夏の余暇に読書にかまけてみるのもよいのではないだろうか。それも最近じゃなくて、一昔前の作品で。
ここは一つ、過去の名作を紹介してみようじゃないか、という企画の第二弾。
なんとか予告通りに日曜日に記事を仕上げられた。よかったよかった。
というわけで、今回紹介するのはこの3シリーズ


流血女神伝
 帝国の娘(上・下)/砂の覇王1〜9/女神の花嫁1〜3/暗き神の鎖1〜3/喪の女王1〜8/外伝1・2>
 須賀しのぶ/船戸明里 集英社コバルト文庫
 (1999/2007)


                          

未だにこの作品のことを思い出すと圧倒される。一大スペクタクル大河ドラマ。空前絶後の歴史小説にしてファンタジーロマン。

超弩級の大傑作である。
偉大なる名作である。

このシリーズをして、ライトノベル・レーベルから刊行された作品の中でナンバーワンに挙げる人も少なからずいるのではないだろうか。自分も、どれが一番と言われると決めきれなくても、候補の最右翼として挙げる一作である事は間違いない。自分にとってのバイブルであると同時に、墓の下まで持って行きたい物語。
コバルト文庫という少女系レーベルから手を伸ばすことに躊躇を覚える、或いは全く知らない、という人もいるかも知れませんが、そう、これを読んでいないのは人生における損失とまで言い切っても構いません。
多分、これほどのスケールと奥行きを持った大河小説は、今後ライトノベルからは二度と出ることはないんじゃないかと思うくらいの大作。少なくとも、少年系レーベルからは決して出し得ない内容です。たとえ軒下がとてつもなく広い電撃文庫ですら、はたしてこれほどの「人生」を描くことを許容できるかどうか。
文字通りの「波乱万丈の人生」を歩んだカリエ。それは一人の少女の物語であり、女の物語であり、母親の物語。歴史の無慈悲に抗う人の物語であり、人と神の物語でもあり、運命というものに対する闘争と敗北の群像劇であり、峻厳なほど人間の光と闇を描き抜いた、人間ドラマの極みである。
一度足を踏み入れれば濁流のような勢いに、外伝含めた全27冊を読みきり、茫然自失となることうけ合いです。これこそ、長い休みに一気読みするに相応しいシリーズでしょう。

須賀しのぶ作品感想一覧



<ROOM No.1301 1〜11/短篇集1〜4>
 新井輝/さっち 富士見ミステリー文庫
 (2003/2009)





今は亡きレーベル「富士見ミステリー文庫」において、恋愛こそがミステリーとばかりに謎解きではなく恋愛という行為と思想そのものに備わる謎の探求に勤しんだ怪作がこれ、【ROOM No.1301】である。
ちなみにラブコメではない。さらには思春期の浮ついた青春恋愛模様というには、あまりにも重く清淡とした内容である。しかし、真っ当と言うには明らかに破綻し壊れた人間たちの織りなす人間模様は、まさに異端の恋愛小説と言っていいのではないでしょうか。
次々と複数のヒロインたちとセックスで繋がっていく主人公。彼は倫理観こそ常人からズレたものを抱えていますが、決して女性関係に無節操だったり、ただ流されているだけの主体性のない男性だったり、セックスを遊びと割り切っているわけではありません。彼は結局一度として遊びで女性を抱いた事はありませんでしたし、女性にとって必要だと彼が感じたセックス以外は、たとえ求められても受け入れなかった事が(錦織さんのケースは別として)よく読み込むと理解できるはずです。彼はただ一人の例外を抜きにして、ついに誰も自ら求める事はありませんでした。
恋愛を解することができず、恋愛に上手く向き合う事が出来ず常に悩み続けた彼の彷徨の旅は成長譚ではありません。彼は終始一貫して何一つ変わらないまま自問自答を続けます。
そんな彼の在り方に何を見出すかは、人それぞれでしょう。でも、たとえどんな形であれ、人と人が繋がることは素晴らしいことなのだという自明のことに辿りつけるお話なのだと信じています。
度肝を抜かれた後日談の大どんでん返しには、本当にひっくり返らされましたけれどね。あの展開こそ、この物語の真理であり、健一がついに見いだせなかった恋愛というものへの答えですよ、きっと。

新井輝作品感想一覧


<古墳バスター夏実 1〜3>
 七尾あきら/そえたかずひろ 角川スニーカー文庫
 (1997/1999)





これはもう完全に趣味。七尾さん、メッチャ好きなんですよね。ゾッコンのファンともいうべき作家さん。そこまで自分が魅了させられた発端ともいうべき作品がこれ、【古墳バスター夏実】だったのです。
魔法が科学よりも発展した現代にて、次元魔法の使い手にして、次元古墳の発掘をバイトにしている元気溌剌な女子高生三輪夏美を主人公とした、痛快SFファンタジー。
最初はご町内から、世界規模、さらには宇宙を通り越して多次元宇宙にまで広がっていくSF紛いの壮大過ぎる世界観。そのトントン拍子に跳ね上がっていくスケールと裏腹に、常にお茶の間的な雰囲気を失わない地に足がついた物語は、今思い返しても自分の趣向にしっくりと馴染みます。
後に【幻妖草子 西遊記】や【風姫】を経て、【シャギードッグ】という一つの作風のブレイクスルーへと至る七尾あきらさんですが、彼の人の原点は此処にあり、同時にこの人の織りなす世界の素となるものすべてのがこの作品に詰まってると言えるでしょう。
特に第三巻の大風呂敷広げまくった、次元宇宙をまたにかけた平行世界の自分との戦いはスケール感、疾走感に劇的なクライマックスも相まって、盛り上がったんだよなあ。懐かしい。
誰しもが認める傑作、とは言えないのですが、個人的に大切な思い出の物語としていつまでも大切にとっておきたい作品なのでした。
氷見香嬢、激ラブっ!

七尾あきら作品感想一覧


今回はこれにて。
この調子であと一回、二回は続けられるか。予定通りなら、また来週日曜日に。