徒然雑記

終日のたりのたりかな  
  オロチのまどろむ庭TOP  読書メーター  月刊書籍発売カレンダー  書籍感想・殿堂作品
  書籍感想・著者索引(表紙絵附) 書籍感想・著者索引(シンプル版)  書籍感想・作品タイトル索引(シンプル版)
  11月の漫画新刊カレンダー  11月のライトノベル新刊カレンダー
  12月の漫画新刊カレンダー  12月のライトノベル新刊カレンダー
 

八坂ミナト

魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 4 ★★★★   



【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 4】  瀬尾 つかさ/ 八坂 ミナト ダッシュエックス文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

アスヴァールの地に現れた新たな魔物ストリゴイ。
サーシャの助力もあり、ティグルとリムはからくも魔物を撃退したものの、滅ぼすまでには至らなかった。
そして、逃げ延びたストリゴイはティグルらギネヴィア軍と、魔物の殲滅に全力を注ぐアルトリウス軍を最大の障害と認識し、新たな影法師の大軍をそろえてアスヴァールを襲う。
ストリゴイと魔物の脅威を目の当たりにしたギネヴィアらは、アルトリウス軍との休戦と一時的な同盟の締結を模索するのだが――。
アスヴァールを取り巻く争乱の嵐は、おもわぬ方向へ吹き荒れる。
兎にも角にもラストの衝撃的な展開に触れざるを得まいてや。
まさに目の覚めるような横っ面をぶん殴るような展開で、別に弛緩していたわけじゃないと思うのだけれど、それでも冷や水を浴びせたような心地でありました。
いきなり初手から取り返しのつかない最悪、ではないのでしょうけれど、しかしじゃあ取り返しがつくのか?と言われると、やっぱりこれ最後の一線を越えてしまっていて取り返しつかないんじゃあ、という可能性も非常に高いんですよね。
サーシャの例を見るに決して自由意志が存在しないわけじゃないんだろうけれど、それでも彼女は明確にアルトリウス陣営の将として働いているわけですし、何より紛うことなく彼女は一度死んでいる。
円卓の他の騎士たちも含めて彼らの肉体、在り方が今、一体どのような状態なのか。それについても謎が深まるばかりで実態は見えてきていないだけに、安心できる要素は何もないんだよなあ。

ともあれ、一度逃げ延びたストリゴイはその能力で大量の影法師を生み出し、アスヴァール島の各所にそれを解き放って無差別に都市部村落を襲わせるという挙に出る。
さながらバイオハザードのごとくである。大量の人形をした怪物たちが押し寄せてくる、って銃火器の存在しない中世世界では悪夢に等しいんじゃないだろうか。
竜具やティグルの持つ弓などの宝具は存在するけれど、魔法使いが兵科として存在して軍隊に組み込まれている、というような異世界ではありませんからね。兵士や騎士の戦い方はあくまで槍と盾と弓ベースなわけですし。
強大な怪物、魔物が個別に現れて暴れる、という状況ならばティグルや戦姫のような特別な戦闘力を持つ戦士が討って出たら対処できるのでしょうけれど、影法師のような通常の人間よりも怪力という程度の怪物でもこんな風に大量発生して各地に波のように押し寄せてくる、みたいな状況になるとどうしても普通の人間の軍隊によって対応しないといけなくなる。
そんな状況下で、アルトリウス軍にしてもギネヴィア軍にしても、それぞれ独自に対影法師戦術を通常の軍隊として確立していくのは面白かったなあ。
ギネヴィアサイドは、ギネヴィアが姫鍛冶師!みたいなやっつけ仕事だけど竜の鱗を加工して影法師に通じる特殊な槍の穂先を作っていく、という特殊な対応はありましたけれど、武器は特別性にするにしても戦い方はあくまで集団戦術なんですよね。
人間のように意識らしい意識がないが故に士気崩壊しないものの、考えて動くことができないゾンビみたいな存在に対して、人間の軍隊と戦うようなやり方は通用しない、というのを実際に戦い被害にあうことで体得しながら、必死にそれに対応した戦い方を構築していく、というのは戦記物の醍醐味があってよかったです。
また、ここでティグルが指揮官となる騎兵隊の活躍も目立つんですよね。自分ひとりで弓打ってりゃいい立場と違い、騎士たちを従え指揮して戦わなければならないという経験はティグルにとって新しい見地となっていくのである。幸いにして、竜殺しの名望のおかげで騎士たちの忠誠心はマックスなので言う事を聞いてくれない、という事はないのですが。かといって何でも言う通りしたがってくれるのかと言えばそうではなく、ちゃんと副官相当の騎士が苦言を呈してくれるんですよね。何かと一人で飛び出してしまいガチになるティグルにとっては、自分に全幅の信頼を寄せてくれながら一方で言うべき事はちゃんと言ってくれる相手というのは大変ありがたい存在なのですが。
これまではリムがべったりとその立ち位置にいましたけれど、今回は騎兵遊撃隊の次席指揮官として別働隊を率いて動くことも多かったですし、一緒にいればいたで前以上にこう、男女としてのべったりとした雰囲気が出てしまうようになってきただけに、なかなか今まで通りとはいきませんでしたからね。
しかし騎兵は騎兵で独自の対影法師戦術を編み出していくのも面白かったです。ティグル、妖精から力を分けてもらったおかげで他のシリーズよりも容易に弓の力を引き出して使えるようになっているので、もう弓兵というよりこれ砲兵じゃない? という戦いっぷりで、もうこれ砲撃じゃね? という勢いで爆裂する弓を打ちまくってましたね。
その爆撃で影法師の集団を乱したところに、騎兵によるランスチャージを突っ込ませて敵の戦力をこそぎ取っていく。常に騎兵の衝撃力を失わせないようにしながら、突撃と離脱を繰り返す戦いっぷりはまさに騎兵という感じでしたねえ。

対ストリゴイ戦も、円卓の騎士ガラハッドとボールスと再び共闘することが出来ましたが、こうしてみるとアルトリウスと円卓の騎士たちは未だ主従ではあっても、円卓の騎士たちかなり独自に動いているんですよね。
過去の円卓の騎士たちはあくまで魔物を倒すために動いている、と見るべきなのか。そうなると、ガラハッド卿がどう動くのかわからないんですよね。今更、アルトリウス陣営に寄ってティグルたちと対立する図があまり思い浮かばない。
さても衝撃的な展開で、アルトリウスとの対決は絶対に避けられないものになってしまいましたけれど、果たしてどういった決着を迎えるのか。救いはあって欲しいけれど。


魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 3 ★★★☆   



【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 3】  瀬尾つかさ/八坂 ミナト ダッシュエックス文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

ギネヴィア軍の先遣隊は偽アルトリウス派の支配する町を攻め落としたが、円卓の騎士サーシャの率いる部隊の反撃に遭って敗れ、町を奪還されてしまった。
両軍が睨みあいに入る中、ティグルとリムはアルトリウスに対抗する術を求めて、古い時代の神殿を訪れる。猫の妖精ケットの導きによって、二人は過ぎ去りし時代の一風景を垣間見た。
アスヴァール島を統一すべく、王を名のって戦い続ける若きアルトリウス、彼を支える勇敢な騎士たち、アルトリウスを愛する少女ギネヴィアの姿を。そして、アルトリウスの腰には二振りの剣――双紋剣があった。
歴史に語られることのない存在が、悪意をもってアスヴァール島を呑みこもうとする。ティグルとリムは抗うことができるか。

打ち捨てられた古代神殿の遺跡を訪れると、アルトリウスの時代の情景がティグルがアルトリウスに、リムがギネヴィアに憑依する形で追想することが出来るので、アルトリウスの情報を得るために一路古代遺跡を調べる旅に、とさながらRPGの王道クエストのような展開に。
これ、あとでギネヴィア王女ゴネるんじゃないですか。円卓マニアの彼女からしたら、垂涎のフィールドワークじゃないですか。なんで連れてってくれなかったんだ、とめがっさ拗ねそう。
まあ過去追想では、アルトリウスの奥方になる少女ギネヴィアが引っ切り無しに登場するのでギネヴィア・ギネヴィアで混乱してしまう、という事情もあるのでしょうけれど。過去追想ではリムがギネヴィアに入り込んでしまうわけですから、ギネヴィアが二人いるとさらにコントンとなってしまいますし。
というわけで、伝説の向こう側のアルトリウスの真実の歴史を追いかけることに。そこでは、アルトリウスが元々羊飼いの出身だったり、王妃ギネヴィアと湖の騎士ランスロットの関係の真実が明らかになっていくのだけれど……こっちのランスロットもなんかこう最強の騎士ではあるんだけれど、残念系の人だったんだなあ。ただ、ギネヴィアとランスロットがそういう間柄だったというのなら、彼がギネヴィアに執着するのも無理からぬ所なんですよね。
あと、驚きだったのが現在リムに託されている双紋剣、前の使用者はアルトリウスだったのか。
円卓騎士団の王様の剣と言えばかの聖剣が一番有名なわけですし、実際この世界でもそのように語られていたはずなのですが。リムもえらい剣を預けられたもんだ。
しかし、せっかく憑依して当時を追体験しているのに、弓使いのティグルがアルトリウスに成っていたら、双紋剣の使い方とか体感してもあんまり意味ないんですよね。リムが体験しないと。
濡れ場ばっかり体験しちゃってまあ。挿絵の方、完全に致しちゃってるんですけどw

ともあれ、情報を集めるうちにまたぞろ魔物と遭遇して、サーシャと共闘することになったのだけれど。やはりサーシャとは、敵として戦うよりも味方として一緒に戦ってくれた方が嬉しいなあ。前作の方では病気故に万全で戦えること無く終わってしまった彼女の、その戦姫最強の力を実感するのは敵よりも味方の方がいいですもんね。
元々、リムとも知己であり友人関係と言っていい間柄だった訳で、現状立場的に対立しているとはいえ心情的には恨み辛みがあるわけじゃないですしねえ。
ただこれ、魔物相手、悪い精霊相手では共闘出来るというのは、サーシャでなければ出来なかった、とはイイ難いんですよね。そもそも、復活したアルトリウスたち円卓の騎士の大きな目的が魔物の討伐にある、というのは彼らも明示している事ですからね。
ただ彼ら側の事情が明らかになってきても、どうしてアルトリウスが現王家をここまで敵視して軍勢を挙げて国を乗っ取るまでしようとしているのかが未だにわからないんですよね。他の復活した円卓の騎士たちは魔物の討伐が第一目的みたいなんだけれど、アルトリウスの行動だけが妙に浮いているんだよなあ。
でも今回のサーシャへの命令なんかを見ても、その背後に悪しき精霊であるマーリンのかげがあるようには見えない。マーリンがいったいどこまで関与しているのか。サーシャに直接干渉してきたのは凶悪ではあるんだけれど、黒幕として背後で万事を操っているのならここで無理に顔だしてくる必要もないと思うんですよね。あれはあれで結構強引だったと思うし、アルトリウスはこうしてみるとマーリンと通じているとも言い難いわけで。
ともあれ、表の敵はアルトリウス、暗躍しているのはマーリンというので間違いなさそう。少なくとも戦うべき敵の姿は浮き彫りになってきたか。
でも、魔物もいるんだよなあ。あれはあれで、精霊たちとはまた別口っぽいし。あれらは大陸由来っぽいしなあ。そのためか、精霊から託された双紋剣は邪精霊や死霊特攻で、ティグルの弓やサーシャの竜具は魔物特攻という特性の違いが。
あ、あの双紋剣の特殊合体ギミックは正直アガった。ああいうの、やっぱりカッコいいじゃないですかー。

あと、猫の王様お魚食べすぎ問題。子猫の姿のくせに、ちょっと要求が欲張りすぎである。いっぺんに三匹とか食べてないだろうな。太るぞ、精霊だろうと。
とはいえ、かわいい。生意気尊大にゃんこかわいい……。



魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 2 ★★★☆   



【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 2】 瀬尾 つかさ/ 八坂ミナト ダッシュエックス文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

ティグルとリムはアスヴァールの王女ギネヴィアに助力し、三百年前から蘇った始祖アルトリウスと戦うことを決意する。そしてついにギネヴィア派と偽アルトリウス派の決戦の火蓋が切られた。会戦でティグルたちの前に立ちはだかる敵将は、かつてのジスタートの戦姫、サーシャと呼ばれていた女性。「僕は死んで、蘇った」神器を持つサーシャの圧倒的な剣技と体術に苦戦を強いられるティグルたち。彼らの苦境を救ったのは、あまりにも意外な人物だった。「空間エザンディスの力か」円卓の騎士サーシャの言葉と共に、戦いは更なる次元に突入する!


サーシャの復活で、新旧双剣の戦姫対決だー! と無邪気に喜んでたんですが……あのぉ、サーシャの最強度合いが想像より桁2つくらい上だったんですけどw
新旧対決どころじゃないよ! 双剣使いというと、どちらかというと技倆重視の軽量ファイターという印象だけど、もうこれ呂布じゃん!? というくらいの豪傑っぷりで。
膂力があがったのは復活してかららしいのだけれど、スピード、技倆、パワー全部別次元ってなんですかこれ。後書きでもサーシャの強さについては語られているのですけれど、総合するとロランに匹敵するって事ですよね。
ただでさえ手に負えないのに、これでアルトリウスはもっと強いとか、どうするんですかこれ?

ただ、幸いなことにサーシャみたいなのがゴロゴロと集まった円卓騎士団集結、突撃ーー! という有様にはなりそうにないんですね。
ようやくアルトリウス側の内実が描かれだしたのですけれど、確かに過去ではアルトリウスは王であり、円卓騎士たちは臣下として彼に従っていたのですが、この時代においては一応主従ではあるものの、復活した目的については厳密な所でアルトリウスと円卓の騎士たちは異なっているようで、そのまま配下の将軍として付き従う、という様子ではないということ。
そもそも、どうも魔物を相手にすることを主目的としているようで、むしろアルトリウスが本来の復活の目的からはズレた意図の読めない行動をとっている、という事らしい。
モードレッドがむさいおっさんで出てきたときには吹いてしまったけど。いや、Fateシリーズではなくても、モードレッドってアーサー王の「息子」という扱いだから若い騎士、という印象だったんですよね。いや、ここで出てきたモードレッドも実際は肉体年齢的には若者なのかもしれないけど、挿絵のデザインむさいおっさんなんだよぉ。しかも、見事なくらい噛ませ犬の小物だし。
そういえば、この世界での円卓騎士団はモードレッドの反逆で潰えた、というわけではないようで。そもそも、アルトリウスとモードレッドは親子関係ではないようなんですよね。むしろ、この関係は外部からお目付け役で派遣された軍監みたいな?
どう見ても悪そうな黒幕が別にいるので、アルトリウス自身はしたたかながら清廉な王様のようだし、何を目論んでいるかわからないにしても決して邪悪な事を企んでいるのではないのだろうけど。
でも、それはそれとしてギネヴィアの家族など王族を鏖殺しているわけで盛大に血は流しているのだが。あの殺戮には何らかの理由があったのだろうか。もし、魔物の討伐が目的なら、アスヴァールの征服は必ずしも必要とは思えないし。いや、どうも魔物は各国の上層部に食い込んでいるらしいし、ブリューヌはあいつだとして、ジスタートは誰なんだろう。
ともかく、ギネヴィア側との和解はどうしたって無理なようで。
そんなアスヴァールを二分する争いの片方を担うギネヴィア軍を事実上差配しているのが、若き公爵令嬢リネット・ブリダイン。
なにこの政治チート娘はw この若さ、わずか16歳で立派に宰相職をこなして、というか宰相職どころじゃないですよね、ほぼワンマンフリート状態。父親のブリダイン公爵が軍に参加してようやく一息ついているようだけれど、ほぼ彼女ひとりでギネヴィア派は持っていたようなもので、すげえなこの娘。
ちなみに、川口先生が手掛けるシリーズでは彼女の存在は見受けられないのだけれど、この娘が居ると居ないとではギネヴィアの政治基盤の強固さがパンケーキと大理石くらい違いそうなんですよね。
あっちのギネヴィアはまだ政治できそうな器用さを見せていたので、何とかなるのかもしれないですけど。
何れにしても、過労死しそうな勢いで八面六臂の働きをしていて、リネットさんの存在感が半端なく、またティグルを竜殺しの英雄として活用する手練手管も練達で、挙げ句にティグルへのアプローチも軽快快活と来て、これリムさんぼんやりしてたらヒロイン食われますよ!?
冗談めかしてますけど、わりとガチでティグルの事捕まえられたら捕食するつもりですし。まああんまり目がないだろうなあ、と冗談で済ましている節もあるのですけど。

猫の王というケット・シーがティグル一行に加わり、登場人物みんなが寄ってたかってニャンコ詣でしてて猫ご満悦、はまあいいとして、猫の妖精が仲間になり、また敵も伝説上の騎士たちに、精霊たちもそれぞれにティグルたちに力を添え、とこのスピンオフの雰囲気はより濃厚な神秘の匂いのするファンタジーになってるんですよね。
それでいて、リネットの奮迅によって戦記物としてアルトリウス派とギネヴィア派の、中立派の貴族を取り込みつつ随所で戦いを繰り広げる本格的な国を二分する内戦ともなっていて、本編とはまた味の違うファンタジー戦記として、色々と漲ってきたんじゃないだろうか。
騎士ガラハッドと騎士ボールスの無口と多弁のコンビがまた仲良くて、まさに好漢という感じがして見てて気持ちよかったです。円卓の騎士がみんな敵、というわけではなかったのは何にせよホッとしましたよ。戦力的にも心情的にも。
さてしかし、サーシャとは明確に対決に向かっているだけに、ほんとこれどうやって対抗するんだ!!?


魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) ★★★★   



【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン)】  瀬尾つかさ/八坂 ミナト ダッシュエックス文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

ライトメリッツ公国の戦姫・エレンの下で働く弓使いの青年・ティグルと、エレンの副官・リム。故あって二人はいま、ジスタートに突如攻め入ってきた敵国・アスヴァールの真っ只中で孤立していた。
そこで二人は、アスヴァール王女ギネヴィアから、信じられない話を聞かされる。三百年も昔の人間であるはずのアスヴァール建国者・アルトリウスが蘇り、瞬く間に国を掌握してしまったというのだ。
ギネヴィアに協力することになった二人だったが、その前に、ティグルを上回る弓の力を持ち、そしてティグルのことを「今代の王」と呼ぶ謎の男が立ちはだかり――。
魔弾の王VS魔弾の王。異国の地で、かつてない戦いがティグルとリムに迫る。

エレンをメインヒロインとするシリーズを最初に、現在ミラをメインヒロインとする「凍漣の雪姫」シリーズを現在手掛けている原作の川口士先生ですけれど、新たに瀬尾つかささんを筆者に迎えてエレンの副官であるリムをメインヒロインとして新たに繰り広げられるスピンオフというより、完全に新シリーズとなるのがこの「聖泉の双紋剣(カルンウェナン)」であります。
最初はリムがヒロイン!? と、仰天しましたけれど、よく考えるとリムも第一シリーズでは戦姫となる歴史があるだけに、戦姫としてヒロイン張る資格はちゃんとあるんですよね。
それも、ティグルと同じく完全に無名で無冠の所から一緒に成り上がっていくことになるわけだ。
しかしエレンの副官という重要な立場である以上、なかなか自由に動けないだろうにと思ったら、まさかのティグルと二人でのアスヴァールに迷い込んで遭難という事態に。なるほど、これならエレンという星の輝きから解き放たれ、ティグルも他の戦姫と関わる事なく下積みする事ができるなあ、と。
下積みどころではなく、本作ではいきなり竜殺しとしての名望を得て、それを振り回しながら戦う羽目になるのだけれど。
初っ端から英雄として持ち上げられ、その名望に違わぬ活躍を続けるティグル。対してリムは何も持たない所からはじまる。エレンの副官、というよりもう次席司令官であり政務官という公国の実質的なナンバー2であったリムですから、その組織管理能力は際立っていて、偶然行き合い一緒に戦うことになるギネヴィアの立ち上げた反乱軍の、まさに要として活躍する事になるリムなのですけど、その縁の下の力持ちという立場に今まで以上に悩むことになるのです。
まだ子供の頃、傭兵の時分からエレンと共に生きてきたリムにとって、戦姫としてのエレンは親友であると同時にどうしても遠ざかってしまった存在でした。そのことに寂しさと焦燥を感じていた彼女ですけれど、そういうものだと受け止めてもいた。
一方でティグルの事も、このシリーズではリムが最初に見出しアルサスからライトメリッツ公国へと自分が連れてきた存在でありました。前作でも教育係としてティグルに付きっきりでともすればメインのエレンよりも一緒に居たリムですけれど、アスヴァールに飛ばされた今作では文字通り二人きり。二人三脚でサバイバルしなくてはいけない状況になり、よりお互いの存在が他に比べるもののない無二の相手となっていきます。
だからこそ、余計にリムもより切実にティグルの隣に立ちたいという想いを持つことになる。支えるだけではなく、共に並び立って戦いたい、生きたいと願うようになる。
その願いが、彼女の手元に双紋剣を呼び寄せることになるのですが……。神器を手にして戦う力を手に入れながらも、リムの自己評価ってずっと低いままなんですよね。いやもう他の人からシてもティグルからしても、リムってば何でもできるし万能すぎて彼女抜けるとあらゆるすべてがどうしようもなくなってしまう要も要の重要人物、という扱いなのですけれど、ずっとエレンの輝きのもとでやってきたせいかそのあたりの自己認識低いんだよなあ。
でも、そんな自己評価の低さを受け入れて、縁の下の力持ちでいいんだと受け止めていたのがこれまでの彼女なら、そういう自分を脱却したい、ティグルの隣に立ちたいという願いを自覚し、求めるようになったことが彼女の成長であり新たな献身の形なのでしょう。これもまた、可愛い話じゃないですか。
お堅いリムさんが実は可愛いもの好きでぬいぐるみに目がない、というあたりもティグルさん目ざとく拾ってポイント稼ぐの欠かさないあたり、ティグルはリムのことよく見てます。見ているのがほぼリムだけでいい、というのもあるのでしょうけれど。

しかしこれ、厳密に言うとリムって戦姫になったわけじゃないのかしら。同じ双剣でも竜具である「煌炎」バルグレンではないっぽいんですよね。リムの双紋剣(カルンウェナン)って。そもそも泉の精霊から頂いたものですし、双剣の持つ能力もバルグレンとは違っているっぽい。
それはそれとして、まさか「彼女」とリムが戦うことになるとは想像だにしてませんでしたけど。いや、このシリーズの敵が死者から復活したかつての歴史上の英雄たちだったとしても、それは思い至らなかったですよ!
「凍漣の雪姫」シリーズではかつて見ることの出来なかった最強の騎士ロランの活躍を改めて堪能できていますけれど、今作ではもう一人の見ることの叶わなかった「最強」の真価を目の当たりにできるのか。それが敵というのはたまったもんじゃありませんけど。

そして、「凍漣の雪姫」シリーズに引き続き出番ありまくりなギネヴィア王女。「凍漣の雪姫」では兄弟と争うことに後ろめたく複雑な想いを抱いている様子がありましたけれど、今作では身内同士での争いではなく家族の敵討ちという側面もあるだけに、あちらのシリーズよりも後ろ暗さなく背筋がピンと伸びた英雄らしい振る舞いを得ている気がするんですよね。派閥争いなどの変な政治バランスを気にする段階でもないですし。リネットなどの同じ趣味を持った気心のしれた有能な腹心がいる、というのも大きいのでしょうし。にしても、他の戦姫よりもよっぽど出番あるようになってしまったなあ、このお姫様。

瀬尾つかさ作品感想

浮気は恥だが役に立つ ハイエルフ嫁の嫉妬は100年単位  



【浮気は恥だが役に立つ ハイエルフ嫁の嫉妬は100年単位】 早矢塚 かつや/八坂 ミナト ダッシュエックス文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

世界を救いし英雄に迫る美少女たちの浮気の魔の手! 強大な力を持つ叛逆の妖精ヴィースを倒し英雄となったライオは相思相愛のハイエルフの王女リアーシュと婚約するが、ヴィースにより異性からの求愛を拒めぬ呪いをかけられていた。 心ではリアーシュを一途に想っているにもかかわらず、義姉で放蕩ハイエルフのミージュ、昔なじみの美少女商人セリン、偶然助けた王国の要人と、成り行きまかせで淫行を重ねていくライオ。「たしかに下半身は途方もなく喜んでるけど――ちがうんだっ!」 キスで子供ができるなんて信じている純情なリアーシュにバレれば、確実にすべてが終わる。 色を拒めない大英雄のファンタジーラブコメ、ここに開幕!

エルフが日焼けして褐色になったのがダークエルフ説は稀に見るけど、結構好きw
そのエセダークエルフなお姉ちゃんのミージュだけれど、初っ端からなんか一発目は誤射かもしれない、で死んじゃってるのだけれど、いいのかあれ!? わりとガチであれ殺人だと思うんだけど、たまたま化け猫みたいな能力に目覚めてたから良かったものの、普通はアウトでしょうに。
殺された本人があっけらかんとしているのはまあいいんだけど、勢い余って殺っちゃったリアーシュと目撃者なライオがそのままスルーして尊い犠牲だったで誤魔化して済まそうとしたの、これが探偵ものだったら犯人役であっさり退場だよ? ギャグにしてもちょっと酷かったような。
浮気の件も、呪いのせいなので不可抗力なのは間違いないのだけれど、その後の対応がひたすら誤魔化しに走っているあたりが否応なくゲスである、ライオくん。一度の過ちならともかく、その後も何度もやらかしてしまうわけですし。
寄ってたかって浮気に拍車をかける他の女連中も大概と言えば大概なのですけど。
それに比べて、ライオに呪いをかけることになった妖精ヴァースたちの方が、段々と事件の真相が明らかになっていくうちに、あっちのカップルの方がよっぽど誠実に恋愛していた事がわかってしまって、なんともはや。
好意を拒めない呪いに掛かってしまったという境遇自体は一緒のはずなのに、あちらさんはどちらも純愛を貫いているとも言えるんですよね。まあその結果があの悲劇だとしたら、いい加減にやらかしていたこっちの方が確かに役に立っていたかもしれないと思うと、いささかげんなりしてしまう。
しかしリアーシュの方がイジられキャラとしてのヒロインだとすると、ミージュの方が完全にネタキャラ扱いされていて、いいのだろうかこの扱い。本人その手の深刻さが全然なくて面白ければオッケーみたいな性格なので、それこそ殺されても気にしないくらいだからどうでもいいのかもしれないけど。
パロディ自体は決して嫌いじゃないのだけれど、本作のはちょっと品がないというか工夫がないというか、ネタの使い方にしても捻りがなくてあのドラゴンボールネタは本当にちょっとどうかと思う。自分はああいうのは好きじゃないや。
敵キャラの方の事情とかなかなか捻ってあって良かったと思うのだけれど、さすがに全体的に雑が過ぎたように思う。エロネタだけで引っ張るのはさすがに辛いと思いますよ。

黒獅子城奇譚 ★★★☆   



【黒獅子城奇譚】 川口 士/八坂 ミナト  ダッシュエックス文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

放浪の騎士グレンと神官を装う魔術師リューは旅の途中、雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込んだ。そこで二人は、同じ雨宿りをしていた先客たちと出会う。視察を終えた若い二人の騎士とそのお目付役。義眼の老騎士。商魂たくましい商人一家。貧しいがどこか油断できない吟遊詩人、しっかり者の町娘。それぞれ癖のある旅人たちが一夜を明かす中、語られる黒獅子伯の伝説と、彼に倒された魔術師の噂。そして古城に潜んでいた魔物の襲撃。様々な事件が起こる中、老騎士タングレーが遺体となって発見される。陰謀と伝説の絡みあう廃城の片隅で、グレンとリューは事件の謎に挑む。
一迅社文庫から刊行されていた【折れた聖剣と帝冠の剣姫】と同じ世界観ということで大変期待していたのですが、作中でチラッと一度だけ作品の関係者に言及されただけで、登場人物も舞台となる地域も全然異なる作品でした。なんだろ、将来的にこのグレンたちが【折れた聖剣と帝冠の剣姫】と合流するような新シリーズでも企画されてるんだろうか。でないと、おなじ世界観にした意味合いもよくわからないのだけれど。
内容としてはファンタジー世界を舞台にしたクローズドサークルによるミステリー。激しく降り出した豪雨を避けて立ち寄った廃墟とかした砦には、同じく雨宿りする何人もの行きずりの身分も年齢も異なる男女が集まっていた。
という導入は、ふと京極夏彦さんの【巷説百物語】のはじまりの話なんぞを思い出してしまったのですが、あちらが江戸時代の風情をよく感じさせてくれたように本作も、西洋風の中世時代という背景を色濃く感じさせてくれる雰囲気をよく醸し出していました。遊歴の騎士という存在や騎士たちの在り方、魔術師に対する強い偏見や民草の立場など。それに、廃墟の城がまた古い罠が残っていたり、地下に迷い込んだ魔物たちが潜んでいたり、と舞台としては現代の館モノとはまた違うファンタジー世界を強く意識させるものになってるんですよね。
その上で、外は激しい雨で廃墟である砦はかろうじて雨風を避けられるものの、窓は破れ隙間からは容赦なく雨風が吹き込んでくる。壊れた家具を薪にして、ようやく居間の暖炉に火を灯して暖を取る、という状況がじっとりと湿った重苦しい雰囲気を醸し出してるのですね。ここに、半ばダンジョンのようになってる廃墟の不気味さや、中世時代特有の仄暗いイメージが相まって、トドメにタイトルの黒獅子城であります。ひたすら、現代モノのミステリーとはまた少し趣を異にする重たい空気感を作り出すことに成功してるんですなあ。
一方で、肝心のミステリーの部分に関しては極めてオーソドックスであった、というところであります。先にあげた巷説百物語のような「アッ!?」と驚くような展開が待っているのではなく、ドロドロに絡み合った人間関係を徐々に詳らかにしていくことによって、死者からのメッセージを解き明かし、犯人を浮き彫りにしていく、という展開にしても謎にしても変に奇を衒わずに順当に徹した、というところなんでしょうか。
色っぽい関係だった主人公とヒロインの二人ですけれど、もうちょいお互いの関係に対する考え方とか踏み込んでもよかったかな、と思うところですね。まあグレンはリューとの関係に関してちゃんと思うところを語ってはいましたけれど、いまいちリューは何考えてるかわかりませんでしたし。もっとイチャイチャしてもいいんじゃよ?
リューとか、あれ謎解きとか結構好きなんじゃないのかしら。本編始まる前も別の殺人事件解決していましたし。
まあ続き出るにしても、次はミステリーでなくてもいいかなー、と。彼らが出る物語はぜひみたいところですけれど。【折れた聖剣と帝冠の剣姫】の続編という可能性込みで。

川口士作品感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 4 ★★★☆  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(4) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 4】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon
Kindle B☆W

パルミアの第一王女アルトとの同盟は決裂し、再び独力で国作りを進めることになったルシードとファル。近隣諸国からの移民受け入れを増やし、徐々に勢力を増しつつあるアスティリアに懸念をいだいたルシードの祖国カーヴェルは、いまならば一戦交えればルシードらを滅ぼすことができると判断し、急な派兵を決定した。アスティリアに迫るカーヴェル王国の軍勢。その先頭にはルシードのかつての忠臣ライサンダー将軍の姿が。ルシードたちは経験豊富なライサンダー率いる軍勢を相手に己の国を守り抜けるのか!?
ほとんど一瞬しか登場しなかったライサンダー将軍の奥さんだけれど、その一瞬で全部持ってっちゃったんですけど! インパクトが強烈すぎる!!
元々貴族のお嬢様だったのだけれど、身分の割に行動力が凄い。と度々語られていて、人質にとられたあとも宰相の脅しにも屈しない毅然とした様子を見せていたので、若干アグレッシブなところのある活発な人なんだろうなあ、と特に意識もせずに思ってたんだけれど……ライサンダー将軍、行動力の言葉の意味間違ってませんか!? 完全にアレな人じゃないかっ。あのコンスタンスをあんなにビビらせた人初めてみたぞ。
でも、ライサンダー将軍のあの生真面目すぎて男女の機微に関しては疎そうな性格と奥さんのあの性格はマッチングしやすかったのかもしれない。ライサンダー将軍、奥さんの特異性を目の当たりにしていてもそれが異常なの全然気付いてない感じがするし。この調子だと、家でもメイドさんの類い居なかったんじゃなかろうか。
さて、今までで一番の危機を迎えることに成ったアスティリアだけれど、今まではパルミアとカーヴェルがルシードたちの行方を把握しておらず、国際情勢的にも軍を派遣できない状況だったからこそ悠長にやってこれたわけで、領土が二百人規模の村一つだけという状態で軍備どころか国らしい実態もない状態でまともな軍勢に攻め込まれてきたら、そりゃあどうしようもないわけでけっこう綱渡りではあったんですよね。
それでも、今までなんとか上手いこと立ち回ってきたわけだけれど、故国の簒奪者たちも早々見逃してくれているほどの無能者ではないわけで、この苦境はいずれは覚悟しないといけないところだったわけだ。
ヤバさで言えばパルミラのクログスター卿の方が人間ではないという怪しさも相まって黒幕感たっぷりなんだけれど、ルシードの故国のカーヴェルの方だって国を乗っ取った宰相も、王族を監禁してなお国を平穏に保って実権を得ているほどの人物なんだから、油断ならない相手だったんだわなあ。
でも、小物とまでは言わないまでも、あの妹姫コンスタンスに手綱をつけれるほどではないよなあ、これ。ライサンダー将軍を人質なんて使って言うこと聞かせようとしたり、とわりとせこせこしいてるところも見受けられるし。油断はならなくても、そこまで脅威ではないか。むしろ、ロンガヴェル将軍の方が一癖も二癖もあって怖い感じがある。軍略家としても将軍としてもルシードやファルと同レベル以上っぽいし。今回はなんとか打ち払えたけれど、あれはロンガヴェル将軍が竜という存在に対して殆ど知らなかったがゆえで奇策もいいところ。二度は通じなさそうだし、戦略的にはほぼ完敗でしたからねえ。ルシードの作戦も、戦う前から既に対応策の範囲内で収まってしまっていましたし。これは手強い。
アスティリア国、士官クラス以上は凄まじく充実しているのだけれど、とにかく兵数が全然いないのがネックなので、さてこれからどう人数増やしていくのか。今回の移民受け入れ計画が端となるんだろうけれど。
ルシードとファルの仲は、前回思いが通じ合ったのを気に、もうファルの方がデレッデレになってて以前からルシードには甘い所あったけれど、完全に浮かれてますねえ姫様。ルシードが相変わらず性欲にあっさり屈するあたりは笑ってしまいましたが。

瀬尾つかささんのシリーズも一迅社文庫では一端区切りとなってまた違うところで再スタートするのと同じく、本作もどうやらここで一端区切りとしつつ終わりじゃなくて、違うレーベルで出るようなことがあとがきに記されていたので、取り敢えず打ち切りじゃないみたいで一安心。
どんどん戦乱の気配が広がってきていて、面白くなってきたところですからねえ。


シリーズ感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 3 ★★★☆   

折れた聖剣と帝冠の剣姫(3) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 3】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon
Kindle B☆W

エルドームでの激戦から帰還したルシードとファル。長くパルミア、カーヴェルに伝わってきた聖剣伝承に疑念を抱く二人のもとにパルミア王国の政権を奪った将軍クログスターからの使者が現れ、ルシードらにとって困難な協力の要請を伝える。時を同じくして、ファルの姉にしてパルミア第一王女のアルトもまたルシードたちの前に姿を現した。正統なる王家の指導者としてクログスター政権の打倒をかかげるアルトは、妹のファルとルシードに合流を促す。いっときは兄弟姉妹のように育ったルシードらは快くアルトを迎え入れるのだが、姉であるアルトの隠すことのないルシードへの好意が徐々にファルの心を曇らせていく。再会を果たした王子と王女、4人の新たな体制は何をもたらすのか?!
アルト姉様、後々普通に合流するものと思っていたので、まさか合流したことで逆に昔のままの関係じゃ居られない、という現実の立場に基づく亀裂を入れてくるとは……。国を割る、国を起こすということは旧体制との決別を意味する以上、これはどうしようもないことだったのか。アルト姫からすると、あくまでパルミア王国の正統としての立場を譲らないのであれば、どう国内を改革しようと新しい国を起こしたファルと同じ道はもう歩めない。なまじ姉妹仲がいいだけにこの決別は辛かったなあ……。ただ、そこにルシードという男が絡んでいるだけに事態が余計に拗れているのですけれど。
ファルが生まれた国を捨てて新しい国を創ろうと思ったのはルシードが居たからで、彼が居なかったらそもそもどう国内で立場が追い込まれようと、アルトから離れることはなかったんですよね。そのルシードを一時的にでも手放してしまうことは、ファルにとって立脚点を失うことに等しい。
そんなルシードを奪おうとする姉は、どれだけ仲が良かろうと大切だろうと敵認定するほかないんだよなあ。まさか、こんな形で男の奪い合いが発生するとは思わなかったけれど。ハーレム展開はどうやったって無理なんですよね、二人の立ち位置からして自分の地位を捨てる以外にルシードを共有することが出来ない関係になってしまっている。
まあこれだけアルトが積極的で、なおかつファルの感情を刺激することになるとは予想外でしたけれど。もうちょっと緩やかにファルのルシードへの気持ちは成熟していくと思っていたから、相当性急にファルは自分の気持ちを自覚して、なおかつそれをフル駆動せざるを得なくなったわけで。アルト姉様、けっこう容赦無いですよね、こうして考えると。実質、可愛い妹から男を奪うのに殆ど躊躇らしい躊躇がなかったわけですから。それだけ、アルトも切羽詰ってたとも言えるのかもしれませんが。ファルが追放され自身も亡命政権を率いる事となり、一人で反乱勢力と内部の旧弊と戦わざるを得なくなったわけで、心から信頼し寄りかかることの出来る相手を欲するという意味では、飢餓状態だったのかもしれません。それが、あのルシードへの過剰なくらいのアプローチににじみ出てしまっていたのかと。
なかなか辛い道を歩いてるなあ。彼女がもっと姫としての立場に無責任なら、全部放り捨ててファルたちのもとに来るという選択肢だってあったでしょうに、それは端から頭になかったみたいですし。

しかし、相手が悪い。

パルミラを制圧したクログスター卿、明らかにただの簒奪者じゃないんですよね。建国の物語であるものの、戦記物ではなくむしろ王道な冒険という要素を重視したファンタジーらしい本作ですけれど、聖剣というものが作られた過去の歴史にまつわる謎が、どうやらダイレクトに事態に介入してきそうで、その根幹に居るのがどうやらクログスター卿。彼がやっぱりラスボスとなってくるのか。またぞろ、人智を超えた人外の存在がバックでうごめいている気配が垣間見えてきた。

あと雷竜さん、あんた金に汚い! 詳しい情報が欲しいなら、約束の財宝とはまた別に金払え、って守銭奴か!!

シリーズ感想

天空監獄の魔術画廊 5 ★★★★☆  

天空監獄の魔術画廊 V (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 5】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle B☆W
奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。脱獄に失敗し、監獄内での自由すら奪われて監禁されてしまった看守のリオンと、囚人のキリカ、レオナ、アネット、フィーネの4人。しかし、リオンの師匠・イングラムが率いる革命軍の手助けにより、再びリオンは脱獄を決行する―。このままでは世界が滅亡!?天空の大監獄の謎がついに解き明かされる!!
脱獄話が、いつの間にか世界滅亡のピンチになってたーー!! 詳しく話を聞いてみると、おおむねキリカさんが原因じゃないか! たった一人で危うく保たれていた均衡をぶち壊し、何十年も掛けていた計画を破綻させ、世界の趨勢を決める戦いを引き起こしてしまったキリカさんのポンコツっぷりはもうワールドレベルじゃないかw
キリカが罪人としてこの大監獄に放り込まれた過程って、何気に雑というか大雑把というか、なんでわざわざこの娘を罪人に仕立てあげなきゃいけなかったのか、という理由から妙な違和感があったんですよね。なにしろ、キリカさんって知れば知るほどポンコツで、わざわざ排除しなきゃいけないほどのキレ者でもないんですよね。そりゃ、あの戦闘力はもう尋常じゃないことこの上なしなんだが、そこまで邪魔かというとわりとどうとでもなりそうというか、騙しやすそうというか、利用されやすそうというか。
まあそういうもんか、と気にはしてなかったんだけれど、まさか師匠筋からリオンの護衛として送り込まれていたとは……むしろ、色々計画を台無しにされて過労死寸前のどんちゃん騒ぎになってしまった副官殿の腹いせが理由の大半だったような気がしないでもないけれどw
でもまあ、キリカさんがやらかしてリオン捕まえちゃったからこそ、レオナやアネット、フィーネの三人と出会うことが出来たのだから、運命は運命だよなあ。キリカさん的には自爆かもしれないけれど、まあ一緒に大監獄に来なければキリカさんもリオンと結ばれなかったのだから、悪くはない差し引きだったんじゃないかと。
それにしても、一気に魔王を含めてこの世界を構成する様々な設定や謎が明らかになったんだけれど、大監獄内でわさわさやってたのもそれはそれで面白かったんだけれど、わりと外に出て世界中駆け巡って冒険して、というのも面白かったかもしれない、と思う程度には世界設定面白かったんですよねえ。
それ以上に、やっぱりこの主人公のリオンの自分ルールを譲らない「魔王」なキャラクターこそがはっちゃけた展開に燃料ぶちまけて火を焚べるファクターだったので、大監獄内だろうが外の世界だろうがリオンが大暴れしてる文には、楽しさは変わんなかったのかもしれないけれど。
いや、この主人公の自分で定めたルールは厳守するけれど、一方で欲望に忠実、というキャラは面白かったなあ。その彼の欲望というのが基本的に画狂としてまず何よりも良い絵を描きたい、というところで埋め尽くされてたのも、このリオンを頭のオカシイ一般論が通じない「魔王」にしてたわけだけれど、前巻あたりで「愛」とはなんぞや、女性を愛するとはなんぞや、という人間のそれを理解して以降は、鈍感じゃない主人公として……やりたい放題になってましたからねえ、うんうん。一途なようで、どっか踏み外してたからなあ。彼が誰か一人しか選ばない、という結論にはどうもしっくり行くものを感じていなかったので、レオナが粘り勝ちしたのも納得なんですよね。
てか、実のところ自分はリオンは、キリカさんルートじゃなくてレオナを選ぶんだと思ってたんですよ。だから、キリカさんのウェデングドレス姿の最終巻の表紙絵には、キリカさん可哀想に的なことを考えてて、正直すまんカッたw
キリカさん、ぽんこつ可愛いんだけれど、レオナのガチヒロイン力がちょっと揺るぎないものがあったんですよね。レオナだけは、ちゃんと受け入れてあげないと幸せになれそうにない薄幸な感じが付き纏って離れなくってねえ。
結局、キリカさんのポンコツさはラブコメ面でも最後の最後まで暴れっぱなしでしたし。せめて、一番最初に結婚式やってあげるくらいでないと、レオナもアネットも、フィーネですら男の子をドキッとさせる女子力がありすぎて、キリカさん弄られるしかないのよw まあキリカさんのあのイジられれば弄られるほど輝くポンコツかわいいキャラはいい意味でぶっちぎりなんですけどねえ。
後日談は、大監獄脱出後の彼らの激動の人生が伺い知れて、これはこれで読後感に痛快さがあって実に良かった。ほんとにリオンとこの四人の嫁たち、やりたい放題人生楽しみ、肉欲に溺れ、世界を股に掛けて大暴れして、生きることを満喫しきったことが伝わってきてる。本物の魔王なんかになって、世界を支配して、苦労も多かったんだろうけれど、しんどいとか辛いとかが全然感じられない、ヒャッハーな空気が満ち満ちてるんですよね。これだけ楽しそうな様子が伝わってきたら、もう見送る方としては苦笑しながら満腹のお腹を擦るしかないじゃないですか。
ああ、面白かったっ! 

あと、最後に。もう一人の脱獄王ヴァレリア。ついにはこの世界からも脱出して異世界を征服に行ってしまった彼女。アイシャルリターン、とばかりにあっち征服したら今度はこっち征服しに戻ってくるから首洗って待ってるが良い、とばかりに肩で風を切って行ってしまった彼女。後日宣言通りに、異世界からこっちの世界に侵略戦争を仕掛けてきたようなのですが……。
あのね、あの宣言見たら、今度会う時は乾坤一擲の決戦だ、という気分になるじゃないですか。今度こそ、決着を着けるぞ、みたいな雰囲気だったじゃないですか。
なんだよ、その侵略戦争の回数わ!!(爆笑
ヴァレリアさん、あんた、ちょっと侵略して来過ぎ!! その回数だと一年に2回以上の季間行事みたくなってるよ!? 人生楽しそうという意味合いにおいては、ヴァレリアも負けず劣らず、どころか吹っ切ったリオンたちをすら圧勝してるよなあ、この人。

シリーズ感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 2 ★★★☆  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(2) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 2】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon
Kindle B☆W

互いに助けあって、新たな国を興すことを決意したルシードとファルシェーラ、コンスタンスの三人。期限つきのドラゴンとの契約に焦り、資金繰りに苦慮しつつも、三人は次の段階へ踏みだす機会をうかがっていた。そんなおり、エルドーム王国からの使者がファルシェーラのもとを訪れる。使者の名はエルドームの第五王女、リュシール。エルドームの鉱山から、劫炎禍の異名を持つ炎の魔物イフリートが現れ、魔物を倒すためにファルシェーラが持つ聖剣の力を借りたいのだという。申し出を受け、エルドームへと向かうルシードたちだが、その行く手にはイフリートの眷族たちが立ちはだかる。同じ王女の立場から友情をはぐくむコンスタンスとリュシールの未来は、そしてイフリート復活の裏に潜む陰謀とは―
自分たちの国を作る、という夢は夢として、ファルたちが一番楽しいのはやっぱり三人で冒険の旅をする、というところなんだろうなあ、とリュシュール姫からの依頼に応えてエルドーム王国に向かうことになってからのファルとルシードのウキウキっぷりを見るとそう思うわけで。
現状、とても国としての体裁を整えられてるとは言えないのだけれど、パルミラ王国からファルを慕って部隊が抜けてきてるのかー。三人だけの旅じゃなく、ちゃんと兵隊を引き連れての旅になってるあたり、メインの三人が何だかんだと全員王族であるのが出てて面白い。一冒険者の出世譚や成り上がり物語じゃなくて一応最初から王族だった人達による建国譚なんですよねえ。
そもそも、パルミラのファルと、カーヴェル王国のルシードとコンスタンスが共同統治してるように彼女たちの国は最初から違う国の者同士が寄り集まって新しい国を作る、というカタチになっているのだけれど、今回エルドーム王国での冒険で、ファルが連れてきたパルミラ兵とリュシュール姫の護衛として連れてきたエルドーム兵が一緒に戦うことで戦友としての共感を抱くようになっているのを見ると、今後はパルミラとカーヴェルだけじゃなく、それ以外の国々からも人が流入してきて、というカタチになるんだろうか。どちらにしろ、今のままだと国どころか都市とも言えない辺境の村に過ぎないので、いずれにしても入植者は募らないといけないことになるんだろうけれど。
となると、今回のエルドームとの誼を通じた件も大事なんですよね。言及はされてませんけれど、リュシュールの第五王女、という立場は身内からは愛されているのはともかくとして、政略結婚の駒として利用されるのが当然の立ち位置ですからね。こっちに送られてくる可能性高そうだなあ。
ただ、そういう婚姻外交が絡んでくると、やっぱりファルとルシードとコンスタンスが上下の差がない共同統治者、という点が面倒になってくるんですよねえ。建前的にも本音的にも、くっついちゃって問題はなさそうなんだけれど……。
ファルも全然まんざらじゃなさそうなんだがなあ。リュシュールからの依頼を受けるかどうかを、彼女がルシードたちの意見を聞いてから受けるかどうか決めたのだって、立場を考えてとか気を遣ってとかじゃなくて、極々自然に勝手してルシードやコンスタンスに嫌がられたくない、という気持ちからみたいでしたし。
まあ、ルシードたちからすると、ファルが受けるのはまず当然として、それをどう処理するか、に最初から頭が行っていたみたいなので、ファルの心配しすぎだったのですが。
でも、姉兄二人がくっついちゃうと、コンスタンスが浮いちゃうのか。この世界の倫理観的に腹違いの妹までならOKなら別にいいんだけれど。コンスタンス的には兄にべったりですしねえ。
今回の冒険で、単に兄にくっついていくだけじゃなく、ちゃんと自分の力で立った上で兄にくっついていく自信は得たみたいですけれど。

しかし、ファルの姉姫様は一応クーデター政府に対して正当派を主張する勢力を束ねて引っ張ってるのかー。聖剣問題からして、正当パルミラを名乗るからには本物の聖剣を手に入れたとするファルに対しては偽物だと非難する他ないので、これは簡単に合流とはいかないかも。一応、姉姫さま当人は沈黙を守ることでファルを守ってるみたいだけれど。
あー、そうなるとイフリートの祭壇の奥で新たに見つかった朽ちた聖剣が、色々と重要になってくるのか。もしかしたら、聖剣は一本じゃなかったかもしれなくなるわけだし。

1巻感想

天空監獄の魔術画廊 4 ★★★★  

天空監獄の魔術画廊 (4) (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 4】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle B☆W
奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。天空の大監獄に閉じ込められ、看守の任を与えられたリオンの下にやってきた新しい囚人、それは昔からの知り合いで吟遊詩人の少女・ユフィリアだった。リオンの過去を知る人物が加入したことで、女の争いは一層過熱することに。そんな中、リオンの企みを阻止するべく激しい襲撃を仕掛ける敵が現れて―!?
本気触手責めキターー!! しかも、主人公がヒロインを魔獣を使って触手責めするという鬼畜的所業! もうやりたい放題ダナー。
そもそも、幼なじみ的少女を既にヌードモデルで全身舐めるように堪能済み、という時点で凡百の主人公と一味も二味も違うのですけれど、これまではトラウマ紛いの欠落が原因の鈍感さによってリオンって性的な欲求が全部画狂のそれに変換されてしまっていたので、羨ましい境遇も致命的なところには至ってなかったんですよね……いや、その鈍感さが既にユフィリアには致命的な展開を催してしまっていたのですけれど。
ともあれ、前回シスター含めてみんなの奮闘によってリオンの欠落は埋められて、彼の男性としての感性は鈍感から脱することに成功したのですが……。
レオナやキリカに対してドキ・ドキしている間は良かったのですが、途中から変な具合に突っ走りだして、フィーネを弄りだしたときにはもうどうしようかと。
フィーネはフィーネで雌豚扱いされて、喜びだすし。これだけやりたい放題やるくせに、リオンってば本質的に一人しか選べない男であるなんてことになってしまったので、本命のレオナとキリカはともかく、三番目のアネットとフィーネはどうするのかと思ってたんですよね。アネットは色々と割りきってましたけれど、四番目扱いのフィーネは本人は諦観してるもののちと可哀想だなあ、と思ってたのですが全然可哀想じゃなかったし。むしろ、ペット扱いされて雑にあしらわれて悦んじゃってるし。一生雌豚として大切に支配してやるとか言われて完落ちしてるし。なぜそれで落ちるw
色んな意味で、アネットが勃興した魔王ハイレイン教の布教が順調に進んでる、進んでしまってる!!

ともあれ、ついに脱出のための手段が揃い、天空監獄の脱獄作戦を決行するリオンたち。ところが、その計画は筒抜けもいいところで、結構開始寸前から全看守と囚人に追撃指令が出されるしっちゃかめっちゃかの逃走劇に。そして、立ち塞がるは完全にノリで邪魔しに来た監獄王ヴァレリアと、リオンを叩き潰すために狂乱したハイネ。
人生楽しそうなヴァレリアさんはともかくとして、狂ってしまったハイネが哀れでねえ。彼は、もう一人のリオンだと言われるのもうなずけるところで、多分最初にレオナを失っていたらリオンの魔王化はこんな方向で進んでいたんでしょうね。尤もリオンがこうなる可能性というのは、現在進行形であってレオナとキリカ、アネットとフィーネ、今この四人の誰かが犠牲になったりしたら、あっさりこの主人公、転変してしまいそうなくらいには危なっかしいというか、情が深い。情が深いからこそ、なんでもするし、どんな手段でも取るし、自分すらも追い込んでいく。まあ、女性陣からすると目が離せないタイプなんだろうなあ。
それでも、リオンやハイネは常識枠なんだろうなあ。完全におかしいのは、むしろキリカさん。この人、確か登場時はもうちょっとまともな女騎士だったと思うんですけれど……。
「ひゅんひゅんっ、ぎゅいーーんっ!」
どこのアラレちゃんだよ! と思うような斬撃の掛け声とともに暴れまわるこのパッパラーポンコツ騎士。いやもうこんな「ずんばらりん」ってな感じで斬りまくるって、一人だけ世界観違う! 無敵すぎる!
どうやらこの手の「オカシイ」人というのは割りと一定数以上いるらしいのはラストに明らかになるんだけれど、それでもキリカの無敵っぷりは頼もしいなあ。何故か、戦っている時の頭の悪そうな様子がどんどんえらいことになってる気もするけれど、もうポンコツっぷりは普段から酷いことになってるから仕方がないか。

ユフィについては、えらい中途半端な時期から加入してきたなあ、とは思っていたものの、下にいる頃からの知り合い、しかも同じ師匠から学んだ妹弟子で、しかもプライベートでも結構ゴニョゴニョな関係だった、と最初からある程度以上に親密だっただけに、後半加入でも仲間となるには巻き返し可能なのかなー、と思ってたのですが、彼女の動向に関してはかなり思いもよらぬ展開に。
いやでも、欠落が埋まったリオンの変化はきっと喜ばしいことなんだろうけれど、芸術家として空隙を埋めるように良識も放り出して狂奔していた姿にこそ魅力を感じていた、という人も居てはおかしくはないはず。
ある意味、もう自分の知っている、自分のものじゃなくなってる兄弟子に、決断を下したユフィのそれは未練がましさのないキッパリとした性情で、なんかスッと腑に落ちるものがあった。ユフィはそれでいいよ、うん。

さあ、ラストに待っていたのはどんでん返しにさらに大ドンデン返し、の挙句に怒涛の盤外からの降って湧いたようなサプライズ。クライマックスは、今まで以上にド派手な騒ぎになりそうだ。
リオンが、誰を選ぶのかも含めて、きっちり最後まで楽しませて貰えそう。

シリーズ感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 1 ★★★★  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(1) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 1】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon
Kindle B☆W
知略の英雄、カーヴェル王国のルシード王子。勇猛な聖剣の姫、パルミア王国のファルシェーラ王女。大陸に名を知られる二人が率いた軍は、リスティオンの野で激突し、かつての幼なじみである二人は死闘を繰り広げていた。ファルシェーラの軍勢は着々とカーヴェル軍の陣容を切り崩し、ルシードが首級を上げるべく剣姫ファルシェーラが突入、ついに互いを強敵と認めていた二人は戦場であいまみえる。時を同じくして二人の英雄不在のときを狙ったかのように両国で政変が発生。二人は帰るべき祖国を失う。かくして同じ立場となった王子と王女の二人は居場所を求め世界を旅することになるのだが、その最初の行く手にはかつての勇者が封印した巨大な竜が待ち受けていた。ルシードとファルシェーラ、二人の前に最初の試練が訪れる。
あらすじであらかた語ってしまっているのはいいんだろうか、これ。しかも、ふたり旅ではなくてルシードの妹姫コンスタンスも一緒に逃げて三人旅にも関わらず、まるで居ない娘扱いじゃないか(苦笑
しかし、コンスタンスって腹違いの妹のはずなんだけれど、一貫して義妹表記なんだがこれって意味あるんだろうか。義理の妹なら結婚できますよってか? ちなみに、幼いころに交流していた相手には、ファルの姉姫様もいらっしゃるので、幼なじみハーレムというシチュエーション狙いという可能性も考えねばならぬようだな!
でもこれ、新しい国造りのお話なんだけれど、国の王様になるのってこの流れだとルシードじゃなくて、ファルシェーラっぽいですよね。王権の証が本物の聖剣である事と、あと新しい国を作りたいと言い出した上でどんな国を作りたいか、という方向性を決めたのがファルなわけで、ルシードとコンスタンスはその夢に乗っかるという形で参加したので、あくまで主体はファルなんですよねえ。
新国家建設という目標を打ちたてた上で、ファルはルシードたちを誘ったわけだけれど他国の、しかも妾腹とはいえ王族であるルシードを旗揚げのメンバーに選んだ時点で、どう考えても実際に国がちゃんと成った時の結婚相手ってルシードしかいないんだけれど、当人たちその辺どのくらいまで考えてたんだろう。ファルはわりと「そのつもり」である素振りはあるんですよね。ルシードもその辺わかってないはずはないんだけれど、まさ先のことは後回しにして考えないようにしている感じではあるわけだが……ファルが女王になったら、王配が嫁さんたくさん持っていいんだろうか、と思わないでもない……が、みんな身内だったら血統としては逸れてないからいいのか、別に。

古くから敵対していた国同士の間に訪れた、僅かな休戦期間。その際に行われた国家間交流で幼い頃の時間を共に過ごしたカーヴェル王国の兄妹とパルミラ王国の姉妹。
長じて、再びカーヴェルのルシード王子とパルミラのファルシェーラ姫が再会したのは、お互いが軍勢を率いてぶつかり合う戦場であった……という、幼いころに友誼を交わし仄かな想いを抱きあった幼なじみ同士が久闊を叙する代わりに戦場で槍を交わし合う、というなかなかにワクワクする戦記モノとしての舞台からはじまるこの物語ですが、こっからの展開がまた大胆というか贅沢というか。
この作品、戦記モノであると思ったら、貴種流離譚に様変わりして、そこから少人数のパーティーで秘境に眠るという伝説の聖遺物を求めて旅する冒険譚になったと思ったら、僅かな人数の同じ志を持つ者同士で全く新しい国を一から立ち上げる、という国作りの物語になる、という一つのネタで1シリーズ作れそうなのを上手いことブレンドして一つの作品にまとめ上げる、という凄まじく贅沢な作りをしてるんですよね。作者の川口さんのこれまで描いてきた物語の経験を注ぎ込んでいるのが伝わってくるだけに、非常にワクワクさせられるスタートであります。
主人公のルシードは、王子という貴種の身の上ではあるものの、妾腹の子として王宮ではかなり肩身の狭い思いをしている上に、母が亡くなるまでは貧民窟で育った、という経歴で、王族で将軍でありながらもわりとしがらみがないんですよね。母方の伯父が冒険家であるせいか、旅や冒険に憧れを持つような側面もあり、王子でありながらクレバーな自由人な感じなんですよね。これで、国に縛られていたら王子という血筋は枷になるんですけれど、国を追われた身の上だと逆に武器の一つになってくるのが面白い。新国家を立ち上げるにも、王族の血は大きな要素の一つになりますし、ファル姫との身分差に悩むこともないですからねえ。唯一のしがらみとなり得るはずだった妹のコンスタンスも、ちゃっかり逃亡の旅にくっついてきちゃってるわけで、もう何の憂いもないわけです。ファル姫も、あちらの国で色々と不自由な身であったらしく、コンスタンス含めて三人と、国を追われた立場でありながらその事実に落ち込み傷つき鬱屈をためるどころか、むしろスッキリしたと言わんばかりに籠から飛び出した鳥みたく、羽根を伸ばしてのびのびしている様子には思わず微苦笑してしまったり。溜まってたんだなあ、色々と。
未だ合流出来ていない姉姫さまも、いずれ登場してくるでしょうし、新しい国を立ち上げる目処こそついたものの、それにはいきなりのリミット付き。周りは既存の国家群に囲まれ、自分たちは賞金首。率いる兵士も国民もいない三人きりの国の旗揚げ、とそれだけでも相当どころではないハードルの高さなのに、その上にまたとんでもないリスクを背負ったもんだわ、と思いつつもリスクをメリットに変える算段はあるわけで、さあどでかいスケールのシリーズのスタート、ワクワクしますなあ。

川口士作品感想

天空監獄の魔術画廊 34   

天空監獄の魔術画廊 (3) (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 3】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle B☆W

奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。天空の大監獄に閉じ込められ、看守の任を与えられたリオンはある日、監獄の次期副署長の座を賭けた『熾天の儀』にエントリーされてしまう。そんな中、リオンの前に若き看守ハイネが現れる。彼は『魔王の左手』の持ち主で、魔王の復活を目論むヴェルゼ教の騎士だった!妖しき監獄ファンタジー第3弾!

なるほどなあ。今回の話は、リオンと同じ画家であり魔王を継ぐ者、そしてリオンが成し得なかったもっとも素朴な善性を保持し続けた、リオンの対照ともいうべきハイネという少年の存在を以って、より深く主人公であるリオンの人間性を掘り下げていく話であったわけか。掘り下げる、というのは別の言い方をすると「解体」とも言える。元々画狂とは言え、普通のメンタリティの持ち主だったリオンが、いかにして魔王と呼ばれるに足る異常性を発露していったのか、その根源的な理由を捉えることでリオンとヒロインたちとの乖離を留め、手繰り寄せようという展開だったわけだが、その担い手がキリエでもレオナでもなく、淫乱シスターのアネットであった、というのが意外でもあり、一番成熟した大人である彼女にしか成し得なかったという意味では納得の人選でもあった。近年、シスターというと前提として血塗れだったり当たり前みたいに銃器を振り回してたり、思想的に頭おかしかったり、とまともな人材を見たことがなかったのだけれど、このアネットは調教開発されて多少発情しがちとはいえ、基本的には貞淑で勤勉な変態魔王崇拝者……あれ? やっぱりオカシイ人ダネ。まあ若干アレな部分はあるとしても、常識と包容力と、何より他者を救うことに真摯な信念を抱いている、という意味では実に真っ当な修道女なんですよね。隣人を正しく愛することの出来る聖職者、というべきか。
だからこそ、自分を犠牲にすることを厭わなかったのだろうけれど。自分を優先するのなら、リオンには魔王で居てもらった方が良かっただろうに、彼女の愛情とは与えられるものではなく、ただただ与えるものだったのだ。
尤も、この作品に出てくる主だった女性陣は、リオンのヒロインたちに限らず報われる事を望まずに愛を与え続ける健気な人たちなんですよね。下衆揃いの看守たちの中で、彼女たちが巡りあったその男たちが、そんな献身に足るだけの男だった、というのもあるんだろうけれど、何気にそういう愛情は重たいもので、その重みをしっかりと背負うだけの貫目を持つのは、男としても大仕事なんですけどねえ。
一人の男はそれを最期まで背負いきり、一人の少年はその重さに縛られてしまった。リオンはその点、恵まれているのでしょう。アネットにしても、レオナにしてもその重さをリオンに重さとして認識させない化粧の仕方が実にうまい。まあ、レオナはまだまだ未熟で、かなりコケかけている気がするけれど。その点、キリカは完全に天然ポンコツで最近もうふわふわ浮いちゃってるんじゃないか、というくらいマイウェイを行ってしまっているのが面白い。リオンが魔王から人間側に戻りかけてるのに、キリカと来たらあっけらかんと人外の領域へすっ飛んで行ってしまってるような。まったく自覚ないアタリ、なんともはやw
新加入のフィーネも、一悶着あったもののなんとか馴染んで……馴染んでしまったなあ、この変態集団にw
いや、元々この突っ張ってるのにちょっと強く当たると即座にビビって涙目になる防御力ゼロなところは完全に面白枠だったのに、弄られるのが高じてついにドMに目覚めてしまうとはw
妻(キリカ)・愛人(レオナ)・玩具(アネット)に雌豚(フィーネ)って、どんなヒロインラインナップだ。
ともあれ、リオンの魔王化は頼もしくはあってもちょっと危うさもあったので、アネットの救済によって欠落が産められたことでより男をあげてくれたのは良かったんだけれど、彼にはそのままヒロイン全員抱きかかえられるだけの魔王としての貫目は保ってほしいなあ。

さり気なく、巻を重ねるごとに表紙のキリカの衣装がランクアップしていっている気がする。あと、露出度もw

1巻 2巻感想

天空監獄の魔術画廊 2 4   

天空監獄の魔術画廊 (2) (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 2】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

Amazon

奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。天空の大監獄に閉じ込められ、看守の任を与えられたリオンは、魔術の力を宿した囚人の少女・キリカ、レオナとともに脱獄の機会を狙っていた。しかしある日『伝説の脱獄王』と呼ばれる囚人・ヴァレリアにキリカを奪われてしまう。キリカに秘められた真の力とは―!?妖しき監獄ファンタジー第2弾!
おお、これなんか本格的に「魔王譚」になりはじめたぞ! 主人公のリオンは、第一巻では絵を描く事に狂っている画狂の類ではあっても、本質的には常識人の少年に過ぎなかったのですが、この『天空の大監獄』の中で看守として、キリカとレオナを守りながら脱出の機会を伺う間に随分とメンタリティに変化が出ていることが伺えるのです。これは作中でも指摘を受けているのですけれど、明らかに後天的な変化なんですよね。良識や安全といったものから縁のない大監獄では、安穏と過ごしていてはすぐさま潰され、女達は奪われてしまう。そんな中では生き馬の目を抜くような注意深さ、隙の無さが必要であり、目的を達するために容赦呵責といったものが削り落とされていく。基本的な部分は何も変わっていないので気づきにくいし、実際キリカなんかは指摘されるまで彼の変化には気づいていなかったようだけれど、リオンのメンタリティというのはかなりシャープに研ぎ澄まされるに至ってるのである。ただ、絵を描くことに無邪気に夢中になっていた頃とはだいぶ変わっている。その分、絵を描きたいという欲求にはさらにドロドロと粘りついた貪欲さが増しているような感じすらあるのだけれど。
その彼の変化の原因というのは、もちろんキリカとレオナの二人の女の存在であり、特に前巻でレオナを失いかけたことが大きな影響を与えているのだろう。絵を描くことにしか興味がなかったリオンが、絵のモデルとして、ではあっても二人の女に凄まじい執着と独占欲を抱いている。その欲が、少年を男に成長させたのですな。リオンの場合、色欲や性欲といった類の欲望が、レオナが命名するところの画欲へとすり替わっているために、18禁なことにはなっていないけれど、今のリオンってライトノベルの主人公としては珍しいくらい「肉食系」なんですよね。
だからこそ、「自分の女」が傷つけられた時の憤怒たるや、凄まじいことになってしまう。こういう激おこ展開は自分的には大好物なんですけれど、ラノベの主人公ってヒロインに対してここまでガッツリとした「俺の女」的な執着を持っているケースはあまりないので、ここでのリオンの振る舞いは実に「魔王」らしくて素晴らしい、堪能した!!
一方の女性陣も、単にリオンに庇護される存在、独占欲を満たす所有物に収まるようなタマではなく、むしろそのイイ女っぷりこそが、リオンを魔王として覚醒させ、彼女たちに対する執着を高め、育てている節すらあるようで。前回、リオンに対して身命すべてを捧げきる覚悟を見せたレオナに対して、今回キリカは彼女とは全く別の方向性ながら、リオンの為に自分の何もかもを賭けられるだけの愛情と信頼を掲げて見せてくれたわけで、こういう男女双方向の自分の身も心も、髪の毛一本に至るまで相手の為に与え合える関係、というのは、ギトギトとした油まみれの濃厚さがあって、体に悪そうなんだけれど、美味しいのよ。絶品なのですよ。
こういう捧げ合う関係は、わりとダメな方向に転落しがちで、レオナの場合は明らかにそっち寄りなんだけれど、それをキリカのいい意味での単純バカっぷり、カッコイイ女っぷりが方向修正してくれていて、痛快なストーリーへと結構強引に蹴っ飛ばしてくれてるんですよねえ。
主人公とヒロインたち、双方の存在がそれぞれを良い男、良い女へと伸ばす相互関係に至っていて、物語に脂が乗ってきてる。これは、さらにどんどんおもしろくなりそうな雰囲気を感じますぞ。
それにしても、キリカはあれだけカッコイイヒロインなのにそれ以上にポンコツヒロインすぎて、かわいい系も掴んで離さないというのは、結構ズルいなあw

1巻感想

赫竜王の盟約騎士 4 3   

赫竜王の盟約騎士4 (一迅社文庫)

【赫竜王の盟約騎士 4】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

5年前に起こった2柱の竜王、イグニスとアルゲントゥムとの争い。その真実を知ったジルはアルキミア王城へと攻め入ろうとするが、いまの弱くなったジルでは勝てないと立ちふさがった教官ベルクマンに返り討ちにされてしまう。かつての己の力が復讐心から生まれ、その昏い情熱が薄れたいま戦いへの執着が薄れていたことに気づいたジルは、失意の淵に沈んでしまう。一方ティナは、アルキミア王の手によるアルゲントゥムの復活を阻止すべく、動き出すのだが…。
前回は咲夜とフルフルがイチャイチャしてたんだけれど、今回は咲夜さん、ティナを弄り倒して法悦に浸りまくってるんですけど、この人。ある意味、ティナとイチャイチャしっぱなし。いじり倒して涙目になったティナに対して、うっとりと「かわいい……」とご満悦なあたり、もうなんというか。一方で、ジルに対しても余計な情念が排されたことで同志や運命共同体、共犯者という枠組から抜けだして、純粋に一人の女性として寄り添えることになったことで、こちらともイチャコラ……。ついには行くところまで行き着いてしまったわけで……あれ? これって咲夜の一人勝ちじゃね?
いや、名目上はジルが咲夜と良い仲になりつつ、ティナやフルフルとも良い雰囲気で……という体裁なんだけれど、よく見ると咲夜の方がじっとりねっとりキャピキャピと全方位にイチャコラしちゃってて、なにこの咲夜ハーレム(笑
物語の方は、若干巻いて巻いて、と早送りになってたけれど、概ね書きたいところは注ぎ込めたんじゃないかなあ、という内容で。ジルという人間の性質が過去や死人に対する復讐や怨念よりも、今生きている大切な人たちを守り助けることの方にこそより力を搾り出せる人間であった、というところや、復讐のために命を使い果たして未来など望まない竜狩りたちに、それでも未来を掴ませること、恩讐を超えて竜と対話し共存すること。それぞれきっちりと結論までは描けた、とは思うんだけれど、やはりそこに至る過程をドラマとして実感を与えつつ描くことには、質量ともにちと足りなかったかなあ、と思う。アルキミア王が、白竜王アルゲントゥムに対して挑んだ賭けとか、イグニスが密かに仕掛けていた人間たちに対するトリガー含めて、多分ジルとティナとの対比にもなってたはずなんだけれど、王様との対決含めて溜めなしで駆け抜けちゃったのももったいなかったかなあ。
ともあれ、ティナのあの弄られ属性は実に素晴らしいもので、手島作品における至宝に値するキャラ付けだと思うので、メインサブ問わず、今度もこういうキャラは登場させてほしいものです。
ただ、あれほどメインヒロインとして圧勝ムードを漂わせていたにも関わらず、あっさり咲夜に先越されて撃沈していたのはさすが過ぎます。まああくまで先を越されただけで、あとでちゃんと拾って貰えそうな雰囲気でしたけれど。拾って貰えそう、というのも凄いなあ。
なんか、イラストの八坂さん、本作前作含めたイラストの画集出すみたいだけれど、なるほどこのシリーズでもなかなか色っぽいイラスト満載で、堪能させていただきました。イラスト買いさせる力のある絵師さんですなあ。

シリーズ感想

天空監獄の魔術画廊 4   

天空監獄の魔術画廊 (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

Amazon

奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。絵画きの少年・リオンはある日天空の大監獄へと閉じ込められてしまう。彼に与えられた役目は看守、そして彼を待っていたのは『魔王の絵画』を“その身に”封じられた囚人の少女たちだった。彼女たちが持つ魔術の力を利用して、リオンは監獄からの脱出を決意するが―。傑作スペクタクルファンタジー!!
おおっ、これは面白い、面白いなあ。作品の枠組構造としては、これってエロゲの監獄モノなんですよね。いや、実際にそういう監獄モノのエロゲーとかさすがにやった事ないので、ここはそういうモノと想像して定義しちゃってごめんなさいなんですけれど。エロゲーの監獄モノが監獄という特殊環境、看守と囚人という特殊な関係、ひたすら虐げられる女囚というこれらの要因をひたすらエロを描写するのに費やすケースが多いと思うんですけれど、本作はそのシチュエーションを踏まえつつエロスはエッセンス程度に置いておいて、まずこのシチュを利用しての「物語」へと力を傾けてるわけです。ここは、看守であるリオンと、囚人である詐欺師の少女と無実の罪で収監されてしまった女騎士と三人で協力して脱獄を図る、という主題で話は展開していくのですが、意外と盲点というかこういう構図の作品ってあんまりなかったと思うんですよね。最近の流行りから一歩も二歩も外れたストーリーや舞台設定はなんだか目新しくて新鮮で、思わず読んでいて「おおっ」と唸ってしまったり。エロゲでよく活用されているシチュでも、目線を変えて活用してみるとこうも新鮮な印象を得られるのか、と驚かされた次第。作者の永菜さんって、これまで出している作品を見てもちょっと着眼点が他の人と違ってるんで、なかなか送り出してくる作品から目が離せない人なんですよねえ。
さて、エロスはエッセンスとイイましたけれど、そもそもこのシチュエーションからして根本的にエロいので、まず作品の雰囲気からして淫靡な空気感が敷き詰められていますし、全裸で直腸検査されてしまう女騎士、という時点でまあ色々なんですなあ、ははは。
とはいえ、主人公のリオンは性欲よりも食欲よりも睡眠欲よりも、まず絵が描きたい、という画狂のたぐいであり、画家として欲情する絵の構図がまたいい具合にイカレていて、それはヒロインのレオナやキリカに対して色欲とは違う執着を抱く理由になってもいるのであります。一方で人間性はわりとマトモであり、生活力皆無のだめ人間で結婚しても絵を優先して奥さん泣かす奴だ、と当の嫁候補たちから散々愚痴られてる男ではありますが、実際は本当に大事なものは絵を描くことよりも優先できる、なかなかに侠気のある兄ちゃんなんですよね。浮世離れした変人の絵描き狂いですけれど、まあ惚れるに足りてしまう良い主人公なのですよ。
逆の方からの見方をすると、これだけ絵狂いの男をして利き腕捨てる覚悟を決める事が出来るほど、ヒロインたちも覚悟の据わったなかなかイイ女の子たちなんですけどね。これだけ主人公とヒロインに歯ごたえがあると、やっぱり面白いです。
それはそれとして、女騎士様はやっぱり案の定、超チョロいのはまあ常識ですか(笑
主人公は常識がまかり通らない変人だし、マトモに見えた騎士さまはこれはこれで男慣れしてなさすぎて色々とダメな感じなものだから、詐欺師のレオナがひたすら常識サイドでツッコミに回ってしまっているあたりは、この娘が一番苦労するタイプなんだなあ、というのが一目瞭然で、強かで賢いのも場合によりけりなのかもしれませんw
あと、お姉ちゃん甘やかし属性を頑なに捨てないあたりに、作者の業が伺えるのでありましたw
ともあれ、なかなか初っ端から食いつきたくなる面白さで、次巻以降もこれは期待のシリーズですな。

赫竜王(イグニス)の盟約騎士 3   

赫竜王の盟約騎士〈3〉 (一迅社文庫)

【赫竜王(イグニス)の盟約騎士 3】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

王家の秘密を探っていた剣聖の一番弟子は王国で秘密裏に進められていた新世代の竜狩りの育成計画の存在を知るが、気配に気づいた完成形の新世代竜狩りたちとの戦いで行方不明となってしまう。ジルたちは王国が作った新たな竜狩り部隊の脅威から学院を守りきることができるのか、そしてジルに強い復讐心を抱く新世代の竜狩りのリーダーの正体とは。竜を狩って強くなれ!手島史詞の竜狩りファンタジー第三弾登場!
こうなってくると、フィーネの退場がちょっと早かったんじゃないかと思えてくる。彼女の死がこれほど重く多くの人に影響を与える事になるにしては、彼女、ジルたちと知り合ってから退場するまであんまり間がなかったんですよね。交流していた期間が短かったんで、どうしても通り過ぎていったような感覚しか残っていなかったので、あそこまで彼女の死がジルに後悔とともに焼き付いているとは。
そもそも、そこまでジルが責任を感じるところじゃないもんなあ。もっと、本格的にフィーネを利用して殺す形になっていたら、罪悪感の抱きようもあるってなもんだけれど、あれはちょっとした錯誤のようなもので、別に彼女を死なすつもりなんて毛頭なかったわけですし。
その意味ではジークリットのそれは完全に八つ当たりも良いところで、あそこまでショックを受けてしまうジルはどれだけ人が良いというべきか、復讐という行為に神聖さを抱いているというべきか。ジルや咲夜が抱いている復讐と対照とするには、ジークリットのそれはちょっと理不尽すぎてパワーが弱かった気がします。
それならそれで、もっとビシッと復讐を否定する調停者たるティナが切って捨ててくれればよかったのですが、丁度ジルの変節を感じ取った咲夜が不安定になっているところで、彼女の迷走と暴走が重なってしまったせいでその辺のテーマの回収も、ちとあやふやになってしまった感がある。
今回、咲夜が一人ティナの影響を受けて破滅の道から外れつつあるジルに置いてけぼりにされて、彼女自身破滅型の生き方を貫くか、それともジルと同じく違う道を行くか。甘い破滅に身を任せるか、それとも厳しくも眩しい希望の道へと踏みしめるかの岐路に立つ、という彼女の主役ともなる話だったわけで、コチラも蔑ろにするわけにはいかなかったのだろうけれど。
結局咲夜って、最初からもう復讐者としてよりも女としてジルに寄り添っていた節があるので、自覚して認めるか否かの話ではあったんですよね。依存からの脱却、とも言えるのだけれど。でなきゃ、あれほどフルフルにほだされないですよ。もうちょっと咲夜にはフルフルとイチャイチャしてほしくもありましたが。

まあこれ、まんまとティナの圧勝ムードなんですよね、これ。ジルも、ティナを敵とか言いはるのもそろそろ無理が出てきてますよ。

シリーズ感想

赫竜王(イグニス)の盟約騎士 2 3   

赫竜王の盟約騎士2 (一迅社文庫)

【赫竜王(イグニス)の盟約騎士 2】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

学園の新たな理事長に就任したベルクマンは、アルキミア王家の裏の顔を知り、王国の庇護を離れることを決意する。王国との同盟を破棄したいま、新たな勢力、種族との同盟なくしては、今後の竜たちとの戦い、王国からの圧力に抗せない。そう判断したベルクマンにより、ジルたちは竜の骸を鍛え、盾や剣に加工できる水棲種族と接触をはかるべく隣国へと派遣されることに。長老竜の手がかりが見つかるかもしれないと考えたジルは、ティナと咲夜、フルフルらを伴いその種族が住む巨大湖へと向かったのだが、そこには特殊な竜が待ち構えていて―。本格竜殺しファンタジー、第二巻登場!
前作でヒロインの一角にも関わらず、その際立った弄られ属性から、完全にみんなのオモチャとして定着してしまったシルヴィの、あの弄られヒロインの魂をティナが引き継いでくれました! 今度はメインヒロインが弄られっ娘ですよっ!
真のMとは、Sっ気がない人でもついついイジメてしまいたくなる光線を無差別に出してるものなんですよ。そんな気がなくても、思わずイジっちゃって、あとでハッと正気に返るものの一度味わってしまった甘美にして恍惚となる感覚を忘れられず、ついつい繰り返してイジってしまうこの中毒性。それこそが真の弄られっ娘! 
あのティナのプルプルカタカタと涙目になりながら挫ける姿は、もうなんかたまらんですよっ、タマランデスヨッ!
この娘、あとがきでも作者が語っているように、ヒロインというよりももう一人の主人公なんですよね。絶望的な現実と人間の沸騰するまでに煮詰められた情念に対して、負けず理想を掲げ続け不屈の精神で戦い続ける少女なのである。平和を説きながら、その為に力が必要なコトも理解している理想家のリアリストというべきか。彼女が倒さなければならない敵は、竜のみならず、竜を憎み呪う竜狩りたちすべてであり、この状況を現出させて社会を成り立たせているすべてのシステムであり、思想であり、意思であり、すなわち世界のすべて、と言ってもいいほどのスケールを相手にしているのである。畢竟、それに立ち向かうティナには揺るぎない信念があり、ブレない意思の強さがある……にも関わらず、些細な身の回りのことについては茹でる前の素麺の芯ほどの脆さでポキリと折られるこの柔らかさw
ちょっと押すと、ポキっと折れるんですよね、この娘。泣いて謝ってくる姿がもう可愛くて可愛くて。最初は飽きずに毎度抵抗の素振りを見せるのが、またついつい啄いてしまいたくなる要素でもあったり。
折れてもすぐ復活するメゲなさも魅力だわなあ。

竜と人の相容れず殺しあい続けるという不毛な世界情勢。竜に家族を殺され、故郷を滅ぼされた人間たちの怨念がベッタリと張り付いた世界観は、作品そのものに仄暗い雰囲気を与えていて、主人公のジルたちからして竜だけが相手じゃなく、国そのものにも復讐心を滾らせているという負の方向に定まってしまったキャラクターだったので、何だかんだと息が詰まるような苦しい感覚のする物語だったのですが、この2巻に入ってこのティナが凄い頑張ってくれたんですよね。いや、イジられることで空気を和ませてる、というのも大いにあるんですけど、あるんですけれど!
恨み、憎しみ、呪い、怒り、そういった負の感情に染まりきり、先の展望、未来への望みといったものを何も持っていないジルやすべての竜狩りたち、この世界の行く末そのものに、ティナだけが反逆し、未来を語り、それに影響されるように、ジルたちが本来持っていただろう柔らかい人間性が引っ張りだされてきて、何だかんだと前向きな雰囲気に、優しい気持ちを大事にする空気になってきたんですよね。これは、大いにティナの功績だと思う。理想を語り、しかし理想を実現するために必要な力を否定せず、その上で皆の意識を変え、未来を示し、竜との対話を叶えようとするティナの姿は、力強い光そのもので、これはヒロインというよりもまさに主人公なんですよね。当の主人公のジルからして、感化されはじめていることを強く実感していたようですし。
さらに、この竜と人間とが殺しあう状況が何故始まったのか、竜たちの真意と事情、そして世界を覆う悪意の姿が見えてきたことで、物語そのものの方向もグッと面白くなってきました。
メインパーティー以外の周りのキャラクターも充実してきて、枠組みの拡大と強化も順調ですし、この2巻でだいぶ加速しだしたんじゃないでしょうか。さあ、舞台が整いだした。

赫竜王(イグニス)の盟約騎士 3   

赫竜王の盟約騎士 (一迅社文庫)

【赫竜王(イグニス)の盟約騎士】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

どこからともなく現れた竜の群れに襲われたアルキミア王国は、竜を斬るほど強くなる竜剣を創り、竜剣の使い手を養成する学園を開き対抗した。それから数年、竜との戦争が続くアルキミアに、竜と王家に対する復讐を願う少年ジルと咲夜が現れ、指揮統率の才覚を持つ竜剣使いのティナと出会う。ティナの理想とジルの現実、二人の想いがぶつかりあうとき、新たな歴史が始まる!
竜を倒し、その核を剣に取り込むと剣が強化されて強くなっていく、というシステムは非常にゲーム的だなあ、と思うんですが、折角死ぬ思いをして、実際結構人死を出しながらも竜を倒して、これで剣を強化できるのがたった一人だけ、というのはかなり揉めそうな気がする。
作中では、今のところ何となくその戦闘におけるMVPが雰囲気で選び出されて、特に揉める事なく収まっているけれど、それは主人公サイドのジルにしても咲夜にしてもティナにしても、それぞれに竜剣以外に拠り所となる力があり、単に強くなって生き残り竜を狩るという目的以外の思惑を持って動いているからで、他のチームはかなりもめてそうな気がするなあ。竜との戦いはかなり死亡率も高いし、竜剣を強くすることがダイレクトに生存率に関わってきそうなものだし。
とまあ、世界観のシステムは非常にゲーム的なのだけれど、その枠組から半分足を踏み外し、また向いている方向も違っているのが、この主人公たちである。人間を襲う竜たちを倒して、世界を救え、という定められたエンドマークを端から無視しているわけですからね。むしろ、そのシナリオを構築した側の人間たちに復讐を誓い、或いは抗おうとしているのが主人公たちなわけですから。
しかし、その為にはやはり力が必要、竜を倒し、剣聖と呼ばれる竜狩りの極みに立つような力が必要であり、また人間を滅びに向かわせている竜たちに対する憎悪もまた他の人間たちと変わらず、という意味でシナリオを逸脱することを最終目的としながら、現状ではシナリオに沿って動いてはいるんですよね。
まあ、ラストで速攻で竜ではなく、人間がラスボスになっているのですけれど。
肝心の敵である竜にしても、相対した老竜の理性的な物言いといい、王家の怪しい動きと言い、この竜の襲来による世界の危機そのものについても、何らかの陰謀が張り巡らされている気配があるのですが、王家への復讐にひた走るにつれて、その真相にたどり着いていく、という流れになるのかな。

とりあえず、主人公のジルが内心かなり冷徹で他人に対して突き放したようなことを考えながら、実際の行動ではついつい甘い対応を繰り返して、あれこれ助けて回ってしまっているあたりは、復讐の徒になりきれていないのがありありと見えて、存外可愛らしさすら感じてしまうところです。自分では徹しているつもりでいるあたり、無理しているというわけじゃないんだけれど、本来の柄じゃないんだろうなあ、今のスタイル。実際、その点ツッコまれてたりもしますし。
一方でメインヒロインのティナにしても、ポンコツと出来る子の両サイドに足を引っ掛けて股裂き状態になっているような子で、なんちゅうか面白い。むしろ主人公的なのはジルよりも彼女の方なのかもしれない。その立場にしても、性格にしても、能力にしても、思想にしても。
事実上、彼女こそがみんなを牽引していく立ち位置になるので、下手をすると前作と同様、主人公のハーレムじゃなくて、ヒロインである彼女が中心のハレム形式になるんじゃないかという期待で、ちょいとワクワク♪
とりあえず、スタートということで情報の展開に比重がとられていた感もありますが、どんどん動き出して行く次回以降が楽しみなシリーズ開幕編でした、と。

手島史詞作品感想

剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 7 3   

剣刻の銀乙女7 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 7】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

皇禍たちの王に即位したエステルを王都に迎えたエストレリャでは、ルチルら王族を中心に会談を重ね、人間たちと罪禍たちと不可侵協定の締結に向けて動き出していた。その頃、協力関係構築の一環で辺境の砦を視察していた皇禍フランの前に、国王暗殺の嫌疑をかけられ行方をくらましていた王国最強の騎士ヒネーテが現れる。ヒネーテはかつての高潔かつ勇猛な騎士の姿を失い、尋常ではない力と剣刻でフランを圧倒し…。時代を超えた剣刻をめぐる戦い、ついに完全決着のとき!
いつ、死んだかに見えたクラウンが現れて、またぞろ悪辣な陰謀でこちらを追い詰めてくるかと恐々として待ち構えていたんだが……あれ? 最後まで現れなかったぞ、クラウン。ほんとに、あの時やっつけてたのか!?
どれほど殺してもしぶとく復活してきそうな質の悪い悪意の塊みたいな敵だったので、それをあそこでちゃんと討ち取っていた、というのはむしろルチルたちを褒めておくべきなのだろう。実際、あの戦いではクラウンを完全に手球にとって陥れる事に成功した上で、油断もなく完膚なきまでに殲滅してみせるという凄まじい謀をキメてみせたので、あれで仕留められてなかったら、どうやって仕留めればいいんだ、という話になるんですよね。
ただ、問題はあまりにもクラウンという敵が邪悪で悪辣すぎたせいで、それを上回るラスボスを用意出来なかった、ということか。過去の長き歴史に決着をつけるべく倒さなければならない敵である「魔神」は、どちらかというと現象とか災害に類するもので、個としての意識を持った存在じゃなかったので、強大ではあってもなんというか、精神的に心を折ってくるような絶望感を強いる敵ではなかったんですよね。災害みたいなとんでもない敵なら、その強大さだけで打ちのめされそうなものだけれど、これまでの戦いを通じて絆を深め、壁を克服してきた主人公たちは、もう言わば最終決戦仕様になってた為に、いまさら絶望感に打ちのめされるような可愛げもなかったですし。言うなれば、もう倒されるべくして倒されに来たラスボス、みたいな感じでした。
むしろ、その最終決戦仕様の主人公たちに立ちふさがるべく現れたのは、ヒネーテの方だったのだけれど、彼も王国最強の騎士という触れ込みに対して、それを実感させるイベントがあんまりなかったせいか、ちょいと立ちふさがる壁としてはインパクトに欠けたかなあ。忠義の士であり、先の世に希望を託すために全てを捧げた騎士、というなかなかグッとくる役どころだったのに、その点についてはちょっともったいなかったかも。
人間関係の方も、千年前の出来事を踏まえて、概ねルチルとエステルの間でヒースの扱いやらなんやらはほぼ固まってたからなあ。あとは、ヒースがどれだけ覚悟を決めるか、というよりもはっきりとどうお持ち帰りされるか覚悟するか、という話になっていたので、まあ全体的に消化試合、という雰囲気になってしまったのは少々物足りなかった部分かもしれません。
それでも、エステルとルチルが一致団結して牽引してくれたせいか、話も嫁取りの話も滞りなく進んで、千年前の因縁もすべて決着し、気持よく幕引きと相成ったのではないのでしょうか。フランちゃんの可愛さがどえらいことになってて、もっと早くこの子渦中に投入しておけば、とか思ったりもしましたけれど。
なんだかんだと最後までお気に入りの物語で楽しかったです。ヒースそっちのけでのルチルとエステルのラブラブっぷりは、ごちそうさまでした。

シリーズ感想
 
12月3日

(PASH!ブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


Amazon B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W
12月2日

(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(Kラノベブックス)
Amazon Kindle B☆W


(早川書房)
Amazon Kindle B☆W

12月1日

(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(HJコミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月30日

(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

11月29日

(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ファミ通文庫)
Amazon Kindle B☆W


(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W

11月28日

(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月27日

(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月26日

(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月25日

Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(KADOKAWA)
Amazon Kindle B☆W

11月22日

(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス フラッパーシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスpixiv)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月20日

Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(GCN文庫)
Amazon Kindle B☆W

11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月18日

(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月17日

(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W

11月16日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W

11月15日

(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(Gファンタジーコミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月12日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(宝島社)
Amazon Kindle B☆W


(星海社COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーうぇぶりSSC)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(メテオCOMICS)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W

11月10日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W

11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索