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十文字青

僕は何度も生まれ変わる 2 ★★★☆   



【僕は何度も生まれ変わる 2】 十文字青/だーくろ(gumi/gg2)  角川スニーカー文庫

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享年29歳。僕は日本で死んだ。生まれ変わった異世界では同じ顔をした女に、しかも毎回18歳で何度も殺された。呪いのような生と死の螺旋。5度目の人生、魔王の庶子ロワとして生まれた僕に、最大の好機が!色々あって、暴虐無道の帝国に抵抗する連合軍の指揮を任されたのだ。僕が総帥って…でも、やるしかない。ここには僕の家族が、友が、仲間達がいる。―さあ、僕の手で物語を動かそう。戦場で交錯する歓喜と慟哭。巨人族、魔族、傭兵達、バラバラだった国々と種族が一つとなり、帝国への反撃の狼煙があがる。連合軍を率いる“僕”のかつてない大反攻作戦が始まる!
……おおぅ。いやうん、忘れてた。一巻の前半で何が繰り返されていたのかを、完全に忘れていた。いや、正確には忘れていたんじゃなくて、あれはもう終わったこと。助走期間のことであって、すでに踏切板は蹴ったあとだと思っていたのだ。思い込んでいたのだ。
それまでの人生と、この五度目のロワの人生に何の差もなかったというのに、ただ詳細に細かく丹念にロワという少年の軌跡を描いていたから。他の人生よりも長く長く描かれていたから。これまでの人生よりも遥かに帝国の脅威に対して敢然と立ち向かえていたから。不利であっても一方的ではなく、堂々と渡り合えていたから。前の人生の登場人物であったピエトロジョーが生き残り、今この人生で新たな大切な仲間として加わってくれていたから。
この人生こそが、集約点なのだと思っていた。集大成なのだと思いこんでいたのだ。
きっと、一人の人生を描く重さ、という点においてそれまでの「僕」とこのロワという僕に本当は何も変わりはなかったのだろう。それでも、これだけ重厚に国の歴史、戦争の経緯、登場人物たちの人間関係の変化からその成長に至るまで、一切手を抜くことなく妥協することなく、一つの物語としてきちんと立脚するだけの幅と厚みと情熱と真剣さを以って描いてきた物語を、積み上げてきたものを、果たして自ら打ち崩すのにどれだけの意志力が必要なんだろう。
最初から崩すために積み上げた塔のような脆さも隙間も見当たらない。これは、百年敢然と聳え立ち続ける塔を築くだけの仕事であり工程の丁寧さであったのだ。
それを無残に叩き壊すことに、痛みを感じない書き手がいるだろうか。まあもっとも、その痛みにこそ快感を感じてしまう業もまた、作家という職業の中に生じるものもあるのだろうけれど。これはそんな快楽犯の類ではあるまいに。この破壊もまた、グランドデザインを描ききるための大切な工程なのだ。それでも、よくやれたものだ。よくぞ、やったものだと感心する。
しかし、ここで終わってしまえばすべてが台無しになってしまう。全部が無駄だ。意味をなさない。いわばある種の焦土戦術だ。後ろを見てみろ、見渡す限りの焼け野原だ。何も残っちゃいない。何も残さなかった。全部全部、描いてきたもの消し去ってしまった。残るは、ただ深い深い一縒りの因縁だけだ。それ以外は、本当に本当にぜんぶ焼き払ってしまった、炎の中に焚べて灰にしてしまった。
バッドエンドという結末ですらない、真実ただの消し炭である。
これに意味を与えるには、決着をつけなければならない。彼女と僕の因縁にケリをつけなければ、すべての原因であり根源である二人の関係の正体を突き止めなければ、本当に全部が無駄死にになってしまう。打ち切り作品というものは、往々にして業深いものだ。それでも、その途絶に至るまで築き上げてきたものがあり、残されるものがあるはずなのだ。振り返って、その先を想像する余地だけは残っている。決してありえなくても、可能性という因子だけは残されているのだ。しかし、これには何もない。本当になにもない。
それを「在った」へと変換できるのは、唯一この壮大な生まれ変わりの物語が描き切られたときだけだ。これほど、後のない作品を、後を無くしてしまった作品を私は知らない。
続刊を出さなきゃ、出さないと、本当にもうこれ、出さないと、ダメだ。

正直、中身というか個々のキャラクターについてもちょっと書けないというか、どう触れたらいいのかわかんない。もし全部終わることが出来たら、振り返ることができるんだろうか。わからぬ、わからぬ。

シリーズ感想

灰と幻想のグリムガル level.13 心、ひらけ、新たなる扉 ★★★  



【灰と幻想のグリムガル level.13 心、ひらけ、新たなる扉】 十文字青/白井鋭利  オーバーラップ文庫

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「もっと強くなりたいって、思っててなあ!」
パーティを離れる決意をしたユメを残し、海賊の島を去ったハルヒロたちは、自由都市ヴェーレへ。怪しげな貿易商人ケジマンの隊商を護衛しがてら、未だ遠いオルタナを目指すことに。旅は意外と順調。と思った矢先、数々の伝説に彩られた『レスリーキャンプ』…かもしれない巨大なテントに遭遇する。運命の悪戯か、その中へと足を踏み入れてしまい―!?
「ハルヒロ。…ようこそパラノへ」
雨合羽をまとった謎の人物に誘われ、他界パラノでの魔訶不思議な冒険が始まる!!
セトラ、孤立まではしていないのだけれど未だにパーティーと打ち解けられているとは言えない状況で、やはり彼女なりに疎外感は感じていたのか。そういうの気にしない娘だと思っていたのだけれど、そもそも故郷でも孤立していたんでしたっけ。むしろ人間関係の距離感には敏感な方なのかもしれない。
とは言え、自分から積極的に絡んでくるよりはそれとなく距離を置いて自分を守る方にも見えるし、今のパーティーの女性陣、シホルとメリィはその手のコミュニケーションについては下手くそな方で自然受身な方なので、しばらくこの問題は解決できないかもしれない。ただでさえ、恋愛問題も絡んでいるわけだし。これ、ユメが一時離脱してしまったの戦力的なものも大きいけれど、それ以上にムードメーカーだったユメが離れてしまうというのはパーティーの雰囲気的にも結構キツイものがあるのかもしれない。
今更、ハルヒロ、クザク、シホル、メリィの古参の四人の信頼関係が崩れることはないだろうけれど、セトラとの橋渡しという意味でもユメの存在は居てくれると助かったんだけれど。
ただ、ユメとの別れを噛みしめるシホルとメリィの二人の醸し出すしっとりとした雰囲気は、何とも言えない蠱惑的な空気感が……。
しかし、今回ひたすらにヒロインしていたのって、実は女性陣じゃなくてクザクだったんじゃないだろうか。この後輩、毎度ながら健気すぎる上にハルヒロのこと好きすぎやしないだろうか。ハルヒロとお互いピンチになるたびに血相変えて必死に助け合う様子はもうイチャイチャしてるんじゃないか、と思えてくるほど。いやもう、ハルヒロがこの後輩のこと可愛くて仕方ないのはわかるし、クザクもハルヒロの頼りになる所なんぞを慕いまくっててその癖危なっかしいのが心配で仕方ない、と思ってるのもわかるんですよ。ギスギスしているより仲いい方が全然いいことなのである。
でもまあ、それだけ元から居る四人が仲良すぎるおかげで、セトラが疎外感感じてしまうのもわかるんだよなあ。既に結構長い巻数同じパーティーの仲間になっているんだから、そろそろ馴染んでほしいところである。
という風にセトラの件やユメが離脱してしまった影響、メリィが抱えている人格混在の問題、お互いに好意を抱いている事が伝わってしまっているハルヒロとメリィの関係など、まだまだパーティー内で煮詰めるべき諸問題が山積みにも関わらず……また、離れ離れになってしまうのか。
それも、またグリムガルから離れた異世界である。それも、相当に認知そのものが歪んでしまっているパラノという世界に。どちらかというと、精神世界に近い変な世界で今までより更に自分自身を向き合わなければならない状況に陥ってしまっているけれど、正直言ってしまうといちいち寄り道が多すぎて、本当ならグリムガルでの冒険が見たかった身とするとちょっとげんなりとしてしまったのも確か。特にメリィの問題は喫緊のもので早い所なんとかしないと危険な代物だろうに、随分と放置して引っ張ってしまっているし。このパラノという精神世界みたいなところだからこそ、メリィの問題の解決に繋がる要素があるのかもしれないけれど、それならそれでなるべくサクサクっと片付けてほしくはある。
それに、どうやらハルヒロたちがグリムガルというこの世界に元の世界の記憶を消されて送り込まれてきた原因、少なくともそれに関わる情報についてこのパラノでちょっと明らかになりそうな気配もあるし。どうやら、パラノに元からいる連中はグリムガルを経ずにそのまま現実世界から迷い込んできたみたいな節があるのは気になるところだけれど。

それはそれとして、すごいエッチになってしまったシホルさんが大変なことになってて、実に大変である!(楽しい
そんなシホルと二人きりになってしまったクザク、頑張れ。色んな意味で頑張ってしまえ!

シリーズ感想


僕は何度も生まれ変わる ★★★☆  



【僕は何度も生まれ変わる】 十文字青/ だーくろ(gumi/gg2)  角川スニーカー文庫

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ある日、僕は死んだ。享年29歳。しがない社畜の儚い末路だった―はずなのに、まさか生まれ変わった…のか?でも、僕はまた死ぬ。運命の悪戯なのか。死んでは生まれ変わり、そのたびに“彼女”が僕を殺す。漆黒の髪。赤い眼。僕を“劣等種”呼ばわりする“人間の帝国”の彼女が。そして、とうとう5回目の人生。成り行きでとるにたらない傭兵暮らしをしていた僕の許に、突然アークラントの“魔王”から使者が来た。はあ?僕が魔王の隠し子だって…!?―これは何度も生まれ変わった挙句、何の因果か魔王の血を受け継いだ“僕”がやがて英雄へと至る物語―泥臭くも華麗なる大逆転劇が幕を開ける!

これ、【何度「でも」生まれ変わる】ではなく【何度も生まれ変わる】というタイトルなんですよね。生まれ変わることに対して能動的でも前向きでもなく、結果として生まれ変わってしまうという完全受動。それもそのはず、その死は常に強制的で理不尽で生まれた人生を精一杯生きようとしていた意志を踏みにじられての結果だからだ。
夢も抱いた、希望も持った、野心だってあったし友情に魂をたぎらせたことも、恋に身を震わせたこともある。そのすべてを、同じ人物に見える帝国の姫によって無残に踏みにじられていく。
わずか齢18にして、すべての人生が断ち切られてしまう。
迫真であるのは、これらの短い人生を描いた場面がそれぞれ一本の小説を描けるくらいに、多分ちゃんと主人公のその生について設定とか詰めてたんだろうな、と思わせるところである。最初から途中で終わっちゃうから、という前提で上辺だけ繕ったものじゃなくて書こうと思えば、あの姫による一刀両断の断絶がなければ、幾らでもその人生における「彼」を主人公として物語を書けるだけの背景を積んだんだろうな、と思わせてくれる迫真が感じられたんですよね。
実際どうかはわかりませんけど。
だからこそ、失われた人生の重さを感じるし、生まれ変わるたびに時代が何十年も進んでいることに歴史を感じ、過去にどれだけ想いを取り残しながら新しい人生を生きていかないといけないかを感じ、その決意を垣間見るからこそ傍若無人にそれを刈り取っていく姫の理不尽に慄くのである。
それでも、何度も繰り返されるとルーティーンになってしまいそうなところで、最後にはじまった第五の人生、そこでその前の人生における大切な繋がりが今世に繋がっていることがわかったとき、それまで一方的に踏み潰され掻き消されていった人生が確かに在ったことだと感じ取ることが出来て、今までの五回の生まれ変わりが全部地続きになる感覚を得ることになるのだ。

同時に、唐突な災厄という感覚だった帝国とその姫という存在が、ひたひたと押し寄せてくる現実的な脅威として現れるんですね。明確な、戦うべき敵として。倒さなければならない相手として。
この人生で、翻弄されながらも大切な関係が幾つも生まれ、つなげることが出来たことで、より深くそれらが失われる、奪われる、消し去られてしまう恐怖を味わうことになり、だからこそ今までよりもより強く、帝国の侵攻に抗わなければならないという強迫観念に突き動かされることになるのである。
どこか諦めに近い惰性の人生を歩んでいた少年が、突然末席とはいえ王族となり、帝国に対抗するための政略結婚の駒とされ、そこで自分を慕ってくれる王女と出会い、偉大なる王たちと出会うことになり、今度こそ理不尽な死に抗うために、今度こそ守るべきものを守るために死力を振り絞る。
相変わらず、この作者の主人公らしくボロボロになりながら、自信なんて欠片も持たないくせに死に物狂いになりながら。

しかし、何度も生まれ変わる主人公の謎もさることながら、同一人物ではないにも関わらず、同じ容姿同じ異常さを持って、時代を超えて主人公の前に立ちふさがる姫将軍。彼女の正体こそいったい何者なのか。少なくとも、彼女が抱えているものが明らかになってからが、この物語の本番なのではないだろうか。
この巻で、彼女が決して自動的な災厄などではなく、異常ではあっても意志をもち感情を持ち得る一個の人間であることは明らかになったにせよ。彼女自身は、何も知らずわかっていないのだとしても。
少なくとも、主人公とかの姫将軍を結んでいる因縁の正体が明らかになってから、ようやくこの作品の方向性が掴めるような気がする。さて、この一巻でプロローグの終わりまで進んでいるのかどうか。二巻を以って判断するほかないようだ。

十文字青作品感想

灰と幻想のグリムガル level.12 それはある島と竜を巡る伝説の始まり ★★★☆   

灰と幻想のグリムガル level.12 それはある島と竜を巡る伝説の始まり (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.12 それはある島と竜を巡る伝説の始まり】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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遙かなるオルタナ――次なる来訪地は海賊の楽園!?

オルタナに戻るべく、ハルヒロたちは山だらけの敵地を突き進んで海を目指す。
冒険に次ぐ冒険の末、ようやく辿りついた海辺には一隻の船が乗り上げていた。
様子を窺うハルヒロたちの前に、なんと付け髭をつけた少女が現れる!
「あたしはモモヒナ! であーる! 名を名乗れーっ! 」
謎の海賊(?)モモヒナとの出逢いに導かれ、大昔から竜が住まうというエメラルド諸島へと向かうハルヒロたち。
到着した一行を待ち受けていたのは、その竜に襲われて大混乱に陥っている海賊の楽園だった――!?
灰の中から生まれた冒険譚が、舞台を海に移し新たな物語を紡ぐ。
これモモヒナよりも出したかったのサハギンのギンジーだろ(笑
作者さんってこの手の鬱陶しくてウザいキャラなんか好きだしなあ。今回はランタがまったく登場しなかっただけに、登場人物ほぼ全員聞き分けのよい物分りの良い鬱陶しくない人たちばっかりだったのでウザい成分注入したくなったんだろうか、これ。ってか、キサラギはギンジーも連れてけよ。こんなん置いてくなよ。他の人らが迷惑だろうに。
というわけで、この【灰と幻想のグリムガル】シリーズの番外編というかスピンオフというか別ルートというか。ハルヒロたちと同じ義勇兵として召喚されながら、職にもつかずに無職のままオルタナを飛び出して、妙な仲間たちを加えつつ冒険を繰り広げるキサラギが主人公の【大英雄が無職で何が悪い】シリーズから、幾人かが出張登場であります。ってか、今どうなってんだそっち。ウェブ連載の方もだいぶ前から止まっていて、現状どうなってんだってところなんですけどね。
最下層のミソッカスからからコツコツと実力を積み上げてきたハルヒロたちと違って、キサラギたちの方は本来地道に辿るべきルートをガン無視して、道なき道をひた走るというかなり破天荒な展開の話で、ハルヒロたちが地道にゴブリンと戦ってる頃には、イチカとモモヒナという最初の仲間たちに加えて、オークや陸サギハンやエルフやドワーフという当時のハルヒロたちの見る世界からすると「え、そんなファンタジーっぽい種族いるの?」というメンツが仲間になるというバラエティ色が強いと言うか混沌としているメンバーでしたからね。ってか、オークが普通に仲間になっているし。普通ではないのだけれど。
その中でもモモヒナは同じ義勇兵だったのだけれど、わりとユメと同じベクトルの天然少女というべきか、ユメからSAN値を大幅に削ったような魔法使いなのにバーサーカーじゃないのか、という魔法使わずに殴りに来るようなキャラで、だからなぜこの娘を残したし。

ともあれ、最近はずっと命がけのサバイバルを続けていたハルヒロたち。逃避行とそこにいるだけで生命の危機!というような危険なフィールドを人類生存権目指して突っ切るぜ、というような気の休まらない厳しい冒険の日々を送ってきただけに、こうしてちゃんと人間種族の集落で落ち着いて休めるのって本当に久しぶりだったんじゃないだろうか。いやマジで何巻ぶりですか、人里で休めるのって。「太陽の昇らない世界」とか完全に異世界で人間全然いなくて、あれはあれでしんどすぎてカウントに入れづらいし。ってかマジで六巻で黄昏世界に暁連隊らと突入して以来じゃないのかしら、まともな人里に戻ってきたのって。
だから、ハメを外して遊んでも全然構わないと思うのよ。ほんともう気が休まらなさすぎて、こいつらストレスで死ぬじゃないかと心配になるくらいでしたし。ただでさえ、メリィはあの状態で不安定なままですからね。ここはハルヒロが甲斐性を見せるところだ、って期待するのはちと酷でしょうか。それでも頑張ったんじゃないだろうか。頑張ったよね? ヘタレとか言わないよ? という以前にもうハルヒロ、メリィのこと好きなの隠さなくなったというか自分を誤魔化さなくなりましたよね。少なくともそのことについて自分を誤魔化したり疑ったりなかったことにはしなくなった。その意味でも前進なんじゃないだろうか。
クザクをはじめとして、周りのパーティーメンバーが暖かく見守ってくれている、というのも大きいのでしょうけれど。特にセトラがめっちゃ気ぃ使ってくれてるんですよねえ。元々ハルヒロに求婚してくっついてきた娘ですし、居丈高な娘さんだけにもっと険悪になりそうなものなのに、それどころかあっちからスゴイ気遣ってくれるというのがなんともいやはや。
クザクもメリィに告白したのはそっちが先なのに、あの全力で二人を応援しようという姿勢。なんなのこの忠犬クザクは。ワンコ!!
いやこのワンコ、今回水着姿というか上半身裸の挿絵見てびっくりしたんですけど。クザクって背だけやたら高いけれどひょろ長くて細いイメージだったんですが……いやいやいや、なんかすげえムキムキマッチョじゃないですか! いやなんか怖いくらい筋肉ムキムキなんですけど。クザク、それもう盾役前衛タンクの体型として十分じゃないですか。上背あってその筋肉量って、十分ですよ。パーティー入りした頃は実際もっと細かったと思うので、なんか鍛えあげたって感じだなあ。
今回は突然街を襲うようになった竜を鎮めるために、竜の巣がある島の中腹に向けて密林のような山奥のような秘境を歩く、いった感じの今までと比べても実に冒険らしいような、わりと何時も通りのヤベえ未踏の地を征くといった感じで……でもワイバーンとは言え相手は竜ですよ。ゴブリンとぽこぽこ殴り合ってた頃と比べると隔世の感だなあ。味噌っかすどもが遠くまで来たもんだ。
ラストはかなり衝撃的と言うか予想外の展開。期間限定とはいえ、そう来たかー。これはちょっと想像もしていなかった。なんか最初期のメンバーを思い起こしてみると、いつの間にかメンバー激変してるんですよね、何気にここまでメンツの入れ替わり激しい作品も珍しいんじゃないだろうか。

シリーズ感想


灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た ★★★★  

灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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──やらなきゃいけないことを、やる。やるんだ。今は。
歯を食いしばり、両足を踏ん張り、グォレラたちの襲撃に再び向き合うハルヒロ。
彼は、使命で自分を奮い立たせ、“彼女”の死という現実から目を背けようとしていた。そして、抱えきれない後悔と絶望を前にした時、謎の男・ジェシーが囁く。「方法ならある。一つだけ」と。
一方、フォルガンを脱退したランタは、世話役であったタカサギの追跡から必死に逃げていた。千の峡谷(サウザンバレー)で、いつ終わるともしれぬ逃避行。体力と精神が限界に達しようとした時、ランタの脳裏を去来したものとは……?
これは……覚悟が必要だぞ。
むしろ、ハルヒロ自身ではなくメリィの方にこそ覚悟が必要かもしれない。ジェシーは人が変わったりとかはしないと明言はしていたけれど、実態を鑑みてみると侵食みたいなものはないかもしれないけれど影響は絶対あるはずなんですよね。境界線上は曖昧になっているフシは伺えたし、現にここまで引き継がれてきたということは、その前の人が引き継がせてきた、という事を意味しているわけですし。それって、自己保存意識が欠落してきていたという事を意味してるんじゃないだろうか。
メリィはメリィに違いないにしろ、彼女はメリィという個人から……メリィという人格を主体にした群体みたいなものになった、といえる訳ですから。
これ、よっぽどメリィが自分を確立していないと「持っていかれる」可能性は十分にあるし、そうでなくてもメリィの方から距離を置こうと考えるのは彼女の性格からすると容易に想像できるんですよね。そう考えれば、やっぱりハルの方にも覚悟は必要か。記憶は連続しているわけだし、彼女が死の間際に抱いた想いは忘れていないはず。でも、生き返ったメリィはその想いを今まで以上に素直に発露できず、むしろ積極的に封じていきかねない。正直、ハルを含め仲間たちがメリィを受け入れられないはずがないので、そのへんは心配していないのだけれど、捕まえておくのは本当に苦労しそうなことになってきたなあ。
ただ、戦力的に考えるとこれ劇的に向上したんじゃないだろうか。
にしても、感動の場面を甘受する暇さえ与えられずにどんどん追い立てられてくハルたちには同情を禁じ得ない。そこはそれ、みんなで奇跡をじっくり噛み締めてもよかろうシーンだったのに、それすら許してもらえなかったもんなあ。でも、ついさっきまで永遠に喪ったと思っていたものを、いつもと同じパターンでメリィの名前を呼び、いつものように彼女にそのポディションを守ってもらえる、いつもの陣形を形成できる、という事実を一瞬だけれど強く強く感じ入るハルヒロには、良かったなあと言ってあげたい。良かったねえと頷いてあげたい。
メリィを喪った直後の、あの自暴自棄になりそうになりながらそれでもリーダーとしての責任を捨てきれずに冷静を保とうとして、でも半ば自失してしまっていたハルの姿は、あまりにも痛々しかったから。
報われて、良かった。
今回は、時間的には短かったけれどハルが本当の意味で心身ボロボロに成り尽くしていただけに、こういう時のシホルの存在感には凄いものがあった。弱りきったハルが縋ったのがシホルだったし、シホルの方もボロボロになってたはずなのに、自分の決断に怯えるハルをフォローして、もうあかんくなりかけてたハルを支えて、とこれシホルが抜けてもパーティー多分崩壊するんだろうなあ。
一方でランタである。ちらりと、これはメリィの方もだけれど現実の、というべきか地球の、というべきかはわからないけれど、かつての記憶、向こうに居た頃の姿がすぐに消えてしまう回想という形で描かれていたけれど……。
ランタそれ、控えめに言ってもクズっぽいよね、向こうでの自分。卵が先か云々じゃないけれど、彼が愛されなかったからああなってしまったのか、ああいう性格だったから愛されなかったのか。
愛されたかったのか、いっちょ前に?
そうなんだろうなあ、そうじゃないと言い張るにはこの子は人間の器が小さすぎる。毅然と独り立てるような人間ではないのだ。そのくせ、他人に受け入れてもらおうという努力を払うどころか蹴飛ばし傷つけようとする。結局、そんな自分でも受け入れてくれる相手にしか、都合の良い相手にしか、甘えさせてくれる相手にしか、心を開かない。いや、そんな相手ですら心開いていなかったか。モグゾーを相棒と呼ぶ彼だけれど、彼にすら自分をさらけ出すような真似が出来ていたかは怪しいところだし。
だったら、フォルガンではどうだったのか。多分、波長が合ったんだろう。。距離感が適切だったんだろう。ランタの居場所として、あそこは前世今世を通じて恐らくは最良にして無二だったんだろう。
でも、だからこそ敢えて馴染むであろうそこを飛び出してしまうランタ、筋金入りだ。自分らしくって、何なんだろう。ランタのいう自分らしくとは、まだランタ自身が見つけられていないものだけれど、それでも選んだのだ、こいつは。生き様を、選んだのだ。それだけは、偉いと思う。師匠も、選んだ弟子を認めちまったんだろうなあ。
しかし、反省はしてもランタがそれを活かせるとはやっぱり到底思えない。自覚を得て、他人を認める意識が生まれて、それは成長なのかもしれないけれど、果たしてハルヒロたちと再会したとして、それがハッキリとランタの変化としてハルたちから認識できるかというと、わからんだろうなあ。実際、元の木阿弥に戻りそうとしか思えない部分もあるし。
ぶっちゃけてしまうと、今回の一連の戦闘でランタが居たら!と思う場面が一切なかった気もするので、もし再会しても別にまた仲間に戻らないくても……、わりとみんな本気で嫌ってるし嫌がってるし、こういうの扱うの本当にしんどいので、いいんじゃないかなあ、戻らなくてもいいんじゃないかなあ、と思わないでもないのだけれど、戻っちゃうんだろうなあ。こんなんでも、掛け替えのないものは繋がっちゃってるっぽいからなあ。


シリーズ感想

灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない ★★★★   

灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない】 十文字青/白井鋭利

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ある義勇兵が深い傷を負い、山中で一人その人生の終焉を迎えつつあった。死の間際、彼は思い出す。元いた世界の残滓を。そして、疑問を抱く。―この“グリムガル”という世界とはなんなのか?と。一方、千の峡谷を抜けオルタナを目指し東へ進んでいたハルヒロたちは、道中の森で、巨大な猿のようなモンスター・グォレラたちの襲撃を受けていた。レッドバックというリーダーに率いられたグォレラの群れに苦戦を強いられる。辛うじて追撃を振り払い、逃げ込んだのはオークの出来損ないが隠れ住む村だった…。―彼は知っている。この世界で“明日”は当たり前には訪れないということを。
うぐぐぐ……。ゴリラ怖い。ゴリラ強い。ある意味、熊よりヤバいですよね、ゴリラ。そのゴリラの集団と生身で激戦を繰り広げるハルヒロたち。覚えてますか? こいつら、ゴブリン相手に四苦八苦してたんですよ? ゴブリンの集団仲間内からもドロップ・アウトしたような貧弱なゴブリン一匹相手に無様な戦い方をしてしまっていた彼らが、グォレラ一匹相手なら簡単に始末できる、というくらいに強くなってて、なんかもう感慨深いどころじゃないんですよね。
一方で、そんな昔のことを思い出してしまうと、あの頃の彼らが余り物が寄せ集まっただけのチームだったことを思い出す。一致団結はしていても、仲間ではあっても、仲が良くても、それでも一定の距離感はあったんですよね、それぞれの間に。
いつからだろう、この仲間たちの為なら自分は死んでも構わない、とまで皆が皆思うようになるまでに結束が深まったのは。家族同然になったのは。ハルヒロのリーダーとしての資質、信頼感がある種のカリスマ性をも帯びるようになっていたのは。ほんと、これ段々と、なんですよね。ちょっとずつの成長が歩みを止めずに進み続けた結果、いつの間にかここまで至っていた、というべきか。劇的な変化がなかった分、ふと振り返った時に思っていた以上に途方もない距離に到達していたことに気付かされる。
でも、それ以上にこれだけ絆深まってしまった、本当の意味で掛け替えのない家族になってしまった彼らの中から脱落者が出てしまった時、彼らは耐えられるのだろうか。マナトの時、モグゾーの時、そしてランタの時。あの時だって、あの瞬間だって喪われた者たちは掛け替えのない者だったはずだけれど、彼らはグッと堪えたまま、前に進んできた。ここまで来た。
ここまで来たけれど、これ以上行けるんだろうか。
いずれにしても、もう読んでいるこっちの方が、これ以上は辛くて耐えられない、よ。
無理だ。

はあ……。

メリィの反応がね、もう言い訳できないくらいあからさまなんですよ。本人、本気で気づいてなくて、メリィって心の底からハルヒロのことただの仲間と思い込もうとしていて、それが全然出来てないんですよね。これはもう、無理だよ。でも、ハルヒロもメリィも頑なだからどこまでアレなのかな、とも前巻までは構える部分もあったんだけれど、今回なんぞもう言い訳できないくらいジェラってて、そんなメリィの反応を見てクザクやシホルが動揺してしまうくらいにはあからさまで。
なんかねー、もうおめでとー、な心地だったんですよね。あー、でもクザクが述懐してたように、ハルとメリィがお互い好きであっても進展とか絶対しないだろうな、というのはなるほど正鵠を得た分析だ、と思わず深く首肯してしまったもので、でもそんな二人を後押しできる人ってメンバーの中に居ないっぽいんですよねえ……。
クザクは自分が後押しする、と奮起してましたけど、君、そんな器用なタイプじゃないでしょう。いや、不器用じゃないけどさ、うまく誘導するとかお膳立てをするとか出来るタイプに見えない。シホル? いやあ……。
ユメだったら自覚なくうまいこと転がしてくれる可能性はあるけれど、彼女の場合ほぼ天然一途なので意図的に図るのって難しそうだしなあ。
というわけで、周りから促して、というのはなんだか絶望的だなあ、という見解をこの時点では抱いていました。結局さ、メリィの自意識が変わってくれないと、彼女が踏ん張っちゃってる以上、引っ張っても背中押してもその場から動かきようがなかったのよね。
でも、彼女の頑固さは筋金入りで。よっぽどのことがないと自分の中身を自分でひっくり返すことなんてしないし、出来ない娘だったんですよね。いやその意味ではセトラのハルヒロへの圧倒的なアプローチは、途方もない刺激となってメリィの本心が周りにも伝わってしまうくらいに、浮き彫りにしてしまうくらいに「よっぽど」のことだったわけですけれど、その動揺がメリィ自身に脅迫的に自身を縄で縛ってその先を杭打って縫いとめて、みたいな真似を強いてしまったきらいもあり、でもそれくらい自分を縛らないとハルヒロへの気持ちを押さえられなくなっている、というのがハルヒロがピンチに陥った時の様子からも伺えて、どちらにしても一杯一杯決壊寸前だったのかもしれない。
よっぽどの、きっかけがあれば、あとはもう後戻りできないところまで流れてしまっていたのかもしれない。
でも、だからって。
そのよっぽどがこれって、むごすぎやしませんか?
人間が本当に素直になれる瞬間を、ここに規定してしまうというのか。
冒頭に、あのエピソードを。ジェシーのエピソードを持ってきた意味が、最後まで読めばよくわかる。最初から、蜘蛛の糸は垂れ下がっていたのか。以前の彼の時は、こんな準備なんかされてなかったもんなあ。その意味では、優しさの現れなのかもしれないけれど、十分痛めつけられた気分である。でも、絶望だけで終わらない、というのはこういう気持ちなのか。藁にもすがる思い、希望にすがってしまう気持ちというのは、こういうことを言うのか。どうしたって、そこに縋り付くしかないじゃないかっ。

シリーズ感想

灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ ★★★★☆  

灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ】 十文字青/ 白井鋭利 オーバーラップ文庫

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ジャンボという名のオーク率いるフォルガンとの戦いが混迷を極める最中、ハルヒロたちはかつてない危機を迎えていた。ランタのフォルガンへの寝返り。そして、一人また一人と散り散りになっていく過酷な撤退戦。パーティのみんなの安否がわからないまま、ハルヒロたちは自分たちにとってパーティの仲間が、どんな存在だったかを再認識していく。失いそうになってはじめて知るそれを、ハルヒロたちは本当に失ってしまうのか、それとも―。霧深き千の峡谷で、“孤独”という敵と相まみえる時、灰の中から生まれし冒険譚は新たな一幕を紡ぎはじめる。
今まで、一人がはぐれてしばらく別行動、みたいなことはあったと思うんだけれど、みんながこれほど散り散りになってしまうことはこれが初めてだったんじゃなかろうか。
厳密にはメリィはハルヒロと一緒ではあるんだけれど、みんな一人になってしまったからこそ、自分にとってパーティーメンバーがどういう存在なのか、というのを強く思い、考えることになる。
それは孤独感や別れ別れになってしまいこのまま二度と会えないんじゃないか、という恐れが、裏切ったと思しきランタの姿に背中を押されてしまったからこそ、の沈むような思考だったんだろうなあ。みんなの心配をすると同時に、自分自身も生き死にの只中に放り込まれて今にも死にそうな思いをしている最中だからこそ尚更に。
ダルングガルで長く過ごした影響も強いんでしょうね。あそこで、ハルヒロたちは自分たち以外人間がいない世界でそのまま一生を過ごす決意まで一時は固めていた。ダルングガルで、このメンツでずっと生きていくんだ、という思いまで抱いていたわけなんだから、それをただの仲間でもう括れないよねえ。
ハルヒロの、もう俺達は家族だったんだ、という趣旨の独白がじんわりと胸に染み入ってくる。離れ離れになりながら、みんな仲間以上の間柄になっていた家族を想っていたのだ。もう一度、絶対に生きて会うんだ、と自分を奮い立たせながら。みんな、大切な人を失った記憶をずっと胸に抱いているから。
自分が死んだら、あの悲しみを他のみんなに味わわせてしまう、と必死に生きて生きて生きようとする、あのユメのがむしゃらな姿には、もうなんか泣きそうになってしまった。
死にたくない、生きたい、仲間のもとに戻りたい、という思いはでも、ハルヒロたちだけじゃないんですよね。殺し合っていたはずのゴブリンのオンサと大狼のコンビと、言葉が通じないながら同じ瀕死の状態になったとき支え合って生き延びようという状態になったときなんて、もうねえ。
ランタがフォルガンの中で感じた思いというのは、異種や不死族相手でもわかり合って、仲良くやってけるんじゃないか、という思いは、決して荒唐無稽じゃないんですよね。少なくとも、ハルヒロたちはもうそれを受け入れるだけの下地は出来ている。ただまあ、その機会はなかなか得られないんだろうけれど。
家族同然のパーティーの中にあって、ハグレモノであるランタの思いがまた独特でありつつ不思議な関係性でちょっと感慨深かったですね。あれ、独りよがりでもあるんだけれど、ハルヒロたちと無言の同意が交わされている感じでもあるんですよねえ。でもそうなんだよなあ、モグゾーが居た頃はハルヒロと三人でよくつるんでたんだから、ちょっと変わってしまったのはやっぱりモグゾーが居なくなってからなのか。彼は、ランタの理解者というわけじゃあなかったけれど、ありのままのランタをそのまま受け入れられる稀有な大らかな人柄だったからなあ。ランタも彼をクッションにしてもうちょっと近い距離で他の連中とも付き合っていた記憶がある。まあ、モグゾーもわりとランタに辛辣だったりするときあった気もするけれど。
そう言えば、ハルヒロたちが例えていた家族の関係。女性陣はメリィじゃなくてシホルが長女なのね。これちょっと意外だった。てっきりメリィが長女扱いだと思っていたので。今となってはシホルの方が精神的支柱になってるのか。最初の頃のあの内向的だった印象が強く残っているだけに、強くなった今でも固定観念が残ってるんか。
あと、ランタ並に仲間同士の関係について考えをこじらせちゃってるのがメリィなんですなあ。えらい、あるべき姿にしがみついちゃってる。もっとシンプルに考えればいいのに、というのは他人事で人間関係というのはどうしたって深く深く考え込んじゃうものなんですけどね。それが大事な関係であればあるほど。
突然、ハルヒロに迫ってきて、取引として恋人関係を強いてきたセトラ相手にもうグチャグチャに思考を取っ散らかせちゃってるメリィですけれど、今まで通りの変わらない仲間関係で居たいと拘りながらもそこまでハルヒロについてばかり考えちゃっているあたりで、もうなんだかなあ、というところなんですけれど。
何あれ。かっこいい

ハルヒロのとある行動を目の当たりにして、素でこんなこと思っちゃってる時点でアレなのにねえ。ってか、もうなんかポロッとむき出しになりすぎてて、吹いちゃいましたがなこのシーン。この後の自分への言い聞かせ方が、それ誰に言い訳してるの、と言いたくなるような内容ですし。
一方でメリィって、ハルヒロの方は自分をどう思っているか、という観点に関しては一切頭にないんですよねえ。振り返ってみると、自分がどう思っているか、というところで一杯一杯になって溺れちゃってて、余裕がまったくなくなっちゃってるわけで。何気に、こんな状態のメリィに彼女の内面がどうなってるのか知らないまま、目を瞑ったままブンブン剣振り回しているようなメリィの言葉にぶった切られまくってるハルヒロが、かなり可哀想です。察しろ、というのはちと酷すぎる状況ですし。
ともあれ、もう一度会えるかわからないくらいの四散っぷりでしたから、怒涛の合流劇には安心するやら燃えるやら、落ち着いて感動の再会と行かない相変わらずの修羅場にハラハラさせられましたが、だからこそ感動もひとしおというやつでしたねえ。
一人残ったランタ、どうするかと思ったら実にランタらしいマクリを見せてくれましたし。こいつ、どうするんだホント。シレッと戻ってきそうな気もするけれど。
しかし、ほんとに他のメンバーからのハルヒロの評価って、本人の自己評価の低さに反比例するようにメチャクチャ高いよなあ。みんな、ちゃんと根拠あってハルヒロのリーダーっぷりや責任感を称えているので大いに納得できるのですけれど。ランタですら、しっかり認めてるしなあ。

シリーズ感想

魔法使いと僕 1 ★★★☆   

魔法使いと僕1 (オーバーラップ文庫)

【魔法使いと僕 1】 十文字青/細居美恵子 オーバーラップ文庫

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少年は故郷と同胞を奪われ一人だった。少女は旅の荷物さえ失い行き倒れていた。カルルとエルシー。貪るように拡大を続ける「帝國」の辺土で二人は出会う―。人と亜人。名も無き小村で身を寄せあい暮らすひとびと。命は散り、花は咲く。コルタポ。辺土の商都。そこではひとがひとを売りさばき、ひとがひとを所有する。逆らいがたきその現実。引き離される二人。果たしてそれは運命なのか。巻き起こる騒乱。糸を引く者。引かれる者。あらがう者。うつむく者。前を向く者。
「ひとを救うのって、簡単じゃないよ。きっと」「死ぬなんて、だめです!」
少年と少女が“生きる”意味を求めて旅する珠玉のファンタジー、ここに開幕!
ああ、なんかいつもの十文字さんの作品に比べて「フラット」な感じがするなあと思ったら、一人称じゃなくて三人称だったのか。
この人の三人称って凄く珍しいんだけれど、無かったわけじゃないんですよね。うーん、どれだっただろう。【ANGEL+DIVE】は確かそうだったんじゃないだろうか。
一人称だと、かなりグリグリ・ぐるぐると内面の思考を醸成というか醗酵というか、ひたすら垂れ流すことで逆に一点突破で奥へ奥へと掘り下げていく代わりに、一人称であるが故に周囲の人間の考えている事も主人公からの視点になっているからか、相手の考えとか信頼が読めない状況だったりするとかなり息苦しい感じがするんですよね。
かと言って、本作が三人称だから息苦しくないか、というと全然そうではなくて、もう世界観からして中世らしい倫理とか人道とか人権が何の価値も持っていない世界で、亜人たちが(複数の階層に分けられた上で)苛烈な差別と搾取とを受けている世界なものだから、そこにいる事態で息をするのも苦しい感じなんですよね。
ヒロインである魔法使いのエルシーが、まるで違う時代から来たような健全な倫理観と隣人愛の持ち主であるがゆえに、目に映る世界すべてが人の悪業を見せつけられているようで、ひたすら苦しい。
そして、その苦しみは彼女だけのものではないのである。差別されている亜人たちもまた、そんな世界に反逆スべく抗おうとしてる者もあれば、逆に帝国側に在ってその中で自分たちがいきていける場所を作ろうとしている人たちもいる。
「人として生きるため」に、それぞれがお互いに血で血を洗う殺し合いを繰り広げるのだ。そして、そんな差別に抗おうとする人扱いされない人々もまた、鼠人という亜人を自分たちと同等とはみなさず、愛さず、見下し突き放している。反乱によって解放された奴隷たちは、ケモノのように一般市民に暴虐を繰り広げ、帝国の体制に抗うために暗躍する策士たる男は、解放するべき亜人たちを単なる駒としかみなさず、人として生きようとしている彼らを人扱いしていない。
そして、真人とされる純粋な人間は、帝国の中枢にあり、この支配構造を作り上げ、多くの悲劇を生み出している存在は、作中に一人も登場しない。登場すらしない。
この地獄を繰り広げているのは、すべて虐げられている者同士なのだ。そんな中で、エルシーだけが鼠人を含めてすべてを人と見なし、かけがえない命と見なし、争いを否定し、殺し合いを否定し、叫び続けるのだ。
やめて、やめて、こんなことをしないで、殺さないで。
無論、そんな言葉はこの世界で何の力も持たない。意味も持たない。抗うこともできず、ただただ泣き叫ぶばかりで彼女は濁流のような状況の変化の只中で押し流されていく。無垢で、この世の悪意を知らず、人の悪徳を知らずに育った彼女は、現実を前に何も出来ないまま押し流されていく。
その姿は哀れで、情けなく、無様ですら在る。出来ないことを懇願し、現実を無視した願いを訴えながらすがりつく。それを跳ね除けざるを得ない人たちの心の葛藤、痛みはどうなるのか。
それでも、意味をなさない正しいことを、何の役にも立たない綺麗事を、地獄の中で叫ぶ価値は、価値はあるのだ、きっと。
生きる価値を知らず、生まれたときからそれを持たず、一族も戦士の誇りも何もかも失って、ただ一人の家族との旅で芽生えた萌芽をずっと眠らせたままさまよっていた少年に、彼女の無様な在り方は確かに届いた。
人の持つ善良さ。生きることの素晴らしさ。この世は地獄で、しかしそこに生きる人々には、誰しも生きる価値があることを、二人は一緒に歩いた僅かな旅の道程で、知り得ていた、確信していた。縁があるとすれば、そこなのだろう。小さな少女が精一杯生きて生きて、そうして消えていった事実を、家族に看取られて、世界の美しさに涙しながら感謝しながら去っていった事実を、二人は真実として知っている。
きっと、二人はもう「生きる価値」は見つけているのだ。
「魔法使いと僕」の本当の旅はここからはじまる。それはきっと、見つけた価値の証明なのだろう。
控え目に言ってもこの世は地獄だ。しかし、彼と彼女は絶望を絶望のまま終わらせなかった。何かもが失われてしまう最後を、僅かなりともひっくり返してみせた。それは救いであり希望である。
何気に容赦なくバッドエンドも持ってくるこの作者だけれど、本作はそうじゃないと信じたい。それだけの何かが、クライマックスにはあったと思う。少なくとも、エルシーの心が折れなければ、大丈夫だと思いたい。
わりと、やわそうではあるのだけれど、むしろ信念や意志が固いよりはポッキリ折れにくい、と思いたいのよねえ。

十文字青作品感想

灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ ★★★★   

灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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幾多の危機を越えグリムガルへの帰還を果たしたハルヒロたち。
しかし、戻ってきたとはいえ、出口の先は人間族の勢力圏から遠く離れた土地だった。
偵察に出たハルヒロとユメは、幸運にもクラン「暁連隊(DAYBREAKERS)」に所属する瑜ι(タイフーン)瓮蹈奪スたちと出会う。
だが彼らはある目的のため、オークや不死族の集団と戦っており、ハルヒロたちも、更には残っていたランタとメリイ、クザクとシホルの4人も別々に行動し、戦闘に巻き込まれてしまう。
ようやく戻ってきた世界でも、待っていたのは仲間と更なる出会いと戦いだった。
灰が舞い、幻想を越えた先に何が待つのか、いまはまだ誰も知らない。
そうか、こういう展開になるのか。油断してたなあ、今更ランタと決定的な対立が発生すると思っていなかっただけに。前回、いざというときランタでも、自分よりも優先すると言ったハルヒロや、文句は相変わらずなものの指揮や方向性に関する決断に関して反対するということもなくなったランタ。仲間として、一定のラインを超えて成熟する段階に入っていたと思っていただけに、外部要素が絡んだとはいえこういう形で……。
いや、むしろ関係が成熟したからこそ、一度別けて離すことでお互いのこと、自分のこと、仲間との関係について深く考える機会だったのかもしれない。ある種の安定期を迎えていたからこそ、一度引っ掻き回し、それぞれを見つめなおして、深く掘り下げていく必要があったのかもしれない。
それにしても、決して小器用じゃないランタとハルが、小細工を弄するなんて端から無理な話なんだよなあ。熱くなっちゃって、若いなあ、若いのう。
どうしたって、本気にならざるを得ない、本気になってしまう、中途半端でいられないお互いの存在感。若いなあ。

とまあ、やっとも異世界からグリムガルまで戻ってきたにも関わらず、一休みする間もなくこのシッチャカメッチャカな状況になってしまうあたり、忙しないにも程がある。ゆっくりする時間が欠片もなかったじゃあないですか。
遭遇した瑜ι(タイフーン)瓮蹈奪スのメンバーは、そりゃもう当然のように奇人怪人のオンパレードなのですが、口走ってる言葉こそ物騒ですけれど、その行動……少なくとも、ハルヒロたちへの対応はわりと親切なんですよね。クロウは、突き放した物言いのわりに要所要所で毎回援護して助けに来てくれるし、モユギは物騒な物言いのわりに、ハルヒロが質問してきたら意外と親切丁寧にぜんぶ説明してくれたり、アドバイスくれたりしてるんですよね。勿論、ハルヒロが積極的に動いて役に立つという意思を見せたからでしょうけれど、道具としてではなく、ちゃんと後輩として面倒見てくれてる素振りがちゃんと見えるので、まあ自分勝手で大迷惑な連中ですけれど、悪い連中じゃないんだろうなあ、と。

でも、悪い連中じゃないというと、オーガ「ジャンボ」が率いる種族混成の集団フォルガンも、トップのジャンボからして人間すら魅了するようなオーガであり、種族を超えてジャンボに魅せられて集まった連中だけあって、おおらかというか、危ない面はあってもそれを上回る惹かれるものを感じさせるチームなんですよね。
正直、ランタがそのまま染まってしまっても不思議じゃないくらいに。
ぶっちゃけ、あのランタがここまで素直に自分の心情を打ち明けてるシーンって初めて見たんですよね。ひねくれものの彼が、思わずであってもあれだけ率直に自分の気持ちを口にできるような、そんな相手、そんな雰囲気を醸し出すジャンボ。
そうなんだよなあ、ただの方便でランタがフォルガンサイドに居るならともかく、なんかシンパシーが通じちゃったっぽいんだよなあ。
これは、本当に難しいことになりそう。
大体からして、フォルガンサイドとロックスサイドが激突した理由からして、えらい面倒くさいような当事者同士の問題に横から首突っ込んだが故に、解決が難しいこじれ方してるからなあ。
そこにハルヒロたちが絡んだのだって、恐ろしいほど成り行きですし。

今回は、チームがバラけたせいもあってか、ハルヒロ視点じゃないそれぞれのメンバー視点の話も多くて、その中でハルヒロがどう思われているか、という観点の話もたくさんあって非常に興味深かった。
ハルに対して、みんなが寄せている信頼感が絶大であるというのは以前からわかっていたことだけれど、みんなハルがリーダーという役割が合わないながらに頑張ってる、というのをちゃんとわかってくれてたんだなあ、というのが認められて、なんだかホッとした。ハル任せじゃなく、自分たちなりになんとか彼を助けられるようになろう、と思い悩んでいる部分も。
だからこそ、シホルのサブリーダー的な振る舞いには、意外ながらも感銘を受けたんですよねえ。あのシホルが、ですよ。このチームのサブリーダーってメリィかなあ、と思ってたんだけれど、そうか、シホルなのか。かなり腹黒になったし、内気で臆病という部分は変わらなくても、それを深慮と決断に転換してる面が段々と目立ちはじめてるんですよね。ハルと同様に自分の弱さというものに対して自覚を持ってるタイプなだけに、後衛というポジションも合わせて、全体を見る位置で考えるようになっていたのか。
いつの間にか、薔薇マリのマリアみたいな感じになってきてるのか、これ?
ともあれ、これだけシホルが頼もしくなるかぁ。ハルがあとを任せた、と預けられるほどに。なんか、嬉しくなりますねえ。
そしてメリィ。かなり追い詰められて精神的に締め付けられる彼女ですけれど、それだけにそうかー、仲間みんなのことを思い巡らしていくなかで、ハルのことを思ったシーンでのあれは、なかなか来るものがありました。そうかー、そうかー。
それだけに、ラストのハルとの再会シーンは彼女なりにけっこう来るものがあったんじゃないだろうか。ランタとのあれこれがあってそれどころじゃなくなってましたけれど。

さあ、これだけヒモを混んがらせてしまって、どう解きほぐしていくのか。話もガンガン行ってるなあ、乗ってるなあ。

シリーズ感想




灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹 ★★★★   

灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹 (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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『黄昏世界』から脱出したハルヒロたちは、グリムガルとも異なる『太陽の昇らない世界』にへと足を踏み入れた。なんの情報もないまま、それでも仲間を率いるハルヒロ。幸いなことに、異界の住民たちが住み着く村を発見し、ひとまずの安全を確保できたものの、過酷な環境に問題は山積みだった。更に最も必要とする「グリムガルに帰る方法」はまだ手がかりさえも見つからない。自分たちは帰ることができるのか、そして時たま頭をよぎる本当に『帰る』場所は違うところなのでは、という感覚。様々な想いを胸に抱きつつ、ハルヒロたちは、異界の探索を進めていく。灰の中をさまよい、行き着く先には―。
グリムガルじゃないですけど! もう随分と長いことグリムガルじゃないんですけど! 5巻でワンダーホールから黄昏世界、というグリムガルとは違う別の異世界に狩場を移して以来、ハルヒロたちグリムガルに居ないんですけど! まだ戻れる間は良かったものの、黄昏世界でのスタンピードをきっかけに元のグリムガルに戻るに戻れなくなり、逃げ惑った挙句に今度はさらに違う「太陽の昇らない世界」に迷い込んでしまったハルヒロたち。
凄まじい世界である。何しろ、太陽がないのだ。一日の僅かな時間、地平線の向こうで何か燃えてるような光が見えるだけで、暗がりに覆われた世界。その上、人間族が居ない。グリムガルでは見たことのなき奇怪な見た目の怪物たちが、この世界の知的生命体として社会を形作っている。言葉も何も通じない、そんな世界に放り出され、それでも手探りで生き残るすべを見つけていく、異界の社会の中で生活していく術を探りだしていくハルヒロたちは、何だかんだとタフというかしぶといチームなんですよねえ。言葉も通じない、貨幣も何も持ってない段階から、通貨らしきものの入手手段を手に入れ、試行錯誤で異界人たちと意思の疎通を図り、どうにかこうにかやっていく目処を立てていくんですから。
何気にサバイバリティが高いんだよなあ。
これだけ「生きる」ことに苦労することになったのは、義勇兵をはじめた当初以来となるのだけれど、それでもこれまでのノウハウがあったせいか、環境としてはグリムガルよりもこのダルングガルの方が厳しかったものの、生活が安定するのはこちらの方が早かった気がする。とはいえ、作中時間はけっこう経ってるのですけどね。でも、チームの、パーティーとしてのまとまりやそれぞれが役割を把握しているという意味では、今の方が遥かに充実しているためか、何とかなりそうという頼もしさは以前とは全然違いましたね。

それでも、異世界で生きていかなければならない、もしかしたらこの後ずっとこの世界から抜け出せないまま、骨を埋めないといけないかもしれない、という先が定まっていく心細さは今までにないものでした。
これがグリムガルなら、ハルヒロのチーム以外にも同じ境遇の人間たちが沢山居て、厳しい世界と言っても同じ価値観、文化、世界観を有した同胞たちが周りに集っていたわけですから、ハルヒロたちがもしかしたら自分たちは違う世界から来たのかもしれない、という違和感を持っていても、孤独感や寂寥のようなものはそれほど感じなくて済んだはずなんですよね。
ところが、このグルングガルではそもそも同じ人間種が自分たち以外存在しない。歴史も文化も理解できない、見た目も不気味で異常極まる異質な生命体が社会を織りなしている、自然環境も理解できないルールの元に成り立っている、異世界……異界。そんな中で、人間は自分たちだけ。その孤独感は想像するにあまりあり、もしかしたらこの世界に骨を埋めなくてはいけないかもしれない、という考えにはキリキリと内臓が絞られるような恐れがつきまとう。
だからこそ、たった仲間をみんな喪ってたった一人この世界に迷い込み、取り残されたまま生きてきた元義勇兵の男との遭遇は、これまでで一番運命的なものを感じたのでした。もっとも、彼の存在がどのように作用するか。このグルングガルで生きていく覚悟を得るのか、それともこのグルングガルから脱出する決意をもたらすのかは、ハルヒロたちの心持ち次第、或いはタイミング次第だったのでしょうけれど。
元義勇兵……ウンジョーさんとしても、彼らとの出会いはある種の踏ん切りだったんだろうなあ。諦めがつきまとっていた中で、納得を得たというか。仕方ない選択ではなく、自分の選んだ生き方だったのだ、と。

周りの強力な、ある意味個性的と言ってもいい他のパーティーのうるささがなかったせいか、久々にハルヒロたちのチーム一人ひとりに焦点が合わさり、じっくりと生活環境を整えていく過程でお互いの関係を見つめなおす機会にもなったようで。
兎にも角にも、メリィとクザクの関係がどうなっているのか、ハッキリして良かった。ほんとよかった。もうずっとハルはもやもや抱えてたもんなあ。でも、一度はっきりするとメリィの言動に対して色々と想像をめぐらしてしまう余地も増えてしまうわけで……。時々、あれあれ? と思うような態度とかセリフもあるんですよねえ。むふふ、むーん。
シホルの方から、改めてハルがみんなからどう思われているのかについて、お説教混じりに話があったのも、なんとも感慨深い。ちょうどアニメはじまった時期だから、冒険を始めた頃の内気で引っ込み思案なシホルの姿を目の当たりにしているだけに、今のこうしてちょっと頑張りすぎてたハルに対して、きっちり釘を指したり、はっきりと言葉にして思うことを語ってくれる彼女の姿には、シホルもどんどん変わってるんだなあ、と思うことしばしば。
まあ、それよりもランタ相手限定とはいえ、凄まじい毒舌家、になってしまってるんですけどね、この娘。
クザクの方からも、ようやくというべきか、仲間になってからずっと胸に秘めていたことを吐露するシーンが。やっぱり、クザクも思う所あったんだよねえ。それを今まで口に出してこなかったのは意地でもあり、配慮でもあったのだろうけれど、こうしてハルヒロと穏やかに胸の内を語り合えるまでに、ようやく自分のチームでの立ち位置に余裕を見いだせるようになったのか。
こうしてみると、ハルヒロは本当にこのチームのメンバーのこと、好きなんですよねえ。大事にしてるんですよねえ。だからこそ、自分を費やしてしまう。決して思い上がらない。ランタのこと、死ね死ねとかいつも思っていながら、いざとなった時自分とどちらを優先するか、まったく迷わずその答えを口にしたシーンでは、こちらも思わず息をつまらせてしまいました。
この子は本当に……。
だからこそ、他のみんなもハルのこと、物凄く信頼しながらどうじに心配してるんだろうなあ。信頼というのは、容易に依存の要素をはらんでしまいかねないのだけれど、マナトの時の失敗もあり、そして何よりハルヒロという人間の危なっかしさが、彼に寄りかからずに済んでいる要因なんでしょうねえ。
シホルやメリィの気遣う様子からも、今回よくそのへんが見えた気がする。

結果として、彼女らの心配は顕在化してしまうのですけれど。あれ、ランタあたりも似たような心配してたっぽいなあ。こいつの場合、配慮もなにもあったもんじゃないんだけれど、その配慮のなさは時として他の面々には出来ない、乱暴で無神経だからこそ暴露できるものもあるわけで……こいつ死ね、と思ってしまうのは変わらんですけどね!!

でも、まさかここまでハルのメンタルがやべえことになるとは思ってもいなかったなあ。すり減ってたんかなあ。
ラスト近辺のやばい雰囲気はシリーズ通しても、ここまで統制欠いてしっちゃかめっちゃかになってしまい、為すない状態になってしまったこと、なかったんで焦燥感がどうしようもなかったです。
これ、もし誰かに何かあったら、ハルヒロの精神相当にやばかったんじゃなかろうか。もう雑巾絞るみたいにメンタル絞り上げてくるような展開の連続で、読んでるこっちまでフラフラになりそうでした。
たまらん。

余談だが、ランタってあれ、ユメのことが好きっぽいんだが、それに気づいた途端、後ろから頭はたいて背中にヤクザキックかましてやりたくなったのでした。ランタのくせに、ランタのくせに。お父さんはゆるしませんよ。

シリーズ感想

サクラ×サク 04.滅愛セレナーデ ★★★☆  

サクラ×サク04 (ダッシュエックス文庫)

【サクラ×サク 04.滅愛セレナーデ】 十文字青/吟 ダッシュエックス文庫

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最後に水浴びをしたのは、いつだったか。五日前?もっとか。十日前…?ハイジ・バランは、まだ、生きています。大王都カバラからなんとか脱出したものの、帝国の軍勢は既にデスティニア公国へも進軍していた。大軍で押し寄せる帝国軍にサクラたちは少数精鋭で立ち向かう…!血が滾って色々躍る大戦詩幻想交響曲、運命が軋む4巻!!
一貫して姫様激ラブで変わらないのはハイジくんだけれど、一方でサクラはこの婚礼の旅に出てから随分と変わりましたよね。この過酷で次々と随行の人たちが切り刻まれるみたいに殺されていく悲惨な旅の果てに、姫さまは何を思ったのか。あれだけ酷い旅の終着が望まぬ政略結婚であった挙句に、帝国の侵攻によって全てが台無しにされてしまい、今度は公国への逃避行ですからね。
自分を押し殺し、すべてを跳ね除けながら、みなを守ろうと無駄に足掻いていた姫様。自分の価値を最低に見積もって、自分を消費し尽くすことで国や民や兵士を守ろうとしていたサクラ。でも、婚礼の旅では、そんな自分が戦争の道具ではなく、政略の駒として自分の力ではどうにもならない立場に置かれ、その立場故に自分こそが一番守られなければならなくなった婚礼の旅で、他でもない自分の為に死んでいく人々を目の当たりにして、彼女は自分だけを犠牲にする戦い方をしなくなったように思う。自分を守って死んでいく兵士たちに悲しみ苦しみながらも、その誇りを讃え、その死に相応しい姫であろうとするようになった。
そうして、彼女は少しだけ、本当の気持ちを表に出すようになった。
サクラは少しだけ、自分を押し殺すのをやめて、素直になった。
それは、或いは諦観の果て、故だったのかもしれない。絶望すらも通り過ぎた、諦めの境地だったのかもしれない。それでも、彼女の願いはその口からこぼれだした。そのあまりにも哀しく、そして切望に満ちた願いは、だからハイジに届いたのだ。
そして、ハイジ・バランという男は致命的なほどに空気が読めず、だからこそサクラの諦めも、彼女の異能の摂理すらも一顧だにしなかったのだ。端からどうでもよいという風に、姫への愛になりふり構わずのたうち回ってみせるしかない男なのだ。物分かりなんて、良くない以前に出来ない男なのだ。
バカだからこそ、押し通せる一念がある。愚かだからこそ、この世の真理ですら通用しない。ハイジ・バランは度し難いほどバカで愚かな男であるからこそ、その一途さは決して誰にも届くことのない場所にまで手が届いたのだ。だからこそ、サクラ姫に相応しいのはこの男だけなのだ。彼だけが、絶望を通り過ぎた先に至る姫の諦めを、打ち崩す。

一方で、また違う形で愛する人へ殉じる男も居る。ハイジとサクラのそれが触れ合えなくても触れ合おうと足掻く二人なら、亞璃簾と不人のそれは癒着に似た不可分だ。僅かな間離れただけでも、お互いの心に波が生じるほどの比翼。それは、二人の立場がどう変わろうと何も変わらない不動の同一性。でもだからこそ、その安定性こそが男の内面をじわりじわりと煮立たせているように見える。亞璃簾もまた、無垢なほどの無自覚の中で一歩一歩後戻りできない自覚を育んでいるように見える。この二人は、或いはその癒着を引き剥がし一人の人間と人間として向き合った時にこそ、一人の男と一人の女として始まるのかもしれない。始まってしまえば、その時点で致命的なようにも思えるほど、あまりにも深くはまり込んでいるけれど。

そして、その異能の特筆性ゆえに、既に奈落に落ちている男も居る。一心不乱に狂気の淵で踊っている男がいる。これこそが、ラスボスだ。この物語の、極北だ。ついに見えた。戦うべき相手が。
この男の愛こそが、みなを舐め尽くしていくだろう。踏みにじっていくのだろう。まずは一組の兄妹の愛が穢された。
そうして、許されざる愛の数々がせめぎあい、相い争う。お互いを許せず認めず滅ぼしつくそうと、殺しあう。
サブタイ「滅愛セレナーデ」。
つまりは、そういう事なのだ。


シリーズ感想

灰と幻想のグリムガル level.6 とるにたらない栄光に向かって4   

灰と幻想のグリムガル level.6 とるにたらない栄光に向かって (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.6 とるにたらない栄光に向かって】 

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「目標はもう決まったわけだろ? それなのに、帰るってどういうこと?」
ハルヒロたちとトッキーズが発見した「黄昏世界」は新たな狩場として注目を集めていた。
ハルヒロたちも、以前は逃げるしかできなかった白い巨人を撃退し、安定した稼ぎを得られるまでになっていた。
しかし、あるクランの行動がきっかけで「黄昏世界」の危険度が跳ね上がってしまう。
そんななか、以前に加入した「暁連隊」のリーダーであるソウマと再会したハルヒロたちは、なし崩しに複数のクランが参加する、大規模なミッションに加わることになる。
精強な義勇兵たちと共に戦うことで、ハルヒロは何を見て、何を思うのか――

ララ&ノノのキャラクターが想像と違いすぎててひっくり返ったよ!! いや、十文字青キャラらしいといえばらしいんだけれど、もっとキューティーというかリリカルというか、そっち方向のちょこまかとフットワーク軽そうな可愛らしいコンビを思い描いていただけに、思わず悲鳴あげちゃいましたがな。
「黄昏世界」、とてもマトモに活動できそうにないフィールドだと思ってたのに、慣れるとこんなものなのか。それだけ、初見が危険だということでもあるんだろうけれど、結構ハルヒロたちも順応性高いよねえ。歩みは遅くても、着実に出来ることを増やしていっている気がする。
それでも、周りのハイレベルなクランたちが凄すぎるので、決して目立っていないのだけれど。でも、ハルヒロの意識というか心境が、そんなハイレベルのクランに対しても徐々に変わってきてるんですよね。昔は見上げるだけで遠い存在にしか感じていなかった彼らに対して、どうにかして近づけないか、と考えるようになってきている。おこがましいとか腰が引けたり凄すぎるとか圧倒されながらも、心の奥底、本音の本音では負けん気みたいなのが徐々ににじみ出てるんですよねえ。ハルヒロは常に現実を直視し続けて、自分を戒め続け、身の程を知り、浮ついた気持ちにならないように抑制し続けているのだけれど、それでもなお、心の奥底とは言えそういう気持ちが生まれ始めている、というのはそれだけ何かしらの手応えがあるんだろうなあ。モグゾーをはじめとする、多くの喪失、数えきれない失敗を経た上での成長だからこそ、重みを感じるのである。成長の実感に対して喜色よりも、ハルヒロのそれには哀切を感じてしまうんですよねえ。頑張ってる、君は頑張ってるよッ!
そして今回も十文字さんお得意の対大群戦闘である。このグリンガムシリーズでこれだけ大規模の雲霞のごとき敵群との戦闘は流石に初めてだったんじゃなかったか。ゲームの無双シリーズみたいな戦いは、それこそ一騎当千の連中でこそ形になるもので、モブキャラサイドであるハルヒロたちにとってこんな倒しても倒しても湧いてくるようなモンスターの津波は、それこそ押し流されるしかないもので、いやいやもういつ誰がやられるかわからない切羽詰まった撤退戦にハラハラしっぱなし。作者さんは、いきなしサクっと誰でも殺りかねない引き金の軽さがあるので、こういう時の緊張感はたまらんものがあるんですよね。一旦、クランのメンバーが散り散りになってしまった時なんぞ、本気で肝が冷えた。本当にピンチに陥った時には、強力なクランが援護に入ってくれたり、と運のよさもあるんだろうけれど、この引きの強さはハルヒロたちがそれだけ縁を繋いできた証拠とも言えるので運のよさだけじゃないんだよなあ。少なくとも、強キャラたちの目に入った時に助けてやろう、と思うだけの印象を、与えているわけなんだから。
決して器用な性格じゃないはずなんだけれど、ハルヒロってわりといろんな方面の人に気に入られてるんですよねえ。とはいえ、それは人間性だったりクランのリーダーとしてだったり、という方面であって信頼は寄せられても異性としては誰からもあんまり反応がなかったのだけれど、此処に来てついにミモリンというハルヒロに熱烈な好意を寄せてくれる女の子が登場……したわけですけれど、明らかになんかヤバイ系で捕食されそうだし、大女だしこれはあかんやつやー、と思っていたのですが、今回じっくり話してみると、す、凄くいい子じゃないですかー。一途で情熱的でしかし強引すぎずちゃんと乙女していて……。いい子なんですよー。でも、ハルヒロの気持ちもわかるんですよ。友達としては全然オッケーで一緒に遊んだりしても楽しいのだけれど、お付き合いするとなるとなんか違うなー、そういう気持ちにはなれないなー、というの。そんな気持ちをごまかさずきっぱりと告げるハルヒロは、やっぱり誠実なんですよねえ。クザクといい雰囲気を通り越してもうあれ付き合ってるんじゃないの? という素振りを見せるメリィに対して、ショックを受けてようやく自分の恋心に気づいて、それが既に終わってしまってる可能性が高いことにも連続して気づいてへこみまくってるハルヒロは、いわば攻め時だったはずでミモリンの告白と攻勢のタイミングは最良と言って良かったはずなんだけれど、ディフェンス固いなあこの主人公。ただ、ミモリンも粘って今後の可能性を繋いだのはよくやった、と言いたいんだけれど、ミモリン報われなさそうなんだよなあ。

ここにきて、ついに「元の世界」に戻る情報が現れるという激動の展開。そもそも、元の世界の記憶を持たない義勇兵たちにとっては、自分たちが異世界から来たという自覚すらないのだから、これはいきなり爆弾みたいな情報なんだよなあ。

シリーズ感想

サクラ×サク 03 慕情編3   

サクラ×サク03  (ダッシュエックス文庫)

【サクラ×サク 03 慕情編】 十文字青/吟 ダッシュエックス文庫

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Kindle B☆W
祝! 公女殿下(サクラ)御結婚!! 何を祝っちゃってるの? 何がそんなに嬉しいの? ねえ? きみたち本当にわかってるわけ? ふざけんじゃねえぞこら。いけない、いけない。ハイジ・バランは軍人なのだ。任務を果たすのだ。公女殿下をお守りする。しっかりと嫁ぎ先までお届けする。嫁ぎ先! 嫁いじゃうんですかあ!? そうなんです。公女殿下はご結婚されるんです。いやあ。びっくりですよ。 カバラ大王国への道中、ハイジたち随行員の命が次々と狙われる。そしてその魔の手はついに……。 血が滾(たぎ)って色々躍る大戦詩幻想交響曲(ファンタジックウォーシンフォニー)、混沌の三巻!!
本当にこのハイジ君は挙動不審で垂れ流しにされている内心ときたらサクラ姫のことが好きすぎて気持ち悪いといって然るべきなんだけれど、キョドリまくってる内面ばかり見せられる一人称の描写ばかりだとなかなかわかりにくいんだろうと思うんですけれど、客観的に見るとこの子、ハイジくんってかなりべらぼうに優秀なんですよねえ。いや、確かにコミュニケーションとりにくそうな内向的なところはある、というか前面に押し出されるように内向的すぎるんだけれど、戦闘力や決断力、洞察力やらあれこれ実戦での様子を見てると、抜擢されるだけのあれこれはやっぱりあるんだろうなあ。部下たちが手のかかる弟のように慕ってくれているというのも、決してハイジが傍から見ていて微笑ましいから、だけではないはずなんですよね。ちゃんと自分たちの命を大事に扱ってくれる、という信頼があった上で命を懸けるに足るものが彼にはある、と信じているからこそ、なのでしょう。それにしても、見る目のある出来た人たちだとは思いますが。一見すると、こいつヤバイんじゃない?と思うような子だしなあ。でも、本人は自信持ってないようだけれど、折々でちゃんと部下たちを指揮できてるんですよね。まあそれだけに、だからこそ、ハイジにとっては痛恨事だったのでしょうけれど、あれは。結果論だけれど、ハイジはそれを判断をミスった、と考えてるわけですしね。でも、へこんでもそこで心の痛みや疲弊に思考や身体を止めちゃわずに踏ん張り続けたところはハッキリ言って見直しました。もうちょっと打たれ弱いと思っていただけに。

最前線で戦い続ける立場から、急遽政略結婚の駒として他国の皇太子に嫁ぐことになったサクラ姫。同じ戦場で一緒に戦うだけでも何とか満足しようとしていたハイジにとっても、それは衝撃的な出来事で否応なく自分のサクラ姫への感情と対峙させられることになる。一方のサクラにとっても、結婚という事態を前に自分の諦観しきった感情をかき乱す存在であるハイジに対して、より深くその感情の正体が何なのかと向き合わなければならなくなるわけだ。
サブタイトルが慕情編、というのも伊達ではないのである。
結婚相手であるはずの皇太子から次々と送り込まれてくる刺客に、次々と櫛の歯が欠けたよう殺されていく随行員たち。まさに血塗れ泥まみれの花嫁行列となってしまったカバラ大王国への道行。普通、これだけ正体不明の暗殺者たちに襲われ続け、次々と同僚たちが殺されて行ったら随行員たちも動揺し、逃亡者も出そうなものなんだけれど、非戦闘員の文官も含めて最後まで規律を保ったまま士気も崩壊せずに目的地にまでたどり着くんですよね。これ、地味に凄いなあ、と感心した次第。最終的に出発時から半壊以上、3分の1も辿りつけなかったんじゃないかな。そういうむちゃくちゃな道程にも関わらず、最後まで皆サクラ姫を守り続けたというのは、やはりそれだけサクラ姫がカリスマを集めてたって事なんですよね。一般市民には殆どその知名度は浸透していないようだけれど、最前線での人気は相当なものになってたんじゃないだろうか。
実際、国王をはじめとする王家がサクラのことをどう考えているかわからないんだけれど、前線から引き剥がして政略結婚に利用しようとするだけの危険要素は積み上がりつつあった、とも言えるんだよなあ。

ラスト、かなりしっちゃかめっちゃかな展開になって、この巻で吹き荒れた殺戮の嵐がどのような意図で行われていたのか、その真意すらも有耶無耶になってしまったのか、それともこのラストの展開も含んだ上の事なのかもわからないまま次回に続いてしまったのだけれど、ある意味ここからが物語としての本番なのか。
真人、という重要な鍵も出てきましたし、とにかく次だ次。

断末のミレニヲン 2.いつか還らざる者たちへ 4   

断末のミレニヲン (2) いつか還らざる者たちへ (角川スニーカー文庫)

【断末のミレニヲン 2.いつか還らざる者たちへ】 十文字青/ so-bin 角川スニーカー文庫

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逃れ、逃れて絶望の果てにアトル達が辿り着いた剣の王国の城塞都市キャメローにも屍霊の魔の手が伸びていた…!陥るは絶対絶命の危機。現れたのは救いの手か、それとも恐るべき罠か。束の間の休息を楽しむことなど、滅びが迫るこの世界では許されない。弓手ルーイは謎めいた笑みを浮かべ、ツェン・ヨーガは怪笑し、カヤは宝石の瞳で見つめ、バーバラは微笑する。今まさに風雲急を告げる屍霊幻想一大叙事詩、極大衝撃の第二幕!
……ふぇぇ(呆気
いやもうなんというか、場合によってはこの巻でお終いなんですよね? それでこのラストって。……これもうあかんのとちゃうん!?
ぶっちゃけ、ゾンビものでここから元に戻る事が出来た展開なんて見たことないですし。
やっと辿り着いた故国の城塞都市は、既に屍霊の大群がうろつく死都となっていた。逃げて逃げて、逃げた先も手遅れで、という絶望に絶望を重ねるような展開だけでもキツいのに、そこからさらに生き残った人間同士ですら殺しあわなければならないという救いの無さ。疑心暗鬼は容易に人を狂気に追いやる。集団で狂気に取り憑かれれば、それを押しとどめるものはもう存在しない。いや、このケースだとキャメローの騎士団が狂乱に陥ってしまうのも無理はないくらい、起こってる出来事が破滅的なんだけれど。
城塞都市というだけあって、都市内部は原野や森のなかよりもよほど逃げ隠れできる場所はたくさんあるんだけれど、同時に数の暴力で逃げ場をどんどん潰されていくという事でもあり、ジリジリと履きつぶされていくようなプレッシャーが酷い。オマケにあれである。バイオハザードでいうところのタイラントみたいなバケモノが出てくるんだから、容赦呵責の欠片もない。ってか、あんなバケモン反則やないかー。死ぬ。普通に死ぬ。どうやったって死ぬ。生身の時ですら無敵超人だったような人だったのに。ゾンビものの醍醐味というのは、一つは無数の死体が無限に湧き出て押し寄せてくる、という設定であり、もう一つこそ仲間だった人味方だった人、まともな人間だった人が、ゾンビに噛まれて怪物化してしまうという展開なんだけれど、ファンタジーでゾンビものをやると、現代モノでは存在しないような無双出来るような達人超人がゾンビ化して襲ってくる、みたいな在り得ない悪夢が待ち受けているわけで。こんなんどうすんねん。
この巻では非常に強かで食わせ者な仲間が二人も増えたために、その立ち回りもあってかこれだけ追い詰められながら、最終局面まで前回あれだけ穴の空いたバケツに入れた水みたいに頻出した被害者はごくわずかに留まっていたのだけれど、正直だからこそ最終盤では一気に仲間の大量殺戮が行われてしまうんじゃないか、とビクビク構えてたんですよね。でも、あれはほんとに予想してなかった。全然考えてなかった。
この物語に「死」以外の結末は用意されていない
この強烈なアオリ文の真意を目の当たりにして、愕然とするしかありませんでした。
いやこれもう、むしろここからこそが興味尽きないんですけれど。こっからこそが、どうなるか気になって仕方ないんですけれど!!
ルーイの正体とか伏線残しているようだし、この巻では肝心の姫様が出番少なくて目立ってなかっただけに、ちゃんとヒロインとして、場合によっては主人公として頑張ってほしいところだし。さすがにこれで終わり、というのはたまらんですよ。このゾンビハザードの原因なんかもサッパリわからないままですし、どうしてこんなに広範囲にわたって一斉にハザードが発生したのか、という謎についても不明ですし。気になる所がオオすぎる。

1巻感想

灰と幻想のグリムガル level.5 笑わないで聞いておくれよ3   

灰と幻想のグリムガル level.5 笑わないで聞いておくれよ (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.5 笑わないで聞いておくれよ】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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「……で、これ、何だと思う?」
ワンダーホールに来てから数ヶ月。ハルヒロたちは少しずつ、だが着実に実力をつけて迷宮を攻略していた。
そんな時、探索中に見たことのない「穴」を見つける。
前回……たしか三日前にこの場所を通りかかったときはなかった穴。
それは未発見の新エリアかも知れず、一番乗りしたパーティには大きな利益がもたらされる。
踏み込むかどうか迷うハルヒロだったが、変わり者が多いが実力はあると評判のチームトキムネが現れ、合同での探索を提案される。
灰の中から生まれた冒険譚は、新たな出会いと共に続いていく。
もう誰も、笑わないよ。いや、ランタは笑うかもしれないが、あいつは全会一致でスルーだから。
もうだいぶ前からそうだったけれど、ハルヒロへのリーダーとしての信頼感は、もう仲間内ではすっかり定着している。モグゾーを喪った時、パーティーがバラバラにならずに変わらずハルヒロの元に集い続けた時に、その証明は済んでいる。だから、今更なんだけれど……ハルヒロが良いリーダーだって事が仲間内だけじゃなくて、他のパーティーのメンツから評価されるのを見てしまうと、なんだか無性に嬉しくなってしまった。そう、そうなんだよ。ハルヒロは凄く良いリーダーなんだよ。落ちこぼれの出来損ないの集まりだったパーティーを崩壊させず、我慢して我慢して着実に強くしていった立役者なんだよ。パーティーのみんなも、そんなハルヒロを今や信頼し切っている。し切っていると同時にその頼りなさを心細さを迷いをちゃんとわかっていて、一緒になって悩み迷って、支えてくれるのだ(ランタは除く)。ハルヒロのチームは、良いパーティーなんだよ。それを、他のチーム、それも実力を皆から認められてるチームから、性格的に決してお世辞なんか言わないような、それどころか認めていてもそれを言葉に出したり褒めたり絶対しないような相手から、ポロッと本音をこぼすように口ずさまれたことが、良いリーダーだな、と言われた事が、こんなにも嬉しいとはなあ。
クザクも、モグゾーとはタイプが違うけれど盾役としてきっちり働くようになり、今やハルヒロのチームの安定感は、見ていて安心出来るレベルに至っている。その分、危なっかしいことこの上なしの、考えなしの特攻野郎Aチームなチームトキムネの無茶ぶりに振り回されてハラハラしたけれど、ハルヒロたちが要所要所で手綱引いて引き締めてくれるのは、読んでいるこっちとしても助かった気分である。チームトキムネだけだと、果たしてドキドキハラハラで済んだだろうか……いや、実際済まなかったんですけれどね!
あの新たな未踏派エリアは敵が強い云々じゃなくて、地形効果というか不利な条件がキツすぎて、今までのフィールドの中でも段違いにヤバげだったんですが、その中ですらハルヒロたち安定してたもんなあ。ハルヒロの視野の広さはやはり特筆に値すると思う。チームトキムネみたいな癖のありすぎる連中と協力して進めるどころか、あの撤退戦では実質ハルヒロが全体指揮取ってましたからねえ。リーダーのハルヒロが前衛じゃないという要因もあるのでしょうけれど、彼には自分所のチームだけではなく、他のチームも見て抑えて指示して組み込む能力がある、というのをこのトキムネたちとの共闘で示せたんじゃないでしょうか。レイジたちのチームともある程度やれてたんだから、これは誇るべき能力だと思うんだが。
いい意味で、薔薇のマリアのマリアローズと似てきた気がする、ハルヒロは。
しかし、今回は肝心のハルヒロのチームメンバーが安定してしまったが故にか、目立つ所がなかったような。ランタだけは毎度のごとく快調ですけれど。もうちょっと自分たちにスポット当てて欲しいんだけれど、ハルヒロ視点だけだとどうしても限定されちゃうから、この辺りは仕方ないのか。そろそろ、他の娘さんたち視点の章も欲しいかなあ。ユメとかシホルとか。

シリーズ感想

断末のミレニヲン 1.君を連れてあの楽園まで4   

断末のミレニヲン (1) 君を連れてあの楽園まで (角川スニーカー文庫)

【断末のミレニヲン 1.君を連れてあの楽園まで】 十文字青/so-bin 角川スニーカー文庫

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アトルは剣の王国の勇将・父ハラルに従って兄達と共に馬の王国へと赴き、その帰り道で“異変”に遭遇する。野営の最中、まるで伝え聞く屍霊のような者達に襲われたのだ!人々は恐れ、混乱し、屍霊達が全てをのみこんでゆく。そしてアトル達の運命までも…。『薔薇のマリア』執筆の十文字青と『オーバーロード』イラストを手掛けたso‐binの二人が贈る、過激で残虐で濃密で暗黒系な屍霊幻想一大叙事詩ここに開幕!
これ、舞台こそ剣と魔法の中世世界だけれど、中身は正統派のゾンビ襲来モノじゃないですか!!
……ってあれ? でも、こうしてわらわらと群がってくる有象無象の敵を切り捨てながら必死に逃げ惑うのって、十文字作品としてはわりと御馴染みなような気がするぞ!?
薔薇マリのクライマックス近辺なんて、ずっとこんな感じだったし。つまりいつもの十文字作品ですね……と、言いたいのだけれど、薔薇マリなんかは本当に強い人は物量なんかにはまず負けなかったので、たくさんゾンビが居て群がってくる、という単純な構図に強い人も弱い人も為すすべなく飲み込まれ、絶対に勝てないというシチュエーションはなかなかグッと来るものがある。
反撃の余地のないひたすら逃げるしか無い撤退戦、なのである。
しかも、ゾンビものらしく、ガブリと噛まれてしまうとオシマイ、という凶悪な設定付き。ちょっと待って下さい、これって中世ファンタジーであって、戦うすべは主に剣ですよ? 近接戦闘ですよ? 銃じゃないんですよ? 噛まれたら、傷つけられたらいけない相手に近づいて戦わなきゃいけないんですよ?
難易度がでたらめすぎるw
しかも、でかい装甲機動車で中央突破! とか、絶体絶命のピンチにヘリで脱出! なんて手段も無論ないわけです。馬車は無理すぎる。相手のゾンビがのろのろと歩くしか出来ないようなのならともかく、このゾンビ走ってくる系っぽいからなあ。怖すぎる。
主人公のアトル・クライハートは、十文字ファンタジーの系譜に連なる、強くないどころかぶっちゃけ弱い主人公。勇将として知られるハラル・クライハートや兄であるジェレルが剣の達人として大成しているのに対して、幾ら鍛えても強くなれないコンプレックスを持ち、ついつい女の子にハアハアしてしまう軟弱者である自分に忸怩たるものを抱えている少年である。
と言っても、そんな事でウジウジしている余裕すら、ゾンビたちの襲撃は与えてくれないのですけれど。とにかく生き残るのに必死で、自分の弱さを嘆いている暇もない。未熟さを言い訳にせず、怯えて逃げ惑うのではなく、弱いなりにちゃんと戦って、父や兄を助けよう、守らなきゃならないコーデリアたちの為に勇気を振り絞る姿は一端の男の子で、充分カッコ良いんですよね。普段は厳しく弟に接してきた父や兄も、この土壇場での弟の勇気には嬉しいものがあったんでしょうなあ。彼らから発せられたアトルを褒め、誇りに思うという言葉は決してアトルが思うような慰めやお為ごかしなどではなく、あれは本心からのものだったと思うなあ。
しかし、強い人からバタバタとゾンビたちの群れに飲み込まれ、引きずり込まれていく絶望感はくるものがある。戦力的に見れば削られていく一方なわけですし、精神的な支えとしてもリーダーシップに関してもそれを持っている人が失われていく一方なわけですから。

一方で、必死に撤退戦を繰り広げる中でも絶妙の間合いで、それぞれの人物にスポットを当ててその内面にえぐりこんでいくのは、さすがというべきか。生死の極限状態であるからこそ繕う事無くむき出しになるその人の在りよう、それが醜いものばかりではなくむしろ尊かったり、正邪の区別がつけられない複雑なものだったりするのは、この場合むしろ生々しいくらいなんですよね。
そういう人間の内面を浮き彫りにしつつ、それを容赦なくゾンビの無慈悲な腐った手が引きずり落としていくのが、パニックホラーの醍醐味なのか。

それにしても、何が起こってこんなにゾンビが発生しているのかの事情が、全くと言っていいほど分からない。裏の事情や背景なども一切物語られておらず、どうやら一部の地域だけではなく国を跨いで広範囲に、それも凄まじい勢いで被害が拡大していっている、というのがうっすらと違う場所でのシーンを通じて伝わるばかり。
ハードモード過ぎて、ラストシーンからどう巻き返して、いや生き残れるのかが全く見通し立たないんですけれど。

十文字青作品

灰と幻想のグリムガル level.4 導き導かれし者たち4   

灰と幻想のグリムガル level.4 導き導かれし者たち (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.4 導き導かれし者たち】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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「驚かすなって、モグゾー」「ごめん、ごめん」
モグゾーは、あはは、と笑って頭を掻いた。でも、ものすごい血だ。血まみれで、表情もよくわからない。だけどまあ、なんとか平気そうだ。
大きな戦いを乗り越えたハルヒロたちだが、助けられなかった仲間もいて、喜んでばかりもいられなかった。
そんな中、予想外の活躍をしたことで、他のチームから引き抜きの誘いを受けるメンバーも。
リーダーとして悩むハルヒロは、改めて自分たちがどうしたいのかという想いと向き合ってゆく。
灰の中から生まれた冒険譚は、いま新たなステージを迎える!
このあらすじは卑怯だよ。絶対に無理だと突きつけながら、一縷の望みを強要してくる。あるはずのない希望をこれみよがしにチラつかせて、ジリジリと焼き焦がす。そして、改めて絶望を突きつけるのだ。
ハルヒロをして、パーティーの中で一番替えの効かない絶対に失ってはいけないメンバーと言わしめたその人であるモグゾーを喪ってしまったハルヒロたち。寄りにも寄って、である。
ただ、これを成長と言っていいのかわからないけれど、思いの外みんな今回の損失を引きずらなかったんですよね。自分は、ハルを含めてもっとみんなマイナス方向にメンタルがどん底に落ち込み、後悔と自己否定の渦に入り込んでしまうのかと思っていたのだけれど、みんな物凄く悲しみはしても、喪失感に落ち込みはしても、そこからズブズブと沈んでいってしまうことだけはなかった。例外は、事実上自分のミスでモグゾーを死なせてしまったメリィくらいのもので、ハルヒロなんかあの戦いに参加することを選んでしまった事をもっと後悔して酷い事になると思ってたんだけれど……。
幸か不幸か、かつてマナトを喪ったという経験が、チームの面々に耐性を与えていたのだろう。悲しみはある、感傷も抱える、しかし立ち止まりはしても彼らはそこから後ろに下がることだけはしなかった、割り切る事を覚えていたのだ。
その意味では、ハルヒロの考えは間違っていたとも言える。本当の意味で、喪ってチームそのものが瓦解してしまう人物は、多分ハルヒロ、なのだろう。
盾役であるモグゾーがいなくなり、チームとしての戦術が崩壊し、以前は楽に倒せていた相手もマトモに対する事が出来なくなった挙句、個々に他のチームからその実力が認められて引き抜きが掛けられた時、もう先がないと誰もが思ったこのチームに、しかしみんなが離れず戻ってきたのは誰あろうハルヒロが居たからなんじゃないだろうか。モグゾーではなく、ハルがもし居なくなっていたら、果たしてこのチームは新たなリーダーを立てて進む事ができていただろうか、と思い描いた時に、どうしてもその絵を描くことが出来なかった。本当の意味で替えが効かないのは、モグゾーではなかった……と言ってしまうのはあまりにも悲痛な事なのだけれど。
マナトを喪った時、ハルヒロがリーダーを継いだのはそうしないと、チームの誰も生き残る事が出来なかったからだ。それ以外に選択肢がなかった、といえる。しかし、今回モグゾーを喪った時、皆にはチームを離れる選択があった。それでもなお、彼らが今の仲間たちを選んだのは、だからただ生きるためではない。
一緒に生きるのだ、という絆が生まれていたのだと思えば、なんだか感傷的な気分になってしまうのだけれど。
相変わらず、ランタについては死ね、としか思えないのだけれど。それでも、ハルを含めて彼のことを嫌いながらもみんながランタへの対処法を確立してきていて、必要以上に彼に対して感情のエネルギーを浪費しないようになっているのも、これもまた成長というものなんだろうか。虚しい。
そんな中で、新たに加わった盾役のクザク。……技量云々もそうなんだけれど、盾役ってのは見た目も大きいのよね。縦にも横にも幅があり、ドスンと重みがある、揺るがない厚みがある。そんな見た目だけで、後ろに居る人達は安心感を覚えて、余裕が生まれ、行動にキレが出る。クザクの未熟さが露呈すればするほど、モグゾーがいかに理想的な盾役だったかを思い知らされるのだけれど、誰もがモグゾーとクザクを内心で比べてしまっているのだけれど、みんな言っても仕方がない事、モグゾーが居れば、というたぐいのセリフだけは決して表に出さないあたり、本当に大したものだと思う。それでも、クザクの未熟さは叩いていかないと行けない類のものなんだろうけれど。
ハルが度々気になっている部分を解消したら、もしかしたら劇的に変わる可能性はあるのかもしれないけれど。
這うように、足を引きずるように、しかし彼らは前に進んでいく。その歯を食いしばる重い足取りが、今はただ愛おしい。

シリーズ感想

薔薇のマリア 20.I love you.[noir] / 21.I love you.[rouge]5   

薔薇のマリア20 .I love you.[noir] (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 20.I love you.[noir] 】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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“原子の極大魔術士”キング・グッダーに導かれ、九頭竜型超弩級飛行戦艦マキシマムAMドラゴンに乗りこんだマリアたち。危険から脱したと安心する間もなく、グッダーは大量のエルデン市民を乗せたまま地獄へ逆侵攻する。目指すは“世界の終わり”。そしてそこにいる地獄の支配者である帝王を倒すこと。成功すれば悪魔の統率が乱れて侵攻が止まると信じるマリアたちは、最後の力を振り絞り、またしても過酷な道をゆくのだが―。



薔薇のマリア 21.I love you.[rouge] (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 21.I love you.[rouge]】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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ついに“世界の終わり”に到達したマリアたち。だが、地獄帝王の御所“終わりの果て”はいまだ遠かった。繰り広げられる悪夢のような戦い。死力を尽くして突き進む仲間たち。現実が引き裂かれ、叫び声は途切れ、溢れ返り涸れる涙、その行く先に待っているものとはいったい―!?すべての謎が明かされ、世界の真実がもたらされるとき、マリアたちは究極の選択を迫られる!ロングヒットファンタジーシリーズ、ここに堂々完結…!!

死ぬ、死ぬ、死んでいく、みんなが死んでいく。戦って戦って、戦い抜いて死んでいく。生きようと足掻いて足掻いて、死んでいく。生きようとして、生きようとして、生き残ろうとして、死んでいく。自分が生きるために? そうだろう、そうでもある。でもそれ以上に、みんなで生きるために戦って、その結果として死んでいく。
その死は路傍の死なのか。無意味な死なのか。何事も成し得なかった死なのか。失敗してしてしまった結果なのか。
違うだろう、絶対に違う。彼らの死は無駄死なんかじゃない。悲劇であり、惨劇であり、悲しみ涙すべきものであっても、それは決して無為なものではなかったはずなのだ。
彼らは絶望と戦い、生きて生きて、生き抜くために死んだのだ。
それをどうして無駄と言えよう。どうして、紛い物などと言い切れる。
ポロリポロリと掌の上からこぼれ落ちていくように、殺されていく人たち。だけれど、彼らが最後に伸ばした手は、まだ生きている人たちの足を掴むためではなく、並べてまだ生きている人たちの背中を押すようにして果てて行ったのだ。
先へ。未来へ。
それはもう歩けなくなるような絶望を押しのけるように、生きることを託すように、頑張れと応援するように。
誰もが、一度も足を緩めず、命あるかぎり駆け抜けていった。
これほど、生き足掻くために、生きるために戦って、死んで、生き抜いていった戦いを私は他に知らない。
それどころか、このシリーズが始まって、終わるまでのすべての生と死に、意味があったのだと。いや、SIXの言葉を借りるならば、意味なんかなくても意味を持たせることはできるし、意味を持たせられるってことに意味があるんだってことを、戦いが終わったあとのエピローグの光景を前にして、思い、感じ、胸に染み入る。

世界の真実は、想像を超えていた。このあまりにも生々しく、ダイナミックで匂いすら立ち込めているような、生きることも死ぬことも、あまりにも苦しげで悶えるようだったこの世界の真の姿が、まさかそんなところにあっただなんて、想像だにしなかった。
凄すぎるだろう。
まさか、まさか、よりにもよってこの世界観が、そういう事だったとは。思えば、トマトクンその人が登場時からその存在を以って証拠を提示し続けていたのかもしれない。その名前からして、考えてみれば証拠そのものなのだ。それでいて、彼こそがその厳然とした真実ではなく、自らが感じた末に選びとった真実を身に纏っていたからこそ、気付かなかったのかもしれない。
誰よりも、彼はこの世界で人々と共に生き、愛していたからこそ、読んでいるこっちも、それを疑いもしなかったのだ。
だからこそ、圧倒される。圧巻じゃないか。改めて見れば、同類項の作品は今や多々あふれている。だが、これほどのスケールを打ちたて、その視点を外から挿入されたものではなく、内から生まれたものに寄って描き出した作品が存在しただろうか。単なるファンタジーじゃなかったのだ。なんてこった。十年前だぜ、このシリーズはじまったの。最初、ウィザードリィ互換だって言われてたんだぜ。
まさか、そっちじゃなくてこっちだったとは。
そして、当初からの謎とされていたマリアの性別についても、ついに明らかにされたわけだけれど。これについては想像していた通りだったのだけれど、マリアがそうであった理由がまた度肝を抜かれる内容で、まさかそんな意味があったのか、と。いやでも、この段階でマリアが自発的に頑張ってなかったら、あの場面でマリアがあそこに在る要素なんて殆どなかったんじゃ……。キンググッダーとか、ジュジとか、その辺手配りちゃんとしてたんだろうか。

ともあれね、エピローグで全部報われた気がする。無茶苦茶たくさん死んだけれど、死んじゃったけれど、死んで欲しくない人もあまりにも沢山死んじゃったけれど、悲しかったのだけれど、それでもエピローグで、生き残った人たちの生きて頑張ってる姿を見たらね、これまで死んだ人の死は、何一つ無駄じゃなかったんだって……思うことが出来た。コロネとかね、ルカとかね、消息不明だった子たちのことも、ちゃんと書いてくれて、泣きそうなほど嬉しかった。ユリカやサフィニアが、ベティたちが幸せになれたのも、本当に嬉しかった。
生きてるよ、貴方達は紛い物なんかじゃない、確かに生きて、輝いてるよ。どこにも嘘なんてない、それをこれ以上無く、この物語をもって、戦いをもって、証明してみせたのだ。ディオロットが何を見つけ、何に希望をいだいたか、今実感している。これを守りたかったのか、これと生きたかったのか。
弱くて儚いマリアローズ、しかし勇気を持って戦い生きたマリアローズ。
Brave Heart of RED ROSE
薔薇のマリアよ。
あなたが得た生と愛の物語に、ただただ感謝を。素晴らしい物語に、ありがとうと、言い置きたい。
大好きなシリーズでした。


シリーズ感想

灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても4   

灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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ハルヒロたちが挑む、初の大規模戦闘(レイドバトル)……!

チョコって、もしかしてあのチョコ……?
思わぬ活躍で有名になったハルヒロと仲間たち。自信を付けた仲間たちと、悩み続けるハルヒロのもとに後輩となる義勇兵達が現れる。そこにはハルヒロの記憶に残る名前を持った少女もいた。そんななか、オルタナの街はオークたちの居座るデッドヘッド監視砦の奪還に向けて動き出していた。報奨金目当てに作戦参加を決めたハルヒロたちは、レンジやチョコたちと共に初の大規模戦闘(RAID)を戦うことになる。
灰の中から生まれた冒険譚は、いま大きな節目を迎える!
ラストシーンのあの挿絵は、素晴らしく効果的だった。あのイラストとのコラボレーションがなかったら、あれほど衝撃的にならなかったかもしれない。
それにしても、この作品については完全に容赦なしモードだなあ。決して展開的に無理矢理にハルヒロたちを追い込んでいるわけじゃない。ひたすらにサイコロの目がファンブルし続けるような極悪な展開をキャラに強いるような作品もあるけれど、ハルヒロたちを見舞う展開はひたすらに公平だ。良くも、悪くも。
ハッキリ言って、ハルヒロたちは予想以上に強くなっていたと思う。彼らがデッドスポットを倒して得た自信は、決して空っぽの根拠のないものなんかではなく、確かな実感とともに得られたものだったように思う。この大規模戦闘でハルヒロたちがみせた強さは本物だった。なにしろ、あれほど隔絶した差があったレンジたちのパーティーに対して、脇に徹していたとはいえ肩を並べて戦うことが出来た上に、一度ならずレンジたちのピンチを救う活躍をみせたのだから。それも、偶然やラッキーによるものではなく、ちゃんとした実力に基づく戦い方で、だ。
本当に、強くなっていたと思う。まともに戦うすべも知らずに、拙いにも程がある見っともない戦い方しか出来なかった頃に比べたら雲泥の差だ。ハルヒロの折々のリーダーとしての判断も、大きな間違いや致命的なミスは見当たらなかった。
にもかかわらず、それがどうした、と言わんばかりに現実は容赦など無く冷淡だった。
失われた過去にすがるかのように訪れた出会いを、一顧だにせず踏みにじり、決して失われてはならない、代わりの存在しない要たるモノを打ち崩す。話の流れの都合など、まるで関係ないのだ。取り返しがつかないなんて、知ったことではないのだ。そう言わんばかりに、差し出した手のひらの上から、大事なものがこぼれ落ちていく。
記憶が無いモノ同士でありながら、話している間に沸き上がってくる阿吽の呼吸。チョコの存在は、もしかしたらこの世界の謎、どうして記憶をなくしたモノたちが義勇兵となるべくこの街に現れるのか、その謎を、ハルヒロたちを正体を含めた謎を追い求めていく鍵になったかもしれないのに……。この物語は、記憶から失われた帰るべき場所を探し求める話とは、根本的に違うのか、と今になってようやく思い知った気がする。彼らにとって、過去はもう振り返る必要のない終わった存在なのだ。チョコは、過去から現れた残滓ではあっても、また共に今を生き、一緒に先に進むことの出来る可能性はあったのかもしれないけれど、あの瞬間以降の、ハルヒロの衝撃を受けながらも、しかしそれ以上取り乱さずに起こった出来事を受け止めていた態度から、ハルヒロにとっての失われた過去の重みが今となってはどの程度のシロモノなのかが、うっすらと透けて見えた気がした。だからこそ、その後の展開のほうがより重たい衝撃となって駆け抜ける。過去ではなく、今を共に生きている仲間の事だからこそ、より冷たい電撃となって背筋を通り抜けていったのでした。
これ、ほんとどうするんだろう。あまりのことに、うめき声しか出てこなかったですよ。まだ、決定的な描写があったわけじゃないから、事実関係決まったわけじゃないんだけれど。振り返ってみると、ちゃんとフラグ立っちゃってたしなあ。
ほんとにもう、気を抜けるもんじゃないわ。面白いったらありゃしない。

1巻 2巻感想

灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。 4   

灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。 (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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ネームドモンスター、デッドスポットとの死闘!

……見捨てるなんて、できない。というか、見捨てるべきじゃない、と思う。
見知らぬ世界「グリムガル」へと連れて来られたハルヒロたちは経験を積んでようやく半人前から抜けだそうとしていた。
ステップアップのために新たなダンジョン「サイリン鉱山」へと挑むのだが、そこはパーティに加わったメリィが過去に仲間を失った場所でもあった。
順調にいくかと思われたハルヒロたちの探索だったが、予期せぬ仲間との別行動を強いられ、更にデッドスポットという異名を持つ巨大なコボルドが襲いかかる。
新たな試練とともに、灰の中から生まれる冒険譚の第二章が紡がれる!
ああ、【大英雄が無職で何が悪い】のキサラギとイチカとモモヒナは、ハルヒロたちの後じゃなくて直前だったのか。あの三人、すぐに街を出て行ってしまったので、話題にはなっていないだろうとは思ってたけれど。
ちなみに【大英雄が無職で何が悪い】はウェブ公開されている上記した三人のもう一つのこのグリムガルでの冒険譚、いや英雄譚であります。正直、ハルヒロたちと同じ世界観なのかと愕然とするくらいガンガン進んじゃってるんですけどね、この子たち。本作がアリアハン近郊でずっと頑張ってるとするなら、キサラギたちは猛スピードでイシスかポルトガあたりまで突っ走ってるような勢いで、なんか見ている景色が全然違うんですよね。ハルヒロたちの目には別格に写っているレンジたちとすら、異質と言っていいパーティーになって大暴れしてますし。最初はほんとにいけ好かない口先だけの男に見えるキサラギですけれど、後半行くに連れて色んな意味でべらぼうに痛快になっていくのでオススメ。
ある意味、内向的で逡巡を続け繰り返す作者の主人公を反転させたようなキャラなんですよね、キサラギって。ちょっとした実験でも合ったんだろうか。
そして、本作の主人公であるハルヒロは、いわば作者のお手の内にあるだろう、自分に自信がなくて悩んで悩んで何度も失敗しながら、それでも諦めずに一つ一つ積み重ねていく主人公です。薔薇マリのマリアよりもひねくれてない分、素直で強がれなくて、だから苦労しそうなんですよね。なかなか開き直れない性格みたいですし、背負い込みやすいところがありますし。
リーダーなんて、性に合わない人にとっては苦痛以外のものではありません。正解が見えない中で判断を強いられ続ける、周りの人たちにあれこれと指図する、というのは大変ですし精神的にゴリゴリと削られていきます。それでも責任感が強い人は投げ出せないのです。小心で先の読める人も同じく、自分が投げ出してしまえばどうなるかを想像できてしまうと、怖くて投げ出せなくて、どんどん追い込まれていってしまうものです。せめて周りの人たちが自分たちなりに積極的にサポートしようとしてくれると、大概にして何とか回ってくれるものなのですが……このパーティーの場合、ランタが無茶苦茶に引っ掻き回してくれたものだから、行き詰まるとまではいかないものの、どうにも先行きの見えない停滞気味の状態になってしまっていました。
という風に見えたのは一方的な視点だったんでしょうね。自分勝手で口も悪く他人を口汚く罵り考えなしに動きまわるランタは、チームワークをかき乱しているばかりのように見えていましたけれど、実際は彼なりに考えていたものがあるのですから。もっとも、ハルヒロの言うように自分なりの考えというものは言ってくれなければわからないものですし、ランタの言動は本当に酷いもので、誤解されても仕方ないし誤解じゃない部分も多かったですしね。こいつはなんとかしなきゃいけない、じゃなくてこいつは排除しなきゃいけないんじゃないか、という考えが芽生えてくるのは仕方ないどころか当然だったような気がします。
もっと短絡的な、理性よりも感情を優先する子たちとのパーティーだったら、とっくに追い出されてるか後ろから刺されてるレベルだったしなあ。
しかし、大きい視点で見ると確かにランタは自分勝手ではありましたけれど、ちゃんとパーティーの一員として役立ってましたし、自分の役割というものを生み出して、そこに座ってはいたわけであります。ハルヒロは偉いですよ。なんだかんだと苦労しながら、ちゃんと視点を高く持ってランタの役割を見出していったわけですから。あの状況で好き嫌いで判断せず、常にリーダーとして考えを巡らすというのは簡単じゃありません。どれほど拙くてもリーダーであり続けようとするのは、以外なほど難しい事なのですから。メリィをはじめとする他のパーティーメンバーが、マナトの代わりに就任した頼りないリーダーであるハルヒロに対して何だかんだと大きな信頼を寄せているのは、それだけハルヒロが頑張っている事を認めている事の証左でしょう。同時に、ただ頑張っているだけじゃなくて、拙くても頼りなくてもハルヒロがちゃんとリーダーとしての役割を果たしているからこそ、みんなも彼を認めているわけです。名実ともに、このパーティーはハルヒロを中心としてまとまり、ランタという異物に対しても活用出来るだけの観点をハルヒロが持つに至ったことで、本当の意味でパーティーは結実したんじゃないでしょうか。
まだまだ弱くてみすぼらしいパーティーですけれど、こうして着実に一歩一歩前に進んでいる姿は、ちょっとまぶしいくらいです。頑張れ、若者たち。

1巻感想
 
12月2日

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11月16日

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11月15日

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(角川書店単行本)
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エンターブレイン
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