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幻狼ファンタジアノベルス

翼の帰る処 4.時の階梯(下)3   

翼の帰る処 4 ―時の階梯― 下

【翼の帰る処 4.時の階梯(下)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻冬舎

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“黒狼公”をキーナンに譲り、待望の隠居生活に突入した過去視の力を持つヤエト。しかし、残念ながら隠居とはほど遠い仕事量に忙殺される日々を送っていた。そんな中、ターンの預言者・ウィナエに導かれ、ヤエトはジェイサルドらと共に世界の罅を塞ぐ手がかりを得るため、砂漠の深部・シンリールへと赴く。数ヵ月後、ようやく都へと戻ったヤエトだったが、都では第七皇子が反旗を翻し、まさに戦いの火蓋が切られようとしていて―。
確か、ジェイサルドの方が御老体のはずだったんだけれど、ヤエトよりもどんどん若返ってる気がするなあ、この人。実際、順調に人の枠からハズレていってしまっているようで。以前、まじない的な意味で彼にヤエトが新しい名前をあげていたんだけれど、やっぱりこの剣士はどうやったってジェイサルド以外の何者でもなくって、違和感ばかりだなあと思っていたのですが、どうやら世界の認識の方もどう意見だったようで、あっさり無効判定をくだされたのには納得すると同時に焦りました。いやじゃあどうすんねん!! ある意味解決法は力押し、と言ってもいいものだったのですけれど、確かにさすがに最初からこの方法を取るのは憚られますよね。もう何も考えてないのと変わりませんし。だから、対処法として新しい名前を与えるというのは間違ってはいなかったんでしょうけれど、ここまで効果がないとはなあ。本当に力押しで何とかしてしまうあたり、ヤエトとジェイサルドの主従は良いコンビですw
未来を知っているという事はすなわち未来に抱くべき希望を最初から失っているのと同じ、というのはよくある話で、未来視の能力者は運命の操り人形と化してしまうもの。ヤエトも当初はそんな風に預言者ウィエナのことを見て嫌悪、とまでは言わないまでも忌避感を抱いていたものですが、この旅先で垣間見せるウィエナの人間らしい顔に段々とほだされていくことに。ヤエトって何だかんだと愚痴や皮肉の対象にしてしまう相手ほど、執心してしまう傾向がある気がするなあ。
すべてが明かされてみると、ウィエナは未来を知っていたからこそその未来が自分の前に訪れることを楽しみに待っていたわけで、その先に自分の身に何が訪れるのかも理解していながら、あんなに少女のように心浮き立たせて、未来の光景を待ちわびていた姿は、何とも切なく、でも心が温かくなるものでした。彼女は、自分が見た未来の光景に縛られ、人生のすべてを捧げ、しかしその光景をこそ生涯の心の支えとして過ごし、運命の操り人形ではなく自分の意志で目にした未来を掴みとるために「生きて」きた、と考えれば、満足した人生だったのでしょうか。ヤエトからすれば、言葉にもならないやるせなさでしょうけれど。

それにしても、よく倒れる御仁である。前回馬車馬のように働け、と感想で口走ったことに反省。まさか本当に死にかけるとは。ご隠居、働いてるか死んでるかのどっちかで、全然余生を過ごすって感じじゃありませんよ? まあ、これだけ遠出して砂漠の真ん中にまで足を運んだ以上、まずぶっ倒れるだろうなあとは自他ともに認める展開でしたけれど、それにしても今回は本気で死にかけてたんじゃありません? 期間が半端なかったんですが。姫様も、どれだけ心配したか想像するだに胃が痛くなりそうです。もうそろそろ姫様の方も悟りの境地に入りそうな気がする。一方で回を重ねるごとにはっちゃけて行くのが皇妹殿下。今回最初から最後まで大はしゃぎじゃないですか、これ? なんかどえらいもん、手の内に入れてらっしゃいますし。
ヤエトが倒れている間に状況はガンガン進展していき、あまりの目まぐるしさに目を白黒。姫様はヤエトは何もやってないことなんてないぞ、と言ってくれてますけれど、でもやっぱり考えてみると倒れてばっかりであんまり何にもしてませんよ、ご隠居さま。
なんかラスト、開き直ったのかヤエトってばなんとでも解釈できそうな事を内心で口走っているのですけれど、この人って偶にそれまで居た立ち位置から唐突に三段飛ばしぐらいで飛躍した所に着地するところがあるので、特に姫様関係の場合。なにかしら、これ遠回しに物凄いこと考えてないか? 心配である、うははは。

シリーズ感想

翼の帰る処 4.時の階梯(上) 4   

翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上

【翼の帰る処 4.時の階梯(上)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻冬舎

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青鉄の鉱床発見の成果により、論功行賞を授与されることになったヤエトは皇都に赴き、皇帝から『隠居』を告げられる。かねてより、強い隠居願望を持っていたヤエトは静かに暮らせるかと思いきや、政務の引き継ぎや皇女との関係で慌ただしい日々を送っていた。そんな中、エイギルとミアーシャの息子のキーナンと養子縁素をし“黒狼公”家を継がせることに。政務を離れ「魔界の壺」がある場所の探索に本腰を入れるため砂漠へ旅立つが、「復縁」を迫られた皇妹殿下とヤエトは過ごすことを余儀なくされ…。
なっ、なっ、なっ、なんばしよっとかーーー!! こ、こ、この男、一体何を考えてんだ、いったいいったい!
あかん、これまでは皇帝陛下や皇妹殿下に無理難題を言われて困り果てるヤエトを同情の目で見ていたんだが……いや、考えてみると別にこの男を同情の目で見たことはそういえばなかったな。吹けば死にそうな病弱さにハラハラすることはあっても、その性格ときたら全くもってイイ性格としか言いようの無い慇懃無礼さで、むしろヤエトの為に七転八倒するはめになってる皇女様の方に同情していたんだっけ。だがそれでも、虚弱体質の中無理をおして皇女の為にあれこれ苦労を背負っているヤエトに対して、よくやってるとは思ってたんですよ。いくら当人にやる気がなくても、ちゃんと辣腕の公爵として振る舞い実績をあげてるんだなあ、と。そんな彼に、愛娘を愛するがあまりちょっかいをかけてくる皇帝陛下に、あんたもいい加減にしなさいよー、とか思ってたんですよね……。
だがしかし、この期に及んではむしろ皇帝陛下に同調するぞ!! 今となっては、皇帝陛下にこそ共感するぞ!! この男は、もうちょっと苛めてやらないと気が済まん!! お父さん許しませんよ!!
わはは、もっと苦労してひーひー言いなさいな、こいつめっ、こいつめっ(笑

とまあ、思わずというか我慢ならずというか、皇帝陛下の応援団へと転身してしまったのですが、決して二人の仲を引き裂こうとか、反対だとか思っているわけじゃありません。むしろ、よりお似合いだ、という想いを新たにさせられたくらい。これまで不安定だった二人がくっつくという形に対しても具体的にイメージも湧いてきて、しっくり来るようになったわけですが……ただ、こう、認めるにしてもこのままじゃ済まさん、ただじゃこの娘はやらんからな、絶対! という気分にさせられてしまっただけなのです。こう、意地悪してやるたくなっただけなのです。苛めて、いびって、あの娘はそんなに安くはないんだからな、と思い知らせてやりたくなっただけなのです。
まあ、あの男の性格からして、愚痴まみれになりつつも、実際は何にも堪えてなどいないのでしょうけれど。ええ、そりゃあもう、うんざりしながらも全然堪えてないに決まっているのです。そんなんもう、さらにイビってやるしかないやないかぃ!!
皇妹殿下はあの通り、面白がってるばかりなので役に立ちません。誰か、このヤエトさんに訥々とお説教出来る年配のお姉さんを所望します! ジェイサルドはあきません、あれは単なる過保護な爺さんです。こう、ヤエトが反省してくれるような痛烈なお説教は、この人には無理です。無理というか、そういうタイプじゃないしなあ。

というわけで、ヤエトさん、今回物凄いことをしでかしやがってくれやがりました。それ以前に、姫様からしてもう物凄い行動に打って出てきなさるのですが。この人がここまで具体的に想い入れているとは思わなかったなあ。もうちょっと自覚のないあやふやな気持ちだと思っていたので、はっきり答えとして自分の気持を持っている、しかもそれをぶつけてくるとはかなりの奇襲攻撃でした。かわいいなあ、もう。
それに対するヤエトの反撃が、そりゃあもう……何を考えてるんですかっ、とお説教したくなるような行動でして。ああもう、たちが悪いなあ(笑
この人、口ではあんなこと言いながら、絶対に姫様のこと誰にもやる気ないじゃないですか。悪魔か、こいつ。皇帝陛下がある意味目の敵にしているのも、納得ですよ。目の敵にしますよ。いやあ、実際はかなりのお気に入りなんでしょうけれど、それとこれとは話が別。せめて玩具にしないと気がすまないですよ。わかります、凄くわかりますよ、お父さん! 私も、むしろヤエト先生については見直した、と言っていいくらい尊敬の念を深くしたのですが、それとこれとはまた別だw

一方で微笑ましいのが、黒狼公から隠居する事になったヤエトが、後継者として養子にした先代黒狼公の血族の少年であるキーナンくん。意外とお父さん役が様になってるヤエトですけれど、この素直で利発そうな少年と、かつてヤエトに救われた少女スーリヤとが、またいい雰囲気なんですよね。身分とか立場とか、スーリヤがまた色々と難しい事情を抱えているのもあって簡単にはいかないでしょうけれど、この幼い二人には良い仲になってほしいなあ。そして、少年は恋愛についてはこんなお父さんは見習わなくていいですよ。

ようやく夢だった隠居を許してもらい、楽して怠けられると思ったら更に忙しくなって愚痴るヤエト……ザマア。と、多分皇帝陛下と同じ顔でせせら笑う私が居る。さあさあ、可愛い姫様のためにもっと馬車馬のように働きなさいな。死なない程度にね。

シリーズ感想

おやすみブラックバード3   

おやすみブラックバード (幻狼ファンタジアノベルス)

【おやすみブラックバード】 小竹清彦/加藤たいら 幻狼ファンタジアノベルス

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朽ち果てた廃墟の中でさまよっていた三枝千春は、髪も肌も真っ白な少女を発見した直後、異形の存在に襲われる。女性たちに救われ、扉に押し込まれた千春が目覚めたのは、引っ越した古い雑居ビルの自分の部屋だった―。リアルすぎる奇妙な夢を疑問に思いながら、隣人に挨拶にいったそこで、夢に出てきた女性に遭遇した千春は…。『死』と『謎』と『戦闘』が渦巻く廃墟ワールド登場。
この人の作品のイメージって、歯切れのよいスタッカートなジャズだったんで、タイトルの「ブラックバード」がビートルズの曲だと判った時には意外だったんですよね。あの曲って、アコースティックギターでこう……しっとりとした曲なんですよ。ただ、もの寂しい感じのような気がして、聞いていると段々と浮き立っていくものがある。上へ上へと飛び立っていくような。うーん、そう考えると最初のイメージとは違ったのだけれど、なるほどこの曲をイメージして作られたお話だったのかな、と思えてくる。純粋に、傷ついて地面に降り立った鳥がもう一度羽ばたいて空に飛び立っていくような。
そして、そこには孤独感はないんですよね。
古い雑居ビルの三階。そこに自然と集まってしまった若い男女は、皆が皆、飛ぶことに疲れてしまった鳥だったのだとしても、そこで同じ時間と空間を共有する大切な仲間と出会いました。
一緒に過ごす時間は、とても穏やかで心安らぎ日々でした。たとえ、夢のなかで果てのないように見える彷徨と、謎の敵との戦いがあったとしても、現実に戻った時そこにあるのは、笑いに満ちた会話と美味しい手作りの料理と痛みのない静けさ、そんな和やかな空気。それは、自然と傷が癒えていくような柔らかい優しい世界。
相変わらず、というべきか、小竹清彦という人の紡ぎだす人と人が一緒に過ごす時間の穏やかでいて洒脱でぬくもりに満ちた空気感は、なかなか他に見ることのない独特の空気が醸しだされていて、この人の作品を読む度に思わず目を閉じて浸ってしまう。完全にファンですね、これ。ハマってますね。
【アップルジャック】【カルテット】【Wizard】、これまでの作品と共通しているのは、まさに人と人との繋がり。一人ひとりが自立しながら尊重しあえる、優しく起立した人間関係。生涯に渡って潰えない友情、というと全く大仰なんだけれど、ほんとに自然なんですよね。ストレス無く一緒の空間に居る事のできる関係、それでいてベタベタせずに一人で居ることも大事にできる関係。きっちりパーソナルスペースが確立されているにも関わらず、それが干渉し合わないんですよね、この人達の仲間関係って。
不思議な事に、そうした「絆」で結ばれた感覚は、面識も何もないはずの前の同じ部屋の住人たちにも広がっていくのです。彼らの残した記憶の残滓は、同じ立場に立ってしまったもの、という共通性もあるのだけれど、出会ったこともない人達に自然と仲間意識を抱いていくこの感覚は、ホント素敵なんですよ。多分、この二つのチームは出会った瞬間にかけがえのない仲間同士になれると、疑いもなく信じられるくらいに。エピローグのその後の光景が、同じ部屋に集まって十年来の仲間のようにワイワイと肩を寄せあって笑いあえるのが目に浮かぶようです。
何の因果もなく、ただこの雑居ビルの同じ階の部屋に暮らすことを選んだ、というだけで出会ってしまった、偶然の産物の一会。それを運命というのも、きっと野暮な話なんでしょう。ただ、良き出会いに感謝をすればいいだけで。
個人的には理子がいい娘すぎて、ちょっと黒ちゃんシメてやりたくなりましたw 基本的に、出てくる人みんなすこぶる良い人ばっかりなんですけどね、これ。

不思議と、これまでの作品よりも夢の世界に迷い込む、という不可思議な要素が加わっているにも関わらず、地に足がついたような感じがある作品でもありました。具体的に言うと、スタイリッシュさとか荒唐無稽なスピード感、という点を一旦脇において、じっくりと腰を据えて話を展開していた感覚ですね。ただ、個人的には前々でのはっちゃけていた無茶苦茶さが好みでもありましたので、こういうしっとりと落ち着いたのは嫌いじゃないにしても次の作品はまたノリノリにドライブきいたのが希望かなあ。

小竹清彦作品感想

翼の帰る処 3 ―歌われぬ約束― (下)4   

翼の帰る処 3 ―歌われぬ約束― (下) (幻狼ファンタジアノベルス)

【翼の帰る処 3 ―歌われぬ約束― (下)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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皇帝の策略によって罠に陥ったヤエトは、ルス公当主ライモンドと対面し、逃亡した商人を引き渡すよう要請する。要求は受け入れられたものの、無理がたたって倒れてしまうヤエト。からくも北嶺に戻るが、皇帝の策略を阻止するため、ヤエトは無理を押して再び北方へ向かうことを決意する。それを決断させた裏には、“過去視”の力で出会った謎の少女・ルシルの願いを聞き入れたいという思いがあり―。皇帝の策略により、八方ふさがりな状況に追い込まれ窮地に陥ったヤエトがとった行動とは…。
敵地ともいうべき北方の地で窮地に立たされたり、姫様の行動から皇帝相手に真っ向勝負を挑むことになったりと、何時にもまして危ない橋をわたり続けたヤエトさんだが、一番死にそうでハラハラさせられたのが、ただ階段を登っていくシーンだったというのは冷静に考えると随分とけったいな話である(笑
いやでも、読んだ人ならわかると思いますが、このシーンが一番読んでて心臓に悪かったんですよね。
「もうやめてあげてーーっ、ヤエトはとっくに限界よっ!!」状態である。
ああもう死ぬ、それ以上は死ぬ、絶対死ぬ。ぽっくり倒れて逝ってしまう、休まないとその人死んじゃうから、マジで! と声にならない悲鳴を上げながら読んでましたよ。
ただ階段をのぼってるだけなのに、どれだけ命がけなんだこれw

山積していく問題の数々を前にして、ヤエトは虚弱な体も厭わずについには倒れてしまうまで自らの限界も考えずに黙々と立ち向かい、これらを表情も変えずにばったばったとなぎ倒すように解決していってしまう。そのくせ功を誇るでも野心をひけらかすでもなく、常に何時でも身を引く心積もりを忘れない、
ああ、かの黒狼公はなんと献身的な忠臣なのだろう……などと傍からだとそういう風に見えるんだろうなあ。姫やルーギンみたいな身近な人間以外には。
ヤエトが内心どれだけ罵倒と愚痴と恨み言と後悔と八つ当たりを延々と途切れること無く吐き出している、なんてみんな知らないわけですし。いやあもう、よくぞまあそれだけ愚痴のネタが尽きないものだと拍手を送りたくなるくらい、ずっと愚痴ってますもんねえ、この人。普通は愚痴るなんてのはもっと余裕ができてからする事で、自分が絶体絶命の窮地に立たされている状況とか、知人や大事な人が危ない目にあっているのを助けなきゃいけない、なんていう状態の時にはそれどころじゃないはずなのに。だいたいそういう時は、必死に頭を回転させて打開策をひねり出そう、名案を導きだそうという方向にエネルギーを費やすのに目一杯のはずなのになあ。
ヤエトが恐ろしいのは、内心では愚痴り恨み節にかまけ、知るかボケ! の精神で問題の原因となったありとあらゆる人や状況に罵倒を繰り返し、回りまわって問題を防げなかった自分のバカさ加減への後悔や呆れの言葉をグチグチと吐き出しているくせに、表の方では息でも吐くみたいにスラスラと問題を解決してしあうような切れ味たっぷりの策や案を口にして、てきぱきと指示を出しているところなんですよね。
いやいや、あんた愚痴ってばかりだったくせにいつそんな事考えてたんですかw
いやまあ、読むと確かにどうするべきか考えてるんですよ。ちゃんと打開策に頭を悩ませてる。ただもうひっきりなしに嫌気がさしなさって投げやりになるわ愚痴を混じえなさるわするから、とても名軍師や凄腕の政略家が智謀を巡らせている様子には見えないんですよね(苦笑
実績を見るならば、辣腕の宰相以外の何者でもないのですけれど。まあそれだけ苦労が多いという事なのでしょう。大してやる気もないくせに、手を抜くということが根本的に出来ない人ですし。そりゃあルーギンの言うように、「体調管理に夢中になる下僕、続出」となるわ放っておいても勝手に倒れるし、放っておかなくて自重しなさいと幾ら言っても言うこと結局聞いてくれなくて倒れるし。じゃあ倒れないように体調管理に気をつけてあげないと、という風になりますわ。

そんな苦労ばっかり抱えて呻いているヤエトですけれど、不思議と……いや不思議じゃないのか。ルーギンと姫様と仕事抜きのプライヴェートで喋っている時は内心でも愚痴る事があんまりないんですよね。久々にルーギンと話しているシーンを見たんですけれど、ルーギン相手のヤエトって心なしか楽しそうなんですよ。ルーギンの話術が上手いのかもしれないですけれど、彼と喋っている時はヤエトも気安く会話が弾んでますしねえ。

そして姫様ですよ。……ヤエトって姫様については過保護すぎるくらい過保護ですよね、これw
北方の王子と親しそうにしているのを見てとって、目付きを険悪にしているところあたりは、悪い虫がつくのを危惧する保護者の心境なのか、それとも彼なりの妬心だったのか。
皇妹との結婚について導き出した否定材料が、ひっくり返してみると全部姫様との比較になっているあたりなど、幾らでも穿てるんですよねえ。異性への感情、なんて無粋なことは言わなくてもいいでしょう。隠棲したいなんていう野望を秘めたヤエトにとって、自分の野望を炉端に投げ捨てても躊躇わないくらい、姫様が大切な宝物なのだ。この巻、最後のやり取りを見ればわかる。それも、大事に箱にしまい込むような宝物ではない。自ら輝こうとするのを、磨いて手助けしてやりたいと願うような宝物。
そして宝物である以上、やっぱり誰にも渡したくはないんですよね。ラストはちらりと、欲するものの少ないヤエトの欲みたいなものが見えて、ちと嬉しかった。

それにしてもこの枯れた三十代は、何故か少女にもてもてだなぁ。なんか、北方のお姫様にも速攻でなつかれたし。これが相応の年齢以上の女性となると反応がなくなるどころか妙に刺々しくなるあたりが不思議で面白い。間違っても「女性」にモテるタイプじゃないんだよな、ヤエトは。
ちなみに、ルシルをセルジュに丸投げしたのは、八つ当たりの感もあるけれど、何気にこの二人は組み合わせとして波長が合いそうじゃないですか。セルジュが純心な子供相手に相性良さそう、という理由が大きいのだけれど、これもしかしたら面白いことになるのかも。

さて、次巻はどうやらちゃんと上下巻に目処が立ってから出す予定だそうで、相当に先になりそうだ。この三巻の上下の間隔が丸一年ちょい掛かったのを考えると、1年以内にという希望は叶いそうにないなあ。腰を据えてじっくり待ちますか。

シリーズ感想

Wizard Passion Fruit4   

Wizard―Passion Fruit (幻狼ファンタジアノベルス)

【Wizard Passion Fruit】 小竹清彦/緋原コウ 幻狼ファンタジアノベルス

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電脳の魔術師【ウィザード】こと桜と、その相棒で飄々とした掴みどころのない青年神無木が主人公の【Wizard Daily Fairy Tale】の続編。というか同時刊行なんですよね。内容的にも殆ど事実上の前後編と思っていただいて間違いないかと。前作で桜がワイズマンと親しくなり、彼女が誘拐される原因となった「パッションフルーツ」に纏わる解決編。あるいは彼女の人間観を決定させるきっかけになった事件と言えるのかもしれない。
物語の趣旨は明快にして単純だ。

友達に、悲しい涙は流させねえ。

これに尽きる。
先の巻で親しくなったゲームデザイナーのカップル、良人とジュンに降りかかった災厄。無実の罪で拘束された良人を救うため、ジュンの涙を止めるため、桜と神無木の二人はかつて世界最高のハッカー、ワイズマンと競いあうためハックを仕掛け、結果として逃げ戻る羽目になったモアの領域へと再び挑むことになる。
さらに、良人と同じ境遇で逮捕されている友人を救うために事件の真相を追い、アメリカから日本へと訪れていたウェイクと合流。実家の桐嶋組の力も借りて、リアルとネットの両面からタブーとされる深淵へと立ち向かう桜と神無木だったのだが……。
ホントに、話の根底は実にシンプルなんですよね。桜も神無木も、アメリカから来たウェイクも、桜たちをサポートしてくれる金次たち桐嶋組の面々も、泣いている友達を笑顔に戻すため、ただそれだけの為に全身全霊をかけて、自分のできる全力を尽くそうとするわけです。
その過程で、桜は友達の涙を止める事の意義と同時に、友達によって流させられる嬉し涙の味を刻まれるのです。自分が、とても多くの友情によって支えられているという実感。独りじゃないという感動。年齢から遥かに逸脱した際立った能力と才能をもつが故に、子供で居られなくなり、社会から孤立してしまった桜が、今回の一件を通じて友達を助けられる力を持った事に感謝し、そんなとてつもない力を持った自分が所詮はちっぽけな一個人であることを実感し、その上で自分を支え、助け、守って、一緒に笑い喜び、幸福を共感してくれる友人たちが今や自分にはとても沢山いるという事実を目の当たりにして、ただでさえ俠気溢れた生き様に一方的に与えるだけではなく、助け助けられ、与え与えられという循環が生じるわけです。それは価値観の変動であり、それに伴いわずかにこびりついていた自分をこんなふうに生んだ母親に対する不信が払拭され、感謝が生まれ、失踪した母を探すというモチベーションや理由にも変化が生じていく。
成長、とはまた少し違うのかな。人間的な躍進を遂げた桜のさらなる活躍は、このまま【アップルジャック】シリーズへと繋がっていくのでしょうか。何れにしても、あの桜たちが絶体絶命に陥ったシーンは思わずこっちも貰い泣きしてしまいそうなほど感動してしまった。あざとい、あざといし見え見えの展開なんだが、やっぱりああいうの弱いよ、うん。

龍造爺さんは活躍の場を取られて不満たらたらでしたが、あんな雑魚どうでもいいじゃないですか。あーた、のちのち【アップルジャック2】でとてつもない超人相手に、凄まじい活躍を見せるんですからw

さて、次の巻はこんどこそ【アップルジャック】の新作か、あるいはこの【Wizard】の続きか。それとも全く新たな作品か。どれでも、心清々しく気持ちが温かくなれるので、首を長くして待ちたいところ。

小竹清彦作品

Wizard Daily Fairy Tale4   

Wizard―Daily Fairy Tale (幻狼ファンタジアノベルス)

【Wizard Daily Fairy Tale】 小竹清彦/緋原コウ 幻狼ファンタジアノベルス

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【アップルジャック】の第二巻で登場した電脳の魔術師【ウィザード】こと桜と、その相棒で飄々とした掴みどころのない青年神無木が主人公のスピンオフ作品。
てっきりアップルジャックの続編が出るのかと思ってたら、まさかの桜たちが主人公のお話とは。元々この二人についてはそれほど背景や過去などの情報はあまり出ていなかったので、二人の普段の活動から馴れ初めに到るまでみっちりと描いている本作は美味しいといえば美味しい話だったのだけれど、シトロンたちは登場しないのがちと残念。
本巻の桜は十一歳ということで、確か【アップルジャック】のときはもう少し年齢上になってたと思うので、時系列的には前になるのかな。どこか無国籍な雰囲気だった【アップルジャック】と比べて、本作は程良く日本という国を意識できる舞台環境になっていて、意外なほど前作とは空気感が異なっている。ド派手な銃撃戦や殺人技が飛び交うアクション過多の【アップルジャック】と違って、わりとこっちはその辺抑制されてますしね。
が、あの洒脱で軽妙な独特のノリはまったくの不変。ユーモアたっぷりで情熱的な物語は相も変わらず読んでいて痛快の一言。しかし、それ以上にこれは厚い友情の物語であるのです。
幼い頃から浮世離れした聡明さで、同世代の子供とは相入れず孤独な世界に閉じこもっていた桜。そんな彼女を広大なネットの世界に導いたのが、彼女の両親の友人であった神無木だった。桜はネットを通じて、人と繋がることのかけがえの無さを知り、やがてそれは親族や身内の温かい愛情を踏まえてリアルへも広がっていき、人の温もりを知った彼女は、縁あって出会う人々と友情を深めていく。
ネットというツールは、まだ十一歳という子供に過ぎない彼女に、狭いコミュニティーに囚われない、世代や業種、国籍をも超えた友人たちとの出会いを導いてくれるのだ。それは、若いゲームデザイナーのカップルだったり、ネットの黎明期から名をはせる電脳の魔術師であったり、あるいは異国の地で身を寄せ合って生きてきた様々な国籍の子どもたちであったり。そして桜はその優しさと義侠心を胸に、縁あって知り合うことになった人たちの危急に全力で手を差し伸べていくのである。痛みを知り、喪失を得て、排他を体験し、孤独に打ちのめされたその先で、少女は一人の青年が差し伸べてくてた手を取ることで、生きることがとても楽しいことなのだと、素敵で素晴らしい事なのだという事実を知ったのでした。だからこそ、同じように彼女は手を差しのべるのです。世界はこんなにも楽しいものなんだと、知ってもらうために、共有するために。
ただ、一緒に笑って楽しく過ごすために。

ここで描かれている世界は楽園なんかではありません。理不尽がまかり通り、非道が横行し、悪意が蔓延る当たり前の現実世界。登場人物の多くが、痛々しいほどの傷跡を内に秘めています。でも、そんなものに屈せずに、手を取り合うことで助けあうことで当たり前に笑って生を謳歌出来る優しい世界が此処には描かれているのです。
クライマックスで、桜がピンチに陥ったとき、かつて彼女に助けられ、彼女と友達になった多くの人達が彼女を助けるために今度は逆に手を差し伸べてくれました。情けは人の為ならず。いや、そんな言葉で括らなくても、ただ友達のために、それだけで充分なのかもしれません。生命の賛歌を謳うには。

どこかおとぎ話にも似た、素敵で洒脱なおはなしでした。
実はこのシリーズ、いきなり二冊同時刊行してるんですよね。まだもう一冊は読んでいないので、なるべく早く読みたいのう。あと、出来ればシトロンも登場する話を読みたいのでした。

小竹清彦作品感想

魔王をプロデュース!?3   

魔王をプロデュース!? (幻狼ファンタジアノベルス)

【魔王をプロデュース!?】 甲田由/結川カズノ 幻狼ファンタジアノベルス

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魔王の影武者をすることになった気弱な中年メィズは、娘のベルに叱咤されながら奮闘する! 第一回幻狼大賞優秀賞受賞作!
魔王と言ってもこの世界観の場合、人類と敵対する絶対王じゃなくて、一地方の魔人族の王様だから「魔王」と呼ばれてるだけで、しかもこれは王様というよりも戦国時代の地方大名といった規模で考えた方が良さそうだな。他にも獣人の王なら獣王、人間でも征服王とかとにかく様々な王様が各地で跋扈し、覇権を争っているという情勢。その中に免許制勇者制度なるものが介在し、ちゃんとしたルールの元に襲撃を掛けてくるものだから、ゲーム的な世界観のか戦記的な話なのかややも混乱してしまうのですが、ここは影武者となったヘタレの役立たずお父さんと、良く出来た娘さん・ベルと魔王の側近四天王のアットホームな家族ものとして一貫して捉えれば分かりやすくなるでしょう。
うん、これは面白かった。ベルさん最強とか、ベルさん無双とか言われてるのに恐ろしく納得。カカア天下のベルにはお父さんも四天王も頭があがらない的な最強じゃなくて、いやそういう要素もたっぷりの肝っ玉才女なんですが、むしろそんな内助の功すらもベルさんの最強伝説の一角に過ぎないという所の、この女性の恐ろしさが垣間見えるという。
信長の野望的に言うと、ベルさんって殆ど能力値オール90オーバーじゃね?
むしろこの人を頭に戴いて戦ってしまった方が、世界征服は速そうな気がしますw まあ、弱虫お父さんも此処ぞというときは引かず逃げず退かず、という根性見せてくれたので見直しましたけど、最初の頃は本気でヘタレで四天王の皆さんじゃないけど、これはアカンだろうと思わされたんですよね。深窓の令嬢とか箱入り娘じゃないんだから、その性格はもうちょっと何とかしないと(苦笑
社会人としてやってけないレベルですぞ、あれ。だからこそ、無職でひーひー言ってたんでしょうけど。よくぞまあ、このお父さんからあの娘が生まれたという不思議。お母さんからの遺伝なのか。能力の凄まじさと裏腹のあの温厚な性格は、父親譲りなのでしょうが。

とにかく、最初はガラじゃない魔王の影武者役に毎夜涙にくれる父親を励まし、世界でも有数の優良学院の生徒会長としての経験と、節約主婦としてのスキルを生かした助言なんかで、あくまで後ろからみんなの支援をしていたベルさんが、中盤以降で事態が急変しだして追い詰められた瞬間、それまでスカートの下に隠していた本気を出し始め、「ベルさんって何者ーーっ!?」と四天王たちに悲鳴をあげさせ初めてからの大盛り上がりは楽しかったです。序盤のハイスペックさだけでも充分最強キャラなのに、そこからさらに底上げだもんなあ、凄い凄い(笑
四天王の一人、フレクさんと結構雰囲気良くなってたので、そのまま恋愛モードまで行ってくれればもっと楽しいんですけどねえ。今のところ、口うるさい執事さんに逆戻りしてしまってるみたいですが。というか、あれって過保護というか、大事な人なので手元で囲っておきたいという本心が滲みだしてるっぽいない、フレクw

翼の帰る処 3.歌われぬ約束(上)4   

翼の帰る処(ところ)〈3(上)〉歌われぬ約束 (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-5)

【翼の帰る処 3.歌われぬ約束(上)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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 bk1

一歩一歩だけれど、ヤエトと皇女の関係は変転を続けている。先の巻では、皇女が皇族として、君主として、一人の人間としてヤエトを越えて、ヤエトを必要としなくなり、大きく羽ばたいていく予感を純粋に喜び、それを望むかのような素振りを見せていたけれど、あれから少し経って、またヤエトの心情も少し変化をみているんですよね。それが果たして後退なのか前進なのかわからないけれど、ヤエトが再び皇女の元からしばらく離れて過ごすことになったとき、ヤエトはどこか切ないような気持ちに苛まれる。彼がここで抱いている漠然とした不安感は、皇女を置いていくことへの不安感とは少し違ってるんですよね。いろいろ自分で理由をひねり出して、何故なのかを考察しているけれど、ほんとこれ単純な話で、ヤエト自身が皇女と離れたくない、と思ってるんですよね。皇位継承争いやら領土問題などの対処にヤエト不在という政治的な理屈抜きに。
これまでだって、長期間皇女から離れることはあったはずなのに。
このシーンにおけるヤエトの皇女への接し方というのは、敬愛する君主に対するものでも、前巻の妹に対するような気安い親密なそれとも違っている気がしたんですよね。温かいというよりも、柔らかいというよりも、優しいというよりも、自分の宝物を扱うような感じで。
大切に大切に、でも自分のものだからちょっと乱暴に自由に扱うような、そんな感じで。
そう、もうヤエトにとって皇女は遠い意味でも近しい意味でも、他人ではないのです。
かけがえのない私の皇女。
下から崇めるのでも、離れたところから見守るのでもなく、自分の腕の中に抱きしめるように。
皇女への無礼な言葉を吐いた踏野太守の親族への峻烈な対応からも、ヤエトの皇女との距離感の変化が伺える。ここでの彼の対応というのは政治的な対処というよりも、むしろ感情的な怒りによるものだった。思考も冷静で対応の仕方も理路整然としたものだったけれど、その実感情の方ははらわた煮えくり返ってたもんなあ。元々機嫌の良い方が珍しいヤエトだけれど、あれだけ怒っていたヤエトを見るのは珍しい。彼が怒るケースは、確かに皇女が絡むシーンが多いけれど、皇女を思って感情を揺らすことはあっても、あんな風に自分自身が我慢できなくなって、というのは初めてだったんじゃないだろうか。
相変わらず隠居したい隠居したいと公言してはばからないけど、本音ではもう、いや隠居したがっているのは本心だろうけれど、もう皇女を置き去りにして隠居しようとは思っていないだろう。それこそ、皇女がヤエトを必要としないだけの安全と強い立場を手に入れたとしても。
なにしろ、アレだけ忌避していた約束を、最後に皇女と交わしたのだから。

ジェイサルドの鬼神との契約や預言者との会談を経て、古の神話にある魔物の復活が確かなものだと確信したヤエト。皇女たちとその驚異にどう対処するべきか頭を悩ませながら、現実の政治状況も混沌を深めていく。皇位争いは熾烈さを増し、北領では先に紛争の起こった北方との和平交渉の使者が訪れるという事態が。
先日は西の暑い砂漠の地域に出張って、今度は北領よりもさらに北の北方に赴くときた。相変わらず病弱で、いつものように死にかけているヤエトが、結果的に見るとこうも北に西にと帝国領内を広範囲に移動しまくっている、というのは凄いというか本人もしんどいし不本意だろうなあ、と純粋に同情が湧いてくる(苦笑
挙句に、先代黒狼公の妻で皇族の中でも屈指のクセモノである皇妹から求婚されるときたw 虚弱体質だけでも死にそうなのに、心労でも死ぬんじゃないかと心配になってくるけど、愚痴ばっかりのわりに精神的にはタフなんだよなあ、ヤエトはww
そして、皇妹の求婚や皇帝陛下のちょっかいは、どうもでも皇女との関係を発展させるための地ならし的フラグにしか見えないw

シリーズ感想

アップルジャック 2.―Pousse-cafe― 5   

アップルジャック〈2〉Pousse‐caf´e (幻狼ファンタジアノベルス)

【アップルジャック 2.―Pousse-cafe―】 小竹清彦/mebae(幻狼ファンタジアノベルス)

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アップルジャックによって救われ、復讐を果たしたシトロン。彼が去ってしまった後、極悪非道な殺人鬼達を狩る仕事に意義を見出し、ストレガとスプリッツァーと共に行動を開始する。事後処理の過程で知り合った、シトロンと同い年の電脳少女・桜やクールで快活な大介に協力を仰ぎ、新たな標的に狙いをつけた一同。「プース・カフェ」と名乗る集団に対する調査は順調に進んだが、実行に移す段階で思わぬ事態に遭遇する。


迷いや苦悩にさ迷う段階をとうに済ませ、「殺人鬼を殺す殺人鬼」としての在り方に到達し、既に人間として完成されていたアップルジャック。その大樹のように揺るぎなく、安らぎを与えてくれる抱擁感、乾いた心に微笑みをもたらしてくれる優しいぬくもり、彼の備え持つ巨大な器は、少女シトロンを闇の底からすくい上げ、復讐と虚無に苛まれていたストレガとスプリッツァーに生きる歓びを思い出させ、彼らを家族のようにまとめ導いていたと言える。
だが、彼は三人に未来を遺し、去っていってしまった。

完成されたアップルジャックが牽引する第一巻は、筆者があとがきで語っているように一本の映画のようによどみの無い脚本で、クライマックスまで一気に駆け抜けて行く。
だが、一巻の主人公であったアップルジャックがああいう形で退場し、代わってシトロンが主人公として物語を担うことになるこの二巻は、一巻とはまただいぶ様相を異にしている印象だった。
アップルジャックが遺してくれた、人間としての良心と殺人衝動に折り合いをつけるために、「殺人鬼を狩る殺人鬼」としての生き方を選んだ少女シトロンは、だが未だに自分が過去に犯した罪に苦しみ、逃れられない殺人鬼としての自分の血塗られた在り方に葛藤を繰り返し、「殺人鬼を狩る殺人鬼」という生き方すらストレガやスプリッツァーたちに助けて貰わなければ実行もできないという自身の無力さに苦悩する日々だ。
アップルジャックのように完成されていないシトロンは、それゆえに孤独ではいられない。そして、この生真面目で健気で自分を愛してくれる人たちに献身的なまでに、無防備なまでに懸命に愛情を返そうとするこの少女を、それ故に仲間たちは目に入れても痛くないとばかりに愛し可愛がり慈しみ身も心も捧げ尽くして、守ろうとするのだ。それこそ、彼女を守ることが生き甲斐であり、生きる意味だと高らかに謳いながら。
非常に強固な絆に結ばれながらも、どこか皆が独立独歩、一匹狼たちがシトロンの未来を切り開くため、という目的のために一致団結して轡を並べた感じだった一巻と少し違って、二巻での彼らは共に生きてくれるぬくもりを求めたシトロンに応じて、より親密で距離感の近い本物の家族のような関係へと進展しているようだった。
ここに、シトロンと同世代の少女である桜と、陽気で惚けた神無木大介が加わることで、より賑やかに、より明るい雰囲気が作品全体へと広がっていたような気がする。優しくも妖艶な女の横顔の奥深い部分で他人と壁を隔てるようだったストレガは、前は見なかった無邪気さや少女めいた可憐さをかいま見せ、今やシトロンの本当の姉のようにすら見えるし、その陽気な振る舞いとは裏腹に虚無の影が根深く蔓延り死の匂いをプンプンさせていたスプリッツァーは、大介との惚けたやり取りからも伺えるように、今はもう不意にいなくなってしまいそうな儚さは消え失せ、頼もしいばかりの、やや野卑だけれど、姫君の守護騎士さまだ。

今回の相手が、コチラと同じくチームだというのも仲間・家族という面を強く印象づけたのかもしれない。
芸術家にして殺人鬼である6人の男女。国籍も性別もバラバラの彼らの名前は「プース・カフェ」。それぞれに特異な才能を有した殺人鬼たちとの対決は、多対多の集団戦、それも異能バトルへと推移して行く。
相手にも個性たっぷりの人材が揃ったことで、みんなにこれでもかと見せ場が用意されることになるのである。ナイフ使いとして、そしてアップルジャック譲りの司令塔としての才能を開花させるシトロンの活躍も見所なんですが、今回一番度肝を抜かれたのが、スプリッツァーの尋常でない強さ。前回は登場時がシトロンを狙う殺し屋としての立場であり、最終決戦でもド派手な銃撃戦の渦中に置かれていてそこまで目立ってなかったんですが、彼の単独での戦闘能力が発揮される機会が存分におかれた今回については、その尋常でない強さが惜しげも無く披露されるのである。
ぶっちゃけ、どうやってこんなの相手にシトロンが生き残れたのかがふしぎでしょうがないww
一巻では、あっ、こいつ途中でシトロンを庇って死にそう、みたいな気配をプンプン匂わせていた脇役に過ぎなかったのに、もう強いの何の、カッコイイの何の。なに、このスタイリッシュ/アクションの権化は(笑
まあ、一番いいところを持ってったのは、ジャック・ポッドの旦那ですけどね。絶対、この人また出てくれると思ってた。期待通りに出てきてくれたときは、思わず小躍り。このお約束を破らないところは、好きだわww
姫を見守る魔女であるはずのストレガが、むしろシトロンよりもお姫様なヒロインになってしまってたのは、笑うやら可愛いやらで。まさかストレガを可愛らしいと思う日が来るとは(笑
表紙絵のストレガはちょっと可憐すぎるだろうと最初は思ってたけれど、今回の話からしたらこのくらい若々しいのが正解だったのかも。

洒脱でスタイリッシュ、スピーディーでユーモアたっぷりの、イカレてイカしたこのセンスは変わらないどころかさらに突き抜け洗練され、映画的だった一巻よりも二巻はエンターテイメント活劇小説としてより発展してきたんじゃないでしょうか。
愉快にして痛快、素直にこの酔っ払ったようなセンスを舌鼓を打って鯨飲できる人なら、胸のすくような思いを感じながら楽しめるんじゃないでしょうか。
私は大好きだww

1巻感想

カルテット それが彼らの音楽だった4   

カルテット―それが彼らの音楽だった (幻狼ファンタジアノベルス)

【カルテット それが彼らの音楽だった】 小竹清彦/藤ちょこ 幻狼ファンタジアノベルス

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【アップルジャック】にて小説家デビューした劇作家・小竹清彦氏の第二弾小説は、あるカルテットの人生の旅路を振り返る物語。
作者の人が元々演劇畑で映画の脚本も手がけている、という印象が強いからかも知れないけれど、話の持って行き方が一風独特。セリフ回しも小説のそれとは少し違っていて、それが為にか小説を読んでいると言うよりも、どこか舞台演劇や映画を観客席から見ているような気分にさせられる。

不覚にも、少々涙ぐんでしまった。

物語は長らくカルテットを組んできたメンバーの内の一人が亡くなり、彼の遺した楽譜を残された三人が見つけるところから始まる。
主に男たちの回想によって描かれていく、人生という名の旅路のロードストーリー。
それはスタイリッシュであり、ハートフルである。情熱的でありながら飄々と垢抜けていて、個性的な四人組の織りなす友情は、ただただ温かい。
先に逝ってしまった男――ギタリストは自由奔放で派手で自信家だったが、何よりも仲間を思い、仲間のために生きていた。残されたベーシスト・スモーキー。ピアニスト・教授。ドラマー・教授はそれぞれの彼との思い出を想起し、彼がどれほど掛け替えのない友人であり、自分たちが陥った人生における最大の危機に、彼がどのように手を差し伸べてくれたかを語り合う。
かつて自分の過剰な自意識とミスによって、カルテットの未来を閉ざしかけたスモーキー。
自分の生きる道を指し示し、人生の師そのものであった母親の急逝に自失しかけた教授。
愛する妻を失い、残された生まれたばかりの娘が聴覚障害である事を知り絶望するセーフ。
そんな、先々の未来が閉ざされようとしていたとき、仲間が苦しんでいながら何も出来ず無力感にうちひしがれていたとき、あの剽げた男が如何に振舞ったか。
今はもういない男を懐かしみ、まだ各々の内にだけ残されていたあの男の思い出を共有し、彼がどれほど自分たちに取って掛け替えのない存在だったかを確かめ合う。そんな儀式はやがて、さらなる過去、彼らがまだ音楽と知りあっていなかった頃へと立ち戻り、さらには夢破れて四人がバラバラとなり、やがて音楽と巡り合い奇跡のように再び四人が集うまでの、ひとりひとりの旅路の話になり、そしてセーフの娘、サキとギタリストとの思い出に至ることで、物語は過去から未来へと繋がっていく。
そうして、思い出によって先に逝った親友が自分たちに抱いていただろう友情を改めて確認しあった彼らは、ギタリストが遺した楽譜の意味を理解し、それを元に思い出の中の懐かしい人々を呼び集め、逝ってしまったギタリストを賑やかに送り出し、彼が心残りないように残された三人が新たに旅立つための音楽会を開くのだった。

死別という別れは悲しく寂しいものだけれど、それを新たな旅立ちと受け止めるならば、涙を流しながらも微笑んで送り出せる事ほど、彼我に取って幸せなことはないのだろう。
かつてカルテットだったピアノ・トリオが紡ぎ出す、彼の遺した曲によって、人々が思い起こす過去の軌跡と、これからの人生を照らし出してくれる温かい光。
すべてが繋がっていく。先へと続いていく。
想いは、残された人々の中に永遠に宿り続ける。

嗚呼、素晴らしき哉人生。

グリモア 俺の脳内彼女日記4   

グリモア―俺の脳内彼女日記 (幻狼ファンタジアノベルス)

【グリモア 俺の脳内彼女日記】 卑影ムラサキwith企画屋/得能正太郎 幻狼ファンタジアノベルス

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夜逃した両親に取り残され、幼馴染の恋人にフラれ、ついでにチンピラに絡まれ、まさに不幸のどん底にいた俺=小笠原勇雄。
そんな俺の前に現れたコスプレ少女=星奈。星奈は、俺がこっそり書いていた妄想ノートの中で設定した「脳内彼女」そのまんまだった!
だが、星奈は俺に言う。
「キミはボクが想像した架空のキャラなんだよ」
卑影ムラサキwith企画屋が描く、青春ラブコメ×本格SFの新境地!!
サイバーパンクの傑作である【BALDR FORCE】や【BALDR SKY】のシナリオライターが作者ということで、両作品のファンとしては押さえておかにゃあ、と手にした本作。ただ、実のところそれほど期待はしていなかったんですよね。あらすじにあるように、ヒロインはいかにもオタク少年の妄想の中から具現化したような銀髪でオッドアイのボクッ娘少女。
カオスヘッドのような例外はあるけど、個人的にはこういう脳内妄想やオタクのコンプレックスと向きあうようなオタクの内面に向くような話は好みじゃないんですよね。以前も、エロゲのシナリオライターがこの類の作品を出して、評判は非常に高かったのだけれど、私はあんまり馴染めなかった、というのがあったので。

ところがどうしてどうして。
事前に予想やは想像で思い浮かべていたシナリオ構成が、話が進んで徐々に事実関係が明らかになっていくにつれて、あれ? あれれ? と確信に疑念が浮かび上がってきたところで、一気に全体を覆い隠していた壁紙が引っペがされ、入り組み錯綜しまくっているけれど精緻なくらいに綿密に組み上げられた真相が明らかになり、もう呆気。
それでも、この錯綜っぷりに理解が及んでいなかったのだけれど、後半の畳み掛けるような展開は、同時にこの入り組んだ状況を実にわかりやく紐解いていく行程にもなっていて、怒涛の展開に翻弄されながらも乱舞するクエスチョンマークは気持ちいほどすっきりと解消されていく。
これは、快感だわ。
いやあ、これは様々な伏線や設定が仕込まれ、巨大なグランドデザインに基づいて全体像を手掛けて、それを個々のヒロインのシナリオに落とし込んでいき、全部プレイし終えたときに全体像が浮かび上がる構造を構築するという、長編のノベルゲームのシナリオライターの面目躍如ともいうべき、職人芸というべきか芸術的というべきか、いずれにしてもお見事な構成力だわ。
さすがにノベルゲームと違ってページ制限があるせいか、ある程度急ぎ足だったり詰めが甘い部分があるのかもしれないけれど、自分は殆ど気にならなかったなあ。
キャラクターについても、それほど突き詰めてはいない様子。キャラの魅力云々ではなく、シナリオで勝負するタイプの作品だからか。
あらすじからくる印象や、冒頭の始まり方からすると、これはまるで想像出来ない終わり方で、思わずあいやー!!と喝采をあげてしまった。
すごいすごい。んでもって、面白かったーー♪

アップルジャック5   

アップルジャック (幻狼ファンタジアノベルス)

【アップルジャック】 小竹清彦/mebae  幻狼ファンタジアノベルス

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これはまた、洒脱なお話だなあ。作者は元々小説家ではなく、映画や演劇に携わってきた劇作家の流れをくむ人で、活字の小説を書くのはこの作品が初めてだそうで、確かにこのスピーディーな展開とキャラたちの軽妙な掛け合いからは、生粋の小説家にはない独特の息吹が感じられる。あとがきでこの作品は一本の映画をイメージして創ったのだと触れられているけど、映画的と感じられる部分も多いけど、それよりも自分はより舞台演劇的なイメージを喚起させられた。メインとなる舞台が、主人公アップルジャックの自宅であるマンションの一室とアップルジャックたちが夜な夜な集うことになるバー、という限定された空間だからだろうか。実際はシーンは各所に飛び、派手なアクションシーンもふんだんに盛り込まれているのだけれど、この作品のスタイリッシュな雰囲気を強く印象付けているのは、やはりアップルジャックの部屋での少女との共同生活と(なんとなく朝のイメージが強い)、夜のバーでの好きな酒を傾けながらの気の置けない友人たちとのウィットに富んだ会話という所にあるので、会話の軽快なテンポや大仰ながらスマートな言い回しも相まって、非常によく出来た舞台を観客席から眺めている気分になるのだ。
なるほど、これは普通のライトノベルレーベルから出るよりも、確かにこの新書形式の幻狼ファンタジアノベルスにピッタリのスタイリッシュな娯楽小説である。
殺人鬼を殺して回る殺人鬼 アップルジャック。家族を殺され殺し屋に命を狙われる逃亡の過程で殺人衝動に目覚めてしまった少女シトロン。二人の出会いは、やがて過去に囚われた美しく復讐鬼であるストレガと、陽気な振る舞いの内に現在への虚無と絶望を抱えた殺し屋スプリッツァーを巻き込み、各々内に怪物を秘めた現代の怪人たちは少女シトロンの未来を勝ち取るための戦いに挑む事になる。

アップルジャックをはじめとして、この物語に登場するキャラクターはシトロンを含めて明らかに人間として破綻した怪物的なモノをその内側に秘めているにも関わらず、普通の人間以上に人間的で魅力的な人たちなんですよね。スプリッツァー曰く、良く出来たような冗談のような偶然によって出会った四人。最初は何も知らずに友諠を交わした彼らの間には、実のところ驚くべき無視し得ない因縁が横たわっていたのだけれど、彼らは本来なら憎悪と憤怒によって命を奪いあわねばならないような因縁を脇に置き、バーのカウンターで好きな酒に興じながら歓談に明け暮れた、短くも楽しい時間とそこから感じとった相手の人間的な魅力を信じ、またアップルジャックのもとに転がり込んだ少女を脅かす絶望にともに立ち向かう事で、それぞれが喪っていたものを取り戻していく。そう、少女の未来を取り戻そうとすることで、彼ら自身が喪っていた未来もまた、取り戻されていくのだ。
彼ら四人の関係はとても素敵で温かく愛情にあふれている。スプリッツァーは冗談交じりにこの関係を家族のようだと表現し、四人は口々にそれぞれが家族の何に当てはめるのかを指摘しあって笑いあっているが、自分としては彼らの関係が素敵に思えるのは本当の家族のようだから、ではないと思う。あくまで他人同士の集まりであり、疑似家族にすらならない四人だからこそ、その親愛に満ちた距離感が、シトロンを囲むアップルジャックの、ストレガの、スプリッツァーの温かい眼差しが、彼女を慈しむ抱擁感がこの上なく心地よく感じるのだろう。

これは、人の道を外れた怪物たちの、愛に満ちた物語。
彼らの歩き出す未来に、良い酒と存分の笑顔と、暖かな闇と健やかな太陽の光の降り注がん事を願う。

翼の帰る処 2.鏡の中の空(下)5   

翼の帰る処 2下 (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-4)

【翼の帰る処 2.鏡の中の空(下)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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さわりだけ、とページ開いたのが運の尽き。気が付いたら、全部読んでたよ! 運じゃなくて、どう考えても自業自得だな。面白いと分かっているものを開いて、さわりで我慢できるはずがないと理解しているのに。それでも、さわりだけと言い訳をして開いてしまうのは、目前にモノがありながらそれを無視することが叶わないというだけのこと。
なんだ、単純に読まずに置いておく事が我慢できなかったというだけのことか。

何の因果か、単なる下級官吏だったヤエトが四代大公の一角であり、空席となっていた黒狼公の座に就く羽目になったのが上巻のお話。
国に引き上げとなった北領の相として、主の皇女を支える傍ら、自らも黒狼公の領地を治める事になったわけだけど、前回の最後で皇女が転がり込んできたんですよね。そのお陰で、このシリーズが始まって初めてじゃないかというくらいに、ヤエトと皇女が一緒に行動することに。事実、一巻まるまる、ほぼ行動を共にしてたのは今回が初めてだったはず。それまではなんだかんだとけっこう別行動が多かったしね。それに、まだ北領に居た最初の頃は、皇女とは本当に打ち解けた仲じゃなかったしね。これだけ親密な関係になったあとでは、はじめてだったはず。
おかげで、これまででも十分魅力的だった皇女様の魅力をさらに弥増すはめに。
ヤエトと皇女、それにルーギンを加えた三人組。この三人、ほんとに仲良いんですよね。これまで気づかなかったのは、この三人がプライベートな空間で一堂に会して顔を付きつけ合ってガヤガヤ言い合うシチュエーションが殆どなかったからだと思うんだけど、とにかく仲がいい。ルーギンが皇女をどう思ってるのか、微妙に分からないところがあったんで、いきなりチビ呼ばわりしだしたときは吹いたなあ。まさか、ここまで本気で「可愛がってる」とは思わなかった。
ヤエトもヤエトで、二人や三人で砕けた調子で話していると、皇女に対して主君や師として接するよりも、一人の女の子として扱うような素振りを見せる場合が出てきてるんですよね。
こうなってくると、この三人。なんだか兄妹のようにも見えてくる。それこそ、皇女の本当の兄弟たちよりもよほど。
随分、末妹に甘いお兄ちゃんたちですけど。
ただこの皇女さまは、女の子として、妹分として以上に、やはり皇女として、主君としての大きな器こそが魅力的なんですよね。
ルーギンにしてもヤエトにしても、彼女の口から放たれる言葉に我知らず己が内に押し込めていた真意を掬いあげられ、曇りかけた目を開かされること度々。また、倦んでいた心を晴れやかにし、頑なに凝り固まろうとしていた気持ちを解きほぐしてくれる事もあり、皇女がヤエトたちによって支え導かれる存在でありながら、同時にヤエトたちを包み込み力を湧き立たせてくれる大きな存在として立脚してるんですよね。それをして、ヤエトはいずれ彼女が独り立ちし自分など必要としなくなる、なんて思ってるみたいですけど……まったく、わかってないよなあ、この人は。彼女が彼女である限り、ヤエトを必要としなくなるなんて事、あるはずがないというのに。
まあ隠居したいそろそろ余生をゆっくり過ごしたい、死んでもいい頃だ、などと嘯いているヤエト師ですけど、実際のところまだ三十代の働き盛り。若く、まだまだ人生の機微について学ばねばならない歳の頃。ようやっと、皇女は遠くに離しておくのではなく、目の届く範囲に置いておくのが正解だ、と気づいたように、自分の在り様、他人との関わり方の妙についても、これから学んでいくのでしょう。

翼の帰る処 2.鏡の中の空(上)5   

翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)

【翼の帰る処 2.鏡の中の空(上)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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やっぱり面白いなあ、これ。まったく、べらぼうに面白い。
隠居して余生を過ごしてとっとと死んでしまうのが当面の夢です、希望です、と公然と口走り、その並外れた虚弱体質で事あるごとに熱を出してぶっ倒れる主人公のヤエト様。
その自らの生き死ににも頓着しない生き様から派閥争いに巻き込まれて、北領という帝国でも辺境の僻地に左遷されたのが運の尽き。左遷だ左遷だと喜んでいられたのも最初のうちだけ。ただの下級官吏だったのが、尚書官という文官の責任者に祭り上げられ早々に北領の未開人たちに振り回され、北領の太守として派遣されてきた皇女に見初められて、副官に任命されて、一心不乱に働かされる羽目に。
まー、それだけでも隠居から遠ざかり、ご愁傷さまというところだったのに、今回北領が国に格上げされたのをきっかけに、皇女からは相――首相・宰相的役職と考えていいだろう――に任命された挙句に、本国では貴族として召し上げられることに。その任命された貴族の位が、またえらいことになってしまい……と、とっとと隠居したいはずの男の転落人生の物語w
傍から見ると、ものすごい成り上がり、立身出世、栄達なんですよね、これ。にも関わらず、本人的にはまさに転落人生(笑
この一冊の中で、今回ヤエトは一体何回、面倒くさい、もういやだ、逃げ出したい、隠居したい、というかいっそ死にたい。死んでしまいたい。と内心で連呼してたか。数えるのも馬鹿らしいくらい、そればっかり考えてるんだから。
でも、自業自得なんですよね。この人、客観的にみるととてつもなく有能なんですもん。面倒くさいといいつつ、しっかり仕事こなしているし。本人自覚ないですけど、ルーギンがその自覚のなさに発狂しながら指摘しているように、まさにこの人一人の存在が北領を支え、後継者争いに紛糾しつつある宮廷闘争の中で皇女を守っていると言っても過言ではないくらい。彼がいなくなれば、それだけですべてが崩壊し、破綻してしまうくらいには、彼は重要人物になってしまっている。
実際、ヤエトって面倒くさいといいつつ、仕事に関してはどれほど立場があがり、変わっても、そりゃ難題には頭を悩ませますけど、戸惑う風もなくテキパキとこなしていくんですもん。はっきり言って、さすがに皇帝陛下から爵位を賜ったあとなんか、そんな位を頂いてはたしてやっていけるのかいな、と思ってたら、案外困った風もなくこなしちゃってるんですよね。これには正直驚いた。物怖じしない人だとは思っていたけれど、まさかこれほど適性を見せるとは。私も、皇帝が彼にあの位を与えたのはけっこう嫌がらせの向きもあったように思うけれど、ただそれだけではなかったのかもしれない、と彼の働きぶりを見るに思いましたね。
この人、ほんと面倒くさいとは言っても、無理ですとかできません、とは思う事すらしないんだからなあ。
だから、そんな手を抜かずに真面目に働いて有能さを知らしめるから、夢である隠居から遠ざかってしまうんだって(苦笑

さて、問題だった帝位の後継者争いは、各皇子たちの背景や人となり、現状の政治的立場などが詳しく情報を出してきてくれたお陰で、かなり現在の状況がクリアになってきた。なるほど、皇女殿下はかなり面倒くさい立場にあるんだな。それでいて、本人にはその危機意識がかなり薄いと。彼女の善良で真っすぐな人となりは、こうした状況では決してプラスには働かないということなんですね。それを補うのはヤエトやルーギンの役目でもあるのですけど、ヤエトは切れる割に自分の身の安全に対しては皇女殿下並みに無頓着ですし、ヤエトってわりと皇女のこと甘やかしてるんですよね。その意味では、ルーギンはかなり苦労しているのかも。
そう、今回読んでて改めて思ったけど、ヤエトって皇女に対してかなり甘いところがあるんですよね。普段は厳しく現実的な物言いで皇女を指導しているヤエトなんですけど、第三皇子の裏切りについて皇女の心が傷つくのを慮って言を控えたり、弱った皇女に対してスッっと甘い言葉をささやいて労わったりと、この男、時々、そう、本当に肝心な時に、無自覚にけっこう皇女の内面にズケズケ踏み込んで他人が触るべきでない部分まで、撫でていくような所があるんですよね。あの場面で名前呼ぶとか、反則でしょうに。ほんと、ヤエトはまるで自分が皇女をどのように扱ってるかわかってないんですけど。ただの臣下がするような事じゃない事をしてる自覚がまるでない。
そういうことをするから、段々と皇女が、自分を臣下や師という存在以上に見始めていることに、まったく気づいていないわけです。
まわりは、みんなわかってるのに、ねえ(苦笑
皇女本人にどれだけ自覚があるか、それはわからないけれど、今回の最後のシーンで、ああいう状態になった時にヤエトにだけは見られたくない、なんて口走っていたのを見ると、どうにもこうにも…ねえ?
それに、ルーギンはじめ、周りはみんな、そうなることを望んでいるみたいだし。幸か不幸か偶然か作為の結果か、そうした展開が決して不可能ではない立場に、ヤエトは立っちゃってるわけですしねえ。
はてさて、どうなることやら。

いやさ、この最後の展開はかなりニヤニヤさせられますけど、ルーギン兄さんはもうグッドジョブとしか言いようがない。


一方で存在感を増していたのが、ジェイサルド御大。何を考えているのかわからない不気味な所のあった人ですが、ようやくここで今の彼の目的が明らかに。こうなってくると、どうやら心底ヤエトに味方してくれるみたいだし、この上なく頼もしい存在だわなあ。
あと、シロバが鳥のくせになんかヤエトのお袋さんみたいなのが笑った笑った。

ルナ・シューター 24   

ルナ・シューター〈2〉 (幻狼ファンタジアノベルス)

【ルナ・シューター 2】 林譲治/西野幸治 幻狼ファンタジアノベルス

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どちらかというと、月面と言う特殊環境での戦闘の説明に終始していた感のある第一巻よりも、大きく話が動いてきた感じ。
しかし、これ読んでたら……女の人って怖いなあ(苦笑
本来なら、人類とはまったく別種の異星人の侵攻端末であるらしいラミアの行動原理をどう読みとっていくか、というところにSFとしては焦点を当てていきたいところなんだろうけれど、むしろ此処で描かれていくのは閉鎖空間、もしくは戦場における人間関係の軋轢なわけで。まったくの異文明の産物であるラミアを理解する前に、まずもって人間同士で理解し合うこと自体に、人類は未だ成功していないんじゃないだろうか。そんな自分たちの事すらままならない人類が、果たして何を以って異星人の機械端末の行動原理を理解するというのか。
ジュディの今回の行動も、もしかしたら彼女の主体的な視点からすれば何の矛盾もない行動だったのかもしれないですね。ジュディの素顔にしても、サキの過去の体験であった民兵のグロテスクな二面性にしても、破綻しているとはいえ人間の本性にも思えるわけで、怖いっちゃ怖いんだよなあ。でも、怖いからと言ってそれらを排除できるのは、それこそ余裕のある環境でのみ行える悠長なお遊戯(というのは複雑だが)なんだろうかねえ。マリアの判断は実に即物的だとは思うけど、収支計算で考えたら排除するよりも取り込む方がリスクが少ないと考えたか。でも、姐さんなんだかんだと怖い人だから、アレみたいな何しでかすか分からない輩を首輪も付けずに野放しにするとは思えない。少なくともいざとなればすぐに切り捨てられるようにするだろうし、危険が仲間に及ぶと判断した場合は即座に潰すことが出来る支度はしとくんだろうなあ。なんにせよ、もうマリアが彼女を戦力とは計算しても仲間としては判断しないような気がする。

さて、一方でラミアの正体にもいささか疑問符がついてきた。最初のラミアの月面侵攻を阻止しながら全滅した、過去の月面基地の隊員たち。英雄と謳われる彼らだけど、全滅してしまったせいか、ラミアの侵攻前後からの月面での状況がわかっていなかったのが、段々と情報が解析されていくにつれて妙な部分が浮き上がってくる。
英雄として死んでしまった婚約者が、いったい何を考えていたのか。決して見つからないだろう答えを追って月面に来たようなものである主人公にとって、知れば知るほど余計に分からなくなってくる婚約者の素顔。
非公式のエリート集団、アルファ・チームの不穏な動向と、ラミアの背後に見え隠れする謎の知性の存在。そして、ラストの急展開。
これは、色々とヤバイことになってきた。
錯綜する人間関係と合わせて、盛り上がってきましたよ。


それにしても、最近の林先生は話の舞台が、突端であることが多いなあ。人類が総力をあげて生産力を集めているラミアとの最前線。月面という場所も影響しているんだろうけど、戦力も魔女小隊にばかり重要任務が振られるようなベテラン不在の環境、軌道戦闘機が一機あるかないかで戦局が左右され、ミサイルすらモドキに過ぎないガラクタ寸前のものを突貫で自作しなければならないような、超局地戦。
でも、この超局地戦が地球の運命を握ってるわけだから、これはこれで怖い話。失敗が許される余地がとてつもなく少ない、あとがない、ってことだもの。

翼の帰る処(下)4   

翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

【翼の帰る処(下)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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これまで結構な数の本を読んできたと思うんですけど、この作品のヤエトほど、虚弱体質極まってる主人公はちょっとお目にかかった記憶がございませんヨ!
前篇もまあ、かなりの割合で熱出してぶっ倒れてましたけど、今回もまあ登場シーン中の八割くらいは、ぶっ倒れてたんじゃないかと。というか、動きまわってる時でも発熱してたり、フラフラで意識朦朧だったりと健康な状態のときってなかったんじゃないのかな。
いきなり冒頭、皇女からおまえちょっとその状態危なすぎるからあったかいところ行って療養してこい、と南方の王都の皇女とは同腹の兄貴である第三皇子のところに送り出されるのですが、極寒の北嶺から灼熱の熱地に移動したせいか、バテて余計に体調悪化させるヤエト殿。
皇女、こいつダメです。どこに行ってもなんだかんだ理由つけて身体壊しやがります(笑
とはいえ、皇女も本気で心配して信頼している第三皇子のところに送り出したんだろうけど、あんな蒸し暑そうな所じゃ療養にならんですよ。その上、皇子側からは何か探りにきた密偵じゃないのかと疑われて、半ば軟禁状態に置かれるヤエト殿。
まるで隠居だ、と喜んでるこの人の神経もいまいちわかりづらいのだけれど。
いやまあ、閉じ込められるわ疑われるわ、実際なんだか陰謀が張り巡らされてる気配はあるわ、彼に備わった恩寵の力が勝手に発動しだすわ、と隠居だと喜んでいる場合でもなくなってしまうわけですけど。

それにしても、このヤエトの皇女への態度は何なんでしょうね。親愛、というには少し違和感があるし。
元々病弱で長く生きられないといわれてきたせいか、立身出世どころか自分の生き死ににも執着が薄く、俗世に煩わされることを厭いながら食べるために役人の仕事をやってると嘯くヤエト(餓死は苦しいから嫌なんだそうな)。出来れば隠居して余生を穏やかに暮らしたいと公言してはばからない36歳。
そんな彼が面倒くさい、とっとと引退したい、厄介事はごめんだとぶつくさ言いながら、皇女のために病身を押して本当に身を削るように、時に決死の旅に身をゆだね、奔走するわけです。
いつ死んでもまあ仕方ないなあ程度にしか考えていなかった彼が、皇女を助けるために、死ねないとまで思い定める。
そんな決意の発露は、どこから来ているのか。
皇族同士の身内同士で血で血を洗う権力闘争の泥沼の渦中にある皇女の立場を、王都で目の当たりにし。そんな境遇に絶望しながらも、皇族として奇跡のような心根の優しさ、只人であるかのような在り様、それでいて皇族に相応しい誇りと気構え、意欲を兼ね備えた彼女の人品を知り、ただの幼い少女である彼女を感じたことで、ヤエトが彼女に何を見出したのか。
入れ込む、にしては淡々としているんですよね。特別な感情を抱いている風もない。忠誠心、というには熱情が足りてない。
皇女からしたら、ほんとにわけわからん臣下なんだろうな、こいつ。
ただ、自分を帝国の皇女という地位ではなく、彼女個人として見てくれていることを分かっている。絶対裏切らず、自分を正しく、彼女が望む方へと導き誘ってくれる人だと感じている。だから、真名を教えたんだろうし、誰よりも信頼している。もしかしたら、淡い恋情すら抱いているのかもしれない。
でも、手応えはなかなかないんだろうなあ。ヤエトがあんなだから。

今まで何にも執着せず、何も得ようとせず、何も持たずに生きてきたヤエトにとって、皇女は初めて得た「守るべきもの」なのかもしれない。あの面倒そうな態度は、自分で気づいていないっぽいけど。
ただ、今のところは、今はあれは臣下のものだと思うんですよね。役職というんじゃなく、彼女個人とヤエト個人の公的なものではない私的な主従関係、という括りになるんだろうけど。ヤエトには帝国や皇族への忠誠心って、全然なさそうだし。
だから、皇女は彼個人の守る場所であり、皇女が言ってくれたように、皇女そのものがヤエトが帰る場所になったんだろう。
そうか、療養に送り出すときに皇女が言った言葉は、思いのほかヤエトには大きく響いてたのかもしれないなあ。

他の脇役衆も、なかなか味出てたなあ。
伝達官のおじさん、親戚のおじさん風味がよく出てて、ヤエトとの会話はオッサン同士の話なのに、これがなんか感じ良かったんですよね。
んで、さらにおっさん。ジェイサルド。上巻では、ヤエトと隠居談義していて、わりと温厚な人なのかと思ってたら、実はかなりの武闘派でえらいごっつい過去の持ち主だったことが発覚。砂漠の悪鬼て。
ただ、強面な言動とは裏腹にけっこうユーモアのある人で、この人との道中は頼もしいやらなんやらで、今後もレギュラーで登場してほしいなあ。
ルーギンとはまた別のタイプで、ヤエトと皇女の脇を固める臣になりそうだし。

うん、素晴らしいファンタジーでした。

あとがきを読んでたら、驚いたことに、というか嬉しいことに続編が決まっているみたい。これは実に楽しみです。良かったよかった。

翼の帰る処(上)5   

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)

【翼の帰る処(上)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻狼ファンタジアノベルス

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これはまたべらぼうに面白かったですよ!!

派閥争いに巻き込まれ、帝国領内でも放置区などと呼ばれている辺境の地・北嶺へと左遷されてしまった主人公のヤエト、三十路過ぎ。でも、この人、根っから出世に興味などなく、左遷されたことすら悠々自適に過ごせると喜ぶくらい。もともと、幼少の頃から病弱で長く生きられないと言われてきたからか、俗世に執着が薄く、隠居したいと公言してはばからない。実際、かなりの虚弱体質で、作中でも階段の上り下りだけで体調を崩したり、ちょっと無理をするとすぐに顔色を悪くして熱を出すわ吐くわ倒れるわと、フラフラしっぱなし。
そんな悠々自適の隠居生活を夢見て北の地に尚書官として赴任したヤエトでしたが、何の因果か直後に皇帝の末娘である僅か14歳の皇女殿下が北嶺の太守として赴任してきて、北嶺の地で唯一地元の人間ではなく、帝国中枢から派遣されてきた官僚だったヤエトが、太守の副官に任命され、望まぬ栄達を得てしまう。
以降、ヤエトのもとには気位の高い皇女殿下と帝国騎士団、純朴で思慮に欠けた北嶺の民が巻き起こす問題の数々が、一手に押し寄せて来る羽目に。
内心面倒くさい、知るか馬鹿、などとため息をついたりブチ切れたりしながら、勝気な上司と考え無しの部下に挟まれ、気苦労の絶えないこのまま過労死しかねないヤエトの明日はどっちだ、的なお話(笑

とはいえ、出世願望のないヤエトにある意味怖いものはないので、本来なら雲上の存在である皇女に対してもズケズケと直言して憚らず、蛮族と言っても過言ではない北嶺の民に対しても、怯むことなく言うべきことはきっちりと言い切る恐れ知らずでもあるわけで。ルービン騎士団長いわく、無駄なところで怖いもの知らず、なんですよね。
その上、面倒くさいとか、厄介事には関わりたくない、と常に陰気くさく根暗そうに鬱々と内心愚痴をこぼしまくってるのに、なんだかんだと真面目に役目を果たし、持ちこまれる問題を片付けていくものだから、結局のところ上役からも部下からも信頼されて、さらに頼られていき仕事が増えるはめに。本人の希望とは裏腹にw

ただ、ヤエト本人が思っているほど、彼の立場は不幸でも悲惨でもないんですよね。皇女は多少傲慢で人の言うことに耳を貸そうとしない人だけど、理を以って説けば唇をとがらせながらもしっかりと聞き届けなくては済ませない明晰さ、聡明さを持っているし、太守としての責任を果たそうという気概を持った立派な為政者としての魂を持っている。
北嶺の民も、小難しいことは理解できなくても、純朴であるということは素直でもあるということ。辛抱強く付き合っていけばちゃんと応えてくれる人々でもある。いきなり下級官吏から太守の副官なんて出世をしてしまったにも関わらず、皇女付きの騎士団長ルービンがヤエトを蔑ろにすることなく、過去彼が学生時代にヤエトに負い目があるせいもあるんだろうけど、色々と恩師として尊重してくれるから、変な妨害も入ることもなく。
本人が不満に思っているほどには、決して悪くない環境なんですよね。むしろ、非常にやりやすい環境なんじゃないだろうか。
中間管理職の悲哀がひしひしと伝わってくるヤエトの内面だけど、あんた、上司も部下もかなりあなたに気を使ってますよ?(苦笑
実際、皇女や北嶺の民から見たヤエトは、これまた扱いずらい色々と大変な部下であり上司だと思いますよ。
特に皇女。彼女のヤエトへの複雑な思いは、可哀想なくらい。彼女はヤエトの人格、能力を見極め、ちゃんと信頼し、この地でもっとも頼りにしたい人物である、と思っているのに、当のヤエトときたら自分はとっとと隠居してしまいたいです、なんて言って憚らない。皇女様からしたらたまったもんじゃないでしょう。絶大な信頼を置き、自分の身命をすら預けたい、と思ってる相手が、対して自分に関心を抱いている様子もなく、心の底から忠誠を誓ってくれる様子もなく、暖簾に腕押し糠に釘、ってな感じなんですから。内心、忸怩たるものがあるんじゃないでしょうか。
そのくせ、しっかり仕事はこなし、自分に諫言して間違いを正し、問題が発生すればさっさと片付け、挙句に人並み外れた耐久力のなさからぶっ倒れる。理不尽に八つ当たりする事すらできないんですから。
ヤエト視点で話は進むんですけど、中盤越えたあたりから皇女さまの方が逆に可哀想になってきましたよ(苦笑
ある意味、ヤエトの方が傍若無人ですよ?

北嶺に伝わる伝説と皇族にもまつわる恩寵の力。北嶺の地に集められた人々の顔ぶれに符号する関連性。裏では妙な陰謀だか、思惑だかが進んでいるようないないような、怪しい気配を醸し出されているわけで、人間関係だけでなくそちらの方もなかなか目を離せなくなりそうな展開に、なりそうなならなさそうな(w

とりあえず、皇女殿下がこのやる気のないへそ曲がりの虚弱三十路男を、見事に心服させられるのか。次の巻が楽しみで仕方ありませんな!
これ、たった二巻で終わるのが実にもった無いですよ。

 
11月26日

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