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依空まつり

サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと ★★★★   



【サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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魔力測定&恩師の赴任――最強の魔女、正体バレの危機に思わず失神!?

〈沈黙の魔女〉モニカは第二王子を狙う敵を極秘裏に“処理”。生徒会会計にも抜擢され、護衛任務は順調……かに思えた。
しかし正体バレの危機が次々襲来!? かつての恩師が赴任してきたり、七賢人になるほどの魔力量なのに魔力測定に巻き込まれたり、普通の学園生活に最強の魔女は失神寸前!
皆には簡単な社交ダンスやお茶会だって、モニカには精いっぱい。それなのに、第二王子にも次なる危機が迫り――?
無詠唱の魔女の極秘任務、メンタルが試される第二幕!

一学生として学園に通うようになったモニカ。オマケに生徒会会計という役員としての仕事もあり、授業に生徒会の仕事に同級生たちとの交流に、とてんてこ舞いのモニカ。慣れないどころかこれまでずっと忌避してきた人付き合いにヒーヒー言いながらも、それでも不器用なりに臆病なりにだんだんと自分に出来ることをしようと頑張りはじめる。
こうして、普通の学生として過ごすモニカを見ていると、ほんとこの娘は中身はコミュ障なだけのあまりにもメンタル弱々の普通の年頃の女の子なんですよねえ。
七賢人として特別な側面があるのか、というと……能力的には素晴らしく優れているものの、精神面では特別な所は何一つないんだよなあ。これは一巻の感想でもちょこっと触れていたけれど、別に非常時になったらカチっと人格が切り替わったり、魔法を使う時だけキリっとなったり、という事もないんですよね。
頭の回転自体は素晴らしく速いから、正体バレを防ぎつつ目の前で起こる突発的なトラブルや事故の回避なんかもなんとかこなしているけれど、決して冷静沈着に片付けているわけでもなく、かなりあたふたしながらバタバタとやっている感じで……いや、これだけ慌てながら対処出来てしまうこと自体が凄いのですけれど、完全にスペックで乗り越えてるって感じなんだよなあ。
彼女の様子が豹変するのは数字関係に向き合ったとき、そしてパズル的な要素、思考実験的なものにハマった時。そういう時は周りの事が頭から消え去り、取り組む問題にだけ意識が向いてしまう。非常に尖った集中力を発揮するのだけれど、わりと学者肌の天才には見られる傾向でもあるわけで、それ自体は特別な才能の一つだろうけれど、それを七賢人と繋げて考えるのは難しいだろう。沈黙の魔女の偉業と、モニカのこの集中力とはあんまり関連付けられないものだろうし。
ともあれ、中身は本当に普通の女の子の過ぎないモニカ。
でも、彼女は幼いときから家庭の環境によって他人と距離を起き、誰とも関わらないようにして生きてきた。でも、この学生生活ではじめて他者と密接に関わるようになり、お互いの心のウチまで踏み込むような関係を築くことになる。さらには、集団生活を送る中で生徒会役員という立場に立ち、周りの人に助けられたりしながら、自分の仕事をするようになるんですね。
そうした経験が、幼いまま閉じこもってしまっていたモニカの精神を刺激して、少しずつ顔をあげ周りを見回し、人の顔色を伺うのではなく相手の想いを察するようになっていく。他人との関わりの中で、自分の得ている立場への責任感を感じるようになっていくのだ。
七賢人としては、今まで責任感なんか感じたことがなかったモニカ。ただ無理やり押し付けられ、七賢人としての仕事もやれと言われたからイヤイヤやっている事だったのに、生徒会役員としての仕事は最初は同じように仕方なくだったのに、段々とちゃんとやらないとと自分の意思でやり遂げようとしはじめるんですね。
また、初めて出来た友達との交流は、相手から向けられる優しさや好意が初めての体験で心地よく、嬉しくて、同じものを同じように、或いはもっと多くのものを返したくなってくる。そして、この嬉しさを、感謝の気持ちを伝えようと必死に努力しはじめるんですね。
人前で喋りたくなくて、無詠唱魔法なんて人類史上初めての魔法を生み出してしまったほど、言葉を発することを恐れていた子が、ただ「ありがとう」という気持ちを伝えるために、つっかえつっかえ、どもりながらも、それでも逃げ出さずに黙ってしまわずに、彼女は沈黙を破るのである。
一番最初に友達になったラナという子も、不器用も不器用で素直に気持ちを言葉に出来なくていつもひねくれた物言いや高飛車で高慢な言葉遣いをしてしまう、彼女も言葉をうまく使えない子なのだけれど、そんな二人がお互いに本当の自分の気持ちを相手に伝えようと四苦八苦しながら、でもちゃんと伝わっていく交流の数々は、なんかもう微笑ましくて尊くて、実にイイんですよ。
ラナ以外にも、ケイシーやクローディア。グレンなどといった個性的な面々と親しくなっていくわけですが、彼女たちは一癖も二癖もある人物でモニカに対して決して優しいわけじゃないんですよ。場合によっては強烈ですらあり、それでもモニカは逃げ出してしまわずにあたふたと狼狽えながらも彼女らと接していくうちに、友達という存在が自分の中でかけがえのないものになっていく事に気づいていくのである。

なんか、ものすごくまっとうというか正統派というか、微笑ましい健やかな成長の形をモニカが見せてくれるものだから、もしかしてルイス氏はこれを見越してモニカを学生としてこの任務に派遣した、という要素もあるのかしら! と、ルイス氏株が大幅にアップしそうだったのですが。
……この男、人間的に成長しはじめているモニカを見て、彼女は人間不信極まってるからこの任務に相応しかったのに、これじゃあ任務に支障が出てしまうじゃないか、とか真顔で考えてるんですけど。
あかん、このルイス氏……鬼畜だ。ただの鬼畜だ。わかってたけど! うん、わかってたけどな!

ただの普通の女の子のように、閉じこもっていた殻から顔を覗かせて成長しようとしていたモニカ。でも、彼女には「沈黙の魔女」として成さねばならない仕事が待っていた。
どれほど中身がただの少女であろうと、彼女には力があり、任務が有り、果たさねばならぬ義務がある。何より、自らの持つ力でこそ、守れるものがあり……今の彼女には自ら守りたいと思えるものが出来ていた。
でも、その想いを引き裂く現実が彼女の前には待っていて、それでも挫けずにやり遂げられたのは、友達を助けたいという思いと、七賢人としても責任感を抱き始めていた、ということなのかもしれない。モニカにとってはつらい現実すぎたけれど、本当の最悪をモニカは自分の力と成長分で覆せたのだ、と思いたい。

しかし、第二王子の闇は深そうだなあ。彼の過去についても徐々にチラチラと見えてきたけれど、彼自身の思惑も含めて、まだ何が動いているのか見えないのがまた不気味だ。
フェリクス王子、思いの外モニカに共感というか、自分の過去の姿を垣間見ていて感情移入しているみたいだけれど、同じ生徒会メンバーでもシリルとエリオットも、何だかんだとモニカに対して情が湧き出しているみたいで。あとはブリジットだけれど、この娘も内面が窺えない謎が深いキャラなんだよなあ。
というか、今の段階だとフェリクス王子よりも、シリルの方がモニカに近い気がするんだけれど、シリルの方が物語的にはモニカの本命になっていくんだろうか。
あと、ニールは絶対裏表が激しいキャラだと思ってたんだが、なんか普通に素直でイイ子みたいだなあ。ドエス系とか邪悪系の裏の顔があるとばかり思ってたのにw
そして、イザベラ嬢が見事な悪役令嬢っぷりで。年下下級生にも関わらず、あの貫禄、あの威厳、あの立ち居振る舞いはそんじょそこらの木っ端悪役令嬢など物ともしない威風で、いやはや格好良かったです。いつまで、悪役令嬢役で遊んでるんだろう、この人w


サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと ★★★★   



【サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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奇跡に詠唱は要らない――気弱で臆病だけど最強な魔女の物語、書籍で新生!

〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレット。無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師で、伝説の黒竜を一人で退けた若き英雄。
だがその本性は――超がつく人見知り!? 無詠唱魔術を練習したのも人前で喋らなくて良いようにするためだった。
才能に無自覚なまま“七賢人”に選ばれてしまったモニカは、第二王子を護衛する極秘任務を押しつけられ……?
気弱で臆病だけど最強。引きこもり天才魔女が正体を隠し、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快ファンタジー!

コミュ障ッ!! いやもう筆舌に尽くしがたいコミュ障ッ!!
ってかこれもう対人恐怖症の域じゃないですか? 人見知りとかいう段階じゃないんですけど。人混みとかで死んじゃいそうなんですけど!?
人見知りとか内気とかコミュ障を標榜するキャラクターというのは珍しくないですけど、ここまでガチに他人とコミュニケーション取れないレベルで怯えてキョドってアバババ、となってるキャラはそうそういないと思いますよ。だって、コミュできないもん! それが況してや主人公て!
これは同じ七賢人のルイス氏のあのパワハラ紛いの上からガンガン命じて叱って怒って、というのがある意味正解なのかもしれない。やりすぎるとストレスで死んじゃいそうだけど。
何かと問題はあるけれど実は最強、というキャラクターは大体能力を発揮するときはキリッとなるものなんですけど、モニカの場合はそれすらもないですからね。
世界で唯一無詠唱魔法を使えるようになった、というのも人前でマトモに喋れないから、喋らなくていいように、という理由があるように、キョドって狼狽えている時でも魔術使えるようしてるだけで、魔術使うときだけ冷静になるとか意識が切り替わる、という事もありません。ひたすら、アババババとなりながら魔術使ってます、この娘。
しかも、無詠唱なものだからナニカ起こってもこの娘が魔術使っているとは一切疑われないし、本人は本気で怯えてビクついているのも確かなので、確かに完璧なサイレントだなあ、これ。

こんな娘を、人が一杯居て他人と嫌でもコミュニケーションを取らなければならない学園に放り込んで、さらに王子の護衛だか監視だかをやれ、と命じて放り込むルイス氏、ガチ鬼畜である。わりと真面目にモニカのストレス死を望んでるんじゃないだろうか。
とはいえ、モニカの実力を一番理解しているのも同僚であり同期でもある彼なわけで、本人の臆病な性格をして諸共しない、そんな状態ですらしっかりと成果をあげてしまう、結果を伴ってしまうモニカのスペックの高さ、能力の際立ちを、ルイス氏が一番わかってるんですねえ、これ。
ルイス氏自身は本気で不本意みたいですけれど。

というわけで、同僚に無茶振りされて無理やり学園に放り込まれたモニカ。任務とか言われても何も出来るはずもなく、周りに絡まれ鈍臭さからトラブルに巻き込まれ、怯え慌てて逃げ惑っているうちに、強引に無茶振りされた問題解決を半泣きになりながらサクッと成し遂げてしまったために、なぜだかトントン拍子に王子に近づき生徒会の役員に就任してしまうことに。
本人意図せず、右往左往してたり、現実逃避して得意な数学に没頭してたら、なんでか上手く行ってただよ、というなかなかに意味不明なムーブである。
この娘、本気で能力は抜群に高いだけに、無茶振りされるのが一番イイんだろうか。ビビリだから、命じられたら逆らえないし。七賢人という魔術師として最高峰の地位にあり、一代ながら貴族位も貰っているだけに本来なら学園でも王族以外なら誰にも謙らなくていい地位にあるはずなのに、徹底したパシリ根性、何かあったら這いつくばってごめんなさい、してしまう卑屈さがこびりついちゃってる娘なだけに、言われたら逆らえないという所がありありと。
なんか、ギャップがほんと面白いなあ、モニカは。

どうやら、彼女の対人恐怖症気味な性格には過去に受けたDVの影がまとわりついていて、ある種の精神的外傷がもとになっているっぽいんですよね。さすがに原因が原因なだけに、簡単に他人に慣れろ、とは言えないですし早々変わることは無理でしょう。数少ない友人とも決裂してしまった、という傷も抱えているみたいで、誰かと仲良くなる事自体怯えている節がありますし。
それでも、当たりこそキツいものの率直に物言ってくれて色々とかまって世話してくれるクラスメイトがいたり、厳しいものイイながら誠実に対応してくれる生徒会の先輩がいて、と……なんか当たりキツい人ばっかりだなあw
ただ、こういうキツい人は正直な人とも言えるので、むしろ当たりが柔らかかったり親切で優しかったりする人の方がどうにも怪しい気配がプンプンするんですよね。顔は笑っているけれど目は笑っていない的な。その筆頭が第二王子で、明らかに闇深そうな何を企んでいるのかわからない怪しい人物なんですが、この人が一応のヒロインになるんですかねえ。
他にも何を考えているかわからない怪しそうな人がわんさかと居て、モニカに心休まる暇なさそう。いやまあ、相手が怪しかろうがそうでなかろうが、誰だろうと人である以上心休まらないっぽいのですが、モニカさんは。
でも、ナニカ助けられたり好意で何かしてくれたりしたとき、その時は慌てふためき何も言えなかったとしても、ちゃんと後でも「ありがとう」と必死にどもる口を動かしてお礼を言う勇気を持ち、それを果たすことが出来るだけ、モニカは臆病なだけな心の弱い娘じゃないんだなあ、というのがわかって、あのシーンは何気にくるものがありました。
ありがとうと言われた方は特に響くものはなかったのかもしれませんけれど、モニカ本人は大変に勇気を振り絞って発した一言だったんですよねえ。

さても、言動はポンコツを通り越してもう不審人物なモニカが、そのくせやってる事を見るとテキパキと眼の前の問題を解決して、陰の任務も着々と成功させるための立ち位置を確保している、という本人まったく意識していなくて半泣きでもうやめたい帰りたいと嘆き呻いてやっぱり泣いているのに、結果だけみると有能極まる動きしている、というギャップの面白さ。
ストーリーとしては、まだ導入編。あれ?こんな途中で終わってしまうの?と驚いてしまったほど、話のキリもつかないところで終わってしまった1巻ですが、これシリーズ通して大きな一つの話を終わらせるロングスパンな作品なのか。ともあれ、続き気になります!

 
12月1日

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