ニアデッドNo.7 ★★★☆  

ニアデッドNo.7 (電撃文庫)


【ニアデッドNo.7】 九岡望/吟 電撃文庫

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目覚めた少年は、何者でもなかった。
“再葬開始”の合図と共に、いつの間にか持っていた火の粉を纏う刃を振るい、異形の敵を倒すのみ。
“境死者(ニアデッド) No.7”──赤鉄。それが、彼に新たに与えられた名だった。
なぜ自分は戦うのか──。No.6である美しき少女・紫遠と共に、訳のわからぬまま死闘に身を投じる赤鉄は、やがてある事実にたどり着く。No.7の称号を持つ“先代”がいたこと、そして自分がその人物に殺され、No.7を“継承”したことを……。
現代ダークファンタジー、開幕!
イラストレーターの「吟」さんとのコンビはそうか、代表作の【エスケヱプ・スピヰド】と同じなのか。図らずも、エスケヱプ・スピヰドと同じく本作も主人公サイドのメンバーには番号が振られてるんですよね。オマージュとなっているのはサイボーグ009なんでしょうけれど、戦隊モノの色区別とはまた違う、個性的な面々が番号によって揃えられて一塊のチームとなっているシチュエーションってやっぱりなんかカッコイイんだよなあ。
本作はまだ第一作目ということで、メンバーの半分近くは他に出かけていて登場しないのですが、九岡さんがこういうスタイルを得手としているのが良く伝わってくるんですよね。もちろん主人公に焦点を当てながらも、メンバーそれぞれ多くのものを歴史、人生、他者の想いなどを背負った者同士が寄り添い、共に生き、共に戦い、たとえその過程で滅びるとしても、その生命と祈りとを引き継いだ者と共に歩み続ける、家族のような戦友にして運命共同体というものを描くことへの、筆に乗ったビリビリとした感触がまた素晴らしいんだ。
これは意図したものなのか図らずなのかはわからないけれど、エスケヱプ・スピヰドと同じく本作でもこの“境死者(ニアデッド) ”と呼ばれる存在になってしまうには、それまでの人生を一度リセットされることになるわけで、その際に前の人生における記憶は消え去ってしまうのだけれど、それはその人の中から以前のことが何もかもなくなってしまうということを意味してはいないんですよね。それはニアデッドになる条件にも深く関わってくることになるんだけれど、ニアデッドになるということは生まれ変わると同時に二人分の想いを引き継いでいかなくちゃいけないんですよね。人間だった頃の自分と、そんな自分に投げかけられていた先代の想いを。このニアデットたちの家族めいた仲間意識を思うなら、去っていった仲間に向けられていた他のメンバーの想いも受け止めて引き継いでいかなくちゃいけないのかもしれない。
それを、主人公たる赤鉄は中途半端に人間だった頃の記憶を残していたがために、すべて向き合っていかなくてはならなくなったわけで、その継承が中途半端であり「彼と彼女」の物語の結末がまた決着ついていなかったがために、赤鉄は他のニアデットたちよりも恐らくは過酷な形で直面していくことになる。
なかなかに、主人公に優しくないシチュエーションとも言えるのだけれど、物語のすべてが明らかになってみると赤鉄にこれからの覚悟とこれまでへの決別、そして本当の意味で死んだ自分と彼女の想いを引き継げる機会があった、というのはむしろ幸いなのかもしれないなあ。

しかしこれ、ヒロインはあくまで紫遠の方なんだろうか。夕里子はがっつり噛んでくるとはいえ、あくまで外部者であるわけですし。ただ、外側の人間だからこそ違う形で協力できる術はあるわけで、彼女自身能力的にも信念としても非常に優秀で、ニアデットたちにも有益だったりするので、これからも普通に絡んできてもおかしくはないのだけれど、エスケヱプ・スピヰドでの「叶葉」と違って、その存在が主人公の生き方の根幹に関わってくるというほどには深い関係にはないからなあ。
その方面は、現状緋霧が全部持っていったまま離していない状態とも言えますし。いや、その意味においてもニアデットって常に想いを置き去りにしてきているとも言えるわけで、その誕生の根源に絶対的な孤独があると思えば、その仲間意識の強さの根本がなんなのかも何となく伝わってくる。
ラストシーンの全員集合にはやはりワクワクするものがあっただけに、本格的にメンバー全員のキャラが明らかになるだろう次巻はすごく楽しみ。

九岡望作品感想

血翼王亡命譚 2.ナサンゴラの幻翼 ★★★☆   

血翼王亡命譚 (2) ―ナサンゴラの幻翼― (電撃文庫)

【血翼王亡命譚 2.ナサンゴラの幻翼】 新八角/吟 電撃文庫

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王女と護舞官が失踪した――。そう記された歴史の影で、それでも二人の物語は続いていく。「翼」と呼ばれる古代遺産を探す猫耳娘のイルナに誘われ、ユウファたちはかつて翼人が繁栄を極めたとされる秘境ナサンゴラへ向かうことに。亡命で全てを失い、言血の記憶が呼び起こす終わりなき悪夢に苛まれながらも、ユウファは様々な出会いを通し、己の宿命を見つめ直す。しかし旅の果てに待ち受けていたのは、街全体が湖の底へ沈むという突然の凶報。一行の運命は「親子」を巡る長大な悲劇へと呑み込まれていく。そしてその時、ユウファとアルナ、二人を繋ぐ大いなる因果が静かに胎動を始めていた――。
正直、このシリーズは第一巻で完結するほうが自然な物語だと、あの一巻を読み終わったときには感じたものでしたけれど、そうかなるほど……大きすぎる欠落を抱えてしまったユウファが歩き始めるはじまりに至るまでの物語なのか、これは。
人生そのものを損なうほどの喪失を抱えた人間が主人公、というのは珍しくはないのだけれど、それを過去の回想ではなく、シリーズの第一巻まるまる使って描いたというのは考えてみればすごい話である。その上で、生きる理由、人生そのものである大切な人を喪ってしまった青年を、目的も何もないまっさらな状態で放り出して主人公として第二巻をはじめたわけだからえげつないと言えばえげつない。
アルナを喪って、何故生き続けるのか。何を支えにして、これから過ごしていけば良いのか。何もないまっさらの状態で、イルナの翼人伝説を追う旅に同行するものの、彼の心にぽっかりと空いてしまった穴は一欠片も埋まる様子もなく彼自身を苛み続けるのである。
まだ、空隙を埋めることが出来たら、と思っているだけ前向きなのかもしれないけれど、一向に埋まる様子がないんですよね。アルナのためだけに生きてきたユウファが、そのアルナを喪って簡単にその喪失感を埋めることが出来るはずがないのですけれど、そうなんですよね、これって失ったものを取り戻す話でも、失ったものを代わりのものを見つけてぽっかりと空いた穴を埋める話でもないわけだ。
大切なものを喪ってしまった自分を受け入れる話。心に大きな穴を空けてしまった自分と、生涯付き合っていく物語なのか。その上で、死んだように生きるのではなく、哀しみを背負ったままでもきちんと生きていく、自分を立て直していく物語なのだ。その為に、改めてアルナが考えていたこと、思っていたことを掘り返し、自分の中で消化し、清算し、彼女が望んでいたものを自分なりに反映していかなければならない、と。そう思い至るのに、アルナの傷の一つでもある「家族」にまつわる話を、このジルとサーニャという血の繋がらない親子との出会いと、その故郷で起こった事件を通じて自分の中で形にしていくわけだ。
彼が、ちゃんと自分の足で歩きはじめるために必要だったんだな、今回のは。未だ、血翼王亡命譚というタイトルがどういう意味なのかがハッキリとはしていないんだけれど、自分の居場所を得られない人たちのために、という理由が、徐々にユウファの中で浮かび上がってきている。それがちゃんとした形になったときこそ、ユウファの始まりなのだろう。
それにしても、冒頭しばらくのユウファって完全にイルナのヒモだよなあ、これ。無職だし、食べさせて貰ってるし、何の目的もなくフラフラとイルナにくっついてるだけだし。護衛という名目はあっても、実質養ってもらってるようなものだったし。その上に、抜け殻同様の精神状態でイルナがつきっきりで支えていてくれたりしてたのを見ると、精神的にも経済的にも全面的にイルナに背負われっぱなしという状態でしたしねえ。イルナに感謝するのは大前提として、もっとヒモとして養ってくれる女性はチヤホヤするのが良いのよ? 少なくとも、他の女性に構うのはいいとしても、ヤキモチ焼いてることに気づくくらいはしてあげないと。

それから、魅惑的ではあってもややフワフワとして浮ついた感じのあった世界観が、馴染んできたのかグッと実像が出てきてバックグラウンドとしての存在感を見せつけ始めてきた。ナサンゴラの街の設定が非常に重厚であり、物語の要でもあったという要素もあったんだろうけれど、この独特の……普遍的な常識や価値観がどこか異なっている、まさに別の世界という「ファンタジー世界」感は素晴らしい。

1巻感想

血翼王亡命譚 1.祈刀のアルナ ★★★  

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

【血翼王亡命譚 1.祈刀のアルナ】 新八角/吟 電撃文庫

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[私は駄目な王女だからね。自分のために命を使いたいの]

――この日、赤燕の国(レポルガ)の国史には第百三十二代王位継承者アルナリス=カイ=ベルヘスと、その護舞官ユウファ=ガルーテンが失踪したと記された。
だが、それは嘘だと俺は知っている。太陽を祀る五日間、彼女は王族の在り方に抗い、その想いを尽くしただけだった……。

突如国を追われた王女アルナ。刀を振るうしか能のない護衛剣士ユウファ。猫の血を身に宿した放浪娘イルナ。人語を解する燕のスゥと、軍犬のベオル。
森と獣に彩られた赤燕の国を、奇妙な顔ぶれで旅することになった一行。
予期せぬ策謀と逃走の果て、国を揺るがす真実を前にして彼らが胸に宿した祈りとは――。

これは歴史の影に消えた、儚き恋の亡命譚。
なるほどなあ。昨今、なかなかこれだけ独特独自の世界観を造りこんでいる作品が少ないだけに、その幻想的な、或いは雅な、とでも言うような物語世界にはやはりインパクトがある。この種の神話と人間の歴史の間にあるような時代感、御伽話・童話的要素を醸すファンタジーって、今あるライトノベルレーベルではまず出てこないタイプですもんね。この種の作品が出てくるというのは、さすがは電撃文庫なのだろう。むしろ、電撃文庫をして最近は少ないと考えるべきかもしれないが。
まあ近年は「メディアワークス文庫」の方にこの手のは流れていっているし、この手の空気感を備える濃密なファンタジーなら「C★NOVELSファンタジア」が本流なんで、仕方ないっちゃ仕方ないのだが。
ただ本作は……まだ世界観の設定が設定として若干浮いたままなカンジがするんですよね。その世界を構成する根幹として根付き切っていない。設定が背景に馴染みきっていないのがまだまだ作りこみが足りていない気がする。儀式、風習、慣例、その国の一般常識から様々な物事に関する歴史的背景。世界観こそが、作品の武器である以上、これに妥協してはいけないのだ。もっとも、妥協してるような甘さがあるわけじゃないんだけれど、そうだなあ……まず国の歴史や在り方があって、それが原因となってアルナたち登場人物の人生が翻弄される、というよりも、アルナたちの人生が翻弄され苦悩させるために祭事や国の在り方が用意された、かのようなある種の軽さ、座りの悪さをちと感じてしまったんですよね。プロットの立て方の順番としてはまったく間違っていないのだけれど、それを読んでる段階で感じてしまうとアルナたちの生き様の必死さにお膳立てという無粋な感覚が割り込んでしまうわけで、世界観の重厚さと奥行きこそが武器であり基礎であり、その前提となる部分こそが登場人物たちの情緒により鮮やかさをもたらす作品だからこそ、基礎土台にきちっとハマっていない浮いたような隙間があるような感覚を感じてしまう、というのはなかなか厳しいものがあるんですよね。
なまじ、その設定群が歯ごたえ十分に作りこまれ、練り上げようという意欲が注ぎ込まれているからこそ、余計に浮き彫りを感じてしまう、という皮肉があるのかもしれない。
まあこれは、書き続けていけば馴染んでいく部分でもあるので、最初故の「浮き」なのかもしれません。
気になる点は、むしろアルナとユウファに焦点を当てすぎて、アルナ王女が抱えていた問題や周辺の登場人物たちの背景的なものが描かれておらず、終盤になって急にそれぞれが抱え込んでいた人間関係の相剋や心の闇なんかが明らかにされて、しかもそれが物語の核心的な部分を担っていた為に、かなり唐突感があったところなのでしょう。ユウファにとって、幼いころのアルナと培った関係とその時に定めた目的以外は眼中になく、主に彼の視点で物語が進んでしまったために、アルナやその他の人たちのことについて深い部分で無頓着であったがゆえに、終盤でめまぐるしいことになってしまった、という事があるのでしょうけれど、肝心のアルナについてすら、あそこまで無知で理解出来ていなかったとなると……いや、悲恋モノとしてはすれ違い自体は悪くないのですが、結局最後までユウファはアルナの闇も覚悟も決心にも気づかないまま、常に彼女に先を行かれ、追いつけないまま置いてけぼりにされてしまったわけですから、悲恋の相方として役者不足もいいところだったんですよね、結果的に。師匠との話にしても、全部終わってしまってからようやく理解も事情も追いついているようなものなので、ユウファにとってのケリではなく師匠にとってのケリをつけるだけしか出来なかった。主人公としては、あまりにも無力で悔しい結末だったと言えるんじゃないでしょうか。
物語的にはここで終わるほうがしっくり来る気がするのですが、シリーズナンバーついてるんですよね。ということは、このまま続くことになるのか。全部取り返しがつかなくなってから、ユウファの物語は今ようやくはじまった……いや、果たしてスタート地点に立てたのかすらまだ怪しいか。

サクラ×サク 04.滅愛セレナーデ ★★★☆  

サクラ×サク04 (ダッシュエックス文庫)

【サクラ×サク 04.滅愛セレナーデ】 十文字青/吟 ダッシュエックス文庫

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最後に水浴びをしたのは、いつだったか。五日前?もっとか。十日前…?ハイジ・バランは、まだ、生きています。大王都カバラからなんとか脱出したものの、帝国の軍勢は既にデスティニア公国へも進軍していた。大軍で押し寄せる帝国軍にサクラたちは少数精鋭で立ち向かう…!血が滾って色々躍る大戦詩幻想交響曲、運命が軋む4巻!!
一貫して姫様激ラブで変わらないのはハイジくんだけれど、一方でサクラはこの婚礼の旅に出てから随分と変わりましたよね。この過酷で次々と随行の人たちが切り刻まれるみたいに殺されていく悲惨な旅の果てに、姫さまは何を思ったのか。あれだけ酷い旅の終着が望まぬ政略結婚であった挙句に、帝国の侵攻によって全てが台無しにされてしまい、今度は公国への逃避行ですからね。
自分を押し殺し、すべてを跳ね除けながら、みなを守ろうと無駄に足掻いていた姫様。自分の価値を最低に見積もって、自分を消費し尽くすことで国や民や兵士を守ろうとしていたサクラ。でも、婚礼の旅では、そんな自分が戦争の道具ではなく、政略の駒として自分の力ではどうにもならない立場に置かれ、その立場故に自分こそが一番守られなければならなくなった婚礼の旅で、他でもない自分の為に死んでいく人々を目の当たりにして、彼女は自分だけを犠牲にする戦い方をしなくなったように思う。自分を守って死んでいく兵士たちに悲しみ苦しみながらも、その誇りを讃え、その死に相応しい姫であろうとするようになった。
そうして、彼女は少しだけ、本当の気持ちを表に出すようになった。
サクラは少しだけ、自分を押し殺すのをやめて、素直になった。
それは、或いは諦観の果て、故だったのかもしれない。絶望すらも通り過ぎた、諦めの境地だったのかもしれない。それでも、彼女の願いはその口からこぼれだした。そのあまりにも哀しく、そして切望に満ちた願いは、だからハイジに届いたのだ。
そして、ハイジ・バランという男は致命的なほどに空気が読めず、だからこそサクラの諦めも、彼女の異能の摂理すらも一顧だにしなかったのだ。端からどうでもよいという風に、姫への愛になりふり構わずのたうち回ってみせるしかない男なのだ。物分かりなんて、良くない以前に出来ない男なのだ。
バカだからこそ、押し通せる一念がある。愚かだからこそ、この世の真理ですら通用しない。ハイジ・バランは度し難いほどバカで愚かな男であるからこそ、その一途さは決して誰にも届くことのない場所にまで手が届いたのだ。だからこそ、サクラ姫に相応しいのはこの男だけなのだ。彼だけが、絶望を通り過ぎた先に至る姫の諦めを、打ち崩す。

一方で、また違う形で愛する人へ殉じる男も居る。ハイジとサクラのそれが触れ合えなくても触れ合おうと足掻く二人なら、亞璃簾と不人のそれは癒着に似た不可分だ。僅かな間離れただけでも、お互いの心に波が生じるほどの比翼。それは、二人の立場がどう変わろうと何も変わらない不動の同一性。でもだからこそ、その安定性こそが男の内面をじわりじわりと煮立たせているように見える。亞璃簾もまた、無垢なほどの無自覚の中で一歩一歩後戻りできない自覚を育んでいるように見える。この二人は、或いはその癒着を引き剥がし一人の人間と人間として向き合った時にこそ、一人の男と一人の女として始まるのかもしれない。始まってしまえば、その時点で致命的なようにも思えるほど、あまりにも深くはまり込んでいるけれど。

そして、その異能の特筆性ゆえに、既に奈落に落ちている男も居る。一心不乱に狂気の淵で踊っている男がいる。これこそが、ラスボスだ。この物語の、極北だ。ついに見えた。戦うべき相手が。
この男の愛こそが、みなを舐め尽くしていくだろう。踏みにじっていくのだろう。まずは一組の兄妹の愛が穢された。
そうして、許されざる愛の数々がせめぎあい、相い争う。お互いを許せず認めず滅ぼしつくそうと、殺しあう。
サブタイ「滅愛セレナーデ」。
つまりは、そういう事なのだ。


シリーズ感想

サクラ×サク 03 慕情編3   

サクラ×サク03  (ダッシュエックス文庫)

【サクラ×サク 03 慕情編】 十文字青/吟 ダッシュエックス文庫

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祝! 公女殿下(サクラ)御結婚!! 何を祝っちゃってるの? 何がそんなに嬉しいの? ねえ? きみたち本当にわかってるわけ? ふざけんじゃねえぞこら。いけない、いけない。ハイジ・バランは軍人なのだ。任務を果たすのだ。公女殿下をお守りする。しっかりと嫁ぎ先までお届けする。嫁ぎ先! 嫁いじゃうんですかあ!? そうなんです。公女殿下はご結婚されるんです。いやあ。びっくりですよ。 カバラ大王国への道中、ハイジたち随行員の命が次々と狙われる。そしてその魔の手はついに……。 血が滾(たぎ)って色々躍る大戦詩幻想交響曲(ファンタジックウォーシンフォニー)、混沌の三巻!!
本当にこのハイジ君は挙動不審で垂れ流しにされている内心ときたらサクラ姫のことが好きすぎて気持ち悪いといって然るべきなんだけれど、キョドリまくってる内面ばかり見せられる一人称の描写ばかりだとなかなかわかりにくいんだろうと思うんですけれど、客観的に見るとこの子、ハイジくんってかなりべらぼうに優秀なんですよねえ。いや、確かにコミュニケーションとりにくそうな内向的なところはある、というか前面に押し出されるように内向的すぎるんだけれど、戦闘力や決断力、洞察力やらあれこれ実戦での様子を見てると、抜擢されるだけのあれこれはやっぱりあるんだろうなあ。部下たちが手のかかる弟のように慕ってくれているというのも、決してハイジが傍から見ていて微笑ましいから、だけではないはずなんですよね。ちゃんと自分たちの命を大事に扱ってくれる、という信頼があった上で命を懸けるに足るものが彼にはある、と信じているからこそ、なのでしょう。それにしても、見る目のある出来た人たちだとは思いますが。一見すると、こいつヤバイんじゃない?と思うような子だしなあ。でも、本人は自信持ってないようだけれど、折々でちゃんと部下たちを指揮できてるんですよね。まあそれだけに、だからこそ、ハイジにとっては痛恨事だったのでしょうけれど、あれは。結果論だけれど、ハイジはそれを判断をミスった、と考えてるわけですしね。でも、へこんでもそこで心の痛みや疲弊に思考や身体を止めちゃわずに踏ん張り続けたところはハッキリ言って見直しました。もうちょっと打たれ弱いと思っていただけに。

最前線で戦い続ける立場から、急遽政略結婚の駒として他国の皇太子に嫁ぐことになったサクラ姫。同じ戦場で一緒に戦うだけでも何とか満足しようとしていたハイジにとっても、それは衝撃的な出来事で否応なく自分のサクラ姫への感情と対峙させられることになる。一方のサクラにとっても、結婚という事態を前に自分の諦観しきった感情をかき乱す存在であるハイジに対して、より深くその感情の正体が何なのかと向き合わなければならなくなるわけだ。
サブタイトルが慕情編、というのも伊達ではないのである。
結婚相手であるはずの皇太子から次々と送り込まれてくる刺客に、次々と櫛の歯が欠けたよう殺されていく随行員たち。まさに血塗れ泥まみれの花嫁行列となってしまったカバラ大王国への道行。普通、これだけ正体不明の暗殺者たちに襲われ続け、次々と同僚たちが殺されて行ったら随行員たちも動揺し、逃亡者も出そうなものなんだけれど、非戦闘員の文官も含めて最後まで規律を保ったまま士気も崩壊せずに目的地にまでたどり着くんですよね。これ、地味に凄いなあ、と感心した次第。最終的に出発時から半壊以上、3分の1も辿りつけなかったんじゃないかな。そういうむちゃくちゃな道程にも関わらず、最後まで皆サクラ姫を守り続けたというのは、やはりそれだけサクラ姫がカリスマを集めてたって事なんですよね。一般市民には殆どその知名度は浸透していないようだけれど、最前線での人気は相当なものになってたんじゃないだろうか。
実際、国王をはじめとする王家がサクラのことをどう考えているかわからないんだけれど、前線から引き剥がして政略結婚に利用しようとするだけの危険要素は積み上がりつつあった、とも言えるんだよなあ。

ラスト、かなりしっちゃかめっちゃかな展開になって、この巻で吹き荒れた殺戮の嵐がどのような意図で行われていたのか、その真意すらも有耶無耶になってしまったのか、それともこのラストの展開も含んだ上の事なのかもわからないまま次回に続いてしまったのだけれど、ある意味ここからが物語としての本番なのか。
真人、という重要な鍵も出てきましたし、とにかく次だ次。

エスケヱプ・スピヰド/異譚集4   

エスケヱプ・スピヰド/異譚集 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド/異譚集】 九岡望/吟 電撃文庫

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鬼虫達のその後を描く本編後日談と学園編を収録した、ファン必携の短編集登場!

『前夜』九曜が鬼虫として目覚める前夜を柊目線で描いた物語。
『幕間/昭和一〇一年の学校の怪談』帝都への旅の途中、九曜と叶葉が廃校で体験した一夜の不思議とは?
『幕間/迷宮電気街奇譚』廃墟の電気街・神原迷宮で九曜達が出会ったのは、機械仕掛けのメイドだった!?
『異説/私立やしま学園』もしも九曜達が普通の高校生だったら。まさかの学園編!
『後日談/ヱピグラフ』黒塚部隊との戦いで生き残った鬼虫達と叶葉は、世界を巡る旅をしていた。彼らにはある目的があって――?
電撃文庫MAGAZINE掲載の3編に加え、書き下ろし2編を収録した特別編!
というわけで、本編終了後の短篇集であります。打ち切りになった作品は終わった後にこんな風に余韻を楽しみ、作品を振り返り、味わいを思い返し、終わりの先を思う為の物語なんて出せませんからねえ。こればっかりは、きっちり完結した作品の特典かと。

【前夜】
九曜にとっての祝福だった少女・柊。蜉蝣の鬼虫に相応しく、瞬くように現れ消えていった彼女だけれど、その一瞬があまりにも鮮烈すぎて、果たしてヒロインとしての輝きはいかほどばかりだったのか、と思いを馳せるものでしたが、こうして前日譚においての天真爛漫な姿を見ていると、本格登場していたら果たしてどれだけ強烈なヒロインとして君臨していたか、とやはりIFを想像してしまいます。とはいえ、柊の場合は鬼虫みんなのヒロインという感じで、九曜一人のヒロインだった叶葉とはいい意味でかち合わなかった気がしますけれど。

【幕間/昭和一〇一年の学校の怪談】
そういえば、本編ってそれこそ本筋の話のみに徹底していて、こうした余談というか寄り道というか、本筋とは関係ない話って全然と言っていいほどなかったんですよね。それだけ、本筋の話がみっちり詰まっていたとも言えるし、わざわざ脇道に逸れてキャラを描かなくても、その本筋だけで登場人物の魅力をきっちり描けるだけ詰め込めていた、とも言えるんだけれど、こうした決して肩に力が入らない話でもちゃんと楽しい作品だったんですなあ、このシリーズ。いや、だからこそ終わった後にこうして短篇集という形で世に送り出せたんだろうけれど。オチがまたなかなか味わい深いもので。このシリーズ、人間ベースの鬼虫たちだけじゃなくて、生来機械であるはずのロボットたちにもちゃんと魂篭ってるのが好きでした。

【幕間/迷宮電気街奇譚】
これもある意味、ロボットたち機械人形たちにも魂があるのだ、と語りかけてくるような話で。方向性はいささかならず、ギャグ方面にすっ飛んでますけれど。真面目な方面だけではなく愉快な方面にもきっちり魂魄実装してます、みたいな? メイド化させられていたムキムキの機械兵士たちのその後が非常に気になるw
戦後の荒廃しながらも復興しつつ帝都、というイメージ、街の様子など九曜や叶葉たちの狭い行動範囲しか描写されていなかったので、こうして一旦とは言え帝都の復興の活況の様子を垣間見ると、なんとなくよりクリアに世界観が見えた気がして、そういう方面でも良かった話でした。あと、叶葉はプロメイドだったのか。

【異説/私立やしま学園】
凄い、学園モノに変換してもまったく違和感がない! 学生から先生にいたるまで、互換性が素晴らしい。キャラのキャパシティが想像以上に大きかったことを思い知らされた。ヤンキー先生はいいなあ(笑
ってか、先生たちが集まって視聴覚室でゲームとか、遊びすぎww
このお話、鬼虫たちもコードネームじゃなくて、人間の時の名前で呼ばれているんですけれど、お陰でこの話で人間名がちゃんと馴染むんですよね。九曜も、真一くんとして改めて頭のなかに入力出来ましたし。
お陰で、後日譚でもすんなり違和感なく入れたのはうまい構成だなあ、と。

【後日談/ヱピグラフ】
鬼虫としての名前を捨て、再び人であった頃の名を名乗り、大陸を旅する真一たち。
平和や平穏の中でちゃんと過ごせるのか心配なメンツだったのですが……ラブラブな真一と叶葉だけじゃなく、他の連中もしっかり平和を堪能して、しかもちゃんと楽しんでいたのを見て、なんだか心底安心した。
というか、このメンツで一番エンジョイしてるのが竜胆さんだった、というのに仰天だよ!! め、めちゃくちゃ旅を楽しんでるよ、この人!! あの堅物が、こんなんなるとは。もっと、平和になってやることなくなって戸惑うタイプかと思ってたのに。すんごい楽しそうだ! エンジョイしまくってる! 馬乗ってはしゃいでるよ、この人w
生きてるって素晴らしいなあ、と何故かしみじみ実感してしまった。
みんな、本当に仲いいし、当てども無い旅だけれどそれをみんな心底楽しんでいる。未来は明るい。良かったなあ、良かったなあ。本編の終わりに、さらに明るさと温もりを与えて貰った気がする。
もう、何も心配することもなく、不安に思うこともない。作者が書き切った、というのもよくわかる。あとは、もう見送るだけでいい。そんな気分。手を振って、笑って見送ろう。さようなら、よい旅を。

シリーズ感想

エスケヱプ・スピヰド 七4   

エスケヱプ・スピヰド 七 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド 七】 九岡望/吟 電撃文庫

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戦う、守りたいものがあるから――。
神速アクション、本編ついに完結!

雪解けの始まった落地では、鬼虫と甲虫の最後の戦いが始まった。剣菱の前に立ちふさがるのは戦闘狂の烏帽子。
上空では、竜胆が虎杖と兄弟の因縁の戦いを繰り広げていた。叶葉達も、神鯨の乗組員の説得に当たろうと艦橋へと赴く。そして、九曜と朧の戦いもまた――。
人間から兵器になった鬼虫達の、戦中から続く長い戦いがついに終わりを告げる。譲れない信念を掲げた鬼虫と甲虫、果たして生き残るのはどちらか――。
最強の兵器達の神速アクション、本編感動の完結!

お見事!!
素晴らしい映画を見終えた後に、自然とスタンディングオベーションが発生するように、思わず拍手してしまいたくなるような、見事な締めでありました。一つのエピソードとして、ここまで過不足無く完成度が高い作品も珍しいんじゃないだろうか。それも余裕のないぴっちりとした完成度ではなく、優雅で実に美しい余韻を与えてくれる、気持ちのよい完成度、それはもう機能美と言っていいくらいの。
兎にも角にも、この物語の根源である「戦争を終える」というテーマを、全体の物語としてもひとりひとりの個人としても完膚なきまでに描き切った事が、この見事なまでの幕引きに繋がっているのでしょう。なかなか、ここまで行き届かせて書けないですよ。
実のところ、前回に鬼虫の何人かが潰えてしまったことで、未来へと引き継ぐために過去に引きずられている人な根こそぎ「託す」という形で切り捨てるんじゃないかと、恐々としていたんですね。具体的には、九曜と叶葉たち若者や幼い子どもたちを除いた大人たちは、特に鬼虫や姉姫様などは軒並み退場するはめになるんじゃないかと。
それはそれで、戦後も続く「戦争」の決着だし、次世代に想いを繋いでいく、という意味では一つの正しい形でもあって、作品の形としては間違っていないのだけれど、それは美しくとも哀しい結末になってしまうなあ、と痛みを噛みしめる用意はしていました。逝ってしまった柊たちの在り方なんか見てるとねえ、どうしてもそんな予感は否めなかったわけですけれど……。
いい意味で、予想を覆してくれました。悪しき怨念は黒塚が、未練と哀しい想いは伍長が、全部持っていてくれました。結局、敵側の敵役としての格については、黒塚は小人物の域を脱せなかったのですけれど。小物というには、御大尽なんで小物、器が小さいというのは違うと思うんだけれど、思想といい過去から現在までやっている事といい同志に対する容量にしても、お世辞にも敵としてもボスとしても、多くを受け止める器の持ち主ではなかったんですよね。所詮は遺物に過ぎなかった。はじめから、何も背負えていなかった、とも言えるのですけれど。結局、彼自身何も変われず、得ることもなく潰えてしまったわけですし。
正直、弟の竜胆とは格が違ったなあ。
戦う敵として、痛みも後悔も受け止めて、先へ進むための壁であり踏み台であってくれたのは、やはり伍長一人であったと言えるのでしょう。
実は最後の最後まで、巴姐さん、ラスボスなんじゃないかとハラハラして見てたんですけれど、違ったみたいで、良かったです。いやあ、絶対何か企んでると思ったんだがなあ。精神的にもちょっと狂気入った人だったし、家族である鬼虫たちの為なら何しでかしてもおかしくない雰囲気あったし。逆に言うと、もしラスボスにならないのならまず途中で消されるキャラなんだという予想もあったんですよね。それは、竜胆兄さんも同じだったんだけれど、だからこそこの二人が残ってくれたのは実に心健やかにしてくれる展開でした。
生真面目で遊びのない堅苦しい人だと思ってた竜胆が、実は結構スットボケた天然っぽいところもある人だと知れたのは嬉しいところでしたし。
最後の旅立ちのシーンに至るまで、これ以上ない「見事」さでありました。デビュー作のシリーズとしては出色の出来だったんじゃないでしょうか。これからの活躍にも期待が募るばかりです。
完結、お疲れ様でした。

シリーズ感想

エスケヱプ・スピヰド 6 4   

エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド 6】 九岡望/吟 電撃文庫

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永遠の冬に眠る《鬼虫》八番式・蜉蝣の少女、柊。
二十年の時を経て、少年と少女は邂逅する――!

永遠の冬の街《落地》。二十年前の戦争で《鬼虫》八番式・蜉蝣の柊が自らの生命を賭して核爆発を止めた街だ。蜉蝣の力により、今なお氷漬けのまま、その時を止めている。
叶葉達をさらった黒塚部隊の目的地は、落地であった。氷に眠る少女・柊を目覚めさせ、蜉蝣と共に配下に置くためだ。
九曜は黒塚部隊の計画の隙を突き、蜉蝣と柊を奪い取ろうとする。しかし二十年の永きにわたる眠りの中で、柊は自我を失っていた。
九番式の少年と八番式の少女、二十年の時を経た邂逅の行方は――。そして、黒塚部隊の手に落ちた蟋蟀の庵と蟻の楓、そして蜻蛉の竜胆の運命は――。
最強の兵器《鬼虫》達の神速アクション、クライマックスに向けて加速する第六弾!
蜉蝣とは裏腹の明るくて元気いっぱいの柊。堅物の九曜にいつもお姉さん風を吹かせ、常に笑顔を絶やさなかった少女・柊は、だけれどやはり、蜉蝣のように儚く淡い人だった。
泣いた。ショックはなかった。けれど、泣いた。救いはあると信じていて、確かに救いはあったのだけれど、それは思い描いていた救いじゃなかった。それが哀しくて、でも悔いはない。悔いを感じないことが、少し辛い。
しかし、敵キャラに対してこれほど噴き上がるような怒りを感じたのはいつ以来か。虎杖に対しては、これまでも空虚な理論を正義のように振り翳してさも泰然とした大物のように振る舞うその姿にジリジリと焦げるような苛立ちを感じていたのだけれど、鬼虫たちを、九曜の大切な家族たちを、あのかつての大戦で身を尽くして戦い果てた英霊たちを、こんな尊厳を踏みにじるやり方で道具扱いして、使い潰そうとするやり口には憤怒を抑えきれない。もう、メチャクチャ腹立たしい。たとえどんな正義があろうと、信念があろうと、彼なりの理由があろうともう絶対に許せない。眠っていた柊を利用しようとし、庵と楓にあんな酷いことをして、許せない許せない。人を、なんだと思ってるんだ!!

これは過去と未来の戦いである。過去にしがみつき世界を引き戻そうとする輩と、過去から未来に希望を託して送り出そうとする人たちの戦いである。
私はね、大戦から二十年という時を経て、過去から目覚めた鬼虫たちを含めた様々な事情を抱えた人たちが、改めて過去を乗り越え未来を歩き始めることが叶う物語なのだと、この作品について思っていた。でも、小さな女の子に希望を託して送り出して去っていった万字だけじゃなく、現在に目覚めながらも既に過去において終わっていたという事実を振り切ることが叶わず、未来へ……先へと九曜を送り出し、その場から彼が行くのを見送り、去っていった鬼虫たちを目の当たりにして、胸が締め付けられるようだった。
ああ、この物語はみんながみんなで先へたどり着ける話ではないのだ、と。過去の軛から脱して、新たな未来に歩み始めることが出来るのは、多分一握りなのだと感じてしまったのです。
送り出す人たちに、悔いはないでしょう。過去において思いを遂げられずに半ばにて果て、潰え、或いは諦めた者達に、もう一度機会が与えられるということは、今度こそ託せる、やり遂げられるというのは、救いなのかもしれません。
でも、託された方はやっぱり哀しいよ。別れは、辛いよ。泣いちゃうよ。

虎杖は、そんな前へ進み送り出そうとする願いと、後ろへと留まり回帰しようとする祈りの相克の、そのどちらからも外れた、独り善がりの異物であるかのようだ。彼だけは、過去の中から既に自分だけのルールの上で満悦し、他と何も共有していない。そんな輩が、他者が大事に抱え込んでいる神聖な領域に、無造作に手を突っ込み、かき回し、一切の呵責なくそれらを汚していく。竜胆と九曜の戦いと理解を汚し、万字の託した希望を汚し、日足の純真を汚し、柊の眠りを汚し、叶葉の思い出を汚し、鴇子の決意を汚し、井筒の信念を汚し、巴の家族への愛情を汚し、庵と楓の想いを汚し、一体どれだけの人の魂を汚せば気が済むのか。それを声高に、正しいと宣うのか。こいつばかりは、本当に憎くてたまらない。
竜胆兄さん、こいつはもう思う存分バッサリやってください。敵中に囚われながらの、蜻蛉のなんと頼もしいことよ。さらりと、逃亡中にも関わらずかつてなく悩み苦しむ叶葉の前に現れて、助言を与えて去っていくところなんぞ、かっこ良すぎて濡れるかと思った。頼れるお兄ちゃんというのは、こういう人を言うのだ。血統的には弟なのかもしれないが、竜胆兄ちゃんこそ皆の兄貴分だよなあ。

次こそは、九曜に溜まりに溜まった鬱憤を晴らして欲しい。この怒りを、吹き払って欲しい。この哀しさを、優しい思い出に変えて欲しい。今の九曜なら、絶対に出来る。頑張れ男の子!

シリーズ感想

エスケヱプ・スピヰド 伍4   

エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド 伍】 九岡望/吟 電撃文庫

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最強の兵器“鬼虫”たちは、どのようにして集まり、人間から兵器になったのか―。過去の記憶が交錯する中、黒塚部隊に囚われた竜胆が蘇生する。その頃、“蜂”の修理が進む登坂研究所で、巴は中央の高官から呼び出しを受けていた。これを好機と取った巴は、内通者のあぶり出しにかかる。そしてついに、巴の前に烏帽子が姿を現すのだった。そんな帝都の異常に、九曜は研究所から出動、街で朧に襲われる叶葉たちを見つける。再び朧と戦闘に入る九曜だが、その最中、叶葉と鴇子が黒塚部隊の手に落ちてしまい―?最強の兵器“鬼虫”たちの神速アクション、緊迫のシリーズ第5弾!
うおおおっ、きたきたきた、来ましたぞーー! 凄い激燃えの展開きたーー!!
うむむむ、これは凄い。これまで散りばめられてきた要素が一気に収束、開花、発火して、濃密に加速し出したんじゃあるまいかい。実のところ、この巻の展開ってまさに「火蓋を切った」段階なんですよね。それでこれだけ燃え盛られると、今後どれだけ盛り上がるか想像もつかない、というくらいに期待しちゃうんだけれど、こんだけ期待アゲアゲして大丈夫か?
正直、これまで敵側である黒塚部隊って隊長の虎杖からしてちょっと役者不足というか、敵のボスとしてはいまいちスケールが小さい、というか思想面にしてもいまいち大物感がなかったんですよね。冷徹さや計算高さが逆に深みをなくしているような。実のところ、その印象はこの巻でも変わらず、評価はあんまり上がっていないのだけれど、その周辺が予想外に充実してきたんですよね。黒塚部隊の核となる人物に、朧と烏帽子という中核となる二人がかなりの大人物だったのです。組織の規模や浸透度も、思いの外巨大であり、ここに来てやっと「敵」としての威容と風格が水面上に浮かび上がってきたのでした。そうそう、やっぱり敵というのは強大でないとやっぱり盛り上がらないですよ。これまではどうしても、鬼虫のデッドコピー軍団の体裁しかなかったですからね。それが、鬼虫たちと真っ向から渡り合う実力と、巴をも陥れる奸計を駆使でき、中央にも十分浸透し、その上いくつかの鬼虫を乗っ取って使っているとなると、最強を誇る鬼虫たちに相対するにも十分でしょう。実際、九曜たちが一気に劣勢に追い込まれていくさまは、あまりに怒涛であり、迫力満点ですらありました。
その一気呵成を担ったのが、朧と烏帽子という二本柱。この二人の正体と人物がまた虎杖喰ってるように思えるくらい、圧倒的な存在感なんですよ。特に朧については、叶葉というヒロインを挟んで九曜の敵として振る舞うに相応しい人物でした。まさか、そう来るかー。
クワガタの二本の角で電磁投射砲はドリームですよね、ドリーム(笑
ただ、てっきり九曜が相対するのは敵の隊長である虎杖だと思ってたんですけれど、これだと対応するのはどうてみても朧なわけで……そうなると、どうやら虎杖と決着を着けるべきは竜胆の方なのか。蜻蛉の竜胆復活ですよ!! いや、正確にはちゃんと竜胆として復活しているわけではないのですが、どうやら鬼虫壱番式としての意識は失われて居ない模様で、彼が彼として戻ってきてくれるなら、これほど頼もしいことはないのだけれど、今のところはまだどうともならんからなあ。
彼のみならず、どうやら鬼虫たちは大半がこの調子だと戻ってこれそうな予感。黒塚部隊に在籍していると思しき二人の現状は、どうやら思っていた以上に悪いと同時に完全に思想面からあちらに味方しているようではない分、最悪ではない様子で。過去の回想を見ていると、九曜の思い出にあったようにみんな確かにいい奴らなんですよね。巴が彼らに一番こだわっているのにも納得。思いの外家族的な雰囲気があったんだなあ。納得というと、ようやく巴の背景が彼女の口から語られて、ようやく安心出来ました。どうも巴については、彼女こそホントのラスボスなんじゃないか、という怪しい動きが垣間見えていましたからね。でも、とにかく優先するのは鬼虫の仲間たち、という考えは嘘偽りなかったようで、その考えに則れば九曜たちが大事にしている人たちも蔑ろにする事はないでしょうし、そもそも鬼虫以外の人間はまるで相手にしていないなんてこともなく、普通に情の厚い女性のようで、叶葉たちにも良く接してくれてますしね。とりあえず、巴への不安は解消されたんじゃないかと……思ってたら、その巴がえらいことになってしまったのですが。少なくとも彼女に関してはここまで危機に陥ることはないだろうと、彼女の周到さを含めて信用していたので、ここまで酷いことになるとは予想もしていなかったので、動揺も激しいです。彼女こそ、コチラサイドの要であったのがよく分かる。いかん、このままだと幼女を卒業して妖精さんになりかねないぞ!

この巻は、復活というのがキーワードだそうだけれど、言われてみるとなるほど、あらゆるところに復活という要素が散りばめられている。しかし、その際たるものこそ、やはり1巻で失われていた九曜の相棒である「蜂」の復活でありましょう。覚醒した菘の機械整備の神がかりに端を発した、クライマックス、追い詰められリミットが迫った中での蜂の復活劇。これは、もう盛り上がりの最たるものだった。しかも、九曜の成長とともに1巻の頃とは桁違いにパワーアップしていましたし。
蜂無双、が痛快すぎた。
そして、そのパワーアップした蜂をして伍すのがやっとという最強の敵クワガタの真髄。叶葉をめぐって、という意味で男としても相対するべき敵との邂逅。まさに宿命の出会いでありますよ。

そして、激戦の跡に降り立った地で再会する氷の花、冬の少女。叶葉の独壇場と思われていたヒロイン戦線において、突如颯爽と出現したもう一人のヒロイン候補。鬼虫八番式<蜉蝣>無明の柊。さあ、もう一人のヒロイン、来よったぞっ!!
次回も、為す術無くやられてしまった菊丸の復仇戦を含め、鴇子の存在に関わる出会いといい、見どころは今から満載予想できるわけで、さあさあこっからブーストですよっ。

シリーズ感想

エスケヱプ・スピヰド 四3   

エスケヱプ・スピヰド 四 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド 四】 九岡望/吟 電撃文庫

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 黒塚部隊によって、《蜂》と《蜻蛉》、そして竜胆の体が奪われた。九曜たちは仲間を奪還するため、《鬼虫》四番式・蜈蚣を目覚めさせようとする。しかし理論上は正しいはずの蘇生実験は、失敗を繰り返していた。
 そんなある日、叶葉は帝都の町中で行き倒れている少女を助ける。クルスと名乗る少女は、「南が明るくなったら逃げろ」と叶葉に告げるが――?
 果たして九曜は自らの半身《蜂》を取り戻すことができるのか。そしてクルスの正体とは!? 神速アクション第4弾!
凄いな、完全に死んだ状態からも復活させられるのか。さすがに遺体が残っていないと無理なようだけれど、星鉄があれば機能を回復できるとなると、元は人間であっても厳密な意味で生物ではなくほぼ機械そのものということになっちゃうのかしら。とは言え、本作ではあまりその辺りの機械と人間の区別とかはつけていないようで、機械兵士であってもちゃんと壊れた場合は戦死という風に表記されているし、作中の人間たちも鬼虫たちに対して普通の人間と変わらない態度で接しているので、問題はないのかもしれない。
しかし、言われてみてようやく気が付かされたのだが、一度戦死したものを復活させて戦力を増やすという行為は、単純に味方が増えてよかったね、非業の死を遂げた仲間たちと再会できるんだからイイ事だよね、という程度の認識だったのだけれど、復活させられる側からすると一度義務と使命を果たして眠りについた身を無理やり起こして、もう一度戦わせようとしている、という風に捉えられても仕方がないことだったんだな。
目覚めてみれば、自分が身を犠牲にして戦った戦争は既になし崩しに何も形をなさないまま終わっていて、今は同じ国の中で相争っている。自分が戦った意味はなんだったのか。自分が死んだ事には何の意味もなかったのか。意義も目的も見失ったまま、また戦えと強いられる事はそりゃあはいはいと納得できるもんなんかじゃないんだろう。かと言って、完全に拒絶してしまうほどの根拠もない。自分を目覚めさせたのは、身内も同然の仲間たちであり、彼らは切に自分の助力を求めている。無気力に苛まれながらも、拒絶するには親愛が残りすぎている。拠り所の得られない精神状態は、鬼虫の起動を妨げ、それがさらに心の迷走を招く。
井筒さんのスランプは、まあこんな理由なのでしょう。キャラ的にがらっぱちのイケイケドンドンなヤンキー風の青年だけに、そんな繊細なメンタリティを披露されるのは若干キャラにあってないんじゃないか、と思ってしまうところだけれど、むしろその似合わなさがキャラクターの肉付けとして機能しているとも言える。ただのガラの悪い考えなしの脳筋じゃないんですよ、と。
しかし、だからと言って彼がシンプルな人間ではない、という事を意味しているわけでもないんですよね。結局、彼のような人物の絡まった精神状態を解きほぐすのは、わかりやすい方向性なのであります。
色々とぐだぐだと理由付けをして意味を巡らし、そこからさも深奥からひねり出したようなお題目を掲げて、それに殉じさせる、みたいな思考誘導は遠回りしすぎ。求めるべきを欲せよ、じゃないけれど叶葉が井筒さんにアタックして願ったことは、本当にシンプルなことで、だからこそぐだぐだと考えこんでしまっていた井筒の中身を整理整頓して、結局自分は何が一番大事で、何が一番したいのか、というのを明快にしてみせたんですよね。さすがは九曜の個人的司令、というべきか、この娘は迂遠さを取っ払って最短距離で一番肝心要な部分をついてくる特質を持っているようだ。裏表なく一直線に真正面から切り込んでくる。
これは、糸を絡めるように言葉巧みに相手の欲しがる甘言をチラつかせて心を擽りながら、しかし決して踏み込まず外側から誘導し、結果として自分の望む形へと相手を誘導していく、黒杖のやり方とは真逆とも言える。
今回、死んだはずだった複数の鬼虫が黒塚部隊に協力していると思しき状況が浮かび上がり、さらに井筒に対しても誘いをかけてきたことから、鬼虫を二分する争いへと発展しそうな流れになっているのだけれど、これは九曜をはじめとした鬼虫たちの心を掴み始めている叶葉と黒杖の、ある意味人心掌握対決、叶葉が正しく司令としての役割を求められる展開になるのかもしれないなあ。とはいえ、今のところそれほど叶葉を中心に人間関係が回っている、というほどのカリスマはまだ彼女にはないのだけれど。
九曜に関しては、もう完璧に夢中というか、イチャイチャ状態だけどね。なにこのバカップルw 周りの目をまったく気にしない九曜はともかく、最近、叶葉まで人目気にしなくなってるぞ。

でも、この調子だと本当に万次を除いた鬼虫全員復活、という流れになりそうだ。第一巻を見る限り、まずあの段階では全員死んでる以外何者でもない設定だったと思うんだけれど、プロットの組み直し手間だったんだろうなあ……。

エスケヱプ・スピヰド 参 4   

エスケヱプ・スピヰド 参 (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド 参】 九岡望/吟 電撃文庫

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少年の運命を変える神風となるか!?
鬼虫シリーズ最高機密──“星鉄(ほしがね)”登場!

 量産型鬼虫たちが狙う第三皇女のクローン鴇子の記憶。それは、鬼虫の要を成す金属“星鉄”の存在だった。九曜たちが手にすれば、今は亡き鬼虫シリーズを復活させられるかもしれない。だが、量産型鬼虫たちが手にすれば、彼らの力は鬼虫と並ぶ。待ち受ける先にあるのは、闇か光か──。二つの側面を併せ持つ金属“星鉄”を巡り、新たな戦いが加速し始める。
 その頃尽天の町では、《蜂》と《蜻蛉》の機体、そして九曜の師であり好敵手である竜胆の体が、海から引き上げられようとしていた──。最強の兵器・鬼虫たちが繰り広げる神速アクション、シリーズ第3弾!
戦って戦って、その果てにこの国は廃墟と化した。
鬼虫シリーズは九曜が誇るように、正しく最強だった。にも関わらず、彼らは勝利をもぎ取ることは出来なかったのだ。鬼虫が最強だったなら、どうしてこの国はこんなふうになってしまったの? 無垢な子供たちの純粋な疑問に、九曜は答えを見つけられなかった。或いは、その問いの答えこそがこの物語の核心なのかもしれない。
かつての九曜と同じように、ただひたすらに戦争の勝利を願い、それ以外の何も顧みない「敵」の出現を前にふとそんな考えが頭をよぎる。虎杖と名乗る男が率いる黒塚部隊は、既に失われてしまったはずの勝利を今更のように掴み取ろうと蠢動する。現在に蘇り、竜胆との戦いと叶葉たちとの出会いによって、戦うために戦ってきた九曜は最強である鬼虫の力を何のために用いるか、何のために戦うか、その答えを掴みとり、今を生きようとしている、未来を見ようとしている。そんな九曜にとって、黒塚部隊の、虎杖たちの思想は、現在にも未来にも何ももたらさない過去の襲来だ。最強以外の何の意味も持たない、何者でもなかった頃の九曜との相対なのである。
そう考えると、様々な事が腑に落ちてくる。思えば、竜胆という男は過去に縛られているようで、彼はああやって常に未来を指し示していたのかもしれない。彼には戦う理由があり、最強を振るう意味を持ち、それを九曜に託すためにずっとあそこに居続けたのだから。
そんな誇り高く優しい兄であった男の亡骸と遺産が、勝利という未来を指向しているようでその実何の中身も持っていない空虚な連中に利用されようとしているなど、想像するだけで憤懣やるせなくなる。
それどころか、九曜の半身である蜂までが奪い去られてしまうとは。
思いの外、敵は強力であり、それ以上に相容れぬ相手だったと言えるだろう。もうしばらく、と言うよりも今後もずっと遊軍として潜伏し続けると思った蜘蛛と蟷螂が、早々に姿を表して中央政府に協力する判断をせざるを得ないほどだからよっぽどである。特に巴は、半ばラスボス的な立ち位置もあり得ると思っていただけに、彼女が出し抜かれる事になるとは思いもよらなかった。
つまるところ、現状の戦力では確実に厳しい、という現実を示したことになるのか。ということは、他の鬼虫シリーズの復活、というのも決して冗談ではなさそうだ。一方で、未だ蜂を取り戻せない九曜だけれど、彼個人の戦闘センスはメキメキと伸びている。明らかに、竜胆の後継者としてその能力を引き継ぎ発展させる展開を迎えつつある。あんまり強くなりすぎると、剣菱さんがウキウキしだすので、いろんな意味でハラハラさせられる。

さて、今回一番燃えたシーンは、実は鬼虫シリーズの活躍シーンじゃないんですよね。もう震えるほど燃えたぎったのは、菊丸を筆頭とした機械兵士と多脚戦車たちの勇戦でした。言語機能を持たない菊丸はもとより、他の機械兵士たちも、本来なら十把一絡げに扱われるような、単なる兵器であり、感情や心などといった上等なものは持たないはずの、冷徹な論理計算によって思考するだけの、ぶっちゃけ消耗品のはずなんですよ。
それを、本作は見事なくらいに、熱い存在として昇華しているのです。もう、護衛任務の移動中、菊丸が機械兵士たちと花札をはじめた時点で、こちとら感性を刺激されてビンビン状態。あれで、単なるモブという認識しかなかった機械兵士たちが、完全に魂持った存在に見えてしまいました。その上で、九曜がまた彼らを兵器としてではなく、戦友として扱うんですよ。それに対して、機械兵士たちは何も語らないし、反応らしい反応を示さないのですが……にも関わらず、九曜の心映えに対して彼らが意気を汲んでくれたように見えたんですよね。
そして黒塚部隊が襲撃してきた時の、彼ら機械兵士と多脚戦車たちの戦いぶりときたら……血の通わぬ機械とは思えぬ、凄まじいまでの猛戦なんですよ。めちゃくちゃ熱いんですよ。全身の毛穴がひらいたみたいな燃える展開。菊丸を除けば、モブ同士の戦闘にも関わらず、本作中でも一番熱かった。激燃え。
いやあ、これを味わえただけでも読んだ甲斐がありました。何も語らぬ沈黙の兵器に、これだけ血の通った心意気を見せつけられちゃあ、滾らずにはいられませんよ。存分に、堪能させていただきました。

物語は、結局黒塚部隊に事実上敗北し、星鉄の一部を除いて多くのものを奪われることに。そして、巴が示唆する内通者の存在。誰が、裏切り者か、という展開はこれがまた緊張感を高めてくれる。勿論、怪しい人物は簡単に順位を付けられそうなんですが……まさかこの人が!? という展開もなにげにありそうな気がして、油断はできませんよ、これ。

1巻 2巻感想

エスケヱプ・スピヰド 弐4   

エスケヱプ・スピヰド 2 (電撃文庫 く 9-2)

【エスケヱプ・スピヰド 弐】 九岡望/吟 電撃文庫

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失くした羽の分だけ、少年は高く翔ぶ──
最強の兵器《鬼虫》たちの神速アクション第2弾!


 自国の今を知るため、帝都・東京にやってきた九曜と叶葉。復興の進む街で、九曜は機械兵を連れた不遜な少女に襲われる。『第三皇女・鴇子』だと名乗る少女は、九曜に自らを守るように命令する。
 誰から何故追われているのか記憶がないと言う鴇子。九曜は訝しむが、叶葉は彼女を放っておけないと言う。叶葉の懇願により、九曜は鴇子の情報を求めて軍の地下施設を訪れる。そこで彼を待ち受けていたのは、全滅したはずの《鬼虫》シリーズのひとりだった──!? 第18回電撃小説大賞〈大賞〉受賞作、第2弾登場!
そうして、二人は旅に出た……。

旅というのは自分の中ではちょっとした特別だ。今在る場所を離れ、親しい人達を残し、目的地無く遠くへ遠くへ行ってしまう。その傍らにはただ一人の大切な人。
そんな物語の中のシチュエーションに、若い頃から胸の鼓動を高鳴らせる。

【エスケヱプ・スピヰド】の2つ目は、そんな旅立ちを経た九曜と叶葉が二人で一緒に初めて見た新しい世界だ。今まで見知り馴染んだ区切られた範囲から飛び出し、まだ見ぬ空を仰ぎ見ながら自分の世界を広げていく。
それが、大切な人とのふたりの旅路だったならば、なおさらに世界は拡大していく。手と手をつないで、お互いの存在をとても近くに感じることで、その繋がりを起点として錨となし、後ろを振り返って今まで歩いてきた道を思い返すことも、今立っている場所をぐるりと見渡すことも、前を向いてこれからゆく道に思いを馳せることも容易になる。一人旅は、世界の中に溶けこむようなものだとすれば、二人旅は世界の広さを感じると同時により強くお互いと自分を意識させる。

況してや、九曜と叶葉。二人はまだ子供でしかなく、世界がどんな色をしているか、どんな音を奏でているか、どんな匂いがしているか、どんな感触をしているのか、まだまだまだ全然何も知らない見るもの全てが新鮮で、鮮烈な世代である。どちらが導く旅でもない、目的がある旅でもない。ただ、世界の広さを感じ取り、その只中でお互いを感じ取るための当て所のない闊歩である。
その二人が目の当たりにする新しい世界は、かつて一度滅びた世界だ。大きな戦争によって様々なものが潰えた、壊れた世界だ。
しかし、何も知らない二人の目を通じて見る世界は、訪れた大都市・帝都東京はそこで生きる人々の活力に満ち溢れている。崩れ去り廃墟が乱立するはずの廃都は、今新たな生のうねりに古い皮を脱ぎ去って喝采をあげているようにすら見える。
活況だ。それも、雑然と無秩序で、それ故に止めどない伸びやかさに育まれた、放埒とした新しさだ。滅びたはずの世界の、何と賑わしいことだろう。過去のくびきから解き放たれた九曜と叶葉の旅する世界は、彼女たちの目を通して見える世界は、そんな生気に満ち溢れている。
これが、【エスケヱプ・スピヰド】の世界なのだと実感する。
振り返ってみれば、この物語に登場するキャラクターの殆どは、過去の遺物であり未来に取り残された残滓のようなものだ。冷凍保存され現代に目を覚ました過去人である叶葉。同じく長き眠りから目覚めた戦時の英雄、鬼虫の一角・九曜。皇統の末であり遺産を引き継ぐ第三皇女・鴇子。その彼女を古き約束の元に見守り続ける寡黙な守人・菊丸。帝都・東京のスラムで巡りあった四人は、突如過去から放り出されてきた異邦人だ。それぞれに、己の中の理由を過去に置き去りにしながら、その決着を求めるため、或いは置き去りにして失ってしまったものを取り戻すために、見知らぬ新しい世界の中でもがいている。
そんな二組が……片や既に過去の想い出に決着をつけ、傍らの人と新たな世界に飛び出しその真の住人となるべく旅に出た叶葉・九曜と、失った過去に焼き付けられた強い衝動に駆られて刻まれた痕跡を探し続ける鴇子と、全てを知りながら黙然と彼女を庇護し続ける菊丸たちが出会い、再び今を生きる事と過去から追いかけてくるものとがぶつかり合い、鍔迫り合いし、火花を散らして闘争するは、まさにこの物語の根幹であり象徴のようなものなのだろう。
すなわち、これは過去と現在と志向する未来との闘争と和解の物語なのだ。その担い手が、ことごとく過去人であるというのもまた感慨深い。いずれ、また生まれながらに現在を担うキャラクターが出てくるのかもしれないが、今は過去から未来を網羅するこの幼いと言っていいほどの少年少女が主人公だ。
そして、新たな出会いはまた伸展を生むきっかけになる。同世代の友人という鴇子たちの存在は、九曜たちに更なる世界の拡大をもたらすのだろう。

ならば、再会は?

考えてみれば、この再会もまた約束されたものだったのだろう。羅刹の巴と夜叉の剣菱。九大鬼虫のすべてが、竜胆と九曜を残して消えてしまった、などとそんな馬鹿な話があるかと思っていた。強いてこれが一冊完結の物語ならばそれも在り得ただろうが、シリーズものとなれば鬼虫ほどの重要なファクターをすべて片付けて閉まってしまうのは如何にも勿体無い話である。
頼もしい味方として、かつてと同じ若き九曜を弟として可愛がる姉兄として現れてくれた剣菱と巴。そんな彼らは、果たして「追いかけてきた過去」なのだろうか。
前に進まず過去に留まり、そこから九曜たちの背を押して前に歩くことを教えた竜胆と、彼らはまた違うのだろうか。共に、歩んでくれる家族なのだろうか。
巴たちから見た九曜は、随分と変わっていたようだ。実際、一巻の頃の彼や過去の回想に垣間見る九曜の姿からすると、今の彼は未だ硬質の融通知らずの側面はあるものの、ムキになりやすかったり実は短気だったり、優しかったり実は甘えん坊なところがあったりする子供っぽい感情や姿勢を、歳相応の姿をごく自然に見せてくれるようになっている。大人しげに見えてバイタリティの塊である司令にして相棒たる少女・叶葉の影響は、多分に大きい。
その変化を、二人の兄姉は好ましいものとして笑顔で喜んでくれている。竜胆との決着もまた納得し、少なくとも、彼らは変化を受け入れている。
なればこそ、彼らは絶対的な味方なのか。
量産型鬼虫などという過去の妄念が登場し、鴇子の記憶にあるという遺産を巡って争いは起こっているものの、実の所明確な敵の姿は今は見えない。
敵はなんなのか。
少し不穏なフレーズを刻んでこの巻が終わってしまっただけに、一抹の不安が逃れ難くこびりついてしまっている。竜胆の選んだ戦いも、また家族への、兄弟への「愛」だったのだと知っているからこそ、一抹の不安は消えてくれない。

物語は皇室や米国など、マクロな設定に基づく大風呂敷を広げつつ、並行して個々の内側に踏み込むマクロな視点も丁寧に積み重ね、作品としてダイナミックに躍進を得ようとしている。ワクワクするじゃないか。
このまま、特大の目玉シリーズとして飛躍していってくれと、願うばかりだ。

一巻感想

エスケヱプ・スピヰド4   

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

【エスケヱプ・スピヰド】 九岡望/吟 電撃文庫

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少年よ、覚醒せよ!
閉じられた町を舞台に、
最強の兵器《鬼虫》たちが繰り広げるノンストップ・アクション!


 昭和一○一年夏。極東の島国《八洲(やしま)》は、二十年前の戦争で壊滅状態にあった。廃墟の町《尽天(じんてん)》では、シェルターの冷凍睡眠から目覚めた人々が、暴走した戦闘機械の脅威にさらされながら生きていた。
 尽天で目覚めた少女・叶葉(かなは)はある日、戦闘機械から逃れる最中、棺で眠る奇妙な少年と、一匹の巨大な《蜂》に出会う。命令が無いと動くことができないという少年に、叶葉は自分を助けるよう頼む。それは、少女と少年が“主従関係の契約”を結んだ瞬間だった──。
 少年の名は、金翅(きんし)の九曜(くよう)。《蜂》と少年は、《鬼虫(きちゅう)》と呼ばれる、八洲軍が技術を結集して製造した超高性能戦略兵器であった。叶葉を暫定司令官と認め、共に戦い、彼女を守ることを誓う九曜。しかし、兵器であるがゆえに、彼には人の感情が存在しなかった。叶葉はそんな九曜を一人の人間として扱い、交流していく。
 徐々に心を持ち始める九曜だったが、平穏な日々は、九曜と同じ鬼虫である《蜻蛉》四天(してん)の竜胆(りんどう)の飛来によって打ち砕かれ──!?
 閉じられた町を舞台に、兵器の少年と人間の少女の出会いを描くノンストップ・アクション! 
ああ、これはなるほど。うんうん、あはははは。こりゃ、文句なしですわ。
文句なしの大賞作品。正直、コレ意外は大賞考えられない。
今回の電撃大賞作品はどれもこれも良作揃いで、一切はずれなしという近年でも随一の豊作だったと思うんですよ。そんな感想を持つ中で、最後に大賞受賞作品であるこの本を手にとったのですが、これらの良作を差し置いて大賞を受賞したんだから、生半可じゃ納得せんよ? とある意味舌なめずりしながらページを開いたんですね。
参りました。これ、現時点で電撃文庫の第一線級に投入しても、何ら遜色ないわ。
これまでの電撃文庫の大賞作品って、良い意味でも悪い意味でも卒の無いまとまった作品が多かったんですよね。のちに見事にブレイクスルーした【ほうかご百物語】や【幕末魔法士】という作品もありましたけれどね、でも一作目の時点では瑕疵がないことを優先したような作品が多かった。
その点、本作は良い意味で実に好き勝手やっている。自分の書きたいことを自由に書き連ねた上で、スケール観たっぷりのスピーディーで尖った、素晴らしいエンターテインメント作品として成立している。
なによりも、とびっきり面白かった!!
好き勝手書いていると言いつつも、決して無軌道な構成だったりするわけじゃないんですよね。兵器である自分を人として扱う叶葉との交流を通じて、存在理由を自問することになる主人公の葛藤は、敵として立ち塞がるかつての師であり戦友であり兄であった男の願いや、かつての戦争で主人を失い自らも存在理由を問い続けている叶葉の不安、生き残りの人々が失わない希望の在り処、そして廃墟を徘徊して戦い続ける狂った機械兵士たちの成れの果ての有様などが見事な螺旋を描いて物語を成し、一つの結論と決着へと収斂していく。単純にお話の完成度だけ見ても、充分以上に卓抜してるんですよね。これだけ自由にハッチャケているのに、何だかんだと卒無くまとまっているところなんぞ、小憎たらしくて思わずニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべてしまったくらい。
ふむ、こうして振り返ってみると、作品そのものに抱いた好感は、そのまま主人公である九曜への印象と重なっている事に気付かされた。
この主人公の九曜。最初から兵器然として感情に乏しく機械そのもののキャラクターで、てっきりロボットと少女の交流がメインで、徐々に兵器に心が芽生えていく、という類のお話なのかと思ったら、大筋では間違いではないのかもしれないけれど、主人公が機械そのものというのは大違いでしたね。最初から、機械のふりをした、いや自らをただの兵器と思い込もうとした人間の少年だったわけだ。
だからこそ、彼の生真面目さは堅物さ、機械めいた立ち振舞には何故かとぼけた愛嬌があって、叶葉の影響を受けて「変化」していく前から、なんとも「可愛げ」のある子だったんですよね。
そこから更に人間味が増していくことで、彼の子供っぽさや大人げなさが垣間見えくることによって、なんかもうこの子がすっごく好きになりました。かつての彼の戦友たち。同じ鬼虫の仲間たちもまた、この子の事を可愛がってたんだろうなあ。九曜の記憶から再生された彼らの残した言葉は、あとから振り返ってみるとこの兵器たらんとして背伸びする見栄っ張りで意地っ張りの少年への愛情にあふれていた気がします。
そして、それは突然彼を裏切り、斬り捨てた蜻蛉の竜胆も同じだったのでしょう。何故、彼が九曜を斬り、しかし殺さず、その後二十年もの間兵器として狂う事もなく正気のまま戦い続けたのか。その理由に想いを巡らせると、仄かに胸に火が灯ります。
かつて先に逝った戦友たち。今、刃を交えることになった師。自分を人として扱い失った存在理由のその先を示してくれた叶葉たち。様々な想いを受け取って、二度目の再生を果たした少年の蜂の一刺し。ドライブの掛かった息もつかせぬハイスピードの戦闘シーンも相まって、ラストシーンはテンションMAXでありました。

わりと綺麗に話も決着しているので、果たして続きがあるのかはわかりませんけれど、続けようと思えば幾らでも続けられる形にもなってますし、個人的には九曜と叶葉の旅はもっともっと読んでみたいなあ。
大賞の名に相応しい、歯ごたえのありすぎるくらい手応えガッチリの傑作でした。ビバビバ!
 
1月26日

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