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周藤蓮

賭博師は祈らない 5 ★★★☆   



【賭博師は祈らない 5】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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賭博師と奴隷の少女、二人に訪れる結末は。

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。

――『私は、ご主人さまが好きです』

そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして。

嫁さんになってしまったフランセスを連れて帰って、リーラと一揉めあるかと思ったのだけれど、フランセスもリーラも思ってた以上に大人だった。というか、フランセスがずっと部屋に引きこもって寝倒してたのって、変に自分の存在がリーラの居場所を奪わないようにという配慮ですよね、あれって。かと言って出ていかずにラザルスの家に居続けるというのもラザルスへの配慮だろうし、何気に気を遣ってるんだよなあ、フランセス。もっと色んな方面にマウント取るかと思ったんだけれど、そう言えばそんなグイグイ自分押し出すタイプじゃなかったよなあ。
リーラはリーラで平素と同じ対応で、ホントにできた娘さんである。

そんな女性陣を放っておいて、ラザルスはというとボウ・ストリート・ランナーズと協力して、ジョナサン打倒に駆けまわる日々。その動機が、かつて罪人として街を追放され豪州へと旅立った友人夫婦との約束のため、というのだから……これってロマンチストというのだろうか。
師の言葉に従って厭世的というほどの醒めた生き方をしてきたラザルスが、地べたを這いつくばった先で見つけた自分に正直な新しい生き方は、なんというか裏の世界で生きる賭博師としては望外なほどの、ピュアな生き様なんですよね。約束を守るため、とか信念に殉死しようとしている女を死なせないため、とかあんな人と関わる事自体を忌避し、他人のことを考えること事態膿んでいた男の生きざまとは思えない、光のような在り方なのだ。
多分、それがラザルスにとって「人」になるという事だったのだろう。薄汚れ俯き未来を諦めるゴミクズのような存在だった自分が、真っ当な人になるというのは、そういう眩しいほどの在り方だったのかもしれない。
そうしないと、リーラと対等になれなかったのだ。彼女を人として愛するのなら、自らもまた人にならなければならない。
まあそんなクソ難しいことを具体的に考えていたわけではないのだろうけれど、リーラに恥ずかしくないように、という意識は常にあったはずだ。
だけれどそれは、リーラを愛玩するというくびきから解き放たなくてはならない、という意味でもあったんだなあ。回りの優しい人達の反応から随分と忘れてしまっていたけれど、リーラの立場は異民族の奴隷という社会に公然と差別される対象。ラザルスとリーラの関係は、正しく契約に基づいて結ばれた奴隷と主人という主従関係。どれだけ当人同士が愛し合おうとも、はじまりから二人の関係はいびつなものでしかなかったのである。だからこそ、このままでは二人の関係に瑕疵が生まれる。いずれ、どこかでひびが入る。当人同士がどれだけ固く結ばれていても、社会はそれを許さない。未来は苛まれるだろう。
二人共、このまま一緒にここに居たい、という願いを胸に宿しながら、しかしそれは叶わぬ願いだったのだ。
本当に対等になるのなら。愛玩ではなく、人と人として愛し合うのなら、一度関係を精算しなくてはならない。そして、ラザルスもリーラも「人」に戻らなくてはならない。そうやってはじめて、愛玩の関係ではなく、相手を一人の人として尊重し愛し合う関係になれるのだから。
それでも離れがたい気持ちは強く強くあっただろう。それを手放す勇気を示した二人は、敬服に値する。本当に相手が大事だからこそ、今は一度離れるのだ。それが、永久の別れになろうとも。
もっともその行く先は、まあラザルス曰く、賭け事にもならないのだそうだけれど。なにそれ、惚気け?

シリーズ感想

賭博師は祈らない 4 ★★★☆   



【賭博師は祈らない 4】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念―。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが…。そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。

師であり義父であった男から引き継いだ「賭博師」としての在り方に殉じて来たラザルス。そのために、これまで手に入れてきた大切な関係を切り捨ててきた。自身の賭博師としての在り方を守るために、友人を見捨て、恋人となっていたフランセスと決別してまで。
しかし、その在り方はリーラを守るために失われてしまった。賭博に対するスタンスに不純物が混じってしまった今のラザルスには、今まで通りの打ち筋はもはや制御できないほどにバランスを崩してしまっている。それでも、今まで通りを続けようとして無理を続けた結果の破綻であった。
それを決定的にしたのが、ラザルスの兄弟弟子とも言える存在であり賭博師として同じ在り方を続け、そうであるが故に決別せざるを得なかったフランセスであった、というのが皮肉なのか因果なのか。
フランセスとしては、引導を渡すつもりだったのかもしれないけど。この女性、ラザルスと同じく冷徹に見えるのはあくまでブラフで、根っこのところは情に厚い人なのよね。だからこそ、既に賭博師としておかしくなっていたラザルスが致命的な失敗を犯す前に、足を洗わせるつもりだったんじゃないかと思う。それをまあ、ラザルスは台無しにしてしまい、自分から本当に致命的な失敗にしてしまうのだけれど。
それでも、彼の生存を信じて、彼が戻ってくるのを賭場で待っている、というのはなんかこうこの女性も不器用に健気だと思うのですけど、どうなんでしょう。
場合によっては、自分の引導を渡してもらう事すらも受け入れて、ですからね。自分の身をチップに乗せるというのはラザルスの弱点をついているのですけれど、彼が賭博師として再生するのなら祖の身を犠牲にしても良い、という考えだったと思うのは考えすぎでしょうか。

甘いだけ、優しいだけではもう賭博師としては死んでいる。でも、果たして義父が残した教え通りの賭博師が、正解の終着点なのか。
ラザルスは逃亡生活でボロボロになる中で、義父が残した一文からようやく師たる彼の本当の苦悩に気づくことになる。たとえ今はやり過ごせても、いつか必ず破滅する賭博師としての生き様。それをかつて義父は体現し、しかし果たして息子たるラザルスにもそうなる果てを望んだだろうか。
こだわり殉じ続けた義父の教えを乗り越えて、今までのやり方とは全く違う新しい自分に相応しい賭博師としての在り方を掴み取ろうとするラザルスの姿は、なんというか今までにない希望を背負っていて眩しいものがあった。これまで、彼の背中には煤けた儚さがどうしてもつきまとっていたものだから。
彼を変えたのはリーラだったけれど、元々ラザルスはそういう人間だったとも言えるんですよね。しかし、そんな自分を認めて受け入れて、立ち上がるのに誰の力も借りずに、リーラも関わらせずに自分一人でやってしまうのが、ラザルスの大人な所ということなのかしら。いや、ジョン・ブロートンという損得関係なしに助けてくれる友人が居てくれて、自分が傷ついても助けてくれるようなクーリィのような人が居てこそ、ラザルス・カインドが粉々に砕け散ってもそこから立ち直る猶予が出来たのだろうけど。自分が思っている以上に、彼は孤独などではなかったわけだ。昔から、今に至るまで。
そして、自分が孤独ではない事に気づき受け入れ、それを力にする事に躊躇う事がなくなった新しい賭博師像を手に入れようとしているラザルスにとって、フランセスもまた切り捨てるべき過去じゃなくなったのか。
てっきり、フランセスの事はかつての自分の賭博師としての在り方を体現するもう一人の自分としてケリをつけ、過去に置いていくものだと想像していたんですけどね。彼のこれからの生き方は、フランセスを捨て置くようなものではなかったわけだ。正直、ラザルスを見縊っていたと言っていいだろう。ここまで器の大きい男として立ち上がるとは思っていなかった。

でもさ。

その方法は良かったの!? と、正直問い詰めたいんですけどね!! 本気で、ブワッ、と奇声を漏らしてしまいましたがな。予想外にもほどがありすぎる方法だわ、それは! いいのかよ、ほんとにいいのかよ!?
どう言い訳するの、それ!?  でも、お似合いの夫婦であることには間違いないので複雑すぎる。あらゆる意味で過去の決別の原因をまるっと乗り越えちゃったわけですし。
街の対立構造をどう捌くかも大変でしょうけど、リーラにどう言い訳するのかが想像つかなくて、ほんとえらいこっちゃやでw

シリーズ感想

賭博師は祈らない 3 ★★★☆   

賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 3】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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賭博師と奴隷少女の物語。舞台は賭博温泉街バースへ。

ノーマンズランドでの負傷も癒え、ようやく当初の目的地バースにやってきたラザルスとリーラ。村から付いてきたエディスとフィリーも道連れに、気儘で怠惰な観光を洒落込むつもりだったが、一つ誤算があった。
温泉とギャンブルが名物のこの街で目下勃発しているのは、賭博を司る儀典長と副儀典長による熾烈な権力争い。バースへの道中で出会った知人からは忠告を受けるも、時既に遅し。
温泉から宿に戻ってみると、部屋には荒らされた形跡。そして一人横たわる血まみれの少女。面倒事の匂いに辟易としながらもラザルスは彼女を保護する。
それは、陰謀張り巡らされたバースにおける長い戦いの幕開けであった。

実のところリーラとラザルスの関係に関しては現状維持、というかはっきりとした関係にはせずに奴隷身分の女を生涯寄り添わせていくのが、アンダーグラウンドの住人であるラザルスにとっては最良なんじゃないか、と前回ある程度二人の仲が纏まったのを見て思ったものですが、当のラザルス自身がそれを良しとしなかったか。
バースの街でリーラに対して危害が及ぼうとした時のラザルスの激烈な反応を見るまでもなく、彼のリーラを大事に思う気持ちというのはもう溺愛と呼んで過言ではなくなってるんですよね。いちばん大事なものの最上位がリーラになってしまったわけだ。
そして、それは場合によっては自分自身よりも上位に位置づけている、ということでもある。リーラの幸せを鑑みて、自分の側にいることは彼女の幸せにとって決して良いことではないと思い定めていることが、リーラに対して奴隷身分の否定と先の選択の提示、そして自分の側には居てはならないという現状を続けることへの否定からも伺い知れるのだ。
愛があれば、すべては解決する、なんてお為ごかしは存在しない。それは、少女ジュリアナの突き詰めた愛情の果てやナッシュの無力さがこの巻の全部を以って証明してしまった。
それ以前に、ラザルスは自分の中に産まれ育つ「愛」から目を伏せ続けている。面倒くさい男、と思わないでもないけれど、そうやって人としてまともになることは賭博師としての堕落であり弱体化であることからすれば、リーラへの愛を受け入れてしまうのは彼にとっては究極の自己否定なのかもしれない。
賭博師として生きて死ぬ、その定めに殉じているラザルスにとって、リーラの存在は甘い毒だ。人としてまともになり、人として幸せになることが、果たしてラザルスという男にとっての幸福なのか。
当たり前の平和で安らかな人生が、彼にとって救いになるのかそれとも地獄になるのか。
それがわからない間は、ラザルスの煩悶も理解せざるを得ない。白黒つけたがるのは、勝負師たちの悪い癖なのかもしれないけれど。もっと曖昧模糊な関係でいいじゃない、はっきりさせなくていいじゃない、雰囲気に流されて、その甘い感情に浸っていればいいじゃない。
あのロマンティックなダンスシーンを見せられては、二人の甘やかな柔らかな思いを目の当たりにしてしまえば、無責任にそう思えてしまうのだけれど、ラザルスという男はそういう意味で
「潔癖」なんだなあ。

1巻 2巻感想

賭博師は祈らない 2 ★★★☆   

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 2】 周藤蓮/ニリツ 電撃文庫

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奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。
それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが……。
「ねえ、ラザルス。私と結婚しましょ?」
道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは――。
少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。
一巻で自らの生き方を自ら決めたラザルス。でも、そのきっかけとなり助けられた側であったリーラはこうしてみると外側から付与された「奴隷」という在り方に対して、まだ何にも意思表明をしていなかったのでしょう。彼女自身が精神的な奴隷という身分に縛られたままだった。
ラザルスはリーラに一人の人間であることを望んでいたのに、リーラの方はまだ人間であることを選べていなかった。この時代、異民族であり奴隷身分として扱われるリーラの一族は当然のように普通の市民からも人間扱いされません。その現実に、ロンドンを出ることで否応なく直面したリーラは自分の価値というものを見失ってしまうのである。ラザルスが、命を賭けてまで守ったものに対して、リーラ自身が価値を見いだせていなかったわけだ。そりゃあ、ラザルスはへこむよねえ。
ラザルスにしてもリーラにしても、基本的に内向きで他者に対して言葉を費やさないタイプである。リーラに至っては言葉そのものを失っているわけで、何かを伝える意思というものがどうにも薄弱になってしまっているし、ラザルスにはそもそもその手の習慣が存在しない。
二人きりだと何一つ進展しないどころか、自分だけで色々と考え込んでしまって螺旋状にドツボにハマってくという悪循環のスパイラルになってしまうわけだ。この二人、ある意味二人だけで閉じているのに、二人だけだとどうにも上手く回らないペアなんですよね、こうしてみると。
とても対人関係を好まない二人でありながら、どうしようもなく他者の介在が必要な二人、というのがまた興味深い。
一巻においては、あのボクサーの兄ちゃんがなんだかんだとラザルスの思考や意思に風を吹き込み後押しをしてくれたわけだけれど、今回に関してはもうエディスの七面六臂の仲人役である。本人、随分大変な状況に追い込まれているのにも関わらず、なんだかんだと下心ありとか言いながらも実際かなり自分のこと度外視でこじれかかった二人の中を取り持ってくれるあの親切さは、めぐり合わせにしてもえらい人と出会ってしまったものだ、とそう思う。
事実上はともかく、表向きにはちゃんと結ばれることが非常に難しいラザルスとリーラだけに、もういっそ本当にエディスと結婚してしまってもいいんじゃないか、と思わないでもないのだけれど、やっぱりラザルスがまともな生活を送れるとも到底思わないし、そもそも絵面が想像できないので、得難い良き友人ポディションが両者にとっても良い形なのかなあ、と。エディスくらいだと、他にいくらでも良い出会いが待ってそうだし。あのボクサーとか。
結局、ラザルスはどこまでいってもアングラサイドの人間ですしねえ。傍らに生涯奴隷の女一人を寄り添わせて生きていく、というスタイルが一番似合っているじゃあないですか。
同時に、何の後ろ盾もないそういう生き様の人間だけに、あの弁護士を徹底的に敵に回しておきながら、後腐れないケリをつけられなかったのは、あとあとちょっと怖いんですよね。一応脅しはつけて一時的に手出ししてこないようにはなりましたけれど、あれっていつまでも有効というわけじゃないでしょうし、逆に向こうのあの粘着質な性質を考えると一生根に持たれそうなだけに、本当に怖い。今後、まだ出番あるんじゃないだろうか、あの野郎。

前回は18〜19世紀の倫敦という歴史情緒を感じさせる描写が随所に垣間見えた本作でしたけれど、今回は逆に倫敦を離れることで当時の首都以外の都市郊外の当時の様子というのが、色々と描かれていて非常に興味深かった。なんだかんだとあの頃のイギリスを描くと必ずと言っていいほどロンドンが舞台なだけに、それ以外って案外描かれているのを見たことがなかったんですよね。
やはり異世界モノとは違う、外国の風俗というのもを肌で感じられる、これは良い作品だなあ。

1巻感想

賭博師は祈らない ★★★★   

賭博師は祈らない (電撃文庫)

【賭博師は祈らない】 周藤蓮/ニリツ 電撃文庫 

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十八世紀末、ロンドン。
賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
――それは、奴隷の少女だった。
喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。

おおお……。つい最近19世紀末のロンドンを舞台にしたアニメを見たばかりで、あれも一世紀前のヨーロッパ、ロンドンという都市の独特な異国情緒に心惹かれたものでしたが、そこからさらに百年昔。産業革命の黎明期であり、社会構造が革命的なまでに激変していく過渡期であり、大英帝国がまさに世界帝国へと発展していく時代。
作中で描かれるロンドンの街並みは、主人公が半ば裏社会に足を突っ込んでいる人間であるせいか、光よりも薄闇を強く感じさせるアンダーグラウンドか、貧民街、庶民がしぶとく生きている下町が主たるものなのですが、それでも、いやだからこそか、なかなかに味わえない外国の、欧州の異国情緒というものをじっくりと味わえるようになっている。
さり気ない描写に、当時の文化背景や市民の生活感、今では失われたであろう歴史を感じさせる風俗などが仕込まれていて、これがまた空気を肌で感じさせてくれるような濃厚な雰囲気が漂っている。「異世界」を描く作品は多々あり、また「外国」が舞台となる物語も決して珍しくはないのだけれど、それでも19世紀、18世紀という歴史の向こう側にある近代という時代、その中でも異彩を放つ「欧州」という世界観を現出させることの出来る、ライトノベル界隈で活躍する作家は本当に希少だ。それを、新人作品として一発目にぶっこんでくる本作作者の筆力には身震いさせられるものがある。
そんな色濃いまでの舞台が整えられれば、残るはそこで踊る役者たちの出番である。
栄華の裏側に蔓延る退廃を体現するかのような賭博師の男。その男には夢もなく希望もなく、一攫千金を得るのだという野望すらなく、ただ賭博師として無残な死を迎えるまでの時間を賭博師として過ごしている虚無の男。
あらすじを読むと、主人公ラザルスは図らずも懐に飛び込んできた奴隷の娘リーラに対して随分と親身になって接しているように誤解してしまいそうだが、彼はリーラに対して当初からほぼ徹底して「どうでもいい」という無関心で接している。一方のリーラもまた、施された調教によって心を閉ざし、ラザルスからの無関心にもとづいて生じる「親切」に対してほぼ無反応で応じることになる。
随分と、隔てられた出会いだったのだ、二人のそれは。そして、お互いに積極的にその隔てられた距離を詰めようという意識を持たず、二人の時間は過ぎていく。
いったいいつ、二人の間に「情」というものが生じたのだろうか。厭世と虚無に満たされていた男の内面に、変化が生じていたのはいつだったのか。
それは明確に語られることはないが、見分ける手段として彼の口癖である「どうでもいい」という言葉が発せられるときの様子が、ある意味鮮やかにそれを物語ってるのかもしれない。
何もかもがどうでもよくて、いっそ自分の生き死にですらコダワリがなく、ただ養父の残した願いが彼の賭博師としての生き様をカラカラと回していたに過ぎない男が、「どうでもいい」と心から言えなくなっていく過程が、ここには描かれている。
それは、ラザルスの「生きる」という意思の原点に還るまでの物語であり、かつての自分と似た境遇であるリーラの存在によって、もう一度彼が生まれ直す物語なのだと言えるのだろう。
男が、生き様を決めるまでの物語だ。
それまでの勝たず負けずという賭博師として自身に課したルールをぶち壊し、今までと全く異なる「賭博師」のスタイルで決戦に、無謀すぎる死戦に挑むラザルス一世一代の大勝負。
渦巻く熱量の、なんと鮮烈なことか。クライマックスの盛り上がりとして、これ以上無いものでした。独特の空気感、以上になんとも様々な「匂い」を感じさせてくれる、濃厚すぎるほどにダーティーで味わい深い一作でありました。

 
12月3日

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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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