【悪役令嬢の怠惰な溜め息】 篠原 皐月/すがはら 竜 電撃の新文芸

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プレイ中だった乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。だけどこの世界はすっごく暇だった!「娯楽がなければ作ればいいのよ!」前世の知識を活かして玩具や恋愛小説を生み出し、退屈な世界をバラ色にしてみせる!王妃様お気に入りの実業家になり、これでシナリオを外れて素敵な未来が…と思いきや書いた小説のせいで破滅フラグがやってきた―!?暴走悪役令嬢の勘違い王子粉砕ラブ(?)コメディ開幕!

これ、どこが怠惰なんだろう。主人公であるエセリアは幼少時から非常に精力的にアグレッシブに動きまくっていて、その言動のどこにも怠惰に類するものは見当たらない。
それとも、このエセリアさん。次期国王である王太子の婚約者であり次期王妃様なんだけど、件の王子様がボンクラの極みであると同時にエセリアさんは王妃なんて窮屈な仕事はしたくなくて、自由にのびのびと自分のやりたいことをやり尽くしたいと考えてる人なんですね。なので、王妃様なんかなりたくない、とばかりに婚約解消工作に勤しんでいるのですが、その公人としての働きを忌避し、高位貴族令嬢としての義務を放棄しようとしている事が、怠惰に該当するということなのだろうか。
もっとも、彼女すでに実業家として実績をあげていて、これまで整備されていなかった貸金業についても教会に一口かますことで統制された金銭の貸し借りを国内で成立させることで、お金の循環をスムーズにして国内経済を発展拡大させることに寄与しているので、むしろ私人としても既に国益にプラスになる事をしてたりするのです。
他にも、伯母である現王妃と強く好を通じ、様々な商材を通じて身分問わず広く女性層に支持を広げ、政務官僚、軍人、商人、教会、職人含め一般市民層にもコミットして各業界の風通しも良くしてたりするので、もう既に国内でも至る所に無視できない影響力を及ぼしているんですね。
それを全く理解できていない、という時点で、彼女が何をしているのかわかっていない、知ろうともしていない時点で、王太子殿下のボンクラ振りここに極まる、って感じで裸の王子様というのが露呈してしまってるんですね。
自分が安全に王太子の婚約者から退けるように、婚約解消を向こうから言い出すようにあれこれと画策しているエセリアさんですが、おかげさまで王太子の評判たるやひたすら下降線を辿っていて哀れになるほど、いや全然哀れでもなんでもないんですけどね。概ね自業自得だし。エセリアが動かなくても、彼は自爆して自分からどんどん評判をさげている状況ですからね。
対してエセリアは、着々と味方、支持層を広げていっているわけで。ここまでやってしまうと、王太子廃嫡してエセリアは次期王妃のまま第二王子あたりを立太子、という形になってしまいそうだけど、ほぼほぼ王宮掌握している現王妃様を最大の味方にしているのは大きいですね。とりあえず既に第二王子には王妃の血縁が婚約者として送り込まれているので、今の所エセリアは自由ルートに邁進中。
最初の頃の娯楽用品の営業については、セールストークがお粗末に見えてしまって、あれでウケるの? と首を傾げてしまったのだけれど、やはり今まで存在しなかった小説という媒体、さらにBLという革新的?ジャンルが世のご婦人様方の琴線に触れまくってしまい、腐海が電撃的に広がっていってしまった様子は、まあさもありなん、と棒目になって頷いてしまいましたが、あれがターニングポイントでしたなあ、うん。

本来のゲームのヒロインである娘も登場しましたけど、この娘むちゃくちゃ苦労苦労を重ねる人生を送ってきただけに、あんまり不幸になってほしくはないなあ、と思ってしまったのですけど、この様子だとぼんくら王子に影響されてアカンドツボにハマっていきそうだなあ。
この娘の救済ルートはないものだろうか。まあ性格の悪さとか見えてきたら、その気も失せてしまうでしょうけど。