宝石吐きのおんなのこ 〜ちいさな宝石店のすこし不思議な日常〜 (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)

【宝石吐きのおんなのこ 〜ちいさな宝石店のすこし不思議な日常〜】 なみあと/景 ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ

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大陸東部の穏やかな街、リアフィアット市。
そんな街の片隅に、店員二名の小さな宝石店があった。――『スプートニク宝石店(ジュエリー・スプートニク)』。

従業員のクリューは、どこか言動の幼い、よく笑いよく怒る、栗色の髪の女の子。
一方、店主のスプートニクは、嫌みっぽく口の悪い、そのくせ外見だけは無駄に良い意地悪な青年。
そんなふたりが営む宝石店では、今日も穏やかに、賑やかに時間が過ぎていく。
しかし、クリューにはある不思議な体質があった…――「宝石を吐きだす」体質。それはふたりだけの秘密。

この体質のせいなのか、ふたりの日常は、ゴロツキやら警察局や魔法少女やら魔女協会やら…
なんだか不思議な出来事に巻き込まれていく…。

宝石に愛された少女の、甘くて淡い、ファンタジーノベル開演。
クリューってまだまだ小さい就業年齢に達していないような女の子なんだけれど、立派に女の業を抱え込んでるなあ。恋する女の子、というとちょっと印象違うんですよね。そういう甘やかで淡い夢を見てるような青春期の恋心に胸を弾ませているのとは違って、わりともっと切実に愛情を欲している、というような……。精神的にまだ幼いのだけれど、スプートニクに対しての想いは「情念」に近いものがある気がするんですよね。独占欲、嫉妬心、幼気な言動の端々からにじみ出て見え隠れするのは、立派に大人の女の情念なのである。つまるところ、面倒くさい。まだ幼い子供ならではの振る舞いであるから、そこまでドロドロしたものには見えないし、何よりスプートニクが子供扱いして適当にあしらっているから顕在化してないけれど、あまり子供子供、或いは女の子としてクリューを見ていると痛い目あいそうである。そもそも、宝石を吐く、なんて特異体質の持ち主としてかなり壮絶な人生を歩んできた娘である。決して心は成熟しているわけではないけれど、地獄の中で生きてきた経験というのはそうそう浮ついた子供のままで居られる経験ではないだろう。
ましてや、その地獄から救い出してくれた当人が、スプートニクなら尚更だ。甘い砂糖菓子のような恋ではない、彼女なりに必死なのだ。
それを、さてスプートニク氏はちゃんと理解しているのか。
意外なことに、スプートニク氏の方も尋常でない深度の情愛をクリューという少女に捧げている。普段の言動からして胡散臭いチンピラで家庭、というかクリューのことも対して顧みない粗野で女好きの無神経な輩なのかと思いきや、話が進んでいくに連れて彼の考え方や判断基準、何より一番重要視し大切に思い、比較対象など存在しないくらいに彼の人生の中心に置かれているのが、あのクリューという少女なんですよね。場合によっては、彼自身の命も夢も将来も未来も引き換えにして後悔を覚える様子もないほどに、彼女を大事にしている。
まあ、この二人、どうもお互い、相手が自分をどう思っているかについては、致命的なくらいに関知していないようで、見事にすれ違っているようなのだけれど。
ともかく、クリューの方はわかるんですよ。きっかけとして、スプートニクに救われた経緯は彼に傾倒するに十分なスタートである。けれど、スプートニク氏の方はさてどうしてここまでクリューにのめり込んでいるのか。
ぶっちゃけ、恋愛対象の異性としてはまだちと幼すぎるきらいがあるんですよね。スプートニクはとてもロリコンの類には見えないし、彼のクリューへの情愛はさて恋愛感情をあまり感じさせないものですし。あまりにも大切にしすぎていて、女としてはまだ見れてないんじゃないかなあ。
二人の馴れ初め、については早々に語られるのだけど、やはりスプートニクがどうしてこれほどの思いをクリューに抱くようになったのか、についてはまだ謎なのである。
彼の夢であった自分の店を持つこと、をクリューのおかげで叶えられたのは見逃せない要素だろうけれど、必要であればその夢を、夢の結晶もろとも捨て去ることになんの躊躇もなかった彼の人生における転換点はどこだったのか。今後語られるなら注目して覗きたい部分である。

とまあそんな二人の生活だけれど、街に店を構えてお客さん相手に宝石の商談をする毎日……とはいかず、けっこうな波乱万丈なのである。それも、宝石を吐く、というクリューの余人に知られるとまず間違いなくトラブルを引き込んでしまう体質が問題なのだけれど、単に欲張った悪人が手出ししてくる、というところに留まらない特異体質なんですよね、これ。魔法少女、とかわけのわからないのが絡んでくるし。魔法少女ナギたんって。ふざけてるのか何なのか、なんとも生ぬるい目で見てたら正体がまた……。
スプートニクさんは一発殴っても許されると思う、いや何となく。