【逆行の英雄 ~加護なき少年は絶技をもって女勇者の隣に立つ~ 1】 虎馬チキン/山椒魚 MFブックス

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逆行した加護なき少年は、今度こそ幼馴染の女勇者を救う――!
とある田舎の村に住む少年アランは、勇者と呼ばれる少女ステラの幼馴染だった。
ステラは人々の希望として奮闘し、魔王討伐まであと一歩という所まで迫っていたが、最後の戦いに敗れ、人類は再び絶望の底へと落とされてしまう。
幼馴染を奪われたアランは加護なき無才の身でありながら、比類なき努力で格上殺しの秘剣を編み出し、遂には魔王と刺し違える事で復讐を果たすのだった。
しかし仇を討っても彼女は帰って来ない。悲しみと喪失感の中でアランは命を落とし――気づけば幼馴染が勇者となる前の時間へと逆行していた!
絶望の未来を知っているアランは誓う。
「今度こそ二人で生きて魔王を倒して、ハッピーエンドで終わってみせる」
絶技をもって大切な幼馴染を守り抜く、王道剣戟バトルファンタジー開幕!!

くわーーっ、こいつはカッコいいなあ。願いに向かって脇目も振らず一心不乱。前世というべきか一周目というべきか、かつての人生で勇者として覚醒し旅立っていった幼馴染を無為に見送り、ただその惨死を伝え聞くしかなかった全身を掻き毟るような後悔や無念を糧に、もう一度幼い頃から送ることになった二度目の人生を、今度こそ幼馴染のステラを守るために費やさんと努力し続けるアラン。
まさに王道で、正道の地べたから這いずり上がる英雄譚なんだけれど、アランの心根心意気が本当に真っ直ぐで、ステラを守る!で一貫してブレがないから、ほんと気持ちいいんですよね。
その一途な想いも、悲痛なまでの後悔や絶望を背景に打ち立てたものだから決して軽々しいものではなく、二度とあんな思いを味わいたくないという必死さ以上に、かつて孤独だっただろう前世のステラの寂しさや痛み孤独絶望感なんかを思いやりながら、自分以上にステラにそんな想いを二度と味わわせるものか、という懸命さに彩られたものだから、もうまっすぐというか健やかなんですよ。
自分のことだけに内向きになっていたら、かつて復讐鬼として無才にも関わらず魔王を倒すまでに至った狂気、或いは負の感情みたいなものに引っ張られて、もっと危ういピーキーな感じになっていたんじゃないだろうか、とも思うのだけれど、とにかくステラのために一途だからその真っ直ぐさに危うさは感じられず、むしろ分厚い柱を感じさせるどっしりとした目的意識で安定感すら感じさせてくれるんですよね。
ステラを守るということに一途なわりに、ステラに盲目的というわけじゃなく、勇者としてハチャメチャに強くなっていくステラに対して上から目線になれるはずもなく、必死に対等な立場として隣に立ってやる、という負けん気を発揮し続けていたのも良かったのでしょう。ステラは守るべき存在じゃなく、追いかける存在だったから。
それでも、前世の記憶を元に自分を鍛え上げまくって、幼いときからステラに対して勝ち越しし続けてきた、というのは男の子だなあ、と微笑ましくなる向こう意気じゃないですか。お互い、負けるかこらーと切磋琢磨し合う幼馴染関係というのも、お互いへの信頼感が振り切っててニマニマしてしまうんですよねえ。
ステラからすれば、ちっちゃいときからメチャクチャ一途な気持ちぶつけられ続けて、オマケに宣言通りどんどん強くなって、カッコよくなっていくアランにはもうひゃわわわわ〜、てなもんですよ。
それで大人しく護られるお姫様にはならずに、彼が追いかけてくるに相応しい勇者になろうとするの、この娘はこの娘で実に勇者らしいカッコいい娘なんですよね。一方で内心いつかもっと強くなって隣に立ってくれるのを、守りにきてくれるのを信じ切って待っている、というのもまた実に乙女らしい恋する少女してるのも可愛かったなあ。
本来なら加護を持つ人間と、それを与えられなかった人間とでは身体能力から何から別次元の差が生まれてしまう。それを敢えて乗り越えようとせず、弱い自分を認めた上で弱いまま格上を倒す技法を復讐の果てに編み出し、ついに幼馴染を殺した魔王を相打ちで倒すまでに至ったアランの格上殺しの殺法。
ステラが勇者として目覚め王都へと旅立つ日、加護を持つ聖騎士の頂点たる老剣聖と戦って敗れた日、アランはもう一度自分を追い詰めるだけ追い詰めボロボロになるまで努力と鍛錬を積み重ね、かつて習得した格上殺しの技法殺法をマスターするため、彼もまた一人冒険者として旅立つのである。
あのイラストの、二本差しにズタボロの羽織を羽織った流離いの浪人みたいなスタイルが、雰囲気でそんな格好してたわけじゃなく、ちゃんと強くなるために積み上げ手に入れていったものの果てに出来上がった彼の生き様で形作られたスタイル、というのが彼の成長譚の中でしっかり描かれていたのは嬉しい所。
無才の少年が、ただ幼馴染を守るために加護持ちたちすら圧倒し、最強の剣豪すらも打ち破ってその強さを証明する、という誰にも文句言わせないどころか、きっと世間受けするだろう物語を、勇者ステラの出陣式に現れて、公衆の面前でやってのける、というのはかっこよかったなあ。
英雄譚というよりも完全にロマンスの類ですもの。おまけに、実質公開告白でしたし、一世一代のラブロマンス、そりゃあ周りも世論も盛り上がりますわ。
戦闘シーンも柔よく剛を制すを念頭に、ケレン味のあるスピード感を感じさせるアクションであり、剣戟であり、読み応えある面白いものでした。
まずもって、勇者ステラと並び立つ資格を、パーティーの一員として戦うことの出来る立場を手に入れたアラン。とはいえ、勇者の旅はまだこれから。今度はステラと、もう二人いる勇者パーティーの面々と一緒に旅になるわけで。
……いやこれ、実質ラブラブ幼馴染夫婦な二人についていくことになる、あとの二人色んな意味で大変なんじゃなかろうかw
まあどんな旅になるのか、是非想い叶い想い遂げるだろうアランとステラの旅の続きを見てみたいです。