兎塚エイジ

そのオーク、前世(もと)ヤクザにて ★★★★   

そのオーク、前世(もと)ヤクザにて (GA文庫)

【そのオーク、前世(もと)ヤクザにて】 機村械人/兎塚エイジ GA文庫

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「私はお前達オークを嫌悪している。特にお前のようなロクデナシをな」
ここは大都アルバストラ。ヤクザである鬼瀬龍平の意識が覚醒した時、彼は自身が『豚』=レイガスという囚人になっている事に気付く。そんな彼を憎み、だが自ら率いる“天翼の騎士団”に迎え入れたのは、ヴィオラというスカイ・エルフの女。二人は反発しあいながらも惹かれあうように…。一方でレイガスの自我はあの日から止まったままだ。―俺はどこにいた、俺は何だ?―葛藤の中、ヴィオラの身に大都の闇が迫る!それは前世と現世の因果なのか、答えを求め男は立ち上がる。戦え、オーク。運命をぶっ壊せ!
第8回GA文庫大賞“優秀賞”受賞作。
いや、これ見た目オークに全然見えないんですけど。豚呼ばわりされてるけれど、むしろオーガとかじゃないんですかね? 豚の耳もこれだとぺたんと垂れた犬の耳みたいに見えますし、むしろあの耳がアクセントとなって愛嬌を感じさせるんですよねえ。とにかく、豚と罵られるのが違和感ありありなほど精悍さがにじみ出ているその姿形は……か、かっこいい。
彼のヤクザ像がまた、往時の広島に行け、と言うべきか、ロアナプラにいらっしゃい、というような凄惨な環境の中に任侠を貫く古き良きヤクザ像なんですよねえ。男は口で語らず背中で語るのだ、とばかりに寡黙で物静かでありながら、その行動は雄弁で苛烈。そして、弱き者力なきものに対してはひたすらに優しい。
その実直さ、誠実さはオークとなって転生したこの異世界においても変わることなく、オークという身の上、その上収容所に入れられていた軽犯罪者のいう身の上から周囲からはかなり辛く当たられるものの、反発も反抗もせず、むしろ罪を償うように黙々と引き取られた騎士団の中で働き続けるのである。時として、己が身を顧みずに皆を守るようにして。
その実直さと、幼い子供たちへの優しさからすぐに周囲の女騎士たちもレイガスのことを認めて、受け入れてくれるものの、レイガスは決して浮かれることなく献身し続けるのである。その背中はどこか胸を締め付けられるような悲哀を漂わせてるんですよねえ。それが、女心をくすぐってしまうのか。
レイガスが前世のヤクザとして生きていた時の経験は、良き人たちに巡り会えたもののそれらすべてを無残に、理不尽に奪われ、無造作に叩き潰されてしまった悲惨極まる境遇だったんですよね。その末に、自らも復讐に猛り狂った末に無念のうちに命を落とすことになってしまうのですが、そうした経験が、無力感が、彼にひたすら贖罪に準じるような無私の献身をまとわせていたのでしょうか。でも、こういう男って、庇護欲を擽るんですよね。絶体絶命のピンチに助けられたから、自分が傷を負うことも構わず尽くしてくれたから、そういう理由だけじゃなく、ヴィオラがどんどん彼から目を離せなくなっていく展開がまた、真面目な女性がやくざ者におぼれていく過程を見るようで……(笑

しかしあれですよね、超武闘派のヤクザが、組長の娘には頭があがらず、奔放な少女の言動に振り回されながらも「お嬢には敵いませんな」と苦笑いしながら付き従う、というシチュエーションは色んな意味で外せないですねえ。往々にして、このシチュは悲劇になってしまうのですが。
ちーっと前世の話を異世界にも引っ張りすぎた感もあり、レイガスの未練や贖罪というのはあくまで新天地であるこっちで消化して欲しかったという思いもあるのですけれど、ともあれ一定の清算も済んだわけですから続きが出るのなら、元ヤクザがほんとうの意味で「元」という冠をつけて、新たな行き方を得ていく話を見てみたいものです。あと、お嬢は遠慮せずにもうちょっと前に割り込んでもいいと思うのよ? 

ゼロの使い魔 21.六千年の真実 ★★★★   

ゼロの使い魔 (21) 六千年の真実 (MF文庫J)

【ゼロの使い魔 21.六千年の真実】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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虚無の復活の阻止を目論む『鉄血団結党』の追跡を逃れ、間一髪“竜の巣”を脱出した才人たち。アリィー、ルクシャナと共に一路ハルケギニアを目指す船の中、負傷したティファニアの手を握る才人の胸には、最後の使い魔“リーヴスラシル”のルーンが浮かんでいた…。「なんなんだよ。これ、そんなにヤバイもんなのか…?」一方、『オストラント』号で二人の救出に向かったルイズたちは、エルフの国の首都“アディール”へと乗り込んだ…。互いを想い、すれ違い続けてきた才人とルイズが、長き時を経てついに再会を果たす!「サイト、あんたのご主人様が、迎えにきてあげたわよ!」無敵のドラマティックラブコメ、いまここに再始動!

やーー、これは凄いわ。【ゼロの使い魔】だ。全然違和感がない。もちろん、ヤマグチ先生の筆致とは微細に異なる部分もあるんでしょうけれど、そんなん関係ないわ。これは【ゼロの使い魔】。ヤマグチ先生が書きたくて書けなかったまま途絶えていた、あの【ゼロの使い魔】の物語の、登場人物たちの、あの世界の続きだ。本物の【ゼロの使い魔】の続編だ。
作者名を伏せたのは、英断だったと思う。誰が書いたのか名前が出てしまっていたら、どうしたって新しい作者版のゼロの使い魔、という影がチラついて無視できなくなってしまっていたでしょう。でも、名前を伏せてくれたおかげで、ただただ【ゼロの使い魔】という物語に没頭できる。ヤマグチ先生のゼロの使い魔だと心から感じていられる。
いつか。【ゼロの使い魔】が完結して……完結して、その感慨、余韻が過ぎ去っていったあとに、この物語の幕引きを引き受けてくださった、作家の御名前をうかがうことが出来たなら、と思うばかり。
……今ねえ、ゼロの使い魔が完結出来るんだ、と思ったら、なんか凄いこみ上げてきた。そうかぁ、ちゃんと最後まで走りきれるんだ、サイトたち。最後まで導いてくれる人が、居てくれたんだ。
ありがとう、本当にありがとう。感謝の言葉しか湧いてこない。ゼロの使い魔を、ヤマグチノボル先生の書きたくても書けなかったものを、こうしてカタチにして読ませてくれて、本物として送り出してくれて、本当にありがとう。

再び走りだしたサイトたちの物語は、すでにラストまであと2巻というところまで至っているために、大盛り上がりの真っ最中なんですよね。
ついに明らかになった第四にして最後の使い魔“リーヴスラシル”の禁じられた能力。かつてのライバル、おそらくはサイトにとってもっとも因縁深き敵との共闘。
うん、ワルドとの背中を合わせて戦う姿は、もしかしたらずっと見たかった光景だったのかもしれない。自分でも思ってもみないほど心が震えてしまった。このワルド、カッコ良かったしなあ。強い! 凄い! カッコいい、というワルドを見てしまった、どうしよう。
コルベール先生も、かつての超凄腕の特務隊長だった頃を彷彿とさせる、凄みのある活躍を見せてくれて、今回男連中がみんなシャープにカッコいいんだわ。
そして、別れ別れになってしまったまま物語が途絶してしまい、焦がれ焦がれて焦がれ尽くしてもなお、もう会えない定めだったはずの、サイトとルイズのあり得なかった再会劇。そりゃあ、燃え上がるってなもんでしょう。
サイトが安定の年頃らしい理性の乏しい男の子で、ルイズのレモンちゃんもちゃんとそれらしいあたりに、ああゼロの使い魔だなあ、という感慨が……。くそう、イチャイチャしやがって(笑

もう、もう何の不安もありません。何の心配もありません。ただ期待を膨らませ、最終巻を座して待つのみ。
読者として、こうして待つことの出来ることの幸せを、噛み締め感謝するばかりです。

シリーズ感想

異端児たちの放課後4   

異端児たちの放課後 (電撃文庫)

【異端児たちの放課後】 形代小祈/兎塚エイジ 電撃文庫

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新宿の地底深く──そこには、異世界へと続く<地下空間>があった。

 人間社会にまぎれて生きる〈魔物〉の少年・ヒナタは、〈魔を狩るもの〉と名乗る転校生の少女・ホノカと出会い、問答無用で殺されかける。しかし間一髪、黒髪のエルフに助けられ、〈新宿地下空港〉という謎の巨大施設に連れてこられる。そこでヒナタは、パラレルワールドの存在を知り、自分が何者であるかのヒントを──。
 ヒュドラー、人造人間、魔法使い、エルフ──新宿の地底で暮らす異界難民たちを描く、異色の学園ファンタジー登場!!
実のところ、本作は冒頭のホノカが転校してきたあたりのシーンをチラ読みしてしばらく放置したいました。この時点では展開もありきたりでしたし、何より主人公のヒナタの行動原理や独白が痛々しいばかりであんまり面白くなかったんですよ、ぶっちゃけ。なので、もう一度続きを読み始めた時もとりあえず一通り目を通しておくか、程度で期待もせず本当に流し読みくらいの気持ちだったんですよ。
それが一変させられたのが、謎の黒服集団を引き連れたエルフが今まさに学園異能もののテンプレ展開の真っ最中だったヒナタとホノカを強引に拉致って新宿の地下に作られた広大なジオフロントへと舞台を移してからでした。
なんちゅうか、ここから作品の雰囲気がガラリと変わってしまったんですよ。目の前に広がる地下空間はジオフロントというのもおこがましい、度肝を抜くような異空間。多次元宇宙が交錯するハブ空港。そこを行き来するのは、様々なパラレルワールドや違う宇宙から訪れた異邦人たち。中には、自分の星や宇宙を見失い迷い子となった者たちも居て、ヒナタもまたそんな自分の故郷を見失ってしまった異界難民だったのである。
ガチのSFじゃよ!!
いや、ガチンコというのとは少々ズレているのかもしれないですけれど、このややもごった煮の感じのする混沌とした、しかし随分懐かしい匂いのする無辺の宇宙観はむしろ正統派な海外SFの雰囲気なんですよね。
後半に行くほど加速していく物語は、同時にそのヘヴィさも加速していきます。黒幕というか、敵の正体は荒唐無稽でまったくもってぶっ飛んだアレなんですが、それだけに外道具合も極端なほど先鋭化してしまっているわけです。その絡みもあってか、ヒロインであるホノカの境遇たるや並の不遇や不幸さじゃありません。正直、ここまで筆舌しがたい過酷で救いのない人生を送ってきたヒロインも珍しいんじゃないでしょうか。虚構の中に夢を求めてそれだけを救いとして縋って生きてきた彼女にとって、現実の世界の中に虚構の世界と同じような夢の様な幸せな事があることを、知らずに生きてきた、存在することすら気づかずに生きてきた、その事実を目の当たりにした時のヒナタの絶句は、読んでいるこちらの絶句でもありました。また、彼女の口から語られる、彼女が正義と信じて行った、しかし心の奥では悲鳴を上げて泣き叫びながら行った数々の罪の行状に、背筋が震えました。
その悲惨さは、本来人間的な感性を持たず人間を模倣し擬態することで生きてきた怪物にであるヒナタをして、心震わすほどに。
この物語は、心身ともに人間とはかけ離れた怪物と少女が「愛」によって結びつくお話でもあります。でも、二人のどちらかが普通の怪物だったり、普通の人間だったなら、決して結びつくことのない二人だったんですよね。彼と彼女が手を取りお互いを求めてしまったのは、二人共一人では立っていられないほどの心の傷を負い、悲鳴を上げて泣き叫んでいたから。のたうちまわって嗚咽する声を聞きつけて、二人は這いずるように擦り寄って、その傷を確かめ合い、その痛みを分かち合い、ようやく安息を得るのです。それこそ、怪物と人という断絶を、罪人と狩られるものという立場を、乗り越えてしまうほどの切実さで。価値観も概念も認識も違うはずの存在が結ばれるほどの痛みの共感が二人にはあり、救いたい救われたいという願いがあり、愛という奇跡が芽生える物語。
ラストシーンの、二人が手を繋いで新たな宇宙の誕生を見守るシーンには、思わず感極まってしまいました。
気がつけば、最後まで夢中になって読んでいた、最初のともすればパラパラとページを流してしまいそうだった気の無さなんて嘘みたいに、息を呑んで読みふけっていました。
かなり癖のある作品でもあって、万人にオススメとは言えないのですけれど、私にとっては長く忘れることの出来ないだろう、心に残る物語でした。

ゼロの使い魔 20.古深淵の聖地3   

ゼロの使い魔20 古深淵の聖地 (MF文庫J)

【ゼロの使い魔 20.古深淵の聖地】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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「やっぱりわたし、サイトのこと好きなのかな」「見せるの、そんなにイヤじゃなかったの」「わたし、悪い女の子なんだわ。友達の恋人を好きだなんて」―― ティファニアの『革命胸(バスト・レボリューション)』のおかげでエルフの追っ手から逃れた才人たちは、ルクシャナの導きでとある島を訪れる。この世界の生き字引といわれる水韻竜に会うためだ。だが有益な情報はなく、やきもきしながら過ごすうちに、ついにテファがレボリューション!? 一方、ルイズは学園の仲間とともにエルフの土地へ。迎撃してくるエルフたちに、才人を助けにきたと訴えるが……。世界を巻き込む災厄に翻弄されるルイズと才人は、再び手を取り合うことができるか!?
それは立派な寝取りでございますよ、ティファニアさん。罪悪感を抱いていたら、自己嫌悪に陥ったら許されるのか、と言えば自重できない時点で所詮は自分への言い訳に過ぎないのである。敵地で二人きりという突き放せない状況でサイトを誘惑し、その心を惑わそうとする行為は、友人であるルイズへの裏切りであることは否定できない。ルイズの居ないところでこっそりと、というのがやっぱりマズイよなあ。ティファの意図する所でなかったとしても、どうしてもやり口が卑怯に見えてしまう。特に、サイトがルイズを哀しませてはいけないと何度も断っているにも関わらず、繰り返し繰り返しねだるやり方がねえ。これで、開き直って決然とサイトを寝とってやるという意思と決意の元のモーションなら、それはそれでルイズが不在だとしても勝負を挑んでいるようにも見えるんだけど、こんな事しちゃいけないの、駄目なのだめなの、とか嘯きながら、まるで自分の意志じゃないみたいに、責任無いみたいに、自分はサイトを好きだけどそう思っちゃいけないんだけど、サイトは私を好きになってほしいなあ、という感じに搦手で攻めてくるもんだから、段々と読んでてイライラしてきてたり、実は。
丁度、シエスタという毅然と、というかオラオラですよ、という感じでルイズと真っ向から張り合って、遂にはお互いに認め合った恋敵同士となり、果てには生死を共にしても最期まで添い遂げようという関係になったメイドさんの存在があるだけに、この三人の関係にそんな意気地のないやり口で割って入ろうとするのが、どうしても認めがたいのです。
今回のシエスタの傷心のルイズに語りかけた発破の台詞なんか、シリーズでも屈指の名台詞だもんなあ。あんた、どこまでサイトとルイズの事好きなんだよ、と。さり気無く、奥様公認の愛人の座をちゃっかり確保しちゃってるし(笑
まあ、前々からもうルイズは、シエスタならいいか、みたいな感じになってたけど、公然と三日はサイトを寄越せ、ダメ二日だけ、みたいな会話をするようになってしまったかw
それでも、この三人の形って凄い安定してるんですよね。ルイズとシエスタって、身分の違いもあって対等の親友同士では絶対にないんだけれど、ある意味それ以上の理想的な主従としての絆がいつの間にか結ばれていたんだなあ。
公式の告知で、【ゼロの使い魔】シリーズは全22巻でついに完結する模様。あと二巻と差し迫った中で、ついにブルミルが残した虚無の謎へと物語は迫りつつある。まだ虚無の使い魔が全員出ていない以上、まだまだ話は続くと思っていただけに、あとこの巻も含めて三冊で終わりという話に意外の念を隠せなかったんだが、そうか、四人の使い魔はそういう形で現出するものだったのか。これは、教皇たちにも想定外? 未だ、使い魔に課せられた役目は見えてこないんだが、ジュリオたちの様子からすると、相当にろくでもなさそうだなあ。
それでなくても、サイトが海底で見つけてしてしまったものは個人が持つには重すぎるものなのに。

ヤマグチノボル作品感想

ゼロの使い魔 19.始祖の円鏡3   

ゼロの使い魔 19 始祖の円鏡 (MF文庫)

【ゼロの使い魔 19.始祖の円鏡】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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 bk1

愛する人への真摯な想いと、オパーイに幸せを頂くこととは別枠なのですよ、別枠!
エルフの絶大な力を見せつけられて、弱気になるサイトを慰めたのは、可愛いティファニアの偉大なるおぱーい。さすがにこれを浮気というと、サイトちゃんがかわいそうである。男にとっておぱーいとは、おぱーいとは、どりーむなのですよ!(力説
とまあ、ここはサイトをかばってあげたい。アンリエッタにクラクラきちゃったのとはさすがにちょっと違うだろう、ティファニアにはちょっとかわいそうだけどね。

如何な、三兄弟との戦いのさなかに横槍を入れられたとはいえ、サイトがここまであっさりと囚われの身になってしまったのは、ちと情けないなあ。眠りの魔法がああも抵抗なく効いてしまうというのはけっこう致命的なんじゃないだろうか。ゲームならともかく、実際の戦闘だと下手な攻撃呪文よりも眠りの魔法ってかなり効果的だもんなあ。眠らされたらどれほど剣の腕が立とうとも意味がないわけだし。
エルフの集落に連れていかれて、サイトがその文明の高度さに衝撃を受けつつも、地球はもっと凄いんだい、と心の底で強がる姿は、召喚された異世界人らしくて可愛かったなあ(笑
ここで、人間たちを蛮族と蔑み、増長しているエルフたちの鼻をあかせるような地球産の何かがあればいいんですけどねえ。武器などの単品の道具の類じゃなくて、文化を思い知らせる事が出来るような何かがあればいいんですけど、こればっかりはなあ。

うむ、そして満を持してのアイツの復活! まさか、あのまま消えちゃうとは思っていなかったので何らかの形で戻ってくるとは思ってたけど、このパターンは意外と予想してなかった。インテリジェントソードって、剣が本体じゃなかったのか。
なんだかんだと、あの飄々としたしゃべりによるサイトとの掛け合いは、ルイズとのイチャイチャと並んで、この作品の肝でしたもんね。再び二人のやりとりが見れたのが、自分でも驚くくらい嬉しかったですよ。
でも、本題は復活そのものじゃなかったのね。以前、サイトの夢にも登場していた始祖たちの物語、その真相が次にはついに明らかになるのか。
どうも、もはや完全に安定してしまったサイトとルイズの関係にも一石を投じる内容になりかねないので、次は波乱含みか。

15巻 16巻 17巻 18巻感想

ゼロの使い魔 18.滅亡の精霊石4   

ゼロの使い魔 18 滅亡の精霊石

【ゼロの使い魔 18.滅亡の精霊石】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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 bk1

ぐおおおっ、ルイズさんがついに、ついに<ツンデレ>をご卒業あそばされました!!
うん、これはもうデレ状態ですらないですよね。自分がサイトを愛している、その事実を否定も肯定もせず、ただただ在るがままに受け入れた状態。これまでももう既にサイトが好きという事実を自他共に認めて、恋人として在ったわけだけれど、さらにそこからもう一皮むけた段階の愛情へとクラスアップしたのが、今のルイズさんで……。
無理もせず、浮かれもせず、依存もせず、気負いもせず、建前も前置きも言い訳も装飾も必要とせず、極々自然にサイトを愛するに至った今のルイズさんは、もうパネェっす。こりゃあ、他の娘っこどもは太刀打ちできない領域にまで飛び抜けちゃったなあ、ルイズは。他の娘たちはまだサイトに恋をしている段階だけれど、ルイズはもう愛の段階にまで至っちゃったわけだし。
サイトも頑張らないと、ルイズは一足先に大人になっちゃったわけで、これだと本当の意みで頭があがらなくなるぞ。確かに、サイトは少年から一廉の男として立派に成長して、いつの間にかルイズはその男の背中を追いかけ縋る関係になっていたのだけれど、今回の成長でルイズは一端の男であるサイトをその胸と腕の中に抱きしめられるより大きな存在になってしまったわけで、サイトの性格からしてそんな彼女に見合うように、さらに自分への要求値を高めていくことになるんだろうし、こりゃあ大変だわ。

タバサを誘拐し、双子の妹を入れ替わりに女王に仕立て上げたロマリアの陰謀との対決は、驚愕の展開に。聖戦に固執して、これまで延々と周到な策謀を積み上げてきた法王とジュリオ。その容赦ないやり口や、法王の得体の知れないカリスマ性の描写から、タバサと妹との入れ替えはこれまで怪しい動きを見せながらもじっと牙を研いでいた真の黒幕がついに本性を表した! と思われた展開だっただけに、しばらく対ロマリアのこれまでと違って表沙汰に出きない闇側での陰惨な闘争が繰り広げられるのかと構えていただけに、ちょっと拍子抜けでは在ったのだけれど、それを上回る真実には、ロマリア側の形振りかまわぬ立ち回りに確かな根拠と実像を与えて、なるほど納得させられた。
あの法王の自信の絶対正義を信じ抜いているような意気込みは、そういうことだったのか。
正直、いくら決して失敗の許されぬ慎重さを求められていたとはいえ、あれほどの真実を秘密にして各国との関係を破滅させかねない布石を次々と振りまいた姿勢と言うのは、ある種のパニック状態にあったと思ってもいいのかもしれない。冷静たらんとしようとはしていたんだろうけれど、本当に冷静だったならもっとやりようというのはあったはずだし。
それでも、この結果を導けたのなら彼らは賭けに勝ったと言うべきか。

なんにせよ、ジュリオの好感度はこれで大逆転だな。少なくとも、あそこでキレたり、偽悪的に振舞う心根は、いい意味での男らしい見栄っ張りで、非常に可愛げが感じられる。女の子からは呆れられる姿勢なのかも知れないけれどね。

ゼロの使い魔 17.黎明の修道女〈スール〉4   

ゼロの使い魔 17 黎明の修道女〈スール〉 (MF文庫J)

【ゼロの使い魔 17.黎明の修道女〈スール〉】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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地味にショックだったのが、デルフの死に対して周りの反応がけっこう薄かったところ。サイトがへこみまくってるのに比べて、あっさり流されてるんですよね。確かに、デルフってサイトとの密接な関係と比べて、それ以外の人間とはさほど接触もなかったから、周りの人間からしてみたら喋る剣が壊れてしまった、という程度の事かも知れないのだけど。結局道具扱い、サイトの付属物としてしか捉えられていなかったわけだ。
そこに、サイトとデルフの関係性、サイトという異世界から来た争いも何も知らなかった男の子の抱いている孤独に着目して、デルフの喪失の意味を考える人はいなかった、ということになるんだろうね。
その点、ルイズはしっかりと泣いてくれたのは、なんか嬉しかったけど。

さて、アンリエッタ女王様のご乱行ですけど、これまで比較的女王様には同情的というか擁護派だった私ですが、ここまでやられると、いただけないなあ。そこで開き直っちゃいかんよ。
女王の立場を利用しているくせに、ルイズを親友としても部下としても蔑ろにしすぎてる。ぶっちゃけ、酷い。
これ、男女の性別逆だった場合を考えてみなさいよ。王様が側近の恋人に手を出して悪びれず、なんか文句あるか、と言ってるようなもんだ。ハッキリ言って、これはルイズはトリステインに三行半を突きつけて、他国に亡命しても仕方ないと思う。普通、そこまで虚仮にされて、臣下として忠誠を誓えるはずないだろうに。
とにかく、アンリエッタが色恋沙汰にかまけて、政治的にどれだけ大ヘマやらかしてるのか、自覚すらないのが恐ろしい所。ルイズが国家的に重要なコマだというのなら、それだけ気を遣って遇するのが主君としての務めだろうに、それをあの扱いじゃあねえ。無能と罵られても仕方無い。なにより卑怯。この点、シエスタは真っ向勝負なんですよね。気持ちいいくらいに。彼女はルイズを尊重している。尊重した上で、真っ向から蹴っ飛ばそうとしている。コソコソ掻っ攫おうとしている女王とは大違い。冒頭、この子がルイズの代わりにサイトをひっぱたいた時は気持ち良かったし、ルイズを大好きだと言ってくれたのは嬉しかった。

今までもけっこうフラフラしてたサイトだけど、実のところこれほど明確に浮気をやっちゃったのは初めてか。今回に関してはルイズにまったく非無し。彼女の怒りはもっとも。上でも書いたけど、あそこまで虚仮にされて、よく他国に亡命しなかったと褒めてやりたい。だいたい、真実を実家に訴えたら、場合によったらラ・ヴァリエール家そのものがトリステインから離反していた可能性だって無きにしもあらずだったと思うぞ。基盤が盤石な王家ならともかく、アンリエッタは土台グラグラなわけだし。
虚無の使い手あるルイズを蔑ろにして、自分の色恋を優先させる王様なんて、誰が政治的に信用しますか。
だいたい、アンリエッタはルイズを恋だけに生きてる、なんて戯言抜かしてますけど、結局この主君は自分の臣下がどれだけ貴族として、女王の側近としての責務を果たそうと努力してきたか、一時は命を捨てる覚悟すらしたこともあったのに、そういう決死の覚悟も献身的な働きも何も見ておらず、何の評価もしていなかった、って事になるんですよね。
もう、今回は腹が立って仕方無かった。アンリエッタへの文句ばっかりになっちゃったな。まあしょうがない。女王の評判が悪いのが、よくわかった。

前回、なんであれほどイザベラの変心を急いでやったのか、不思議に思ってたんだけど、なるほどこういう展開が控えていたためだったのか。
この辺、作者がきっちり計算して話を展開しているのがよくわかるところだけど……タバサとイザベラの関係はもうちょっと余裕をもって遊ばせて熟成させてほしかった気もするけど。まあ、いきなり最上限にまでメーターあげちゃってたから、仕方無いか。

ゼロの使い魔 16.ド・オルニエールの安穏4   

ゼロの使い魔 16 (16) (MF文庫 J や 1-19)

【ゼロの使い魔 16.ド・オルニエールの安穏】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J

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うーん、面白いなあ。やっぱり面白い。軽重でいうならまず軽いと言って間違いないのだけれど、要所要所に冷徹なほどキッチリと楔が打ち込まれているので軽妙であっても軽薄というわけでは一切ないんですよね。
物語が非常に精緻に組み上げられている。もちろん、最初からこうだったわけではなく、中盤まではバランス的に安っぽさの方に傾いてしまう事もしばしばだったのだけれど、ここしばらくの丹念に研ぎ澄まされた筋立てには感服させられてばかりだ。
つまるところ、これが面白いのである。

個人的にこの巻で私が一番好きだった場面はあれなのよね。ダバサとイザベラの和解シーン。本当なら、もっとイザベラが心を許すまでの過程が欲しいところだったけれど、このさらっとした流し方がヤマグチノボルという人の持ち味でもあるので、そこはそれ。
まあイザベラも、ここに至るまでにもっと弱い部分、タバサへの負い目、罪悪感、それらを塗りつぶしていた驕慢さ、気がいの強さといった一面、表裏を見せてほしかったけれど。って、意外と不満多いのな。この二人の従姉妹の関係は突き詰めれば突き詰めるほど美味しそうだったのでね。

現状は戦争と戦争の間の平和、といった感じの平穏なわけだけれど、塚野間の平穏と言えど戦いばかりだったこれまでからしたら、とても大切なもの。とはいえ、平和は平和で剣を持ちえない戦争の始まりとも言える。図らずも英雄へとのし上がってしまったサイトの周辺は、危険なにおいが漂い始めている。ある意味、これだけ民衆に人気が出てしまうと、ただの国家の英雄ではなく魔法使いと平民との階級闘争の英雄に祭り上げられかねない立場に立たされる可能性もあるものねえ。今のところ、平民側の不穏な動きはないから、内乱という形はしばらくは可能性としてないだろうけど。貴族のサイトへの敵視はかなり危険なものになってきている。なまじ、これまでの彼の周りの貴族は、仲間の騎士団の連中のように気持ちの良い連中ばかりだっただけに、実際の権力を握った貴族たちの目からすると平民からのし上がったサイトは、予想以上に憎らしく、危険な存在として認識されていたんだなあ。
女王アンリエッタも、決して盤石な権力基盤を持った王ではないし。実のところ、サイトをそうした害意から守る庇護者としては、アンリエッタは大して役に立たないんじゃないだろうか、これ。ルイズはそのへん、過信しているけど。サイトに至っては、自分がどれほど危険な立場に置かれているか、まったく認識していない。そもそも、日本の一般市民のがきんちょだった彼に、微妙な階級間の渦巻くパワーバランスなんて想像もできないだろうし、仕方無い面もあるんだろうけど。
ルイズもいいところのお嬢様だから、決してその辺に敏感な方でもないんですよね。本来、この手のエキスパートはタバサなんだろうけど、彼女はガリアの女王となり、既に彼女個人の戦いを始めているわけで……。
まあ、その辺にみんなの認識不足がもろに最後の悲劇につながってしまっているわけなんだろうけど。でも、あれって結局パワーアップフラグなんじゃね? とあっさりとした退場に逆に穿ってしまうんですけどね?

今回のルイズの反応は、面倒くさいのは面倒くさいんだけどかなり可愛らしいものだったように思う。サイトもかなりルイズの扱い方わきまえてきたよなあ。ただ、こいつの場合何度も失敗を繰り返してようやく対処法を覚えるような経験則に基づくやり方だから、ルイズがこれまでと違う不安や悩みに行きあたっても、まずそれに気づくことができない。必ず、一度や二度は地雷を踏みぬき、すれ違いを経験し、お互いに傷つけ合わなければ、この二人は前に進めやしないのだ。意外なほどこの二人って、傷だらけのカップルなんですよねえ。タフだねえ、と思うけど、ほんと。大概、ここまで傷つけあったら、どちらかが耐えられんと思うけど。でも、どちらも笑っちゃうほど難易度低い二人だから、離れる前に捕まえられてしまうのも皮肉な話。ほんと、難儀な二人だ。

難儀といえば、アンリエッタの難儀さは苦笑してしまう。いっそ開き直れれば楽なんだろうけれど、魔性の女のくせに狡猾に立ちまわれないのが彼女の苦しいところなんだろう。自分の恋を政治的に利用し、両立できるくらいの狡猾さを身につけられれば、彼女の閉塞感も打破できるんだろうけれど。それをするには性格が良すぎるんだよなあ。もっとも、性格は良くても行動はアレなんだけどね。そのあたりが矛盾しないあたりが、彼女の魅力とも思えるのだけれど。
その点、シエスタは随分上手く立ち回ってる。最善を最初から捨て去り、常にベターを志すことでどのようなケースでも勝者に立てるような立ち位置を確保してるんですよね。女として、それが我慢できるか、満足できるのかは、それぞれの性格に寄るんだろうけど。意外とこの娘、ルイズのこと大好きに見えるしw

きな臭さがプンプン漂ってくるラストからして、次回からは再び戦雲漂ってくるかしらん、といった次第。これ、二十巻超えるねえ、余裕で。

ゼロの使い魔 15.忘却の夢迷宮4   

ゼロの使い魔 15 (15) (MF文庫 J や 1-18)

【ゼロの使い魔 15.忘却の夢迷宮】 ヤマグチノボル/兎塚エイジ MF文庫J


うんうん、面白い面白い♪ すっかり、いい意味で熟成した感があるゼロの使い魔15巻。初期はラブコメとしては面白くとも、キャラも物語もまだフワフワと地に足が付いてない感があったんですが、中盤からはそっち方面でも巻を重ねてきたことで土台がしっかり出来て、腰を落ち着けて見られるようになってきたように思います。
それにしても、サイトはブレがなくなったなあ。自分のやるべきことをしっかりと見定め、覚悟をきめて選択し、好きな女のために戦うと決めた男の芯の太さが見えるようになってきた。
これは、ルイズが自分を好きだという事実に疑いを抱かなくなったこともあるんだろうけど。
前までは、<ルイズの事が好きだから守ってやりたい>、という献身型のスタンスだったのが、今は何となく<こいつは俺の女だから守って当然>みたいな態度なのが微笑ましいやら可愛いやら(苦笑
自分は惚れた女に愛されているという確信があると、男はこうも揺れなくなるもんですかね。ちょっと前まではルイズが本当に自分の事が好きなのか信じきれなくて、グルグル悩んだり血迷ったりしてたくせに、今となってはルイズがどれだけツンな態度を取ろうが、さらっとあしらいやがってさ。このこのw

まあこうなっては、この二人に割って入るにはシエスタがルイズ公認の愛人になるぐらいしかないのですがw
タバサもそう来たか。
ただ、これは連中、手を出しちゃいけない領域に手を突っ込んでしまった、という怖気を走らせるような迫力を、ラストでタバサが撒き散らしていたので、タバサの逆襲というべきか、新たな復讐によって連中がどうなるのか、かなりそそられるんですが。

ガリア王ジョセフの末路は、なんとも物悲しいばかり。愛情を求めたが故に、歪んでしまった哀しい人。この人が悲惨だったのは、自分がどれほど歪み狂っているのかを正確に理解し、そのおぞましさを認識し嫌悪しながら、それを止められずに流されてしまった所なのでしょう。ある意味、生き地獄を延々とのたうちまわっていたわけだ。
彼が最後にみた夢は彼にとっては救いだったんだろうけど…夢を見せることを武器として使った連中には、やはり嫌悪感が湧くのは否めない。
ジュリオは、彼は彼で誠実なんでしょうけど。サイトへの対応を見る限り。正義を疑わないような狂信者ではないのだろうけど、悪を為す事に躊躇いのない人間ではあるわけだ。

さて、物語はガリアの掣肘が終わり、本当の聖戦に。
教会とアンリエッタはじめ各国の駆け引きがどうなるのか、ちとそのへん楽しみかも知れない。期待するべきではないかもしれないのかもしれないけど。
 

12月1日


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