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宇野朴人

七つの魔剣が支配する ★★★★   



【七つの魔剣が支配する 察曄 ̄野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第7弾!

キンバリーの今後を左右する一大イベント、決闘リーグの開幕が迫る。三年生に進級し成長を見せるオリバーたちは、そのために三人一組のチームを組むことになった。同学年の中でも実力上位と目されるナナオらは、他チームから徹底的にマークされて厳しい戦いを強いられる。
一方で、例年以上に豪華な報酬と特殊なルールは、教師殺しの犯人を探すための教師陣の罠でもあった。さらに次期学生統括の座を巡る選挙戦もその影響を受け、駆け引きは激しさを増す。
そんな中、ユーリィが追いかけていた「骨抜き事件」の犯人、サイラス=リヴァーモアが動き出す。激動のキンバリーで、屍漁りの魔人は何を企むのか――。

決闘リーグというか、なんかアスレチック競争みたいな……そう、これってなんか大昔の大人気ゲーム「熱血硬派くにおくん」シリーズの「熱血大運動会」をちょっと思い出してしまったんだがw
それはともかくとして、キンバリーの生徒たちが一年生を除いて各学年が全部参加する決闘リーグというイベントが開幕。図らずも次回生徒会選挙の行く先を占う代理戦争、派閥戦の様相をも内包するイベントになってきたのだけれど、それはそれとしてオリバーたちもそれぞれ三人一組のパーティーを作って参加することに。いつもなら、剣花団の6人が3人ずつに別れてパーティーを編成するんだろうけれど、ミシェーラが家の事情もあってステイシーとフェイと組むことに。家の事情とか関係なく、かつて揉めてた従姉妹とこうして仲良く組めるようになったというのは素直に嬉しくなりますなあ。
また、カティとガイ、ピートが3人で組むことになったので、自然オリバーとナナオが前回登場したあの「探偵」ユーリィと組むことに。
剣花団では特に戦闘面ではまだまだ未熟のカティたちが、3人で頑張る、となったのは相変わらず向上心が高くて微笑ましくなる。未熟といっても最初の頃から成長著しく、それぞれの得意分野を順調に伸ばしているだけに、優勝候補のアンドリュー組といい勝負になっていて見ごたえある対戦でした。
アンドリュー、ロッシ、オルブライトの同年代ではオリバー、ナナオ、ミシェーラと並ぶ最強格の三人がチームを組んだのは面白いなあ、と。彼らも最初の頃は色々と能力的よりもむしろ人格的に甘いところや隙や油断、傲慢さが見られたものですけれど、そういった余計なものが削ぎ落とされてホントに強いキャラになりましたよね。アンドリューなんて話の転び方によっては噛ませ犬のまま小物落ちしそうな危ういポディションだったのに、見事に立て直して風格すらある強キャラになりましたし。
なんて、感慨深く思ってたらオリバーたちが戦うことになったバトルロイヤルの他の三組を率いるリーダー格含めた面々が、これまたモブとはとても思えない凄味を見せてくれることに。
いやマジでミストラル、リーベルト、それにメカクレ剣豪ことエイムズの三人にリーベルトチームの狙撃手カミラはこれまで名前を聞かなかったのが不思議というかありえないくらいの強キャラで、特にカミラの狙撃は戦闘中も神業の連発で背筋がゾクゾクするほど研ぎ澄まされたプロのお仕事だったんですよね。
そしてまさかのオリバーやナナオに比肩するほどの剣士だったジャスミン・エイムズ。あとがき読んでびっくりしたんですけれど、ミストラルやエイムズって前に読者から募集していた投稿キャラだったんですね。そうとはまるで想像できないくらい作り込まれたキャラクターに、主人公たちと対等に渡り合う能力以上にその個性と存在感が作者の手の内にあって、まさか投稿キャラとは思いませんよ。
オリバーやナナオの実力はこれまでに嫌というほど知らしめられているにも関わらず、静かに剣でなら渡り合えると自負する、おとなしそうに見えて結構強気でメンタルも動じない不動感があるキャラクターはまさに強キャラでしたよ。ナナオとは違うタイプの静の型の剣客という風格で。
実際、同年代ではまじで最強の一角に入るみたいですし、出番がここだけ、というにはあまりにももったいないので、せめてロッシくん並には今後も登場して活躍してほしいですね。

他の3チームが結託してオリバーのパーティーが集中的に狙われることになったバトルロイヤル。カマセ役とは程遠い練達の技、急造とは思えない巧みな連携、そして得意の分野では他の追随を許さない魔術の粋を見せてくる怒涛の攻勢を、ギリギリの瀬戸際でしのいで3チーム相手に渡り合うオリバーたち。躍動感あり、頭脳戦あり、詰将棋さながらの指し合いあり、と思っていた以上に読んでる側をぶん回してくる楽しさ満載の攻防で、いや満足の面白さでした。
これは観客も盛り上がっただろうなあ。見た目も派手でしたし、見応えたっぷりでしたよ。

まだまだ決闘リーグは開幕したばかり、とこんなガッツリと続く、になるとは思っていなかったのですが、ラストでイベントとは無関係の、以前から起こっていた骨抜き事件がイベントの最中に発生、その被害者があの人、ということでイベントの裏の意義でもある生徒会選挙にも影響が出そうな勢いなんですよね。
それよりも、犯人であるリヴァーモア先輩の目的がなんかヤバそうなのですが。またぞろ魔術の闇を覗き見る展開になりそう。

それはそれとして、先生がちょっと大暴れしすぎである。最上級生含むあの大多数相手でも無双するのか。お互い、殺し合いじゃないので切り札は切らないにしても、化け物しか残っていない上級生相手に、手も足も出させない、というのはさすがキンバリーの教師ということか。
ってか、これらを殺さなきゃならない、以前に二人すでに殺ってるのよねえ。
こんなん相手にしてたら、あと何人犠牲者が出るものやら。その犠牲者候補であるあの子を、成長譚のなかに組み込んでいるの、結果次第では邪悪極まるやりくちですよねえw

あと、今回オリバーたちと同じパーティーで戦ったユーリィ。今まで得体のしれないというか掴みどころのないキャラでいまいちどういうキャラなのかわからなかった所に、前巻の最後でその正体が明らかにされた事で、どういう取り扱いのキャラになるのかと思っていましたけれど。
結構、がっつりとオリバーとナナオのコンビにからめて一緒に戦うことになって、掘り下げたみたいな感じになってるんですよね。正体わかっているにも関わらず、なんか仲間感が出てきてしまったのとか、それこのやり口よw
こうなってくると、ユーリィは正体が明らかにされて底が知れた、のではなく与えられた役割に留まらない可能性を持ってるんじゃないか、と思いたくなってくるんですよね。無知の知であり真理に届くための存在だからこそ、本来の役割を越えた彼だけの発見、到達があって欲しいなあ、と。

なんにせよ、ストーリーとしては続く、になったので早い目に次巻が来てくれることを願うばかりです。6巻と7巻の間そこそこ空きましたしね。まあ、私自身7巻発売されてから読むまでちょっと間あいてしまいましたけど。って、9月にもう出るんだ。ありがたや。


七つの魔剣が支配する VI ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する VI】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第6弾!

エンリコの失踪はキンバリーに衝撃をもたらした。二年連続の異常事態に教師陣も犯人捜しへと動き始め、ついには学校長自らの尋問が生徒へと及ぶことに。
不穏な情勢下で近付く統括選挙の時期。後継者を決めあぐねるゴッドフレイ陣営の前に、因縁の対抗勢力が立ち塞がる。
そんな中、人生を懸けて箒競技のタイム更新に挑むアシュベリーは、大きな壁にぶつかり苦しんでいた。彼女の助けになろうとするナナオだが、ふたりの華々しい活躍は選挙と無縁でいられず──。
一方でオリバーたちの前には、転校生の少年・ユーリィが現れる。軽いノリとは裏腹に高い戦闘能力を持ち、楽しげに校内を探って回る彼の目的とは──。


あの3巻でのオフィーリアとカルロスの美しい破滅を目の当たりにして以来、未だにどう整理していいのかわからない感情の行所が、またぞろこの巻を読んで胸の中に渦巻いている。
わからない。悲しいのか感動しているのか、当たり前の喜怒哀楽では表現しきれないどう捕らえて良いのかわからない複雑な想いが、激しく胸をかき乱す。
彼ら魔法使いたちの価値観は、この物語で描かれる登場人物たちの価値観は大きく一般的なものとは異なっている。それが常識として描かれることに、どうしても混乱が生じてしまう。置いてけぼりにされるのならそれはまったく違い世界の出来事として分けて捉える事ができるだろう。でも、この物語は凄まじい勢いで読んでいるコチラの気持ちを引きずり込んでいく。共感にも似た網でこちらを捕らえて、彼らが感じたであろう想いを共有しようとしてくる。読んでいるこちらの価値観では理解しきれないはずのものが、感覚的に同期されていく。だから、わけがわからなくなるのだ。この情動を表現する言葉がなくて、混乱する。でも、確かにそれを、感じている。それがどうにももどかしい。

彼ら魔法使いは、その在り方からして人外の存在だ。自らが見出した命題にそれこそ魂から殉じて捧げ尽くす理外の存在だ。しかし、同時に凄まじいほどの深い情を持つ者たちでもある。これは年齢の上下に関わらず、学年の上下も関係なく、教師たちもまた同様に、きっと普通よりももっともっと情によって形成されている存在なのだ。狂うほどに、愛に生きている。魔道の追求のためにすべてを捧げているようでいて、きっと彼らは愛のためにすべてを投げ売って在る存在なのだろう。今までずっと彼らの在り方を見てきて、そう思う。そう思うようになった。
だからこそ、道を踏み外す。だからこそ、憎悪に呑まれる。オリバー一党が復讐に狂奔することも、またその原因となったオリバーの母の死も、魔法使いたちのあの想像を絶するほど深い情愛こそが根底にあるじゃないか。
オリバーたち剣花団の関係を見てみるといい。あれが、ただの友情、ただの親愛で結ばれた関係だろうか。あのオリバーが自分の弱さを泣きじゃくるという幼い子供みたいな姿で曝け出してしまえるほど深く繋がった関係。それを見て取り乱すようにしてオリバーのもとに寄り添う面々。
あんな、深い深い情愛で重なり合った友情が、一対一ではなく6人のグループで結ばれ合う、いや溶け合うというほどになっているものを、自分は見たことがない。親友や一心同体どころじゃない。
でもきっと、彼ら剣花団ほどの関係はこの世界でも貴重ではあっても特別ではないのだろう。この作品で描かれた魔法使い同士の人間関係は、繋がりは、どれもが勝るとも劣らない深度の情で紡がれている。
元生徒会長のあのゴッドフレイへの敵対と執着ですらそうだ。いやあれは、勘弁して欲しいほどヤベえんだけれど、あの元生徒会長があの執着を剥き出しにさらけ出しながら、どちらの陣営も異常に思っていないあたり、あれですらも決して珍しくはない魔法使いの在り方なのかもしれない。

そんな彼ら魔法使いの、情を燃料として焚べるように駆け抜ける人生において、だからこそ「死」もまた無慈悲な悲劇、ではないのだろう。
魔法使いにとって、きっと死ぬことそのものは忌避するではないのだ。それは受け入れるべき結末の一つであり、それが自分の魔法使いとしての人生、在り方の完結としての死であるなら、寿ぐべき祝福ですらあるのだろう。哀しく寂しくとも、それは良き旅立ちなのだ。
だから当人たちにとって満ち足りた幕引きならば、見送る者たちはそれを黙して受け止める。それが連れ添う者の居る孤独ではない旅立ちなら尚更に。
死という完結は、完成は、だから神聖ですら在る。
なればこそ、その神聖を穢すことへの呪いは如何ばかりか。寿がれるべき死を、無残な形で台無しにし、そこにいたる魔法使いの人生そのものを踏みにじった事への憎悪はどれほどのものになるのだろう。
オリバー一党のあの妄執とも狂奔ともいうべき憎悪の所以が、少しわかった気がする。そして、オリバーを愛する従兄姉たちが、どうしてあれほどオリバーの苦しむ姿に魂を引き裂かれながらこの復讐を止めないのかも。
それがもう、オリバーにとっての魔法使いとしての命題となっているから。
それを輔けることこそが、従兄姉たちの魔法使いの人生となっているのだ。

でも、いつかオリバーはその歩むべき人生を引き裂かれるような気がする。情愛の深さこそが魔法使いの業ならば、剣花団の中での日々はオリバーの中に新たな命題を産み始めているのではなかろうか。それは、ナナオとはじめて剣で相対した日をはじまりにして。
それとも、この物語における魔法使いたちの価値観は、在り方は、オリバーの復讐と友情を、両立して果てさせる事が叶うだけのものを内包しているのだろうか。

ただ一途に魔法使いとしての生きて生きて、駆け抜けたアシュベリーの姿に、魔法使いの在り方の結晶を見た。その結末は、きっと満ち足りたもので幸福だったのだろう。きっとあれこそが、ナナオの思い描き目指すべき魔法使いの完結だ。
果たして、ナナオはあのように生きて、死ねるのか。
命を文字通り圧縮して、生き急ぐオリバーはそんなナナオに応える事が出来るのだろうか。二人は、剣花団の6人は、あのオフィーリアとカルロスのように、アシュベリーとモーガンのように、あの先輩たちのように存分に生きて、思い残すことなく共に逝ける相手を見出すことが出来るのだろうか。
アシュベリーとモーガンの最期の挿絵は、本当に幸せそうであのシーンの印象を決定づけてくれたように思う。
……ああもう、どんな最良の結末でも彼らが生きて幕引かれる姿が思い描けない。そして、それが哀しくともハッピーエンドなのだろうと感じてしまう時点で、この物語に随分と毒されてしまっている。
どうか彼らに幸せな良き結末を。ただただそう願うばかりだ。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する V ★★★★★   



【七つの魔剣が支配する V 】 宇野 朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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勉強と鍛錬を重ねて己を高めつつ、時には後輩たちを相手に頼れる先達としての一面も見せ始めるナナオたち。困難を増す魔法生物学の課題でグリフォンと格闘し、新たに加わった天文学の授業では、『異界』と『異端』についての過酷な現実を教わる。そんな中、迷宮に連れていかれたピートを追ってエンリコの研究所に辿り着いたオリバーとナナオ。彼らはそこで恐るべき魔道の深淵と、長きに亘る魔法使いと『異端』の対立の一築を垣間見る。一方で、次の仇討ちの相手をエンリコに定め、オリバーは同志たちと共に戦いの段取りを詰めていく。刻々と迫る決戦の時。彼のふたつ目の復讐の行方は―。

なぜこんな事になってしまったのだろう。それは誰よりもオリバー自身が抱いている思いなのだろう。なぜ、なぜ、なぜ。
彼の中で再演される母の記憶の中で、後に彼女を責殺する事になる裏切り者たちは決して鼻持ちならない相手などではなかった。もちろん、一巻で討ったダリウスのような人間もいるのだろう。でもエンリコやエスメラルダはそうじゃなかった。そこには友情があり、愛情があった。確かな絆があった。
はたして、それを容易に覆してしまうのが魔法使いの業なのだろうか。いや、そうであってもそれだけではあるまい。魔法使いとしての業は逃れられないものかもしれないが、人としての愛もまた逃れられない業である。今なお、鮮烈だったクロエの残光は彼女の復讐を企む者たちのみでなく、復讐の対象である裏切り者たちの中にも、生前の彼女を知る大人の世代の中にも色濃く焼き付いて、魂を奪い続けているのがエスメラルダやセオドールの姿からも垣間見える。
それほど強烈な光を、なぜあんな形で殺さなくてはいけなかったのか。否、そんな彼女だったからこそそうやって殺さなければならなかったのだろうか。その理由はどうやら個人個人によって異なるらしい。その理解に辿り着くにはあまりに遠い距離がある。
その断絶が、オリバーを苦しめ続ける。
彼らの栄光と末路が、今オリバーと掛け替えのない友誼を繋ぐ剣花団の行く末にどうしても重なってしまうのだ。あれほどの友情を交わしている相手と殺し合うことになるのだろうか、と疑問は絶えないが現に、オリバーはすでに彼らを裏切っている。彼らと歩む道にすでに背を向けている。
今はまだ対立にも敵対にも至っていないけれど、オリバーたちの歩む道がキンバリーそのものとの対決に至る以上、いずれ本当に道は分かたれる。後戻りするには、もうオリバーは進みすぎてしまった。標的を二人殺しただけじゃない、同志たちが命を捨てて切り拓いた道である以上、そこを進まぬ選択肢はなく、同志たちはオリバーをそんな道を歩ませてしまった罪からもう逃れられない。
オリバーの従兄弟であるシャーウッド兄妹は家族愛を持ちつつももうちょっと組織寄りの考え方をしているのかと思っていたんだけれど、今回の姿を見るともう本当にオリバー個人のために身も心も捧げ尽くしているのがよくわかった。愛して慈しんで、だからこそオリバーに、オリバーという優しく復讐なんて似合わない少年に君主の役割を与えてしまった事に狂死しかねないほど血涙を流していることもよくわかった。
彼らはオリバーのためならなんでもするだろう。同志たちは目的を達するためには本当に命すら惜しまない。そんな彼らのためにも、オリバーは突き進むだろう。もうそうするしかないのだ。
そのオリバーたちの後戻りできない在り方は、どうなのだろう……七人の裏切り者たちがクロエをあんな風に殺すしかなかった在り方と、どこか重なってきてしまうのではないか、とそんな想像が脳裏をよぎる。
復讐の連鎖などよりももっと始末に負えない、救いのない連環じゃないのか、これは。
だからこそ、オリバーの魂の奥底に大切に残されていた素朴な願いに、心奪われる。それは叶わぬ願いだ。こうなってしまった以上、手遅れ過ぎてもうどうにもならない未練にすぎない。
でも、本当に。そうであったら、どんなに良かっただろう。そうであったら、本当に少しだけでも誰もがそうであったなら、こんな誰も救われないありさまになんかならなかったんじゃないのか。
未練である。でも、まだそこに至っていない剣花団にとっては、希望であってほしい。か細くも叶い得る望みであってほしい。切に、切にそう願う。でなければ、あまりにも辛い。
それに、ナナオの着目のされ方が不穏どころじゃないんですよね。ナナオをこの学院につれてきたセオドールの意図がどこにあるのか。どうやら、エスメラルダの頭痛の理由を彼が知っている以上、あの夜の真相もまたセオドールは知っているはずなんですよね。それでいて、エスメラルダの側にいる。そして、そんな彼がクロエを幻視するようにナナオの在り方に執着している。そして、誰よりもクロエに執着していただろうエスメラルダの、ナナオに見せた顔。
純粋な感情こそが狂気に密接につながっていく。その在り方が狂っている魔法使いならば、尚更に。
エンリコの最後の忠告。教師として生徒を思う真摯な言葉が心に沁みる。そう、もう出会っているはずなのだ。オリバーとしての、掛け替えのない出会いを。
それが、果たして救いへと繋がるのか。そうであってほしい。それもまた、願いだ。祈りですらあるかもしれない。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する IV ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する IV】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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再び春を迎えたキンバリー魔法学校。オリバーたちは二年生に進級し、新入生たちの世話に新たな科目、それぞれの修行と、目まぐるしい日々を送っていく。そんな中、ひとときの休息を魔法都市ガラテアで過ごすことにした6人。空飛ぶ絨毯に乗り、買い物や名物料理を楽しみ、魔法生物のお店を覗く。が、穏やかな時もつかの間。夕食の席でキンバリーの校風を嫌うフェザーストン魔術学舎の生徒たちと揉めてしまい―。一方、シェラの父であり、ナナオをキンバリーに招いた教師・セオドールにも接触を受ける。暗い夜道を歩きながら、彼は突然「この街には人斬りが出る」などと不穏なことを言い出し―。

これ、ほんとにベースとなっているのはハリーポッター的な魔法学園ものなんだけど、同時に比較にならないくらいダークでディープでアダルティな世界観というのを思い知らされる巻でした。2年生に進級して一応大きな事件もなく穏やかな日常の風景が広がる話であっただけに、なおさらキンバリーでの「平穏」が通常の感覚と全く異なる危険で殺伐としたものであることが浮き上がってくるんですよね。かつての自分たちと同じように様々な想いを抱きながら不安を胸に入学式を迎える新一年生たち、そんな彼らを優しく迎え入れる一方でほぼ時を同じくしてその裏ではこの一年間で死んだ生徒たちの合同葬儀、なんてものを行うこの対比ですよ。しかも、死者数がまた生々しい数でキンバリーの危険性というものをよりリアルに感じさせるのである。
オマケに、2年生に進級したことで授業内容もより危険なものに。一応死なないように配慮しているみたいだけど、ほんとに死なないだけ、なんですよね。場合によっては死ぬし、死ぬより酷いことになるような内容が散見されるわけで。これ、授業中居眠りとかお喋りとかしてる余裕絶対にないですからね。死ぬから。ガチで死ぬから。普通に下半身グシャ!って潰れてる人もいるんですけどー!?
授業なので、逃げられずに毎日続くわけで、精神的に死ぬ。これを受け続けられているだけで、キンバリーに染まっていると言えるでしょう。そりゃ、イカレるわ。頭おかしくなるわ。魔法使いが人外になるのも当然だわ。日常風景なんだぜ、これ?
ここまでイカレた日常が続くと、同じ生徒たちの間は徹底的に破綻するか、或いは結束が深まるか。少なくともオリバーたちは、剣花団の五人のみならず、ロッシ、リチャード、ステイシー、フェイ、ジョセフと言った一年時には揉めることもあった実力者たちともある種の信頼関係を結べるようになってるんですよね。彼ら彼女らとこうして認め会える関係になれた、というのは随分とこう……頼もしいんだけど、同時に死なれたときのダメージががが。
そして、今回一番度肝を抜かれたのが、キンバリーのというよりも魔法使いの性事情、というところでしょうか。なんだよ、三年になったら妊娠出産が解禁!って!? そう言えばお腹おっきくした上級生がけっこう歩いてるって!?
びっくりですよ!!
魔法使いとしては、何より血統を残し継がせることが推奨されるというのは理解できるけれど、学生のうちからここまで積極的に優秀な血を取り込もうという活動が行われているとは。
これ、性に緩いとか奔放とかではなく、徹底して魔法使いとしての在り方に則った厳格ですらある実情と言えるのでしょう。でも、性行為に対してタブーとされるどころか推奨されるような環境ですから、貞淑であることや恋人になってから結婚してからという考え方は珍しい方ですらある。
こうなってくると、剣花団のグループ内の人間関係も違って見えてくるわけで。
とはいっても、名家であるシエラも含めてそこまで魔法使いとしての価値観にはみんな囚われているわけではないのだけれど、それでもキンバリーでの常識は上記した性行為を推奨するようなものだけに、どうしたって影響を無視できないんですよねえ。
正直、パヒュームの影響残っていたオリバーへのシエラの医療行為とか、具体的な行為としては大したことしてないはずなのに、尋常じゃなくエッチすぎてヤバかったくらいですし、ってかヤバいヤバい。
それだけ、体の関係というものを意識させられてしまうと、異性として相手をどう思うか、という点についてもどうしたって強く意識の上に登ってきてしまう。その意味でも、今回は剣花団のメンバーの恋する気持ち、という所にもスポットが当たっていたのではないでしょうか。
その最たるものが、ナナオの恋と狂気の撹拌でありましょう。元々純粋で、オリバーになついていた彼女ですけれど、この2巻になって彼女の様子と来たらただ懐いているのとは隔絶した、一途なくらい慕い寄り添おうとする健気なくらいのワンコな姿なんですよねえ。いやもう、誰が見てもオリバーの事好きだろう、というような。オリバーはオリバーでナナオの事誰から見てもわかるくらいに大切にしてるし、彼女にちょっかい掛けられた時の脊髄反射的な過剰反応ももうアレなわけで、オリバーの嫁呼ばわりも当然な二人なんですよねえ。
しかし、一方で一巻の時に剣を交えあった時のように、ナナオの深層にはオリバーと死合い、彼を斬り殺したい、彼に斬り殺されたい、という魂に根ざした欲求が今もなお絶え間なく胎動している。それを自覚しているナナオは、果たして自分の気持ちが恋と言えるのか自信が持てずにいたわけだけれど、カティがナナオの問いかけに咄嗟に答えられなかった沈黙は、ある意味致命的な錯誤をナナオに与えてしまったんですよね。でも、これカティがあそこでナナオの恋を肯定していた所で行き着く先は「殺し愛」なわけで、どっちにしても行き止まりなんですよねえ。いずれにしても、デッドエンド。ハッピーデッドエンドになるかどうか、の違いでしかないのか。
ナナオの魔を、誰よりも深く理解してしまったカティ。彼女が、果たしてオリバーとナナオの顛末のキープレイヤーになるのか。カティ自身、自分の沈黙がナナオに与えてしまった誤解を理解しているわけだし、それをそのままにしておけるような性格でもないんだよなあ。
一方で、カティ自身もオリバーに惹かれている事実が混沌に拍車をかけている。まあ、なんか女性陣みんなオリバーに惹かれているっぽいのだけれど。シェラも、自分にもっとも親しい魔法使いとしての価値観を有する、波長が合うオリバーに惹かれているようだし。まあ、その波長が合う部分こそがやがて二人を、魔法使いであるからこそ敵対へと導きそうでもあるのだけれど。
そんでもって、ピートもまた両極往来者(リバーシ)、男性と女性の性別を行き来する特殊体質の影響もあるのか、なんかオリバーにべったりなところありますし。
ガイくんも滅茶苦茶イイ男なんだけどなあ。こればっかりは今のところ仕方ないのか。

そんなみんなに惹かれているオリバーだけれど、彼こそが魔法使いの闇をすでに体現している一人。仲間たちという光に目を細め、安らぎを得てこの上なく彼らに惹かれながら、背を向けざるを得ないもの。ついに、二人目のターゲットに狙いを定める。最も、次の標的を仕留めるのは、仲間を守るためという意義もあるので今のところは後押しする要素しかないのだけれど。

シリーズ感想

七つの魔剣が支配する 3 ★★★★☆   



【七つの魔剣が支配する 3】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第3弾!

オフィーリアが魔に呑まれ、ピートがその使い魔に攫われた。キンバリーの地下迷宮に消えた生徒数の多さに、学園内は厳戒態勢が敷かれる。学生統括のゴッドフレイをはじめ、上級生らが奪還に向かうも救出活動は難航していた。
 迷宮の深みに潜む魔女を相手に、自分たちに何が出来るのか? 苦悩するオリバーらに、ある人物が取引を持ちかける。それは彼らにとっての光明か、それとも破滅への誘惑か。
 目指す場所は地下迷宮の更にその奥。想像を超えた環境と罠、恐るべき合成獣たちが行く手を阻む。果たして彼らはサルヴァドーリの工房にたどり付き、友人を取り返すことができるのか──。


魔に呑まれ、人からハズレて朽ち果てる。それは魔法使いの一つの末路であり、オリバーたちの未来の姿。ここで語られるオフィーリアの物語。彼女の青春と恋と友情と、そして絶望にして最期の物語は眩しいくらいに輝いていて、そしてあまりにも儚かった。
一巻でダンジョンにて遭遇した彼女は、まさに怪物だった。この学園で魔法を学び続けるということが、魔の道に進み続ければ果たしてどうなるのかを示唆するような存在であり、やがてオリバーたちもみな、このような怪物へと成り果てるものなのかと恐れおののいたものである。
でも、ここで語られたオフィーリアは決して怪物ではなかった。どれほど道を外れようと、魔に魅入られようと、彼女がこの学園で歩んできた軌跡は今オリバーたちが歩いている道となんら変わることのない輝かしい青春の中にあり、その只中から足を踏み外して奈落へと堕ちた今となっても、その在りようは人からハズレた怪物などでは決してなく、哀しいほどに人間であったのだ。
そしてそんな、人として藻掻くオフィーリアを命を賭けて救おうとするのも、彼女の破滅に殉じようとするのも、彼女の青春を共にした友人たちだった。友として、ゴッドフレイもカルロスも最期まで彼女を見捨てることはなかったのだ。たとえ、どんな形だったとしても。
その姿は、今この時ピートを助けるために命を賭けているオリバーたちと何が違うのだろう。何も違わない。あれは、将来のオリバーたちの克明なほどの未来の姿の一つである。
オフィーリアが人の心を摩滅させて真に怪物に成り果てたのならば、オリバーたちはそうならないと信じることも出来ただろう。
だが怪物に成り果てるのではなく、人であり続けたからこそ、余計にあのオフィーリアたちの末路はオリバーたちの未来を映し出しているかのように見えてしまうのだ。
オリバーも、ナナオも、ミシェーラも、彼らが人であるからこそ殉じるべき破滅を既に内包している。ピートを救うために見せた彼らの情熱も、純真さも、眩いほどの魂の輝きも、彼らだからこそ陰らせることもなくくすませることもなく、いつか己の道の前に友が立ちふさがった時、友情の厚さそのままに切り伏せて進むことの出来る強さであるように見えた。
きっと、彼らは友情も絆もそのままに、壊すこと無く歪めることなく、友と討ち合える強い「人間」なのだと、このピート救出行でのオリバーたちの必死さ、懸命さ、聡明さ、賢明さを見れば見るほど確信が深まった。オフィーリアとゴッドフレイ、カルロスという上級生たちの友情の成就を見れば、それはダメ押しのようだった。
オリバーは、彼女らの絆の証に何を見たのだろう。何を抱いたのだろう。何を得て、何を喪ったのだろう。今は思い巡らせることしかできない。
願わくば、そこに焦がれてほしくはない。ナナオと切り結んだときのように、そこに惹かれていってほしくはない。でも、美しい末路ではあったのだ。羨望を抱いても仕方ないことなのかもしれない。
オリバーやナナオ、ミシェーラの、前に進めてしまえる強さに対して、ピートやガイ、カティの思う通りに進めない弱さ故のひたむきな強さが、彼らの内包する破滅に対して良き作用を起こせればと願うばかりである。
……いや、どうなんだろう。そんな結末を自分は望んでいるのか? 願っているのか? 心の何処かで、そのようなわかりやすい救いなど望んでいないのかもしれない、と感じる部分がある。
だってオフィーリアの破滅は、孤独ではなかったその破滅は、哀しくも美しかったのだ。どこかで、それに魅入られている。オリバーたちの内包する破滅にもまた……あのナナオとの決闘で垣間見た刹那の破滅に、同じ美しさを垣間見ているのかもしれない。
この物語に魅入られて、闇に呑まれかかっているのは、果たして誰なのか。
ああ、じわりじわりと胸の奥へと仄暗い甘さが広がっていく……。

1巻 2巻感想

七つの魔剣が支配する 2 ★★★★☆  



【七つの魔剣が支配する 2】 宇野 朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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学園内の事件を解決し、一目置かれる存在となったナナオとオリバー。しかしそれは、魔法使いとしての研鑽に励む同級生たちの、矜持と野心に火を点けた。誰が一年生でいちばん強いのか?その問いに結論を出すために、お互いのメダルを奪い合う、バトルロイヤルの開催が告げられる。ナナオやオリバーを倒すべく、次々と名乗りを上げる強者たち、そしてこの機に乗じる存在が動き出し―。一方、その盛り上がりをよそに、ある大きな変化がピートを襲う。彼の体に隠された秘密が明かされ、それは大きな可能性を少年にもたらすのだが―。運命の魔剣を巡る、至高の魔法×剣術バトルファンタジー第2巻!

ヤバイこれヤバイこれ、おもしろいー、本当に面白いぞ!
凄まじく語彙が貧困になってしまったのですが、まずはゴチャゴチャと言葉をひねるよりもシンプルに言ってしまいたかったんです。
うー、なんかすごい密度で読んだ気になっているのですが本の厚さ結構なものだったんだろうか。電書で買ってるとそのへんがわからないんですよね。
さて、先だっての第一巻の感想では楽しい楽しい阿鼻叫喚の地獄絵図と称した学園生活ですが、ほんと殺意高いわー。常時命がけ、というのは比喩ではないのでしょう。油断すると即座に死んでしまいそうだし、油断してなくても不可抗力で死にそうだし、一年時は比較的安全を取り計らってもらっているのだけれど、これ学年が進むとどんどん自己責任になっていくんですよね。というか、学校側で生徒を守ろうという積極的な意志をまったく感じないんですよ。どんな危険地帯に学校が存在していても、学校側に生徒を守ろうという意志と体制があるならある程度の秩序だった安全な道筋というものが出来るものなんだけれど、ここまで生徒を突き放している学校というのはそうそう見たことがない。まあ、学校の上層部が主人公にとっての敵サイド、というのも大きいのだろうけれど。
問題はやはり、彼らが主人公にとっては敵であっても、皆にとっての敵ではないというところなのか。ミシェーラとは登場人物たちにとっては密かに、しかし状況的にはもろに敵対フラグ立ってるもんなあ、これ。ナナオとに関してはなおさらに。
そうなんだよなあ、面白いことにオリバーのカリスマ性とナナオのカリスマ性って並び立っていなくて、それぞれ独自に深く接して言葉を交わした相手を魅了しているのである。なんていうんだろう、オリバーとナナオの二人が一緒にその人を落とすのではなく、あくまで別々に、なんですよね。同じ相手であっても、オリバーとナナオ、二人の言葉が響いているのはその人の中の別の部分のような気がするのです。二人共、その言動は魂そのものを揺さぶるような、その人のそれまでの価値観そのものを覆すような、行き詰まった閉塞を切り開くよう……な鮮烈であり、重厚そのものの衝撃なんですけど、その届いている場所が異なっているような感覚がするんですよねえ。
それは相容れぬものではなく、並び立つことが可能な異なる別位であるのでしょうけれど、だからといって混じり入って一つになるようなものでは決してないような。
なんだろうね、これ。将来、オリバーとナナオが死命を賭すことになったとき、それはただ二人の間のことだけに収まらないのだという示唆なんだろうかこれは。
そうなんですよねえ、この物語ってオリバーとナナオのものであるのだろうけれど、彼ら二人に限定してしまうにはあまりにも他のキャラクターにもスポットがあたり、掘り下げが積極的に進められているんですよね。入学の際に意気投合してグループと相成ったミシェーラやピート、ガイにカティという六人組だけでも凄まじい密度でガンガン掘り下げ、お互いの関係をぐいぐいと縮めて絡めて昇華させていっているのみならず、周りの同じ一年の同学年の面々や上級生たちも取りこぼすことなく一人ひとり丁寧に取り上げて、彩り鮮やかにキャラクターを立たせていってるんですよ。
コーンフォリスとフェイのコンビなんか、あれズルいくらいじゃないですか。あれだけ覚悟決めきって頑張る幼馴染二人とか、感情移入しちゃいますよ。
カティのバイタリティはますます図太さと現実性を増してますし、ピートとシェラもなんかすげえ要素ぶっこんできましたし。一年生同士の本気の勝負は実に見応えありました……ってところで終わっていれば、まだ普通の魔法学園ものっぽかったんでしょうね。
最後の最後に、このキンバリーという学園の闇を、生徒たちが自ら選び自ら踏み入る闇の濃さ、深さ、おぞましさを「さあ、めしあがれ」とばかりに差し出してきましたよこのやろう。
あとがきの煽りがまた効くんですよね、これ。好きに生きて好きに死ね。その意味と味わいを、次巻にて堪能させられそう、ワクワク。

1巻感想

七つの魔剣が支配する ★★★★☆  

七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

【七つの魔剣が支配する】 宇野朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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Kindle B☆W

春―。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。そんな魔法使いの卵たちを迎えるのは、桜の舞う満開街道と魔法生物たちのパレード。が、希望に胸躍らせるのも束の間。キンバリーの孕む数々の脅威が彼らに襲い掛かる。気まぐれに生徒を飲み込む地下迷宮、怪物じみた上級生たち、亜人種の人権を巡る派閥の対立―。そんな魔境を仲間と生き抜く中、オリバーは一人の少女と縁を結ぶ。腰に日本刀を提げたサムライ少女―ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今、始まる。
ひゃあ、ひゃあ、ひゃあ。
またごっついのが来よったでぇ。
ああしかし、痛恨である。アルデラミン完結巻来てるのに、まだ読んでない。最終巻どころか第二部から積んだままなのである。そうこうしているうちに新シリーズが来てしまったじゃないですか。
とはいえ、そっち読み終えるまでこっちを待てというのも酷な話。なので、そろりと新作に手を出してしまったのでした。
ひゃあー。
まずもって地獄である。キンバリー魔法学園。学園モノとなるとそれは青き春の物語であるはずなのだけれど、控えめに言ってここは地獄だ。あとがきにもこうある。「魔法使いのための地獄である」と。無論、望んで地獄に落ちてく度し難い者どものための楽園だ。
卒業までに二割が落命するというとんでもない場所、と入学式では公に宣言されているけれど……いやいやいや、ちょっと待って? これ二割で済むの? 逆に八割は死んでない? 魔法使いは頑丈なので、多少内臓引きずり出されたり体半分になりかけたり、半身ぺちゃんこになっても治療が間に合えばなかなか死なないらしいけれど、それでも死ぬだろう、という難易度が一年生から降り掛かってくる。難易度というよりも理不尽が降り掛かってくる、というべきか。先輩がたが言うところでは四年生くらいまでは大丈夫だよー、とのことだけれど、大丈夫でこれってどうなんだろう。
そもそも……出てくる先輩、四年生時点でほぼまともな人いないんですけれど。在学七年生まであって、上にまだ5・6・7年生がいるはずなのに4年生でこれである。能力的に図抜けているとか化物じみている、という話ではない。
そもそも「人」じゃなくなってるんですけど!?
狂気の沙汰が当たり前、ただ人間やっているだけでは生きていけない、目的を達せない、そも魔法使いとは人外の領域の生物である、というのを地で行くような人外魔境。それがこのキンバリー魔法学園。これで、なんで表向き普通に授業してハリー・ポッターの魔法学園のごとく日々が過ごされていくのか、真剣に理解できない。平穏と狂気が当たり前のように並存しているのである。
まだ入学したばかりの一年生たちはその意味では正しく人間である。魔法使いであってもその在りようは人間であり、一般的な学生であり、普通に笑って泣いて喧嘩して、自分の中の善性と負の感情のバランスに苦しみながら、人間関係と将来への展望に悩み楽しみ、学校の生活を謳歌する少年少女たちである。
であるがゆえに、上級生というその末路なのか進化なのか、未来の姿形をあからさまに目の前に並べられると、これがああなっていく、という明らかな実証を前にして怖気を震うしかない。
そして、その兆候は皆にあるのだ。
この物語のメインキャラクターとなるだろう六人の少年少女たち。アルデラミンでもそうだったけれど、5,6人の少年少女たちを一つのグループとしてまとめて、物語の中核に放り込んでそのグループのキャラたちを以って物語の推進力としていくの、宇野さんの真骨頂になったなあ。六人という数はけっこう多いはずなんだけれど、この一巻で初対面の六人の関係を醸成し凝縮し踏み込ませて、一気に仕上げてしまった手腕には感嘆を否めない。この子などんな娘、どんな少年か、というのを一気に見せるだけではなく、掘り下げて初登場時点から早速成長させるわ、発展させるわ、どん詰まりからすくい上げるわ、なんちゅうか数巻分の密度があったんじゃないか、という進展を見せてるんですよね。それも駆け足じゃなく、地に足をつけた、どころかグイグイと下に中に掘り下げる形で。
それをして、前提である。それをして、スタート地点へとようやく辿り着く、という体なのである。
スタート地点でこれほどの規模と密度の舞台設置をしてしまうというのは、一体全体トータルではどれほどのスケールを臨んでいるのか。想像するだけで身震いしてくる。
そして何より構成である。
今回、幾つものある種のネガティブな感情、魂が堕するに足る停滞や狂騒を、すごく丁寧に解きほぐして、解き放ってるんですよね。善性と真っ当なロジック、そして心意気と素朴な格好の良さ、真心や誠心、人生を賭すに足る友情、そういう心地よい正の在り方によってそのまま放っておけば、むごたらしい末路、或いは人が堕ちるべきではない魔の領域へと転げ落ちてしまっただろう幾つかの心や魂を、体当たりでぶつかって、すくい上げている。或いは、自覚を促し、自力で再生するのを支えている。
とても良い、気持ちの良い、良き方へと転がる回転を促す物語になっているのです。地獄のような学園で、しかしこの善き良き仲間たちが力を合わせて乗り越えていく、そんな若者たちの陽の光に照らされた物語……。
と、見せておいてこれである。
これである。
一転反転瞬転変転。転転転と転がって、見上げてみればそこに飾るは凄まじきまでの「暗黒面」。
凄絶なまでの漆黒暗座の未来絵図。真っ当ならざる奈落の魔剣。
果たしてこれは真っ当な人間からは程遠い。どころか、人であることを踏み外すことが魔法使いの在りようとするならば、正しく狂人たちの物語なのである。7年だろうと教師だろうと、4年生だろうと、魔法使いであるならば、すなわちその誰もが正しい資質を持っている。その資質を活かすものだけが、この地獄で生き残れる。この地獄を堪能できる楽しめる。ここを、楽園と興じれる。
それは、新入生だとて変わらない。入りたてピチピチの一年生だとて、何一つ変わらない。
何一つとて変わらない。
魔法使いである以上、彼らもまた「人でなし」たる資質持ちの同類なのだから。

ひゃあ、ひゃあ、ひゃあ。
全く以て、ゾクゾクするほど愉しい愉しい地獄の始まりだ。
七つの魔剣が支配する、阿鼻叫喚の楽園の始まりだ。


宇野朴人作品感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 7 5   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (7) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 7】 宇野朴人/ 竜徹 電撃文庫

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軍事クーデターによって、カトヴァーナ帝国内はイグセム派、レミオン派、旭日連隊の三つの勢力に分裂する。旭日連隊のイクタは、行方不明だった帝国皇帝の身柄を確保することに、いち早く成功するが、佞臣トリスナイの巧みな謀略に踊らされてしまう…。イグゼム派の将校として捜索隊を率いていたヤトリと、戦場で対峙するという、まさかの事態を迎えるのだった―。非情な運命は、二人の未来をどう変えることになるのか?話題沸騰の本格ファンタジー戦記、ついに最大のヤマ場を迎える!!
未だ衝撃のあまりクラクラしてる。実のところ、作家にとってこういう展開というのはかなり「やりたい」展開だと思うんですよね。でも、なかなか思い切れないし、身を切るような辛さを感じてしまって出来ないんだと思う。でも、その身を切るような辛さこそを恍惚と羨望してしまうのが作家のサガであり業でもあり。
衝動ではないのだろう。最初からここを目指して切り貼りしてきた節があちこちに見受けられる。全部計画のうちだったのだろう。でも、実際に書き始めて、イクタとヤトリの二人を描いて、そこに実が生まれ像が結実しキャラクターが息をし始めた時に、果たして事前に描いた構想を振り返り、果たしてどれほどの仄暗い感情を抱いたのか、想像するに余りある。痛くて辛くて苦しくて、なんて甘美な悦楽だろう。羨ましくすら感じてしまう。こればっかりは、書く方の特権であり読み手であるこちらはただただのた打ち回るばかりだ。いや、こんなふうに感じている時点で「共感」しているのか? 同じ沼の淵にハマってしまっているのか? 
いずれにせよ、避けられるはずだった帝国の滅びは、王女の幼い願いは……これで完全に果たされる。どうやったって叶うはずもなかったものが、ここに結実してしまった。ハッピーエンドなどありえない。どこの誰にも望まれなくなった。滅びろ、滅びろ、滅びろ!という切なる願いが重なってしまったのだ。私も重ねてこう呻こう。
「滅びてしまえ!!」
それ以外、許せない心境なのだ。この現実をもたらすに至ったすべてが、呪わしい。許せない、怒りがこらえられない。悲しみなど吹き飛んでしまった、ただただぜんぶぶち壊して欲しい衝動に駆られている。なんて、暗い愉悦だろう。今になって、ようやく受け入れがたかった王女の有り様に共感している。シンクロしている。読後直後の動揺が冷静さを奪っているのだろうけれど、今はただこの暗い愉悦に身を任せていないと、色々と耐えられそうにない。ああ、イクタはどうするのだろう。
ヤトリよ、そいつは呪いだぜ。約束は守られ、同時に守られない。しかし、それは彼を縛るのだ。それにあんた、前に言ってたじゃないか。イクタを殺せば「ヤトリ」は死ぬって。幼い頃の狼との死戦でだって、イクタは言ってたじゃないか。ヤトリの最後の言葉は幸せな妄想だ。比翼の鳥は、一つには溶け込まない。二人でいるからこそ、連理比翼なのだ。彼がこれまで生きてきてやってきたことは、すべて全部何もかもが、ヤトリその人の為だったのに。イクタとはヤトリだったのに。
イクタが死ねば「ヤトリ」が死ぬのと同じように、「イクタ」もまた死ぬだろう。なら、「イクタ」が死んだ後に残るのは、何なのか。
ここからは、望まれし煉獄だ。

前回作風に合ってないと言ったイラストだけれど、今回に関しては絵師の竜徹さん凄く頑張ったんじゃないだろうか。土台からひっくり返したように雰囲気変えて、この衝撃的な展開に挑むかのような気合入ったイラスト群だったと思う。まったく、文句の付けようはなかった。この努力は掛け値なしに素晴らしい。

シリーズ感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 6 4   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (6) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 6】 宇野朴人/竜徹 電撃文庫

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カトヴァーナ帝国軍が真っ二つに! ヤトリが離脱した騎士団の未来は……!?

軍事クーデターが起こり、カトヴァーナ帝国内でイグセム派とレミオン派が激突する。
それはイクタたちにも影響を及ぼし、イグセム家のヤトリは父のもとに戻るべく、騎士団を離脱。
またレミオン家のトルウェイは、父と対峙することを決意。
そしてイクタは、父バダ・サンクレイの残した独立部隊「旭日連隊」を率いて、内戦を収めようと立ち上がる。
激しく揺れる帝国で、それぞれの想いを胸に戦場を走る少年少女たち。彼らの未来に希望はあるのか…?
本格ファンタジー戦記、待望の6巻!
イクタは、ヤトリをイグセム家の宿命から解き放って一人の女性として幸せになってもらうために、イグセム家そのものが背負い続けるイグセムとしての根源を無為にしようと、戦争の形そのものを変えてしまうことすら画策している、というのがトルウェイの活躍と自覚を通じて明らかになってきた。つまり、この男はヤトリを解放するために、そもそも彼女の立っている土台から意味を失くしてしまおう、としているのだ。なるほど、目の前のものではなく構造そのものに働きかけようという考え方は若き大戦略家らしい視野に基づくものだし、意思の頑なさではなく在り方としてイグセムそのものであるヤトリには、彼女個人には自分たちの声や意思では在り方を変えさせることは出来ない、と長い付き合いから実感として理解していたからこそ、の手段なのだろう。
でも、相手のことを言わずとも理解し尽くしている、という通じ合った絆こそが、ヤトリとイクタの二人をひどく寄り道させ、大回りさせているような気がするのだ。そう思わせてもらうきっかけとなったのが、あのルシーカ中佐の叫びである。
正義でも大義でも信義でもなく、きっと忠誠ですらなく、ただ叶わぬ愛に殉じた彼女の峻烈な生き様、死に様が、揺らめく炎のように彼女の、ヤトリの奥底に秘められたものを陰影強く浮かび上がらせたのだ。
そう、ヤトリシノ・イグセムは女である、と。
誰よりもヤトリを知り、ヤトリを理解し、ヤトリと通じ合い、ヤトリを受け入れているイクタ。だが彼は知っているのだろうか。ヤトリの、誰にも見せたことがなく、彼女自身がきっと微塵も認識していなかっただろう、女としての部分を。どうしようもなく女でしかない中核を。
誰よりもヤトリを理解しているが故に、ヤトリと通じあっているが故に、イクタはどうしてもヤトリをまずイグセムのヤトリとして見ているような気がするのだ。だからこそ、彼は絶対に彼女に言わないのだ。告げないのだ。訴えないのだ。イグセムを捨てて、女として生きろ、などとは。自分と共に生きろ、などとは。
言ったとしても、絶対に受け入れられないと知っているから。絶対に拒否されるのだと、理解しているから。イクタ・ソロークとヤトリシノ・イグセムが知っているヤトリという少女は、イグセムとしての生き方を決して曲げない、それが真実である、事実でもある。間違いでは、ないのだ。
でも、でも、本当に? 本当に、そうなのか? そんな疑問が、ルシーカ中佐の叫びを前にして、途方にくれてしまったヤトリの姿を見て、ふと浮かんできたのである。
もし、この疑問に一雫でもイクタとヤトリの知らないヤトリの奥底の真実が含まれているのなら……きっと、イクタのやり方では指先一つの隙間くらい、届かない気がする。決定的なところに、届かない気がする。
レミオン将軍は、軍人として、国の要人として以外の言葉を息子のトルウェイに投げかけることが出来ず、彼の背を留めることがかなわなかった。父親の知らないうちに、息子は成長し遠くへと羽ばたいていた。そして、成長ではなくても、ヒトは常にその在りようを変え続けている。時に微細でありながら決定的なほどに。
将軍に苦言を呈したイクタが、果たして同じ轍を踏まないと言えるだろうか。誰よりもお互いを理解しているからこそ、陥穽が生じる隙があるのではないか。
そんな不安が、そして期待が、ヤトリの中にかいま見えた、そんなお話でありました。もしそんな展開が訪れるのなら、キープレイヤーはシャミーユ皇女なのかもしれないなあ。

さて、レミオン派が起こしたクーデターは、レミオン派自身のみならず、イグセム派、そしてイクタの想像すらもはみ出していく形で混迷を深めていく。誰も主導権をとれないまま、事態はいつの間にか宰相の手のひらの上で転がされていく。
この手の、利害調整の効かない、何に重きをなしているかが見えない相手が一番たちが悪いんだよなあ。権力の亡者や佞臣の類なら、まだやりやすいんですよ。どれだけ有能で悪辣でも、やりようはある。妥協の余地だって交渉の余地だってある。でも、自分が権力を握る国家の利益を平然と度外視して国を傾けるのも厭わないやからは、何を考えているかわからないから、対処のしようがわからないんですよね。国が傾けば、自身の権力も権勢も失われるだろうに。帝国は周辺に敵性国家を抱えていて、下手をしなくても国が滅びかねない岐路に立たされているのは、ある程度の視野を持つものならわかっていることでしょう。馬鹿だったり愚か、無能の結果として国が傾くならわかるんですけれど、この宰相の場合どうも意図して、という部分が垣間見えるんですよね。こうなると、もはや他国のスパイか何かか、とすら思えてくる。それが辛うじて理解できる範疇であって、それ以外となると……だからこそ、不気味で気持ち悪いんだよなあ。
イクタは、何らかの推論ができているんだろうか。

しかし、トルウェイが元からの有能さに加えてさらに殻を破って、名指揮官への道を歩み始めたのは見ての通りなんだけれど、それにも増してマシューの部隊掌握運用能力の高さには目を見張る。イグセムの中でも猛将として知られる烈将ヨルンザフ率いる騎馬隊の直撃くらって、部隊を崩壊させないとか、この時点で尋常じゃないですよ。あれ、よっぽどの精兵でも部隊の体を失くして壊乱しかねないし、そこまでいかなくても瞬間的には部隊として機能を停止するのが普通ですよ。トルウェイの兄ちゃんたち、トルウェイが言ってた通り有能な方だと思うし、部隊もレミオン派の精鋭であったはずなのに、ヨルンザフに打ち抜かれて悲惨な事になりましたからね。それを、マシューは被害甚大とはいえ部隊の指揮を一瞬足りとも手放さなかった、という時点でもう指揮官としてかなりヤバいです。ここまで堅牢で堅実な歩兵指揮官が手元に居る、それだけでイクタはあまたの将軍から指を咥えて羨ましがられるでしょうねえ。

イラストについては、ちょっと作風が合っていなさすぎる。これなら、無いほうがいいんじゃないかしら。

シリーズ感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 55   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (5) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 5】 宇野朴人/さんば挿 電撃文庫

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未知なる戦場「海上」で手痛い敗北を喫したイクタたち、カトヴァーナ海賊軍。驚異的な破壊力を誇る「爆砲」を装備するキオカ海軍に対して、もす戦略的撤退しかないと軍議がまとまりそうになったとき、海戦に関しては門外漢のはずの、ある少年が、爆砲艦への有効な対抗策を提言するのだった―。「肉を切らせて骨を断つ」がごとき、血で血を洗う激烈な海戦が幕を開ける!話題の本格派ファンタジー戦記、待望の5巻が登場。命ギリギリの容赦ない戦いは、激しさを増すばかり…!
この男、やっぱスゴイわ。どんだけ引き出し持ってるんだよ。まさか、こんなとんでもないカードを隠し持っているとは。
正直、この作品、国のどん詰りがキツすぎてハッピーエンドが皆目見えてこない状況だったんですよね。挙句に、姫様が自爆特攻一直線モードに引きこもったまま出てこようとしていないし。
順調に功績を積み重ねて出世しているイクタたちだったけれど、如何せん任官して間もない新人という立場は無視できず、彼らが国を動かすまでに至るまではどう見積もっても十年二十年の月日が必要だったわけです。姫様を神輿にあげて横紙破りするにしても、基盤らしい基盤もないまま挑まないといけないわけで、かなりのアクロバットを見込まないと、とにかく綱渡りも良いところの危ない橋しか見当たらなかったんですよね。それに、肝心の姫様がアレですし。
そもそも、イクタが姫様についてどう考えているか、どう捉えているか、どうするつもりなのかがなかなか見えてこないものですから、ずっと不安だったのですよ。
でも、ヤトリとの会話の中から、ようやく彼の本音が聞けました。少なくとも、彼は姫様の自滅志向を良しとしていないし、彼女の心の暗闇を払ってあげたいと思っている。それさえ確かめられれば十分です。彼に、ヤトリや仲間たちを裏切る気がなく、姫様をちゃんと立ち直らせようという意思があるのなら、もう何も怖いものなんてありません。こいつがやる気なら、もうなんだって出来るに決まってるんだから。
そして何より、イクタにヤトリの道を遮るつもりがないのなら、ヤトリが思う通りの道を歩けるように何でもする気があるのなら、彼はどんなに困難な道でも切り開いてみせるでしょう。ヤトリのためならば、この男に出来ない事はないのですから。
不安要素があるとするなら、自滅志向よりもむしろ妬心を拗らせつつある姫様か。
ともあれ、国を滅ぼすどころか、この腐りつつある国そのものを一発逆転で蘇らせることの出来る可能性を引き寄せるだけの、とんでもないカードをイクタは隠し持っていて、内戦の危機が迫ったこの時を持ってついにその
カードを切ったのです。正直言って、度肝を抜かれました。とんでもない、ほんまとんでもないわ、この男。

とまあ、ヤトリとイクタの絆の深さやイクタの底知れなさを思い知らされた後半に色々と持って行かれた気もしますが、前半戦の帆船同士の大海戦も負けず劣らず手に汗握る熾烈すぎる攻防でした。ってか、イクタのあの作戦案はマジスゴイわ。帆船同士の海戦、しかも長距離で撃ちあう砲戦が主流となる時代への過渡期特有の虚を突く、実に論理的で才気煥発の極みとも言うべきこの着眼点。この仰角の問題は、砲戦が主流となってくると常識となる基本問題であり、風上では仰角をあげられずに砲戦距離を稼げず、風下では仰角があがってしまい舷側も晒して喫水線下にも被害を受けやすくなる、などいった問題は最初から踏まえた上で戦術が仕立てられるようになるのだけれど、イクタがスゴイのは敵将も絶句しているように、一度交戦しただけでこれらのまだ大砲を使用している側も認識していない問題点を汲み取った上で、戦術に組み込んじゃってる所なんですよね。速い、速すぎるよ。
敵将の姐さんが、お世辞抜きに有能な提督だっただけに、その彼女をねじ伏せるに至ったイクタの作戦と、海賊軍の力量には敬服するしかありませんでした。これぞ、見応えのある合戦だわ。
でも、今回の物語としてのMVPはやっぱりマシューでしょう。この子の地に足の着いた実直な能力と精神性は、ほんと頼もしい。派手さはないけれど、相手からは嫌がられる将軍になりますよ、彼は。小隊から万を超す大軍団まで、変わらず実直に率いてくれそうだ。ヤトリとトルウェイの飛車角っぷりが目立つけれど、マシューは歩と金将をまとめて担ってくれそうな役柄だよなあ。ちなみに、副官のスーヤも今は下士官だけれど、今の調子でイクタの側で勉強してたら、将官くらいなりそうな感じだよなあ、これ。
ともあれ、マシューとポルミンはこれ、お似合いだと思うぞ。

とまあ、順調に周囲に人材が揃い育ってきたように見えてたんだけれど……ハロがまさかなあ。これはさすがにイクタも把握してないだろ。

毎度ながら、此処ぞという時の展開が予想を裏切って面白すぎますよ。ハッピーエンドの目算も出てきたし、テンションあがってきましたぞ。

シリーズ感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 44   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (4) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 4】 宇野朴人/さんば挿 電撃文庫

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北域での過酷な戦争を生きぬき、多くの犠牲を払いながらも生還したイクタたちを待っていたのは、厳正なる軍事裁判だった。そして裁判のあとに開かれた軍議で、サザルーフは、イグセム元帥やレミオン大将といった高官たちに、ある突飛な要請を提案する。実はそれは、密かにイクタから託されたもので―。やがて帝国騎士の少年少女たちは、複雑な内政問題や激しい海戦に巻き込まれていくことになる…。話題沸騰の本格ファンタジー戦記、第4巻。これまでとは異なる戦いに立ち向かうイクタたち。その奮闘に注目せよ!!
なるほどなあ、なぜシャミーユ皇女が自らの手で帝国を改革しようとせず、わざと敗戦を誘因して国のありようを変えよう、なんていう他力本願で売国奴な方法を選ぼうとしているのか以前から疑問に思っていたのだけれど、どうして彼女がそういう考えに至ったかについてようやく理解が及んだ気がする。
前から自分はシャミーユの自分が泥を被らず血を流さず手を汚さず、他人任せで挙句に故国を敗残させようなんていう無責任な考えが気に入らなかったんですよね。さらには、それをイクタにまで押し付け彼に国や友人達を裏切らせようという行動が。
自分が先頭に立ち、障害は血の粛清を持ってしてでも打ち崩し、悪名を被ってでも自分の手で国を変えるんだ、という気概もないくせに、イクタを引っ張り込み、国家の敗戦という悪夢を招き入れようだなんて……と。なんというか、覚悟が感じられなかったんですよね。彼女の見せる覚悟には、自分はどうなってもいい、という覚悟はあっても、自分が責任をもって何とかしてやる、という負うべきものを背負う覚悟が感じられなかった。故にそこには壮絶であり悲壮ながら、軽薄であり無責任に感じられたのです。
……なるほどなあ、シャミーユ皇女にとって、皇族という立場はもう義務や責任を感じて背負うものではなく、存在が害悪そのものであり、消し去ってしまいたい悪であり、在ってはならない無価値なものだったのか。その絶望にはシャミーユ皇女自身も含まれていて、彼女自身が先頭に立って国を変えたり、未来を作る責任を負うなんて許されないと思っているようにすら見える。
この国を救うには、自分が変えるのではなく、自分が壊すことすらもおこがましく、ただ自らもまとめて今の体制を滅ぼし去ってしまわないといけないのだ、と。
なんちゅう、後ろ向きな……。いや、それならシャミーユの考え方もまあわかるんですよ。彼女が他力本願の他人任せなのではなくて、自分は責任を負ってはいけない許されざる存在なのだ、と思っているのなら。
でもそうなると、シャミーユの考えどおりに物事が進んだら、確実に誰も幸せになれないバッドエンドです。シャミーユは解放されても救われない。どうも若干その思想は誘導された節もなくはないですし。
となると、未だにイクタが返答を保留しているのも、見通しが変わってくるんじゃないでしょうか。どうやら、マイナスサイドに触れてしまっているシャミーユには、その分変化の余地がありそうですし。
とはいえ、じゃあどうやって国を変えるか、なんですよね。いや、この場合はどんな形に国を変えるか、のビジョンの問題か。この帝国、いびつなことに皇族貴族の腐敗、政府や社会体制の矯正しがたい歪みに対して、意外と軍そのものはまだ健全さを維持してるっぽい。どうやら国民の側も、軍に対しては信頼を寄せているようですし、現状曲がりなりにも国家が機能しているのは、軍部が各所で不具合のフォローに回っているからのようなんですよね。ただこれは、ほんとにいびつな状態で……こっからどうやったら健全な国家体制を再構築していけるのかが、ほんと難しそうなんですよ。この状態、放っておいても「志の高い軍人」が軍事クーデターを起こして軍事政権が誕生する、という歴史的パターンだし……と、思ったらどうやらその兆候がくっきり本編でも出てました。
これ、どう見てもクーデター自体が潰されるパターンなんですが、仮に成功したとしてもやっぱり軍主導の国家運営は上手くいかないんですよ。もうちょっと文明レベルが古かったらどうにかなったのかもしれないですけれど、帝国軍を見ると過渡期とはいえ軍のシステムがかなり近現代に入っちゃってるんですよね。名門の貴族が主導しているとはいえ、各々が勢力を持つ軍閥的なものからはだいぶ脱却しつつある軍組織では、組織としての完成度が高まっている分、専門外であり超法規措置となる国の運営は非常に難しい。どこかで絶対ほころびが生まれ、破綻してくる。かといって、貴族勢力が主導的立場になるのはもう時代遅れ。逆に民が主導するには民度が育っていない。なるほどなあ、ほんとにこれ、時代が移り変わる過渡期だわ。18〜19世紀の欧州や明治維新当時の日本なんかから連想しても、中世から近代への社会体制の変革は激動を伴うと言っていい。
既に先進的な社会システムが確立されている隣国から、ゆるやかに制御された敗北を受け入れることで変革を進めようというシャミーユの考え方は、あながち的外れではないのがまた困る。でも、ポーランドとかみたいになったら悲惨だよ。負ければ、国そのものがバラバラにされてなくなってしまう可能性だってあるんだから。
となると、若くて家柄が高いメンバーが居て全員に実績と名声と実力と志があり、しかし軍人としての地位はまだ高くなく閥を持たず軍という組織そのものへの帰属意識がまだ少ない、というイクタたちの「騎士団」が、シャミーユを神輿に立てて改革を主導していく、という流れは悪くないんですよね。
条件そのものは揃っている、と言ってもいい。黙ってうまく操られてくれる派閥に属さない上官が上に居てくれている、というのも最適だし。今回、マシューが海軍の名家の子となんかいい雰囲気になっているのも、若者たちの純情という微笑ましい観点を抜きにしてみると、人脈グループの拡大としてかなり大きな要素として機能しそうなんですよね。あとは、どうやって軍事政権という形にならないようにするか。最終的に、立憲君主制への移行が一番優良な形になるんでしょうけれど、つまるところシャミーユとイクタ次第になるんだろうなあ、このあたりは。つまるところ、これを敗戦によって他国の圧力とコントロールの元で虐げられ利用されながらやるか、自分たちで屍山血河を作り出しながらやるか。繰り返すけれど、こうして振り返ってみると条件は思っていた以上に整いつつある気がします。
もっとも、当事者であるシャミーユとイクタ以外は、目の前の戦争で自分のなすべきことを成そうとするだけで精一杯。ある意味、とても健全な成長を遂げている真っ最中です。特に、マシューは他の子たちと比べても特に能力が秀でているわけではない秀才タイプなだけに、その意識の高さには敬意すら覚える。もっと劣等感に苛まれてもいいでしょうに、自分で思っている以上に僻みなく上をむいていると思うんですよね、この子は。戦列艦の老艦長がマシューの資質についてはしっかりと見抜いてくれていましたけれど、彼の歪みや淀みのない程よい劣等感を糧にした向上心は、清々しいばかりです。彼の良さについてはむしろ仲間たちの方がわかっているようで、イクタたちの素直な賞賛と尊敬の念がマシューを歪ませずに真っ直ぐに鍛え上げている、と思えば、ほんとにいい仲間関係なんだな、と思えるんですよね、この子たちは。
海軍の初陣で大失敗をやらかしてしまった女の子をフォローしにいったのが、一番イビられていたマシューだというのも、なんかピッタリでした。あの彼女の自分の不甲斐なさ、無能さ、情けなさに打ちのめされ傷ついた心に何の負担も与えずに触れたのは、マシューがまさに適任でしたでしょうし。あれは、フラグ立ったよなあ。
一方で、鉄板的揺るがなさを改めて印象付けられたのが、イクタとヤトリの関係でしょう。あんな凄まじいシーン見せられたら、姫様もへこむどころじゃないわなあ。うん、あのイクタがヤトリの衣装を褒めたシーンは、凄まじいと言っていいと思う。逆にこの二人の信頼関係って凄まじすぎて、敵対しても裏切ってすらも揺るがなそうで怖いんですよね。その揺るがなさは、どんな状況になっても躊躇を呼ばないでしょう。信頼するがゆえに、入る隙間がないほど一心同体であるがゆえに、相手を思って躊躇うなんてことなく殺せるし裏切れる気がするんですよね。前巻でヤトリ自身も言ってますけれど、そうすることで自分の心が死ぬことを厭わなければ、躊躇うことはないのでしょう、二人共。そして、自分の生きざまを全うするのに、二人は自分の心が死ぬことなど厭わないはず。むしろ、他の仲間を裏切ったり手にかけたりする際の方が苦しみ悩みためらって決断し切れない可能性があるんじゃないかと思うくらいに。引き金は、決して重くないような気がするのが怖いんですよねえ。
今回は、次の本番である戦争が起こる前の準備編、という形でしたけれど、皇女の苦悩や帝国の体制の現状、今後の展望など考えさせられるシーンも多くて、変わらず歯ごたえのある内容でした。いやあ、厚みがあってホント面白いわ、これ。


1巻 2巻 3巻感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 3 5   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (3) (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 3】 宇野朴人/さんば挿 電撃文庫

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大アラファトラ山脈でアルデラ神軍の大軍と向かい合う、疲労困憊の帝国軍。勝ち目の見えない状況で、イクタは起死回生の奇抜な作戦を決行する!そしてかたや、帝国軍を攻めるアルデラ神軍の中に、ひときわ目を引く一人の軍人がいた。彼こそ、『不眠の輝将』と讃えられる英才。強敵としてイクタの前に立ちはだかる男であった―。不世出の二人が激突し、大森林を舞台に、息詰まる戦いが繰り広げられる。果たして、その結末は…!?話題の本格派ファンタジー戦記、ますます盛り上がる第3巻の登場。
いきなり主人公の指詰めから始まるとか、初っ端から衝撃的すぎる。でも、そこまでやらないと、たとえイクタとナナの間に幼少からの面識があったというアドバンテージがあったとしても、上っ面の言葉だけじゃ信頼なんか勝ち取れないということなのか。そりゃそうだ、今の今まで殺しあっていた間柄ですし、それは個人個人の問題ではなく国と民族の問題なのですから。ナナが族長の立場にあるからこそ、彼女個人の感情ではどうしようもならないこともある。その意味では、イクタは自分の小指を証とし、信頼の担保にしたとも言える。さらには民族浄化に発展しかかっていた帝国とシナーク族の問題を、この土壇場でアルデラ神軍の侵攻も逆に利用して、冷静な損得勘定に基づく組織間の関係へと引き戻すことにも辛うじて成功してるんですよね。勿論、末端の感情は収まらないものがあるでしょうし、その発露がスーヤの激発だったのでしょう。主要登場人物の殆どが一応、士官以上のつまり戦場を動かす責任ある立場にあるだけに、安易に自分の感情をぶちまけられないなかで、スーヤの存在は下士官以下の戦争に翻弄される人たちの声を代弁する役割を与えられている気がする。何気に重要人物ですよね、彼女の目線というものは今後イクタの立場がどんどん変わっていく中でも、一貫して一つの基準になり続けるような気がします。

アルデラ神軍による戦略的奇襲により、消耗しきった帝国軍は支配地域への生還そのものを目的として行動することに。その為には、誰かが後に残って神軍の侵攻を食い止めなければならない。いわゆる殿軍、絶望的な戦力差の中で主力が逃げ切るまで遅延戦闘を行わなければならなくなったイクタたち……いや、自ら志願したイクタたち。状況、戦力、指揮官の問題から自分たちが引き受けなければ文字通り主力が壊滅してしまう、という目算があったからこそ、だけれど……うーんうーん、いやさあ、どう見てもイクタが「常怠」なんて銘を与えられてしまうほど怠け者には見えないですよ。これだけ走り回って働きまわってる人を怠け者呼ばわりしたら、どれだけ働けば働き者と呼んでもらえるようになるんだ、て話ですよね。それこそ、敵将みたいに不眠不休で働き続けなきゃいけないのか。
あれは、完全に過労死パターンだよなあ。過労死なめちゃあいけません。例えば三国志なんかでも、明らかに働きすぎが原因で死んでそうな人が結構居ますからねえ。
その点、イクタはメリハリをうまくつけている方なんだけれど、そもそも余裕が無いこの遅延戦ではイクタ本人は殆ど休んでいないし、休養すら政治的パフォーマンスとして利用してますからねえ、とても怠けているという印象は感じられないんだよなあ。いや、この場合はそのイクタをしてこれほど怠けられずに不休で動きまわらないといけないほど戦況が極まっていた、と捉えるべきなのか。
更に言うと、相手となった『不眠の輝将』ジャンがイクタに匹敵する名将だっただけに、それに対応できるのがイクタだけだった、ということもあるのでしょう。大体、アルデラ神軍の総大将についても宗教国家の大将としては酸いも甘いも噛み分ける良将でしたし、その配下。ジャンの直属の部下たちにしても有能な人物ばかりで、帝国軍の惨憺たる有様ととても比べられたもんじゃないんですよね。その上、特殊部隊まで出張ってきてるんだからなあ……。
マシューとハロをその安全を慮って下げなかったのは、勝敗の分かれ目ですらあったかもしれません。この二人も、代わりの居ない人材ではなかったか、と。それから、大尉が別働隊の迎撃を受け持ったのもターニング・ポイントだわなあ。少なくともこの二回は、イクタも判断を間違えかけてるのです。ここで、イクタの指示通りにしていたら、戦線は突破壊乱され、文字通りこのお話はここで終わっていたはず。その意味では、イクタもマシューとハロ、そしてサザルーフ大尉に救われてるんですよね。
決して、イクタのワンマンで戦いが進んだわけじゃない。
それどころか、マシューが実感とともにこぼしていたように、これまでの戦いではイクタの言うとおりにしていたら楽に勝てていたところが、一転この戦いではマシューたちも常に死を意識させられる血と泥にまみれた断崖絶壁の縁をギリギリ歩くような、凄まじいまでの激戦、苦戦の連続で、彼らは文字通りの死線を渡ることになる。イクタが全知全能を揮ってすら、味方はくしけずるように消耗していき、兵士たちは傷つき死んでいく。
そういった、瀬戸際の戦いだったわけだ。
それでも、イクタの指揮官としての能力があってこそ、戦い抜けたわけだけれど。
後ろの安全地帯で将棋を指すように駒を動かし合うのではなく、自らも渦中にあって血を浴び泥を被りながら、最前線に立って剣を振るい、銃を手にし、兵士たちを叱咤しながら、しかし誇りにまみれた姿で自らをも駒として、自分が立つ場所を戦局の舞台として、敵将と手を読み合い、手を打っていく。一歩間違えれば味方が死に、二歩間違えれば仲間が死に、三歩間違えれば自らも死んで何もかも失う。
凄絶としか言いようの無い、刃の上を歩くかのような死の予感が途切れない、終わりが見えない戦い。永遠のような7日間。
読んでいるこっちまで消耗し尽くすような、死戦でした。

そんな心が削れていくような戦いの中で、一際輝いて……いや、尊く神聖にすら見えたのがイクタとヤトリの関係でした。ヒロインという括りですら卑小に見える、決して余人が安易に触れてはいけないような信頼関係。いや、信頼と呼称してもまだ足りない気がする。恋愛という意味では、二人共他に誰か付き合う相手が出来るかもしれない。ナナの恋心が実ればいいな、とすら思える。でも、魂の繋がりという意味でこの二人に割って入ることは誰にもできないだろう。神聖にして不可侵、そう言っても過言ではないくらい、お互いに対する思いは深く強い。
だからこそ、この二人の魂の繋がりを引き裂くような人がいれば、自分はそれに対して想像するだけで激烈な怒りを感じてしまう。イクタにヤトリの心を殺させるような真似を、ヤトリにイクタを殺させるような真似をさせようという者がいるならば、それは絶対に許せない。絶対に許せない。願わくば、二人の尊い約束が穢されない事を祈ります。それは、きっとどんな悲劇よりも悲痛で救われない結末だと思うから。

今後、とりあえず一番大変な目に合いそうなのが、サザルーフ大尉っぽいのがご愁傷様。この人が一番今回の生死判定際どかったような気がするんですが、生き残ったら生き残ったでむしろここで死んでた方が良かったんじゃ、と思うような目に合いそうなのが哀愁を誘います。ただ、この人こそ上に立つ人としてはイクタすらよりも適任に思えるだけに、今のまま偉くなってほしいなあ。

1巻 2巻感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 24   

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 2】 宇野朴人/さんば挿 電撃文庫

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実戦経験を積むため、北域へと遠征することになる帝国騎士イクタたち。目指すは、カトヴァーナ帝国九百年の歴史において、一度も外敵の侵入を許したことのない大アラファトラ山脈に守られた軍事拠点、北域鎮台。野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇だと噂される、帝国最北の基地だった。しかし、どこか訓練気分の彼らを待ち受けていたものは、想像以上に過酷で壮絶な―そう、本物の戦場だった…。
本物の戦争にロマンなど存在しない。あるのはただただ反吐に似た現実だけだ。敵も味方も武器を持たない一般市民も等しく無残に死んでいく。そこに、人格は問われない。どれほど人間的に優れていようと、将来有望な才能を秘めていようと、死は平等に訪れる。否や、むしろ死は恐ろしく不平等に訪れているのかもしれない。運を持たないが故に死ぬ。権力を持たないから死ぬ。才能を持たないから死ぬ。無能だから死ぬ。判断が遅れたから死ぬ。
そんな理不尽の死の責任はどこに帰するのか、というのなら、それはこの戦いを主導した無能なる司令官のせいだろう。引いては、シナーク族に決起を決意させるほどの圧政を敷いたこの司令官の二重の責任でもある。だが、この司令官を北域に派遣し彼のやり方を黙認していたのは帝国本国だ。そもそも内政官を派遣せずに専門外の軍人に施政を任せた帝国の政治システム、共和国の反乱教唆に何の対策も取れなかった防諜体制の不備こそが事態を致命的な段階まで推し進め、山岳民族を弾圧しても構わない差別スべき劣等人種と見て疑わなかった帝国側の一般的な認識こそが今回の内乱の決定的な原因だったと言えるだろう。北域鎮台の事実上の実権を握っていたトァック少佐は、平時の軍隊を運営する手腕は間違いなく優秀でした。人間的にも非常にまともな部類でした。その彼をして、司令官のシナーク族への圧政を許容範囲のものとして黙認していた。この程度なら、まあ仕方がない、と。……良識を持つ彼をしてこれである。そんな彼の認識こそが、異民族相手の統治のやり方を知らない素人の、引いては一般的な帝国人の認識だった、と言って間違いはないはず。ハルグンスカ准尉のような騎士道精神の持ち主は稀有な例外と言っていい。
詰まるところ、皇女殿下が負けてでも、いや負けないと変えられない、と考えている帝国という国そのものが抱える病巣の根源とも言うべきところは、こういう部分なのでしょう。
そして、それを変えるために負ける、と言うことは変えるべき病巣に捕らわれていないハルグンスカ准尉や旧弊から自力で蒙を啓く英邁さを持ったカンナのような人物をも等しく、並べて、殺していくということでもある。戦争において、死んでいく存在を綺麗に選り分けることなど不可能なのだ。ましてや、勝利ではなく敗北においてなど。
この愚劣なる戦いは、現在の帝国の愚かしさの縮図であると同時にまた皇女殿下が歩こうとしている血塗られた道の縮図でもある。皇女殿下は、イクタを覚悟ができていないと罵るが、そんなもの当然だ。覚悟など、出来ようものか。それは、守るべき人達を、戦友たちを、民たちを、無力故に守れなかったというのではなく敢えて守らず見殺しにするのと同意なのだから。どれほど被害を最小に抑えようとしても、どこかで見殺しにしなければならない部分は必ず出てくる。勝つために、味方の被害を減らすために、そうした切り捨てる決断は必要不可欠なものだ。今回だってイクタはそれを実践している。しかし、それを負けるという目的で出来るのか? この戦いで、切り捨てた中に大切なものを含めてしまい、痛切にそうせざるを得なかった自らの足りなさを悔いるイクタに、それが出来るのか? 本物の戦争も、本物の敗北も知らない皇女殿下の覚悟とやらを、果たして信じられるのか? 結局、彼女は自ら手を汚す覚悟、敵に殺させる覚悟ではなく自ら殺す覚悟がないだけじゃないのだろうか。壊したいのなら、誰かに壊してもらうのではなく、自ら壊すのが筋ではないか。たとえ、後世に暴君の汚名を残そうが、人任せにするのと比べて果たしてどちらが誠実か、義務を果たしているというべきか。
正直、この戦いにおいて常に最善を尽くそうとしているイタクを見ていると、とてもじゃないけれど皇女の企みに乗るとは思えないし、彼女が言っている事がどれだけ戦争の現実を見ていない生っちょろい妄言かをこれでもかと見せつけられている気分である。
自分としては、イクタがどうやっても勝てない戦争をソフトランディングさせるために辣腕を振るう、くらいしかちょっとやりようが考えられないんですよねえ。勝てる戦いをわざと負ける、みたいなことを意思を持って出来るとは思えないし……やって欲しくはないなあ、そんな酷いこと。

にしてもまあ、よくここまでやったものだと感服する。戦争モノ、戦記モノの中でもライトノベルという枠組みの中で、これほど華のないひたすら劣悪な戦争を描いたものだ。これを英雄譚などとは口が裂けても語れないだろう。そこには、目を爛々と光らせる泥にまみれた軍人たちが居るだけだ。
しかし、英雄は作られる。
恐らく、この戦いを通じてイクタたちは飛躍的に出世するだろう。軒並み部隊を率いる士官クラスが歯抜けていく戦いで、篩から落とされずに残った上に優秀さを示し、さらに既に帝国騎士という名望を持っている彼らは必然的に英雄として扱われていくに違いない。思いの外早く、彼らは昇進の道を駆け上がっていく。それは、上の無能さに左右されず自らの力で助けられる範囲が広がっていく、ということでもあるが、同時に旧弊さの不具合に絡めとられ為すべき自由を失っていくという事でもある。
もっとも、そんな心配をする前にまず本国に無事に戻れるか、という話になっているのだが。宮崎繁三郎中将ばりの活躍が要求されるぞ、これ。

1巻感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 4   

天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)

【ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン】 宇野朴人/さんば挿 電撃文庫

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のちに名将と呼ばれる少年──。
その半生を描く壮大な架空戦記


 隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている、一人の少年がいた。彼の名はイクタ。
 戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。
 戦乱渦巻く世界を、卓越した才で生き抜くイクタ。その波瀾万丈の半生を描く、壮大なファンタジー戦記、いよいよ開幕!
凄いの来たぞ、これ。
いかな電撃文庫とは言え、ここまでガチな戦記ものは早々見当たらないはず。一応これ、ファンタジー戦記にはなってますけれど、読んだ感触からして戦術論がなんちゃって架空戦記のレベルじゃないんですよね。まだ本格的な戦闘は行われておらず、メインは模擬戦闘なんですがこれが凄い正道に則ってるんですよ。
この戦闘シーンで敵を手玉に取るイクタの作戦は、一件破天荒で奇想天外に見えますけれど、その作戦内容を詳らかに解体していくと、いっそ質実剛健と言っていいほど戦術論の基本原則に則っている。勿論、作戦目標を達成するためのひとつひとつの手段には柔軟な発想と自由かつ大胆な応用力が活用されているのですけれど、大元の部分を見るといっそ教科書的と言っていいくらい。決してこれ、奇策や常道から外れた戦術じゃないんですよ。この主人公のイクタの口癖が「それは科学的じゃないね」なのですが、まさに合理主義の権化みたいな、思いつきの行き当たりばったりじゃなく体系化された戦闘教義なのです。
ライトノベルの戦記モノでは、それこそ知将謀将名軍師に辣腕参謀、と知略戦に長けていると標榜したキャラがたくさん出てきますけれど、それらって大概、敵の心理を読み取った上での作戦指揮が大半で、実の所合理的な原則論に基づく教科書―教範に記されているような基本的な作戦立案、部隊指揮、部隊運用などについてはなあなあで済ましたり、蔑ろにされがちなんですよね。
その点、このイクタは土台からして違いすぎる。こいつ、マジでガチです。というか、作品自体が戦闘描写からしてこれファンタジー戦記よりも相当にミリタリー戦記色が強烈なのを鑑みると、作者さん本物の戦闘教範とか近代以降の軍事学書を結構読み込んだ上で書いているとしか思えないんですよね。
「一般方向」なんて軍事用語がさらっと出てくるとか、おかしいもん。
それ以外にも、戦術論のみならず、部隊運用や指揮官の心構えや思考の置き方、方向性なんかが近代以降の軍隊のそれ、なんですよ。
参ったね、今時ここまでガチでやってるのって【榊版ガンパレ】か神野オキナさんの【疾走れ、撃て】くらいなんじゃないだろうか。これらが現代を舞台にしたミリタリーものだというのを鑑みれば、ファンタジー戦記でこれだけミリタリー色濃く書いているのはそれこそあの【皇国の守護者】くらいしか思いつかない。
驚かされたのが、同じ作者が書いてた最初のシリーズ【神と奴隷の誕生構文】は、同じファンタジーにSF色も交えた戦記モノだったんですけれど、決してこんな「ガチ」の戦記ものじゃなくて、むしろ雰囲気任せのそれだったんですよね。あれはあれで面白かったし、続きが出ないのは残念なんですが……いや、化けた化けた。
考えてみると、このイタクという主人公、ゼークト将軍が語ったとされる有名な組織論「有能な怠け者は前線指揮官に」というそれにピッタリ当てはまる。それこそ、彼自身が楽をして怠ける為の努力を怠らない、と公言するまんまなキャラだ。実際、彼は怠け者ではあっても無気力な人間とは程遠い熱量を秘めている。必要なことを最低限必要なだけして後は何もしない、誰かにせっつかれないと動かない、という人じゃないんですよね。思いの外、ちょこまかと動いているし、いざとなると激情を抑えない。口上上手の演説好き。得意分野に関しては他人に語って論じることを好み、有象無象を煽り立てる扇動家の資質も多分に有している、という点を考えみても、有能な怠け者ではとみに有名な【銀河英雄伝説】のヤン・ウェンリー提督などと言った類型からは随分と外れている。
面白い、実に面白い。

そんな彼を取り巻く仲間たちも、また実に興味深いキャラクターが揃っている。士官候補生として試験を受けに行く途中に、皇女とともに遭難したのをきっかけに、五人の男女が「騎士団」として一生ものの絆を手に入れるのだけれど……それぞれが個性的であると同時に立ち位置が面白いんだよなあ。今は任官前の准士官ということで、学生気分の友達感覚なんだけれど、これが小隊ながらそれぞれに部隊を率いている場面に至ると、ちょっと印象変わるんですよね。いや、変わらないながら変わった、というべきか。なんて言うんだろう、多分この五人、時間を経ずにどんどん立場があがっていき、それぞれに大きな責任を負う立場、軍の司令官クラスになっていくと思うんだけれど、五人の距離感は変わらない気がするのです。いい話、というだけの事じゃなくて、一軍を率いる将軍クラス同士が身内感覚で繋がっているのって、いざって時の柔軟性がパない事になるんですよね。模擬戦でそれぞれ部隊を率いて動いているのを見た時、これが大隊、連隊、師団級の規模の軍勢を率いるようになったらどうなるんだろう、と想像してなんか毛穴が広がるような気持ちにさせられました。
尤も、イクタにはそんな絆を根こそぎ食いつぶすような裏切りの芽が植えられてしまったのですが。

正直言って、あれは無茶振りにも程があるw 
戦争なんてものは、勝ってなんぼです。負ければ、百年二百年の禍根が残る。負けて良かった、なんてことはまずあり得ない。勝って地獄、負けてより酷い地獄が戦争です。結果的に良に転じた部分があったとしても、差し引きで考えればとんでもないマイナスが絶対何処かで唸っている。
なればこそ、イクタに託された舵取りが、どれだけ難易度が高いシロモノか。許容される成功ラインが毛先ほどしかありゃしない。そもそも、事前に予測しなきゃいけない着地地点が正しいものかも、降りてみないとわからないときた。事前の想定なんて、どれだけ緻密な諸元を入力して計算したとしてもあてになるもんじゃないんだから。何よりこいつ、まだ任官したての実戦もまだ経ていないぺーぺー士官なんですよ? 無茶振りにも程がある!
だからこそ、こいつは史上最高の、勝つよりも難しい決着を求められた英雄になるわけだ。ここまで高い要求をされた主人公は、なかなかお目にかかれない。まったく、どこが怠け者だよ。その道は、全然「楽」なんかじゃないんだぜ?

そんな彼のパートナーというべき存在が、ヤトリという軍人少女なのですが……このヒロインも面白いよなあ。特に、イクタとの関係がまったくもって不可解で面白い。いったい、この二人どういう関係なんだろう。とてもじゃないけれど、ヒトコトじゃ言い表せない関係なんですよね。凄く以心伝心に心の内から通じていて、お互いにお互いのことを深く信頼し、信用し切っているにも関わらず、同時にドライで割り切った関係にも見える。同志であり共犯者であり姉弟のようであり素っ気ない他人同士のようであり。ただ少なくとも、一緒にいて反発したり意趣を抱いたり、ということだけは今のところ一切ないようなのです。傍にいることを、受け入れ切っている。自分を押し付けるようなこともない。ベタベタするようなことはまるで無いんだけれど、凄く信頼しあっていることだけは確信できる。
それは、彼女がむしろ女性的な感情から遠い、鋼と清流と誇りで構成された軍人の鏡みたいな人間であるという理由も多分にあるんだろうけれど……うん、もし男女の関係に発展するにしても彼女の恋愛感情というのはきっと涼風の如し、なんだろうなあ。あー、この人、好きだわ。すごい好き。かっこ良くて気持ちのいい女性って、大好き。

さあ、さあ、さあ。まさにまだ始まったばかり。シリーズは「起」の部分が立ち上がったばかり。ならばこそ、この時点での期待値の膨らみようといったら、稀に見る勢いだ。もう、楽しみで仕方ない。ワクワクが止まらない。
文字通りの期待の新シリーズ、ここからどれだけ飛躍してくれるか、想像するだけで血が滾りそうです、わはーー♪

宇野朴人作品感想

スメラギガタリ 弐.外道陰陽篇4   

スメラギガタリ〈2〉外道陰陽篇 (メディアワークス文庫)

【スメラギガタリ 弐.外道陰陽篇】 宇野朴人/きくらげ メディアワークス文庫

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 反乱の首謀者として陰陽寮に身柄を拘束され、裁きを待つ身となった在野の陰陽師・芦屋道代。だが、思いもよらぬ発言で仮釈放の特別措置を引き出す。三枝介や幾多郎、さらには陰陽寮からの監視役を伴って彼女が向かった先は、自らの故郷である芦屋道満に縁の地。一方、そんな道代の後を追って帝都を出奔した夜統は、旅先で雨宮潤という霊媒の少女と出会い、平安の世に名を馳せた二人の大陰陽師へと繋がる雨宮家の宿業に踏み込んでいく。だが、その夜統の後を追って澄香内親王殿下までが皇居を抜け出したことで、多忙な晴見の心労は続々と重なり……。疾風怒濤の第二幕、開演!
この作品のタイトル、【スメラギガタリ】って単純に一巻で新皇平将門公が出ていたことから付けただけで特に深い意味など無いように捉えていたのだけれど、参ったなあ、そういう事だったのか。つまり第一巻から実は一切ブレることなく「皇を語る」物語として成立してたのだな。平将門の存在は地味にミスリードを誘っていたとも言えるな、これは。
とまあ、物語としては重要な転機を迎える第二巻なのだけれど、本編の方は古の平安の世に安倍晴明と芦屋道満の残した因果にまつわる昔話と、そのツケを両血統の末裔たる土御門晴海と芦屋道代が協力して払うことになる現代編が主題として描かれる事になる。
それはいいとして、この世界、ちょっと霊障が多すぎないか!? 水神奉納の儀を無理やり滞らしていた為に土地が不安定になっていた、という理由もあるんだろうけれど、毎日雨宮の娘さんが集落を走りまわって何軒も霊障を解いて回らないといけないって、ちょっとしたパンデミックだぞ。しかも、未熟な彼女でも何とか対処出来る案件ばかりでそれなのだから、相応に深刻な案件も含めると一体どういう状況になっているのか。
これが普通の日常レベルだというのなら、この世界ちょっと怖い。
こんな規模で霊障が発生しているにも関わらず、陰陽寮以外の在野の術師に術の使用が制限されているとなると、そりゃあ反乱も起こりますわ。完全に一般市民の生活を脅かすレベルの話になっている。下手すりゃ国ごと根の国底の国へと堕ちるぞ。
その意味でも、現在の陰陽寮の頭が晴見となり、権威主義に凝り固まった保守派の妨害を払いつつシステムの改革を成そうとし、個人的な感情は別としても在野の術師の中でも大きな影響力を誇る芦屋道代と協力体制を取る方向へと舵取り出来たのは大きい。晴見姉ちゃんは、術師としても人間としても道代に敬意を抱きつつも、女として道代のこと大嫌いっぽいけどなあ(苦笑 てっきり二人の気性からして意気投合するかと思ってたんだが。
ただ道代さんの方は全然女っぽくないんですよね。気質からして女性的な部分が非常に少ない。母性よりも父性の持ち主っぽいし、そもそもお姉さんというより殆ど頼れる兄貴じゃないか、この人。ひたすら性根が男前だし。果たして、ご先祖である道満さんよりも男前じゃね? 道満さんは生真面目な分、どうも一生懸命になりすぎて余裕がなさそうでしたし。そう言えば、道満さん、芦屋という一族を残している以上ちゃんと妻帯して子供ももうけたのだろうけれど、やっぱりお相手はあの人なんだろうか。そうとしか思えないのだけれど、その辺明言してくれなかったからなあ。気になるといえば気になる。
さて、陰陽師と言えばこの人、とも言うべき大陰陽師安倍晴明がこの物語にも登場してきたのですが、またぞろ凄い人だったなあ。ただ、浮世離れしている割に俗っぽいところもあって、妙な愛嬌があるんですよね。何となくこの人が怖がられると同時に、何だかんだと好かれていたような気がする。道満が晴明の所業に苦笑と呆れを交えながらも最後まで敬愛の念を抱き続けたように。実際この人って、史実でも相当にやんちゃっぽいんだよなあ。まあ、恩恵に預かること未来までそれこそ大量にあるのだけれど、それと同じくらい未来にまで大迷惑を残してくれちゃっているので、善悪の彼岸を越えているにしろ、とにかく困った人であるのは確かだな、うん。

と、在野と陰陽寮との軋轢も晴見と道代のお陰で何とかまとまる筋もみえてきたはずだったのに、此処に来てさらなる大混乱の元となる要素が、唐突に出てきたわけで。いったいなんでこうなった!?
振り返ってみると、彼は以前からずっとこの件について悩んでいた、ということなんだろうか。澄香殿下を澄ちゃんと愛称で呼ばないようにしていたのにも一定の理由があったのかもな。
しかし、その悩んだ末の結論がどうしてこう言うことになっているのか、彼の目論見も含めてまだ全然わからないだけに混乱ばかりが増しましていくのだけれど、まさか現在の体制を根こそぎひっくり返してやろうなんて事を考えているわけでもないだろうし、それとも朝霧の巫女よろしくあの御大が彼の心根を乗っ取っている訳でも、前後のやり取りを見ていると違うようだし、まったくどうなるんだ、これ。道代さんも、ここで晴見との共闘を崩してまでそちら側に付くとも思えないしなあ。
なにはともあれ次巻だ。次巻を早く。

1巻感想

スメラギガタリ 新皇復活篇4   

スメラギガタリ―新皇復活篇 (メディアワークス文庫)

【スメラギガタリ 新皇復活篇】 宇野朴人/きくらげ メディアワークス文庫

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 1984年、帝都東京。若くも卓越した陰陽師として働く女性・土御門晴見は、ある日、かねてより陰陽寮による日本の呪的業界の一元的支配に不満を募らせていた在野の術士・芦屋道代から呪力蜂起の宣言を受ける。誘拐を予告された皇族の姫君・澄香内親王殿下を守るため、古くより皇室に仕える退魔の一族の末裔・殿克夜らと共に事態へ備える晴見らだったが、相手の思惑は彼女らの想像を超えたところにあった。
 一方、姫君の身代わりに攫われた華族の少年・継実夜統は、道代らと行動を共にしながら、帝都の裏側に隠された歴史の闇を知り……。壮大なる伝奇譚、ここに語りの口を切る。
これはこれは……何やら皆さん思うところは一緒のようで、なんでこれ電撃文庫の方で出さなかったの?(苦笑
見方によっては、同じ宇野さんの作品である【神と奴隷の誕生構文】よりもライトノベル色が強いように思うんだけどなあ。同じ現代陰陽師モノには富士見ファンタジア文庫はあざの耕平さんの【東京レイヴンズ】があるけれど、あの作品が呪術が色濃く社会に反映された世界観ながらも、「平成」という時代色が背景に建て込まれているのに対して、こちらは同じ現代ながら関東大震災や第二次世界大戦における東京空襲が回避されて、東京という都市や日本人の生活スタイルや文化模様が洋に染まりきらず和洋折衷の独特の雰囲気が醸し出されている。ちょうど、大正時代がそのまま映り込んできたかのような。関東大震災で倒壊したあの有名な凌雲閣が今も尚浅草の名物として賑わっている様子が描かれているのなんて、ちょっとした感動ものですよ。改装に改装を重ねて、だいぶ趣は変わっているようですが、あの凌雲閣が今もあるなんてロマンだなあ。
そんな、ハイカラとかモダンという言葉が似合う帝都を舞台に繰り広げられる陰陽合戦。メディアワークス文庫なので、陰陽道にしてももっと理屈っぽい学術的な意味での運用がなされるのかと思ったら、それこそ【東京レイブンズ】や【陰陽の京】ばりにど派手な術が飛び交い、式神が召喚されるバトルでありました。キャラクターからして、皇族のお姫様が女子高生ですよ。「〜〜じゃっ♪」という喋り方ですし。そこに、春見に殿克夜、継実夜統が加わって、「幼馴染」四人組ですよ。重ね重ね、なんで電撃で出さなかったのか、と。
在野の術師と陰陽寮の術師との対立という構図はいわば定番とも言うべきものなのですが、こちらの芦屋道代さんはもう一人の主人公とも言うべき一本スジの通った好人物で、彼女に協力する仲間たちも憎めない愛嬌の持ち主で、権力側に派手に喧嘩を売りつける姿は痛快の一言。それでいて、関係ない一般人はもとより敵である陰陽寮に対しても極力被害を出すまいとする姿勢は清廉で、その真の目的も重なって非常に清々しい人たちでした。
それでも、改革派とは言え晴見たちは権力の中枢に居る以上、道代たちを取り締まらなきゃならない訳で、晴見たちの方も快刀乱麻を断つようなイイ人たちだっただけに、両者の対立というのは見ていてもどかしいものがあったんですよね。
だから、二度に渡る直接対決の末に晴見たちが下した決断は、驚きであると同時にいやはや権力側の人間として大したものだと、その判断には感心させられました。幾ら改革派とは言え、なかなかそこまで割り切れないですよ。
新皇こと平将門については、随分と好漢として描かれてましたね。元々、国内屈指の大怨霊でありながら、その人物像については悪し様に言われない方ですが、それにしても憑依先の少年の鬱屈まで気にかけるような良い人っぷりを見せられるとなあ、照れる(笑

さて、肝心の夜統の抱え込む鬱屈の真相については結局語られなかったのには拍子抜けさせられてしまった。かろうじて、将門が垣間見た記憶によって断片くらいは見えたものの、結局一切語られぬまま、でしたもんね。ある意味キャラクターの顔見せ的な面もあった本作では触れず、次回以降で本格的にキャラを掘り下げると同時に扱う予定なのか。彼については澄香殿下が御執心なので、彼女が深く絡む形でないとまとまる話もまとまらないのでしょうし。この二人が仲睦まじく手を繋いでいる様子など、見ていて微笑ましいカップルだったので、出来れば次回はこちらをじっくり描いて欲しいなあ。道代姉さんは再登場希望。この人、晴見姉と絶対意気投合するタイプでしょw

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 34   

神と奴隷の誕生構文III (電撃文庫)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 3】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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一大スペクタクルで贈る、次世代ハイ・ファンタジー第三弾!

 発展世界による侵略から後発世界を守るため、大陸統一を進めるロケィラ女皇・セレィ。オルワナ・アヌビシアとの三国同盟に成功し、盟主を務める彼女の次なる舞台は、同じ有角種のヘィロンが支配する中陸地域の大平原へとうつる。
 中平原の覇者であるヘィロンと、東方を支配下においたセレィ。有角種同士の威信と覇権を賭けた戦いが始まる……!
 同時期。発展世界の尖兵“神狩り部隊”が再び動き出す。若き導神・クルァシン不在の中、その防衛はアヌビシアの少女・サーリャの手に委ねられ……緊迫の第三弾登場!
これまで異種族との対話と融和がセレィ女皇にとっての試練だったわけだが、今度の相手は同じ有角種。しかも、現状中平原を征服して、長爪種と牙種を支配下に収めている一国となる。融和をもって大陸を統一し発展界の侵攻に抵抗しようとするセレィに対して、ヘィロンは同じ種族ということで友好的に振る舞いながらも、セレィに融和と違う大陸統一の手段を示すこととなる。それこそ、武力による征服。
ここでセレィは、なぜ征服ではなく融和をもって大陸を統一させなければならないか、という命題をクラゥシンからの教えや導きに手を引かれた結果でも、健全な良識や人としての良心に基づくものでもなく、皇として、エナ・ガゼを発展界からの侵攻から守る者として、融和による統一が征服による統一よりも発展界に対抗する際に有効である事を、具体的に証明しなければならなくなるわけだが、これはヘィロンたち中原の有角種に証明する、という以上にセレィがクラゥシンからの借り物の思想ではなく、自分で考え自分で実感し体感し、導き出した答えとして、民族の融和と統一というこれまでの目的を彼女自身のものとする意味があったと思われる。
丁度、クラゥシンが別行動になって一連のヘィロンとの交渉と対決はすべて残されたセレィと、サーニャたちによって為されるわけだけれど、ここで彼女たちは自分たちがもう導神に手をひかれるだけの存在でなく、自立した彼と対等の、発展界と戦うための同志であることを証明してくれるんですよね。
中原の覇者たるヘィロンたちに対抗するため、有角、有翼、盲、長爪、牙という異種族の力と想いを結集して立ち向かうセレィたち。これは面白かったなあ。
クラゥシンと掛け合いをしているセレィたちも好きなんですが、今回彼が居ないことでむしろセレィたちは輝いていたような気がします。特にサーリャなんか、セレィの軍師的な立場になり八面六臂の大活躍。セレィの異母妹であるコリォの活躍も含めて、三人の少女たちの絆が姉妹以上に深まっていくんですよね。セレィは今回、統一王としての威風を見事に確立しました。同時に、妹や友を愛する姉としても、カリスマ性を大きく発揮して、これまで以上に敬愛と忠誠を獲得したんではないでしょうか。サーリャなんか、これまでクラゥシンに傾倒していたのが、セレィ個人に随分と魅せられ惹かれていたような気がします。勿論、その前にサーリャが献身的に自分の心身を削ってセレィの為に奮迅したからこそ、セレィが先にサーリャにメロメロになった、という流れがあったんですが。なんか終わってみればこの三人娘、お互いに好き好きだろう、というくらいに仲良くなったなあ。良かった良かった。
その頃、クラゥシンさんといえば、メリェを連れて今度は長爪種と牙種の娘さんに粉掛けてました。いや、別にそういう意味じゃないんですが、なんて女の子ばっかりなんだ、という疑問はあるぞw

1巻 2巻感想

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 23   

神と奴隷の誕生構文 2 (電撃文庫 う 4-2)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 2】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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若き神が、その身を賭して世界を駆ける。気鋭のハイファンタジー第二弾!

 発展界による歪な歴史干渉。
 その脅威から後発世界を救うため、地上に舞い降りた一人の若き神クルァシン。
 敵対する最悪の暴神オルデンダラィムを退け、無事オルワナとの会戦に勝利したクルァシンは、ロケィラの皇女・セレィと共に、隣国アヌビシアと同盟を結ぼうと考える。彼女は近い未来、この世界を統一し、いがみ合う大陸全土に平穏をもたらすはずの、選ばれし少女だった。
 しかし、アヌビシアとの交渉が始まった矢先。若き神を狙って、“神狩り部隊”最強の男が別次元から襲来した。
その国産みの成り立ちから、他国、他民族への不信が根底にあるアヌビシア。深く暗い森の底で、視力を無くしその際立った聴力でもって不可侵を司る盲民族たちの鎖国国家。長年血で血を洗う戦争を繰り返してきた有角種と翼の民を纏め上げたセレィだが、ある意味発展界による分かりやすい侵略行為を利用しての和平だったこともあり、彼女がこののち大陸を統一するための力を持っているのかの真価が問われる最初のハードルがこのアヌビシアだ。武力を背景としながらも、それはあくまで交渉の場を成立させるためのカードとして。ただ力で相手を屈服させるのは征服に過ぎない以上、ここで彼女は他国を信じない民族に対して、武威ではなく志と利潤を以て信頼を得て、同胞として彼らを迎えなければならないという試練を得ることになる。
実のところ、ここからなんですよね。セレィが本当に王としての資質を示し始め、クルァシンと対等の同志として立ち始めるのは。一巻では打ち解け心許しあい認め合いながらも、まだセレィはクルァシンに一方的に教えを受け、導かれる立場だったのですが、むしろ此処では文化の衝突など未知の概念をクルァシンから学びながらも、多くを知るが故に立ち止まり迷いがちになるクルァシンを、セレィが逆に叱咤し、彼の迷いを晴らし、勇気を与える存在になっていくのです。導きの神と自称するクルァシンですが、果たして彼はそれを自分が導く者であるという自負から称しているのではないような気がしてきました。意識してか無意識か、彼は自分がこの地の民を導くと同時に、自分を導いてくれる存在を求めているのかもしれません。それこそ、果てのない贖罪の旅路を終わらせてくれる答えへと導いてくれる者たちを。答えをくれる人々を。
彼の懇願にも似た願いに、セレィは応え得るだけの存在へと成長してくれそうな手応えを、ここでようやく感じました。そして、新たに登場した盲民族にて天才と謳われるサーリャ。まだ見ぬ世界に恋焦がれ、世界の美しさを信じている彼女もまた、クルァシンの因業の旅路に光を与えてくれる存在になり得そうです。メリェは逆に距離感が近すぎて、彼女に取っての世界がクルァシンそのもの、となりそうなくらいだから、支えになっても導きとなるかは微妙なんでねえ。セレィ一人にクルァシンの闇を導く役割を担わせるのはちと酷な所があると思っていたので、サーリャの存在はクルァシンにとっても、セレィにとっても思っている以上に大きくなるのかも。
他者と交わることは、ある意味その純粋性を失わせ、侵略と同じように決定的に相手の存在を失わせしめてしまうものなのかもしれない。あるいは、自分が行なっている事は結局発展界の行う植民侵略と変わらないのではないか、という深刻な疑問に因われるクルァシン。しかし、他者と交わらないということは閉塞であり停滞であり衰退へと繋がるものである。特に、世界は閉じたままでは息苦しいばかり。交流によって生まれる変化は必然であり、健全な発展になるか一方的な搾取になるかは結局当事者たちの心づもり次第。
悪意だけじゃなく好意や善意が原点であっても、容易に交わりは相手を摩滅させることにつながりかねない以上、話はそう簡単じゃないのでしょうけどね。でも、セレィが語るように、サーリャが望んだように、世界の美しさとは止まって変化しないから生まれるのではなく、常に対流し、新しきを生み出すことによって発現するものなのでしょう。それを忘れない限り、セレィたちは上手くやれるはず。一度すべてを失ったクルァシンは、ここで再び得難い良き同志に出会う事が出来たんだなあ、とちと感慨深くなってしまった。

1巻感想

神と奴隷の誕生構文(シンタックス)3   

神と奴隷の誕生構文(シンタックス) (電撃文庫)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス)】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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 翼をもつ民からの侵略を受ける有角種。君主セレィのもと、奮戦するも既に戦局は深刻化の様相を呈し、有角種は滅亡寸前の状況であった。
 しかし一人の若者が戦場に舞い降りる。自らのことを『若き神』と称する彼が、ここにやってきた目的はただ一つ。翼の民に加担し、異世界より来る『歴史を改変する者』を打ち滅ぼすためだった。
 世界を自らの理によって律しようとする強大な勢力に、一人で立ち向かおうとする『若き神』。その双眸には秘めたる決意が映っていた。
 神と奴隷の誕生秘話に迫る、期待のハイ・ファンタジー、いよいよ開幕!

SFファンタジー戦記とは良く言ったもので、これは凄いなあ。ある程度ジャンルの違う世界観は一緒の所に閉じ込めても上手く混ざらないものだけれど、この作品は実に絶妙な配合で同一線上に攪拌されている。なるほど、ファンタジーの世界の上位にある神話世界を、SFの世界観と=で繋げているから上手く合致するのか。
ギュウギュウに盛り込まれた設定群の大津波にも圧倒されたけれど、それ以上に主人公である若き神「導神クラァシン」こと奄倉信の寄って立つ背景の事情が凄まじいを通り越して凄絶である。彼の背負うものの悲惨さは、これヘヴィとかハードとか言ってられないよなあ。ある意味、彼についてはもう既に終わってしまっているとすら言っても過言ではないはずだ。彼個人はもう救われることはないだろうし、幸福な結末なんてあり得ない。彼と共に歩いてくれる人は死者以外に存在せず、彼が愛し彼を愛した人々は本人が望むと望まざると彼を苛む呪いとなり、彼を縛る鎖となり、彼を否定する在り方として寄り添うしかなくなっている。結局彼のやっていること、やろうとしていることは彼が生前にできなかった事をやり直しているに過ぎず、自分と同じ惨劇を他所で繰り返させないための足掻きであり、それは彼個人を救うものではないんですよね。それ以上に、彼がやっていることは対処療法に過ぎず、元凶を揺るがすものではない以上、ひとつの世界を守りきったとしてもその次の世界に旅立ち、永遠と終わることのない防衛戦を続けなければならない無限地獄だ。そして、戦いを続ければ続けるほど彼の神としての在り方は負債を相乗に負わせ続け、彼の苦しみは増して行く。
そこに、救われる余地など何処にもない。
これだけの業と罪と呪いを主人公に背負わせて、これ、どうやって決着を付けるつもりなんだろう。
もし彼が救われる可能性があるとすれば、それこそ発展界が他の界に侵攻する根本原因である、人間存在に対する絶望と諦めを根底からひっくり返すようなナニカがなければ始まらないわけだが、それを遥かに文明の遅れた植民界のセレィたちが示せるのだろうか。それでなくとも、クラァシンの神の罪の痛みを、彼女らは癒せるのだろうか。何れにしても、非常にハードルが高い前提条件である。
 
12月6日

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