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屡那

エルフに転生した元剣聖、レベル1から剣を極める ★★★  



【エルフに転生した元剣聖、レベル1から剣を極める】  大虎 龍真/屡那 角川スニーカー文庫

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魑魅魍魎、悪鬼羅刹を滅し―― その先にある剣の頂点に再び!!
 剣を極められず無念の思いを抱えたまま最期を迎えた男は、神の力を借りエルフの少年ハークの姿となって異世界に転生。
目覚めて早々出会った虎丸と旅立つと、道中で三人組の男に襲われてしまう。剣術が一切通用しないピンチに陥る中、ハークは「この世界は面白い」と笑みを浮かべつつ、どうにか男たちを倒し、王国東の都ソーディアンを目指す。
 情報収集のためハークが街中を探索していると、エルフ・ヴィラデルと刃を交える事態に。そんな中、世界最強の青龍が都に襲いかかる!! ハークは街を守るため立ち向かうのだが……。
 剣の頂きを目指す異世界剣戟ファンタジー、開戦!!

戦国末期から江戸時代にかけて剣に生きた大剣豪。転生する事で名前を失ってしまうのでそれが誰かは明言はされていないのですが、わりとあからさまに情報出しているので読んでいたら彼が誰だったかはほぼほぼわかるんじゃないでしょうか。
ともあれ、寿命を迎えてなお剣に未練を残した男がその淵で希ったとき、謎の存在にスカウトされ別世界で魂を失ったエルフの少年の肉体にその魂を宿す形で転生を果たすことになる。
間違っても肉体派とは言えない線の細い体力もないエルフの少年になったわけだけれど、肉体そのものが別人になったにも関わらず、剣を振るう際に違和感とかはなかった模様。補正とかされていたのだろうか。
しかし、その剣の技の冴えは些かも減じていなかったにも関わらず、彼が乗り移ったエルフの少年を付け狙っていたチンピラ三人組に襲われた際に、ハークを名乗ることになった剣士は予想外の苦戦をするはめになる。
この世界はレベルがすべて。レベルがあがるごとに身体能力があがるどころか、肉体の強度まで増すというレベル絶対世界なんですよね。さすがに、剣の達人が奮った刃がチンピラの肌を切り裂けずに弾き返される、というなかなか意味不明な光景を目の当たりにするとは思わなかった。どういう理屈なんだ?
ここまで来るとゲーム風のシステムが機能している世界、と考えた方がいいのかもしれない。これだけレベルが絶対的な意味を持つとなると、戦うための技術を育てるよりも近視眼的にひたすらレベルを上げる事に終始されてしまって、技量については軽視されてしまっている世界なんだろうか。
結局、ハークも苦戦しながらチンピラどもを倒すことで経験値を得てレベルがあがった事によって最低限の戦うために必要な力を得ることになる。逆に言うと、レベル1のままではチンピラ相手でもギリギリだったわけで、ハークの前世からの剣聖としての技はそこまで無双を約束してくれるものではなかったわけだ。レベルがあがって他のレベル高い連中と同じ舞台に立つようになった際には武器になるんだろうけれど。
そもそも、戦国時代の剣豪が主人公の作品なんだけれど、高度な剣術論が飛び交う剣戟アクション、というわけじゃないんですよね。その手の薀蓄なんかは一切皆無だし、本格的な剣術としての理合や術理、動作について語られるわけではなく、剣豪というそれっぽい雰囲気に終始しているので、そっち方面はあんまり期待しない方がいいかもしれない。
そもそも、剣対剣の対人戦というのは殆ど発生せず、というか最初のチンピラ戦だけじゃないだろうか。いきなりラスボス級のモンスターとのイベント戦闘みたいなのがクライマックスでしたからねえ。
ヒロインはこのヴィラデルというエルフの女偉丈夫になるんでしょうか。どうやら、彼女がハークを邪魔に思って始末しようとした、というのはエルフの少年の誤解、思い込みにすぎなかったようで……この少年、勝手に思い込みで自殺してしまったのか。なんかどうしようもない子だったんだなあ。
本来のヴィラデルという女性は、苦労してきた酸いも甘いも噛み分けてきた人物でありながら面倒見の良い姉御タイプみたいで、旧ハークも随分と面倒を見てもらったようなんですよね。旧ハーク少年がどうやら面倒くさいタイプだったみたいだから、いい加減鬱陶しかったと思うのですけれどそれでも嫌な顔をしながらも声をかけてきてくれるあたり、親切な人だと思うんだけどなあ。
中身が剣聖になったハークも、旧ハークの遺言のおかげでヴィラデルのことを誤解してしまっているおかげで塩対応に終始しているのだけど、誤解が解けたら解けたであんまり相性は良さそうじゃないんですよね。中身がアレなおかげで完全に自立した大人であり他人の助けを必要としない強烈な個であり男であるために、変に世話好きなのもお姉さん顔してマウント取るのもハークからしたらウザいだけになっちゃうだろうし。このヴィラデル、果たしてヒロイン枠に入るんだろうか。
むしろ、相棒である虎の虎丸が人化してヒロインと化す方がまだありそうである。なんか、三下属性なのがネックと言えばネックなのだけれど、ハークは生涯添い遂げる相棒として厚い信頼を寄せているわけですしね。

しかし、このハークくん、なんでまた自前の技を一つも見せないまま、他人の真似である示現流の技を必殺技で奮っているんだろう。てか、この示現流の技って、なんかアクションゲームで出てきたものなんじゃ……。



七つの鍵の物語 2 ぼっちな僕の異世界領地改革 ★★★☆  



【七つの鍵の物語 2 ぼっちな僕の異世界領地改革】  上野 文/屡那 ドラゴンノベルス

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飢えた民も枯れた大地も、狂った邪竜も――すべて救ってみせましょう!

人なし金なし資源なしの絶望領地を運営することになった少年クロード。
襲い来るテロリストを撃退し、名実ともに領主となった彼は、急速に領地を発展させつつ、諸悪の根源"邪竜ファヴニル"討伐に挑む!
異世界から召喚された侍の少女と人語を解す虎(?)の少女を仲間に加え、いざ決戦へ!
大逆転救済ファンタジー、第二弾が堂々登場!


何気に部活時代に瀬戸際ギリギリ崖っぷちの状況を切り盛りする経験はすでに足りていたのか、クロード。学校内のイザコザではなく、部員の親が引っかかった新興宗教絡みのトラブルだっただけに本気で一家離散や人死が出かねない危機だったと思われる。カルト教団の方に乗り込んで元凶ぶっ潰したという部長も大概高校生じゃねーけど、ほぼ新入部員だった所に部長から丸投げされて部員たちの家庭もメンタルも崩壊させずに守り通した実績は、クロードの資質を現しているのではないだろうか。
だからといって、財政も破綻し外交も社会体制もほぼ崩壊しきった領地を、それを破壊したクローディアス当人の悪名を引き継ぎながらなんとかしろ、というのは大概無理ゲーだと思ったのですが、最初に仲間になり、クロードが悪徳貴族当人ではない偽物だと気づいてくれた四人組と女執事となったソフィ、そしてメイドのレアが最初の助けとなり、そこからなんとか手蔓を引っ張ってきて立て直しに徐々に成功してきた。ところに、外国の息のかかったテロリストが攻めてきて、という展開だったんですよね。
そのテロリストたちも、元は貴族支配を打破するための社会革命を志した一党だった、にも関わらず現実を前に理想は破綻し、革命ではなく目の前の利益と欲望にかまけた暴力集団へと堕ちてしまった、という体の集団だったわけで。
内部では古参の革命闘士と後期加入の外国の手が入った山賊同然の面々が入り混じって、混迷を深めている。
ともあれ、襲われた側からするとテロリスト以外の何者でもなく、その襲撃が領民の一致団結を生んでくれたのだから、被害は大きかったけれど不幸中の幸いだったのか。
それでも、何だかんだと領主となったクロードに恨み骨髄の領民たちが素直に従ってくれたのって……実は、いつの間にかクロードが偽物だと知れ渡ってたからなんですよね。
人が変わりすぎ、というのもあるんだろうけれど、実際に身近で確かめた面々から情報が積極的に流出してたっぽいのだ。クロードが引き継いでからの献身的な働きという土台があってこそ、ではあるんだけれど、噂レベルの拡散ではなく表に出ないネットワークで情報が広がっていたようで、それをクロードが知らず自身の言動で証明していっていた、という感じなんですよね。
知らぬはクロード本人ばかりなり、という感じで。

それでも、途中からトントン拍子で話がうまいこと転がりだしたなあ、と思ったらこれ纏めに入っていたのか。今巻で打ち切りじゃないですか、やだもー。
レアの正体がいきなりバレたり、ラスボスのはずのファブニルが邪竜と化した過去が明らかになったと思ったら即座に対決の方向に舵が切られたり、無理ゲーから一転クロードにとって都合の良い展開がポンポンと放り込まれるようになったので、あれ?と違和感は感じていたのですが。
セイという女侍、というよりもこの娘個人的な武芸もさることながら、指揮官として際立った才能を持っていたので、姫将軍というべきか。そんな娘の異世界からの来訪とか、これも異世界から落ちてきた会話ができる知性あるトラのモンスターのアリス、と強力な仲間が加わったにも関わらず、二人に対して腰を据えたより良く仲良くなるエピソードもそれほど熟せないまま、話進んじゃいましたしねー。セイは特に元の世界では偶像として持ち上げられ、しかし主家滅亡を防げず失意のまま自刃したところで召喚され、という過程を辿っているからか、皆から持ち上げられ期待されその才能を頼まれて、という状態に対してかなり精神的な傷を持ってるようで、繊細な扱いが要される立ち位置だったんですよね。それを、セイに対してその才能を求めるのでも、価値を見出すのでもなく、友達という個人同士、一対一の人間関係を持って接しようとしたクロードに感じ入るところあって、とこれから色々と行程を踏んでいく導入編でもあったんですが、その矢先にまとめに入ってしまい、という感じだったのがまた残念無念。
ファブニルも、彼の抱えている鬱屈、人間への憎しみ、かつて大切だったものへの未練や愛情など、その内面は複雑に煮えたぎっていて、彼との対決はそれだけ彼との対話が多く費やされていくことになっただろうだけに、性急にゴールまで送り込まれてしまったのはこれもやはり勿体なかった。
また、肝心の部長以外の部員たちもお目見えできず、タイトルにもあった7つの鍵についても……、とまあ未練は多く残るものの、話としては終盤まとめに入って展開は早かったものの、非常に綺麗にまとめきったとも言える話のたたみ方ではあったので、これはこれで跡を濁さず丁寧に片をつけた、と感心するところだったんですよね。

幸い、小説家になろうではウェブ版がずっと連載続いているようなので、話も色々と変わっている部分も多いようですけれど、続きはこちらで読んでいきたいと思います。



七つの鍵の物語 ぼっちな僕の異世界領地改革 ★★★☆   



【七つの鍵の物語 ぼっちな僕の異世界領地改革】 上野 文/屡那 ドラゴンノベルス

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クワ一本から始める神殺し。絶望領地を救う、大逆転救済ファンタジー開幕!

レーべンヒェルムという地があった。意志持つ武具"神器"に支配され、土地は枯れ、人は飢え、叛意は全て討ち取られた絶望の地。そんな地に、一人の少年が召喚された。不要となった領主の代わりとして。
死んだ目をした彼の名はクロード。彼には知恵があった。異なる人類の歴史を知る彼は、神殺しの革新者として、歴史に名を刻むことになる。
支配? 飢え? 異邦の少年は、その全てを打ち砕く! さあ、大逆転を始めよう。

これは酷い! 何もないゼロからはじめる、という異世界改革モノは多いけれどクロードが押し付けられることになった地は、圧政によって荒廃し人民の生活は破綻し人心は荒れ果て、間違った農法によって土地は死に、生命線となるだろう港湾は外国に租借され、領内の経済は異国の尖兵である外資に牛耳られ、とゼロどころか圧倒的なマイナス状態からはじめろ、と言われる始末。
そして、クロードが成り代わることになった先代領主クローディアスは凄まじい苛政で無辜の民を苦しめ抜いていた悪魔のような男であり、しかも領主としても無能であらゆる意味で領地を疲弊させきっている、もちろん民からは恨み骨髄、恐ろしく憎まれ恐れられ悍ましがられていた人物。まだこれなら見ず知らずの余所者として赴任してくる方がマシ、という憎まれっぷりである。
領地を運営する官僚たちは、当然皆殺し済み。現在は隣国の企業が援助として内政を乗っ取っているような状態。そしてクロードを呼び出した神器ファブニルは悪意の塊であり人々の悲嘆と苦しみを浴びて喜ぶようなまさに悪魔そのもので、もちろんクロードの味方どころか彼の邪魔をし、間接直接を問わず悪意の手を伸ばしてくる。

無理ゲーじゃね?

領主としての立場と権力こそあるものの、それは恐怖政治で手に入れた権力だし、その根源である暴力の担い手であるファブニルはなにかあると虐殺をはじめる悪魔であり、クロードの思い通り動くどころか敵に回る始末。彼の手足として動いてくれるような人物も、わずかに館に残っていたレアというメイドの女性ひとりで……。いやこれ、どうしろ、と。
クロードは辛うじて自分がかつて日本人でまだ学生で、破天荒な同じ部活の仲間たちと走り回っていたという記憶をたぐりよせている意外は、本名も思い出せないくらい曖昧な記憶喪失になってしまっている状態。部活仲間の影響か、彼らの暴走を押さえて後始末してまわっていた経験からか、根性は据わっている上に凄まじく博覧強記なところがあって、確かに学生離れしたところがあるのだけれど、それにしても難易度がハードモードを通り越してルナティックモードである。

それでも逃げろと逃亡を促してくれるレナに逆らい、この世の地獄のような領地と人々を、クローディアスによって尊厳を奪われてきた人たちを見捨てられず、足掻き出すクロード。

不幸中の幸いというべきか、先代のクローディアスがあまりにも破滅的な人物すぎたせいか、まともに領地改革に奮闘しだすクロードが、早々に「別人みたい」じゃなくて「こいつほんとに別人じゃね?」と気づかれるんですよね。それだけ彼が必死に献身的に不眠不休で走り回る姿を見せ続けたおかげではあるんだけれど、その姿を見てみんな影武者なのか、それとも秘された兄弟なのかはわからないけれど、暗黙の了解で口は噤んで協力してくれるようになるのである。
特に、クロードが成り代わった直後に領主の館を襲撃してきた暴動者の中で、館の地下に捕らわれて人倫を蹂躙されていた子どもたちを救出に来た四名の若者。クロードがなんとか撃破し、しかし殺さずに済まし、ファブニルの手からも守って捉えた彼らが、早々にクロードの真実の姿に気づいて同志となり、手足となって動いてくれる側近になってくれたのが大きかったのでしょうけれど。

それにしても、出発地点の奈落っぷりからするとある程度組織だって領地運営ができるまでに人をまとめられたの、ちょっとスムーズに行き過ぎたんじゃないかしら、とも思うんですけどね。前提条件が酷すぎたんだって、これ。まともに人を集められるとは思えない状態だったもんなあ。集めたとしてもまともに働いてくれるとは思えない環境でもありましたし、ちょっと指先でつついたら弾けて割れて中身をぶちまけてしまいそうなほどぼろぼろになった血袋みたいな有様でしたし。
ほんと、それだけ献身的に死にものぐるいだったんでしょうけど。見た人がこの人絶対別人だ、とすぐに気づくくらいには。そしてその姿に打たれて励まされ、生きる希望を掻き立てられるくらいには。
しかし、環境だけならまだしも、常にファブニルが暴動をそそのかしたり異国を唆したりして阿鼻叫喚地獄を作り出そうとするのが、状況として最悪すぎるんですけど。しかもクロードの強大な力はファブニルから与えられてるもので、彼の意志一つで簡単に元栓締められて出せなくなるもんだし。
その事実を初期から弁えて、ファブニルを敵認定して動いているあたり、クロードの希望的観測なしの現実主義は実際大したものなんだけど。
彼の心の支えになってる演劇部の部長、本当に対して人物みたいなんだけれど、どうせなら他の演劇部の仲間たちについてももっと言及してほしかったなあ。殆ど記憶に残ってないとはいえ、そのかすかな記憶の部長を心の拠り所にしすぎである、部長部長って部長ばっかりw 他の部員たちもこの世界に招かれてしまっている可能性は高いっぽいですし。或いは「まだ」こちらに来ていない、これから来る可能性というのもありそうだけれど。

最初から唯一の味方になってくれたメイドのレア。ただ使用人の中で優秀であったために生き残っていた、という人なのかと思ってたら……ファブニルの関係者っぽい様子も見せていて何者なんだろう。ともあれ、レアと地下から救出され、最初にクロードが先代と別人だと見抜いてくれたソフィが数少ない癒やしである。あの若者四人組もいい奴らで、この巻のラストには強化イベントなんかもあったりして、仲間としても信頼できるよい連中が周りに居てくれるのは、クロード孤独になりすぎずに色々と救われる部分が多くて助かっているのですが。ここで心理的にも孤立してたら、さすがに耐えられんでしょう、これ。

とりあえずようやくマイナスを帳消しにして、プラスを見出せるところがチラホラと見えてきた段階から、果たしてどうやって本格的にこの行き止まりの地を立て直していけるのか。次もまだまだハードモードだこれ。

異世界建国記 掘 ★★  

異世界建国記III (ファミ通文庫)

【異世界建国記 掘曄〆木桜/屡那 ファミ通文庫

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『七日戦争』を勝利し、ロサイス王の国の国王になったアルムス。アルムスは自国の軍事力と経済力増強のため慌ただしい日々を送っていた。そんな中、軍事大国ドモルガル王の国内でカルロ派とアルド派が対立し、武力紛争へと発展してしまう!! すると、アルムスの元に友好関係を結んだカルロ派が力を貸して欲しいと救援を求めてきた。アルムスは悩んだ末に手を貸すことを決めるのだが……。大人気異世界内政ファンタジー、第三弾が登場!!
そんな後出しジャンケンみたいな政略結婚って、ありかいな。まあこればっかりはアルムス側もゲヘナのアブラアムも想定外の偶発的なことだっただけに仕方ないのだけれど。ただ、発覚したあとのアブラアムの間髪入れずの付け入る蠢動は、さすが僭主として権力を握った姦雄であると言えるのでしょう。アルムスはその点、気をつけてはいるもののアブラアムがどこまで積極的に策動するかについてあまり想定していないようで危惧が残る。後継については思慮を重ねてはいるんですけどね。ユリアの方が男の子だったら何の問題もなかったんだろうけどなあ。
さて、古代ローマをモデルとして描かれているロイサス王国興亡記である本作ですけれど、地図を見るとロサイス国ってまだまだ本当に小さいんですよね。文字通りの都市国家。この時点で首都移転計画立ててるのって、けっこう気が早い気もするのだけれどどこまで将来的な展望を持っていたんだろう。半島統一を考えていたのなら、周辺諸国飲み込んでもまだまだ半島全体から見ても領地は小さいものですし。でも位置関係見ると半島でもほぼ中央に位置することから、それほど問題でもないのか。
でも、それだと半島のど真ん中を結構広く専有しているグリフォンさまの不可侵領域ってかなり邪魔で交通の便的にも迂回を強いられるだけに、これどうするんだろうって場所なんですよね。デカさ的にも琵琶湖よりも大きいような領域が真ん中にズドンとくり抜かれて、進入禁止になってしまっているわけですから。将来的にトラブルになっていくんだろうか、これ。
外交交渉と新婚旅行を兼ねて、ユリアとテトラを連れて近隣諸国を回るアルムス。近代以前に、国のトップが直接外遊、なんてことはまずなかっただろうだけに、こうして直接面通しして国の方針を伝え合うというのはただの交渉よりもよほど大きな結果をもたらせそうなものですけれど、意外とあんまり劇的な効果もなかったような気がしないでも……。ゲヘナでは逆にトラブル抱え込むことになりましたしね。
結局、ロゼル王国の暗躍、というかマーリンの暗躍によって周辺諸国との関係は一気に悪化してしまったわけで、外遊による信頼の獲得なんてのはさっぱり出来てなかったことになる。
まあ、アルムスからして実際国内が安定して国力が確保できたら近隣諸国を攻めて国土を広げる気満々だったわけですから、当然といえば当然の結果なのでしょうけれど。
しかし、当面の最大の敵はこのままロゼル王国になるのか。北の大国として実に大きなプレッシャーかけてきていますし、何よりロゼルを裏で操るマーリンちゃんが色んな意味でやばすぎる人ですし。いろいろ擦れちゃってるもんなあ。擦れた上で熟れて国動かしてるものだから、質が悪いなんてものじゃないですぞ。
今のところは直接国土を面しているわけではないので、脅威とはなってませんけれど、既にこの段階でバチバチと裏では火花を飛ばして競り合ってきているわけですしね。
順当に子供なんか作って私生活充実させつつあるアルムスですけれど、登極以前から或いは当初からの家臣たちもそろそろお年頃だったり、相応の地位を得てちゃんと家庭を持つ段階になり、次々にあれこれと結ばれていくのを見ていると、子供であった時代は通り過ぎてここからは大人になった彼らの話になってくんだなあ、とじわじわと実感し出しています。

1巻感想

異世界建国記 ★★★  

異世界建国記 (ファミ通文庫)

【異世界建国記】 桜木桜/屡那 ファミ通文庫

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異世界に転生した少年アルムス。森を彷徨っていると神獣グリフォンが現れ、強引に住処に連れていかれてしまう。さらに「三年以内に独り立ちしろ」と一方的に告げるグリフォン。仕方なくアルムスは、前世の知識と経験を活かして農作物を育てたり、隣国の国王や大臣と交渉したりと、住処にいる子供達と一緒に村を作り始めるのだが、その一方で発展したアムルスの村を手に入れようと侵略を開始する国が現れ……!! のちに『神帝』と呼ばれる男の英雄譚、開幕!!
この味けなさすぎるタイトル! いや、よく元のタイトルを書籍化に際してむっちゃ変えてしまう、なんてケースがあるけれど、こういうのこそちゃんと変えるべきじゃないの!? と思うんだけれど。
舞台となるのが、おそらくは古代ローマ……いや、ローマという国が成立する以前の豪族が群雄割拠していた時代のイタリア半島っぽいところが物語の舞台となるようである。中世ヨーロッパどころか、共和政ローマが誕生するよりももっと前。伝説の初代ローマ王・ロムルスの伝説に当てはめているだろうから、古代も古代。国家という単位じゃなくて、部族単位で物事が動いていた時代。神代にまだ片足を突っ込んでいる時代が舞台なんだろう。なにしろ、グリフォンなんて神獣がデーンと不可侵領域を人類側に認めさせつつ存在しているわけなのだから。
このグリフォン様がまた便利でねえ。難しいことはグリフォンさまがやってくれました、とばかりに手の行き届かない部分はグリフォン様任せなんですよね。いやもう、それだけ助けてくれるならもっと親身に関わったらいいのに、と思うのだけれど、頼まれたときだけ助けてくれる、という都合の良さで。ここまで来ると単なる舞台装置なんじゃないのか、とすら思えてくる。物語の一員としての登場人物ではないんじゃないかな、これ。アルムスも、助けてもらったことや援助し続けて貰っていることに感謝はしているようなんだけれど、それにしては便利に使いすぎてるし、深く関わろうともしないですしねえ。
まあ子どもたちだけで村を作って暮らしを成立させる、といういわゆる内政モノ? としては頭で考えたことが百%以上の確率で成立しまくる、という前提で物事が転がっていく、という感じで常にサクサクっとうまいこと行きます。古代という文明レベルにも関わらず、普通に鉄製の農具とか出てくるのはおおっ!となりましたけれど。おおっ!って感じで。
ただ、適当にノリで書き散らしたようなアンバランスさは感じられなくて、村を作り、都市国家の王族と懇意になって、近隣で発生した戦争に参加し、どんどん出世して、という成り上がっていく流れをわりと淀みなく、盛り上げどころではちゃんと盛り上げながら転がしていくストーリーテリングは、けっこう巧みなものを感じさせてくれるんですよね。深くは潜らないけれど、流水プールみたくプカプカ浮かんでさえいれば、すいすいと勝手に動いていくように読み手をうまいこと誘導していくような風情で。
その意味では、読ませる文章、物語とも言えるのかもしれない。読み終わったあとに、なんとなく面白かったなあ、と不満めいたものは不思議と感じませんでしたしね。
ただやっぱりキャラクターにあんまり個性というか、印象が残らないだけにインパクトには欠けるしちょっと間をおくと色々と忘れてしまいそうなきらいもあるだけに、なるほど名は体を表すじゃないけれど、あのざっくりとしたタイトルはわりと内実に沿ったものなのかもしれない。

皿の上の聖騎士〈パラディン〉 3 ‐ A Tale of Armour ‐ ★★★★  

皿の上の聖騎士〈パラディン〉3 ‐ A Tale of Armour ‐ (Novel 0)

【皿の上の聖騎士〈パラディン〉 3 ‐ A Tale of Armour 】 三浦勇雄/屡那 Novel0

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レーヴァテインと並ぶ大国デュランダル。悠久の歴史を持つ古の国家は老王の死を機に東西に分裂していた。時同じく東西二体の霊獣が空中戦を勃発。アイザックは繰り返される激戦下で瓦礫の重なる中間都市に辿り着いて早々、強大な霊獣たちと渡り合う姿から“霊獣使い”と誤解されてしまう―。縷縷変転する神話、第三章。
あかん、霊獣たちの大半がレベルの高い変態すぎるw
アシュリーの腕をペロペロしていたグリフィンも相当だったけれど、太ももの美しさを力説しまくるスレイプニルがまたなんというか、高度なフェチすぎて……。いくらサキュバスの血を継承しているとはいえ、まるっきり姿形の違う種族である人型の足について、あれだけテンションあげられるというのはなんともはや。いや、普段の調子がわりとクール系というか冷ややか傲慢系な分、足のこととなると途端に口数が多くなって熱い語りを初めてしまうあたり、霊獣って霊獣って。スレイプニルの影に隠れてたけれど、股間部というあれな部分に執着しまくってたコカトリスも非常にヤバかった。マジで、各部位がスレイプニルとコカトリスで入れ替わって受け渡されてたのは幸いだったんじゃないだろうか。普通に渡ってたら何されてたか。もうこれ見ると、ヒュドラ氏が変態じゃない紳士に思えてくる。なんか、霊獣の間でもあいつチョロい系と思われてたらしいのは笑ったけれど。
おぱーいこと胸部がいったいどの霊獣の手に渡ってるのか、今から心配だわー。股間部を確保したときにはどういう姿で出てくるのかと心配になったけれど、ちゃんと鎧着た状態なのよね、忘れてたわけじゃないけれど安心した。確保したわいいけれど、グリみたいなちっちゃい霊獣バージョンじゃなくて元のアシュリーの体に戻った時、裸の股間部だけ出てこられても弟としては非常に困っただろうし。
更に言うと、欠損したアイザックの右腕に装着できるの、同じ右腕だけじゃなくて各部位どれでも装着できる、というのも幸いだよなあ。四肢はともかく股間部とか胸部とか腹部とか取り返してもどうするのよ、という話だったし。でも、女性の股間部を右腕に装着するというビジュアルがまた凄すぎる気がするのだけれど。幾ら、変形するとはいえこうつける瞬間の絵面がねえw
しかし、霊獣たちの悪趣味さはまあそれぞれ執着の仕方が違うことで、それぞれなんだろうけれど、ドラゴン氏あれ女の趣味も相当ですよねえ。娘のイザドラが素直で良い子なだけに、ドラゴンと番った人間の女性、イザドラの母親もわりと清楚系の人なのかと勝手に思い込んでたら、なんかすんげえワイルド系だったのには笑ったというか驚いたというか。なんか結構オラオラ系の人じゃないですか、これ?
ただでさえドラゴンと夫婦やってたというだけですごい人なのですが、どうやら深い事情を持っている人のようで、皿の下にいったい何が封じられているか、というこの物語の根幹にも関わっている人のようで、イザドラもただの半人半竜ではなく、物語のキーキャラクター・重要人物であることが判明してきたわけで、なんか真っ当にメインヒロインになってきましたよ。一時期は本気で実姉のアシュリーがヒロインなのかと思ってましたからねえ。いや、事実彼女もまたヒロインなんだけれど、さすがに姉と弟でラブーという関係にはならなさそうだし。
今回の話は、この大陸で何が起ころうとしているのか。レーヴァテイン王国が何を企んでいるのか。その追求をアイザックたち個人ではなく、他国とも共有することでより大きな事態になっていく話であり、父竜に言われてアイザックたちについてきたイザドラが、明確に戦う意思と力を掴み取る話でもありました。そして、アイザックとの仲にも進展があるんですよね。このあたりはアシュリーが押せ押せでイザドラに構っているので、邪魔される要素がないぶん、わりとどんどん進行しそうな、二人ともその辺ようわかってないのでしばらく溜めが続きそうな、どちらともつかない段階ではあるのですが。
古き大国デュランダルの内乱騒動。弟のあの面倒くさいコミュ力低そうな性格は仕方ないとしても、能力に関しては想像以上にとびっきりなんですよねえ。視点が一国に留まっておらず、大陸規模で俯瞰するように現状を把握し、分析している。だからこそ、国を割ってでも動かざるをえないと決断したのだろうか。兄の方は保守派というよりも、ただの現状維持派で国内しか見ていないっぽいんだよなあ。ただ、物分りの悪い人ではなさそうなので、あれちゃんと弟の方が情報を共有して話し合ったらちゃんとわかってくれそうな気もするくらいには温厚そうな人なので、やっぱり弟色々と言葉が足りてない気がするなあ。アイザックたちにも、部下に対しても語る言葉が必要以下すぎて、余計なトラブル巻き起こしているし。悪いヤツじゃあなさそうなんだが。

ともあれ、レーヴァテインの方も大きく動き、大陸全土が鳴動しはじめているような波乱の予感が充満してきているので、もう破裂寸前どころか部分的に割れてきているかのような緊張感が漂ってきてますよぉ。

シリーズ感想

皿の上の聖騎士〈パラディン〉 2 ‐ A Tale of Armour ‐ ★★★★   

皿の上の聖騎士〈パラディン〉2 ‐ A Tale of Armour ‐ (Novel 0)

【皿の上の聖騎士〈パラディン〉 2 ‐ A Tale of Armour ‐】 三浦勇雄/屡那 Novel 0

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片腕を失ったアイザックは剣の特訓をしながら旅を続けていた。次の目的地はベヒモスの棲む大湖沼。しかしアイザックたちが着いたときにはすでに件の霊獣の姿はなく―?伝説の甲冑、その醜悍しき真実に身を裂かれた聖母と、王に背き大陸中を巡るフィッシュバーン家の神話、第二章。
ヒュドラさん、パねえ、と思わず浮かぶにへら笑い。いや、何気に今回一番活躍したのって、ヒュドラさんじゃね? マジでマジで。ヒュドラさん、貫禄のラスボスじゃなかったのか。それどころか、むしろこの言動、ツンデレヒロインなんですけれど。変に真面目だし偏屈なわりに律儀だし、けっこうお節介だし、霊獣って伝説の時代からの僅かな生き残りであり、その強大さから殆ど神様みたいな扱いを受けているわりに、いつまでもサキュバスの色香に惑い続けてて人間臭いところもある、という雰囲気で見ていたのが一巻だったのですが、今回の話を見ているともう人間臭いどころじゃなくて、その精神性って殆ど人間と変わらないんじゃないだろうか、と感じさせられるんですよね。
それに、話の順番に霊獣を訪ねていって、アシュリーの体を取り戻していく、という単純な筋書きでは無いことが明らかになってきましたし。
皿の上の捧げられた生贄としての聖騎士……それが驚愕の話の真実だった、というのもどうやら怪しくなってきて、皿の上どころか皿の下が問題になってきた上に、そもそも国が霊獣にアシュリーの肉体を差し出したことすら、単に霊獣との契約を重んじてその報復を恐れてアシュリーを生贄に捧げた、という話ではなく、裏の思惑がある、ということが明らかになってきて……。
まさに歴史の謎、世界の真実が関わってくる大きな話になってきてるんですよね。その一方で、自分たちが中心にいる事件がどうやらとてつもない規模の、そここそ霊獣たちですら知るよしのなかった世界規模の神話にすら関わる陰謀劇になってきた、というのを承知した上で、そんなことは知ったことじゃなくまず成し遂げるべきはアシュリーを元に戻すことだ、と一貫してブレないアイザックのひね過ぎて変に強靭になってしまった彼のメンタルである。右往左往しないのは頼もしい限りなんだけれど、この弟ってわりと根っからの無頼漢なんじゃなかろうか。そういう考え方の傾向ってあんまり騎士っぽくないし。
その無骨さが、自分の体の欠損にも対して頓着しない、という傾向に出ているのなら、心配ではあるのだけれど。アシュリーとしても心配だわなあ。この弟、必要とあらば平気で残った左腕だろうと両足だろうと眼球だろうと差し出してしまいそうだし。その意味でも、これからアシュリーの体が戻ってくる度に、それを霊獣の能力とともに装着する特殊能力を扱うために、体の一部を削り落としてしまうんじゃないか、というアシュリーの懸念は当たらずとも遠からず、だったように思う。そりゃ、口ではそんなことしないと言ってるし、それは本心なんだろうけれど、この男、いざとなってそれしかないとなったら躊躇わんだろうし。
だからこそ、ヒュドラさんの助言で発想の転換が出来たのは大いに助かった件だったんですよね。今後のことを考えると、霊獣の能力を使えるに越したことはなかったでしょうし。
ヒュドラさん、この調子だと今回で助力は終わり、とはならなさそう。何だかんだと、文句言いながら見捨てられずに助けてくれるタイプだよなあ。
ドラゴンの娘であるイザドラも、今回の一件を通じてしっかり仲間として定着しましたし。元々健気に頑張る子でしたけれど、アシュリーとアイザックの姉弟コンビに意外としっくり馴染んで三人組になってたんですよね。姉に対してひねくれた態度のアイザックも、素直なイザドラにはわりと真っ直ぐに接していて、これはアシュリー相手には見せない顔でしたからね。
でも、姉弟の掛け合いがやや少なくなってしまったのは残念かなあ。「弟よぉーーー!?」のアシュリーの絶叫は何気にハマってましたし。

未だ、謎が謎を呼ぶかのような展開が続いていますが、どんどん核心へのベールが剥がれていっている実感もあり、ワクワクが止まりません。なるべく、速く続き出ておくれ。

1巻感想


皿の上の聖騎士〈パラディン〉 1.A Tale of Armour ★★★★☆  

皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ‐ A Tale of Armour ‐ (NOVEL0)

【皿の上の聖騎士〈パラディン〉 1.A Tale of Armour】 三浦勇雄/屡那 NOVEL0

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Kindle B☆W
フィッシュバーン家には伝説がある。大平原“大陸の皿”を統べる大国レーヴァテインがまだ皿の中の小さな辺境国にすぎなかった頃、ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、集まったそれらは一着の聖なる甲胄と成った。―それが全ての始まりだった。伝説の甲胄が纏われた瞬間、新たな神話が開闢る。
【上等シリーズ】【聖剣の刀鍛冶】の三浦勇雄さん、久々の新作。当然のように期待して読んだわけですけれど……ッ、もうむちゃくちゃ面白れえ!!
うはははは、すっごい面白いよどうしよう。
あらすじにある通り、ヒロインのアシュリーが甲冑をまとった瞬間から、大どんでん返しの怒涛の展開がはじまるわけですけれど……いやー、これはもう本当に度肝を抜かれた。文字通りの仰天の展開である。微塵も予想していなかった流れに、呆気にとられるばかり。ここまであっと言わせられると、もう痛快ですなあ。

幼いころから聖騎士になることを定められ、何をやらせても超一流の完璧超人として持て囃されてきたアシュリーを姉に持つ、不肖の弟アイザック。姉の方はアイザックのことを結構猫かわいがりしていて、あれブラコンだよね、と思う所多々ありなのですけれど、弟の方は何をやっても姉に敵わず(弟に限らず敵う人間国内に殆どいないのですけれど)、この姉嫌いだ、という劣等感を抱えながら生きてきたわけである。
複雑ですよなあ。男兄弟なら劣等感の持って行き方にもやりようというものがあるけれど、相手は姉である。しかも、自分をかわいがってくれている。自分では嫌ってると思ってるようだけれど、男心の複雑さなのである。
そんな、完璧すぎて自分では到底手の届かないところに居た姉に振りかかる災厄。隠された聖騎士伝説の真実と歴史の裏側に秘められていた霊獣たちと聖母の秘密。彼ら姉弟はその秘された歴史の当事者として、この世の表に吹き出ようとしている災厄を前に立ち回らなくてはならなくなる。
伝説、神話、歴史そのものに抗い、嫌いだったはずの姉を助ける為に何もかもをかなぐり捨てて旅立つ事を選んだアイザック……当人は否定したがるだろうけれど、シスコンだよ。それはシスコンを拗らせてるよ!!
お姉ちゃん、えらいことになりながらもわりとご満悦な感じなのは、異常な状態に置かれてもマイペースさを崩さない変人っぷりもそうなんだけれど、弟に助けられて構われて心配されて、とそういう立場に回ってしまったことがさり気なく嬉しいんでしょうなあ、ブラコンだよなあ。しかし、肝心な部分ではいつもキッチリ危ないところを回避せしめ、弟を助けているあたり、さすがはお姉ちゃんである。何も出来ず守られてばかりの殊勝な姉ではない、というかこの姉ちゃん、アシュリーさん、ほんとどえらい有様になってしまうのですけれど、結構すぐに適応してしまっているところなんぞ、完璧超人とかとは別の次元で大人物だよなあ。いや、実際は内面けっこうダメージ受けてるっぽいし、不安や恐怖、無理して繕っている部分もあるみたいなんだけれど、平気な顔しているのは性格的な変人な部分ゆえ、というのも大きいと思うんだよなあ。
弟に守られている、という安心感が一番大きいのかもしれないけれど。

というわけで、何気に珍しい姉弟が主人公とヒロインという組み合わせ。途中から仲間入りする娘も居るのだけれど、基本的にこの姉弟が物語の中心であり中枢であり芯であり核となっていくわけで……周りから地味に心配されてるみたいな、姉と弟の禁断の……という展開はありかなしかww
しかし、改めて振り返ってみても、アシュリーの置かれたこの状況の発想はすごいなあ、と唸らずには居られない。面白い。
皿の上、という表現も大陸の上の国土の形状を表すものだけではなくて、最後にちらっと書かれたそれを見ると、物語の在り方に沿ったタイトルなんですよねえ。なるほど、そういう意味だったのか、と。

相変わらず、登場人物の誰もが生き残るため、誰かを助けるため、ガンガン自分自身を削っていくのを躊躇わない、当たり前のようにボロボロになりながらも、前の進むのを止めずに目つきギラギラさせてなりふり構わず突き進んでいく血まみれの熱さは、もうこうなると三浦さんの持ち味ですねえ。熱いよ熱いよ。
そして、自由奔放な姉に振り回され続けた弟の、逆に無茶をやり倒して姉に悲鳴を挙げさせる逆襲っぷりがたまらない。

「弟よぉおおお!?」

このお姉ちゃんの絶叫に、何度笑ったか。アシュリー、わりとコメディ担当なのよねえ、完璧超人なのに。
久々の三浦作品は期待に違わぬ初っ端からの爆裂スタートで、これは楽しみなシリーズの開幕ですよっと。
イラストもこれまでのシリーズから引き続き、屡那さんなのか。やっぱり、三浦作品のイラストはこの人でないと。

三浦勇雄作品感想


聖剣の刀鍛冶 16.Lisa4   

聖剣の刀鍛冶16 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 16.Lisa】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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隕鉄を集める旅に出るセシリー、ルーク、リサ。道中はさながら新婚旅行のような雰囲気だ。途中、流星群が観測されたという噂のある軍国に立ち寄り、シャーロットが流星の引き上げられた港まで案内してくれることになるのだが、出発前に現れたのはシャーロットに扮した軍国の少女王ゼノビアで……。一方、件の港には、新大陸からの女使者が交易を求めて、海賊たちが荒ぶる海域を越えて来港していた。港の男と渡り合う剛胆な彼女の正体は――!? アリア・リサ再会までの300年を駆け抜ける、疾風怒濤の番外編、つかまつる!!
これは番外編じゃなくて、正真正銘の本編だ、とあとがきで語っていらっしゃいますが、まさにこれこそが本当の最終巻。実際の所、前巻はほんとに最後までノンストップで走り抜けてしまって、この大長編の終幕の余韻をしっかりと噛み締め、味わうには如何せん食い足りなかったところがあったんですよね。その意味では、この巻はリサを主人公にして、じっくりと物語の終わりを感じ入り、読み手側である自分にも心の整理をつけてくれる素晴らしい後日談でありました。
特にルークは、この戦いでほとんど寿命を使い果たしたかのような壮絶な有り様だったので、平和になったあとどのように余生を過ごしたのか非常に気になっていたところだったのですが、思っていた以上に旦那として頑張り、また幸せな末期であったようです。あの人の登場は、まったく予想していないサプライズでしたけれど、リサが側にいてセシリーと出会ったとはいえやはり天涯孤独の身であり、また自分の過失によって父と幼なじみを喪い、幼くして大人にならざるを得ず、ずっと心の平安などなかったであろうルークを思えば、この再会はほんとうの意味で彼を解き放ってくれたような気がします。良かったなあ、良かったねえ。
しかし、この女性の止まると死ぬ的な機関車のような性格は、けっこうセシリーとよく似てるんじゃないだろうか。ここはマザコンだった、というよりも父親と好みがそっくりだった、と見たほうがよろしいんでしょうかねw
帝国との紛争は終わったものの、奴隷問題や新大陸からの海賊勢力の来襲など国際情勢は新たな展開を迎える中で、登場人物たちはその渦中で活発に動きながらも、年月は粛々と流れていく。
思いの外持ったものの、セシリーとの間に一男一女を残して若くして去っていったルーク。でも彼の場合は、本当にやるべきことをやり尽くして満足して逝ったように見えました。もちろん、心残りはあったでしょう、生きて立つ瀬もあったでしょう。でも、全力で生き切った人生でした。
そうして、悪魔として定まった寿命を持たないリサは、ルークを端緒として多くの人を見送ることになるのです。
ここからのリサの目を通して描かれていく人々の人生は、ひたすら感慨深いものでした。もっと淡々と端折ったように流れていくのかと思ったんですけれどね。語り口の端々に、彼らを見送ったリサの情感がしっとりと篭っていて、そこに感じ入るのは暖かな眼差しと寂寥感。リサの万感を垣間見たのです。
故にこそ、三百年の果てに辿り着いた、エインズワースの悲願であった聖剣アリアの復活。あの本編最後のシーンの感動はひとしおであり、それ以上にその後に訪れたリサにとってのリサだけの、リサに与えられた幸せは、この作品に思い残す未練をなくしてくれる大団円の幕引きでした。リサが幸せになってくれたのなら、これ以上のことはありません。魔剣と人との幸せな結末もまた、あのノアとヴェロニカが、意外なカップルでしたけれど体現してくれたことですし、ほんとに端々まで行き渡る大団円でありました。完結、お疲れ様でした。

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 15.Sacred Knight3   

聖剣の刀鍛冶15 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 15.Sacred Knight】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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王と、獣と、機械機構と、神とも呼ばれた“それ"――。過去、初代ハウスマンが実験台と呼び、いま、帝政列集国が魔王と呼ぶ、大陸の心臓“ヴァルバニル"が、遂に火山の頂に威容を表す。高濃度の霊体を吐く一撃で新たな“爪痕"を穿ち、触手で敵味方なく戦士たちを奈落に引きずり込む巨竜に為す術のないセシリーたち。一方シーグフリードは大量の魔剣を投じ、ある“作戦"をはじめようとしていた――。
焔がすさび灼熱の炉と化す戦場の真ん中で、聖剣の騎士が真正面から立ち向かう!!
壮大なファンタジー叙事最新巻、遂に決! 着!
終わったなあ……。なんともはや、ついに終わったなあと感慨深く思う他無い完結編でした。正直言うと、最後の三巻は一気に纏めて読みたかったように思う。一度区切られてしまったせいか、作中で既に天井付近まであがっちゃっているテンションになかなか追いつけなかったんですよね。ラストの三巻はまるごと最終決戦だったわけですし、一度決戦がはじまってしまったら一息つける展開が一切なかったですからねえ。まあ、この三冊をまとめて出せ、というのも酷な話なんですが。
ついに復活してしまったヴァルバニル。世界観からして、ドラゴンが跋扈しているような世界じゃないので、こんなどでかいドラゴンが現れたら、そりゃあ洒落にならんよなあ。もはや怪獣そのものである。おまけに、端末である触手まで網のように伸ばしてくる始末。触手に巻き取られ、次々に人間が捕食されていく様子は想像するだけでグロいなんてものじゃない。ビオランテか!!
でも、お約束というべきか、この脅威ですら先代聖剣に言わせると、かなり弱体化しているというのだから、前回封印した時はいったいどうやって事を成したのか。先代聖剣の豪壮さを見るに、当時彼女を携えた人もその仲間たちも今に勝るとも劣らずというとんでもない連中だったのだろうなあ。ただ、現代のセシリーたちも無茶苦茶さ加減では全く見劣りしない。心折れるとかへこたれるとかいう感情の動きは、もう遠い昔にかなぐり捨ててきたかのように、これほど強大な人間が太刀打ちできるとも思えない怪物に、不屈不撓に立ち向かうセシリーたち。この人らはこの人らでもう怪物じゃないかと思えてくるくらい。普通の人間でも一線を越えてしまうと果てをなしくてしまうのか。特に、ルークの身も心も惜しみなく削りに削って戦い尽くす鬼神ぶりは、身震いするほどの鬼気であり、嫁をもらった男の不退転の恐ろしさを痛感させられる。結婚してだらける男とちょっと落ち着けと言いたくなるほどやる気を漲らせる男の両パターンがあるとして、ルークは完全に後者だな、これ。
余りにも後先考えない身の削り方はさすがに目を覆わんばかりで、後の救済措置やフォローもなかったことから、恐らく戦後まず長らくは生きられなかったのではあるまいか。本気で、ただ死んでないだけ、みたいな有様だったもんなあ。ただ、嫁があの嫁だけに…止まることを知らず、ヴァルバニル戦が終わってもなお休まず突っ走り続けることを表明したセシリーの人生のパートナーとして、最期まで付かず離れず寄り添った事は想像に難くない。この二人って、やはりヒーローとヒロインが逆転している部分が目につくよなあ、面白い。
アリアの覚醒や、ヴァルバニルとの決着はここまで長く引っ張った割にはあっさり風味でやや肩透かしだったかも。特にアリアについては随分とやきもきさせられましたからね、彼女の聖剣としての覚醒にはもっとカタルシスが欲しかったところですし、結局のところ新生アリアに対しては親しみを感じさせるエピソードが少なかっただけに、喪われたかつてのアリアや銘無しを惜しむ気持ちが絶えなかった事も大きいのでしょう。新しいアリアが正しく二人の魔剣の魂を引き継ぐもの、として実感を得られるものがもっとあればよかったのですが。
特に旧アリアはなあ……罪作りにも程がありますよ。ユーインに酷な覚悟させちゃってまあ。二人には魔剣と人間としての境界を超えて結ばれ幸せになって欲しかっただけに、切ないですよ、あれは。

敵役だったシーグフリードは、最後の最後まで誰とも相いれぬまま己を貫き通した、という意味ではきちんとセシリーたちの対局を成し得たのではないでしょうか。境遇が境遇だけに、悪と断じるわけにも行かず、欲望や野望に殉じたわけでもなく、どちらかというと世界を巻き添えにした鬱憤ばらしではなかったのかと思わないでもないですが。その意味では、エヴァドニがダダ甘お姉ちゃんを自称したのもわからなくはない。お姉ちゃん、弟くんに好きにやらせすぎです、ちょっとは窘めてくれればよかったのに。まあ、当人まったく後悔もないどころか、弟くんが好き勝手出来たことを最期まで手伝えたことに満足しているようなので言っても詮なきことですが。

ラストエピローグは、アット驚く演出で、これはやられたなあ。あいやー、やられた、と柏手一つ。なるほど、ヒロインではなかったリサの存在とは、つまりこうした役割を担うためのものだったわけですね。

いずれにしても、完走お疲れ様でした。ほんとに、最後まで全力疾走だったなあ、と感嘆するばかりです。
このシリーズは、表紙絵でセシリーが毎回作中に準じたコスプレショーを見せてくれることで目を楽しませてくれたものですけど、最後はさすがにコスプレも無しかー、と思ってたら、このルークとのツーショット、ちゃんとこれもこれまでの続きにして締めとなる表紙絵であったらしい。あとがき見て吹きましたわ。担当さん、その発想は勝利も同然だわw

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 14.Barbanill 23   

聖剣の刀鍛冶14 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 14.Barbanill 2】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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都市を捨て、炎を上げて流れる溶岩の河向こう、ブレア火山の麓で迎撃の陣を組んだセシリーたち騎士団。しかしすでに都市を蹂躙せんと侵攻した帝政列集国はシーグフリードの振るう魔剣エヴァドニの力で溶岩を越え、進撃を止めることがない。そして遂に、都市騎士団と帝政列集国戦士団は、激しい剣戟を交わす乱戦に突入する。ルークが、ハンニバルが、ヒルダが、それぞれに己の剣のみで、魔剣を手にする敵と斬り結ぶ。そして、いまだ聖剣として覚醒しないアリアを手に、最前線に立つセシリーは――!? 壮烈な最終決戦の火蓋が切られる最新巻!!
何故この巻で終わると思った!?
思ったよ! だって、次で終わるからって言ってたもん! わざわざ二冊に分冊してとか、終わりまで予定立ってるからと思うじゃない。なにより、私素直だから、言われると信じちゃうんだよ、疑わないんだよ、ピュアなんだよ!
しかし、圧倒的なまでに終わらなかった。全然終わらなかった。いや、冷静に考えると終わるはず無いじゃない、13巻の時点で。どれだけ捲き入れなきゃいけないんですか。
というわけで、最終決戦がここにようやく怪死です。変換で開始じゃなくて怪死の方が上位に出てきた件について。
この期に及んで、未だにシンクロできないセシリーとアリアがもどかしくて仕方がない。こればっかりはセシリーが悪いとかアリアが悪いとかじゃないだけに、モヤモヤ感の行き場がないんですよね。そもそも、聖剣となってアリアが復活する! というのを信じて疑わなかっただけに、聖剣として生まれ変わったアリアが、以前のアリアとは違う存在なんだ、ということをどうしても無意識にも認められなかった。いや、過去形ではなく現在進行形で認めきれていないんですよね。それこそ、ルークの幼馴染のリーザと、悪魔のリサが別人であるという件を引き合いに出されて、それと同じ事なのだと言われて多大なショックを受けるほどに。心のどこかで、いずれアリアは記憶を取り戻して元のアリアに戻るに違いないと信じて疑わなかっただけに、それを否定する要素が次々と出てくると、やっぱりこう……堪えるんですよね。
今更になって、もうアリアはいないのか、と。
そうじゃないんだ、と否定されてもこうなってはそうなんだ、となかなか納得はできない。ようやく、剣と使い手という相棒にして戦友という形に、二人が馴染んできた今ですら、本当の意味でかつてのようにシンクロしていないとなると、尚更に。
しかし、その状態ですら、あれだけの無双が出来るっていうんだから、セシリーの技量の跳ね上がり方は尋常じゃない事になっている。レベル上がりすぎだろう!? 少なくとも魔剣を握った状態なら、既にルークを上回っているんじゃないだろうか。ルークだってあそこまであざやかに人外兵器を駆逐できんぞ。それも、魔剣の力に頼ってのことではなく、純粋にセシリーの腕前から引き出された無双状態ですしねえ。先の都市攻防戦での戦いっぷりも凄まじかったですけれど、もはやリアル一騎当千、万夫不当と言っても過言ではないんじゃないだろうか。あと、戦場で行きも絶え絶えになりながら、顔を合わせればイチャイチャを欠かさないルークとセシリーの新婚っぷりには脱帽です。
とはいえ、未だにアリアが聖剣として覚醒していない状態が示すように、状況は好転せず、どころか悪化するばかり。ヒルダが頑張ってくれてますけれど、何しろ此方がわには戦力が少なく、最強のあの人すら倒れてしまい、ルークは此方も大暴れしながら相変わらず虚弱体質を露呈し、息も絶え絶え。未だシーグの不気味な動向の真意は明らかにならず、敵の魔剣勢力は欠けることなく追撃をかけてくる。そして、止めのラスボス復活。
思わず、【ゴジラ1984】のゴジラ復活シーンを思い出してしまったド迫力の復活劇。これぞラスボス、って感じだけれど、それだけにこんなのどうやって相手するんだよ、という絶望感が正直パない。
それこそ、ここからあと一冊で終わるんですか!?

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 13.Barbanill3   

聖剣の刀鍛冶13 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 13.Barbanill】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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騎士団のみならず都市にまだ残っていた市民たちからも結婚を祝福されるセシリーとルーク。その宴の片隅に佇む聖剣アリアは困惑していた。たとえ聖剣と呼ばれようとも"凶器"であることにかわりない自分に対して、親しげに声をかけてくる者たち。彼らは“魔剣の”アリアや銘無しと一体どんな関係だったのだろうか……? 一方、帝政列集国は移住を始めた都市市民たちを見逃し、非を負わずに総力を注げる“都市が兵士のみとなる”時を待っていた——。そして——決戦の刻!! 騎士の運命と剣の使命が研ぎ澄まされる最新巻!
新婚さんいらっしゃ〜い。と、言わんばかりの新妻スタイルなセシリーさん。前巻のウェディングドレスの後をどうするのかと思ってたら直球で家庭に入ったセシリーさんをやってくれちゃいましたよ。エプロンに包丁ほっかむりって、また定番中の定番で攻めて来ましたか。流れ的にクライマックス突入の勢いだっただけに、ここまで落ち着いた装いでこられるとは思っていませんでした。もうこれは、流れ的には次はマタニティドレスですね、わかります。
と、言いたい所だったのですが、この場合子作りをしてしまうと明確に死亡フラグを踏んでしまうので、自主回避ですよ、自主回避!! くー、なんというフラグ倒しだ。尤も、最終決戦を前に本当に結婚しちゃったのだって、それこそこの戦いが終わったら結婚するんだ、という最大の死亡フラグを折る最良の手段を選択したってことなんだから、それぐらいは楽勝か。でも、もう名実共に夫婦なんですから、えっちぃことしてもいいんですよ? 一緒にお風呂はいるとか、ね? もげろとか言わないから。ルークにはもげろとか言わないから。
とまあ、これから最終決戦だというのにむしろ幸福の絶頂を満喫しているセシリーの影で、逆にネガティブスパイラルに陥ってしまったのが、聖剣として復活したアリアでした。
魔剣アリア……転じて聖剣として復活して何が変わったかと言えば……メンタル弱くなりました。っておぉい!!
魔剣だった頃のアリアも、聖剣の材料となった「銘無し」も、こんなにメンタル弱くなかったよ? いやあ、まあ考えてみればアリアもあれで精神的に脆かったり不安定なところもあったけれど、それを踏まえた上で毅然と立つことのできた女性でした。それが、キオクを失ったとはいえここまでヤワヤワになってしまうとは。
記憶を失ったということは絆をも見失ってしまったということ。アリアを支えていたものが全部取っ払われた今、彼女には剥き出しの脆弱性しか残されなかったということか。不幸にも、周りの連中は彼女が「アリア」だと疑いもしなかったから、自分たちと彼女との間に繋がっている「絆」もまた健在だと疑いもしてなかったんですよね。それが、アリアのメンタルケアを怠り、彼女に「魔剣アリア」として接することで「聖剣アリア」の自己をないがしろにしてしまい、その成長を促すことに失敗してしまっていたわけだ。
魔剣アリアを大事にすることは間違っていなかったとは思うんですけどね。アリアや銘無しに向けていた思いを聖剣アリアに語りかけた時、最初は確かに霧中にあった彼女の心に光が差し込んでいたのですから。そのまま行けば、彼女はちゃんと統合された「アリア」としての自己を確立できていたのかもしれません。ところが、いつの間にか「魔剣アリア」「銘無し」と自分「聖剣アリア」に隔たりを感じ、周りから向けられる感情に逆に疎外感を募らせるようになってしまっていたのでした。
だから、そういう精神性が、アリア自身が力説する自分は凶器にすぎない、という自己主張と矛盾し、大きく逸脱してるんだってば。
でも、こういう細かい機微をセリシーに気づけ、というのも難しい所。じゃあ誰が気づいて然るべきだったのか、と問うてみると……そういうメンタル担当って誰でしたっけ?
なんか、わりと誰も彼もが勢いの良さで閉塞をぶち破っていた気がするので、こういう繊細なケースを担当する人が思い浮かばない!! むしろ、それこそがアリアの担当だったんじゃないかと思うくらい。なんとなく記憶が美化されていて、アリアもわりと勢いだったよ、と思わないでもないけれど。頼るべきはリサくらいのものだったのかもしれないけれど、アリアの相棒はセシリーだもんなあ。何とかするのもセシリーであるべきなのだろう。まあ、新婚さんはそれどころじゃなかったんでしょうけどね。
……ぶっちゃけ、浮かれてやがったな、この女(苦笑

様々なものを犠牲にしながら、それでも出来る準備は整えて、万端敵の軍勢を迎え撃とうという時になって露見する、致命的な準備不足。
結婚した程度で死亡フラグは潰えない、などという展開にはならないで欲しい、と別口で結婚しちゃったカップルを横目に見ながら、願うばかりである。
サブタイ、Barbanillとついたからには本当にクライマックスか、と思ったら、そこまで行かない準備回だったとは。これ、よっぽどクライマックスが分厚くなったからなんだろうけれど、DVD特典の短編が2つついて、というのは色々な意味でやられた、うんやられた。
でも、「少女と少女王」、シャーロットとゼノビアの馴れ初めのお話は、ぜひ知りたかったエピソードでもあったので、読めてよかったです。本編では他国のことなので、いつの間にかゼノビアの側近となり仲良くなった状態で再登場したシャーロットたちでしたけれど、思いの外シャーロットってゼノビアの在り方に影響与えてたんだなあ。シャーロットと出会うまで、ゼノビアってもっと肩肘張って生きてたんですねえ。初登場した時から、幼いのに優秀、という以上に考え方に柔軟性があって心に余裕がある人だな、と感心しきりだったんですが、それにはシャーロットの存在が関わっていたんですねえ。
良い出会い、だったんですね。


シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 12.Sacred Sword4   

聖剣の刀鍛冶12 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 12.Sacred Sword】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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全市民の耳目を集めることとなったセシリーのプロポーズから数日、市民の移住計画と平行して騎士団による封印の再強化計画もまた開始されていた。ブレア火山の洞窟奥深くに広がる“氷の間”に幾本もの聖剣のレプリカが突き立てられる。
その光景は、まるで墓標。――そしてこの計画が、新たな事態を引き起こすことに。
一方、キャンベル家のメイド・フィオはセシリーのためにウエディングドレスを用意していた。かたやルークもまた、セシリーのためにリサとともに“ある刀”を打つ。
やがてくる帝国との最終決戦を前に、一条の光がこぼれ射す、最新巻!!
とうとうサブタイトルに「Sacred Sword」→「聖剣」の文字が。ついに此処まで来たかー。
技術的には既にやれる所までやっているはずなのに完成しない聖剣。しかも、打ち手であるルークは目の機能を殆ど失って鍛冶師としては死に体に。鍛冶師としての全ては弟子であるリサに叩き込んだものの、彼女の未熟は否めず、その成長を待つ時間は残されていない。ヴァルバニルの復活はもう間もなくで、帝国の暗躍は留まる所を知らず。
これだけ絶望的なことだけが列挙されているにも関わらず、なおも希望を失わずに居られたのは、それこそセシリーの活躍(?)に尽きる。彼女が前向きで居てくれればそれだけで、まだ何とかなる、何とかしてみせる、という希望が湧いてくる。諦めなかった事、それこそが希望を現実へと繋げられた最大の要因だったんじゃないだろうか。あの、これまでルークが打ってきた聖剣の出来損ないたちですら決して無駄ではなかった事が明らかになった時にはちと感動してしまった。あのレプリカがなかったら、状況を打開する最後の鍵が向こうから現れてくれることもなかったわけですから。
本当に瀬戸際の瀬戸際を歩んでるよなあ、この人達は。
そして、その最後の希望が現れてなお、障害はいくつも立ちふさがっていて、セシリーやリサたちに選択を、決断を、覚悟を繰り返し繰り返し突きつけてくるのだ。
でも、もう止まらないんだよね。失ってしまうものは既にわかっている。それを受け入れてしまっているセシリーたちにとって、提示された障害はもはや障害ですらなく新たな希望にすぎなかったとすら思えてくる。リサは、その決断を弱さであり諦めた結果だと自嘲していたけれど、とんでもない、そんなことあるものか。諦めなかったからこそ、鍛冶師としてのプレイドを捨ててなお、守るべき鍛冶師としての矜持があったからこその、あれは決断だったはず。弱いものか、あの決意が。
そして、取り戻すと誓った親友を失うかもしれないと言われてなお、親友の意志を尊重しその上で取り戻し、新たに築いてやる、と決断したセシリー。新しい、エインズワース家の一族が立ち向かうべき試練を見出したルーク。まったく、この夫婦はイチャイチャ新婚生活する間もなくかけずり回っているにも関わらず、なんて息のあった夫婦なんでしょう。ウチの嫁さん、と嘯くルークのうれしそうなこと嬉しそうなこと。
アリア復活、と粗筋の速報で掲載されたときはネタバレすぎだろう! と思ったけれど、全然ネタバレじゃありませんでしたね。まさか、こんな形で復活するとは思いもよらなかった。しかしこれ、銘無しと友達になった子たちにとってはやっぱり辛い結果なんだろうし、それ以上にユージンは苦しいだろうなあ。今のところ彼の心境は描かれていないですけれど、アリアがあんな形で復活した上に、ヴァルバニル復活にあわせて結局離れ離れになってしまうことは確実になってしまったわけですしね。でも、諦めないんだろうなあ。
魔剣と人間の間に子供が生まれ得る、という話をあれだけ丹念にやっていたのは、別段シーグフリードの生誕の秘密に関わる話だったからだけじゃないはずです。それに、魔剣と聖剣はまたちょっと違うものみたいだし。
そう言えば、シーグフリードの母の腕から生まれたという魔剣って、誰なんだろう。さらっと流されていたわりに、結構重要なキーワードみたいな扱いをされていたけれど。

表紙の衣装は結婚式の白装束、決戦兵装・ウェディングドレス。これも、ついにここまで来たかー、と感慨深いよなあ。肝心の花嫁さんと来たら、肝心の式と旦那をほっぽり出して何をしに行ったかと思ったら……ほんとにセシリーってばヒロインじゃなくて、ヒーローだ。紛う方無き「ヒーロー」だ。

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 11.Woman4   

聖剣の刀鍛冶  11 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 11.Woman】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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代償と、覚悟。キャンベルの血。
ルークの変調をリサから明かされたセシリー。ルークは頑なに隠そうとしているが、セシリーとリサは互いに彼を支えることを心に誓う。ルークとの関係をどのようにするべきか悩んだセシリーは母に、亡き父との馴れ初めを聞くことにする――。一方、軍国ではゼノビアが付き人のシャーロットとともに城を抜け出し、大陸を包む不穏な空気に萎縮しかねない市井の声を聞くべく街中へ繰り出していた。また他方、帝政列集国のフランシスカは、主に従属する魔剣の定めをヴェロニカから見出そうとしていた……。穏やかな日常の中で覚悟を固めていく女たち、心底に銘を切り、居並ぶ!!


Congratulation!

おめでとう♪ おめでとう♪ 

前巻の感想で、ルークの頑固さは難儀の一言で、もうセシリーが何とかしないと何ともならないよ! というセシリー頼みの結論に至ったわけですが……見事にセシリーがやってくれやがりました。
この女、頼もしすぎる。期待に十全応えやがった。あのどうしようもないくらい面倒くさい男を、本当に一人で何とかしてしまいやがった。まさに、あらゆる意味での英雄である。
まる一年ぶりの待ちに待った新刊なのに、内容は短篇集だったので正直ガッカリした感は否めなかったのですが、あとがきでも触れられていたように、この聖剣シリーズの短篇集ってガリガリと本編の話が進むんですよね、忘れてた。

今回はサブタイトル通りに、女たちの物語。女は強し、である。セシリーの両親の馴れ初め話は良かったなあ。セシリーの母親であるルーシーさんは、これまでは病弱で儚げながら厳格で上品、シャーロットたちが滞在していた時には母親らしい抱擁感を見せていた事もあり、もっと温厚な人だと思っていたんですけれどね……間違いない、この人セシリーの母親だわ(笑
もう行動力が普通の女性のそれから外れまくってる。まさか、父親との関係がルーシーさんの押し押しだったとは。なんかセシリーって二親のとんでもない面をかけ合わせて出来上がったような娘ですよね、こうして見ると。未熟だった頃はその特性が悪い方に出てしまい、なかなかに始末の負えない小娘になっていたけれど、精神的にも能力的にも成熟してきた今となっては、その特性ゆえに殆ど無敵に等しいレディと化してしまったわけで。えらいこっちゃやで。
イラストの屡那さんがまた素晴らしい仕事をしてらっしゃって、若いころのルーシーさんとチェスター・キャンベルがまたホントにセシリーにそっくりなんですよ。

あとは、ヒルダとヘイゼルと銘無しの非番の日を通して、不穏な空気に包まれる都市の雰囲気を伝える話。そして、軍国でのシャーロットたちの活躍。シーグフリードに恋をする魔剣の話と、三本立て。
この中では軍国の話が良かったですね。シャーロットたちが軍国に亡命してから、どんな風に過ごしているかは、多少伝え聞いてはいたものの、実際はどうなのか伝聞だけだと分からない部分もありましたしね。あのゼノビア相手にちゃんとやれているのか、と思ったら案の定、シャーロットって苦労性だ(苦笑
部下の三人娘だけでも色々と面倒な性格しているのに、その上さらにゼノビアというとびっきりのトラブルメーカーが乗っかってきたわけで……まあこれ、シスコンのきらいもあるようで。可愛い妹の苦労はなるべく引き受けてあげたい、という愛情が感じられるのです。余分な苦労も多分に引き受けてしまっている気もしますが。それでもまあ、充実した日々を送れているようで安心しました。

さて、最後の話こそこの巻の目玉にしてクライマックス。正直、セシリー舐めてました。というか、そこまでやるとは想像できんよーー! 一足飛びすぎるわーー。参った。完全降伏だ。これは敵わない。これが女の強さだ。覚悟を決めた女性の無敵さだ。覚悟を決めた女に、男如きが太刀打ち出来るはずもないのだ。
だから、贈れる言葉は1つだけ。

おめでとう♪

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 10.Trial4   

聖剣の刀鍛冶10 (MF文庫 J み 1-18)

【聖剣の刀鍛冶 10.Trial】 三浦勇雄/屡那(MF文庫J)

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セシリーを守るために最後の変化の呪文で剣の姿のままとなったアリアを胸に、独立交易都市へと戻ったセシリー。しかし彼女を待っていたのは、ルークとユーインの消息が絶たれたという悲報だった。件のルークとユーインは、突如襲った地震によって閉じこめられたヴァルバニルの封印される洞窟内でその末端らしき触手との攻防を繰り広げていた。他の出口を探して灼熱の闇の中を彷徨い続けるルークたち。そしてその奥底で地面に突き立てられた直刀を見つけるのだが ――!? 壮大なファンタジー叙事、薄闇の底で真紅に燃える刀身を打つが如き“鍛錬の刻”!!
先の巻の感想の締めに、『そろそろ絶望の向こう側に希望が見えて来て欲しいところだ』と書いたんですけどね……どうなんだろう、これ。希望が見えたのか? それとも、さらなる絶望でしかなかったのか?
表紙の全裸については、私も思わずエントリーして書いちゃったんだけれど、本編の中にはもっと凄い構図のイラストがありましたよ。
尻!
しかし、まったく、浮ついたシーンじゃなかった、どころかこれほど哀切に満ちた尻があっただろうか。哀切に満ちた尻ってなんだよ、と思うかも知れないが、見たらわかる。こんな悲痛そうな尻はないよ。むしろ、本当なら固く握りこんでいる拳にこそ焦点を当てるべきだったのかもしれないが、やっぱり目線は尻に行くよな、尻。
はぁ……ついに、とうとう、恐れていた通りになってしまった。不幸中の幸い、という形でヴァルバニル復活の危機は一時遠ざけられたとはいえ、あくまで急場しのぎ。聖剣を打つためのヒントは手に入れたとしても、それを打つべきルークが……。
アリア復活の為の隕鉄についても、まるで目処がついていないし、仮にそれを手に入れたとしても、果たしてそれをどう使ってアリアを復活させればいいのか。もし、打ち直すとしても……。
ルークの頑固者は、絶望しないのだろうか。自分がどれだけ死力を振り絞り、聖剣を打つことに成功し、ヴァルバニルを何とかできたとしても、もう自分がセシリーの傍に居ることが出来ないというのに。彼女を遺して逝くしかないと分かっているのに。
馬鹿だなあ。これに関してはユーインが言うことが全く正しいよ。セシリーは強い。この娘は弱いけれど、絶対に弱いままで停滞しない強さがある。それはきっと、ルークを失ったとしても潰えないものだと信じたい。だからこそ、彼はもっと甘えていいはずなんですよね。今この瞬間を、彼女に負債として預けてしまっていいはずなんだ。彼女はそれを、負債ではなく糧に出来るはず。ルークだって、リーザを喪った果てに、セシリーと出会うことが出来たのだから。
頭に来るんだろう? 許せないんだろう? 自分がいなくなったあと、自分以外の男に、セシリーがココロ奪われるのが。だったらせめて、今この瞬間の自分を、彼女に刻みつけておけばいいのに。
ばかだなあ。馬鹿な男は、死ぬまでバカなんだよ。死んだって馬鹿なんだよ。
だから、それはセシリーがなんとかしなきゃならないんだろうな。全く、面倒な男を好きになってしまったんだねえ、お嬢さん。

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 9.LastWind4   

聖剣の刀鍛冶<9>(MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 9.LastWind】 三浦勇雄/屡那(MF文庫J)

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 bk1

……なんかルークとセシリー、二人の関係、変わったな。この前のお祭りの時からか。それまでは、お互い自分の気持を持て余しながら、照れ照れとこっ恥ずかしい雰囲気を醸し出していたのに。
初々しい恋心に踊っていたのも今は昔。二人が置かれた過酷すぎる環境は、そんな甘く蕩かすように育んで行くはずだった幸せな関係を味わう時間を与えてくれなかったのだ。一刻、離れ離れになり各々が為すべきことをなさんとする前の、僅かな逢瀬に垣間見せた、ルークとセシリーがそっと抱き合い、離れてじっと見つめうシーンを見たとき、この二人の関係はもう否応なく深く深く成熟した愛情で結ばれたそれへと昇華してしまったのだな、と物悲しい感慨とともに確信してしまった。
深い愛情で結ばれること自体は悪くはない。でもね、まだ若いふたりなんだ。もっともっと、お互いのことを考えるだけで心が弾み、思わずにやける顔が戻らなくて、相手の前で見せてしまう自分の言動に赤面し、と言った嬉し恥ずかしな、かけがえのない幸せな時間が与えられて然るべきなのに。深い愛情で結ばれるまでに、二人でゆっくりと積み上げて行く思い出が、優しく穏やかな思い出が、あってしかるべきだったのに。
二人にはそれを築いていく時間が与えられなかったのだと思うと、なんだか悲しくなってしまったのだ。
それは、二人があまりにも大きすぎる試練を乗り越え、生き延びたその先に、再び取り戻せる時間なのかもしれないけれど、それが叶うことをただただ願うのだけれど。
今はただ、この物悲しさをなんども咀嚼して味わいたい気分だ。

そう、時間は刻々と過ぎて行く。タイムリミットは近づいている。世界の、セシリーたちの街の、そしてルーク個人の、さらにはアリアの……。
セシリーは、既に承知のヴァルバニルの事だけではなく、ルークのことも、もしかしたらアリアの事すら無意識に感じ取っていたのかもしれない。だからこそ、もっと強く、もっと強くと貪欲に強さを追い求め、実際に着実に強さを手に入れていったのかもしれないなあ、と加速度的に際限なく強くなっていくセシリーの鬼気迫る姿に、そんな考えを抱いてしまった。
まだ暗殺者だった頃のヒルダに、一対一の対決で圧倒されてしまったのはまだそんなに昔の話ではなかったはずなのに、今やセシリーの剣腕にヒルダは一対一どころか同僚ヘイゼルとの複数での同時対戦ですら、歯牙にもかけられない。ヒルダが弱くなったわけではないのは、後半の獅子奮迅の働きを見れば、むしろ刺客時代の頃よりも腕は上がっていることがわかるだろう。
まだ都市での決戦の時の活躍を見た時では、魔剣アリアの力あっての強さだと思っていたけれど、彼女の強さは既に魔剣を持たずして魔剣を持っている時の領域へと近づこうとしている。
それは、逆説的にそれだけの強さが無いと何も守れないと、悟ってしまったからではないだろうか。
セシリーが強くなればなるほど、彼女の運命の過酷さがより際立って伝わってくる気がする。
それでも、もうこの子は止まることはないんだろうなあ。もう迷い躊躇い恐れる段階を、この子は主要キャラクターたちの中で一足早く走り抜けてしまったのだ。あとはもう、一直線に進んでいくだけだ。
彼女はもう、ルークに頼らなくても、ただ一人で「ヒーロー」たるを果たすことができる。
となると、彼女を先導して導くような立ち位置だったルークは、逆に彼女の置いてけぼりをくらわないように、彼当人の抱え込んでいる負債を払い終えなくてはならなくなったわけだ。
ルークも、そしてユーインも大変だ。女たちは、男たちを決して待っていてはくれない。当然、自分よりも前に出て運命に打ち勝つ未来へとエスコートしてくれるのだと信じきっている。その想いに応えるためには、もう命を張らなくてはならない領域へと至ってしまっているのだから。
大変だけれど、でも男冥利に尽きるんだろうなあ。

そして、魔剣へと戻れなくなったアリアに課せられた非情の運命。このシリーズって、セシリーはヒロインであると同時に、主人公そのものなんですけど、ルークたちが介在しない場面では、セシリーとアリアって女同士の親友とか、戦友とか相棒とかいうよりも、完璧にセシリーが男役、アリアが女役の主人公とヒロインのカップルだよなあ。
アリアのセシリーへの想いってのは、恋愛感情以外のすべてが一杯いっぱいに詰まった、とてつもなく大きくて密度が濃くて果てしないものとして伝わってくる。ひとりの人間に、これほどの想いを抱けるのかというほどの。
そんな二人の、とても特別な人間と魔剣の関係を、傍から見て受け止めるキャラクターもしっかりと出てきているのは構成に隙が無い、というべきか。

刀鍛冶と話としては定番であり、絶対的なアイテムである隕鉄の話も出てきたし、ルークの行き詰まった聖剣製作も、どうやら次の段階に至るためのエピソードへと踏み出したみたいだし、そろそろ絶望の向こう側に希望が見えて来て欲しいところだ。

シリーズ感想

聖剣の刀鍛冶 8.Light&Darkness4   

聖剣の刀鍛冶〈8〉 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶 8.Light&Darkness】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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表紙絵のセシリーコスプレ劇場、これまでの最高傑作は三巻の男装バージョンだったのだけれど、今回のはこれまでのカッコイイ、美人系の装いと大きく方向転換した看護服!!
これが何気に似合ってやがる。前のメイド服も良く似合っていたけれど、けっこうセシリーって女性らしい柔らかい装いも似あうんだよなあ。って、これだと何着ても似合ってますと言っているのとおんなじか。今回は挿絵でも何枚も看護服セシリーが拝めるので眼福である。イラストレーターの屡那さんが素晴らしいのは、女の子がカワイイだけじゃなく、若い男は若いなりに格好良く、おじさんはおじさんなりに、老人は老人なりに渋くカッコいいのがいいんだよなあ。あとがきで三浦さんが悶えているように、今回のシーグフリードの挿絵は悪役にしてもカッコよすぎて惚れそうだわ。

帝政列集国の悪魔と人外を擁した侵攻を辛くも退けた独立交易都市。国際緊張は既に列集国の侵攻をもって既にダムに穴が空いた状態。もはやいつ決壊するか、の段階に入っているのだけれど、独立交易都市は一先ずの危機を脱して、都市の復興に取り掛かる。
市民の被害は最小限に食い止めたものの、騎士団の被害って書いてある通りだと殆ど壊滅じゃないですか。特に三番街担当部隊は半数が死亡。傷を負って復帰不能に陥った団員の事も考えたら、これは痛いどころじゃない。幸いにして団員募集がうまく行っていて補充も足りているようですが、正規隊員がこれだけ失われていると、新兵が幾ら増えても戦力化されるまでどれほど掛かるものだか。まだ、即戦力になる人材もいるだけマシかもしれないけど、半年前に入団したセシリーがベテラン扱いされるようじゃあ、大ピンチだわ。まあ、セシリーは実際ほんとに強くなったけど。
一巻の時は剣に振り回され、初めての実戦でまともに戦えずにヒーヒー言って泣いてた小娘が、ねえ。セシリーのあの活躍はやはり市民の間でも相当話題になっていたらしく、彼女に憧れて入団してくる輩も出てきている。その一人であるヘイゼルが、泥棒を追いかけて逆襲されたあげくにこっぴどくやられそうになったところを、颯爽と現れ瞬く間に制圧してしまうセシリー、なんて場面、半年前はセシリーがちょうどヘイゼルみたいにド素人相手にボコボコにされて泣いてたもんなのになあ。ほんと、強くなったわ。

そして、ルーク。みなさん、お母さん、お父さん、ルークが本気を出しましたよ! まさかまさか、こいつの方からこんなに積極的に動くなんて。
今まで風雲急を告げてばかりでバタバタしてばっかりだったから、二人がわりといい雰囲気になってからこっち、落ち着いて他の何にも気をとられず二人で過ごす時間と言うのは殆どなかったわけで、こうしてみるとこの二人って本当にお似合いなんだなあ、と惚れ惚れとしてしまった。ツンツンせずに誠実にセシリーに向き合うルークは、瑕疵が見当たらないほぼパーフェクトな完璧イケメン青年で、そこはかとなく照れているのなんかチャーミングで、文句のつけようがないんだよなあ。
まあ、そんなルークは、妙だとは思ったんだ。
卑怯だとは思うけど、それ以上に自分に対してもセシリーに対しても、これはきっと誠実なんだと思いますよ。変に遠ざけようとするよりも、よっぽど男らしく素敵な未練がましさだと思う。そこで踏み越えてしまわないのもまた、迷いであると同時に誠実さなんでしょう。その未来が決定しているものなら、安易に一線を越えてしまうのはやはり無責任だと思うし。かと言って、後々セシリーがどれほど傷つくか、という点もあるんですよね。もっとも、どのやり方を選んだとしても、正解は無いわけだし、セシリーが傷つかないルートもまずないわけで、ならばルークのやり方と言うのは非常に共感し得るそれなわけです。
それもまた、愛なのよ。

いい雰囲気というと、もうアリアとユーインもすっかりいい雰囲気になっちゃってるじゃないですか。前々から気にはなっていた、悪魔は、魔剣は人と愛し合えるのか、という点についても今回ユーインの研究からひとつの答えが出たわけですし。
アリアの将来についてはずっと見通したたなくて、微妙に不安なところがあったのですが、これは良かったなあ。
ただ、その事実が判明することで、思わぬ伏線が起爆したわけですけど。
なるほど、シーグフリードの正体ってそういうことだったのか!! 一つの過去の事実が明らかになることで、これまで、生殖能力を持たない、ハウスマンの姓を持つなどといった様々な謎をでもってその正体を闇に落としていた彼の素性その他もろもろが一気に明らかに。
まともな人間ではないと思っていたけれど、まさかそういう事だったとは。彼が迸らせている世界への憎悪も、きっとそこに起因するんだろうけれど、まだその具体的な目的などは分からないんですよね。帝国側のキャラにも、それぞれ色々ありそうな感じがしてきたわけだ。
今回の帝国側のエピソードも、その真の目的はわからないままなんだよなあ。でも、さらにこんな帝国側の戦力が増えてるようじゃ、パワーバランスが傾きすぎているような気もするんだけど。
エピローグでの、びっくら仰天の展開もそれに拍車を掛けているし。
いや、キャラの幸せのことを考えると、この展開は大いにアリなんですけどね。最終的に元に戻るにしても、この間の時間と言うのは将来的にとても貴重なものになるはずだし。

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 7.Unrivaled5   

聖剣の刀鍛冶 #7 (MF文庫 J み 1-15)

【聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 7.Unrivaled】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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今回これ、僅か229ページしかないんですよね。前巻も、230ページちょいだったから、けっこう薄めなんですよね、このシリーズ。
だから、毎回びっくりさせられてしまうのです。読み終わったあとに、「え? こんなに薄かったの!?」と驚かされてしまう。読了後の充足感、満足感、読破したあとの心地よい疲労感が、とてもじゃないが200ページやそこらのペラペラな感じじゃないんですよ。まずもって倍、およそ400ページや500ページ強はあろうかという分厚くも読み応えのある本を読み終わったような感覚に酩酊させられるわけです。
全編にわたっての全力疾走。息をつく暇のない怒涛の展開。最後まで気の抜けない、燃え上がるようなストーリー。とにかく密度がハンパない。
熱い、もう滅茶苦茶に熱い。セシリーが、ルークが、リサが、ゼノビアが、出てくる人みんなが熱い。名もなき市民の一人に至るまで、滾るように恐れも絶望も薙ぎ払い、意地と負けん気を奮い立たせる。

前巻のラスト、あまりの絶望的展開に、最善を尽くした末に叩き潰され、希望も何もかも失ったかのように見えた展開に、地獄のような有り様に、これはもうどうしようもないんじゃないかと。独立自由都市は此処で滅びてしまうんじゃないのかと、物語の流れの中でそういう顛末になってしまうのかと思ってしまったものだけど。
なんの作品だったかな。こんな名言があったんだ。
「絶望の先にこそ、希望がある」
あの絶望がセシリーの想いとシンクロしていたというのなら、セシリーたちの街。この独立交易都市の底力を。大国の狭間でただ一都市で自由を勝ち取った街の、自由を自分たちの手で勝ち取った市民たちの本当の力を、まったく見縊っていたとしか言いようがない。
人外兵器や悪魔の戦闘特性を考えるなら、野戦でなら軍国の精鋭が蹂躙されたのも無理からぬこと。でも、確かに市民の全面協力を得た市街戦、しかも防衛戦ならこの結果も決して不思議ではないんですよね。リサが考案した対悪魔戦での戦術も、市街戦なら十分活用できますし。
そして、セシリーの強い事強い事。この娘、何時の間にこんなに強くなったんだ? 負ければ負けるほど、叩かれれば叩かれるほど、鍛えれば鍛えるほど、刀のように強くなっていくセシリー・キャンベル。
同僚の騎士団員たちが仰天するのも無理ないよな。この子の成長ぶりは尋常じゃない。これ以上ないくらい痛快無比。
おまけに、アリアとのコンビはもう完全に極まって、互いに互いを補い合う最高の関係に至ってるし。最初の見開き二ページ使った二人の挿絵の威力たるや、もう身体の芯から震えが起こったほど。このシーンは、ちょうど前巻の最後のイラストの対比になるんだろうなあ。そりゃあ力も入るわさ。
そして、ルークとの再会と合流。カッコイイ、もうめちゃくちゃカッコいいよ、この二人は。でも、テンションあがりすぎて、思わずルークのことを「私の男」と公言してしまって、敵を前に赤くなっちゃってる所とか、相変わらずセシリーは可愛いよなあ。可愛いよなあ。
一方でルークはルークで、セシリーのこと、しっかり「俺の女」と言っちゃってるんですけどね。そこまで言うなら、受け入れてやればいいのに。覚悟の方向が間違ってるよ、ほんと。

と、これだけ独立交易都市が本領を発揮したにも関わらず、シーグフリードの狙いは都市を陥落させる所にはなかった、というのが不気味に尽きる。元々正体も目的も不明な所があったけど、今回の一件を通じてさらに得体が知れなくなってきたなあ。

もう盛り上がりっぱなしてテンションどこまで上がっていくのか、天井知らず。この勢いは新章入っても止まりそうにはなさそうです、はい。あー、もうやたらめったら面白かった。

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 6.NewWorld4   

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 6 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 6.NewWorld】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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おい……おいおいおい、これマジで詰んだんじゃないのか?
ただでさえ、ヴァルバニル復活を直前に控えながら、セシリーの秘密が明らかになり、国際情勢は悪化の一途。悪い材料ばかりが積みあがって、そろそろ希望の芽でも見せてほしい、と切に願っていた矢先に、この作者ときたら……。
さらに、追いこみかけてきやがりましたよ!!

ラストの鬼気迫る挿絵と合わさった盛り上げ方は、素晴らしいの一言。あそこでのセシリーの抱いた想いは、読者と完全にシンクロしていたと言って間違いないだろう。そこまでの持って行き方が凄いのなんの。
いや、あと先考えてるのか、これ? ここまで一つ一つ丁寧に此方側のカードを叩き潰されてしまった以上、ここからどうやって逆転するのか、正直言ってさっぱり思いつかない。セシリーたち独立都市に軍国側が失策をしたわけではなく、現状で着手できるほぼ最善手を打っていながらのこの状況である、というのが余計に巻き返しの余地をなくしてるんだよなあ。

今回、アリアがさり気に女の子してた。シーン的には少なかったけど、なかなか印象的だった。セシリーにしてもこのアリアにしても、自分の気持ちを誤魔化すってことはしないのね。セシリーはともかくとして、アリアがああも自分の感情を自覚的に取り扱うとは思ってもみなかっただけに、この展開はちょっと驚き。ただ、自分の気持ちはともかく、相手の気持ちはわかっちゃいないみたいだけど。彼が動揺しまくってたのは、アリアが魔剣だからじゃねえっての(笑
その辺、まだ自虐的な部分が強いのかもしれないけど。

ルークとセシリーの関係は、もうほとんど鉄板状態と言っていいのでしょう。ただ、ルークが自分の体の状態と合わせて、覚悟決めちゃってるために、セシリーの想いに応えるつもりが一切なさそうなのが、悲壮なんだけど。でも、折々でもう読んでるこっちまでメロメロになりそうなセリフ吐きやがるんだよな、この野郎。実際、これくらいでないとセシリーみたいな熱血主人公タイプのヒロインに【恋する女の子】をさせるのは難しいのかもしれない。
そのセシリーは、と言えば、この娘はほんとに毎回毎回戦えば負けるよなあ。単純に勝敗表を作成したら、負けの方が圧倒的に多いんじゃないだろうか。ただ、セシリーが強くなったなあ、と思うようになったのは、たとえ勝負に負けても、心が折れなくなったところだろうか。雑草のように踏まれても踏まれても、伸びてくるように、負けたら負けた分だけタフになっていっているような気がする。
そんな負けても負けても折れずに立ち向かうセシリーの心の強靭さが伝わってくる頃だからこそ、余計に最後の彼女が感じた絶望感が、圧倒的に感じるのかもしれない。今の、あのセシリーですら打ちのめす、絶望感。
今回、ページ数的にはけっこう薄かったように思うのですが、そう感じさせない内容の濃さは、さすがと言っていいかも。

アニメ化を控えて、増産体制に入ってるのかもしれないけど、このクオリティでどんどん出してくれるのなら、どんどんやってくれってなもんだ。


聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 5.Sacrifice5   

聖剣の刀鍛冶5 (MF文庫J)

【聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 5.Sacrifice】 三浦勇雄/屡那 MF文庫J

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し、しまった。完全に油断していた。軍国から戻っての束の間の平和の短編集なんて話だそうだから、てっきりのんびり気を抜いて読める話かと弛緩して読み始めたら……とんでもないとんでもない!
実際に剣を合わせて戦うような場面こそないものの、人間関係のせめぎ合いといい、セシリーに秘められた謎の真相といい、まさしく激動の巻じゃないですか。
不意打ち食らったんで、けっこうクラクラ。

今まで、態度や反応からセシリーへのルークへの気持ちというのはある程度推察できていたとはいえ、ここまで明確に彼の内心を露わにしたのは初めてだったんじゃなかったかな。正直、驚いた。
かなり意識してるのは分かってたし、セシリーという人間そのものに一目置いている気配は感じていたわけだけど……ルークがそこまでセシリーに対して想い入れてるとは、予想していなかった。していなかっただけに、ガツンときたね。そりゃあ、彼女が黒騎士野郎に甚振られたのを知って、怒り狂うのも無理ないわ。というか、あれがきっかけだったのね。
騎士として見込み、人間として敬し、なによりただの女として心奪われる。惚れ方としては、全力全開じゃないんですか、こりゃあ。
しかも、聖剣の鞘という隠語で秘されてきたセシリーの血に負わされてきた宿命を知ってしまった以上、彼が聖剣を打つという意味には凄まじいまでの重さが課せられてしまったわけで。重い、これは重い。絶対に失敗できない。単に、セシリーという女を見込んで、自分の過去から未来の全部を載せて託す、というこれまでの意味合いだけでは済まなくなってしまったんだから。
そんな状況で、その当該者である女から、事情を、真相をすべて知った上で、あんなこと言われたら、男としたら頭がどうかしちゃうんじゃないだろうか。もう、奮い立つどころじゃないですよ、ありゃあ。
あの瞬間は、もう自分に出来ない事はないとすら思えるような全能感に支配されたと言っても過言ではないような。
だからこその、あの所業だったんでしょうけど。いやいや、もしルークが自分の宿命を受け入れ、覚悟を決めてなかったら、あそこでそのままセリシー襲ってもおかしくなかったような(笑

そのルークの宿命なわけですけど、自分は単に失明だけかと思ってたんで、ルークが覚悟しているその先があることが、けっこうショックだったり。そこまで深刻だったのか、と。
成さねばならないことがあり、成したいことがある。惚れた女を救うため。そのために、命を削る。
だったら、この男の性格からして、自分の想いを告げるなんてことは絶対しないんだろうなあ。あとでセシリーがどれだけ傷つくかを、わかってないのか、わかっていて無視しているのか。どちらにせよ、傲慢であることには変わりなく、ただ今の彼の置かれた状況からすればその傲慢たることはひどく正しいことなんですよね。後の事を気にするには、まず現在を乗り越えないといけない。現在を乗り越えるためには、未来を捨てなければならない。既に、もう未来に辿りつけないと分かっている身としては、真実を告げることは害悪にしかならないわけだし。彼女が傷つくのが今か、あとかの違いだけとも言えるし。今、彼女が傷つけば乗り越えられるものも乗り越えられなくなるしねえ。
でも、やっぱりその覚悟はセシリーには酷いと思うよなあ。だからこそ、リサの存在がここで重きをなしてくるんだろうけど。
ほんと、なんとかしてくれ。

本番に至るまでの前振り、という今回だったわけですけど、いやもう面白すぎる。面白すぎて、心高鳴りすぎる。手に汗握るドキドキとワクワク。
前振りでこれなら、本番はいったいどうなってしまうのかと、今から怖いくらいだ。
 
12月3日

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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ヤングガンガンコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(ガルドコミックス)
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(コロナ・コミックス)
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(MF文庫J)
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(オーバーラップ文庫)
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(オーバーラップノベルス)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(ダッシュエックス文庫)
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(MFブックス)
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(KADOKAWA)
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11月22日

(MFC)
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(MFC)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(MFコミックス フラッパーシリーズ)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスpixiv)
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11月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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