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手島史詞

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 13 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 13】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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ネフテロス&ゴメリ救出作戦!!

キメリエスがゴメリを救うべく離脱した中、魔王シアカーンが過去の英雄たちの大軍勢を率い、ついにザガン達へと攻め込んできた。
一方で、ビフロンスの策謀により<アザゼル>化してしまったネフテロスも牙をむく。
しかし、迫るあらゆる問題は、ネフィの誕生日を盛大に祝いたいザガンにとっては振り払うべき些事に過ぎない――!!
難敵すらも嫁のためなら圧倒する、最強不器用魔王による大人気ファンタジーラブコメ、反撃の13巻!!

まさに美女と野獣なゴメリとキメリエスが表紙の13巻。シアカーンとの決戦も含めて盛り沢山な内容に加えて、物語の核心とも言うべき情報がポコポコと明らかになっていくものだから、一旦作中で情報整理してほしいな、ホント!
いや、聖剣が天使が変化したもの、とか天使って実はハイエルフ? とかかなり重要な情報がポンポン飛び交ってましたもんね。それどころじゃないとんでもない話も何個か持ち上がっていましたから、ほんとそれどころじゃなくなったのだけれど。
アルシエラとザガンの関係については先だってから匂わされていただけに、ああやっぱりそうだったのか、という納得だったのだけれど、それに意識を取られていてじゃあ「マルク」というザガンの幼い頃の兄貴分だった青年は何者だったの? という話についてはスポンと頭の中から抜け落ちてたんですよね。彼についても伏線はあったんでしたっけ? 自分は全然頭にもなかったですわ。ガチで驚いた。
というわけで、死に体ながら目的のためにあらゆる手段を尽くして、ついにザガンの城がある街に過去から復活させた英雄たちの軍勢を攻め込ませてきたシアカーン。彼の目的というか真意もついに明らかになったのだけれど……この人もまた潰えた愛にしがみついて離すことが出来なかった人だったのか。ザガンと顔を合わせた際に凄くお互いに共感を覚えていたけれど、より相似だったのはやはりキメリエスと、なんですよね。シアカーンは、ある意味ゴメリを喪ったキメリエスと言っても過言ではないくらい、その歩んだ道のりは同じだった。違うのは、シアカーンの保護者だった魔女はわりと真面目な人で、愛で力ーーッ!とか場所も空気も弁えずに興奮している変態ではなかった事くらいか。
いやもうシアカーンの過去を知って、囚われの身にも関わらず興奮しだしたときにはどうしようかと。シアカーンさんが本気で困ってたじゃないか。ガチでオロオロと狼狽えてたじゃないか。
でも、そうやって全くいつもと変わらない顔でいることで、ブチ切れてたキメリエスを一瞬でいつもの彼に戻してしまったんですよね、ゴメリおばあちゃん。囚われの身でありながら、なおもキメリエスの心を護りきったその愛情。その深さも強さも、いつもおばあちゃんが愛でている女性陣の愛で力に何一つ劣っていませんよ。
しかし、キメリエスは誰もが強いと知っていながら、そこまで凄味を感じることはなかったんですよね。彼の温厚篤実で力をひけらかさない性格もあったのでしょうけれど、それを見せる相手も居なかった、というにもあるかもしれません。ザガンとの本気のどつきあいで見せたあのタフさ、百獣の王に相応しい迫力、闘争本能の凄味に魔術の切れ味、戦闘脳の鋭さ、とザガンが片腕と呼ぶのも当然も当然の強さでした。これで性格イケメンのメチャクチャいい男なんだから、完璧だよなあ。
実際、ザガン一家の中でもフォルを除けば実力随一なのか。ガチンコになればバルバロスすらも一蹴できそう。まあ、そのガチンコにさせないあたりがバルバロスなのですけれど。
なんだかんだとこれまで、そこまで本気でガチバトルするような相手、展開がなかっただけに、今回はザガン配下の魔術師たちがどれほどやべえ連中だったか。元魔王候補というのが全然伊達じゃなかった、というのが嫌というほどわかる総力戦でした。ビフロンスのパーティーの際になんか十把一絡げみたいに配下に加わった連中だったけど、どこが十把一絡げだよ、っちゅう超一流どころばかりだったんだなあ。
それはそれとして、魔術師にしても聖騎士たちにしても、底力や火事場のクソ力をひねり出す原動力になったのが、どこもかしこもどいつもこいつも、愛の力! ですよ。みんな、愛する人のために力出しすぎ!! パワー・オブ・ラヴですかっ、それともゴメリおばあちゃん風に言うと、これこそが愛で力ですか!
あっちこっちで、ラブパワーが炸裂していて、なんかもう甘酸っぱいーーっ!

一方で、親の死によってまだ幼い間に独りで生きていかなくてはならなくなった子らが、父親の見ている前で、或いは壁として立ちふさがった父親の残影を倒すことで、父親たちに自分の立派になった姿を見せて独り立ちしていく、というイベントが一つならず、ザガンのところ、フォルのところ、そしてギニアス君のところ、と幾つも見えたのも良かったなあ。ネフィも、父親じゃないけれど母に託されたという意味で、次世代に立ったとも言えますし。
この父親超えは、最後の儀式とも言えるんですよね。ザガンは元より、フォルもギニアスも父を喪った事による挫折と迷走は、それぞれ大事な人を得ることでひとまず克服出来て、自分の意志と力で立つことがもう出来ていた。その立派になった姿を父親に見せることが出来た、というのは心残りの解消としては一番だったはず。もう、彼らに憂いは残っていないでしょう。
特にギニアスくんはまだ小さいですし、ここからぐんぐん立派なイイ男になってステラ姐のお眼鏡に適うようになってほしいものです。まだまだ姉ちゃんには弟扱いでここはカップル成立してませんもんね。
シャックスはついにラーファエルから黒花を任せる、と言ってもらえたので事実上のお義父さん越え成功である。
リチャードもようやくネフテロスに見合うだけの意思と力を手に入れましたね。ある意味彼はザガンに並ぶくらい脇目も振らずネフテロスへと一途に一心不乱に愛を捧げる騎士だったからなあ。その愛の強さ深さに見合うだけの理を、聖剣に認めてもらって聖剣使いになったのはおめでとうの一言。いや、ついにネフテロスの方から男性として凄く意識して貰えるようになった事こそをおめでとうというべきか。

対して敗れた側のシアカーンも、そしてビフロンスも最期の最期に救われ満たされて逝ってしまったんですね。
シアカーンは、正直愛する人を喪ってからやったことの殆どが徒労に終わった、とも言えるのかも知れませんけれど、今際の際に会いたい人に会えた、死に別れてもなおあちらから会いに来てくれた、自分のことを魂に刻んでくれていた、その一事にぜんぶ救われたんだよなあ、なんだか羨ましいくらいだ。
そしてビフロンスは……最期までビフロンスだった。誰にも理解できない傲慢で独り善がりの正体不明の享楽家。自分のやりたいようにやって、誰も彼もを出し抜いて、面白ければそれで良し。そうやって生きた果てが、誰にもどうしようもなかったネフテロスの末路をひっくり返すことだった、というのは……。改心したとかじゃないんですよね。救うとか助けるという気持ちがあったわけじゃない。ネフテロスにナニかを託そうなんて思いがあったわけでもない。
ただ面白そうだからやっただけ。誰もが救おうとして出来なかったネフテロスを出し抜いて自分が生かしてやることで、ザガンたちに勝ち逃げ出来るから。
そこで全部台無しにしてしまう、という詰まらない結末を引かないところも、ビフロンスらしいと思うんですよ。それじゃあただの小物だ。卑屈で器のちっちゃい卑怯者に過ぎない。
正体不明で意味不明理解不能がビフロンス。最初から最期までビフロンスはそれで一貫していた。彼の生き方在り方を貫いた。だから、凄くビフロンスらしかった、と思うんですよね。ビフロンス自身も理解しきれずにいただろうビフロンスというキャラを、一切ブレること無く最期まで書き切った、そんな感じが出ていて、彼の末路はネフテロスが見送る様子も含めて、満足でした。満了でした。
お疲れさん、ビフロンス。良き悪役でありトリックスターでした。

にしても、ザガンも作中で首捻ってましたけれど、今回いったい何人魔王が交代したんだろう。ネフィは本気で予想外でしたし、シャックスにフォルはザガンに言及されていましたけれど、他には引き継いだ人いないのだろうか。キメ君は? 魔王になる気満々だったバルバロスは?w

そして、ラストにはついにあの人が再登場。いや、再登場するの!? ふわーーっ!?


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12 ★★★★☆  



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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ザガンとネフィ、お互いの誕生日が判明!?

アルシエラからザガンの誕生日を聞き、来週と差し迫っていることに気づくネフィ。
その一方、ザガンもオリアスからネフィの誕生日の情報を得る。
姉妹であるネフテロスの誕生日も同じ日に設定し、祝う準備を進めるザガンだが、彼女のホムンクルスとしての寿命が差し迫っていることにも気づいており、解決方法を模索していた。
その頃シアカーンとビフロンスの暗躍組も動き始め……魔王同士の思惑が交差していく――!!
大人気ファンタジーラブコメディ激動の第12巻!

世界の謎やアザゼル、ザガンの過去に銀眼の王たちの話など結構深刻な話も同時進行しているのだけれど、それはそれこれはこれ、という感じでザガンたちが自分の大事な人や家族たち、ザガンファミリーの日常の方をもっと大事な事として最優先にするの、やっぱりいいなあ。
ネフテロスの寿命の件だって、義理の妹がそんな事になってたんじゃ、みんなオチオチ誕生日祝えない、てのが頭にあるんですからね。まあ彼女に関しては、ネフィが悲しむからというのが建前で、ザガンももう本気でこの娘の事を義理の妹として大事にしているから、というのもあるのでしょうけれど。でなかったら、ネフテロス自身の意見や希望はきかないでなんとかしようとしちゃってたかもしれませんし。
差し当たって誕生日である。誕生日は祝うもの、という当たり前の行事、人間的習慣について知らなかったり経験がない人たちが多すぎる、このファミリーw
案の定というべきか、ザガンとネフィ、お互いの誕生日の話に留まらず、ファミリー全体に誕生日お祝いブームが波及していくのである。カップルたくさん成立しているにも関わらず、誕生日というイベントをスルーしている子たちが大半だったのか、なんというこれまでの人生の殺伐具合。
ほんと、みんな幸せになってほしい。
この世界に生まれた事を祝う日、というのが刺さる人が居すぎるんですよね。そういう生まれた事を祝われなかった人たちが、今こうして家族や友人と集まって一緒にこうやって生まれた日を祝いあえるということだけでも尊いんですけどね。その中でも愛する人と、というのは特別なのだ、やっぱり。
しかし、こうしてみるとザガンとネフィ以外のカップルで一番安定して甘酸っぱいイチャイチャを繰り広げてるのって、シャステルとバルバトスなんだよなあ。
リリスとシャステルがポンコツ繋がりでいきなりこんな仲良くなるとは思わなかったけど、同じレベルのポンコツだからか、シンパシーが通じたのか、シャステルがこんなに恋バナを吐露する事は滅多なかったのでちょっとワクワクしてしまいましたが、ほんとに惚気けるなあ!
最初ザガンのことちょっと好きだったシャステルが、失恋したあとバルバトスといい雰囲気になったこと、シャステル自身もちょっと気にしてたのかー。とはいえ、それを引きずるわけでもなく今はバルバトスに一途なのは可愛らしいというかなんというか。あとでお互い辿々しく誕生日教え合うところなんぞ、ほんと可愛らしいカップルになってしまって。
この完全に両思いが成立しちゃってるカップルと比べると、他の連中はまだイチャイチャしながらもハッキリしない所があるんですよね。大概、一方が日和っているのですが。
いい加減しびれを切らせて積極の鬼になってるのが黒花さんなのですが、この子ついに18歳になったのか! いや、マジでそんな歳だったの!? もっと小さいかと思ってた。もう普通に大人じゃない。そりゃ、シャックスも相手が子供だからなんて言い訳できんわ。

なかなかおもしろいことになっているのが、前回登場したフルカスで。記憶喪失のはてにリリスに恋して積極的にアプローチはじめて、リリスの方もまんざらでもなさそうだからこれでカップル成立かと思ったら……まさかのリリスの幼馴染のセルフィのガチ百合恋愛参入である。
真面目に恋愛相談されたザガンの混乱ぶりが笑えたのなんの。それでいて、ちゃんとごまかしたり曖昧に濁したりせず、真剣に向き合ってセルフィの迷いを吹き飛ばすようなしっかりとした応答してみせるザガン様、超偉いです。恋愛相談なのに、ちゃんと応えられてるじゃないですか、この人。頼もしすぎるぞ、この魔王様。
おかげで、リリスを間に挟んでの三角関係な修羅場が実現してしまうという。リリスってば、どっちにも満更でもなさそうでドキドキしてるので、いやこれどうするんだ!? フルカス君の方はまだ良くわかってないみたいだけど、セルフィは完全に恋敵として敵意漲らせているし。
ちょっとどうなるかわからなさすぎて、ここの人間関係は面白すぎる。

と、あちらこちらで甘酸っぱい誕生日模様が繰り広げられている一方で、またぞろビフロンスが暗躍して酷い事に。なんでそんなにネフテロス虐めに走るのか。こいつ、ほんとに好きな子には意地悪したくてたまらないガキなんだよなあ。やってることはそんな甘い話ではないエゲツない事ばかりなのだけど。
今回はリチャードが良く頑張った。これまではひっそりとネフテロスの側に侍るばかりで、あまり目立たないし存在感もないし、モブっぽかったのだけれど、ついにネフテロスが切羽詰まった状況になったことで前に出てきてくれました。こいつ、はじめてデザイン明らかになりましたけど、作中でも屈指の美形イケメンじゃないか! 王子様かよ!
他のキャラに比べてバックグラウンドもないただの騎士なんですけど、そんなモブっぽいからこそこの青年には頑張ってほしいんですよね。ネフテロスがえらいことになってしまったことも相まって、リチャードには再度男を見せてほしいところ。ビフロンスなんぞからちゃんと奪い取ってやってくれ。

そして、何気にザガンファミリーの中で王子様度が高いのって、キメリエスだと密かに思っていたのですが、まさかのゴメリお婆ちゃんが囚われのお姫様という展開の急襲に、盛り上がってきましたよ。いや、もうお姫様扱いが一番似合わない変態お婆ちゃんが、と思うところですけど、キメリくんにとってはお姉さんでお母さんでお姫様だもんなあ。それこそ乙女ゲームの王子様並のイケメン度
を見せて欲しいところである。顔、ライオンだけどさ。心は作中屈指の好青年なんだから!










魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 11 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 11】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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夢の中で理想のデートを!?

温泉の恩返しにリリスは、ザガンとネフィのデートを自らの能力で夢の中で行えばいいと提案をする。
しかし想像力の低さゆえ結局いつも通りになり、ザガンは懊悩してしまう。
そんな時訪ねてきたのは<魔王>ナベリウス。
彼の依頼は消息不明の<魔王>を夢の中に捜しに行くことで――。
大人気ファンタジーラブコメディ第11巻!

先輩後輩なザガンとネフィもいいんだけど、カラー口絵で膝枕されてる二人の後ろでラブコメしてるシャスティルとバルバロスがまたいいんですよね。バルバロスが典型的な不良っぽい男の子で、パン咥えてるシャスティルは委員長っぽくて、どれだけ王道のラブコメしてるんだ、とw
そして、本編冒頭10ページかからず凄まじい糖度のイチャイチャっぷりを見せつけるザガンとネフィにゴメリおばあちゃんも満願成就の出血死である。
最近、愛で甲斐のあるカップルの甘酸っぱいムーヴが各所でひっきりなしに起こるために、さすがのゴメリおばあちゃんも全部カバーしきれなくて、遠方で発生しているラブラブに地団駄を踏むばかりなんですよね。そのうち、おばあちゃん分身分裂の術とか憶えてしまうんじゃないだろうか、と心配にすらなる。
これでこのおばあちゃん、【妖婦】ゴメリとして自分の左腕とザガンが呼ぶほどの魔術師なんですよねえ。右腕として絶大な信頼を置いているのが【黒刃】キメリエス。んで、背中合わせというか背中を任せるという感じなのがバルバロスか。これに元最強の聖騎士団長ラーファエルが執事として控え、義娘のフォルは実力ではもう魔王級。これに今居候として魔王オリアスことネフィ母ちゃんと、吸血鬼の始祖である天使狩りのアルシエラがいるわけで、ザガン一党の戦力の充実っぷりとキたら見た目の厳つさと合わせても、もう魔王軍と呼んでもいいんじゃないだろうか、という偉容なんですよねえ。
そんな連中が顔を突き合わせてなにをやっているかというと……。

シアカーンとビフロンスという魔王同士の同盟がちょっかいをかけてきている状況に、さらに魔族、そしてアザゼルという謎の世界外からの侵略者の影が忍び寄り、世界そのものの危機が迫っているという結構切迫しているような現状で、ザガン一党の最高幹部と言っていい面々が深刻な顔をしてザガンに進言するために集まってきた日には、ついに一党全体で動き出さざるを得ない重大事件が起こったのか! と、読んでるこっちも緊張に手に汗握ったのに。
ラーファエルにオリアスにアルシエラにキメリエス、そしてバルバロスまで揃って何の話かと思えば……フォルに彼氏の影が疑惑である。
知り合いに恋バナを聞いて回るフォルの様子に、まさかの男が、それとも恋愛についに興味を抱くような年頃に、という疑惑が生まれてしまったのだけれど。
全員、ガチで真剣なんですけどw
いや、親バカなザガンはわかるんですけど、シャスティルに突撃されて巻き添えくらったバルバロスはともかくとして、他の四人もザガンに負けず劣らず本気で深刻な様子で顔を突き合わせて話し合ってるわけで。いや、あんたら過保護すぎやしませんか!?
直前に、娘と孫娘が可愛すぎてちょっと精神的に耐えられないから家に帰ります、とか言い出してるネフィ母ちゃん、あんたそんなキャラでしたっけ。そうでしたっけ。そうでしたか、そうか。
……平和だなあ、としみじみ思ってしまった。
いや、彼らにとって世界の危機も家族の危機もまったく同列だと思えば、アザゼルやシアカーンたちの思惑について真剣に話し合うのも、フォルのおかしな行動に焦燥しながら喧々諤々論じ合うのもそりゃ同等で変わらないことなんですよね。だから、同じ調子で同じ意識で同じように話し合える、と。
それだけ、かれらにとって仲間や家族、身内のことが大切で大事、というのがこういう風に伝わってくるのは、それはそれでキュンキュンしてしまうんですよね。
大幹部会議の面々は年長者も多いので、思わぬ所でフォルの恋バナ探求の煽りで彼らのいろんな話も聞けたのだけれど……ラーファエルさん、黒花とはホントに血は繋がってないんですよね? だとすると、黒花は想い人だった女性の忘れ形見という事になるのか。実の娘同然に可愛がっていた、というけれどそれでは済まない思い入れだわなあ。そりゃ、黒花にまとわりついてくる虫には過剰反応してしまうわ。シャックスくん、超頑張れ。いや、超頑張ってるのは黒花の方なんですけどね。
あんまりにも察しが悪いものだから、最初の頃はまだ淡い想いを自覚するかしないかあたりで持て余しているような塩梅だったのに、シャックスの反応があまりにも鈍いわりに、そりゃもう丁寧に大切に大事に扱われるものだから、黒花の方に完全に火がついてしまっている状態で。
黒花の不運体質がこの際、ラッキースケベ的な効果を発していて、思わぬ強烈なアプローチになってしまっているのが面白い。さすがのシャックスですらも、気づかずにはいられない強烈さで、これ何気に一番進展しかけてるんじゃないだろうか。
そのシャックス、何気にザガンからの評価も滅茶苦茶高いんですよねえ。魔術師としての実力は、そりゃバルバロスやゴメリ、キメリエスなんかとは比べ物にならないくらい並なんですけど、それでもザガンが魔王継承候補に名前を上げるくらいなんだから、凄い評価してるのなあ。

とまあ、いつものように甘酸っぱいカップルたちのキャッキャウフフに蕩けていたら、思わぬところから「アザゼル」の正体に急接近することに。何気にアルシエラの恋バナのほうにも紐付けがしてあって、やはりアルシエラの存在そのものが鍵だったのか。
彼女の語る銀眼の王。それがザガンの父親でもあり、なんかリリスにも重要な関わりがありそうなんだけど……これって、話聞いてるとおりに受け止めると、アルシエラがリリスとザガンの……という可能性もあるのか、もしかして?
わりと当たり前の顔して、パパとかママとか出てくるお話だしなあ、これ。オリアスとか、オリアスとか。
ここで一気にアルシエラ退場か、と焦ったけれどリリスよく頑張った、偉い! いや実際、アルシエラの過去はまだまだ不明な点も多いし、ザガンたちとの本当の関係なんかも知れてないし、そこには絶対ゴメリおばあちゃんが悶死しそうな愛で力が眠っているはずなので、まだまだ掘り出せるはずなんですよね、退場は早い!
その頑張ったリリスの方にまで新たな彼氏候補が! また新たなカップル誕生ですか!? いや、まだリリスの方はピンとキてないようですけど、いきなり告白とお付き合いを求めだしたあたり、これだけ積極果敢な男性サイドはいなかっただけに、ニュースタイルのカップルになりそうで、ゴメリおばあちゃんこっちですよ!!

でも、この少年、アルシエラに初恋して彼女を探すうちに拗らせて歪んで魔王にまでなっちゃったわけですから、記憶をなくしたとは言え「彼女」を探すことへの執着は相当だったはず。そのアルシエラの面影を、リリスに見出したということはそれだけ重なる部分も多かったということですし。そう言えば、アルシエラが初登場した時、リリスと共通点が多いみたいな事も言ってたんですよね。名前もリリスって本当はリリシエラですし。
リリス、登場した時はそこまで重要キャラとは思わなかったんだけど、これはこれは……。

あと、もうひとりの初登場の魔王ナベリウス。だけど、これナベリウスだからナベにしたんじゃないでしょうね、もしかしてw


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんんだが、どう愛でればいい? 10 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんんだが、どう愛でればいい? 10】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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「これより、我が城に大浴場を作る! 」
大きいお風呂が欲しいというリリスからの訴えを受け、部下の慰労や、ネフィのためザガンは城に大浴場を建設することに。
彼は東方の建築を研究したり、なぜか魔王殿に存在した大浴場を参考になんとか完成までこぎつける。
大浴場を楽しむネフィやシャスティルたち、覗きをしようとするバルバロスと防ぐザガンなど、バタバタした魔王たちの日常は変わらず続いていく。
しかし、暗躍するビフロンスの魔の手は忍び寄っており、さらにはアルシエラが存在をひた隠しにしていた<アザゼル>がその姿を現し――
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第10巻!

ニヤニヤ、ニヨニヨ、ゴロゴロゴロ〜。悶絶である。なにこれももう、愛で甲斐のあるカップルがたくさん居すぎて、顔面の筋肉が崩壊しそう。四六時中、あっちこっちでイチャイチャしてるもんだから、休んでいる暇がない。愛でカップルを見守る会員なマニュエラ姉さんとかこの世の春なんじゃないだろうか。その愛で力の信奉者の筆頭であるゴメリおばあちゃんはというと、師匠のオシリスが娘のネフィのいる魔王城に居座ってしまってコソコソする他なく自由にやりたい放題出来なくなってる上に、他のカップル愛でてたら自分の方にも流れ弾飛んでくるもんだから、自分が愛で力の餌食になってて、それはそれで! キメリエスに惚気けられてフニャーーっとなって崩壊しているおばあちゃんが可愛すぎて、正直たまらん!
お互い隠し事なく睦み合ってるザガンとネフィの安定カップルとは裏腹に、ごたついているのが黒花とシャックスの年の差カップル。あっちこっちから、シャックスのメチャクチャ有能で気が回るのに察しの悪さだけ致命的、というツッコミでおっちゃんフルボッコである。そうだよねえ、ザガンは物言いこそ不器用だったけれど、察しは悪くなかったし言うべきことを間違える事も言葉足らずという事もなかったですもんねえ。ネフィがしみじみと、シャックスの察しの悪さをザガンと比べて嘆息している様子には思わず苦笑してしまった。
黒花が拗ねちゃうのも仕方ないんですけど、シャックス自身はメチャクチャ黒花のこと大切に扱っている事は伝わっているのでみんな生暖かく見守っているのが何ともはや。でももう、黒花の方はシャックスの事好きとちゃんと自覚して固まってるんですねえ、これ。あれだけ意識して、その上で女扱いしてもらえないと拗ねちゃってるのだし。
ちなみに、黒花の軍服風ファッションは控えめにいっても最高でした。可愛らしい系は他にもたくさんいるだけに、小さくも凛としてカッコいい系の娘は希少で見栄えもよく、カッコよくて凛として可愛いというハイブリッドはやはり最高です、さすがですマニュエラさん。
ギクシャクしている黒花たちとは裏腹に、最近もうネフィとザガン並にお互い青信号で、でも恐る恐る手を出し合ってちょっと触れると引っ込めちゃうような微妙な距離感を楽しんでいるのが、シャスティルとバルバロスなんですよねえ。もう、このカップル最高じゃね?
バルバロスの乱暴ながら凄くシャスティルの事気を遣ってるダダ甘っぷりもさることながら、バルバロスが暴れているのを、思わず関係ないのに謝っちゃって、無自覚にバルバロスのことを自分の連れ合いのように認識しちゃってて、それを指摘されて悶絶してしまうシャスティルさんが、可愛い、ほんと可愛い!!
バルバロスはほんと、いいキャラに育ちましたよねえ。登場当初は噛ませみたいなキャラだったのに、魔王ザガンの悪友にしてライバルとしてある意味肩組んで歩くような対等さがあって、実際能力の方もいつの間にか魔王級に育っちゃってて、普通に作中の化け物キャラたちの中でもトップクラスになってるんですよね。んで、その力の大半をシャスティルを護衛するのに使っちゃってるという尊さ。こいつ、これで献身キャラなんだよなあ。
いやまあ、俯瞰してみると何気に男キャラみんな献身系だったりするのですけれど。キメリエスくんとかその最たるものだし。かと言って女性陣の方が自由気ままかというと、此方も色んな意味で献身的な娘たちばかりなので、どのカップルも様々な形でお互い支え合う優しいカップルになってるのが、ほんと尊い、尊いの。
そして、新たにステラ姉さんの方にも春が到来。というか、この場合はギニアス君の方に春到来というべきか。生真面目ショタっ子騎士団長、自由闊達な野良猫お姉さんに恋をする! 13歳のお子様が人生に膿んでしまっていたところを、あらっぽい手段ながら吹っ切らせて貰って、ある意味凄く甘えさせて貰うという真似されちゃったらねえ。立場上子供ながら子供でいられなかったギニアスくんとしては、あんな風に抱きついて泣かせて貰って優しく頭撫でて貰っちゃったら、キュンとなっちゃいますよね。ステラの方も、同世代じゃなくて一回り小さい子が真面目に堅苦しく頑張ってるの、放っておけなくて面倒見てあげたくなっちゃう、というお姉さん属性を芽生えさせちゃってるみたいだし。いやでも、ギニアスくんの真面目さって凄く健気なので、応援してあげたくなるのも確かなんですよね。ザガンも確かに気に入ってたみたいだし。ついついぶっ殺そうとしてしまってましたが。
あれで何だかんだとギニアス君も、ザガンの事正体知るまではストレートに慕ってただけに、また再会した時もっかい懐いてきそうだな。

と、各地各所でカップルたちがイチャイチャし、そうでなくても友達同士でもイチャイチャし、親世代の連中とは温かい交流を繰り広げ、と多幸感を味わわせてくれながら、何をしているかというと部下たち家族たちの福利厚生充実のために、大浴場の新設である。魔術師、魔王という屈指の実力者たちが集まって、いったい何をやってるんだろう、と思う所なんだけれどみんな実に楽しそうなので、良き、良き。
と、完全に日常回なのかと思ってたら、予想外の方向から本筋の話がグイグイと進展することに。ザガンの兄貴分だったマルクの正体がついに判明し……って、マジかそれ!?
ほんとに最初から、魔王勢力と教会勢力ってズブズブの関係だったのか。いやでも、そうでもないと筆頭聖騎士団長が魔王兼任してたり、魔王オリアスが実は聖騎士たちの装備作ってる人だったり伝説の聖騎士だったり、という関係もまあ不自然ではなくなるのか。
でも、それ以上に五年前に各勢力の主要人物が片っ端から死んでしまっているというのが、その事件の壮絶さを想起させることになる。
アリステラやミヒャエルといった上の世代の生き残りは、事情に通じてるんだろうけど未だなかなか口を割ってくれないし。何らかの理由があるのは確かみたいだけど。
ビフロンスもおそらくすべてを承知している一人なんだろうけど、底が知れたと思ってたこの魔王、思っていた以上にヤバい奴だったのか。ネフテロスが最初ビフテロスの元にいたのも、複雑な事情があるっぽいし。というか、まさかネフテロスにまだこんなヤバいものが仕込まれているとは。
ラストの衝撃的な展開といい、不穏な自体がどんどん進行してきていて、ついに次回あたりに世界の置かれている状況とか明らかになりそう。俄然、ストーリーも動き出したか。

特典の書き下ろしショートストーリーは、シャスティルの聖騎士の装束がなんであんなヒラヒラのミニスカートになってしまったかという。あんな短いと中身見えちゃうじゃん、という指摘は以前からありましたが、まさかむしろ見えちゃってもいいじゃない、という精神に基づくものだったとは。教皇、教皇猊下、あんたという人は……グッドジョブb

シリーズ感想


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 9 ★★★★   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 9】 手島史詞/COMTA  HJ文庫

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“魔王”シアカーンの情報を得るため、そして黒花の治療で自分に不安を抱くネフィを元気づけるため、ネフィとオリアスを引き合わせる決心をするザガン。しかし当のオリアスは「アザゼルの杖を回収する」というメッセージを残して姿を消していた。二人はオリアスを追うため聖都へ向かうことになったが、そこは教会の総本部。無用な衝突を避けるため、二人は新婚夫婦に成りすますことになるが―。大人気ラブコメファンタジー絶好調の第9巻!

新婚夫婦に成りすます、って実際新婚夫婦同然じゃないですかー。ザガンも半ば新婚旅行のつもりだし。とは言え、一応正体を隠すというか名前で呼び合って正体をバラすのは拙かろう、ということでお互い「おまえ」「あなた」と呼び合おうと決めあって、呼んでみたら二人で悶絶してる姿ときたら、もうなんかたまんねー。ゴメリばあちゃん、ほんとに肝心の愛でどころで居ないよなあ、この人。まあゴメリの目がないからこそ普段以上にイチャイチャしてるというのもあるんだろうけど。
それに、ネフィの「あなた」は確かに凶悪過ぎるw ザガンの「おまえ」の方もこれ、ネフィとしてはスマッシュヒットだったんだろうな、というのが想像できてしまって、なんともはや。ネフィが呻きながら悶絶してひっくり返ってるシーンとか、滅多無いぞw
ともあれ、シアカーンの情報とあと内緒でネフィとその母であるオリアスを会わせるために聖騎士たちの本拠地聖都へとネフィと二人で赴くことになったザガンだけれど、敵地という意識まったくなくて完全に観光気分なんですよねー。目的の方も聖都に辿り着く前にある程度目処が立ってしまいましたし。なので、最近家族や身内が増えて城でも二人きりというのを満喫出来なかった分、久々のネフィと二人きりという状況を二人して心から楽しむことに。いや、一応執事長のラーファエルも同行してたんだけど、彼は出しゃばってこず執事に徹しているので気分としては二人きりだったんですなあ。途中から別行動になってますし。
しかし、元聖騎士長の一人だったラーファエル死んだことになってるのに教会の本拠地に戻って大丈夫なんか、と思ったら図らずも招集によって12人の聖騎士長が全員集結することに。
ここで、聖騎士長全員がお披露目かー。とはいえ、少なくない数がラーファエルの人生も大きく変える事になった某事件によって代替わりして、シャスティルより若い連中が聖剣の所有者になってたのか。もちろん、シャスティルと違って一人を除いてまだまともに戦力になるような状態じゃないときた。
いやあ、教会の聖騎士たちというから当然宗教関係者だし、魔王死スべし慈悲はない、というのがモットーな連中なわけですから、当たり前のように話が通じない狂信者めいたのが多くを占めているのかと思ってたんですよね。シャスティルが主導する事になった共生派は少数派でシャスティル孤立している、という話でしたしねー。
しかし、話してみるとまあ立場の違いやこれまでの経験もあって頑なだったり頭固いところも見受けられるものの、ほぼみんな理性的でちゃんと話が通じる相手だったのは望外のことでした……。
それ以前に、教会の中に魔王側の勢力食い込みすぎじゃね!? と思う所もありましたけどね! ラーファエルは今は魔王ザガンの一の腹心。シャスティルは共生派で同盟者でほぼ家族同然。聖騎士長の中でも最強と謳われているミヒャエルときたら実は魔王の一人だったりするし、オマケにザガンのお姉ちゃんなステラは本人も知らん間にミヒャエルの連れられて聖騎士やってて聖剣の継承候補までなっちゃったし、聖騎士たちに対魔術師用の武具を供給しているという伝説の技師オベロンときたら……。教会に魔王ウロウロしすぎ問題w
しかし、教会がここまで頑なではなく聞く耳持ってる、以上にわりとちゃんと和解できそうとなるとシャスティルの頑張りもあるけれど、ほんとに教会は敵役という役回りではないのか。
教会本拠の方は敢然と敵役ムーブしてくるものか、とも思ってたんですがミヒャエルだけでも相当なのに、オベロンさんの立ち位置が聖騎士たちが総力を上げて守護すべき存在、なんてもんに収まってるとなったらそりゃ敵対とか話にもならんよなあ。
それに、何だかんだと聖騎士長の主要なメンバーはなかなか気持ちの良い面々が多いですしね。少年騎士団長なギニアスくん、まだまだ未熟とはいえその心映えは立派だしいい子だし、ザガンの事を怒らせてしまいましたけど、あれはザガンが図星突かれてという面もあるので、バルバロスが言い負かされやがったー、と嘲笑ってたように一矢報いた、と言えなくもないんですよね。魔王とバレる前は何だかんだとザガンの事尊敬して目をキラキラさせていた風でもあるだけに、まだ今後も絡んで来そうだなあ。どういう関わりになるかわからないけど、ギニアスくんは伸びそう。
……そう言えば、フォルのお相手に関して、ラーファエルとザガンという最恐の二人の保護者による娘を欲しくば自分を倒してからにしろ、という前人未到の壁がそびえている、みたいな話が今回持ち上がっていましたけれど、ギニアスくんくらいなら候補になっても頑張れそうじゃね?

さて、現在進行系で娘にちょっかい出すやつは殺す、をラーファエルから凄まじいプレッシャーと共に実行されてしまってるシャックスくん。こいつ、ほんとに察し悪いくせにラーファエルいる場面で煽るように黒花とイチャイチャするんだよなあ。察しが悪いくせにすごく丁寧に黒花のこと女の子扱いしてお姫様のように接するんですよねえ。おまけに、察し悪いもんだからたびたび黒花の方から積極的にアプローチするはめになるし。黒花ってそのへん奥手っぽく見えるんだけれど黒花の方から押さないとシャックスってば暖簾に腕押しというかフラフラとどっか行っちゃう卦があるんで、黒花の方から捕まえに行かないといけない感じになってしまうもんだから、思いの外イチャイチャしてしまうスパイラル。
もう一つのカップルな、シャスティルとバルバロスの方はというと、バルバロスってあれで結構マメなんですよね。なんであの展開でシャスティルの好みとかプレゼントなにあげたら喜ぶか、の情報収集になるのかわからんのだけど、ちゃんと好きな女の子の好みを把握しようとしたり、プレゼントあげようと思ったりとか、実は無知なザガンなんかよりも女の子の扱い方を把握してるんじゃないだろうか、こいつ。ただ、ザガンよりもツンデレ激しい奴でもあるので、ついつい憎まれ口叩いちゃうんですよねえ、バルバロス。でも、その本意を間違えずにちゃんとわかってくれるシャスティルが理解あるカノジョすぎて、なんだかんだとお似合いすぎるカップルになってしまって、もう。
まあ、女子力ならぬ男子力が一番あふれてるのって、キメリエスだと思うんですけどね。特典小説での、あの大迷惑なゴメリばあちゃんの世話を焼きつつ、包容力あるところを余す所なく見せつけてくれるキメリエスさん、器が大きすぎるw

さて、目的の一つだったアザゼルの杖。なんか予想外というか、え?それなの!? というものだったんだけど、これ重要なキーアイテムなんだろうか。持ち主だったオリアスも、なんかそこまで大変なものとは思ってないみたいだし。
ザガンの浮浪児時代の兄貴分であるマルクの謎。世界がどうやら本来あるよりも小さく閉じ込められている、という話。そして、アルシエラが抱えている秘密。先代魔王のマルコシアスの怪しい足跡。最後に匂わされたザガンの両親の話。色々と核心へと近づくための伏線が、今回も色々と散りばめられていて面白くなってきた。
どうやら聖騎士たちも味方側みたいだし、一体何が待ち受けているのだろう。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 8 ★★★★   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 8】 手島史詞/COMTA  HJ文庫

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旧友マルクの行方を追うザガンだが、街では<アーシエル・イメーラ>という祭に向けて浮かれた空気が漂っていた。どうやらそのお祭りは、大切な人にプレゼントを送るイベントとのこと。
祭りに出遅れて右往左往するザガンとバルバロス、脳天気にも遊びにくるステラとアルシエラ。そしてなぜか黒猫の姿になってしまった黒花。彼女は何者かに追われており、どうやらこの事件もまた<魔王>が関わっている様子で――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第8巻!
帯の方にはあからさまに「メリクリ」とか書いてあるじゃん!
というわけで、クリスマスをモチーフにした聖人の生誕祭<アーシエル・イメーラ>を前にして各人の悲喜こもごも、というイベント目的だけでクリスマスと似たお祭りを創ったのかと思ったら何気にこの<アーシエル・イメーラ>という祭り自体がストーリー上の重要なキーワードとなっていたのである。
お祭り自体は教会主導でもなんでもなく、宗教的イベントというよりも大衆が楽しむためのイベントになっていて、その意味でも現代のクリスマスそのものなのですが、これ「誰」の誕生祭か、というのが何気に重要だったんですなあ。
まあその部分に関してはシリーズ通じての根幹につながる部分ではあっても、この巻の主題ではないので置いておいて、まずはクリスマス的イベントに向けての各人の動向にこそスポットがあたってくる。
ザガンとネフィに内緒でパーティーを開催スべく、ザガン一派の魔術師たちを巻き込んで密かに準備に勤しむフェル。ネフテロスとシャスティルという女性組で大事な人にプレゼントを送るためにこれまた準備に勤しむネフィ。ひとり、<アーシエル・イメーラ>なる祭りの存在自体知らないままマルクの痕跡を調べるために街に繰り出し、祭りの存在に気づくザガン。
そして、謎の存在に襲われて黒猫と化してしまい、運命の人と出会う黒花。
そんな幾つかのグループに別れて状況が進行し、また偶然行き合いながらラストに向かって収束していく、いつにも増しての群像劇となっております。
若い女性三人でキャピキャピしたガールズトークを繰り広げながら、ザガンへのプレゼントを買うためにちょっとバイトをしてみたり、お店を巡ってみたりとホント普通の今どきの女の子そのものなことをしているネフィが、もうこれ以上なく幸せそうでなんとも言えないですわー。ネフテロスとシャスティルもそれぞれ、こんな風に女の子同士で遊んだり買い物したりバイトしたり、なんて経験をするような境遇ではなかったでしょうから、いやはや良い時間を過ごせてますなあ。
その出自から、浮浪児でも知ってる<アーシエル・イメーラ>の存在自体を知らなかったザガンですが、その段階からちゃんとお祭りの存在に気づき、そのお祭りの内容についてもちゃんと知って、ちゃんとネフィへのプレゼントを用意出来てしまうのだから、その卒の無さは侮れません。なんだかんだと彼って着実に正解へとたどり着く堅実さには定評があるんですよねえ。
プレゼント、ネフィだけじゃなくて知り合いみんなに用意するあたりがこの魔王の可愛いマメさなんだよなあ。
一方で今回の主役でもある黒花。故郷や家族を滅ぼされた仇討ちのために魔術師を目の敵にして教会の刺客として暗躍してきた過去は、やはり未だに彼女に引っかかりを覚えさせていたんですね。ネフィからの提案である、魔術によって傷つけられた目を治せるかも、というそれに応えられずに保留していた理由がそれだったのか。
しかし、かつての仇の残滓とも言える希少種狩りの出現と、思わぬことから黒猫と化してしまった黒花をただの猫と勘違いして助けた、ザガン派閥下の医療魔術師であるシャックスの登場が彼女の停滞を解き放つこととなるのである。
黒花の過去に大きく関わっているこのシャックス。これぞ冴えないおっさん、という感じの草臥れていささか鈍くて自己評価も低い枯れたおっさんなんだけれど、拾った猫相手ですら手厚く世話してくれて、命がけで助けてくれるような優しいおっさんなんですよね。やる気なさそうに見えてやたら真面目なところなんぞ、生真面目な黒花とお似合いとも言えるんですよね。まめまめしそうな黒花って、他人に優しく自分には優しくないタイプの草臥れたおっさん相手だと、まめまめしく世話しそうですし。それでいて、このおっさん包容力ありまくるので肝心なときは絶対に守ってくれそうなのでちっこい黒花とすれば安心感ありますし。
黒花って、別に年上趣味じゃないとは思うのですけれど、義父であるあの凶顔の執事さんに大事に育てられた分、年上の人に対しての寄り添い方というものを心得てる風があるんですよねえ。
ただ、シャックスのあの鈍感さは、恩義としても親愛としてもまだあるかわからない恋情にしても、ちゃんとキャッチしてくれなくて、黒花が空回りしまくりそうな気もするのですが、誤解してても勘違いしてても、そのから回っている上から受け止めてくれそうな包容力があり、どう転んでも黒花を泣かしたり辛い思いをさせることだけはなさそうな、新キャラながら大した存在感を示してくれたキャラクターでした。ラーファエル執事長にもれなくぶっ殺されそうですがw

あと、さらっと明かされたゴメリ婆ちゃんとキメリエスの出会い。二人が常々言ってる腐れ縁、なんてもんじゃないじゃないですか! 今ではキメリエスの方が保護責任者みたいな扱いで暴走するゴメリ婆ちゃんを引き受けてる感じですけど、最初の様子だともうガチンコでゴメリ婆ちゃんがキメリエスのお母さんみたいなもんだったんじゃないだろうか。母にして姉にして育ての親みたいなもので、果たしてどれだけの想いがあれば、キメリエスを今の紳士で聡明な人物へと仕立てあげられたのか。キメリエスとしても、恩人という一言では済ませられない関係ですよね。この二人に関してはまだまだ踏み込んでいけそうな余地があって、先行き楽しみである。

前回予期せぬ再会を果たした幼馴染のステラも、ちゃんともとの人格を取り戻して今度こそ本当の再会を果たすことが出来て、なんかもう完全に「お姉ちゃん」枠としてでかい顔をしだすw
でもこの姉というのが何気に重要で、嫁であるネフィと娘であるフォルという家族は既に出来ていたのだけれど、ザガンを子供の頃から知っている姉という存在はネフィとは違う意味で家族であり、ネフィにとってもお姉さんになるんですよね。もうひとり、家族が加わった、戻ってきたわけだ。
みんながプレゼントを送り合うパーティーの様子はもう幸せの造形そのもので、見ているだけで心がほんわかしてくる。そんなラストに、幸せのただ中にあるみんなから誕生日を祝福される人がひとり。みんなからの「おめでとう」の言葉が響く夜。ラストの恥ずかしがりながらも口元がどうしても緩んでいる「彼女」のイラストが最高でした。
次回あたりは、もう一度ネフテロスへの試練が待っていそう。いや、ネフテロスというよりも彼女へと想いを寄せる彼への試練か。ちょっとラーファエルどころじゃなさそうだぞ、お父さんは許しませんよ圧がw

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 7 ★★★★   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 7】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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せっかく海に来たということで、海で遊ぶことにしたザガンたち一行。海といえば水着! ということで着替える面々だが、男性陣は女性陣の麗しい姿にタジタジ。
それでも仲睦まじく過ごしていたザガンとネフィだったが、彼らの前に聖騎士長と呼ばれるミヒャエルがその姿を現す。
どうやら敵対するつもりはなさそうな、軽い調子の彼からもたらされた情報によると、<魔王>の一人を撃破した魔術師が次なる標的にザガンを狙っているらしく――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第7巻!

それが伏線とは気づかんわー! いやさすがにこれは後付だと思うんだけど、うまいこと話に乗っけて膨らませてくるなあと感心させられる。マンガ連載の方はちょうど該当箇所に差し掛かっていたので、
このあたりきっちり描いているみたいですけど、もし漫画がこの場面まで行くとしたらかなりシリーズ続くことになるんだが、あの作品非常にできの良いコミカライズなので、出来たら続いて欲しいものであります。
しかし、師匠に首輪つけられたにも関わらず、命がけで遊びに来る、というか少女たちを愛でに来るゴメリ婆ちゃんがなんかもう色んな意味で輝いてるよ。このお婆ちゃん、確かにラブコメを映えさせ進展させるのに尋常でなく役に立つキャラクターだけに、作者も使いやすいんだろうなというのは強く感じるところであります。なにしろ、放り込んでさえしまえば周りを巻き込んで誰彼構わずラブコメ時空へと突入させてくれるし、いい具合に男性陣も女性陣もバカになりますものねえ。
魔王と最高峰の魔術師たちが集まって、なに「REC」の魔術創作しちゃってるんだこいつらわ。正確には念写寄りみたいですけど。これって脳内妄想も映像化画像化出来かねないので、ゴメリ婆ちゃんが使えるようになると非常に危険である。
それはそれとして、ゴメリ婆ちゃんも愛でられる方にそろそろ回ってもいいと思うんだけどな。キメリエスとの間について突かれたときの反応を見ると、えらい可愛いことになりそうですし。
どうなるかと思われてたシャスティルとバルバロスの件がトントン拍子に進んじゃってるのを見るとねえ……いや、この二人進展早すぎだろう! シャスティルもバルバロスもまさかここまで早く自覚してテレテレになるとは想像してなかった。特にバルバロス! お前純情中学生か、というくらい初々しい反応で。もっと根性ひん曲がって紆余曲折たどるかと思ったのに、案外素直なのな!
初期のザガンとネフィみたい、とか言われてるけれど、自覚がある分二人のときよりもよっぽど甘酸っぱいことになってますよ。
それに比べて前途多難なのが、ネフテロスとリチャードの方でしょうか。ってか、リチャードのがどうしてもぽっと出すぎてキャラが確立してないんですよね。というよりも個性が足りてないというか。いやもう、いいヤツで性格もイケメン、騎士らしい騎士として格好いいですし、個人的には非常に応援しているので、もっと頑張ってネフテロスから意識されるようなキャラかエピソードを持ってきてあげて欲しいものです。なぜか、お義兄ちゃんなザガンがうちの義妹はやらん状態から速攻で密かに応援モードになっていたのには笑ってしまいましたが、気持ちはわかる。ザガン的にも力足りずとはいえこういう一途なタイプは、気にいるでしょうし。
これだけキャラが増えると、いかな主人公でみんなのご主人様である魔王でもあるザガンとは言え、一人ひとりに目配りするのはともかくとして、一人ひとり丁寧に踏み込んで助けて、とはいかなくなるんですよね。いや、出来なくはないのでしょうけれど、人間関係が一方的なものになるより多角的になる方がまたいいわけで、内面的に追い詰められているその人の心に踏み込むのは別に違う人でもいいのであります。家族もいるし、親友同士という関係も居る。そうやって、リリスと黒花の二人でザガンやネフィが介在せずに問題を解決できた、というのはファミリーとして良い形なのではないでしょうか。ちゃんと見守っているあたりが、ザガンとネフィ、みんなのお父さん役お母さん役にちゃんとハマってますし。
さて、ストーリーの進展の方もアザゼルという存在の謎について色々と仕込みが入ってきましたけれど……また他の魔王出てきましたけれど、何気にどの魔王さまも実はまともな人ばかりじゃないですか!? いやまあネフテロスの親たるビフロンスはかなり歪んでましたけれど、彼は彼なりに純朴な愛情を持ち得ている人でもありましたしねえ。
オリアスにしても、ザガンの先代となるマルコシアスにしても、非常に真っ当な部分を有していたわけですし。そうなると、魔王たちが対抗措置を練っている外なるモノ。魔神たちのヤバさが浮き上がってくるわけで。なるほど、仕込みは着々とって感じですわな。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 ★★★★☆  

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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娘が大きくなったが、俺が小さくなった!?

フォルの強くなりたいという願いのため、一時的に成長ができる魔術を使用したザガン達。だが、儀式の暴走で、フォルは大きく、ザガンが小さくなってしまった!
オリアスの助言から、魔術とは違う力を求めたザガン達は、極東にて執り行われる“大陸種族長老会議"に出席することに決める。
そこで待ち受けていたのは悠久の時を生きる夜の一族の一人・アルシエラ。会ったことのないはずの彼女はどうやらザガンとネフィを知っているらしく――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第6巻!
今回もうタイトルと真逆で、嫁エルフのネフィの方がちっちゃくなったザガンを愛でまくるという、ネフィ無双回でありました。
ネフィも強くなったよなあ。能力的なものではなくて、威厳というか貫禄というか。実力的には彼女を上回る魔術師たちはなんぼでも居るのに、誰もネフィに頭あがらない状態になってましたし。
ザガンが小さくなったところで、以前のネフィの幼児化と違って彼の精神状態や記憶は大人の彼のまま、まあ若干容姿に引きづられている部分はあるにせよ、魔王ザガンが居なくなった、というわけではないにもかかわらず、ナチュラルにちっちゃくなったザガンを膝にのせて頭をなでながら、玉座のの上からザガンの配下たちを凄まじく恐ろしい笑顔で見回すシーンなんか、完全に魔王の王妃さま、魔王城の女主人、て感じでしたもんね。
みんなから、怒ったネフィ怖ぇぇ、とビビられる貫禄たるや。
初登場当初の無感情で殆ど反応を見せない頃のネフィ。心開いてた頃のでも内気で儚げだった頃のネフィと比べても、格段の変化である。ほんと、感情ゆたかになったよねえ。それでいて、怒っていても笑っていても、ザガンを撫で回しているときも、どんな表情も絵になる。かわいい、とにかくかわいい。
そりゃイチャイチャしたくなりますよ、こんな奥さんいたら。今回はむしろ奥様にイチャイチャされる方、愛でられる方、可愛がられる方になってましたけれど、ザガン氏。
恋人に成り立てで初々しい関係の頃というのはどうしても両者手探りになってしまいガチなんですけれど、ザガンが小さくなったことでネフィがもう無意識領域でザガンのこと抱っこして離さなくなってしまったので、微妙な距離感とかもう関係ないよね、みたいな感じになってしまったのはこの際イイ方に作用したのでしょう。まあ、放っておいても順調にデートして順調にいい感じになってた気もしますけれど。今の二人の場合、何がどうなっても順調に進展しそうなんだよなあ。

一方で、好きな人と両思いになったことに浮かれてばかりではなく、ザガンってしっかりとフォルに対して父親してるんですよね。手探りで色々やってはいるものの、過保護にはせず、しかし突き放さず本当に真剣にフォルのことを考えて、彼女の成長に手を貸しているのがよくわかるんですよ。まだ若いしフォルぐらいの歳の子を育てるにはそういう経験も少ないだろうに、またそれを自覚して彼自身悩みながら、失敗したんじゃないかと不安になりながらも、ものすごく愛情深く、健全な成長の促し方をしているのである。
いや、話聞いているだけでも父親としてすごく頑張ってるし、ちゃんとやってるんですよ。めちゃくちゃ偉いですわ、この魔王様。敬服します。自分ひとりでやってしまわず、周りの経験多い年長者たちの意見も聞いたりしているので、そのあたりの対応も偉いですし。周りの人たちも、変人揃いではあるんですけれど、なんだかんだとしっかりしたちゃんとした大人ばかりだから、ちゃんとした実りある意見もくれるし、親身になって一緒に考えてくれるし、周りの人たちにも恵まれてるんですよねえ。
その人材も、ザガンの魅力とカリスマによって集まってきた人たちなので、まさにいい意味での自業自得なのですけれど。

そう言えば、このまま曖昧に進むかと思われたシャスティルとバルバトス、変に濁してなあなあで流していくのではなく、双方に自覚を促してちゃんと関係を向き直させるあたり、本作って容赦ないというかそのあたり躊躇なしというか、凄いよね。
シャスティルは第三者からあっさりと、バルバトス君のこと好きだよ、と告げられてめっさ意識しだすわ、バルバトスの方は意外なことに自分で自覚があったみたいで、真剣に悩みだしてるし。
この二人は二人でなんとかうまいこといって欲しいものであります。
ネフテロスの方にも、彼女に好意を抱く騎士みたいなのが現れてるけれど、こっちはどうなんだろう。ネフテロスまだ精神年齢的にも子供だしなあ。
しかし「お義兄ちゃん」は定番だけれど、定番だけに強烈だった。ひゃあ。
これ、ようやくネフテロスが妹みたいな存在だってネフィが知ったわけで、まだ戸惑ってる状態だけれど、ネフィの性格からするとすぐにこう……猫可愛がりしだしそう。フォルの可愛がり方や、ザガンが小さくなったときのあの「愛で力」を見れば、わかるというものである。絶対、この妹可愛がりまくる、うん。ネフテロスも何気に屈指の可愛がられ上手だもんなあ、この娘。なんだかんだと、シャスティルにも可愛がられてるし。
くそう、どのシチュエーション、どのキャラクターを見ても全方向愛で甲斐のある場面、光景ばかりで、愛で力の教祖であるところのゴメリばあちゃんがここ数巻ほどテンションあがったまま全く落ちないでひたすら暴走し続けてるの、気持ちわかるよ。どこ見ても愛で甲斐ありすぎてテンションさげる隙が一切ないものねえ。
ほとんど、ゴメリばーちゃんと同じテンションでニマニマしてますよ、こっちも。ネフィとザガンのそれも順調に進展していて、まだ仲が深まるの?と思ってしまうくらいまだまだ仲良くなっていく、愛情が深まっていくザガン・ファミリー。まったくもって、善き哉善き哉。

シリーズ感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?5 ★★★★☆   

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 5 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?5】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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盲目の獣人少女と聖剣の謎とは――。

気持ちを通じあい、順調に仲を深めつつあるネフィとザガン。ようやく恋人となった彼らだが、そもそも恋人というものがどういうことをすればいいかわからない。
アドバイスを聞き、デートとやらをすればいいことを知ったザガンは下調べに街を散策する。
そこで偶然にも助けた盲目の獣人少女・黒花は、新たに教会へと派遣された司祭だと言う。
そして一方、出自を知ったネフテロスはビフロンスのキメラに追われてザガンの領地へと逃げ込んでおり――。
大人気ラブコメファンタジー絶好調の第5巻!

尊い!!

なんかこの尊いという概念がわかったような気がする。自分解釈だけれど。
ネフィとザガンのイチャイチャっぷりって、ダダ甘なそれだけじゃなくて、二人とも常にお互いのことを思いやり気遣い考えて居るが故にそうなってるという部分が大きいんですよね。
で、本作はそんなメイン二人だけじゃなく、沢山いる登場人物みんながそれぞれに他の人を深く思い遣っているのである。それは恋情だけでなく、親子の愛情だったり師弟や主従の情であったり、友情であったり、様々な形をとっているんだけれど、他者を想うという意味で共通している。それが、みんなこう、深く胸を震わせる熱かったり優しかったりする想いなんですよね。
シャスティルとネフテロスの友情然り、ザガンとフォルの親子の愛情然り、ラーファエルと黒花とのそれ然り。それらもみんな、それぞれふたりだけで閉じているわけじゃないのだ。キャラクターたちの中にある優しさは特定の1人だけに向けられるものではなく、今やザガンとその愉快な仲間たちの間で蜘蛛の巣のように張り巡らされ、行き来して相互に思いやりが行き交ってるのである。
だから、もうどの方向を向いても、全方位で思わず「尊い!」と両手で顔を覆ってしまいたくなるような優しさが交わされているのである。信頼であり、親愛であり、友情であり、愛情である、温かなものが繋がり、結ばれあっているのである。
だからこそ、余りにも一方的だったビフロンスのそれは、孤立し敗北してしまうのである。もっとも、無慈悲で残酷な情の欠片もないただ享楽のままの行為がビフロンスという魔王の行動原理なら、それはもう敵ですらなかったのだろうけれど、形は違えど彼のネフテロスへの想いもまた、愛情だったわけだからなあ、たとえ歪んだものであったとしても。
しかし、それを堂々と指摘できるまでになったザガン、最初の頃の愛だの優しさだのを概念そのものから知らなかった男からすれば、凄まじい成長である。特にこの巻からは、ザガンって意識的に在り方変えていっているんですよね。
バケモノとしての魔王ではなく、「王」たるものとして魔王となる。その意識と目標を確立したからか、尋常じゃない風格みたいなものが出はじめている。
そんなザガンをして、背中を預けることのできる盟友、とある意味対等以上の評価を得ているシャルティス。プライベートのポンコツはどこへやら、今回はお仕事モードだったせいかお前誰だよ、と作中のキャラたちからもツッコまれる頼りになる聖騎士さまっぷりで。それ以上に、心身ともにボロボロになったネフテロスを助け、彼女のためにガン泣きしながらネフテロスの心を守りきったシャルティスがもう存在そのものが尊い!! ある意味、もうひとりの主人公、と言って過言ではない存在感を示してるんですよね。
今回、メインキャラの幾人かはザガンの元ではなく、シャスティルの元へと落ち着いちゃったわけですし。緩やかではありますが、ザガンの魔王軍とシャスティルの聖騎士団の2つのグループが出来上がってきてるわけだ。とはいえ、両者の関係は今すごい良好な協力体制にあるのですが。まさか、ザガンとシャスティルのトップのつながりだけではなく、末端の騎士と魔術師の関係も普通に密接になってるとは思わなかった。
今回、シャスティルがついに失恋を自覚してしまったわけですけれど、その分バルバトスくんがすごい健気に頑張っているだけに、報われてほしいのう。何気にキメリウスがゴメリ婆ちゃん気にしてて、思わずニマニマしてしまった。ゴメリ婆ちゃん、他人のラブコメ楽しんでる前に足元確認した方がよかないですか!?
今回、結局デート本番までたどり着けなかったので、次回こそデートに漕ぎ着けられるか否か。わりともう膝枕とかマフラーとかで十分お腹いっぱいなんですけど、デートは別腹ですよね、はい。

シリーズ感想

魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。2 ★★★★   

魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。2 (GA文庫)

【魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。2】 手島 史詞/玖条 イチソ GA文庫

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カズキはアストリッドと新婚旅行に出発。向かうは勇者の待つ王都!?厄介事に巻き込まれたアスマに請われ、手助けすることになるが…。遂に訪れた愛する少女との初夜?カズキの忠誠心と理性を粉砕する、甘々な出来事が頻発する事態に!!そんななか、前勇者の仲間、剣聖と出会い、カズキは天使と女神の遺産を巡る陰謀に巻き込まれる―絶対絶命の危機に瀕したカズキは真の自分に覚醒する!?絶対に結ばれてはいけない二人暮らし、第二弾!!
魔王さまの焦らしプレイが厳しすぎる!
ただ可愛い娘に手を出そうものならただじゃ置かねえ、てならわかるんですが、娘の貞操を守るために様々な防衛策を講じているのかと思いきや、やってることは真逆で娘とカズキを新婚設定で人の街に送り込んだり、今回に至ってはハネムーン名目で旅に送り出し、旅先の宿では夫婦一部屋ベッドも一つ、なんて据え膳状況を演出しているわけですよ。娘を守るどころかむしろ、いつでも美味しく食べてどうぞ、というのを魔王さま本人が提示しているわけである。娘のアストリッドはカズキくんラブラブでむしろばっちこいな心持ちで、魔王さまが用意してくれたシチュエーションに完全受け入れ体制どころか火が付いてアストリッドから襲い掛かってきそうな勢いになってしまっているし。
ここまでお膳立てしておいて、だがしかし娘に手を出した日にはきさまわかってるんだろうな? とか言われたら狂死ものである。何気に、娘に手を出す云々以外では魔王さま、カズキの事を部下というよりも息子同然にかわいがってくれてるだけに尚更に。
忠誠心を試している、という風でもないんですよねえ。娘の父親として本能でついつい牙を剥いてしまうものの、実際そうなっても構わないというどころか、娘とくっついて欲しいと考えていそうなのは間違いなく、じゃあ要らんこと言うなよ! と抗議したくなるのはカズキよりもお目付け役として派遣されたカラスの爺さんなんじゃないだろうかw 一番苦労してるもんなあ。
とまあ、カズキくんの理性が石臼でゴリゴリとすり潰されていくような状況はさておいて、天使と呼ばれる謎の存在にまつわる陰謀が魔王軍と人類軍の抗争の裏で暗躍している事が段々明らかになってきたわけですけれど、そこにもろに先代勇者とその仲間たちの謎が絡んできましたなあ。
まず、今の勇者とカズキがどうやら先代勇者の息子であり兄弟であるっぽい、というのは前回で明らかになってたんだけれど、そこにどうやら今の魔王様と先代勇者が戦友っぽかった、という話が加わり、さらにカズキたちの母親の話がさらに別の方向から謎を割増する形で放り込まれてきて、と一世代前の勇者たちと魔王さまとの間に一体なにがあったのか、というのがさらに気になるように謎が深まってるんですよね。そこにレミィの存在がさらに拍車をかけるわけで。
いや、そのままでも普通にレミィの存在って謎だったのに、さらに新しい設定をぶっ込んできたからなあ。そもそもからして、肝心の魔王様が何者なの? というところがあるし。ただの魔族というには存在そのものが浮いてるところもあるわけですし。
気になる気になる〜〜。

1巻感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 4 ★★★★☆   

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 4 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 4】 手島史詞/COMTA  HJ文庫

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ネフィの故郷に里帰り!

ハイエルフについて調べるため、ネフィの故郷へ向かうザガンたち。彼らはそこで、時間を歪ませる結界に捕えられてしまう。
さらに――最愛の嫁であるネフィが幼女になってしまった!? 甘えん坊になったネフィは、これはこれで可愛い。
が、愛しい少女をこのままにしておくわけにもいかない。ザガンたちは、ネフィに幼女化の呪いをかけた犯人を見つけ出すことはできるのか――。
無愛想魔王と箱入りエルフが贈る大人気ラブコメファンタジー、絶好調の第四巻!
ゴメリばあちゃん、やりたい放題だな!! 前回ザガン閥に加わった魔術師たち。ゴメリばあちゃんやキメリエス。もっと目立たないポディションに収まるのかと思ったら、メインメンバーの中に堂々と加わって、端っこでおとなしくしているどころかゴメリは「愛で力」について主張力説して状況を引っ掻き回し、キメリエスはメンバー随一の常識人&モフモフ枠として勘所を押さえまくり、と見事に自己主張を強えることに。作者の最初期のシリーズ【影執事マルク】でもそうだったんだけれど、手島さんってむしろ味方サイドの人数を増やしてみんなでワイワイガヤガヤやり始めた時の方がむしろ全員キャラが連動して動き出す傾向がある気がするなあ。人数増えれば描写が割かれる割合が減るはずなんだけれど、不思議と全員の存在感が増し増していく感すらあるのがまた面白い。
それにしても、なんかもう多幸感がたまんないんですけど、ほんまに。相変わらずの糖度増々なネフィとザガンは毎度のことなんですけれど、彼らの場合それが「二人の世界」で完結していなくて、周りの仲間たちが二人を祝福してその幸せのために全力を尽くしていて、ザガンとネフィの方も自然とみんなが笑顔になれるように力を尽くしていて、そんな往還が見ているだけで幸福感を感じてしまうような光景を作り出しているのである。そんな中に、前回は悪役をハッていたはずのダークエルフのネフテロスまで普通に混ざっていて、本人行きがかりと成り行きで今回のネフィ帰郷ツアーに参加してしまったにも関わらず、違和感なくメンバー入ってたもんなあ。当人、気まずいものがあったかもしれないけれど、そもそもザガンに会いに来たの前回便宜図ってくれたことに対してのお礼に訪れたという何気に礼儀正しいというかきっちりした部分から来るものでしたし、そもそも悪役な役回りを嫉妬やら誤解から担ってしまったけれど、根本的にネフィに負けず劣らずのいい娘なわけですから、ちゃんと優しくされるに相応しい娘でもあったんですよねえ。
何気に、次回はこのネフテロスの出自が問題になってきそうだけれど、これだけ縁が出来て仲良くなってしまった以上、ザガン閥の面々が放ってはいけんわなあ。
しかし、一番悪党らしかったバルバロスまで随分と丸くなったもので。まさか、シャルティスとここまでいい感じになってくるとは思わんかったけれど、シャルティスはあの娘報われないオーラをバリバリ出しまくってただけに、意外とあの面倒くさいバルバロスに構ってる方がしっくり来るのかもしれん。シャルティスが手が掛かる部分はバルバロスがマメに面倒見てるみたいだし。なんか、二人でお互い面倒みてるわけですからねえ。あのシャルティスの自他ともに認める極めつけの弄られっ子属性は色んな意味でどうしようもないけれど、彼女がイジられることで本人含めてみんな幸せになれるのならそれはそれで。プライベート限定みたいだし。仕事モードだとキッチリシャッキリする、ってこれまでの四巻お仕事モードならなかったのかよ、結構修羅場もあったよね!?
何にせよ、正しい意味での里帰り、帰郷、ご挨拶という形にストーリーも展開し、ザガンとネフィのイチャラブという観点においてはまったくブレずに一直線に進んでいるのもお見事というかなんというか。でも、もう読んでるだけで幸せになれる一冊でした。ふわぁ。

シリーズ感想

魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。 ★★★☆   

魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。 (GA文庫)

【魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。】 手島 史詞/玖条イチソ GA文庫

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魔王軍の騎士のカズキは、魔王の娘アストリッドのコミュ障を治すため、二人で田舎暮らしすることに。カズキは護衛に徹するが、アストリッドは新生活にノリノリ。かいがいしく世話を焼き、可愛い仕草でカズキを無自覚に誘惑!?過ちを犯せば死罪だが、理性はもう限界に…。そんななか、カズキの宿敵、勇者と神官が現れる。所構わずイチャつく二人のバカップル振りにあてられ、アストリッドの行動は大胆に―。カズキ!絶対に結ばれてはいけない(?)、二人暮らしを死守せよ!!
これ魔王さまわざとだよね!?
いや、本気なのか? 本気だとすると天然すぎるし、カズキのこと信頼しすぎて拗らせてるw 娘のアストリッドへの偏愛と同じくらいカズキのこと息子として愛情を注いでるって事だろうに、その両方を連結して考えられてないあたり、親ばかの拗らせっぷりが本当に酷くてなんともはや。
タイトルからして、もっと深刻でお互いに愛し合いながらも決して結ばれてはならない残酷な事情があるシリアスな話なのかと勘違してたんですけれど、これって障害らしい障害って魔王さまの親バカさだけじゃないのさ。それも、魔王さまむしろカズキのこと凄い可愛がっているので、もうあとはボタンを掛け直せばいいだけじゃない、くらいの安牌にも見えるんだけれど。まあ、次期魔王になるはずの娘を愛しすぎて籠の鳥にした挙句にコミュ障にしてしまった魔王さまの偏愛っぷりは、矯正するのハードル相当高そうなので、最初から義理の息子の好感度マックス、くらいないとなんともならないのかもしれない。
それにしても、何故か一緒に行動することになってしまった好敵手である勇者カップルの方がまた良いイチャイチャっぷりで。こっちはこっちで幼馴染特有の無自覚な熟年夫婦なんだけれど、これは見てたらアテられるわなあ。度々殺気を漏らしてしまうカズキのそれを神官の姉ちゃんが怪しむ場面があるんだけれど、あれ敵である勇者への殺意なのかそれとも変な縛り入れられてる自分たちと違って野放図にイチャイチャしまくるリア充への殺意なのか、わりとカズキ本人もわかってないよね、あれ。
目の前でイチャつきまくる勇者カップルに「おのれー」となってるカズキだけれど、読んでるこっちからするとアンタたちも大概だよ、とは言いたくなるよね、これ。むしろベタベタ甘酸っぱいやりとりはカズキ・アストリッド組の方が濃いくらいで、貴様ら魔王さまの釘刺し絶対忘れてるだろう、覚えててももう無視しに掛かっちゃってるだろう、と言いたくなってしまった。
まあでもね、兄妹じゃなくて夫婦設定にしたの魔王さまなので、どう考えても魔王さまが悪いよね。わざとにしても天然にしても意地悪すぎるのか、むしろ後押ししているのか本気でわからん!!
どうやら魔族と人間との対立構図は、単純な聖と邪の争いなどではなく、勇者と魔王の関係。それに幼い頃から魔王の元で育てられたカズキの出自も含めて一筋縄ではいかないことになっていそうで、でもこれ色んな意味で優しい世界よね。


手島 史詞作品感想

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している ★★★☆  

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している (ファミ通文庫)

【僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している】 手島史詞/烏羽 雨 ファミ通文庫

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美坂亜理寿10歳。職業は魔法使い。

浪人生になってしまった九条篤志。バイト先の珈琲店でおいしい珈琲を淹れることに腐心する日々の中、気がかりが一つあった。それは店の片隅で平日の昼間からランドセルを傍らに珈琲を飲む亜理寿のこと。そんなある日、魔法使いを自称するその少女から篤志はある悩みを打ち明けられて――「人を殺してほしいようなことを言われました。断ると今度はわたしが殺されてしまうそうで、少しだけ困っています」。――これは小さな魔法使いと若い珈琲係【バリスタ】が紡ぐ奇跡の物語。
タイトルは「僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している」だけれど、別に「僕」の珈琲店じゃなくて単にバイトしている店だし、JS魔法使いは別に店に居候しているわけじゃなくて普通に常連客として来店しているだけのような……。
むしろ、亜理寿とボンクラ店長との関係を考えるなら、僕の珈琲店じゃなくてアリスの珈琲店と言った方が誤謬は少ないんじゃなかろうか。
とか細かいところはまあどうでもいいとして、客が少なくても別に気にしなくていい個人経営の店って、色んな意味で最高ですよね! と、ぼんくら店長のあのやる気の無さに逆に店の潰れなさそうな雰囲気が伝わってきて、なんとも羨ましくなってくる。店の一切は九条くんに任せっきりですしねえ。
こういう店は変に客引きしないで、むしろ閑古鳥ないていた方がいいのかもしれない。繁盛してしまうと、頑張らないといけなくなってしまいますもんねえ。
でも、繁盛してアリスがエプロンして給仕してくれるような絵面になったら、それはそれで可愛らしくて良いのだけれど。小学生を働かせて店長サボってたらそれこそ末期なのですが。
本作の魔法使いはゲームみたいなそれと違って、古式ゆかしい伝統的な魔法のそれ。「魔法遣いに大切なこと」とか「ふらいんぐうぃっち」の類と思ってくれれば間違いはないだろう。アリスもまた、魔界から現れる怪物たちと夜な夜な戦う魔法少女ではなく、占いを嗜み異界に交わった障りを解き、時折持ち込まれる依頼や相談を請け負うわりと渋めの仕事人なのである、なんて言ってしまうとやはり大間違いか。大っぴらに魔法のこと承ります、と広告うっているわけではなく、彼女の依頼が持ち込まれる展開って本巻では少ないんですよね。あらすじにも載ってる一件だけじゃなかろうか。それもあんまり正式な依頼じゃなかったみたいだし、他はむしろ九条くん絡みで巻き込まれたことにアリスが助言や手助けをする、という形で短編連作とはいえ、アリスはあんまり主体とは言えないのである。ちゃんと九条君が主人公をしている、というべきなのかもしれないけれど、魔法や不思議な異界側の出来事、との遭遇という意味でもちょっと踏み込みが浅いというか、珈琲店の雰囲気も含めたこの不思議な静けさをまとった魔法の世界に、もっとどっぷりとハマった話を期待していた身とすると、ちょっと俗世の九条くんの側によってそこから魔法の世界を垣間見る、というもうちょっと首まで浸かりたい気分からスルと物足りなかった気がしないでもない。
それをしてしまうと、むしろアリスとしては気が気がないことになってしまうかもしれないけれど。でも、それほど危ない世界、というわけでもなさそうなんだよなあ。禁忌やヤバい魔導書がどうの、というのも少なそうですし、何しろアリスの師匠があんなんですからねえ。もうちょっと魔法の世界について色々と踏み込んで知りたいところでしたが、それを最も深く垣間見ることになるラストの話が、逆に大仰というか舞台のひっくり返し方がそれまでのアリスと一緒に覗いた魔法の世界とはスケールが違いすぎてて、若干その幅についていけなかった感もあるんですよねえ。
いや、そこまで大幅に改変してしまって大丈夫なのか、とか。あと、九条くんに生じていた異常って結局原因わからないままだったんだろうか。件の改変となにか関わりがあるんだろうか。いうほど話に関わって来なかったムキもありますし。
せっかくなので、もうちょっと小学生と浪人生のイチャイチャ?するような状況が発生してくれると、まあむにゃむにゃ……。アリス的にはもうバシバシ狙いすまして射掛けている節もありますし。

手島史詞作品感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?3 ★★★★   

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?3 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?3】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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魔王の主催する船上パーティにご招待!

執事と娘が増え、賑やかになったザガンの居城。相変わらず不器用ながらも距離を縮めるザガンとネフィだが、突然ネフィが町で襲われるという事件が起こる。
襲ってきたのは――肌の色の違うネフィに良く似た少女だった! その事件の直後、ザガン宛てに魔王の一人から船上で行われる<夜会>への招待状が届く。
城のメンバーたちはその船上パーティへと、おめかしをして赴くが――。無愛想魔王と箱入りエルフが贈る大人気ラブコメファンタジー、豪華絢爛な第三巻!
イチャイチャの仕方が尋常じゃなくダダ甘っ!! こ、この男、この魔王。少女系レーベルのイケメン王子さまでもなかなかやらんようなことを、本人よくわかってないながらやりやがる!
彼のすごいところは、本来は全然女の子慣れ以前に人慣れしていなくて、コミュ障気味にも関わらず、そこで選択する慣れないまま無理やりひねり出した、覚束ない当人としてもアップアップで場当たり的な行為が、むしろ大正解なところなんですよね。普通だとこういうパターンだとトンチキなことをやらかして、しかしちょっと和んでヒロインの子が笑ってくれて、気まずいようなほのぼのしたような、くらいが関の山にも関わらず、ザガンの場合あたふたしながら、女心的にはどストライクな言動をドカンドカン放り投げてくるものだから、もうネフィにしても他の子たちにしても、もうメロメロにされてしまうところなんですよね。うん、わかる。いきなり膝の上に座らされて、とか鼻血もんだよな、ネフィさん。
何気にこうやって本人わかってないのに正解な選択をしまくる、というのはイチャイチャモードに限らず、ネフィが何か言おうとしているのを急かしたり無視したりせず、ちゃんと待ってあげるよー、と言って待ってあげたり、執事にして元敵対者の聖騎士団長だったラーファエル相手の対応にしても、今回はバルバロスや他の魔術師、キメリエスなんか相手でも「ベスト・コミュニケーション♪」を成立させまくってるんですよね。
ただ、勘違いモノと違って、ザガンが意図していないわけじゃなく、ダーツの素人が投げ方とかわかんなくてとにかくえいやっ! と投げまくったらみんな真ん中に刺さった、みたいな感じというのが一番近しいか。コミュニケーションに慣れきった人間の人誑しとも、勝手に向こうが勘違いしてどんどん上手く行ってしまう勘違い系とも違って、ザガン本人の一生懸命想いを伝えよう、ネフィを大事にしよう、フォルを慈しもう、という健気なまでの頑張りが伝わってくるので、よけいほっこりしてしまうのである。
その分、シャスティスや他の魔術師たちへの対応は結構辛辣だったりスルのだけれど、ザガンって根っこが善良なのか、冷徹で人を人とも思わない魔術師の王でありながら、ちゃんと罪悪感感じられる人なので、多分に良い子なネフィなんかが嫌がるからなあ、という理由もあるのだけれど、ザガン当人も情が移った相手はかなり大事にするし、バルバロス相手でもぞんざいに扱いながらさり気なく彼の良い所、ちゃんとしてるところを目ざとく見つけて、仕方ないなあとばかりにフォローしたりしてるし信頼もしちゃってるんですよね。バルバロスに関しては、向こうもザガン笑えないくらい真面目に頑張ってしまってるのだけれど。
と、そんな情が移っても変じゃない知り合いだけじゃなく、良く知らない相手でもなるべく死なせないように立ち回り、手をつくしてるの。別にネフィに頼まれたからではなく、わりと自発的に動き回ってるんですよね。
そうこうしているうちに、ザガンが慕われ派閥みたいなのが形成されてしまった、というのは本人なんじゃこりゃあ?と混乱してますが、魔術師たちもみんなあれで血の通った人間である以上、義理も恩も感じるものであれば、そりゃあザガンついていこうか、と思いますよなあ。
世間から言われているほど、そして魔術師たち当人が思っているほど、彼らって血も涙もない邪悪な存在ではない、ということなのか。これなら、教会の共生派というのも十分立ち行くんじゃないだろうか。なんかシャスティス全編に渡って色んな意味で一杯一杯みたいだったけど。この子、もうやることなすことひたすらポンコツ道を歩み続けてるのな。本人まるで自信なくて、かなりグダグダというかへたへたな振る舞いばかりしててみんなからイジられっぱなしなのに、これで戦ったらわりとマジで作中最強クラスというのもギャップがあって楽しい。自分に無自覚、という意味ではシャスティルとザガンってけっこう似た者同士な気もしますけど。

今回は、ついに本格的に他の魔王と接触、ということでさすが先輩魔王の得体のしれ無さ、狂気のありさまに慄かされたのですけれど、ザガンもザガンで同じ魔王として同格の貫禄を見せ続けてくれたので、むしろザガンやるじゃん、と余計見直すことになりました。ネフィとの無自覚なイチャイチャっぷりも、拍車をかけてえらいことになり、もう熱々すぎて目も当てられないことになってるじゃないですか。他にもフォルの娘としても愛で方も、もうごくごく自然にやりたい放題やっちゃってて、もうなんかあらゆる意味でご馳走様、な満腹を強いてくるようなエピソードでした。もうお腹いっぱいですよぅ。

1巻 2巻感想

ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター> 2 ★★★☆  

ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター>2 (GAノベル)

【ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター> 2】 手島史詞/一色 GAノベル

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呪われた美術品をめぐり、『ナベリウス封印美術館』と『グシャラボラス工房』の争いが激化する!!

「ヴォルフさんは、また誰かを愛したりできるんですか?」
「ジブリルこそ、そういう相手はいなかったのか?」

敵対する「グシャラボラス工房」のクロウリーとの対決を経て、ヴォルフとジブリルは絆を強めていった。

そして、アーティファクト回収の日々を送る2人に転機が訪れる。
―とある田舎にある屋敷を訪れ、幽霊現象を起す原因を突き止めてほしい―
そこは、かつてジブリルが暮らし、魔術の修行した屋敷だった。
怪しげな依頼に危機感を募らせながらも調査を進めるヴォルフとジブリルの前に、倒したはずのクロウリーが現われる。

「くかかかかか、ミルシエル嬢の仇討ちは、もう諦めたのかね?」

「魔導書」「幽霊船」「象牙天球」「サーカスの帳」「隠された肖像画」新たなアーティファクトが2人を破滅へと誘う。そしてジブリルの秘密が明らかに……。

「自分の肖像画を取り戻したいんです。わたしの体も元に戻るかもしれませんから」
こいつもう、ジブリルにでれっでれよな。そもそも、ヴォルフって自分で思ってるほど堅物でも強面でもないんですよね。仏頂面で外に向ける態度も頭の中で考えていることも窮屈で、自分は復讐の鬼であると定義付けてそれらしく振る舞っているつもりなんですけど、本当につもりでしかなくて、やってること言ってることを見ると過保護もいいところなダダ甘お兄さんなのである、この男。カッコつけているわりに、ずっとジブリルのことばかり考えてるし、ジブリルのことばかり心配してるし、お前ジブリルのこと好き過ぎるだろう、というくらいダダ甘ですし。
それなのに、彼自身はジブリルに対して「もしかして俺はこの娘に対して好意のようなものを抱きつつあるのだろうか」みたいな事を厳つい顔をして真剣に考えているのだから、鼻で笑ってしまうというものである。
いやもうあんた、手遅れに手遅れを重ねるほどめっちゃ好きだから。
前回、ある意味ちゃんと自分の復讐に対するスタンスに対して整理をケリをつけたのが、ブレイクスルーになってしまったのか。前はまだもうちょっとジブリルに対してもぶっきらぼうというか、壁を置く態度を取っていたのがもう遠い昔に感じるようなありさまで。それでいてまだこいつ、自分はジブリルに対する気遣いのようなものが足りないんじゃないだろうか、みたいなことも真顔で考えてるし。いやもう、気遣い過ぎなくらい過保護ですから。ちょっと風邪ひいて寝込んでたジブリルにお願いされたら、リンゴを兎の形に剥いちゃうくらいなんでも言うこと聞きすぎですから。

まあ基本、態度が軟化したのはジブリルに対してだけじゃなく、館長代理に対してもかなり柔らかくなっているので、案外もとから気遣いの人、というよりもジェントルマンだったのだろう。ってか、身内に対してダダ甘なのよね、この男。妹に対してもかなりのものだというのを考えると。
そういえば、前巻の感想では年長者の貫禄、みたいなことを描いてた館長代理だけれど、今回寝込んでたジブリルの代わりにパートナーとして事件に出張った館長代理、こうして詳しく書かれてみると決して年嵩の経験豊富なロリババア、なんかではなく、あれ単に年長者のつもりでいる幼女にすぎなかったのね。実際年齢はヴォルフたちよりもよっぽど高いし、能力も際立っているものの、吸血鬼の種としては幼く、世間知らずで無知に等しく、結局のところ何もわからない中でそれでも年長者だからという事実に基づいてそれらしく振る舞うのを当然と思っている、ただの子供、でしかないんですよね、この娘。なので、じっくりとよくそのふるまいや考え方を見ていると、非常に幼いことがよくわかってしまう。
どうやら一連の事件でヴォルフと一緒に近くで行動したことで、彼女自身自分がわりとトンチンカンな基準のもとに動いてしまっていることが自覚できてしまったみたいで、素直にそのへん修正しているあたり、子供らしい直截さが良い方に出ていて、同時にやっぱり非常に聡い子なんだな、というのがよくわかった。
あくまでジブリルとヴォルフの庇護者であるスタンスは崩さないまま、自分は子供だという自覚を持って二人に子供らしく甘えることを覚えて、なんかもうすごく可愛いなあってなもんですよ。二人と両手つなぐシーンはナベリウス封印美術館のチームの関係を決定づけるものだった気がします。
あとは、クロウリー含めた決着なんだわなあ。

1巻感想

フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと? ★★★☆  

フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと? (ファミ通文庫)

【フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと?】 手島史詞/島田フミカネ ファミ通文庫

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小さな人型自律メカ『フレームアームズ・ガール』。そのひとり轟雷はマスターの少女・あおが言う「可愛い」が理解できず悩んでいた。そんなある日、あおの友人・武希子が様々な武器や装甲を持って遊びに来てくれた。だが轟雷が一番気になったのはあおが自作したという“リボン”。それはただの飾りなのに轟雷の胸を温かくするのだ。この気持ちを、あおにお返ししたい! ――それが思わぬ冒険の始まりだった。大人気アニメの日常を繋ぐノベライズ、オリジナルエピソードで登場!
おっ、新キャラだー。と、表紙絵見て勘違いしてたんだが、これって轟雷だったのか。リボンなんかしているからわからなかったのですよ。
というわけで、あおに作ってもらったリボンでおしゃれなんかしてしまった轟雷。かわいいかわいい、と連呼されて戸惑う轟雷は思うのでした。
「可愛いってどういうこと?」
そもそも、どうして自分たちはバトルするために作り出されたメカなのに、人間の女の子の姿をしているのか。ただ強さを求めるのなら、こんな姿必要ないのに。
という疑問を、FAガール当人である轟雷が抱き、マスターである「あお」と賑やかなFAガールズとの日常の中で探求していく、それが本作の通しのエピソードである。
既に自我がある程度以上成長して確立しているスティレットやバーゼラルドは、可愛いという概念に対して特に違和や疑義を持っておらず、人と同じように「可愛い」を認識し、使いこなし、それを自分にも適用しているのだけれど、感情というものを学んでいる最中の轟雷にとって「可愛い」はかなり未知の領域のものなんですね。だからこそ、普通なら当たり前に受け止めてしまう「可愛い」に対して、探り探り向き合っていくことになるのだけれど、丁度それが――可愛いを理解していくことが、同時に轟雷に未成熟だった感情を彩っていくことに繋がっていくんですね。
可愛い、と言われて覚える感情。可愛い、を求めることで生じる思い。そして、マスターであるあおに対して抱く「可愛い」という溢れんばかりの気持ち。
そんなめくるめく轟雷の「芽生え」をなめらかな内面描写が見事に描き出していくわけですなあ。
アニメの轟雷も回を重ねるごとに、感情表現が豊かになっていき見違えていったものでしたが、その過程の一部、もしかしたら轟雷の感情が本格的に駆動し始めたそのステージアップの段階を、轟雷の心の内側を詳らかにすることで表したのが本作だったのかもしれない、と思えるほどに良い目覚めの物語でした。
ただバトルする為のメカではなく、女の子の姿をした意味を捉え、可愛いを理解し、そしてマスターのあおや、スティレットたち同じFAガールズを家族として受け止める。アニメでの後半に轟雷の原動力のかなめとなる部分を、ここで多く得ていることに気付かされるのです。
また、初っ端から相性悪そうだったスティレットとマテリア姉妹の対立と歩み寄り、なかなか何を考えているのかわからなかったマテリア姉妹をぐぐっと掘り下げて、彼女たちのロジックを解体してみせたり……あれでマテリアたちってふざけたりからかったりしているだけじゃなくて、本気で愛でてるだけだったんだなあ。って、そのほうが何気にたちが悪いんですがw
そして、強烈な存在感を示しながら実はあんまりアニメでは出番のなかった武希子が、こちらではむしろ「あお」よりも出番多く、轟雷たちのアドバイザーとして色々と付き添ってくれることで、その本性と真価を明らかにしていくのである。
趣味人として極めつけで、友人として得難く、人間としてかなりダメ、という個性的な逸材でありました。さすが、コトブキヤの化身である。なにしろ、名字「寿」だもんなあ。
アニメのノベライズではありますけれど、本編を見ていなくてもちっちゃい人形サイズのロボットたちと、人間の少女が共同生活している、という前提さえ踏まえておけば、それだけで十分楽しめる作品であると同時に、アニメ見てた人には二度三度美味しい、というノベライズ作品の珠玉という出来栄えに完成しておりました、これは良作!

手島史詞作品感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?2 ★★★★   

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 2 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?2】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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相変わらず、居城に引きこもりながらも不器用な共同生活を続けているザガンとネフィ。そんな彼らのもとに、新人魔王の力を奪うべく、全身を鎧で覆った魔術師が襲撃してくる。
いつものように撃退したザガンだったが、鎧の中から出てきたのは竜の少女・フォルだった。一方教会では、新たな魔王の出現に対し、竜を殺したこともあるという逸話を持つ聖騎士が赴任してきており――。
果たして不器用な魔王と奴隷のエルフは、にぎやかになった周辺にめげずに距離を縮めることができるのか!?
あらすじのキャラ紹介ではネフィ、ザガンに少しずつ好意を抱いていく、とか書いてあるけれど少しずつどころかすでにMAXHEART状態ですよね、これ!!
ザガンのこともう信頼しきってるし、気持ちも通じ合って以心伝心。時々甘酸っぺえと言いたくなるほど素直に甘えたりもするし、新婚夫婦さながらである。
ザガンの方も、うまく思っていたことを口に出せない、という一巻のときの悪癖がほぼ改善されて、かなり率直に思ったこと口に出来てるんですよね。ってか、ネフィのこと好きすぎることを公言しすぎてる、こいつ!
それに、元々善悪の区別に興味など持たないマッドな魔術の徒だったのが、魔王になったこととネフィという守る対象を得たことからか、兎に角生きるために一心不乱に魔術に傾倒していた余裕のない時期から、ある程度落ち着いて自分と周りを見回すことの出来る余裕が出来てザガンの素が出てくると、思いの外この男って善良というか、真っ当な心根なんですよね。ネフィと関係ない部分でも基本優しくて、思いやりある対応に終始してるんですよね。
ネフィがザガンのこと優しい人、と語るのも決して贔屓目じゃないんだよなあ。
フォルという竜の少女が襲撃という形で現れ、滞在することになるのだけれど最初の受け入れこそネフィの意向があったものの、その後の父性丸出しの可愛がりっぷりはネフィあんまり関係なかったですし。まあ、ネフィと自分の夫婦にフォルという子供、という家族シチュエーションにデレデレになっている部分もあったとはいえ。
いやもうこれ、誰から見ても普通に「良い人」だからね。
幾ら自分が原因だったとはいえ、教会から半ば追放されてえらい目にあってたシャスティルのこと保護したり、聖騎士を敵視しているフォルとの間を取り持とうとしたり、とか本来ザガンにゃ知らん顔しておかしくないことですしなあ。
これで本当に知らん顔されてしまってたら、ザガン庇って立場なくしてしまったシャルティスが可哀想過ぎたんですけど、一応気にかけて貰ってたことがわかっただけで報われた気になってるシャルティス、チョロいというかなんというか。いやもう、チョロい以前にシャルティスの方でほぼ勝手に堕ちちゃってるだけなんですが。聖騎士のわりに落ち着きなさすぎてポンコツで、メンタル豆腐だもんなあ、この娘。
ザガンだけじゃなくて、ネフィに友達として接してもらってテンションMAXになってるあたり、ボッチすぎて涙が出て来るw
ザガンのところで匿われてメイドさんやってるときの、あの常に半泣きでドジっ子という以前の無能全開を晒している様子とは裏腹に、これで聖騎士の中でも図抜けた実力の持ち主だった、というのは何気に仰天だったんですけど。あれ、場合によっては魔王になったあとのザガンでもヤバいんじゃないだろうか。
これぞ、ポンコツに聖剣、というやつなのか、なるほど。

シャルティス自身、どうやらこれから教会内部で在る派閥の象徴的な立場として矢面に立つことになる、いや彼女自身それを自分の意志で選んだのだけれど、これと決めたことなら教会の方針に逆らってでも譲らない、という鉄の信念を持ちながら、それで毅然としていられずにいつもベソかいて、貧乏くじ引いてヒーヒー泣いてる印象しかないこのポンコツ娘がこれからそんな立場でやっていけるんだろうか、とこれザガンでなくても心配になるわなあ。実力は別として、この娘はちゃんと見ていてあげないとダメな娘だ、という放っておけないカリスマが、シャルティス結構教会内部でも支持者多い理由なんじゃないだろうか。

魔王と呼ばれる魔術師の王たちと教会との対立を軸に描かれていくと思った本作だけれど、教会内部の派閥争いや竜と呼ばれる存在が詳細に語られることで、これ新たな方向に舵を切ってきた。
なるほど、いわゆる真の敵が存在するのか。これはザガンとネフィとの甘酸っぱい新婚生活のみならず、ストーリーラインもグイグイと進展を開始した感じ。

1巻感想

ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター> ★★★☆  

ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター> (GAノベル)

【ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター>】 手島史詞/一色 GAノベル

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「関わった者は破滅します。例外なくです。あれはそういったものなのです」
―アーティファクト―それは超常の力を秘め、様々な異能を発動する「魔術師が作った美術品」。この危険な美術品を専門に展示するという『ナベリウス封印美術館』。導かれるようにこの館の蒐集士となった青年ヴォルフと少女ジブリルは、アーティファクトを回収するため、不思議な騒動や怪事件に挑んでゆく。「天使を閉じ込めた鳥篭」「生者を虜にする棺」「観る者を溺死させる絵画」「死者を操る仮面」「殺人鬼の妖刀」「茨の棘」様々なアーティファクトが二人を待ちうける―。
あれ? そこまで例外なく破滅しているわけでもなさそうだけれど。一応、アーティファクトが途中で回収されなかったら破滅していた可能性はあるかもしれないけれど、どちらかというと所有者を唆したり勝手に起動させたり、と暗躍している輩が居ただけに、道具にそうした魔性の魅力があるとか呪われている、という感じはあんまりしなかったかなあ。あくまで道具は道具であって、使う人次第なんじゃないか、と。まあ実際は使用すればするほど進行する呪いがあったりするわけなんだけれど、ジブリルのようにアーティファクトを魔術師の最後の魂の作品という扱いで壊してほしくない、と思っている子もいるだけに尚更に道具が悪い、という感じでもないんですよねえ。あと、それほどアーティファクト自体にインパクトというか印象が残らなかったからかも。あくまでそれを使ったり巻き込まれたりする人間の方が主体で、この手の道具や本を回収して回る作品にしては道具の方が添え物なんですよねえ。というか、殆どヴォルフとジブリルの二人の話であって、使用者たちもあんまり印象残ってないなあ。
しかし、ジブリルが受けてる道具の呪いがかなりヒドイんですけれど。他人から姿は見えず声は聞こえず存在は認識されず、ジブリルの方から人や物に触る事ができない、という幽霊状態。そのくせ、壁やドアを透過したりは出来ないし、勿論幽霊みたいにふわふわと飛ぶことも出来ない。挙句に意図的でない接触ならぶつかってこられると衝突してしまうし、刃物なんかでも刺さってしまう、という一方的にリスクばっかり高いという状態で……これ、普通に外出歩いてたら事故で死ぬんじゃないだろうか。現代のような乗用車が行き交う時代じゃないにしても、誰にも認識されないのに無意識の接触はあるって向こうからどんどんぶつかってくるし、下手に転んだら容赦なく踏みつけられるし、部屋に閉じ込められたら鍵が閉まっていなくても出られなくなってしまうわけだし。
よくヴォルフと出会うまで生きてたなあ、というレベルの危険な有様である。まあ彼と会うまではあの特殊な包帯を使ってたわけだけれど、包帯だけ巻いてとかどんなエロエロな格好で外出歩いてたんだろうw
物語の構成はヴォルフとジブリルが二人でアーティファクトを回収しに行く話を先に持ってきて、そこからジブリルとの出会いの話。さらに遡ってヴォルフがこの封印美術館で働くことになった復讐譚の始まりの話。そして、それらの因果が集約された最終話。
概ねこの物語自体がヴォルフの復讐譚であることからも、やはり悲劇の始まりであるヴォルフの過去話が一番気合入ってる。もっとも大切な存在を奪われることになったヴォルフだけれど、幸いなのは彼にはまだ最愛の妹や両親に最高の親友が残っていた、というところか。すべてを奪われた悪鬼羅刹、となるには心残る相手がまだ居てくれたわけで、だからこそ彼の中にジブリルという存在が滑り込む余地があったと言えるのではないだろうか。
その意味では最終話は象徴的で、すべての事件の黒幕となる人物がついに表舞台に出る話ではあるんだけれど、同時にヴォルフが過去の呪縛から解き放たれる、というか自力で停滞から踏み出す話なんですよねえ。ジブリルという少女の存在が要となっているとはいえ、自分でちゃんと彼女の大切さを認めて、彼女に背中を押されたり導かれたり促されたりというわけではなく、ちゃんと自分で復讐の念にケリをつけてみせたあたりは非常に立派だと思うし、彼女を迎えにいけたのは偉いと思うのである。
館長代理はすごい慈愛の人でヴォルフに対しても手厚く手配りしてるけれど、決して子供扱いしているのではなく、ちゃんと青年として扱ってるんですよね。まあ、どれだけ成長しても息子は息子、みたいな感覚みたいな年長者の包容力をひしひしと感じさせてくれる態度ですけれど。幼女にもかかわらず。

ところで、やはりあの親友は童女趣味疑惑を超えて妹さんと結ばれてしまうのだろうか。ヴォルフ的にはOKっぽいがw
手島史詞作品感想

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 1 ★★★☆  

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 1 (HJ文庫)

【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 1】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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悪の魔術師として人々に恐れられているザガン。不器用で口の悪い彼は、今日も魔術の研究をしながら領内の賊をぶちのめしていた。そんな彼が闇オークションで見つけたのは、絶世の美しさを持った白い奴隷エルフの少女・ネフィ。彼女に一目惚れしたザガンは財産をはたいてネフィを購入するが、口下手な彼はネフィにどう接していいかわからない。かくして、愛の伝え方がわからない魔術師と、主人を慕いながらも訴え方がわからない奴隷、不器用なふたりの共同生活が始まる。
おおっ、手島史詞/COMTAコンビの作品というと【影執事マルク】以来じゃないですか。作者の作品の中でもあのシリーズは特に好きだったので、コンビ復活は素直にうれしいですね。
原点回帰というわけじゃないんでしょうけれど、この主人公とヒロインが微妙に食い違いながら何故か噛み合っている、という本人たちは必死でお互いの距離感を縮めようとバタバタしているのに、傍から見ているとなんだかんだと相性ピッタリで相思相愛で微笑ましい、というスタイルのラブコメみたいになってて、いいんですよね。
ザガンもネフィも口下手とか通り越して、生き方が不器用そのものでそもそもコミュニケーション能力が壊滅しているんだけれど、逆にそれが良かったのか本来なら明後日の方向にすれ違ってしまう行為や言動が不器用同士二人とも若干ずれているせいか、お見合いするみたいにばったり合わさってちゃんと大事な部分は伝わるんですよね。
それが傍から見ていると拙いけれど必死なコミュニケーションがちゃんと成立しているのが実に微笑ましく見えるんですよね。だもんだから、二人ともがとてもかわいらしい。
その点、聖騎士の娘はザガンがあまり相手をそもそも認識していないせいか、一人でカラ回ってるところが多々あって若干可哀想なんですよねえ。立場上仕方ないとはいえ、誤解されることも多くて泣いちゃってますし。ってかガチ泣きじゃないか、騎士のくせに。でも、立派な娘なんだよ。教会内で異端とも言える常識と良心が信念の芯に据えていて、自分の身が危うくなるのも覚悟の上であれこれと画策してくれるわけだし。
その好意がある程度ちゃんとザガンに伝わっているのは、報われていると言えるのかもしれないけれど、恋愛面からするとザガンとネフィがあまりにも相思相愛すぎてとても割って入る余地がなさそうなだけに、そっちは報われなさそうだなあ。
本作では魔王の称号は統治者としての「王」ではなく、魔術の徒としての最上級の位としての意味合いであり、他の魔王たちから承認を受けて継承するものなので、想像していたものとはだいぶ違ったんだけれど、変に王様としてあれこれ内務や外政や戦争をやらないといけないよりも、魔術という分野のマッドサイエンティスト的なあれやこれやで、キャラも変に増やさずに行くほうが話の展開も面白そう。魔王という存在そのものへの謎も、今回浮かび上がってきたわけだし、ネフィが抱えている彼女の過去、背景もまだ端緒に足を踏み入れた程度ですし、本番はこっからかー。
でも、二人の微笑ましいイチャイチャっぷりを見てるだけでも、何とも癒やされそう。

手島史詞作品感想

東京異界のバリスタ ★★★  

東京異界のバリスタ (GA文庫)

【東京異界のバリスタ】 手島史詞/ファルまろ GA文庫

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「なんでも解決してくれるって聞いて来たんです。兄のクリスを探してください」

異世界と繋がり、魔法使いが跋扈する『東京異界』で営業中の珈琲専門店
《ストラーダ》に記憶喪失の少女・フリッカが転がり込んできた。

「君は、フリウなんだろうか……。帰ったきたのか――確証が欲しい」

何でも屋を兼業する珈琲係(バリスタ)の燈志郎は、捜し続けている少女・フリウと瓜二つな
フリッカの正体をつきとめるために、唯一の手掛かりであるクリスを捜す。
しかし、真相に近付く燈志郎の前に、凄腕の魔法使い《印持ち》が現れて――

「俺の魔法は弩弓(バリスタ)、的は外さない!!」

燈志郎は少女との大切な記憶を取り戻すため、世界の理を撃ち抜く!?
異界冒険ファンタジー開幕の時!!
ああ、そういえばコーヒーを扱うバリスタと、武器のバリスタって読み方一緒だなあ、語源も繋がってるのかしら、と調べてみたらそもそも綴りからして違う。語源からして、軽食喫茶を意味する「bar」に基づくバリスタ(barista)と、ラテン語の弾道から意味を取った弩弓のバリスタ(ballista)とでは繋がる部分はないですし、きっとネイティブは発音的にも別物だと思うのですけれど、カタカナで見るなら名前の音が一緒。語呂合わせの一種ではあるのですが、主人公は日本人ですし音の共通性に意味を見出すのは非常に魔術的でよろしいんじゃないでしょうか。尤も、本作における魔法は大系立てられたものではなく、むしろ後天的とはいえ天然に発現した異能力なので、果たして語呂合わせにどれだけの意味がコメられているかは怪しいところなのですけれど、フリウとの思い出の重要な部分に珈琲を入れてあげる自分、というものがあった燈志郎に「バリスタ」の能力が発現したのは、物語的には意味があるんだろうか。
作中では、東京を異界に沈めた霧の発生によって大切なものを喪った人に魔法は発現する、と説明されているけれど、その能力の内容と喪ったモノとの共通点については語られていないし、実証例も少ないのでなんとも言えないのだけれど。
東京が異界に沈んだ三年前に行方不明になっていたフリウを探し続けていた燈志郎の前に現れた、三年より前の記憶を持たない少女フリッカ。いや、どう見てもどう考えてもフリウと同一人物すぎて、いかに性格が違っても人格が異なっていても、本人以外の何者でもないだろう、という前提すぎて、もしかしてそう見せかけて別人だったり、と疑ってしまったのですが、さすがにそこまでいじわるな話ではなかったようで……でも、そうなるとフリッカのプライベートに踏み込もうとせずに様子を伺っている燈志郎にやきもきしたり。フリッカ側の事情が繊細であると同時に、記憶喪失という色々と気を使ってあげないといけない状況にある彼女に慮っているのはわかるのだけれど、それとやきもきするのはまた別の話。
フリッカの情緒面が擦り切れ気味に不安定になっている分、慎重なアプローチは間違いではなかったんでしょうし、フリッカとしても無神経に色々と踏み込んで来られるよりは好印象を稼いでいたみたいだけれど、燈志郎のフリッカへのそれは若干ながらヤンデレ気味の傾向があるような気すら感じられるんですよね。いや、ヤンデレみたいな攻撃的なものではないんですけれど、拗らせているみたいなところがあって、一途なのはいいんですけれど、世が世ならそれって女の子には引かれそうなスタイルなんじゃなかろうか、と思わず苦笑してしまったり。さて、そういう一面を可愛い、と評価される筋もあるのかもしれませんが。まあその献身さは、記憶のないはずの、そして情緒面で擦り切れてしまっていたはずのフリッカを順調に切り崩すことに成功しているので、このケースにおいては燈志郎のそれは間違っていないのでしょう。やっぱり微苦笑を誘われてしまうのですが。フリッカは面倒くさそうに見えて、これはこれでチョロいよなあ……。

燈志郎の魔法は、これ魔法の能力もそれなりに強力だけれど、それ以上に燈志郎の技量がずば抜けているような。印持ちの強力さは単純に出力の差や規模の違いみたいだけれど、夜会に積極的に出るような魔法使いのレベルって、魔法の強さは別カウントでみんな燈志郎クラスの戦技持ちなんだろうか。それとも、彼が特別なのか。次はもうちょい魔法使い同士の話になってくれたら、そのへんもわかってくるのだろうけれど。

手島史詞作品感想
 
9月21日

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