徒然雑記

終日のたりのたりかな  
  オロチのまどろむ庭TOP  読書メーター  月刊書籍発売カレンダー  書籍感想・殿堂作品
  書籍感想・著者索引(表紙絵附) 書籍感想・著者索引(シンプル版)  書籍感想・作品タイトル索引(シンプル版)
  10月の漫画新刊カレンダー  10月のライトノベル新刊カレンダー
  11月の漫画新刊カレンダー  11月のライトノベル新刊カレンダー
 

和ヶ原聡司

ドラキュラやきん! 4 ★★★★  



【ドラキュラやきん! 4】  和ヶ原 聡司/ 有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

ポンコツシスター、今度は恋煩い!? 吸血鬼たちが過去と向き合う第4弾

京都での動乱から二週間、アイリスの様子がおかしい。あれだけ虎木に絡んできていたのに、顔を合わせるとすぐに姿を消してしまうのだ。
そんな中、コンビニオーナー村岡の娘・灯里が家に転がり込んできた。新たなトラブルの予感に困惑する虎木であったが、灯里の『虎木とアイリスは付き合っている』という勘違いが更に事態をややこしくして――!?
そして、コンビニを訪ねてきた思いがけない人物とは……!!
吸血鬼×シスターの日常ファンタジー。ラブコメの気配を感じつつも、過去に向き合う第4弾!!
アイリスの男性恐怖症の原因となった出来事がついに発覚。アイリス自身も理由がわからないんじゃなくて、明確に自覚していたのか。ええ、この娘、こんなもの抱えて今までずっと生きてきたわけ?
ちょっと想像以上に重たかったんですけれど。これは無理だわ。男性への性的な嫌悪感とか潔癖症から来る恐怖症じゃないんですよね。なんでファントムの男性相手なら大丈夫なのか、ようやく理解した。幾らファントムでも男性は男性じゃないか、と思っていたのだけれど。これ、下手したら男とか女とか関係なく恐怖症になっていた可能性もあったわけなんですよね。
村岡さんや虎木の弟の和楽、という絶対に安全で人柄も承知している相手ですら、生理反応としてどうしても耐え難い状態になってしまう、というのもこうなると理解できる。完全にPTSDだわ。

同時に、アイリスにとってそれだけ「家族」という存在が重要なワードになっている事を考えると、虎木が吸血鬼から人間に戻れる方法、というのが確実に存在する、というのが明らかになった……これも物語上重要な出来事ですよね。虎木たちは既に「聞いて」いたから疑っていなかったみたいだけど、それを語った本人の口から確証を得られたのは大きい。
ともあれ、このまま下手に虎木が人間に戻ってしまうと、アイリスの恐怖症の対象が虎木にまで及んでしまいそうだけれど、虎木が人間に戻る前に彼がアイリスの「家族」になった上で人間に戻ったら、彼はその対象から外れる。もしくは、アイリスが恐怖症に陥った原因の因果が反転する、家族が人間になることで人間の男そのものが恐怖症の対象ではなくなる、という可能性も出てくるのか。
虎木が人間に戻りたいと切実に願い、焦りすらしているのは彼の家族である和楽のためでもあるのだけれど、これはそれだけに留まらない理由が生まれてきたのかも。
尤も、虎木からするとまだなんぞそれ!?という状態なのだろうけれど。
でもアイリスが、虎木に対して告白を敢行したのはただ好意を伝えたいというだけではなく、彼に自分の家族となって欲しい、と願うことでもあり、アイリスにとっての「家族」という存在の意味を考えたらそれを虎木に願うということの重たさが果たして虎木にはわかっているだろうか。

幼い頃でももう分別のつく年齢の際に、母を喪ったアイリス。ただ奪われただけじゃない、彼女が死ぬことになった理由も意味も、彼女が何を自分に願ったのかも全て承知した上で両親の願いを叶えるために、今まで嘘を突き通してきた彼女。自分が周りにどう見られ、両親のことを言われ続けてきたのか、小さい頃からずっと理解しながら今まで闇十字騎士団の修道騎士として生きてきたアイリスが、果たしてどれだけ頑張ってきたのか。どれだけの想いを胸に秘めてやってきたのか。ちょっと思い巡らせるだけでもキツいものがあります。彼女にとってファントムとは、吸血鬼とは、決して邪悪でも滅する対象でもなく、むしろ恐怖の対象となっていた人間の男性に比べれば……。そんな中で彼らファントムと敵対する組織で生きてきたのですから……彼女が遠い東方の地で虎木という存在と巡り合った時、あれほど友好的に交流をはじめた理由が、よくわかるというものです。
そしてまさか、その虎木とアイリスにそんな縁があったとは。
虎木にとっての吸血鬼の師匠が、アイリスの継父だったとは。
その師匠ザックにとっては、虎木もアイリスもまさに愛する我が子だったわけだ。こんな因果がまさか隠れているとはねえ。

アイリスにとって、自分の所属する教会組織はファントムと敵対する組織というだけでなく、本当の意味での教会。迷える人に手を差し伸べる人を救い助ける組織の一員という意識を強く持っていたんですね。シスター、という呼び名にこそ意義を見出していたのかもしれない。
それ故に、だからこそ、アイリスにとって家族間の関係で苦しむ灯里は決して見捨てられない存在だったわけだ。両親の離婚問題の間に挟まれて苦しむ子供、というのは現代社会にとっては決して珍しくない存在だけれど、だからこそ教会組織にとって無視できない救済の対象でもある。家族の問題なら、アイリスなら尚更だ。その一助に、村岡家の行く末にザックが……世界的ジャズシンガーのザックの存在が必要なら、それはアイリスにとって十分な理由になったんですよね。
もちろん、自らの家族。残された唯一の親。愛する継父のこととなれば尚更に。

今回は特に「家族」がテーマとなったお話でした。この作品自体の根幹ともなるテーマだったのかもしれません。村岡家の家族問題はシリーズはじまった当初からのことでしたしね。
そこにアイリスの家族の話が主軸となり、虎木家の話が絡み、とみんな家族のために生きてるんだよなあ。未晴の方だって大体が家族のお話だ。
だからこそ、だからこそ、アイリスの告白は恋という想いを伝えるに留まらない。彼女ははっきりと告げている。将来あなたと家族になりたいという気持ち、だと。
アイリスが「家族になりたい」と口にする事がどれほどの事なのか。今回一連のアイリスの過去を知ってしまえば、それが生半可な思いではないとわかるはず。ほんと、ただの告白じゃないのだ。
虎木はほんと十分にちゃんと受け止めないと。
その虎木の方も、和楽の様子がどうもおかしいのを見る限りではのんびりしていられないのかもしれない。
虎木、大丈夫か? 周りの進展に対して頭ついていけてるのか? みんな、待ってはいてくれないぞ。


ドラキュラやきん! 3 ★★★☆   



【ドラキュラやきん! 3】  和ヶ原 聡司/ 有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

虎木と未晴がまさかの婚約!? コンビニ夜勤吸血鬼たちが京都で大暴れ!!

日常に戻り、コンビニ夜勤に勤しむ吸血鬼・虎木のもとに未晴から依頼が。それは、許嫁との縁談を破棄するため、虎木に恋人のフリをして京都の比企本家まで来てほしいというもので!?
納得のいかないアイリスと詩澪を尻目に、これ見よがしにイチャつこうとする未晴と、流されるがままな虎木。そんな虎木の態度に悶々とするアイリスは決意する――そうだ、京都行こう。
だが道中、性急に未晴の縁談が進んだワケが明らかになるにつれ事態は一気にきな臭い方向へ――!!
『はたらく魔王さま!』和ヶ原聡司が贈る、ドラキュラ日常ファンタジー。ポンコツシスターやきもちを焼く?な第3弾!

アイリス、行っちゃダメって言われたのに行っちゃうんかー! そうだ、京都行こうじゃないよ、じゃないですよw
軽々に命令違反とかしちゃう娘じゃないのに逸ってしまったのは、それだけアイリスがメンタル的にどん詰まってしまったからだろうか。この娘、自分の本音をぶち撒けて相談できる相手って居ないんですよね。未晴は基本的で恋敵ですし詩澪も気持ちを吐露できるような相手じゃない。同僚や上司はプライベートを打ち明けられるような関係じゃないですし、強いていうなら由良なのでしょうけれど思いっきり当事者だもんなあ。店長の娘の灯里とは連絡取り合っているみたいだけれど、ファントム絡みの件は相談できないし……そう考えるとアイリスってかなり孤立していて由良にベッタリなのもわからないではないんですよね。
自分の中で虎木由良への結論のないまま、もやもやとした正体のわからない気持ちを持て余したまま、自問自答を繰り返してたらそりゃ煮詰まるってもんである。
京都へ行こう、もあれ気の迷いみたいなもので、アイリス自身七雲に出会わなければ京都駅についた時点でとんぼ返りに帰っていた可能性も高いですしねえ。
とはいえ、京都に来たことでハッキリした事が幾つもあるので、アイリスとしては結果的には良かったのかもしれないけれど、でも命令違反は確実なのでこれ始末書では済まないんじゃないだろうか。クビで済めばいいんだけど。下手したら協定違反で日本のファントムとの戦争勃発、の可能性すらあったわけですし。
しかし、アイリスが最初から由良には吸血鬼にも関わらず忌避感なかったのはそういう理由があったのか。でも、男性恐怖症なアイリスが由良に対してだけ最初から症状が出なかったのは、吸血鬼だからという理由だけではないと思うのだけれど。これ、ファザコン若干入ってませんか?

七雲くんはこれはこれで結構好きなキャラなんだけど、女性にはモテなさそうだなあ。能力的には優れているし人格的にも善良で目端がきく方だと思うのだけれど、メンタルがナヨってるw
これ、未晴と幼小中高全部いっしょで常に四六時中一緒にいるようなタイプの幼馴染関係だったら、ワンチャン、この男は自分が見ていてやらないと、的な感情が発生していた可能性もあるけれど、幼馴染といってもそこまで密接な関係がなかった今の状態だと、ちょっと無理めですよねえ。
よっぽどこれからカッコいい所見せ続けないと意識は変わらない気がする。なにより、未晴はずっと由良にぞっこんなのですから。
結構悪くない男だと思うんだけどなあ。

日本のファントムを牛耳る比企家と六科家。近代化した社会の中で生き延びるファントムたちを、人間社会の上位に食い込むことで地位を安定させ、ファントムたちを庇護下に置いている彼らだけれど、人間社会の中に溶け込み隠れ住むという事自体に不満を溜め込んでいる層も居たんですね。
ほぼ人間同然の由良だとて、吸血鬼として日光を遮断しなくてはならない関係上、普通の生活に非常に苦労している事を思えば、人型以外のファントムなどマトモに生きることも難しいのでしょう。絶滅している種も多いみたいですし。
一個人である由良はぶっちゃけ、そんなファントム全体の事に関しては責任はないし無関係なのだけれど、因縁ある室井アイカがそうした勢力と深く関わっている以上、無視は出来ないか。
今回、可能性だけとはいえ由良が人間に戻れる方法が見つかったわけだけれど、それが叶うとして果たして一抜けして終わり、になるんですかね。アイカを通じて何らかの決着がやはり必要となってくるのか。
何にせよ、アイリスは自分の気持ちに気づく事が出来たし、由良の方も今までみたいに自分にまとわりついてくる女、というだけの認識だけではなく、この娘の事をもっと知っていかないと、とアイリスの事を思えるようになったのは一歩前進になるのかな。



ドラキュラやきん! 2 ★★★☆  



【ドラキュラやきん! 2】  和ヶ原 聡司/ 有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

虎木に憧れる新人バイト登場! コンビニ夜勤吸血鬼の生活に波乱の予感!?

吸血鬼が一年で最も苦手な季節――クリスマス。街中に溢れる十字架だけでも気が滅入るのに、池袋でコンビニ夜勤に勤しむ吸血鬼の虎木にさらなる災難が。天敵である男性恐怖症のシスター・アイリスが、隣の部屋に引っ越してきたのだ。
聖務のパートナーに任命されてしまい、アイリスからどうにか逃れようとする虎木だが、職場のコンビニは年末の繁忙期に突入し、崩壊待ったなし。
そんな時、新人バイトとして現れたのは、梁詩澪(リァン・シーリン)と名乗る美人の留学生。虎木は詩澪とバイトに励むが、そこにアイリスと未晴が様子を見に押しかけてきて、事態は修羅場寸前に。さらに、コンビニ強盗までやってきて――!?
『はたらく魔王さま!』の和ヶ原聡司が贈る、ドラキュラ日常ファンタジー第2弾!

こうして見てると、コンビニのバイト簡単じゃないよしんどいよ大変だよー、という話以上にコンビニオーナーのブラックっぷりを実感してしまい、なんともはや。特に虎木が務めるコンビニの村岡オーナーは余計なトラブルが舞い込んでくることもあって、色んな意味で可哀想過ぎる。幸い、前巻で拗れてた娘さんとの仲を修復できたという虎木が絡んだおかげで良い方に転がったパターンもあるわけだけど、疲弊の仕方がもうすぐ過労死しそうな人だもんなあ、これ。
この人がある意味作中で一番人間らしい生活が出来ていないおかげで、日が当たらない時間しか活動できないという虎木の不自由さも相対的にあまり大変そうに見えなくなってる気がするんですけど!?
虎木にそこまで切実さや悲壮感がない、というのもあるんでしょうね。彼の人間に戻りたいという願望は数十年生きてきて募るばかりでしょうけれど、同時にその感情切望に振る舞わされるような若さは消え去り、年相応の老成を経てしまっている。それは諦観とも現状への適応とも取れる落ち着きで、彼自身はそれに馴染むことを必死に拒んではいるけれどやっぱり切迫感は薄いんですよね。
彼には理解ある家族、ずっと寄り添ってくれた弟が今も生きていて、弟家族も親身になって彼のことを手助けしてくれている。また、荒っぽいと言うか雑ではあるけれど比企未晴のように慕ってつきまとってくる女性もいる。
彼には家族がいて、周りには愛情がたゆたっている。その家族と流れる時間が違い、徐々にその乖離は広がっていて、だからこその孤独感と焦りは虎木にもあるのでしょうけれど、未だ失われていない以上はやはり持ちたる側だったんですねえ。
それを、本当に何も持たず、何も持たせて貰えず、どこにも寄り添えずどの集団にも入れない、そんな本物の孤独の中に居た彼女・梁詩澪の存在が虎木の境遇がどういうものかを教えてくれた気がします。
そんな彼に、詩澪が惹かれ焦がれてしまったのもわかるんですよね。彼女の境遇が想像以上に酷薄であったことからもなおさらに。
若い見た目とは裏腹に、虎木は実際にこう歳食った落ち着きと余裕があるんですよね。いや、アイリスと喧々諤々してるのを見るとほんとかー?と思いたくもなるのですけれど、詩澪が正体をバラしたあとのあの変わらない対応は年の功だと思うんですよね。枯れてる? うーん、どうだろう。
こうしてみると、詩澪が虎木に求めたのは文字通り「親」としての包容力なのかもしれない。女としての色気や魅力で迫っているようで、それは果たして異性に対する求愛や誘惑だったのか。手を繋ぐという行為も、こうしてみると幼い子供が親の手にしがみつくような感覚がどこかにあったんじゃ、とふと思うことも。
まあいざ、虎木が詩澪に真意を問おうとしたら、事前に想定していた対応をなにも出来ずにひたすらしどろもどろでオタオタしてしまっていたのを見ると、老成した余裕なんてこれっぽっちも見当たらないんですけどね。あそこでの詩澪の落ち着いた対応と返答はむしろ歳不相応に詩澪の方が一回り年上みたいに大人びて見えましたし。
いや、その前段階で詩澪と真剣に向き合おうとする虎木に挙動不審になってしまったアイリスに、彼が正論打ってアイリスの大人気なさを嗜めたのを見せられていただけに、あんたアイリスにあれだけ偉そうにぶっておいて、言ったこと何も出来てないじゃんw となってしまったんですよね。
虎木って、なにごとも卒なくこなすし、それこそ70年近く社会で生きてきただけあって人当たりも熟れていて、言葉を尽くす事も慣れていて人に教え諭すことにも長けてるじゃないですか。だから、あんなオタオタしてしまってる姿は新鮮ですらあったんですよね。いや、彼もそんな風になるのか、と。
意外と、女性とこんな身近に親身になって話す経験少なかったのか。若造みたいなうろたえかたしてからに。でも、そういう所って老成してあんまり隙のない彼の可愛げ、でもあると思うんですよね。
それにしても、アイリスにはあれだけ遠慮も何もあったものじゃないのにねえ。自分でも気づいていないっぽいけれど、やたらとアイリスの反応気にしているところあるし。
アイリスの側も虎木にはやたらと気を許しているというか、彼には一切緊張を感じていないのを見ると、ほんとにお互いいつの間にか距離感近くなってるんですよね。和楽老人が面白そうにするわけだ。

一連のトラブルの原因の方は、なんか予想外にラスボスが再登場してきたけれど、大陸系の妖の方も意外と小物だったというか、現代になってかつての格を組織としても失ってしまった、という事なのか。中途半端に古来のまま厳しい掟が残っちゃってるのがやたらアンバランスでしたし。
これを見せられると、闇社会を牛耳るような古妖たちの、闇十字騎士団と対等に暗闘を続けるようなバトルもの定番の大組織、みたいなのはもう存在しないのかもしれないなあ。アイカみたいな個人がポツポツと活動しているばかりなのだろうか。
……比企家とか、思いっきりこの大組織に該当するな、そう言えばw

しかし、文章からはあんまりわからないんだけれど、この話の間の殆どで虎木ってコンビニのクリスマス用制服であるサンタ服を着てたんだよなあ。絵面、けっこう強烈だったのかしら。まあラストバトルまではサンタ姿じゃなかったのですけれど。
最後、アイリスと二人で同じコンビニの袋を持って並んで歩くシーン、あのイラストはいい雰囲気で好きだなあ。



ドラキュラやきん! ★★★☆   



【ドラキュラやきん!】 和ヶ原 聡司/有坂 あこ 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

夜しか外出できない吸血鬼が現代日本で選んだお仕事は“コンビニ夜勤”!?

太陽の光を浴びると灰になってしまう存在、吸血鬼。夜しか活動できない彼らだが、現代では割と問題なく生活していた。
そう、なぜなら“夜勤”で働くことができるから――。
虎木由良は現代に生きる吸血鬼。バイト先は池袋のコンビニ(夜勤限定)、住まいは日当たり激悪半地下物件(遮光カーテン必須)。人間に戻るため、清く正しい社会生活を営んでいる。
なのにある日、酔っ払いから金髪美少女を助けたら、なんと彼女は吸血鬼退治を生業とするシスター、アイリスだった! しかも天敵である彼女が一人暮らしの部屋に転がり込んできてしまい――!? 虎木の平穏な吸血鬼生活は、一体どうなる!?
『はたらく魔王さま!』の和ヶ原聡司が贈るドラキュラ日常ファンタジー!

いや、夜勤でしか働けないって結構現代社会でも問題だとは思いますよ!?
昨今、日中でも平気で出歩くデイウォーカーが珍しくない吸血鬼界隈ですけれど、主人公の由良は陽の光に当たると速攻で灰と化してしまう正統派。それどころか、日が昇ると起きていられないほどの眠気に襲われてしまう、というのだから屋内での活動もままならなそう。尤も、力を使った直後でなければこれほど眠気に抗えないんでしたっけ? とにかく、活動時間は極端に制限されることになる。
ただ、彼にとって夜勤のコンビニバイトだけが社会とのつながり、みたいな結構孤独な境遇を予想していたのだけれど、肉親との交流はこれ並の親戚づきあいよりかなり深いし本邦の退魔集団みたいな家とも付き合いがあって、決して社会から孤立しているわけじゃあないんですよね。
【はたらく魔王さま!】と似たような設定ですけれど、こうして見ると結構コンセプトも異なっていることに気付かされます。あっちは特に当初は魔王や勇者が異世界からきて現代日本で地道に生活していく様子こそがメインで描かれていましたけれど、本作は日中活動できない吸血鬼がコンビニの夜勤バイトだけを収入源に、どうやって生活していくのか吸血鬼の日常譚、みたいな所は今回はあんまり重視されてないんですよね。
突然、生活圏に飛び込んできたアイリスとの男女の共同生活で起こる様々な細かい齟齬や妥協や同居生活はじめのあるある話、とかいうのもそう言えばあんまりなくて。わりとオーソドックスにアイリスが追う犯罪者吸血鬼の確保を巡って、由良が協力しつつお互いの理解を深めていく、みたいな当人同士の関係重視のお話になってましたね。
そもそも、アイリスも吸血鬼退治の専門組織から派遣されてきた、と言っても決して人外そのものを敵視しているわけではなく、男性恐怖症の彼女が男性を意識せずに頼れる相手としてむしろ由良に懐くというかしがみつく、というかバチバチ張り合ったり敵対し合ったりする関係にはならなかったんですよね。むしろ、思いっきりまとわりついてきていたような。自分のポンコツさを逆手にとって、おしかけ居候するあたりはやり手なんじゃないかと思うほどですし。
とはいえ、生活力がないわけではなく、むしろイギリス人であるにも関わらず料理上手ですし(偏見)。いやイギリスの飯がマズいと言われるのとイギリス人が料理うまいか下手かは関係ないんでしょうけどね。本人はイギリスじゃなくてイングランド人だと主張していますが。
ともかく、一緒に暮らすことでしばらく一人暮らししていた由良に家族という郷愁を思い起こさせるきっかけになるアイリスなのでありました。
今現在も、血縁の弟家族と深い交流がある由良ですけれど、今回は明言はされてなかったですけれど、どうも人の女性に想いを寄せていた過去がある節があったんですよね。寿命の差を意識しているようでしたし、亡くなった弟の奥さんにも思う所あったみたいだし、こうしてみると実年齢的にも爺さん!というほどじゃないけれど、若者にはないある種の人生の年輪みたいなものを垣間見せることのある人物像なんですよね、由良って。なので、アイリスにしても以前からの知人で由良を一方的に慕ってくる未晴に対してもどこか年の差を意識しているような接し方、自分の娘みたいな、とまでは言わないですけれど、自分が働いているコンビニのオーナーの娘さんに対しているのと似たような距離感が感じられるんですよね。
実年齢から言うと、娘どころか孫か曾孫でもおかしくない年齢差なのですが。なので、彼女たちの事はなんだかんだと手助けしてあげつつも、自分のことに関しては協力を求めたり利用したり、というのをあんまり考えておらず、自分の仇であり人間に戻るために倒さなければならない祖との対決でも自分一人でなんとかしようとしちゃうんですね。
それをおとなしく待っていられるようなヒロインたちではなく、むしろ無計画な由良の首根っこ抑えて自分達のプランに無理やり彼も同乗させる、という逞しさを見せてくれるのですが、こういうのも一人暮らし故の不安定な生活様式を、同じ生活圏に入ってきた女の子がパパっと整えてくれて、乱れていた夜型生活が一新される、のパターンの一つになるんだろうか。

今の所、アイリスの方の過去が定かではなく、男性恐怖症のおかげでろくに任務遂行できずに辺境日本に左遷されてきた、くらいしかちゃんと語ってくれていなくて、どうも家族関係にしてもなんで生活に支障があるレベルで男性恐怖症になったのかも不明なんですよね。本人は方向音痴や迷子の先で名物食べ歩いてたり、という図太さなどポンコツ面も強いのですけれど、何だかんだと能力的にも人格的にも優秀かつシスターとしても清廉で、人外相手にも偏見少なく気遣いも上手だったり、と良い子なのですが、果たして由良にどうしてあれだけ拘っているのかがちょっとした謎めいた部分でもあるんですよね。彼女の男性恐怖症って、男嫌いとはちと異なっていそうですし。ちゃんと普通に接することのできる異性である由良に拘っている、というのは恋とはまた違ったものみたいですし。まあ後から出てきた由良にアタックしまくる未晴にあれだけ張り合っているあたり、由良を意識しだしているというのはあるのでしょうけれど。
彼女に対する掘り下げは、次回以降になるのかな。
ただのコンビニバイトで生計立ててるフリーター、というには由良さん、吸血鬼としての能力が高い云々以前に、洞察力や人間力が非常に高いし、結構あっちこっちに(国家権力方面にも)顔が聞いて人脈も広かったりするので、いやなんでこの人コンビニバイトしてるんだ? と思ってしまう所もなきにしもあらず、なのですが。普通にアイリスに付き合って吸血鬼犯罪者の捜査や探索、潜入に確保など忙しく駆け回ることも多くなるので、バイトくらいが時間の融通きいて良い、という事なんだろうか。
ともあれ、ラブコメ風味もそこそこ強めみたいですし、人の社会に溶け込む人外たちと裏路地で相対するようなアイリスとのバディものとしての要素も全面に押し出されていますし、その意味では王道的な現代異能バトルものでありラブコメ、になっていくのでしょうか。次回以降もそのへん興味深く拝見ですね。

和ヶ原聡司・作品感想

はたらく魔王さま! 21 ★★★☆   



【はたらく魔王さま! 21】 和ヶ原 聡司/ 029 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

魔王城を打ち上げ、エンテ・イスラでの人間同士の争いも治めた魔王たち。残すは天界で神討ちに挑むのみ──だったのだが、その前にやるべきことがあった。魔王と勇者はじめ、一同が正装で向かったのは、千穂の自宅、佐々木家だった。
 千穂の父と会い、日本にやってきた当時のケジメをつけた魔王。しかし頂点会議から続く体調不良で、日常生活にも影響が出ていた。決戦を前に、見かねた恵美は魔王を心配するのだが──?
 最後まで格好つけられない魔王たちを待ち受ける、天界の真実とは。神討ちは成るのか。成ったとして日本での生活はどうなるのか――フリーター魔王さまと元テレアポ勇者の長い戦いもついに決着、庶民派ファンタジー、感動の完結!

10年も続いたのか。長い間お疲れ様でした。終わってみれば……これ、漆原がニートから脱却する話だったんじゃないの?
いや、このラストバトルってなんだかんだと漆原が主体になっていた、とも言えますし、親の軛から脱することでフラフラと当て所なく彷徨っていた彼が地に足をつけて生きていけるようになった、とも見えますし。
ただ漆原ことルシフェル、本当に長い時間フラフラしていたせいで大事な記憶も朧気になっていて、肝心の部分もこの最終局面に現場にたどり着いてようやく思い出す、という感じだったのでそもそも本人に当事者意識がなかったもんなあ。ダァトに関しても一番最後になって現れて、その姿がルシフェルそっくりだった、というのが結構重要な問題になっていた事に殆ど誰も気づいていないという顛末でしたし。
まあこの最終決戦である神討ちって余談は余談だったんですよね、本作においては。そのために千穂ちゃんが槍ゲットするためにエンテ・イスラではっちゃけたり、魔王城飛ばすためにみんなとっかえひっかえエンテ・イスラと日本を行ったり来たりと大忙しだったりしたわけですけど、やっぱり本作においてはエンテ・イスラの政治的な部分だったり戦争の部分だったり、決戦なんてものは余談だったわけですよ。そういう風な作りにしていた、とも言える。そういうのを、日本での日常生活と天秤にかけて日本での生活の大事さの方に比重をかけたかったのでしょう。少なくとも、日本で生活していた主要人物たちにとっては、日本での生活こそが大事という意識になっていたわけですから。
だから、最終決戦なんてものはアルス=ラムスの兄妹たちを開放して小さい娘を喜ばせる誕生日プレゼントであったわけですし、最終目標というのは千穂が思い描いた日本の小さなアパートの一室でみんなが賑やかにごはん食べてる光景をいかに守るか、てなものだったわけです。
守るだけではなく、先々までその光景を継続する、というのが千穂の願いであり彼女が本来の身の程を越えて頑張った理由でもあったのでしょう。千穂にとって、もうハッピーエンドに等しい時間はとっくの昔に彼女の前にあったわけですから。あとは、それを以下にして将来まで維持できるか、という問題が前にあり、恵美たち含め異世界組が元の世界に戻ってしまうなど憂慮すべき問題は山積みだったのを、あれこれ努力して解消していき、自分の願望をみんなにとっての願いであり望む光景として共有していくことに、千穂は見事に成功した、と言えるんですよね、これ。
最後には、みんな一致団結してそれを叶えるべく動く形になっていましたしね。
千穂個人の幸せとしては、真奥とお付き合いする関係になる、というのは勿論無視できない要素ではあったと思うのですけれど、最重要ではなかったと思うんですよね。そういう関係になれるのを踏まえて、みんな一緒の光景の一要素になれれば、という感じで。だから、真奥に対する独占欲みたいなものが薄かったんじゃなかろうか。彼女にとって、アムス・ラムスという娘を間に挟んでパパとママしている真奥と恵美、というのも彼女の望む光景にとって欠かせない要素だったわけですし。
恵美との関係についてもうるさく言わないどころか、寛容な態度をみせていたのはそのせいではないかと。
まあ、その千穂当人がなにやらエンテ・イスラの方に就職しそうな勢いではあるのですが。結構簡単に帰ってこれるだけにハードルは高くないとは思うのですが、あっちに行くとそのまま政治家ロード一直線っぽいしなあ。
個人的には、周りに変に気を使って忖度したりもせず、自分の感情に背を向けて色々繕ったりもせず、まっすぐに本心を曝け出して直向きに恋していた鈴乃のことは応援していたんですけどね。
一番こう、登場人物の中で乙女していたと思いますし。
しかし、なんでこの大司教さまは、異世界宗教の頂点近い地位に立ってるのにお遍路さんなんて仏教ロードに凝りだしてるんだ!?w

ちなみに、真奥と千穂の関係ですけれど真奥が何となく流れで受け入れるのではなく、ちゃんと千穂との出会いまで遡って彼女に対する気持ちを自己分析した上で、彼女が大事という気持ちに特別な感情があるのだと発見して、ちゃんとそれを踏まえた上で千穂に返答したことは評価してあげたい。
でも、悪魔だから恐怖を力に出来て、逆に愛情には拒絶反応、という設定は構造上は誠実に捉えてあって然るべき設定ではあったかもしれないけれど、物語上はちょっと面倒くさくてあんまり必要性がない設定だった気がするなあ。というか、真奥以外の他の魔族はこの問題どうするんだろう。真奥も先々種族間の分断に繋がりかねない問題だと認識していたけど。魔族でなくしてしまえば、解消されるにしてもそれ恵美がして回るわけにもいかないだろうし。
ちょっと、リヴィクォッコと岩城店長の関係に期待してしまったのですが、あれはまったく職務上の関係以上ではなさそうだなあ、うん。
逆に度肝を抜かれたのはやっぱりサリエルと木崎さんで、うんあれが一番驚いた。なにがどうしてそうなったんだろう。想像がつかないのだけれど、木崎さんのあの娘に対した時のキャラ崩壊してるんじゃ、という声音みると、あの人知らざる一面がまだあるに違いない、うん。
お付き合い、という面でみると三年後の場面の方で真奥と話す千穂ちゃん、もう敬語が抜けてるんですよね。あれは新鮮でしたけれど納得でもあり、順調にお付き合い進んでるんだなあ、と実感させてくれる小さくも丁寧な描写であったと思いますし、ちーちゃんが大人の女性になったんだなあ、と感じさせてくれるシーンでもありました。
芦屋と梨香はもうワンチャンないかなあ。

というわけで、結構ややこしくもなっていたセフィラやら天使関連の話もなんとか伏線を回収し終わり、三年後の場面と並行しながらの最終決戦はあんまり盛り上がらない事は想定済みだったのでしょう。そういう構成でしたし、というかこの作品の方向性そのものがラストを決戦で盛り上げるものではなかった、というのを徹底して貫いたとも言えるのかも。そういう手かせ足かせを嵌めたまま外さなかった、とも言えるのかも知れません。それは四角四面であったとも思いますし、また誠実でもあったとも思うんですけどね。
恵美ことエミリアはもうちょっと許されざる秘恋に葛藤するというかドロドロするというかねっとりしても良かったかなあ、と思うのですが、彼女なりにあの一夜のキスは精一杯のそれだったと思うので、それなりには堪能させて貰いました。
神は細部に宿る、を体現するような日常シーンの細かすぎるほど繊細な描写によって他の追随を許さない生活感のリアリティを常に物語そのものに根ざしつづけた本作、存分に楽しませてもらったと思います。長い間お疲れさまでした。完結、おめ♪

シリーズ感想


……でも、昨今のコロナ禍がこっちにも直撃してたら、真奥さんの会社もろにやられてそう、とか思っちゃうのがリアリティありすぎる世界観ゆえか。図らずも、梨香に語ったまおう組の顛末繰り返しかねないか、恵美のヒモですね、うん。

勇者のセガレ 4 ★★★☆   



【勇者のセガレ 4】 和ヶ原 聡司/029 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

異世界アンテ・ランデでディアナと再会し、魔導機士フィーグライドも仲間に加えた康雄。翔子に取り憑いたシィを分離する方法を探るため、一行は大国バスケルガルデの博物館で、最初の武機・破軍のオリオンを調べることに。だがその瞬間、翔子の左目の炎が激しく燃え、4人は黒い炎に呑まれてしまう―。気がついた康雄の前に現れたのは、翔子に取り憑いたシィ・ライアであった。彼女は、死者がシィとして現世に復活した理由を康雄に語り掛け―。勇者のセガレの普通の男子高生は、世界の危機を救えるのか!?ディアナと翔子との微妙な三角関係(?)の行方は!?クライマックスの第4巻!

【聖者】康雄かー。さすがに勇者や聖女と比べても【聖者】という呼称は現代日本人からするとハードル高いですわねえ。よっぽど敬虔な聖職者とか、自分の身を削って弱者救済に生涯を費やした人とか、カルト教団関係者、くらいですもんね、イメージ湧くの。
ここは異世界の人との価値観ギャップですわな。まあ、現代でもサブカルチャーに馴染んでいない人なら、聖者も勇者も聖女も変わらないくらい呼ばれて恥ずかしい呼称かもしれませんが。

シィの正体、或いはシィと呼ばれる死者たちがどうして現世に現れるようになってしまったのか、という物語の根幹とも言うべき謎がここにきて明らかに。って、そのあたりまでは良かったんだけれど、中盤越えたあたりからかなり進行早くなりましたよね。さすがに、撒きに入ったな、というのがわかってしまいました。アンテ・ランデ編はもうちょっと続けたかったでしょうし。
ともあれ、翔子に取り憑いていたシィが人格を取り戻してしまった上に翔子の身を乗っ取って動き出す、なんて真似まではじめてしまい事態は急展開。
シィの問題って誰かがいらんことをした、というのではなくてこうして話を聞くと完全に既存のシステムが現状におっつかなくなってオーバーフローしかけている、というものでこれどうしようもないやつじゃん。
そもそも、死後の世界というのが何故出来た、誰が作った、そもそも人の生と死の循環だから一方通行だかわからないけれど、この魂の流れるシステムを作ったのが誰なのか、という所までは話突っ込めなかったか。はたしてそれは本当に神様と呼ばれる高次元の存在なのかもしれないけれど、こうしてシステムが破綻しかかっているのをみると、全知全能ではないのは確かな模様。先の魔王の侵攻も、この崩壊をなんとかしようとした行為の一貫で、今暗躍している人も方法は違うけれど目的は同じ、となるとさてどうしたものか。
などと他人事で言っていられなくなったのは、この死者がシィとして溢れ出す、という現象が実はアンテ・ランデに留まらない、という事実が発覚してしまったからなんですね。
これは地球も無関係ではいられない危機だったのだ。
その発覚のきっかけは、かつて勇者と大魔法使いとなり長じて二人の子供の両親となる日本の少年少女が、どうやってアンテ・ランデに来てしまったのかという召喚の原因がわかったからなんですね。
そしてその原因がわかったのは、今回円香たちがバスの事故でコチラ側に迷い込んでしまった、という事故が起こってしまい、それに連鎖する形で理由が関連付けられたから。この畳み掛けるような連鎖して次々と状況が詳らかになっていく怒涛の展開は中々「おおぅ」と驚かされるものでした。

もちろん、翔子の中のシィが自分勝手に動き出すわ、秘密裏に動いていたはずが外国に自分たちの正体がバレそうになってしまうわ、円香がこっちに迷いこんでしまうわ、と康雄にとっても余裕なんざこれっぽっちもなく、いっぱいいっぱいになりながら切羽詰まるばかりの所だったのですけれど、彼が何だかんだと肝座っているのは、どれだけ精神的にいっぱいいっぱいになっていても、それでも浅慮せず深慮して判断を下せるようになった所なのでしょう。賢者というほど聡明でも、冷静沈着でもないのですけれど、物事を深く考え捉えて答えを出し選択する姿勢は見事にリーダーシップを取れていたのではないでしょうか。彼自身は自分は何もしていないと自己評価低いですけど、拘束された時のあの判断は翔子にしてもディアナにしても、この人頼りになる! と思って然るべき行動でした。
妹ちゃん、兄ちゃんへの評価低いけど、この兄ちゃん土壇場でこそ頼りになるから、ホントに。
とはいえ、女性への浮ついた感情をうまいこと操れるほどの余裕は残っていないので、ディアナと翔子への対応はもうアップアップもいいところでしたけれど。ディアナの方も経験値がない上に自分の感情を整理出来ていなかったのでコチラもアップアップになってましたけれど、それでも要所要所で適切にアプローチしているあたりは、さすが女の子だなあ、と。
翔子は、2巻から怒涛の後方一気で凄まじい追い上げを見せていましたけれど、やはりスタートの出遅れは大きかった、というのは彼女自身別の意味ですけれどちゃんと自覚していたところでしたので、これはさすがに白旗あげたのかなあ、と思っていた所でラストでさらなる二枚腰を見せてゴールで追いついてみせる、という奇跡の根性を見せてくれて、やっぱりヒロインとしての強度では翔子さんこのシリーズでは最強でした。状況設定からして不利な部分ばかりで、有利な部分、皆無に等しかったのにただただ自らの女っぷりと根性だけで対等以上の舞台に這い上がってみせたんですからね。
親の世代の引き継ぎ、あるいは後始末などではなく、自分たちだけの自分たちによる冒険譚がはじまる! というところで終わってしまったのはやっぱり勿体無いというか惜しいというか。世界の危機の対処にしても、人間関係にしてもここからが本番、という所でしたからね。ともあれ、うまいこと纏めてちゃんと区切りをつけて終わらせてみせてくれたのはさすが、というべきか。もう少し見ていたいお話であり、キャラクターたちだったのですが、ここでお疲れ様でした。

シリーズ感想

はたらく魔王さまのメシ! ★★★☆   



【はたらく魔王さまのメシ!】 和ヶ原聡司/029  電撃文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

今回は、魔王と勇者と二人を取り巻く者達の「メシ」に注目するグルメ編!未知の食材「コメ」を食べるのに四苦八苦する芦屋。ポテトをきっかけにパソコンを手に入れたことを思い出す漆原。愛するうどんを食べることを全力で拒否する鈴乃。忘れていた趣味を思い出し散財してしまう魔王。突然同居することになった「娘」の食欲不振に「母」として悩む恵美。エンテ・イスラからの来訪者達がそれぞれに日本の「メシ」に向き合う中で、千穂はエンテ・イスラの豪華な料理に舌鼓を打っていた!「電撃文庫MAGAZINE」に掲載された六話に書き下ろし短編を加えた特別編が登場!『メシ』がテーマの庶民派ファンタジー・グルメ編!

これホントに「メシ」の話であって、「メシウマ」なこの料理美味しい! というメシの美味さを堪能する話でも絶賛する話でもないんですよね。なので【ベン・トー】や【異世界食堂】、【かくりよの宿飯】みたいな読んでるとその料理や食べるシーンのあまりに美味そうな描写で、こっちまで涎が出てくる、腹が減ってたまらなくなる、という類とはまた全く異なる種類のメシ・もの小説と考えてもらった方がいいでしょう。
料理云々じゃなくて、とことん「メシを食う」という行為に対して様々な視点・観点からアプローチを仕掛けて、日常の中で飯を食うということそのものを改めて捉え直す作品になってるんですよね。その意味でも非常に「はたらく魔王さま!」的なグルメ短編集となっていると言えるでしょう。
そもそも、冒頭からはじまる一編が、炊飯器どころか「米」という食材を見たこともなく、どうやって食べるのかも知らない真奥と芦屋が、米袋と炊飯器という彼らにとっては謎の物体を前にして手探りで「米を炊いて食べる」という正解を手繰り寄せるために幾つもの大失敗をしながら、試行錯誤していく、というドラマになっているのである。ただ、米を炊くだけである意味スペクタクルな物語になっているのだ、これが。米を知らない以前に、食事という概念すらまったく知らなかった段階からお米を炊く、という行動にたどり着くまでの紆余曲折は人類が思考する生物であるというのを改めて発見させてくれるなかなか感動すら感じられる一大叙事詩でありました。まあ、食べられるように炊く、というところに至るまでがまだ長く辛い試練のときが続くのですけれど。
本編はじまった段階では、貧乏暮らしながらある程度生活基盤を整えることに成功していた真奥たちですけれど、今回人間界で暮らし始めた当初の話を聞いているとかなりギリギリの崖っぷちを綱渡りしていたのがわかって、他人事ながらヒヤヒヤしてしまいます。大家さん、数ヶ月家賃免除してくれてたんだ。そりゃそうだわな、でないと無一文からどうにも出来ないもんなあ。
それでも、住が確保できても食と衣がなんにもない状態で、もちろん職歴もなにもなく、戸籍も身分保障も最低限しか獲得できていない状況なんですから、めちゃくちゃ苦労したんだなあ。最初期の芦屋の吝さも、この崩壊寸前の極貧生活をギリギリ半分転げ落ちかけながら維持してきた時期を見せられてしまうと、大いに納得させられてしまいます。そりゃ、節制するわなあ。
比して、今がどれだけ食生活恵まれているのか、よくわかるというものです。ベルがうどん差し入れしてたの、そりゃ拒否せず受け取るわなあ。
これに比べたら、恵美の方は最初からうまくやってたも同然ですし、ベルに至っては殆ど苦労らしい苦労もせず、ですからねえ。恵まれてるや。
カレーうどん、その汁のハネない食べ方はちょっと難しいよ! それって、結局一本一本ちまちま食べることになってしまうし、端にたどり着くのに麺についた汁を箸で削ぎ落としてしまうとも言えるのでなんかもったいないし、ってかうどんはもっとまとめてズルズル行きたいじゃないですか。
とりあえず、着物でカレーうどんはやめとけ。前掛けするとかした方が早そう。

なかなか考えさせられたのが、恵美のアラス=ラムスの育児メシ。いやこれ、実際に育てた人でないとわからん感覚じゃなかろうか。料理自体に問題はなくて、食事の時間帯がひっかかってた、ってこれよくベル気がついたなあ。シングルマザーがどツボにハマってしまう部分を恐ろしいくらい丁寧に描いてるんじゃないだろうか、この短編。変に完璧に拘ってしまったりとか、真奥の方で暮らしていたときは問題なかった理由が、あっちはお父さん役とお母さん役二人が揃っていたから、というのは考えさせられるところ。手抜きできる部分は手抜きした方がいい、というのは大いに頷かされる。
育児という側面から考えると、アラス=ラムスって幼児としては尋常じゃなく手がかからない優良児なんですよね。ほんとのこの歳くらいの幼児なら、桁一つ二つ違うレベルで手がかかるんじゃないだろうか。そんなアラス・ラムスですら恵美が育児ノイローゼ気味になりかかるほどの育児の上手く行かなさ、という部分が出てきてしまうわけで。育児の大変さというものが断片的ながら伝わってくるというものです。これ、ほんとに相談とか出来る人もいなかったら、パンクしちゃうのも無理ないよなあ。

そして、ラストの真奥が木崎店長のマグロナルドに面接して働き始める話。いやあ、あのレベルで面接の受け答えされたら、バイトなら多少履歴書おかしくてもだいたい受かるでしょう。社員でも大手企業じゃなく、人手足りないところなら拾う所事欠かないんじゃないだろうか。いやうん、職歴は大事だけどね、所詮は参考に過ぎないとも言えるので、これだけしっかりとした受け答えされたら自分なら諸手を挙げて、この人取りましょう、って言いますわ。バイトレベルでこれは出物ですよ。これに関しては木崎さんに見る目があったというよりも、ごくごく当たり前の推移だったように思います。千穂ちゃんはその意味では、高校生らしい面接風景でしたよね。あれは木崎さんの着眼点面白いなあと思ったけれど。
この話、優秀な人が集まる現場には、集まるなりのちゃんとした理由がある、とも言えるわけで、これは木崎さんの手腕だよなあ、と感心したり。

メシ話、と言いつつ各巻や各キャラクターの隙間を埋める幕間集にもなっていて、非常に満足感がある内容でした。面白かった。


シリーズ感想

はたらく魔王さま! 20 ★★★★  



【はたらく魔王さま! 20】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

「勇者が魔王の城に攻め込むのは自然なことです!魔王が勇者の自宅に来るなんてことはあり得ません!!」
アシエスの暴走した食欲に続き、姉であるアラス・ラムスにも異常が発生してしまう。娘を救うため、頑なに拒否する恵美を説得し、永福町にある恵美の自宅に行くことになった魔王。玄関で履かされたスリッパ、大きな冷蔵庫、部屋についているお風呂と、六畳一間の魔王城との格差に圧倒されつつ、親子三人の同居生活が始まるのだが…。一方、異世界エンテ・イスラでは各国の調整が最終段階となり、いよいよ魔王城が打ち上がるのか―!?

真奥と恵美のバイト先であるマグロナルドの主要なメンバーに事情を明かしてしまうという千穂ちゃんの行動、確かに後々真奥たちも動きやすくなるし、アエシスの食糧事情からも事情を知っている先があったら助かる、というのもあったのだけれどそれだと岩城店長と木崎さんさえ知ってたらなんとでもなるし、スタッフの川田くんと大木さんにまで教えるというのはどういうことなんだろう、と思ったら。そういうことだったのか。いやそれなら、志波さんの一族をまるごと巻き込んで、というのも納得できる。
襲撃云々以外にも、要は外国からの賓客を私邸に招くことと、公館に招くことは政治的な意味合いが大きく変わってくるということなんでしょうね。政治的な立場からの拠点を持たない真奥と恵美、魔王と勇者からしてマグロナルド幡ヶ谷駅前店は臨時応急の公的な迎賓館みたいなものに仕立て上げられた、と。政治的立場からエンテ・イスラからの来訪者が勇者と魔王に面通ししたという実績がここで生まれるわけですな。エメラダが、わざわざ正装してここを訪れたというのも実際意味が生まれるわけだ。同時に、現状における魔王と勇者の在り方を目にすることで、千穂ちゃんがやろうとしていることへの理解と信用も生まれますしね。そうなると、一連の事情をスタッフ含めてマグロナルドの面々が承知していないと、これはえらいことになってしまっただろうし、主要株主である志波さんからのバックアップがなかったら混乱は助長されるばかりだったろうし、全部必要なことだったというのもなるほど理解できた。
にしても、次々と異世界の偉い人がマグドに来店するという絵面がちょっとおもしろすぎるんですけどこれw
一番大変なのはこれ、岩城店長だよなあ。まあある意味、木崎さんの残した超絶人気店を引き継ぐというプレッシャーからは開放されたかもしれませんが。それどころじゃなくてw
リヴィクォッコが気配りの人になってて、なんか魔王軍の中で実はこいつ一番大人なんじゃないだろうか。何気に適応具合が半端ないのだけれど。

さてもう、なんか千穂ちゃんが超人的な活躍をしている一方で加速度的にポンコツをマシているのが鈴乃さんことデスサイズベル。千穂が好きという気持ちを時間をかけて醸成し続けていたのに対して、ベルの場合は空気中に充満していた気化燃料に、バチッと火花が散って火がついた、みたいな感じだからなあ。完全に自分の荒れ狂う感情を持て余している。千穂のそれを愛と呼ぶのなら、ベルのそれはまさしく恋なのだろう。大神官という立場を得てしまった彼女だけれど、勇者として云々のみならず魔王軍との戦争の被害者でもある恵美と違って直接的なしがらみのない鈴乃はその点自由とも取れる立場なわけで、この娘の動向が一番予測つかないかも。
一方で、勇者と魔王としての対立軸が解消されてなお、戦争という過去が大きく溝として横たわっていることが明らかになってしまった恵美と魔王。いやもう、実のところ当人同士はもうそういうの拘る必要のない場所に落ち着いてしまったのだけれど、恵美の理性的なところは同時に周囲を慮ってしがらみに囚われる、という要因にもなるわけで。エメラダの過去がそういうことだったとこうして明らかになってしまうと、親友からの感情を無視して自分の感情を優先するということが果たして恵美に出来るのかどうか。あくまでエメラダは魔王軍への負の感情の代表格として登場しただけで、実のところ他にも無数に憎しみを持つ人は恵美の知人の中にもいるだろうし、何より父は無事だったにしても故郷の親しい人を多くなくしているのは恵美自身も同じですしね。
忘れてはいけないことを忘れられないのが、恵美という女性の良いところでもあり儘ならないところでもあるのでしょう。それでもなお、という強い感情が……千穂や鈴乃のような自分自身を変えてしまうほどの想いが果たして今後生まれるのかどうか。現状、淡いものはあったとしても鈴乃みたいに火がついているわけじゃないからなあ……。ただ、鈴乃が危惧してしまったように、可能性はあるんですよね。鈴乃自身がそうだったから、身をもって体験しているわけだし。
だからこそ、恵美と真奥の同居という状況の変化にあれほど激しく反応したのだろうし。
しかしまあ、まさか疑似家族が本当の家族として一緒に暮らすことになるとはなあ。この構図は想像できなかった。何しろ、アラス・ラムスの出現からこっち、恵美ってばずっとシングルマザーの様相を呈していたわけで、つまり最初から恵美と真奥とアラス・ラムスというのは別居、あるいは離婚して時々子供のために一緒に過ごすことはあるだけの、既に終わった家族という観だったんですよね。
それを遡るか巻き戻るか、一緒に暮らすという選択肢が出てくるとは思わないじゃないですか。でもそれって、親の観点からのものであって、子供視点からすればそりゃ勿論両親が一緒に居てくれるというのが一番なんだろうなあ。どうしても大人側からの視点に寄ってしまって、子供からの感情というものに考えが及ばないというのは至らないところである。
アラス・ラムスは変にわがまま言わないいい子でしたしねえ。シングルマザーになる、ということには往々にして理由があり都合があるもので、それは無視してはいけないし配慮もしなくてはいけない。その意志も立場もまた社会的にも守るべきものであり、否定されるべきものではない。
でも、配慮というならそれは、大人だろうと子供だろうと関係なく誰に対しても必要なものなんでしょう。なかなかどうしたって難しいことなんでしょうけれど、恵美と真奥はそういう意味では子供を優先することに躊躇いのない、親として大変だろうとやるべきをやろうとしているという点を鑑みても、大したもんだと思いますよ、本当に。
まあその意味で、恵美の真奥に対する主張を要求はまったくもって正しい!
養育費問題である!
芦屋が頭抱えながらも全面的に受け入れたのも当然と言えば当然。ってか、親子ってんならそりゃ当然その問題は出てくるわなあ。なにしろ「認知」してるんだしw
むしろ、真奥が称賛しているようによくまあ一年での出費をこれだけに抑えられたもんである。幼児に往々にして必要な医療費の類が一切かからない点を考慮しても、この金額は驚異的だと思う。
作品通じて恵美に一番感心したところかもしれないw

さて、物語の方も千穂ちゃんの大活躍によりようやく収拾のめどが立ち、クライマックスへ。かつて千穂ちゃんが悪魔大元帥に指名された際は、見てるこっちも千穂ちゃん実質魔王軍のトップで大宰相になれるねー、なんて無邪気に笑っていたものですが、それがガチの真実となるとは今更ながらおののくばかり。エンテ・イスラと地球との行き来については、このままだと非常に難しいことになりそうだけど、その問題さえなんとかなったらホント向こうの婆ちゃんの言じゃないけれど、エンテ・イスラの方で何にでもなれそうなだけに、大学卒業後の進路についてはよくよく考えて欲しいものです。こればっかりは、なろうとしてなれるものではないだけに。
しかし、ラストのあれは真奥、精神的なショックというだけではない症状ですよね、あれ。むしろ、種族的な問題なのか。悪魔ゆえのものなのか。だとすると、火種がまた生まれてしまったと言えるのかも。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 19 ★★★★☆  



【はたらく魔王さま! 19】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、真奥が男気を見せる!?第19巻

マグロナルドを辞めて受験に専念する千穂のもとに、鈴乃から一本の電話が。なんでも、大法神教会の最高意思決定機関である、六人の大神官の一人に選ばれてしまったとのこと。しかも聖征総司令官に任命され、魔王軍率いる芦屋と激突することになり、重圧と先々の事を考え意気消沈の様子。日本に戻ってきた鈴乃を、千穂や恵美はうどん屋で慰めることに。
そんな中、異世界の危機に何も関与できない魔王は、このままでいいのかと自問自答していた。新たに同居するリヴィクォッコとバイトに励んでいると、アシエスに謎の体調不良!?が発生してしまう。対応に追われる中、鈴乃と千穂は魔王に対する想いを再認識し、まさかの恋愛模様に異変が発生!?
全然男気見せれてねえ!!
いや、千穂ちゃんがやっぱりすげえわ。この娘が大前提をちゃぶ台返しするのって何度目だろう。状況が二進も三進もいかなくなった時にいつもこの娘が行き詰まっている現況に対する認識そのものをひっくり返すんですよね。
今の真奥や恵美たちは、決して頭が固いわけでも柔軟な発想が出来ないわけではないのだけれど、どうしてもこうあるべきという固定概念に捕われていて、それを千穂ちゃんが根底からひっくり返してくれるのである。この場合、千穂ちゃんを褒めるしかないよなあ。普通はこういう発想の転換は出来ないもの。みんな、自分の手の届く範囲の限界まで精一杯手を伸ばして頑張っている。その尽力は並々ならぬものだし、状況内で出来うるあらゆる方策が検討され、導き出されている。これらは、並の頭脳じゃ出来ない処理でしょう。
ところが千穂ちゃんのこれは、手の届く距離を伸ばそうという努力じゃなくて、手を届かそうとしている先を、向こうから届くところまで来てもらうように盤面をひっくり返すようなものだったんですよね、これ。
断絶していた日本側の日常と、エンテ・イスラ側の事情とを見事に連結させてしまったわけだ。真奥たちが忌避していた日本側を無理やり巻き込んでしまう、という形とはまた違う形である。
結局、多大な無理が生じていたのは日本側の日常に影響を及ぼさないようにしながらエンテ・イスラ側の問題に対処しようとしていたことが一番大きかったのを思えば、これはまさに発想の転換なんですよねえ。勿論、巻き込む形になった人たちが協力してくれる、という純粋な信頼がなければ成り立たない部分ではありますけれど。
千穂ちゃん個人としても、エンテ・イスラサイドと日本サイドの断裂が将来への展望に行き詰まりを生じさせていたとも言えるので、この連結は千穂ちゃんの将来どうしたいかという希望と現状における彼女がやりたい事を橋渡しすることにもなったわけで、一気にこの娘の活躍できる範囲を広げることになったのである。
まー、この娘が肝据えて開き直ると、ほんと凄いわ。みんなが一目置くどころか、こぞって頼りにするのも無理からぬ所である。

さて、受験に際して活動を休止するどころか八面六臂の活躍をするはめになった千穂ちゃん。もうヒロインというより主人公並の駆けずり回り方でありますが、今回一番ヒロインしていたのはやはり鈴乃の方なんでしょう。
ほとんどテンパってただけのような気もしますが、テンパってイッパイイッパイになることで深刻な乙女モードになるあたりが、ベルらしいというかなんというか。色んな意味でわかりやすすぎるんですよね、彼女って。それでいて自分のことはあんまり良くわかってないし。
まさか一足飛びに告白までこぎつけてしまうとは予想だにしませんでしたけれど。
予想外といえば、真奥のヘタレっぷりもまあ予想外極まりましたが。それはあかんやろう!!
千穂ちゃんの時はまあ状況が状況でしたし、後々のタイミングというものがありましたから、仕方ない部分があるような気がしないでもなかったですけれど、今回は反論の余地なく完全にアウトでした。
恋愛偏差値が中学生以下なんじゃないだろうか、この魔王陛下。
乙女力の低さが鈴乃や千穂ちゃんと比べて目を覆わんばかりの恵美と、ある意味真奥さん。お似合いというか釣り合ってるような気がしてきました。勇者、傘ごときで一人で煩悶してる場合じゃないからね、ホントに!! 他の娘ら、そういうレベルでもうどうこうしてないですからね!

個人的には、リヴィクォッコがかなり速攻で日本の生活に適応してしまったのも予想外でしたけれど。バイトの方もそつなく熟しているのは千穂ちゃんたちの指導の賜物なんでしょうけれど、アパート生活の所帯じみたあれこれまで速攻で馴染むとは。粗暴で扱い難しそうだったリヴィクォッコでこれなら、魔族の適応力ってかなり大したものなのかもしれない。

それにしても、今回一番えらい巻き添え食ったのって、岩城新店長ですよね。木崎さんや他のバイトの同僚は相応に関係深かったり長かったりで下地はありましたけれど、新店長いきなりすぎる巻き込まれである。何気にこの人も大人物な気がしてきた。
あと、これで木崎さん魔王軍大宰相ルートの可能性ワンチャンあり?

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 18 ★★★★   



【はたらく魔王さま! 18】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

マグロナルド幡ヶ谷駅前店に新店長がやってきた。年度の変わり目でベテランクルーたちの退店も相次ぎ、さらには受験に専念するため、千穂も店を去ることになってしまう。
新体制にバタつく中、魔王はペット禁止のヴィラ・ローザ笹塚でトカゲ姿の悪魔キナンナを飼育し、部屋をボロボロにしたことが大家にばれ、大問題に。退去は免れたが、修繕費として多額の請求書が届けられてしまい!?
一方異世界では、天界の危機に対処する準備として、五大陸各国の調整に芦屋や鈴乃が奔走していた。人間と悪魔の共存を目指す魔王は、マグロナルドの人手不足と合わせて解決する方策を考えるが──。
ひぃぃぃ! ちょっとこれ、想像するだに寒気しかしない状況なんですけど、マグロナルド。そうだよなあ、一番キツイのってこの場合、出ていく木崎店長じゃなくてむしろ新店長として木崎さんの後釜に座ることになる岩城店長なんですよね。
既に現状、考えうる限りの最高峰のもはや異次元ともいえる業績を挙げている店舗。木崎店長の辣腕もさることながら、彼女によって集められて鍛え上げられたスタッフたち。ここにあとから飛び込むのって、もう撤退戦なんですよね。ここからさらに業績アップさせてやるぜ、なんて自信満々でいられる人なんて早々居ないでしょう。
実質、どれだけ業績が落ちるのを食い止められるか、という話なんですよね。それでも、これだけのスタッフが揃っていたらなんとかなりそうなものなんですけれど、千穂ちゃんに辞められたらヤバイなんてもんじゃないんですよね。彼女のみならず、話を聞いてたら学生のみならずこの人抜けたらあかんやろう、という人まで抜けるうえに単純にやめる人数がヤバい。
木崎店長居なくなるタイミングで、これはキツイなんてもんじゃないですよ。おまけに、数カ月後には魔界の方の大作戦で真奥と恵美も一ヶ月丸々シフトから外れる予定が組まれてる、って。
岩城店長が引き継ぎ直後から血の気引いてるのもわかりますわー。いやマジで。質が伴った量がごっそり抜けた後のカバーって、ちょっと取り返しがつかない部分がありますし。
だいたい、バイトに限らず使える人材集めるのって何気に至難なんですよね。あれって、宝くじめいたものがありますし。面接で人となりや使えるかどうか把握するって、多分特殊スキルなんじゃないでしょうか。自分も面接する側にまわることもあるのですが、あれは本当にわからん!
しばらく仕事してみないと、わかんないですよ。その人がどういう人だとかなんて。
まあ、「あ、この人やばいわ」というのが露骨に見える人もいるのですけどね。逆に、この人当たりだ!と一発でわかってしまう人も中にはいるのですけれど。
それに選り好みしてられない状況というのもありますしね。求人って、広告出すの何気にけっこうお金掛かるんですよ、あれ。マグロナルドみたいな大手なら、そのへん予算問題ないんでしょうけれど。ってか、ドタキャンするやつが昨今多すぎる!!
って、話が変な方向行ってしまいましたが、木崎さんみたいな見極め方なんか出来る人は早々いないと思いますよ、うん。まあバイトくらいなら普通にしてれば、だいたい受かると思うんですけどね。
……普通にデキる人って、実は思いの外少なかったりしますし、うん。

とまあ、うん、読んでて黄金の貧乏くじを引かされた岩城新店長の方に思いっきり感情移入してしまったのですが、辞める方の千穂ちゃんの方も大変なんですよね。ってか、作品的にはこっちが主軸の大変さなんでしょうけれど。受験を前にして、周りの友達が真剣かつ具体的に進路について考えている中で、自分はまだ曖昧模糊にしか受験を捉えておらず、一方でエンテ=イスラの方の作戦や地球サイドの安全保障にも関わってくるだろう国際情勢の緊迫化に直面して、果たして喫緊なにに集中すればいいのか、若干混乱状態に追い込まれてる千穂ちゃんの現状、受験生としてはキツイものがあるのも確かな話で。でも、ちゃんとここで一人で抱え込まずに近い境遇にある梨香や、社会人である木崎さんに相談しているあたり、しっかりしているなあ、と感心してしまいます。何気に、大人に相談するのって、高校生くらいだと壁があって難しいものだし、具体的に自分が抱えているものを言葉にして問いかけるのってめちゃくちゃ難易度高いですしね。
……でも、そんな相談にこうもしっかりアドバイスを返せる梨香や木崎さんがまた半端ねえと思っちゃうんですよね。こんなん相談されても、自分だったらまともに助言らしい助言とか出来ませんて。通り一辺倒の一般論以外に実のある言葉が紡ぐことが出来るだろうか、と自問してしまいます。

一方でエンテ・イスラの方でも芦屋がえらい頑張ってるというか活躍しているというか。もう真奥関係なく、というわけじゃないけれど、腹心とか参謀とかではなく完全に独立して独自の判断で外交交渉をつなげて、同盟や協力者の輪を広げてますもんね。真奥とか魔王軍という看板ではなく、アリシエルという個人を信用して、協力してくれている、という感じですし、魔界の住人の移民問題にしても魔王軍首脳部による政策ではありますけれど、完全に芦屋が主導してるもんなあ。
いい意味で、今までべったりだった真奥と芦屋が離れて個人個人で動けているのが、なんとも頼もしいというべきかなんというか……これだけ一人でやれてるなら、芦屋さん……梨香のこともちゃんとしてあげたほうがいいですよ、ほんとに。

色々とエンテ・イスラ側でも地球……というか日常サイドでも激動と言っていいくらい状況が動いているようで、未だ準備期間ではあるというなんとも錯綜した状態なのですが、魔界の住人の未来という点に関しては、真奥や芦屋たちが着実に将来の展望というか戦略に基づいて動いているので、そこだけは何とも安心感みたいなものがあります。まさか、リヴィクォッコが人化して地球サイドに来て、働く魔族さまやるとは思いませんでしたけど。ってか、よりにもよってこいつかよ! 強面すぎるでしょうに。
てか、その強面外国人をビシバシと現場でうまく教育してのける千穂ちゃんが、やっぱりすごすぎる。ある意味、エンテ・イスラ側で魔族たちに元帥としてうまく統制していたのを見たよりも、こっちのほうがインパクトありますわー。木崎さんからも岩城さんからも高校生としては破格、ってか高校生にしてはなんていう前置きは取り除いて、超出来まくるスーパーアルバイター的な評価を受けている千穂ちゃんですけれど、本人は不安ばかり抱いているようですけれど、この娘ならホントどこに行っても全然問題なしにやれるに違いないでしょうね。
木崎さん、ちくっと迷走しかけてた彼女に厳しいこと言ってましたけれど、逃避の結果だろうとなんだろうと来てくるなら絶対に確保、捕獲、ゲットしておくべき人材だよなあ。ってか、真奥にサリエルの二人を独立の際に抱え込むつもりって、無茶苦茶贅沢なんですよね。どれだけ確実に勝ちに来てるんだろう。

しかし、梨香に千穂ちゃんが相談してるときに、真奥との恋愛話に発展してましたけれど……梨香から、恵美はない、と断言が出るとはちょっと驚いた。一番親しい友人の一人である梨香から、そう見えてるのか。ただ、現状の恵美の内面描写を見ると、これはなかなか、ねえ。千穂ちゃんの勘は外れてないと思うんだけどなあ。ただ、鈴乃に関してはどうだろう。最近、鈴乃本人が自重している節もあるんだけれど、確かに千穂ちゃんが最初の方に危機感を感じてたのは鈴乃の方だったんですよね。
次回あたり、鈴乃がメインになりそうですし、最近ちょっとそっち関係ベルは大人しかったんで、どう動くか楽しみなところであります。

シリーズ感想

勇者のセガレ 3 ★★★☆  



【勇者のセガレ 3】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

度重なるシィの襲撃に耐えかね、異世界アンテ・ランデへと渡る決断をした康雄の父、英雄。シィを身体に宿す翔子も同行させるため、剣崎家&ディアナの5人は、翔子の両親の説得に向かう。
元救世の勇者と大魔導士、そして異世界の魔導機士を含む一同だったが、日本に住む普通の人達へ『異世界』の説明をするという難題に、魔王討伐やシィとの戦闘よりも緊張してしまい!?
何とか理解を得て異世界に通じるゲートに飛び込むと、元勇者の英雄に異変が発生! 見知らぬ森に一人投げ出された康雄は、そこが地球ではない『異世界』だと確信する。勇者のセガレとして、いよいよ冒険が始まる!?な、第3巻!
次の巻になっても直ってなかったですよ、マイホームw
ギャグ時空ではないので、破壊された家はもちろん業者に頼んでなおしてもらわないといけないわけだけれど、これ保険とかきかないですよね。ここまで壊れると建て直しとまではいかなくても本格的なリフォームとか必要そうだし、果たして何百万が飛んでいくのか。場合によってはもう一桁あがりかねない。現職一般的なサラリーマンである勇者・親父どのでありますから、これ死活問題なのである。ここで日本で状況の推移を見守っていても、またぞろ襲撃されて家壊されたら本格的に日本で生活できなくなりそうなので、とにかくアンテ・ランデ行ってなんとかしよう、ということになってしまったわけで。げに金の問題は良きにつけ悪しきにつけ、物事を推し進めてしまうものなのでありましょう、世知辛い世知がらい。
ともあれ、過去に勇者と大魔法使いやってました、という剣崎家のご両親ですから、元はと言えば関わり合いがあったのもの確かな話。一方で、本当に無関係で偶然巻き添えを食ってしまって、シィに憑依されるという状況に陥ってしまった翔子ちゃん。
前回の感想で、翔子ちゃん過去の関わり合いも決して濃いわけでもなくてポッと出の印象が強くて、ヒロインとしてここから果たして巻き返せるのかしら。とか書いてたら、物凄い勢いで巻き返してきましたがな! 
最後方からの直線一気ばりの捲りあげである。
というか、勢い良すぎてこれヒロイン通り越して、貴女が主人公じゃないですか!?という八面六臂の大活躍。ある程度シィの力を制御できることになったために、戦闘力皆無のヤスくんを守って、仮面ライダーばりの大アクション、殴って蹴ってとお嬢さん度胸在りすぎ!
いくらパワーアップしたからと言って、そうそう「敵」なるものに対して殴りかかったり、攻撃したりって喧嘩もしたことないような子がそんな勇気出ないですよ。
でも、やっちゃう翔子ちゃん、すげえ男前である。肝が座った乙女のど根性を見せられてしまった。もう完全にヤスくんヒロインである。元々、聖女属性の後方支援どころか、戦闘終了後に浄化してまわるような役回りなんで、立場が完全に入れ替わってます、はい。
恋愛的にも、無自覚に気を持たせるような言い回しばかりしてくるヤスくんにやきもきしっぱなしで、ある意味吹っ切れたのか言いたいことガンガン言っちゃう開き直った翔子ちゃん、初登場当時のいかにも存在感がなかなか発揮できない感じの雰囲気を消し飛ばして、実にパワフルで魅力のあるキャラクターにグイグイと競り上がってまいりましたよ。
図らずも、異世界のどこかもわからない場所に二人きりで放り出されるはめになり、異世界サバイバルをやるはめになってしまったヤスくんと翔子ちゃん。はっきり言ってこれまでで一番のピンチと言って過言ではない状況だっただけに、だいぶお互いの存在を意識してしまうことになったんじゃないでしょうか、これ。まあ、それどころではないくらい切羽詰まってた、とも言えるのですけれど。
でも、ヤスくんも醜態をさらすことなく、きちんと冷静さを保ってこのピンチを乗り切ったわけですし、相応に頼もしいと思ってもらえたんじゃないでしょうか。まあ、物理的なピンチの時に騎士のごとく活躍しまくったのは翔子ちゃんの方でしたけれど。圧巻の頼もしさだったなあw

しかしこれ、事前に翔子ちゃんのご両親に頭下げにいって、危険はありませんから、と保証したにも関わらずこの事態ですからねえ。助かったとは言え、あとでご両親にどう謝るかを考えると他人事でも胃が痛くなりそうです。ただでさえ、異世界とか魔法とかわけのわからんことについて、まともに説明せにゃならん、凄まじい苦行というか難行を乗り越えたあとだったというのにもう。
これ、ハリーヤさんが事前に魔法とか翔子ちゃんのご両親に見せて、ある種の情報の共有をしておいてくれたから、話スムーズに進みましたけれど、いきなり来ていきなり異世界の話されたらえらいことになってただろうなあ。
翔子ちゃん家の呼び鈴の前で、親父さんが胃を押さえて泣きそうになってたのなんか染みるようにわかるわー。フィクションでちゃんと説明せずに秘密にするの、余計にトラブル増やすだけなんだからちゃんと説明すればいいのに、というの実際にやるとなると「高確率で社会的に死ぬから無理!」という剣崎さん家の人々の悲鳴を聞いていると、なるほど納得である。

しかし、これでしばらく異世界編が続くことになるのか。置いてかれたお母さんと妹、そのままおとなしく待機してられるんだろうか、これ。

1巻 2巻感想

はたらく魔王さま!17 ★★★★☆  

はたらく魔王さま!17 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま!17】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、大魔王の遺産を探す第17巻!

正社員登用試験に落ちた悔しさを仕事にぶつけ、いつも以上に神クルーっぷりをみせる魔王。だが、異世界エンテ・イスラから日本にやってきて以来ずっと掲げていた目標を失い、見た目とは裏腹に落ち込んでいた。
さらには、何者かに襲撃され可愛いニワトリの姿で弱ったままのカミーオや、「大魔王の遺産」最後の一つ「アストラル・ジェム」の行方など、解決すべき問題も山積みだった。
そんな中、カミーオ襲撃の鍵を握ると思われる存在が代々木周辺で目撃される。天祢と共に現場に向かった魔王は、そこでワニのような悪魔と遭遇。なんとか確保したものの、六畳一間のヴィラ・ローザ笹塚201号室で世話をすることになり、仕事にプライベートに、魔王は心の休まる暇がなくなってしまい……。
一方マグロナルドでは、店長の木崎に異動命令が出たことで、恵美や千穂を始めとしたクルー達に動揺が広がっていた。木崎と今後について話す魔王を見て、恵美と千穂は魔王が日本に留まる理由がなくなるのではと、不安を覚え始める。エンテ・イスラに戻るのか、日本で仕事を続けるのか、今後のキャリアをどうするか悩み始めた魔王のとる選択肢とは──。
お仕事成分多めでお贈りする、庶民派ファンタジー第17巻!
木崎店長の実年齢が27歳であるという事実にショックを隠しきれない!
いやあ、これほどのやり手の女性の年齢が未だ三十にも届かない27歳ですよ。すごいなあ、すごいなあ。
ぶっちゃけねえ、出来る人って年齢関係ないんですよね。出来る人は若い頃からバリバリできる。もちろん、歳を積み重ねることで出来ることの増えていく晩成の人も少なくはないでしょうけれど、それはあくまで一つの要素であって、年齢ってのは出来る出来ないを左右する大きな要因にはあんまりなりえないんじゃないだろうか。
不惑に至って自らを省みて、また様々な年齢の人と関わる機会があってしみじみそう思うのですけれど、それでも二十代後半というのは得るべき経験もまだ足りなく手探りの時期でしょうに、木崎さんほどの能力と、能力を発揮する意欲と、その能力を向けるべき方向性への確固たる指向性。尊敬の念しか浮かびません。何度生まれ変わっても、こんな風になれるとは思えんなあ。
果たして、こういう女性ってどういう男性を好むのでしょう。木崎さんに関してはもう男の影なんて微塵も見えないだけになおさらにその好みとかが気になってしまう。サリエルは信奉者であって、異性としてはなんか違うだろうし、木崎さんてばサリエルに対してはなんかもうこれどういう扱いなんだ? 今回の「お話」でのサリエルへの対応見てたら全然わかんなくなったぞw
真奥に対しては好感度はそれこそ最高級に高いだろうけれど、異性に対してのそれでは全然なさそうだからなあ。こういう人に限って、ダメンズウォーカーだったりするのだけれど、木崎さんに限ってはなんか想像できないし。温厚な家庭人タイプの優しい男性とかなんですかねえ。
いやいやうん、今回はほんと木崎さんの異動通達にはじまるあれこれが発端だっただけに、木崎さん回とも言える彼女のお話で、色々と考えさせられました。彼女も色々悩み、妥協や迷いに向けるべき足先を踏み出せないときもある、という普通の人……いや、この時点で普通の人の範疇よりもずいぶん上な気がするけれど、決して完璧超人じゃないんだよ、という側面を見せる……ことで、むしろさらに完璧度をあげているような気もするのだけれど、ともかく木崎店長という一個人、大人の女性としての魅力というか、器?みたいなものを否応なく知らしめさせられるお話でした。そりゃ魔王さまもこの人に対しては敬すべき上司から揺らぎようがないよなあ。
それはそれとして、マグドの正採用試験に落ちてしまった真奥。本命とはいえ、一回落ちたくらいでなんだよー、と思うところでもあるのだけれど、一回でも一社でも落とされるというのは深刻にキツイものでして。それを何十何百と繰り返す就職活動は、あれ精神的に死にます。ただ、真奥に関しては別に正社員にならなくても、本業で「魔王」という活動が残っているわけで、そこに生きるための必然性はないのであります。そこを、ヒロイン衆は危惧してるんですよね。まあそりゃそうだよなあ。こちらの現代日本と真奥の縁というのは今となっては彼の意志一つで断ち切れるものになっている。まあそう簡単に切り捨ててしまうには、こっちの暮らしは彼らにとってもそんな軽いものじゃなかったんですけどね。でもまあ、彼女たちからすれば心配は心配なのだ。それを払拭するには、明確な真奥の意思表明みたいなものが必要だったわけで、そうかー、それでこの間のバレンタインとつながるわけだ。この構成は実にうまい。真奥がなんだかんだと要所のイベントは抑えている、という気の利いた一面も見せてくれたわけですしね。まあ真奥側からすれば、いくら身辺がドタバタしていたからといって、このイベントを忘れて放っておけるほど無神経ではありませんし、周りの人間関係蔑ろにしてないですわな。むしろ、気遣いの魔王さまなんですから。
でも、恵美のあの内面乙女モードは素直に可愛いです。この娘さんはもう本当に、目覚めてしまいましたなあ。変な妄想してたら、千穂やベルに女子力の違いを見せつけられて、恥ずかしさのあまり顔を覆ったまま動けなくなってるところとか、特に特にw
一方で、この局面で「老人介護」の展開をぶっこんでくるとは思わなかった。それも、重度の認知症の介護生活。相手はトカゲ型の魔族とはいえ、状況は完全にそれ。これはもう本当にキツイ。お客さん相手にする接客業というのがなおさらにキツイ。まだ一緒になって手伝ってくれる人たちがけっこうたくさんいる、というのはまただいぶ助かっているんだろうけど。何気に隣に住んでるベルがこの「老人介護」に限らず、いろんな局面で真奥の生活支えてるよなあ、と今更ながらに実感させられる。内助の功? 千穂ちゃんも受験も迫って大変だろうにまめに通ってきてくれていて、色々と助けになってくれているのはもちろんわかっているのですけれど、隣に住んでいるというのはやっぱり即応性が違いますもんね。近所付き合いの重要性は現代になってもなお変わらんのです。彼女が近所付き合いの範疇か、というと大きな疑問が生じるところですけれど。

と、日本の生活の方は色々とトラブルではないけれど、問題が多発しながらなんとかみんなで協力してしのいでいる一方で、エンテ・イスラの方はアイテムの奪取などなんやかんやとハードルはあるものの、ある程度順調に進展しつつ、ナイナイの協力体制もある程度安定して結束出来ていたので安心していたら、天使側もここに来てキツイ一手を指してきた。これはもう、戦争への一直線。それも前のような魔族と人類というわかりやすい構図ではなく、混迷しきった泥沼になりかねない危機である。矢面に立たされるベルが、これえらいことになりそうですよ。
そして、ほんと肝心なときには席を外している魔王と勇者!!

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 0−供 ★★★   

はたらく魔王さま! 0-II (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 0−供曄]促原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

アルシエル率いる鉄蠍族が加わった新生魔王軍内で、幹部ルシフェルの謀反が発生! 待遇への不満から、魔王城を破壊して飛び出して行ってしまったのだ。
ルシフェルが向かったのは、マレブランケ族の勢力圏である南方。魔王やカミーオは、いずれ南進をすべく計画を立てていたが、最強のハグレ悪魔と恐れられるルシフェルとマレブランケ族との接触を危惧し、予定を早めて進軍を決断する!
魔王軍を迎え撃つのは、頭領格のマラコーダ率いる大軍勢。幻術を操り戦場を混乱に陥れる戦術に、魔王たちは大苦戦を強いられる。さらにはマラコーダと組んだルシフェルが敵として現れ――?
魔界の統一を目指す魔王の許に、後の魔王軍四天王となるアルシエル、ルシフェル、アドラメレク、マラコーダが集うまでを描いたエピソード・ゼロ第II弾。大会戦の果てに、魔界と天界の真実が明かされる!
サタン・ジャコブが魔界の王になるまで。そして魔王軍四天王が集うまでの魔王軍勃興編第二弾。表紙見ると、サタン確かに体格もたくましくなってるんだけれど、本編の頃の魔王サタンと比べるとまだスマートで真奥寄りなんですよねえ。
それだけ、まだこの頃は魔王としての貫禄はなかったんだ。まだ、寄せ集めのごった煮集団のリーダーであって、王様と呼ばれるには相応しくはなかった。というよりも、まだみんなから認められてはいなかった、というべきか。それとも、王という存在に対してまだ悪魔たちは誰もどう捉えるべきかわからなかった、というべきか。
サタンは既にこの頃、マレブランケ族を攻める前までに王としての在り方、目指すべき形を示してるんですね。それを承知していたのはカミーオとアドラメレクだけではあったのだけれど、今を生きるだけで汲々としていた悪魔たちに、あくまで自分たちの種族だけで生存する、というだけだった悪魔たちに、未来を見せ、魔界全体の繁栄を約束してみせた。それこそが、サタン・ジャコブを魔王足らしめたものだったのだ。決して、彼が誰よりも強かったから彼を魔王として崇めたのではない、というのがこの巻を読むとよくわかる。
サタン・ジャコブとカミーオ、そして魔王軍四天王と呼ばれた四人は野心や欲望だけではなく、確かに魔界全体のことを考えていたのだということがよくわかった。
でもだからこそ、彼らは人間界に攻め込まなくてはならなくなった、とも言えるんだろうなあ、これ。現状のままでは、遠からず魔界は持たなくなる、という判断があったからこそ人間界に攻め込んだはずだったし。
この、まだ破れて従属したとはいえサタンに心服など全然していなかったアルシエルが、サタン・ジャコブが考えていたこと、そのスケールのデカさを知るに連れて心動かされていき、彼が姿を消したときに彼の抱いていた夢を、サタンが自分に託すつもりだった、と知った時の、そして彼以外の者が継いだとしてもその夢を引き継げるだけの枠組みをしっかりと作り上げていたことを理解したときの、衝撃。後々、勇者に破れたときも魔王を助けて一緒に地球に流れてくるほどにサタンに心服しきったアルシエルにどうやってなったのか。この反抗的な彼の姿からは想像つかなかったのだけれど、ちゃんとそうなるだけの大きな変転がアルシエルの中にあったんだなあ。
意外だったのがマラコーダでした。対人類との戦いっぷりからこの人、マッドサイエンティストタイプのヤバイ人なのかと思ったら、思いの外理知的で全体のことを考えて動ける人だったんですねえ。好奇心強くて色々やらかすタイプかもしれないけれど、裏で悪いこと企むような人ではなさそうだし。謀略家ではあったかもしれないけれど、他者から誠実とみなされるタイプの謀略家だったのかもしれん。
色んな思惑があったとはいえ、四天王全員冷たい関係なんかじゃなく、ちゃんと絆があったんだなあ、と思うと感慨深い。
ルシフェルもちょっと見方変わったんですよねえ。言われてみれば、彼こそがサタンと一番付き合い長いわけで、ルシフェルとサタンって部下とかじゃなく、こうしてみると対等の友達だったんだなあ、と。精神面で幼いだけに、なんだかんだと弟分扱いみたいになっちゃいますけれど、アルシエルにかまけてばかりだから拗ねちゃったりとか、そりゃあれだけれど。でも、サタンが真奥になってもなんだかんだとルシフェルに甘いというか気安いのって、こういう付き合いの長さもあるんだろうなあ。
傅役としてのカミーオ翁も必要不可欠だったでしょうけれど。最初からこのお爺がサタンを立ててくれて支え続けてくれたからこそ、サタンもちゃんとやれたわけですしねえ。この巻で、それまでの保護者としての振る舞いを切り替えて、臣下としてサタンを魔王として仰ぎ見たシーンなんぞ、魔王軍の屋台骨が誰だったのかを知らしめたのではないでしょうか。お爺のあの振る舞いの切り替えこそが、真の意味で魔王軍を新生させたとも言えますし。
しかし、ちょっと残念だったのは魔界が思いの外狭い感じだったことかなあ。距離的な広さじゃなくて、勢力の少なさが。アルシエルの一族とマレブランケを支配下に入れただけでほぼ魔界統一状態になるとは思ってなかった。印象として尾張・美濃を支配下に置いたとか、畿内を抑えたくらいの感じで、ここから魔界全土を制圧していくぜ、的な盛り上がりを勝手にこっちでしてしまっていたので。もっと有象無象の様々な勢力が跋扈しているのかと思ってたんだが。それだけ、族滅が進みすぎて魔界全土が衰退傾向にあったのかもしれないけれど。
とはいえ、サタン・ジャコブ魔王として立つ。普段の日常ものとは毛色が違いましたけれど、面白かったです。女っ気、さっぱりなかったけど! 女悪魔出てたっていうけれど、全然女性としての存在感なかったよ!

シリーズ感想

勇者のセガレ 2 ★★★☆   

勇者のセガレ2 (電撃文庫)

【勇者のセガレ 2】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

高校3年生になって一発目のテストで、まさかの赤点を3つもとってしまった剣崎康雄。原因は異世界の危機を救うための勇者修行とあって、康雄を指導する魔導機士ディアナは責任を感じ家を出ると主張。剣崎家ではまたしても緊迫の家族会議が開催されることに。
そんな康雄たちの前に、異世界からの新たな使者、ハリーヤが現れる。ディアナの上司だという銀髪美女は康雄の勇者修行に反対で、学校にまで追いかけてくる始末。追試の勉強もままならない中、ディアナとの関係を誤解した同級生の翔子ともギクシャクしたままで……。
異世界を救う前に康雄の追試が大ピンチ!? 一体どうなる庶民派ファンタジー!
あ、そうかー。そういうことだったのか。勇者の子供でしかも男の子で、そんでもって親父の代わりになる、て宣言したからヤスくんも剣と魔法で戦う二代目勇者になるものだと思い込んでたんだけれど。いや、これに関してはヤスくん当人や周りも基本その路線で考えていたからそれにつられてたのもあるんだろうけれど、彼の能力って客観的に見ると勇者じゃなくて「聖女」系統なんだ、これ。しかも、自分で戦うタイプじゃない戦闘能力が皆無なタイプの。
でも、ハリーヤさんに真っ向からダメ出しくらったように、伝説の勇者の代わりとして異世界に赴くにはヤスくんはあまりにも力不足であり、政治的にも無力すぎて向こうに行っても当人にとってもあちら側の世界にとっても不幸な結果にしかならない、というのは至極まっとうな意見で否定のしようがなかったのですけれど、もしヤスくんの持ってた能力が件の通りなら、伝説の勇者の代理ではなく、まさしくヤスくんの力が求められる事態であるんですよね。ぶっちゃけ、あの「シィ」という存在の異質さは往年の勇者の力であっても圧倒は出来たとしても果たして「噛み合う」のか、と疑問符が浮かぶところでありますし。
でも、歌で死霊を浄化する聖女さまが男、というのはちょっとビジュアル的にどうなのよ、という状況でもあるのですが。ヤスくんがカリスマ歌手とかロックバンドのボーカルとか演歌の若手ホープとかだったら、それはそれで、なのだけれど。
それから、ちょっと勉強が疎かになってたからって、三年生にもなっていてテストで3つも赤点、っていくらなんでも普段から授業に身が入ってなかったとしか思えないなあ、あかんぞヤスくん。いくら使い回しとはいえ、追試で90点以上取れてるんだから、出来ないってわけじゃないんだし。
と、ここで翔子がこんな形で深く絡んでくるとは思わんかったなあ。ぶっちゃけ、彼女クラスメイトでもないし、中学時代の同級生ってだけですごい縁が薄いんですよね。そこに昔お互いちょっと気になってた、みたいな関係があったとしても、そもそも友人とすら言えなかった関係だったというのはやはり弱い。もうちょっと以前からの交流が深くないと、なんかぽっと出の印象が拭い去れないままなんですよねえ。ここから巻き返せるのか、というところなんだけれど、それならもうちょっとディアナとの関係の方を踏み込んでいった方がちとどこもかしこもが中途半端になりかねないんじゃ、といささか心配でもあるわけです。
普通にディアナ、スポットがあたると世間知らずなところも含めて非常に可愛い反応が多いだけに、もっと彼女に重点あてて攻めていってくれた方が好みではあるのですけれど。
ともあれ、向こうに行く行かないもはっきりしないし、シィの正体や黒幕も匂わされつつも、こっちの日本でどれだけ真相に踏み込んでいけるのか、これからどう転がしていくのやら。
いい加減、剣崎家のマイホームが破壊されると、世間的にもやばいんですけど。家の修復って、簡単じゃないんですからね! 次の巻になったら直ってる、ってなわけにはいかないでしょうし、ドアくらいならともかく。
あと、出費!!

1巻感想

勇者のセガレ ★★★   

勇者のセガレ (電撃文庫)

【勇者のセガレ】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

所沢市の一般家庭、剣崎家では緊迫の家族会議が開催されていた。謎の金髪美少女ディアナが、異世界から剣崎家のリビングに現れたのだ。「私は救世の勇者、ヒデオ・ケンザキ召喚の使者としてやってきました」…って、ヒデオって俺の親父じゃねーか!平凡な高校生の俺こと剣崎康遊にゲームみたいな展開が降りかかると思いきや、親父が勇者で、若い頃異世界を救ったって!?どう見ても普通の中年な親父が「勇者」だとか信じられる訳がないし、ディアナは「勇者の息子」である俺に憧れの眼差しを向けてくるし…。異世界を救う前に、家族の平和が大ピンチ!俺の日常は一体どうなる!?
母ちゃん……。あ、あの格好はさすがになあ。【はたらく魔王さま!】のアパートのオーナーに勝るとも劣らない破壊力なんじゃないだろうか。しかも、本人含めて誰も望んでないッ!
せめて、もう少し美魔女とまでは言わないまでもスレンダーにお年を召してくれていたらまだ良かったんだけれど、普通のふくよかなおばちゃんじゃないですかー。無関係のヒトでも「うわぁ……」となりそうな姿なのに、ましてや実の息子や娘が目の当たりにした時のショックを想像すると……南無。
かつて異世界を救った勇者のその後、というのは多種多様のものがあると思うのだけれど、このお父ちゃんたちは元の地球に戻ったものの、力自体は普通に持ったままだったんですね。しかしそれにも関わらず、普通に就職し普通に結婚し普通に子供を作って普通に生活してたわけだ。まあねえ、むしろこの現代日本で勇者力だの魔法だのの力を持ってたからって何の役に立つんだ、という話なんですよね。役に立つどころか活用することすら案外難しいだろう。だから、この普通の大人であり普通の両親になっていた、というのは一番リアルな結末だったのかなあ。どころか、こうして地に足の着いた生活を送れるだけの落ち着きと割り切りを出来ていた、というだけでも敬服に値する。特殊な経験は容易に「普通」を維持するバランス感覚を失わしめてしまいますからねえ。
一方で危機となれば即座にスイッチを切れかえられるあたり、この両親本当に秀でた英雄だっただろう。それこそ現在進行形で。でも、連絡手段を忘れていく当たり、やや平和ボケしていたとも言えるのかもしれないが。
まあそんなこんなで、普通の親として別に特殊な経験を生かした子育て、なんてことは一切せずに普通に健やかに育った勇者のセガレと娘はどうやったって普通の平和な日本の子どもたちであって、両親が経験してきた「荒事」に落ち着いて対処できるなんてこと、出来るわけないのだ。
いや、かつての両親が異世界に迷い込んだ時はどうだったんだろう、と「敵」が現れた時の普通の反応を示す子どもたちの様子を見ると、ふと考え込んでしまう。
ともあれ、だ。セガレの反応は無理ないというよりも大人げない、いやちょっと現実から目を背けすぎ、という対応で主人公としては格好悪いことこの上ない。この点、むしろディアナの方が物分りが良すぎる上に無理を頼んでいる自覚が必要以上にあるので、余計にセガレの反応が格好悪く見えてしまうんだなあ。この件に関しては、彼だけではなく両親も家族に対するフォローが足りて無くて、みんなが多分に適切な対応を撮り損ねたことで最初の段階が拗れてしまった気がする。あの親父殿、やや息子に対する気配りが無神経なのは過去のエピソードの言動からも伺わせるものがあるし。
その時必要な言葉はそれじゃあないんだよ、というすれ違いがなかなかに生々しい。ただまあ、全体的に居心地悪い話ではあるんですよね。フィットしてない、という感じの気持ち悪さじゃないんだけれど、みんなが収まりの悪い中で身じろぎしているような。
かつて勇者だった親父殿が、新たな異世界の危機に再び召喚を請われてその気になって、じゃあ現在の生活は、家族はどうするの? という現実の問題提起を家族それぞれの感情を、思春期のややピーキーになってる内面の尖りも含めて描き出していく話ではあるんですが、まあ初っ端からずっと行き詰った展開が続くだけに、読んでてしんどいわりに面白味に関しては足りない物語ではあるんですよね。後半、予想外の転がり方をして緊迫感ある怒涛の展開になっていくんですけれど、それも息詰まりに風穴を開けるという感じではなかったですからねえ。
セガレの決断に関しても、いやそれでいいのか、とその内容について不安と懸念が募る方が大きい感じでしたし。
シリーズのはじまりの掴みとしては、やや鈍さを抱いてしまう一巻でしたかねえ。もうちょい、次巻以降は推進力が欲しいところです。

和ヶ原聡司作品感想

ディエゴの巨神 ★★★☆  

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

【ディエゴの巨神】 和ヶ原聡司/黒銀 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W


新大陸の発見に沸き立つ変革の時代。海洋国家スピネイア王国に住む青年ディエゴは、違法とされる陰陽術の研究を進めていた。そのことで彼は、力の出所を疑う謎の娘に襲われ、さらには神聖教会にも目を付けられてしまう。打つ手のないディエゴは、腐れ縁の友人アルバロと共に、新大陸遠征軍の船に乗り込むことを決める。
黄金の大樹がそびえ立ち、巨神が森を守る新大陸。そこで二人を待ち受けていたのは、水の檻に囚われた少女レラだった。遠征軍のホアキン船長の命令で、陰陽術を使い少女を檻から出す方法を探るディエゴ。だがレラの目覚めと共に、スピネイアで襲撃してきた娘ローゼンが現れる。彼女が駆るのは、森の巨神“タンカムイ”。ディエゴは海洋国家と原住民族との大いなる戦いに巻き込まれてゆくことになり――?

【はたらく魔王さま!】の和ヶ原さんがデビュー作以外で初めて手掛ける新作は、大航海時代の新大陸もの。と言ってもこの地球世界のそれではなく、別の世界の話ではあるんですがベースは殆ど史実を踏襲しています。海洋国家スピネイアはスペインですし、新大陸を発見した冒険家コロンはコロンブスですし。
そして、旧大陸人が一攫千金を求めて新大陸へと上陸すれば、起こるのは略奪と殺戮という侵略と収奪の歴史なのであるけれど、この新大陸の原住民はただやられるだけではなく、巨神という銃も何も通じない巨大兵器を持って侵略者たちに対抗し続けている、というのが現状。
そんな中、主人公ディエゴは長年続けていた異国の呪術の研究を教会に異端として目をつけられたことで、友人のアルバロと新大陸へと新兵応募にかこつけて逃れてきて、そこで旧大陸では気づかなかった、知らなかった様々な現実に向き合うことになるのである。
そう、これは個々人がそれぞれに抱えている夢と現実が対立し火花をちらし、そしてすり合わせていくという大航海時代というロマンとは裏腹の、己と世界の現実と向き合う話なんですよね。狭い世界を飛び出して、広い世界を知ることで逆に現実に向き合わざるを得なくなる、という話なのだ。その意味では辛辣な話でもある。でも、自分の世界に閉じこもっているだけでは決して得られることのできなかった見地でもあるんですよね。
主人公のディエゴは未知の呪術の研究に取り憑かれた、ある意味夢追い人ではあるんですけれど、その大きな望みの源泉は決して浮かれたものではなくて、むしろ切実で痛切で後悔と絶望から来るもので、雲をつかむようなものであっても、より良き未来を世界にもたらそうという大望であったんですね。しかし、その願いをもたらそうと彼が研究していた手段は、彼が望んでいた世界をもたらすどころか、むしろ破滅をもたらす代物であったのだという現実を、新大陸に渡って思い知らされることになるのである。ローゼンも、コロン提督もそれぞれの立場と考えで、自分の寄ってたつ世界を守ろうとする現実と戦う人たちであったのだ。その事実を前に、ディエゴもそしてアルバロも、新たに知ったこと、広がった自分の世界を元手にしてもう一度、自分の戦うべき現実を見定めていく。
こういう、自分の世界を変えることを恐れない、恐れてもなお前に進んでいけるのは若者の特権だわなあ。個人的には、色々と独学で学んだ陰陽術やコロンへの反発など拠り所となるものが最初からあったディエゴよりも、本当に何も持たないところから自身の努力で語学を学び、そして自分の知らなかった世界の残酷な事実を目の当たりにしてそれを素直に受け止めて、自分の欲と絡めつつもすごく善良な想いを胸に秘めながら、着実に自分の出来る範囲で、しかし範囲を広げようと頑張りながら、世界を変えていこうとしているアルバロの方がどちらかというと好ましかったですねえ。あの子がむしろアルバロの方に惹かれたのもなんとなくわかるのである。あれ、なかなか積極的なアプローチじゃないですか。アルバロ、撃墜されたんじゃね?
一巻でまとめたせいか、作者の微に入り細を穿つ情景描写や仕草の描写、丁寧な心の動きを描く心理描写など、やや影を潜めるか後半まで駆動が鈍い感じがしたのがちと勿体なかったかな。それでも、後半になってぐんぐんと物語が動き出したあたりはさすがである。
一応、これ一巻でキレイに完結してるっぽいですね。続編は話的にも出しにくいか。

和ヶ原聡司作品感想

はたらく魔王さま! 16 ★★★★★   

はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 16】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

魔王さま、義理チョコを貰う!?
異世界で始まった大魔王の遺産捜索の裏で庶民派バレンタインが開幕の、第16弾!

『大魔王サタンの遺産』捜索のため、六畳一間の魔王城からは、生活用品一式が異世界エンテ・イスラへと移されていた。通勤時間の問題により、魔王はそんなからっぽのヴィラ・ローザ笹塚201号室で寝泊まりをすることに。独り身の生活に寂しさを感じながらも、正社員登用研修に参加する魔王。そんな中、研修で一緒になったゆるふわ女子に思いがけず義理チョコを貰ってしまう。アシエスの食い意地によりその情報が知れ渡った時、女性陣に動揺が広がるのだった――!
一方エンテ・イスラでは、大魔王の遺産の一つ『アドラメレキヌスの魔槍』を手に入れるため、鈴乃、ライラ、アルバート、ルーマックが北大陸に旅立っていた。日本のジンギスカン屋そっくりの店では、「囲いの長」と呼ばれる北大陸の代表が待ち受けており……? 庶民派ファンタジー第16弾!

千穂ちゃん、まじすげえ。この娘のくそ度胸と聡明さには何度度肝を抜かれれば済むのか。悪魔大元帥の称号は決して名誉職のそれじゃないのだ。称号にふさわしい働きを、常にこの娘は示している。だからこそ、何の力も持たない女子高生という点は最初から殆ど変わらないのに、彼女の名望はヴィラ・ローザ笹塚の小さなコミュニティに留まらず、魔王軍の幹部たちも人類諸国の名立たる者たちに広がっていくのも当然だろう。
事態がエンテ・イスラを中心に動くことになって、千穂ちゃんが蚊帳の外になってしまうんじゃ、という危惧なんてどこへやら。むしろ、真奥と恵美の方が大っぴらにエンテ・イスラで動くわけにはいかないから蚊帳の外になってるくらいじゃないか。
その清々しいまでの威風堂々とした振る舞いと、意思の強さによって、今は亡き前魔王軍大元帥アドラメレクの遺産、いや彼の魂の後見を得た佐々木千穂。もはや、名実ともに誰もが認める、魔王軍大元帥筆頭である。
今回の一連の話を鑑みると、この16巻の表紙絵は白眉なんじゃなかろうか。千穂ちゃんの凛々しい姿に、奮闘しながらもすっ転ぶベル、そして完全に乙女の表情になってしまっている恵美。三者のヒロインのこの巻における動向を、一発で表してしまっているのだから。
それにしても、真奥さんはもっとしっかりしなさいよねえ。芦屋たちがエンテ・イスラの方に生活の比重を置いてしまったが故に、逆単身赴任みたくなって部屋に一人取り残されてしまった真奥。ベルもエンテ・イスラの方で忙しく、千穂ちゃんは男の一人住まい状態になってしまった201号室には簡単に足を運べなくなってしまったせいで、孤独感に打ち震える真奥のメンタルがマッハで消耗してしまっているんですが、飯事情が寂しくなって、おまけに人恋しくてみるみる元気がなくなっていく魔王さまって、どんだけだよww
まさかここまで真奥が軟弱だとは、そりゃあ芦屋やっつけてたら魔王軍勝手に自壊してたんじゃないか、というベルたちのコメントは的を射すぎてて笑えない。
一方のベルも、エンテ・イスラの政治的なバタバタ騒ぎでも十分大変なのに、そこに真奥のハッキリしなささが原因で千穂や恵美、その他もろもろの女性関係のもやもやした状態に神経をすり減らすことに。自分では傍観者というか中立の立場で居るつもり、でいるのが余計に拍車をかけているような気がするなあ、彼女は。ベルも当事者なんですよね、それを認めていないから余計に真奥の考えが足りない言動に過剰反応して感情を滾らせることになる。この点、ひたすら自分と戦っている恵美がひたすら内圧を高め続けているのとは裏腹に、活火山並みに小規模噴火を繰り返しているのは、まだマシと考えるべきなんだろうか。
ただ、真奥へのイライラが色んな側面でベルに踏ん切りをつかせてしまっているのは何とも面白い状況で、ベルの場合は冷静にさせるよりもむしろ暴走させる方がガンガン閉塞を打開していくんですよねえ。その意味では、彼女も魔王軍大元帥として派手に思い切って振る舞った方がいいんでしょうなあ。でも、人魔共同戦線の陣中でも教会の幹部ではなく、本気で魔王軍の立場で物言いしてるのは笑ってしまいましたけれど。あれは八つ当たりみたいな状態だった、としても。
あと、チビカマはストライクすぎて、もうこれ絶対定着して離れなくなったぞ。
いずれにせよ、今回の一件は魔王も勇者もそっちのけで、悪魔でも天使とのハーフでもなく、ただの人間でありながら魔王軍大元帥の看板背負った二人の少女の活躍で、様々な行き詰まりやらしがらみやらをふっ飛ばしてくれたのは、痛快の一言でした。
梨香さんもここにきて、ベルの企みにも一枚噛んでエンテ・イスラにも出入りしていたように、完全に仲間入りしてきた上に、芦屋に対しても一歩も引かない姿勢を見せてきて、肝を据えた女性陣はほんと気持ちいいですわ。芦屋も、タジタジなんだけれど彼の場合は実のところ既に心中かなり傾いてるからなあ。
そして、完全に内面は乙女とかしてしまっていて、口に出して言っている言葉が本当に建前だけになってしまっている恵美。彼女、マジでどうするんだろう。うちに篭めてる熱量がどんどん凄いことになってるんだけれど。

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 15 ★★★★   

はたらく魔王さま! (15) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 15】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

魔王、ついに正社員!! ……になるための登用研修を受ける!
真冬の大騒動な第15弾!

ライラから異世界の危機について話を聞いた魔王だったが、悲願の正社員への登用研修が始まり、それどころではなかった。
魔王の留守中、千穂と鈴乃はアラス・ラムスのためクリスマスパーティーを企画していた。初めてのクリスマスに浮かれて靴下を大量購入するエメラダや、梨香のことを気に掛ける芦屋、母親が世界の危機に関係していてもまったく気にしない漆原たちをまとめあげ、パーティーを無事開催することはできるのか!?
天使たちの過去、天界の悲劇も明かされ、庶民派ファンタジーにまさかの新展開も!?
こうしてみると、真奥って主人公とは違うよなあ。【ラブひな】後半の景太郎、というとたとえが古すぎるか。たまにあるパターンなのだけれど、真奥自身は物語の主軸でありキャラクターたちからその動向を注視される存在なんだけれど、悩んだり迷ったり一歩一歩進んでいく内面や人間関係の紆余曲折に一喜一憂する様子を詳細に描写されるのは周囲の人間たちなのである。だから実際の主人公は周りの人間たちであるとも言えるし、群像劇とも言えるのかもしれない。真奥も勿論、決断や判断に迷ったり右往左往しているのだけれど、一番芯の部分が揺るがないと同時に、その一番肝心な部分に関してはなかなか踏み込まれずに描かれることがないので、主人公でありながらもしかしたら登場人物の中で一番その人物像が未知でもあるんですよね。一番肝心な部分で一体何を考えているのか、教えてくれないというかわからないようになっている。
だからこそ、彼に好意を抱いてしまったヒロインたちは真奥という男が何を考えているのか、この局面において何を選ぼうとしているのか、常に迷い悩んで考え込んでしまっている。
今回は真奥が本編に殆ど登場しない構成になっているせいか、普段よりもそのへん顕著になってるとも言えるんですよね。
風雲急を告げているにも関わらず、生活自体は落ち着いているという状況も拍車をかけているのだろう。
今の自分達について、そして将来について、みんなが立ち止まって考える機会を得てしまってるんですよね。
ただ今までと変わらない日常が続いていくなら、深く考えずにそのまま流されるように現在を延長していけばいい。危機が訪れ渦中に放り込まれたなら、考えている暇もなく現状を切り抜けなければならない。
でも今回に関しては、今までの日常を捨てて違う世界に旅立つ、という選択肢を突きつけられた上で、考える時間が与えられている。否応なく、立ち止まって周りを見渡して、先のことを具体的に考えなきゃいけない局面なのだ、これ。
まず、みんな思い描いたのは、誰も不幸にならず穏便に、みんなが幸福でいられるにはどうしたらいいか。で、ここでみんな考え込んでしまったわけですね。
そもそも、幸せになるってなんじゃらほい。
真奥はずっと正社員になることを目指してきていて、今は正社員研修までたどり着いて夢までもう一息、のところまで来ている。ところが、そもそも真奥の能力的ではマッグの正社員という枠組みは合致しないんじゃないか、なんて疑惑が出てきている。彼のマッグ店員としての優秀さ優良性は木崎店長の下でこそ発揮されるものなんじゃないか、という疑惑。
或いは、長命種である天使や悪魔と、短命種である人間との恋愛。サリエルやノルド、ライラ夫妻が語る寿命の違う存在との恋、幸せになるということの経験譚は、エミリアを揺さぶり梨香の告白に背を向けた芦屋に大きな衝撃を与えることになる。
特に、ある種の固定観念に縛られていた芦屋なんぞは、その価値観からひっくり返されるような思いに晒され、大いに煩悶することになる。今の彼は立場や種族の差、建前なんかをペリペリと引き剥がしながら、ようやく自分の想いの形というものを自分で覗きこみ始めているところなので、こういう初々しい煩悶は見ていてニヤニヤしてしまうんですよね。あんまりズルいとか酷いとか言ってあげないで、何もかもが初めての経験なんだよ、芦屋も。恵美もそうだけれど、ある種の慣れや健気さが在る千穂や梨香は試行錯誤や立ち止まってしまってる時がんばれがんばれと応援したくなるタイプなんだけれど、本当に初心で一歩一歩が恐る恐る、何かあると途端平静を保てなくなる初心者な恵美や芦屋のそれは、より甘酸っぱさが増々で思わずジーっと見守りたくなるというか、突っつくのも勿体無いという感じで、いやはや。ベルはもうちょっと存在感出したほうがいいと思うけれど。

一連の天使誕生にまつわる事情から、さらに悪魔の正体や大魔王サタンの過去など、エンテ・イスラにまつわる謎の殆どが開示されたわけだけれど、なんか思ってた以上にファンタジー要素が抜けたSF展開だったのね。そして、ラストの急展開。あれだけエンテ・イスラの危機を救うために今の生活を犠牲にすることを拒絶する雰囲気だったのが、どうして一転ああなってしまったのか。最後の最後まで理由が想像できずに首を傾げていたのだけれど……なるほど、あれはみんな全会一致で意見をひっくり返すのも仕方ないわ。
みんなで幸せになるには、の大原則を無視することは出来んわなあ。
いやそれにしても、エメラダさんがどれだけ政治的に大暴れしたんだが。でないと、あのラストの光景はなかなか現実のものと出来ないぞ。そして、ちゃっかりガチで悪魔大元帥に就任している千穂ちゃんにワラタw

シリーズ感想

はたらく魔王さま! 14 ★★★★  

はたらく魔王さま! (14) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 14】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W
異世界エンテ・イスラから、魔王を追って時空を越えた勇者エミリア。無事東京へたどりついたものの、魔王を見つけられず、たった一人街を彷徨っていた。そんな勇者が迷い込んだのは、永福町に建ついわくつきの高級マンション。偶然開いていた窓から部屋に忍び込んだ勇者が、地球人と出会うことになる『勇者の部屋探し』。
さらには、恵美と千穂がお寿司を食べながら友情を深めた『回転寿司』。マグロナルド幡ヶ谷駅前店店長・木崎が幼なじみと激闘を繰り広げた『マグロ店長会議』。いつも通り仕事に出掛ける真奥だが、何かお尻に違和感が……な『魔王の破けたズボン』ほか、『芦屋の圧力鍋』『魔王新しい携帯を買う』も収録。
電撃文庫MAGAZINE本誌と、電子限定号掲載の5編に加え、書き下ろし中編を追加。エピソード大盛りでお贈りする庶民派ファンタジー第14弾!

【勇者と女子高生、友達になる。】一巻で真奥たちの正体を知ってしまった千穂ちゃん、やっぱり相応に動揺し、悩んでたのね。そりゃそうだ。どれほど出来た高校生だって、こんな突拍子もない事態をなんでもないことのように飲み込めないもの。でも、そのぐちゃぐちゃになった思いを整頓して飲み込む助けになったのが、魔王と対立する勇者ご一行だった、というのがまたいいなあ。
まあ実質、異世界からきたエメとアルバートが初めて地球で食べるご飯(回転寿司編)でもあるのですが。
ともあれ、この問題に対して勇者たちに率直に相談してしまう千穂ちゃんの肝の座り方には、相変わらず感嘆を覚えるほか無い。それに対して、自分たちのことは気にするな、と行ってのけれる恵美たちも飛び切りなんだよなあ。両サイドともに、尋常じゃないくらい公平であろうとしてるんですよね。どちらかというと、感情側の問題にも関わらず、だからこそ感情的にならずに理性的になろうとしている。このあたりが、知恵ちゃんにしても恵美にしても尊敬に値する部分なんだよなあ。


【魔王、節約生活を振り返る】
商店街の福引で圧力釜があたってテンションあがりまくる魔王軍大元帥アルシエルww
喜びすぎだろう、悪魔大元帥なのに。とドン引きする恵美やベルが何ともはや。でもそれ以上に、芦屋の家事スキルが圧巻過ぎて、もう笑えてくる。
節約料理がそもそも準備段階や調理方法が全然節約じゃないよ! という話には目がウロコ。そうだよなー、単に食材が残り物だったり処分品だったりしても、油を大量に使ったり調理器具がそこそこ揃えないとダメでお金がかかる、ってなら本末転倒だもんなあ。


【魔王、勇者の金で新しい携帯電話を手にする】
ボロボロになった携帯電話使い続けてて、危ないからとお店の人にガチで怒られる真奥さんがもう、ダメだよ。そこまで壊れたものを修理してもらおう、という時点でちょっとせせこましすぎる。というより、無理と言われてるのに未練がましくゴネるのは、恵美に買い換えてもらうことに引け目を感じてるのか何なのか。自分から弁償しろと言っておいてねえ……このあたりから、真奥の攻めっけが空回りしはじめるのよねえ。思った通りに恵美側が打ち返して来なくなった、と。
アニエスがくっついてるのはおまけとして、アラス・ラムスを連れた恵美と真奥ってもう完全に若夫婦にしか見えんなあ。何も考えてないようで、意外と気ぃ使いのアニエスが恵美とちょっとお近づきになる話でもある。
そういえば、本編ではちょうどゴタゴタしていて、恵美のお父さんにアニエスが娘として一緒に暮らしていた件について、娘同士の初対面から距離感の構築に関してはちゃんとやれてませんでしたもんね。それを短編とはいえ、きっちりこうして話書いてたのか。


【勇者、敵幹部の力に驚嘆する】
やべえわ、すげえわ芦屋さん。昭和三十年か四十年代くらいまで遡らないと、ここまでの裁縫スキル持ってるオカンってなかなか居ないんじゃないだろうか。ちーちゃんも相当にレベル高いはずなのに、彼女ですら太刀打ち出来ないハイレベルすぎる家事マスターだ。
ズボンの破れ方については、すげえ実感篭ってるなあ。こんな破れ方したかなあ、というところだけれど、誰も指摘してくれないあたりには苦笑してしまった。女性陣、それはみんな逆にデリカシーありすぎなんじゃなかろうか。


【魔王、上司の過去を知る】
おお、この水島さんてアニメで真奥が応援いった店の店長か。友人関係という設定を此処で活かして来たのね。しかも、幼馴染。
もう一人、腐れ縁、好敵手、天敵と言っていいのか。ケンタのエリアマネージャーとして現れたもう一人の幼なじみと、思いっきり火花飛ばし合って衝突する木崎店長。
以前、自分の店を持つ、という将来の夢を語ってくれたけれど、そんな彼女の過去から今に至る背景やそのスタイルの元となった部分がわかる話である。ってか、これぞ本物の意識高い系だよなあ。言動にきっちり中身と結果が詰まってるタイプの。もう学生時代から、がっつりと目的意識が構築されてるんですよね。
面白いのは、その向上と練磨が姫子との激しい衝突によって磨かれたフシがある、というところか。誰よりもお互いを認めながら、しかし絶対に認められない相容れぬ関係。難儀やなあ、と思いつつも、その関係を巧みに維持し続け傍から面白がってる水島さんが一番ヤバイのはよくわかった。
ラストの口説き文句は、もう真奥がちゃんと目的持ってなかったら絶対陥落するそれだよなあ。ぶっちゃけ、木崎さんにくっついていく回り道もありなんじゃ、と思うほどに。


【はたらく前の勇者さま! ―a few days ago―】
なんか、事故物件に住んでいた幽霊に日本について教えてもらった、みたいな話を以前していたけれど、違うやん、幽霊あんたのほうやん!!
幽霊なんて非常識な、とは異世界だのこの世界でも神様みたいなのが出てる以上、否定するものじゃなくて、普通に幽霊居たんだー、と思い込んでたんだけれど、普通に違ったやないですかー。
ってか、遊佐恵美ってちゃんと由来あったんですね。勇者エミリアのもじり、だけではなかったのか。こればっかりは後付だろうけれど、納得はできる。
しかし、真奥が芦屋と二人だったのに比べて、やはりエミリアの方は一人で異世界に放り出されて相当に苦労したんだなあ、というのが伝わってくる。相談する相手も弱音を吐ける相手もいない状態で、手探りでかなりの綱渡りをしながら最初の時期をくぐり抜けていたわけで、これ冒頭に関しては真奥たちよりもやばかったんじゃないだろうか。速い段階で大家さんに拾ってもらったわけですしね、あっちは。一方でエミリアの方は、ボロだしまくって下手打ちばかりでしたもんね。
それでも、一山越えたらあっさりそこそこの暮らしをゲットしてるあたりに、エミリアと真奥たちとの違いを実感してしまうわけで……勇者すごい。


シリーズ感想

はたらく魔王さま! 13 5   

はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 13】 和ヶ原聡司/ 029 電撃文庫

Amazon

天使と勇者の母娘喧嘩は落ち着いたものの、依然仲が悪いままの恵美とライラ。二人の関係にうんざり気味の真奥に、ライラから異世界を救うための“お仕事”の内容が伝えられる。しかしそれに不信感を抱いた真奥は、ライラに自宅を見せろと提案。全力で拒否するライラを尻目に、皆で練馬の自宅へ行くことを決める。
一方千穂は、恵美のために動く真奥を見て落ち込んでいた。二人が仲良くなることを望んでいたはずなのに、ヤキモチを焼いてしまったのだ。しかも二人が異世界に帰ってしまうのではないかと、授業も手につかない。その日の夜、思いがけず梨香から声をかけられた千穂。芦屋と食事に出掛けていたという梨香と、「悪魔に恋する乙女達の女子会」をすることになって――!?
女子会の行方は、そしてライラの自宅で真奥が目にしたものとは!? 庶民派ファンタジー、異世界の真実に迫る第13巻!

……面白いなあ。いや、なんだろう。今回いつもにもまして本当に面白く感じたんだが、なんでなんだろう。なんちゅうかね、千穂にしても恵美にしても梨香もベルも、女性陣の自分でも制御できない感情の揺さぶられ方がねー、生々しいというかダイレクトなんですよね。迫真、というべきか。元々、気持ちの動き方や感情表現、心理描写など細やかで丁寧なものがあったからこそ、この作品の肝ともいうべき「生活感」に、登場人物たちが溶け込んで生きている生っぽさがあったのだけれど、ついにそこに「恋愛」という要素が女性陣のサイドから怒涛のごとく押し寄せてきたわけだ。二桁の巻数を費やした上での満を持しての大攻勢である。それだけの積み重ねと下地をこしらえた上での、発現であり一線を越えて踏み越えてきたわけだ。そりゃあ、面白くないわけがない。まさに、盛り上がりどころ、ですもんねえ。
それもね、これまでずっと仲良くなって親身になって付き合ってきた女性陣が、そのまま仲良しこよしのままじゃなくどうしようもなくお互いの存在を刺激しあうものになってきたわけですよ。勿論、これまで築き上げてきた仲間とか親友とかを通り越した、一種の家族みたいな関係は崩れていなくて、お互い好意と敬意を抱いたままなんだけれど、ただ一点、同じ人を好きになってしまった、ということが彼女ら自身の感情をどうしようもなく刺激して波打たせてしまっている。相手をどうこう、じゃなくて自分に対して大きく意識を持って行かれているあたりが、彼女たちらしいところなんですが。
このあたり、真奥は男として非常に難しい舵取りを強いられる場面なんですけれど、確かに千穂ちゃんに対してかなり一方的に負担を押し付けていたのは間違いないんだよなあ。周りから寄ってたかって叱られるのも無理からぬところなんだけれど、じゃあどうすればよかったのか、というと首をひねらざるをえないところもあって。まあ、お叱りを受けた内容が千穂に対するフォローが足りない、という部分だったので、これはもう真奥当人も納得済みの不徳。
で、あるのだけれど、このへんの恵美の方の感情も面白くてねえ。もう、めちゃくちゃ面白くてねえ。真奥とライラの話を立ち聞きしてしまっている恵美の、あのシーンの心の動きは本当に面白かった。
あの後の、ベルに恵美が吐露した気持ちの形容は、あれは表現としては絶賛に値すると思う。ものすごく具体的なんですよね。持って回った言い回しでありながら、あれだけ生々しく恵美が今現在抱いている真奥への気持ちを表現したものは、なかなかないんじゃないだろうか。あれ、変にダイレクトに言うよりもよっぽど気持ち伝わってきた。伝わってきたからこそ、それを聞かされたベルはベルで、あの瞬間どれほどいろんなことを考えたかを想像してしまって、それがまたゾクゾクするわけですよ。

さて、それぞれの恋愛模様が加速し始めている状況で、だからこそ再びスポットがアテられつつあるのが、ただの人間と、それ以外の悪魔や天使たちといった人外の存在との種族差である。今、真剣に自分たちの関係の先を考えるようになった時に、どうしてもこの人種差という厳然とした壁の存在が突きつけられてきたわけですね。一方で、ライラと恵美パパの人種を超えた夫婦の存在、というものも、彼らの登場によって実例を伴って現れてきたわけで。
面白いのは、同時に明らかになりつつある世界の真実の内容が、悪魔と天使が元々「人間」と同じ存在だった、というところだったりするんですよね。一つのテーマに対して、様々な方向から提議が集束していくんですよね。面白い。

しかし、今回色々と激動にして驚愕の真実が明らかになりましたけれど、やっぱりライラが一番度肝抜かれたですよ。うん、びっくりした。
真奥たちが彼女に抱いていた不信感のひとつはよくわかるもので、つまるところ彼女にだけ地に足の着いた生活感がなかったんですよね。ちゃんと、この地球に生活基盤を築いている節が感じられなかった。仕事して収入を得て、衣食住を手に入れて、生活している気配が感じられなかった。これがないものだから、彼女は真奥たちが守ろうとしている生活というものに対して、根本的に理解が及んでないんじゃないかと、不信感を持ってたんですね。ところがどっこい、彼女は彼女でちゃんとこの日本で住むところと収入を得るための仕事を持っていたわけです。思っていた以上にちゃんとした。もう凄いわ。この作品、凄いわw
ライラみたいな存在ですら、ちゃんと生活実態を持たせているとか、すごいわw
これはもう、有無を言わせず真奥も恵美も納得したんじゃないだろうか。一発で不信感の大半は吹っ飛んだ気がする。とりあえず、話をちゃんと聞くくらいの聞く耳を持つ納得は得たんじゃないだろうか。

それから、今回ジャケットで大いに自己主張している梨香さん。ついに芦屋との関係に自ら踏み込んでいった彼女ですけれど、なんちゅうかこの人、姉御やねー。想像していた以上に、根性あるわ。正直、芦屋との関係は難しいんじゃないかな、と思ってたんだけれど、今回彼女が見せてくれた色んな顔は、凄く良かったんですよね。なんか、凄く好きになったわ、この人。決して千穂ちゃんに見劣ってないと思う。敬語とかすっ飛ばした、あの素の表情は、思ってたよりも芦屋とお似合いな気がするんだよなあ。
うん、見る限りではこれ、十分脈ありな気がします。当人、もう完全に斬り捨てられたつもりみたいですけれど、むしろあれ、逆にあそこで芦屋の方、撃ちぬかれた可能性すらあるんじゃないか?
なんか、芦屋は芦屋で妙な動きしているっぽいですけれど。千穂が気づかなかったら、読んでるこっちはさっぱり違和感感じなかったレベルですけれど。これって、先日芦屋がさらわれてエンテ・イスラに連れて行かれた件、けっこう重要な伏線になってくるんだろうか。

シリーズ感想
 
11月26日

(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月25日

Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(KADOKAWA)
Amazon Kindle B☆W

11月22日

(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス フラッパーシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスpixiv)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月20日

Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(GCN文庫)
Amazon Kindle B☆W

11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

11月18日

(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月17日

(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(星海社FICTIONS)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W

11月16日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W

11月15日

(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(Gファンタジーコミックス)
Amazon Kindle B☆W

11月12日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(宝島社)
Amazon Kindle B☆W


(星海社COMICS)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーうぇぶりSSC)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(メテオCOMICS)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W

11月10日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W

11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W
11月6日

(角川書店単行本)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

11月5日

エンターブレイン
Amazon Kindle B☆W


(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
Amazon


(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

11月4日

(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(JUMP j books)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索