元・竜砲騎士マデリーンの転職 (ファミ通文庫)

【元・竜砲騎士マデリーンの転職】 佐々原史緒/ぎん太 ファミ通文庫

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育ての親ルイジアが遺したボロ宿で借金取りに追われるラザロ。そのとき突然の衝撃とともに金髪碧眼の美女、マデリーンが現れる。彼女は遥か北の王国からやってきたルイジアの姪、そして世間のことを何も知らないポンコツ美人なのだった。彼女の出現により、ルイジア亭を取り巻く悪党に目を付けられるラザロだが、彼女の真摯な性格と特殊な前職に巻き込まれ、なぜか「もてなしと愛」に満ちた宿への再建を目指すことに―?波瀾万丈ファンタジー開幕!!
ポンコツというよりも徹底した世間知らずと無垢を併せ持ったお嬢さん、と言った風情だなあ。ただ、長らく戦場を駆け回っていただけあって、本気で世知に無見識というわけでもないのだけれど、自分で服も着替える必要がない環境に据え置かれていた、というのはそれだけ上にも下にも置かない扱いではあったんだろう。或いは、戦略兵器としてそれだけ厳重に隔離されていた、か。
肝心の竜砲は置いてきたとは言え、そりゃ辞表一枚でそんな強大な兵器そのものである存在を放り出しはしないよなあ。むしろ、迎えによこしたのが未熟な見習い騎士一人、というのが解せぬ。とりあえず本巻ではあんまり触れられていないのだけれど、王国側は一体何を考えているんだろう。冒頭の描写を見る限り、マディの出奔は裏で陰謀が繰り広げられてたという風もなく、完全に予想外で大騒ぎにはなってたみたいなんだけれど。
そのヒロインであるマデリーン……実はけっこう歳なんですよね。ラザロは危険を察知して女性の年齢を尋ねるような真似は一切していないのだけれど、既にラザロを拾った時点で老婆だったルイジアが若かりし頃にマディって既に少女だったんですよね。竜砲騎士は竜に乗ってる間は特性上年を経るのが極端に遅くなるそうなので見た目は当てにならないし、ルイジアがこの海辺の街に現れて宿を作った時は絶世の美女が現れた、と話題になったと街の古老が語っていたくらいだから、マディとルイジアが別れてから3,40年くらい経っててもおかしくないわけで……。
南国の褐色少年って、色気みたいなものがあっていいですよねー(話題をそらして
そういえば【トワイラト・トパァズ】の主人公だったトパァズも褐色少女だったなあ。

さて、この話、ラザロと一緒にマディが借金まみれの宿屋を立て直して、訪れる宿泊客との間に様々なエピソードを積み重ねていく……というところまでは全然行かず、まず借金返済のために悪徳借金取りや付近の海を制圧している大海賊と丁々発止を繰り広げるはめに、という展開なんですよね。そもそも、宿の有るこの港街からして、海賊や悪党が根城にしている悪徳街という風光明媚とは裏腹の場末も場末。マディが夢見る宿にするには、いかにも立地条件が悪すぎるという。
ただ、この港町がそうなってしまったのも長年の戦争の影響で航路が途絶えてしまったのが原因で、その戦争と終結に深く関わっていたマディが無関係というわけでもなく、またここに宿を立てたルイジアが何やら大海賊と契約を交わしていて、その内容を巡って謎を追いかける……というよりも、ラザロの育ての親でありマディの叔母であるルイジアの過去を追いかけていく、追憶の話でもあるんですよね。
宿にお客はさっぱり来ずに、襲撃と新たに宿で働くメンバーばかりが集まってくるわけです。とりあえず、マディが宿の運営に役に立たなさすぎて、仕事を覚えるところから始めないと。
それにしても、婚期が遅れているからというわけではないんだろうけれど、マディが色々とチョロすぎるのか、それとも早々にターゲットをラザロに据えてしまったのか。
ラザロくん、ご愁傷様である。

佐々原史緒作品感想