手島史詞

剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 7 3   

剣刻の銀乙女7 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 7】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

皇禍たちの王に即位したエステルを王都に迎えたエストレリャでは、ルチルら王族を中心に会談を重ね、人間たちと罪禍たちと不可侵協定の締結に向けて動き出していた。その頃、協力関係構築の一環で辺境の砦を視察していた皇禍フランの前に、国王暗殺の嫌疑をかけられ行方をくらましていた王国最強の騎士ヒネーテが現れる。ヒネーテはかつての高潔かつ勇猛な騎士の姿を失い、尋常ではない力と剣刻でフランを圧倒し…。時代を超えた剣刻をめぐる戦い、ついに完全決着のとき!
いつ、死んだかに見えたクラウンが現れて、またぞろ悪辣な陰謀でこちらを追い詰めてくるかと恐々として待ち構えていたんだが……あれ? 最後まで現れなかったぞ、クラウン。ほんとに、あの時やっつけてたのか!?
どれほど殺してもしぶとく復活してきそうな質の悪い悪意の塊みたいな敵だったので、それをあそこでちゃんと討ち取っていた、というのはむしろルチルたちを褒めておくべきなのだろう。実際、あの戦いではクラウンを完全に手球にとって陥れる事に成功した上で、油断もなく完膚なきまでに殲滅してみせるという凄まじい謀をキメてみせたので、あれで仕留められてなかったら、どうやって仕留めればいいんだ、という話になるんですよね。
ただ、問題はあまりにもクラウンという敵が邪悪で悪辣すぎたせいで、それを上回るラスボスを用意出来なかった、ということか。過去の長き歴史に決着をつけるべく倒さなければならない敵である「魔神」は、どちらかというと現象とか災害に類するもので、個としての意識を持った存在じゃなかったので、強大ではあってもなんというか、精神的に心を折ってくるような絶望感を強いる敵ではなかったんですよね。災害みたいなとんでもない敵なら、その強大さだけで打ちのめされそうなものだけれど、これまでの戦いを通じて絆を深め、壁を克服してきた主人公たちは、もう言わば最終決戦仕様になってた為に、いまさら絶望感に打ちのめされるような可愛げもなかったですし。言うなれば、もう倒されるべくして倒されに来たラスボス、みたいな感じでした。
むしろ、その最終決戦仕様の主人公たちに立ちふさがるべく現れたのは、ヒネーテの方だったのだけれど、彼も王国最強の騎士という触れ込みに対して、それを実感させるイベントがあんまりなかったせいか、ちょいと立ちふさがる壁としてはインパクトに欠けたかなあ。忠義の士であり、先の世に希望を託すために全てを捧げた騎士、というなかなかグッとくる役どころだったのに、その点についてはちょっともったいなかったかも。
人間関係の方も、千年前の出来事を踏まえて、概ねルチルとエステルの間でヒースの扱いやらなんやらはほぼ固まってたからなあ。あとは、ヒースがどれだけ覚悟を決めるか、というよりもはっきりとどうお持ち帰りされるか覚悟するか、という話になっていたので、まあ全体的に消化試合、という雰囲気になってしまったのは少々物足りなかった部分かもしれません。
それでも、エステルとルチルが一致団結して牽引してくれたせいか、話も嫁取りの話も滞りなく進んで、千年前の因縁もすべて決着し、気持よく幕引きと相成ったのではないのでしょうか。フランちゃんの可愛さがどえらいことになってて、もっと早くこの子渦中に投入しておけば、とか思ったりもしましたけれど。
なんだかんだと最後までお気に入りの物語で楽しかったです。ヒースそっちのけでのルチルとエステルのラブラブっぷりは、ごちそうさまでした。

シリーズ感想

剣刻の銀乙女(ユングフラウ)63   

剣刻の銀乙女6 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ)6】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

ヒースたちのもとへと帰還したエステルは、新たな魔王となるとともに、最初の皇禍、初代魔王の記憶を継承していた。エステルが語るエストレリャとプレギエーラの建国にまつわる悲劇、皇禍と罪禍の誕生の謎、魔神を倒した十二人の騎士たちと聖女、そして聖剣伝説の真実とは。これは、時代をさかのぼること千年前、槍の達人プルガトリオ、北方からの旅人サクヤ、呪われた少女マーリン、聖女イリア。すべての始まりとなる四人の出会いと別れの物語。苛烈を究めた剣刻争奪ファンタジー、すべての謎が明らかとなるシリーズ第六弾がついに登場!
一千年前の真実と悲劇。千年前に剣刻誕生の当事者となった人たちが、今のヒースやエステルたちに生まれ変わった、という証拠はどこにもないんだけれど、いざ過去の悲劇と悲恋を思うとかつて叶わなかった恋が、千年後に改めて成就しようとしているという風にも見たくなるもの。それこそ、千年前のサクヤやマーリンの夢なのかもしれないけれど、そういう運命ならあってもいいじゃない。
ただ、女性陣が大幅に逞しくなりすぎているような気がしないでもないけれどw マーリンさんは、もっと薄幸の美少女という感じでしたよ? それが、ルチルみたいな随分とクレバーなお姫様になっちゃって。サクヤの方もアグレッシブではあったけれど、エステルはそれにもまして傍若無人になってるし。イリアだけですよ、シルヴィアという全力全壊で弄られ系に成り果ててるのは……w
しかし、剣刻という聖剣伝説に基づく存在はクラウンによってねじ曲げられ、今回の呪われた事件を起こしてしまったように捉えていたけれど、千年前の発端を見る限り、そもそもからして濃厚な呪詛の産物みたいなものだったんだなあ。最初から、聖剣の使い手を贄として喰らう仕組みになっていたようだし。血統一族まるごとを呪って皇禍なんていう存在に変貌させてしまった上に、罪禍という完全な化け物として扱っていた存在だって、その正体が明らかになってみれば、これも呪詛の賜物みたいなもんだし。
つまるところ、ほぼ何もかもが魔神を発端にしているわけか。千年前から続く悲劇を総決算してここに精算するには、やはり魔神を綺麗さっぱりぶち倒して、エステルとルチルがハーレムを完成させてこそ、なんだけれど……改めてみても、これってヒースのハーレムじゃなくて、エステルとルチルのハーレムだよねえ。ヒースの意見は端から考慮されてなくて、完全に二人の管理に基づいちゃってるしw ここまで男に主導権のないハーレムも珍しい。ってか、ほとんどこれ添え物扱いなんじゃないのか、という疑いすら浮かんでくる(笑

決意を新たにして千年前の人たちの思いを受け継ぎ、この救いのない呪いの連環を打ち壊そうとするエステルやルチルを、千年前の一部始終を、あの人達の人生そのものを実際その目で見守っていた黒い竜はどんな思いで見つめてるんだろう。あのラストシーンは、なんだかジーンと来てしまったなあ。

シリーズ感想

飛べない蝶と空の鯱 6. 〜蒼の彼方より、最果てへ〜33   

飛べない蝶と空の鯱 6 ~蒼の彼方より、最果てへ~3 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 6. 〜蒼の彼方より、最果てへ〜3】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

渡り鳥は空を飛ぶ。夢のため、封書のために

突如として変貌したハイリッヒは何者なのか。<霧>に耐性のない人々と、浮島の人々を繋ぐ七つの鍵・エインヘリヤルとは?
真実がそのヴェールを脱ぐとき、ある者は決断し、戦い、そして――。ヒルダとシュネー、因縁のライバルの壮絶なる戦いが決着し、後に残された世界は滅びるのか、そして生き残るのは?
封書は踏みにじられ、大陸は沈む。しかし、それでも<渡り鳥>、ウィルとジェシカは飛ぶ。夢のため、封書のために。

ポールマン、おまえそんなキャラじゃないだろうっ。ヘタレなのに、ヘタレのくせに、頑張りやがって、無茶しやがって、男になってしまいやがって……。
空の門編、ここに完結。それすなわち、ヒルダの旅の終わりでも在る。彼女の人生の因縁、その結末がここに在る。封書を届け、人の想いを伝え繋いでいく渡り鳥の物語は、同時に人の想いが、祈りが受け継がれていくのを見守る物語でもある。たとえ人生がそこで潰えようとも、精一杯生きて育んだ証は、次の人へと受け継がれていく。兄たるハイリッヒが、妹たるイスカに託したように。ポールマンが必死に繋いだように。
でも、その次に繋ぐ行為がどれほど尊くても、それはどうしようもなく哀しい事でもあるんですよね。できうるならば、次に託すのではなく、共に手を携えて歩めれば、空を飛べれば、それに勝る事はないだろうに。だからこそ、ヒルダがあの場面で、自分の人生を燃やし尽くしたあの場面で、悔いなく満足してすべてを受け取って貰おうとするのではなく、心からの本音を、願望を、未練を叫んでくれたことは、嬉しいというのは少し違うけれど、胸を打ったのでした、良かったと思えたのでした。悠久の中に取り残されようとしていた彼女が、ただの一人の少女に戻ってきてくれたようで、初めてヒルダが遠くから見守る達観した存在ではなく、同じ空の下で生きる人の子に帰ってきてくれたようで。
その奇跡を祝いたい。

世界の秘密の多くが暴かれ、霧妖と呼ばれる空の覇者たちの正体が明らかになったわけだけれど、なるほどジェシカがどうして霧妖と人間の間の子のような不可解な存在になってしまったかの理由もこれでようやく理解できた。そして、この作品におけるウィルとジェシカの、霧妖との向き合い方も。霧妖との空戦は、もはや戦いなどではなく、純然たるコミュニケーションへと発展したのか。
そして、霧妖とここまで心通わせることの出来るようになるまで、達してしまったウィルとジェシカ、この二人の関係もいつまでもコミュニケーション不全のままでいられるわけがなく、居られるまま落ち着けるわけがなく、もう常から自然にどれだけイチャコラだよっ、というくらいべったり以心伝心でラブラブ状態だった二人だけれど、ついにちゃんと言葉を介して想いを伝え合うことに。ついにというか、ようやくというか、やっとかよ!といいますか。でも、万感であります。万感であります。ジェシカの、いっぱいいっぱい頑張っての返答は、もうなんか頑張ったなあ、と褒めてあげたくなるような初々しさで。このまま、お幸せに、で終わってもいいくらい。
勿論、まだまだ続いてくれないと話が終わらないのですけれど。あれ? 今まででも十分、糖分過多で周りの人たちが辟易するほど甘酸っぱい雰囲気を爆散させていたこの二人が正式に恋人状態になってしまったら、もうあかんのとちゃうか? ヤバいんとちゃうか? ヒルダさん、本気でこの二人と飛びたいですか?w

手島史詞作品感想

剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 54   

剣刻の銀乙女5 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ)5】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

エステルに続き騎士姫ルチルも王宮の動乱を鎮めるためにヒースの元を去った。小隊をまとめる中核を失った一行は残り3つの剣刻を集めるため、エリナが発案したヒースとエリナ自身を囮にした誘き出し作戦を実行するのだが、剣刻の所有者は現れず、剣刻目当ての欲にかられた者たちに襲われるばかりの結果に。そんな中、ヒースたちに助力する男女の傭兵が現れる。どこか憎めない風情の兄貴分めいた雰囲気のベニートと、ヒースたちとさほどの歳の変わらない少女ドゥルセの二人は、ヒースたちの剣刻を狙ったならず者を瞬く間に倒してしまう。二人の助力に感謝するヒースとエリナは言葉を交わすうちに二人に親しみを覚えるのだが、そんな二人に剣刻の封印を解かんと画策する悪魔の道化師クラウンの仕掛けが襲いかかる。ヒースたちは剣刻の封印を守りきることができるのか。そして最後の剣刻の持ち主とは?剣刻争奪ファンタジー、急転の第五弾!
ちょっ、最近はあれなのか? 弓使いの時代が来たのですか!? 小隊メンバーの中では唯一、剣刻持ちではないマナ。所謂「魔法使い」ポジションに近い<占刻使い(オーメントーカー)>であることから、マナは後衛での支援要員と考えていて、実際そのとおりではあったんですけれど、ぶっちゃけ思っていたのとマナの戦闘力が違いすぎた! め、めちゃくちゃ強いじゃないかっ!! しかも、火力押しじゃなく、戦慄するような神がかった技量の弓術と占刻のコラボレーション。この弓の人間離れした神技の数々は、【魔弾の王と戦姫】のティグルを彷彿とさせるような凄まじいモノで、魔弾の射手の名に相応しい代物でした。いや、バトルシーンでここまでゾクッとさせられることはなかなかないですよ。その意味でも、マナのそれはティグル並みと言ってもいいかも。いやあ、川口さん以外にもここまで弓矢を映えさせる事の出来る人がいるとは。久々に鼻息荒く興奮させていただきました。

ダブルヒロインであるエステルとルチルの両方が一時的に剣刻を巡る現場から離脱し、残されたヒースとエリナ、そしてマナにシルヴィアたちだけで、残る剣刻3つを集めるために策を練ることになったのですけれど……正直、これは読んでるこっちも騙された。よくよく考えると、最大戦力である二人が抜けるって、誰がどう見てもあからさまに大ピンチなわけだけれど、それって=釣りの餌としてもあからさまなくらい魅力的なんですよね。残されたヒースたちが、自分たちの中で囮を選び出して動いていたために、その外側の大枠をまったく意識できなかった。ルチルとエステルが離脱した理由が、それぞれどうしても避けられないものであったことから、彼女たちの離脱が意図したものではない苦渋の決断だった、と思ってしまったんですよね。思うよなあ、これ。誘引策としては、鮮やかなくらい見事ですわ。
この策の唯一のネックは、ターゲットを完全に捕まえられるところまで対象を引きずり込めるまで、囮となったヒースたちが耐えられるか、という点だったわけだけれど、これについてはルチルもエステルもよく決断したものである。場合によっては比喩抜きで死地送りでしたしね。相手は何しろ、今までずっと手玉に取られ続けていたあのクラウンだったわけですから。それでも、敢えて任せたルチルは男前ですわ。自分を死地に置く事を厭わないヒロインは珍しくはないですけれど、好きな相手を死地に送り込めるヒロインはやっぱりなかなか居ませんよ。
その意味では、ルチルって実は主人公枠なんですよね。で、ヒースの方がヒロイン、と(笑
だって、ラストのルチルとエステルのイチャイチャっぷりを見せられるとねえ。あのパターンは読めなかった。これって、ルチルとエステルのダブルヒロインじゃなくって、ルチルがメインでエステルとヒースのダブルヒロインじゃないのか、マジでw
一応、エリナとシルヴィアもヒースにくっついてヒロインちゃんとしてますけれど、この二人もルチルやエステルには結構メロメロだしなあ。
クラウンが仕掛けてきた極悪極まる謀の数々は、これまでと同様かそれ以上に悪辣で外道でヒースたちの警戒を安々と打ち砕き死角から襲いかかってくる壮絶なものでした。甘さなんか何処にもない、謀略戦の極みだったと言えるでしょう。だからこそ、そんなクラウンを最終的に手玉に取る形で手のひらの上に収めてみせたルチルの王器は文句なしの大器を感じさせるものでした。エステルも無事に魔王座につけたみたいだし、これでようやく剣刻戦争も受け身に回る段階はくぐり抜け、収拾をつける段階に辿りつけた……と、思いたいところなんだけれど、果たしてあのクラウンが本当にこれで退場させることが出来たのか。ちょっと、未だに信じられないんですよね。それに、剣刻の真実についてまだ全然明らかになってないし。クラウンが、ちょっぴり新たな真実とそれに付随する新たな謎をもたらしてしまい、結局余計に剣刻の裏には深遠に似た真実が横たわっているというのがわかってしまったわけで……こりゃあ、戦力が整ったこれからこそが本番、と言う事になってしまうのか。いずれにしても、それは盛り上がるのもこれから本番よ、と言っているようなものでもあり、楽しみなことこの上ない。

シリーズ感想

飛べない蝶と空の鯱 〜蒼の彼方より、最果てへ〜 23   

飛べない蝶と空の鯱 ~蒼の彼方より、最果てへ~2 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜蒼の彼方より、最果てへ〜 2】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

明らかになる浮遊世界創造の謎!

瀕死の重傷を負ったウィルを背負い、冬の荒野を行くジェシカ。
イスカは攫われ、霧鍵式は使えず……。
満身創痍の二人は北の大陸・ティエラで進行しつつある、革命と名指された大陸崩壊への助走を止めることはできるのか。
そして、「七つの鍵」に隠された、たゆたう島の民・人類誕生の秘密とは……。
シュネーとヒルダの過去、旧文明に隠された霧の文明の創世の謎も徐々に明らかに。
物語が加速する新章第二弾!!
いきなりこの世界が構築された秘密に突っ込みだしたな。こういう巨大な枠組みについては、もう少し事前に舞台を整えてからにして欲しかったんだが、目先のことに汲々としてたらいきなり大事になってたような唐突感が。まだ、普段活動していた世界の外に、ようやく一歩足を伸ばしたところくらいだったので。その一歩で、早速世界の果て、というべきところにたどり着いてしまっていた、というあたりにこの世界の狭さを実感するべきなのかもしれない。その狭さ故に、霧の向こう側に行きたいのだ、と広がる空とは裏腹の箱庭世界から飛び出していきたいウィルたちの切望を感じ取るべきなのかもしれない。
まあ空の果てに思いを馳せる前に、まず腕の中にある温もりをもっと確かなものにするべきなんだろうけれどね。はっきりそこまで責任とるつもりがあるなら、もっと勢い任せで欲望に身を任せてもイイ気がする。さすがに現状ではイチャイチャしている余裕もないだろうけれど、抱いてしまったと勘違いしてニヤニヤしているくらいなら、さっさと畳み掛けて押し倒せ、と。そりゃあ、裸で隣で添い寝してたら、誤解しても仕方ないだろうし、それは誤解させるほうが悪いとも言える。ジェシカからすれば、必死だったんだから、そんなふうに誤解されるなんて、と言いたいかもしれないけれど、必死になってそれだけの事をするからには、許せる範囲はそれだけ大きいってことだからなあ。
まあでも、OKサインが出ているならばこそ、勢い任せじゃなくちゃんと筋を通してちゃんとした関係を確立するのが先、という考え方もあるけれど。どちらにしろ、そろそろウィルもはっきりと言葉と行動を明らかにするべきだよね、という時期だな。
さて、トントンと世界の真実が明らかになっていき、それに付随してティエラで起こりつつある動乱に、かつてここで起こった出来事、不明瞭だった人間関係の配置も徐々にはっきりしてきて、つまるところ舞台が整いつつある、という事なのだろう。思いの外早い真実の霧を吹き払う風の流れは、この新章がさほど長引かないだろうことを予感させる。こりゃ、五巻どころか次の巻あたりで、という場合も。
ウィルとジェシカのコンビの本領である、ジェシカ操縦・ウィル攻撃、というスタイルも、逆パターンもほぼ一流の領域に達したことで、真のスタイルであるこっちも更に極まりを見せて上限に達しようとしているし。さらに、レンにも新たな相棒が生まれたことで、本当の意味で二組の渡り鳥コンビが誕生しつつあるわけですしね。こりゃ、クライマックスに向けて一直線か。

シリーズ感想

かくて滅びた幻想楽園(ディストピア) 23   

かくて滅びた幻想楽園II (富士見ファンタジア文庫)

【かくて滅びた幻想楽園(ディストピア) 2】 手島史詞/GAN 富士見ファンタジア文庫

Amazon

神獣によって支配、統治された世界で少女と少年は出会った。創造主へ戦いを挑み敗北した神獣の少女―クレアーレ。神獣に対抗する組織に所属する盗賊の少年―リュー。反逆者として追われることになったリューたちは、クレアーレのかつての仲間、リヴァイアサンの力を借りることに。「リヴァイアサンっていうのは、どんなやつなんだ?」「あやつをひと言で言うならば、変わり者であろぅな」リヴァイアサンが支配する地、アクアへ辿り着いたリューたちだが案内人として紹介されたのはメイド服の少女で!?かくてメイド服の少女と、神獣探索の冒険が始まる!?
あれ? これもうこの二巻で打ち切りなの!? いやいや、さすがに二巻でいきなり打ち切りになったら纏めるのも無理でしょうに。
一本芯を通して自分のやりたい事を定めて突き進んでいるリューが、突然立ち止まって自分の行動に対して疑問を持ち始めた時は、なんでクレアーレを手に入れて神獣を倒して順風満帆とは行かない間でも目標に対してちゃんとした指針が出来た直後にも関わらず、なんで突然。とかなり深刻に首をひねったのですが打ち切りが決まったとなると、色々納得が行きました。俺たちの旅はここカラダ、をやるからには一度主人公を停止させて再起動させたところで終わるのが一番様になりますからね。ただ、あまりに早急すぎてあの芯の強い主人公が立ち止まるには理由が弱かったのと、クレアーレの不死鳥の神獣という特性とヒロインとしての立ち位置をうまく合わせて主人公の原動力にするには、どっちにしろ尺と説得力が足りなかったか。アクアの語っていたクレアーレが失ってしまった夢、というのもはっきりしないままでしたし、このディストピアを根本的にひっくり返すための、つまるところクレアーレが戦って負けてしまった相手というのも明確にならないまま終わってしまいましたしね。
実のところ、登場した神獣はギガスにしてもリヴァイアサンにしても、どちらかというとクレアーレに賛同する側であって、神獣という有り様こそ揺るぎないものの人間側に寄った存在でもあったわけです。本当の意味で人間と隔絶してしまっている相手とは接触しないまま終わってしまったわけで、クレアーレが直面して敗れ去り絶望に沈められたものが何だったのか。これは結局、何もわからないまま。
リューが見出した神獣と人間の共存の可能性は、果たしてギガスやリヴァイアサンとは違う神獣には相通じるものなのか。この自分で考える責を人間たちが失ってしまった世界で如何様に育まれていくものなのか。描きたかった様々なテーマが伝わってくるだけに、この打ち切りはやっぱり勿体無いなあと思わざるをえない。
イオリのヒロインラブ寄せも中途半端なまま終わっちゃいましたしね。ライバルと目していたクレアーレにリューとの子作りを勧められて動揺しまくった挙句に考えておきます、と否定せずに満更でもないことをさらけ出してしまったイオリは、非常に可愛かったんですが。
いずれにせよ、二巻で打ち切りはなんぼなんでも酷だわなあ。せめて三巻くらいは……。

1巻感想

剣刻の銀乙女(ユングフラウ)44   

剣刻の銀乙女4 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ)4】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

シルヴィアを仲間に加えたヒースたちは、新たに集めた“剣刻”のことを報告するため、エストレリャの王城へ赴く。そこで一行を出迎えたのはヒネーテ、最後に残った円卓の騎士だった。王の側近で信頼も厚いヒネーテはすでに複数の“剣刻”を宿しており、“剣刻”の最終形態“賢者の刻印”を手にするためにと、ヒースにも“剣刻”の譲渡を迫る。騎士姫ルチルの機転でその場を逃れたヒースたちだが、エステルと縁のある皇禍が現れたことで再び事態は急転していく。ヒースとルチルの“剣刻”の行方は、エステルに突きつけられる困難な決断とは、そしてシルヴィアの知る事実から明らかになっていく“剣刻”の謎とは―謎が謎を呼ぶ剣刻争奪ファンタジー、怒濤の第四弾!

一応、ルチルと同じお姫様属性でどういう扱いになるのかと思っていたシルヴィアだけれど……これはひどい(笑
なんか思いっきりパーティーの中の弄られ役になってるんですが。しかも、悪戯好きのエステルだけじゃなくて、他のわりと真面目な面々までついつい弄って遊んでしまうという天性の弄られ屋気質のご様子で、何この変則型癒し系w
殺伐としているはずの現状の中で和やかな雰囲気が途切れないのは、エステルだけが頑張ってるんじゃなくて、皆が積極的にエステルのノリを肯定しているからなのでしょう。何しろ、一番反発しそうなルチルが現状、一番の協力者だもんなあ。
面白いのは、恋愛面でも人間関係の方でも堅物に見えたルチルの方が色々と積極的であり寛容なんですよね、これ。恋愛感情というものを今まで実感したことのなかったエステルが、ヒースに抱いてしまった不思議な感情に戸惑っている一方で、ルチルは完全に開き直ってしまったのか、エステルのそれをヒースへの恋だ、と指摘した上で、エステルがヒースに抱いている感情も引っ括めて、ヒースも貴女も自分のものにしたい、という大胆発言。冷静に聞くとこの姫騎士さま、ものすごい欲張りなこと言ってるんですけど、あんまりにも涼やかに言ってのけるものだから、思わず納得してしまうところでしたけれど。
ヒースそっちのけで盛り上がってる魔王と姫様、という構図は、作者の別シリーズ【影執事マルク】でもお目に掛かってるんですよね。ラブコメになるとむしろ女性側での結束が強まる傾向にある作風のようなのですが、これがまた盛り上がるんですわ。しかも、あちらが正々堂々と張り合おう、という趣旨のものだったのに対して、こちらはルチルもエステルも、ヒースは私のモノ、貴女も私のモノ、という方針で、お互いにかなりべた惚れ状態なものですから、ちょっとえらいことになりそうです。「私の魔王」「あたしの姫騎士」なんてやりとりなんて、完全に主人公とヒロインの掛け合いですから、それw

今回はクラウンが直接的に介入してこなかったとは言え、王都の方で波乱含みの展開に。ルチルとエステルの将来が定まる、という意味ではかなり重要な流れだったのではないでしょうか。まさか、王様があそこまで覚悟決めちゃってるとはなあ。というか、そこまで王として責任感あるなら、もうちょっと早く何とか出来そうなものだったと思うのですけれど、そこは陛下自身が無能と自嘲する所以だったのか、クラウンの横槍が巧妙だったのか。しかし、はじまった当初はただの門番だったはずのヒースが、随分と格上げされてきたものです。むしろ、門番という職業自体が得体のしれないハイクラスの職業だったのでは、という誤解が生じかねないヒースの門番の概念がオカシイのですが。オカシイのですが。ヒースの思い描く門番だと、そのまま大臣でも王様でもなれそうなんですけどw

手島史詞作品感想

飛べない蝶と空の鯱 〜蒼の彼方より、最果てへ〜 1 3   

飛べない蝶と空の鯱 ~蒼の彼方より、最果てへ~1 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜蒼の彼方より、最果てへ〜 1】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

物語は新章へ!空の果てへの旅が始まる――

「北の地には、来てはならぬのです――」
そう伝言を残して、ハイフォニアから消えてしまった<夜姫>ヒルダ。失踪したヒルダを追って、ウィルとジェシカは北の大陸、ティエラへ。そこから北へは行くことができない、「北の空の門」で、ウィルとジェシカが遭遇したものは、「機械の翼」をもつ無人機による攻撃だった!
壁に囲まれ、霧が薄く、<霧鍵式>が役に立たない世界。霧の文明とは違った、「失われた文明」をもつ北の大地には、この世界の成り立ち、さらには空の果てへの鍵が隠されているのか――。
すべての島を堕とし、世界の再構築を狙う<七つの鍵>、そして空の最果てを目指すウィルとジェシカ、そしてとんでもない力を持った「魔女」たちが、北の果てで相まみえる!!
魔法と空戦のファンタジー、新章に突入!
サブタイトルをあらためての新章スタート。この事からも、このシリーズはかなりの長期化を見込んでいるようにも見えるんだけれど、案外あと三冊くらいで終わったりするかもしれないので油断はできない。ともあれ、中途半端に終わらずにいてくれればいいんだけれど。
さて、新章はハイフォニアを後にして「渡り鳥」が活動していない北の大陸ティエラへ。壁に覆われ「空」のない世界。その停滞と閉塞に満たされたティエラの地は、一瞬地上なのかと勘違いしかけたのだけれど、ここもやっぱり浮遊する大陸の一つだったわけだ。でも、「霧」が無い世界というのも驚きだ。あるのが当然のものが無い世界。つまり、霧鍵式が使えず霧を燃料にして飛ぶ翼も使えない。普段潤沢に使っているものを制限して使うということは、それだけ精緻なコントロールを要求されるということで、必然的に霧鍵式や飛翔に関する技術も研ぎ澄まされるということでもあり、危機が転じて二人の渡り鳥としての腕前はさらにメキメキとあがることになる。
もっと四苦八苦する展開になるかと思ったのだけれど、第一章で既にジタバタする段階は通り過ぎていたようで、多少不都合がある程度では止まること無く行動や判断に躊躇いなくクレバーに物事を進めていくウィルたちの姿に、随分頼もしくなったなあと感じ入ってしまった。もう彼らを半人前などと言えないだろう。どこから見ても歴戦の渡り鳥だ。
しかし、北の大陸で遭遇した<七つの鍵>は、これまでの連中と比べても桁違い、格の違う相手だった。何しろ、あのヒルダと同格以上にして彼女の仇敵。端的に言っても化け物以外の何物でもない魔女である。結局、物語の中枢には常にヒルダの存在があり、ということなのか。どうも今のところジェシカよりもヒルダを中心にしてあらゆる状況が回っているみたいだし。いや、そういうと語弊があるか。でも、ヒルダが常に関連しているのは間違いないからなあ。何気に、ヒルダの執事のフォルネウスの素性について言及が在ったのにはスッキリした。この人、ヒルダの過去話には一切登場していなかったのに、初登場時から彼女にとっての唯一の身内みたいな形で存在していたので、一体どうやってヒルダに仕えるようになったのかについては微妙に気になっていたものですから。でも、その正体やなぜヒルダを追っていたのかについてはまだ明かしてくれないあたり、勿体ぶってくれる。
空のない世界を舞台にすることによって、改めて「空を翔ぶ」事への心が吸い込まれるような憧れを再認識させてくれる新章。誰よりも速く、誰よりも高く、誰よりも自在に空を翔けることを求める二人。これは、割って入る余地が何処にもない。完全に空に関しては二人だけの二人のためだけの世界なんですよね。にしても、バカップルぶりが加速度的にひどくなってる。というよりも、今回は外からの二人に対する視点が多かったからなのか、二人の親密度がウィルとジェシカたち自身が思っているのと、周りの人から見たものの温度差が全然違うんですよね。二人にとって当然のことが、傍から見るともう無防備すぎるくらいにあけすけすぎて、直視できないレベルにまで達しちゃっているわけで……色々勘弁して下さい。
今回、<霧鍵式>が使えないということでジェシカのいつものお仕置きにも全然威力がなく、普段ならウィルを吹っ飛ばすような一撃が、痛みすら生じさせないポカポカという弱いパンチにしかならず、ジェシカがムキになってポカポカ叩いてくるのが、なんかもう可愛くて可愛くて。
許す、ウィル、襲え!!
ええい、周りがバタバタしてなければもっとイチャイチャ出来るのに。早いところゆっくりイチャつけるように、風雲急を告げる事態を収めて欲しいところであります。

シリーズ感想

剣刻の銀乙女<ユングフラウ>3 3   

剣刻の銀乙女3 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女<ユングフラウ>3】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

魔力の大半を失い、どこかいつもと違うエステルのことを気遣うヒースたち。国境沿いに巨大な刻魔が現れたとの急報を受け、ルチルたち小隊はその討伐へ向かうのだが、その途上で隣国プレギエーラの使者が従刻魔たちに襲われていたのを助ける。まだ15歳の使者の名はシルヴィア。ヒースと師を同じくする妹弟子だというシルヴィアはエストレリャの王都へと向かっている途中だったという。はぐれた仲間を探したいしと助力を申し出るシルヴィアを加えた一行だが、想像を超えた力を持つ刻魔に予想外の苦戦をしいられる。そんなさなか、シルヴィアの前にヒースたちの宿敵クラウンが現れ、彼女の心をかき乱す事実を告げる。ヒースたちは刻魔を討伐することができるのか、そして力を失い傷ついたエステルは―。シリーズ待望の第三弾。
あれ? 師匠ってそうだったの!? どっかで情報でてましたっけ。てっきり渋いおっさんを想像していたので、このヒースのお師匠様の情報には驚かされた。これ、だとすると思っていたよりも相当に厄介な人なんじゃないか。現れたらさんざん引っ掻き回されそうな予感がする。
まあ、出ていない人を今から危惧しても仕方ないので、今いる人から心配すると……ルチル姫がなんか変なふうに悟ってるーー!? あかん、エステルに悪い影響を受けてしまってる。常識とか価値観が変な方向にズレちゃってます、それって。てっきり、ルチルがエステルを教育する方向に流れるのかと思ってたら、逆に感化されてましたって、大丈夫なのか!? お姫様なのに、良識面については若干焦点がぐるぐる回りだしてる気がするぞ。
しかし、視点を変えてみるとそうしたルチルの変化は精神面の不安定さを解消し、誰が敵か、そもそも味方ですら一瞬後に後ろから襲いかかって来かねない恐ろしい状況下にあっても揺るがず対処出来るだけの拠り所を見つけた、という意味でもあり、決して悪いことじゃあないんだが。前回までの疲弊っぷりがかなり酷かっただけに、多少おかしくなってもルチルが安定してくれたのは見ていて大いに安心できる材料になっている。こうして見ると、やはりパーティーのリーダー格はルチル姫なんだなあと実感出来ますね。エステルやヒースも欠かせない要であることは間違いないんですが、ルチルの頼りになる感はやはり桁違いのものがある。
さて、そんなルチルと交代するように、やや元の元気の良さを欠落させる面が垣間見えるようになったのがエステル。リーダーがルチルだとすれば、ムードメーカーは間違いなくこの娘なので、エステルが元気がないと明るさが損なわれてしまうという点で、彼女もまたもう欠かせない一員なんだなあ。
魔王候補であるエステルが力ではなく笑顔をもって制する道化師を志すようになった出来事を、改めて詳しく。彼女にとってのパラダイムシフトだったそれは、しかし魔王としての力を否定するものでもなく、力の大半を奪われ喪ってしまったことで、彼女にも考え事が増えたようで……。力に頼らず、しかし力を否定するでもなく、現状が筆舌しがたい悪意の混沌の中にある以上、理想を実現するために何が必要か、というのは難しい問題だわなあ。もっとも、エステルはあれで潔癖とは程遠い現実主義者でもあるので、力でねじ伏せる事にあんまり躊躇いもないんですよね。まあだカラこそ力がなくなったことに色々と思い巡らす事もあったんだろうけれど、そのあたりのさっぱりした割り切りは、なかなか頼もしかったりする。少なくとも、彼女については状態がどうあろうと果断であり足を引っ張るような真似はしませんからね。
割り切り、切り替えの速さという意味ではヒースもかなり実戦向きというか、普段はなよなよしているくせに肝心なときには即断即決でウジウジと悩まない、その上で考えなしではなく早い判断の中で十分思慮を巡らしているので、このパーティーは若さのわりに脆さがなく強靭なんですよね。今回、特にバタバタとして次々に想定外の展開が襲ってくる展開だったからこそ、余計にその辺りが引き立って見えた気がします。クラウンなんてたちの悪い謀略家が相手な以上、勢いだけが取り柄なチームでは良いように手玉に取られてしまうだけなので、この臨機応変な柔軟性と相手の手を早めに潰していける速攻性を持つこのパーティーは、ホント頼もしいです。
シルヴィアの持つ剣刻の能力は、あれで攻撃支援としてはかなり強力ですし、立場上もけっこうイイカードを持っているので、その参入はだいぶプラスなんだろうなあ。何だかんだと信頼出来る味方が増えるというのは、今の状況では宝石の価値がありますし。

しかし、剣刻の元来の持ち主、もうルチルを含めてそんなわずかしか残ってないのか。逆に、それだけの惨状で生き残っているというのは、特別な理由でもあるのか。次回、その円卓騎士に会いに行くようなので、ヤバい人物だったらそれはそれで面白そうなんだけれど……。

1巻 2巻感想

かくて滅びた幻想楽園(ディストピア) 3   

かくて滅びた幻想楽園 (富士見ファンタジア文庫)

【かくて滅びた幻想楽園(ディストピア)】 手島史詞/GAN 富士見ファンタジア文庫

Amazon

神獣によって支配、統治された世界。神獣の庇護の下、人々が平等に幸福を与えられる平和なこの世界の絶対のルールは―神獣への服従―。神獣の支配に対抗する組織“ウーロニクス”に所属し、自らを盗賊と名乗る少年リューは、外の世界に心を閉ざした少女クレアーレと出会う。「壊れるだけの世界など、もう見たくないのじゃ」「俺は君を盗む。こうして腕に収まった以上、君は俺のものだ」クレアーレを連れだし笑顔と希望を、そして神獣から全てを取り戻すため―かくて盗賊の少年は運命に抗い、神から世界を盗む壮大なサーガが紡がれる。
幸福なのは義務なんです♪ 幸福なのは義務なんです♪
思わず口ずさみながら読んでたら、あとがきできっちり言及されてましたディストピア風TRPG「パラノイア」。幸福なのは市民の義務、市民はコンピューター様の支配のもとで幸福に暮らしているはずであり、幸福でなかったり幸福に疑問を抱く市民はコンピューター様に対して反逆していると見なされ、ただちに処刑されます。
幸せですか? 義務ですよ? 果たしてますか?

とまあ、こんなふうに本作も神獣様によって幸福を与えられた人間たちが幸せに暮らす素晴らしい世界。そこに疑問の余地はなく、皆が笑顔で暮らす世界。人は他人に優しく親切で、物も心も満たされている。
人はそこを、楽園と呼ぶのでしょう。
ただし、そこに考える自由はない。疑問を抱くことも許されず、好奇心を抱くことも認められない。本人に悪意や叛意、体制に対する非難がなかったとしても、少しでも神獣様の支配の範囲を逸脱する言動を表にすれば、即座にして永遠に世界から排除されてしまうという、絶対が罷り通る楽園と言う名のディストピア。
しかし、そこには恐怖もなければ絶望もない、無知と思考停止によって成り立っているとはいえ、人々は平和に暮らしているのです。幸福によって満たされているのです。これもまた、一つの平和の形なのでしょう。そして、案外とこういう平和は受け入れられ、場合によっては無自覚に自らの手によって作り上げようとされゆくものだったりします。そして、それを妨げようとするもの、否定しようとするものは、往々にして悪と見なされ野蛮で平和を解さない暴力的な存在として徹底的に敵視され、排除する動きが生まれます。そして、排除される側もまた呼応するように理性を失っていき、敵視されるに相応しいものへと適応していく。
「ウーロニクス」という組織は、現状見ている限りの範囲では絶対支配に対する反抗組織としてはかなり健全な在り方を保っているといっていいでしょう。神獣という、わかりやすい敵対対象が存在するのも抗うものとしての真っ当さを保っている理由なのかもしれません。しかし、主人公のリューはそうした支配と反抗の対立から一線を引いた場所に立っている。面白い、彼に在るのは正義でも怒りでも憎しみでもなく、純粋なまでの果てしないまでの個人的な欲望だ。ただ一人の少女に思いを馳せ、彼女のすべてを手に入れることを望む我欲の権化だ。しかし、そのためならば神獣だろうと創造主だろうと神も世界も敵に回す事を厭わないという馬鹿さ加減に後ろ暗いところなど何もなく痛快さばかりが胸をすく。
そして、奪い尽くす代わりに与え尽くしてやろうというその姿勢は、その思想は、欲望の中でも「愛」という名のそれなのではないだろうか。だとすれば、盗賊などと名乗ってごまかしているけれど、実際のその在り方は、随分とこっ恥ずかしいものじゃあないか。しかしそれもまた、男の本懐。
良い男っぷりである。ただ、一途である分、もう一人のヒロインであるイオリがどれだけ割を食ってしまうのか、今の段階から心苦しいところではあるのですけれど。

手島史詞作品感想

剣刻の銀乙女 2 4   

剣刻の銀乙女2 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女<ユングフラウ> 2】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

謎のクラウンとの刻印を巡る戦いからしばらくのち。強制入学させられたエストレリャ学園での生活に慣れることができないヒースと、慣れすぎてあちこちで騒動を起こすエステルは、今日も騎士姫ルチルの説教を浴びていた。そんなある日、近隣の港町コスタに現れた罪禍の怪物を討伐すべく、ルチルはヒースとエステル、そしてヒースにようやくできた友人のエリオを伴って向かうことにしたのだが、そこに現れたのはエステルも知らない未知の罪禍だった。その頃、ルチルたちが不在の学園でも生徒が行方不明になる事件が起こる。消えた生徒たちにはある共通点が見つかり…。王国を襲う新たな危機に、騎士姫ルチルが立ち向かう。シリーズ待望の第二弾登場。
【影執事マルク】の頃からそうだったけれど、恋してしまった女の子を描かせたら抜群なところがある作者だなあ、この人。というわけで、今回はメインのエステルを据え置いて、騎士姫ルチルが主役を担うエピソード。この扱いの上等さを見ると、ほぼエステルとルチルのダブルヒロイン体制で行くつもりか。
刻印を巡る凄惨な戦いで大きな心の傷を負ったルチル。それを周囲に隠して多忙な日々に没頭するものの、刻印が狙われ、いつ誰が襲ってくるかも分からないという状況は変わらず、学園でも不穏な事件が起こっている。心やすまる暇もなく、心の傷は癒えるどころか密かに膿みはじめていた、と。
自分の弱さを表に出せない性格、そして立場にある人が頑張りすぎて壊れてしまう、というのは決して珍しい話ではないんですけれど、周りに信頼出来る人間が少ない、というのは堪えるだろうなあ。信頼出来ないだけならともかく、今の状況はそれが即座に自分を殺しに来るかもしれないと警戒し続けないといけないという意味に繋がり、さらには無辜の市民たちですら場合によっては襲い掛かってくるかもしれない、というんだからいっときも油断出来ない生活というのはどれだけ精神的に疲弊するものか。
何だかんだと、今回も誰が信用できて誰が信用出来ないか、という信義を問うとともに自分がどれだけ他人を信じられるか、という話になってますしね。見れば見るほど、過酷極まる状況である。
そんな中でルチルの唯一の慰めとなり心の潤いとなるのが、ヒースとエステルの存在であり、力によらず笑いで世界を満たそうというエステルの存在が、何だかんだとルチルにとっても大きなものになっているのがよく分かる。奔放なようで、エステルって何気に繊細に他人の精神状態を察せる子ですしね。トラブルメーカーの問題児にも関わらず、頼もしったらありゃしない。
一方で、ヒースも一般人のふりしてメンタルはブレないし、腕前も……なにこいつ、槍に関してはこんなに尋常じゃなかったの!? てっきり根性だけマックスで、技量についてはちょっと上手い程度だと思っていたので、この腕前には愕然としてしまった。ってか、ヒースの自己評価が低すぎるんだろう、これ。師匠に下手くそと言われ続けた上に、才能は平凡とまで断言されたせいなんだろうけど……師匠、あんた煽りすぎですよ。これを平凡と言われたら、他が立つ瀬ないわー。尤も、前回エステルを巡る戦いにおいて、ヒースがメンタル的にブレイクスルーした結果、停滞していたものが突き抜けた、という事もあるんだろうけれど。いや、これは門番やらせてるには惜しい人材だわ。まあ、本人は物凄く門番やりたいみたいですけど!! 何気に門番の仕事を通じて地理や社会情勢など、巡回商人並の知識も蓄えてて、脳筋バカではないようですけど。やりたきゃ、身分が将来騎士や貴族になったとしても、仕事として門番やってもいいんじゃね?
とまあ、そんな平凡臭が付きまとっていながら部分部分突き抜けているヒースですが、一番すごい所は打算抜きの素朴な思いで動けること。それは地味で目立たない心映ながら、その心意気に救われ騎士として立つ事の出来たルチルにとっては、彼こそが英雄であったわけです。そんな彼と身近な友人として接するようになり、彼の良いところも悪いところも情けないところも目の当たりにし、しかし自分が憧れた部分は何も変わらず、自分にとっての英雄そのままだった。でも、その英雄は今や遠い所から思いを馳せて憧れる存在ではなく、自分に叱られ尻尾を巻いてへこんだり、エステルに振り回されて悲鳴を上げて泣いているみっともない男の子でもあり、手の届くところで笑っていてくれる男の子でもあるわけです。そして、他人に見せてはいけなかった弱い自分を受け入れて、その上でずっと見守ってくれると宣言してくれた存在である。弱さも強さも何もかも包括して、全肯定してくれる存在。ふと気がつくと、その人のことを考えるだけで心が湧きたち血が巡る。
ルチルが自分の恋を認める瞬間のシーンが、実に素晴らしいんですよね。あの文章を見たら、どれだけ彼女がメロメロになっているのかが一目でわかる。恋する乙女の咲かせる花の、なんと見事な出来栄えか。
ヒロインの片割れがこれだけ恋に目覚めてしまったのですから、次はまだ恋の何たるかも知らないエステルの出番でしょう。
裏ではまたも泥濘のような陰謀が進行し、エステルに焦点があたるだろう次回も、この調子なら期待を募らせて待てそうです。

1巻感想

飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 33   

飛べない蝶と空の鯱 3 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 3】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

過去への配達依頼――裏切りと傷跡の物語

「墜ちろ――」
少女の羽を引き裂き、空から堕とした男。
なぜ、男は裏切り、そして世界を滅ぼそうとするのか――。
翼舟に跨り、空に浮かぶ島と島を行き交い、命を懸けて人の「記憶」を運ぶ武装郵便屋「渡り鳥」。郵便屋「蝶と鯱」を経営するウィルとジェシカに新たに舞い込んだ依頼は、かつての仲間であり――そして、ジェシカから空を奪った男への配達依頼だった。
空を失った少女・ジェシカと不器用で飛ぶことが下手な少年・ウィル。それでも「空の最果て」を目指す二人の、出会いの記憶。
約束と絆、裏切りと傷跡の物語。
「影執事マルク」シリーズの手島史詞の紡ぐ世界観を、鵜飼沙樹の美麗かつ繊細なイラストが彩る好評シリーズ。「霧鍵式」と呼ばれる魔法と空戦のファンタジー、好調第三弾!!
これって、ミスリードを誘っているつもりに見えるのが実はミスリードだったりしないでしょうね。もしそうだったら感心せざるを得ないんだろうけれど、さすがにそれはないだろうなあ。と、思わず裏の裏を疑ってしまうくらいに回想での視点もあの人の正体もあからさますぎて、これ隠してるんだろうか……。少なくとも、回想については完全にそのまんまだったので、あの人の正体についても今更疑う余地もないんだろうけれど、だったらもう読者向けには隠しておくのも無駄なじゃないのかな、と微苦笑混じりに思わずには居られない。まあ過去回想である封書については、読者に対してはあからさまであっても、それを覗いたレンがその封書の主が誰なのかしばらく気が付かない程度の錯誤が必要な展開だった、と考えればああいう書き方も納得は行くんですけどね。
しかし、第三者から見るジェシカとウィルの関係というのは最初っから他人が入る余地もないベッタリさんだったのか。意外と外から二人の様子を見るケースがなかっただけに、この視点はある意味新鮮だった。出会った、或いは再会した当初であれだけお互いに特別扱いし合ってるイチャイチャっぷりだとすれば、今現在はどれだけだっつー話だよなあ。ウィル視点であってすら、今のジェシカときたら完全にデレッデレなわけですし。ウィルに可愛いと言われて悶絶したり、こっそりウィルの封書をゲットして悦に浸ったり、はいはいごちそうさまってなもんである。
ちょっと勿体無かったのは、ジェシカとウィル、そしてビルギットが三人で行動していた頃のことをあんまりじっくり描けてなかったところでしょうか。ビルギットという人物が、ジェシカとウィルにとってどれだけ大きな存在だったか、どれだけ信頼していた仲間だったのか、三人で居た頃に培った絆とか友情とかそういうものがあんまり描かれていなかったので、肝心の彼の裏切りの衝撃や何やらがあんまり伝わって来なかったんですよね。彼があのような裏切りの決意を固めたのは、それだけジェシカとウィルに対して絆の深さを感じていた、あの二人を認め親しみ信頼し羨望していたからこその決断だっただけに、その苦渋にして吹っ切れたような決意の深さを描き切るに、その背景を担う三人の関係の深さが、やっぱり描ききれてなかったんじゃないかなあ、と思ったわけです。それはまわりまわって、ビルギットとジェシカとウィルが本当に初めて出会った時の真相が明らかになった時も、ウィルとジェシカの行動原理の起源に至り、因果は巡るというなかなか劇的な過去の真実だったにも関わらず、インパクトもあまりなくあーそうなんだー、という程度で流れてしまったんですよね。これは、良く練られた因果関係だっただけに、見せ方の弱さがちょっと勿体無かったなあ、と。
しかし、ビルギットはあれだよなあ。気づけよ!! しかたないのかもしれないけれど、ウィルたちを裏切ってまで探し求めているくせに、まるで気づいていないあたり、悲劇性よりもなんか額に押し上げたメガネを、メガネ何処行ったー!? と探しまわってるみたいな間抜けさを感じてしまった。これ、あの人が救われてくれないとちょっと悲惨すぎるよ?
ここに来て、ヒルダがまだ重要なキーキャラクターになってくるのか。てっきりジョーカーとして機能する切り札としてのキャラクターだと思っていたのだけれど。

1巻 2巻感想

飛べない蝶と空の鯱 2 4   

飛べない蝶と空の鯱 2 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 2】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

受取人はトランクに詰まった少女の死体!?

霧の上を島が浮遊し、空を飛ぶことでしか島を移動できない世界。
空に憧れ、まだ誰も見たことのない霧の底、「空の最果て」を目指す少年と少女の物語。

風を読むことが下手で、翼舟の操縦が下手な少年・ウィルと、過去に負った傷から空を飛ぶことが怖くなってしまった少女・ジェシカは、二人乗りの翼舟に跨り、空飛ぶ郵便屋「蝶と鯱」を経営していた。
彼らが運ぶのは、人々の記憶を封じた「封書」。

誰よりも早く、誰からも秘密を守り、命をかけてでも運ぶ――課せられた重責と引き替えにもたらされるのは、自由に空を飛ぶ権利。
お互いの欠点を補いながらでないと飛べない二人だったが、霧妖という魔物が棲み、霧に囲まれた空を命がけで疾走する。
そんな「蝶と鯱」に、謎の男からの依頼で封書が持ち込まれる。意気揚々と届け先に向かった二人着いたのは誰もいない廃墟。唯一残されたトランクの中には、膝を抱えたまま目を閉じた裸の少女が――。
今回の依頼には、この世界の創世記の伝承で大きな力を持つ「七つの鍵」の秘密と、それを狙う組織が関わっていて――

空の上を駆ける爽快冒険ファンタジー、待望の第二弾。
この物語はウィルとジェシカ、広い空に二人きりがよく似合う、と前巻で言ってた端から二人きりじゃなくなったよ! それどころか、二機のバディ制を規定とする渡り鳥協会からの通達によって、武装郵便屋<渡り鳥>の資格を満たすために二人が別々の翼舟に乗って飛ぶはめに。いやさ、ジェシカはPTSDで空飛べなくなったんじゃないのかよ。ウィルの背中にしがみついてようやく耐えていたような子を、ちょっと慣れてきたからって一人で飛ばすなんて……それは仕方のない事だったのかもしれないけれど、ウィルとジェシカが約束した二人で飛ぶ、という意味から完全に逸脱してしまっている。現実は見なければならないけれど、そうしなければ渡り鳥を続けられなかったのかもしれないけれど、だからと言って自分たちの夢を置き去りにするような真似だったんですよね、これは。
そもそも、協会からの通達をジェシカに伝えず、ひたすら現実逃避して何の対策もせずに傍観してしまったウィルは幾らなんでも情けなすぎるぞ。その現実逃避はガチに現実逃避そのもので、それは幾らなんでもイケマセン。無視してたらどうにかなるなんて問題じゃなかろうにw
まあそれだけ鬱憤を貯められたからこそ、ジェシカとウィルが二人乗りに戻って空の怪物と渡り合う空戦シーンは素直に滾りましたが。戻る、どころか以前よりも進化しての形でしたしね。思えば、ウィルが操縦してジェシカがナビと銃撃を担当するって、見るからにちぐはぐだったんですよね。そうやって、足りない部分を補い合って飛ぶのは素晴らしいのですけれど、決して最良ではなかった。それって、結局出来ないところを補っているだけで、やっと並になったかという所に留まってただけですもんね。最良とは、お互いの得意分野を十全に発揮して相乗効果を引き出すこと。元々、操縦センスに人外のモノと持っているのがジェシカであり、鯱と呼ばれるほど凄まじい攻撃能力を持つのがウィルなのですから、二人がその得意な方に専念したらどれほどの高みに達せるのか。それを、ここでようやく見せてくれました。空の果てに辿り着きたいという願いが戯言などではなく、確かな実力に裏打ちされた目標なのだということを、これでもかというくらいに見せつけてくれた、そんな映えある空戦でした。
しかし、この段階でウィルとジェシカのコンビにもう一人加わることになるとは思わなかったなあ。ウィルはともかく、ジェシカの方が人見知りという以上に人間恐怖症の側面が強かったので、ジェシカが他の誰かが加わることを許さないだろうし、心を開くまいと思ってたんですよね。それが、まさかジェシカの方から心を許す事になるとは。まあ終わってみると、新しいメンバーが加わったと言ってもヒロインが増えたというよりもあれですね、ご夫婦がペットを飼い始めました、みたいな?(失礼
そんなマスコット候補のレンですが、彼女にまつわるお話の真相には完全に虚を突かれました。冒頭のプロローグに思いっきり引っ張られたことに最後まで気が付かなかった。なるほどなあ、微妙にフェイのレンに対する線引と、レンのフェイに対する感情に冒頭のシーンと比べて変な違和感があるなあ、とちらっと頭の片隅によぎったのはそういう訳だったのか。レンの記憶が無いというところに誤魔化されて、お互いへのかすかな遠慮の意味を捉えきれていなかったみたいだ。そうだよなあ、恋人や奥さんなら無いだろう遠慮でも、そうした関係だとどれだけ宝物みたいに大切にしていても、過保護であればなおさらに、逆に気遣いが生まれてしまうものなのかもしれない。
同時に、そういう関係だからこそ、身を投げ打てるのだろう。誰かに託す事ができるのだろう。今回もまた、その意見では前回とまた同じく、人生を繋ぐ物語だったのでしょう。そこに愛はあったのだ、という証を示して。

あと、ヒルダ姉さんが相変わらず絶好調で良かったです。別に隠居してしまうなんて謙虚な事になるとは思ってませんでしたけれど、いろんな意味で身も蓋もなく最強だなあ、この人は。

1巻感想

剣刻の銀乙女4   

剣刻の銀乙女 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ)】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

Amazon

数多の王、数多の国、数多の信仰が混在し、そして衝突した、統べる者なき時代―世界に魔神と呼ばれる存在が現れた。数多の王たちが戦いを挑んだが、いかなる剣も魔術も魔神の体に傷をつけることは叶わなかった。人々が絶望に沈みかけたそのとき、ひとりの賢者が現れこう言った。「魔神を斬ることができる剣がある。優れた技を持つ者がほしい。私についてくる者はいないか」剣は十二本あった。十二人の王はそれぞれもっとも優れた騎士を一人ずつ送った。選ばれた十二人の騎士と一人の賢者は魔神に挑み、そして見事討ち取った。後に賢者を王として十二の国は一つとなり、十二人の騎士は円卓の騎士と呼ばれ全ての騎士の手本となった―そして、ときは今に至る―。
これ、最初の状況設定が鬼すぎる! 円卓の騎士の伝説が正統派な英雄譚だけに、その希望の伝説を逆手に取ったこの謀略……否や呪詛と言っても過言ではないだろう悪意の産物は反吐が出そうなほど、素晴らしい。ここまで人間の持つ欲望や負の感情を擽って煽り立てるような悪辣極まる策略はなかなか見ないだけに、なんかむしろ唆られるくらい。ルール無用で、ひたすらに人々の邪な想いを掻き立てる。本来なら、一途さや真摯さ、善意やひたむきさに繋がるだろう想いですら、惨劇へと誘導する。その元となるのが、人々の希望となる伝説の剣刻の紋章、救世の為に選ばれた者の証であり、円卓の剣を召喚できる印、というのは完全に皮肉を通り越している。人々の希望が、そのまま反転して混乱と不信の呼び水となり、魔神が現れるまでもなく人の世を滅茶苦茶にしていっているのだから。剣刻の紋章そのものは、何一つ穢れる事無く伝説の当時から何も変わらぬ力を持ってそこに現れたというのに、である。
安易に剣刻を穢れに染めて邪悪な武器に変えてしまった、とかそんなんじゃなくて、それを扱う人間の側の人心を惑わすことで剣刻の価値や意味を完全にひっくり返してしまった、その手法にこそ感嘆を禁じ得ない。これこそ、呪いだよなあ。それも、呪力だの魔力だの術式だのと言った不可思議な力など全く使わない、純粋な言葉によって人々の心の中に打ち込まれた楔によってもたらされた、解けない呪詛。勿論、人々の欲望や悪意を加速させるために、幻術による印象操作など様々な手管は使っているのだけれど、それでも根本の所では魔法も奇跡も使っていない、ただの囁きだけで救世の希望を破綻させてしまったのだから、この黒幕は本当に凄い。
これぞ、邪悪でしょう。真っ向から暴力で圧するなど三流のすることと言わんばかりの手練手管には、逆に惚れ惚れとするばかり。
この策略の恐ろしいところは、一度始まってしまった以上、不信の連鎖は止まらないって事なんですよね。そして、この殺戮のバトルロイヤルの参加者は資格不要の無制限。せめて剣刻保有者の間だけでも、と思ったら自分以外の剣刻を奪って強化する事も可能、という逃げ道ナシの悪辣さ。
どんな達人だろうと強者だろうと、24時間何時誰から狙われるか解からない、という心身休まらない状況で果たして生き残ることが出来るものだろうか。単純に素性を伏せて逃げまわるだけならまだ可能性があるかもしれないけれど、それは魔物から人を守る剣刻所有者としての役割を放棄する事にもなってしまう。円卓の騎士としての機能は果たせない。これはもう、魔神が復活したとしても立ち向かうべき人間側の体制はそれ以前に瓦解してしまった、ということなんですよね。
正直、この舞台設定だけで非常に面白い。
ここまで殺伐とした内容だと、作品の雰囲気も暗くなってしまいかねないんだけれど、そこを救ってくれるのがヒロインのエステルである。道化師を志す彼女は、どんな切羽詰まった状況でも、悲惨な環境でも、人々が笑ってくれるように、と芸を振る舞うのですが、彼女が笑いを振りまくことを志したその理由には、毅然とした信念が存在し、そして彼女が最終的に得ようとしているものは大望と言っていいくらいスケールの大きなもの。
そして、そんな彼女の存在こそが、本来なら災厄の側に値するのであろう彼女の存在こそが、これまた反転して希望の要となっていく。
いろんな価値観が面白いようにくるくると反転していく中で、それらを繋ぐ形となる主人公のヒースは元々名も無き一兵士、古典的RPGで言うところの「この街は◯◯だ、ようこそ旅人よ」と、最初のプレイヤーを出迎えてくれる門番に過ぎない。でも、誰もが誰かを疑い窺うような疑心暗鬼が渦巻く内乱の中で、この子の芯のブレない素直な真っ直ぐさは、非常に好感度があがっちゃいます。何より、力の強弱が問題ではなく、逃げちゃいけない場面で逃げずに立ち向かえる勇気は、まさしく門番―ゲートキーパーって感じで、エステルが門に関わる存在というのもあるせいか、門番というしがない役職が思いの外嵌った感がありました。
走りだしとしては充分なスタートダッシュだったんじゃないでしょうか。逆に最初にこれだけ状況を整えるのに凝ってしまうと次からが結構たいへんな気がしますけれど、何にせよスタートが良いのが悪いはずがなく、次以降も期待したいシリーズの始まりです。

XIII番の魔符詠姫(タロットソーサレス) 23   

XIII番の魔符詠姫2 (一迅社文庫)

【XIII番の魔符詠姫(タロットソーサレス) 2】 手島史詞/桐野霞 一迅社文庫

Amazon

夜な夜な街を徘徊しては悪人から血を奪い、魔符詠姫の紅葉やマコトとイタチごっこを続けるキリク。日中は紅葉たちと比較的平和な学園生活を送っていた。ある日、いつものように夜の街を徘徊していたキリクは、見知らぬ魔符詠姫から襲撃される。紅葉よりも果敢で、マコトよりも攻撃的な魔符詠姫の執拗な追撃に逃走もできず追い込まれたキリクだが、別の“ヴァンパイア”によって助けられる。キリクを助けたヴァンパイアの名は良人。こちらの世界へ来る前にキリクの友人だった少年だった。その頃、敵であるはずのキリクと良好な関係を築く紅葉の姿を見て、マコトは自分の正義は本当に間違っていないのか、かつて自分の両親を殺したヴァンパイアの姿を思い起こしながら、深く悩むのだが…。
ああ、そうか。マコトって「ヴァンパイア」の正体について何も知らなかったんだ。単なる怪物、人類の敵、人食いの化け物、そんな風にしか捉えていなかったのか。だからこそ、キリクのなるべく人を傷つけず、ヴァンパイア狩りである「魔符詠姫」相手にすら気遣いを惜しまないというスタイルに、あれだけ戸惑いを抱いていたんだ。
逆に言うと、両親と姉をヴァンパイアにあれだけ無残に惨殺されて復讐の一念で狩りを続けていた彼女が、キリクの人となりを知ってしまっただけで、人の皮を被った怪物としてしか認識していないヴァンパイアの彼に対して手心を加え、追いかけっこを続けながらも本気で刈り取る気をなくしてしまっていた、というのはそれだけマコトが性格的に残酷にも残虐にも無慈悲にも成り得ない、普通の女の子だったというのが透けて見えてくる。
そんな彼女だからこそ、ヴァンパイアの正体が怪物や人外などではなく、パラレルワールドから流れてきた元・普通の人間であり、血を吸わざるを得ないのは生きるための不可抗力だった、と知ってしまった時の衝撃は大きかったのだろう。正義を標榜するからこそ、自身の正義に疑いを抱いてしまえば動けなくなる。一途であるということは強靭であるとともに、目標を見失った時に容易に自分の在り方をも失ってしまうということにも繋がっている。
そう考えると、事前にキリクと交流が生まれて心ならずもヴァンパイアへの偏見が一部なりとも解れていたのは、マコトの正義を揺るがす真実を前にしてワンクッション置けた事になるのではないだろうか。キリクと知り合っていなければ、マコトの受けたショックは遥かに大きく、拒絶するにしても受け入れるにしてももっと極端な形で影響が出た可能性もある。例えば、より頑なに凶行に走るようになるか、或いは二度と戦えなくなるほど打ちのめされるか。
マコトには、自分が戦っていた相手が怪物などではなく人間であったという信じたくない事実に加えて、自分の復讐の直接の相手との遭遇、さらに自分が相手の復讐のターゲットであったという更なる真実に直面する事になる。正直、心折れても仕方ないくらいの衝撃の連続なのだけれど、こうした決定的な岐路に立った時こそそれを支えようという周りの人の姿が浮き立ってくるものだ。情けは人の為ならず、じゃないけれど、彼女のこれまでの正義たる振る舞いは、敵を作る以上に味方を作っていたのだろう。復讐者でありながら、何気に面倒見も良く、甘い正義の味方だったからなあ。
そして、ある意味壊れてしまった彼女の価値観を辛うじて守ったのは、キリクとの交流の時間であり、敵である彼が手を差し伸べてくれた事こそが、最後の一線で彼女を守ったことを鑑みれば……まあ、意識しちゃうよなあ。エロいこともされちゃったし。

エロいこと、というと紅葉の天然の方向が完全に無知無自覚の据え膳に疾走を開始していて、色々と無防備すぎる(笑
恋愛以前に性の知識が小学生低学年レベルどころか幼稚園レベルなくせに、本能だけでひょいひょいと誘惑してくるものだから、危ないの何の。こう、自分が何サれるかわかってない娘さんにイケないことをしてしまうという倒錯感は、なかなかのものでして、ええ、ええ。
キリクもあんまり理性が持つ方でもなさそうなので、そのうち紅葉って事故的に魔符詠姫を卒業してしまいかねない!! キリクは、魔符詠姫をやめる方法とか知らないだろうし、紅葉は聞いてるのに分かってなかったみたいだし。マコト、教えてやれよw

1巻感想

飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜4   

飛べない蝶と空の鯱 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

Amazon

霧の上に島が浮かび、島々を行き交う交通手段は「空を飛ぶ」ことだけーー。
 「霧妖」という魔物が棲む霧の海の上を飛び、命がけで人々の「想い」を運ぶ「武装郵便屋」の少年・ウィルと、その相棒(バディ)の不思議な少女・ジェシカの物語。
 飛ぶのがヘタで風を読めないウィルと、過去の事件がきっかけで空が怖くなったジェシカ。それでも空に憧れ、飛ぶことにこだわる二人は、この世界の人々の唯一の情報伝達手段である、「封書」と呼ばれる記憶を封じ込めることができる手紙を運ぶ「郵便屋」を開業する。
 ある日、二人に<夜姫>と呼ばれる少女から「届けて欲しい」と封書が持ち込まれる。しかし、厄介なトラブルメーカーである彼女の依頼が、まともな荷物なはずがなく……。
 「影執事マルク」シリーズで人気、実力ともに評価される手島史詞が紡ぐ、最高に爽快な「空飛び」冒険ファンタジー。
 イラストは『ブラック・ブレット』『カレイドメイズ』などの繊細で美麗な絵が好評の鵜飼沙樹。
最近、チラホラと見かけるようになった、陸上がなく雲の上に浮く浮島だけが人の住む領域、という空の上の世界。必然的に、そこでは「空を翔ぶ」事が主題となり、夢となり、目標となり、場合によってはその事そのものが人と人をつなぐ絆となる。この作品もまた、そうやって「空を翔ぶ」ことに拘る二人の少年少女がメインとなってくるのだけれど、この二人がまた際立った飛翔技術を持つのに故あって高所恐怖症のジェシカと、地面の上なら喧嘩無双のウィルという、空の上駄目じゃん、というコンビでおいおい(笑
それでも、この二人は空の上がよく似合う。
引いては、二人きりがよく似合う、という方が正確か。蒼穹の果て、雲の他には何もない広大で無辺な空間の中に、ポツンと浮かぶ二人の乗った翼船。どんな狭い部屋よりも、どんなに暖かい布団の中よりも、多分お互いの存在と熱を感じ取れる二人きりの、二人だけの為の世界。
そもそも、墜ちた記憶でPTSDを発症するほどの高所恐怖症になりながら、それでもなお空を翔ぶ事にジェシカが拘るのは、決して空を飛びたいという本能だけじゃないと思うんですよね。彼女の出自からして、地上の上に居るよりも、たとえ恐怖による発作で心身が打ちのめされようとも、ウィルと二人きりで居られる「空の上」こそが一番安心できる世界なんじゃないでしょうか。普段、辛辣な態度ばかりとりながら、ふと宿で目を覚ますと自分一人きりでウィルの姿が見当たらなかった時の、ジェシカのあの狼狽え方と心細そうな様子を見てしまうと、彼女にとってのウィルの存在の大きさとは、それこそ世界に等しいものなんじゃないかと思えてくる。同時に、ウィルにとってもまた、ジェシカの存在は自身の夢と等価、というかそのものなんですよね。二人にとって最も大事な、空を翔ぶ、と言うことは、同時にお互いの存在を抜きにしては語られない、不可分の意味を持つ事なのです。空を翔ぶのではなく、二人で空を翔ぶ事こそが、彼らにとっての全てなのですから。
だからこそ、ウィルとジェシカには、ただ二人きりの空の上がよく似合う。お互いへの想いによって結ばれて空の上にある二人だからこそ、誰かに伝えるために込められた想いの結晶である「封書」を運び何があっても届ける「武装郵便屋」という仕事がよく似合う。

今回の仕事は、終わってみれば封書を届けた先の人の、生きた意味を見出し決定付ける仕事でした。同時に、その人の人生を見送る役目を担い、交わる事の出来なかった二人の男女の結末に安息を与える仕事でもありました。
この手の「手紙」を届ける仕事モノの定番と言えば定番なんですけれど、離れ離れになってしまった人生を繋ぐことって、どうしてこうも感動的なんでしょう。心残りが解かれて、しこりや後悔が想い出に変わる瞬間の、なんと清々しく優しく、切ないことでしょうか。
私としては、見送られた男もさる事ながら、残される形となり、或いはずっと続いていたものの終わりによって解放を得たヒルダの想いにこそ、想像の翼を羽ばたかせてしまいます。願うなら、その終わりの先が余生などではなく、新しい人生であれば、と思うばかりですが。まあ、想い出は大事な想い出として、今後ガツガツ生きていきそうなバイタリティ、十分ありそうですけどね、アノ人。

ともあれ、切なくも透明感ある雰囲気は素晴らしかったです。このままブレずにウィルとジェシカ、二人の、二人だけの物語を大事にしていってほしいなあ。

手島史詞作品感想

XIII番の魔符詠姫(タロットソーサレス)3   

XIII番の魔符詠姫 (一迅社文庫)

【XIII番の魔符詠姫(タロットソーサレス)】 手島史詞/桐野霞 一迅社文庫

Amazon

世界が終わる刹那、謎の現象で並行世界へと転移していたキリクとその妹シエラは、常人にはあり得ない霧を操る異能の力を手にすると同時に、他人から血を吸わねば生きられない体質になってしまっていた。生きるために、夜な夜な霧を操り血液を集めるキリク。そんな彼の前に現れたのは、巷で続出する吸血鬼を追う現代の魔術師、13番目の魔符詠姫となったばかりの紅葉だった。互いを敵と知らぬまま出逢った二人だが、紅葉はキリクの正体に気づかずその人柄を気にいって自分の助手に任命してしまうのだが、キリクはいつ正体がバレるかと気が気でなく…。手島史詞が贈る伝奇ラブコメ最新作、ついに登場。

て、天然だ。超天然だーー!! メインヒロインの紅葉の素晴らしい超天然ぽややん少女っぷりに諸手を上げて大はしゃぎしてしまいました。もう折に触れて見せてくれるんですよ、素っ頓狂な面白可愛さを。その度に、ピシャッと額に手を当てて、目をバッテンにして「天然だーー!!」を思わず一声。
天然と言っても人の話を聞かない暴走タイプじゃなくて、普段は物静かで表情が乏しい「静」のタイプなんですね。それでいて思慮深さとは正反対の、うっかりやさんのおっちょこちょいで世間ずれしておらず、ナチュラルに自爆して、それが連鎖していってしまうという、無言であたふたしてたと思ったら隅のほうで頭抱えて凹んでそうな、なんか放っておけない庇護欲を掻き立てられるタイプなんですよね。これがもう、テラ可愛い。
そんなヒロインの紅葉に、助手として任命されてしまったキリクは、実は彼女の敵であるヴァンパイア。このヴァンパイアの設定がこの作品の面白い所で、ヴァンパイアとなった人たちは元から魔物だったのではなく、平行世界から移動してきた正真正銘の人間なんですよね。それも、この世界に元居た人間とすりかわる形で。
それは当人たちが企図したものではなかったにしろ、元居た人間を消し去って入れ替わったこの世界に入り込んできたというのは「侵攻」なのです。しかも、入れ替わった平行世界の人間は、この世界の人間の血液を奪って摂取しないと塵とかして消滅してしまうというオマケ付き。この奪うというのが肝心らしく、血液パックでは意味がないのだそうだ。
結果として起こるのは、正義と悪、光と闇の闘争などではなく、純粋な生存競争。ただただ生き残るための戦いであり、その最前線に立つ魔符詠姫と主人公は巡り逢い、気持ちを通じ合わせてしまったわけです。
古来より、相入れぬ敵同士という間柄でありながら紡がれてしまった恋物語ほど盛り上がるものはありません。もう設定からして美味しいのなんの。それだけではなく、元々単なる一般人であった紅葉が、魔符詠姫として覚醒し戦う意志を固めた原因こそ、キリクとの出会いであり、彼に感化されての事だったとなればなおのこと。

とまあ、状況だけ見ると随分と切羽詰まった劇的なロミオ&ジュリエットみたいな代物にも見えるけれど、ヒロインは超天然だし、主人公は小心者で慎重なわりに迂闊で、やることなす事裏目に出てしまう運の悪いタイプという、結構身も蓋もないカップルなので、実はあんまり緊張感もなかったりする。
両方共、それぞれの種族の命運を背負っている、というような責任や覚悟を持っているわけでもないですし、キリクは妹のシエラこそ命よりも大事ですけれど、今のところ絶対に人間と敵対しなきゃいけないという所まで追い込まれてはいませんからね。
ただ、キリクとシエラの二人だけの問題で済んでいるうちはいいけれど、どうやらこのまま行くと問題は個人の間で収束するものでは収まらなくなってくる可能性も高く、話が進むのなら決して楽観できる状況ではないのでしょうけれど。
これは、続きが出れば出るほど登場人物が追い詰められていって、面白くなっていくタイプの物語のようなので、この一冊で終わりなんて悲しい事を言わないで、是非に続刊出して欲しいです。まあ、売上次第なんでしょうけれど。

手島史詞作品感想

黒の夜刀神 1.キミのために僕ができること4   

黒の夜刀神  1.キミのために僕ができること (富士見ファンタジア文庫)

【黒の夜刀神 1.キミのために僕ができること】 手島史詞/飯田のぎ 富士見ファンタジア文庫

Amazon

「シラキ、仕事か?お前出席日数危ないんじゃなかったか?」ストーンリバー学園に通う白毀廻は、悩んでいた。今日も伝聞社イーストウッド社から仕事を押しつけられ、授業を欠席しなければならない事態に陥っていたのだ。断ればいいだけの話だが、ヘタレな彼には到底無理な話。仕方なく仕事に出かけたのだが、そこで昔なじみの少女・月皎柊と運命の再会をする。美しく成長した柊にドキドキのカイ。しかし彼女は“契約者”たちに狙われていた。ピンチの少女を救うため、少年は勇気を奮い立たせる!異能者たちが暗躍する大陸を舞台に繰り広げられる、ボーイ・ミーツ・ガール・アドベンチャー開幕。
へえええ! いやはや、この試みは予想外、というよりもよく書くの許して貰えたなあ。しかし、これは面白い。前作【影執事マルク】シリーズに登場したキャラクター、さらには世界観そのものもそのまま流用した上での、パラレルワールド。それを、同じ作者が手がけるのだから、興味深い試みである。勿論、まったく同じだったら、わざわざパラレルワールドにした意味もない。主人公とヒロインは交代は大前提としても、作品の雰囲気そのものを意図して変化させてきてるんですよね、これ。前作がわりとアットホームで人間関係も緩く温かく、愉快なノリのラブコメ風味なところが強かったのに対して、此方は開拓時代の新大陸を模した世界という点をより重視して、どこか殺伐とした荒野の雰囲気濃いサスペンスタッチのものになっているのだ。
登場人物それぞれが抱えた心の傷や闇の部分にもより深く踏み込んでいる。心証としては、キャラ自身が備え持っている優しさや豊かな人間性なんかは前作とそれほど変わっていないようにも見えるのだけれど、より心を覆う殻が頑なになり、人格の破綻も強めに歪み、人と人との友情や愛情による繋がりがしっかりと結びつくための難易度がかなり上がっていて、なかなか打ち解けられなくなっているっぽいんですよね。
その点において、柔らかな交わりによって陽の当たるサイドからキャラクターやそれぞれの関係を掘り下げていった前作とはまた違ったアプローチ、より暗くジメジメとしたダークなサイドからの掘り下げが行われていきそうな感じで、これだと前作と同じキャラクター、たとえばカナメやジェノバなんかも殆ど性格も能力も変わらない造作にも関わらず、違った視点からその姿を追うことになるので、全然異なる印象で見る楽しみが出てくるのである。発端や立ち位置が違うから、前作とは異なる関係性を築くことになってたりもしますしね。カナメとジェノバ何かそのわかりやすい代表格になるのでは、と……ん? しかし、これをマルクの時の時系列に合わせて考えると、まだマルク本編から見て過去編というになるわけで、カナメがシュウと友人になったり、ジェノバの片目切ったり、というエピソードは確かマルクにも過去の話として話題に登ってたわけで……。あれ? 一概に完全に違う世界とも言えないのか。
それでも、四強のメンバーが入れ替わってたり(マルクがいなくなってる。もしかしたら、まだマルクが黒衣として名望を高める前の話なのかもしれないが)、アルス・マグナ(?)の所有者が変わってたりと、細かい部分での変更もあるので、違うといえば違うし。その点も追っていくと面白いんですよね。しかし、マルクの時についに出て来なかった四強の一角【夜刀神】。もしかして、マルクでも同じ人がそうだったんだろうか。
しかし、見事にこれ、ビジュアルがアニメ【黒の契約者】のそれになっちゃいましたね(笑 あとがきで作者自身が突っ込んでますが、そもそも契約者という作中の設定も何だかんだとアレに似てましたけど、ついにビジュル面までも。もっとも、性格の方は完全に此方の廻の方がヤバいです。臆病な小心者がむしろ戦場ではよく生き残る、とはよく言われますけれど、廻の場合は用法が全然違うよなあ。ビビるあまりに理性が飛んで狂化してしまうというのは、激昂して暴走するのとベクトルとして何も変わらないような……。ただ、彼の場合狂化しても技はむしろ冴え渡り、粗さもなく研ぎ澄まされる感じなので暴走とは違うのは、確かに恐ろしい。自分の能力を見事に技に昇華して自在に操りまくってるもんなあ。当人の身体能力や来歴もあってか、【東方不敗】とガチでやってもこれは間違いなく引けは取らない。あのカナメさんと正面切って互角って、どんだけなんだ。マルクだってまず無理だぞ。なるほど、これは【四強】の一角に相応しい。
当人はウルトラヘタレの臆病者ですが。それでも、その臆病の発端は自分の能力の破滅的な強さゆえのものですし、どうやら過去の事件も絡んでいる様子。
多くのトラウマを抱えながらも、勇気を出してシュウを助けようと奮起するあたりは、実に可愛げのある主人公としての振る舞いなんですけどねえ……やり方がエグすぎるw 手段を選ばないとかいうレベルでないし。完全に精神攻撃。それも摩滅型。圧壊型。ザクザクと切り刻むよりも、ゴリゴリと磨り潰していく破滅型。こえええw
それを悪意なく、どころか無邪気にやってのけるんだから、危ない人です。悪党です。邪悪ですw 世界の敵だw
確かに、あらゆる意味で「最恐」の名にふさわしい。いいのか、主人公こんなので。

とは言え、シュウからすれば何しでかすか分からないにしても、一心不乱に懐いてくるワンコみたいなものだから、何だかんだと悪い気はしないでしょうし、もうどうしようもないという場面で唯一手を差し伸べ、危険も顧みず全身全霊でたすけてくれた相手なのですから、幼い頃から何だかんだと気にしていた相手ともあってか、そりゃあ心も動かされるわなあ。その結果がアレ、というのはまたシュウにとってもカイにとってもご愁傷様というべきかご馳走様というべきか。まあ、両思いっぽいのだから、何とか経験値を増やして上手いこと行くようになっていけばなあ……と、思うのだけれど、何気にこの二人、まだ鉄板というわけじゃないので、どうやらもう一人の「四強」の一角【朧】の正体であるイーシャがどう動くのかは気になるところ。またぞろ、愉快な三角関係になっていきそうな気配が濃厚でございますぞ。

それはそれとして、シュウとカイの再会と合流という話の主題とはまた別に、物語の根底を担うだろう伏線が幾つもバラ撒かれて明らかにされてないのは、引っ張りますね。というか、もろにプロローグだった、と捉えるべきか。そも、二人がどうして家を出て新大陸に来なきゃいけなかったのか、の真相からして明らかにされてませんもんね。それぞれの家にトラブルがあり、シュウの家は一族根絶やしにされた、など断片情報はあがっていますが。だいたい、なんでシュウがあんな体になってしまったのか、からして当人も分からない状態じゃあなあ。
それに、この世界観では「精霊」の存在が否定されているとのこと。契約者の在り方、生まれ方も微妙にマルクシリーズとは捉え方が違っているようだし、果たしてどんな解がもたらされるのか。

うん、マルクと似たような世界観と知った時にはどうなることかと思いましたが、抱いた不安以上に面白かったです。これからも、マルクシリーズに登場したキャラクターもちらほら出てくるでしょうし、色々と見比べて楽しむことも叶うはずですし、これから始まりそうなシュウとカイとイーシャの三角関係も、前作のあのニヤニヤ満載だったラブコメを思い出せば、期待も膨らむばかりです。楽しみなシリーズが再びはじまりましたよっと。

手島史詞作品感想

影執事マルクの契約4   

影執事マルクの契約 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの契約】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon

ついに暴走を始めた“アルス・マグナ”は瞬く間にロックウォールを壊滅させ、さらに周囲をのみ込んでいった。“空白の契約書”は徐々に失われ、契約者でなくなったマルクだったが、彼の求めることはたったひとつ。「揺り篭に囚われた我が主、エルミナを救い出す!」マルクの想いに仲間たちが応える。その行く手を遮ったのは、“アルス・マグナ”が創り出した過去の自分たちだった!?マルクとエルミナ、そしてそれぞれの想いがたどり着く未来は?影執事、最後の仕事が幕を開ける。
ヴァレンシュタイン家の使用人が揃えば、たとえ一国の軍隊が相手でも負けない。いつだったかマルクがそのような大言壮語を吐いていたけれど、まさか実際に軍隊相手に大活劇をやってしまうとは。しかも、本当に圧倒的じゃないか!!
軍隊とは言っても現実のものではなく、アルス・マグナが過去の記録から喚び出してきたその時代時代の軍隊なのだけれど、立ち向かうマルクたちからすれば現実の軍隊と何も変わらないわけで、本当にド派手な対軍戦闘になったよ、クライマックス! でも、本物の人間ではなく過去の幻影が相手なので、手加減せずに全力で薙ぎ倒せるという意味では、ヴァレンティイン家のフルスペックを発揮できたのですから、盛り上がりを考えるならなるほど素晴らしいセッティングでした。それでも、契約者たちに能力使用のタイムリミットが設定されてしまったあたり、対軍ですら力の差が隔絶してたんだなあ。
マルクを含めてこいつらパねえと思い知らされたのは、たとえ契約を失って普通に人間に戻ったあとでもみんな全然弱くなってないでやんの、なのですよ。あんたら、変わらず一騎当千のまんまじゃないか!! クリスやドミニクの例からも、別に契約者じゃなくてもむちゃくちゃ強い人はべらぼうに強いというのはわかっていたけれど、なるほど契約者の中でも最高峰と謳われた彼らの実力は、決して異能力によるものじゃなかったんだなあ。

いつもの使用人メンバーに加えて、ペインたちのような契約だけ交わして立ち去っていた人たちまで応援に駆けつけての総力戦。総力決戦。出し惜しみなしの全力全開フルバースト戦闘。
中世から現代にかけての軍隊が文字通りに蹴散らされていくさまは痛快の一途。ただ、“空白の契約書”が力を失っていくことで、能力もまた次々と失われていくという時間と使用頻度に伴って戦力が加速度的に減少していくという過酷な戦況は、まさに手に汗握る展開。絶体絶命のピンチにペインたちまで駆けつけてくれたのには、燃えたなあ。
リーンまでもが、あんな形で協力してくれるとは。ただの変身能力の持ち主だった彼女の力が、ああいう形で活かされるとは想像していなかっただけに、なんか妙に嬉しかった、うん。

一方のエルミナもただ眠りに囚われる無力なお姫様ではおらず、ちゃんと自力で力を尽くして脱出を図るさまは、さすがは皆のご主人様だと惚れぼれ。彼女を助けるクーフ・リンがまたかっこいいんだわ。元々なにかとお茶目な性格を垣間見せていた精霊でしたけれど、愛嬌と精悍さが相まった素敵なワンコでしたよ。
本当に全員に全員、見せ場があってラストバトル、これ以上無く堪能させていただきました。燃えた、痺れた、面白かったーー!
そしてオチはやっぱりオウマだったんですね。こいつ、存在感が無いから知名度なかったけれど、実力だけで言うなら四強すら上回ってたんじゃないか?
でも、存在感ないんだよな。“アルス・マグナ”からすら見逃されてたというのには吹いたw

エピローグは大団円、だけれどそれぞれの道を歩み始めるという結末はちょっと寂しかったな。オウマ、最後の最後にイラストに顔出ててよかったね。って、こいつ相当にイケメンじゃないか。ジェノバ、結構いい男捕まえたよなあ。セリアも何だかんだと上手いことアルバとやってるみたいだし、グレリオもやっとアイシャとちょっといい雰囲気になれたみたいで、色々と報われたなあ、うん。
一番意表を突かれたのが、カナメでした。何だかんだとエルミナとマルクを共有するかと思ってたのですが、マルクもカナメもそのへんはケジメをしっかりと取る人間なだけに、なあなあで関係を続ける事はしなかったんだなあ。その代わりに、彼女の隣にするりと滑りこんでしまったのがドミニクというのは、すごくびっくりした。あの当初からのドミニクのカナメへの奇妙な態度って、あれ本気だったのか! ドミニクはエルミナたちの母親との哀切極まる失恋話もあったし、カナメとマルクの仲が深まっていくのを見ても特に反応を見せてなかったので、彼のカナメへの変な態度はなんだったんだろう、と首を傾げる事もあったのだけれど……なるほど、彼女にはそういう心境だったのかー。
いやあ、ドミニクがカナメに接近する展開って、もっと拒絶感とか感じるかと思ったんだが、何か自分の中でもすんなりそれもありなんじゃないかな、と思えた事にびっくり。まあ考えてみると、ドミニクがこれまで味わってきた思いを考えるとね、彼には幸せになって欲しかったし、同じ辛いけれど幸せな失恋をした者どうし、ドミニクならカナメの相手でも許せる、と思えてしまったんだろうなあ。
ちなみに、ラストのイラストではカナメ、以前エルミナから送られた和服をみにつけてるんですが、これがびっくりするくらい似合ってるんですよね。短く揃えたおかっぱ髪も相まって、物凄く可憐。カナメってやっぱり侍女服よりも和装が似合うんだー。

心ひかれてしまったのが、後書きに書き添えられた夢オチの、みんなが離れ離れにならずに揃ってヴァレンシュタイン家の使用人として家族として暮らしていく情景。これはこれで理想的な、それこそ夢の様な大団円だったんだよなあ。掌編として読ませてくれただけでも、有りがたかった。言わば、2つのエンディングを見れたようなものですしね。

なんか結局微妙にマイナーなまま完結してしまった本シリーズですが、個人的には最後まで最高に面白かったです。バトルにラブコメ、ドタバタコメディとどれも水準高く、埋もれてしまうのが勿体無いくらい。作者の作品にはこれからも最大の期待を持たせていただきたいと思います。どうやらもう新作の製作にも掛かっているようですし、ガガガ文庫の方からも出すみたいですし、うん、どんどん読みたいなあ。
素晴らしい作品、ありがとうございました。

シリーズ感想

影執事マルクの恋歌 4   

影執事マルクの恋歌 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの恋歌】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon

マルク、エルミナ、カナメ。三人の恋の結末は?
「カナメ。あなたが好きです」マルクが口にした言葉を、エルミナは呆然と聞いていた。思わずその場から逃げ出してしまった彼女を、再び時計の音が包み込み……過去の記憶を旅するエルミナがたどり着いた気持ちとは?

これは仕方が無いことなのだけれど、やはり長編と短編を織り込んだパッチワークのスタイルとでは、話のダイナミックさに差が出てしまう。どれほど話の流れに上手く短編を織り込み綴っていても、一旦短編が終わる毎に一息ついてしまうので、一気呵成にクライマックスまで加速していくような盛り上がりにどうしても欠けてしまう。
これが今までと同じ幕間的な回だったら特に気にもならなかったのだけれど、マルク、エルミナ、カナメの三人の関係に決着がつく話であり、想いが成就して幸せが頂点へと達する回でもあり、何より次巻で完結というクライマックス直前という時節だったのがちょっと引っかかったんですよね。
個々の短編やそれを踏まえた上での中編の展開はそれ単体、つまりこの巻だけ見たならば相変わらず好みドストライクだっただけに、シリーズ全体を鑑みた上でのこの得られると思っていた加速が全然足りなかった感は非常に勿体無い感じだったんだよなあ。
とまあそんな話は置いておいて、今回の話に注視してみると、収まるべくして収まったのかなあ。マルクの未練タラタラな態度には苦笑を禁じえないのですが、二人の女の子を好きになってしまった輩としては、相応のケジメをつけたのではないでしょうか。カナメからすると辛い話ですけどねえ。彼女自身、後悔もないのでしょうし、マルクとエルミナを傍で見続ける覚悟みたいなものも決まっているようですしね。はたして、彼女がドミニクほどの透徹とした心境に至れるかはわかりませんけれど、あれだけカナメとエルミナの友情も熟成してしまえば、何となく上手く折り合いをつけてやっていけそうな気もしますし……二人とも独占欲はあんまり無さそうだしなあ。
結局ここにたどり着いてみると、この作品の一番芯となっている部分ってマルクとエルミナのラブストーリーだったんだ。今更何を、と言われるかも知れないけれど、彼と彼女の想いが成就することこそが根幹であって、他の要素というのは<アルス・マグナ>にしても契約者という存在にしても、バトルにしてもここから広がった枝葉なんですよね。そして幹がヴァレンシュタイン家に集った者たちの家族の絆であり、その芯となっているのがマルク、エルミナ、カナメの三角関係だった訳だ。
これ、バトル系ファンタジーと思ってたらちょっと間違うよね。むしろ、少女系レーベルによく見る恋愛ファンタジーに派としては近しい代物なのかもしれない。クライマックス直前になってようやくそんな風に捉える事が出来た。
なんでこのシリーズ、これだけ面白いしよくできている売れ線系統の作品なのに微妙にマイナーなんだろうと常々疑問だったんだが、かなり富士見ファンタジー文庫の王統からはズレた作品だったんだなあ。

とは言え、ラストはド派手にやってほしいものです。マルクをして、ウチの連中なら小国まるごと相手にしても勝てると言わしめた、ヴァレンシュタイン家の最強軍団。その真の力と家族の絆の真価を見せてくれるようなでっかい花火の大決戦。囚われのヒロインを救い出す、一大救出イベントを。
最後はこの大好きなヴァレンシュタイン家の奇人変人たちの制限なしの活躍を見てみたいじゃないですか。ハッピーエンドの大団円、期待しております。
あと、是非にもリンにもヴァレンシュタイン家に参加を。本人一度断ってますけど、ガールズトーク要員として彼女の存在が欠かせないことは、既にデート追跡行で証明されています。わりとセリア姉さんの趣味についていけそうな資質もあるようですし、適性はばっちりですよ!

シリーズ感想

影執事マルクの決断4   

影執事マルクの決断 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの決断】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon

親が決めた婚約を破棄するため、相手に会いに来たエルミナ。だが、婚約者ヴィルヘルム先手を打たれカナメとともにホテルに軟禁されてしまう。一方、マルクは主を救うべく動きだすが、問題は山積みで──
セリア姐さんが自由すぎる(笑
前回でセリアが長年抱えていた闇が解消された事で重石が取れたのか、姐さんの傍若無人が留まるところを知らない! 今回、一人で延々と楽しんでましたよね、セリア姐さん。どんどんドツボにハマっていくマルクのこと、そこまで笑わんでもと思うくらいに大ウケしてましたし。いや、アンタが仕掛けたことでしょうにw しかし、本格的に男の子を女装させて楽しむ趣味が発現してしまったんだな。幸いにして、ヴァレンシュタイン家には今のところマルク以外に女装できそうな男の子は居ないので、被害は彼と新たに加わる可能性のあるリオくらいに留まりそうだが。オウマも行けるのかもしれないけど、彼はセリアでも捕まえられそうにないもんなw
今回はジェノバが長年のトラウマを克服するに至る話であったわけだけど、同時にオウマの話でもあったんですよね、そう言えば。ちゃんと表紙にも登場してるし、オウマくん。……してますよ!? 表紙にちゃんと居ますよ!! 私もはじめは本気で気づきませんでしたがw
まさかジェノバとオウマでこんなに真っ当なラブストーリーが広がるとは。本当にヴァレンシュタイン家の契約者には格落ちとも言うべき人は居ませんね。オウマも元々相当にその実力を評価されてましたけど、正直ここまでとは思わなかったなあ。どこか気弱で頼りなさそうに見える割に、いざ切った張ったとなってもメンタルがまったく上下しないのだ。【戦艦】と呼ばれる古強者を相手にした時も最後まで余裕があったくらい。ぶっちゃけ、彼についてはステルス能力だけ突出していて、他の戦闘スキルについてはそれほど高いと思っていなかっただけに、これは驚かされた。
そりゃ、マルクも自分たちなら小国ぐらいまるごと相手にできると自負するわ。前々からヴァレンシュタイン家の契約者たちなら軍隊相手でも負けないだろうとは思ってたけど、実際に冷静な自己評価としてマルクの口から語られると、凄まじいなと戦慄する他無い。ただそれぞれが強いだけじゃなく、家族のような絆で結ばれている、というのも大きいんですよね。それも、エルミナが中心になっているものの、ちゃんと人間関係は全員の間で幾何学模様に構築されてますからね。そりゃ強いですよ。

と、これだけ強力な契約者がポンポンと出てくるにも関わらず、肝心のバトルがまったくインフレ化の傾向が見えないのもまたこのシリーズの特徴なんですよね。このへんのバランスは絶妙を通り越して、芸術的ですらある。例えば、今回マルクはある相手に非常に苦戦するのですけれど、状況が変わった二度目の戦闘では殆ど瞬殺に近い圧勝で下している。でも、決して初戦でマルクは無理やりと取られるような弱体化をしてるわけじゃないんですよね。あくまで、状況がマルクに苦戦を強いるものだった、というだけで。とは言え、その苦戦にもどかしさは感じ無いのである。このあたりが芸術的なんですよね。キャラが苦戦しても、それで鬱積が溜まる事は殆ど無いし、逆に圧倒的な力を示した時はちゃんと痛快な気分にさせてくれる。仮に負けるようなケースになっても、格落ちを感じさせないのである。キャラの強さが陳腐化しないというのは、長期シリーズとして見ると何気に大きいですよ。

さて、今回のメインヒロインの一人だったジェノバのトラウマ克服話であるが、それがそのまま危機に陥ったエルミナを救う手立てとなるのか。彼女が背負っていた闇も、契約者となるだけあって相当に重かった。それこそ、自分を壊してしまうほどに。わずか十歳で背負うには重すぎる罪だものなあ。そんな子供に責任を負わせるな、と言いたいところだけれど、あの状況下では医者としてのスキルを有するジェノバに頼るのは仕方ない事だったんだろうし。年齢にそぐわない技術を手にするというのは、身の丈に合わない責任をも負わされるという危険性があるものなんだなあ。天才と褒めやかす前に、子供は子供として守ってあげられる環境を作っておくのが、大人の責任なんだろう。まあ、実際にそんな子供を持ってしまった親からすれば、そこまで配慮を巡らせろ、というのも酷なのかもしれないが。
それでも、オウマの支えもあり、エルミナを助けるために自分の罪を曝け出し、逃避の象徴だった棺桶を手放す勇気を得たジェノバの、吹っ切れた表情は最高に可愛かったです。オウマもかっこ良かったよ。存在感の薄さとは真逆に、この子は言うべきこと言いたいことを口にする事を恐れない所が素敵だ。何気にカップル誕生第一号になったのか、もしかして?

で、肝心のエルミナの婚約話は思わぬ真相もあって、かなりの急展開に。これは、また複雑だよなあ。相手も本気でエルミナの事を思ってたのか。それがネジ曲がってしまったのは、これは対価のせいだよなあ、多分。他人を信頼できない、他人どころか自分も信頼できない、という対価の中で、むしろよく目的をズレはしても見失わずに居られた、と褒めるべきかもしれない。エルミナの方からもちゃんと、枢機卿に対して繋がりがあったのは意外だったなあ。てっきり、エミリオだと思い込んでいただけに。思わぬ形で、エルミナが選択する状況になるとは、マルクもフラフラと二人の間を右往左往している場合じゃなかったな。幸い、エルミナはスパッと選んでくれたわけだけど。でも、今後の状況如何ではこれどうにかなるか分からないぞ。彼も、振られたとはいえまだちゃんとエルミナに好意を抱いたままなわけですしね。
さすがに、最後のカナメへの告白はミスリードだと思うけど。
エルミナとカナメの仲が、二人で家を出てからこっち凄まじい勢いで急接近して、今や親友の中の親友と言ってもいいくらいの関係に発展してしまった以上、三角関係の決着は相当慎重にやらないと大変な事になりそうだし。実際、エルミナはマルクの告白に対してカナメのことが頭を過ぎって、わやにしちゃった訳ですしね。

個人的には、カナメは髪切った方がよく似合ってると思う。あのおかっぱの髪型は好きだなあ。

シリーズ感想

影執事マルクの彷徨4   

影執事マルクの彷徨 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの彷徨】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon


エミリオが目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしたカナメがいた。どうやらまたエルミナの身体で起きてしまったらしい。すぐさまエルミナに替わろうとした彼女だが、なぜか過去の記憶の中に囚われてしまい……!?
あれ!? この状況から短篇集になってしまうのか!?
前回の短篇集である【影執事マルクの迷走】でもそうだったんだけど、単純に短編を集めて並べたモノにはしないんですよね、手島さんは。きっちりと本編のストーリーに組み込んで見せてくれる構図はややも強引ではあるけれど、上手いなあと感心させられる。眠っていたエミリオに、これまで屋敷で起こった事を伝える効果を発していると同時に、フォルという重要なキーパーソンを自然にエミリオに合流させるための要素にもなっている。これは、最初からドラゴンマガジンに上奏した時から本編と連動させるつもりで短編も書いていた、と考えないとなかなか出来ない演出である。
大したもんだ。

【そこが山犬の住処だから】
マルクにとって、過去の遍歴というのは悪夢とは言わないけれど、振り返っても居心地の悪い気分を味わうだけの、決して良い思い出とは言えないものだった、これまでは。
でも、それまでの旅路が今の安住の住処へと辿り着くまでの必要な道程だったのだとしたら、自分の居場所を手に入れてからもう一度ゆっくりと落ち着いて苦しく面白くなかった過去を振り返ってみると、そこには思いの外悪くない、楽しく心地良かった思い出が寄り添っていた事に気付かされる。
過去に在籍したサーカスと再会したマルクの、懐旧と今の暮らしの大切さを噛み締める、騒がしい祭りの一夜での一時のお話。
何気に、三人で仲良く祭り見物をしていたアルバとセリアとアイシャの三人が、もう年季の入った家族すぎる(笑

【だから彼らは消えることにした】
怖がるエルミナやアイシャたちの姿に調子に乗ったマルクが、実しやかに噂される怪談話を語って効かせたところ、あろうことか次々に人が悪霊に喰われて消えていく怪談話がヴァレンシュタイン家にて再現されてしまうという幻想ホラー。わりと拍子抜けにほっこりとしたイイ話で終わったのかと思ったら、怪談話らしいオチが待っていた、と見せかけてさらに何気に重要なネタふりだったことが後々この本編にて明かされる、というドラマガで短編だけ読んでたならこれ本編は結構驚きの展開だったんじゃないだろうか。

【犬と魔眼と異国の硬貨】
クリスって、確かだいぶ前に街から旅立っていったはずなのに、事が起こるたびにだいたい身近にいるのは何なんだろう(苦笑
これまで誕生日を誰にも祝ってもらったことがなかったアイシャを、みんなで祝ってやろうというアットホームなお話。さりげにマルクも、誕生日を祝ってもらうとかプレゼントをもらうというイベントがある事自体知らない人生を歩んできた、という時点でアイシャ並みに可哀想だった事が発覚し、みんなから憐れみの目で見られるという話でもある。僻むな僻むなw
いや、ちょっと驚いたエピソードもあったんですよね。アイシャって、アルバのこと、知ってたというか承知していたのか! 全くと言っていいほど態度に出てなかったので全然気がつかなかった。なんだ、そうだったのかー。確かに、同族というだけにしては異様に懐いてるなあとは思ってたんだが、違和感を感じるほどじゃなかったんですよね。全く、兄貴に付き合って、いい子じゃないか。
そんな二人を慈しむように見守るセリアさんが、姉さん女房すぎる。もうアイシャを完全に妹扱いだよw いいなあ、二人とも可愛いんだ、このこの(笑


【それが彼女との約束だから】

基本的に、エルミナもカナメも甘えベタなんですよね。頑固で意志が強いくせに、押しは弱いし此処ぞというときの自己主張もなかなか不器用で出来ない。だからこそ、恐る恐る指を伸ばすように垣間見せる恋する乙女の主張が、実に可愛らしいんですけどね。マルクが子憎たらしいのは、そういう彼女たちのか細い声を、決して見逃さない所なんですよね。異性の、男の子として女の子である彼女たちの想いをキャッチしている、とは言いがたいんですが、それでも彼女たちを傷つけず、落胆させず、きちんと喜ばせてあげているマルクは、甲斐性なしなんかじゃないですよ。
そんな、女性の髪にまつわるお嬢様のささやかな我侭のお話。意外とカナメの方が、尽くすというか相手の好みに合わせようとするところがあるんですよね、健気だw


【そして、尖晶螢(オルネイロ)は踊る】

かつて<東方不敗>と謳われた最強の契約者の一角たるカナメの強さが久々に魅せつけられると同時に、彼女が手に入れた弱さに魅入られる。恋のライバルであり、主人であり、そしてお互いの心の内をさらけ出し合った初めての親友、エルミナを助けられない自分の弱さ、自責、そして一人きりという心細さから思わず泣いちゃうカナメのなんという可憐なこと、可愛いこと。本来なら絶対的な姉の味方であるはずのエミリオが、カナメの事も応援したくなるのもよくわかる。セリアもカナメ応援派らしいけど、この娘は同性の方が応援したくなるタイプなのかもしれないねえ。


そして紡がれる、ドミニクの元を離れてたエルミナとエミリオの母、ヴィオラとリカルドの真実。ドミニクとヴィオラの淡い恋の物語があんな形で終わってしまったことに、少なからず釈然としない想いをいだいていたんだけれど……これを見せられるともう何も言えないなあ。なんだ、ヴィオラもリカルドも、ちゃんとお互いをこんなにも好き合っていたんじゃないか。
ドミニクがペインと対立してまで、彼らの生活を守ったのも、これなら納得。

でもね、それがもう一度人を変えて繰り返されるというのは、やっぱり納得がいかない。マルクとエルミナとカナメの決着は、運命を前提とした上で精一杯に生きるという選択肢ではなく、すべてから解き放たれた上で決められるものであって欲しい。
何より、カナメがこれと同じじゃあ納得しないよ。

と、思わぬ形でラスボスが登場し、まさかのジェノバの過去が垣間見え、こりゃ次回はまさかまさかのジェノバ回なのかしら!? この娘もフリーダムなわりにずっと鬱屈を抱えてるしなあ。セリアのように、ぜひとも解放されてほしい。
ちなみに、今回の彼には何気にエミリオとフラグが立ってたような気がするよ?

シリーズ感想

影執事マルクの道行き5   

影執事マルクの道行き (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの道行き】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon
 bk1

恋敵の2人が仲良く家出!? 錯綜する想いを乗せ、豪華列車は進む

エルミナとカナメが家出した。慌てて後を追うマルクだが、なぜか料理人のセリアも同じ列車に乗り込んできて――。運命に導かれ、豪華な大陸横断列車に乗り合わせる契約者たちの目的は!? 疾走するロードムービー編!

もう私、ヴァレンシュタイン家使用人一同、みんなホントに大好きだわー。この人達素敵過ぎる。
確かにこの作品、マルクが主人公なのですが、何度かシリーズの感想でも触れてますけど、マルクを頂点としたピラミッド型の人間関係じゃなくて、誰もが誰かと繋がっている包括的な網目状の人間関係なんですよね。それどころか、一緒に生活し、一緒に仕事し、一緒に荒事を乗り越え、としているうちに、最初は縁のなかった人たちの間にも繋がりが生まれ、今やヴァレンシュタイン家使用人一同はひとつの家族、みたいになってるのです。
クライマックスでの、思わぬ組み合わせの二人のいつの間にか生まれていた温かい絆には、ちょっと泣きそうになってしまったくらい。今やもう、この人達はお互いの誰かが傷つけば、その人の為に怒り狂うことが出来、その人の為に泣くことが出来、その人のために自分が傷つくことも厭わない。もうみんなが大切な人になってるんですよね。
素敵じゃないですか、誰か一人だけじゃない、こんなにも一生懸命になれる相手がこんなにも居るなんて。自分の為に、あんなにも必死になってくれる人がこんなにたくさんいるなんて。
ヴァレンシュタイン家使用人一同の間にいつの間にか結ばれていた絆は、これほどまでに強力になっていたのです。いいなあ、もう、いいなあ。
恐るべきことは、これほどの絆によって結ばれたヴァレンシュタイン家の使用人が、一人ひとりが尋常でないほど凄まじい強さを誇る契約者って所なんですよね。並み居る同じ契約者の中でも、全員が異常なレベルだもんな。新大陸で名のある強力な契約者を上から十人並べろ、と言われると全員その中に入ってる、みたいなw
カナメやセリアは以前からその強さをよく見せてくれてましたけど、前巻のアーロンやオウマもとんでもなかったし、この巻なんかジェノバの凄まじさには度肝抜かれたもんなあ。<吸血姫>の名は伊達じゃない、ってか殆どデタラメじゃないですか。
ところが、毎回感心させられるんですが、この作品、みんなデタラメなくらい強いにも関わらず、一切能力のインフレバトルにはならないんですよね。能力の相性や、戦場となるフィールドとの適正などもあって、決して力押しのパワー勝負だけみたいな形にはならず、上手いこと自然にギリギリの駆け引きと見切りの勝負になっていくのです。能力を制限されることによるもどかしさやストレスも感じませんし、ストーリー全体のデザインから戦闘シーンまで、構成力がすごいですよ、このシリーズ。

前回、エルミナとカナメが二人連れ立って家出してしまい、この巻は二人の旅行記になるのかと思いきや、予想外にセリア姉さんがメインのお話に。
初々しい現在進行形であるマルク・エルミナ・カナメの三人の恋愛模様とはまた別に、セリアさんの今回のお話は悲しくも懐かしい、過去の淡い恋と復讐の物語。エルミナと契約した契約者たちにとって、ヴァレンシュタイン家が帰るべき家であり、同じ家で働く同僚たちはもう家族も同然だという事を強く印象づける話でした。そしてなにより、セリア姉さんの魅力爆発な回でしたよね。彼女のいろんな側面を見せてくれた今回の話でしたけど、やっぱりこの人はみんなの優しくも頼りになるお姉さんなんですよね。ヴァレンシュタイン家の女の子は何だかんだとみんなセリアのこと慕ってるもんなあ。
やっぱりというか確定されて嬉しかったのは、やはりセリアとアルバってイイ仲なんだ(笑
それでも、今回セリアの過去にまつわる人物が出てきて、これどうなるんだろう、とちょっとワクワクしてしまったのだけれど、決着の付け方が大人らしくてカッコよかった。さすがはセリア姉さん。
しかし、アーロンも普通にお父さんしてるのね。娘の好きな人の話になると、ちゃんと落ち込むんだ(笑

一方で、もうひとつの見所であるマルクとエルミナ・カナメとの三角関係はいい意味で泥沼化(笑
「覚醒」でエルミナ側がもはや挽回不可能と思われるほど決定的なアドバンテージをとったと思われたところで、「秘密」にてまさかのカナメの大逆襲。
ここで二人の間でグラグラに揺れてしまうマルクは優柔不断の誹りを受けても仕方ないんですが、でも仕方ないよこれは(苦笑
なあなあで済まさず、きっちり答えをだそうとしている所は誠実で好感度高いんですよ、マルクくん。ただ、二人が魅力的すぎるのでもう選ぶに選べないというのは同情してしまいます。マルクって、本気でエルミナもカナメも好きになっちゃってるんですよね。完璧に惚れちゃってる。これで選べと言われたら、そりゃもう頭抱えますよ。どっちを選んでも苦しいですし。
とはいえ、もう二人共一度はマルクにカードを切っているので、一旦ここでマルクは脇において恋敵同士であるエルミナとカナメ二人きりで顔を付き合わせての本音の話し合い。これがもう、ねえ。二人共、ほんとにもう、仕方ない子たちだよ、まったく(苦笑
よく思い出してみると、エルミナもカナメも同世代の同性の対等の友達ってお互いが初めてになるんですよね。アイシャはちょっと対等の友達というと違うし。
でも、こんなに仲良くなってるとは思わなかったよ。いや、ホントに仲良くなったのは、自分が相手を好きなように、相手も自分のことを好いてくれているというのがわかったのは、この列車の中で本音で話し合ったからなんだろうけど……うーむ。アイシャはどっちかハッキリしろと言ってますけど、二人のやりとり見てるとこれ、マルクは二人共引き受けないと収まらないんじゃないだろうか(苦笑
何気に他の使用人たちがエルミナ応援派とカナメ応援派に分かれつつあるのが面白い(w

と、列車内でのセリアの因縁の相手とのバトルとはまた別に、同時進行でエルミナの<アルス・マグナ>がどうやらえらいことになっている模様。マルク、こりゃあ色々と正念場だw

シリーズ感想

影執事マルクの秘密4   

影執事マルクの秘密 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの秘密】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon
 bk1

前々から薄々と思ってたんだが……これタイトルの命名スタイル失敗だったんじゃないのか?(苦笑
ぶっちゃけ「影執事マルクの〜〜」でちゃんとマルクに掛かってるのって「天敵」くらいまでなんじゃないか。次の「忘却」はマルクじゃなくてエルミナだったし、「覚醒」はエミリオ。そんでもって今回の秘密もマルクではなく、ドミニクの話だったわけだし。

というわけで、使用人の中でも最古参であり、契約者でないにも関わらず他者を圧倒する実力の持ち主、得体の知れない謎の人物、家令のドミニクの過去に関わりのある人物の来襲編。
回想部分、誰が誰かというのはだいたい最初から想像はついてたんだけれど、ドミニクが本筋の方にさっぱり出てこないから、確信とまでは至らなかったんですよね。まー、口絵見たら間違いないだろうとは思ってたけど。
前回のエミリオとエルミナほど芸術的な対象認識の錯綜じゃなかったけれど、それでも最後まで疑念を晴らさせない描写バランスは絶妙ですね。
実は個人的には<ドミニクはエルミナたちの**>というのをこっそり期待してたんだけどなあ。この期待はかなりギリギリの所まで継続していたんだが、<彼女>からの手紙の内容を見る限りでは、その線はなさそうだ。
でも、過去の真実や、彼女とドミニクの関係がこんな風だったのを知ると、家令がどんな思いでヴァレンシュタイン家に仕え続け、エルミナたちを見守ってきたかが想像を絶してしまう。
そうなんだなあ。ドミニクの十五年があった先に、今のエルミナとエミリオの二人の代があり、マルクたちヴァレンシュタイン家の使用人たちが集った今の時間があるのだと考えると、ドミニクやペインたちが抱え込まなくてはならなかった苦しみを、繰り返せるわけないよなあ。
決着はつけなきゃならない。


さて、今回はカナメ逆襲編と位置づけられているだけあって、カナメが巻き返す巻き返す。と言うほどカナメ個人がガツガツと噛み付いてくるわけじゃないんですけどね。でも、控えめながら服の裾を摘まんで離してくれない、みたいな一途な姿が強烈極まりない。
このシリーズの面白いところは、主人公のマルクの恋愛観が驚くほど等身大な所である。先のエミリオの事件の終いに、他の使用人たちの見ている前でエルミナにキスされてしまったマルク。それをきっかけに、自分が主人であるエルミナに対して普通の女性として恋愛感情を抱いてしまっている事に気づくわけですが、そこからがマルクの面白いところで同じく女性として仄かに意識し、また薄々自分に対して好意を抱いてくれていると感じていたカナメとそれとなく距離を置き始めるのである。同僚として以上に近しい距離感だったカナメとの間に、きっちり線引きをしようとしだすのだ。それをマルクは、エルミナを好きになってしまった以上当然として行わなければならないケジメだ、と明言するのである。近年稀に見る異性関係に対して誠実な主人公である。
とはいえ、そこできっぱりとカナメと関係を清算出来るほど人間が枯れていないのが、マルクという主人公の愛すべき所なのだ。
カナメに対してもしっかりと、自分はエルミナの事が好きなのだ、と告げながらも、やっぱりカナメも可愛くて女性らしくて魅力的でいいよなあ、という思いを消しきれず頭を抱えて悶々としてしまうあたり、人間味がありすぎるくらいありすぎて、ついつい背中をバンバンと叩いて励ましてやりたくなってしまう(笑
さらにこの後、とある一件でマルクはこのカナメに対するモヤモヤとした気持ちが、エルミナへの想いと同じ、女性としてカナメを好きなのだと気づき、愕然とするわけなのだが、ここまではっきりと複数の女性に恋愛感情を自覚する主人公というのも珍しいなあ。
それでも、その後きちんと彼はエルミナの方を選択しようとするのだけれど、ここで思わぬ方向から待ったがかかるんですよね。決めちゃうのはちょっと待ちなさいよ、と。
マルクと同じく、彼の言う理由はよくわかんなかったんですけどね。エミリオの名前がどうしてそこで出てくるんだ?

一方でカナメの方もエルミナとマルクの決定的瞬間を目撃し、さらにマルクからエルミナを好きなのだと告げられ進退極まったところで、ついに決意を固めるのである。

主人公やヒロインたちが鈍感でも不誠実でも事なかれ主義でもないためか、何気にそこらのラブコメなどとは比較にならないほどダイナミックに恋愛模様が激動してるんだよなあ、このシリーズ。それでも、これまでは立場やまだ固まらない気持ちなどから、個々人の胸の内で揺れ動く恋心にとどまっていたのだが、それもカナメの決定的な行動によって崩れてしまった事から、ダムが決壊するようにえらいことになりそうだったのが、またラストで上手いことやりやがった。
これで、否応が無く問題が先送りにされるじゃないか。でも、先送りにされるだけでいざその時が来たら、これいったいどうなるんだろう。やばい、ニヤニヤが止まらない。

前巻を読み終わったときは、もう恋愛模様に付いては王手が掛かったと思ったんだが、まさかカナメ嬢がここまで巻き返してくるとは想像もしなかった。こりゃあ、まだ五分五分以上可能性があるかもよ?

著者作品の感想一覧

影執事マルクの覚醒4   

影執事マルクの覚醒 (富士見ファンタジア文庫)


【影執事マルクの覚醒】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

Amazon
 bk1

なるほど、エルミナとエミリオに纏わる以前からの奇妙な違和感は、こういう仕組みによって成り立っていたのか。単純な入れ替わりなら、これほど混乱させられる事は無かったんだろうけれど、正確な事実を把握している者と、完全に事実認識に錯誤を起こしている者、誤解しているものの違和感を抱いている者。これら三者がそれぞれの認識が食い違っている事自体に気付かず、もしくは気づいてもそのまま放置していたがために、それらがぶつからずに常にフラットに提示されてしまっている状態だったわけだ。おかげで、読んでるこっちは基本ベースはマルク視点ながらも、同じ事項に対して複数の事実認識が提示させられて、うまい具合に混乱させられるはめになっていたのか。
肝心の本人の片割れからして、完全に勘違いしていたのが致命的だったんだな。時折挟まれる回想がキーになっているのかと思ってたら、前提から間違っていたんだから。
それでも、それぞれの言動を冷静に吟味して行ったら、正確なところはつかめたんだろうけれど、紛らわし方が非常に絶妙で、露呈してしまえば別段複雑でもない単純な事実だったにも関わらず、本気で混乱させられてしまいましたよ。
思えば、先だってエルミナが記憶喪失になり、それまでの無感情な様子から一転、無邪気で快活な人格になってしまったのも、単に記憶喪失と入れ替わりの違いだけではなく、今回の彼女の言動から透かし見えてくる違和感を和らげるカモフラージュになってたんだなあ。普段の彼女からすると、この巻の彼女の細かな立ち振る舞いに浮き上がってくる違和感は、本来なら尋常ではなく引っかかるもののはずなんだけれど、つい先立ってそれ以上の変貌が彼女を襲っていたがために、紛らわされてしまったんですよね。改めて振り返ってみると、あからさまに別人だろう!? という振る舞いをしているのに(苦笑
そうやってちゃんと読み返してみると、エルミナとエミリオ、どちらがどちらの真似をしていたか。どちらが姉でどちらが妹か、というのは実にわかりやすい形で描かれているわけです。ただ、露骨でなくさり気なく、でもちゃんと分かるようにした描き方は絶妙で、読み返して思わず感嘆させられたんですけどね。
うむむ、これは人が増えて多人数になったのを持て余すどころか、逆に縦横無尽に活用しまくった、本気で上手い構成や心理先導だわ。
それぞれの屋敷内での立場や人間関係の立ち位置を最大限利用しつつ、内乱状態へと持っていく流れといい、一度は手の内を見せ合って同僚になったにも関わらず、逆に手の内がわかっているのを駆け引きの見せ場としつつ、さらに伏せていたカードを開いてみせたり、思わぬ契約者同士の連携の可能性を見せたりと、エンタメ的にも非常に盛り上がる演出がなされているんですよね。
なんか存在感無いのが売りみたいになってきていたオウマ君が、【魔術師】の異名に相応しい貫禄を見せたり、破壊力ばかりが先行していたアイシャがいつの間にか、一端の戦闘技術を手に入れてたりとか、アーロンの本気がちょっと洒落にならなかったりとか。
な、なんかみんな登場時点で既に尋常じゃない契約者ばかりだったはずなのに、さらに強くなってるようなw
それと同時に、みんなこの屋敷で働き過ごすことに遣り甲斐と幸福を感じるようになっているのが、そこかしこで描かれていて、じんわりとあったかくもあるんですよね。セリア姉さんの口から語られた心情と、この屋敷での生活に抱く想いの欠片は、今や皆にとってここがかけがえのないホームになっているのがなんとなく伝わってきて、素敵でした。
内乱状態も、それぞれが本気でこの屋敷や主たちを思っての事だし、あれだけ本気で真剣の対立が発生したにも関わらず、ごくあっさりと対立が収まり、まとまってしまうあたり、皆がなあなあで馴れ合っているのではなく、しっかりと繋がりを得た身内同士として成立しているが故なんでしょうね。ほんと、いいファミリーになりましたよ。
ファミリーといえば、アルバ兄さんが丸くなりすぎの気もするけど(苦笑
まー、アイシャとの仲睦まじさはほのぼのすると言うか、この野郎!と思うというか。いや、いいんだけど。結構世話好きで、何くれとなくエルミナたちをフォローしてくれるのはほんとに頼もしい人だし。人の心配している暇があったら、セリア姉さんの気持ちに気づいてやれよ、と思わないでも無いけどw

そんなこんなで、ヴァレンシュタイン家崩壊の最大の危機を乗り越え、これまで数人の心の中に秘められたままだった真実と今後の展望、そしてこの一連の事件を通じて打開策が明らかになり、一家使用人全員に情報が共有され、兎にも角にも一段落。これから、一致団結して目的のために邁進するのだ! となるはずなんですけど、またぞろ、でっかい波乱要素がーー!!
いやまあ、前巻のラストがなるほど、こういう事になってたわけか。これは確かに確固たる進展なんだけど、カナメは穏やかではないんだろうなあ。ラストの挿絵見ても、ちょっとキツそうなことになってるし。
こりゃあ、次回は修羅場か!


著者作品の感想一覧
 
5月20日

橘 公司
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM

<
kattern
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


進九郎
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


飴月
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


凪木 エコ
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


七斗 七
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


氷高 悠
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


下等 妙人
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


下等 妙人
(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


イスラーフィール
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ヤマモトユウスケ
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


早瀬黒絵
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


望月淳
(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W DMM



(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W DMM


はくり
(ガンガンコミックスpixiv)
Amazon Kindle B☆W DMM


はくり
(ガンガンコミックスpixiv)
Amazon Kindle B☆W DMM


Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

5月19日

渡航/伊緒直道
(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

5月18日

久住太陽/杉浦理史
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


わだぺん。
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


クール教信者
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


オニグンソウ
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


雪森寧々
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


辻村深月/武富智
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


武田綾乃/むっしゅ
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


錆び匙/ひびぽん
(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


松江名俊
(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


椎名高志/高橋留美子
(少年サンデーコミックススペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


サンドロビッチ・ヤバ子/MAAM
(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


村崎久都/アトラス
(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ほりかわけぇすけ
(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


のんべんだらり/山悠希
(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


さと/小田すずか
(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


川岸殴魚
(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


境田吉孝
(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


冬条一(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


虹元喜多朗
(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月17日

吉河美希
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


赤衣丸歩郎
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


西尾維新/大暮維人
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


西尾維新/大暮維人
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


sigama
(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


阿部花次郎
(マガジンエッジKC)
Amazon Kindle B☆W


宮島礼吏
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


宮島礼吏
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


音羽さおり
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


金城宗幸/ノ村優介
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


水森崇史
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


吉河美希
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


片瀬茶柴/城平京
(講談社コミックス月刊マガジン)
Amazon Kindle B☆W


森下真
(講談社コミックス月刊マガジン)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


えんじゅ
(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W DMM


こはるんるん
(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W DMM


相原あきら
(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W DMM


仏ょも
(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


らる鳥
(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W

5月14日

福成冠智/柊遊馬
(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


abua/ナカノムラアヤスケ
(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ありのかまち/箱入蛇猫
(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


烏間ル/紅月シン
(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


勝木光/香月美夜
(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月13日

あわむら赤光(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


只木ミロ(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


佐野しなの(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


佐伯さん(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


ケンノジ(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


海月くらげ(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


小林湖底(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


浅名ゆうな
(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


久生 夕貴
(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


道草家守(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


道草家守(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


来栖千依(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


綾里 けいし
(講談社タイガ)
Amazon Kindle B☆W DMM


汀 こるもの
(講談社タイガ)
Amazon Kindle B☆W DMM


広路なゆる
(サーガフォレスト)
Amazon Kindle B☆W DMM


yocco
(サーガフォレスト)
Amazon Kindle B☆W DMM


和田 真尚
(サーガフォレスト)
Amazon Kindle B☆W DMM


内々けやき/佐伯庸介
(リュウコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月12日

Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


酒月ほまれ/アルト
(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


かじきすい/左リュウ
(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


青辺マヒト/十夜
(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


名苗秋緒/九頭七尾
(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


沢田一/夾竹桃
(アース・スター コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


檜山大輔
(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W DMM


ワタヌキヒロヤ
(メテオCOMICS)
Amazon Kindle B☆W DMM


いしいゆか
(まんがタイムKRフォワードコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


須賀しのぶ/窪中章乃
(サンデーうぇぶりコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


しょたん
(サンデーうぇぶりコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


川岸殴魚/so品
(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ゆうきまさみ
(ビッグコミックススペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


大井昌和/いのまる
(夜サンデーSSC)
Amazon Kindle B☆W DMM


大井昌和
(夜サンデーSSC)
Amazon Kindle B☆W DMM


鎌池和馬/近木野中哉
(ガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


緋色の雨/菖蒲
(ガンガンコミックスONLINE)
Amazon Kindle B☆W DMM


わるいおとこ/彭傑&奈栩
(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月10日

佐島勤(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


逆井卓馬(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


西条陽(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


丸深まろやか
(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


入間人間(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


岸本和葉(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


有象利路(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


西塔鼎(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


和泉弐式(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


鏡遊(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


餅月望
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


古流望
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ひだまり
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


内河弘児
(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


内河弘児/よしまつめつ
(ヤングチャンピオン・コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


TYPE-MOON/コンプエース編集部
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


じゃこ
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月9日

黒辺 あゆみ
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


少年ユウシャ
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


yocco
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


たままる
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


明。(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


ジャジャ丸
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


愛七 ひろ
(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W DMM


草壁レイ/紙城境介
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


緑青黒羽
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


碇マナツ
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


潮里潤/三嶋与夢
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


渡真仁/三嶋くろね
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


サイトウミチ/高橋徹
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


小虎
(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W DMM


七菜なな/Kamelie
(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W DMM


門司雪/アルト
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


石沢庸介/謙虚なサークル
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


真木蛍五
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


吉村英明/木嶋隆太
(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


マツモトケンゴ
(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


加古山寿/朱月十話
(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


志瑞祐/青桐良
(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


閃凡人/木緒なち
(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


瀧下信英/津田彷徨
(モーニングKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


蒼井万里
(ワイドKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


奈央晃徳/山川直輝
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


中丸洋介
(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

5月7日

ケンノジ/松浦
(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


道草家守/ゆきじるし
(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


宇佐楢春/やまだしゅら
(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


柊一葉/硝音あや
(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W DMM


柊一葉
(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


九頭 七尾
(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


守野伊音
(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

5月6日

CLAMP
(KCデラックス)
Amazon


雨隠ギド
(アフタヌーンKC)
Amazon Kindle B☆W DMM


細川忠孝/山村竜也
(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


植野メグル
(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


藤本ケンシ/井出圭亮
(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


南勝久
(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


山田恵庸
(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W DMM


あっぺ/明石六郎
(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


航島カズト/タンサン
(PASH!コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


明石 六郎
(PASH!ブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


まえばる蒔乃
(PASH!ブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


深凪雪花
(PASH!ブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM

5月5日

Kindle B☆W DMM

5月2日

東冬/三田誠
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


金丸祐基
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


古橋秀之/別天荒人
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


和月伸宏/黒碕薫
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


龍幸伸
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


平方昌宏
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


天野明
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


タカヒロ/竹村洋平
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


浅倉秋成/小畑健
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


朱村咲
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


春原ロビンソン/ひらけい
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


岩田雪花/青木裕
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


肘原えるぼ
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


大@nani/吉緒もこもこ丸まさお
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


LINK/宵野コタロー
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


LINK/SAVAN
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


村田 雄介/ONE
(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


猪口(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W DMM


しんこせい(ドラゴンノベルス)
Amazon Kindle B☆W DMM


猫又ぬこ
(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


倖月 一嘉
(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


御子柴 奈々
(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


はにゅう
(Kラノベブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


子日あきすず
(Kラノベブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


茨木野
(Kラノベブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


せきはら/柚原テイル
(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W DMM


iNA/Yuna
(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W DMM


Minjakk/Liaran
(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W DMM


西山アラタ/春野こもも
(フロース コミック)
Amazon Kindle B☆W DMM


榎戸 埜恵/涙鳴
(フロース コミック)
Kindle B☆W DMM

4月30日

藤木わしろ(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


サイトウアユム(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


坂石遊作(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


ハヤケン(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


紺野千昭(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


結石(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


御子柴奈々(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W B☆W DMM


りゅうせんひろつぐ
(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W DMM


ムンムン
(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W DMM


龍央(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W DMM


わるいおとこ
(ファミ通文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


山崎 響
(エンターブレイン)
Amazon Kindle B☆W DMM


やまむらはじめ
(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM

4月28日

天空すふぃあ/奈須きのこ
(星海社COMICS)
Amazon Kindle B☆W DMM


餅田むぅ/新山サホ
(ライドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


しめさば
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


しめさば
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


御宮 ゆう
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


久慈 マサムネ
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


桜木桜
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


岸馬きらく
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


御宮 ゆう
(角川スニーカー文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


すずの木くろ
(モンスター文庫)
Amazon Kindle B☆W


雪だるま
(モンスター文庫)
Amazon Kindle B☆W


可換環(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


てぃる(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


木嶋隆太(Mノベルス)
Amazon Kindle B☆W


川井 昂(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


アネコユサギ(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W

4月27日

TYPE−MOON/大森葵
(REXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


友麻碧/夏西七
(Gファンタジーコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


小龍/八木戸マト
(電撃コミックスEX)
Amazon


朱月十話/ROHGUN
(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W DMM


あさなや/yocco
(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W DMM


小祭 たまご
(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

4月26日

ユリシロ/紙城境介
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


三河ごーすと/奏ユミカ
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


平安ジロー/灯台
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


火野遥人
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


オクショウ/MGMEE
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


犬塚惇平/ヤミザワ
(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W DMM


槌田/TYPE−MOON
(角川コミックス・エースエクストラ)
Amazon Kindle B☆W DMM


リヨ/TYPE−MOON
(単行本コミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

4月25日

紙城境介(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W DMM


三河ごーすと(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W DMM


花間燈(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W DMM


三月みどり(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W DMM


両生類かえる(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W DMM


どぜう丸
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


大崎アイル
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


彩峰舞人
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


三嶋与夢
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


馬路まんじ
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


まさみティー
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


友橋かめつ
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


六海刻羽
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


あボーン
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


紙木織々
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


御堂ユラギ
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


泉谷一樹
(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W DMM


丘野 優
(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W DMM


龍翠
(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W DMM


エノキスルメ
(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W DMM


桜あげは
(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W DMM


参谷しのぶ
(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W DMM


稲井田そう
(オーバーラップノベルスf)
Amazon Kindle B☆W DMM


虎馬チキン
(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ぷにちゃん
(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


氷純(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


epina(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Y.A(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


COMTA/樋辻臥命
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Nokko/龍翠
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


灘島かい/三嶋与夢
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


霜月なごみ/瀬戸夏樹
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


野地貴日/黄波戸井ショウリ
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


つむみ/君川優樹
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


ぱらボら/馬路まんじ
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


中曽根ハイジ/丘野優
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


遊喜じろう/みりぐらむ
(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


松浦/大堀ユタカ
(ビッグガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


成田良悟/藤本新太
(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


はっとりみつる
(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


六本順
(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


まつたけうめ/栖上ヤタ
(ヤングガンガンコミックス)
Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM


Amazon Kindle B☆W DMM

4月22日

川上真樹/富士伸太(MFC)
Amazon Kindle B☆W DMM


新挑限(MFC)
Amazon Kindle B☆W DMM


丹念に発酵(MFC)
Amazon Kindle B☆W DMM


やませ ちか(MFC)
Amazon Kindle B☆W DMM


Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索