噂屋ワタルくん ~学校の怪談と傍若無人な観察者~ (メディアワークス文庫)

【噂屋ワタルくん ~学校の怪談と傍若無人な観察者(カウンセラー)~】 柳田狐狗狸 メディアワークス文庫

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自分の知っている噂話と引き換えに、校内で流れている噂話の真相を教えてくれるという文目沢高校の怪談“ワタルくん”。羽水、風間、藤咲の訳アリ女子高生3人組は“ワタルくん”に接触を試みるが、彼女たちを待っていたのは、「お前たち、俺の下僕になれ」―傍若無人なイケメンカウンセラーだった!?都市伝説や学校の怪談といった噂話の蒐集が趣味だというスクールカウンセラー渡邊先生。そんな彼に“弱み”を握られた3人は『ベッドの下の男』等の噂の真相を調査することに!?型破りなカウンセラーと“噂”を巡る奇妙な物語。
この表紙でカッコつけてるカウンセラーの先生、本当に何にもしないんですけど! 彼が主人公みたいなイメージですけれど、あくまで主人公なのは羽水。風間、藤咲のハグレ者女子高生三人組であって、渡邉先生はこんな噂があるからその真相を調べてこい、と指令を出して、彼女たちが集めてきた話を聞くだけ、というだけで安楽椅子探偵のように座ったまま事件を解決するということもせず、あれこれマジでサブキャラなんじゃないの、ワタルくん?
一応、噂話に彼女ら三人を関わらせることで、それぞれが抱えている問題に向き合い彼女らの中で解決が促されるようにと、意図が込められてはいるんだけれど、黒幕というには動きが本当に少なくて、実は真面目にカウンセラーに徹している、というべきなのかもしれないけれど、存在感がない。
しかも、藤咲の一件では失敗しかけて、慌てる羽目になってるし。
かくの如きよくわからないポディションのワタルくんだけれど、彼のことをあんまり気にしなければ、相応に生々しい事情を抱えて周りから孤立し、現状に鬱屈を抱え、軽い絶望を肩から下げている三人の女子高生の不器用な青春譚、と見れば三人共にキャラが立ってて、よく出来てると思うんですよね。
ってか、メインであり実際の主人公である羽水ちゃんのボッチ理由がぶっ飛んでて、それが暴露されてしまった事件はマジでひっくり返ったんですけど! いやいやいや、繊細な女子中学生が心に傷を負ってそれまでの日常からドロップアウトしてしまう理由としては十分な過程ではあるんだけれど、その根本原因たる羽水ちゃんの特性というか特殊性というか、得意技が凄まじすぎて、なにこのリアルバーサーカーww
ってか、このアスファルト・ジャングルでその暴れ方はヤバい。またやっちゃった、じゃないですからね!!
彼女に比べると、イキってる風間の方がよっぽど可愛くみえてくる。その不器用なグレた理由からしても。乙女を拗らせてヤンキーになるって、この子はこの子で相当にちょっとあかんタイプなんだけれど。
藤咲含めて、対人関係にある種の嫌悪や忌避、拒絶感を持つに至ってしまった三人の少女たち。その初対面は最悪のひとことで、しばらくはマジに仲が悪いと言うか余所余所しいというか、ちょっと生々しい感じの距離のひらいた関係だったんですよね。それが、渡邉先生のお陰で取りあれず一緒に行動せざるを得なくなり……この仲良くない同士が同じ空間にいるという微妙な空気感のキツイことキツイこと。
ただ、羽水も含めて三人共上っ面だけ合わせる、ということも出来ない子たちであることが、ある意味彼女らを孤立させると同時に、一方通行ではない遠慮のない衝突が三人を噛み合わせて往くのである。
あからさまに仲良くなっていくわけではない、しかしいつしか息が合い、会話からも刺々しさが取れ、いつしかお互いに信頼の芽が芽吹いている。
そんなささやかな関係の変化と進展に、不器用な三人はなかなか気づかず、だからこそ自覚が生じた瞬間に一気に景色が変わっていく流れがまたいいんですよね。まあ、その自覚が生じてしまうには相応の事件があり、自分を見つめ直さざるをえない深刻な局面に陥っていて、往々にして手遅れだったりするのですけれど。
渡邉先生、けっこうマジで焦ってたでしょう、羽水ちゃんに泣かれたとき。でも、彼は状況をコントロールするのではなく、あくまでカウンセラーとして自分であれこれ動くことなく、この件に関わった全員が自分の力で自分たちを救うことを促していた、と考えるなら、彼の徹底した不動っぷりも理解できるのですが。
操るのではなく、そこに到れるだけの状況を提供するだけ、というのは結構辛くも在ると思うんですよね。先生の場合、カウンセラーとして手に入れた情報と噂屋として手に入れた情報を駆使して、それこそ黒幕のごとく全部操作することも出来たでしょうから。その意味では、プロとして逸脱せずに徹しつつ、羽水たちを信頼していた、ということなのでしょうか。
ところでこの渡邉先生って、前作のトオルくんなのもしかして?