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三田誠

魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青 1・2 ★★★★  



【魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青 1】  ツクモイスオ/三田誠 BLADEコミックス

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これは、世界に色彩をもたらす為の物語。

舞台は仏国、巴里。
孤児であり外国人である少年・青の元に現れたのは、“影の茨"と並び立つ力を持つヒト為らざる魔法使い。
その身に秘めた力を見初められ、『妻』として娶られた少年は、世界における様々な色を識ってゆく――。




【魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青 2】  ツクモイスオ/三田誠 BLADEコミックス

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色を従え、色を揮え。全ては、私を殺す為に。

突然娶られ、地上での生活が始まり混乱する青。
しかし、ジゼルに助けられながら自らの力を理解していく中で、
意志の力が芽吹き始める。自身の名を冠する色を配下に置き、
人として生き始めた中で青は、不思議な男・アルベールに出会う。
飄々とした態度で人助けを行う彼に好感を持つ青であったが――……。

ヤマザキコレ先生の【魔法使いの嫁】と同じ世界観の中で描かれるもう一つの物語。そのスピンオフは人外×少年。その脚本を手掛けるのは【レンタルマギカ】や【ロード・エルメロイII世の事件簿】という魔術師たちの物語を描き続ける三田誠さん、とくればまず読まずにはいられません。
三田さんというと、古今の魔術大系を描かせればその深奥を垣間見せ、魔に魅入られ傾倒する魔術師という人種の異質さを見せつけてくれる作家さんであると同時に、そんな人からハズレていくはずの魔術師という人々のどうしようもないくらい人らしさ、どれほど踏み外しても彼らは心を持つ人間である、という人間性をこの上なく描き出してくれる人なんですよね。

魔法使いの嫁、の世界においても魔術師は人から外れるほどに誉れとされる。姿形が異形と化すことこそが尊ばれる。そしてそもそも生まれからして人ならざる人外たちは、魔の深奥に佇む尊き存在だ。そんな人外の魔法使い、ジゼルと巡り合い望まれ夫となった孤児のアオ。本来魔術的契約に過ぎない結婚の儀式によって結ばれた二人は、しかし少年アオの純粋さゆえに人と人として、向き合うことになっていく。人ならざる者であるはずのジゼルが、アオの直向きなまっすぐさにただ一人の人としての自分を突きつけられていくのである。
アオくん、かなりしんどい幼少期を送ってきて、さらに異邦人の孤児として疎まれ虐げられてきたにも関わらず、どうしてこうまで裏表なく素直で淀みなく育ったのか不思議なくらいイイ子なんですよね。
でも、それはどこか没頭の狂気が根底にあるような、画家としてのそれも資質か。真っ白なキャンバスに色を塗り込める絵師の自身に色があってはならぬ、と言わんばかりのフラットさ。
でも他人の心を受け止め絵にできる豊かな感受性もあり、決して空虚ではない。その直向きさは、一生懸命さは空っぽとは真逆ですらある。
そんな彼が、本当に裏表なくジゼルの姿形も生き方もあり方も、素直に褒めるんですよね。彼女のことを綺麗だと言ってはばからない。心から美しいと思って、それを言葉にすることをためらわない。だって彼にとってそれは自明のことだから。
でも、ジゼルからするとそれってかなりの殺し文句なもんだから、ひっきりなしにグサグサとクリティカルに刺さってしまう。惹かれてしまう、心を縫い留められてしまう。かなり早い段階で、アオに対して夢中になってますよね、この魔法使い。でも自覚はないんだろうなあ、どうにも彼女はずっと終わることばかりを考えて生きてきたようだから。
本作は人外×少年という以前に年上の女性と幼気な少年という構図にもなっているものだから、そういう年の差関係特有のあれこれがあるかと思っていたんですよね。ほら、お姉さんキャラが小さな男の子をからかって少年の方が顔を赤くしながらお姉さんの自由さに振り回されてしまうみたいな。
でも実際は逆だ、逆じゃないですか。ジゼルの方が余裕ぶった姉めいた振る舞いでアオを翻弄するのかと思ったら、むしろアオの方がジゼルを翻弄しているのである。
アオのその本質を見る目で捉えたものを率直に口にするところが炸裂してしまっていて、概ねジゼルのことをナチュラルに褒め口説く様相になってるんですよね。アオは思ってることを口にしているだけで口説いてるつもりなんか毛頭ないんだろうけれど、完全にこれ口説いてますって。
おかげでジゼルの方が照れ照れして狼狽しているわけです。威厳を保とうとしながら顔を赤らめているところなど、微笑ましい限りで。そういうところ、普通に可愛らしい女の人、になってるんですよね。
こういう繊細な表情を、しっかり描いてくれている漫画家さんがまた素晴らしい。明らかに人外の容姿、そもそも顔の作りからして獣のそれで人間の女性の美人とは程遠い造作にも関わらず、ジゼルって確かにすっごい美人だと感じるんですよ。めちゃくちゃキレイな女の人、となんでかひと目で見てわかる。
それにパンツルックはやたらとシュッとしてカッコいいし、中華服なんかこれはこれでやたらと色気とスタイリッシュさがあってカッコいい美人になってるし。
アクションもメリハリあって動きが力強く、面白い。これは良い絵師さんとのコンビによるスピンオフになったなあ。

欧州は巴里を舞台とした物語ではあるものの、巴里にある魔術師たちの共同体はルーン魔術の騎士団、エジプト魔術のウジャト図書館、そして中華に源流がある四象會という組織によって形成されている。これだけ多種多様の魔術大系が話に中枢を担っているのは、さすが三田さんというべきで、物語としてもそれぞれの魔術大系がしっかりと存在感を示していて、見える景色が多彩ですごく面白いんですよね。
ジゼルとアオの夫婦という関係にも、アルベールというジゼルの前の弟子にして妻だった男の登場によってグイグイと踏み込むきっかけが出てきましたし、これは本編の【魔法使いの嫁】に負けず劣らず惹かれるシリーズになりそうです。

ロード・エルメロイII世の冒険 2.彷徨海の魔人(上) ★★★☆   



【ロード・エルメロイII世の冒険 2.彷徨海の魔人(上)】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「でもね。わたしたちは好きになったから、生きるべきなの」
神を喰らった男、エルゴ。
徐々に人格を失うと予測された彼を助けるため、エルメロイII世たちは日本の東京に旅立った。彼らを迎えた両儀幹也は、とある誘拐事件の解決を依頼してくるのだが……。
攫われたという夜劫アキラには何があったのか。そして、遠坂凛とエルゴの前に立ち塞がる彷徨海の魔術師の正体とは?

神の名を問う旅、『ロード・エルメロイII世の冒険』第二幕が開始する――!
コクトー、全然年取ってないな!! グレイからも、未那みたいな娘がいる歳には見えないと言われているくらいだし、未だ20代前半くらいに見えるんじゃないだろうか。
実際は未那の年齢からしても30代には入っているはずだけれど。
というわけで、今度の舞台は日本。そして「空の境界」から今は両儀となった幹也とその娘の未那が出演。まさか、コクトーを他の作品でお目にかかることが出来るとは思わなかった。素直に嬉しい。
しかし、今は両儀家の会計士紛いの仕事をしてるのか。ヤクザとかマフィアの会計士って……かなりヤバイ地位じゃないですかw まあコクトーの性質からして会計士って柄なのか、とは思うところですけれど。じゃあ何が一番似合うの?と問われるとなんだろう、と首を傾げてしまうのですが。
魔術師でも異能持ちでもないにも関わらず、型月作品の中でも最も不思議でとらえどころのない異能の人物だったもんなあ、黒桐幹也は。
そんな彼の不思議な存在感は、この物語の中でも発揮されていて、コクトーがその場にいるだけで場が落ち着いてしまうんですね。終盤にはエルゴの過去を知る彷徨海の魔術師・若龍らと呉越同舟の形で集まることになるんだけれど、誘拐事件やエルゴの状態、彷徨海の目的なども絡んでどうしたって穏やかならざる雰囲気になってしまう所を、コクトーがふわりととろかしてしまうのである。
話術に優れているとか、雰囲気をコントロールしているというわけでは一切ないのだけれど、毒気が抜かれるというか攻撃的な感情が穏やかに均されてしまうというべきか。
彼がどうして両儀式や蒼崎橙子みたいな超危険物と常に一緒に居て大丈夫だったのかが何となくわかるというものです。思えば、「空の境界」という物語の備えていたあの静謐な空気感というのは、物語の根幹がそうであった、というのもあるのでしょうけれど、コクトーの存在が大きかった気がします。式だけなら、もっと冷たく冴え冴えとしたものになっていたでしょうし、静謐さの中に不思議な温かさが常にあったのは、コクトー由縁だったんじゃないかなあ。
それは今作にも引き継がれていて、何かと騒がしい凛や新キャラの白若龍なんかも陽気なキャラクターなんですが、そんな彼らが居るにも関わらず、どこか静謐な空気が流れてたんですよね。
1巻のシンガポールの暑苦しいくらいの陽光と海のイメージから比べると、雰囲気が一変している。
これは、英国人であるエルメロイ二世やグレイからみた日本という異国に訪れた時の幻想的なイメージからも来ているのでしょうけれど。いきなり、縁日からはじまりましたからね。
また未那の方もこれ、独特の育ち方をしましたよねえ。この娘は活発でわりと無節操に駆け回る落ち着きなさそうな娘なんだけれど、それでもエルゴが発作で苦しんでいる時にふわりと彼のざわめきを均してしまった所なんか、コクトーとはちょっと違うけれど父親によく似た風情でありますし。同時に、何となく逆らえない気分というか子分にさせられた感じになってしまうのってこの娘独特の性質だよなあ。あえて言うなら、叔母の鮮花似か織に寄ったところがあるのは面白い。母親の式にはあんまり似てる所が見つからないというのもまた面白い。

さてもエルメロイ二世からすると久々の日本……たまに来てるんだったっけか。でも冬木の地ではなく、東京というのはなんか変な感じがしますね。秋葉原そんなに行きたかったのか、教授w
むしろ、凛と東京という組み合わせの方が違和感あるくらいで。なんでか凛は倫敦とか外国の方が似合う感じなんだよなあ。
聖杯戦争のあった国に戻ってきたから、というわけではないのでしょうけれど、改めて凛とエルメロイ二世の二人きりで、自分たちに影響を与えたサーヴァントの話を感慨を込めて交わすシーンにはなんだか感慨がありました。こればっかりは、あの戦争に参加した、そして生き残った人間でなければ共有できない感覚なのでしょう。幸か不幸か、その場面をグレイが目撃してもやもやする、などといった事はなかったのですが。

話の方は、エルゴのリミットが迫る中で彼の中にある神を取り払う方法を求めてきた日本で、エルメロイ二世一行は、コクトーからある誘拐事件の被害者の救出、或いは救済?を求められる。
その被害者を連れ出していたのは、何の因果かエルゴの過去を知る、もしかしたら友人だったという彷徨海の魔術師・白若龍。なんか好青年っぽいんだよなあ。被害者であるアキラについても、むしろ無理やり攫ってきたというよりも、アキラの希望をきいて連れ出したという感じですし。一方で魔術師としてちゃんと目的在ってアキラを連れているというのもあり、エルゴにかけられた神食いに関わるナニかをアキラが持っている、と縁が不思議と連なり絡まっている状況。
それが、どう展開していくのかは、取り敢えず今回は登場人物と状況を舞台上にあげる、という意味でプロローグだったような感じです。エルゴを助けるための道筋が、まだよくわからないしなあ。どんどんと材料は集まっているみたいなのですが。

しかしこれ、式の登場はあるのだろうか。なんかコクトーの回想からすると、嫌だ出ない!と主張してるみたいに見えたけどw あったら嬉しいなあ、というくらいで。


ロード・エルメロイII世の冒険 1.神を喰らった男 ★★★★☆   



【ロード・エルメロイII世の冒険 1.神を喰らった男】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「これより、私は、神を問う」魔術と伝説、幻想と神話が交錯する『ロード・エルメロイII世の冒険』、いざ開幕。
「これより、私は、神を問う」

 時計塔支部での講義のため、夏のシンガポールを訪れたエルメロイII世とグレイ。
 様々な文化が混淆するこの国で、ふたりはエルゴという名の若者と出逢うことになる。謎多き若者を追って現れる、アトラスの六源。かのアトラス院と彷徨海バルトアンデルス、そしてもうひとりの魔術師が行ったという太古の実験とは? そして、II世が問うことになる神の名とは?

 魔術と伝説、幻想と神話が交錯する『ロード・エルメロイII世の冒険』、いざ開幕。

凛さん、あんた何してんすか!?
事件簿シリーズから数年が経ち、日本は冬木の地では第五次聖杯戦争が執り行われ、そして終結した時間軸。聖杯戦争に生き残った遠坂凛は、あの赤毛の少年を引き連れて時計塔への入学を果たしていた。どうやら、士郎はこのルートでもルヴィアの執事になっちゃっているらしいけれど。
どうやら、ゲーム上におけるどのルートでもないらしく、のちに聖杯解体戦争へと至るルートらしい。本来、凛が士郎を連れて時計塔に留学してくるのは凛ルートのグッドエンドなのですけれど、連れてきている割に恋人関係にはなってないんですよね。大丈夫か? 中途半端だとあの麗しのハイエナに持ってかれるぞ? こっちのルヴィアはギャグ大系の彼女と違って色んな意味でガチだからなあ。
ともあれ、長期休暇に入った時計塔の学院で、暇になった凛が何をしているかと言うと……宝探しの挙げ句、地元のガキどもをまとめ上げて海賊団立ち上げてました……って、ほんとになにやってんだこの女w

舞台はロンドンはおろかヨーロッパを離れて遠く東はシンガポールに。東南アジアの中でも特に地理的に東西を結ぶ海上交易路の中枢という所にある国なせいか、特に東西の混合が目立つ土地柄なんですよね。総人口の七割近くを華人が締めているように中華系の特色も強いし、古くからイスラム商人の足場となっていたために中東の影響も強い。大英帝国の東方支配の要衝であったために勿論、英国の影響も色濃く残っている。まさに斑色のお国柄なんですよね。勿論、魔術サイドにもその特色は焼き付いているわけで……いや、それにしてもいきなり時計塔などの魔術協会などが扱う西洋魔術とはまるで別物である大陸東方に根ざしている「思想魔術」関連の話が放り込まれてくるとは。
それも、匂わすとかいうレベルじゃなく、これでもかとばかりに山程わんさか放り込まれてきたんですけど!?
「螺旋館」とか「山嶺法廷」とか、いきなり時計塔レベルの大組織の名前がポンポン飛んできて、目を白黒、アワアワ、ですよ。
ほんと、世界観の根底に近いような設定群を、それもこんな今まで情報が殆どなかった系統の設定をこんな贅沢にばら撒かれたら小躍りしてしまうじゃないですかー。

とまあ、目移りしてしまうような設定群の大盤振る舞いとはまた別に、ストーリーの方はストーリーの方でしっかりと地に足を付ける形で進んでいくんですね。エルメロイ二世がずっと執着していた聖杯戦争は、結局彼が駆けつけることが出来ないまま冬木の地で終わり、新たなシリーズであるこの「ロード・エルメロイII世の冒険」は、このシリーズとしての話の核が必要になってくるであろう事は考えられていたんですが、何を目的にして話は進んでいくのかなあ、と思っていたら……そうかー、いよいよ「グレイ」の話になってくるのか。
グレイの置かれている状況、そういえば最終巻で第五次聖杯戦争がはじまってアーサー王が召喚されてしまった際に、同期が進んでしまっていたのか。
これについては、聖杯戦争が終わってセイバーが帰還すればその時点で進行みたいなものは止まるだろうし、グレイ自身の能力は強化されるにしても当面問題らしい問題は起こらないんじゃないか、と特に深刻には考えていなかったのだけれど……。
そうか、セイバーと同じように肉体年齢が止まってしまう、なんて状態になっていたとは。
これまで普通に成長していただけに、これは予想外だった。これで、本格的にグレイの中のアーサー王の因子を取り除く必要が出てきたのか。
エルメロイ二世が本気になって動くには十分な理由じゃないですか。
同時に、魔術師としてのエルメロイ二世の至らなさを彼自身が痛感させられる自体、とも言えるのかもしれない。だからこそ、講師を辞めてグレイの件に力を注ぐ、などと考えだしたのかもしれないけれど……。
シンガポールの地で出会ったエルドという記憶喪失の青年。神の手をその身に宿し、それ故に自分自身の存在を食われようとしているエルドの姿は、まさにグレイと同等で。
素直で聡明なところもどこかグレイににてるんですよね。そんな彼をいっときの生徒としたことで、エルメロイ二世一行はエルドを巡る事件に巻き込まれることになるわけだけれど、ここでエルメロイ二世の教え導く者としての在り方がより色濃く描かれていく事になるんですね。
講師から退こうとしている今だからこそ、彼の教える者としての在り方、姿勢、存在意義が浮き彫りになっていくのは非常に興味深かった。
グレイが、師の講師引退を考えている告白に激しく動揺したのも、彼と教え導くという事がイコールで強く結び付けられていたからなのでしょう。グレイにとって、師と講師という在り方は不可分であったからこそ。エルメロイ二世自身、教える事が好きだというのがこの巻からは様々な場面で垣間見えるんですよね。そして、生徒となった者への愛情や責任感も。
征服王の背中を追いかける人生。しかし、その夢を諦めずも一区切りついた今、ロード・エルメロイ二世には今一度、自分のこれからの在り方を見つめ直すときが来ているのかもしれない。
グレイを救う物語であると同時に、エルメロイ二世の未来を決めるシリーズでもあるわけだ。

しかし、今回ほんとに大冒険してるよなあ。ただの冒険じゃない、大冒険ですよ、これ。海賊になってはるか昔に沈んだ沈没船を探し当てて、お宝ゲットとか普通に海洋アドベンチャーじゃないですか。
その上アトラス院の六源の一人の登場に、さらにとんでもない存在の出現である。
いやこれ、魔眼列車編のフェイカーよりもヤベえんじゃねえの? 下手なサーヴァントどころじゃないじゃないですか!?
いきなりナマの「酒呑童子」と遭遇しました、レベルの相手じゃないの? それどころか、年代の古さから言っても酒呑どころじゃないとすら言えますし。
シリーズ初っ端にして、とんでもねースケールの話をさらっと繰り広げてるんですけどねえ!?
びっくり仰天ですよ!
逆に言うと、この段階の敵を相手にして、相手になっているという時点でエルメロイ二世って施行しているルールが普通の魔術師と全然違うんですよねえ。
魔術どころか、神をすら解体しようというのかこの男。
そりゃ、魔術師としては二流三流かもしれないけれど、ほんとやってる事は頭おかしいし、首突っ込んでいる事件は、エルメロイ二世が羨む一流超一流の魔術師でも現代の魔術師である以上は十把一絡げ扱いに蹴散らされるような案件ばかりなんですよね。つまるところ、三流だろうが二流だろうが一流だろうが、相手からしたら大差ないような。
にも関わらず、この男はなんとかしてしまう。対抗手段をひねり出す。絶体絶命をひっくり返す。
いやほんとになんなんだこいつは!? 
今更ながら、ロード・エルメロイII世という存在の異質さ、凄まじさを思い知った気がします。
やっぱり、このシリーズ面白いですわー。

にしても、ライナスの方年相応に18,19の美少女になってるのかー。今回イラストなかったけれど、彼女の成長した姿は是非に見てみたいところである。
それに、ライナスとグレイの両思いっぷりがもう、深い深い。お互い気持ち通じ合っているし、思いやり合う心の尊いこと。グレイが年取らないことを気にしている理由の大半が、ライナスとどんどん見た目の姿がズレていってしまっていることで。彼女に置いていかれているような気がして、となっているのライナスの事好きすぎやしませんかねえ。ライナスの方もそんなグレイの気持ちにちゃんと気づいていて、凄く思いやってるわけですよ。なにこの尊い関係。この二人の型月世界屈指の女性同士の親友っぷりをこうしてまた見られただけでも大いなる価値を感じる次第でありました。


って、エピローグぅぅ!!
最後の最後でとんでもない人物が出てきたんですけどー!? そっち!? そっちのキャラが出てくるの!?

三田誠・作品感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」 ★★★★☆   



【ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」】 三田 誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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衝撃の真実と向き合う覚悟を決めて、エルメロイII世は仲間たちとともに霊墓アルビオンへと乗り込む。ロンドン地下に広がる大迷宮は、
神秘を操る魔術師ですら想像を絶する、もうひとつの世界であった。
同時に、ライネスもまた、II世の代わりに冠位決議(グランド・ロール)へ出席することとなる。
複雑に絡み合う、迷宮探索と陰謀劇。
そして、迷宮の最奥にて儀式を進めるハートレスの謎とは。

幾多の神秘に彩られた『ロード・エルメロイII世の事件簿』、その結末を今ここに。
ああ……私はきっと、ウェイバー・ベルベットのその言葉をこそ聞きたかったのだ。
第四次聖杯戦争の際、Fate/zeroで描かれたウェイバーとイスカンダルの別れのシーンで二人の関係の集大成として少年が征服王に投げかけたのは臣下の誓いであった。でもね、私はどうしてもそれに納得がいってなかったんですよね。あそこで、ウェイバーに臣下にしてほしいと願われて果たしてイスカンダルは嬉しく思ったのだろうか、と。そこに至るまでに少年と征服王が二人で過ごした時間は、果たしてそこに帰結するものだったのだろうか、と。
あの自分に食って掛かる未熟な少年を可愛がりながら、腹の底から笑っていたあの巨漢の王が彼との間に感じていた心地よさは、主従の関係に収束してしまうようなものだったのだろうかと。
私は、あの王がウェイバー・ベルベットとの対等な関係をこそ楽しんでいたのではないかと、思っている。
でも、ウェイバーはどう思っていたのだろう。あの時、彼にとってイスカンダルに付き従いたいと願った事こそ魂から欲した願いだったのかもしれない。彼が得た強烈な体験は、目の当たりにした本物の英雄は、彼の魂を揺さぶりに揺さぶり、その後の少年の人生を一変させるに至る。少年は青年となり、身の程を超えた役割をその身に背負い、しかし膝を屈することなく走り続けることになる。
どうやって、あの背中に追いつくべきかわからないまま、右往左往しながらも、霧中をゆくが如き不安を抱えながらも。
そうやって大人になって、それでも物分りよく諦めたりせず足掻きながら、彼はずっとイスカンダルを追い求め、彼のことを考え続けた。
そんなロード・エルメロイII世となったウェイバー・ベルベットは、考えなかったのだろうか。あの時、あの王にかけるべき言葉が果たしてあれだけで良かったのだろうか、と。
あの聖杯戦争で過ごした時間が自分たちの間に育んだものがあったのではないか、と。誰よりも王の事を考え、王の心中を思い描く時間があった彼だからこそ、そう思い巡らす可能性はあったんじゃないだろうか。
思えば、フェイカーの登場に伴いイスカンダルを語ることも増えた。直接征服王を知る本物の臣下を前に、王への悪態をつくこともあった。そこにあったのは忠誠でも尊崇でも憧憬だけでもない、一緒にゲーム機を前に大騒ぎしていた大男への親愛だったじゃないか。
10年掛かって、あの時ウェイバーが言えなかった言葉が言えた。それを聞けた。それで満足である。


ハートレスの正体についてはライナスが会議にて言及した所までは想像できていて、それはほぼ確信に近いものがあっただけに、真っ向から否定されてしまった時には正直マジで驚いてしまった。
その正体についてはまさかまさかの一言で、だからこそ彼が負っていた絶望の深さを思い知る。どちらか一方だけでも立ち上がれない裏切りだ、それを2度も二重に渡って味わわされた時の喪失感はいったい如何許のものだったか。
彼にとって青春そのものであり人生そのものであった、過去であり現在であり未来ですらあったものからの裏切り。まさに全否定であり、絶対的な孤独であったからこそ、彼が最期に求めたのはずっと自分に寄り添い続けてくれたフェイカーだったのだろう。
惜しむらくは、ハートレスにとってフェイカーでなければならなかった理由、フェイカーにとってハートレスでなければならなかった理由がなかったところか。でも、そんな理由がなくても二人は出会い、通じ会えた。それで十分なのかもしれない。
……フリューの師匠であるあの老人もまた、すべてに裏切られたという意味では同じなのかもしれないけれど、彼の場合大切にしていたものには裏切られはしなかったんですよね。弟子たちは皆殺しにされたとはいえ、彼を慕い続けたわけだし。そしてフリューに至っては汚名を背負っても師を救い守ってくれた。そして、ロード・エルメロイII世によって彼の怨念は報われた。対比というのも違うかも知れないけれど、余計にハートレスの孤独が浮き彫りになったような気がするのです。
いや、本当に対比すべきはやはりウェイバーの方なのでしょうね。ハートレスの正体からしても、妹がいるなんて話も出てきちゃったわけですし。あらゆる意味で対称的、になる。

……ウェイバーは、幸せものなんだろうな。弟子が居て、生徒たちが居て、義妹が居て、友もいる。困難を前に、彼に手を差し伸べてくれる人がこんなにも居た。
イスカンダルの背中を追い続けたウェイバー・ベルベットの人生は、だが孤独などではなくその歩みにはこうしてこんなにも多くの人たちが寄り添ってくれている。図らずもそれは、彼が追う征服王とその同志達の姿と重なる、というと言いすぎだろうか。先頭を突っ走る征服王と違って、この男の場合は息を切らせながら後ろをヨタヨタついていくのを、皆がワイワイと騒ぎながら周りで急き立てていたり背中を押したりしているのが関の山なんだろうけれど。
でも、孤独ではない。それだけは確かだ。

これはFateシリーズの中でも屈指の「魔術師」の在り方を描き出した物語だろう。でも人でなしと言われる魔術師という在り方に、こんなにも「人間」そのものを見出したのがこのシリーズでした。

一旦、このシリーズはここで幕引きとなりますけれど……いや、絶対これ装いを新たにしてもう一度再会するよなあ、するよね、してよね!!
グレイのアーサー王との同調に関してもまだ解決していないどころか、侵食が酷くなっているわけだし。ってかこれ、フェイト・ステイナイトのルート次第ではアーサー王本人が来ちゃうんですけど、その場合グレイ大変どころじゃないじゃないかw
ともあれ、次あるとすれば聖杯解体にまつわるエピソード。聖杯解体戦争になるのだろうか。でも、あれって第五次聖杯戦争のさらに十年後らしいので、グレイもライネスもみんな妙齢の女性になっちゃってるんですよね。それはそれで見てみたくもありますが。

シリーズ感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 9「case.冠位決議(中)」 ★★★★   



【ロード・エルメロイII世の事件簿 9「case.冠位決議(中)」】 三田 誠/坂本 みねぢ  TYPE-MOON BOOKS

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『……魔術師とは、裏切るものです』
最後の物語は、いよいよその深奥へ――。
ついに明らかにされた、ドクター・ハートレスの目的。
その内容に苦悩するエルメロイII世。一方、学術都市スラーがハートレスたちによって急襲される。しかし、迎撃に出たライネスたちが遭遇したものは、驚くべき人物と想像だにしない事実であった。
冠位決議を前に、連鎖して引き起こされる破局。
連続失踪事件に秘せられていた真実。時計塔の地下、霊墓アルビオンに仕掛けられた君主たちの陰謀もまた、傷ついたエルメロイII世に牙を剥く。

なるほどなあ、段々とわかってきたぞこの最終章の肝。
カラー口絵でのドクター・ハートレスの姿が思っていたのとかなり違っていたのが突破口となったというべきか。もちろん、そのイメージが合っているかどうかの答え合わせは下巻を待たないといけないのだけれど。
ハートレスという人物があまりにも未知すぎて何を考えているかわからない得体の知れない存在である、という人物像そのものが彼を取り巻く一連の出来事に迷彩をかけて謎を深めていたのだけれど。
彼が語ったこの一連の出来事を起こした理由。詳しい内容を語ったわけではないけれど、決して大仰な理由あってのことじゃない、という言葉をこれ、そのまま受け止めた方がいいのかもしれない。
明らかになってくるハートレスが行おうとしている事が、とんでもないスケールの話になっていっていることが余計に混迷を深める原因になっているけれど。
改めて思い出そう。この物語は、この作品は。
魔術師という「人間」たちの物語なのだということを。魔術師という人から根本的に外れてしまった異形の存在の、それでも残されている人間性を語り尽くす物語だということを。
そして、その魔術師という在り方に忠実で誠実で恋い焦がれていながらも、そんな魔術師という人種の中にどうしようもなく残滓している人間性というものの権化というものが、エルメロイ鏡い箸い人なのだということを。
もう一度振り返る必要があるのだろう、きっと。

彼がハートレスによって打ち込まれた楔は、彼が望んでも結局為し得なかった夢がもう一度叶うかも知れない、というエルメロイ鏡い慮什澆旅堝宛桐の根幹に沿うものだったわけだ。
ハートレスを邪魔するということは、自分があれほど乞い願って人生そのものを注ぎ続けた夢の実現を自ら否定し邪魔するということだ。エルメロイ鏡い立ちすくんでしまったのも無理はない。それはいわば、彼にとっての根源への到達とも言えただろう。
でも、そんな彼の背を押し躊躇いながらももう一度進もうと、ハートレスと相対する道を進もうと思わせたものこそが、彼の魔術師ならざる人間性に根ざす繋がりだったんですよね。
彼がウェイバー・ベルベットからロード・エルメロイII世になってから残してきた足跡。それによって得た信頼、親愛、信用は彼が優れた魔術師だったからでも、イスカンダル大王の臣下だったからでもない。グレイの献身も、アトラム・ガリアスタの好意も、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの信頼も、メルヴィンの友情も、ライネスの親愛も、弟子たちの敬愛も、エルメロイ鏡い凌佑箸靴討良分を肯定してくれたからこそのものだったのではないでしょうか。
オルガマリーも、場合によっては化野菱理ですらも、エルメロイ鏡い箸遼盻兒佞箸靴討任呂覆た佑箸靴討慮斥佞法大いに影響されその後の人生の歩み方に変化をもたらしている。
思えば、かのイスカンダルだってウェイバーのどこを愛したかといえば、そのどうしようもないくらい人間味のあるところだったんじゃないのか。賢くも愚かで野心も欲望も抱きながら純真で情に厚い。何より自由であったところを。
どうしてイスカンダルがウェイバーに生きろと言い遺していったのか。どうして、かの大王は配下の英傑たちに「もっとも強き者が帝国を継承せよ」と言い遺して後継者戦争を起こさせたのか。
彼が何を愛したのか、それを思えば何となくわかる気がする。彼が臣下に求めていたのはレディ・ヘファイスティオンが思い描きだからこそ今憤っているそれとは、大きく違っていたのではないだろうか。
イスカンダルが、彼に何を託したか。いや、どうして託したか。そして、他にも多くの人たちがエルメロイ鏡い鵬燭を見出し、自分の中からいくつかをわけて彼に託していく。なぜ、どうして。その理由こそが、エルメロイ鏡い遼盻兒佞箸靴討任呂覆げ礎佑任△蝓彼への肯定なのだ。
立てなくなってしまった彼を立ち上がらせたもの。それが、このシリーズでずっと語られ続けていたものなのだろう。エルメロイ鏡ぜ身が、いくつもの事件の中で肯定し続けたものが、回り回って彼のもとに還ってきた、と言えるのではないか。ずっとそれを見続けていたグレイの手を伝わって、それが彼を立ち上がらせる形を為した。
いいね、主人公の立脚点に立ち戻る。これこそが最終章ってなもんだ。
まさか、シリーズの出発点にも立ち戻るとは思わなかったけど。【剥離城アドラ】をこんな形でもってくるのは、ちょっとズルいぞ。でも素敵だ! さあクライマックスを前に盛り上がってきたぞー。

しかしあれですよね、ご褒美というべきかなんというか、橙子さんの全開戦闘が見られたというのは大盤振る舞いすぎやしないでしょうか。まあ、あれでも手持ちのカード全部吐き出したわけでは全然ない、というあたり蒼崎橙子という魔術師のヤバさが伺い知れるというものですけれど。
というか、この人これだけ人外魔境な魔術師たちがぞろぞろと登場している中ですら別格の風格なんですよね。決して戦闘型の魔術師ではないはずなのに、たとえ相手がサーヴァントであってすら負けてる姿が想像できないあの底知れ無さはほんととんでもない。現代の魔術師にも関わらず、神代の魔術に引けをとっていないってなんなんだろう。マジで。マジで。

最後にこの巻で一番キュンキュンした台詞を引用したい。
「いいえ、いいえ。そんなはずありません。拙がライネスを嫌うはずがありません」
グレイとライネスがお互いのこと大好きすぎる件について。尊い!
何気に数あるFateシリーズの中でも屈指の仲良し女子二人組なんじゃないだろうか、この二人。

シリーズ感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 8「case.冠位決議(上)」 ★★★★   



【ロード・エルメロイII世の事件簿 8「case.冠位決議(上)」】 三田誠/坂本 みねぢ  TYPE-MOON BOOKS

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不気味に蠢動するハートレスの足跡を辿るべく、調査していたエルメロイII世とグレイのもとにもたらされたのは、『冠位決議』の知らせであった。
何人もの君主と代行たちが集まるという会議に、無論エルメロイII世も召集されることになる。しかし、このたび掲げられた問題は、貴族主義派、民主主義派の双方を揺さぶり、魔術協会全体を混乱に陥れる陰謀の渦だった。
時計塔の地下に広がる大迷宮と、その生還者。
謎の、連続失踪事件。
そして、いずれ劣らぬ時計塔の支配者たち。
 
『ロード・エルメロイII世の事件簿』、最後の舞台の幕がいま開く――

ひょっひょっひょっ! と思わず変な声で笑ってしまった時計塔の新たに明らかになった新設定。待って、本当に待って。大迷宮と言われるとまあわからなくはないな、というところなんですけど、迷宮は迷宮でもこれまさにダンジョンじゃないですかー! フラットくんがもろに言っちゃってますけれど、これってウィザードリィばりのダンジョンじゃないですか。神秘が絶えつつある現代において、ダンジョンに潜って今地上から消え去ってしまった神秘の品の数々を発掘してくる、しかもダンジョン内にはやっぱり地上からは消え失せた高位の幻想種がうじゃうじゃと。そんなモンスターを倒しながら発掘を続ける者たちが住まう地下都市まで存在し、掘り出した品は時計塔のある部門が一手に買い取ってって完全に「現代にダンジョンが現れまして」みたいな話じゃないですか。いや、現代に唐突に現れたのではなく、神代から延々と存在し続けてきたのだから、意味合いは全然違うんだけど在り方が完全にそれじゃないですか。タイプムーン! これタイプムーンだよね!?
FGOの第一部第4章でのロンドン編にて時計塔の地下に潜った場面あったけど、おおう……。
極悪なのは、一攫千金や成り上がりを目指して地下に潜った魔術師たちは通常では地上に戻れないんですよね。ある一定の条件をクリアしないといけなくて、ある程度の金額を収めたりとか。素材を買い取ってくれる秘骸解剖局は、どうやらメチャクチャ搾取して買取金額買い叩いているらしいし。
カイジの帝愛グループの地下強制労働施設みたいなもんじゃねえか。
いやもう、あんまりと言えばあんまりのド級な設定に、びっくりするわ仰天するわ、あひゃあってなもんである。
件のダンジョン「霊墓アルビオン」こそが、この度の「冠位決議」の議題となってくるわけだ。時計塔の三大派閥のうちの民主主義派と貴族主義派の普段は表に出てこないトップたちが出張ってきて、おうおうお前どうすんじゃい、とばかりに派閥最下位に甘んじているエルメロイ兄妹に激烈なプレッシャーを掛けてくる羽目に。
そもそも、「冠位決議」の議題の内容どころか「冠位決議」が開催される事すら知らず、辛うじて直前に化野さんからのリークのお蔭で事前に構える程度の準備しか整えられなかった情報弱者なエルメロイさんたち。普段の権力争いがおままごとに思えるほどの、本物の化物同士の政治抗争の只中に放り込まれたエルメロイの運命やいかに。しかも、その派閥のどちらかに先代現代魔術科のハートレスの陰がちらつき、件のアルビオンのダンジョンサバイバーにしてハートレスの弟子だった者たちの失踪事件が同時進行で発生していて、自体は錯綜に錯綜を重ねている。
おかげさまで、エルメロイ先生も派閥トップたちとの会談と並行して情報収集と調査をするはめになってしまう。いやもう、本当に同時進行するはめになってるし! ライネスの水銀の支援を受けているとは言え、自分を並列に存在させるとかウェイバー・ベルベットのくせに頑張ってるじゃないですか。普通以上の魔術師なら口笛吹きながら出来る程度のことなのか、これ。ズェピアやシオンの並列思考とは比べるべくもないとは思えるのだけれど、片方で講義と情報収集しながら片方で言葉による切合と探り合いという政治会談を並行してやるって、普通に凄いと思うのだけれど。頑張ってる、頑張ってるよお兄ちゃん。ちっちゃいエルメロイ先生はあざとすぎて笑ってしまいましたが。あれ、ディフォルメじゃないんだ、残念なことに。
ライネス、政治案件は得意じゃない義兄に変わってそちらこそ自分のステージ、と自認してるんだけれど、何気にメンタル脆い所もあって窮地に立たされたり圧倒的不利な状況に追い込まれると結構あっさりと心折れそうになるところあるんですよね。イゼルマでも犯人にされそうになってだいぶくじけてたし、今回も民主主義派の首魁であるマグダネル・トランベリオ・エルロッドの突然の登場と介入に怖じ気そうになった所で、傍らで開き直ってドンと腰を据えて受けて立ってみせたお兄ちゃんに、あれ悪口言ってるようで遠回しにキュンキュンしちゃいました、って言ってるようなもんですよね。なんだかんだと、お互いを頼りにしまくっている兄妹である。どちらが欠けても、時計塔という魔界では生き残れないことを、この難局で改めて感じ取れる次第です。

アルビオンを巡る政治抗争と共にハートレスの暗躍を調べるうちに、浮き上がってくるのはハートレスという謎の人物とロード・エルメロイII世の共通性。お互いに感じ取っている、あれはもうひとりの自分であり、鏡の向こうの逆しまのアリ得た自分だ、という確信。すなわち、自分との対決。シリーズの最終章としては十分以上の主題である。おまけに、ウェイバー・ベルベットの行動原理であり根源ともいうべきイスカンダル王に触れるところも出てきて、まさにロード・エルメロイII世を問う物語になってきた。
シリーズ屈指のジョーカーとも言える蒼崎橙子も再登場しがっつり絡んできた上で、物語が動き出す下準備は完了した。ここから一気に最終巻へ、という予定だったのが上下巻構成から上中下巻になったんですよね。その分密度も濃くなったクライマックス、ここからどう動いていくのか非常に楽しみ。

あとアトラム・ガリアスタ、第五次聖杯戦争がサーヴァント七騎全騎が召喚される前に死亡脱落した、という情報が舞い込んできて、アトラムくん……。

シリーズ感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 7 「case.アトラスの契約(下)」 ★★★★   



【ロード・エルメロイII世の事件簿 7 「case.アトラスの契約(下)」】 三田 誠/坂本 みねぢ  TYPE-MOON BOOKS

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「かの王の墓碑にはこう刻まれている。すなわち、過去の王にして未来の王、と」

決意とともに、故郷へ戻ってきたグレイと、ロード・エルメロイII世。
しかし、彼らを待っていたのは、奇怪極まりない『二周目』であった。
村の地下に広がる大空洞を舞台に、古き因縁と陰謀が渦を巻く。
一方、II世を助けんとするフラットとスヴィンは、アトラス院の院長たるズェピアと対峙していた――。
貌(かお)なき白銀の騎士。
地底を統べる、仮面の女王。
聖堂教会が恐れていた、ブラックモアの墓地の秘密とは。

謎が謎を呼ぶ、『ロード・エルメロイII世の事件簿』第零幕にして第四幕の結末や、いかに。
ズェピアの印象が著しく変わった一幕でありました。まあ「カットカットカットぉ!!」と叫んでるワラキアな人をそもそも体験している人からしてどれだけいるか定かではないのですけれど。人としては完全に破綻しているキャラクターだったからなあ。
そんな彼が死徒とはいえ、まともな人格を有している状態で現れたのは非常に興味深いものだったのですが、想像以上になんというか「アトラスの魔術師」というものの異質性を感じ取れると同時に、このズェピアという人物の複雑さ奥深さを感じさせてくれるお話でも在りました。
そもそも、彼が狂気に侵されたのはアトラスの魔術師として世界を救う方法を見失ったからでもあるわけで、世界は救えないという事実に絶望したからで、未だ狂気に侵されていない彼は……ズェピアはだからこそまだ絶望していない彼なのか。合理の怪物、計算の権化と呼ばれるアトラス院長だけれど、その異質さの向こう側には確かな人間性が垣間見える。その発露、根源は確かに人間であるというところから始まっているのだろう。生まれているのだろう。善悪の彼岸を超えて、多種多様な一面を滲ませる。
なるほど、魔術師という「人間」を描く三田誠先生だからこそ描き出せる「ズェピア・エルトナム・アトラシア」だと、感動した。
そんなズェピアに、愛おしいと言わしめたエルメロイ先生のセリフ。あれは痺れたなあ。
あれこそは愚者のセリフであり、人間というものの著しい可能性の発露なんだろう。そして、先生がたどり着いた真理、というのは大仰がすぎるか。先生は未だどこにもたどり着けずに彷徨い続けているからこそ魅力的で、多くの生徒を導き後押し出来ているのだろうし。でも、最短距離で最適解を選び続けて辿り着くことを、こうやって拒絶してどれだけ遠回りしようとも、悔しい想いを忸怩たる想いを抱えながらも捨て去らずに、目指すところを追い求めているからこそ、魅力的なのだろう。
だからこそ、あの言葉が輝くのだ。只人が言ったからとて妄言に過ぎない。彼の言葉だからこそ、それはとてつもない真摯さなんだろう。
この章は、自らを構成していた殆どを置き捨てて、目を閉じ耳をふさいで逃げ出してきたグレイが、自分が置いていったものの真実を目にする物語だ。人の目に映る真実は、著しく情報量に欠いている。その意味では、かつて経験した事実をまったく別の視点からもう一度体験できるこの再演というのは、凄まじいものなのだろう。図らずも、彼女は覚悟していたもの以上の真実を知ることになる。
自分を取り巻いていた世界の姿を知ることになる。
そう、世界は捨てたもんじゃなく、きっと守るに値するものなんだろう。人理は、命と矜持とホコリを賭けるに値するものなのだ。賛歌だなあ、これは。

今回大活躍だったフラット&スヴィンのコンビですけれど、なんかもう個人主義な魔術師にあるまじき、凄まじいまでのコンビ性能ですよねえ。個々としては結構歪んでいるようにも見えるのだけれど、エルメロイ教室の生徒として、或いはこのコンビとしてあるとびっくりするくらい青少年として健全なあり方をしているように見える不思議。
そのスヴィンくん、相変わらずグレイへの淡い想いに耽溺しているようだけれど、なんか今回いつもにもましてグレイの師匠への慈しみというか愛おしむような様子が増えてきていて、だんだん形勢悪くなってなかろうか。グレイが自分嫌われているじゃなかろうか、という誤解は解けずとも距離感的には徐々に近づけてきているんだけどなあ。

デレっぷりというと、むしろライナスの方がすごくないですか、これ。ライナスってこんな寂しがり屋だったっけ、というくらいグレイが居ないだけでスイーツ美味しくなく感じたり、グレイとお茶会してるだけで安っぽいお菓子でもめっちゃ美味しく感じてしまったり、ともうびっくりするくらいグレイ大好きになっちゃってるじゃないですか。ファーストフレンドに、そんなにハマっちゃったのかこの腹黒お嬢。なんか、どえらい可愛く見えてしまったんですが。
サー・ケイは一貫してムードメーカーでありつつ締めるところは締めてかっこよかったなあ。円卓でも立ち位置も透けて見えるようである。アグラヴェインとは別の意味で苦労症だったんじゃなかろうか。みんなには認識されない部分で。なんというか、さすがの「お兄ちゃん」だったなあ。
ちみっとガレスちゃんに言及していたのがなんかツボでありました。だいぶガレスちゃんのことイジってたんじゃないのか、この人。

シリーズ感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 6.case.アトラスの契約(上) ★★★★  



【ロード・エルメロイII世の事件簿 6.case.アトラスの契約(上)】 三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「人がつくりだした、極小の死後の世界。それこそが墓である」舞台は始まりの地、ウェールズへ!! いま明かされるグレイの過去!?
ついに、物語は『彼女』の故郷に至る。半年前、ライネスとロード・エルメロイII世は、第五次聖杯戦争で勝利する手がかりを得るため、とある辺境の墓地を訪ねていた。だが、一見平凡な墓地と村には奇妙な掟(ルール)と謎が秘められており、そこで遭遇した事件と人々が、後々までふたりを縛り付けることとなったのだ。黒い聖母。ブラックモアの名を継ぐ一族。灰色のフードで顔を隠した、寡黙な墓守の少女。そして、時計塔と並び称される魔術協会のひとつ――アトラス院の院長が姿を現したとき、事件は真に変転する。
タタリじゃー!! これはタタリのタタリじゃーー!!
前回のアインナッシュに引き続き、月姫要素満載でお送りしております、ってなもんでいやまじで遠近で言うならばモロにFateの作品群の一角でありながら、本作最近月姫感がたっぷりなみなみと注がれていて、長らく摂取していなかった月姫成分を堪能しまくれて、ちょっと法悦ですのよさー。
そもそも、今回のグレイの故郷の村というのも、余所の土地から隔絶され独自のルールが課せられていて謎めいた秘密が隠されている、という時点でサスペンス感満載だし、そこどこの隠れ里よという感じで、やはり「伝奇」としての特色も強かった月姫っぽいんですよねえ。
そして、その村の中になぜか来訪者として存在している「ズェピア・エルトナム・アトラシア」。なんか外から来た人が他にもいるってんで会いに行ったら、これが居たとかすんげえビビるんですけれど。しかも、喋る内容がまたアレ極まってるのである。
このFate世界におけるズェピアはタタリ化していない……本家月姫世界。彼が登場する「メルティブラッド」においては彼ってタタリという現象と化してしまっている……のですが、そう言えばアトラス院の院長たるアトラシアの名を冠したズェピアって、生きてりゃ大昔の人だったんですよね。それが今登場してくるとなったら、そりゃ生きた人じゃないわなあ。
まさか、こっちでも死徒化していたとは。しかも、しゃべる言葉の異質さよ。
凄いよね、ここまで頭の構造、思考回路の常人との違い、というか人間から逸脱してしまった、ライネス曰くの「計算の権化」という存在の異常性が、完全に伝わてくるこのキャラの描き方ですよ。狂気とはまったく違う、合理と計算の究極の結果が、すなわち狂気の産物めいた有様になってるこれですよ。
現象化していないとはいえ、これなんかもうタタリと変わらないんじゃないか、とすら思えてくる。半年経って再び今度はグレイ連れて訪れた村が、異様なことになっていて、しかし同じ場所にまったく同じように彼が存在しているのって、なんかもう怖かったんですけど。
アトラス院、みんなこんなだったら怖いけど、さすがにこれは切っ先すぎると思いたい。現院長か院長候補であるだろうシオンは、月姫では屈指の穏健派で(他のヒロインと)話の通じる人だったしなあ。

と、ズェピア登場に沸き立ち、さらにはグレイの故郷の村がブラックモア。月姫にては二十七死徒の一角である黒翼公グランスルグ・ブラックモア由来の村だったり、グレイが村を出てエルメロイ先生の内弟子になるまでにいかなる事件があったのか、という情報がいつ出てくるのかと思ったら、故郷の村がなんかタタリの渦中にあるかのような状態になってて、うわーーー、ってなってたらラストにあれですよ、衝撃すぎる展開。まさかの人物の出現にヒートアップなのですよ。
ってかアッドってそうだったの!? あくまで媒体!? それとも当人!?

シリーズ感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 5.case.魔眼蒐集列車(下) ★★★★   

ロード・エルメロイII世の事件簿 5 「case.魔眼蒐集列車(下)」 (TYPE-MOON BOOKS)

【ロード・エルメロイII世の事件簿 5.case.魔眼蒐集列車(下)】 三田誠/ 坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)で起きた殺人事件は、誰も思いがけない方向へと展開した。新たな戦士の襲撃によってロード・エルメロイII世は倒れ、かの列車もまた大いなる脅威に遭遇する。この危地を脱するため、グレイは過去視の魔眼を持つ代行者カラボー、スパイを自称する少女イヴェットと協力することになるが……。暴かれる魔眼。謎の英霊と死徒の落とし子。天体科(アニムスフィア)の一族たるオルガマリーが気づいた秘密とは。複雑にもつれあった事件の中で、ついに魔眼オークションが開催される――!

死徒ってそう言えばFate世界では月姫世界よりも世界の在り方的な見地から弱体化している、という話でしたっけ。だから、いわゆる死徒二十七祖という呼称も存在せず、月姫世界に居た二十七祖に該当する死徒は存在するものの、二十七祖みたいな括りでは呼ばれていない、と。
それでも、アインナッシュは仔ですらわりと外縁の方ですらどえらいピンチに陥るほどの魔域とかしているわけで、弱体化といっても本当に相対的なものなのだろう。
ってか、魔眼蒐集列車の支配人である死徒って、リタ・ロズィーアンっぽいのか。何気にこの魔眼蒐集列車編って、二十七祖相当の二人が登場……って、両方とも当人は出てないのか。
それでも、クラス的にあれだけれど本物のサーヴァントまで登場し、オルガマリーやカウルスくんのような他の作品から出張ってくるキャラもあり、代行者まで登場し、と何気に盛りだくさんなんだよなあ。
某神父とは関係ないけれど、エルメロイ先生の親友を自称するメルヴィン・ウェインズはあれ愉悦部っぽいし。ただ某神父が生真面目ゆえに性癖を拗らせてしまったのに比べると、こっちは軽佻浮薄であるがゆえに自分の性癖について深刻かつ真面目になりすぎず、適度な楽しみ方に終始しているように見える。人でなしではあるんだけれど、自分から率先してやらかすのではなくあくまで傍観に徹しているようだし、屈折はしていてもウェイバーに友情を以って接している、というのは嘘じゃあないんだろうな、とは思えるんですよね。
まあ魔術師というのは多かれ少なかれ屈折しているものですが、そうなるとやはりウェイバーくんことロード・エルメロイ二世先生は魔術師としては素直なんですなあ。歪んでないとは言わないまでも、歪みに対してさえも率直というべきか。
憧れのイスカンダルへの彼のこだわり、執着というものはウェイバー・ベルベットという少年の人生そのものを大きく歪めてしまったのは間違いないところなのですけれど、面白いことにその歪みは固着することなく、執着が魂を濁すまでに至らず、あそこまで偏屈に変貌してしまいながらもこの人、常に直面してきたことに対して物事を素直に受け止めて、自分自身を修正し続けているのである。
そのイスカンダルの拘りそのものも、歪み凝り固まった状態におかずにそのスタンスを更新し続けている。
もし彼がもっとイスカンダルに対して凝り固まっていたら、ヘファイスティオンとの出会いはもっと破滅的なものになっていたのではないだろうか。お互いに相手を決して認めることが叶わず、絶対否定の応酬と成りかねなかった。
その意味では、ヘファイスティオンはまさに凝り固まったからこそ、サーヴァントとしてこの度呼び出されてしまった、とも言えるのかもしれないですけれど。いや、彼女の場合、生前からずいぶんと拗らせていたみたいだから、サーヴァント云々は関係ないかも知らん。
イスカンダル麾下の中でも孤立しまくってたっぽいからなあ。作中ではその役割故に陣営の中でも特殊な立ち位置だった、という風に語られているけれど、そういう問題じゃないよね。
さて、本作は大胆不敵に大きな括りで囲ってしまうなら探偵ミステリー枠に突っ込めるわけですけれど、シリーズ化した探偵ミステリーものでは途中から探偵のライバル役が出てくるもの。黒幕であり探偵に勝る智者であり、暗躍する繰り手であり、盤上の駒を動かすプレイヤー。
そうした存在が、ついにこのシリーズにも登場してきたわけで、さてもさても、その正体はともかくとして、登場する場所の意表のつき方たるやさすが、というべきかまったく想像していないところからでした。
というか、犯人が予想外過ぎた!
さすがは登場人物が総じて魔術師ばっかり、というミステリーである。もちろん、論理的なルールが破綻するような展開は絶対にないにしろ、その施行されているルールがどのようなものか気付かされなければ、まず察することは不可能に近い。今回の場合は、メタ的な意味で予断してしまう部分があっただけに、そこを極めて鋭く突かれてしまった、という意味でも完全に白旗でした。まったく気づかなかった、という意味でも。
ただ、黒幕敵役悪役が出てきてくれた、と言っても向き合うべきはそれではない。エルメロイ先生にしてもグレイにしても、敵が出てきたからこそ向き合うはより自分そのものになる。
在り方を問われる、というべきか。
その際に視線を向けるのは、敵ではなく自分であり、同時にそれは師であり弟子である。結局、自分ひとりでは完結できず、他者を以て自らに影響を及ぼす。それを成長とも呼ぶのだろう。
グレイはそもそも、魔術師の師としてエルメロイ先生を師事しているのではない。じゃあ、なんの内弟子をやっているのか、というとそのへんはっきりと明言されてはいなかったはず。なぜ、彼の側にいるのか。彼に引き取られてときの事情と理由は存在しても、それが現在もそのままの状態、あるいは停滞したまま、ではないんですよね。
今回もまた、師の葛藤とその克服を見て、改めて自らの在り方を問いかけ、答えを手繰り寄せていくグレイ。そんな彼女を見ていると、エルメロイ先生が決して魔術の師として特筆すべき能力を持っている、だけではないことを噛みしめることができるんじゃないだろうか。
ただ、力を伸ばすだけの先生なら、弟子みんなからこれだけ慕われるものでもないだろうしねえ。それも、魔術師である弟子たちに。
しかし、円卓議決ってプロトアーサーの聖剣だけじゃなくて、こっちの聖槍にも円卓議決の封印存在するんだ。なんだかんだと、必殺技の詠唱は燃えます、燃えます。

1巻 2巻 3巻 4巻感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 4 case.魔眼蒐集列車(上) ★★★★   

ロード・エルメロイII世の事件簿 4 「case.魔眼蒐集列車(上)」 (TYPE-MOON BOOKS)

【ロード・エルメロイII世の事件簿 4 case.魔眼蒐集列車(上)】 三田誠/坂本みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「見ることは、人間の歴史で最初の魔術だ」魔眼のオークションへと招待されたエルメロイII世を待ち受けていたのは、新たなる事件だった。
魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)。それは欧州の森をいまなお走り続ける伝説。とある招待状によって巻き込まれたロード・エルメロイII世は、天体科(アニムスフィア)の一族たるオルガマリーたちとともに、魔眼のオークションに参加することとなる。しかし、エルメロイII世にとっての目的はオークションにあらず。彼にとって欠くべからざる――奪われた誇りを取り戻すことだった。魔眼を欲する者と、魔眼を疎む者。秘中の秘たる『虹』の位階の魔眼とは。幾多の瞳の見つめる中、第三の事件が幕を開く。
オルガマリー所長、この年代だとまだ幼女範囲内!!
とはいえ、このオルガマリー・アニムスフィアはFGOのカルデアの所長をやっていた彼女とはまた別の時空の彼女であり、またエルメロイ教室のメンバーであるカウレスくんはFate/Apocryphaの彼とはまた違う彼なのである。
でも、Apocryphaのカウレスくんも聖杯大戦のあとロンドン塔に来てフラフラしているうちにエルメロイ先生に引っ張り込まれて師事するようになったというので、縁は深いのだろう。
科学や物質文明にまつわる技術を使うことにためらわないなど、魔術師らしくないところはカウレスくん、先生とよく似ているしそのコンプレックスも大いに共通するものがあるだけに、エルメロイ先生としても彼には思う所あるのかもしれないけれど、カウレスくんって魔術師っぽくはないにしても、その探究心や魔術に対する真摯な向き合い方はなかなかキレている、というのはグレイちゃんも評しているところですし、優しい心を持ちながらも魔術師としての非情な判断も出来るという鋼のメンタルの持ち主ですし、他の面でも総じて卒なくこなすんで大変便利な子なんですよねえ。
エルメロイ教室というと、そりゃもう魔術師はヤバイ人種というのとはまったく別の種類のキャラがヤバイ、という子たちばかりなので、その中で常識的で優秀で有能、というカウレスくんのそれは珠玉の価値を持っているんじゃないだろうか、と今回何くれとなく先生やグレイの身の回りを整えサポートし支援しまくってくれていた彼を見てるとしみじみ思うところでありました。これが他の弟子連中だと、エルメロイ先生の胃がマッハでスパークって感じになりますし。
てか、既に不意打ちで登場したイヴェットがその登場だけで大いに引っ掻き回してくれましたしねえ。
こんな弟カウレスくんに当主の座をぶん投げて出奔してしまったというフィオレお姉さん、いったいこへ行ってしまったのか。Apocryphaで、彼女の足の不随は魔術回路によるもので魔術師として生きるのを諦めれば、歩けるようになるという話だったので、こちらの世界の彼女はそちらを選んだということなのか。
カウレスくん、いきなりの姉の出奔で当主の座を押し付けられるわ、フィオレを戻すために命を狙われるわとかなり酷い目にあっているのに、別に姉のこと怒ってる節もないあたり、出来た子だなあ。

さて、ついつい登場してきた見覚えのあるキャラクターについてばかり触れてしまったわけですが、今回はまた舞台となる場所もエキセントリックである意味ドラマティック、そしてファンタジックである。ミステリーものにおいては、ある種の懐旧とロマンを覚えるシチュエーションかもしれない。
トレインミステリー。列車の中の殺人。
いわゆるクローズドサークルと言われる舞台設定の中でも、これが特殊なのは舞台となる場所が動き続けている、というところであり、場合によっては渦中の混乱の中で予定外の場所へと運ばれていく、という他ではありえないトラブルも舞い込んでくるところにある。
本作においても、この上巻の最後において予定外の場所へと続く線路へと乗ってしまい、という展開が待っているのだが、何しろ本作はTYPE-MOONの世界であるわけで、迷い込む場所も尋常ではないところなのだ。というか、話には噂には何度も聞き及んでいたところだけれど、実際にお目にかかるのは初めてだぞ、あそこ!
「魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)」という単語だけで陶酔してしまうようなワクワク感をもたらしてくれるシチュエーションでありまするのに、他作品からも潤沢に人材を集めた上で魔眼についてなど、エルメロイ先生の講義を聞きながら謎めいた事件の解決を通して、そこに関わる魔術師たちの、おそらく一番柔らかいであろう「人間」としての部分を詳らかにしていく、このシリーズってなんとも贅沢だなあ、と味わいを噛みしめるのでありました。
様々な出来事が既に山程起こっているにも関わらず、まだ実質何も起こってないんですぜ。
下巻の展開が楽しみすぎる。

1巻 2巻 3巻感想

ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎 ★★★☆  

ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎 (講談社タイガ)

【ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎】 三田誠 講談社タイガ

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呪いを招く特殊文化財を専門とする、神祇鑑定人・九鬼隗一郎。就職活動に失敗した夏芽勇作の運命は、彼と出会ったことで、大きく変化してしまった。魔術に傾倒した詩人・イェイツの日本刀、キプロスの死の女神像、豊臣秀吉が愛した月の小面。実在する神祇に触れ、怪奇な謎を解くうち、勇作自身の秘密も引きずり出されてしまう。呪いと骨董と人の想い。相棒が導き出す結末は…!
冒頭から全裸で登場したから、というわけではないのでしょけれど、九鬼さんのこの匂い立つような男の色気が凄まじい。四十前後の年齢ながら引き締まった肉体に鬼瓦のような容貌、そこに眼帯が片目を覆っている。いわゆる優男が醸し出す色気ではない。
だが、男臭いというとまた異なるのである。その物腰は静謐で美しく、言葉遣いは年下の後輩にも丁寧で誰に対しても礼儀正しい。所作や振る舞いそのものに整った美しさが感じられるのである。
女だから男だから、という性別関係なく、思わず魅入ってしまうような何かが感じられると同時に、その深奥まで引きずり込まれそうな山奥の湖のような神秘性すらも感じられてしまう。
かと言って、近寄りがたい人物かというとそうでもなく、表情はあまり変わらないながらも勇作くんの印象だと思いの外感情豊かでその端々から垣間見えるそうで、昼食を取っているシーンなどなるほど黙々と食べているようで何気に一つ一つの食材、料理の品の味や見た目を堪能して楽しんでいる様子が伺えて、ある種の可愛げすらも感じ取れる。
しかし、かと言って人畜無害の人物かというと、当然のごとく正反対なのであろう。彼は誠実である、依頼人や関係者の身の安全に気を配り、最悪を避けるようにきちんと立ち回り、一方で法や業界のルールを逸脱すること無く、秩序に反すること無く事件を収めていく。
でも、恐ろしい人物なのだ。特殊文化財というモノに魅入られ、それを最上至上として他を顧みることなく動けてしまう男なのだということを、勇作は彼とともに事件を解決する過程でそれを実感していくことになる。
魔術とは、呪術とは、呪いとは、すべて思い込みの産物である。
と、九鬼さんをはじめとした深くこの業界に関わる人々はそう明言して憚らない。その上でこうのたまうのだ。
そのような「思い込み」に頼らざるを得ないほどに追い詰められたり、深淵に嵌った人々に対しては同じくその思い込みを介した仕儀によってしか解決できないことがある、と。
魔術の実在の定義ってのは、こうしてみると解釈一つ、立ち位置一つでこうも変わってくるものか、と深くうなずかされる。魔術が実際に存在するか、なんて本当に視点一つなのだろう。現実においてだって、考え方によっては魔術に定義されるであろう事はいくらでも存在するのだ。安易に超常のものと捉えてしまうには、魔術という枠組みはあまりに広く底なしなのである。
それでも、理を以って語れるからこそ「術」なのであり、その解体もまた理を以って成せるのである。その理が、常識の範疇にとどまっているかはいざしらず。
このあやふやにして否定も肯定もせず、いやどちらもしているのか。この思い込みによって成立し、だからこそ現実にすら作用しているこれら、各事件における特殊文化財が巻き起こす、或いはそれに囚われた人々が織りなす出来事は、なればこそ面白く興味深く。関わる人々の踊り狂う様がまたゾッとするような人間模様になっていて、唆らされるんですよねえ。
また、その呪によって悪いことばかりが起こるのではなく、地下アイドルのあの娘が知らず成立させていたように、言祝ぎに値することまで起こってしまっていたりするわけで。
最初の刀剣にせよ、女神像にせよ、そして最後の月の小面にせよ結局は人間の想いが道具のありようを決定づけているわけで、さて道具に人間が振り回されているのか結局人間が道具を振り回しているに過ぎないのか。いずれにせよ、それを引き起こす特殊文化財に九鬼さんがああものめり込んでしまっている、というのは理解出来るし、彼がそれを制御するために自分を枠組みの中に置いている、という理性は尊敬に値するのである。確かに、ついていくの大変だろうけどなあ。
いずれにしても、この「魔術」という概念に対する地に足の着いた解釈やアプローチからの、おどろおどろしい特殊な現象の発生、その根源に潜む人間模様を描き出し、そこに人間讃歌めいた肯定を……人間の悪しき部分を浮き彫りにさせながらも、最終的に人の善性や信じるに足る部分を描き出すところなんぞは、三田誠先生らしさが刻み込まれている作品でした。歯ごたえのある面白さだった。

しかしこのジンカン。宮内庁神祇鑑定人という名義からしても、ちゃんとした宮内庁の職員の話なのかと思ったら、元は宮内庁の部署だったにも関わらず、現代における組織とか予算とかの問題から組織外の放り出された外部の「宮内庁指定業者」なのである。下請けである。
どの業界も世知辛い世の中でありますなあ。

三田誠作品感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 3.case.双貌塔イゼルマ(下) ★★★★  

ロード・エルメロイII世の事件簿3 case.双貌塔イゼルマ(下)【書籍】

【ロード・エルメロイII世の事件簿 3.case.双貌塔イゼルマ(下)】 三田誠/坂本みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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双貌塔イゼルマ。至上の美を体現する、双子の黄金姫と白銀姫。そのお披露目で起きた殺人事件は、新たな人物――アトラム・ガリアスタとその部下たちの乱入によって、さらに混迷を深めることとなった。彼らに対抗すべく、エルメロイ教室のフラットとスヴィンは師の制止を振り切って暴走し、冠位(グランド)の魔術師・蒼崎橙子は愉しげに観察する。入り乱れる魔術師たちの戦いの中、ロード・エルメロイII世は、美しき死の謎へと挑むが……!魔術と美、陰謀と闘争が交錯する『ロード・エルメロイII世の事件簿』第二幕の結末を見よ。
これフラットくんだけじゃなくて、スヴェンくんの方も十分問題児じゃないか! いや、エルメロイ教室は全員問題児って言われてるそうだから当然ちゃ当然なんだろうけれど、フラットくんのアレっぷりが目立ってたんで突出しているのかとも思ったけれど、この様子だと筆頭ではあっても突き抜けてはいなさそうだなあ。ルヴィア嬢だって近未来ではアレになってしまうわけですし。
しかし、これだけ才ある若者たちの才能を開花させておきながら、それにいちいち嫉妬している先生も大変だなあ。それでいながら、その弟子を護るために自分の人生そのものとも言える「財」を賭けてしまうんだから、この男は……。
しかし、蒼崎橙子やその師匠、のちに第五次聖杯戦争でマスターとして参加することになるアトラム・ガリアスタなどの逸材たる魔術師たちを相手に回しながらも、キャスティングボードを握り続けるのはこの男なんですよね。っていうか、橙子さんを敵に回しながらよく生きてるもんだよ。しかも、この橙子さん、魔法使いの夜並にヤバイ雰囲気まとったバージョンなのに。
だいたいさー、橙子さんあれだけの奇跡の呪物を好奇心だけで使い潰しちゃうとか、そりゃみんな目を剥いてひっくり返るに決まってるじゃん。エリクサー使えない病の自分からスルと発狂モノである。ちなみに、FGOでも聖杯まだ誰にも使ってないww
石油王ことアトラムくん、そもそもメディアじゃなくて最初ジークフリートを喚ぶつもりだったのかー……いや、性格的にアポのおっちゃんよりも合わないでしょう、それ。ただ、メディアに嫉妬しまくった挙句に無能の極みみたいな扱いでボロクズにされてしまった末路から想像していたよりも、遥かに有能でしたたか、という印象なんですよね、彼。現代の魔術師としては非常に有能だったんじゃないだろうか。天候魔術なんかでも手放しで褒められてたし。ただ、その魔術自体は年代を経ていないこともあって確かに二流なんですよね。その魔術を使う技術、戦闘技能に関してはまさに一流そのもので、だからこそ魔術使いと誹られることになるのだけれど。それに激高する魔術師としてのプライドの高さがこそが彼の末路を決めてしまったのかも。敢えて自分を魔術使いと位置づけるならメディアともうまくやれたんじゃないだろうか、とすら思う。まあ無理か。あのアトラムが示したエルメロイ先生への共感というのは何だったんでしょうね。あくまで上から目線ではあったものの、見下すというほどでもなく、えらい好感示してましたし。彼の魔術への自信と歴史の浅さのコンプレックスが、エルメロイ先生の在り方に何か思う所を示したのだろうか。
さて、事件の方はというとそもそもミステリーで双子ネタというところから予想できる範囲は狭まっていたものの、何しろ黄金姫と白銀姫のインパクトがすごすぎたせいでまさに盲点を突かれたという感じだった。というか、これ橙子さん居る前提じゃないと成り立たないしなあ。色んな意味で便利過ぎる。技術も然ることながら、その自由過ぎる精神性といい。この人、間違いなく青子先生と姉妹だよ。
しかし、この事件の真相に近づくきっかけがグレイの過去に繋がるとは。やっぱり彼女、最重要ヒロインなのね。単に「似ている」わけじゃないのか。そりゃそうだよなあ。偶然なんかだけで成立するほど、魔術というのは、魔術世界の闇というのは浅くはないか。そんなグレイにえらい優しいライネス嬢。性格的にというかドSの性向的にグレイの抱いている闇とか性格とかめっちゃ弄りたそうにしているくせに、我慢しているところは偉いものである。まだ本人が意識しているかはわからないけれど、ほんと友達なんだ。
にしても、グレイの死神の鎌が単なる「槍」の偽装だけではなく、色んな武器に変形するのはこれ浪漫だなあ。趣味全開じゃないですかー!! よし、もっとやろうぜ!

1巻 2巻感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 2.case.双貌塔イゼルマ(上) ★★★★☆   

ロード・エルメロイII世の事件簿 2 「case.双貌塔イゼルマ(上)」 (TYPE-MOON BOOKS)

【ロード・エルメロイII世の事件簿 2.case.双貌塔イゼルマ(上)】 三田誠/坂本みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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双貌塔イゼルマに住まう、双子の姫。至高の美を持つとされる黄金姫・白銀姫のお披露目に、エルメロイII世の義妹であるライネス・エルメロイ・アーチゾルテも参加することとなった。時計塔の社交会となれば派閥抗争もありえると、ボディガードとしてグレイを連れて行ったライネスだが、そこで起こった事件は彼女の想像をも超えていた。三大貴族。冠位(グランド)の魔術師。ロード・エルメロイII世は、『時計塔』に巣くう闇をいかにひもとくか。魔術と美、幻想と陰謀とが交錯する『ロード・エルメロイII世の事件簿』、第二幕開演。
蒼崎橙子だぁ!! この人、ほんと型月作品に関しては最多出場してるんじゃないだろうか。直接登場しなくても、存在を示唆するようなセリフや描写はありますしね。そう言えば、Apocryphaで獅子劫さんが吸ってた煙草、最後モードレッドと一緒に吸ってたあれも、橙子さんからの貰い物じゃなかったっけか。空の境界で橙子さんが吸ってたのと同じ銘柄だったような。
いや、それはそれとして封印して解除されたの!? なんかしら正史では裏だか表だかわからないけれど進行してるなあ。それに、月姫世界と同じく、やっぱり妹の口座に勝手にツケてるのね。そりゃ青子先生怒るよ。
この橙子さん、エルメロイとは多大な因縁があって、というか先代ロード・エルメロイが聖杯戦争で切嗣に魔術回路ずたずたにされて再起不能になりかけたとき、橙子さんの人形技術、というかもうここまで来ると義体化技術だよね。その御蔭でなんとか動けるようになった、という経緯があって、エルメロイ派は顧客であったという縁があったわけだけれど、まあだからといってそれだけでまたぞろサービスしてくれるほど、橙子さんという人は甘い人ではないわけで……。いや、空の境界では結構いい人だったんだけどなあ。本作では実に魔術師らしい闇属性、どちらかというと「魔法使いの夜」寄りのシャープエッジな橙子さんという感じで、実にヤバげ。
普通、というと語弊があるけれど、ライネスくらいの優秀な魔術師から見ても蒼崎橙子ってそんなヤバイ魔術師なのか。冠位(グランド)というと、昨今流行りのFGOでも特別な階位であるのだけれど、魔術界としても冠位(グランド)の階位の魔術師、封印指定を食らうほどの魔術師、というのは異常極まりないって事なんでしょうねえ。まあ橙子さんはどの作品に出ても確かにあからさまなくらいヤバくて特別な魔術師、という存在感は一切ブレない凄い人なのだけれど。
それが今回はあっち側、というのはちょっと気が遠くなりそうな案件なんですけど、そうするのよロード・エルメロイ二世。

ともあれ、本作シリーズ第二作目は、語り部が前回のグレイから変わって、エルメロイII世の義妹であるライネス・エルメロイ・アーチゾルテが務めることになる。
彼女こそ、ウェイバー・ベルベットをエルメロイII世へと仕立て上げた黒幕であり、エルメロイII世の首根っこを押さえている繰り手なのだと、そう思っていたんだけれど。
うん、もうちょっとこう、裏でふんぞり返ったままエルメロイII世の苦闘を舌なめずりしながら鑑賞して楽しんでいる、というタイプの人だと思ってたんですよね。ただ、全てを見透かすように見下ろしているフィクサーであって、本編にあんまり絡んでくるようなキャラじゃないんだと。
ところがどうしてどうして。
いやうん、ドS傾向のある娘だし、エルメロイII世に無理難題押し付けて虐めたり弄ったりするのが好き、というアレな趣味のお嬢さんだけれど、なんかもしかして…ライネス嬢って普通にお義兄ちゃんのこと大好きなんじゃね?
没落したエルメロイを、分家の出でありながら当主として立て直しにかかり、ロード・エルメロイ二世の擁立というアクロバットまでやってのけて復旧を図っているその手腕といい、それこそ魔術師としての腕はともかく、政治家としても謀略家としても貴族の当主としても飛び抜けた逸材なのかと思ってたんだけれど、今回の事件における素直過ぎる立ち回りと、罠にても足も出ずに絡め取られてしまった様子なんか見ていると、ルヴィアなんかと比べても、年齢にしては優秀なんだろうけれど決して「異常」とは程遠い、普通の才女なんですよねえ。
でも、その普通の才女が今立て直しているエルメロイの復旧具合はやっぱり図抜けていて、それだけこの娘頑張ってたんだろうなあ、というのが何となく透けて見えてきて、ぐっと来てしまったんですよ。こういう、才能だけでは及ばない領域にまで手を伸ばして頑張っている、というのはそれこそエルメロイII世にももろに被るわけで、彼が何だかんだとこのイジメっ子な義妹のことを親身になって気にかけている理由も何となくわかってくるんですよねえ。
そりゃあ、友達いないだろう、と指摘したら普通に動揺する娘にそんな害意とかモテナイよなあ、彼では。
そしてライナス嬢の方も、完全に詰められて絶体絶命どころか投了を宣言せざるを得なくなるほど追い詰められた時に、颯爽と自分を助けるために現れてくれるというあのタイミングを前にして、あの否定否定否定の折り返しは自分に言い聞かせているようにしか見えなくて、つまるところめっちゃトキメイてるじゃないか、妹様よ!!
大好きかよ!!

冤罪の犯人が確定させられそうになった瞬間に、探偵役が颯爽と現れて待ったをかける、というのはミステリーの王道ではあるのですけれど、こんな格好いい王子様みたいな登場のされ方をされたら、そりゃあクラッと来るのもすごくわかるんですけどね。探偵登場シーンの王道とはいえ、ここまで決まったシーンの演出になるのは早々ないことでしょうし。
実際はめっさ走ってきてようやく辿り着いた、というのはやはりさすがウェイバーくん、というところなんでしょうけれど。
一巻と違って、今回の事件は上下巻構成。殺人事件の犯人はいったい誰で、いや魔術師が絡む事件では誰がとかどうやって、とかは意味がないんだっけか。そもそも、蒼崎橙子がここにいる時点で死体が果たして本物かどうかから疑わざるを得ませんもんね。なにしろ、本人と寸分たがわぬ本物でしかない偽物を拵える封印指定(元)の人形師ですし。
そもそも、この事件はなぜ起こったのか。見事に盛り上げてくるなあ。引き続き、次巻へ!

1巻感想

ロード・エルメロイII世の事件簿 1.case.剥離城アドラ ★★★★☆  

ロード・エルメロイII世の事件簿 1 「case.剥離城アドラ」 (TYPE-MOON BOOKS)

【ロード・エルメロイII世の事件簿 1.case.剥離城アドラ】 三田誠/坂本みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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第四次聖杯戦争から十年後、少年は君主(ロード)となった―――。Fateシリーズに連なる魔術ミステリー、ここに開幕!!

『時計塔』。それは魔術世界の中心。貴い神秘を蔵する魔術協会の総本山。この『時計塔』において現代魔術科の君主(ロード)であるエルメロイII世は、とある事情から剥離城アドラでの遺産相続に巻き込まれる。城中に鏤められた数多の天使、そして招待者たちそれぞれに与えられた〈天使名〉の謎を解いた者だけが、剥離城アドラの『遺産』を引き継げるというのだ。だが、それはけして単なる謎解きではなく、『時計塔』に所属する高位の魔術師たちにとってすら、あまりにも幻想的で悲愴な事件のはじまりであった──。魔術と神秘、幻想と謎が交錯する『ロード・エルメロイII世の事件簿』、いざ開幕。
かつて、征服王と呼ばれた英霊とともに第四次聖杯戦争を駆け抜けた少年が居た。7柱の英霊と7人のマスターによる人知を超えた戦争を生き残った魔術の才能を持たぬ彼は、十年の時を経た今、「ロード」を引き継ぐ者として、「時計塔」の地にあった。
人呼んで、ロード・エルメロイ鏡ぁ
これはかつて何も持たざる少年だった男の物語である。
それを手がけるのは三田誠氏。【レンタルマギカ】をはじめとした古今の魔術を題材とした作品を手がけてきたかの人である。三田さんの描く濃密で深淵と闇に親しく、しかして人の業揺蕩う魔術世界は、タイプムーンのそれと親和性が非常に高いと前々から思っていましたが……これほどか!
事件簿のタイトル通り、常識的な物理法則が通じない魔術界の話でありながら、クローズドサークルにて発生していく連続殺人事件を取り扱ったミステリー小説としての皮をかぶっているのだけれど、これがまたこれでもか、というくらいにタイプムーン世界の魔術界としての物語なんですよね、これ。
「根源の渦」と呼ばれる真理にたどり着くことこそがすべての魔術師たちの存在理由。その為に、ありとあらゆる犠牲を許容し、倫理を投げ打ち、未来すらをも消費する。純粋な魔術師であればあるほど、人の枠を踏み外し魔術師という別の生き物へと成り果てていく。そんな魔術師としての闇、魔術師としての業、その深さ、その闇、その陰惨さこそがかの世界の根底を担う色彩なのである。
そんな魔術師としての真理、魔術に溺れた者の業はロード・エルメロイ鏡い鬚呂犬瓩箸靴薪仂貎擁たちにも色濃く根付いている。それは、他作品ではほぼ全部に渡ってコメディ・リリーフとして活躍するルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト嬢ですら変わらない。
というか、本作に登場するルヴィア嬢は恐らく唯一と言っていいほど希少なシリアス一辺倒の彼女であり、純粋な魔術師として描かれる彼女であろう。魔術師としての歴史も、伝統も、闇も、業もおぞましさも醜悪さすらも毅然と抱え込んだ、強大にして恐ろしく、そして美しい美貌の魔女。
であると同時に、彼女の清廉にして高潔、純粋な人となりが些かも損なわれず描かれているのは見事という他ない。見惚れるような格好の良い女性として、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは描かれている。
人として踏み外した人の皮をかぶった怪物である魔術師たち。彼らが望む頂へとたどり着くには、人としての在りようはむしろ邪魔でしか無く、魔術の高みへと登れば登るほどにそれは人から外れていく。それが、魔術師というもののはずなのに。
真理の探求、混沌の渦への到達に至るための一助を得るために剥離城アドラに集った魔術師たち。彼らを襲った事件、そしてそれに伴って彼らが蠢き、暗躍し、跋扈した結果生み出された謎、闇、惨劇と妄執を、一つ一つ丁寧に取り払い、時として吹き飛ばして、消され伏され隠された先から取り上げた時、そこに浮かび上がったのは。
あまりにも人間らしい、人らしい、心の在りようであり、業であったというのはあまりにも皮肉な話であり、そしてそれこそがタイプムーンが綴ってきた物語らしい姿だったのである。
どれほど人の道を踏み外しても、人の枠を逸脱しても、どこまでいっても魔術師は……「人間」なのだと。
苦しみも安らぎも、妬みも憧れも、優しさも怒りも、愛も憎しみも、あまりにも人間らしい感情であり、たとえどれほど高みを目指そうと、魔術師はそんな感情を持つ人間であることから逃れられない。
これは純粋な魔術師たちの物語であると同時に、どうしようもないほどに「人間」たちの物語であった。登場人物の一人ひとりが、生粋の魔術師として在りながら、見事なまでに一人の「人間」として描かれていた作品だった。
そして誰よりも主人公である彼が、誰よりも魔術を愛し、高みに焦がれ、それでありながら才の欠片もなく底辺を這いずるしかなかった少年は、才の無さこそそのままに、その魔術師らしくない在りように大人の体を伴って、今もこうして手の届かない天を仰ぎ見ながら歩いている。
ウェイバー・ベルベット。彼のその有り様が、成長した姿が、なんとももどかしく、懐かしく、格好良い。
彼の背を見て、その歩みの後ろをとぼとぼとついていく弟子の少女。グレイこそ、未だ魔術師ではなく人間ですらない存在なのだろう。そんな希薄な彼女の目に、じっと逸らさず見つめ続けている師の姿がどう映っているかは、本編をご覧じていただきたい。ただ、彼が彼女に指し示しているのが魔術の道か、それとも全く異なるモノなのかは、さて大人の体を成しながらまだどこにも辿り着いていないだろう若きロードにもわかっていないのだろう。革新的であり新世代の寵児として時計塔でも注目の的となっている名物講師は、ただもがいてかき集めたものを形に整え直しているだけで、何かの確信を持って指導を行っているというわけではないのだろうから。導くではなく彷徨っているというに相応しい師の姿に、弟子が何を見出すのか。
少年から大人になった彼の物語は、まだまだ道半ばである。ああそれこそ、ワクワクする面白さだ。

三田誠作品感想

創神と喪神のマギウス 2 ★★★★   

創神と喪神のマギウス (2) (ファンタジア文庫)

【創神と喪神のマギウス 2】 三田誠/曽我誠 富士見ファンタジア文庫

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創神。それは神を顕現し、人の限界を超える新世代の魔術。万能の力を得るが、16歳を過ぎれば失われる限定の契約。ある日、斑鳩学園の生徒・初瀬恭真から、創神使いとしての訓練を依頼された破城蒼士郎。恭真には創神の力で成し遂げたい想い、ひとりぼっちの少女・阿頼耶を助けたいという想いがあった。一方、蒼士郎は創神使いの才能の片鱗を見せる恭真に、才気あふれたかつての教え子・鷹羽蛟を重ね合わせる。だが、蒼士郎の日常を『戦争』の因縁が蝕もうとしていた。「俺がこの街に来た目的、それは“黒絶公”だ」蒼士郎は自らの因縁を断ち切るために戦場へと赴く―
これ、元々2巻完結構成で作ってたのかー。世知辛い世の中だなあ、と言いたい所なのだけれど、どうも続きも出せるっぽいので是非是非シリーズ化して欲しい。
ただ、長期シリーズは難しい設定なのかなあ。なにしろ、主人公がロートルである。本来なら失われているはずの力を17歳を越えても維持しているものの、能力自体は全盛期には程遠く、ポンコツもいいところ。ヒロインのひいろは言わば絶頂期だけれど、そろそろリミットも近づいているわけで。
いや、そういう個々人の能力的なものではなく、気構えというか蒼士郎にしてもひいろにしても、過去の戦争とは決別して新しい人生を歩んでるんですよね。最前線でガチガチ武器を振るう話ではなく、これってすでに終わった話のまだ燻っている残滓にロートルが後始末を、ケリをつける話なのである。終わった話をちゃんと終わらせて、新しく始めようとしている次の世代に引き継ぐお話なのである。
面白いのは、その古い世代のロートルである主人公がまだ十代ってところか。この創神使いとしては終わった老人でありながら、人間としてはまだ大人になりきっていない若造、という乖離が蒼士郎という青年を非常に魅力的に作り上げている。
創神使いとしては、四王の一角として名を馳せ、多くの優秀な創神使いを育てた名教官として、今は若き高校教師、先生として老成し人生の酸いも甘いも噛み分けて、多くの若者の人生を背負い、担い、見守ってきた先達としての雰囲気を纏いながら、ひいろとの関係ではもろに初々しい異性を意識する初な若者の顔を見せる。
うん、特に一巻から見違えたのがひいろとの関係なんですよね。お互いに正体を知り、戦後の世界でどう生きるかについてわだかまりや心残りに決着をつけ、黒絶公と剣帝としてではなく、ただの教師と生徒として、それ以前にお互いにただの初めての友達として、何の柵もない一個の人間として寄り添い合う関係なんである。
戦争も、創神使いも過去の一切が関係ない、ただの破城蒼士郎と朱桐ひいろの日常が始まっているのである。過去の因縁など関係ない、引きずらない、新しい日々がもうこの二人の間でははじまっているのである。
はじめてみると、これがまた甘酸っぱくて面映ゆくて。
実のところ、この二人の青春模様はもうちょっとじっくり堪能したかった。きゅんきゅんときめきたかった。
しかし、この第二巻の本筋は蒼士郎の師としての、教師としての、教官としての、かつての弟子と今の弟子と向き合う話なんですよね。
蒼士郎の、先生としての在り方が問われ、その教えがどれだけ弟子たちに届いているか、という話であり、すでにロートルになってしまった人間が、それでもかつての、そして今の弟子たちの信に応えようとし、弟子たちもまた師の教えに忠実たらんとする話なのである。
初瀬恭真が示してくれた、新しい時代の創神使いの、強さや破壊の力だけが肝心ではない、新しい力の使い方、それは蒼士郎が、ロートルが胸を張って後を託すに足る証明だったんじゃなかろうか。わりと、師弟愛というか男の話だわなあ。
誰も何も間違っていなくて、だからこそその正しさが悲劇をガツンと蹴っ飛ばしてくれる話でもあるわけだ。そして、熱くなってる男共の背中をそっと支えて押してくれる、とびっきりに良い女達。
三田さんの作品は、こういうすこぶるカッコいい男女が佇んでいてくれると、本当に面白い。だからこそ、これはまだまだ続きが読みたいのであります。

1巻感想

創神と喪神のマギウス ★★★   

創神と喪神のマギウス (ファンタジア文庫)

【創神と喪神のマギウス】 三田誠/曽我誠 富士見ファンタジア文庫

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創神。それは、自分だけの『神』を使役する新世代の魔術。“管理軍”が秘匿し、16歳を過ぎれば失われる限定の契約。彼らが引き起こした『戦争』から生還し、18歳を迎えた破城蒼士郎は念願の学生生活を始めるはずだった。初めての友人・朱桐ひいろともいい雰囲気で、希望に胸を躍らせて…だが、青年を迎えたのは、思いも寄らない教師という立場と、終結したはずの『戦争』だった。“管理軍”に襲われた少女・七星悠香を救うため、蒼士郎は喪われた神の名を呼ぶ!覚醒と加速の召喚魔術アクション、開幕!
ああ、これって「戦後」を語る物語だなあ。終わったはずの戦争が、個々人の中では様々なカタチで終わらずに続いている。
本来なら18歳までの子供たちなんていうのは、未来に向けて助走している段階のはずですよ。それが、思春期にくぐり抜けたあまりにも鮮烈で過酷な時間が、彼らに与えられるはずだった未来を生き残ってなお、予後のように感じさせている。それぞれに、確固たる志を以って戦っていたならばなおさらに。自分たちが戦うことで、叶えたい未来の姿が、世界のカタチがあったならばなおさらに。戦争が終わったあとに実際にカタチとなった戦後の世界に、不満や違和感、こんなはずじゃなかった、という思いがわだかまる事もあるのだろう。
自分が命を賭して戦ったのは、こんな世界を作り出すためじゃなかった。あれほどの犠牲を払ったのは、何のためだったのか。これだけ、おのが手を血に染めて、同年代の子供たちを殺して殺して殺しまくって、叶えた世界がこんなものだったのか。
破れ負けて、「戦後」の世界に追い落とされた者も然ることながら、勝った側とて勝った側だからこそこんなはずじゃなかった、と納得行かない気持ちが渦巻くものなんだろう。
まだ二十年も生きていない幼い子供たちが、あまりにも大きくて重い負債を負いすぎている。その後の長い長い人生にずっと引きずり続けなければならないとするには、あまりにも重いものを。
彼ら彼女らの中で、戦争はまだ終わっていないのだ。だからこそ、どんなカタチであれ総括は必要になる。形式的なものではなく、それぞれの中でしっかりと決着をつけるための戦いが、過去を過去へと押しやるための納得が。
それを、大人ではなく当事者であった破城蒼士郎にやらすあたり、また酷な話なんだろうけどね。それが当事者にしか共有できないモノであったとしても、だ。
そして、実際問題としてかつて戦ったモノたちを愚弄するかのように、あの戦争を終わったものではなく、もう一度再開しようとする輩も暗躍するわけで、誰も彼もが様々なカタチで終わらない戦争を戦後に引きずっている。もっと、報われるべき子供たちなのになあ。当人たちが、あまりそれを望んでいないというのも辛い話。一度学校に通いたい、なんて願いを懐き、それを強請った蒼士郎はむしろ健全で前向きですらあるんじゃないだろうか。彼自身、かつての戦争を否応なく引き釣り続けざるを得ない身の上であったとしても、だ。
そんな彼だからこそ、報われようともせず負わなくても良い責任を追い続けて、自身の戦争を終えることの出来ないひいろを導けるのかもしれないし、未だに戦争を続けようとする意思に立ち塞がることが出来る資格があるのだろう。
なかなか生臭いし悲惨なバックグラウンドがゴロゴロと横たわっている話ですけれど、それ以上に足掻きながら殴り飛ばすように、追いすがってくる過去と戦って未来を掴もうと藻搔く話は大好きなので、ここから盛り上がっていって欲しいなあ。

三田誠作品感想

クロス×レガリア 王威の決戦 4   

クロス×レガリア 王威の決戦 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 王威の決戦】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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ひとつの戦いに幕が降りた。それは謀略も奇策も西王母の力の前にただただ薙ぎ払われる、それだけの結末だった。「俺には取り戻さなきゃならない、守ると約束した助手がいる」馳郎が再起する傍ら、ついに姿を現す白鳳六家、序列第一位・真朱真冬。彼女の登場により、“おに”と人の戦いは馳郎、ジン、西王母―王権を持つものが王の在り方を示す戦いへと舞台を移す。しかし尚も戦況は悪化の一途をたどり、馳郎はナタを守るため!?
あれ? 前回、いきなり壊滅的な状況に追いやられたものですから、そこからワンクッションおいて、さあ反撃、という空気を作ってからラストバトルに突入するかと思ったら、そのまま間断なく最終決戦に。どうやら、確かにあと2巻という構成だったのを無理やりここにまとめてしまったみたい。バタバタと拙速になるかとも危惧したのだけれど、時系列的にも余裕なかったにも関わらず、スムーズに今までの主要な登場人物が勢揃いの総力戦へと移行出来たのは、さすがベテラン作家といったところでしょうか。
こうなると、盛り上げ方は心得ているというべきか、あとはギアをあげるだけとばかりにテンションもうなぎ登り。局面を限定するのではなく、総出演となるキャラクターたちが様々な組み合わせで絡み合い合一し、また刃をかちらせることで、一斉に全方位で火花が飛び散るような事態になってるんですよね。それが面白いことに、渦を描いてナタの解放と西王母との最終局面へと集約していく流れは、読んでいる最中よりもむしろあとから振り返った今のほうが感嘆させられてしまった。それだけに、これが2巻構成だった場合の助走距離、準備段階が取れた時はさらにこれよりも冴え渡り、ド派手な演出になったんじゃないかと思うと、勿体無いという気持ちが湧いてくる。クライマックス演出の腕前については、レンタルマギカなどで証明済みですしねえ。
前回でも絶賛した連華のヒロインとしての巻き返しですが、ナタとの直接ガチンコバトルでほぼ極まりましたね。ダブルヒロイン体制の肝は、場合によっては主人公に対するよりも熱い情熱をもってヒロイン同士がぶつかり結びつく事であります。ともすれば、ヒロイン同士が恋する者同士であるかのように、ぶつけあう熱量は途方もなく。こうして築き上げた無二の友情、共感がヒロインの両立を成り立たせるわけです。
命がけの、お互いに命をかけるに相応しいと思い定めた恋敵との、親友との意思を通し、それを受け取るためのガチンコバトル。ここでの、囚われ人形と化したナタへ、ボロボロになりながら連華がぶつける壮烈な想いは、本当にかっこよかった。いい女の株がストップ高ですよ。
ホント、中盤まで馳郎とナタは鉄板もいいところで、割って入る余地なんて殆ど垣間見えなかったはずなのに、この正々堂々のこじ開けっぷりは、見事の一言でした。
まあ、このヒロイン二人に対して、馳郎とジンの王道と覇道の主人公対決の方は結局突き詰める事が出来なかったかなあ、という印象。最大の理解者同士でありつつ、相いれぬ物同士としてぶつかり合っていたこの二人、その決着がどうつくかについてはとことん突き詰めないとしっかりとした答えは出なかったと思うのですが、局面はナタの救出と鬼仙との共存をどうするか、に比重をとられてしまって、そちら方面に分量を割く余裕がどうも見受けられなかったんですよね。というわけで、結局自然に住み分け、という形に落ち着いてしまった感があります。王道として皆をまとめる馳郎に対して、ジンが選んだ道はなかなかおもしろいものだったんですが、そこに至るまでの馳郎との衝突と結論がでる過程をもっとじっくり見ることが叶うなら、ジンたちの在りようもまたもっと感慨をもって見ることが出来たんじゃないだろうか、とちと勿体無い気分に。
何だかんだと、ジンてば主人公らしく上手いこと悲劇を食い止め、悪い結末を回避してるのが、何とも心憎いことで。なんとなく、ジン本人よりも彼を王と見定めて動いていた隼人の方が、今回のお話では主役っぽかった気も……。妹の北斗とも、心の整理ついたみたいだし。
北斗といえば、リコとの関係が怪しい方向に……。あれ? 単なる親友関係じゃなかったの? あの仲の良さはガチでそっちだったの!?

最後の最後で、あのメチャクチャな白翁の財力を基盤とした交渉に持ち込むところは、実にらしい結論で、痛快であると同時に安心感も覚えたり。やっぱり、力でねじ伏せるのではなく、言葉で納得させるのがパターンでしたもんね。西王母のし掛けた戦争は、やり口からして絶対魔法使い陣営ともこじれそうなやり方でしたし。
でも「その場しのぎ」を女性関係にまで持ち込むのは、悪い男のすることぞw その点は、ジンを見習って欲しいのう。あっちはもう娘さんにロリババアまで抱え込んじゃってるほどなのですからw

シリーズ感想

クロス×レガリア女王の領域3   

クロス×レガリア女王の領域 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア女王の領域】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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リコが姿を消してから間もなく、ナタと馳郎は白鳳六家の重鎮集う「六家総会」に列席していた。馳郎が白翁と認められるための会議は、かつての白翁後継者の乱入により戦況を大きく歪められる。「君は、世界のすべてを敵に回してでも、その少女を守るつもりがあるのかな?」先手を打つは月白弦摩。鬼仙と戦を起こすか否かを切り出す―鬼仙、白鳳六家、白翁候補、底の見えない駆け引きに馳郎は!?役者集いし「六家総会」―始まる。

なんという圧倒的、蓮花の巻き返し!! 今までどうやったってナタ一択だったメインヒロイン枠。蓮花は、すごく良いキャラにも関わらず、ナタと馳郎の関係がどうやったって横槍の入れようがないほど密接なものだから、報われないヒロイン臭を垂れ流しにするほかないままだったのですが、ここに来てその「報われない」を逆手に取って、これでもかと報われなさを強調した上で、それでも構わないという健気さを爆押しすることで、ストーリー的にもナタや馳郎の心情的にも無視できない存在感を立脚させてきたってなもんだ。
蓮花自身が、最初の立ち位置からしてもう挽回しようのないところから始まってしまっている、と認めている上に、半ばその立ち位置に納得していることが、尚更蓮花の健気さを後押しする効果になってるんですよね。見返りを求めること無く、自分の持っているもの、立場なんかを全部投げ捨てて、初めての恋に殉じようという少女の姿に心打たれないはずがなかろうて。
思いの外、蓮花の存在を馳郎もナタも気にしていたのにはちょっと驚いたけれど。異性に対する意識としては、馳郎はナタ以外に眼中にない、とは言わないまでも蓮花の事まで意識するような余裕はなかったと思ってたし、ナタはナタでそこまで蓮花をライバル視、というか恋敵として慮っていたとは思っていなかっただけに。ナタは、件の女子会が大きかったんだろうか。馳郎は、お前さん意外と気が多いのな、と思う所だけれどw
さて、今回の話のキモは、白鳳六家の「六家総会」ということで、改めて白凰内でゴタゴタがはじまるのかと思ったら、自体は輪をかけて大きくなり、オニと鬼仙の戦争待ったなし、という開戦前夜の様相を呈し始めて俄に緊張が膨らむことに。いや、オニと鬼仙の関係ってあくまで休戦期というだけで戦争状態は継続しているという認識だったのね、両者とも。特に、鬼仙側は長命なだけに殆どが戦争の当事者でもあるわけで、過去の出来事とは行かないわけだ。しかも、その戦争の原因がまた予想外のもので、馳郎は目論見を外してしまうことに。個人的にも、馳郎の交渉力があったら、オニと鬼仙の対立って致命的なことにはならないと踏んでいたので、こっちとしてもこの事態は予想外だった。しかし、ここで語られている「土地」の問題っていわゆる「魔法使い」たちのお話でも度々取り沙汰されていたアレと同じ種類のものだよね。今のところあっちサイドとは不可侵の関係を保っているみたいだけれど、オニと鬼仙でこれ取り合って戦争まで辞さない状況になっているとなると、いつまでも無関係では居られないんじゃないだろうか。そのうち、そっちサイドとも関わってきそうだなあ、これ。
ともあれ、目下の敵はかの有名な女仙の長。この名前のついたキャラって、概ねどの作品でも温厚で抑え役に回ってる場合の方が多かったんだけれど、この西王母さまはまたアグレッシブにヤバげじゃないですか。ってか、蓮花が思っていた以上に良い所のお嬢さんだったのね。文句なしにお姫様だったんじゃないか。
白凰六家側も鬼仙側もやる気まんまん。しかも、今の白凰にはジンたちの一派も独自に動いている。馳郎は、後手後手に回った挙句にガードのお仕事も果たせず完敗を喫してしまう。いわばここがどん底か。となると、あとはもう挽回していくばかり、という前向きな気持ちになれればいいんだが。ここからこそ、馳郎の主人公としての面目躍如を期待したい。

シリーズ感想

クロス×レガリア 双貌の王3   

クロス×レガリア  双貌の王 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 双貌の王】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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夏期補習を受ける馳郎のもとに初めてまともなボディガードの仕事が、リコの後輩・土師さやかから舞い込む。俄然やる気をみせるが、その内容は恋人のフリで…。ナタも蓮花も気が気でない!そんな乙女心も露知らず、馳郎は頼られる喜びを噛みしめ依頼を遂行する。しかし幸福な時間も束の間、辿り着いた先には白鳳六家の第二位・月白弦摩が。真の依頼主が告げる思いがけない提案に馳郎は!?
えーっ、そっちなの!? ナタや蓮花たちと微妙な距離感で恋愛事を営んでいる馳郎の一方で、彼の対極となるジンはというと、ウーという可愛い嫁さんだけじゃなく、さらに娘まで出来ました、ってなんでライバル組の方が着々と家族作ってるんですかっ。馳郎くん、こっちがもたもたしている間にあちらときたら子供までできちゃいましたよ、どうすんですか。
というわけで、小さな女の子を拾ってヒロインと擬似家族を形成するのは主人公の特権だと思い込んでいた固定観念を盛大に打ち崩す、まさかのジン・ファミリー拡大編。いや、これはジンこそが馳郎に並ぶもう一人の主人公なのだという事実を明快にしたということなのかもしれません。双貌の王、というサブタイトルもまさに馳郎とジンの二人を指したものでしょうし。初登場時はジンってあまりに独自のルールにより過ぎてて、同じくぶっ壊れたウーみたいな子しかついていけない孤独の王になるキャラクターなのかと想いましたけれど、思っていた以上にカリスマの塊というか、同じくはぐれ者である逸脱者たちを強く惹きつける、まさにもう一人の王だったわけだ。いや、娘が出来ました、だけじゃなくてまさか隼人兄ちゃんまで魅了してしまうとは。
ジンも馳郎もまったく対極の立ち位置にいながら、だからこそ両者とも白にも黒にも染まらずに、灰色である事は全く同一なのか。ジン・ファミリーばかり目立ったような今回の話ですけれど、一方で馳郎の月白弦摩への対応なんか見ていると、老獪だとかそういう段階を通り越していて、その考え方とか視点の高さというのは怪物的でもあるんですよね。より血まみれの方向に寄っているからジンなんてひどく壊れたモンスターに見えますけれど、ベクトルが違っているだけで馳郎のそれも全く位相を異にしてるんですよね。こればっかりは、どれだけ戦闘力が高くても、謀略に長けていても、政治力が妖怪じみて居ても関係ない。実際、月白弦摩という長老は本来ならラスボスレベルの黒幕を担えるだけの能力と人品骨柄の持ち主なんですよね。それを、今回主導権はこちらが握って居たからとはいえ、完全に制してみせたわけです。いや、主導権を握れたのも、馳郎だからこそか。こればっかりはなるほど、王の器としか言い様がない。勿論、どうやら弦摩翁も大人しく付き従っているようなタマではなく、狂気と理性と激情と聡明さを兼ね備えた実に味のあるキャラクターで、今後も敵味方の括りを逸脱したところから状況を引っ掻き回してくれそうな実に頼もしい人なのですが。
何れにしても、着々と一団を形成していっているジン・ファミリーは今度目が離せないなあ。ちょっと馳郎サイドで味方にはなってくれなさそうだけれど、そのままフェイドアウトするには勿体無いと思えるような濃いキャラクターを、こちらでどんどん拾っていってくれそうですし。

さて、ナタに遠慮しているように見えて、実は着々と距離を物理的にも精神的に縮めていっている蓮花さん、自覚的になっている分、可愛さがどんどんアップしてるなあ。ナタが手を休めているわけではないので、その分蓮花の猛攻が目につくのかもしれません。いい具合にダブルヒロイン化してきたか。でも、馳郎の本命はナタから揺るがなさそうなのが、蓮花には辛いところなのですが。

シリーズ感想

クロス×レガリア 海神の遺産 3   

クロス×レガリア  海神の遺産 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 海神の遺産】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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「何々、宝の地図とか?」馳郎と北斗の話を聞きつけた生徒会一同は、先代白翁が遺した謎の地図を手掛かりに鬼無里海岸を訪れる。宝探しをする一方、リコや蓮花などお馴染みのメンバーは、水着に着替えて大はしゃぎ。初めて目にするナタの水着姿に思わず目が眩む馳郎…だったが、それも束の間。謎の「人魚」の魔の手が迫る!!かつてない巨大な敵に翻弄されるなか、馳郎がとる鬼仙兵器・ナタの力を解放する秘策とは!?
今回のラスボスって、パタリロに出てきた少佐とか、ジョー・ディクスン・カーのフランス人探偵に似てますよね、と意味なく呟いてみる。いや、ほんとに意味ないんですが。
順当なりし水着回。朝葉の煽動で、宝探しを目的として海に合宿に行くことになった生徒会メンバーとその他諸々。というか、その他諸々の方が本作ではメインのキャラたちなのだが。【イスカリオテ】でもそうだったけれど、生徒会の本筋には踏み込んでこないものの、常に至近距離には居続けるという立ち位置はなかなか興味深いところです。その距離が近いが為に、前回など朝葉がもろに巻き込まれたりもしたのですが、かと言って必要以上に此方側の事情に踏み込んでくるわけじゃないんだよなあ。かと言って、距離を置くには人間関係的にもう不可分になっているし。ただ、生徒会長の一姫の不可解な体質なんかを見ていると、少なくとも彼女についてはなにか裏設定がある気がしないでもない。鬼仙の筋はさすがにないだろうけれど、<おに>関連ならありそうだし、この世界には<魔法使い>という一群もいることですしね。
しかし、言動や影響力だけ見ていると、何故か庶務である朝葉の方が生徒会長に見える不思議。実質牽引してるのって明らかに朝葉じゃん。そんな朝葉にずいずいと振り回されるのが、案の定馳郎であり、意外とナタや傍若無人に見える蓮花も肝心な所で受け身側だったりする。北斗もこっち側だな。一方で、最近やたらとガンガン行こうぜなところが露呈してきているのがリコなんですよね。最初の頃は健気に義兄をサポートする妹ちゃんだったのに、北斗と再会したあたりからかなりノリノリになってきましたよねw
個人的には北斗は本気で男でも良かったかなあ、と思わないでもないんですよ。リコと北斗って本当にお似合いなので、馳郎が独白しているみたいに、いっそ本当に彼氏でも良かった。
でも、さり気なく一番乙女な気質なのって、ナタをも抜いて北斗なんだよなあ。リコと蓮花のゲテモノ食いトークに完全に置いてかれて涙目な北斗についつい萌えてしまいました。もっとキャッキャウフフなガールズトークしたかったろうに。幼い頃から兄に好きなものを奪われ続けてきた影響で、微妙に賤しいところがあったりするのも、これはこれで可愛かったりするので……リコさんリコさん、ヒロインらしいところ持ってかれてますよ。

とまあ、リコがはっちゃけてヒロインとして大事なものを盛大に落っことしつつある昨今ですが、逆に恋心を自覚してえらい勢いでデレはじめているのが、蓮花さんであります。あんた、もうデレっデレじゃないですか。
そもそも、元々関係ないのに合宿に自ら乗り込んでくるあたりで、彼女なりの必死さが伝わってくるのですが、ある程度一緒に遊べたことに満足してしまって、そこから踏み込めずに指を咥えてウロウロしている時点でこの娘、アレである。微苦笑が浮かんでくる。
いやまあ、仕方ないといえば仕方ないですよ。傍から見てると、馳郎とナタの間には全然入り込める余地ないですもんね。気持ちが通じ合いすぎてますもん。むしろ、よくまあこの状況から馳郎によく自分をアピールして存在感捩じ込んでる方だと思いますよ。
ナタとは別の意味で、蓮花も鬼仙の世界からは爪弾きにされたような子らしいので、馳郎たちとはもっとよく馴染んでほしいものです。此方側からもちょっと距離を置いてしまうと、何気にぼっち化しちゃいますもんね。その意味では、今回の合宿を通じて馳郎やナタだけじゃなく、他のメンツとも好を繋げられたのは色々とホッとさせられるものがありました。リコや北斗とも仲良くなったしね。

で、こいつはどうするよ、太乙真人。この人、とにかく迷惑な人なのね。一貫して黒幕やっててくれるなら、そういうヤバい奴なのだと警戒してりゃあ楽なんだけれど、別にいつも企んでるわけじゃないんだよなあ。というか、完全に中身子供だろう、この人。意外と、扱い方覚えたらチョロいような気もするんだけれど、敵にしても味方にしても、どっちつかずの場所に据えても、ひたすら面倒くさそうで参るなあ。

三田誠作品感想
 
12月3日

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