的に余裕もなくして追い詰められた彼の八つ当たりに対して、びっくりするような包容力と理解力を見せたシーンなんか、いやもうどれだけヒロインとしても成長してしまったのか、と度肝を抜かれたのでした。グレンが隔ててしまう日常と非日常の境目を、この娘はもう容易に、無理もせず、相手に無理も強いず乗り越えてくるようになったんだなあ。ただ指を咥えて隔てられた向こう側から恨めしげに傍観するだけだった自分を、この娘はこれほど見事に克服してみせてくれた。もうグレンの中では白猫はセラを思い出させてくれる存在ではなく、白猫の存在そのものがグレンにとっての救いになりつつ在るんですよねえ。ほんと、自力でメインヒロインに相応しい存在感を手に入れてみせたわけだ、この娘は。

とまあ、圧倒的なまでの白猫回だった今回ですけれど、今までにない仕掛けが施されていたギミック的にも面白い回でありました。白猫メインにも関わらず、何気に美味しいところをちゃっかり着実にゲットしているイヴさん、最近目立たないルミアと違って着実にポイント稼いでるなあ。登場当初から貯めまくっていたヘイトも、だいぶ解消されてしまっているのがグレンの態度からも伺えるわけで。いやまじでイヴさん、セラの件で長らくこじらせ固執するはめに陥ってなかったらマジでヒロインとして揺るぎない地位をゲットできてたかもしれないのに、もったいない。

そして、本編の要となるだろう禁忌教典に関わる重要人物がしれっと向こうから飛び込んできて、ストーリーにもギアが入った感じ。そろそろクライマックスに突入するよ、と言わんばかりの伏線が飛び交い積み重なっているだけに、いつ導火線に火がつけられるか、ワクワクする状況になっていました。今回の話も、魔術祭典の代表選手を選抜するための大会で、本番はこれからなわけですしね。楽しみ楽しみ。

シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 13 ★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 13】 羊太郎/三嶋 くろね  富士見ファンタジア文庫

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それは突然にやってきた。後期学期がスタートし、学院が浮き足立つ中、リィエルが教室で倒れてしまう。病名、『エーテル乖離症』―。『Project:Revive Life』の産物であるリィエルに訪れた寿命。その治療のため、方々手を尽くして残った一縷の望みは、特務分室の持つ極秘資料だが―。新室長・サイラス=シュマッハから交換条件として言い渡されたのは、女王陛下暗殺を企てた逆賊アルベルトの討伐で!?「外道に堕ちたってんなら…やつをぶん殴るのは俺の役目だ」その偶然は運命の悪戯か。リィエルの命を救うため、そしてアルベルトの真意を問いただすため、愚者のグレンは帰還する!

何気にリィエルってヒロインの中でもピーチ姫役が多い気がするんですよね。囚われのお姫様、敵の手中で助けられるを待つお姫様。
女性陣の中でも特に戦闘特化型なリィエルがそういう役回り、というのは不思議な気もするのだけれど、考えてみると納得でもあるんですよね。本来、そのお姫様役が一番相応しい本当のお姫様であるルミアは、意志力の化け物みたいなところがある少女でありその意志の強さ故に独走してしまうこともあるのだけれど、最終的には親友や先生の力を借りたとしても自力で壁を打破する自立したキャラクターでもあるだけに、大人しく自分の命運を他人に託すような役回りに収まっているタマではないのである。
白猫はその点、気持ちに弱さがあるぶん囚われのお姫様役は相応しい部分もあるのだけれど、それを拒絶したのもシスティーナなんですよね。彼女は弱い自分を克服し、常に先生とともに最前線で戦えるように自分を規定しているのである。先生の相棒であることを望む白猫にとって、今はグレンたちの横に立つために頑張っているのであって、囚われのお姫様をやっている暇も余裕も彼女にはないのである。それを受け入れてしまうと、物語の本流から脱落してしまいかねないのが白猫なのだ。
イヴもこの点は白猫に似ていて、散々憎まれ役をやった後に立場も何もかもを粉々にされてしまった今のイヴは、新しい立ち位置を構築中で現状は半分リタイア気味なセリカに代わってグレンが苦手な分野から彼を助けるサポート役であり参謀役であり司令塔でもある、というメチャクチャ頼もしいイヴ隊長という立ち位置なのである。実家であるイグナイト家が不穏なことになっているのだけれど一旦家のしがらみから解き放たれ、今開き直って自分の道を歩みだしている彼女にとってイグナイト家は克服するべき壁のような存在として機能しそうな雰囲気でも在るので、彼女もまた今となってはお姫様役はお断りなのだ。
こうしてみると、戦闘特化型とはいえリィエルは基本受動的であり、ルミアや白猫を守るという意志は自分の存在意義として持っているものの、自分からガツガツと目的に向かって突き進むタイプでもないし、出自の危うさやみんなのマスコットらしいキャラクターなど何気にお姫様役がうってつけなんですよね。
何気にセリカも、リィエルと似た部分があるので先々この人が取り戻さなければならないお姫様役を担う可能性は十分高そうな感じもあるんですよね。
そして、何気に独り勝手に突き進んで決死の思いで連れ戻さなければならない展開になりかねなかった可能性筆頭が、アルベルトだったのである。そう、彼がこの作品のメインヒロインになる、という展開もアリ得たんですよね。イカレ狂ったジャスティスと違って、彼は真っ当な信念に基づいて真っ当な道を踏み外しかねない真面目さんでしたからね。
なので、この巻でのアルベルトと図らずも本気で敵対する、という話は大きな分水嶺でもあったのだ。アルベルトの行く末を決める、という意味でも。まあ、そうなったらなったでジャスティスと被ってしまう部分も多分にあっただけに、アルベルトのあの強迫観念に近い何を犠牲にしても救うという自らを孤独に追い込む信念を、良い方向に変えることが出来たのは頼もしい味方がもっと頼もしい味方になってくれたという意味でも、ホッとした。すごい安心感である。
ようやく黒幕らしき存在が顔を見せて、なかなかキツイ展開になってきたところでアルベルトの新生は閉塞感を払拭してしまうほどの強いインパクトだったんですよね。
でも、それを成したのが男同士の本気のドツキ合い、本音をさらけ出し合いぶつけ合い殴り合うという「喧嘩」だった、というのはこっ恥ずかしいけれど、これはこれで素敵な話だったと思います。
こればっかりは女相手にゃなかなか出来ない感性のことですからね。男同士の特権だ。

シリーズ感想

続・この素晴らしい世界に爆焔を! 2 この素晴らしい世界に祝福を!スピンオフ わがままバスターズ ★★★★  



【続・この素晴らしい世界に爆焔を! 2 この素晴らしい世界に祝福を!スピンオフ わがままバスターズ】 暁 なつめ/三嶋 くろね  角川スニーカー文庫

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「このすば」大人気スピンオフシリーズ第二弾!この世界に溢れる“わがままな”依頼をめぐみんたちが解決!?カエルとの縁は永遠。カエルの王、キングトードを討伐せよ!―『王都に雨を!』
セシリー、ゼスタ大暴れ!邪悪なエリス教徒を討伐せよ!?―『アルカンレティアに稲妻を!(前編)』
そのスライムの名はチャッピー。やはりアクシズ教徒はやべえ奴しかいないのか。―『アルカンレティアに稲妻を!(後編)』
「マリモでも分かる生物学」著者:バートン教授、暴走の末、少女に獣の○○○を斬らせ…。―『魔獣の森に斬光を!』
そしてめぐみんは一つ、大人になる。―『宝石獣に爆焔を!』
アクシズ教徒は相変わらず過ぎて、出てくるたびに面白いなあ。個人でハチャメチャな人物というのは珍しくないけれど、団体でここまでブレないエキセントリックな連中は滅多見ないですよ。
さて、殆ど小学生が友達を遊びに誘いにその子の家のチャイム鳴らしまくるようなノリで王城に押しかけるめぐみんたち。前はもう少しアイリス、外に脱走する時は色々と謀を巡らせてこっそり出ていたのに、なんか最近もう普通に呼ばれて「はーい」とばかりにホイホイと外に出てくるようになってしまいましたな。それでいいのか王族! それを許してもらえるくらい駆け引き上手になってしまって、アイリスちゃん。どんどんカズマに似てきてしまっている、というのはなかなか由々しき問題なんじゃなかろうか。
しかも、悪い面ばかり真似しちゃって自由に状況をシッチャカメッチャカにする方はノリノリなのに、アイリスって混沌とした状況を収拾する方にはとんと関心がございませんものねえ。あれで王族としては非常に優秀なので、まとめる能力はあると思うのですが遊びに行ってるという意識の時はそうした真面目な行動に出ようという発想そのものがないようですし。
ちなみに、良識的という意味ではダクネスやゆんゆんは相応のものを持ってるし、問題が起こった時はちゃんと焦るのだけれど、この子らそういうトラブルを収拾する能力に関しては笑っちゃうほどないので、慌てて大騒ぎするものの結局一緒になってシッチャカメッチャカにするばかりなんですよね。
その点、何気に収拾能力を有しているのが我らがめぐみんなわけで。このスピンオフの方だとパーティーのリーダー役を担っているせいか、必然的にめぐみんが苦労を背負って事態を収拾して回ることになるんですね。これがカズマが居るときだと平然と彼に丸投げしてやりたい放題やってるくせに、自分が面倒見る段になると見て見ぬふり知らんぷりできず、仕方なく火消しに回ってしまう当たりにめぐみんの何だかんだと面倒見の良さを見て取れるところであります。
ただ、そういう面をついにめぐみん自覚してしまった上に自分は好き勝手やる方がいいや、とカズマに押し付ける気満々になってしまったのですが……こればっかりは性分なのでカズマがいない場面ではどうしたってめぐみんが背負い込むことになりそうなんですけどねえ。
しかり、アイリスもやりたい放題やってやりっぱなしになってきた分、ゆんゆんがアイリスにまで振り回され始めた感があるのは、この子どうしてマメにいちいち全員に振り回されに行くんだろうと苦笑するところであります。その上、ゆんゆん振り回されっぱなしで終わっちゃうもんなあ。もうそれが楽しいんだろうかw
ただ、アイリス、ゆんゆん、めぐみんのパーティーは普通に戦力バランス取れていて下手するとカズマさんパーティーよりも安定性ある戦闘力ありそうなんですよね。逆に緩いクエストとか難しいのかもしれませんが。


シリーズ感想

ロクでなし魔術講師と追想日誌(メモリーレコード) 2 ★★★   



【ロクでなし魔術講師と追想日誌 2】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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アルザーノ帝国魔術学院には、ロクでなしに振りまわされる三人の美少女たちがいた。彼女たちの名は、システィーナ・ルミア・リィエル。そんな彼女たちの日常は波乱がいっぱいで!?記憶喪失になったシスティーナは、不覚にもグレンに懐いてしまったり。学院へ通うルミアは、変装する何者かにストーカーされたり。アルバイト生活を始めたリィエルは、お金をピンハネされたり…そんな、ロクでなしな学園の日々。「僕は、…皆を守れる強い力が欲しいのに…ッ!」ついに明かされる“愚者の世界”誕生秘話。ロクでなしになる前のグレンの学生時代を描く、書き下ろしエピソードも収録!


「紙一重の天災教授」
おい、この天才はガチで研究管理した方がいいだろ絶対に。話聞いている限りじゃ世紀の発明発見を週刊で出来そうなんだけど!?
4,5世代先とか百年単位の未来技術を数日で開発した上で、無駄なところに数年時間をかけてるとかそんなんばっかりじゃないか。まず実際に技術を完成させてからウダウダやっているっぽいので、完成させた技術をとりあえず回収しておけば、それだけでこの国未来帝国になれそうなのに。
性格はエキセントリックだけど、人格破綻しているわけでもないし、この人を放置して飼い殺ししているのは損失すぎるよなあ。


「帝国宮廷魔導士アルバイター・リィエル」
そもそもなぜリィエルが出した学校の損害がグレンに請求行くようになっているのかがなかなか謎である。グレンが保護者として登録されてるんだっけか。仮にもリィエルって現役の宮廷魔導士なわけで、それなりの給料は貰っているはずだしこの娘がまともにその給料使っているとも思えないので、そこそこ溜まってるはずなんだけどなあ。……それとも、任務でも損害出して給料天引きになってるんだったっけか。グレンがリィエルにバイトさせてその給料を差っ引いてウハウハしようとしている、みたいなクズい話になっているけど、いやその前にリィエルのために色々払ってるんだからその補填をちょっとでもさせようというのはそんな酷い話でもないはずなのだけど、グレンの態度があからさまに悪いのが悪いw


「任務に愚直すぎる男・アルベルトの落とし穴」
アルベルト、何気にここらへんから変装に凝るようになったのか。ここまで行くと単なる趣味のような気がしてきたぞ。生真面目が過ぎて、シリアスがギャグになってしまう男アルベルト。本人は決して笑わない男なんだけど、わりと本編でも真面目に間抜けなことやってる印象があるだけに、凄く頼り甲斐があるんだけど何やってんだろうこの人、って感じのキャラなんだよなあw


「貴方と私の忘レナ草」
記憶喪失のシスティーナは可憐でか弱く儚い系の深窓の令嬢でした、て感じで。薬草の効果にダウナー系の精神効果が入ってた、というのもあるんだけど、そもそも白猫って根っこの方はこっち寄りのキャラクターなんじゃないだろうか。本編では不屈の努力と根性で強気なキャラを張っているけれど、追い込まれた時の脆さとか精神的な弱さなんかを見ていると、本来はかなり気弱で依存系の少女なんじゃないか、という面があったんですよね。記憶喪失時の白猫はまさにそんな感じで。
意外とグレンも触れると壊れそうなタイプの女の子には非常に優しいし扱いも気を遣うことが出来るようで、システィーナにとっては何気に至福の時間だったんじゃないだろうか。堪能しましたか?


「二人の愚者」
グレンの原点とも言える過去の事件。彼がその魔術特性から真っ当な魔術師になることが出来ないと知って荒れていた時期の、しかしそれでも正義の魔術師になるのだという志を得て、自らの力に「愚者の世界」という名をつけるに至った最初の挫折と輝かしき夢を宿したその時の物語。
このとき、幼いながらにお互いに人生の岐路に立ち、お互いの崩れ落ちそうな心を支え合い、お互いに抱いた夢に向かって背を押しあった者同士、現在に至るまで二度と逢うことがなかった、というのがまた感傷を誘うんですよね。グレンも、相手の少女であるニーナも、それからお互いが歩んだ道を知らず、どういう人生を辿ったのかを知らず、それでも夢を叶えるために邁進していると信じて……、そして新聞のある記事からグレンは幼き頃の同志の行く末を知る、という顛末が胸に来るのである。二人共、もう既に大人なだけに再会したら即座に映画みたいなロマンスがはじまりそうな雰囲気があるのもまた良きかな。


シリーズ感想
 
12月3日

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