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スチームヘヴン・フリークス 3  

スチームヘヴン・フリークス 3 (ガガガ文庫)

【スチームヘヴン・フリークス 3】 伊崎喬助/凱 ガガガ文庫

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スチームヘヴン、消滅の危機!?

バスカーズ&トライデントに強力ライバル登場? ビザーバーグ市長の肝入りで実戦配備されることになったスチームアーマー・ミネルヴァ。その開発者は、ニコラスが親しくする町工場の少年の父親、エイブラムだった。商売敵ではあるが、開発者としてのエイブラムに敬意をはらうニコラスは、街の治安を守るクライムハンターとして彼らを歓迎する。一方、蒸気の街には新たな騒動を起こさんとする怪人の影があった。金属脳みその怪人ゴルディアスと、彼と行動を共にするブロンジィ&アルラウネ。彼らの陰謀のもとに、ビザーバーグに過去最大の危機が訪れる。――すなわち、クリーチャー化した電光弾の襲来。対応に乗り出すバスカーズ、トライデント、そしてミネルヴァを擁するエイブラム親子だったが、全てはゴルディアスの盤面の上。悲喜劇のタップを刻む彼らは、果たして盤上の“コマ”から逃れ得るのか……。狂騒のスチーム・ファンタジー第3弾。――焼け焦げた思い出を胸に、怪人は蒸気の街を征く。
あー、これは打ち切りかー。あとがきでもそれらしい文句が出ていたんですけれど、まずもって内容のほうが捲いている、というよりもこの場合は前倒ししている点が散見されて、あれあれ?と思ってたんですよね。勿体無い。実に勿体無い。
派手なアクションに賑やかなドタバタ劇とスチームパンクらしい見目麗しさと同時に、どこか情緒的で情感にうったえてくる叙情的な描写な内面描写、人間関係の醸成をしっかり描き、その先の展開に繋げていた作品だっただけに、この3巻で話に一区切り着けないといけないとなった時の無理がけっこう祟ってるんですよね。しっかり準備を整えて挑もうとしていたところなのに、それらをほっぽり出して締めに向かわなければならなくなった、というような。
これが最後ということで、物語にひと通りのケリをつけるためにはやはり主人公であるニコラスの話にしなければならなかったのは当然なのですが、本来ならばこれまで積み上げてきたものの集大成としての話になるはずが、他とのつながりが乏しいニコラスだけの単独の話になっちゃってるんですよね。
一巻でザジの過去を描き、二巻でザジにニコラスと自分の関係を意識させると同時に、シルフという友達ができることで世界を広げ、と順調に相棒であるザジとの物語が仕上がりだしていたのに、この3巻では肝心の熟成されるべきザジとニコラスの関係がニコラスの話優先で、もう描かれることのない後回しにされちゃってるわけです。お陰で、ザジの思いがニコラスを思いとどまらせる場面での情緒感、訴えてくる威力がかなり乏しいものになっちゃってるんですよね。ザジとシルフの密かな友達としての関係も本来ならあっちこっちに波及して影響を与えそうなものだったのに、そのへん匂わされるだけで機能しなかったし。敵役のブロンジィとアルラウネも外縁部でウロウロしているだけで物語の核心に踏み込んでこれなかったし。彼らもトライデントへの因縁やシルフとブロンジィとの個人的なあれこれなど、要素はたくさんあったのになあ。
そして何より、もう一人のヒロインであるウンディーネとニコラスである。この天敵同士の二人についても、何か掘り下げていく要素があったっぽいのは、ウンディーネがニコラスの過去の断片を知ることで共感というか何か感じ入るものがあった様子からも明らかで、これまでニコラスの存在に反発し敵愾心を抱いていたウンディーネが、心情的に踏み込んでくる展開は絶対にあったんですよね、これ。それが、相棒であるザジに刺激を与えることも、両者の友人であるシルフがそれに拍車をかける可能性も。
なんというか、あちらこちらにやりたかったことの残滓が垣間見えたような気がするだけに、そしてそれが描かれた時のビジョンが思い浮かんでくるだけに、可能性を置き去りにして幕引きに勤しまなければならない無常さにため息が漏れてしまいました。もったいない、この一言につきます。
まだ続けようと思えば全然続けられる締め方だっただけに、ほんと、続刊出してくれないかなあ。まず間違いなく面白い作品がこうして途中で断裂させられるのを見せられると、そう願わずにはいられません。無念すぎる。

1巻 2巻感想

スチームヘヴン・フリークス 2 4   

スチームヘヴン・フリークス 2 (ガガガ文庫)

【スチームヘヴン・フリークス 2】 伊崎喬助/凱 ガガガ文庫

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“トライデント”最後の矛、シルフ登場!

犯罪者を追いかける過程で再びトライデントと激突したバスカーズ。そのことがきっかけで、ニコラスとザジは小さな仲違いをしてしまう。翌日、ささくれだった気持ちで街を行くザジに声をかけたのは、銀色の髪の女性――エレンディラ・サンチェスだった。
気さくな性格のエレンディラと、ザジはすぐに打ち解ける。聞けば、彼女もトライデントと何らかの確執をもっているようで……?
一方のニコラスは、犬猿の仲であるウンディーネとともにさる要人の警護にあたっていた。ザジは不在、サラマンダーは謹慎中で、トライデント最後の矛であるシルフは雲隠れ。お互いに“相棒”を欠いたまま仕事にあたるが―― そのとき、アルラウネと名乗る怪人による銀行襲撃事件が起こる! 現場に居合わせたザジとエレンディラ。駆けつけるニコラスとウンディーネ。そして暗躍するディスコルディアの影――。

いま、“蒸気天国”を舞台に新たな狂劇の幕が上がる! スチームヘヴン・ファンタジー第2弾!
これって、ザジはヒロインというよりも主人公してるように見えますね。1巻で過去から引きずっていた因縁、怒り憎しみ、切ない親愛の入り混じった複雑な感情に決着をつけ、優しい決別で思い出となった男を送り出す事で自分の中にも区切りをつけたザジ。そう、過去を精算すると途端に現れるのは「現在」なのですよ。過去を振り払い、そこで決め込んだ目的を果たすために邁進してきた彼女ですけれど、目的を果たすという決意は変わらないものの、ふと周りを見回す余裕というべきか、或いは気が抜けた瞬間が訪れるわけです。その時になって気づく、相棒であるニコラスと自分との関係。目的を果たすためのパートナー、それは仕事上の相棒であると同時に、信念を支えてくれる信頼できる相手ではあったものの、後ろに引かれ前ばかり向いていた彼女にとって、ニコラスはいつの間にか居て当然の相棒となっていて、彼の事を良く知ろうともしていなかったことに気づくわけです。信頼はしている、信用もしている、しかし彼のことを何も知らない、どうして自分を助けてくれるのか、彼が必死になって求めているものについても、ちゃんと考えた事がなかったことに。
相棒である、彼。しかし、相棒とは何なのか、自分は彼に何が出来るのか、自分にとって彼は相棒、でしかないのか。
邁進してきた彼女にとって、一度立ち止まって考えこんでしまうことは惑乱に近いもので、思索するにしてもその方向をどこにむけるべきかもわからない。そんな時に出会ったのが、馴れ馴れしいくらいに無造作に、乱暴に懐の中に潜り込んできたエレンディラ。そう、ザジにとって初めての友達となる女性である。
親友、というザジが今まで得たことがない人間関係。それを識ったことで、改めて自分とニコラスの関係が「友達」とは少し違うものだとわかってくるザジ。目まぐるしく繰り広げられる派手なアクションの中で、実はかなり丹念に、丁寧に個々の登場人物の心情の移ろい、人間関係から生き様までが浮き彫りになるような描き方がされてるんですよね。これは、エレンディラことシルフと、ウンディーネ、ひいてはトライデントというチームの在りようについても一緒で、シルフが単なるサボり魔ではなく、自分の中の正義とトライデントというチームの価値観の違いに悩み、シンプルに割り切れないウンディーネとの友情に悩み、気分をささくれ立たせている時に、ザジというまた一風変わった女性と知り合い、友達になって彼女と一緒にトラブルに巻き込まれることで、ちょっとずつ考える事が整ってきたり、頑迷といっていいくらいの社会正義に固まっていると思われたウンディーネが、あれで柔軟に自分たちを鑑みて、シルフという異分子を求めていたり、建前を抜きにするとこの娘はわりとシンプルに友情を大切にしてるかはわからないけれど、掛け替えのないものに思ってる娘なんだ、とわかってきたり、あれでサラマンダーの無茶苦茶さは、大事なものとして認められてるんだと苦笑してみたり、と群像劇的でありながら、いやだからこそか、どのキャラクターも掘り下げをかなりしっかりとされてるんですよね。
表でド派手に忙しなく、奥でしっとり丁寧に、これはなかなか絶妙な描き方だと思いますよ。若干、女性キャラ優先のようにも見えますけれどw
ただ、今回はやや「仕込み編」だった感じもあり、物語の本筋としては小さめにまとめてあった気がします。1巻の内容からさらに倍プッシュ!的にスケールアップを期待していたら、ちと肩透かしかも。でも、その分ザジやトライデントを丁寧に描いていた、と思えば悪くはないんですよね。
だからこそ、仕込みが済んで、ある程度人間関係の調整を終えた次回こそは、さらに後顧の憂いなく大いに暴れる展開を期待してしまうところです。楽しみに待つとしましょう。

1巻感想

スチームヘヴン・フリークス 4   

スチームヘヴン・フリークス (ガガガ文庫)

【スチームヘヴン・フリークス】 伊崎喬助/凱 ガガガ文庫

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そこは、蒸機と神秘、怪人の街。

時は1961年、アメリカ。
正体不明の霧・ミアズマによって発展した街ビザーバーグは、蒸気天国の異名をもつ世界有数の工業都市である。そこでは、ミアズマを重蒸気に変換し動力源としたクラフト技術が発達し、ミアズマの影響で超能力に目覚めた新人類《ミスティック》や、体細胞の変質を遂げたクリーチャーなどが跳梁する“何でもあり”の街として名を馳せていた。
ビザーバーグで何でも屋を営むスチームシーカーコンビ、《奇術師》ニコラスと《真鍮男》ザジは、あるとき怪しげな探偵の依頼を受ける。それは、かつて世界を闇に陥れた悪の秘密結社《ディスコルディア・リーグ》に関わる、とある男を保護することだった。だが、男の確保に乗り出したとたん、ディスコルディアの遺産を狙うマフィア、世間を賑わすクラフト犯罪者とぶつかり合うことに。さらにはビザーバーグ市警や、この街を守る正義の少女ミスティック・チーム、《トライデント》まで動き出し――!?
いま“夢の街”を舞台に、盛大で壮大なバカ騒ぎが幕を開ける!
第8回小学館ライトノベル新人賞にて“優秀賞”を受賞、怪人跋扈のスチームヘヴン・ファンタジー!!

これ、ラストシーン。あのラストシーンで、このどんちゃん騒ぎ馬鹿騒ぎが、すごく情感あふれる読後感になってるんですよね。過去に縫い止められ、後ろを振り返りどうしても前へ進めなかった男が、過去を思い出として胸に抱きかかえ、愛する人が待っている未来へと帰っていく……とても優しい決別のシーン。
勢い任せだけでは導き出せない、人間の心の機微を描き出す繊細な筆致が感じられて、素晴らしいラストシーンでした。こういう情緒的なシーンをドラマティックに描ける情景描写、心理描写をしっとりと描ける一方で、この本作の肝は勿論ド派手でごった煮なスチームパンクなのですから、引き出しが多いというべきか、盛り合わせに長けているというべきか。
アメコミばりのヒーローものであり、様々なクリーチャー紛いの怪人たちが跋扈するロックなオカルトであり、一連の事件からかいま見えた謎を追いかけ、様々な人間たちが一つの真実へと集まってくる追跡劇であり、と楽しむ要素は目移りするくらいにたくさんあって、これはなんというか……素晴らしく楽しい!!
シンプルに正義のヒーローとして走り回る役は「トライデント」の面々に任せて、主人公はダーティーに立ち回り、美味しいところを掻っ攫っていく、しかし何だかんだと情に厚くて気持ちのよい何でも屋のコンビというのがまたいいんですよね。過去に根ざした仄暗い背景を持ち、精算と失われた自己の探求の為に舞い込んでくる仕事をこなしながら、アンダーグラウンドに埋もれている真実を掘り起こそうと跋扈する、正義や秩序とは一線を画した一癖も二癖もある男たち。これがまた、美味しいんだ。
正義の味方として活動している「トライデント」の少女たちも、これはこれで癖がありすぎてトンデモヒーローに片足突っ込んでる面白い連中で、彼女たちが主人公でも何ら欠けることなく楽しそうなんだけれど、やっぱり秘密を抱えながら暗躍するダークヒーローたちはカッコいいですよ。
一方で、こういう目立つ連中とは裏腹の、一般人に近い脇役たちも、そして大いにイカレ狂った悪役たちも、それぞれに目一杯舞台上を走り回っていて、それぞれにそれぞれなりの信念、想いを胸に駆けまわり、或いは逃げまわって主役を張ってるんですよね。その意味では、本作は群像劇の様相もきっちり呈しているんじゃないでしょうか。
個人的には、狂気に侵されたマッドサイエンティスト、と目されていた今回の事件の大本であり元凶であり黒幕であった博士の、その仮面の下に必死に隠した哀惜と無力感がなんか胸に来たんですよね。ただの狂った天才科学者、という形骸ではない、人間の弱さが押し詰まったキャラクターが、ただの悪役、やられ役に留まらないものを感じさせて、印象に残ったのでした。
しかし、トライデントは女の子ヒーロー三人組、と標榜しているくせに、残る一人のシルフが最後まで出てこなかったんですけれど! 出てこなかったというか、明らかにサボってたんですが、一人! サボタージュしましたよ、残る一人!!(爆笑
サラマンダーはもうどうやっても矯正のきかなさそうなアホの娘で、戦闘力100,知力は1、というタイプで、これはもう参謀にしてリーダーであるウンディーネさんのご苦労が偲ばれる。サラマンダー一人相手するだけで、頭おかしくなりそうだぞ、これ。まあ、ウンディーネさんもあれで図太いというか、イイ性格してる、正義のヒーローというよりも、悪の組織の女幹部みたいなキャラクターなんだが、一応これヒロイン枠なんだろうか……多分、そうなんだろうなあ。鉄板ヒロインは、もうちゃんと居るわけですけれど。

なんにせよ、エンターテイメント性とドラマ性、演出に世界観に、とどれも両立し、引き立て、盛り上げることに成功している素晴らしい逸品でした。これは、今後の成長拡大に大いに期待が見込まれます。面白かった!

 
11月26日

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