【エルフに転生した元剣聖、レベル1から剣を極める】  大虎 龍真/屡那 角川スニーカー文庫

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魑魅魍魎、悪鬼羅刹を滅し―― その先にある剣の頂点に再び!!
 剣を極められず無念の思いを抱えたまま最期を迎えた男は、神の力を借りエルフの少年ハークの姿となって異世界に転生。
目覚めて早々出会った虎丸と旅立つと、道中で三人組の男に襲われてしまう。剣術が一切通用しないピンチに陥る中、ハークは「この世界は面白い」と笑みを浮かべつつ、どうにか男たちを倒し、王国東の都ソーディアンを目指す。
 情報収集のためハークが街中を探索していると、エルフ・ヴィラデルと刃を交える事態に。そんな中、世界最強の青龍が都に襲いかかる!! ハークは街を守るため立ち向かうのだが……。
 剣の頂きを目指す異世界剣戟ファンタジー、開戦!!

戦国末期から江戸時代にかけて剣に生きた大剣豪。転生する事で名前を失ってしまうのでそれが誰かは明言はされていないのですが、わりとあからさまに情報出しているので読んでいたら彼が誰だったかはほぼほぼわかるんじゃないでしょうか。
ともあれ、寿命を迎えてなお剣に未練を残した男がその淵で希ったとき、謎の存在にスカウトされ別世界で魂を失ったエルフの少年の肉体にその魂を宿す形で転生を果たすことになる。
間違っても肉体派とは言えない線の細い体力もないエルフの少年になったわけだけれど、肉体そのものが別人になったにも関わらず、剣を振るう際に違和感とかはなかった模様。補正とかされていたのだろうか。
しかし、その剣の技の冴えは些かも減じていなかったにも関わらず、彼が乗り移ったエルフの少年を付け狙っていたチンピラ三人組に襲われた際に、ハークを名乗ることになった剣士は予想外の苦戦をするはめになる。
この世界はレベルがすべて。レベルがあがるごとに身体能力があがるどころか、肉体の強度まで増すというレベル絶対世界なんですよね。さすがに、剣の達人が奮った刃がチンピラの肌を切り裂けずに弾き返される、というなかなか意味不明な光景を目の当たりにするとは思わなかった。どういう理屈なんだ?
ここまで来るとゲーム風のシステムが機能している世界、と考えた方がいいのかもしれない。これだけレベルが絶対的な意味を持つとなると、戦うための技術を育てるよりも近視眼的にひたすらレベルを上げる事に終始されてしまって、技量については軽視されてしまっている世界なんだろうか。
結局、ハークも苦戦しながらチンピラどもを倒すことで経験値を得てレベルがあがった事によって最低限の戦うために必要な力を得ることになる。逆に言うと、レベル1のままではチンピラ相手でもギリギリだったわけで、ハークの前世からの剣聖としての技はそこまで無双を約束してくれるものではなかったわけだ。レベルがあがって他のレベル高い連中と同じ舞台に立つようになった際には武器になるんだろうけれど。
そもそも、戦国時代の剣豪が主人公の作品なんだけれど、高度な剣術論が飛び交う剣戟アクション、というわけじゃないんですよね。その手の薀蓄なんかは一切皆無だし、本格的な剣術としての理合や術理、動作について語られるわけではなく、剣豪というそれっぽい雰囲気に終始しているので、そっち方面はあんまり期待しない方がいいかもしれない。
そもそも、剣対剣の対人戦というのは殆ど発生せず、というか最初のチンピラ戦だけじゃないだろうか。いきなりラスボス級のモンスターとのイベント戦闘みたいなのがクライマックスでしたからねえ。
ヒロインはこのヴィラデルというエルフの女偉丈夫になるんでしょうか。どうやら、彼女がハークを邪魔に思って始末しようとした、というのはエルフの少年の誤解、思い込みにすぎなかったようで……この少年、勝手に思い込みで自殺してしまったのか。なんかどうしようもない子だったんだなあ。
本来のヴィラデルという女性は、苦労してきた酸いも甘いも噛み分けてきた人物でありながら面倒見の良い姉御タイプみたいで、旧ハークも随分と面倒を見てもらったようなんですよね。旧ハーク少年がどうやら面倒くさいタイプだったみたいだから、いい加減鬱陶しかったと思うのですけれどそれでも嫌な顔をしながらも声をかけてきてくれるあたり、親切な人だと思うんだけどなあ。
中身が剣聖になったハークも、旧ハークの遺言のおかげでヴィラデルのことを誤解してしまっているおかげで塩対応に終始しているのだけど、誤解が解けたら解けたであんまり相性は良さそうじゃないんですよね。中身がアレなおかげで完全に自立した大人であり他人の助けを必要としない強烈な個であり男であるために、変に世話好きなのもお姉さん顔してマウント取るのもハークからしたらウザいだけになっちゃうだろうし。このヴィラデル、果たしてヒロイン枠に入るんだろうか。
むしろ、相棒である虎の虎丸が人化してヒロインと化す方がまだありそうである。なんか、三下属性なのがネックと言えばネックなのだけれど、ハークは生涯添い遂げる相棒として厚い信頼を寄せているわけですしね。

しかし、このハークくん、なんでまた自前の技を一つも見せないまま、他人の真似である示現流の技を必殺技で奮っているんだろう。てか、この示現流の技って、なんかアクションゲームで出てきたものなんじゃ……。