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二月公

声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない? ★★★☆   



【声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない?】 二月 公/さばみぞれ 電撃文庫

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裏営業スキャンダルが何とか収束を迎え「コーコーセーラジオ!」も、めでたく続行決定! ――とほっとしたのも束の間……
「本当甘ちゃんだよね。ふわふわ友情ごっこがしたいならよそでやれよ」
ストイックな実力派の先輩声優・柚日咲めくるに突然浴びせられた強烈な罵倒。でもそんな彼女も実は、秘密の《ウラオモテ》を隠していて……
さらに、夕陽とやすみの高校まで追いかけてくる、不躾な視線やシャッター音。事態に業を煮やした夕陽の母が、ふたりに課した超難題とは!? こじらせ先輩声優めくるのホントの思いも明らかに――!

「そのまま行け、ふたりとも――ッ!」
声優生命最大の危機でも、夕陽とやすみは止まれない、中途半端じゃ辞められない……! 諦めきれないふたりの声優ラジオ、ここに再びON AIR!!

これはなかなか厳しいなあ。前回の由美子の行動で無事にトラブルも収束し、ラジオも続行、アイドル路線変更も評判良し、とみんな上手くいってよかったね、と収まるのかと思いきや。
そうだよね、現実として由美子の独断ではじめてしまったラジオ出張版は、人として譲れぬ一線だったかもしれないけれど、社会人としては越えてはならない一線でもあったわけだ。
万事上手くいったからOKなんて事は現実世界には存在しない。その内実がどれほど必死な思いに駆られた少女たちの心からの叫びだったとしても、関係のない周囲からすればそれは単なるトラブルだ。
騒ぎを起こしトラブルを招き、線引を無視した行動を起こせば、それは当然警戒される、忌避される。また何かやらかすんじゃないか、という危惧はどうしたって巻き起こる。
それでなくても、これまで築いてきたやすみと夕陽というアイドル路線を投げ捨てての蛮行だ。声優業界の裏事情、或いは営業戦略のようなものを露呈させてしまった事は、同じ業界で働く他の声優たちにも同じように見る目を向けられ、迷惑をかけることになる。
当然、同業の声優の中には彼女らを白眼視する人たちも出てくるし、アイドル路線に後ろ足で砂をかけたことは露骨に仕事の減り具合になって返ってくる。
順風満帆なんてとんでもない、二人の前に現れたのは絶望的なまでの逆風だったのだ。

という、あの前回の劇的な展開に浮かれるような気分に冷水をぶっかけるような厳しい現実路線を突きつけてくるのは、ふわふわとした夢見がちなドラマなんかではない、ただただ現実の社会と向き合わなければならないお仕事モノというジャンルを歩いて行こうという気概が見えて、むしろ頼もしさすら覚えるものでした。
とはいえ、しんどいけどねえ、この辛い現実を二人に突きつけていく展開は。
それでも、二人の所属事務所の大人たちが彼女達を突き放さず、実際あの出張版ラジオが引き起こしてしまった事をちゃんと叱る形で告げながらも、でも間違いなく終わりかけていた夕陽の声優人生を起死回生救ってくれたものだと、責めるのではなく感謝する形で彼女達を守ってくれた姿勢は安堵させられるものでした。
一番彼女達を守ってあげないといけない人たちが逆に突き放してきたら、もうどうしようもないですもんね。
もっとも、先のスキャンダルもそうですけれど、殆どストーカーなファンたちの行動から具体的に夕陽ややすみを守れていない事務所は、保護者から非難されても仕方ない対応の甘さではあるんですよね。彼女達はプロではあるのだけれど、同時に未成年であるのも間違いなく、彼女達の身を守る責務が事務所にはあって然るべきはずなのに、どうもファンたちのプライベートにどんどん踏み込んでくる行動に対して何か有効なアクションができていたかというと、ちょっとそのあたりの動きが見えないんだよなあ。
由美子のメイクがなかったら、学校近辺でのトラブルは早期にもっと深刻なものになっていた可能性もありますし。そうなった時に高校だって彼女達に何らかの対応を取らないといけない事になっていたでしょうしね。
その意味では事務所なにやってんだ、という千佳の母の反応は不思議ではないようにも思えるのだ。声優事務所程度では、そんなアクションを取れるだけのキャパがない、というのも現実だったとしてもそれはそれで問題あるだろうし。
かといって、千佳の母のあの対応はあれはあれで娘の人格を完全に無視している酷いものでしたし、由美子までも無神経に傷つけるもので、うん無神経無神経、あれはちょっと酷いわー。
由美子の母が行動に出なかったら、感情的にも立場的にも動きようがなかった由美子は立ち直れないような傷を負っててもおかしくなかったでしょうし。

かといって、あんなイベントで白黒つけよう、というのも無茶な話なんですけどね。あれは、うん千佳と由美子にとっては不可抗力というか、やらされたイベントなので彼女達の責任じゃないんだけど、あんなので進退決めるのはホントどうかと思う。ゴーサインだした事務所もどうよ、という話で。本業と関係ないところでこう何度も騒ぎを起こしてしまったら、同じ業界内の人たちからどう見られるようになるのかちょっと心配になってしまう。
かわいそうなのは、前回も今回も決して由美子と千佳が悪いわけじゃない所なんですよね。大体が外的要因により強いられたものであって、彼女達はひたむきに自分の仕事に向き合おうとしているだけなのに、どうしてこうなってしまうのか。
アイドル路線を放棄せざるを得なくなったのは、彼女達の選択の結果でもありますけれど、その結果として素の彼女達をキャラとして押し出していく、という路線もまたむしろそうやってキャラ付けしようとする事で全然素じゃなく、素の自分というのを演じることになってしまっていて、当人たちが混乱というか戸惑って若干訳わかんなくなってしまっている様子もあったのが、どうにもこうにも……。
まー難しいですよね。変に無理してキャラ作るのもなんか違うと思うのは自然だし、だからといって普段どおりのプライベートと変わらない自分をそのまま曝け出してやるというのも、それ仕事としてどうなの? と自問がはじまればなかなか答えの出ない問題でしょうし。
自分を偽ったり作ったりするのではなく、しかし仕事としてちゃんと自分を整えお客様に見てもらえるに相応しい装いをする、というのが一つの解答になるのかな。それは、かの乙女姉さんが一番うまくやっているやり方でもあるのでしょう。
一方で、プライベートの自分と仕事をする自分を完全に切り離して分けてやる、というのをきっちりこなしているのが今回登場したこなみさん、なのか。この人も若干ニュアンス違うというか、必要にかられてそうしているので、何とも言えないのだけれど。
ともあれ、由美子も千佳もそのあたりのバランスがまだまだ経験値足りないという事なんでしょうね。手探りで突き詰めていく段階なんだろうけれど、なかなか若手にはそんな悠長な事している暇もなく、さて彼女達にはその猶予があるのかどうか。
最後のラジオでの新たなコーナーも、あれ思いっきり手探りしてるような感もあるんですけどね。二面両方やる、ってしんどくない? 聞いてる方も戸惑いそうで、さてキャラをキャラと割り切れるのかどうか。

由美子と千佳、二人の関係についてもお互い置かれた状況が仕事面では崖っぷち近くに追いやられてるし、生活の方では身の回りに押し掛けファンが詰め寄ってきていてと、落ち着いていられる状態じゃなかったのもあって、なかなか平静なメンタルで相手のこと見ている余裕もなかったですね、今回は。それでも、前みたいに変にギスギスすることなく、やばい時には変装やら緊急で家に止めてあげたり、という距離感も近くなった感触はありましたけど、ほんと余裕なかったからなあ。お互い、身を寄せ合って守りに入っているという風もあって、結構縋るような気持ちもあったんじゃないだろうか。そのぶん、落ち着いて向き合えてたかというと……ほんと、余裕がなかったという点に尽きるか。あの由美子の売れっ子だった千佳の転落への仄暗い思いなんかは、むしろ変にトラブルなくそのまま状況が落ち着いてた方がより深みにハマってた可能性もありそうなんだけど、ラストの展開で千佳の置かれた状況の理不尽さと、それに対して自分が何もできない無力感、むしろ何かしてしまった際の自分の立場の危うさ、危うきに近寄らずに居るべきだという本心への罪悪感、などなど千佳へ向かう感情が本当にぐちゃぐちゃに掻き乱されて精神的にもメタメタにされたものだから、あの仄暗い喜びなんかも一緒にかき混ぜられて撹拌されてごちゃまぜになっちゃった感があるんですよね。
今後、あの感情はもう一度戻ってくるんだろうか。あまりにもかき混ぜられすぎて、ちょっと同じような形で戻っては来そうになさそうな気もするなあ。
というか、ここまで運命共同体な道筋を一緒に走り抜けてきてしまうと、もうこれ二人の関係ってどうなるんでしょうね。これ、一巻の終わった段階より遥かに深みにハマってしまってるんじゃなかろうか。あのときはまだ仕事上の真っ向からぶつかりあえる戦友、という感じがあったと思うんだけど。なんかもうほんとにグチャグチャにかき混ぜられて、なんて名付けたらいいかわからない関係になってしまった気がするぞ。どうするんだ、これ?

ともあれ、作品としても毎回仕事するための障害が仕事と関係ない所で立ちふさがってきて、それを飛び越えるために騒ぎを起こさざるを得なくて、という展開は色んな意味で繰り返すの難しいでしょうし、そろそろちゃんと彼女達に仕事で頑張らせてあげてほしいものです。ほんと、落ち着いて仕事させてあげないと、なんか色々と整理できんのじゃなかろうか。


声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? ★★★★☆   



【声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?】 二月 公/さばみぞれ 電撃文庫

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ギャル&地味子の放課後は、超清純派のアイドル声優!?

第26回電撃小説大賞選考会において、選考委員満場一致で2年ぶりの《大賞》を受賞!
電撃文庫が今とどけたい、青春声優エンタテインメント!

「夕陽と~」「やすみの! せーのっ!」 「「コーコーセーラジオ~!」」
偶然にも同じ高校に通う仲良し声優コンビが教室の空気をそのままお届けしちゃう、ほんわかラジオ番組がスタート!
でもパーソナリティふたりの素顔は、アイドル声優とは真逆も真逆、相性最悪なギャル×根暗地味子で!?
「……何その眩しさ。本当びっくりするぐらい普段とキャラ違うな『夕暮夕陽』、いつもの根暗はどうしたよ?」
「……あなたこそ、その頭わるそうな見た目で『歌種やすみ』の可愛い声を出すのはやめてほしいわ」
オモテは仲良し、ウラでは修羅場、収録が終われば罵倒の嵐!こんなやつとコンビなんて絶対無理、でもオンエアは待ってくれない…!
プロ根性で世界をダマせ! バレたら終わりの青春声優エンタテインメント、NOW ON AIR!!

くわーーっ、面白かった、面白かったぞ! 声優に関してはアニメ一通りみるだけにある程度は知っているけれど、個人の活動については全く追っておらず、声優ラジオというのも聞いたことはないのだけれど、そんな事関係なく滅茶苦茶面白かった。
声優業界ネタとかもあまりなく、あくまで本作は声優という仕事に全身全霊をかけて挑む若くもプロフェッショナルな少女たちの物語。
そう、この子たち。佐藤由美子と斎藤千佳は未だ高校生であっても、その意識はしっかりとプロなんですよね。その片鱗は随所に見られる。自分の仕事に誇りを抱き、より良い仕事が出来るために自身を高めることを厭わない。なかなか売れなかったり、自分の思っていることと違うことをやらされたりと決して上手くいっているわけではないし、そのことに対して思うこともあるのだけれど、凄く仕事に対して真摯で一生懸命であることは、ふたりとも変わらない。
だから、個人同士では出会いの最悪さもあって、喧嘩ばっかり。喧嘩するほど仲がいい、てなもんじゃなくて本気で相手の性格が性に合わなくて苛立ちむかつきぶつかり合う相性最悪の二人なんだけど、個人の好悪は決して仕事には持ち込まない。そのプロ意識の高さはお互い何だかんだと認めあっていて、それ以上に声優としての在り方、その仕事っぷり、意識の持ち方に対して一緒に仕事をすればするほどその姿が見えてきて、認め合っていくわけです。
嫌い同士でも認め合える。性が合わなくても、声優としての相手は尊敬できる。とことんいがみ合いながらも、同じ仕事を成功させるためなら協力し合える。
決して馴れ合わず、しかし本心からぶつかり合える同士。悪いこと間違ったことをしたら、誤魔化さずに指摘できるし、それを悪いと思ったらちゃんと謝れるし、手助けしてもらったらお礼も言える。打ち解けるわけじゃないけれど、そうやって仕事にも同僚にも背を向けない、裏切らない姿はまさにプロ。ほんと、カッコいいんだこの二人。
そして、自分たちの戦場で共に戦う者同士、緩く仲良く結ばれていく友達関係とはまた違う、火花飛び散るような信頼によって結ばれる関係。これを「戦友」というのでしょう。「ライバル」と呼ぶのでしょう。
自分が本気だからこそ、相手の本気も感じ取れる。だから、一緒に戦える。そいつの背中を追いかけられる。ああ、めちゃくちゃ熱い物語だった。

実際、全部曝け出しあったあとのラストのラジオって、それまでと段違いに面白いんですよね。
歌種やすみこと由美子のキャラクターって清純派より圧倒的に普段のギャルの方が魅力的でしたしね。ただ、気合い入れて声優モードになった時のオーラは由美子も千佳も、思わずお互い見とれてしまうものがあるだけに、二人共普段と声優の時との良いところを上手くハイブリッドして出せるようになったら、今以上にブレイクできる手応えというものを確かに感じ取れるんですよね。
特に由美子はあれ、色んな意味で頼りがいがありすぎて、あらゆる方面から慕われる大御所にゆくゆくはなってしまうんじゃなかろうか。今ですでに姐さん的な貫禄と気風の良さと気遣いの深さと速さが感じられるし。あれ、小さい頃から母のスナック手伝ってたという経歴故なんだろうか。さり気なく相手の懐入るフットワークの軽さがすごいんですよね。それでいて、自分のためじゃなくて相手のために動くし気遣いもほんと細かいので、大抵の人が心開いてしまう。千佳のお母さんとの時なんて、あまりの無造作っぷりに「え? ちょっ!?」と面食らってるうちに手慣れた様子でお世話しながら、踏み込んだ話をするに至ってましたもんね。あれは凄かった。千佳が嫉妬混じりに憧憬を覚えるのも無理ないですわ。
でも一番心震わされるのって、自分が認め尊敬する相手から、こいつは本当に凄えと思っている人から、同じかそれ以上に認められ尊敬される事なんですよね。そこに、友達ゆえの好きという感情が混ざっていないことは、嫌い同士誰よりもわかっているから、余計に刺さる。余計に伝わる。
それはとんでもなく、嬉しい。とびっきりに、痺れてしまう。
だから、一緒に戦える。だから、本気で競える。だから、全部つぎ込める。二人でなら、どこまでも行ける。
いいなあ、熱いなあ。素敵だなあ。
最高のお仕事ものであり、女の子の友情の…そう仲が悪くても嫌い同士でも結ばれる事のある友情の物語でした。
わりと綺麗にこの一巻でまとまってはいるのですけれど、ここからどんな風に話を広げていくのか次巻も楽しみ。


 
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