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富士見L文庫

土地神様のわすれもん ★★★☆  

土地神様のわすれもん (富士見L文庫)

【土地神様のわすれもん】 新井輝/あおいれびん 富士見L文庫

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「わすれもん」―とある地方の方言で、忘れられた存在を指す。世間から「わすれもん」扱いの作家・真金井光。彼が庭先の祠を掃除していると、中に置かれた猫の人形が動き、突然喋り出した。自分も「わすれもん」となった土地神だという猫は、同じような存在を助けようと光に持ちかける。「きっと普段得難い経験が出来る。作家の君にとってうぃんうぃんだろう?」肉球とガッチリ?握手で約束を交わす光だが、実は彼にも忘れている過去があって―。2人一緒なら百人力のコンビが皆のために駆け巡る友情物語。
あいやあ、作家なんて十年程度音沙汰なくたって忘れられたりしませんて、と思うのは自分だけだろうか。そも、新井さん前作2015年だからまだ三年しか経ってないよ。それでもしばらく音沙汰なかったのは間違いないので、お久しぶり。
本作と共に富士見ファンタジアの方でも新作を出しているので、これは一時的にでも作家活動を再開されたということでしょうか。だったら嬉しい。
しかして本作の主人公、あらすじでは頑なに光というペンネームで押し通しているけれど、何気に作中では殆ど光とは呼ばれなくて、本名の方で呼ばれっぱなしだ、この人。おーい、志男。
本名、苗字と合わせてこれだと確かに抵抗がある。
さて、この作者の描く主人公はある種の欠落を抱えた人間が多いのだけれど、彼の場合失われていたのは一部の記憶であって、人間性や情動の類が欠けているわけではないからか、かなり普通の人間である……のかなあ?
小説をまったく書けなくなってから、取材と称して色んな方面にチャレンジしているのですけれど、その尽くを免許皆伝レベルまであっさりと習得してしまってるあたり、この人って全方位に向けての天才っぽい。書けない小説も、最初に受賞したときはなんとなく書いたものがバカ当たりしてしまっているところや、土地神と遊ぶようになって書いた短編とかすごい受けているのを見ると、小説家としても天才、というのもあながち自称ではなさそうだし。
土地神さまに促されたとはいえ、特に抵抗もなく人様のお宅に訪問して、おたく祟られてますよ、みたいなことを臆面もなくのたまってしまうところとか、考えてみると全然普通の人じゃないのかもしれない。だいたい、それ普通なら通報されてもおかしくないですからね?
ところが、地元では彼の実家、鈴木家というのは妙な権威があり、神様に代々お仕えしている家、ということで少々不思議なことを言い出しても……神様がそう言ってるんですよ、とか言ってくるの少々レベルじゃない気もするのだけれど、鈴木さんところの人が言うんだから本当なんだ、とさらりと信じてもらえるのってちょっとこの地元の人達大丈夫ですか?と若干心配になるレベルで信用があるようで。
狸のお母さんから頼まれて子狸探しに来ました、という話まで子狸飼ってた一般家庭の家の人がそうですかー、と信じてしまった、むしろ正直に話してしまう主人公が大丈夫か、というところなんだけれど、それでも信じてもらえてしまうのは別に主人公の人徳でも何でもありません。鈴木家、この地方では何者だったんだ、ほんとに。
考えてみれば、旧家に引っ越してきて突然土地神と名乗る怪しい猫に話しかけられて、若干パニックになりながらもすぐにツッコミ入れながら対等に丁々発止しているあたりからして、この小説家先生も全然普通じゃないよね。ってか、相手神様と思って無くてこれ普通にしゃべる猫としか思ってないよね。
ともあれ、神様にせっつかれながら色々と案件をこなしていくのだけれど、様々なスキルを有しているとは言え、ぐだぐだと書けない小説を書こうとして十年粘っているような煮詰まった男である。颯爽と問題を解決、なんてスマートなことが出来るはずもなく、かなり行き当たりばったりでぐだぐだにアタックしていくのだが、兎にも角にも介入するということが場の空気を入れ替えることにもなるのだろう、きっかけにもなるのだろう。なんとなくまあ丸く収まっていくあたり、なにごともやってみるもんだ、というより解決の意思を持ち込むことが大事なのかも知れない。うまくいかなくても、とりあえずでもなんとかしようという意思が介在することで、問題になってる相手方の方でなんとはなく収拾つけてくれるみたいなところもあるものですから。
とまあ、そんな感じでまったく締まらない猫と書けない小説家のコンビの相応にのんびりした日常を堪能するところでありました。

新井輝作品感想

浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 四 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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浅草の今を生きる茨木真紀は、かつて鬼の姫“茨木童子”だった記憶を持つ女子高生。彼女と同じく元大妖怪の天酒馨や継見由理彦を巻き込んで、今世も悩めるあやかしのため、賑やかに駆け回る。修学旅行先の京都で、真紀は前世にまつわる嘘を明かし、すれ違っていた馨と向き合った。そして今度は約束していた江ノ島デートへ!ところがその頃浅草では、由理彦の妹の若葉が、見えないはずのあやかしと出会っていて…。冬の浅草を襲う異変に、また一つ暴かれる嘘。「最強の鬼嫁」夫婦と、友との絆が試される―!

由理の嘘って、先だっての真紀ちゃんの抱えていた嘘に比べたら別にバレても問題にはならないんじゃ、と前巻でその一端が明らかになったときには思ったものでしたが……。
大問題だった!!
そうかー、真紀ちゃんや馨にバレたところでそんな拗れることはない、というのは間違いじゃなかったのだけれど、清明が指摘してきた嘘の代償って結局自分にこそ返ってくることになるんだよなあ。
てっきり、真紀ちゃんや馨の転生に合わせて由理は継見由理彦になったのだ、と思ってたんだけれど、話を聞く限りでは完全に偶然じゃないですか。正しく運命的だったのか。
そしてそれは同時に、由理が決して真紀ちゃんたちに合わせて今の人生を歩んだわけじゃなくて、彼自身の望みのために人として生きていたわけだ。たとえ、それが嘘によって成り立っていたものだったとしても、そこで育まれた関係が嘘であったはずがない。歪であったはずがない。
由理だけが与えられて受け取っていたんじゃないんですよね。由理の家族もまた、由理から多くを受け取っていた。由理があってこその継見家だったはず。だからこそ、若葉は本当の由理を知りたがったはずなのに。もっと、兄が報われるために。本当の姿を知ることで、彼が自分がついている嘘に苦しまずに済むように、と。
でも、その嘘を暴いてしまったがためにすべてがなかったことにされてしまう、というのは由理だけじゃなく残された継見の家の人たちがまた辛すぎる。たとえ、何も覚えてない事にされてしまったとしても、喪失感は由理を愛していた分だけ抱え込んでしまうでしょう。
それもまた、残酷な話じゃないですか。
家族という存在に対して複雑な想いを抱いてきた真紀ちゃん、馨、そして由理彦。それぞれの形で、家族という存在に追いすがり、求めてきた彼らだからこそ、この継見家の結末は苦しいよなあ。
ちょうど同じ時期に、津場木くんところの家のあったかな関係……なんの衒いもなく家族は大切にするもんだろう、ときょとんと言ってしまう津場木くん、彼にそう言わしめてしまう津場木家の在りようを目の当たりにしていただけに、余計に来るものがある。
真紀ちゃんたちが目指す、家族の形の一つに成りえるんだろうなあ、あの家は。まあ、某親戚のオジさんによって家系そのものがえらい呪いを食らっているという現状もあるのですが。津場木家の呪いの話って、こっちで関係してくるのかそれとも「かくりよの宿飯」の方で関わってくるのか気になるところではある。
と、話が逸れたが継見家の件についてはこれが決着というにはあまりにも悲しいので、記憶が消されてもなお諦めていない若葉ちゃんの頑張りに期待したいところでありまする。清明先生も人間の味方だってんなら、由理はいいので妹ちゃんの味方はしてあげてほしいのう。由理はなんだかんだと自分で決着つけちゃいすぎる。さっさと身の振り方まで1人でなんとかしちゃいましたし。馨や真紀ちゃんからすると、ちともどかしいところなんでしょうなあ、そういうところ。

シリーズ感想

六道先生の原稿は順調に遅れています 二 ★★★☆   

六道先生の原稿は順調に遅れています 二 (富士見L文庫)

【六道先生の原稿は順調に遅れています 二】 峰守ひろかず/榊 空也  富士見L文庫

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文芸編集者の滝川詠見が担当するのは、怪奇を喰って物語を綴る、妖怪で作家の六道〓(そう)馬。なかなか原稿の上がらない六道から、詠見が努力の末にもぎ取った久々の新作が、なんと文学賞を受賞した。ところが六道は妖怪故に受賞式には出られない。詠見が代理で壇上に立つものの、同じ受賞者で気鋭の作家・踊場漂吉に怪しまれる始末…。とはいえ先生を売り出すチャンス!と新作を求めて日参する詠見だったが、またもや怪奇事件に遭遇して…?編集女子と妖怪作家の、怪奇×お仕事物語、第二弾。
これは作家と編集者の関係の理想形の一つだなあ。六道先生って作家としては数十年来の経歴を持つ大御所作家なのだけれど、妖怪としてはまだ若くて自分の生き方、在り方が定まっていない人でもあるんですよね。メンタルは老成していて幼いとは決して言えないのだけれど、それでいてひ弱というか未熟というか、自分にあまり自信を持っていなくて不安定な部分がある。決して頼もしい人とは言えないんですよね。でもやっぱり大人としての落ち着きもあり、しかし見た目はまだ十代後半の子供然とすらしている若者で、とこうしてみると編集者として付き合う滝川さん、大変だなあと思ってしまう相手なんですよね。まあ気難しかったり面倒くさかったりというところが全然なくて、非常に付き合いやすい人ではあるんだけれど、だからこそ繊細に触れなければならない相手でもあるというわけだ。
ここで滝川さんが直面するのは、編集者としていかに作家先生に作品を書いてもらうか、という依頼の段階ではなくて、どんな形で作家とともに作品を一緒に作り上げていくか、というところなんですね。書く作品の内容を要求して丸投げしてはい終わり、というわけでもなく、かと言って必要以上に内容にまで踏み込んでいくわけでもなく、そもそも編集者としてのスタンスとして作家に何を求めるのか。作家との共同作業って、どこまで踏み込んで、どんなふうにやるべきなの?というところで。
これにはもちろん正解なんてなくて、作家や編集者本人の性格や仕事の仕方、出版社としてのスタンス、その時の依頼内容や執筆状況、環境の違いなどによってやり方は全部違うだろうし、唯一の正解を求めるような話でもない。ただ、六道先生と滝川担当編集のビジネスパートナーとしての、そして六道先生の秘密を知る友人としての、そんな関係における仕事のやり方のピッタリとハマる形というのを、今回の話でたどり着くことになったんじゃないでしょうか。
長い六道先生の作家生活の中で、生み出した作品によって人生を変えられた人との出会いがもたらした衝撃。自分の書いた話によって、追いかける夢を見つけてそれに全力で挑んでいる人に出会えた感動。そして、かつて自分が書いたものによって生み出されたものによって、人に不幸をもたらしてしまった恐怖。六道先生は作家生活長いとは言っても、外との接触を極めて制限してきたせいか、自分の作家として世間にもたらす影響力を直接目のあたりにする機会が得られることはやっぱり殆どなくて、それらを直接見知った時の衝撃というのは作家としての経歴が長い文、もしかしたら新人作家が初めて感じるそれよりも、よっぽど密度も重さも濃いものを食らうことになるのである。彼当人のメンタルが打たれ弱いというのもあるのでしょうけれど。滝川さんは、もちろんメンタルケアに優れているという人ではなく、でも担当編集として、彼が妖怪であるという秘密を共有している友人として、それぞれの立場から真摯に親身に彼に言葉をかけることによって、本当に支えになってるんですよね、これ。一方で、作家のことを慮るばかりではなく、ちゃかり編集者としてあれこれねじ込む鬼な部分もしっかり持っていて、甘いだけじゃなくなかなか厳しくどぎつい面も兼ね備えているという根っからの編集者、みたいな側面も見せてくれて、六道先生も苦笑を禁じ得ないのである。でも、これほどやる気を掘り起こしてくれて、手助けしてくれて、弱った心を励ましてくれて、一緒に悩んで苦しんで、一緒に喜んでくれる担当編集が居てくれる、というのは限りない幸せであるんですよね。先生、これ噛み締めてるんだろうなあ。
そして滝川さんの方も、若さや未熟さから暴走したり見当違いのことをしでかしそうになったとき、落ち着きある先生の示唆や言葉によって、一呼吸置いて物事に取り組めたり、結構細かなフォローなんかも先生の側からしてもらってて、まさしく助け合う関係なんですよね。改めて見ても、いいなあと思える関係です。いや、一つ一つ積み重ねてそうなっていっているその過程を余すこと無く描かれている、と言えるのでしょう。今回は、六道先生とまったく正反対のスタンスで作家として活動している踊場漂吉先生の登場と介入によって、色んな意味で話にはずみがついてて、良い新キャラ投入だったんじゃないでしょうか。チャラくて押しの強い風貌とは裏腹にこの人もめっちゃいい人でしたし。良い意味で今後もこの人の介在によって話広がっていきそうですし。

1巻感想

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三 ★★★★   

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三 (富士見L文庫)

【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三】 秋田 みやび/しのとうこ 富士見L文庫

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ぼんくら陰陽師・北御門皇臥のプロ嫁として、今日も厳しい家計をやりくりする野崎芹。そんな中、本家の嫁のお披露目をしろと叔父の武人がやって来る。無骨な武人は、姑・史緒佳と相性がよろしくないようで、門前からバチバチと火花を散らして嫌みの応酬!いつもは敵の史緒佳だが、今回ばかりは一時休戦で、最強嫁姑タッグ成立か!?そして、本間先輩の持ってきたいわくつきの白無垢が北御門家にさらなる混乱を招き―?旦那使役スキルもますます上がる、退魔お仕事嫁物語、第三弾!
表紙絵のレッサーパンダがえらい可愛いんですけど!! ってか、レッサーパンダってなにさ!? と思ったんだけれど、そう言えばメディアワークス文庫の【絶対城先輩の妖怪学講座】でもこれについては語られていたっけ。ある妖怪の正体ではないかって。となると、本作中では明言されていないのだけれど伊周さんの正体って妖怪ランク的にも相当レベル高いものなんじゃなかろうか。いやでも、正体レッサーパンダなんだけど! あかん、元のロマンスグレーな老紳士とのギャップがw
さて、相変わらず嫁と姑でバチバチ火花飛ばしながら家族仲良く過ごしている北御門家ですが、名門当主にようやく出来た嫁の、一門衆へのお披露目というイベントが残っていて、というか親戚連中からせっつかれて、ついに代表して叔父さんが押しかけてくるというお話で、起こる事件の要となるのが花嫁衣装の白無垢、ということでついに芹の嫁問題にスポットが当たってきたのである。なんかもう、嫁として定着しすぎてて今更!って感じがしないでもないのだけれど、だからこそ親戚一同にも周知徹底していく必要はあるわけで、これに関しては皇臥よりもよっぽど芹の方が腰も肝も据わっている。いやまあ、この件だけではなく概ねどのようなときでも芹の方が色々と据わっちゃっているのだけれど。なので、むしろ今回の話って皇臥の方にもっと旦那として嫁を守るために頑張れ、という話だったんじゃないだろうか。なんだかんだと、芹をターゲットにして直接霊障が起こるというのは初めてなケースだったわけですし。幾ら祈里・護里の式神コンビに常時守られているからって今回はかなりヤバイ感じで、芹も随分怖い思いをさせられるはめになったわけですし。芹を守るために、非事苦手とかもうそういうの脇に放り出して必死に駈けずりまわる皇臥くんの姿は、なんでも出来る完璧超人とは程遠いからこそ、一生懸命さが伝わってきて好感が持てるんですよね。芹もこの旦那のこと、なんだかんだと信頼しているのが伝わってくるし。
それにしても、友好的とは言えない叔父さんへの角は立てないけれど腰も引けてない物怖じしない、それでいて礼儀はしっかりとした芹の対応は大人というかなんというか、けっこう大人げないお姑・史緒佳さんの対応と比べてしまうと、大したものだなあ、と。いや、史緒佳さんはこの大人気なさが可愛らしいのですけれど。仲の悪い叔父さんへのそれは、芹に対する微妙に方向性間違えている意地悪と違って直球でボコボコボールぶつけるような感じなのですが、それでもじっとりとした陰湿さがないのはホント、根っからいい人なんだよなあ。史緒佳さん自体はこの家に嫁として来た時、皇臥の祖母にあたるお姑さんには凄く可愛がられたらしくて、自身いじめられた経験がない、という話は芹へのピント外れの全然ダメージにならない可愛らしい意地悪しか出来ない理由の一つとして、なるほどなあ、という風情で。芹がいい加減お義母さん大好きだろう、という感じになってきてないだろうか、これ。
まあ、叔父さんの方も史緒佳さんが嫁入りしてきたときからチクチクと嫌味の応酬を繰り広げて大変仲が悪いまま現在まで来てしまったようだけれど、こちらはこちらで嫌い合っているわりに憎み合うようなドロドロとした感情はさっぱりなくって、史緒佳さんのことも彼女の苦労や努力も認めてるんですよね。嫌いだけれど。ってか、この人も根っからいい人だよなあ。
今回のことからも、陰陽師の家に嫁ぐということは危険とも隣り合わせで、怖い目にも合うわけで、厭味ったらしい事ばかり言ってくる叔父さんですけれど、芹に対してはそういうことも心配してくれてるんですよね。
しかし、芹の方は契約上の嫁云々抜きで、この北御門家の嫁を続けていく不安とかはもう全然ないのである。怖い目にあったらそりゃ怖いけれど、逃げ出したいとは欠片も思う様子もない。それはもう、彼女にとってここが帰る家、居場所になっているということなんですよね。寄る辺のない天涯孤独の彼女のとっての、温かくて居心地の良い家族と暮らす我が家なのである。無理してしがみついているのではなく、もう根を下ろしたような感覚でいる。
冗談でお義母さんと、離婚したあとの祈里と護里の式神所有権なのか親権問題なのかわからないことを話してたけれど、叔父さんにこぼした自分の居場所の話こそ芹の本音なんでしょうなあ。皇臥はマジで頑張れよ。こんな出来た嫁は二度と見つからんぞ。
それにしても、祈里・護里コンビの可愛らしさがさらに凶悪になってきてるんですけど。ホンマにかわいいなあ、おい。なんか、おとなしかった護里の方も祈里の方に影響受けてアレな感じになってきてるのが笑ってしまったのですが。式神なのに平然と主人を脅しに掛かるこのちびっ子たちw まあそれもこれも、芹さまが一番大事、という気持ちからなのですけれど。
ラストで、ついに14年前の隠された真実に迫る急展開。北御門家の傷跡に踏み入る話へと突入しはじめたのですが、いやもうほんと皇臥頑張れよ。

シリーズ感想

浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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かつて鬼の姫“茨木童子”だった前世の記憶を持つ女子高生、茨木真紀。彼女と同じく元あやかしの天酒馨や継見由理彦を巻き込み、あやかし世直し&やり直し人生を謳歌中!そんな三人の前に現れたのは、前世の宿敵“安倍晴明”の生まれ変わり、叶冬夜だった。叶は真紀たちがお互い前世にまつわる重大な嘘をついていると暴き立て、三人の関係を壊しにかかる。叶の言葉に真紀と馨はギクシャクしたまま、修学旅行で京都を訪れて…?宿縁の地で明かされる前世の真実。鬼嫁夫婦の恋物語はここからはじまる!
大激震の真実じゃないかーー!!
これは確かに、三人の関係を根底から変えかねない「嘘」だった。そもそも本作って、真紀ちゃんがメインで描かれることが多い話だっただけに、彼女が見せている姿をありのままで捉えてたんだけれど、彼女が抱えていた嘘を踏まえて振り返ってみると、なんか泣けてすら来るんですよね。
この現代に、こうして人間として生まれ変わり、愛する酒呑と再び巡り会えた。それがどれほどの奇跡だったのか。彼女がかねてから語っていた茨木童子の末路から鑑みても、この時代に馨や由理と再会できたことは奇跡以外の何物でもなく、その重さは理解できていたつもりだったんだけどなあ。明るい真紀ちゃんの姿に安心してしまっていて、その重みを本当は何も理解出来ていなかったことに気付かされる。
これは、馨もおんなじで。というか、馨が主犯で。お前、一巻でまだ夫婦じゃないとか言ってたの、万死に値するぞ。彼女があやかしたちを慈しみ、困っている彼らを助けてまわり、友との時間を大切にし、満面の笑顔で馨に絡んでカラカラと笑い声を立てる。そこに込められていた想いの深さを、馨も読者サイドもこれは何もわかっていなかったんじゃないだろうか。
その愛の深さを、何も理解してなかったんじゃないだろうか。それをわかってたのは、きっと由理なんだろうね。ああ、そりゃ茨姫の従者たちが馨に対して思う所あるのも仕方ないわ。これは仕方無い。
正直、この三人の間に嘘がある、と指摘して引っ掻き回した清明先生には歯噛みしたくなるけれど、彼が言う今世のおいて人間となった彼らには幸せになってほしい、というかしたる! という彼の意図の意味は渋々ながらわかるんですよね。真紀ちゃんがついている嘘は、とてもとても優しいもので馨を愛するが故のものだったのは間違いないんだけれど、それは馨が知らなきゃいけない真実だった。知らなくても幸せにはなれたかもしれないけれど、それは真紀にずっと嘘をつかせるということだ。彼女が永遠に罪を抱え、負の遺産をうちに押し込め続けることだ。それを、引き受けてこそ夫婦ってなもんだろう。彼女の真の想いを、夫なら知りたし知るべきだったろう。
自分たちがこうして再会できたことの奇跡の意味を、思い知るべきだろう。
故にこそ、清明先生は意地悪だけれど、きっと正しかったのだ。でも気になるのは、彼があくまで人間の味方である、というのを強調していたところなんですよね。話していた時は、その流れからして真紀ちゃんと馨のことだとばかり思い込んでいたんだけれど……。あとになってみると、もしかして、と思わざるをえないもう一つの衝撃的な真実が明らかになってしまったわけで……。
ともあれ、本作は真紀ちゃんが偉大すぎて、女性が器大きすぎて、もう男の子たち頑張れ、としか言いようがない。馨はもとより、浅草互助会の兄さんとか、津場木くんとか。頑張って苦労しろ!! 元から苦労性な連中だけれど、頑張って苦労しろよー。

1巻 2巻感想

六道先生の原稿は順調に遅れています ★★★☆   

六道先生の原稿は順調に遅れています (富士見L文庫)

【六道先生の原稿は順調に遅れています】 峰守ひろかず/ 榊空也 富士見L文庫

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中堅出版社に勤める文芸編集者の滝川詠見は、なかなか原稿が上がらないことに定評のあるベテラン作家・六道〓(そう)馬の担当をすることに。さっそく詠見は六道のもとへ挨拶(と催促)に向かうのだが、初老だと思っていた先生はなんと憂いを帯びた見目麗しい男子で、しかも街に潜む怪奇を喰って創作をする妖怪だと知ってしまう。出合い頭こそ驚く詠見だが、妖怪だろうと相手は作家。原稿をもらうため、取材代わりの怪奇事件に首を突っ込むことになり…?編集女子と妖怪作家のコンビが綴る、不思議×出版お仕事物語!

作家にとっては債権者の督促に匹敵するような心身ともに追い詰められる言葉。
「原稿をください」
でも、要求する、欲する、求めるという言葉だからこそ、それを持ち得る人そのものを肯定する台詞にもなり得るのだなあ、とラストシーンにおけるこの台詞の使い所に打たれたのでした。
それ以上に、滝川詠見という人は生粋のプロ編集者なんだなあ、と。あの場面において、愛を語るでも善を語るでもなく、原稿をくれと言えるのは編集者以外の何者でもなく、だからこそ作家と編集者という組み合わせは不可分なんだろうなあ、というのを実感できたというかなんというか。作家という存在を成り立たせる上で、編集者という立場の存在が如何に関わることが出来るのか。時に足を引っ張ることすらあり得る存在ですけれど、深い部分に関わるということはプラスになるにしてもマイナスになるにしても、何らかの影響を与えることは考えてみれば当然のことなのでしょう。その上で編集者という立場の人はどういうスタンスで本を作るということに対して向き合うべきなのか。
こうして振り返って見ると、本作は作家モノというよりもむしろ徹底して編集者という存在に対してスポットを当てた作品だったのでしょう。
40年来の大御所作家である六道先生ですけれど、ベテラン作家でありながら妖怪としては若い存在であり、老成したというよりも枯れたような部分と幼いと言ってすら良いかもしれないハツラツとした活力を相合わせ持った不可思議な、というか矛盾を内包したような先生は、だからこそ自分の作家としての在り方にまだ定まったものを有していなかったですよね。自分なりの作家論、というものを持ち得ないままあやふやなまま小説家をなりわいとしてきていた。大御所でありながら作家になりたての卵の殻を背負ったような幼生体。
そんな曖昧にして定まっていない存在だからこそ、自覚を持たずとも編集者としての確固とした在り方を備え持っていたものの、実績を持たず自信を持たず持ち得ている確信を体現する術を持てないまま右往左往していた詠見と、不思議なくらい噛み合ったようにも見えるのです。
どちらがどちらかを導く話ではなく、お互いの存在がお互いの作家としての、編集者としての成長を促すことになる化学反応の物語だった、というべきか。まあ、途中で大御所先生の方が盛大にヘタレてしまうのは、仮にも社会人として一端にやっていた若くも大人な詠見に対して、六道先生は大御所だろうが妖怪としてメンタル幼いお子様だったからなのかもしれません。中身子供な部分があるくせに、妙に分別がある分我儘とか無鉄砲とは縁がない性格だったからというのも大きいのでしょうけれど。
それでも、これも面倒くさい性格の作家、という分類になってしまうのでしょうか。トータルしてみると、扱いに関しては難しいどころか易しいくらいの人に思えるのですけれど。詠見さんとしても、これからはガンガン原稿を搾取できそうな勢いでしたし。

惜しむらくは、肝心の六道先生の「取材」のパートが詠見が殆ど介在しないまま影で片付いてしまっていたところですか。ある意味本作の見せ場ともいうべきパートのはずなんですが、全部影で進行してしまってラストまで詠見は蚊帳の外で進んでしまいましたからね。ラストの黒幕についても唐突感がありましたし。
もし続編があるなら、これからは詠見も全部事情知っているわけですし、作家の取材には編集もついていく場合は決して珍しくないのですから、一緒に行動してくれるともっと面白くなりそうなんですけどねえ。

峰守ひろかず作品感想

カロリーは引いてください! 学食ガールと満腹男子 ★★★★☆  

カロリーは引いてください! ~学食ガールと満腹男子~ (富士見L文庫)

【カロリーは引いてください! 学食ガールと満腹男子】 日向夏/時々 富士見L文庫

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朝生くんは大学の人気者。学業優秀、スポーツ万能。悩み事にも優しく応える。まさに完璧―ただ一つ、その体重を除いて。「朝食できたよ、朝生くん」「足りません(キリッ)」同大学の学食で働く楓は、朝生くんの母に頼まれ、彼が太らないご飯を毎食作っている。朝生くんはカロリー控えめでも美味しく工夫した料理を喜んでくれるけれど、ごちそうを報酬に、度々お悩み解決を引き受けてしまうので…。オーダーは彼のダイエット!?まかない女子とハイスペックふっくら男子の献立奮闘記!
ちょっ、朝生くんホントに完璧超人なんですけど! 学業だけじゃなくてIT関係もミスコンでウェブ担当で不正投票の対応をバイトでやるほど使えるし、動けるデブとして柔道の有段者だし、家は超金持ちで上流階級であるが故か、本物のジェントルマンで女性への対応がパーフェクト。品が良くてスマートなんですよね。それでいて、愛嬌もあり可愛げもあり愛想も良し。何気に面倒な実家との繋がりは切れていて、家関係でゴタゴタすることもないし、唯一身内であるお母さんの響子さんもまた人柄能力社会的信用資金力と文句なし。
ぶっちゃけ、デブであることすら完璧の内にあるんじゃないだろうか、と思ってしまうくらいデブである自分も活用してるんですよね。平気でデブネタも振ってきますし。
あと、これだけ御飯美味しく食べてくれたら、そりゃ作る方も嬉しいわ。そして、ごちそうと引き換えにわりとお願いも聞いてくれるので、ってこれは楓相手だからなんでしょうけれど。余計なことに首を突っ込む性格ではないんですよね。でも、困ってる人を無視するほど冷たくも塩対応でもなく、サラッと補助や支援の手を差し伸べているあたり、実にスマートなんだよなあ。
将来デブすぎたら健康面でヤバい、という点だけがネックであり、もうホントそれくらいしか欠点ないよ、完璧超人だよこいつ。
実は寂しがり屋だった、というのも大きなポイントで、なんだよ可愛いなあ畜生! と男性の自分ですら思ってしまう可愛げでね、そりゃ楓じゃなくても「よし食べろ」と思っちゃうよなあ、これ。
楓さんの方も、友人の秋桜の中学時代のエピソードを見てみると、その「食べさせる」というワードに対するライフワークが決して朝生くん限定でないことがうかがい知れて、結構この人も特殊ではあるんですよね。料理を食べてもらう、ということが仕事や義務感じゃなくて、生活の一環であり、また食べる人のことを考えてあれこれ試行錯誤することが当たり前になってるんですよね。これ、幼少時の少食でまともにものを食べられなかった朝生くんとの日々によって培われたものなのかもしれませんけれど、楓の人格の根幹に根ざしてるっぽい。
同時に、朝生くんの幼少時の食に関するトラウマとその克服、現在の食に対する喜びの根底には、楓の父親と楓本人とのあれこれがあるわけで、これ響子さんがマンションの家賃など諸々超お得な契約内容で朝生くんの食事管理を、ちゃんと社会人として働いている楓にわざわざ持ちかけたのって、建前上の朝生くんのダイエット云々だけじゃないんだろうなあ。実際、遅々として朝生くんの減量が進んでいないことに対して、響子さんさして気にした素振りも見せなかったし、あそこで楓をわりと昔からの知り合いが招待客に多いホームパーティーに、朝生くんの相方として呼ぶあたりとか、もうこれ完全にターゲットつけてますわな。響子さんとの個人的な関係も、朝生くん抜きでかなりフレンドリーというか堅苦しい関係性が全然ないかなりリラックスしたプライベートのだらしない顔を見せて全然平気どころか、積極的にだらけてみせるくらいの身内感ですし、そりゃもう狙いすましてるでしょう、これ……。

お話の方は、朝生くんが通う大学の中で起こる様々な事件、いや表に出ることすらなく犯人の一人勝ちで終わりそうだったあれこれに、朝生くんがふと気がついたり、他所から相談を持ちかけられたり、楓が御飯で釣って協力させたり、というきっかけを経て、朝生くんが多種多様、多芸極まる謎スキルで事件の真相を浮かび上がらせ、「名探偵皆を集めてさてと言い」なんて大仰な真似もせずに、ある意味穏便に、しかしきっちり因果応報で悪意を持っていた相手には痛い目を見てもらう、という形で解決していく、言わば日常ミステリーものでありました。
いや、振り返ってみても解決方法、往々にしてスマートなんですよねえ。ミスコンの場合は最後が最後だっただけに目立ってしまいましたが、それ以外に関しては決して目立たず、しかし各所に貸しはきっちり負わせて謎の人脈も広げてってるのだから、クセモノであり食わせ者であることは間違いなく、ああでもそれなのに、可愛げの塊みたいなデブ青年なんだよなあ。カッコイイし紳士だし。
でも、これって主人公の楓がけっこう男前な女性だからこそ、カップルとして映えるとも言えるんでしょうね。決して気が強い姉御系ってなわけじゃないんですけれど、言うべきことはどんどんハッキリ言いますし、朝生くんにも甘えさせずにビシビシと食事を制限していきますし……って、わりと制限解除! ってな場面も多いし、けっこう甘やかしているような気もしてきたぞ。
ただ、おかず面で本当に工夫に工夫を重ねて、好きなものを食べさせない苦痛を味わわすのではなくて、カロリー制限はするけれど、美味しく楽しく出来ればお腹いっぱいに、という存念で趣向を凝らした料理を創ってくれるのですから、そりゃ朝生くんも嬉しいわなあ。これほどガッツリ餌付けされるのも珍しいってくらいには餌付けされきってるし。
【薬屋のひとりごと】もそうですし、書籍化されてないシリーズなんかでも、日向さんの描く女主人公の、あのわりと身も蓋もないしっかり者というキャラクターは、やっぱり好きですわ。単体でも映えますし、それ以上にかなり動かすの難しいだろう男性キャラに、可愛げなるものを添付してしまう特性があるように思えるんですよね。
本作もシリーズ化してほしいな、これ。素晴らしく面白かったです。

浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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人とあやかしが共に棲まう町、浅草で。鬼の姫“茨木童子”だった前世の記憶を持つ茨木真紀は、持ち前の面倒見の良さから、あやかしたちの起こす厄介ごとを解決する日々を送っている。先日も鎌倉妖怪とのいざこざを調停し、ますます人(?)望を集めていた。そんな真紀も普段は女子高生。夏は花火大会に山遊び、学園祭とイベントが目白押し。かつての夫で元“酒呑童子”の同級生・天酒馨たちも巻き込んで、やり直し人生の今しかない時を謳歌する!だがそこへ、彼女の前世を知った陰陽局の面々も現れて…?
女子高生、そう女子高生なのだ、真紀ちゃん。
前巻では、まだ夫婦じゃないまだ夫婦じゃない、と往生際の悪さを見せていた馨だけれど、前回の事件を通じてもう諦めたのか受け入れたのか言い訳しているのが馬鹿らしくなったのか、真紀ちゃんが夫婦夫婦言うても否定しなくなったんですよねえ。もうこれ、無意識レベルでそれが夫婦が当たり前レベルにまで昇華されてしまったのかもしれん、というくらいには自然な受け答えをしているわけで。
一人暮らしの家の方も、結局あっちこっち見て回った挙句に真紀ちゃんと同じアパートに収まっちゃったし。通い婚だったのがもう殆ど同棲である。自室には寝に帰るだけで、殆ど真紀ちゃんの部屋に入り浸ってるわ、私物も持ち込んでるわ、ってか真紀ちゃんが馨の部屋からあれこれ持ってくるわ、同棲である、これ。
そう、同棲っぽいのよねえ。実のところ、本巻ではあんまり夫婦という印象受けなかったんですよね。熟年夫婦というのは、二人とも枯れてないというか、今回は学生を満喫していたからかもしれませんけれど、自立して二人して一緒に長いこと暮らしているという慣れ親しんだ生活感を出しながらも、夫婦というような確固とした枠組みは形成せずに、社会の側に包まれているというかなんというか。
今の二人って、高校に通いながら浅草地下街という互助会に助けられ、大黒様をはじめとする神様たちにも見守られ、と生活としては二人で独立居ているものの、社会的に見ると未成年者として庇護されている体があることが、夫婦としてよりも同棲カップルっぽさをマシている原因なのかもしれない。と言っても本当に長い間一緒に居ることに馴染んでいる地に足の着いたカップルなんですけどねえ。
平安時代がなんだかんだと不安定な立場で、命を狙われていた事も含めて楽しい日々であっても気が休まらなかっただろうことを思えば、今のように浅草地下街の人たちや大黒様たちのように見守ってくれる人たちが居て、その中で日々を穏やかに満喫しているという今の状況というのは隔世の感があるだろう。同じ好き合っている者同士、かつての夫婦と言っても、昔と夫婦感というものも変わってくるかもしれない。その観点に置いても、この二人は新しい世の中、新しい時代でちゃんとかつてから続く絆や想いを繋ぎつつ、新しいものへと昇華して一つ一つ積み上げていってる風なのは、堅実というかカップルとしても偉いなあ、と感嘆の吐息が漏れてしまいます。
平安の頃よりも人間が繁栄する現代で、しかししっかり逞しく生きてる妖怪たち。そんな彼らを愛し、現代に馴染めず、或いは虐げられてドロップアウトしてしまう子たちも見捨てず、そうしながらも今人間として生きている自分に背を向けず、かつては憎んだ人間という生き物に対しても親しいもの、眩しいもの、素敵なものを感じ取り、両親への愛情を通じて、人も愛しつつある真紀こと茨木童子。
それって、とても幸せなことですよねえ。自分がしっかりと幸せを噛み締めながら、その幸せを惜しまず他者へと配り歩く真紀って、もうこれ女神様的な存在になってやしないだろうか。今は人間なんだけれど、やってることって前世考え見ても鬼子母神みたいなものですよねえ。

やがて鵺にもなろうかという妖怪トラツグミの幼生が、化けれるようになったら皇帝ペンギンのヒナに化けちゃって、この巻通じてずっとペンギン雛やってたのにはなんとも笑ってしまったというか和んでしまったというか。表紙絵にもちゃっかり出てますけれど、これはヌイグルミ感あるなあw

そう言えば陰陽局の津場木くん、【かくりよの宿飯】の主人公の葵の従兄弟にあたるのか、彼。爺さんとも葵とも似てない世渡り下手、というよりも堅物というか頭が堅いというかぶきっちょというか、苦労性だなあこいつ。

1巻感想

かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。 ★★★★   

かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿「天神屋」に秋が訪れる―。ライバル宿「折尾屋」に攫われていた葵は、困難の末に完成した料理で、南の地の呪いを晴らした。凱旋する彼女を待っていたのは、「天神屋」の仲間との温かくも大忙しの毎日!新作お土産を考えたり、秋祭りの準備を進めながら、食事処「夕がお」を再開していく。そんな時、葵は大旦那様から果樹園デートに誘われた。いつものお誘いと変わらないはずが、「折尾屋」での一件を経た葵は、大旦那様のことをもっと知りたいと思う自分に気づいて…?

白米! 白米! 白米!! ちょっともう初っ端の白いご飯は反則だよっ! 本日は「夕がお」が繁盛して残り物もなく、残ったのは白いご飯だけ、というところに従業員のみんなが終業して、クタクタになってご飯食べに来るんだけれど、あるのはお米だけだから、みんなおかず無しで色んな御飯のお供で白米を掻き込むことになるんですけれど……これが反則級に美味そうなんだ。白飯最高!! そうだよ、日本人は白米さえあればわりと何とかなるんだよっ。ってか、飯テロ小説で真っ向から白ご飯、という棍棒を振り回してくるとかアリですか!? いやもう、どの御飯のお供も何倍もお代わりできそうなくらい美味そうで美味そうで、それだけでももう一杯一杯のところにトドメに新鮮な卵を使った卵ごはん! 卵かけご飯!! 卵かけご飯に肉味噌!! これもう非人道兵器じゃね!? 何気に作中のみんなのテンションも変な具合に高くなってたし。御飯美味え!
ええ、もちろんあとで卵かけご飯いただきましたよ? 自分は出汁醤油派。さらにふりかけを加えるタイプ。うへへ、マジ最高っすよ。
しばらく、あっちゃこっちゃに出張して忙しかったというかトラブルに巻き込まれることも多かった葵だけれど、ようやく落ち着いて「天神屋」で過ごす日々。落ち着いた、というには相変わらず賑やかすぎる日常なのだけれど、目下のトラブルや差し迫ったイベントや葵に突きつけられる課題、といった緊急のあれこれが無い分、落ち着いているのだろう。ってか、これだけ何事もなく、人間関係トラブルもなく、天神屋でもちゃんと居場所が出来てゆっくり「夕がお」の経営に勤しんだり、大旦那さまとお出かけしたり、と余裕をもって過ごせたのって初めてなんじゃなかろうか。
まあ、デートしに行った先でまたぞろ捕まってみたり、あれやこれやとトラブルには見舞われるけれど、これくらいなら何事もなかった、と言ってもいいくらいだし。
そうなってくると、改めて大旦那さまとの距離感なんかに思いを馳せる時間の余裕なんかも出てくるわけで、「折尾屋」に出張状態になっている時に随分と大旦那さまには助けられ、というかお茶目で気安い顔を見せてくれたお陰で、こっちに戻っていてもかつてよりもグッと心の距離感近くなってるんですよね。むしろ、大旦那様当人の方が、そんな葵の変化に気がついていなくて無理に距離をとろうとしてしまっているくらい。葵としてももどかしいってわけじゃないんだけれど、むしろもっと彼のことを知りたい、身近に感じたいと思い始めている時期だけに、以前のようにグイグイキてくれた方がこの際嬉しかったのかも。まあ、来られたら来られたでのけぞってしまうのが彼女かもしれないのだけれど。そう考えると、絶妙な引きかたをしてるのかもしれないなあ。
ただ、以前よりも接しやすくなったと葵が感じているのは彼女だけの感覚だけではないようで、他の店の面々も大旦那様の態度に、以前よりも柔らかいもの、子供っぽい生気みたいなものを感じてる様子なんですよね。
店の面々の結束は、確かに以前よりもずっと高まっているのが、大旦那様の変化や従業員たちから淀みや悩みが取り払われたことによって、より強く感じられるようになっているのが、今の天神屋だったわけです。
だから、そこに新たな新米、新キャラ投入も全然大丈夫かなあ……と、サブタイトルからもワクワクして見てたら……新キャラ登場どころか、むしろ退場じゃないかーー!! 厳密にはアイちゃん、クラスチェンジしてキャラ再誕、ってことになるのかもしれないけれど、新キャラとはいえないし。ってか、アイちゃんちゃんと表紙絵に出てるじゃん!
じゃなくて、それどころじゃなくて、ちょっとちょっと、何気に一番潤滑油的な人がぁ!?
ぐぬぬ、いや、決してこれ悪いことじゃなくて、円満退社というか寿退社というか、祝福される退場であるのでしょうけれど、しかし大事な友だちだっただけに寂しいなあ。
なんだかんだと、女子会というか、天神屋の女の子たちの友達関係もいい感じに熟してきて、男抜きでも彼女たちのワイワイ飯食ってる様子だけで楽しめるくらい、良い友達関係を築けてきていただけに、やっぱり寂しい。その分、ようやくお涼姉さんが本気になってくれそうですけれど。
いやもう、ラストの展開からして、葵を中心に天神屋が結束しなければならないにしても、柱となるべき人がもう一人は欲しかっただけに、このタイミングが大事だったのかなあ。葵としても、拠り所が必要な状況になってしまいましたし。
落ち着いて、葵の御飯を堪能するという……いや、実際食べられないので、この美味しそうな料理描写を指を咥えて眺めるという恍惚なのか苦行なのかわからないテンションに耽溺してたら、ラストに急展開ですからね。
紛うことなき天神屋最大の危機!! 大ピンチだぁ!

シリーズ感想

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 二 ★★★★   

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 二 (富士見L文庫)


【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 二】 秋田みやび/しのとうこ 富士見L文庫

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野崎芹は陰陽師・北御門皇臥と契約結婚をしている。彼の式神が視えたことで見初められ、生活上の利害の一致から決断したのだ。だが、かつての時代の公務員たる陰陽師一家の家計は厳しかった!それも皇臥が怪奇な事件が苦手なぼんくら陰陽師だったからで…。そこで芹はプロの嫁として、持ち前の機転と旦那使役スキルで依頼を解決。すると今度は姑から、結婚のお披露目を迫られる!さらに友人からは悪霊に憑かれたという相談事が舞い込んで…?前門の霊、後門の姑な退魔お仕事仮嫁語、待望の第二弾!
今どき大学生の娘さんが結婚した! となったら、同級生たちはそりゃあ「うはぁ!」ってテンションあがるでしょうなあ。ってか、結婚したこと隠さずに友達にも伝えてたのか。てっきり契約結婚なんていう話なんだから、芹にしても皇臥にしても必要がなくなったらとっとと契約解除する心づもりなのかと思ってたんだけれど、二人ともあんまり契約解除のことに関しては考えてない気がするんだが。契約だろうがなんだろうが、ちゃんと婚姻届出しちゃって正式な夫婦になっているわけで、芹側は友人にも知れ渡っているし、皇臥の側も近々親戚や弟子一同に紹介する流れになってってるし、これもうそう簡単に契約解除、即離婚、とか出来ないですよ。
お互い、現状に一杯一杯なせいか後のこと全然考えてなさそうだけれど。これは考えなしというよりもむしろ、芹と皇臥の相性良すぎて、今の関係しっくり行き過ぎているのも元凶なんでしょうなあ。この前まで他人だったにも関わらず、熟年夫婦みたいに馴染んじゃってるし、ここまで馴染んでると契約解除のこととか忘れてるんじゃないだろうか、ってなくらいで。
ただ、いきなり熟年夫婦になってしまった分、恋愛という過程を踏んでいないだけに、まあ結婚したとなるとやがて後継者問題というのが出てくるのを果たしてどうするのか。
何しろ今回の話ときたら、見方によっては子供の教育方針をめぐる夫婦喧嘩みたいなもんですもんねえ。
祈里にしても護里にしても、そして新たに登場した錦にしても、北御門の式神たちは精神年齢的にもまさに子供ですし。って、一応ちゃんと大人な式神たちもいるのですが芹にべったりな式神たちはみんなお子様ですからね。それを芹も本当にかわいがっていて、式神たちを家族のように捉えている。もし、契約結婚が皇臥と一対一の差し向かいのものだったら、ここまで彼と馴染んでなかったんじゃないだろうか。祈里や護里たち式神たちを家族として認識し、それらをひっくるめて北御門という家の嫁としてやっていくんだ、という意識があったからこそ上手くいったような気がします。姑さんへの対応に関しても、それを含めて北御門の家だから、という認識があったればこそ、じゃないかなあ。あのお義母さんが全然陰湿になれない人だからというのも大きいのでしょうけれど。お義母さん、そのイビリ、意地悪は姑さんがする類いのものじゃなくて、小学生低学年くらいの妹が大好きなお兄ちゃんに突然出来たお嫁さんにやるような他愛もないイタズラすぎて、むしろ可愛げがありすぎますってな。本人が必死な分、尚更に。
芹が逞しくて、お義母さんの意地悪にまったく動じてないどころか、むしろやり返してる、というところもあるのでしょうけれど、お義母さんやられ返されても逆ギレしたり、怨みをつのらせたり出来なくて、普通に悔しがってしまう人の良いさを感じてしまうなあ。

さて、さんざんボンクラ呼ばわりされてしまう旦那さんですけれど、今回は苦手な荒事にも関わらず、嫁さんの友達が困っているということで本来なら断る案件に首を突っ込んでいくことに。旦那として、嫁さんのメンツを潰させないために、学校での芹の評判を落とさないように、という気遣いと男気を感じさせる決断ではあるのですけれど、まず前提として苦手なことからは尻尾巻いて逃げるのが常態化していた、というのがあるだけに、素直にカッコイイとは思えない不思議。いやでも、ヘタレが嫁さんのために勇気出して頑張ろうとしているのだから、芹としてもまあ悪い気はしないのです。なかなか厳しい言を申しておりますが、芹もまんざらじゃなさそうでしたしね。
それだけお互いのことを考えられて、気心が知れたからこそ、本気でぶつかれる、喧嘩できるということもあるのでしょう。単なる契約、ビジネスライクなら喧嘩なんて出来ないですよ。それも、式神のことでなんて。
式神を子供のように、人間と変わらぬものとして扱っている芹と、本心はともかくとして陰陽師として式神の扱い方を割り切らないければならないと考えている皇臥とでは、いつか出るだろう齟齬と対立点がここで噴出してしまった、ということなんでしょうけれど、皇臥がぼんくららしく陰陽師に徹しきれずに彼自身式神たちのことを可愛がっているのがまああからさまなので、陰陽師の言い分としては皇臥が間違っていないにも関わらず、明らかに皇臥の方が分が悪い様子になっていたのは、さすがボンクラというところなのでしょうが。でも仕方ないね、祈里カワイイもの。
でも、それで言を翻したり、芹に妥協せずに陰陽師としての理であり、式神への責任をあっさり放棄せずに譲ることをしなかった皇臥は、幾らぼんくらであっても立派な陰陽師なのでしょう。この点は誉めて然るべきなんじゃないかと。一方で、家族のパパとしてはそこで冷徹に徹してしまうのは家族の破綻をもたらしてしまうわけで、人間が出来てたり巧みだったりする人はうまいこと公人としての立場と私人としての立場を使い分けて妥協点を作り出すんだろうけれど、皇臥がそれが出来るほど器用な人間なら、契約嫁とか取る必要なんかなかっただろうし、嫁や世間にぼんくら呼ばわりされてないよなあ。
だからこそ、北御門の生命線は「式神」なんでしょうなあ。この時、皇臥の公人と私人の間を取り持ってくれたのも、家族としての振る舞いの間を取り持ってくれたのも、皇臥が生み出した式神である錦くんなんですよね。
彼のお説教は、式神として主人である皇臥の不見識を叱るものであり、同時に家族の中のお兄ちゃんとして、姉だけれど妹となる祈里を庇い、父親の無神経さを怒るものでした。錦くん、落ち着きのないうるさい糞ガキの末っ子だとか思っててごめんなさいだよ。ちゃんと家族のことをよく見てよく考えてくれてるしっかりしたお兄ちゃんじゃないか。
式神としての機能、能力云々ではなく、これだけよく人間の出来た人格を持った式神を生み出せる、という一点において、皇臥の陰陽師の能力は捨てたもんじゃないんじゃないだろうか。
まあ、皇臥の作った式神たち、祈里、護里、錦が揃って子供メンタルなのは、他の昔からいる式神たちがちゃんとした大人なのに比べると、まあアレなんだけれど。でもいいんだよ、可愛いんだからみんな。子供は可愛い、これ正義。
いや本当にもうお子様式神たちが可愛くて可愛くて、芹じゃないけれどもう愛でるよねえ、これ。結構本格的な怪談調、ガチの霊障で、クローズドサークル気味の舞台であったのも相まってホラー風味だったはずなのだけれど、そんなに怖い雰囲気にならなかったのは、式神たちの可愛らしさと頼もしさにあったんでしょうなあ。


一巻感想

おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん ★★★☆  

おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん (富士見L文庫)

【おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん】 竹岡葉月/おかざきおか 富士見L文庫

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進学を機に一人暮らしを始めた大学生の栗坂まもりは、お隣住まいのスーツの似合うイケメンデザイナー亜潟葉二に憧れていた。ある時ひょんな事からまもりは葉二に危機を救ってもらうのだが、それは憧れとはほど遠い、彼の真の姿を知る始まりで…!?
普段着は黒縁眼鏡にジャージ。ベランダは鉢植えとプランターにあふれ、あげくに草をむしって食いながら「会社辞めてきた」って大丈夫このヒト!?ベランダ菜園男子&野菜クッキングで繋がる、園芸ライフラブストーリー、スタート!
料理のハードルの高さって、実のところ「調理」じゃなくて「食材の確保」だったりするんですよね。あるものを調理してなんか作るのって、まあどれだけ美味しくなるかはともかくとして、出来るっちゃ出来るのですよ。ところが、その食材をどうするか、の部分で買い物から冷蔵庫内の管理というのが案外ハードルが高い。まあこれは、一人暮らしと家族で暮らしている人とはまた違う難しさがあるんでしょうけれど。家族が居ると、勝手に買ってきて勝手に作って、というのは簡単じゃないですし。
そんなこんなで、亜潟さんのベランダ菜園をやってる理由。冷蔵庫だと野菜って腐らせちゃうし、一人分だけ買ってくると高いし、何気にベランダで作ってるのが一番楽なんだよ、という話には眼から鱗でありました。
いやいやいや……簡単じゃないよー、そんな簡単にはなかなかできんよー。と思ってしまうんですけれど、案外簡単なんだろうか。自分でやったことがないだけに、こればっかりは何とも言えんのですが。家庭菜園的なことは母がやっていて、ものによってはあまり手間を掛けずにポコポコできまくって、しばらくそればっかり食べさせられたり、とかいうのがあるだけに否定はしきれない。
ともあれ、亜潟さんのそれは生活のためじゃなくてもう完全に趣味ですけどね。どう見てもハマってしまってますけどね。まもりのベランダまで侵食しだしている時点で言い訳できんでしょうに。
というわけで、ひょんなことから時々すれ違うだけの隣人から部屋にお邪魔する関係になった元社畜のデザイナーと新米女子大生。社会人と女子大生って、高校生からすると両方大人に見えるわけだけれど、女子大生ったって実際はただの十代女子。社会人相手だと、幾らデリカシーが若干かけてる私生活もあれなところのある男だろうと、やっぱり大人に見えるし亜潟さん実際中身も大人なんだよなあ。同級生の男の子たちは、あれで相応に大人びていると思うんだけれど、特にあの法学部の子。それでも、まもりからすると「年上」というのは威力が違う、というのが傍から見ててもわかってしまうわけで、むしろ完璧超人ではなくてあの私生活の隙こそが、大人である亜潟さんに対するまもりの「入っていける」入り口なんだろうなあ。まもりが抱いていた幻想の憧れ通りの人なら、きっとお近づきになるのは難しいところだったんでしょう。
それでも、現実としてこれまで見てきた社会の経験値の違い、というのは年頃の少女脱皮未満としては大きく見えるわけで、そこで自力で勇気出したのはやはり偉いですよ。そこは女の強さであり勢いだわなあ。
って、意外とベランダ菜園って物語の要素としては比重大きくないような気がする。いや、亜潟さんの過去や、まもりとの関係を繋ぐ「ご飯」の話の根幹ではあるんだけれど、あくまで物語の材料であってベランダ菜園や園芸という観点で掘り下げる話はあんまりなかったかなあ。フリーマケットなんか、興味深かったですけどね。
しかし、なんというか大人相手に恋愛踏み出すのって、やっぱり最低限大学生にまではならないと「アウト」になっちゃうんですよね。実際問題としても、関係の雰囲気としても。言うまでもない事なのかもしれませんが。


竹岡葉月作品感想

即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 ★★★☆  

即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 (富士見L文庫)

【即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡】 佐々原史緒/くじょう 富士見L文庫

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成島拓海は同大学の橋本秋帆に狙われていた。彼女は拓海の長身を頼みに―共に“競技ダンス”で日本一を目指そうというのだ。さる事情から人付き合いを避けてきた拓海に、よりによって女子の手を取り笑顔で踊れだなんて!当然断るものの、諦めようとしない秋帆の真剣さに屈し、拓海は期間限定で入部する契約を交わす。優雅なイメージとは裏腹、体育会系な活動に絞られる日々を送る拓海。やがて応援に訪れた大会で、予期せず出場することとなり…。ダンスにかけるふたりたちが描く、青春と人生の心躍る軌跡。

燃える闘魂!! というのがヒロイン橋本秋帆の印象でした。
競技ダンス、というと最近では少年ジャンプでマンガ連載がはじまったお陰で最低限の知識は得ていたのですが、思っていた以上にスポーツという側面が強いんですなあ。まさに、闘う競技なのだ。ダンスに懸ける情熱、というよりもむしろ闘争心を剥き出しにして気炎を上げて挑み続けるハードスポーツなんですよね。
面白いのは、競技ダンスというジャンルの中で大学生の大会だけが「団体戦」というジャンルがあるというところ。パートナーと二人、とは言え他のチームメイトと協力してプレイするような団体競技ではなく、あくまで自分たちだけで完結している競技ではあるものの、自分たちの成績がそのままチームの成績へと繋がっている、という意味ではまさに自分たちだけで闘っているのではない、みんなで闘う競技である、と。これを「駅伝」に例えていたのは、なるほどなあ、と納得させられました。
ダンスは、自分ひとりでは踊れない。自分と踊ってくれるパートナーが必要。であるがゆえに、人並み外れた長身(女性ながらに180センチ超え)に育ってしまった秋帆は、ダンスに対して狂的なほどの情熱を、闘魂を注ぎながらも、それを共にしてくれるパートナーに巡り会えずにずっとグツグツと内なる炎を煮え滾らせていたところに、自分よりもさらに長身の、しかも剣道経験者で運動神経も抜群な拓海という逸材に出会ってしまい、なりふり構わず彼をパートナーにするために奔走することになります。
その爆発する火山のような炎に、やる気のなかった拓海も押し切られ、その手を握り続けるうちに彼女の炎に彼の冷え切った情熱も炙られていくわけですが……同時に、秋帆の闘いはある時点までただただ彼女自身の一人の闘いであったのです。団体、チームとして闘う大学競技ダンスであるのに、彼女は自分のパートナーとなる相棒の事すら本当の意味では手を取っていなかった。
その生い立ちから自己評価も低く、また何かに本気になることも、誰かを信じて懸けることにも及び腰だった拓海と、方向を見失ったまま自分の中の溶岩を爆発させて一人で踊ろうとしてしまった秋帆。すれ違いにもならない噛み合わなさは、おそらく必然だったのでしょう。
でもここからが、秋帆の炎が消沈してしまったところから、いつしか彼女の炎が燃え移り、その熱量に魅入られていた拓海の本気が、男役リーダーとしての自覚が、生まれた情熱が、止まりかけた物語を推し進めていくのである。でも、逆に拓海が自分が引っ張る、というのではなくて、自分の魅入られたものの素晴らしさをもっともっとみんなに認めて欲しい、見て欲しい、俺ではなく彼女を見ろ! とばかりに気炎をあげるのは何とも彼らしいというか。作者の描く男性主人公って、気合入ったというか色々と開き直ってる女主人公に比べて女々しいというか、ウジウジしたところが散見される場合が多くて、この拓海もわりとそっちなんだけれど、まあらしい開き直り方だったかな、と。
ちょっと残念だったのは、秋帆の元パートナーとなる四条くんのヤバさが触りしか描いていなくて、ガチンコでぶつかるに至らなかったところと、肝心のダンス描写があんまりイメージ湧かなかったところかなあ。同じ競技ダンス部の面々はなかなか個性的で面白いメンバー揃ってたと思うんだけれど、それだけにもうちょいこの人たちとの絡みも欲しかったんだけれど、これはシリーズ続いてくれないと一巻では無理か。

佐々原史緒作品感想

かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 ★★★★☆  

かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。銀次とともに、南の地のライバル宿「折尾屋」に攫われた彼女だが、持ち前の負けん気と料理の腕で、逞しく居場所を作っていた。銀次と乱丸の行く末を心配する磯姫の想いを継ぎ、「海宝の肴」の担当を買って出た葵。早速献立の考案や食材集めに奮闘する彼女と銀次の元に、「天神屋」から思わぬ助っ人(?)がやってきた!懐かしくも頼もしい仲間に励まされ、準備も順調に進んでいたのだが、呪われし南の地には、それを快く思わない存在がいて…。
これはあかんわー! 飯テロ飯テロ!! これまで兎に角読んでるだけで激烈に腹が減ってくるほどの美味そうな食事シーンを書くと言えば【ベン・トー】シリーズのアサウラさんがぶっちぎりで抜けてたんだけれど、本作完全に並んだね。完全に匹敵してしまったね。なにもうこの読んでるだけで涎ダラダラ垂れてきそうな、ガチでお腹鳴ってしまう感覚!? めっちゃくちゃ美味しそうなのよ、美味しそうなのよ。食べたい食べたい食べたいッ!!
甘口のお酒片手に齧るジュージュー焼いた分厚いベーコン!! 
焼きたてサクサクの甘夏ジャムパイ!!
高級牛肉のステーキにガーリックバターライス!! 肉焼いた鉄板で炒めたご飯よ、エキスが充填されまくってるのよ!?
カリっと揚げた生湯葉包。プリプリの海老にチーズが包んであって、生湯葉の食感も絶妙でうははは、食いてぇ。そしてあのローストビーフサンドの美味そうなこと。
とびっきりはあのきのこの串焼きとヤマメ乗せご飯ですよ。串の上からベーコンのエキスや焼きトマトの汁、溶けたチーズがとろとろと重なってきのこに被さって。やばいやばい、これはまじやばい。
おまけに、ヤマメですよ。一度焼いたところからさらにご飯に乗せて炊いたので、骨まで一緒に食べれるという贅沢使用。炊いている間に染み込んだヤマメのエキスで膨らんだ、醤油としょうがで炊き込んだご飯に、スダチをふりかけたヤマメの身をほぐして混ぜ込んで食べるこの御飯のヤバイことヤバイこと。いやもう、やべえよこれ!!
そんでそんで、サクサクのカツをフワフワと出汁卵でとじたカツ丼! カツ丼!! カツ丼!! あのじっくりと煮込んだ玉ねぎの風味がまた、最高なんですよねこれ。
トドメが、海坊主のために用意されたメニューですがな。これがねー、また全部美味そうなんですわー。エビマヨ!!! エビマヨよ! 個人的にはブリの照り焼きが良かったんだけれど、しかしエビマヨ! マヨネーズも手作りなんだけれど、これがマジヤバイ!! 海老が海老でまたこれプリップリなんですよ。もう想像しただけで、噛んだ時の歯ごたえとか、そこから溢れ出してくるエキスとか、それがコク旨なマヨネーズと合わさったときの味とか、考えただけで意識飛びそうッ。
でもって、甘夏ジャム絡めの鶏もも肉の唐揚げって、なにーー!? それなにーー!! ホワーーッ! おまけに紫蘇巻のアジフライ、チーズ入りとか、最高じゃないですか。
メインの「真鯛ときのこのクリーム煮」「豚モツの赤味噌煮込み」「すき焼き風肉豆腐」とか、最狂ですよ。もうこれどれ来ても、というか全部行けますよ!? 和風カレーキッシュも、これがもうもうっ、どうするよ、どうするよこれ!? これにもチーズが大活躍してるんですよね。チーズ働きすぎじゃないですか!? とろとろすぎませんか!? こうして振り返ってみると、意外と食材に関しては流用してるんですよね。きのこやベーコンなんかもそうだし。そういう、食材の工夫が小料理屋のそれらしくて、また家庭料理の延長のようで、いいんですよねえ。肉豆腐、牛肉のエキスが染み込んだお豆腐、くぅぅぅ、味覚の想像力が爆発しそうだ。
あのココナッツミルクのアイスモナカ(揚げ白玉入り)なんかも、デザートいいなあ。デザート美味しそうだなあ。
なんかひたすら料理がいかに美味しそうかというところばかり語ってしましたが、だって我慢できないんだもんよ! こんな、こんな美味しそうなものをパクパクと美味しそうに食べやがって。この、お預け感。テレビのグルメ番組でも料理漫画でもこんな風に空腹感にのたうち回るようなことはないんですけどね。ひたすら食べられない凄まじく美味しい料理が目の前を流れていくのを指を咥えて眺めているしかない絶望感、ガチで気が遠くなりそうでした。文字で書かれた料理は食べられないんだよ!! 食べられないくせに事細かに解説くれながら美味しそうにたべやがってーーっ! 泣くぞ!!

……一旦、夕食を食べて落ち着きました。白米バンザイ!

さて、肝心の物語の方は折尾屋編クライマックス。これ、表紙絵は海坊主からの視点というイメージになるんでしょうなあ。折尾屋で酷い扱いを受けてどうなるかと心配した葵ですけれど、みるみると折尾屋の従業員たちにも心開かせてしまい、ほんとタフな娘さんやでぇ。
でも、決して全然堪えていなかった、というわけではなく、こういう厳しい環境だったからこそ余計に絶対的な味方である銀次と、大事な時にはいつも見守ってくれていた大旦那様の存在感が増した章でもありました。特に大旦那様は天神屋に居る時は逆にちょっと距離を感じていただけに、離れて逆に親しみと安心感を感じさせる存在になるとは展開の妙でありました。
あと、今回ケモノ系の妖怪がたくさん居たせいか、弱ると妖力が減衰して人型を維持できずにチビケモモードになるの、あれ反則でしたよ。どれだけ普段イキッてても、あんなちびっ子くてメンコイ姿になったらかわいくて仕方ないじゃないですか。特に反則だったのが乱丸ですがな。なに、豆柴って! あれだけ強面張ってても、豆柴なんかになられたらもう受け入れるしかないじゃないですか。銀次のチビ狐モードとセットになったときの絵面の可愛らしさと言ったら、まあもう。
葵も結構酷い扱い乱丸にされたはずなんですが、豆柴相手じゃ怒れねえ。
いずれにせよ、乱丸も銀次との関係やこの海坊主を迎える儀式に懸ける意気込みや因縁を思えば、自分を傷つけるほどに張り詰めていたのもわかるだけに、兄弟同然に育ちながらたもとをわかった乱丸と銀次の二人が、長年のスレ違いからお互いの苦しさや信念を理解し受け入れ、ついに和解へと至ったシーンにはやっぱり良かったなあ、とじんわり滲むものもあり……。
なんちゅうか、弟とのことや過去の後悔、今の生き方、相容れぬライバル店との対立。これまで受け入れられずにはねつけていたものが、すっと内側に入ってしまう瞬間、というのがあるんですなあ。それらを受け入れられるだけの器が広がったと。人間、いや妖怪なんですが、人間的に一回り大きくなることが乱丸にしても銀次にしても、この一連の出来事を通じて叶ったわけで。また、間違いばかりじゃなかったんですよね、これまで彼らが歩んだ道、というのも。すれ違いや回り道はあったとしても、二人とも信じて進んできたこの道は間違っていなかった、ということでもあり、その結果を導いてくれたのは葵の存在だったとしても、彼らの生き方は祝福されるべきなんでしょうね。いや、そうあり続けたからこそ、葵もまた磯姫の遺志を引き継いで鎹になれたのでしょう。
葵自身も、今回は試練でした。
これまでついぞ出くわさなかった、本物の悪意で人間である自分を害しようという妖怪との遭遇。自分の根幹となっていた料理を奪われそうになる危機。そして、彼女の在り方の根源にあるトラウマに秘められた、謎の妖怪の真実への追求。どれも一人じゃ頑張れない案件でしたが、彼女が繋いできた縁が天神屋の妖怪たちにしても、新しくこの折尾屋で仲良くなった面々にしても、こぞって手を差し伸べてくれた展開は、雷獣の悪意を以って示した妖怪と人間の関係の現実を完全に吹き飛ばすもので、この娘こそ間違いのない真っ直ぐな道を歩んでるんだなあ、と安心するやら嬉しくなるやら。
特に、折尾屋では天神屋の料理長とは違う、同じ立場で一緒に切磋琢磨できる料理人である鶴童子の双子が、銀次でも大旦那さまでも出来ない同じ料理人としての立ち位置から、葵の心と挟持を支えて背中を押してくれましたらねえ。あの二人は本当に良い役回りでした。表紙絵でもわりと目立った場所を確保しているのも納得。
そして、クライマックスの海坊主を迎える儀式。これがまた、事前の話からは予想だに展開に転がっていくのですが、これがまた胸を温かくさせるようなお話になってくれまして。そうそう、葵の供する料理というのはこんな澄まして畏まったコース料理風なんかじゃなくて、あくまで家庭料理、小料理屋的なものであり、ただ美味しいだけじゃない、一緒に食べ一緒の時間を過ごす、というのを大事にしているというのはこれまでの数々の料理・食事シーンからも明らかだったわけで、ハプニングによるものとは言えあくまで葵らしさを貫けて、温かい気持ちをみんなに分け広められた最高の饗宴でありました。
明らかになったかと思われた、葵の過去も引き続き謎が謎を呼ぶ展開、というかさらに隠された秘密があったことが浮き彫りになってきて、天神屋に戻ってもそうそう落ち着くことはなさそうですが、それがまた楽しみ楽しみ。

シリーズ感想



浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 ★★★★   

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

【浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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浅草に住み、浅草グルメをこよなく愛する女子高生、茨木真紀。人間のくせに日々あやかし関連の厄介ごとに首を突っ込んでは腕力で解決する彼女には秘密があった。それは真紀が前世の記憶を持っていること。その前世は人間ではなく、平安時代にその名を轟かせた鬼の姫“茨木童子”だということ。前世で「夫」だった“酒呑童子”の生まれ変わりである同級生の天酒馨を引き連れ、ブラックバイトに苦しむ手鞠河童や老舗そば屋を営む豆狸の一家など、悩めるあやかしたちのために「最強の鬼嫁」は今日も浅草中を駆け回る!
ほんとに通い婚だなあおい。
基本メンバーとなる真紀、馨、由理の三人は同じ作者が別名義で書いていた【メイデーア魔王転生記】とほぼ同じキャラクターなんですよね。勿論、キャラが同じだけで背景や物語は違いますし、世界観も異なっているのですけれど。
前世で恋人だったり夫婦だったり、という関係は少女漫画的にはドキドキキュンキュンした感情の動性が激しいものが多いのですけれど、ってか前世モノって再会イベントこそが最大の盛り上がりのはずなんですけれど、その手の定番に拘らずに既に幼少時に再会しちゃってるんですよね、この夫婦とプラス由理。
文句なしの幼なじみである。
また、前世の夫婦関係というのはその密接さ故に逆に現世ではなかなか感情のすり合わせができずに、再び結ばれるまで様々な紆余曲折があるのもまた定番なのですが、この真紀と馨ときたらどれだけ年季の入った熟年夫婦だよ、と言いたくなるような所帯じみた夫婦っぷりで。真紀なんかは夫婦関係を公言して憚らないですし、馨の方もまだ夫婦じゃねえ、と真紀が夫婦とか妻とか口走るたびに反論してるんだけれど、ほぼ必ず「まだ」という副詞が頭についているあたり、ただ建前に拘ってるだけなんですよねえ。
ってか、家で寝る以外は真紀の部屋に帰ってきてそこでご飯食べて一緒にDVDみたり、と同棲してるのと何ら変わらない生活様式になってますし。
前世は酒呑童子と茨木童子として多くのあやかしを纏めていた立場から、それなりに大仰な生活を送っていたと思われるだけに、なんで現世だとこんな所帯じみた夫婦になってるんだろう、と思わなくもないですけれど、下町全開の浅草という街が舞台なのに適応してしまっているのか。学校帰りなどの浅草食べ歩きなんか、どれも美味しそうだもんなあ。
そう、この作者の作品らしく、実に飯テロが決まってるんですよねえ。同じ世界観の【かくりよの宿飯】でのご飯が庶民的でありつつもかなり工夫が凝らされた上品な小料理屋らしい料理なのに対して、こっちで描かれるご飯は買い食いのネタだったり、屋台のあれこれだったり、自宅でちょいちょいっと料理して食べる本当の家庭料理だったり、という身近なものなんだけれど、これはこれで実に美味しそうで……。
というか、真紀がどれもこれも本当に美味しそうに食べるもんだから、それに胃が引っ張られてる。由理も馨もこの食いしん坊には実に甘々なので、あれこれと絶えず食べさせてあげるものなあ。まあ、あれだけ美味しそうに食べられたら、ついつい口の中に放り込んでしまう気持ちもわからないでもない。
でも、馨のバイト代の何割が真紀の食費に消えているのかは興味深い部分である。高校生の段階で、この生活費を稼いでる感の凄まじさよ。
人情モノらしく、元あやかしの大親分だった真紀が困っているあやかしたちを助けるためにトラブルに首をツッコんでいくのを、毎回苦言と言うか説教しながらもマメにマメに手助けし、後始末をしてまわっている馨と由理というトリオのはっちゃけぷりが実に楽しい。今は人間に生まれ変わり、人として生きながらも、あやかしたちを見捨てられない三人の優しい元あやかしたち。かつての悲惨な末路は、彼らの中に傷跡として刻まれているはずなのだけれど、その過去に背を向けず逃げ出さず、積極的に首突っ込んでいく真紀さんは、元は儚げな藤原の姫様だったはずなのに、なんでこんな姉御肌なんだろう。思いっきりパワータイプな脳筋型だし。

しかし面白い。真紀たち三人共若者らしい溌剌さや子供故の家族関係の悩みを抱えていながらも、夫婦として見るとむしろ枯れてさえいるような落ち着いた関係で、好きとお互い公言しているにもかかわらず、さっぱりしてるんですよねえ。これだけいつも一緒に居て、同じ時間と空間を共有しているのに、ベタベタした感がない。イチャイチャはしているんだけれど、甘酸っぱいというよりも安心が先に来ているというか……連れ添うという言葉が本当に似合う二人なんですよねえ。
同時に、二人きりの狭い世界にならないのは真紀の社交性と、由理という第三者であり理解者がそれこそ家族並に身近にいるからか。本当に面白い、心地の良い関係である。
ラストで茨木童子の存在が広く知れ渡ってしまった以上、前にもましてトラブルが飛び込んできそうな状況にはなったものの、この三人なら全然大丈夫そうなので、そのへんは安心して見ていられそう。
そう言えば、ゲストで【かくりよの宿飯】の大旦那さまがチラッと登場してたけれど、良いサービスでありました。

友麻碧作品感想

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 ★★★★   

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 (富士見L文庫)

【ぼんくら陰陽師の鬼嫁】 秋田みやび/しのとうこ 富士見L文庫

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京都は左京区、哲学の道にほど近い公園で。何かと不幸な体質の野崎芹は、やむなき事情で住処をなくして途方に暮れていた。そんな彼女に手を差し伸べたのは、通りすがりの陰陽師・北御門皇臥。なんと彼の式神が視えた芹を、嫁に迎えたいということで…!?破格の条件につられ仮嫁契約を交わす芹。ところが皇臥は式神以外の能力がない、ぼんくら陰陽師だった!怪奇事件にも逃げ腰で、悠々自適の生活のはずが家計がピンチ。ここに芹はプロの嫁として、立ち上がることを決意するのだった―退魔お仕事嫁物語、開幕!
あ、これ同じ作者の富士見L文庫から出てる【三宮ワケあり不動産調査簿】と世界観一緒なのか。あちらが神戸でこちらが京都と。作中で明言されてはいないのだけれど、どうやらあちらで登場してた人らしき人物の話がチラリと語られてたし。こういう世界観を広げる作品跨いだシステムは好きなので大いにやって
欲しい。
本作、一見してジャケットデザインやあらすじから時代背景がわからなかったのだけれど、ガッツリ現代なのね。現代で通りすがりに陰陽師が歩いているあたり、さすがは京都である、パない。
その陰陽師の北御門皇臥くん。思いっきりタイトルでぼんくら呼ばわりされてますけれど……いや、ぼんくらは言いすぎじゃないですか? 確かに超一流とは程遠いみたいですけれど、全然陰陽師としてダメってわけじゃないし、仕事に対して意欲がない訳じゃなくむしろ真面目な方だし。そりゃ、いささか頼りないなあ、と思う所はあるけどさ、ぼんくらとまでは……。何気に優秀でも無能でもないって中途半端ですね! でも、普通や平凡って感じでもないんですよね。単に得意分野に偏りがあって、苦手分野に対しては及び腰ってだけで。
でも、仕事を選り好みできるほど現代の陰陽師は悠々自適ではないわけで。そうだよね、自営業だもんね、陰陽師。しかも、料金システムがちゃんとしているような職種ではないので、何気に現物払いが少なくない、というのはちょっと笑ってしまった。物によっては現金よりもありがたいケースも有るので、一概に悪いとは言えないんだけれど。
そんな苦手分野を選り好みしてしまっていた旦那に、いつまでもそんなことじゃこの先やってけないでしょう! と尻を叩く羽目になったのが、新妻芹ちゃんなのである。
偽装結婚じゃなくて、一応ガチの婚姻なのかー!! 幾ら住むところも手持ちのお金もないという切羽詰まった状況だったとはいえ、思い切ったよなあ。一応書類上は正式な婚姻を結ぶと言っても、生活実態はあくまで名目上であって、いわゆる雇われ嫁なのだけれど……恋愛が介在しないだけで嫁としての役割は子作り以外はほぼ満了でこなしているあたり、なるほどプロ嫁である。
しかも、お姑さんの相手までw
いやこれ、気持ち的に仕事と割り切れる芹ちゃんよりも、お姑さんの方が複雑ですよ。一応、これが息子が親戚筋の圧力を躱すために契約した偽装嫁という事実を知っちゃってるわけですから、どう対応したらいいかそりゃわかんないですよ。わかんないなりに、なんか腹立つので地味に嫌がらせしてしまうあたりは苦笑モノだし、その内容が嫌がらせというには人が良すぎるものなのが、まったく微苦笑モノなのですけれど。そして、結局息子と同様にプロ嫁に餌付けされてしまってるし。何このお姑さん、チョロいww
だいたい芹ちゃんも、これが契約婚姻ならもっとビジネスライクにやりゃあいいのに、色んな意味でやる気満々なのが微笑ましい。皇臥と知り合ったきっかけが、本来他人には見えない彼の式神であるまもりちゃんに懐かれてしまった、というところから始まって、健気で愛らしい幼女なまもりに随分と思い入れてしまっている、というのも北御門家にビジネスじゃなく親身になってしまっている理由なんだろうけれど、皇臥に対してもさっそく尻に敷いているあたりは、もう完全に嫁してるんだよなあ。しっかり者で人情家の嫁とか、よく捕まえたもんである、皇臥くん。何気に大昔に唾つけてたことも発覚するんだけれど、新参の嫁に発破かけられてやる気になったり喜んでるあたり、こ、こいつはぁ……と思わないでもない。芹ちゃんみたいな性格だと、こういう頼りなさそうで意外とたちが悪いというか、手癖が悪いと言うか裏で手綱を引くのがうまいタイプにはハマりやすいのかなあ。叩けば叩くほど発奮するし、いざという時しっかり守ってくれる旦那というのは、しっかり者の嫁としたら気持ちいいでしょうし。

事件の内容は、陰陽師というセラピスト、みたいなものではなく、わりとガチの心霊案件。同時に、家族間の関係がお婆ちゃんの死によって微妙に拗れてしまった、というか要であったお婆ちゃんが居なくなったことでギスギスしたものが露呈してしまってきている、という状態か。それを、この怪奇案件をきっかけに事件の真相をミステリーのように解き明かすことで同時に家族の内実、思い込みを取っ払った本当の姿、心の在り処というものを詳らかにしていくことになるんだけれど、これがまた悪意がある一方で思わず心温まる愛情のお話でもあって、夫婦っていいなあ、いいですよ、どうよ? と契約夫婦の二人に見せつける話にもなっていて、いやはやごちそうさまでした。
二人とも満更でもない、というか既に皇臥くんの方はガッツイてる感すらあるので、いやむしろお前が一歩引かないと芹ちゃん思わず後ずさりするしかないじゃない? と言いたくなる二人なのですけれど、雰囲気自体はいいだけに、このまま既成事実にすり合わせる感じで距離縮まっていってほしいものです。その過程をつぶさにシリーズ化してほしいものです、はい。
あと麺つゆは許しましょう。許しましょう。あれは万能ですけぇ、お姑さんも恥ずかしがらずw
にしても、ぼんくらも誇張だと思うけれど、鬼嫁も言い過ぎだわなあ。芹ちゃん、全然鬼じゃないですよ。叱られる旦那の方が反省スべしw 式神たち、みんな嫁派になっちゃってる件についてよく考えなさい。

秋田みやび作品感想

三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき ★★★★   

三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき (富士見L文庫)

【三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき】 秋田みやび/高田桂 富士見L文庫

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神戸三宮駅から徒歩10分。「高比良不動産鑑定事務所」の看板には、白いシールに手書きで「特殊」の文字が貼り付けられている―。大学進学をきっかけに、高比良茅夏はその職場で働くことにするのだが…所長で兄の陸は鑑定士と神主の二足草鞋。仕事で訪ねる先は霊障が噂されるマンションから、因縁つき一族の暮らす家まで。ホーンテッド物件にまつわる謎を、査定額に見合うよう解き明かす、事実上その手の“霊的物件”専門の鑑定事務所だったのだ!受付担当の茅夏が、奇妙な依頼に巻き込まれるのも必然で…。
この作者の人、【ソード・ワールド】のTRPGリプレイや【へっぽこ冒険者】シリーズのノベライズ手がけてた人なんですよね。特にへっぽこシリーズは単に面白いだけではなく小説としてガッチリとした構成を感じさせる歯ごたえがあってファンだったんですよね。
その秋田さんが富士見L文庫で新作を出すことを知り、よくよく調べてみたら既に以前に一冊出してるじゃないですか。で、慌てて購入したのがこれ。兄が経営する不動産鑑定を請け負う事務所でバイトする女子大生が主人公のお仕事もの。
メディアワークス文庫と富士見L文庫のお仕事モノの作品は、普段どんな業務やってるのかさっぱり知らないような業種の話をかなり濃い目に描いてくれるので非常に面白いんですよね。本作も、不動産鑑定という文字通りの不動産の評価・査定を行う業務に纏わるエピソードを扱っているのですが、これも普通に暮らしていたらそうそう関わることのない仕事なだけに、いちいち興味深い。一方で舞台となる事務所に持ち込まれる案件は、いわゆる「オカルト」が絡んでいる不動産が多かったりするのである。所長の兄は神主の資格を持ったガチの霊能者。いや、本来なら実家の神社を継ぐはずが何故か不動産鑑定事務所なんか始めちゃってるのだが。で、歳が一回り以上も離れている妹の茅夏も兄ほどではないけれど霊感が有るタイプ。その彼女ともう一人、事務所に出入りしている大学生の生意気小僧志水颯。どういった経緯で事務所に入り浸るようになったのかについてはまだ明かされてないのだけれど、霊的物件専門の鑑定事務所に出入りしているくせに、この颯は根っからの科学信奉者でオカルトのたぐいは一切信じていなかったのである。
この二人がコンビを組んで、というか仕事を押し付けられて出先の物件に調査に行くことになるわけだが……。
探偵役は颯の方。皮肉屋で斜に構えた小憎たらしい小僧なんだけれど、頭の回転の速さと知識量については本当に抜群で、ああこいつガチで頭いい奴だ、というのが否応なく納得させられる才気煥発な小僧なんですよね。
最初の以来の幽霊マンション。ここで起こっている霊障の原因も、彼が目ざとくわかりやすい物理的現象の結果起こっているもの、として突き止めていくのである。この科学的検証も見せ方が上手くて次々と原因を明らかにしていく過程がわかりやすく痛快で面白いんですよねえ。それだけでも十分話のネタとして通用しそうなんだけれど、ここから事態が二転三転していくのである。
そう、ガチの霊障が起こり始めるのだ。
颯にとっては初めて体験する、自分の知識では解決どころか説明もできない本物の心霊現象である。面白いのがここで彼が示す反応が拒否や否定ではなく、未知の現象に対する好奇心と探究心なんですね。実際に体験してしまった以上、心霊現象や呪術魔術のたぐいは実在するのだ、と受け入れた彼はここから更にバージョンアップしていくのだけれど、ともかく霊障と呼ばれる出来事へのアプローチが科学とオカルト、両方から非常にバランス取れているのだ。霊感のあるヒロインの雪菜や兄の友人である胡散臭い陰陽師の御前尊もガチの霊能者であるからこそ、霊障がガチかそうじゃないかについては判断は慎重だし、自分の感覚を盲信もしないので、起こっている問題に対して過剰な反応を示すことなく、スタンスが実にフラットなのである。
二軒目の次々にそこに住んでいる家人が異常な死に方をしていく呪われた家の話の方は、完全にもうオカルトサイドの領域なんだけれど、呪詛だの何だのが原因だったとしてもちゃんと通る筋があるはずで、理不尽に何の理由もなく何のルールもなく無茶苦茶に結果が発生しているはずはないんですよね。何故何が原因で理由で、ルールでこのような異常死が起こるのか、科学で説明できない現象だとしてもちゃんと発生から結果までの筋立った論理は存在する。その謎を解き明かしていくミステリーが緊迫感と相まってこれがまた面白い。
颯と雪菜の学生コンビに存在自体が胡散臭い陰陽師と神主の兄。キャラクターも個性的でパワフルなんですよね。十歳以上歳が離れている兄と妹の微妙な関係とか、主人公の雪菜が何気にイイ性格しているというかタフな性格していて、才気が迸りすぎててちょっと火花散ってるんじゃないかという微妙に危険人物というかフリーダムな颯に対しても、当初はともかく慣れてくると物怖じせずに結構どんと構えて接してるところとか好きでねえ、いやこの女性主人公が自分、お気に入りなのか。今のところ一冊しか出てないシリーズなのだけれど、もっとこのメンバーで色々と話読んでみたいですねえ。

秋田みやび作品感想

かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。 ★★★★   

かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。突然やって来て銀次を連れて行こうとするライバル宿「折尾屋」の旦那頭・乱丸に楯突いた結果、彼女は南の地に攫われてしまう。こそっとついてきたチビの力を借り、地下牢から脱走しようとする葵だったが、その前に乱丸はじめ「折尾屋」のあやかしたちが立ちはだかり―。銀次と一緒に「天神屋」に帰るため、四面楚歌の状況を打破すべく葵が考えた秘策とは…ゴーヤチャンプルー!?

くあぁぁぁ! なんという飯テロ!!

いやもうこれヤバイでしょう。出てくる料理がどれもこれも美味しそうで美味しそうで、お腹すきますわー! 読んだの夕食を食べたあとだったというのに、なんだか食い足りない気分になってしまってお茶漬け作って食っちゃいましたわいな。巻を重ねるごとに、料理の描写が鮮やかになってきてるんですよね。これに関しては【ベン・トー】シリーズのアサウラさんに匹敵してきたかも。あちらと違うのは、葵が作る料理がちょっとレベルの高い家庭料理というところでしょうか。なかなか気楽に食べられそうにないんですよね。小料理屋とか行かないと難しいんじゃないだろうか。いや、ちゃんと家でも作れるくらいの品なんだろうけれど、素材の新鮮さとか料理の手際なんか見てるとねえ。
それにしても、思い返しただけでもよだれが垂れてくる。あのプリプリっとしたイカしゅうまい。タコのゴーヤーチャンプルとか、ガーリック風味とふんわりと絡ませたとき卵がまたいいんだ、美味しそうなんだ。エビ頭の出汁でとったお味噌汁までついて、これが朝ごはんなんだぜ。
そして、タルタルソースがたっぷり掛かった、これまた新鮮な牡蠣をふんだんに使ったカキフライ! カキフライ! いや、実のところ自分牡蠣系は苦手なんだけれど……苦手なんだけれど、これは食べたい。レモンがたっぷり掛かってるんですよ。たまらん。
子供の頃は苦手だった茄子も、この歳になるとすっかり大好物になってしまって、揚浸しなんかすごい好きなのですけれど、この串焼きにした焼きナスも素晴らしい香味で、うんうん。なにより、鶏ですよ。手羽先を、おおこんなに大胆に使っちゃって。煮るんですよ。お酢と醤油と砂糖で煮込んで、茹で卵と大根も仕込んで。あのホロホロと肉が崩れ落ちるまで柔らかくなった手羽先の美味しそうなこと。卵と大根だってしっかり味が染みこんでて、ごはん、白いごはんをよこせーー!!!
あと、ブリの漬け丼とか、ニラ玉みぞれスープとか、そしてがめ煮と九州北部では呼ばれるらしい筑前煮。どれもこれも、もうたまらんくらい美味しそうで、どうしよう、どうしてくれる!!

大旦那様、あんたとんでもないのを嫁に捕まえてきましたね。うん、これはね、これなら餌付けもされるよ。飯で色々問題も解決できるよ。真心の篭った美味しい料理ほど、魂にドスンと来るものはない。舌から脳髄に魅了の電撃が流れ、頑なになっていたものもこわばって元の形に戻れなくなっていたものも、自然と解きほぐれてしまう。
美味しいごはんの偉大さよ。でも、ただ美味しいだけじゃあ足りないのだ。食べる人のことを一身に考えて、心を配り、考えに考え、その人が一番おいしく食べれるように作られたからこその美味しさであり、だからこそその美味しさの前に人は素直になってしまう。
大天狗の松葉さまがずっと抱え込んでいた後悔。息子である葉鳥さんとの不和も、お互い歩み寄ろうとしてこれまでの時間の蓄積とわだかまりがそれを妨げていたのを、二人の共通の思い出の料理が葵の手によって供され、思い出の中で定まらなかった真実が解き明かされるのですが、やっぱりこういう親子の情を沸き立たせる良い話は染み入るくらい好きなんだなあ。
個人的には乱丸や秀吉の乱暴な態度は幾らなんでも理不尽すぎて、どんな理由があり、儀式を成功させるためにどれほどの思いを重ねてきたのかが理解できてもなお、怒りは収まらず納得も出来ないのだけれど、不屈の思いで逃げず負けず、自分のできることに全力を注ぎ続ける葵のことは素直に応援してあげたい。本当に大した娘さんである。
しかし、今回は理不尽な扱いもありかなり精神的にも弱っていたっぽいのだけれど、ここぞというときにひょいっと現れてくれる大旦那様は、うんカッコ良かったよ。むしろ、天神屋に居る時はトップとしての立場が邪魔して気安く接してこれなかった分、魚屋に扮してひょいひょいと葵に会いに来た大旦那さまは、えらい親しみやすくて、それでいて弱っていた葵を自然と支えて勇気を与えてくれたせいか、好感度ガンガンあがってましたねえ。むしろ、天神屋に居た時よりも一緒に居る時間の密度も濃かったんじゃないでしょうか。あれで大旦那様、マメだし甲斐甲斐しいし手伝い上手だし、こうしてこっそり会いに来てる時のほうが距離感近いんだよなあ。
銀次さんを連れ戻すために折尾屋から逃げ出さずに踏ん張っている展開なだけに、銀次さんと急接近か、と思ったけれどむしろ忙しくて顔をなかなか見せられない銀次さんより、大旦那さまの方との距離が縮まるとはなかなかに予想外でした。花嫁呼ばわりから新妻呼びにまで発展していたにも関わらず、葵ももう否定しないどころかなんか満更でもなさそうな感じになってましたし。
いやあ、でも銀次さんも大旦那さまも、二人とも甲斐甲斐しいからどっちも旦那としては好物件なのよねえw

銀時が折尾屋に戻る原因となったある儀式。これにまつわる話の決着は次回に引き継がれたのだけれど、これまでの過程見ても殆ど全部葵が必要なものとか集めてしまっているんですよね。乱丸、偉そうにしているわりに何もできてないぞ。これは葵を連れてきた黄金童子さまの慧眼、というべきか。
ああ、記事書くのにちらちら読み返してるだけでまたお腹すいてきた。サバ、サバに煮付けとか食いたい。

シリーズ感想

かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 ★★★★   

かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。】 友麻碧/ Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿・天神屋の離れに、ついに食事処「夕がお」を開店させた葵。トラブルはあったものの、食事が縁で打ち解けたあやかしたちの力を借り、ようやくお店も軌道に乗り始めた。そんなある日、仕事で大旦那様不在の天神屋に“招かざる客”がやってきた!天神屋のライバル宿・折尾屋の番頭だという天狗の葉鳥は、なんと元は天神屋の番頭で、しかも暁の師匠にあたるそうで…。さらには、かつてその折尾屋に在籍していたという銀次の様子もおかしくなってしまい!?
葵に雑用頼まれてめっちゃ喜ぶ大旦那様が可愛すぎるんですけれどw
むしろ、何もしなくてもいいから大人しく待ってなさい、と言われるとしょんぼりしてしまう始末。ちょっと、大旦那さまってこんな愛くるしいキャラでしたっけ? 手乗り河童に負けないくらいあざとい、超あざとい!
餌付けも段々浸透し、前回の冷戦状態にあった料理長とのトラブルも丸く収めたことで天神屋の従業員たちからも好意的に見られるようになった葵。内側のいざこざが収められたら、外からトラブルが降ってくるのが順当というわけで、ライバル店にして因縁深い折尾屋の幹部たちが客として乗り込んでくる……って、あらすじ読んでると厄介事を持ち込んできたトラブルメーカー、みたいな扱いされてるけれど、実際はクレイマーとかそんなんじゃなく、普通にお客として来てるだけだったんですよね。しかも、元天神屋の従業員だったという視点から色々と助言くれたりして……いい人じゃん!!
もう一人の折尾屋の湯守の時彦さんも、天神屋の湯守の静奈さんの育ての親で師匠、ということで二人の関係はややこしい事になってるものの、基本的にいい人だったしなあ。
これ見てると、折尾屋とのトラブルって概ね折尾屋の旦那の乱丸の私怨なんじゃないか、と思えてくる。いや、それだけならもっと簡単な話だったんだろうけれど、まさか折尾屋と天神屋の関係が単なるライバル競合店じゃなく……という展開には唸らされた。うん、これは拗れるわ。ただ、だからこそお互いの店での人員の行き来も多かったんでしょうけれど。静奈ちゃんも元は折尾屋で働いていたみたいですし。

しかし、食事処「夕がお」ってお客さん相手のひっそりとした隠れ家みたいな売りとは別に、営業時間外は天神屋の従業員の憩いの場になってるんですねえ。みんな、仕事終わったあとにご飯食べに来て寛いでるしw
中には就業時間中にフラフラとつまみ食いしに来やる妖怪も居たりしますけど。客商売である以上、どうしたって気を張り詰めて緊張感を保ちながら働かなければいけないわけで、「夕がお」はそんな彼らの癒やしの場になって、葵の料理を食べてホッと強張っていた体や心がほどけて、息をつく様子を見ているのは、何ともほっこりしてしまう。
葵の料理も、単に美味しいんじゃなくて、すごく家庭的なあったかさがあるんですよねえ。食べる人のことを考えて作られてる。かと言って、家で出すような気を抜いたものではなく、すごく和風に凝ったアレンジがされていて、品が良くて同時に気安い。うーん、いやマジで美味そうなんだよなあ。これ一品一品に加えられたアレンジって生半可なものじゃなくて、本当に凝ってるんですよ。カレーにしても、かき氷にしても一手間も二手間も加えられていて、これがめちゃくちゃ美味そうなのだ。
飯テロである。
これ、現世の料理の知識が乏しいアヤカシたち、とか関係ないですよねえ。普通に、目の前に出されたらなんじゃこれ、美味しそう! ってなりますがな。
パン一つとっても、あんたパン屋さんか、と思うくらいにあれこれ仕込んでますし。
一方で、ついに葵がご相伴に預かることが叶った天神屋の目玉である料理長の懐石料理。これはこれで、素晴らしく美味しそうで美味しそうで。舌鼓を打って堪能しまくって悦に浸ってる葵の羨ましいこと羨ましいこと。
懐石って敷居も値段も高いんだけれど、こうしてみるとやっぱり美味しそうなんだよなあ。今まで食べたことのあるものも、何だかんだと美味しかったし。
でも、サンドイッチとか手軽に食べられる料理も美味しそうでねえ。豚の生姜焼きを挟んだBLTサンドとか! うう、美味しそう美味しそう。う、うどんナポリタンだと!? しかも、肉団子入り。色物にも思えるけれど、トマトから作った自作ケチャップを使ったそれは、やばい。すごくやばい。
この料理自体、こじれてしまっていた静奈と時彦の関係を繋ぎ直すために葵が下ごしらえしたオプションなんだけれど、それはそれとして美味しそうで美味しそうで。

お腹減った。

まあいい、大旦那さまを十分愛でられたので、大満足です。大旦那さまって、ちょっとだけ距離をあけたところから見守ってくれる存在みたいな感じが微妙にあったんですけれど、それはそれとしてあの構ってちゃんなところは可愛いなあ、と思うのですよ。
今のところ、男女の機微としては殆ど葵との間に生じてない気もするのですけれど。
むしろ、距離感としては若旦那である銀次との方がよっぽど近いなあ、と思っていたし、あの幼いころ葵を救ってくれたアヤカシの正体についても、それを匂わす伏線はどれも大旦那さまの影を感じないなあ、と勘ぐってはいたのですが……。
ラストの急展開を見ると、あれ? メインヒロインって銀次さんの方なの!?
今のところ、自分としてはどっちでもアリな感触なので、ここは流れに身を任せたい。場合によっては折尾屋と全面戦争になりかねない自体だけれど、今回の一件で折尾屋の中にも味方となってくれる人が出来たので、ある程度動きを取れる余地は作ってくれそうですから、あとは此処も葵の度胸次第になるのか。

シリーズ感想

かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。4   

かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 二 あやかしお宿で食事処はじめます。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”にある老舗宿・天神屋。女子大生の葵は、その大旦那である鬼神のもとへ、亡き祖父の作った借金のかたに嫁入りさせられそうになる。持ち前の負けん気から、あやかしたちの前で「借金は働いて返す」と宣言した葵。九尾の狐の銀次に助けられつつ、得意の家庭料理を武器に、ついに天神屋の離れに食事処「夕がお」を開店させた。だが、鬼門中の鬼門といわれるその場所は、一筋縄ではいかない。立地条件の悪さ、謎の営業妨害、そして予算削減など、「夕がお」の前途は困難ばかりで…!?
これは飯テロだなあ。読んでいてお腹が空いてしまう、というタイプじゃないんだけれど、「あっ、これは一口だけっでも摘みたい」と思わずヨダレが溜まってしまうタイプ、というべきでしょうか。
最近、食事描写や料理の描写が実に素晴らしい作品が散見されるわけですけれど、本作は食堂や凝った料理と違って、小料理屋の品が良いけれど気軽に箸をつけられる、まさに家庭料理の延長という風な料理なんですよね。でも、家のご飯に出てくる料理そのままではなくて、一品一品趣向が凝らされているのですけれど、それもほんのりと愛情篭った一手間、という感じがして、実に優しい風味なわけです。
なるほど、旅館の母屋から少し遠い離れの、静かな環境の中でトコトコとお湯が湧く音を聞きながら、じっくりと味わう手料理の数々。黙って静かに味わうもよし。連れ立ってきた相方と談笑しながら舌鼓を打つもよし。作中で、隠れ家みたいな雰囲気を味わえる店構え、なんて評価を受けているけれど、葵のひらいたお店はいっぱいのお客さんで満員になって大忙し、というよりも常連さんが落ち着いてくつろげる空間、というお店なんでしょうね。これなら、母屋の会席料理中心の高級感ある食事ときっちり住み分けできるんじゃないだろうか。
しかし、根性の据わった娘さんである。色々とへこたれても仕方ないような境遇に置かれても、負けん気が強くてくじけない。落ち込んでも引きずらない。前向きであっけらかんとして不敵に笑ってみせる、実に粋な姐さんである。こういう人って、他人へのアタリもキツかったりするのだけれど、彼女の場合打てば響く鐘のような溌剌とした部分と、包容力を感じさせるふんわりと包み込んでくれる柔らかさが相まってあるので、付き合えば付き合うほど好かれるタチなんでしょうね。気が強くもあるので、喧嘩を売られたら腕まくりして買う方なので、ナメられないですし。妖怪だろうと人だろうと区別なく、誑すタイプだ。亡き爺さんは、大いに好かれはすれども大いに嫌われもしたというので、その意味では葵の方が得なんだろうけれど。いや、純粋に彼女の場合は徳なんだろうなあ、これ。
そして、自立した女性でもある、と。今のところ嫁入りに反発しているのって、大旦那への反発じゃなくって借金の方に、というところなんですよね。見ている限りでは、大旦那個人に対しては懐いている、と言ってもいいんじゃないだろうか、というくらい屈託なく接している。大旦那からすると、自分と結婚したくない、と決然と言い放ちつつ、自分に対してはわりと気安く接してくるので、若干戸惑っているふしもある。好き嫌いに関しては暖簾に腕押し、というかあんまりこの娘、ちゃんと考えてないみたいだし。
キーワードは、幼いころに助けてくれた妖怪が誰か、というところなんだけれど、順当に大旦那さま、がその妖怪かと思ってたんだけれど、あんまりにも順当すぎてちょっと「あれ?」と思うようにもなってきたんですよね。銀次の反応が色々と怪しすぎて、一周回って怪しくないんじゃないかと思ってたんだけれど、さらにもう一周回ってやっぱり怪しくなってきたw

一巻感想

王女コクランと願いの悪魔 2 4   

王女コクランと願いの悪魔 (2) (富士見L文庫)

【王女コクランと願いの悪魔 2】 入江君人/カズアキ 富士見L文庫

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「君が好きだ。コクラン。…愛しているんだ」
悠久の時を彷徨い続けた悪魔と、孤独の運命を受け入れ続けた王女。奇跡によって逃れられぬ虚無から解き放たれたレクスとコクランは、あらためて出逢った。しかしレクスは捕らえられ、コクランの知らぬ間に後宮から追放されてしまう。離ればなれになっても、三度出逢おうとする二人。それを阻むのは、どこまでも深い後宮の闇と、初めて知る後宮の外の世界だった―。「めでたし、めでたし」のその先に、真の恋物語は始まる。
……まじかー(絶句
うん、凄いわ。発想の方向が全然違う。この人やっぱりすげえわ。
奇跡は起こったものの、コクランが置かれた過酷な状況は何も変わっていない。それは、前巻の最後でもわかっていたことで、素晴らしいハッピーエンドだったにも関わらず、ここまでその「めでたしめでたし」の一歩先から崖っぷちの話もないよなあ、とコクランとレクスの過酷な運命に思いを馳せたものでした。
でも、コクランなら、彼女が本気になったならなんとかなる、という楽観もあったのです。生きることを諦めていた彼女の周りには、でも彼女が幸せになることを望んでいる人たちが、確かに沢山居たわけで、その人達の支えがあれば、きっと本当の幸せをレクスとともに掴めることが出来る、とそう信じることが出来たのです。
だから、この二巻では戦うべきは、そのコクランの置かれた運命だと思って疑いもしなかった。
ところがところが。
そう、そんな簡単な、わかりやすく突き進みやすい方向で話は進まなかった。作者が用意した断崖絶壁は、果たしてそんなシロモノではなかったのです。
すべてを諦めていたが故に、現実から一歩離れ、まるで物語の中にいるようだと「物語の君」と讃えられたコクランが、生きたい、死にたくない、愛する人と、レクスと再び逢いたいと、必死に願い、なりふり構わず足掻いて藻掻いて戦おうとした結果が、これだというのか。
あれほど純粋だった愛情が、その愛の深さ故に穢れていく。ただ逢いたいというだけの願いが、その想いの強さ故に壊れていく。あれほど綺麗だったものが、その綺麗さ故におぞましいものへと変貌していく。果たして、その先にあるものは、かつてと同じ愛なのかすら、信じられなくなっていく。
凄まじい。コクランが戦っているのは、その過酷な運命のはずだったのに、いつの間にかコクラン自身へと成り代わっているじゃないか。「めでたし、めでたし」のその先に、よくぞこれほどまでの物語を紡ぎだす。その鋭利すぎる筆先が、凄まじいとしか言い様がない。

そのコクランに対して、悪魔から悠久の時を経て人間になったレクス。ああ、コクランのあの姿もまた生きた人間の姿だというのなら、悪魔から人となり、そして人としてのどん底にまで落ちながらも一片もブレることなく、コクランが愛し、コクランを愛したレクスのままであり続ける彼もまた、一際色濃い人間の姿なのだろう。
愛ゆえに変わらざるを得ず、愛ゆえに変わらぬことを貫く二人。
第二部として、これほどドラマティックにこのラブストーリーを仕立ててくれたなら、もう何の文句もございません。おどろくべきことに、この第二巻ではほとんどコクランとレクスは顔を合わせることすら出来てないんですよね。それなのに、一途なほど二人の愛の物語として成立している。
凄いなあ、凄いよなあ、もううっとりと浸ってしまうほどに、濃密な物語だ。
ここまでお膳立てしてくれた以上、ここからラストに向けての盛り上がりには、色んな意味で心臓を握りつぶされそうです。

1巻感想
 
11月26日

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