妹さえいればいい。

妹さえいればいい。10 ★★★☆   



【妹さえいればいい。10】  平坂 読/カントク ガガガ文庫

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妹がいる生活、はじめました。

ついに千尋の抱えていた大きな秘密が、伊月たちの知るところとなってしまった。千尋から事情を聞かされ、表向きはそれを喜んで受け容れた伊月は、これまでどおり那由多とイチャイチャしたり、千尋を可愛がったりして、妹がいる生活を満喫する。『妹すべ』のアニメも好評を博し、招待された台湾のイベントでちやほやされるなど、売れっ子作家としても満たされた日々を送る伊月だったが……? 一方、重荷から解放された千尋にも、新たな物語が始まろうとしていた――。大人気青春ラブコメ群像劇、運命の第10弾登場!!

ウチの弟が妹だった件について。
改めて伊月のお父さんが奥さんを喪い傷心しながら幼い息子のために一心不乱に働く中で、今の新しい奥さんに出会うまでの回想を見せられたのだけれど、伊月パパも、千尋のお母さんである義母も真面目な人なので、千尋の性別を誤魔化すなんて非常識なこと余程のことがないと一蹴してただろう事がよくわかる。
それだけ、伊月のデビュー作の衝撃がよほどの事だったのだろう。まあ、性別を偽るのは伊月に対してだけで、学校など公共の所では普通に女の子として過ごしているのだから、書類を偽装したりという危険な行為に手を染める必要はなかったので、親側のハードルは低かったのだろう。
ただ、千尋は学校に通う制服はともかく、普段は外出する時なんかでもユニセックスな服装を心がけてただろうから、結構大変だったんだろうな。まあそれが日常と化していたから、はじめのころはともかくいい加減慣れてはいたのだろうけれど。
しかし、パパの回想を見ると伊月との断絶はかなり厳しいものになってますね。新しい奥さんとの出会いを中心に描いているので、息子に向ける気持ちなんかはあまり描かれていないから、なのかもしれませんけれど、パパの方には伊月を放置していたという自覚は殆どないようでしたし。

さて、千尋の性別がバレた、じゃなくてあれは千尋が我慢しきれずにバラしてしまった、が正しいか。ともあれ、ついに千尋が弟ではなく妹だと発覚する……この作品が【妹さえいればいい。】というタイトルであることの意味を思えば、妹バレというのはこのシリーズはじまった当初から最大の山場であり最大の修羅場、と目していたものでした。
ただシリーズはじまった序盤の頃の狂的な妹属性だった伊月と違って、今の彼は小説家として幾つもの経験を経て、ついにアニメ化という目標まで達成するに至り、自分の中の妹狂いをある程度飼い慣らして小説にアウトプットする事が出来るようになっているかに見受けられていました。
さらに、私的にもカニ公と正式に交際をはじめ、恋愛感情も健全に進捗させ、彼女への愛情に小説家としてのコンプレックスも自分の中に呑み込んでおけるだけの制御が叶うようになっているようでした。
さらに、千尋との関係は年単位で密接に積み上げられ、再婚の連れ子同士という関係は今や父と疎遠になっている以上、唯一の大切な家族、という認識に至るまで育つものになっていました。
千尋が、自分が弟ではなく妹なのだと我慢しきれずに暴露してしまったのも、家族ゆえの距離感だったのでしょう。彼女なりの親愛であり、兄への我儘で甘えでもあったわけだ。それが出来るほどの距離感になっていた、とも言えます。
伊月の人格的にも、千尋との関係としても、この上なく安定を見ていたのが現状でした。
ここまで安定していると、とてもじゃないけれど弟が妹だったという事実を突きつけられたからといって、そうそう揺らぐものではないんですよね。今更、修羅場になりようがなかった、とも言えます。
だから、千尋の暴露が大した騒ぎにならず、知らなかった面々を仰天はさせたものの、ある意味伊月たちを驚かせただけで終わったのでした。拍子抜けなくらい、そうだったのかー、で終わっちゃったんですね。
これまでのシリーズの積み重ねて、前述した安定性について実感していた読者側の身としても、そのあっさりとした特に波乱もないまま終わってしまった展開は、まあそうなるな、という妥当と感じる反応で得心のいく結果だったと思います。
むしろ、変に拗れずに安堵した、と言ってもいいかもしれない。
だから、ラストの展開には「そう来たかー!」と思わずのけぞってしまいました。うん、そっちは不覚にも想定していなかった。
なるほど、これは「安定」していたからこそ、千尋の性別告白が伊月が致命傷になってしまったのか。小説家としての伊月が安定してはいけなかった部分まで、見事に真っ当に安定してしまったのか。それは、千尋が本物の大切な家族になっていたからこそ、でもあるのか。
これはちょっと……どうしようもないんじゃないか? 現実の妹と願望の妹はまったくの別物、と頭じゃなくハートと下半身で感じることが出来るようにならないと、もう無理でしょう。
というか、これはもう性癖を推進力にして感性を変換器にして書いていたがゆえの躓きか。
原因が明らかなのに、対処の方法がまったく見当たらない、というのがこれは辛いなあ。伊月も八つ当たりなんか出来ないだろうし。カニとの関係も順調だったのに。
取り戻すのか、それとも一から全く別物になるか、それとも潰れるのか。小説家としての岐路に立たされた伊月の明日やいかに。

ちょっと驚きだったのだけど、千尋……気になってるのまさかその人なの!? これも全然想定してなかったんだけど。
そしてえっらい実感の篭もってる台湾レポート。これ、実質ノンフィクションじゃないんですか?
前にもラノベ作家が主人公の作品で海外のイベントに招待される話見ましたけれど、ほんとにVIP扱いで大歓迎されるんですなあ。


妹さえいればいい。9 ★★★★   



【妹さえいればいい。9】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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相生初に続き、第15回新人賞受賞者たちの作品が続々と刊行された。那由多に憧れる笠松青菜もどうにかデビューを果たすのだが、待っていたのは酷評の嵐だった。伊月はそんな彼女の姿に自分のデビュー当時のことを思い出し、励ましの言葉をかける。一方、いよいよ放送が近づいてきた『妹のすべて』のアニメ制作ではさらなるトラブルが相次ぎ、京はいよいよ就職活動が始まり、千尋の前にもお掃除ロボットではなくちゃんと人間のライバルが登場する。大人気青春ラブコメ群像劇、妹がいっぱいの第9弾登場!!
アシュリー先生とマキナさんの大人の関係、と一言で言ってしまうには勿体無い人生の大波に翻弄されて砂浜に流れ着いたもの同士のなんとも言えない関係、好きだなあ。
同志でもあり共犯者でもあり敵対者でもある、友達であって他人であって人生の最も深い部分が交錯したもの同士。惚れた腫れたでは語りづらく、一定の距離を置きたい関係であり、しかしどこか離れるのが勿体なくて多分大切であるかもしれない関係。こればっかりはまだまだ若い連中では届かない境地なんかしら。いやまあこれも人それぞれか。平坂先生はこういうなんとも言えない距離感の人間関係ってこれまで書いてきた作品見ても、なんとなく好きっぽい気がするなあ。

さて、今回は妹尽くしの回でありました。妹さえいればいい、というタイトルにも関わらず、何気に妹が妹であることを隠している千尋と、時々登場する春斗の妹ちゃんくらいだった本作。
ある意味、妹としての立場は弟であると思われていることを除けば安泰であった千尋くんなのですが、デビュー作を酷評されて凹んでいたところをアドバイスしたら懐いてしまった青葉と、新人お爺ちゃん先生のお孫さんである小学生が、「お兄ちゃんお兄ちゃん」と伊月を慕ってベタベタしだす、つまり疑似妹の出現に伊月がデレデレしまくり、お兄ちゃんと呼んでくれる女なら誰でも良い(意訳)、というなかなかのクズっぽいコメントについに千尋追い詰められる、の回であります。
自分こそが本当の妹なのに! 自分こそがもっとお兄ちゃんに妹として可愛がられるべきなのに! というなんかもう妹を拗らせている嫉妬の仕方が、わかるんだけれど気持ちわかるんだけれど、冷静に考えるとそれはどういう嫉妬なんだ?と疑問に思ってしまうところでもあるんですよね。
そいつ、彼女持ちの義理の兄だぜ? 異性として意識して女として嫉妬している、のではないのが味噌というか肝というか。あくまで妹として妹として認められていないために妹可愛がりされてるニセ妹たちに妹的な嫉妬を募らせているわけで。ありそうでなかなか見ない嫉妬なんではないだろうか。
TRPGで弟キャラではなく妹キャラとして演じていたところから、本当の自分をさらけ出してしまう展開にはなかなか唸らされました。これ、最初から筋書きとして図ってたのか。

一方で京の就職活動も本番化。いろんな企業に面接に行くわけですが、うちに来いと言われているGF文庫にはコネは良くないと避けちゃうところは潔癖と言うか不器用というか。コネじゃなく実力を評価されてのことなのにね。ただ、就活始めた時点では編集者になる、ということにまだそれほどの意志を持っていなかっただけに、流されるようにGF文庫にお世話になるのはしっくり来るものがなかったのかもしれない。土岐さんの流されまくった挙げ句に座礁したみたいにGF文庫に入った経緯を先に聞いていたら違っていたかもしれないけれど。
ただ、明確に編集者になりたいと意識したあとの動きとしては考えさせられるものがあるんですよね。たまたま遭遇した蒼真くんの事件、そこで感じたこと投げかけられた言葉は京ちゃんの人生そのものを左右することになるのでしょう。彼女の生き様を決める出来事になったのかもしれない。神戸さん、その業界の理屈を彼女に理不尽にも見える形で示してしまったのは悪手ではなかったかと。
時として、作家さんとは会社ではなく人についていくことだってあるんだから。逃した魚は大きいどころじゃないかもよ。


妹さえいればいい。8 ★★★☆  

妹さえいればいい。 8 (8) (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。8】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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土岐健次郎、切腹……!?

年が明け、『妹のすべて』のアニメ化発表が着々と近づいていたある日、なにげなくエゴサーチをした伊月が見たものは「妹すべ、アニメ化決定!」という新刊の画像付きツイートだった。その画像の出所はなんとギフト出版の公式サイトで……。伊月やアニメ関係者からの信用を失ったGF文庫編集部が放つ、起死回生の一手とは……!? 伊月や土岐がアニメに翻弄される一方で、春斗や京、他の新人作家たちの物語も進んでいき、千尋の心にも大きな変化が訪れて――。
動き続ける青春ラブコメ群像劇、第8弾登場!!

そ、そうですよねえ。お父さんとしては、自分の息子の偏執的なまでの妹への執着を知ってしまったら、新しく出来た連れ子の娘に何をされるかわからん、と危機感を抱いてしまうのも無理からぬこと。
他人の性癖なんて家族だろうと傍からはそう簡単に認識できるもんじゃないし、妹属性なんて言われてもまあ妹が好きなんだろう、程度の把握で終わってしまうだろうところを、伊月の場合本という形で恐ろしいほどに赤裸々にその趣味趣向を語り尽くした狂気の沙汰の代物を実際お父さん読んでしまったわけですから、こいつやべえ! と思うのも仕方ないよ、うん。
そこはそれ、書いている内容がそのまま筆者の内実であるわけはないのだけれど、伊月の場合は完全に一致しているし、これほどの危機感を覚えるということはお父さんとしても日常の中に家族としてそういう傾向を見出していたんだろうし、うん。
千尋本人としては、伊月に対して性別を隠す理由は何もなくて、それどころか自ら望んでそうしている風でもなかったので、なんでだろうとは思っていたのだけれど、これほど伊月の父の意向が働いていたとは。
ただ、現状では千尋が妹だということが伊月にバレることは、当初危惧していたほどの爆弾にはならなさそうではある。それだけ、伊月と那由多の交際が真剣かつ順調で、いまさら妹が出来たところで伊月が心変わりするような関係ではなくなっている、というところが大きいからだ。
ほんと、最初の方は妹バレがシリーズの中でも最大級の爆弾として物語を激震させるかと思ってたんだけれど、平坂さんは前々からこういう定番たる展開の仕込みをあっさりと無力化して流してしまうところがある。そういうのを肩透かしに終わらせるのではなく、物語の中の妙味として活かしているのだから、流石だなあ、と。
ただこれ、妹バレした時点では起爆しなくても、何気にあとあとで効果発揮してくる場合があるだけに油断ならない。今の所伊月は那由多の作家としての天才性に対等に戦ってみせる気概に満ちあふれているけれど、地雷はふんだんに埋設されているだけに……。
しかし、当面はバレても問題にならないところには来ているだけに、お父さんのもう正体を明かしてもいいなじゃないか、という判断は決して間違ってはいないのだろう。
問題は、千尋の女性としての交友範囲が義兄の伊月だけに限定されずに、いつの間にか伊月の周囲の面々にまで広がってしまったことにある。既に伊月を介在せずに多くの友人関係を構築してしまっているだけに、いまさら千尋の性別を明かすことが伊月相手だけで済む問題じゃなくなってるんですよね。
これは千尋としてはかなり困ったことになっている。まだ未成年の彼女としては、多くの友人を騙していたという事実を明らかにして関係を再構築する、というのは大変な勇気を必要とする件になってしまっていて、これはちょっと足踏みしてしまうわなあ。
せめて相談できる相手がいればいいんだけれど。これに関しては、大人組であるアシュリー先生と千尋は知らないけれど独自に気づいてしまっている土岐さん、という二大頼れる大人が彼女の正体を知っている、というあたりにセーフティゾーンが敷かれている、と思えばいいんだろうか。
まあそうそうひどいことにはならないだろうことは、みんな関係者いい人だけに安心は出来ているのだけれど。

とりあえず、シェアハウスで一緒に暮らすことになって速攻、家に伊月連れ込んで隣の部屋にみゃーさん居る状態でにゃんにゃんしようとしていた那由多、鬼畜であるw
エロマンガだとその流れで行き着くところに行き着いてしまいかねないのだけれど、これエロマンガ先生じゃないからなあ。
しかし、みゃーさんバイトの段階で編集長から部屋紹介されて家具とかも手配してもらって、って同居人が那由多と蚕先生という重要人物であるとしても、尋常じゃない優遇のされ方だというのを全く自覚してないのな。意外と自分のことについてはわからんもんなのよねえ。

シリーズ感想

妹さえいればいい。7 ★★★★   

妹さえいればいい。 7 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。7】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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ついに付き合うことになった羽島伊月と可児那由多。恋も仕事も充実して、ますますリア充真っ盛りとなる2人。そんな2人の交際をきっかけに、羽島千尋、白川京、不破春斗、それから何故か大野アシュリーの心境にも変化が訪れるのだった。千尋の前には新たなライバルが出現し、春斗は彼を慕う新人作家(巨乳)・相生初に熱いアプローチを受ける。近づいてくるクリスマスの足音。変わりゆくもの、変わらないもの。大人気青春ラブコメ群像劇、待望の第7弾!作家や税理士や女子大生たちの、新たな物語が幕を開ける―。

那由多は、一時期そのエロ回路が甘酸っぱさに機能不全を起こして乙女回路へと変換されてたのに、いざ付き合いだしたらもとに戻ってしまったなあ。そこまでひたすら肉食で在り続けて大丈夫なんだろうか、この娘。ぶっちゃけ伊月はそこまでタフじゃないぞ。肉体の疲弊がそのまま精神の疲弊につながって行きかねないところがあるし。ってか、そのうち逃げ出すんじゃないのか、こいつ。
それはそれとして、主人公が一人の女性と結ばれたとしても物語は終わらない。伊月の作家としての人生においての目標である那由多と並び立つ作家になる、というものはむしろ結ばれたからこそ必要不可欠なものになったし、現状アニメの放映も迫っている。やることやらなければならないことは盛り沢山だ。そして、本作は群像劇であり、伊月の周りにいる人たちの人生もまだ道半ばだ。まだ、何かをやり遂げるに至らない途中なのである。
そんな中で、一人のやり遂げてしまった作家の話が語られる。多くの作家に、人間に影響を残して逝ってしまった一人の天才作家の物語だ。いや、そんな彼女に置いて行かれた者たちの物語か。
不思議と、本作においては作家同士でその生き方、在り方に多大な影響を、或いは生き様に傷跡を残して変えてしまうケースが散見される。作品の中身だけではなく作品に挑む作家の姿勢、背中、生き様が、それを観測してしまったものに無視できない変質をもたらすのだ。
海津さんが凄いなあ、と思うのは彼がそれを傷跡のままにしないで、自分の作家としての生き様に昇華させて、今の業界を生き抜いているところなんだろうと思う。それは誇りか、証明か。それは誰に示すでもない、自分の中の決意であり信念として完結して、表に出しもせず誰かに伝えもしていない。しかし、それこそが彼の強さとしてライトノベル作家として今を生きる原動力となっている。そんな彼の目に、悩み苦しみながらも思うがままに突き進む伊月の姿がどう映っているのか。一方で、その伊月を眩しそうに見つめている春斗がどう映っているのか。なかなかに興味深いところではある。
海津さんと比べても、アシュリーは色々と踏み外してるよなあ、と思わないでもないけれど、彼女は彼女でその外れてしまった道を軌道修正するつもりは毛頭なく、このまま外れてしまった道をてくてくと歩いて行く気でいらっしゃるのは伝わってくるだけに、それもまた人生よなあ。……この人、何気にそっちのけがある、というか芽生えてしまった過去があるということは、春斗よりもむしろ妹ちゃんの方がヤバくないかしらw
作家から作家に伝わっていくもの、同世代ゆえにリスペクトし合うものもあれば、先達と後続との間で引き継がれていくものもある。自他ともに認める那由多のフォロワーである青葉のそれと、春斗との出会いによって自分の中で描くべきものを確立させた相生初。その作風の軽重と違って、青葉のそれがまだ表層しか捉えられていないような描写であるのに比べて、相生 初の方は春斗の言葉から自分が知りもせず拒絶してたものを見つめ直し、その上で自分の中で書きたいもの、書くべきもの、表現したいナニカを徹底的に吟味して、掘り下げて、自分自身を解体しきった上でもう一度組み上げたような「実」がこもってて、春斗が感じたようにこの娘、すげえ作家になるかもしれないのねえ。
春斗って、京ちゃんに恋してしまった瞬間でもそうだったけれど、この男自分の理解者に徹底的に弱いのなあ。いや、それは大概の人間に当てはまるものなのかもしれないけれど。
今回の話は、道半ばで早逝なされた作家への想いや、作品だけではなく作家への人格攻撃すら行う心無い者たち、自分たちを取り巻く環境への情念ともつかない熱量と。それでも……その上で、その先に歩み続けることを、それを体現するこの物語に登場する作家たちというキャラクターたちへの愛情を感じさせる回でもありました。

シリーズ感想

妹さえいればいい。 6 ★★★☆   

妹さえいればいい。 6 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。 6】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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可児那由多、本気出す。

告白ひとつで人間関係が一変してしまうほど、彼ら彼女らは子供ではない。けれども、心は確実に変化する。心の変化は物語に新たな潮流を作り出し、登場人物たちを否応なく巻き込んでいく。それとは関係なく、アニメ化という荒波もまた伊月を容赦なく押し流す。さらにはGF文庫にも、新しい作家たちが登場する。新展開、新人、新しい仕事、新しい日常。それはそうとぷりけつは相変わらず千年に一人のケツを持つ少女を追い求めていた。そんな彼にも大きな変化が……!?同じようで変わりゆく、青春ラブコメ群像劇第6弾!!

ぷりけつさんは普通に警察案件だと思うんですけどこれ如何に。
アニメスタートしている本作ですけれど、6巻ですでにここまで人間関係激変してるんだわなあ。京と春斗は告白に至る雰囲気がとても良くて、春斗の台詞は京ちゃんにとってもかなりぐぐっと来る言葉だっただけに、このまま付き合っちゃうかとも思ったのですけれど、京ちゃんからの伊月へのケジメとも言える告白が皮肉にも待ったをかけた感があるんですよね。伊月はきっぱり振って、京ちゃんはきっぱり振られたわけだけれど、振られた直後に春斗とお付き合いをはじめる、というのも確かに塩梅が良くない。想いを打ち明ける、つながることを求めるというのはとても大切なことであるがゆえに、伊月への告白が単なる清算になってしまうというのは京自身にとっても不本意だし、伊月に対して京ちゃんの性格からして失礼だと思っちゃうだろうし、それは先に告白されていながら伊月に告ったという春斗に対しても不誠実すぎるありさまになってしまう。
そのへん、ファジーでも良かろうにとも思うんだけれど、この娘誠実だからなあ。ぶっちゃけ、自分でいうほど伊月への未練とかじゃあないと思う。
しかし、熱りをさますにしても、仕切り直しするにしても何かきっかけが欲しいところだったんだけれど、てっきり京ちゃんの就職関連から動かしていくのかと思ったら、まさかの春斗の方への別の肉食系女子からのアプローチと来たか。そっちから揺さぶられたら、男女関係動かざるをえないよなあ。
そんでもって、こっちも決定的に動いた伊月と那由多の恋愛模様。こっちも、まさかこんな形で伊月が自分に対する縛りを覆すとは思っても見なかった。男の意地よりも、自分の心に素直になった、というべきなのかもしれないけれど、作家として対等になるよりも男としてこの娘を放っておけなかった、という方が適しているのか。とはいえ人生=作家・物書きである以上、そこで引け目を感じ続けるというのは変なところに負荷がかかり続けて、徐々に歪みが生じていく危険性もあるものです。男の意地云々もあるのだろうけれど、対等になりたいという願いの奥底には、そうした危機意識もあったと思うんですよね。伊月はそうなんでもかんでも柔軟に受け止められるほど柔らかい性格はしていないですし。一方で、今回の一件でもそのへん露呈していたけれど、那由多という少女はその破天荒ぶりとは裏腹にメンタル的にめちゃめちゃ脆い。何気に現状、そんな那由多を一番理解して、一番受け止めきっているのが京ちゃんなんですよね。もしかして伊月に対してよりも懐いてるんじゃ、という京への慕いっぷりも、京が伊月に告白したと打ち明けたときの反応にしても、京ちゃんもう伊月や春斗じゃなくて、那由多と結婚すればいいんじゃね? というくらいのパーフェクトコレクションでしたし。
この脆い同士の二人が付き合いだしても、かなり不安が募ってしまうのですけれど、周りがどれだけサポートしてやれるか、というところなんでしょうかねえ。とは言え、みんなも自分で手一杯になりかねない導火線に着火済の案件を抱えているだけに、いざという時に構える余裕が果たしてあるのか。
佳境である。

シリーズ感想

妹さえいればいい。5 ★★★★   

妹さえいればいい。 5 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。5】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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出版社はブラック企業!!

 伊月の担当編集である土岐健次郎(趣味:風俗通い)の推薦でGF文庫編集部でアルバイトすることになった白川京だったが、彼女を待ち受けていたのはバイトの領域を超えた恐るべき労働の日々だった。伊月や那由多といった問題児作家からの原稿回収、蚕のマンガのモデル(全裸)、那由多の取材(全裸)、連日の飲み会、作家や編集者からの無茶振り……。労働基準法なにそれおいしいの? 社会の厳しさを知り大人の階段を登る京(全裸)に、恋愛方面でも変化が……!? 
 身も心もさらけだす出版業界ラブコメ、衝撃の第5弾!!
なんという挿絵:カントクの贅沢な使い方!!
こういうイラストの使い方って、作者・イラストレーター両方がスケジュールきっちりしてて、編集と連携取れてないと無理だよねえ、というところで、今回出版社側からライトノベル業界を見た内容が多い巻でしたけれど、本作は上手くまわってますよー、という感じですか、はい。
那由多の真・デッドゾーン領域突破を見てしまうとわらえねー話なのでありますが。
というわけで今回は、出版社。それもライトノベルレーベルであるGF文庫編集部でアルバイトすることになった白川京ちゃんがどう見てもメイン! いやあこれ、初っ端から那由多の原稿取ってくる、というスマッシュヒットを打って、狂乱寸前だった編集部から喝采を浴びた京ですけれど、仕事内容見てると普通に業務こなせるだけでアルバイトとしては当たりの方なんじゃないだろうか。編集長は「顔!」とか評価ポイントを謳ってたけれど、最初からそつなく雑用からなにからこなしてくれたら、アルバイトは十分ですよ。出来ないやつって一定量どうしたって出てくるわけだし。幾つかの失敗例は、どちらかというと京の無知が原因であり、それは先に雇用側で教えておいてくれないとわからない内輪ネタでもあったわけで、彼女自身に責任はなかったわけですしね。
とはいえ、現段階ではあくまでアルバイト。ひょんなことから、蚕の進退に関わったり、伊月のアニメ化に際しての会議で伊月の背中を押したり、と大きな結果をもたらす機会があったとはいえ、それって責任のある「仕事」としてやったことではなく、あくまで偶然遭遇した場で影響力を発揮しただけ、とも言えるわけです。そういう場に巡り会える運や、そこで皆の考えや行動を変えるだけのナニカをし得るというだけで十分大したものではあるんですけれど、まだ京は編集者としてその仕事内容のける困難にも理不尽にも試練にも関わっていないわけだ。同時に、土岐さんや那由多の担当である山城さんの感じている仕事の楽しさ、喜びに関してもまだ味わっていない、とも言えるのである。まだまだこれから、スタート地点を模索している段階、とも言えるのだけれど、京という子は今公私に渡って、そこにたどり着こうと足掻いてるんだな、というのがよくわかる回だった。
特にプライベートの方でも、恋愛関係についてついにあやふやな状態から、自身が向ける方も向けられる方もついに停滞から脱してしまったわけですし。不破くんはよくやった。告白の場面としては実にスマートで良い場面だった。いやもう、雰囲気良すぎて逆にどうか、と思うくらいなんだけれど。実際どうなんだろう。直後の、あの伊月と京の気安い雰囲気を見てしまうと、伊月と京のその直後の展開をわかっていてもあの気取らない雰囲気が、京にとってもとてもリラックス出来る空気感なんだろうな、というのが伝わってくる。
とはいえ、不破くんとの二人きりのときの雰囲気も決してぎこちないなんてことはなくて、あれはあれでくつろいだ雰囲気になってるんですよね。あの瞬間は特別であっても、それがそのまま日常にスライドしても悪くないような。相性は絶対良いと思うんだよなあ。口説き文句としても、あの時京が一番欲しがっていたものを、思わぬ方向から提示してみせたわけですし。
ただまあ、京が一番ラブラブしてるのってどう見ても那由多なんですけどね。すっげえイチャイチャしてるし。那由多って、そりゃあ伊月にメロメロですけれど、甘酸っぱい関係築いちゃってますけれど、普段イチャイチャしてるのどうみても京ですからね。お前、京のこと好き過ぎるだろう、というくらいデレッデレのベッタベタですしね。
挙句、一緒にいるとき常に全裸とか。全裸とか。全裸同士でイチャイチャとか。もう京の方も那由多と一緒に居るとき服脱ぐことに違和感持ってないし。いや変だからねそれ。
なんかもうこれ、アニメ化に対して完全に挑戦状つきつけてるよね。アニメ化だからって、無闇に裸のシーン増やそうとしてますよね。というか、もう全裸しか出さねえ、という気概を持って頑張ってますよね。
これはもう一言申さねば気が済まない。

そのまま頑張れ!!

シリーズ感想

妹さえいればいい。 4 ★★★☆   

妹さえいればいい。 4 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。 4】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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『妹のすべて』のアニメ化が決定し、さらにはコミック化も決まり絶好調の羽島伊月。しかし満場一致でコミカライズ担当に選ばれたマンガ家・三国山蚕にはとんでもない秘密があり、それはぷりけつや可児那由多、そして何故か普通の女子大生の白川京まで巻き込んだ珍騒動へと発展していくのだった。果たして伊月は、初めてのメディアミックスという荒波を無事に乗り越えることができるのか!そして伊月と那由多との関係にもついに変化が…!?大人気青春ラブコメ群像劇、待望の第4弾!今、すべてを懸けた戦いの幕が上がる!

散々っぱら、実の妹が居ないからこそその妹への憧れ、渇望、飢餓感から狂気の妹作家としての筆を奮えている、という言が述べられているけれど、どこまでこれを引っ張ることになるんだろう。既刊が既に6巻まで出ているのでネタバレに関しては慎重に対処しよう。
ただ、実際に妹の実在が発覚したとして、それで伊月が満足してしまうかというと既に妄想の妹への渇望しかなかった当初と違って、那由多への想いがしっかりと形を経て出来上がってきていることには留意しておきたい。
作家としてのモチベーションにはっきりと、那由多と同格の作家になる、というものが形作られてますからね。それが、妹の出現でガス欠になるかというと……まだ怪しいところですけれど、着実に伊月は作家として次のステージにあがりかけているわけだ。つまるところ、妹バレはそれこそ伊月が妹から独り立ちできる段階まで進んでから、ということになるのかなあ。
一方で、伊月と那由多の作家観の違いというものも、爆弾として着々と敷設しているようなのだけれど。
平坂さんって、あからさまに仕込んだ伏線、ずっとチラつかせるくせに起爆はなかなか起こさないのが、何気に質悪いw

さて、ついに自作のアニメ化企画が持ち上がった伊月。まさかの代打のアニメ化、なんてものがあるのか。別の作品のアニメ化の為に準備されていたスタッフや制作会社を、当該作品がポシャったために急遽他の作品をあてがってアニメ化する、なんて事が実際にあるんだ。
でも、普通そんなん、作る側にも原作への傾倒とか一切ないし、そもそも体制が前の作品用に整えられたものだから、作風とそもそも合ってない可能性があったり、と不安要素だらけじゃないですか。
これは、敢えてアニメ化を断る、という選択肢も間違ってはなかったんでしょうなあ。自分の作品への愛情を思うと、無茶苦茶にされる恐れが高い状況に敢えて飛び込む、というのは勇気とは別の決断が必要なんじゃなかろうか。
特に、今は同じくアニメ化でそれはもうヒドイことになってしまった親友の春斗という実例が真横に転がっていたわけですしね。でも、チャンスには違いないだけに、決断だよなあ。
案の定、いかな急遽の代打のアニメ化だろうと、アニメになるのならコミカライズなどのメディアミックスはほぼ必ずついて回ってくれるわけですけれど、このコミカライズも相手の漫画家の選定は大切なんですよ、うん。
これに成功すると、たとえ原作終わっても漫画のほうがずっと続いてくれるケースも少なからずあるわけですしね。
そして、新たなる変態の登場!
いやこれって、変態なんだろうか……いや、蚕さんは普通に変態っぽいんだが、下着派と全裸派は単に主義主張、生き様の問題であって変態かどうかではないと思う。全裸で本を書くことの何が変態か。
……パンツをリボンにして平素から頭に飾っていたり、絵を描く時パンツを顔にかぶるのは普通に変態だと思うけど! そも、己の拘りを押し通して原作を改変してしまう、というのはまず絶対にやっちゃいけない部分だと思うんですけれど、その改変がより原作を、原作のキャラを魅力的にするのであれば、それは否定されるべきじゃないと思うんですよね。特に、蚕さんは原作者である伊月を、真正面から納得させ、満足させ、頷かせてしまったのですから。
でも、その後に那由多が蚕のコダワリを、また真正面から突破して、誰もが納得できるところに着地させるあたり、何というか作者が欲している理想の着地点、というのが色々とすけて見えてる気がする。
最後のボードゲームのドタバタでもそうだけれど、これだけキャラみんな立たせておきながら、同時に作者の様々な本音を赤裸々に垂れ流すのを両立させているのって、ある意味すげえよなあ。このバランス感覚には感嘆を隠せない。
ともあれ、実際のアニメ開始までは進展しなかったものの、京ちゃんが編集部にアルバイトで出入りすることになるなど、状況は刻々と変化し前に進んでいる。
那由多の乙女心も、あれは進化している、と言っていいんだろうか。ただの痴女からはレベルアップしてる、と思いたいところだけれどw

シリーズ感想

妹さえいればいい。 3 ★★★★   

妹さえいればいい。3 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。 3】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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妹モノの小説ばかり書いている妹バカの作家・羽島伊月は、様々な悩みや問題を抱えながら慌ただしい日々を送っている。原稿の締め切り、恋、そして家族のこと…。アニメ化で大ダメージを負った友人作家の不破春斗から恋愛相談を持ちかけられたのを皮切りに、伊月の周囲の人間関係も動いていく。果たしてその先に待ち受けるのは激動か、平穏か―。一方、天才イラストレーターぷりけつは千年に一度のケツを持つ少女を捜していた…!羽島兄妹の事情も明らかになるかもしれない、大人気青春ラブコメ群像劇第3弾!!

えっ……伊月ってそんなにカニちゃんの事好きだったの? いや、普通に考えてあんな良い子にあんなド直球(危険球込み)の好意を投げつけられて、それも一方的じゃなくて普段から一緒に遊んで過ごすわ、家でダラダラ一緒に過ごすわ、と生活的にもリズムが合っていて、条件的には悪いなんてもんじゃないんですよね。勿論、恋愛なんてものは条件さえ揃えば成立したりするものじゃあないんだけれど、条件が揃えば成立しやすくはあるわけだ。その意味では伊月にそういう感情が生まれる、というのは何ら不思議ではない環境だったにせよ、ここまでハッキリと好きだと言わさしめるとは思わなかったなあ。しかも、カニちゃんの攻勢に押し切られたとかそんな感じでもなく、わりと自然に芽生えて育んできたみたいな雰囲気じゃあないですか。
すごく、上手くいきそうなんですけれど。似た感じで言うと秋★枝さんの【煩悩寺】のカップルみたいで。
しかし、そこで伊月がどうしても踏み切れないのが、作家としてのプライドというわけか。現状、圧倒的に作家としてはカニちゃんの方が売れっ子。比べるのもおこがましいほど知名度や人気に差がある。勿論、収入も。そのあたり、気にしない人は気にしないんだけれど、結婚が上手くいかない傾向としては確かに無視できない要因ではあるんですよね。伊月も、コンプレックスには事欠かない神経質なタイプですし。
一方で、どうもカニちゃんの方にも作家として持ちたるものは持っているようで、今まで比べられる相手というのが居なかったのかもしれないけれど、いざ比較された時に負けたくない、という思いが生じるのは極々自然なことだと思うのですよ。それが、ついにカニちゃんにも芽生え始めたというのは作家としては喜ばしいのかもしれないけれど、その対象・ライバルとして伊月を意識し始める、というのは恋愛的には自分でハードルを上げにかかってしまっていそう。これ、お互いに負けたくない気持ちが募っちゃうと、相手に勝ってから、というゴールじゃあどっちも永遠にたどり着かなくなってしまいかねないし。その辺の調整が問題になってくるのかなあ。
と思い巡らせてしまっているあたり、どうも伊月の相手としてはもうカニちゃんに決定、と自分の中で決め込んでしまったのかもしれない。京ちゃんの長年拗らせ続けてきた想い、というのも掛け替えのないものだと思うんだけれど、今のところ伊月の方には脈なさそうなんだしなあ。それなら、春斗の方を素直に応援してあげたい。お似合いといえば、春斗の方がお互いを補い合えそうな性格ですし。京ちゃんの気持ちにさっさと気づいて、伊月に間取り持って、なんてややこしくなりかねないお願いをさっさと取り下げるあたり、見事な修羅場回避能力ですよ、春斗くん。登場人物の中でも人間関係の機微の敏感さに関しては、彼だけかなり突出してるんだなあ。それに、周りの友人たちは随分助けられている気がする。問題は、彼が機能しなくなった時、ということになるのか。
あとは、伊月が自分に実は妹が居た、という事実を知った時か。伊月が本気でカニちゃんのことを好きだとわかってしまうと、何気にこの地雷は結構深刻なものだと思えてくる。妹に溺れるか、妹を卒業するのか。彼の妹作家としての小説家人生をも左右しかねない案件なだけに、爆発するのが楽しみでも在る。段々と、妹ちゃんの性別を知る人も増えてきてますしねえ。今のところは漏れ出る筋には漏れてませんけれど。

しかしなー、何度読んでも社会人として悠々自適も良いところ、な毎日にしか見えなくて、楽しくもじわじわと脇の下あたりから羨ましいという怨念がにじみ出てきてしまうぜ……。

シリーズ感想

妹さえいればいい。 2  ★★★☆  

妹さえいればいい。2 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。2】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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妹バカの小説家・羽島伊月は、人気シリーズ『妹法大戦』最新巻の執筆に苦戦していた。気分転換のためゲームをしたり混浴の温泉に行ったりお花見をしたり、担当への言い訳メールを考えたりしながら、どうにか原稿を書き進めていく伊月。彼を取り巻く可児那由多やぷりけつ、白川京や義弟の千尋といった個性的な面々も、それぞれ悩みを抱えながら日々を生きている。そんな中、伊月の同期作家で親友・不破春斗の『絶界の聖霊騎士』のテレビアニメがついに放送開始となるのだが――。
妹と全裸に彩られた日常コメディ、第2弾登場!!
一話から救いようのないくらい終了してしまってるアニメって……。いや、無いことがないのが恐ろしい。
原作者からすると、そりゃあショックでしょうねえ。誰も糞アニメにしようと思って作っているわけじゃない、と言ってもさ、事実クソアニメなんですから。実際問題、アニメ化というのは原作者サイドにとっても色々と手間暇増えるわけで、アニメ制作に深く関わらなくても、あいさつ回りや打ち合わせに出たり収録に顔出したり、色々資料をまとめて提出したり、反映されるかわからないけれどチェックしたり、アニメ化イベントや特典物に関するあれこれに従事したり、とアニメ放送に合わせて新刊が組まれたり、とそれまでの執筆生活とはガラリと変わるスケジュールが詰め込まれるわけです。
どうやったって、ただの傍観者じゃいられないんですよねえ。そうやって普段のペース崩してあれこれ頑張った結果、自分の作品がクソアニメとなって出てきたら、心折れますよ。落ち込まずに耐えれる人って、そんなに多くないと思いますよ。
酷いアニメ化じゃなくても、やはりアニメ化作業によってペース崩して、それまでから刊行ペースが激減してしまう人も珍しくないわけで。
一方で、成功すれば原作も売れてウハウハ、モチベーションもあがってワハワハ、となるわけですから、いずれにしても大きなイベントなんですよねえ、アニメ化って。
でも、どんな失敗も成功も、当事者以外にとってはどうやったって他人事なわけです。親密な友達なら心配し、同情することもあるでしょうけれど、京ちゃんみたいに本気で泣いて悔しがってくれる人はほんとに良い子なんだよなあ。これは惚れても仕方ない。
ただ、これで人間関係はより複雑化してしまう形になるのだけれど、伊月や京がグダグダやってて進展のしようがなかっただけに、春斗のこの積極性はむしろ好感が持てますね。伊月の、今の生ぬるい楽しい友人関係をいつまでも続けたい、というのもわかるんですけどね。制限時間のある学生時代ならともかく社会人でこれだけ日常的に友達が家にきてグダグダ遊んでってくれる環境を崩すというのは、勇気のいることだと思うし。それにしても、那由多のあのアプローチを袖に出来るというのは信じられないけれど。那由多も、変にルーチーンになってしまってて、伊月から本気で受け止められてないというのもあるんでしょうけれど、シチュエーションというか雰囲気って大事なんだなあ。だからこそ、那由多の同棲作戦はわりとイイトコロついてたんですよね。あれ、ちゃんとやれてたら何気に陥落してたんじゃないだろうか。




妹さえいればいい。4   

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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「アマゾンレビューは貴様の日記帳ではない!」
荒ぶる小説家・羽島伊月は、未だ見ぬ究極の妹を創造すべく日夜奮闘する現代のピグマリオンである。彼の周りには、作家やイラストレーターや編集者や税理士など個性的な人々が集まっている。愛も才能もヘビー級、残念系美少女のハイエンド・可児那由多。恋に悩み友情に悩み夢に悩む青春三冠王・白川京。闘志を秘めたイケメン王子、不破春斗。人生ナメてる系天才イラストレーター・ぷりけつ。頼れるけど頼りたくない鬼畜税金セーバー・大野アシュリー。闇を抱えた編集者・土岐健次郎――。
それぞれ迷いや悩みを抱えながらも、ゲームをやったり旅行に行ったりTRPGをやったり、たまには仕事をしたりと、賑やかで楽しい日常を繰り広げる伊月たち。そんな彼らを温かく見守る完璧超人の弟・千尋には、ある重大な秘密があって――。

各界から絶賛の声多数(本当)! 『僕は友達が少ない』の平坂読が放つ、日常ラブコメの到達点にしてライトノベル界の現実を赤裸々に晒す衝撃作。言葉の鋭刃が今、世界と担当編集の胃に穴を穿つ――!!!!
楽しきことは良きことかな。いや、実際には楽しいわけではないのかもしれない。息苦しさ、不安、妬ましさ……ネガティブな感情がたゆたっている様は、この賑やかな光景の向こう側にうっすらと透けて見えている。作家として生きて稼いで積み重ねていく生活が、こんなにもただただ楽しいばかりなんてことはないだろう。
でも、好きなのだ、という事だけはこれ以上なく伝わってくる。
物語を書くということが。作家であるということが、このライトノベルという業界の中にいることが。この仕事を通じて知り合った人たちと交流することが、とても好きなのだということは凄く伝わってきた。
だったらいいじゃない。好きなら、いいじゃない。こうして、好きでい続けられるのなら、いいじゃない。
それこそ、とても素晴らしいことで、とてもうらやましい。
しかし、願望と現実の境目がどのへんにあるかで、いささか見る目も違ってきますよ。微苦笑からジト目を経由して白目剥くまで如何様にも。

【はがない】シリーズ長く続いていたけれど、本作はちょいと巻き戻って【ラノベ部】を彷彿とされる掌編をわんさと詰め込んで、様々なシチュエーションで登場人物を動かしその魅力を盛り上げていくという形式で、こうして読むとやっぱり自分は好みとしてはこっちの方が好きなんだなあ。
でも、千尋くんの設定はあれなにがどうしてこうなってるんだろう。最初に身の危険でも感じてしまったんだろうか。実のところ、伊月が妹狂いというのは今のところ作品の味付けに過ぎず、核心には全くなっていないので、千尋くんの話も実際は対して重要なものとしては転がらないのかもしれないが。
伊月の、那由多に対するコンプレックスも不毛であって先行き皆無だしなあ。この辺一切転がさないまま終わってしまっても不思議なさそう。

平坂読作品感想
 
1月25日

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