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川口士

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 7 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 7】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ国王ファーロンに、庶子ながら王子として認められた若者バシュラル。
彼はひそかな野望を胸に、『黒騎士』ロランを罠にはめ、レグナス王子の抹殺を狙う。
レグナスの護衛を務める女騎士リュディエーヌは、幼馴染みでもあるティグルらの助力を得てベルジュラック遊撃隊を結成、バシュラルと戦うも敗北してしまう。
リュディエーヌを、そしてブリューヌ王国の危機を救うため、ティグルは父の親友であるマスハス=ローダント伯爵に助けを求める。
彼の力を借りて、ティグルたちは再起を計るのだが、そのころ王都ニースでは、バシュラルを操る黒幕であるガヌロン公爵が恐るべき行動に出ようとしていた。
混乱の渦に呑みこまれようとするブリューヌ。数々の困難をティグルは突破できるのか。

ガヌロン、ついに動く! なんかもうガヌロンが敵サイドの主人公、とばかりに掘り下げられてるんですよね。こうしてみると、彼に限らずこのシリーズって前作のエレンがメインヒロインだったシリーズでは描ききれなかったキャラクターに光を当ててるんですよね。
早々に退場してしまったロラン然り。テナルディエ公とザイアン然り。早々に人事不省に陥ってしまったブリューヌ国王ファーロンや、シリーズ始まった時にはすでに亡くなっていたティグルの父であるウルクやミラの母であるスヴェトラーナ。シリーズの終わりにようやく出てきた新任の戦姫ミリッツァ。ギネヴィアやタラートといったメンツにもスポットが当てられ、またリュディやバシュラルといったこのシリーズで初登場となるキャラクターもそれぞれメイン級のヒロインにロランに勝るとも劣らない戦士と、見事に存在感を知らしめている。
これで戦姫たちが目立たなかったら本末転倒だけれど、ちゃんと病に倒れているサーシャ以外は全員出張ってきているもんなあ。戦姫を引退したヴァレンティナまで、情報担当としてちょいちょいいい仕事してくれてますし。

しかし、ガヌロンが最初に仕えたブリューヌ王国初代のシャルルに深い思い入れがある事は前シリーズから語られていましたけれど、ここに来てその詳細が深く掘り下げられる事になったわけですけれど……ちょっとガヌロンさん初代のこと好きすぎじゃね? しかもちょっとツンデレ入っているし。
盲信してるとか忠誠心の塊、とかではなく、口ではシャルルと呼び捨てにしているし、あくまで対等、向こうがうるさいから仕えてやった、みたいな素振りのくせに、実際の様子を見たらめっちゃ一途なんですよ。最初から最後までシャルルの王道に付き合い、その戦いに寄り添い、仲間たちが死んでいく中で唯一最期を看取り、その後も公爵としてブリューヌに仕え続けてたのって、これ間違いなくシャルルへの忠誠ですよね。魔物を食らってしまって人ならざるモノになってしまった時、シャルルの下から離れようとした時に、お前は何も変わっていないじゃないか、と引き止められてその後もそばに居続けることにしたのって、もう完全に魅入られちゃってるじゃないですか。
ガヌロンって、あの他者に対する残虐さ非情さはもう人間としての心を喪っていると思うんですよね。元からそういう人間だったとは思えないんですよね。ガヌロンの記憶から伺えるシャルルの言動からして、今のガヌロンのような人を人とも思わない残酷さ、嗜虐性、殺戮は好まないし、恐怖で派閥の貴族や民を支配するやり方も必要以上にやりすぎていて、初代を支えた名軍師としてのガヌロンにはそぐわないように思える。
魔物を食らったことで、徐々に身も心も魔物のようになってしまった、というのならそれも理解できるのです。他の魔物たちは、ガヌロンの事を食らった魔物とイコールに見ている事からもガヌロンという人間に食らった魔物が侵食して染め上げていても不思議ではないなあ、と思うんですよね。
しかし、ガヌロンは自分が魔物であることを否定し続けている。他の魔物たちを敵視し、彼らには決して迎合しようとしないまま、ブリューヌの貴族としてシャルルの後裔を見守り続けてきたことは、ガヌロンのシャルルへの忠誠と友情、思い入れを伺わせてくれるのではないだろうか。
でも、彼の中では幾ら見守っていても、シャルルに匹敵するような偉大なる王はついぞ今まで現れなかったんですよね。自分が仕えるに足る王は現れなかった。その絶望が、さらに彼の魔物化を推し進めたのか。
それとも、心も魔物になってしまっていたから、どれほどの名君が現れても認められなかったのか。自分の中のシャルルに並ぶ、上回る存在を受け入れられなかったのか。
彼の中でどれほどシャルルが美化されて特別な存在になってしまったのかは定かではありませんけれど、果たして本来のシャルルとガヌロンのイメージの中のシャルルとでは一体どれほど乖離してしまったのか。
自分の記憶の中のシャルルに囚われたガヌロンは、ついに彼の後裔に再来が現れることを諦め、シャルル当人を蘇らせることを願ってしまう。その果てが、本当の絶望である可能性など微塵も考えず。
王都を支配しながら、決して玉座には座らず、その横に立ち続け主君の復活を待つ姿は、彼の挙兵が野心ではなく拗らせた忠誠と友情と……懐旧にあることを如実に示していて、どこか切なく虚しく哀れに見える。
だが、いずれにしてもガヌロンの挙はただでさえ庶子バシュラル王子とレグナス王子の対立によって内乱状態に陥りかけていたブリューヌを一気に争乱へと向かわせるのであった。

ここで、ブリューヌ国内の各勢力が一気に動き出して、王都を目指して参集しはじめるのは情勢が加速し集束していく怒涛の勢いを感じられて、ワクワクしてくる。
それも敵と味方の簡単な二勢力ではなく、リュディとティグルとミラたち戦姫が集うベルジュラック遊撃隊に、ロランが合流したレグルス王子の軍勢。待ちの姿勢を覆して積極的に動き出したテナルディエ公の軍勢、ガヌロン一派でありながらガヌロンの思惑とはまた別の独自の考えを持って動いているバシュラル王子とタラートの軍。そしてついに動き出すエレン率いるライトメリッツ公国軍に、聖剣片手に一人乗り込んでこようとしているギネヴィア女王。いや、最後のギネヴィアさんはちょっと冒険しすぎやしませんか!? こっちには側近のリネット居ないのか、先回りして捕まえる人いなかったのか!? 意中のロラン卿をゲットするため、という目的もなかなか酷いと思うのですけどw

リーザは引き続き記憶喪失のままなのですが、精神が子供帰りしたリーザの純真無垢さが眩しい!
これでティグルにべったりだったらアレなのですけど、ティグルは遊撃隊での仕事が忙しいのも相まってあんまり関わりなくて、主に面倒を見ているソフィーヤとどんどん百合百合しくなっていくのはなんともはや。おかげでソフィーヤもティグルにちょっかいかけてる暇なくなったもんなあ。
リーザの右腕が切り落とされてしまった件は、これで戦姫としてもう戦力外になるのかと思っていたら、そこまで軟弱じゃなかったか。というか、利き腕落とされてしまったにも関わらずリーザを見捨てない操雷の鞭「ヴァリツァイフ」、根っこはワンコなんだろうか、こいつ。








魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 6 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 6】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ王国に激震が走った。自らを王の落胤であると名のる青年が現れたのだ。彼の名はバシュラル。厳重な調査の末にバシュラルは認められ、正式に王子となった。
そして、大貴族であるガヌロン公爵が彼の後見役となった。
ガヌロンの支援を得たバシュラルは各地を転戦して武勲を重ね、諸侯の支持を得ていく。ごくわずかな期間で、彼は次代のブリューヌ王となるレグナス王子に対抗しうる存在となった。
冬の終わりのある日、バシュラルはついにある行動を起こす。だが、そこに計算外の要素が現れた。
黒騎士ロランの守るナヴァール城砦から火の手があがったという知らせを聞いて急ぎ駆けつけたティグルとミラたち、そしてレグナス王子の腹心のひとりリュディエーヌである。
リュディエーヌと出会ったティグルは、ブリューヌの歴史を大きく変えるであろう出来事に自ら関わっていく。
人気シリーズ、急展開の第6弾。

セカンド幼馴染きたーー! あ、いや、ファースト幼馴染はティッタだから、サード幼馴染になるのか。
というわけで、サイドテールが眩しい公爵令嬢騎士リュディエーヌ・ベルジュラックの参戦である。前シリーズでは登場しなかった完全新キャラ。サイドテールと書いたけれど、これ結構複雑な結い方した髪型だぞ?
なんか既視感あるなー、と思いながら見ていたキャラデザインなのだけれど、そうか、リリカルなのはのヴィヴィオに似てるのか。スッキリした。
いやこの期に及んで新キャラ、しかも幼馴染って、と思ったけれどこれが遅れてきた最終兵器の様相を呈する強キャラでした。幼馴染と言っても、ずっと一緒に居たタイプじゃなくて毎年ある季節に遊びに来ていた来訪型なんですが、ティグルと一緒に山の中を駆け回っていたという意味ではミラと負けず劣らずで、色んな意味でミラの最大のライバル出現、なんですよね。
何よりキャラクターがいい。性格は明るく活発で前向き。ちょっとドジっ子な所もあるのは愛嬌で、
気性は素直で女の粘っこい所が全然ないんですよね。同性相手にも嫌味がなくて、ミラに対しても無邪気なくらい当たりが良くて、裏表がないものだから、ティグルに幼馴染全開で身近に親しく接するリュディにミラもモヤモヤするものの、どうしても敵意や対抗心を持てないという感じになってしまってるんですね。
戦士としての技量も相当のもので、竜具やそれに匹敵する伝説の武器こそ持たないものの技量に関してはミラも自分と同等以上、エレンと比べても引けは取らないのでは、と評価する強者で、女性キャラとしては最強格なんですよね。だから、ミラも同じ女性の身の上で自身を鍛え上げたリュディを騎士としてこの上なく認めている。おまけに自分の紅茶の趣味でも結構話が合って話題も尽きないし、ティグルとの距離感の近さもミラに見せつけようとするものではなくて、二人の世界を作らず自然にミラの方へも距離感詰めてきて気の置けない様子で接してくるのである。それも気を遣ってとか気を回してみたいな意識的なものではないんですよね。
ミラって、オルガにも入れ込んでたようにこういう純真で直向きで悪意とかまったくないタイプって弱いですよね。ミラ自身面倒見が良いタイプというのもあるんだろうけど。
リュディの方はこうしてみると、人間関係引っ掻き回しているようで、ミラがあれだけティグルと眼の前でイチャつかれているにも関わらず絆されてしまっているように、これ誰とでも仲良くなれるっぽいタイプなんですよね。グイグイと懐に飛び込んで、自分とだけじゃなくて周り同士を繋いでしまうような。何気にハーレムなんかだとヒロインたちのまとめ役みたいになりそうなポディションだぞ。
この物語においても、リュディってこうしてみるとティグルとあらゆる意味で相性ピッタリなんですよね。山に放つと帰ってこないティグルと一緒に山野を駆け回れる活動派だし、お姉さん風吹かせつつドジっ子要素でティグルも目を離せずにいてしまうタイプでお互い変に気を使わずそのままで過ごせる距離感ですし、同じブリューヌ国民であり、公爵令嬢として嫁にすればティグルの国内での躍進に寄与する立ち位置ですし。彼女の実家であるベルジュラック家というのはちょっと特殊な立ち位置の公爵家で、血を取り込むことに積極的であまり身分差とかはこだわらない所らしいんで、ヴォルン伯家でも結婚相手としては何の問題もないようなんですよね。
他国の貴人として、ティグルとは身分差だけではなく国の違いというものが大きく横たわっているミラとは、ハードルが全然違ってくるんだな、これが。ティグルが国を捨てずにブリューヌの貴族として生きていくなら、リュディエーヌこそが最上のパートナー足り得るわけで。
ミラとしては、リュディエーヌの登場はかなりショックなことだったんですね。
今回のブリューヌの内乱で自分がブリューヌの人間であることを強く意識しだしたティグル。これまで他国をめぐり、そこで自分の国を立て直そうという人たちと一緒に戦ってきた事も大きいのでしょう。外国で過ごすことで、自分の出自や故国をより強く意識するようになるケースはよくあるようですが、ティグルも今改めて自分の国について自分がよく見ようとしてこなかった事に気づき、自分がアルサスという自分の故郷だけではなく、ブリューヌという国自体に帰属意識を持っていることを自覚しだしているのである。
ミラと結ばれるため、という最大目標の他に、この故国ブリューヌという国を自分の手で変えていく、という事をこの内乱とリュディエーヌの誘いをきっかけに考え始めるんですね。
それは、ミラにとってある種のパラダイムシフトでもあったわけだ。これまではティグルが自分を射止めるために、武功を上げて立場を獲得して自分のいる所まで駆け上がってくるのを、期待して手助けして待ちわびていたのだけれど、リュディエーヌは公爵令嬢というティグルよりも立場が上の人間であるのだけれど、待つのではなく彼の隣に自分が駆け寄ることに躊躇する事がないのを知って、自分が彼の隣に立とうと自分から動こうとした事がないこと。今回ティグルが他国との内通を疑われたように、自分と仲良くすることによってティグルが被るデメリットがあったように、リュディと違って自分が彼に与えてあげられるものが、どれほどあるのか、という疑念。
こういう形でミラがティグルと自分の将来について、不安と心もとなさを抱いたのは初めてだったんじゃないだろうか。それは、ティグルがいずれ自分に矢を届かせてくれるという信頼と期待と愛情とは関係ない、ミラが自分自身に抱いたティグルと結ばれるに足る資質と資格への疑念だったわけですから。
即座に解消、とまでは行かないもののミラの憂いを晴らしてみせるあたりが、さすがティグル、といった所なのですけれど、今回のことはミラにとってもティグルとの関係を進める上で意識を変えるものがあったんじゃないでしょうか。
ティグルは、ミラに一途なんですけどねえ。

さて、今回のブリューヌの内乱には新たに庶子として王族にたったバシュラル王子という新キャラの登場があったのですが、ガヌロンを後ろ盾に表舞台に立った、という時点でこいつ傀儡かそれとも魔物の擬態か? と一旦は疑ったのですけれど、どうやら純粋な人間であり本当に王子であり、ガヌロンとは利用し合う関係以上のものではなく、彼個人としてはガヌロンのヤバい部分には気づいていて、いずれ袂を分かつつもりはあるようなんですよね。
それ以上に、元傭兵であり彼個人がロラン級の戦士というのが何ともはや。いやいや、ロランと互角以上ってこの世界で実質最強格ってことじゃないですかー。ミラたち戦姫よりも確実に上、複数人掛かりでも勝てず、って魔物じゃない人間相手だと初めてなんじゃなかろうか。
おまけに、アスヴァールから流れてきたタラードが仕官していて、弓の腕ではティグルに匹敵する上に指揮官としても最上級のこの男がロラン級の戦士にして指揮官であるバシュラル王子と組んでいる、ってちょっとヤバくないですか?
実際、ティグルはミラとリュディエーヌと共に戦って、最初は何とか逃亡。諸侯や騎士団をリュディが糾合して軍勢として戦った次の戦いでは、敗走の憂き目にあったわけで。
ミラが自軍を率いていなかったのと、ティグルが一勢を率いるだけの権限を持てずに指揮権を持てなかった、という点が大きいにしても、完全にバシュラル・タラードのコンビに敗北を味わわされる結果に終わったんですよね。このバシュラルの強敵感よ。
これ、こっちも早くロランと合流してのロラン・ティグルの最強コンビを組まないと対抗出来ないぞ。
このバシュラルも、ガヌロンから与えられたという形とはいえ、オートクレールという伝説の武器を携えているわけで、また伝説の武器持ちの英雄が現れたということなんですよね。
各国それぞれにレジェンド級の武具を携えた英雄たちが降り立ち、割拠するというなんか群雄伝の様相を呈してきて、前シリーズよりも戦記寄りのダイナミックな展開になってきたなあ。

しかしロラン卿、今回だけで二度も「ロラン暁に死す!」になりそうな死亡フラグ全開の展開を切り抜けたんですよねえ。ほんと、ロラン卿しぶとい!

そして、ソフィーに拾われたエリザヴェータが、記憶喪失のお陰で外面を全部引っ剥がされて根っこの部分の正義感たっぷりの優しいイイ子な所が思いっきり曝け出されてしまい、おかげさまでソフィーが思いっきりリーザに情が移ってしまって肩入れしてしまうことに。
記憶ないとここまで人懐っこいのかリーザってば。まさかここで、ソフィーとリーザがここまで親密なコンビになってしまうとは。記憶の方は早晩戻りそうな気配があるのだけれど、その前にエレンとも会っておいてほしいなあ。エレンの反応が面白いことになりそう。或いは、エレンの方からリーザに気づくことも可能になりそうだし、今のリーザなら。


魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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アスヴァール王国の内乱は、勝者となったギネヴィア王女が宝剣カリバーンを正式に継承し、父王の跡を継ぐ形で幕を閉じた。ティグルはブルガスの地で手に入れた黒い鏃にまつわる『魔弾の王』の足跡を追って、ミラたちとともにザクスタン王国へ向かう。ザクスタンでは王家と土豪が対立を深めており、各地で小さな争いが頻発していた。王都を目指して旅をしていたティグルたちは、雪の降る山中で因縁のある魔物ズメイに遭遇する。激闘の末にティグルと離れ離れになってしまったミラは、ヴァルトラウテと名のる土豪の娘に助けられる。彼女の傍らには、少女と呼んでいい年齢の戦姫の姿があった。山と森の王国で、ティグルとミラは新たな戦いに身を投じる。

ザクスタン王国で出会ったのは、14歳の最年少戦姫のオルガ・タム……14歳だったのか! ミリッツァが15歳なのでほんとに一番下じゃないですか。しかも、二年ほど自分のブレスト公国を出て放浪していたらしいので、戦姫になったの12歳だったんですね。子供じゃないの!
そりゃ、公国の運営とかそうそう上手くやれんわなあ。
前作でもオルガは戦姫になった直後に公国を出て旅に出てたんだけれど、実際に何があって自分が領主には相応しくないと思うに至ったのか具体的な話は出てきてなかったんですよね。なので、どちらかというと最良の領主とはというテーマに対して哲学的に悩んでるみたいな感じになってて、その解決もティグルを見初めてアルサスという領地を守るという明確な意識を持っていた彼を観察するために行動を共にするうちに、そのまま特に具体的な解決があったわけではなく流されてしまった感があったんですよね。
一方、今回はまず最初にあったのがミラだったからか、彼女が戦姫として立派に領主を務めている事もあって彼女に相談することに。その際、オルガの経験不足や潔癖な姿勢から起こしてしまったミス、失敗例などが話にあがって、なるほどなあ、と。
これは誰が悪いということではなく、本当に経験不足ゆえだったんですよね。ミラのように生まれが代々戦姫の家柄で、幼い頃から教育を受けていたわけじゃなく、傭兵として生きていたエレンや商家の人間だったというソフィーのように実地で経験を詰んできたわけでもない、遊牧民族の中で生きてきたわずか12歳の子供にいきなり公国の政務をやれ、と言われてもできんわなあ。
いや、それまで公国の運営を担ってきた文官の人たちも決してオルガを蔑ろにしていたわけじゃなく、むしろ幼い彼女を慮り気遣って尊重しすぎたことがまずかったのか。この娘、傍目こそ無口で無表情で何考えてるかわかりにくい娘なのだけど、凄く真面目で何事にも真剣で緩みがない娘なんですよね。いや、遊牧民族らしい自然体こそが本質なんだろうけど、慣れない環境で肩肘はって頑張っちゃったんだろうなあ。
でも、こういう娘、ミラからするとどストライクだと思うんですよね。真面目な子、シンパシーが通じると言うか、ミラってこの手の娘凄く相性いいんですよ、多分。なのでか、随分と親身になってオルガと接することに。
ミラの変化、ティグルと出会った事によって戦姫という枠組みにはめ込んだ自分だけではない、枠組みを広げて俯瞰的に余裕を持って違う視点から自分の立ち位置を振り返ることが出来るようになっていた事が、余計に悩むオルガに親身になれた要因なのかもしれません。
自分でもちょっと触れていますけれど、ティグルと会わなかったミラなら、戦姫としての責任を一時とはいえ棚上げして、放浪の旅に出てしまったオルガのこと、たとえ理由があったとしても未熟と断じて突き放しそうですし。代々戦姫を継いできた家柄ゆえのプライドが、そういうの甘えとして見たんじゃないかな、というのが前シリーズのミラからは伺えましたし。
その意味でも、ミラとオルガがこんなに仲良くなるのはちょっと意外なくらいで面白かった。こんな世話好きだったっけ、と思うくらいオルガの事可愛がってますし。妹みたいに思ってるんじゃないだろうか。この新しい関係性はなかなか新鮮で味わい深いです。

さて、舞台はアスヴァールからザクスタン王国に。国が変われば自然も変わり、国情も変わってくる。漫遊記みたいになってきたなあ、と思いつつ国をまたぐたびに景色が変わるのもまた何とも楽しい味わいで。ザクスタン王国は前作でも戦争してたりしましたけれど、実際にザクスタン本国に足を踏み入れることは……あったっけ。ただあったとしても軍勢を率いての進軍、という形だったと思うので国の中を実際に歩いて周りを見渡し、匂いを嗅いで人々の生活の様子を眺めて、という風情ではなかったですからね。このアスヴァールとはまた違う深い森の国の様子はなかなか情緒的なものがありました。人狼、と呼ばれるあやしい存在の噂がまた拍車をかけるのですが。
それに、国の体制も他と違って王家の力が非常に弱く、土豪と呼ばれるこれもう独立勢力ですよね、公然と王家と張り合ってる勢力と常に小競り合いしてるような情勢で。
そんな中で、魔物との交戦によって別れ別れになってしまったティグルたちとミラ。はからずも、王子と行動をともにするようになったティグルたちと、土豪連合の主力を担うヴァルトラウテという若き女主人に保護されたミラ。なんか、ロミオ&ジュリエットな様相も呈している状況のなかに首を突っ込んでしまう。ジュリエットがまた勇ましいんですけどね。勇ましいと言っても性格的には理性的で、むしろ家のしがらみに囚われているというべきか。先代の父を王家とのトラブルで喪ってしまったが故に、余計に土豪としての立場にこだわってしまっているというべきか。心情としては王子の側にあるのに、自縄自縛になっていた所にミラとオルガという外の人間であるからこそ胸襟を開けて話せる友人と出会えて、想う所変わっていくという感じでしたね。
同じく領主としての悩みを抱えるオルガに、自分と同じ女領主として戦士として堂々と振る舞いつつ恋にもまっすぐ生きているミラ。影響を受ける、という意味では実に効果的な二人でありましたし。
王子の方はひたすらいい人で、こいつ大丈夫かと思うくらいお人好しなんですよね。ただなよなよしてるし戦う力はないものの、無力さに打ちひしがれて縮こまらずどんどん行動に出る気力があり、聡明でもあり、彼を侮らずに脇を固める人材がいたら見違える気配はあるんですよね。実際、ティグルが協力することで一気に状況を打破できたのは、彼の手腕でもありましたし。何より、あの一途さは好感を持たざるを得ないですわ。

しかし、魔物側の思惑も相変わらずまとまっていないというか、個人個人で勝手に動いているというか。最終目的は一緒のはずなんだけれど、やはりこのシリーズの最大の敵はミラの祖母の体を使っているズメイ、ということになるのか。今回の人狼と呼ばれる人の意識を失わしめ徐々に怪物に変えてしまう存在も、ズメイの仕込みだったわけですし。
このザクスタンでは、宝剣バルムンクが登場してきましたけれど、どうもこの剣は一筋縄ではいかなさそうな気配があるんだよなあ。なんか、危険視されて封印されてたみたいだし。今の所、ヴァルトラウテが使ってるけれど特に怪しい影響はないんだが……。

ところでこれ、結果的にザクスタン王国、中央集権化が進みそうなんだけど、隣国であるブリューヌ的には大丈夫なんだろうかw ティグルくん、思いっきり手助けしちゃってるけど。

さて、前回えらいことになってたリーザですけれど、途中で彼女に呪いかけてた魔物の婆ちゃんが呪いが解かれちゃった、という話をしだして、その流れであいつ死んだわー、みたいな話になってて、マジかー! と結構焦ってたんだが、どうやら生存はしていたみたいで……。
でもこれ、まさに前シリーズと真逆の立場になっちゃってませんか、リーザさん。残念ながら拾ってくれたのティグルではない、という時点で不憫度はまったく解消されてないのですが。どうもソフィーが引き取ってくれそうなので、変なやつに拾われてない分まだマシなのかもしれませんが。

そして、なんかもう登場するだけで面白くなってきたザイアンくん。お父さんに怒られるの巻。竜の世話係の娘が理不尽な目にあった、と勘違いして父親への恐怖も忘れて激高するなど、なかなか良いところも見せてくれましたけれど、オチがやっぱりザイアンくんでナイスザイアンw
いやでも、ザイアンくんちょっとチョロすぎませんかねw 勝手にどんどん侍女のアリエットへの好感度あげてってるんですが。多分、アリエットの方は別に好感度あがってないぞw


魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)4 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)4】  川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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エリオット王子を利用してアスヴァールの内乱に介入すべく派遣されたティグル、ミラ、ソフィーたちジスタート軍は、暴虐の限りを尽くしていた魔物・トルバランを討ち取り、港町デュリスの解放に成功した。が、王子の急死という予期せぬ事態の発生により、急遽、ギネヴィア王女を総指揮官とするアスヴァールおよびブリューヌとの連合軍を結成して、ジャーメイン王子と対峙することに。ジャーメイン王子の勢力圏へ橋頭堡を築くために港町マリアヨを目指す連合軍だったが、待ち構える敵の船はこちらの倍以上。圧倒的劣勢の中、アスヴァールの覇権を巡る戦いの幕が上がろうとしていた。

ミリッツァちゃん、この娘いい性格してるわー。性格というか、おませさんというかエロ小娘というか。エザンディスの瞬間移動能力をヴァレンティナとは別の意味で悪用してやがるw
しかしヴァレンティナ、この世界線でも他の戦姫たちから嫌われてたのかー。どうせ寿退社した件で他の戦姫たちにマウント取りまくったとかそんなんじゃないのか?

さて、アスヴァール内乱編は本格的にギネヴィア立志伝という体の戦記モノに。後ろ盾を持たないギネヴィアが頼らざるを得ないのは、ブリューヌ軍とエリオットの死によってギネヴィアに乗り換える事にしたジスタート軍という外国軍という状況なのだけれど、地元に基盤がないというのが逆に今のアスヴァールの状況では差し引きプラスに働いた、というべきなのか。
大陸派と島派の対立構図が激化している現状では、どちらの諸侯とも縁を繋いでこなかったギネヴィアはフラットな立場で扱えるということなのだけれど、勿論扱いを間違えると父王のようにバランスを重視しすぎて何も出来なくなってしまうか、内部対立を激化させて組織集団としての体をなくしてしまうか、のどちらかなのでギネヴィアの手腕とカリスマが問われることに。
こういうケースだと、外国軍であるブリューヌとジスタートは傀儡とならずとも主導権を握って権益や利益を確保しまくり、自国に都合の良い政権を誕生させようと尽力するものなんだけれど、何しろブリューヌ側の指揮官は清廉な騎士であるロランだし、ジスタート側も寝技は得意だとしても悪辣ではないソフィとミラなだけに、ほんとに純粋な支援軍みたいになっちゃってるし。
勿論、ギネヴィア政権が誕生したらその功績からアスヴァールには多大な借りを貸し付けることになるんだろうけど、良心設定になるんだろうなあ。

ともあれ、後手後手に回ってしまったジャーメイン。さらに疑心暗鬼を募らせて信望を喪っていってしまったのも相まって、戦況はギネヴィア有利に。海戦での大勝がきっかけだったとはいえ、なんとか島派・大陸派を取りまとめて戦略も堅実に進めて間違わなかったギネヴィアの手腕は大きかったのではないかと。この点、ギネヴィアを侮ったジャーメインの失点ですね。この内乱がはじまるまでギネヴィアを眼中に入れていなかったのも、それまでのギネヴィアの自由気ままな振る舞いを見ていればわからないでもないのですけれど、内乱始まってからのギネヴィアの動きを注視していれば、もう少し積極的に動けたのかもしれません。戦姫や黒騎士ロランの輝きに目を取られてギネヴィア本人の資質に目を曇らせてしまった、とも言えるのかもしれませんが。

しかし、まさかのザイアンくん登場参戦ですよw
相変わらず性格ネジ曲がってますけれど、仲良くはなれないけれど信頼はできる、というくらいに成長したんじゃないでしょうか。人間的な余裕が出来た、というべきか。あれで出来たの? と言いたくなる所だけれど、昔のザイアンなら飛竜にちょっかいかけようとした子供を止めることすらしなかっただろうしなあ。あの若干飛竜に舐められてる竜との関係は愉快なんだけど、もうちょっと頑張れと応援したくもなりますなあ。

一方でひとりえらい目にあってしまうリーザさん。この娘、相変わらず貧乏くじ引いてるよなあ。仮にも戦姫が暗殺者紛いの仕事を請け負っているという時点で、他の戦姫よりも公国の王としての立場苦しいんじゃないだろうか。他の貴族からの要請を断れない、という事でもありますし。
しかし、あのラストの展開はどう持っていくつもりなんだろう。ギネヴィアとしても、今回の一件は変な形でボタンを掛けてしまった気がしないでもないですし。なんか変なスイッチ入ってません?
リーザもまさかあれで、とはならないでしょうけど。むしろ、彼女の右手の問題が早く解決するきっかけになればいいのだけど。ってか、この世界でもリーザってばエレンにボコられて例の力望んじゃったのかしら。

今回はロランとがっつり組んでのタッグ戦、みたいな形になっていたティグルですけれど、この二人の相性ってもしかしたら戦姫たちよりも上なんじゃないだろうか。息ピッタリすぎやしませんかね!?
ってか、ロランのデタラメっぷりがホント凄いんですけど。こいつ、人間か!?
そんなロランが前衛にいたら、後ろからティグルがやりたい放題なんですよね。もちろん、竜具を使う戦姫たちとティグルのコンビはその竜具の能力や黒弓との相乗効果も相まってバッチリ以外の何者でもないのですけれど、ロランとティグルのそれは虎に翼、という感じすらしたんですよねえ。
二人共、純粋に技量が噛み合った結果、なのかもしれませんけど。にしても、繰り返しになるけどロランがバカ強すぎるw

シリーズ感想

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)3 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)3】 川口 士/ 美弥月 いつか  ダッシュエックス文庫

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ライトメリッツを襲ったアスヴァール軍を撃退し、エリオット王子を見事に捕らえたティグルたち。ジスタート王国はエリオットを利用して、アスヴァールの内乱に介入することを試みる。遠征軍の指揮官に任命されたのはミラとソフィーの二人だったが、その人選にはいくつもの思惑があった。
同じころ、アスヴァールの王女ギネヴィアは、自らの野心をかなえるためにブリューヌ王国を訪れていた。ブリューヌは黒騎士の異名を持つロランに、あることを命じる。
野心家たちが入り乱れ、混迷渦巻くアスヴァール島で、ティグルとミラの前に新た
な強敵が立ちはだかる。戦いの先で二人は何をつかむのか――。
アスヴァールって前作では特に元ネタがどこに国とか意識していなかったのだけれど、今回はハッキリとイングランドがモデルとわかる描かれ方になっている。とはいえ、大陸側に領地を得る過程など歴史的推移に関してはイングランドのそれとはだいぶ違っているので、史実のイングランドと重ねて考える必要などこにもないのでしょう。ただ聖剣カリバーンが実在し円卓騎士団がかつて存在したというのはかなり重要になってきます。
このシリーズだとジスタートの戦姫たちが携えている竜具とティグルが持つ「黒い弓」以外にも魔物に対抗できる伝説の武器が各国に一つ以上はあるみたいなんですよね。いや、実際に国ごとにあるかはわからないのですけれど、ブリューヌには現在ロランが所持しているデュランダルがあり、こっそりギネヴィアがくすねていたカリバーンと、色々と登場してくるんですよね。そして、それらは実際に得意な力を秘めていて、魔物たちと相対せる力を持っている。ギネヴィア王女は前作ではタラードが下剋上した時の旗印というか神輿という扱いで特に自己主張していなかったのですが、今回のシリーズでは兄弟の争いに割って入る形でブリューヌに助力を求めて女王として立つために第三勢力として名乗りを上げて、さらにカリバーンの所持者として戦場に立つことに。前は立ち絵すらなかったのに、今回は挿絵にもバンバンと登場して戦姫はジスタートの専有ではありませんぞ、とばかりに大活躍。泳げなくて溺れるロランを自ら海に飛び込んで助けたり、と活発に動いてますし何やらロランにご執心。さらに彼女に指針を与えたのが昔ブリューヌを訪れたときに出会ったティグルのお父ちゃんというのだから、ティグルにも縁があるわけで面白いポディションになってきてるんですよね。
ジスタート側は前回ライトメリッツにちょっかいかけて捕えたエリオット第二王子を傀儡にして後押ししアスヴァール王に仕立てようと、ミラとソフィーの軍を派遣させたわけですけれど、ブリューヌ側も王様がけっこう積極的に動いていて、ギネヴィア王女を支援してロランたちの騎士団を送り込んで来てるんですよね。彼女が女王になればよし、そうでなくてもガヌロンの暗躍の裏付けを取りにかかっているところなど、ブリューヌ王がかなり意欲的なんですよ。この方、元気だったらこんなに政略にも謀略にも手を伸ばせる人だったのか、と感心する次第。
とはいえ、現状ミラについているティグルとしては、アスヴァールの地で故国と対立する陣営に立ってしまったわけで、これ困るよなあ。
幸い、魔物トルバランが暴れまわっていたお蔭で渋々共闘しなくてはならなくなったエリオット王子側とギネヴィア王女側。でも、トルバランが動き出してなかったらティグルとしては非常に苦しい立場に追い込まれてたんじゃないだろうか。とはいえ、ティグルの行動もブリューヌ王の指示でもありますし、王命に違反しているというわけでもないんですよね。その点を押し出してティグルってばミラの元から離れる気は一切なかったようですけれど。ミラの味方をし続ける、という点に関してはティグルはどう情勢が変わっても譲らない覚悟はあるようで。ある意味ブリューヌという国もアルザスという故郷も、今のティグルにとっては重くはあってもミラよりは軽い、という比較になってるっぽいなあ。親父殿が生きていて、弟が生まれているという前作からの変化が、ティグルの気持ちを想像以上に軽くしているように見える。
しかし、エリオットはあの退場の仕方はなかなかひどいと言うか可哀相というか。さらっと彼なりの王になりたい動機やギネヴィアにはちゃんと告げなかったけれど、王位を得たらどういう国を作るかというものに伝統を廃してやりたい指針を持っていたようなので、それを誰にも告げず知られず秘めたまま、結構雑に退場させられたのはなんとも無残な話であります。これ、何気にミラとソフィの失態として本国から怒られちゃうんじゃなかろうか。まー、ジスタート王がどれだけ本気だったかどうかだけど。
しかしトルバランはこっちでもやはり強大な敵でした。変な異能ではなく、純粋に化物としてのパワーで押してくる、ってレベルを上げて物理で殴るそのものなので、ちょっとどうしようもない所ありますもんね。しかも、トルバランの特性として竜具を眠らせてしまう、というのがあるのでこっちの特殊能力で押し切るという手段がとれないですし。
デュランダルを装備したロラン、という人類最強の近接戦闘型人間がいなかったらまともに太刀打ちすら出来なかったんじゃなかろうか、今回。前作ではついに実現しなかったロランとティグルの同じ戦場、同じ敵を前にしての共闘、という夢のタッグマッチが見られたのは感慨深いにも程があります。剣のロランと弓のティグルのタッグってそれもう無敵じゃないですか。
それですらもトルバラン相手だと負けそうになったわけですから、どれだけ強かったんだ、というところ。ロランが為すすべなく吹き飛ばされる場面とか想像だにしなかった。

前作ではアスヴァール王になったタラードだけれど、今回は今も第一王子の麾下にいるようで。おとなしくしているようなタマではないですけれど、ギネヴィアはカリバーンの力もあって自力で女王へと登極しそうな勢いですし、傍らにはすでにロランを配しているわけで、タラードはどうなるんだろうホント。
そして、竜を乗りこなせるようになりつつも、竜騎士ドラゴンライダーになったらなったで意外と実際に竜に乗って戦うって難しいというか戦いようがないことに気づいて愕然とするザイアンくんw
竜に乗っての偵察って何気に戦局に重要な価値をもたらしそうな兵科ではあるんですけれど、公爵の御曹司が担うのって確かに微妙ではあるんだよなあ。テナルディエ公爵が危惧しているように、かなり危険でもありますし。どうするんだ、ザイアンくん!

シリーズ感想

魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)2 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)2】  川口 士/美弥月いつか ダッシュエックス文庫

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ブリューヌ、ジスタート連合軍によるムオジネル侵攻は、失敗に終わった。アルサスに帰還したティグルだが、国王からの密命を受けてジスタートへ向かう。愛するミラとの再会を無事に果たし、オルミュッツを訪れたティグルを、新たな出会いが待ち受けていた。ミラと険悪な間柄で知られる戦姫“銀閃の風姫”エレオノーラが来ていたのだ。一方そのころ、北西の王国アスヴァールは、ジスタートに野心の牙を向けようとしていた。そこには、戦による混乱と流血を望むブリューヌのガヌロン公爵と、そして魔物の影があった。黒弓と竜具に導かれるティグルとミラの運命は。新たな魔物との戦いが幕を開ける!
前作のメインヒロインであるエレン、ミラがヒロインとなったこちらのストーリーでは領地同士の繋がりも乏しいし、今回はしばらくは疎遠という形で行くのかなー、と思ってたら第二巻で速攻ガッツリ絡んできた。
もともとミラとはライバル関係だし、アルサスとエレンのライトメリッツも隣国と行っていい距離だし関わり合いにならないほうがおかしいか。いやでもね、前回のメインヒロインだけあってエレンとティグルってやっぱりべらぼうに相性いいんですよ。初対面で意気投合してしまうくらいには。しかも、身持ちの固いミラと違ってエレンてばやたらと全裸登場する始末。いや、エレンさんてばティグルに裸見せすぎじゃないですかね!? もうこれエロス担当ヒロインじゃないですかー。
ミラが思わずやきもきしてしまうのも無理からぬところでしょう。ただでさえ、ティグルとは表立って付き合えない身分差の恋ですものねえ。ティグルが一途で居てくれているからいいものの。これに関してはミラからはどうしようもなくて、ティグルが身を立ててくれないとどうにもならないですからねえ。それに、ある意味一代の戦姫だったエレンと違って、ミラのところは代々が戦姫を継いでいる家柄というのが、ティグルとの婚姻を面倒なことにしているわけで。ティグルも軽々には婿入りとか出来ない立場だもんなあ。親父殿が健在で幼く腹違いとはいえ弟がいる、というのは前作と大きな違いではあるものの……。下手に出世してしまっても、そうなると所属している国が違うという壁が隔ててしまうわけで、いやこれ前作よりかなりヒロインと結ばれるハードル上がってるなあ。
おまけに、魔物との戦いが本格化しはじめたこともあって、ティグルには早々に後継者、子供を作ってくれないと困るという話が持ち上がってしまい、これはまた形は変わってもまたぞろ嫁さんたくさん出来てしまうパターンなのか。
国内情勢も、ティナルディエの嫡子であるザイアンが生きてて竜騎士になるべく頑張ってたり、黒騎士ロランがバリバリ現役でファーロン王もガヌロンから手出しされていないのか健在と大きく異なっていたけれど、ここで国際情勢の方も前作とは大きく様相を異にしてきてアスヴァール王国の内乱もギネヴィア姫の動きが大きく変わっていて、これ成り上がったタラードどうなるんだろう。

ムネジオル王国の方でも、ダーマードがなんか第二の主人公みたくアイシェ姫をヒロインにして独自のストーリーを展開していて、こっちも目が離せない状況になってるんだよなあ。
もう一人、戦姫ミリッツァも今回ミラにもティグルにも会わないまま、一人でアルザス訪問したりと動いている様子が描かれていて、ある意味ソフィよりも重要な役どころなのかもしれない。

あ、ルーリックもちゃんと登場してくれましたが髪があるルーリックって新鮮w

シリーズ感想



黒獅子城奇譚 ★★★☆   



【黒獅子城奇譚】 川口 士/八坂 ミナト  ダッシュエックス文庫

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放浪の騎士グレンと神官を装う魔術師リューは旅の途中、雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込んだ。そこで二人は、同じ雨宿りをしていた先客たちと出会う。視察を終えた若い二人の騎士とそのお目付役。義眼の老騎士。商魂たくましい商人一家。貧しいがどこか油断できない吟遊詩人、しっかり者の町娘。それぞれ癖のある旅人たちが一夜を明かす中、語られる黒獅子伯の伝説と、彼に倒された魔術師の噂。そして古城に潜んでいた魔物の襲撃。様々な事件が起こる中、老騎士タングレーが遺体となって発見される。陰謀と伝説の絡みあう廃城の片隅で、グレンとリューは事件の謎に挑む。
一迅社文庫から刊行されていた【折れた聖剣と帝冠の剣姫】と同じ世界観ということで大変期待していたのですが、作中でチラッと一度だけ作品の関係者に言及されただけで、登場人物も舞台となる地域も全然異なる作品でした。なんだろ、将来的にこのグレンたちが【折れた聖剣と帝冠の剣姫】と合流するような新シリーズでも企画されてるんだろうか。でないと、おなじ世界観にした意味合いもよくわからないのだけれど。
内容としてはファンタジー世界を舞台にしたクローズドサークルによるミステリー。激しく降り出した豪雨を避けて立ち寄った廃墟とかした砦には、同じく雨宿りする何人もの行きずりの身分も年齢も異なる男女が集まっていた。
という導入は、ふと京極夏彦さんの【巷説百物語】のはじまりの話なんぞを思い出してしまったのですが、あちらが江戸時代の風情をよく感じさせてくれたように本作も、西洋風の中世時代という背景を色濃く感じさせてくれる雰囲気をよく醸し出していました。遊歴の騎士という存在や騎士たちの在り方、魔術師に対する強い偏見や民草の立場など。それに、廃墟の城がまた古い罠が残っていたり、地下に迷い込んだ魔物たちが潜んでいたり、と舞台としては現代の館モノとはまた違うファンタジー世界を強く意識させるものになってるんですよね。
その上で、外は激しい雨で廃墟である砦はかろうじて雨風を避けられるものの、窓は破れ隙間からは容赦なく雨風が吹き込んでくる。壊れた家具を薪にして、ようやく居間の暖炉に火を灯して暖を取る、という状況がじっとりと湿った重苦しい雰囲気を醸し出してるのですね。ここに、半ばダンジョンのようになってる廃墟の不気味さや、中世時代特有の仄暗いイメージが相まって、トドメにタイトルの黒獅子城であります。ひたすら、現代モノのミステリーとはまた少し趣を異にする重たい空気感を作り出すことに成功してるんですなあ。
一方で、肝心のミステリーの部分に関しては極めてオーソドックスであった、というところであります。先にあげた巷説百物語のような「アッ!?」と驚くような展開が待っているのではなく、ドロドロに絡み合った人間関係を徐々に詳らかにしていくことによって、死者からのメッセージを解き明かし、犯人を浮き彫りにしていく、という展開にしても謎にしても変に奇を衒わずに順当に徹した、というところなんでしょうか。
色っぽい関係だった主人公とヒロインの二人ですけれど、もうちょいお互いの関係に対する考え方とか踏み込んでもよかったかな、と思うところですね。まあグレンはリューとの関係に関してちゃんと思うところを語ってはいましたけれど、いまいちリューは何考えてるかわかりませんでしたし。もっとイチャイチャしてもいいんじゃよ?
リューとか、あれ謎解きとか結構好きなんじゃないのかしら。本編始まる前も別の殺人事件解決していましたし。
まあ続き出るにしても、次はミステリーでなくてもいいかなー、と。彼らが出る物語はぜひみたいところですけれど。【折れた聖剣と帝冠の剣姫】の続編という可能性込みで。

川口士作品感想

魔弾の王と凍漣の雪姫 ★★★★   



【魔弾の王と凍漣の雪姫】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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弓は臆病者の武器。祖国でそういわれ続けてきた少年は、少女の言葉によって己の進むべき道を見いだし、守るべきものを得た。二年後、ブリューヌ王国はジスタートと同盟を組み、大国ムオジネルと開戦する。ティグルは病に伏せた父ウルスに代わり、初めての戦場へと向かった。戦争は順調に進んでいるかのように見えたが、奇襲を受けブリューヌ軍は戦線崩壊する。敗足するティグルの部隊。その窮地を救ったのはオルミッツ公国の戦姫、リュドミラだった。二年ぶりの再会を喜ぶ二人。しかし、その行く手には新たなる戦いが待ち受けていた。戦乱の世を舞台に、伝説の時代より続く闇の勢力との戦いが、今はじまる!!
MF文庫で展開された【魔弾の王と戦姫】シリーズの完全IFシトーリーとなる本作。リュドミラをメインヒロインに完全新作として展開されることになったのですが……ティグルがエロ小僧になってるー!
いや、見境なく女好きというわけではなく、幼い頃に交流のあったミラ一筋なんだけど、若さ故の欲望に対してかなり素直になっているというか、このエロ小僧め! 一方のミラの方もそんなティグルにだだ甘なんですよね。
前シリーズでのティグルがエレンと結ばれるまでかなりストイックで恋愛ごとからは本人的には後回しにしていたことから考えると、身分差のあるリュドミラと結ばれるために功績をあげようと意欲を燃やしているティグルは、何とも新鮮というかミラに一途な恋に燃える情熱的な男になってて、かなりキャラ違うんですよね。
最初は戸惑っていたのですけれど、考えてみると前作のティグルが早くに父ウルクを亡くしてアルザスの領主として責任ある立場となり、常にアルザスの事を最終盤に至るまで自分の中の最重要に位置させて動いていたのを考えると、本作ではウルクが生きていることで領主という責任や立場から自由になり、一人の青年として生きていることがこの違いになっているのか、と思い至ることでストンと腑に落ちたわけです。何気に、ティグルに年が離れているとはいえ弟が出来ているというのもポイントかと。いざとなっても、ちゃんとアルザスの後継者が他にいるという安心感は大いに軛を断つものですし。
これはヒロイン側のリュドミラの方にも該当していて、前作では早世していた母で戦姫だったスヴェトラーナが戦姫は引退したとは言え、元気に健在しているというのも大きいんですよね。ティグルと同じく彼女も若くして後ろ盾となる母を亡くし、公国を引き継いで背負って戦っていたわけですから、色々と自由にならない部分もあったし精神的にも決して余裕があるわけではありませんでしたからね。それでも立派に戦姫であり公王をやってのけていたのですが、この立派という部分に縛られたところも大きかったかと。その意味では、戦姫を継いでいるとはいえこっちのミラは自由度がマシていますし、幼い頃にティグルと過ごしたことでミラに本来あった冷厳さが削がれて人格的にもすごく柔らかくなった、というのは周りの人からの評価でもあるようですし。
まあ、あのミラとはまたぜんぜん違う姉御肌のラーナ母さまが後ろでドーンと控えていてくれたら、ミラもやりやすいですわ。そのやりやすい分をティグルへのだだ甘っぷりに随分とつぎ込んでいるようですけれど。
ビジュアル的にも髪伸ばしているせいか、随分印象は異なってしまいましたが、甘やかしつつもきちんと厳しくするところは厳しくするあたりは、ミラらしくてそこらへんは変わってないんですよねえ。川口作品とは長いお付き合いとなる絵師の美弥月 いつかさんですが、やっぱりこの人と八坂ミナトさんは、川口士作品にはなくてはならないパートナーだなあ、と実感しております。

他にも色々と歴史が変わっている世界観ですけれど、一番の仰天部分はやはりヴァレンティナ様でしょうこれ。大鎌の竜具・虚影エザンディスは、前作でも最後に出てきたミリッツァに既に引き継がれてて、本作でもミラ以外に登場する戦姫としてミリッツァ大活躍だったのですが、その前の持ち主であるところの、そして前作ではラスボス級の黒幕として暗躍していたヴァレンティナが……なんか本作では既にえらいことになってしまってるんですがーーー!!
爆笑してしまいましたがな。
もしかして、前作で彼女を駆り立てていた野心も、一つ間違えればこれしきのことで満たされて幸せになっちゃってたのかもしれないのか、と思うとなんとも擽ったいようなおもはゆいような。
いやもういいんですけどね。これはこれで、もうティナ様ご満悦のようですし全然いいんですけどね! にしても、相手って誰なんだろう。

黒騎士ロランが早くも登場しティグルと交流を持ったり、魔物が早速現れて交戦することになったり、ティナルディエ公の方も相変わらず真っ黒だけど以前とはまた違う歴史を辿りそうだったり、ブリューヌ国王ファーロンが精力的に動き回ってて実に名君っぽかったり。
前作はあれでかなり完成された物語で、これをどうイジって新しいストーリーを構築するんだろうと疑問に思っていたんだけれど、これはちょっと期待以上に別物の面白い英雄譚、戦記物になりそうで読む前より読んだあとの方がワクワクしています。
ダーマードが相変わらずいいキャラしていて、またぞろ彼がティグルの相棒になりそうなのが嬉しかったり。前作から好きだったもんなあ。何気にダーマードのヒロインっぽいお姫様も出てきていて、ニヤニヤしてしまった。あと、相変わらずムネジオル王国の王弟クレイシュが強キャラ過ぎてドキドキしますわ。こと軍の指揮官としてはこの髭親父がやっぱり最強なんじゃなかろうか。何度繰り返しても、軍勢を押し返したり判定勝利は得られてもこの人を討ち取るとか軍勢を撃滅するとかのイメージが湧かないんですよねえ。
前作のメインヒロインであるエレンもちゃんと登場。良かった、違う戦姫にはなっていなかった。そしてやっぱりミラと仲悪い! 今回はティグル、ミラに一途っぽいので前作のようにハーレムとはいかなさそうなんだけど、果たして他の戦姫たちとはどんな関係になるんでしょうねえ。そこはちと気になるところであります。特にエレンに対しては。
ともあれ、新シリーズ期待以上で実に先が楽しみです。

川口士作品感想

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>18 ★★★★   

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>18 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>18】 川口士/片桐 雛太 MF文庫J

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ティル=ナ=ファを喰らったガヌロンを、ティグルたちは死闘の末に討ち果たした。だが、その代償としてエレンたちの竜具は力を失った。その場にいなかったヴァレンティナのみが竜具を保持し、ソフィーは彼女の凶刃の餌食となる。玉座まであと一歩というところに迫ったヴァレンティナと戦うべく、ティグルは残された戦姫たちと連合軍を結成。ジスタート史上最悪の混乱を鎮めるべく、周囲の後押しも受けて、ついに王となることを決意する。国の枠を超えて、仲間たちの想いを背負って挑む決戦。辺境の小貴族からはじまった弓使いの若者は「魔弾の王」の新たなる伝説を打ち立てることができるのか―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記、堂々完結の第18弾!
タヌキー!!
いやもううん、信じた。信じちゃったよ。狐というイメージはさらさらないので、この場合はタヌキだよなあ。タヌキ。
最終巻はある意味、ヴァレンティナの物語でした。最後の敵役であった彼女。面白いことに、というとアレなんだけれど、彼女ってこのシリーズの幕引きを担う相手ではあったんですけれど、黒幕とは足り得なかったんですよね。あれこれと陰謀・謀略・暗謀を張り巡らせてたんですけれど、実際の所彼女の画策したことって何かと上手くいかなかったり、思惑通りにことが運ばなかったり、思ってたのと違う結果が伴ってきたり、と想定外が重なってしまっていて、黒幕というには状況・情勢をコントロール出来ていたかというとかなり怪しいのである。
というか、ダイス目でいうとファンブルばっかりだったんじゃないだろうか、これ。もちろん、彼女自身の判断ミスというケースも多かったのだけれど、運がなかった場面も決して少なくなかったのである。
これをして、ヴァレンティナをすべての展開の黒幕、物語のラスボスと呼ぶのは少々難があると思える。

でもね。
逆に言うと、彼女は黒幕やラスボスなんていう舞台装置にはならなかったとも言えるんじゃないだろうか。

これだけ、想定通りに事が運ばない展開を経ながらも、彼女はそこで立ち止まることも臆することも俯くこともせず、ひたすら楽しげに彼女に降りかかる難局を臨機応変に乗り越えながら、なんだかんだと夢であり野心の賜であった自身の王への登極へのルートをこじ開け、その路線に情勢の軌道を乗せていくのである。
魔弾の王の歩む王道とはまた違う、彼女自身の目指す王への道を、着々と登っていく。
そこに居たのは敵である。
ラスボスでも黒幕でもない、言わば競争相手とも言えるもう一人の主人公であったのだ。
走り始めたその時から、最後の瞬間まで彼女ヴァレンティナは、大仰な黒幕にもならず、さりとて卑小な小物や小悪党にも堕さず、歪まずブレず、最初から最後までその在り方は善でも悪でもないただのヴァレンティナ=グリンカ=エステスで在り通した。
最初から最後まで、彼女はただただヴァレンティナ以上の何者でもなく、以下の何者でもないままに走り抜けたのだ。
その意味においては、実に見事な生き様であったのではないだろうか。
野望潰えながらも、その終端をまんざらでもない様子で迎えられた彼女は、この最終巻においてその魅力を増しましていたように思う。なぜ彼女の竜具「エザンディス」が最期まで彼女を見捨てなかったのか。むしろ名残惜しむかのように寄り添い続けたのか。その理由がわかったような気がする。異端ではあっても、彼女もまた戦姫であったのだ。

さて、エレンを含む戦姫たちとの恋模様や、ジスタート王国の内紛を他国人であるティグルがどう収めることになるのか。どういう形で決着をつけることになるのかとやきもきしていたのだけれど、そうかー、そういう形で来たか。
王家の血筋を持たないどころか、自国の人間ですら無い者が王になる、というのは日本の超血統主義や絶対王政以降の欧州の王政を見てると違和感を感じるのですけれど、もっと古い時代となると決して不思議でも珍しいものでもないんですよね。王権というものがもっと緩いというか、ファジーな時代というものが確かにあり、この世界の時代はまだそのあたりだったのでしょう。
実際、ヨーロッパなんかでも二カ国の王を両者統合させないまま並列で統治する形で就任した例はけっこうあったと思うし、そもそもこのジスタート王国自体、内部に戦姫という血筋による継承ではない形で続く公国が7つも存在する国家だけに、不安定であると同時にそれだけ他国の人間が王位についても許されるような揺らぎを許容できる下地というか土台のある国であったんだなあ、と。
まあどう考えてもティグル、過労死レベルで働かないといけないわけですけれど。実際、エピローグでの超働きっぷりを見ると、大変だなあ、ですまないレベルで働きまくってますし。
とても、ハーレム楽しんでる余裕ないよなあ。嫁さんとなる人たちの殆どが、自分の領地やブリューヌ王国での実務でお忙しい、というのはティグルの体力的にもだいぶ助かる話なんじゃないだろうか。
その分、明らかに側仕えのリムが一番大勝利なんですけれど。まさか、ティッタも傍に侍れずブリューヌ詰めになるとは思ってなかったので、ほとんどリムが公私のパートナーみたいな形になってるし。まさか、正式に戦姫になってよ、と現れたバルグレンに、今忙しいので改めて、と振っちゃうとまでは思わなかったけれど。そりゃ、バルグレン正式に継承したら戦姫として領地も引き受けなきゃいけなくなって、ティグルの側近を辞さなきゃならなくなるだろうし、今宮廷内に味方の少ないティグルの傍をリムがハズレるの相当厳しいという理屈はわかるけれど、あそこまで見事に蹴っ飛ばすとは。実務面だけじゃなくて、嫁としても離れん!というその気概が素晴らしいというか、さすがリム先生である。
前にあった時よりもちょっと沢山話せましたー、とその程度のことでメッチャテンションあがりながら傍役の人に報告して満足してたエリザヴェータさまは、ちゃんとこのリム先生の姿勢とか見習えてるんだろうかw
他の戦姫がなんだかんだとみんな積極的に告白してきたなかで、もっぱらこの調子だったリーザさん。リーザさんところの筆頭家老であるナウムさんが、こっそりティグルにウチの姫さんなんとか貰ってやってくれよ、とお父さん役の人にここまで言わせてしまうアレっぷりが、なんかもう可愛いなあww
そう言えばティグル、女性陣に対してはみんなにちゃんと愛情を持って接してたのは間違いないことなのですけれど、こう「好き好きオーラ」っていうの? もう君たち大好きだなあ、的な気持ち全面に出してたのって……わりと男キャラ相手ばっかりだったような。
いやもちろん友情的な意味で、ではあるんですけれど。このナウムさん相手にしてもそうでしたし、男相手にしている時の方がわりと無邪気に楽しそうだったんですよねえ。ユージェン卿救出作戦の時の男所帯の旅のときとかえらいはしゃいでましたし、何気にルスラン王子との交流やアスヴァール王国のタラードとも、いつ背中を刺されるかわからない関係でありながら、そういう立場とか野心とか抜きにした個人個人の関係だとほんと仲いいですし。
もともと女っ気のない朴訥な性格なので、気遣いしなくていい男との付き合いは気の置けないものなんだろうかねえ、ティグルの場合。その御蔭か、これだけハーレム展開にも関わらず、立場抜きにした男友達が国関係無く広く沢山いる珍しい主人公になってましたねえ。
まあそんな朴訥な男が、これだけ嫁抱えることになるんだから、面白いものである。新しい「エザンディス」の継承者である新戦姫が、初お目見得の際に自分も戦姫になったからには王に抱かれないといけないのでしょうか、と真面目に訪ねてきたシーンは笑ってしまいましたが。そりゃ、現状の戦姫が全員王様の恋人だったら、戦姫になったら王と関係持たないといけないのか、と思っても仕方ないわなねえ。この娘は変に生真面目そうで、面白そうなキャラクターだけに短編なんかあったらみたいものですけれど。イラストの人が出した画集に、ちょっと短編ついているのかしら。そっちも読みたいなあ。

なかなか長期シリーズが出てこない中で、戦記物として18巻を数えた本作。弓を得物とする主人公、というのもまた珍しかったのですけれど、この弓の使い方の描写がまた図抜けて格好良くてねえ。弓矢という武具も、見せ方によってこれほど迫力と見栄えが出るものなのか、と興奮したものです。面白かった。そして、見事な完結でありました。ほんと、お疲れ様ですよ。
また、作者の新しいシリーズ、楽しみに待ちたいと思います。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 ★★★★   

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17】 川口士/片桐 雛太 MF文庫J

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エレンとフィグネリアはそれぞれ軍を率いて相対した。雪の降る戦場で、傭兵時代の因縁を終わらせるために、また戦姫としての誇りを賭けて、二人は戦うが、エレンを助けようと、リムは思いがけない行動をとる。一方、ティグルはガヌロンと決着をつけるべく、単身で王都を抜け出して荒野を行く。魔物たちによって恐ろしい変貌を遂げつつある世界で、ティグルは勝利をつかむことができるのか。それともティル=ナ=ファが地上に降臨してしまうのか。そして、ジスタート王宮の完全掌握にあと一歩というところまで迫ったヴァレンティナに対抗するために、ソフィーを始めとする戦姫たちがとる行動とは?大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第17弾!

そうかー、以前のリムが16巻の表紙だった時のアレはここに繋がってくるのか。あれ、上手いこと両手は枠から外れていて得物は見えないようになっていましたけれど、ちゃんと得物を握っている絵もあるんだろうか。
いずれにしても、今回クライマックスではありましたけれど、ひたすらリム激闘編、みたいな感じすらありましたね。フィグネリア戦も、もちろん戦姫同士直接刃を交えるのはエレンとフィグネリアでしたけれど、リムもオマケ扱いではなく、二人で一緒に戦っていた感はしっかりありましたし、リムが身を呈さなければ絶対に勝てない展開でしたからね。それに、ここでの決死の行動がある意味、かの竜具に「こいつなかなか見所あるじゃねえか」と認めてもらえるきっかけになってたんだろうし。
てか、普通ならここでリム死んでてもおかしくなかったんだよなあ。あれ、普通死ぬよね。フィグネリアと双剣両方が意図して手加減してなかったら。
振り返ってみると、見据えるべき未来をもう見定めている戦姫たちに対して、今回は敵陣営の三人、フィグネリア、ガヌロン、そしてヴァレンティナの、現在に至る過去のきっかけとなるエピソードが印象的でありました。
フィグネリアは、最初登場した時は味方になるものかと思ったんですけどねえ。エレンが揉めてる相手ってわりと感情的な側面が強かったので、和解する余地は十分ありそうでしたし。ってか、リーザなんか今デレデレじゃないですか。まあ、あれはエレンが一方的に敵視しまくっていたところがあるんですけれど、和解したあとのリーザのあの照れながらの「ともだち」宣言にはこっちがこっ恥ずかしくなってしまいましたよっ。
でも、フィグネリアは彼女の抱えていたエレンたちの育ての親との因縁を思うと、自分の野望を捨てることが出来ない状態にすでに定まってたんですよね。彼を看取った時点で、彼の夢を自分の夢で終わらせた時点で、彼の夢を引き継いだエレンとの和解はなかった。新しい自分の夢を得たエレンとリムと、何らかの決着をつけなければならなかった。そして、止まることをもう自分に許さないフィグネリアには、その決着の付け方は一つしかなかったわけだ。それは、追い続けた夢だけれどヴァッサリオンと分たれてしまった時点で、どこか寂しい孤独な夢だったんだなあ。
孤独と言えば、ガヌロンもそんな感じで。彼の、他の魔物と全く異なる行動原理がずっと不明のままだったんだけれど、今回彼の素性が明らかになりその真の目的も明かされたことで、この男も妄執というにはあまりに寂しい、孤独を抱え続けてしまった結果だったんだろうなあ、と胸に沁みるものを感じてしまったのでした。
もしかしたら、一番欲望とは程遠いところに居た男だったのかもしれない。いや、欲と言うなら欲か。結局、悠久の果てに最も会いたい人にもう一度会おうという願いにしがみついていた、とも言えるわけだし。その結果として、幾つもの謀略で都市を焼き、戦火を振りまき、最終的には女神すら喰らおうとしたわけだからとんでもないっちゃとんでもなかったのですが。
そしてラストにヴァレンティナ。ってか、ヴァレンティナ。ルスランの不予には本当に何にも関わってなかったのか。あまりにもタイミング良くルスランが復活したので、彼の病もヴァレンティナの仕込みで復活から時間を置いての病の再発まで全部図られていたのか、と一時は考えていたものでしたが、まさか全部特に仕込んでいなかったとは……。いや、効果のある薬の調達は行ってたみたいだけれど、決してその効果に確信があったわけではないようだし、綿密なタイムスケジュールが組まれていた節はまったくないようなので、ヴァレンティナって謀略家というにはやっぱり行き当たりばったりすぎるぞ。事を仕掛けて起こして全体の流れを常に掌握し続けるという主導権を握り続けるタイプの戦略家ではなく、起こった出来事を利用して自分の都合の良い流れに持っていく、というタイプなんですよねえ。もちろん、自分で色々と仕掛けたり動いたりもしているのですけれど、意図した効果を得られなかったりとか、わりと至近の効果しか狙ってなくて別に何十手先まで相手がどう動こうと関係ないように持っていく、という風ではありませんし。
いやあ、本来ならこれヴァレンティナに勝ち目ない手筋だったんだけれどなあ。唯一の味方であったフィルネリアもあっさり脱落してしまったわけですし、彼女と組んで企図していた幾人かの戦姫の脱落はまったく果たせないままでしたし、それが結果としてあんな形になってしまったわけですから、この娘何気にすげえ運が良い。
正直、ここからどう転がるのかが想像し難いんですよね。ヴァレンティナとの決着の付け方もどうなっていくのか予想付かないし、それ以上にエレン以外の戦姫をティグルはいったいどうするのか。エレン一人だけなら、難しくも無理筋を通す手段は無きにしもあらずなんだろうけれど、それ以外の戦姫たちも抱え込むとなるとジスタートが許すはずもありませんし。
そりゃあ、この一巻では終わらんかったよなあ。最終巻を延長したのは正解だったんじゃないでしょうか。
でも、このラストは引っ張り方としては凶悪極まる……。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 16 ★★★★   

魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>16 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 16】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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ルスラン王子の復活と、国王ヴィクトールの死によって不穏な空気に覆われているジスタート。王子の側近として隠然たる権力を持ち始めたヴァレンティナは自らの野望を果たすため、ついに動きだし、その大鎌をソフィーへと向けた。他方でフィグネリアの双刃がリーザを追い詰めるなど、戦姫同士の対立は決定的なものになる。混沌たる情勢の中で、ティグルは自らの立場を鮮明にし、大切なものたちを守るべく、激しい争いの渦中に身を投じる。争乱の陰では、魔物たちに代わって地上にあの女神を降臨させようとするガヌロンの姿があった…。未曾有の危機のなか、英雄となった若者を待ち受ける運命とは。大ヒットの最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第16弾!
ヴァレンティナさんが行き当たりばったりすぎてたまんねー! しかし、本人それで楽しそうなんですよねえ。あれこれと張り巡らせた策や奸計が上手く行かなくてポシャっても、あんまり気にしてなくてむしろ臨機応変な対応を楽しんでるっぽいのが謀略家として質が悪いんでしょうなあ。いや、深慮遠謀に欠けるっちゃ欠けるんだけれど、精神的に停滞しないしあの拙速さは自身の失敗に限らず状況の変化への対応速度としては大したもんなんですよねえ。何気にこういうタイプの謀士はあんまり見たこと無いなあ。
でも、ヴァレンティナさんのこの性格からして大昔から長期的なスパンで謀略の網を仕掛けていた、とは思えないのでルスラン王子のかつての人事不省が彼女の手によるもの、ということはやっぱりなさそうなんですよねえ。まあ、年齢的にもあり得ないのだけれど。あのタイミングでのルスラン王子の復帰はマッチポンプじゃないか、と疑いたくなるところだったんだけれど。少なくとも、ルスラン王子には傀儡の糸をつけてるのかとおもってたんだけれど……ルスラン王子、普通に優秀で真っ当で結構気持ちのよい人だー!! あかん、この人かなりの逸材だ! ヴァレンティナの紐付きかと思ったら、精神支配とかその手のものも受けてないようだし、亡きイルダー公といい、ユージェン伯といい、ルスラン王子といい、もしかしてジスタートって何事もなく世代交代していたら、ルスラン王の時代は黄金期突入してただろうこれ、と確信できるくらいには逸材揃いだったんだなあ。しかも、ルスラン王子、良い人なんだよー。むしろ、その良い人なところがヴァレンティナに付け込まれているとも言えるのだけれど。でも、ヴァレンティナを重用しすぎず、かなり公正に扱っているのを見ると、普通にやってたらとてもじゃないけれど、ヴァレンティナが権力握れるとは思えないんですよねえ。
ということは、最初からあの地雷を仕込んでいた、というよりも復活自体が時限式にならざるをえないような手段を用いていたわけか。
やっぱりやり口が陰険で好かないなあ、ヴァレンティナのそれは。
それでも、誰が影で暗躍しているかわかっていても、このあとに何が起こるかわかっていてもヴァレンティナの意図したとおりに動くしか無い、という謀略の張り巡らせ方は突貫で仕上げたわりには本当に凄まじいの一言。謀略の粋というのは、何が起こっているのか最初から最後までわからないような代物か、何が起こっているのかこれから何が起こるのか全部わかっていたとしても、どうすることも出来ない状況を仕立てるか、の二極なんですよねえ。ヴァレンティナはそれに近しい辣腕を奮っているわけで、いやもう行き当たりばったりなのに凄いなあ、と。とにかく手が早く、手が多くて、それが見えないし、見えた段階では終わってる。恐らく不発に終わってるものも多々あるんだろうけれど、早さと多さがぜんぶ補ってるんでしょうねえ。一つの案件に複数の意味付けも与えているようですし、ある側面から見ると失敗してても、別の側面から見るとそれでOKみたいな多重構造になってるから、意図を挫くのが非常に難しい。これはどうやったって先手が取れないから後手に回らざるをえない。これを防げば全部の陰謀が瓦解する、というような芯も見当たらないのが本当に質が悪い。
ソフィは情報戦優秀なんだろうけれど、これはイニシアティブ取りようがないよなあ。
むしろ、フラフラと歩き回って要所要所で大事な場面に遭遇して、色々とヴァレンティナの策を潰してまわってるティグルさんが反則だわなあ、あれ。
ヒロインの絶体絶命のピンチに絶対に助けに現れるマンである、この主人公。とはいえ、戦姫の方々はガチで強い人たちなので、どれだけ絶体絶命になってもまず自力で突破してしまえるので、ティグルも軽々には助けに現れないのだけれど、だからこそ本気でマジヤバな時を絶対に見逃さないんですよねえ。エレンが捕まったとき然り、今回のリーザのとき然り。そりゃもう陥落するわさー。とっくに陥落しているとは言え。
しかし、ティグルさん、どんどんアーチャーとして化物になってくなあ。フィグネリアさん、がちで魂消てたじゃないですか。まああれ、人間業じゃねえし。ってか、弓矢でやれる技じゃねえ。あんなんやられたら普通死ぬw
ってか、四百メートルまで当てられるようになってたのかー。四百ってパねえっすよ。実際遮蔽物ない広い場所で四百メートルという距離を見てみなさいな。ちょっと笑っちゃうほど遠いよ!?

戦姫たちとのロマンスの方は、ミラがついに勇気を振り絞って告白したことで、ソフィが有頂天にw
このお姉さん、マジでティグルを正々堂々と戦姫たちの旦那にするつもりだ。ってか、政治的に誰にも文句言わせねえ形を整えようとしている。怖い。
でも、政略として言い訳させず、ミラにちゃんと女の子としてティグルと気持ちを通じ合わせるのをずっと待っててくれたとか、配慮が行き届いてるんですよねえ。逆に言うと、女性陣にもティグルにも建前とか政治的に仕方ない、とか言い訳絶対許さん、という恐ろしい配慮なのですけれどw
やっとこ、エレンとリーザが本当に和解……、というかついにリーザが過去にエレンに出会っていたことを告白して、リーザがエレンに憧れ焦がれていたことも伝わって、わだかまりも解けて良い仲なったし、五人の戦姫の間にはもう問題なくなったんですよねえ。ティッタとオルガがなんかちびっ子コンビで仲良くなってるし。
あとはリムですなあ。はじめて戦姫以外で、しかもこのクライマックスで表紙絵を飾るという抜擢となりましたし、エレンはもうリムも嫁にする気満々だし、本人すげえまんざらじゃなさそうだし、まあどこにも問題ありませんな。
問題は、あとシリーズ一冊で完結するのか、というところくらいか。いやね、あと三冊くらい使ってもいいんですよ?

シリーズ感想






折れた聖剣と帝冠の剣姫 4 ★★★☆  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(4) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 4】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

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パルミアの第一王女アルトとの同盟は決裂し、再び独力で国作りを進めることになったルシードとファル。近隣諸国からの移民受け入れを増やし、徐々に勢力を増しつつあるアスティリアに懸念をいだいたルシードの祖国カーヴェルは、いまならば一戦交えればルシードらを滅ぼすことができると判断し、急な派兵を決定した。アスティリアに迫るカーヴェル王国の軍勢。その先頭にはルシードのかつての忠臣ライサンダー将軍の姿が。ルシードたちは経験豊富なライサンダー率いる軍勢を相手に己の国を守り抜けるのか!?
ほとんど一瞬しか登場しなかったライサンダー将軍の奥さんだけれど、その一瞬で全部持ってっちゃったんですけど! インパクトが強烈すぎる!!
元々貴族のお嬢様だったのだけれど、身分の割に行動力が凄い。と度々語られていて、人質にとられたあとも宰相の脅しにも屈しない毅然とした様子を見せていたので、若干アグレッシブなところのある活発な人なんだろうなあ、と特に意識もせずに思ってたんだけれど……ライサンダー将軍、行動力の言葉の意味間違ってませんか!? 完全にアレな人じゃないかっ。あのコンスタンスをあんなにビビらせた人初めてみたぞ。
でも、ライサンダー将軍のあの生真面目すぎて男女の機微に関しては疎そうな性格と奥さんのあの性格はマッチングしやすかったのかもしれない。ライサンダー将軍、奥さんの特異性を目の当たりにしていてもそれが異常なの全然気付いてない感じがするし。この調子だと、家でもメイドさんの類い居なかったんじゃなかろうか。
さて、今までで一番の危機を迎えることに成ったアスティリアだけれど、今まではパルミアとカーヴェルがルシードたちの行方を把握しておらず、国際情勢的にも軍を派遣できない状況だったからこそ悠長にやってこれたわけで、領土が二百人規模の村一つだけという状態で軍備どころか国らしい実態もない状態でまともな軍勢に攻め込まれてきたら、そりゃあどうしようもないわけでけっこう綱渡りではあったんですよね。
それでも、今までなんとか上手いこと立ち回ってきたわけだけれど、故国の簒奪者たちも早々見逃してくれているほどの無能者ではないわけで、この苦境はいずれは覚悟しないといけないところだったわけだ。
ヤバさで言えばパルミラのクログスター卿の方が人間ではないという怪しさも相まって黒幕感たっぷりなんだけれど、ルシードの故国のカーヴェルの方だって国を乗っ取った宰相も、王族を監禁してなお国を平穏に保って実権を得ているほどの人物なんだから、油断ならない相手だったんだわなあ。
でも、小物とまでは言わないまでも、あの妹姫コンスタンスに手綱をつけれるほどではないよなあ、これ。ライサンダー将軍を人質なんて使って言うこと聞かせようとしたり、とわりとせこせこしいてるところも見受けられるし。油断はならなくても、そこまで脅威ではないか。むしろ、ロンガヴェル将軍の方が一癖も二癖もあって怖い感じがある。軍略家としても将軍としてもルシードやファルと同レベル以上っぽいし。今回はなんとか打ち払えたけれど、あれはロンガヴェル将軍が竜という存在に対して殆ど知らなかったがゆえで奇策もいいところ。二度は通じなさそうだし、戦略的にはほぼ完敗でしたからねえ。ルシードの作戦も、戦う前から既に対応策の範囲内で収まってしまっていましたし。これは手強い。
アスティリア国、士官クラス以上は凄まじく充実しているのだけれど、とにかく兵数が全然いないのがネックなので、さてこれからどう人数増やしていくのか。今回の移民受け入れ計画が端となるんだろうけれど。
ルシードとファルの仲は、前回思いが通じ合ったのを気に、もうファルの方がデレッデレになってて以前からルシードには甘い所あったけれど、完全に浮かれてますねえ姫様。ルシードが相変わらず性欲にあっさり屈するあたりは笑ってしまいましたが。

瀬尾つかささんのシリーズも一迅社文庫では一端区切りとなってまた違うところで再スタートするのと同じく、本作もどうやらここで一端区切りとしつつ終わりじゃなくて、違うレーベルで出るようなことがあとがきに記されていたので、取り敢えず打ち切りじゃないみたいで一安心。
どんどん戦乱の気配が広がってきていて、面白くなってきたところですからねえ。


シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 15 ★★★★   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉15 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 15】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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空前絶後の大軍で侵攻してきたムオジネル軍は、総力を結集したブリューヌと戦姫たちの助力、そしてティグルの乾坤一擲の活躍でついに退けられた。人々が祝杯を挙げ、王都の復興が進む中、これまで以上に声望を高めたティグルは思いがけぬ人物からの告白を受ける。今後やらなければならないことと、ブリューヌの人々が望む英雄としての未来との間で思い悩むティグル。時同じころ、風雲急を告げるジスタートでは、ヴァレンティナの野望がついに形となって動き出す。ティグルたちの動向を伺う魔物たちも、悲願達成のために牙を剥く。息つく暇もなく、さらなる大きな時のうねりの中で英雄の戦いは続く―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第15弾!
……やっぱりヴァレンティナってけっこうポンコツじゃね? 彼女の仕掛けてる謀略って、いつも上手くいった試しがないような。いや一応目論見は達しているのかもしれないけれど、仕掛けたあとに起こる想定外が多すぎる上に大きすぎるんですよね。全然思った通りに行ってない。その後のリカバリーをなんとか繕えているのだから、あかんわけではないのですけれど。でも、今回の一連の謀略は彼女にとってもルビコン川を渡ったようなもので、もうあとには引けない分水嶺となるものだったはずなのに、ものの見事にやらかしてますしねえ。お陰で、ジスタートは大混乱。後々の事を考えると、この混乱こそがティグルたちの付け入る隙、となってしまうだろうことは容易に想像できますし。
大体さ、王の後継者と任命されたユージェン伯にイルダー公が隔意を持つように毒殺未遂事件を起こしたのは、ヴァレンティナが操るルスラン王子がユージェンから次期王の地位を奪うのに利用するためだったんだろう、と今になっては想像できるんだけれど……、いきなりヴィクトール王が精神疾患から復活したルスラン王子を即座に後継者に復帰させちゃったもんだから、ユージェンよりもイルダーの方が怒っちゃってユージェンと元サヤに戻って仲良くなっちゃうわ、ルスランに対して隔意を抱くわで逆に政敵に追いやってしまい、挙句安易に謀殺してしまったことで、イルダー公の関係者が軒並み敵対陣営に回っちゃうわ、とえらいことになっちゃってるんですよね。ぶっちゃけ、この段階で早々に他の戦姫と刃を交える、危険分子となりそうなソフィーとリーザを始末に掛かる予定なんかこれっぽっちもなかったでしょうし。
ヴァレンティナさん、屋根に登ったはいいけれど即座にはしご外されちゃってないですか、これ? しかも、他人の思惑関係なしに、ほぼ自爆的な展開で。大丈夫か、黒幕さん。
踊らされているというと、ガヌロンもまた怪しいんですよね。一応、彼は思惑通りに自分では動いているつもりみたいですけれど、彼と敵対することになった魔物たちの意図が全然わからない。ティグルが女神から教えてもらった断片的な情報と照らし合わせても、彼らの目論見というのはどうも単純なものではないようなんですよね。大体、滅ぼされてしまったら普通はそこで終わりだろうに。

思惑が不明、という点で最も何を考えているのかわからなかった、作品中最大のプレイヤーではないかと目していたジスタート王ヴィクトール。この人こそ裏ですべての事象の糸を引いているんじゃないか、と思ってしまうくらいに言動の意図が見通せなかった人なんだけれど……あれ? あれあれ? これってつまり、彼の言動に裏なんてなく、普通に全部表だったの?
極々最初のエレンによる凡庸な王、という評価に対してヴィクトール王の判断や行動は王としての貫禄と重厚さがあり、だからこそエレンが凡庸に見てしまうような在り方のさらにその奥があるんじゃないか、裏で何か企んでるんじゃないか、と思ってたんですけれど……。ユージェン伯を次期王に任命したのも、イルダー公をわざと後継者から外したのも、大きな世界規模の陰謀が裏にあるんじゃないかと、怪しんでいたんですけれど。
あれ? 本当に普通に王様してただけじゃね? しかも、見聞きしてきた通りの国王として欲目をかかず、国の発展のために尽くすのに十分以上な働きをしている名君以外のなにものでもなく……。ユージェンとイルダーの扱いについても、贔屓目なしに能力を評価してのものであったわけで。ちゃんと、ティグルのブリューヌ国との友好関係も重視してる政策や人事を取り……って、冷静沈着だし品行方正だし王権を意識しつつ変に貴族や戦姫から権益を奪ったり恣意的な利益誘導をしたりもせず、調整役としても天秤を司るに相応しいバランス感覚の持ち主だし、優柔不断の卦は無いし、ユージェンへの権限移譲の過程を見ていても変な妄執抱えてないし……、周辺国家の王族支配者見渡しても、ジスタート王文句なしに名君なんですけど。
エレンってさ……わりと人物評価間違ってる場合多いよね。わりと人を見る目ないよね。
フィグネリアとも、えらい勢いで反発してしまいましたし。あれはリムも同じように反応している上にフィグネリアの方も自分でコントロールできないものを抱え込んでしまっているようなので、清算のためにもこの経緯は仕方ないことなのか。
ともあれ、ジスタート王が最後に盛大にやらかしてしまったせいで、ヴァレンティナも含めてジスタート国は尋常ならざる混迷へと突入していく。ソフィーがまた重要なことを想定し始めているようだけれど、それもこれもヴァレンティナの魔の手を逃れてからか。

ブリューヌ国の方は、どうにもこうにもティグルが国王に、という流れができつつ有るようで。ごく一部、ではなくわりと国内の多数派意見になりつつある、というのが結構意外なことで。いや、ジスタートのユージェン伯の王太子就任もそうなんだけれど、意外とこの作品の王家って嫡流にそこまでこだわってるわけではないんだ、と今更ながら実感している。作品初期の二大大公の王権を蔑ろにしているような専横も、そりゃ王位がそれだけガチガチに血統で固まってないのだとしたらそれほど不可解ではないですもんね。それにしても、ここまで支持者が多いとは。ティグルの方も無理やり押されて、というわけじゃなく、真剣に王位に関して考え出しているようですし。レギン女王も、なかなか告白の仕方がしたたかなんですよね。まず一人の女として、それからブリューヌの王として。何気にこの食らいついて離さないという強さは、作中の女性の中でも屈指なのではないかと。
その点、ミラはもう可愛いんだけれど、思いきれなくて悶々としている様子がもうなんというかなんというか。ミラが告白してから、なんて順番をつけてしまったソフィー、さすがに焦れてきてるんじゃないですか。
それに比べて、しばらく離れているうちにティグルの女性関係がえらい進展してしまったリーザなんか、再会してエレンとの関係を察した途端、えらいぐさっと来る牽制を放っているあたり、ミラよりも有望なんじゃないだろうか。まあリーザはリーザでいつまでもエレンとの仲をはっきりさせられてないあたり、思い切りに関してはなんともはや、なのですけれど。これに関してはオルガの方が一気に切り込んでしまうのかも。

いずれにしても、あと二巻でシリーズ完結という情報が出てしまったので、あとはどう転がすか、ですねえ。
とりあえず、リムは早いところ娶ってあげてください。


シリーズ感想





折れた聖剣と帝冠の剣姫 3 ★★★☆   

折れた聖剣と帝冠の剣姫(3) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 3】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

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エルドームでの激戦から帰還したルシードとファル。長くパルミア、カーヴェルに伝わってきた聖剣伝承に疑念を抱く二人のもとにパルミア王国の政権を奪った将軍クログスターからの使者が現れ、ルシードらにとって困難な協力の要請を伝える。時を同じくして、ファルの姉にしてパルミア第一王女のアルトもまたルシードたちの前に姿を現した。正統なる王家の指導者としてクログスター政権の打倒をかかげるアルトは、妹のファルとルシードに合流を促す。いっときは兄弟姉妹のように育ったルシードらは快くアルトを迎え入れるのだが、姉であるアルトの隠すことのないルシードへの好意が徐々にファルの心を曇らせていく。再会を果たした王子と王女、4人の新たな体制は何をもたらすのか?!
アルト姉様、後々普通に合流するものと思っていたので、まさか合流したことで逆に昔のままの関係じゃ居られない、という現実の立場に基づく亀裂を入れてくるとは……。国を割る、国を起こすということは旧体制との決別を意味する以上、これはどうしようもないことだったのか。アルト姫からすると、あくまでパルミア王国の正統としての立場を譲らないのであれば、どう国内を改革しようと新しい国を起こしたファルと同じ道はもう歩めない。なまじ姉妹仲がいいだけにこの決別は辛かったなあ……。ただ、そこにルシードという男が絡んでいるだけに事態が余計に拗れているのですけれど。
ファルが生まれた国を捨てて新しい国を創ろうと思ったのはルシードが居たからで、彼が居なかったらそもそもどう国内で立場が追い込まれようと、アルトから離れることはなかったんですよね。そのルシードを一時的にでも手放してしまうことは、ファルにとって立脚点を失うことに等しい。
そんなルシードを奪おうとする姉は、どれだけ仲が良かろうと大切だろうと敵認定するほかないんだよなあ。まさか、こんな形で男の奪い合いが発生するとは思わなかったけれど。ハーレム展開はどうやったって無理なんですよね、二人の立ち位置からして自分の地位を捨てる以外にルシードを共有することが出来ない関係になってしまっている。
まあこれだけアルトが積極的で、なおかつファルの感情を刺激することになるとは予想外でしたけれど。もうちょっと緩やかにファルのルシードへの気持ちは成熟していくと思っていたから、相当性急にファルは自分の気持ちを自覚して、なおかつそれをフル駆動せざるを得なくなったわけで。アルト姉様、けっこう容赦無いですよね、こうして考えると。実質、可愛い妹から男を奪うのに殆ど躊躇らしい躊躇がなかったわけですから。それだけ、アルトも切羽詰ってたとも言えるのかもしれませんが。ファルが追放され自身も亡命政権を率いる事となり、一人で反乱勢力と内部の旧弊と戦わざるを得なくなったわけで、心から信頼し寄りかかることの出来る相手を欲するという意味では、飢餓状態だったのかもしれません。それが、あのルシードへの過剰なくらいのアプローチににじみ出てしまっていたのかと。
なかなか辛い道を歩いてるなあ。彼女がもっと姫としての立場に無責任なら、全部放り捨ててファルたちのもとに来るという選択肢だってあったでしょうに、それは端から頭になかったみたいですし。

しかし、相手が悪い。

パルミラを制圧したクログスター卿、明らかにただの簒奪者じゃないんですよね。建国の物語であるものの、戦記物ではなくむしろ王道な冒険という要素を重視したファンタジーらしい本作ですけれど、聖剣というものが作られた過去の歴史にまつわる謎が、どうやらダイレクトに事態に介入してきそうで、その根幹に居るのがどうやらクログスター卿。彼がやっぱりラスボスとなってくるのか。またぞろ、人智を超えた人外の存在がバックでうごめいている気配が垣間見えてきた。

あと雷竜さん、あんた金に汚い! 詳しい情報が欲しいなら、約束の財宝とはまた別に金払え、って守銭奴か!!

シリーズ感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 2 ★★★☆  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(2) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 2】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

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互いに助けあって、新たな国を興すことを決意したルシードとファルシェーラ、コンスタンスの三人。期限つきのドラゴンとの契約に焦り、資金繰りに苦慮しつつも、三人は次の段階へ踏みだす機会をうかがっていた。そんなおり、エルドーム王国からの使者がファルシェーラのもとを訪れる。使者の名はエルドームの第五王女、リュシール。エルドームの鉱山から、劫炎禍の異名を持つ炎の魔物イフリートが現れ、魔物を倒すためにファルシェーラが持つ聖剣の力を借りたいのだという。申し出を受け、エルドームへと向かうルシードたちだが、その行く手にはイフリートの眷族たちが立ちはだかる。同じ王女の立場から友情をはぐくむコンスタンスとリュシールの未来は、そしてイフリート復活の裏に潜む陰謀とは―
自分たちの国を作る、という夢は夢として、ファルたちが一番楽しいのはやっぱり三人で冒険の旅をする、というところなんだろうなあ、とリュシュール姫からの依頼に応えてエルドーム王国に向かうことになってからのファルとルシードのウキウキっぷりを見るとそう思うわけで。
現状、とても国としての体裁を整えられてるとは言えないのだけれど、パルミラ王国からファルを慕って部隊が抜けてきてるのかー。三人だけの旅じゃなく、ちゃんと兵隊を引き連れての旅になってるあたり、メインの三人が何だかんだと全員王族であるのが出てて面白い。一冒険者の出世譚や成り上がり物語じゃなくて一応最初から王族だった人達による建国譚なんですよねえ。
そもそも、パルミラのファルと、カーヴェル王国のルシードとコンスタンスが共同統治してるように彼女たちの国は最初から違う国の者同士が寄り集まって新しい国を作る、というカタチになっているのだけれど、今回エルドーム王国での冒険で、ファルが連れてきたパルミラ兵とリュシュール姫の護衛として連れてきたエルドーム兵が一緒に戦うことで戦友としての共感を抱くようになっているのを見ると、今後はパルミラとカーヴェルだけじゃなく、それ以外の国々からも人が流入してきて、というカタチになるんだろうか。どちらにしろ、今のままだと国どころか都市とも言えない辺境の村に過ぎないので、いずれにしても入植者は募らないといけないことになるんだろうけれど。
となると、今回のエルドームとの誼を通じた件も大事なんですよね。言及はされてませんけれど、リュシュールの第五王女、という立場は身内からは愛されているのはともかくとして、政略結婚の駒として利用されるのが当然の立ち位置ですからね。こっちに送られてくる可能性高そうだなあ。
ただ、そういう婚姻外交が絡んでくると、やっぱりファルとルシードとコンスタンスが上下の差がない共同統治者、という点が面倒になってくるんですよねえ。建前的にも本音的にも、くっついちゃって問題はなさそうなんだけれど……。
ファルも全然まんざらじゃなさそうなんだがなあ。リュシュールからの依頼を受けるかどうかを、彼女がルシードたちの意見を聞いてから受けるかどうか決めたのだって、立場を考えてとか気を遣ってとかじゃなくて、極々自然に勝手してルシードやコンスタンスに嫌がられたくない、という気持ちからみたいでしたし。
まあ、ルシードたちからすると、ファルが受けるのはまず当然として、それをどう処理するか、に最初から頭が行っていたみたいなので、ファルの心配しすぎだったのですが。
でも、姉兄二人がくっついちゃうと、コンスタンスが浮いちゃうのか。この世界の倫理観的に腹違いの妹までならOKなら別にいいんだけれど。コンスタンス的には兄にべったりですしねえ。
今回の冒険で、単に兄にくっついていくだけじゃなく、ちゃんと自分の力で立った上で兄にくっついていく自信は得たみたいですけれど。

しかし、ファルの姉姫様は一応クーデター政府に対して正当派を主張する勢力を束ねて引っ張ってるのかー。聖剣問題からして、正当パルミラを名乗るからには本物の聖剣を手に入れたとするファルに対しては偽物だと非難する他ないので、これは簡単に合流とはいかないかも。一応、姉姫さま当人は沈黙を守ることでファルを守ってるみたいだけれど。
あー、そうなるとイフリートの祭壇の奥で新たに見つかった朽ちた聖剣が、色々と重要になってくるのか。もしかしたら、聖剣は一本じゃなかったかもしれなくなるわけだし。

1巻感想

魔弾の王と戦姫(ヴァナディース)14 ★★★★   

魔弾の王と戦姫(ヴァナディース) (14) (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫(ヴァナディース)14】 川口士/よし☆ヲ MF文庫J

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ムオジネルの王弟クレイシュは十五万という空前絶後の大軍を擁し、優れた将軍たちをそろえ、都市や城砦を次々に無力化して王都へと迫っていた。ティグルは王女レギンが西方国境から呼び集めた兵を預かって月光の騎士軍を再編成し、仲間たちとともにクレイシュとの決戦に挑む。若き英雄は大切な者たちのいる王都を守り、クレイシュを撃つことができるのか。一方、ジスタートではブリューヌから帰国したヴァレンティナがフィグネリアやリーザと会談。ジスタートを覆う不穏、とめどなく続く数多の戦い、祖国に訪れた史上最大の危機の中で今、英雄となった若者は、その名を永遠に歴史に刻み込む―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第14弾!
駄目だ、この王弟。欠点らしい欠点が皆無じゃないか。能力的にも偏りがないし、大胆不敵でありながら細かいところまで目が届き、油断や増長というものが存在しない。これまでも智将勇将の類と戦い続けたティグルだけれど、王弟クレイシュは文句無しにシリーズ最強の大将じゃないでしょうか。この人相手ばかりは、どうやったって何度やっても勝ち筋が見えてこない。
ぶっちゃけ、同数を用意しても十万以上の大軍を自在に動かす手腕としては、ティグルではクレイシュには及ばなそうなんだよな。結局、ティグルは指揮官先頭型でありますし。そもそも、クレイシュ相手だと対等の戦力という土俵には上がってこなさそうですし。
彼に関しては、ティグルがついに勝てなかった相手として長く語り継がれそう。クレイシュ側から見ても、ティグルは同様の認識かもしれないけれど。万難を排して勝利が約束された戦争に挑みながら、勝ちきれなかった。想定を上回られ続けてしまった、という意味で。
最後は完全に天運でしたけれど、それを掴んだのは戦争の行方を完全に見通していたクレイシュの読みを、何度も上回ったティグルの指揮と弓の腕があってこそでしたからね。決して卑下するものではないかと。クレイシュの読み、或いは分析といっていいか。それは、主観が入らない非常に客観的でかつ慎重なもので、予断らしい予断も入っていない正確で緻密なもので、加えてある種の読み違いも踏まえた「余裕」すら加味したものですから、それを上回るというのは、文字通り尋常なものじゃなかったんですよね。それをやり遂げた、というだけでティグルの将器は証明されますし、今までさえ人外の領域だった弓の腕が本当にえらいことに。
あれ、周囲1キロ半径の安全を確保していたのに、1.5キロ先から狙撃を受けたようなもんだからなあ。ティグルの尋常でない弓の腕前をちゃんと考慮に入れた上で、安全マージン過剰なくらいに取っていたのに、さらにその外側から狙われたらそりゃどうしようもないですわー。

しかし、今回の敢闘賞は外に出て走り回っていたティグルたちではなく、やはり籠城戦で奮闘したレギンやミラたちの方でしょう。正直、ムネジオル軍の攻城戦パなかったですからねえ。革新的な戦術とかはないものの、詰将棋のように淡々と工程を進めていくその戦闘は、ミラたちが最大限限界まで振り絞って抵抗していたからこその攻城速度であって、ちょっとでも穴ができたらそこから一気に瓦解しかねない圧倒的なプレッシャーでしたからねえ。
あそこまで焦りも性急さもなく、じっくり腰を据えてジワリジワリと迫られたら、そりゃたまらんですよ。攻城戦においても、クレイシュはまったく相手を甘く見ることなく、結局ほぼ最後まで想定通りに攻略は進みましたからね。ミラたちのあの激闘が、クレイシュの想定のおそらくほぼ最上限だったにしろ、想定を覆すほどではなかった、上回れなかったというだけでゾッとします。
どこを見ても、名将としての格しか見当たらないんだよなあ、この王弟。
唯一隙を見出すとしたら、後方に座して動かないところか。情報は厚く集めるけれど、現地を実際に走って見て回るティグルと比べて、生の情報に触れていない、というのは今回の戦いで分水嶺となっている。もっとも、王族という立場と十万を越える大軍の指揮、大量かつ多角的な情報の集積と分析による大局的視点の確保、という意味においては、クレイシュの姿勢はまったく間違っていないんですよね。
正直、これを倒すというのはどれほど運が良くても無理だろう、と読めば読むほど思い知らされていただけに、この決着はまあこれしかないよなあ、というものでした。
王族として、見事に籠城戦の士気を保ち続けたレギンを含め、全員が人事を尽くしたからこその結果でしたけれど、もし叶うならばクレイシュが撤退した理由となる政治的な部分が偶然の産物ではなく、意図した政略或いは謀略として仕掛けることの出来る人材が、ブリューヌに欠けているのが辛いところ。尤も、それが出来る手の長い大政治家、謀神的人材は各国見渡してもなかなか居ないんですけれどね。万端勝てる戦場を整えてから繰り出してくるクレイシュ当人とか、ブリューヌ国内を内乱状態にした上で攻めてきたザクスタン王、或いは往時のガヌロン公爵なんかがこの手の指し手ではあるのですけれど、今のブリューヌにはこのタイプの指し手が居ないんだよなあ。武人タイプばっかりだし、宰相のボードワンも内向きですしねえ。
例えば、ヴァレンティナが目指すべきはこのタイプなんだろうけれど、今のところ小賢しい立ち回りに終止していて、大局を動かす繰り手を見せることは出来てないんですよねえ。

と、そういえばフィグネリアさんが正式に戦姫として活動を開始しましたけれど、リーザやヴァレンティナとの対談を見ていると、今までの戦姫にはないポディションになりそうで面白し。いや、実直な戦士タイプではあるんだけれど、一番の新参ながら年齢的には年上なせいか、落ち着きのある性格も相まってどうも長女的ポディションに付きそうな感じがあるんですよね。前には出ない後ろでみんなを見守るタイプのまとめ役、というべきか。うん、貫禄があるんですよね。彼女の動向には興味をそそられる。
しかし、戦姫の殆どがティグルに好意持ってるんじゃないか、という呆れ気味のフィグネリアさんの見解には笑ってしまったw

そのティグル、エレンと好い仲になったものの、他の娘たちはどうするのかな、と思ったら、ティッタに関しては選択するという選択すらなしですか。そりゃ、女好きと自嘲するのも仕方なし。まあ、ティッタ相手だとエレンも文句言わないしねえ。
それはそれとして、もう好意を隠そうともせず食いつく気満々な肉食系のソフィに、こちらも素直に好意を口にしているリム、周囲も動いてティグルとくっつけようとしているレギン女王。とまあ、入れ食い状態で。
ミラさん、落ち込んでる暇ありませんよ!? ってか、嫉妬に身を焦がすでもなく、わりとマジに羨ましそうにエレンとティグルの様子を指くわえて眺めてるミラが、なんとも可愛くてねえ。恋愛方面だと、ミラもあれですね、乙女ですねえw

まあ女性陣との関係はそっちのけっで、ちゃっかりダーマードととっ捕まえて確保しているあたり、ティグルの狙った獲物は逃さない感が出てますなあw
ルーリックが居るとはいえ、彼はジスタートの将校ですし、気心の知れた実力のある腹心ポジションの男性キャラが欲しかったところで、薬を使っていたとはいえエレンとガチで打ち合える実力のあるダーマードをゲット出来たのは大きいぞ。

シリーズ感想

折れた聖剣と帝冠の剣姫 1 ★★★★  

折れた聖剣と帝冠の剣姫(1) (一迅社文庫)

【折れた聖剣と帝冠の剣姫 1】 川口士/八坂ミナト 一迅社文庫

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知略の英雄、カーヴェル王国のルシード王子。勇猛な聖剣の姫、パルミア王国のファルシェーラ王女。大陸に名を知られる二人が率いた軍は、リスティオンの野で激突し、かつての幼なじみである二人は死闘を繰り広げていた。ファルシェーラの軍勢は着々とカーヴェル軍の陣容を切り崩し、ルシードが首級を上げるべく剣姫ファルシェーラが突入、ついに互いを強敵と認めていた二人は戦場であいまみえる。時を同じくして二人の英雄不在のときを狙ったかのように両国で政変が発生。二人は帰るべき祖国を失う。かくして同じ立場となった王子と王女の二人は居場所を求め世界を旅することになるのだが、その最初の行く手にはかつての勇者が封印した巨大な竜が待ち受けていた。ルシードとファルシェーラ、二人の前に最初の試練が訪れる。
あらすじであらかた語ってしまっているのはいいんだろうか、これ。しかも、ふたり旅ではなくてルシードの妹姫コンスタンスも一緒に逃げて三人旅にも関わらず、まるで居ない娘扱いじゃないか(苦笑
しかし、コンスタンスって腹違いの妹のはずなんだけれど、一貫して義妹表記なんだがこれって意味あるんだろうか。義理の妹なら結婚できますよってか? ちなみに、幼いころに交流していた相手には、ファルの姉姫様もいらっしゃるので、幼なじみハーレムというシチュエーション狙いという可能性も考えねばならぬようだな!
でもこれ、新しい国造りのお話なんだけれど、国の王様になるのってこの流れだとルシードじゃなくて、ファルシェーラっぽいですよね。王権の証が本物の聖剣である事と、あと新しい国を作りたいと言い出した上でどんな国を作りたいか、という方向性を決めたのがファルなわけで、ルシードとコンスタンスはその夢に乗っかるという形で参加したので、あくまで主体はファルなんですよねえ。
新国家建設という目標を打ちたてた上で、ファルはルシードたちを誘ったわけだけれど他国の、しかも妾腹とはいえ王族であるルシードを旗揚げのメンバーに選んだ時点で、どう考えても実際に国がちゃんと成った時の結婚相手ってルシードしかいないんだけれど、当人たちその辺どのくらいまで考えてたんだろう。ファルはわりと「そのつもり」である素振りはあるんですよね。ルシードもその辺わかってないはずはないんだけれど、まさ先のことは後回しにして考えないようにしている感じではあるわけだが……ファルが女王になったら、王配が嫁さんたくさん持っていいんだろうか、と思わないでもない……が、みんな身内だったら血統としては逸れてないからいいのか、別に。

古くから敵対していた国同士の間に訪れた、僅かな休戦期間。その際に行われた国家間交流で幼い頃の時間を共に過ごしたカーヴェル王国の兄妹とパルミラ王国の姉妹。
長じて、再びカーヴェルのルシード王子とパルミラのファルシェーラ姫が再会したのは、お互いが軍勢を率いてぶつかり合う戦場であった……という、幼いころに友誼を交わし仄かな想いを抱きあった幼なじみ同士が久闊を叙する代わりに戦場で槍を交わし合う、というなかなかにワクワクする戦記モノとしての舞台からはじまるこの物語ですが、こっからの展開がまた大胆というか贅沢というか。
この作品、戦記モノであると思ったら、貴種流離譚に様変わりして、そこから少人数のパーティーで秘境に眠るという伝説の聖遺物を求めて旅する冒険譚になったと思ったら、僅かな人数の同じ志を持つ者同士で全く新しい国を一から立ち上げる、という国作りの物語になる、という一つのネタで1シリーズ作れそうなのを上手いことブレンドして一つの作品にまとめ上げる、という凄まじく贅沢な作りをしてるんですよね。作者の川口さんのこれまで描いてきた物語の経験を注ぎ込んでいるのが伝わってくるだけに、非常にワクワクさせられるスタートであります。
主人公のルシードは、王子という貴種の身の上ではあるものの、妾腹の子として王宮ではかなり肩身の狭い思いをしている上に、母が亡くなるまでは貧民窟で育った、という経歴で、王族で将軍でありながらもわりとしがらみがないんですよね。母方の伯父が冒険家であるせいか、旅や冒険に憧れを持つような側面もあり、王子でありながらクレバーな自由人な感じなんですよね。これで、国に縛られていたら王子という血筋は枷になるんですけれど、国を追われた身の上だと逆に武器の一つになってくるのが面白い。新国家を立ち上げるにも、王族の血は大きな要素の一つになりますし、ファル姫との身分差に悩むこともないですからねえ。唯一のしがらみとなり得るはずだった妹のコンスタンスも、ちゃっかり逃亡の旅にくっついてきちゃってるわけで、もう何の憂いもないわけです。ファル姫も、あちらの国で色々と不自由な身であったらしく、コンスタンス含めて三人と、国を追われた立場でありながらその事実に落ち込み傷つき鬱屈をためるどころか、むしろスッキリしたと言わんばかりに籠から飛び出した鳥みたく、羽根を伸ばしてのびのびしている様子には思わず微苦笑してしまったり。溜まってたんだなあ、色々と。
未だ合流出来ていない姉姫さまも、いずれ登場してくるでしょうし、新しい国を立ち上げる目処こそついたものの、それにはいきなりのリミット付き。周りは既存の国家群に囲まれ、自分たちは賞金首。率いる兵士も国民もいない三人きりの国の旗揚げ、とそれだけでも相当どころではないハードルの高さなのに、その上にまたとんでもないリスクを背負ったもんだわ、と思いつつもリスクをメリットに変える算段はあるわけで、さあどでかいスケールのシリーズのスタート、ワクワクしますなあ。

川口士作品感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 13 ★★★★   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉(13) (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 13】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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大軍と共に出現したタラード=グラムを説き伏せ、その助力によりザクスタン軍を撃退した、ティグルたち月光の騎士軍。しかし、王都への帰還の途上をグレアストの軍に襲撃され、満身創痍のティグルたちは壊滅の憂き目に。指揮官であるティグルとエレンは混乱のなか行方不明となる。エレンはグレアストに捕らえられ、彼女への異常な執着に晒されてしまう。マスハスやリムアリーシャが対策を練る一方、単身で動き出したティグルの元には、予測しうる限りで最悪の敵が迫り、同時に、最高の助っ人が駆けつけようとしていた―大ヒット最強美少女ファンタジー戦記、緊迫の第13弾!
月光の騎士軍の敗走に伴いティグルとエレン、二人共が行方不明という衝撃的な結末で終わった前巻。この間行方不明になって記憶喪失になってたティグルですから、え!?また行方不明!? とさすがにこれには違和感があったのですけれど、なるほどそういう展開だったのか。まさに、お膳立てとしてはこれ以上ないシチュエーションなのだけれど、ティグルのメンタルがあれほどマッハに削れていくのは意外でもあったのだけれど、それだけ必死さが伝わってきたのは読者としても手に汗握る迫真性だったんじゃないだろうか。何だかんだと追いつめられても生来の大らかさからか若干鈍いところがあるのか、ティグルって常にどこか余裕というか慌てない動じない部分が残っていたのだけれど、今回に関してはそういうの全部ゴリゴリと削り落ちて凄惨と言っていいくらいになってましたからね。
それだけ、エレンの危機に対して冷静で居られない、というティグルの精神状態がよく伝わってきたのですけれど、叩けば治るところがこの男の良い所で。
こういうシチュエーションで、ティグル一人の力で打開させないのは、らしいというかなんというか。一部始終を目の前で見せつけられることになった、どころか全力で手助けすることになってしまったミラとしてはいい面の皮、なんだろうけれど、ここでこの場に居て全部知ってしまったのがミラだった、というのは重要ですよ。他の誰でもない、ミラが選ばれたという事でもありますからね。この負けず嫌いの娘さんがこれだけメタメタにやられてしまってすごすごと引っ込むはずがありませんもんね。むしろ、闘志を燃やすのがミラの真骨頂でしょう。目の前の現実と自分の醜くも情けない心の動きに随分と凹まされたみたいですけれど、事実を知ってまず「その手があったか」とか思ってる時点で色々とアレですし。
ある意味、徹底的に追い詰められた、とも言えますし、こっからはミラさんなりふり構わない気すらします。
一方でティグルですけれど、こっちはこっちで自分から形振り構わないと言ってるようなものな宣言しちゃってますからね。恐ろしい。このティグルくんが、受動的ではなく能動的に「絶対に何とかする」とか言っちゃったんですよ。絶対になんとかしてしまうに決まってるじゃないですか。今のところ、解が見えていないだけにどこに進んでいけばわかりませんから走りだしていませんけれど、もし解さえ出ればそれがどんなモノだろうとティグルだと、もう気にせず進みだす気がするんですよね。この男、一度決めたらどんな大胆な内容でもとんでもない代物でも、躊躇わんからなあ。基本的に、促してもなかなか動き出さない鈍いのんびりとした青年なのだけれど、それだけにこうと決めた時の揺るがなさは……。
ある意味、これまで故郷アルサスの安定以外何も望んでこなかった男が、初めて欲したわけだ。能動的に手に入れようと動き出したわけだ。これは、えらいことになりますよー。
味方のメンツ見渡すと、「じゃあこうしたらいいんじゃないですかねー」と耳元で囁いてちゃっかりその代価に枠内に入っちゃいそうな女性がいるだけに、ティグルが本格的に動き出すのもそう遠くないような気もします。

いずれにしても、そうなるとヴァレンティナは対立軸の向こう側に行きそうなんだけれど、この娘さんはふらふらと暗躍しすぎてて、ちょっと敵役としては腰が据わってない感じなんだよなあ。信用も信頼も出来ない人物としてティグルサイドでは評価は定まっているけれど、ティグルがそんなに彼女に対して悪印象を抱いていないのがちょっと気になる。
動乱の黒幕として動いていたガヌロンも、ちょっと孤立しがちだしイマイチ受動権を握れているとは思えない部分があるので、どうなんだろう。魔物側はある程度自分たちが立てたスケジュール通り状況を動かせているみたいだけれど、それでも想定外の部分は多いみたいだし。
実のところ、こうして敵側の思惑が一つにまとまっておらず、各自が勝手に動き回り暗躍している状況というのは、誰もイニシアティブを握れていないという点で次に何が起こるのか誰にもわからないので、混沌として話としては面白いんですよねえ。脚の引っ張り合いで物事が中途半端になってしまうのならともかく、ムネジオルの侵攻で今、もうわやくちゃなことになっててまさに激動という有様になってますし。
此処に至ってまだ真意が見えないプレイヤーが、ジスタート王というのが気になるところでもあるんですよね。何を考え、どのように動いているのか。それがわからないうちは、もしかして彼が主導権を握っているのでは、という疑いが拭いきれませんし。ティグルの最終目的からしても、ジスタート王の存在は無視できないものですし。
さあ、いずれにしてもティグルの英雄譚としては、もしかしたら彼がやる気になったここが本当の、或いは最後のスタートかもしれない。面白くなってきた。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 12 4   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉12 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 12】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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ブリューヌ王国に侵略したザクスタン軍を撃破するため、月光の騎士軍を結成して、その緒戦を勝利に導いたティグル。王都ニースで戦況を見守る王女レギンの下を訪れたが、王宮は謀略の渦巻く魔窟となっており、凶悪な魔手がティグルに忍び寄る。戦場の敵はザクスタン軍だけにとどまらず、因縁の深いあの男の登場により、ブリューヌの地を舞台とした戦乱は、新たなる局面を迎えることに。一方、ジスタートでは新たに煌炎バルグレンを継承した戦姫フィグネリアがヴィクトール王に謁見していた。幾つにも重なり合う陰謀と戦いを目前に、英雄となった少年は、戦友たちと共に未曾有の混乱を収束させることができるのか―大ヒットの最強美少女ファンタジー戦記、急転直下の第12弾!
ああ、フィグネリアさんて、またエレンと複雑な関係にある人なのか。もっとシンプルに傭兵時代の良き先輩、という風に捉えていたんだけれど、敵ではないものの友好的、とは言えない関係にあるのだなあ。感情的に拗れてしまっているエリザベータと比べると、まだマシなのかもしれないけれど、こればっかりはエレンがまたどう思っているかわからないし、なんとも言えないのだけれど……いや、むしろフィグネリアさんの方が気にしてるというか、引きずっている節があるのでにんともかんとも。
ただ、面白いことに新たに登場した彼女は、傭兵でありながら「国家観」というものを有した人でもあるんですね。
ちょうど、ティグルが国の中枢に携わろうか、という立場となり一地方領主ではなく天下国家の在りようというものをより顕著に考えるようになった折に、彼女のような存在が現れた、というのはなかなかに面白い。
合わせて、エレンが傭兵時代からその養親の影響で自分の思い描く国家観というのもをしっかりと持っていて、それをティグルに贈り物のように伝えているんですよね。そして、フィグネリアさんが国家観を持つようになったのも、そのエレンの養親の影響であり、エレンとの関係が難しいことになってしまっているのもその養親が関わっている、ということで随分と面白い因果と先々の展望への絡め方を織り込んでいたなあ、という印象。
さらにそこに、戦姫という存在がジスタート国の重鎮でありながら、国王の手が及ばない独立国の公主であるという特殊な立場であると同時に、国の担い手という立場を離れた「戦姫」という一人の戦士としての役割が与えられていることが、ミラの件で浮かび上がっているんですよね。ここ、何気にこの先においても重要なポイントになってるんじゃないかと思うわけです。ティグルのブリューヌの中での立場もあがってきたことで、ブリューヌ王国の公主としてのエレンとの関係は、今までのような気安いものであり続けるのは難しくなってきている。それは、ブリューヌ王都でのティグルとエレンたちとの接触すらままならなかった状態にも象徴されるように、今後さらに立場が二人の間を隔てていくであろう中で、公としての戦姫ではなく個としての戦姫の役割が、同じく「弓」の使い手としてのティグルと、エレンそして戦姫の女性たちとの関係に新たな一石を投じるのではないかな、と思ってたら最後に急展開だよ!!
まー、このままだと、どうやったってティグルとエレン、離れ離れにならざるを得なかったからなあ。いやしかし、あの段階でああなってしまうと、それでおしまいというわけじゃなくて、王都ヤバいじゃん!

レギン女王、優秀ではあるんだけれど、王としては実のところジスタート王の方が老練なのかなあ、と思わないでもない。エレンみたいに舐めてる人も多いみたいだし、実際やってることは当てこすりみたいだったり狡いことは多いみたいなんだけれど、王権の維持、という観点にたつと戦姫みたいな半独立勢力が乱立してるような危うい権力基盤の上で、実に見事に立ちまわってるとも言えるんですよね。
それに比べて、レギンは権力基盤が弱いから仕方ないのだけれど、全方位の顔色を見ながらかなり弱腰に振舞っているので、今度の一件はナメられた、とも言えるのかもしれない。ただ、参加した貴族の数がかなり少なかったことや事件後に厳しい対応を取ろうとしているのですから、出来る範囲で最大限の努力をしている、とは言えるんだろうかなあ。
今更ながら、ロランが殺されたことが惜しまれてならない。彼が居るだけで、レギンの押し出しもよっぽど違ったはずなんだよなあ。こればっかりは、どれだけ武功をあげてもティグルではなかなか難しいところ。それでも、ロランの代わりを務められるのは今やティグルしか居ない以上、彼があの選択をしたのは他の余地がなかったんだろうなあ。
まあそれも台無しになってしまったのですが。

しかし、今回の騎兵軍といい、前回の工兵軍といい、ザクスタン軍の二枚看板、こと軍の将帥という観点においては、作中でもちょっと図抜けてたんじゃないだろうか。ここまで戦場での指揮能力の高さを見せた将はあんまり居なかったですぞ。バルバロッサよりも上だったよなあ。正直、よう勝てたと思うよ、ほんまに。

シリーズ感想

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 11 4   

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉11 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 11】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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記憶を取り戻したティグルはジスタート王国にて新年を迎え、因縁浅からぬ戦姫たちと感動の再会を果たす。また、彼はジスタート王に謁見し、思い描く未来の甘さを指摘される。ブリューヌに戻ったときろで残してきた巨大な武勲が、決して彼を以前と同じままにはしておかない。王の言葉に、ティグルの胸中は大きく揺らぐ。一方、ブリューヌ王国ではレギン王女暗殺が企てられるも、未遂に終わる。だが、事件はそれで終わりではなかった。陰謀の背後に見え隠れしていた隣国ザクスタンが、剥き出しの野望をブリューヌに向ける。故国の窮地に、英雄となった若者はいま、再び大動乱にその身を投じようとしていた―最強美少女ファンタジー戦記、新章突入の第11弾!
七戦姫勢揃いのなんというド迫力。サーシャ抜きなので六戦姫だけれど。よく考えると、こういう形で戦姫たちが勢揃いする機会って今までなかったんですよね。それが公式の場で、こうしてティグルを取り巻くように戦姫たちが揃うインパクトときたら。しかも、ティグル中心、戦姫をティグルが引き連れるような構図になってるんですもんねえ。ジスタート内でも、これはもうティグルという存在を無視できないんじゃないだろうか。
それにしても、他の戦姫があれだけティグルと好を通じてしまっている中で一人だけヴァレンティナだけが蚊帳の外という疎外感(笑
思ってた以上にリーザとエレンに和解ムードが漂っていたのが、そこに拍車をかけるわけで。ほとんどのメンツとは初対面となるオルガも、ソフィーがわりと傍に寄ってる感じでしたしね。まあ、いきなりオルガは再会した途端に爆弾を投下してましたが。ティグルとの男女関係というのは、それぞれの立場もあってか戦姫の誰もが保留というか、あんまり考えないようにしていたっぽいところに、オルガが空気読まずに、同時に結構その立場にも考慮した爆弾発言で否応なくそれぞれの胸中に波を立たせたわけで……速攻でその波に乗って食いつくソフィーの肉食っぷりには笑ってしまいましたがw
めっちゃ食う気満々のソフィーに対して、他の戦姫が思いの外ティグルと親しい関係なのを目の当たりにして、焦りながら自分も呼びたいし呼んで欲しい、といそいそと申し込むリーザがなんか可愛らしかった。このメンツの中では何だかんだとリーザが一番乙女っぽい内面があるんだよなあ。ミラもあれでけっこうそっちの卦があるけれど。お陰でこのリーザとミラ、意気投合しつつ打ち解けられないんじゃなかろうか。
と、男女関係云々だけではなく、オルガの投じた爆弾というのは、ティグルの在り方を「王」のそれだ、と言及してのけた点こそが大きかったように思う。ティグルはこれまでの旅路の中での体験の中で王という存在について徐々に思うところを蓄積していってたと思うんだけれど、戦姫たちにとってティグルという男に「王」をみるという考え方は今まで殆ど持ってなかったんじゃないだろうか。ところが、オルガの発言によってそれが現実的か非現実的かというところは脇において、ティグルという男を表す在りようとして「王」という考え方がある、という発想が植え付けられたわけだ。これは、今後について大きな布石になりそう。
むしろ、もっともティグルという男と「王」という存在を結びつけて考えていたのは、こうしてみるとジスタート王なんじゃないか、とすら思うんですよね。ジスタート王って、当初エレンがけちょんけちょんに貶してたもんだから、随分な小物な王様なのかと序盤は思ってたけれど、中盤から直接登場するようになってその内心や考えが読めないところから得体の知れなさ、不気味さが感じられてた上に、今回の含蓄あるティグルへの助言とも警告とも野心の植え付けとも取れる言葉の数々は、このジスタート王がどのような性質の持ち主であるかは未だわからないものの、少なくとも「賢人」のたぐいであることは間違いないと確信させられた次第。ティグルの在り方とは違うにしても、確かに「王」たることを忠実に勤めてる、って感じなんだよなあ。
ぶっちゃけ今の段階だと、ヴァレンティナではジスタート王に対してまだまだ及ばないように見えるのよねえ。いろいろ暗躍している彼女だけれど、まだ浅いというか、ジスタート王やガヌロンレベルに比べると深慮や遠謀が足りてない気がする。
ジスタート王の在りように、強く「王」という存在を意識させられたティグルに対して、間髪入れずに届くのは、ブリューヌへのザクスタン王国の侵攻。そして、それを手引きしたと思われるブリューヌ内の新女王への抵抗勢力の存在。既に他国にも名望響くブリューヌ最高の英雄となってしまったティグルは、もはや辺境の小領主という立場では居られず、ブリューヌ国内での政治闘争に必然的に巻き込まれることになるのだと、ジスタート王の予見通りになりそうな流れ。第三部に入り、明確に空気が変わった感があるのは、このティグルの政治中枢へ問答無用に係ることになりそうな流れそのものなんだろうなあ。そして、それはティグル単体ではなく、ジスタートという異国の影が常に付き纏うことになるわけだ。もう誰がどう見ても、ティグルのバックにはジスタート王国がついている、と思われて仕方ないもんなあ。いくら英雄とはいえ、他国の紐付き、という印象は常に悪感情を伴って付き纏うことになる。どれだけ健常で公正な考えの持ち主でも、疑念は抱いてしまうだろう。ザクスタンの侵攻にともなってエレンの軍を連れて戻ってきたティグルへの視線には、その萌芽が幾つも散りばめられていた。今後、もつれるだろうなあ。
あと、戦姫の結婚についてはなんか具体的な話というか、一般的な貴族や豪族との違いなんかが語られて、より身近な話ともなってきたんだけれど……なんかティグルって、今の段階でわりと好きな相手居そうじゃない、これ?
それから、もう一つ重要なイベントが。ついに、サーシャの後継。操炎の双剣「バルグレン」を継ぐものが現れる……って、んんん? これって、もしかして、一番最新の戦姫にして、一番年長になるのか、この人!?
エレンの傭兵時代、以前の子供時代も知ってるみたいだし、もしかして、リーザとエレンの過去イベントを掘り起こしてくれるきっかけにもなりそうな予感。リーザはエレンとの過去については絶対口を開かなさそうだし。そのくせ、エレンを超好き好きなのは、ミラがエレンの悪口言ったら超不機嫌になってるあたり、未だ衰え知らずみたいだし、そろそろ本格的に和解させてあげてほしいのよね、この二人。

シリーズ感想
 
8月3日

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(モーニング KC)
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(モーニング KC)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(ガンガンコミックスJOKER)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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7月19日

(HJ NOVELS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(サンデーGXコミックス)
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(チャンピオンREDコミックス)
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7月17日

(電撃の新文芸)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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7月16日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(KCデラックス)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(角川文庫)
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7月15日

(アース・スターノベル)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(マガジンエッジKC)
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(コロナ・コミックス)
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7月14日

(GA文庫)
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(GAノベルス)
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(ハヤカワ文庫JA)
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(星海社FICTIONS)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(モーニングKC) Amazon Kindle B☆W

7月13日

(リュウコミックス)
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7月12日

(アクションコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグ コミックス)
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(YKコミックス)
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(ガンガンコミックスONLINE)
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(アース・スターコミックス)
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(メテオCOMICS)
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7月10日

(TOブックス)
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(モーニングスターブックス)
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7月9日

(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(講談社)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(電撃コミックスNEXT)
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(講談社コミックス)
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(KCデラックス)
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(星海社COMICS)
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(ブレイドコミックス)
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7月8日

(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(宝島社)
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7月7日

(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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(幻冬舎文庫)
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(アフタヌーンKC)
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(ガンガンコミックスUP!)
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