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友麻碧

メイデーア転生物語 5.扉の向こうの魔法使い(下) ★★★★   



【メイデーア転生物語 5.扉の向こうの魔法使い(下)】  友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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明かされる転生の秘密、訪れる仲間との別れ。マキアの魔法学校生活が終わる

魔法学校の終業式の日。マキアたちは空から降ってきた魔物――帝国による強襲を受けていた。突然の侵攻に防戦を強いられ、散り散りになっていく学友たち。窮地を打開するため、マキアとトールはユリシス先生の指揮で、学校に封じられた強大な力を解放することに。そして封印を解く鍵は、三人の前世にあるのだという。
黒の魔王、白の賢者、そして紅の魔女。おとぎ話の悪役として語られる、三大魔術師の転生の秘密。そして想いの一端に、マキアは触れて……。
赤く染まる“メイデーア”の空が、遥かなる物語へと繋がる。
ネロ、さすがにカノンの肉親というわけじゃなかったか。それ以上に、秘められし正体だったわけですけれど。
考えてみると、ちょっとチンピラ入ってるフレイ王子よりもよっぽどネロの方が品の良い王子さまだった気がするぞ。
集まるべくして集まったガーネットの9班。でも彼らは決して仕組まれた形で同じ班になったのではなく、みんなマキアが見つけて集めてきたメンバーだったんですよね。何の裏事情も背景もなく、ただのネロとして、ただのフレイとして、ただのレピスとして、彼らはマキアの元に集ったのだ。何の思惑もなく、彼らは仲間になり、友達になった。
戦争がはじまり、四人はそれぞれに背負った運命、肩書、使命の下に戦いに赴くだろう。それぞれ、別れ別れとなり己が道をゆくことになる。
でも彼らは決して忘れないだろう。この学園での日々のことを。四人の仲間たちと一緒に過ごしたこの楽しかった時間を。肩書も立場も関係なく、友人となった皆のことを。
ネロにとっても、レピスにとっても、フレイにとっても、マキアにとっても、この友情は掛け替えのない拠り所になるのだろう。時に孤独のうちに戦わなければならないとき、それでも大事に宿す想い出がある。決して切れることのない繋がりがある。それこそが、彼ら自身を励まし続けるのだ。
そして何があろうと、何が起ころうと、ガーネットの9班は仲間である。友達であり、味方であり続ける。
そんな切々たるネロやレピスの心情が痛いほど伝わってくる、楽しい日々の終わりであり友との別れであり、旅立ちの物語でありました。

そして、ついにマキアとトールに明かされる、二人の内に眠る真実。彼らが紅の魔女と黒の魔王の末裔……ではなく、魔女と魔王当人の生まれ変わりであるという事実。
伝説の大魔術師(ロード)クラスの転生体なのである、と。
それはユリシスも同じ立場であり、また大司教エスカやシャトマ姫もまたかつて伝説に残る偉大なる魔術師の生まれ変わりなのだという。今、歴史に刻まれる伝説の大魔術師の生まれ変わりたちが、この時代に一同に会そうとしているのだ、と。

って、ここでユリシスが学園の深層に秘められたこの世界の秘密が隠されている場所に連れてきてくれながら、待っていたエスカやシャトマ姫とともに色々と説明してくれたのですけれど……。
え? ええ!? そこまで全部語っちゃうのですか!? まだマキアとトールが覚醒しておらず、前世の記憶もちゃんと戻っていないにも関わらず、伝説に残る魔術師たちの正体と転生の謎についてまで全部一気に暴露してしまったのは、ちょっと情報量多すぎやしませんか!?
ウェブ版だとどういう展開だっただろう。そもそも、マキアたちには前世の記憶が残っていた、という前提から違ったんでしたっけか、そう言えば。にしても、前世の紅の魔女時代の様々な想い出、心残り、痛切な願いや灼熱にして後悔にまみれた恋の記憶など、様々な形で前世の物語が語られその運命の激しさを味わったからこそ、さらにその前世の前世、幾年も人生を駆け抜けていく重厚さを感じられて、その大本である創世神の物語に辿り着いたときの壮大さに打ちのめされた記憶があるんですよね。
そして、その神代の時代から続く切なる願いの壮大さを味わったからこそ、その悠久のような時間の流れの中でただ一人記憶を継続したまま使命のために命を注ぎ続けるカノンの生き様のその凄まじさ、悲壮さに行き当たってしまったのでした。
それを全部ここで一気にネタバラシ的に語っちゃうのは、巻きですか!? と、思っちゃうところなんですよね。そりゃ、前世の話だけで一巻どころで済まない気もするしなあ。
にしても、ここで全部語ってしまったのは、ちょっと余韻とか感傷とかあんまり感じられない忙しなさだった気がします。マキアとトールも実感も何もない、というか彼女たちまだ前世の記憶も思い出してないものだから、ぽかんとしてたんじゃないでしょうか、これ。
未だ、カノンがどうして彼らマキアたちを殺し続けるのか、その理由についてはすべてが明かされていないので、彼の生き様の壮絶さはそれこそすべてが明らかになった時に嫌というほど味わうことになるのかもしれませんが。それに、紅の魔女の鮮烈な生き様も。黒の魔王の後悔も。それを直接見聞きして味わうことで、ようやくマキアとトールの運命の再会の尊さを実感できることになると思うので、そのへんは次回以降の楽しみですわなあ。
しかし、ユリシス先生はハラグロ感がウェブ版よりもいや増している、というかあんなちょっとイッちゃってるユリシス先生初めてみたよ! あんなユリシス先生が実在していたのかw

そして、救世主として完全に立ち直ったアイリ。いやもうこの娘は、なんであんなドリーム状態に陥っていたのか、そっちの方が不思議なくらい、元々いい子だったのだけれど、ココに来て完全に覚悟キメて根性据えて目を覚ましてくれたので、一安心を通り越して頼もしいくらい。
今度、マキアの方がどうにも不安定になりそうなので、自分の全身全霊を賭けてマキアの事を支えてトールの事も応援してくれそうなアイリの存在は正直かなり助かるんじゃないだろうか。


Mayday Mayday Mayday 

それがこの世界の名前に込められていた叫びだという。
助けて、助けて、助けに来て!
その叫びを名前に刻んだこの世界の有り様は、果たしてどんな形をしているのだろう。10柱の創世神が、子供達が、今なお転生を繰り返している意味を、本当の意味を、まだ知ることはない。
知っているのは、ただ一人の死神だけだ。さても、メーデー、それはいったい誰の叫びなのか。


巻末には短編がいくつか。掌編と言ってもいいくらい。いや、いや、いや、マキアとトール、これお互い好きすぎじゃないですかね!? まだ幼い頃の無邪気で穢れのない純粋な好きの領域だったかもしれないけれど、ちょっとパパさんの出張にトールがついていくことになってしばらく離れ離れになっただけで、マキアに禁断症状が出てるんですが。
これ、後々トールが救世主の守護者に任命されて離れ離れになったとき、よくマキアがトール不足で枯死しなかったなあ、というくらいトール成分を常時取らないとマキアおかしくなってるんですよねえ。
トールが家を出る際、トール筆頭に家全体でこれ絶対やべえんじゃないか、という空気に染まっていたのも、二人の文通の内容見てるとよくわかりますわー。


浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。 ★★★★  



【浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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『――絶対に、連れ戻す。地獄の果てまで、お前を探しに行ってくるから。』

「茨木真紀は、まだ、助けられるぞ」ライの凶刃に真紀が倒れ、絶望に暮れる馨。そこへ助言を与えたのは、宿敵・安倍晴明の生まれ変わりである叶だった。
彼女は前世“茨木童子”の重ねた罪で、地獄に魂が囚われている。閻魔大王の判決を覆し、連れ戻せれば目覚める可能性はある、と。
一縷の望みに、馨は迷わず地獄へ向かう。そこでは姿が前世“酒呑童子”に変わり、鬼の獄卒として出世していくことになり……!?
彼岸花の咲く地獄の果て。朽ちゆく大魔縁・茨木童子――真紀が待つ、その場所へ辿り着くために。

おおっ、大魔縁・茨木童子モードの真紀ちゃん、見た目カッコいい!
前回、ライによって死んでしまった真紀ちゃん。いや、肉体的にはまだ死んでなかったものの、魂の方が地獄へと堕ちてしまったんですね。その真紀ちゃんを復活させるためには、直接地獄へと赴いて彼女の魂を連れ戻さないといけない。
こういうパターンだと日本の場合は黄泉の国へと赴くことが多いのですけれど、地獄まで行ってというのは結構珍しいんじゃないだろうか。地獄から戻る話って、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」くらいしかパッと思いつきませんしね。
つまるところ、地獄ってそれだけしっかりと組織だった「監獄」なんですよね。そこに落とされた死者は、裁判によって罪人と定められた囚人たちである以上、安易簡単にその罪を許して地獄から出してやるわけにもいかないし、勝手に抜け出したり連れ出したりしたら脱獄になってしまう。
そら簡単に地獄から現世に戻る話がないのも理解できようというもの。蜘蛛の糸の話は、仏様による恩赦あってのことでしたしね。
てっきり、真紀ちゃんは地獄に落ちようとあの真紀ちゃんなのですから、いつものごとく大暴れして地獄の鬼どもを屈服させるか心酔させて、お山の大将かみんなの姐御みたいになって地獄に君臨しててもおかしくはないなあ、と楽観的に考えていたのですが。
地獄というのは上記したようにしっかりとした組織によって運営されているもので、ならず者や無法者たちが好き勝手して暴れている場所じゃあないんですよね。ヤクザかチンピラ相手なら、真紀ちゃんが一発暴れて改心させて、という展開もあるのかもしれないけれど、地獄の鬼たちは鬼であっても獄卒というちゃんとした社会人であり、当人たち曰く社会保障制度によって守られた公務員という安定した職についている勤め人たちなのである。
いやそりゃ、真紀ちゃんと相性悪いわ。弱者を虐げている乱暴者相手に一暴れするのならともかく、真面目に働いている人相手に暴れたら、ただの悪い人だわ。
なればこそ、こういう時こそ馨くんの出番なんですよね。真面目で細かい所によく気がつくマメで責任感の強い馨くんが。まだ高校生にも関わらずバイト掛け持ちでよく働き、勤務先の評判もよく、社畜の気質もあるんじゃないだろうか、という勤め人気質の馨くんは、この公務員組織な地獄にもよく肌が合うんじゃないだろうか。というか、天職なんじゃないですか、これ?
実際、叶先生の手引で獄卒の採用面接を受けることになり、新卒として下っ端から採用された上に、その真面目な勤務態度と勤務成績から若手のホープとして順調に獄卒として出世していく馨くん。
……こいつ、前世酒呑童子で反秩序の旗頭みたいな存在だったくせに、なんでこんな組織の歯車として働く勤め人が似合う男になってるんだ?
いやこれで、ちゃんと家庭を大事にする所はしっかりしているので、家庭的だし家計を担う大黒柱としても頼もしいし、結婚する相手としては優良以外のなにものでもないんだよなあw
真紀ちゃんとしても、そのへん不満を覚えたこと一切ありませんし。

鬼が暮らす環境として、地獄は思いの外仕事環境のみならず、生活環境の方も公共福祉に至るまで完備されてて、実に暮らしやすそうなので、いざとなったら地獄の方に生活基盤持ってもいいんじゃないだろうか。獄卒の鬼のみなさん、みんなイイ人ばかりでしたしw
とはいえ、今の馨くんたちの故郷は現世であり、細かく言うと浅草こそがホームであり、待っている人たちも沢山いるのだから、夫婦で幸せになるのならやはりそこで、なんですよね。
これまで馨が知ることのなかった、大魔縁・茨木童子としての真紀の姿を目の当たりにすることで、彼女が千年以上に渡って抱えていた苦しみ、悲しみ、彼女が背負った罪と業を彼はようやく夫として受け止める機会を得ることになる。
きっと、それを知らなくても二人なら幸せになることは出来たかもしれないけれど、真紀ちゃんだけが罪の意識を背負い続けるのではなく、夫婦で分け合って背負っていけるというのはまた全然違ってくるものがあるでしょう。
叶先生、本当にこの二人には何の憂いも蟠りもなく、幸せになって欲しかったんだなあ。そのために、随分と胡乱で面倒くさい手順を踏むことをしていますけれど、いちいち説明しないのって変に言っちゃうとシナリオ通りに進まないから、というのもあるんだろうけれど、この人説明するのが面倒くさいと思ってる節があるように見えるんだけどなあw
おかげでやたらと胡散臭く見えてしまうけれど、仕方ないよね、胡散臭いし。まさか、こんなに裏表なく真摯に二人のことを思い遣っていたとは思わないじゃないですか。胡散臭いし。性格悪そうだし。いや、性格歪んでいるのは間違いじゃないでしょう、この人の場合w
ともあれ、ミクズの本当の目的もわかり、どうして彼女が裏切ったかの理由も理解できたので、だいぶ全体すっきり晴れた気がします。叶先生の正体の方もはっきりしましたしね。

なんか、次の展開浅草を離れて京都の陰陽師の学校での学園編開始! みたいなネタフリもあったのですけれど、シリーズとしては次回が最終巻なのか。学園編、真紀ちゃんが悪役令嬢ばりに暴れてくれそうで、結構読んでみたいんだけどなあ。


メイデーア転生物語 4.扉の向こうの魔法使い(中) ★★★★   



【メイデーア転生物語 4.扉の向こうの魔法使い(中)】  友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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首席を目指すマキアに立ち塞がるものは――? 魔法学校の期末試験、開始!

同盟国が集い、帝国の脅威に備えるなか、ルスキア王子たちの絆を繋いだマキア。安心したのも束の間、今度は救世主アイリが失踪し、トールとともに捜索に駆り出されることに。だがそんなマキアにもう一つの戦い、魔法学校の期末試験が目前に迫っていた。
いつもは頼もしい班員たちも、この時ばかりは首席を争う好敵手。次々と難題をクリアし、待ち受けていた最終試験・精霊探しゲームで、マキアは学校に隠されていた秘密の部屋を見つけて……?
“メイデーア”の命運を握る者たちに、等しく試練の日が訪れる。

くあーーっ、イイ所で、イイ所で終わったー!!
上中下の中編だから仕方ないんだけれど、電書で残りページとか確認する間もなく没頭して読んでいたものだから、ユリシス先生の大見得切りでぐおーーっと盛り上がった所で次回へ続く、と来ましたからねー。マジで次回早くしてください。

救世主のアイリが引っ掻き回してくれた件、マキアが自分の前世を明かすという爆弾を投じてアイリの事を諌めた、叱った、喧嘩吹っかけたのもあって、ルスキア王国内の混乱にも一区切りがついたと言ったところでしょうか。ギルバートとフレイの王子同士の拗れた仲にも一つの区切りがつきましたし。
落ち着いたからこそ、ここでマキアから離れて救世主の守護者となってたトールの側の心境を語るタイミングになったのでしょうね。これまで、トールを思いずっと寂しい気持ちを抱きながらトールの事を追いかけていたマキアが描かれていましたけれど、トールの方もずっと寂しい思いをしていたんですね。
トールにとってマキアの存在がどれだけ大きいか、オディリール家がどれほどトールを家族として迎えてくれたことが心の支えになっていたのか。だからこそ、そこから引き離されたトールの寂しさは取り残されたマキアに勝るとも劣らないものだったのでしょう。
ましてや、追いかけてきてくれたマキアは、しかし魔法学校でちゃんと自分の居場所を作り、掛け替えのない友人を作ってしまっている。オディリール家で過ごした日々を懐かしみ、あの日々に戻ることを願っていたトールと、我が家を出て自分を追いかけるためとはいえ新しい道を歩き始めたマキアとでは微妙なすれ違いが生じていたことを、トールは敏感に感じ取っていたんですね。
マキアはもう、過去に巻き戻されることを望んではいない。自分以外にも、失いたくない大切な人たちを手に入れてしまっている。いつしか、置いていかれているのは自分の方なのだという現実を、この青年は実直に直視ししている。目を背けることも否定することもなく、事実をそのまま受け入れいている。締め付けられるような寂しさに苛まれながらも、大切なお嬢に掛け替えのない友人たちが出来た事を素直に喜び祝福できるトールは、だからこそイイ男なんだよなあ。
でも、トールは少し勘違いしている。あの懐かしい日々に戻りたいともう思っていなくても、マキアの進む先にトールがいない事は絶対にないのだから。マキアがもう幼い日々に未練を持っていないのは、過去に抱いていたトールへの想いよりももっともっと今のほうが熱く強く限りないものを、今のトールに抱いているから。
過去に戻りたいと思わないのは、それだけトールとの関係に新しいものを、もっともっと先に進んだものを、求めているからなんですよねえ。
ネロやラピスやフレイに抱いている特別と、トールに注がれている特別は、根本的に違うものなのだということを、まだトールはよく感じ取ってはいないのだろう。
それは、これから穏やかに二人の時間を紡いでいくことで、ゆっくりと育てていくべきものだったのかもしれない。
しかし、世界の運命はそんな悠長な時間を彼らに与えてはくれなかった。

急転直下、平和だった時間はあまりにも突然過ぎる魔物たちの襲来に寄って打ち砕かれる。お祭りみたいな試験の結果発表会が、突如行われた帝国による侵入工作によって争乱の只中へと放り込まれたのだ。
そんな混乱の渦中で明らかになる、ラピスのトワイライト一族の生き残りとして抱く自分を見失うほどの復讐心、そして謎深かったネロの正体の一端が明かされることになる。
いずれにしても、彼らを取り巻く状況はとめどなく加速を続け、もう戻れない所まで押し流されていってしまった。たとえ、この争乱をくぐり抜けたとしてももう二度と、あの穏やかな学校での時間が戻らないことを明示するように。
白の賢者の生まれ変わりとして、ついにそのベールを脱ぐユリシス先生。そして、彼に導かえるように、かつて扉の向こうの魔法使いと呼ばれた偉大なる魔人たちの目覚めの時が迫る。

そんな中でこれまでダメさ加減を晒し続けていたアイリが、ついに救世主として立つ。夢見る少女としてではなく、現実に向き合い恐怖に震えながらそれでもなけなしの勇気を振り絞る、只人の救世主として。皆の希望として、皆の怯えを引き受ける柱として、マキアとトールに本当の意味で向き合える人間になるために。
思わず頑張れ、頑張れ、と応援したくなるようなアイリの奮起は、彼女の成長は、この物語の大きな柱の一つなのでしょう。

いずれにしても、次の巻こそがこのメイデーアをめぐる物語の本当のはじまりになるのでしょう。いや本当にいいところで終わってしまったので、早く続きを出してくれないとたまんねーですよ!


メイデーア転生物語 3.扉の向こうの魔法使い(上) ★★★★   



【メイデーア転生物語 3.扉の向こうの魔法使い(上)】 友麻碧/ 雨壱 絵穹 富士見L文庫

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戦いに備え動き出すメイデーアの国々。落第王子の秘めた想いは誰がために?

『何度生まれ変わっても、俺はお前を必ず殺す』かつてそう告げて“前世”の自分を殺した金髪の男と、巡り会うマキア。フレジール皇国の将軍カノンと名乗る、その男の転生を恐れるマキアをよそに、救世主アイリと守護者の旅立ちに向けて、ルスキア王国に同盟諸国の王たちが集おうとしていた。
いっぽう魔法学校では、第一学年最後の班課題が発表される。マキアたちの班も高評価を目指して活動をはじめるのだが、留年生のフレイがいつになく上の空で……?
落第王子の想いが解かれたとき、“メイデーア”の運命の扉が開く。

シャトマ姫、いや女王陛下だから姫じゃないんだけれど、作中でもちょっと触れられているけれど、この人って陛下じゃなくて姫なんですよねえ、なんでか。いやそれ以前に、シャトマ姫というよりも最初から藤姫なんですよ、この人って。なぜか「藤姫」の方が前面に出ている感じで、ついついこの人の事は藤姫と頭の中でも呼んでしまう。
ともあれ、前世の地球でマキアとトールを殺した男、カノン将軍の登場である。そりゃマキアも怖がるわさ、自分殺人犯ですよ。それがしれっと現れるのですから。これで、カノンの方が殺した記憶がない、とかならまだこう対等な立場から記憶が戻るまで交友を深めて、いざ記憶が戻る時に殺人の記憶に苦しんでー、とかいう展開になるのですけれど、このカノン将軍と来たらズケズケとマキナに近づいてきて真顔で、お前を殺す、また殺す。何度でも殺す。という殺人予告までかましてくるわけですから、怖いよ、そりゃ怖いよ。
これで感情的に憎悪や怒りが含まれていたなら、マキナの方も自分なんかしただろうか、と思う所なんだろうけど、無表情に淡々と必要だから殺す、という機械的な感じですからね。殺すというよりも、食肉処理される、みたいな感じですし理由もわからない以上どないせいっちゅうねん、てなもんですよ。
トールの方は前世覚えてないですし。自分だけでその恐怖を抱え込まないといけない。でも、覚えてなくてもマキナが怖がっているのを察してくれたトールが、庇ってくれるのは女の子としてはもうたまらんくらい嬉しいんでしょうけどね、このナチュラルイケメンめー。
しかしカノンの方も殺す予告をしておきながら、決してマキナたちの歩みを止める存在ではないのである。立ちふさがる壁でも追いかけてくる断罪者でもなく、進む道を途絶させる者でもない。
それどころか、彼こそが導く者であるということは、マキナに殺すと言いながらその前にたどり着くべき真実があると告げて、そのために行かねばならない場所がある、と指し示してくれるわけである。
このあたりの複雑な立ち位置が、通り一遍のキャラデザインじゃあないんですよね。

明確な敵として暗躍し、優しい人たちを陥れて、多くの者を不幸にしているのが「青の道化師」と呼ばれる謎の存在。それに比べたら、カノン将軍というのはかつてマキナたちを殺した存在にも関わらず、そして今も殺すと言ってはばからないにも関わらず、決して敵ではないんですよね。
そして、カノン将軍を伴って現れたシャトマ姫こと藤姫さま。藤姫という存在は数百年前に存在した大魔術師の名前でもあるのだけれど、そういう過去の大英雄、大魔術師を彷彿とさせる存在が今また一人また一人と現れ、集結しつつある。過去が、今に追いついてきているように。
一方で、今現在ここで生まれ生きている人々にとっても、差し迫る戦争の影は暗い影を落としつつあるのだけれど、今現在の人々の希望である救世主アイリは、さてそろそろ馬脚を現してしまった、というかどうしてあんなドリーム小説ばりの妄想抱いていたんだろう。ともあれ、夢から覚めてしまえばこの異世界だとてただの現実だ。すべてが都合よく転がっていく夢の世界なんかではない。だからといって不貞腐れるのはどうしようもない選択だと思うのだけれど。
それはそれとして、ギルバート王子の扉越しのプロポーズはまー女性陣には大不評だったご様子で。プロポーズするのに顔も見ずに外から一方的に、なんてのは言語道断、ぶっちゃけあり得ない、ものらしい。いやギルバート王子としては、アイリが救世主扱いされなくなっても、自分は味方ですよ、と伝えたかったんでしょうけど、うんまあプロポーズまではやりすぎですよね、うん。
彼が対人能力あんまり高くない、というのもこの一事をもって伝わるのかもしれない。ここから、ギルバートとフレイの兄弟の仲が拗れている要因にも飛び火していくんですね。
元々、異母兄弟ながらギルバートの母である正妃に実質育てられたフレイは、正妃とギルのことを慕い敬愛していて、幼い頃は特にギルとは仲良かった、というのはなかなかの驚きの情報でした。
それがまあ、正妃さまの死と前後してえらいこじれるはめに。これ、正妃殿下は意図的にこじれさせてるっぽいんですよね。亡くなる寸前にフレイにそんな言い方して突き放したら、そりゃフレイだって傷ついてグレるのも当然じゃないですか。その上、ギルバートにはフレイの事を頼むなんて言い残して。実の息子としては思う所あるでしょう、これ。なんかギルの婚約者だったベアトリーチェにも、こっそりギルバートの事をお願い、と託していたみたいで、彼女が変にギルにべったりするようになって仲拗れちゃったのって、それが原因じゃないんだろうか。
ともかく、なにやら各方面に歪みを生じさせてしまった正妃さまの所業なのですが、この人限定的ながら未来視の能力を持っていたそうで、やっぱり意図的にこういう構図になる事も了解した上でのこのだったんでしょうかね。実際、グレたおかげでフレイはマキアたちと同じ班になる事になったわけですし。
マキアが中心にフレイとギルバートの和解に奔走することになって、それが叶うというのもある程度見越していた、という事なんでしょうか。それはそれで結構ひどいなあ、と思うのですけど。フレイ、随分長い間傷ついてましたし、愛する家族から嫌われ憎まれていたと思って苦しんでいたわけですし。
あと、自分のために奔走してくれたマキアのこと、めっちゃ気にしちゃいだしてますよね。それも予定の範疇ですか? なんか、トールに対して牽制しだしているんですけど。それは道ならぬ、ってやつだよフレイくん。

ちょっと予想外だったのが、ネロの人間関係のほうで。まさかのカノン将軍の身内だったのか。いや、旧作ではネロという子は居なかったですし、確か。カノンは極めて孤独な存在で、そこに寄り添う形のキャラクターは見当たらなかっただけに、ネロがどう絡んでくるのか予測が難しくてかなり気になる立ち位置なんですよね。ラピスもそう遠くない未来にその血の因縁が明らかになってくるでしょうし、マキアのチーム誰も彼も一筋縄ではいかないメンバー揃いだなあ、これ。

かくいうそのマキア当人とトールの方も、いい加減自分達の真実に首まで浸からないといけない時期に差し掛かっているのでしょうけれど。なにしろ、ユリウスが積極的に画策しているからなあ。覚醒の時は近し。そして、アイリが実は斎藤くん推しじゃなくて、むしろ小田さん推しだったとは。
アイリがすべてを理解するきっかけが「ツナマヨ」というのは、なんというかさすがはマキナ、やっぱりマキナ、というべきなのかしらこれ。


かくりよの宿飯 七 あやかしお宿の勝負めし出します。 ★★★★   



【かくりよの宿飯 七 あやかしお宿の勝負めし出します。】 友麻碧/ Laruha  富士見L文庫

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あやかしの営む老舗宿・天神屋で食事処を切り盛りする葵。秋祭りでの営業も盛況のうちに終わり、隠世の中心・妖都へ出張の大旦那様を見送った。ところがその帰りを待つ葵たちの前に、天神屋を目の敵にする大物あやかし・雷獣が現れて、不吉な宣言を下す。鬼神の大旦那はもう戻らない、この雷獣が新たな大旦那となるのだ、と―。天神屋史上最大の危機!銀次たち従業員は団結して動き出す。そして葵も大旦那様を捜すため、妖都へ向かう宙船ツアーの屋台で料理を振る舞うことになり…!?
そうかー、ちょうどアニメ化決まった頃だったのか、この巻出たの。なんやかんやと間があいて随分と積んでしまった。
大旦那様が行方不明になって、今までになく元気なくなってしまう葵。これまでどんなピンチに陥ってもめげずに前向きだった彼女。この隠世に突然事情もわからず連れてこられた時だって、奮起して頑張っていたのに。こんなに不安そうに心細そうにしている落ち着かない葵は見たことがなかったので、随分と読んでるこちらも心揺さぶられてしまった。
いつの間にかこんなにも、大旦那様の存在は彼女にとって重く大きくなっていたのだなあ、と実感してしまう。天神屋自体も大混乱に陥るかと思ったら、そこは白夜さんが取りまとめて方針を示し、それを若旦那の銀次さんが取り回して、他の幹部たちもどんとそれを腰を据えて受けて、と意外なほど混乱なく大旦那不在の状況に対処しはじめたのはちょっとした驚きでした。いや、それだけ幹部連中は頼もしい人揃いだったということでしょうし、個々の持っていた不安要素は何だかんだとこれまでのエピソードで解消されていた、とも言えるのでしょうね。それでも大旦那不在が長く続けばどうなるかわからないものの、当面は落ち着いて凌げそうとなり天神屋そのものの経営には気を回さず、葵の不調の回復に集中できることに……。
結局、葵は自分が大旦那さまを助けることに、天神屋に危機に何が出来るのか。大旦那の帰る場所を守れるのか。料理を作るしかできない自分が、果たして何の役に立てるのか。料理を作っているだけでいいのだろうか、という疑問が湧いてきてしまう時点で地に足がつかなくなってるんですね。

そう、果たして葵が料理を作ることにどういう意義があるのか。家庭料理の延長でしかない彼女の料理が、何をもたらしてくれるのか。それを葵自身が改めて見つめ直す機会だったように思います。
そのための、同じ人間で妖怪に嫁ぎ幸せに暮らす律子さんの元で過ごす日々であり、拒食しつづける幼い王子竹千代への、ご飯を食べることの素敵さを伝えるメッセージであり、かつての大旦那の同志であり伝統を掲げる菓子職人のザクロとの邂逅だったのでしょう。
これまでになく、痛烈に葵の料理の意義を否定するザクロの言葉に葵があまり動揺せずに済んだのは、竹千代の言葉もあったのでしょうけれど、この子の言葉が思い出させてくれたこれまで葵がこの隠世でどのように料理を提供し、どんな妖怪たちにそれを食べてもらい、どんな風に喜んできてもらえたかをちゃんと受け止めていたからなのでしょう。
敵対と言っていいほどバチバチ争っていた折尾屋が、今となっては葵が向こうに行って色々とやらかしたお陰で、今はこうして中央とガチンコでやりあおうかという状況になってもドンと構えて味方になってくれていう、という時点で葵のやってきたことの意義は示されていたとも言えるわけですしね。
もう、葵は自分が料理を作りそれを食べてもらうことへのスタンスを、これまでの経験体験から固めることが出来ていた。今回の一件はそれを改めて見直し、自覚を自信を持って成し続けるために必要なプロセスだったのでしょう。
まだ大旦那様は戻れないし、その正体を暴かれることで大変なことになるという危機は続いているものの、葵の覚悟さえ決まっていればあとは何とでもなりそうなだけに、一山越えたと言えるのでしょう。
何より、大旦那様不在でも白夜さんが頼もしすぎるからなあ。妖王さまにも真っ向から意見できるという謎の存在だった白夜さんの過去も明らかになった回でしたけれど、既婚者だったというのが発覚して大混乱に陥るみんなの姿に苦笑である。でも、その奥さんが天神屋に務める前に亡くなってるとはいえ人間の女性だった、というのはちょっとした驚きでもありました。なるほど、異種婚の実践者であり肯定者でもあったのか、白夜さん。それだけに葵を見る目は厳しくもあり、優しくもあったのか。
次はまた妖都を一旦離れて、天神屋で特に仲の良かった一人である春日が嫁いだ北の地に協力を求めて訪れることに。となると、今度は北方の寒冷地や雪国の料理が出てくるのかしら。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 八 あやかし夫婦は吸血鬼と踊る。 ★★★★   



【浅草鬼嫁日記 八 あやかし夫婦は吸血鬼と踊る。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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千年の忠誠と思慕を胸に秘め、吸血の鬼と「最強の鬼嫁」は競い合う!

茨木真紀は、かつてあやかしの国を治めた鬼姫“茨木童子”の生まれ変わり。前世の夫“酒呑童子”だった天酒馨らとともに暮らす浅草で、毎年恒例のお祭り行事を心待ちにしていた。
しかしその喧騒の裏で、吸血鬼による事件が見え隠れしはじめる。前世の眷属で吸血の鬼である凛音を心配する真紀だが、その凛音に真紀自身が攫われてしまった。
浅草に帰るため、在りし日の仲間と刃を交える真紀。それはやがて、茨木童子と凛音が出会った千年前の勝負の日々を、二人に思い起こさせて――。

凛音、この子一番眷属でもしっかりした子だったんじゃないか。
人間になった真紀と再会してからも、敵なのか味方なのかあやふやなポディションで西洋の吸血鬼のコミュニティに属したまま、意図の読めない行動を繰り返してきた凛音。基本的には真紀のことを気遣っているのは確かなんだけれど、攻撃的な姿勢は否めず、そのどっちつかずな態度がどうしても凛音という子の不安定さ、のように見えてたんですね。
最初の方の事件で、眷属だった深影が茨姫の喪失に参ってしまって道に迷っていた、という印象も大きいのでしょう。西洋吸血鬼のコミュニティに深く足を突っ込んでしまっていて、余計な柵を抱え込んでしまっているように見えていた事も多分に影響ありました。
茨姫という柱をうしなって、凛音もまた長く長く彷徨っていたのではないか。自分が何をしたいのかわからないまま、悪い吸血鬼なんかとも関わってしまって、押し流されるようにここまで生きてきてしまっていたのではないか、そんな心配をしていたんですよね。
とんでもないことでした。まったく不要の心配でした。
ある意味スイ以上に、凛音は芯のしっかりした子でした。彼がもっとも、酒呑童子と茨姫の理想を継承して、想いを引き継いで自分の意志で歩いていた子だったのです。
勿論、内心は不安や怒り、自分のどうしようもない無力さに懊悩しながらで自分では迷い流され定まらないまま生きてきたように感じていたのかもしれませんけれど、傍から見れば彼の生き様はずっとブレないまま貫かれてきているんですよね。
日本を離れてヨーロッパを旅して回っていたのも、彷徨っていたというよりも日本という国に囚われずに広く見聞を広めていたとも取れるし、そこで虐げられた弱き西洋のアヤカシたちを救い守り、シェルターと呼ばれる庇護の空間に匿って回っていたのは、それこそ茨姫たちの想いを引き継いでそれを守り続けた結果でしょうし、結局大江山で潰えてしまった理想を凛音は広く世界で実現していたとも取れるんですよね。
吸血鬼のコミュニティに参加していたのも、流されての結果ではなく明確な思惑あってのことでしたし、何よりこの子、真紀ちゃんへの忠誠については最初から一切ブレてなかったんだよなあ。吸血鬼のコミュニティに属したのも、最初から真紀ちゃんを守るためだったわけですし。
それに、一人で抱え込んで突っ走っていたわけではなく、ちゃんと各所に根回しもしていて凛音の勝手な暴走、という形ではなくちゃんと計画的な対吸血鬼戦を構築するその主導を担っていて、頼もしいのなんの。
そうだよね、こういう場合暴走するの真紀ちゃんの方だよね。その辺一番理解していて、真っ先に彼女の身柄抑えたのは確かに正解である。真紀ちゃんも自覚あるので、話を聞かずに勝手に逃げ出すこともせずに大人しく凛音に従ったのは、彼への信頼を伺わせる。うん、人狼の子たちと同じく自分も真紀ちゃんもっと暴れるかと思ってたよ。
凛音の真意がどこにあるのか。彼の本心の奥底でうごめいているものが何なのか。彼が真紀ちゃんをどう思っているのか、ようやくそれを吐露してくれた。或いは、それは胸に秘めたまま口に出してはいけない思いだったのかもしれないけれど、それを言わせて肯定するのが真紀ちゃんの器なんですよね。
ある意味、凛音は茨姫という存在に今なお囚われているのでしょう。囚われて、自分の狭い世界を作ってしまってそこに閉じこもるのではなく、それを基軸にして広く大きく大成してみせたのが凛音の凄さだったのかもしれませんけれど、しかし茨姫が人間として転生し再び彼の前に現れたことで、彼はもう一度愛した人を喪うだろう苦しみを得ることになってしまった。
ここを、真紀の人生を見送ることを茨姫に囚われた凛音の人生の集大成にするべきだと、真紀は感じ取ったのでしょう。彼が自分を愛することを認めてあげることで、自分が幸せになり人生を終えたときに、彼が喪失に潰れることなく今度こそ自由に羽ばたけるのだと信じたからこそ。信じられるだけの大成を、彼が見せてくれたからこそ、わりと残酷にも見える凛音の愛を認め、しかし受け入れない宣言をやってのけられたのでしょう。
凛音にとって、それが一番報われることだったんですよねえ。可哀想とか報われない愛とかじゃあないんだ。ああ言って貰えることこそ、凛音にとっての本懐だったんじゃないでしょうか。

とか、言ってる側から早速ああなっちゃうのって、真紀ちゃんひどいw いや、真紀ちゃんが悪いわけじゃないんだけど、自分の生涯を見守れといった端から はい終了、お疲れ様でしたー となってしまったのはひどくないですか!?w
いやほんと、真紀ちゃんやられた側だから文句言われる筋合いまったくないんだけど。馨以上にこの展開は凛音がいささか可哀想になってしまった。
なんだかんだ、真紀ちゃんがいった先で大人しくしてる姿が想像できないから、というのもあるのですが。いやこの娘、地獄だろうと煉獄だろうと絶対大暴れして向こうの人たち困らせるか半泣きにさせるに違いないんですからw
まあそれが楽しみでもあるのですけど。

友麻碧作品感想

メイデーア転生物語 2.この世界に怖いものなどない救世主 ★★★☆  



【メイデーア転生物語 2.この世界に怖いものなどない救世主】 友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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“世界で一番悪い魔女”の末裔マキアは、“救世主の守護者”となり引き離された元騎士のトールと、舞踏会で再会を果たした。ところがマキアに守護者の印が現れたことで、事態は一変。“救世主の少女”アイリの相談役として、王宮通いを始めることに。トールに会えるようにはなったものの、使命の前に力不足を感じたマキアは、魔術師として成長するため魔法学校の授業に励む。だが救世主を狙う刺客は、否応なくマキアの前にも現れはじめ…。魔法世界“メイデーア”に選ばれた者たちの物語が交差する。

マキアが精神的にも弱っていて、凄く繊細で儚げな女の子になってしまってる。パワフルで前向きでガンガンいこうぜ、な元気いっぱい天真爛漫なマキアさんが、えらい落ち込んでしまって俯いてため息をついている様子を見るのは、やはりつらい。傍若無人なくらいにドーンと胸を張ってトールを引っ張り回すくらいの彼女が好きだから、やっぱりつらい。
でも、“世界で一番悪い魔女”も前作ベースだとしたら、わりとこう肝心な所で内気というか、大事な所で引っ込み思案になってしまう所があったし、精神的にも決して強いわけではなく恋に対して凄く臆病な所のあった人でしたから、こうもマキアとトールの間を引き離そうとする境遇が舞い込んでくると、そりゃ落ち込んでしまうわなあ。へこむし、不安を振り切れなくなる。
守護者になる、ということはトールと同じ立場に立つということで、離れ離れになっていたのがこれで一緒に居られるようになるんじゃないか、とも思ったのだけれどそう簡単な話ではなかったんですね。守護者とは、他のすべてを排して何よりも救世主を優先して守るもの。勿論、トールはいざというときマキアではなく、マキアを見捨てても救世主であるアイリを守らなきゃならないし、アイリを差し置いてトールとマキアで仲睦まじく、なんて真似をしてもいけない。
救世主をこそ、唯一無二としなければならない。
そんな守護者という役割が、むしろ今まで以上にマキアとトールの距離を引き離してしまうことになる。お互いに、こんなにも求めあっているというのに、手を伸ばしてお互いを抱きしめようとしているのに、彼らはこうして分かたれてしまう。
魔法学校で頑張って良い成績をとって、少しでもトールのそばに居られる役職につこうと頑張っていたのが、余計に変な形ではしごを外されたようになってしまい、踏み出すべき地面がかき消えて宙を掻くみたいになってしまったのも無理からぬことだろう。
それでも、トールに自分と救世主の二者択一を迫ることのないように、トールが自分を守る必要がないようにもっと強くなるのだ、と自他に宣言するマキアだけれど、どうしても無理しているようにしか見えなくて、痛々しいんですよね。前向きに奮起して頑張ろうというのなら、どんな無理でも無茶でもなんとかしてしまいそうなバイタリティのある娘なんですけど、今回のこれは空元気のようでほんとにツラい。
今となってはラピスたち魔法学院の同じ班のメンバーが心の支えだ。事情を知らずとも、マキアを心から応援してくれる彼らの存在こそが、マキアを支えていてくれる。他にも何だかんだとユリウス先生をはじめとして味方も多いのが幸いなのだけれど、肝心の救世主のアイリがマキアを絶対的に敵視しているものだから、否応なくトールとの間を引き裂くお邪魔虫になってくる。何より、その姿勢が陰湿なんですよね。それでいて、自分が被害者、弱者のように振る舞っている。
元々、マキアの前世と友達だった頃からあちらの地球でも陰鬱な内面を煮込んでいたみたいだけれど、こうなってくると果たして挽回の余地があるんだろうか。
一方で、株を爆上げしたのが傲慢令嬢だったベアトリーチェである。そのプライドの高さが彼女に品位をさげるような行動を許さなかったのか。ギルバート王子に後ろ足で砂をかけられたような状況であったにも関わらず、恨み言を一言も言わずに毅然と「諦め」てみせた上に自身の身内である執事を全霊をもって守ろうとした姿勢は、敬するに値するものでした。マキアも琴線に触れるわなあ、これ。だからこそ、ベアトリーチェを信じられたのだろうし、最後まで決して疑うことなく自分を信じて守ってくれたマキアに対して、ベアトリーチェのあの何があろうと自分は絶対に味方になる、助けるから、という宣言はホント、胸が熱くなる頼もしい言葉で、色々と弱ってたマキアにとっては嬉しいどころじゃなかっただろう。あんな風に決然と言ってのけれるベアトリーチェはホントかっこいいですわ。

マキアも、いつまでもグジグジとしていられず、このメイデーアの世界を、そこに生きている人たちの意志や尊厳を蔑ろにして悪びれない、悪いとも思っていない、そもそも人だと思っていない、自分の都合の良い物語としてしか捉えようとしていない現実から目を背け続けるアイリに、一発かましてやった展開には、やはりスカッとするものがありました。いっぺん、誰かがバシッと言わなきゃいけなかったところですし。一歩引いたままではなく、敢えて前に踏み出し、かつての親友として、恋敵として、真っ向からアイリと向き合って喧嘩する覚悟を決めたマキア。それは、前に踏み出したということ。やる気になったということ。まだまだ迷い落ち込み弱気になることもあるでしょうけれど、マキアらしいパワフルにガンガン行く姿が、この覚悟を持った今なら見られる気がします。
というか、あのヤンキー司祭なエスカがついに登場してマキアに絡みだした以上、お尻蹴っ飛ばしてでも俯いていられなくしてくれそうですが。このヤンキー兄ちゃんは色んな意味で頼もしいからなあ。
藤姫もまたその姿を現し、悪役たる道化師もまた暗躍をはじめ、そして最後にあの「本物」が現れる。
メイデーアという世界の物語が、歴史上の英雄たちの再臨によってとうとう本格的に動き出してきたぞ。


メイデーア転生物語 1.この世界で一番悪い魔女 ★★★★   



【メイデーア転生物語 1.この世界で一番悪い魔女】 友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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魔法の息づく世界“メイデーア”。辺境貴族の令嬢マキアは、騎士の少年トールとともに、魔法を学ぶ日々を過ごし、強い絆を育んできた。ところがトールが異世界から来た“救世主の少女”の守護者に選ばれたことで、二人は引き離されてしまう。トールの不在に動揺するマキア。だが王都の魔法学校に行けば、再びトールに会う機会がある。彼に抱いた想いの正体を知るため、マキアは最高峰の魔法学校を目指す!これは“世界で一番悪い魔女”の末裔マキアが、自身の想いを伝えるための、長い物語のはじまり。
かつてこの作者さん、「かっぱ同盟」という名義にて富士見ファンタジア文庫から【メイデーア魔王転生記】というシリーズを出してらっしゃったんですよね。結局全2巻しか出なかったのですけれど、ウェブ版では元々【俺たちの魔王はこれからだ。】というタイトルで大長編としてすでに完結しているのですが、それはもう壮大な物語だったわけですよ。
なので、本作は新装版として改めてシリーズ化されたのかと思っていたのですが、あらすじ見るとなんか違うんですよ。F文庫版の【メイデーア魔王転生記】もウェブ版からトール視点でだいぶ改稿がされてたんですが、なんかそれどころじゃない展開の変化があらすじから伺えて、あれもしかしてこれただの新装版じゃない? と思ってた所で実際内容を読んでみて、度肝を抜かれたわけですよ。
あれ? なんか全然ストーリー違うよ!? キャラの立ち位置もなんか全然違うよ!? というかこれもう殆ど新作じゃね!?
というわけで、おそらく基幹となる設定や過去の歴史とかは共通しているであろうけれど、それ以外の大部分をザラッと総浚えして改めたと思しき、全く新たなメイデーアワールドのはじまりなのでした。
ってか、マキちゃん主人公じゃないですかー!
紅の魔女本人ではなく、あくまで紅の魔女の末裔という意識のマキアさんですが、そのとりあえずはガンガン行こうぜな生き様は変わることなく、その方向性も離れ離れになってしまったトールに再び会う、という一点に絞られてしまったためにそのパワフルさが目標に向けて集約されてしまうことに。
凄いぞマキちゃん、初っ端から恋する乙女全開じゃーないですか。理不尽な理由で引き離されてしまった想い人、そんな境遇に打ちひしがれるのではなく、自力で彼のもとに辿り着いてやる、と俄然やる気を出してガンガン頑張ってしまうあたりがこの娘の可愛らしさなのですが、少なくとも儚さとか薄幸さとは実に縁がなさそうな生き様である。今のところは。
本来ならトールがその制御役というか手綱役として機能していたのだろうけれど、その当人が傍らにいないのなら止める人はいないわなー。
ただ彼女の前世となる現代日本の様子からしても、マキちゃんが決してパワフルなだけの少女でなかったことはわかるんですよね。この娘は、色んな意味で一番大切なものを掴むことの出来なかった、掴もうと手を伸ばすことが出来ずに少し離れたところからじっと見つめる娘だったのだ。それをずっと後悔したままで、うちに抱えこんでしまい込む娘だった、というのを忘れないようにしてあげたい。それは、前世の女子高生だった頃だけの特質なのか、それともそれとも。
ともあれ、今のマキナは一貫している。トールに会いたい、という願いに一途でいられている。その願いに迷いはなく、だからマキナは一心不乱にガンガン突き抜けられる。そのパワフルさについていける人はそうそういなくて、紅の魔女の悪名を引き継ぐ家名もあってか彼女に近づく者も早々いない。それができるのは、結局訳ありな面々だけなんですよね。
というわけで、マキナを中心に揃ったパーティーは曲者ぞろい、或いははぐれ者揃いというべきか。
ここで早々にレピス嬢が出てきてマキナの傍らに寄り添うとは思わなかったけど。あの義肢の設定や空間魔法についてのあれこれからしても、彼女の基本的な設定も変わっていないっぽいけれど、留学生なんかやってるからには裏方ではないんだよなあ、多分。

まだ魔王も魔女も目覚めることはなく、賢者だけがすべてを知っていて見守っている、という状態か。それでも、徐々に紐解かれていく伝説となっている過去の物語。叶わなかった恋の物語。
今、こうしてマキナもトールもお互いを求め合い恋い焦がれている。再会なって今まで溜め込んでいたモノがようやく「恋」という名の想いであると確信するマキナ。でも、運命はその想いを伝え合うことをまだ許しはしないのだ。
すっごいラブストーリーしてるよなあ、濃度半端ないよなあ。まだ、前前前世な要素も殆ど出てきてないにも関わらず、現段階でこの熱量である。
しかし救世主なアイリさん、えらい邪魔者なポディションに収まっちゃって。夢見がちで現実ではなく自分の願望を直視するような在り方は随分ヘイトを集めそうなキャラになっちゃってるけど。ウェブ版でも同じく日本から召喚された救世主の女の子が登場するのですが、ほぼ別キャラになってますね。これは、背負っているバックグラウンドも全然違ってくるんだろうか。

なんにせよ、本当に元の作品と全然展開が異なっているだけに、果たして話がどう転がっていくのか全然見通しがつかないのがこうなるとワクワク感を後押ししてくれる。この段階ですでにメインの二人に恋の自覚がある、というのもラブストーリーとして強力な牽引力になりそう。今後の展開が実に楽しみな新シリーズと相成りました。

友麻碧作品感想

浅草鬼嫁日記 七 あやかし夫婦は御伽噺とともに眠れ。 ★★★★☆   



【浅草鬼嫁日記 七 あやかし夫婦は御伽噺とともに眠れ。】 友麻碧/あやとき  富士見L文庫

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茨木真紀は、かつて鬼姫“茨木童子”だった前世を持つ女子高生。前世の夫“酒呑童子”だった天酒馨らとともに、浅草あやかしを狙う「狩人」の騒動を退けて、無事に高校三年の新学期を迎えていた。陰陽局の津場木茜が転校してきたりと、少しずつ変わっていく真紀たちの日々。そんな折、法事で実家に帰る馨に、真紀はついていくことに。訪れたのは「御伽噺の隠れ里」と呼ばれる九州の片田舎。二人はそこで、夜毎屋敷をさまよう面妖な人間と遭遇し―。伝承と謎を相手に「最強の鬼嫁夫婦」も眠れない?
なんかもうねー、まいったなー。
ホロホロと泣いてしまったんですよね、これ。気がついたら、グワーッと泣けてきてしまってたんだ。
こういう思わず泣いちゃう時ってね、読んでて自分でも感情が沸き立っていくのがわかるし、わからない時はそれだけ夢中になってるか没頭してる時なんですよね。それでも、あっこれは泣いちゃう、というのは事前にわかるんですよ。
でも、今回はほんと気がついたら泣けてきちゃってて、自分でも「え? なに?」とちょっとびっくりしてしまったくらいで。あれ? これ自分、感動してる? と理解があとから追いついてきたんですよね。
それくらい、自分の中で馨と彼の母との和解というのは盲点で、もうあり得ない事なんだと思いこんでたんでしょう。
彼の母である雅子さんの馨への拒絶は本当に酷いもので、こと天酒馨の崩壊した家族関係はもう絶対に元に戻らないものだと思ってたんですよね。だからこそ、馨は真紀との関係に家族を求めて、正式に恋人となって将来を約束した今となってはもう彼の求める「家族」というものは眷属たちや仲間たちも含めて満たされた、と思っていたわけです。過去はもう過去であって、今更振り返るものではないと、克服したものなんだと。それは、諦めたとすら考えていなかった、決着のついたものだと、そう思っていたんです。
でも、真紀と結婚して夫婦になっても、それは前世で茨姫と結ばれた過去に並んだだけで、それ以上ではなかったんだなあ。いや、真紀とこのまま末永く生きていければ、悲劇に終わった前世よりもそりゃあ超えたものになるんだろうけれど。素敵な奥さんとの夫婦生活、というのはすでに前世で一度は得たものだったんですよね。それで足りないなんてことは全然なかったから、それ以上のことを別に何も考えていなかったんだけれど。
酒呑童子ではなく天酒馨という人間の男の子が本当以上の、最高の幸せを手に入れるには、幼い頃の悲しい思いを、得られなかった親の愛を取り戻して、辛い記憶を払拭することが最高の手段だったんだなあ。
それはでも、決して叶うものではないと思っていたのだけれど。そうか、時間を経て一度離れて距離を置くことで、そして馨が成長して大人にはまだなっていないけれど高校生になって、真紀との関係も幼い頃のあの必死で寄り添っていた頃よりも落ち着いたものになって、全体的に余裕ができた今でこそ。
そして雅子さんの方も、精神的に追い詰められてささくれ立ち過敏になっていた心が落ち着きを取り戻し、田舎の実家での生活によって余裕ができたときに、改めて自分の息子に対する所業を思い出してとてつもなく後悔していたのだ。
そうしてお互いに余裕ができたからこそ、落ち着いて向き合う機会というのは出来るもんなんでしょうね。
正直、馨の親への接し方というのは褒めれられたものがなかったのは確か。幼児からあんな態度取られ続けてたら、母親としてもノイローゼになっても仕方ないんじゃと同情してしまう部分はある。育児ノイローゼって非常にデリケートで周りの理解とサポートが必要なものですけれど、雅子さんもそのへん難しかったんだろうなあ。普通の育児の問題とはまた違う形ですし、馨との関係は。
馨としても、前世からして親と酷いことになってるわけですから、どう両親と接したらいいかわからない部分もあったでしょうし、元々人間関係小器用な方でもないわけで。
人として暮らした十数年間が。一般学生として同じ子供たちと一緒に学び、社会に出てバイトして、真紀と一緒に過ごしつつ他の人達とも遊んだりしていった経験は、確かに天酒馨のものとして酒呑童子のものしかなかった人生経験を上積みしてくれたんでしょうね。
再会した雅子さんと最初は恐る恐るお互い触れるのを怖がってなかなか近づかなかったけれど、事件を通じてちょっとずつ話すようになり、距離感を縮めていく間、馨の態度ってのはほんと、ただのちゃんとした高校生の息子って感じだったんですよ。ちょっとぶっきらぼうだけど、母親に接するただの十代後半の男の子の姿だったのです。
雅子さんの方も、どう考えてもおかしい幼児な息子よりも、高校生くらい成長した息子の方が違和感感じにくかったんじゃないかな。馨が結構普通にただの息子していたのを除いても、変に大人びたような幼児よりも、高校生くらいに成長した馨は精神年齢のギャップみたいなものが少なかったんじゃなかろうか。フラットに、接することが容易だったような感じなんですよね。
雅子さんって、過去の回想の印象からもっとヒステリックで神経質なイメージだったんですけれど、本来の彼女、改めて再会したお母さんってどこか頼りがいがあって姉御肌な部分もある懐の広い感じの女性で……何気に真紀ちゃんと似てるんじゃないか、と思えてしまう所すらある感じだったんですよね。
ああ、馨のお母さんって、こんな人だったのか、と。凄く新鮮だったんだよなあ。
ちゃんと、馨のこと愛してたですよね。そして、それは過去形じゃなくて今もちゃんと愛してくれていた。だからこそ、酷く馨を傷つけたことを後悔していて、自分の存在そのものが彼をまた傷つけるんじゃないか、と避けるようにしていたんだけれど。馨もまた似たような事考えてたんですよね。自分の異常さが家族を壊してしまった、母を傷つけてしまった、と。
だから、真紀が鎹になってくれなければ、この二人がまた家族になれることはなかったのでしょう。ちょっと真紀ちゃん、いい奥さんしすぎである。今までで一番良妻ムーブしてましたよ。真紀ちゃん一緒に連れて行くように言ってくれた馨の親父さん、ほんとグッドジョブである。
まさか、雅子さんに本当に全部、馨や真紀が妖怪とかこの世ならざるものを見ることが出来る、というだけではない、前世のことまで全部詳らかに打ち明けることになるとは想像だにしていなかったけれど。
一連の事件で、雅子さんは今度は決して逃げず、目をそらさず、全部受け止めてくれたんですよね。だからこそ、真紀も全部打ち明けなきゃ、と。そうすることで二人は今度こそ本当の母子になれる、と思うことができたんだろうけど。
あのもうどうしようもないくらい壊れてた母子が、馨と雅子さんがホントにただのそこらへんの高校生の男の子とその母親みたいな、普通の会話をしてるわけですよ。日々の生活の中でどこの家庭でもかわされてるような、ぶっきらぼうでふてくされたみたいだけどよく気がつく息子とそんな子供に遠慮なく背中を叩いて笑って叱咤するような元気なお母さん、みたいな光景が。
普通の親子の姿が、あったわけですよ。絶対にありえないと思っていた光景が。
もう、それ見てホロホロと泣けてきてしまったのです。
本当に、良かったなあ、と心の底から思えたんですよねえ。

これは徹頭徹尾、天酒馨という人間のお話でした。今回に限っては、酒呑童子という前世は関係ないんですよね。前世と紐付けされていない、天酒馨という人間が確立されたともいうべきお話で、茨木真紀が好きになったのは天酒馨という人なのだ、という彼女の想いを確かなものにする出来事でした。
ライ、というもうひとりの酒呑童子の魂を持つ存在が現れているからこそ、今回の話はとてつもなく重要だったのでしょう。馨のレゾンデートルを揺るがす彼の存在ですが、今回の一件で馨の側は強固に補強されたわけですから。
しかし、一方でライが酒呑童子の魂を持つ存在であることには違いなく、果たしてそれを真紀ちゃんが無視できるのか、という問題があるんですよね。真紀ちゃんが好きで愛しているのは、間違いなく馨です。これは揺るがない。彼女はとっくに選んでいる。でもだからといって、前世からの思いに苦しんでいるライを無視して関係ないと突き放せるような娘でもないわけで。選んだからこその苦悩が、彼女につきまとうことになるんですよね。
凛音の方もやたらとややこしいことになってるみたいですし。むやみに汚れ役しようとせんでもー。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 六 あやかし夫婦は今ひとたび降臨する。★★★☆   



【浅草鬼嫁日記 六 あやかし夫婦は今ひとたび降臨する。】 友麻碧 /あやとき  富士見L文庫

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茨木真紀は、鬼の姫“茨木童子”だった前世を持つ女子高生。同じく元“酒呑童子”の天酒馨や、前世からの仲間たちとともに、浅草で賑やかな今世を送っていた。ところがそんな浅草あやかし界隈に大事件が勃発!あやかしを商売道具にする悪しき人間「狩人」に、次々と捕えられているというのだ。助けに行こうにも敵の正体は不明。頼れる味方も今は囚われの身。そこで真紀たちは、普段は犬猿の仲である陰陽局の津場木茜たちと協力することにして―!?捕われた仲間たちを救うため、浅草の最強チームが推参します!
表紙絵、茨木童子に酒呑童子とその眷属たち勢揃いでの百鬼夜行、という感じで勇ましくも格好良いデザインで非常にお気に入りなんですけど、よく見たら足元にちっちゃい手鞠河童たちがたくさん居るじゃないですかーー! しかも、みんな木の枝持って戦闘態勢ですよ、なにこれ可愛すぎるw
惜しむらくは虎さんと熊ちゃんのコンビがいないところか。これ以上人を増やすとごっちゃになっちゃうから仕方ないんだろうけれど、今回はほんとに身内総動員してのカチコミだっただけに全員集合は見たかったなあ。
全員集合と言えば、今回でとうとう茨木童子の眷属と酒呑童子の幹部が出揃ったことになるんですね。感慨深いと言えば感慨深いのだけれど、まさか大和組長がそうだったとは……。
いやあ、個人的にはこの人、馨たちとは縁もゆかりも無い今世ではじめて縁が出来た人であってほしくもあったんですよね。浅草のまとめ役として術師としての能力を殆ど持たないままで頑張り認められ慕われて、馨も真紀もこの人には本当にお世話になってきたじゃないですか。すっごく気にかけてもらって大事に大事に守ってきてくれたわけですよ。そこに前世からの縁、なんてものは関係なくその優しさも包容力も人徳も器の大きさも、大和さんがこの生まれで培っていたものである、というのは認めるところなんですけれど、それでも何の縁も柵もないところからこの大和さんには馨や真紀ちゃんを庇護してくれていた人、であった方がなんか尊い感じがしてよかったんですよね。彼の前世は今の馨たちとの間に培われた関係には余計な要素ではなかったかな、と。
ただ、馨からすればこれはこれで嬉しい真実ではあったんですよね。自分の身内が生まれ変わってもなお、こうやって縁が結ばれてこうして自分たちを何くれとなく守ってくれていた、ということは。
大和さん本人が何にも知らないまま、というのはそれで良かったんじゃないかと。こればっかりは馨たちの側が知っていれば良いことですもんね。大和さんが馨たちを慈しんでくれるのは、前世関係ないことなのですから。
しかし、もう一つの生まれ変わりの方は難儀な話になってきたなあ。ライは雷獣のライではなく……そっちのライだったのか。しかも、ただの前世の人物からの生まれ変わりなら、清明ほどでしゃばった存在にはならなくても、この生まれで新しい関係というのも紡げたのかもしれませんが、それどころじゃないもんなあ。
しかも、大和さんみたいに本人が知らない真実、なんてもんじゃなくライ本人はどうやらほぼ全容を把握しているようですし。そうなると、彼の真紀へのあの凄まじく未練がましいというか捨てられた子犬みたいな態度もわかってしまうわけで。
まさか、なんの障害もないだろうと思われた真紀ちゃんと馨の鉄板夫婦関係に、本格的なお付き合いの開始という進展なのか後退なのか微妙によくわからない変化が訪れた矢先に、こんな波紋を生じさせる大岩が投げ込まれるとは。
これ、真紀ちゃんの男気が試されるところなんじゃないだろうか。いや、男気というのもなんなんだけれど。馨が一番、と断言しているあたりなんぞ優柔不断の欠片もない気風の良さなんですが、相手はけっこう繊細そうなだけにどう対処すればいいのやら。
しかしこれ、叶先生てば以前意味深に真紀ちゃん、由理、馨にそれぞれ嘘をついている、と指摘して実際真紀と由理には大きな嘘があったのだけれど、馨に関してはこれ馨まったくご存じない話ですよね!? しかもこれ、安易に馨自身には知られてしまうとえらいことになってしまう案件だし。
真紀ちゃん、大丈夫なんだろうか。繊細に対処しないといけないの、相手さんだけじゃなくて馨にも該当するんだけど。真紀ちゃん、気配りも出来るし安易に下手こいてダレかを傷つけてしまうような言動はしない子でその点信頼感はあるんだけれど、それと同じくらい大雑把なところがあるだけに心配も尽きない!

心配といえば、凛音の方も渡欧時代の向こうの吸血鬼一族との関係がややこしいことになっているようで。凛音自身はもう真紀ちゃんのことどうこうしようとは思ってないみたいだし、殆ど眷属時代と変わらない距離感なんだけど……ってか、呼んだらどこからともなく出てくる、呼べば来てくれるってどれだけはべってるんだよ、て話なんだけれど、これだけ元の木阿弥になりながら向こうとの縁が切れてないというのは、それだけ柵みたいなものが出来ているということだし、まだ凛音関係のトラブルはつきまといそう。
ミクズも、スイの決死の活躍で残機減らせたものの、あっち側の猫さんといい食えない相手ばかりだし面倒は尽きないなあ。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。 ★★★★   



【浅草鬼嫁日記 五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫 

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Kindle B☆W

人とあやかしが共に生きる町、浅草で暮らす茨木真紀は、前世で鬼の姫“茨木童子”だった記憶を持つ女子高生。鬼的には節分の、女子的にはバレンタインの季節を迎え、元“酒呑童子”の天酒馨や、前世で眷属だったあやかしの水連や深影たちのため、恒例のチョコ作りに奮闘する!深影のお使いや、水連の薬開発、熊虎姉弟の漫画を手伝いながら、今世でも家族のように助け合う真紀たち。そんな折、浅草を守る七福神に異変が起きたようで…?「最強の鬼嫁夫婦」と眷属たちの輝かしい日々がここに!

劇的な展開なく、お付き合いをはじめてしまったご夫婦。いやうん、本人たちも傍から見ている周りの人たちも読んでるこっちも既に「夫婦」という認識しかないカップルだけに、凄まじいまでの今更感……いや、今更というよりもなんなんでしょうね、これ。
実際に結婚しているわけではない以上、真紀ちゃんと馨の関係は彼らのことをよく知らない人たちからするとどういう関係なの?と聞かれるとどうにも名前のつけられない関係ではあったんですよね。夫婦です、なんて言えるもんでもないですし。
しかし、今更恋人です、というのも気恥ずかしいというわけでもないんだけれど、なんか違うのである。違和感があるわけじゃないんですよね。夫婦から恋人に「後戻り」しているというわけでもない。ただ、そぐわないというかなんというか。
でも、まだ夫婦じゃない以上、その前の関係というのを改めて今世では嗜んでみましょう、という二人の気持ちもよくわかるんだなあ。そのために劇的な展開があるわけじゃなく、自然に付き合おうぜという風に馴染むのも自然体な二人らしいし、恋人になったからといって無理して特別なことをするわけでもなく、今までどおりの距離感にちょっとした甘酸っぱさを添えつけたような幸せのエッセンスが、本当に二人らしくてなんとも素敵なんである。
生まれ変わって再び巡り合った運命の二人は、今人として生きて、一方でアヤカシたちも見守るかつての大妖怪としての振る舞いも忘れず、つまりは今彼らは幸せなんである。
悲劇的な結末を迎えた二人が、今幸せな時間を二人で過ごしている。それを見守っている彼らの眷属たちの感慨はいかばかりなんだろう。
再び転生するかもわからない主をずっと待ち続けた虚ろの日々。それは眷属たちの心を少なからず傷つけて、その傷は未だ癒えきったわけではないのは、スイをはじめとした眷属たちのどこか必死さが垣間見える主人たちとの接し方を見ても伺えるんですよね。
でも、一方で今世の幸せな主夫婦の姿に、そしてかつて以上に自分たちを慈しんでくれる彼らの愛情に、今眷属たちはこの上なく報われているのでしょう。凛音は悲劇で終わった過去に未だこだわっているけれど、その過去にしがみついて今の真紀ちゃんたちの幸せを壊してしまおうなんて不出来な真似は絶対にもうしないでしょうし。
奇跡のような再会がなった茨姫と酒呑童子。そんな二人に再び寄り添えた眷属たち。でも、生まれ変わった鬼夫婦は今は人間で、だからそう遠くない未来に彼らは再び老いて眷属たちの前から去っていく。それを、スイたちは忘れていなくて、時折胸をかきむしるような切なさに苛まれている。今が幸せだからこそ、未来を想うことが苦しい。
でも、同時にそれを受け入れてもいるんですよね、彼らは。いや、未だ子供な深影なんかは難しいのかもしれないけれど、スイなんかはそれをちゃんと受け入れている。悲劇で終わってしまったかつての別れは、後悔と痛みと苦しみばかりが残されたものだったかもしれないけれど、真紀ちゃんたちが今度はずっと幸せなままその第二の人生を終えることが出来たなら。
眷属たちにとって、今度の別れはどれほど寂しくても微笑んで送ることが出来るだろうか。身を引き裂かれるような痛みではなく、温かい思いで去っていった人たちを振り返ることが出来るようになるだろうか。
スイがずっと味わってきたという、真紀ちゃんたちと再会するまでの時間を想うと、切に考えてしまうんですよね。真紀ちゃんたちの幸せが、彼ら眷属を終まで幸せを抱くための大切な記憶に、思い出になってくれるように、と。
だから、残されたまだ出会ってない眷属の木羅々ちゃんと真紀ちゃんをちゃんと再会させてあげたいし、このまま真紀ちゃんと馨には幸せになってほしい。彼らの幸せは、彼らだけの幸せには留まらないんだ、というのをじんわりと実感できる、二人の夫婦を取り巻く「家族」のお話でした。

新たに清明の式神に新入社員よろしく加入した由里があっちはあっちで大変そうですけど。大変というか、向こうの古くからの式神である四神たちとの距離感をどうとろう、とお互い戸惑って微妙な空気になってる感が、なんともかんとも……微苦笑が浮かんできてしまう。
ラインかなんかわからないけど、メッセージアプリで式神同士やりとりしてるのが現代的であるけど、先生全員に携帯もたせてるのか、甲斐性あるなあ。ってか、術とかじゃなくて、普通に携帯で連絡取り合ってるのね、あの主従w

しかし、狩人側に出てきた「ライ」というのは誰なんでしょうね。雷獣かなんかかと思ったら、なにやら妖ではないみたいだし、かと言って人間でもないみたい、となると真紀ちゃんたちみたいな?
大和組長もなにやら抱えているようですし。ってか、組長実は凄い力を秘めてるというか封印されてる系の人だったのか。この人も何気に1シリーズの主人公張れそうなポテンシャルの持ち主なんだよなあ。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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浅草の今を生きる茨木真紀は、かつて鬼の姫“茨木童子”だった記憶を持つ女子高生。彼女と同じく元大妖怪の天酒馨や継見由理彦を巻き込んで、今世も悩めるあやかしのため、賑やかに駆け回る。修学旅行先の京都で、真紀は前世にまつわる嘘を明かし、すれ違っていた馨と向き合った。そして今度は約束していた江ノ島デートへ!ところがその頃浅草では、由理彦の妹の若葉が、見えないはずのあやかしと出会っていて…。冬の浅草を襲う異変に、また一つ暴かれる嘘。「最強の鬼嫁」夫婦と、友との絆が試される―!

由理の嘘って、先だっての真紀ちゃんの抱えていた嘘に比べたら別にバレても問題にはならないんじゃ、と前巻でその一端が明らかになったときには思ったものでしたが……。
大問題だった!!
そうかー、真紀ちゃんや馨にバレたところでそんな拗れることはない、というのは間違いじゃなかったのだけれど、清明が指摘してきた嘘の代償って結局自分にこそ返ってくることになるんだよなあ。
てっきり、真紀ちゃんや馨の転生に合わせて由理は継見由理彦になったのだ、と思ってたんだけれど、話を聞く限りでは完全に偶然じゃないですか。正しく運命的だったのか。
そしてそれは同時に、由理が決して真紀ちゃんたちに合わせて今の人生を歩んだわけじゃなくて、彼自身の望みのために人として生きていたわけだ。たとえ、それが嘘によって成り立っていたものだったとしても、そこで育まれた関係が嘘であったはずがない。歪であったはずがない。
由理だけが与えられて受け取っていたんじゃないんですよね。由理の家族もまた、由理から多くを受け取っていた。由理があってこその継見家だったはず。だからこそ、若葉は本当の由理を知りたがったはずなのに。もっと、兄が報われるために。本当の姿を知ることで、彼が自分がついている嘘に苦しまずに済むように、と。
でも、その嘘を暴いてしまったがためにすべてがなかったことにされてしまう、というのは由理だけじゃなく残された継見の家の人たちがまた辛すぎる。たとえ、何も覚えてない事にされてしまったとしても、喪失感は由理を愛していた分だけ抱え込んでしまうでしょう。
それもまた、残酷な話じゃないですか。
家族という存在に対して複雑な想いを抱いてきた真紀ちゃん、馨、そして由理彦。それぞれの形で、家族という存在に追いすがり、求めてきた彼らだからこそ、この継見家の結末は苦しいよなあ。
ちょうど同じ時期に、津場木くんところの家のあったかな関係……なんの衒いもなく家族は大切にするもんだろう、ときょとんと言ってしまう津場木くん、彼にそう言わしめてしまう津場木家の在りようを目の当たりにしていただけに、余計に来るものがある。
真紀ちゃんたちが目指す、家族の形の一つに成りえるんだろうなあ、あの家は。まあ、某親戚のオジさんによって家系そのものがえらい呪いを食らっているという現状もあるのですが。津場木家の呪いの話って、こっちで関係してくるのかそれとも「かくりよの宿飯」の方で関わってくるのか気になるところではある。
と、話が逸れたが継見家の件についてはこれが決着というにはあまりにも悲しいので、記憶が消されてもなお諦めていない若葉ちゃんの頑張りに期待したいところでありまする。清明先生も人間の味方だってんなら、由理はいいので妹ちゃんの味方はしてあげてほしいのう。由理はなんだかんだと自分で決着つけちゃいすぎる。さっさと身の振り方まで1人でなんとかしちゃいましたし。馨や真紀ちゃんからすると、ちともどかしいところなんでしょうなあ、そういうところ。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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かつて鬼の姫“茨木童子”だった前世の記憶を持つ女子高生、茨木真紀。彼女と同じく元あやかしの天酒馨や継見由理彦を巻き込み、あやかし世直し&やり直し人生を謳歌中!そんな三人の前に現れたのは、前世の宿敵“安倍晴明”の生まれ変わり、叶冬夜だった。叶は真紀たちがお互い前世にまつわる重大な嘘をついていると暴き立て、三人の関係を壊しにかかる。叶の言葉に真紀と馨はギクシャクしたまま、修学旅行で京都を訪れて…?宿縁の地で明かされる前世の真実。鬼嫁夫婦の恋物語はここからはじまる!
大激震の真実じゃないかーー!!
これは確かに、三人の関係を根底から変えかねない「嘘」だった。そもそも本作って、真紀ちゃんがメインで描かれることが多い話だっただけに、彼女が見せている姿をありのままで捉えてたんだけれど、彼女が抱えていた嘘を踏まえて振り返ってみると、なんか泣けてすら来るんですよね。
この現代に、こうして人間として生まれ変わり、愛する酒呑と再び巡り会えた。それがどれほどの奇跡だったのか。彼女がかねてから語っていた茨木童子の末路から鑑みても、この時代に馨や由理と再会できたことは奇跡以外の何物でもなく、その重さは理解できていたつもりだったんだけどなあ。明るい真紀ちゃんの姿に安心してしまっていて、その重みを本当は何も理解出来ていなかったことに気付かされる。
これは、馨もおんなじで。というか、馨が主犯で。お前、一巻でまだ夫婦じゃないとか言ってたの、万死に値するぞ。彼女があやかしたちを慈しみ、困っている彼らを助けてまわり、友との時間を大切にし、満面の笑顔で馨に絡んでカラカラと笑い声を立てる。そこに込められていた想いの深さを、馨も読者サイドもこれは何もわかっていなかったんじゃないだろうか。
その愛の深さを、何も理解してなかったんじゃないだろうか。それをわかってたのは、きっと由理なんだろうね。ああ、そりゃ茨姫の従者たちが馨に対して思う所あるのも仕方ないわ。これは仕方無い。
正直、この三人の間に嘘がある、と指摘して引っ掻き回した清明先生には歯噛みしたくなるけれど、彼が言う今世のおいて人間となった彼らには幸せになってほしい、というかしたる! という彼の意図の意味は渋々ながらわかるんですよね。真紀ちゃんがついている嘘は、とてもとても優しいもので馨を愛するが故のものだったのは間違いないんだけれど、それは馨が知らなきゃいけない真実だった。知らなくても幸せにはなれたかもしれないけれど、それは真紀にずっと嘘をつかせるということだ。彼女が永遠に罪を抱え、負の遺産をうちに押し込め続けることだ。それを、引き受けてこそ夫婦ってなもんだろう。彼女の真の想いを、夫なら知りたし知るべきだったろう。
自分たちがこうして再会できたことの奇跡の意味を、思い知るべきだろう。
故にこそ、清明先生は意地悪だけれど、きっと正しかったのだ。でも気になるのは、彼があくまで人間の味方である、というのを強調していたところなんですよね。話していた時は、その流れからして真紀ちゃんと馨のことだとばかり思い込んでいたんだけれど……。あとになってみると、もしかして、と思わざるをえないもう一つの衝撃的な真実が明らかになってしまったわけで……。
ともあれ、本作は真紀ちゃんが偉大すぎて、女性が器大きすぎて、もう男の子たち頑張れ、としか言いようがない。馨はもとより、浅草互助会の兄さんとか、津場木くんとか。頑張って苦労しろ!! 元から苦労性な連中だけれど、頑張って苦労しろよー。

1巻 2巻感想

浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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人とあやかしが共に棲まう町、浅草で。鬼の姫“茨木童子”だった前世の記憶を持つ茨木真紀は、持ち前の面倒見の良さから、あやかしたちの起こす厄介ごとを解決する日々を送っている。先日も鎌倉妖怪とのいざこざを調停し、ますます人(?)望を集めていた。そんな真紀も普段は女子高生。夏は花火大会に山遊び、学園祭とイベントが目白押し。かつての夫で元“酒呑童子”の同級生・天酒馨たちも巻き込んで、やり直し人生の今しかない時を謳歌する!だがそこへ、彼女の前世を知った陰陽局の面々も現れて…?
女子高生、そう女子高生なのだ、真紀ちゃん。
前巻では、まだ夫婦じゃないまだ夫婦じゃない、と往生際の悪さを見せていた馨だけれど、前回の事件を通じてもう諦めたのか受け入れたのか言い訳しているのが馬鹿らしくなったのか、真紀ちゃんが夫婦夫婦言うても否定しなくなったんですよねえ。もうこれ、無意識レベルでそれが夫婦が当たり前レベルにまで昇華されてしまったのかもしれん、というくらいには自然な受け答えをしているわけで。
一人暮らしの家の方も、結局あっちこっち見て回った挙句に真紀ちゃんと同じアパートに収まっちゃったし。通い婚だったのがもう殆ど同棲である。自室には寝に帰るだけで、殆ど真紀ちゃんの部屋に入り浸ってるわ、私物も持ち込んでるわ、ってか真紀ちゃんが馨の部屋からあれこれ持ってくるわ、同棲である、これ。
そう、同棲っぽいのよねえ。実のところ、本巻ではあんまり夫婦という印象受けなかったんですよね。熟年夫婦というのは、二人とも枯れてないというか、今回は学生を満喫していたからかもしれませんけれど、自立して二人して一緒に長いこと暮らしているという慣れ親しんだ生活感を出しながらも、夫婦というような確固とした枠組みは形成せずに、社会の側に包まれているというかなんというか。
今の二人って、高校に通いながら浅草地下街という互助会に助けられ、大黒様をはじめとする神様たちにも見守られ、と生活としては二人で独立居ているものの、社会的に見ると未成年者として庇護されている体があることが、夫婦としてよりも同棲カップルっぽさをマシている原因なのかもしれない。と言っても本当に長い間一緒に居ることに馴染んでいる地に足の着いたカップルなんですけどねえ。
平安時代がなんだかんだと不安定な立場で、命を狙われていた事も含めて楽しい日々であっても気が休まらなかっただろうことを思えば、今のように浅草地下街の人たちや大黒様たちのように見守ってくれる人たちが居て、その中で日々を穏やかに満喫しているという今の状況というのは隔世の感があるだろう。同じ好き合っている者同士、かつての夫婦と言っても、昔と夫婦感というものも変わってくるかもしれない。その観点に置いても、この二人は新しい世の中、新しい時代でちゃんとかつてから続く絆や想いを繋ぎつつ、新しいものへと昇華して一つ一つ積み上げていってる風なのは、堅実というかカップルとしても偉いなあ、と感嘆の吐息が漏れてしまいます。
平安の頃よりも人間が繁栄する現代で、しかししっかり逞しく生きてる妖怪たち。そんな彼らを愛し、現代に馴染めず、或いは虐げられてドロップアウトしてしまう子たちも見捨てず、そうしながらも今人間として生きている自分に背を向けず、かつては憎んだ人間という生き物に対しても親しいもの、眩しいもの、素敵なものを感じ取り、両親への愛情を通じて、人も愛しつつある真紀こと茨木童子。
それって、とても幸せなことですよねえ。自分がしっかりと幸せを噛み締めながら、その幸せを惜しまず他者へと配り歩く真紀って、もうこれ女神様的な存在になってやしないだろうか。今は人間なんだけれど、やってることって前世考え見ても鬼子母神みたいなものですよねえ。

やがて鵺にもなろうかという妖怪トラツグミの幼生が、化けれるようになったら皇帝ペンギンのヒナに化けちゃって、この巻通じてずっとペンギン雛やってたのにはなんとも笑ってしまったというか和んでしまったというか。表紙絵にもちゃっかり出てますけれど、これはヌイグルミ感あるなあw

そう言えば陰陽局の津場木くん、【かくりよの宿飯】の主人公の葵の従兄弟にあたるのか、彼。爺さんとも葵とも似てない世渡り下手、というよりも堅物というか頭が堅いというかぶきっちょというか、苦労性だなあこいつ。

1巻感想

かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。 ★★★★   

かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿「天神屋」に秋が訪れる―。ライバル宿「折尾屋」に攫われていた葵は、困難の末に完成した料理で、南の地の呪いを晴らした。凱旋する彼女を待っていたのは、「天神屋」の仲間との温かくも大忙しの毎日!新作お土産を考えたり、秋祭りの準備を進めながら、食事処「夕がお」を再開していく。そんな時、葵は大旦那様から果樹園デートに誘われた。いつものお誘いと変わらないはずが、「折尾屋」での一件を経た葵は、大旦那様のことをもっと知りたいと思う自分に気づいて…?

白米! 白米! 白米!! ちょっともう初っ端の白いご飯は反則だよっ! 本日は「夕がお」が繁盛して残り物もなく、残ったのは白いご飯だけ、というところに従業員のみんなが終業して、クタクタになってご飯食べに来るんだけれど、あるのはお米だけだから、みんなおかず無しで色んな御飯のお供で白米を掻き込むことになるんですけれど……これが反則級に美味そうなんだ。白飯最高!! そうだよ、日本人は白米さえあればわりと何とかなるんだよっ。ってか、飯テロ小説で真っ向から白ご飯、という棍棒を振り回してくるとかアリですか!? いやもう、どの御飯のお供も何倍もお代わりできそうなくらい美味そうで美味そうで、それだけでももう一杯一杯のところにトドメに新鮮な卵を使った卵ごはん! 卵かけご飯!! 卵かけご飯に肉味噌!! これもう非人道兵器じゃね!? 何気に作中のみんなのテンションも変な具合に高くなってたし。御飯美味え!
ええ、もちろんあとで卵かけご飯いただきましたよ? 自分は出汁醤油派。さらにふりかけを加えるタイプ。うへへ、マジ最高っすよ。
しばらく、あっちゃこっちゃに出張して忙しかったというかトラブルに巻き込まれることも多かった葵だけれど、ようやく落ち着いて「天神屋」で過ごす日々。落ち着いた、というには相変わらず賑やかすぎる日常なのだけれど、目下のトラブルや差し迫ったイベントや葵に突きつけられる課題、といった緊急のあれこれが無い分、落ち着いているのだろう。ってか、これだけ何事もなく、人間関係トラブルもなく、天神屋でもちゃんと居場所が出来てゆっくり「夕がお」の経営に勤しんだり、大旦那さまとお出かけしたり、と余裕をもって過ごせたのって初めてなんじゃなかろうか。
まあ、デートしに行った先でまたぞろ捕まってみたり、あれやこれやとトラブルには見舞われるけれど、これくらいなら何事もなかった、と言ってもいいくらいだし。
そうなってくると、改めて大旦那さまとの距離感なんかに思いを馳せる時間の余裕なんかも出てくるわけで、「折尾屋」に出張状態になっている時に随分と大旦那さまには助けられ、というかお茶目で気安い顔を見せてくれたお陰で、こっちに戻っていてもかつてよりもグッと心の距離感近くなってるんですよね。むしろ、大旦那様当人の方が、そんな葵の変化に気がついていなくて無理に距離をとろうとしてしまっているくらい。葵としてももどかしいってわけじゃないんだけれど、むしろもっと彼のことを知りたい、身近に感じたいと思い始めている時期だけに、以前のようにグイグイキてくれた方がこの際嬉しかったのかも。まあ、来られたら来られたでのけぞってしまうのが彼女かもしれないのだけれど。そう考えると、絶妙な引きかたをしてるのかもしれないなあ。
ただ、以前よりも接しやすくなったと葵が感じているのは彼女だけの感覚だけではないようで、他の店の面々も大旦那様の態度に、以前よりも柔らかいもの、子供っぽい生気みたいなものを感じてる様子なんですよね。
店の面々の結束は、確かに以前よりもずっと高まっているのが、大旦那様の変化や従業員たちから淀みや悩みが取り払われたことによって、より強く感じられるようになっているのが、今の天神屋だったわけです。
だから、そこに新たな新米、新キャラ投入も全然大丈夫かなあ……と、サブタイトルからもワクワクして見てたら……新キャラ登場どころか、むしろ退場じゃないかーー!! 厳密にはアイちゃん、クラスチェンジしてキャラ再誕、ってことになるのかもしれないけれど、新キャラとはいえないし。ってか、アイちゃんちゃんと表紙絵に出てるじゃん!
じゃなくて、それどころじゃなくて、ちょっとちょっと、何気に一番潤滑油的な人がぁ!?
ぐぬぬ、いや、決してこれ悪いことじゃなくて、円満退社というか寿退社というか、祝福される退場であるのでしょうけれど、しかし大事な友だちだっただけに寂しいなあ。
なんだかんだと、女子会というか、天神屋の女の子たちの友達関係もいい感じに熟してきて、男抜きでも彼女たちのワイワイ飯食ってる様子だけで楽しめるくらい、良い友達関係を築けてきていただけに、やっぱり寂しい。その分、ようやくお涼姉さんが本気になってくれそうですけれど。
いやもう、ラストの展開からして、葵を中心に天神屋が結束しなければならないにしても、柱となるべき人がもう一人は欲しかっただけに、このタイミングが大事だったのかなあ。葵としても、拠り所が必要な状況になってしまいましたし。
落ち着いて、葵の御飯を堪能するという……いや、実際食べられないので、この美味しそうな料理描写を指を咥えて眺めるという恍惚なのか苦行なのかわからないテンションに耽溺してたら、ラストに急展開ですからね。
紛うことなき天神屋最大の危機!! 大ピンチだぁ!

シリーズ感想

かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 ★★★★☆  

かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。銀次とともに、南の地のライバル宿「折尾屋」に攫われた彼女だが、持ち前の負けん気と料理の腕で、逞しく居場所を作っていた。銀次と乱丸の行く末を心配する磯姫の想いを継ぎ、「海宝の肴」の担当を買って出た葵。早速献立の考案や食材集めに奮闘する彼女と銀次の元に、「天神屋」から思わぬ助っ人(?)がやってきた!懐かしくも頼もしい仲間に励まされ、準備も順調に進んでいたのだが、呪われし南の地には、それを快く思わない存在がいて…。
これはあかんわー! 飯テロ飯テロ!! これまで兎に角読んでるだけで激烈に腹が減ってくるほどの美味そうな食事シーンを書くと言えば【ベン・トー】シリーズのアサウラさんがぶっちぎりで抜けてたんだけれど、本作完全に並んだね。完全に匹敵してしまったね。なにもうこの読んでるだけで涎ダラダラ垂れてきそうな、ガチでお腹鳴ってしまう感覚!? めっちゃくちゃ美味しそうなのよ、美味しそうなのよ。食べたい食べたい食べたいッ!!
甘口のお酒片手に齧るジュージュー焼いた分厚いベーコン!! 
焼きたてサクサクの甘夏ジャムパイ!!
高級牛肉のステーキにガーリックバターライス!! 肉焼いた鉄板で炒めたご飯よ、エキスが充填されまくってるのよ!?
カリっと揚げた生湯葉包。プリプリの海老にチーズが包んであって、生湯葉の食感も絶妙でうははは、食いてぇ。そしてあのローストビーフサンドの美味そうなこと。
とびっきりはあのきのこの串焼きとヤマメ乗せご飯ですよ。串の上からベーコンのエキスや焼きトマトの汁、溶けたチーズがとろとろと重なってきのこに被さって。やばいやばい、これはまじやばい。
おまけに、ヤマメですよ。一度焼いたところからさらにご飯に乗せて炊いたので、骨まで一緒に食べれるという贅沢使用。炊いている間に染み込んだヤマメのエキスで膨らんだ、醤油としょうがで炊き込んだご飯に、スダチをふりかけたヤマメの身をほぐして混ぜ込んで食べるこの御飯のヤバイことヤバイこと。いやもう、やべえよこれ!!
そんでそんで、サクサクのカツをフワフワと出汁卵でとじたカツ丼! カツ丼!! カツ丼!! あのじっくりと煮込んだ玉ねぎの風味がまた、最高なんですよねこれ。
トドメが、海坊主のために用意されたメニューですがな。これがねー、また全部美味そうなんですわー。エビマヨ!!! エビマヨよ! 個人的にはブリの照り焼きが良かったんだけれど、しかしエビマヨ! マヨネーズも手作りなんだけれど、これがマジヤバイ!! 海老が海老でまたこれプリップリなんですよ。もう想像しただけで、噛んだ時の歯ごたえとか、そこから溢れ出してくるエキスとか、それがコク旨なマヨネーズと合わさったときの味とか、考えただけで意識飛びそうッ。
でもって、甘夏ジャム絡めの鶏もも肉の唐揚げって、なにーー!? それなにーー!! ホワーーッ! おまけに紫蘇巻のアジフライ、チーズ入りとか、最高じゃないですか。
メインの「真鯛ときのこのクリーム煮」「豚モツの赤味噌煮込み」「すき焼き風肉豆腐」とか、最狂ですよ。もうこれどれ来ても、というか全部行けますよ!? 和風カレーキッシュも、これがもうもうっ、どうするよ、どうするよこれ!? これにもチーズが大活躍してるんですよね。チーズ働きすぎじゃないですか!? とろとろすぎませんか!? こうして振り返ってみると、意外と食材に関しては流用してるんですよね。きのこやベーコンなんかもそうだし。そういう、食材の工夫が小料理屋のそれらしくて、また家庭料理の延長のようで、いいんですよねえ。肉豆腐、牛肉のエキスが染み込んだお豆腐、くぅぅぅ、味覚の想像力が爆発しそうだ。
あのココナッツミルクのアイスモナカ(揚げ白玉入り)なんかも、デザートいいなあ。デザート美味しそうだなあ。
なんかひたすら料理がいかに美味しそうかというところばかり語ってしましたが、だって我慢できないんだもんよ! こんな、こんな美味しそうなものをパクパクと美味しそうに食べやがって。この、お預け感。テレビのグルメ番組でも料理漫画でもこんな風に空腹感にのたうち回るようなことはないんですけどね。ひたすら食べられない凄まじく美味しい料理が目の前を流れていくのを指を咥えて眺めているしかない絶望感、ガチで気が遠くなりそうでした。文字で書かれた料理は食べられないんだよ!! 食べられないくせに事細かに解説くれながら美味しそうにたべやがってーーっ! 泣くぞ!!

……一旦、夕食を食べて落ち着きました。白米バンザイ!

さて、肝心の物語の方は折尾屋編クライマックス。これ、表紙絵は海坊主からの視点というイメージになるんでしょうなあ。折尾屋で酷い扱いを受けてどうなるかと心配した葵ですけれど、みるみると折尾屋の従業員たちにも心開かせてしまい、ほんとタフな娘さんやでぇ。
でも、決して全然堪えていなかった、というわけではなく、こういう厳しい環境だったからこそ余計に絶対的な味方である銀次と、大事な時にはいつも見守ってくれていた大旦那様の存在感が増した章でもありました。特に大旦那様は天神屋に居る時は逆にちょっと距離を感じていただけに、離れて逆に親しみと安心感を感じさせる存在になるとは展開の妙でありました。
あと、今回ケモノ系の妖怪がたくさん居たせいか、弱ると妖力が減衰して人型を維持できずにチビケモモードになるの、あれ反則でしたよ。どれだけ普段イキッてても、あんなちびっ子くてメンコイ姿になったらかわいくて仕方ないじゃないですか。特に反則だったのが乱丸ですがな。なに、豆柴って! あれだけ強面張ってても、豆柴なんかになられたらもう受け入れるしかないじゃないですか。銀次のチビ狐モードとセットになったときの絵面の可愛らしさと言ったら、まあもう。
葵も結構酷い扱い乱丸にされたはずなんですが、豆柴相手じゃ怒れねえ。
いずれにせよ、乱丸も銀次との関係やこの海坊主を迎える儀式に懸ける意気込みや因縁を思えば、自分を傷つけるほどに張り詰めていたのもわかるだけに、兄弟同然に育ちながらたもとをわかった乱丸と銀次の二人が、長年のスレ違いからお互いの苦しさや信念を理解し受け入れ、ついに和解へと至ったシーンにはやっぱり良かったなあ、とじんわり滲むものもあり……。
なんちゅうか、弟とのことや過去の後悔、今の生き方、相容れぬライバル店との対立。これまで受け入れられずにはねつけていたものが、すっと内側に入ってしまう瞬間、というのがあるんですなあ。それらを受け入れられるだけの器が広がったと。人間、いや妖怪なんですが、人間的に一回り大きくなることが乱丸にしても銀次にしても、この一連の出来事を通じて叶ったわけで。また、間違いばかりじゃなかったんですよね、これまで彼らが歩んだ道、というのも。すれ違いや回り道はあったとしても、二人とも信じて進んできたこの道は間違っていなかった、ということでもあり、その結果を導いてくれたのは葵の存在だったとしても、彼らの生き方は祝福されるべきなんでしょうね。いや、そうあり続けたからこそ、葵もまた磯姫の遺志を引き継いで鎹になれたのでしょう。
葵自身も、今回は試練でした。
これまでついぞ出くわさなかった、本物の悪意で人間である自分を害しようという妖怪との遭遇。自分の根幹となっていた料理を奪われそうになる危機。そして、彼女の在り方の根源にあるトラウマに秘められた、謎の妖怪の真実への追求。どれも一人じゃ頑張れない案件でしたが、彼女が繋いできた縁が天神屋の妖怪たちにしても、新しくこの折尾屋で仲良くなった面々にしても、こぞって手を差し伸べてくれた展開は、雷獣の悪意を以って示した妖怪と人間の関係の現実を完全に吹き飛ばすもので、この娘こそ間違いのない真っ直ぐな道を歩んでるんだなあ、と安心するやら嬉しくなるやら。
特に、折尾屋では天神屋の料理長とは違う、同じ立場で一緒に切磋琢磨できる料理人である鶴童子の双子が、銀次でも大旦那さまでも出来ない同じ料理人としての立ち位置から、葵の心と挟持を支えて背中を押してくれましたらねえ。あの二人は本当に良い役回りでした。表紙絵でもわりと目立った場所を確保しているのも納得。
そして、クライマックスの海坊主を迎える儀式。これがまた、事前の話からは予想だに展開に転がっていくのですが、これがまた胸を温かくさせるようなお話になってくれまして。そうそう、葵の供する料理というのはこんな澄まして畏まったコース料理風なんかじゃなくて、あくまで家庭料理、小料理屋的なものであり、ただ美味しいだけじゃない、一緒に食べ一緒の時間を過ごす、というのを大事にしているというのはこれまでの数々の料理・食事シーンからも明らかだったわけで、ハプニングによるものとは言えあくまで葵らしさを貫けて、温かい気持ちをみんなに分け広められた最高の饗宴でありました。
明らかになったかと思われた、葵の過去も引き続き謎が謎を呼ぶ展開、というかさらに隠された秘密があったことが浮き彫りになってきて、天神屋に戻ってもそうそう落ち着くことはなさそうですが、それがまた楽しみ楽しみ。

シリーズ感想



浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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浅草に住み、浅草グルメをこよなく愛する女子高生、茨木真紀。人間のくせに日々あやかし関連の厄介ごとに首を突っ込んでは腕力で解決する彼女には秘密があった。それは真紀が前世の記憶を持っていること。その前世は人間ではなく、平安時代にその名を轟かせた鬼の姫“茨木童子”だということ。前世で「夫」だった“酒呑童子”の生まれ変わりである同級生の天酒馨を引き連れ、ブラックバイトに苦しむ手鞠河童や老舗そば屋を営む豆狸の一家など、悩めるあやかしたちのために「最強の鬼嫁」は今日も浅草中を駆け回る!
ほんとに通い婚だなあおい。
基本メンバーとなる真紀、馨、由理の三人は同じ作者が別名義で書いていた【メイデーア魔王転生記】とほぼ同じキャラクターなんですよね。勿論、キャラが同じだけで背景や物語は違いますし、世界観も異なっているのですけれど。
前世で恋人だったり夫婦だったり、という関係は少女漫画的にはドキドキキュンキュンした感情の動性が激しいものが多いのですけれど、ってか前世モノって再会イベントこそが最大の盛り上がりのはずなんですけれど、その手の定番に拘らずに既に幼少時に再会しちゃってるんですよね、この夫婦とプラス由理。
文句なしの幼なじみである。
また、前世の夫婦関係というのはその密接さ故に逆に現世ではなかなか感情のすり合わせができずに、再び結ばれるまで様々な紆余曲折があるのもまた定番なのですが、この真紀と馨ときたらどれだけ年季の入った熟年夫婦だよ、と言いたくなるような所帯じみた夫婦っぷりで。真紀なんかは夫婦関係を公言して憚らないですし、馨の方もまだ夫婦じゃねえ、と真紀が夫婦とか妻とか口走るたびに反論してるんだけれど、ほぼ必ず「まだ」という副詞が頭についているあたり、ただ建前に拘ってるだけなんですよねえ。
ってか、家で寝る以外は真紀の部屋に帰ってきてそこでご飯食べて一緒にDVDみたり、と同棲してるのと何ら変わらない生活様式になってますし。
前世は酒呑童子と茨木童子として多くのあやかしを纏めていた立場から、それなりに大仰な生活を送っていたと思われるだけに、なんで現世だとこんな所帯じみた夫婦になってるんだろう、と思わなくもないですけれど、下町全開の浅草という街が舞台なのに適応してしまっているのか。学校帰りなどの浅草食べ歩きなんか、どれも美味しそうだもんなあ。
そう、この作者の作品らしく、実に飯テロが決まってるんですよねえ。同じ世界観の【かくりよの宿飯】でのご飯が庶民的でありつつもかなり工夫が凝らされた上品な小料理屋らしい料理なのに対して、こっちで描かれるご飯は買い食いのネタだったり、屋台のあれこれだったり、自宅でちょいちょいっと料理して食べる本当の家庭料理だったり、という身近なものなんだけれど、これはこれで実に美味しそうで……。
というか、真紀がどれもこれも本当に美味しそうに食べるもんだから、それに胃が引っ張られてる。由理も馨もこの食いしん坊には実に甘々なので、あれこれと絶えず食べさせてあげるものなあ。まあ、あれだけ美味しそうに食べられたら、ついつい口の中に放り込んでしまう気持ちもわからないでもない。
でも、馨のバイト代の何割が真紀の食費に消えているのかは興味深い部分である。高校生の段階で、この生活費を稼いでる感の凄まじさよ。
人情モノらしく、元あやかしの大親分だった真紀が困っているあやかしたちを助けるためにトラブルに首をツッコんでいくのを、毎回苦言と言うか説教しながらもマメにマメに手助けし、後始末をしてまわっている馨と由理というトリオのはっちゃけぷりが実に楽しい。今は人間に生まれ変わり、人として生きながらも、あやかしたちを見捨てられない三人の優しい元あやかしたち。かつての悲惨な末路は、彼らの中に傷跡として刻まれているはずなのだけれど、その過去に背を向けず逃げ出さず、積極的に首突っ込んでいく真紀さんは、元は儚げな藤原の姫様だったはずなのに、なんでこんな姉御肌なんだろう。思いっきりパワータイプな脳筋型だし。

しかし面白い。真紀たち三人共若者らしい溌剌さや子供故の家族関係の悩みを抱えていながらも、夫婦として見るとむしろ枯れてさえいるような落ち着いた関係で、好きとお互い公言しているにもかかわらず、さっぱりしてるんですよねえ。これだけいつも一緒に居て、同じ時間と空間を共有しているのに、ベタベタした感がない。イチャイチャはしているんだけれど、甘酸っぱいというよりも安心が先に来ているというか……連れ添うという言葉が本当に似合う二人なんですよねえ。
同時に、二人きりの狭い世界にならないのは真紀の社交性と、由理という第三者であり理解者がそれこそ家族並に身近にいるからか。本当に面白い、心地の良い関係である。
ラストで茨木童子の存在が広く知れ渡ってしまった以上、前にもましてトラブルが飛び込んできそうな状況にはなったものの、この三人なら全然大丈夫そうなので、そのへんは安心して見ていられそう。
そう言えば、ゲストで【かくりよの宿飯】の大旦那さまがチラッと登場してたけれど、良いサービスでありました。

友麻碧作品感想

かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。 ★★★★   

かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。突然やって来て銀次を連れて行こうとするライバル宿「折尾屋」の旦那頭・乱丸に楯突いた結果、彼女は南の地に攫われてしまう。こそっとついてきたチビの力を借り、地下牢から脱走しようとする葵だったが、その前に乱丸はじめ「折尾屋」のあやかしたちが立ちはだかり―。銀次と一緒に「天神屋」に帰るため、四面楚歌の状況を打破すべく葵が考えた秘策とは…ゴーヤチャンプルー!?

くあぁぁぁ! なんという飯テロ!!

いやもうこれヤバイでしょう。出てくる料理がどれもこれも美味しそうで美味しそうで、お腹すきますわー! 読んだの夕食を食べたあとだったというのに、なんだか食い足りない気分になってしまってお茶漬け作って食っちゃいましたわいな。巻を重ねるごとに、料理の描写が鮮やかになってきてるんですよね。これに関しては【ベン・トー】シリーズのアサウラさんに匹敵してきたかも。あちらと違うのは、葵が作る料理がちょっとレベルの高い家庭料理というところでしょうか。なかなか気楽に食べられそうにないんですよね。小料理屋とか行かないと難しいんじゃないだろうか。いや、ちゃんと家でも作れるくらいの品なんだろうけれど、素材の新鮮さとか料理の手際なんか見てるとねえ。
それにしても、思い返しただけでもよだれが垂れてくる。あのプリプリっとしたイカしゅうまい。タコのゴーヤーチャンプルとか、ガーリック風味とふんわりと絡ませたとき卵がまたいいんだ、美味しそうなんだ。エビ頭の出汁でとったお味噌汁までついて、これが朝ごはんなんだぜ。
そして、タルタルソースがたっぷり掛かった、これまた新鮮な牡蠣をふんだんに使ったカキフライ! カキフライ! いや、実のところ自分牡蠣系は苦手なんだけれど……苦手なんだけれど、これは食べたい。レモンがたっぷり掛かってるんですよ。たまらん。
子供の頃は苦手だった茄子も、この歳になるとすっかり大好物になってしまって、揚浸しなんかすごい好きなのですけれど、この串焼きにした焼きナスも素晴らしい香味で、うんうん。なにより、鶏ですよ。手羽先を、おおこんなに大胆に使っちゃって。煮るんですよ。お酢と醤油と砂糖で煮込んで、茹で卵と大根も仕込んで。あのホロホロと肉が崩れ落ちるまで柔らかくなった手羽先の美味しそうなこと。卵と大根だってしっかり味が染みこんでて、ごはん、白いごはんをよこせーー!!!
あと、ブリの漬け丼とか、ニラ玉みぞれスープとか、そしてがめ煮と九州北部では呼ばれるらしい筑前煮。どれもこれも、もうたまらんくらい美味しそうで、どうしよう、どうしてくれる!!

大旦那様、あんたとんでもないのを嫁に捕まえてきましたね。うん、これはね、これなら餌付けもされるよ。飯で色々問題も解決できるよ。真心の篭った美味しい料理ほど、魂にドスンと来るものはない。舌から脳髄に魅了の電撃が流れ、頑なになっていたものもこわばって元の形に戻れなくなっていたものも、自然と解きほぐれてしまう。
美味しいごはんの偉大さよ。でも、ただ美味しいだけじゃあ足りないのだ。食べる人のことを一身に考えて、心を配り、考えに考え、その人が一番おいしく食べれるように作られたからこその美味しさであり、だからこそその美味しさの前に人は素直になってしまう。
大天狗の松葉さまがずっと抱え込んでいた後悔。息子である葉鳥さんとの不和も、お互い歩み寄ろうとしてこれまでの時間の蓄積とわだかまりがそれを妨げていたのを、二人の共通の思い出の料理が葵の手によって供され、思い出の中で定まらなかった真実が解き明かされるのですが、やっぱりこういう親子の情を沸き立たせる良い話は染み入るくらい好きなんだなあ。
個人的には乱丸や秀吉の乱暴な態度は幾らなんでも理不尽すぎて、どんな理由があり、儀式を成功させるためにどれほどの思いを重ねてきたのかが理解できてもなお、怒りは収まらず納得も出来ないのだけれど、不屈の思いで逃げず負けず、自分のできることに全力を注ぎ続ける葵のことは素直に応援してあげたい。本当に大した娘さんである。
しかし、今回は理不尽な扱いもありかなり精神的にも弱っていたっぽいのだけれど、ここぞというときにひょいっと現れてくれる大旦那様は、うんカッコ良かったよ。むしろ、天神屋に居る時はトップとしての立場が邪魔して気安く接してこれなかった分、魚屋に扮してひょいひょいと葵に会いに来た大旦那さまは、えらい親しみやすくて、それでいて弱っていた葵を自然と支えて勇気を与えてくれたせいか、好感度ガンガンあがってましたねえ。むしろ、天神屋に居た時よりも一緒に居る時間の密度も濃かったんじゃないでしょうか。あれで大旦那様、マメだし甲斐甲斐しいし手伝い上手だし、こうしてこっそり会いに来てる時のほうが距離感近いんだよなあ。
銀次さんを連れ戻すために折尾屋から逃げ出さずに踏ん張っている展開なだけに、銀次さんと急接近か、と思ったけれどむしろ忙しくて顔をなかなか見せられない銀次さんより、大旦那さまの方との距離が縮まるとはなかなかに予想外でした。花嫁呼ばわりから新妻呼びにまで発展していたにも関わらず、葵ももう否定しないどころかなんか満更でもなさそうな感じになってましたし。
いやあ、でも銀次さんも大旦那さまも、二人とも甲斐甲斐しいからどっちも旦那としては好物件なのよねえw

銀時が折尾屋に戻る原因となったある儀式。これにまつわる話の決着は次回に引き継がれたのだけれど、これまでの過程見ても殆ど全部葵が必要なものとか集めてしまっているんですよね。乱丸、偉そうにしているわりに何もできてないぞ。これは葵を連れてきた黄金童子さまの慧眼、というべきか。
ああ、記事書くのにちらちら読み返してるだけでまたお腹すいてきた。サバ、サバに煮付けとか食いたい。

シリーズ感想

かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 ★★★★   

かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。】 友麻碧/ Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿・天神屋の離れに、ついに食事処「夕がお」を開店させた葵。トラブルはあったものの、食事が縁で打ち解けたあやかしたちの力を借り、ようやくお店も軌道に乗り始めた。そんなある日、仕事で大旦那様不在の天神屋に“招かざる客”がやってきた!天神屋のライバル宿・折尾屋の番頭だという天狗の葉鳥は、なんと元は天神屋の番頭で、しかも暁の師匠にあたるそうで…。さらには、かつてその折尾屋に在籍していたという銀次の様子もおかしくなってしまい!?
葵に雑用頼まれてめっちゃ喜ぶ大旦那様が可愛すぎるんですけれどw
むしろ、何もしなくてもいいから大人しく待ってなさい、と言われるとしょんぼりしてしまう始末。ちょっと、大旦那さまってこんな愛くるしいキャラでしたっけ? 手乗り河童に負けないくらいあざとい、超あざとい!
餌付けも段々浸透し、前回の冷戦状態にあった料理長とのトラブルも丸く収めたことで天神屋の従業員たちからも好意的に見られるようになった葵。内側のいざこざが収められたら、外からトラブルが降ってくるのが順当というわけで、ライバル店にして因縁深い折尾屋の幹部たちが客として乗り込んでくる……って、あらすじ読んでると厄介事を持ち込んできたトラブルメーカー、みたいな扱いされてるけれど、実際はクレイマーとかそんなんじゃなく、普通にお客として来てるだけだったんですよね。しかも、元天神屋の従業員だったという視点から色々と助言くれたりして……いい人じゃん!!
もう一人の折尾屋の湯守の時彦さんも、天神屋の湯守の静奈さんの育ての親で師匠、ということで二人の関係はややこしい事になってるものの、基本的にいい人だったしなあ。
これ見てると、折尾屋とのトラブルって概ね折尾屋の旦那の乱丸の私怨なんじゃないか、と思えてくる。いや、それだけならもっと簡単な話だったんだろうけれど、まさか折尾屋と天神屋の関係が単なるライバル競合店じゃなく……という展開には唸らされた。うん、これは拗れるわ。ただ、だからこそお互いの店での人員の行き来も多かったんでしょうけれど。静奈ちゃんも元は折尾屋で働いていたみたいですし。

しかし、食事処「夕がお」ってお客さん相手のひっそりとした隠れ家みたいな売りとは別に、営業時間外は天神屋の従業員の憩いの場になってるんですねえ。みんな、仕事終わったあとにご飯食べに来て寛いでるしw
中には就業時間中にフラフラとつまみ食いしに来やる妖怪も居たりしますけど。客商売である以上、どうしたって気を張り詰めて緊張感を保ちながら働かなければいけないわけで、「夕がお」はそんな彼らの癒やしの場になって、葵の料理を食べてホッと強張っていた体や心がほどけて、息をつく様子を見ているのは、何ともほっこりしてしまう。
葵の料理も、単に美味しいんじゃなくて、すごく家庭的なあったかさがあるんですよねえ。食べる人のことを考えて作られてる。かと言って、家で出すような気を抜いたものではなく、すごく和風に凝ったアレンジがされていて、品が良くて同時に気安い。うーん、いやマジで美味そうなんだよなあ。これ一品一品に加えられたアレンジって生半可なものじゃなくて、本当に凝ってるんですよ。カレーにしても、かき氷にしても一手間も二手間も加えられていて、これがめちゃくちゃ美味そうなのだ。
飯テロである。
これ、現世の料理の知識が乏しいアヤカシたち、とか関係ないですよねえ。普通に、目の前に出されたらなんじゃこれ、美味しそう! ってなりますがな。
パン一つとっても、あんたパン屋さんか、と思うくらいにあれこれ仕込んでますし。
一方で、ついに葵がご相伴に預かることが叶った天神屋の目玉である料理長の懐石料理。これはこれで、素晴らしく美味しそうで美味しそうで。舌鼓を打って堪能しまくって悦に浸ってる葵の羨ましいこと羨ましいこと。
懐石って敷居も値段も高いんだけれど、こうしてみるとやっぱり美味しそうなんだよなあ。今まで食べたことのあるものも、何だかんだと美味しかったし。
でも、サンドイッチとか手軽に食べられる料理も美味しそうでねえ。豚の生姜焼きを挟んだBLTサンドとか! うう、美味しそう美味しそう。う、うどんナポリタンだと!? しかも、肉団子入り。色物にも思えるけれど、トマトから作った自作ケチャップを使ったそれは、やばい。すごくやばい。
この料理自体、こじれてしまっていた静奈と時彦の関係を繋ぎ直すために葵が下ごしらえしたオプションなんだけれど、それはそれとして美味しそうで美味しそうで。

お腹減った。

まあいい、大旦那さまを十分愛でられたので、大満足です。大旦那さまって、ちょっとだけ距離をあけたところから見守ってくれる存在みたいな感じが微妙にあったんですけれど、それはそれとしてあの構ってちゃんなところは可愛いなあ、と思うのですよ。
今のところ、男女の機微としては殆ど葵との間に生じてない気もするのですけれど。
むしろ、距離感としては若旦那である銀次との方がよっぽど近いなあ、と思っていたし、あの幼いころ葵を救ってくれたアヤカシの正体についても、それを匂わす伏線はどれも大旦那さまの影を感じないなあ、と勘ぐってはいたのですが……。
ラストの急展開を見ると、あれ? メインヒロインって銀次さんの方なの!?
今のところ、自分としてはどっちでもアリな感触なので、ここは流れに身を任せたい。場合によっては折尾屋と全面戦争になりかねない自体だけれど、今回の一件で折尾屋の中にも味方となってくれる人が出来たので、ある程度動きを取れる余地は作ってくれそうですから、あとは此処も葵の度胸次第になるのか。

シリーズ感想

かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。4   

かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”にある老舗宿・天神屋。女子大生の葵は、その大旦那である鬼神のもとへ、亡き祖父の作った借金のかたに嫁入りさせられそうになる。持ち前の負けん気から、あやかしたちの前で「借金は働いて返す」と宣言した葵。九尾の狐の銀次に助けられつつ、得意の家庭料理を武器に、ついに天神屋の離れに食事処「夕がお」を開店させた。だが、鬼門中の鬼門といわれるその場所は、一筋縄ではいかない。立地条件の悪さ、謎の営業妨害、そして予算削減など、「夕がお」の前途は困難ばかりで…!?
これは飯テロだなあ。読んでいてお腹が空いてしまう、というタイプじゃないんだけれど、「あっ、これは一口だけっでも摘みたい」と思わずヨダレが溜まってしまうタイプ、というべきでしょうか。
最近、食事描写や料理の描写が実に素晴らしい作品が散見されるわけですけれど、本作は食堂や凝った料理と違って、小料理屋の品が良いけれど気軽に箸をつけられる、まさに家庭料理の延長という風な料理なんですよね。でも、家のご飯に出てくる料理そのままではなくて、一品一品趣向が凝らされているのですけれど、それもほんのりと愛情篭った一手間、という感じがして、実に優しい風味なわけです。
なるほど、旅館の母屋から少し遠い離れの、静かな環境の中でトコトコとお湯が湧く音を聞きながら、じっくりと味わう手料理の数々。黙って静かに味わうもよし。連れ立ってきた相方と談笑しながら舌鼓を打つもよし。作中で、隠れ家みたいな雰囲気を味わえる店構え、なんて評価を受けているけれど、葵のひらいたお店はいっぱいのお客さんで満員になって大忙し、というよりも常連さんが落ち着いてくつろげる空間、というお店なんでしょうね。これなら、母屋の会席料理中心の高級感ある食事ときっちり住み分けできるんじゃないだろうか。
しかし、根性の据わった娘さんである。色々とへこたれても仕方ないような境遇に置かれても、負けん気が強くてくじけない。落ち込んでも引きずらない。前向きであっけらかんとして不敵に笑ってみせる、実に粋な姐さんである。こういう人って、他人へのアタリもキツかったりするのだけれど、彼女の場合打てば響く鐘のような溌剌とした部分と、包容力を感じさせるふんわりと包み込んでくれる柔らかさが相まってあるので、付き合えば付き合うほど好かれるタチなんでしょうね。気が強くもあるので、喧嘩を売られたら腕まくりして買う方なので、ナメられないですし。妖怪だろうと人だろうと区別なく、誑すタイプだ。亡き爺さんは、大いに好かれはすれども大いに嫌われもしたというので、その意味では葵の方が得なんだろうけれど。いや、純粋に彼女の場合は徳なんだろうなあ、これ。
そして、自立した女性でもある、と。今のところ嫁入りに反発しているのって、大旦那への反発じゃなくって借金の方に、というところなんですよね。見ている限りでは、大旦那個人に対しては懐いている、と言ってもいいんじゃないだろうか、というくらい屈託なく接している。大旦那からすると、自分と結婚したくない、と決然と言い放ちつつ、自分に対してはわりと気安く接してくるので、若干戸惑っているふしもある。好き嫌いに関しては暖簾に腕押し、というかあんまりこの娘、ちゃんと考えてないみたいだし。
キーワードは、幼いころに助けてくれた妖怪が誰か、というところなんだけれど、順当に大旦那さま、がその妖怪かと思ってたんだけれど、あんまりにも順当すぎてちょっと「あれ?」と思うようにもなってきたんですよね。銀次の反応が色々と怪しすぎて、一周回って怪しくないんじゃないかと思ってたんだけれど、さらにもう一周回ってやっぱり怪しくなってきたw

一巻感想
 
12月3日

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