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探偵くんと鋭い山田さん

2020年10月読了ライトノベルのおすすめ  

読んだ本の数:25冊 うち漫画:1冊


ちょっと読破冊数は息切れ気味。だけれど今月は大量に傑作良作に巡り合うことができて、質的には大満足でした。
完結とともに大傑作となった【エリスの聖杯】に、青春日常ミステリーとして彩られる【探偵くんと鋭い山田さん】の二大巨頭に、瑠奈お嬢様の日本再生計画【現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変】の待望の書籍化。
また10月刊行ではなく積んでしまっていたのですが、【あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね】と【ホラー女優が天才子役に転生しました】というべらぼうに面白くてテンション上がりまくってしまった新作二作と、実に大満足な月でした。
他にも★4級の良作もわんさかと読めましたし、充実はしていたなあ。もっとガンガン読めればよかったのだけれど。


★★★★★(五ツ星) 2冊

エリスの聖杯 3】 常磐くじら/ 夕薙 GAノベル(2020/10/14)
探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理なゆた  MF文庫J(2020/10/24)


【エリスの聖杯 3】 常磐くじら/ 夕薙 GAノベル

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ファンタジー・クライム・サスペンス・ミステリーの金字塔。十年という時間を経て次々に明らかになるとある貴族令嬢の処刑に纏わる驚愕の真実と、再び繰り返されようとする宮廷の闇に纏わる陰謀。それに立ち向かう、かつて処刑された令嬢の幽霊と彼女に取り憑かれた地味令嬢のコンビによる究明劇。文句なしに大傑作でした。


【探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理なゆた  MF文庫J

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双子の山田姉妹と繰り広げる日常の中の探偵劇。証拠にもならない僅かな手がかりから真相を手繰り寄せる謎解きを、姉妹と顔を突き合わせて喧々諤々わいわいと騒ぎながら解いていく様子は、その流麗な情景描写力と相まって涼やかな青春劇として見事に彩られている。
彼女達の心の動きが映し出される仕草や表情の変化にドキドキしてしまう。まさに細部に神は宿るを体現している一作である。



★★★★☆彡(四ツ星Dash) 3冊

あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね】 藍月 要/Aちき ファミ通文庫(2020/8/28)
ホラー女優が天才子役に転生しました 〜今度こそハリウッドを目指します!〜】 鉄箱/きのこ姫 ガガガ文庫(2020/8/20)
現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 1】 二日市とふろう/ 景 オーバーラップノベルス(2020/10/25)

【あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね】 藍月 要/Aちき ファミ通文庫

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自分の生命を塗り込めたような凄まじい絵を描く天才画家の少年は、それが故に儚く病弱でふとした瞬間消え去ってしまいそうな脆さを持つ。愛を求めながら愛を与えられなかった彼に、浮世から片足を踏み出してしまった彼に生半可な愛情は届かない。だからこそ、常人なら耐えられないヒロインたちの凄絶なほど重い妄執の愛が彼には必要だったのだ。これは昏き執着の愛情が、確かに救いとなるラブストーリー。


【ホラー女優が天才子役に転生しました 〜今度こそハリウッドを目指します!〜】 鉄箱/きのこ姫 ガガガ文庫

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事故で早世した天才ホラー女優が20年後に幼子として転生し、20年後の芸能界に子役として殴り込む天才女優の再臨譚。並み居る名優たちが、その天才少女の再誕に刺激され奮い立つ姿に痺れてしまう。未だ発展途上の彼女がたどり着く領域とは。見どころタップリの新シリーズであります。


【現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 1】 二日市とふろう/ 景 オーバーラップノベルス

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「北海道開拓銀行を買収するわ」。その一言によって、彼女の進撃は開始された。
億万長者なんて木っ端に等しい規模の、ITバブルを踏み台にして稼ぎ続ける兆を超える資金を駆使して、バブル崩壊後に壊滅していく日本経済を救済し、かつて惨めに踏みにじられた自分たちを救うべく悪役令嬢桂華院瑠奈さまは立ち上がる。【征途】世界に近似する日本を舞台に、平成以降の近代政治経済史の上を踊るライトノベルの皮を被った超本格政経架空戦記の幕開けである。



★★★★(四ツ星) 9冊

ナイツ&マジック 10】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫(2020/9/30)
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 02】 之 貫紀/ttl KADOKAWA(2020/8/5)
転生したらスライムだった件 17】 伏瀬/みっつばー GCノベルズ(2020/9/30)
インフィニット・デンドログラム- 14.<物理最強>】 海道左近/タイキ HJ文庫(2020/10/1)
ゴブリンスレイヤー 13】 蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫(2020/10/14 )
フシノカミ 2〜辺境から始める文明再生記〜】 雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス(2020/3/25)
フシノカミ 3〜辺境から始める文明再生記〜】 雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス(2020/6/25)
魔女と猟犬】 カミツキレイニー/LAM   ガガガ文庫(2020/10/21)
やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく】 ふか田さめたろう/ ふーみ   GA文庫(2020/7/14)


【ナイツ&マジック 10】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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【Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 02】 之 貫紀/ttl KADOKAWA

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【転生したらスライムだった件 17】 伏瀬/みっつばー GCノベルズ

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【インフィニット・デンドログラム- 14.<物理最強>】 海道左近/タイキ HJ文庫

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【ゴブリンスレイヤー 13】 蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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【フシノカミ 2〜辺境から始める文明再生記〜】 雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス

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【フシノカミ 3〜辺境から始める文明再生記〜】 雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス

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【魔女と猟犬】 カミツキレイニー/LAM   ガガガ文庫

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【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく】 ふか田さめたろう/ ふーみ   GA文庫

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以下に、読書メーター読録と一言感想

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探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる ★★★★★  



【探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理なゆた  MF文庫J

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可愛くて鋭い山田さんの学園ミステリー、第二幕!

山田姉妹と戸村に今日も奇妙な事件(相談事)が寄せられる。我が校の卒業生でもある副担任のさぁや先生の依頼は、彼女が高校生のときに起きた「原稿消失事件」。文芸部の部誌に載るはずだった直前に消えた状況は、確かに不可解で……?あいかわらず平常運転で絡んでくる雨恵と雪音の山田姉妹につつかれながら、またも俺は矢面に立たされるのだった。
だんだん雨恵と雪音の性格も把握してきた2人の距離感は……やっぱ、近すぎるよね!? そして赤面してるよね!? 可愛くて鋭い2人の山田さんと俺とで解き明かす、ちょっと甘めの学園ミステリーラブコメ、第二幕!「よし! プールで推理しよう!」ええっ!?

この作者さんって、ほんと女の子の「素足」好きですよねえ。玩具堂さんの描く作品の歴代ヒロイン、みんな学校でも靴下脱いで素足で足ブラブラさせてるんですから。この二巻ではカラー口絵で机の上に素足で腰掛ける雨恵のイラストが。戸村くん、結構がっつり生足見てるのですけど、たしかにこれは思わず目が言ってしまう脚線美。
さて、今回探偵三人組に持ち込まれてきた3件の事件。ネットゲームの中の人を特定して欲しいという依頼。先生が高校生の文学部時代に消えてしまった小説原稿消失事件の真相を探れという依頼。そして、SNS上での素性も知らない友人を現実で見つけてくれ、という依頼。
どれも、手がかりらしい手がかりもない所から、僅かな情報を頼りに山田姉妹と戸村くんとで顔を突き合わせてワイワイガヤガヤと大騒ぎしながら真相を解き明かしていく、これがまた面白い。いや本当に面白い。
どれもこれも、あるのは断片的な情報だけなんですよね。
ネットゲームの中の人当てなんか、オフ会で実際に顔を合わしているものの、そのオフ会の様子も依頼者からの又聞きな上に大した情報なんて全然ないように見えるんですよね。
先生の原稿探しも、事件自体はもう何年も前に終わってしまっていて、原稿がなくなった状況とその失われた短編小説について書かれた先輩方の評論しか手がかりがない。
最後のSNSの依頼に至っては、SNSにアップされた風景写真くらいが手がかりだ。
これを三人協力して、というよりも役割分担なんですよね。雨恵、雪音、戸村と三人ともこなす役割が違っていて、それが謎をとき、説いた謎をもとに事件を解決して、大団円という所まで持っていく形になっている。ろくに情報もない所からジグソーパズルを組み上げるみたいに真実を見出すこと自体は天才肌の雨恵が拾い上げるのだけれど、その説いた謎をもとにちゃんと関係者みんなが納得する形で事件を解決する、或いは着地させるのって戸村くんであり、その筋道を準備するのが雪音なんですよね。これ、1人でも欠けると事件が解決しました、ってことにはならないんだよなあ。
うん、この三人というのがいいんですよね。
山田姉妹が両隣の席にいて、戸村くんは挟まれた二人の間の席にいる。ただそれだけなら、仲の良い姉妹はどちらかの席まで回って移動しておしゃべりしてればいいのです。でも、この双子は間に戸村くんを挟んだまま喧々諤々喧嘩したり仲良く会話したり、と戸村くんの頭越しに、或いはその目の前でコミュニケーションを取って、その中に自然と戸村くんを巻き込んでいくのである。
間に挟まれて喧嘩されて、困り顔で仰け反る戸村くんの顔が容易に思い浮かぶほどに毎度のごとく。
ついでに、この二人、わりと遠慮なしに戸村くんと距離詰めるんですよね。近い近い、と言いたくなるほど。特に顕著なのが雨恵の方で、靴下脱いだ素足で戸村くんの膝をグリグリと踏んでみたり、肩の上にぽんと顎を乗っけてみたり、人が喋ってる間に顔を突っ込んできて間近で覗き込んできたり。距離が、近い!
一方の雪音こと雪さんも雨恵ほど露骨でないけれど、むしろ余計無自覚な所があって無防備にグイグイと顔を近づけてきたり、雨恵と掴み合い取っ組み合いしてる最中に身体押し付けてきたり、とだから距離近いってw
年頃の男の子からすると、この二人の物理的距離感の近さはなんかもう仰け反ってしまうものがあると思うんですよね。片方は言うと余計に面白がりそうだし、もう片方は言ってしまうと赤面してでもしばらくするとさっぱり忘れて同じことを繰り返しそうな無防備さだし。悩ましい、嬉しいけど悩ましい、という感じになっている戸村くんが何とも微笑ましいばかりなのです。
決して明確な台詞で語られることはないのだけれど、うんこれ毎回玩具堂さんの作品では語ってしまうのだけれど、言葉ではなくて仕草で心の動き、心理描写、その時の感情が伝わってくるんですよね。一話目なんかでも、PC画面を見るのにこの双子、同じ椅子に仲良くちょこんと二人で座ったりするのですけれど、話が進んでいく過程で会話内容とは別に最初は仲良く寄り添ってたのが、途中からお互い尻を押し合って相手押しのけようと押し合ってたり、とほんと落ち着かないわけですよ。特に雨恵なんかいつもグデーっとしてるのだけれど、一瞬たりとも落ち着いていなくて、いろんな動きを会話とは別の所でしているわけです。それは同時に、その瞬間瞬間の彼女の気分も示していて、それが雪音たち他の人たちも同様に細かく仕草とか態度が描写されているものだから、台詞なくても掛け合いがなくても、その場の空気感の変化がリアルタイムで感じ取れる。
まさに、目に浮かぶように彼らの姿が見えるんですよね。
これだけ細かく、ただのおしゃべりのシーンで個々の人物の仕草とか表情の変化とか些細な動き、目線なんかを描写する作品というのは決して多くはないのではないでしょうか。少なくない作品が、会話は会話だけでそのシーンを描写しきろうとしてしまう。情景描写は舞台というだけで、登場人物の内面まで表現するものではないからでしょう。
でも、本作はまさに細部に神が宿っている。ほんの小さな表情の変化や、雨恵の突拍子もない動きや、雪さんの何気ない仕草が、キャラに生気を帯びさせるのである。その場の空気に風を感じさせてくれるのである。そうして伝わる心の動きが、この子たちをより生き生きとさせてくれて、そこから伝わってくる彼ら自身言葉にし切れない感情の弾みが、たまらなく彼らを可愛らしくみせてくれる。
ほんと、瞬間瞬間にたまんねー、と悶絶してしまうシーンがあるんですよねえ。
そうして浮かび上がってくるのは、山田姉妹が戸村くんに抱く彼女ら自身がまだ理解していない特別な気持ちである。それは姉妹への対抗心も相まって、複雑怪奇に入り組んで、思わぬ仕草となって発露するのである。それを実に細かく鮮やかに、でも囁かにさり気なく描いてくれるから、すぅっと空気感として染み込んでくるんですよねえ。
いや、ほんと好きだなあ、この作品は。
雪さん、たけのこを戸村くんの口に押し込んだ雨恵に対抗心燃やすのはいいけど、手ずからキノコチョコをあーんと彼の口に放り込むのは、相当に大胆だと思いますよ。
プールで三人、熱い夏に頭を冷やして推理するためと称して水被せ合いながら遊んでるのなんて、そりゃまあ三人でイチャイチャしてるようにしか見えんわなあ。山田姉妹、水着にシャツという凶悪装備でしたし。
でも、そんな山田姉妹にもそれぞれ抱えているコンプレックスみたいなものがあり、周りと馴染めないものを抱えている。そういう自覚しているウィークポイントを、この戸村くんはさり気なく包み込んでくれるわけですから、双子ともこの隣の席の男の子に対してなんかこう言いようのない特別感を抱いてしまうのも無理ないわなあ。
雪さんの方はこれ、わりとストレートに男の子として意識しだしているようにも見えるけれど、雨恵の方だって特殊な性癖……と言ってしまうとあれだけれど、お気に入りと言って憚らないようですし。
その戸村くんも、探偵というお仕事に対して思う所ありながら、いや嫌悪に近いものを感じていたものの、山田姉妹と探偵をやっているうちにそれを楽しいと思い始めていたことへのもやもやをずっと抱えていたわけですけれど、三件目の事件、あれはだいぶセンシティブ、繊細な心の機微に踏み込む事件であったけれど、それを通じて仕事としての誰かの秘密を暴き出す探偵業ではなく、知恵を出し合い人の複雑な関係が織りなす謎を楽しむ、さぁや先生が保障してくれた言葉をもとに、そしてこれまでの探偵してきた体験を胸に、彼なりに探偵するということへの答えが出たことは、さて、さて、うん、うん。

さても、偶然席替えによって成立した双子と戸村の奇妙な共有空間、共有時間。でもそれは次の席替えによって必然的に終わってしまうもの。偶然は続かない。
もし、それでもその席が、この構図が続くのなら、それは必然だ。みんなが望み、本人たちが望んだものだから。
皆が探偵を欲し、本人たちも探偵を楽しむことを選んだから。
三人一緒に、三人で。双子と彼で探偵だから。



2020年5月読了ライトノベルのおすすめ  

読んだ本の数:39冊 うち漫画:1冊

5月はGWもあったのでがっつりと読むことが出来ました。これで自宅待機とかだったらもっと増えてたかもしれないけど、そんな事はなかったんだ。
注目はやはり久々の玩具堂節炸裂の【探偵くんと鋭い山田さん】。自分がほんとこの人のお話好きだというのを嫌ほど思い知らされた。心がピョンピョンはずんでしまったよ。
そして、完結の【このすば】。最後までテンション落ちること無く愉快痛快の局地をぶち抜きました。
また、クライム・サスペンスとして凄まじいポテンシャルを見せたのが【エリスの聖杯】。圧巻、というに相応しい事件の真相にはもう絶句する他無く。
【友人キャラは大変ですか?】はシリーズ積み重ねるごとにコメディとしての技巧がガンガンレベルアップしていて、最新刊が一番おもしれえ、という状態になりつつあるのが如実にわかるこの9巻でした。いや、べらぼうに面白かった。
久々に登場では高木幸一さんの【家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね?】と壱日千次さんの【朝日奈さんクエスト】が満足の出来栄えで、今後のシリーズ化には大いに期待したいです。


★★★★★(五ツ星) 1冊

探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理 なゆた MF文庫J(2020/5/25)


【探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理 なゆた MF文庫J

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やっだもうこれ好き、大好き!やはり玩具堂さんのお話は自分の好みど真ん中だ。読んでる間中心がピョンピョンしてしまった。どの案件も日常ミステリーとしては珠玉の出来栄えで無茶苦茶面白く、何より戸村君と山田姉妹の凸凹トリオが素晴らしい。脳裏に鮮明に光景や仕草表情が浮かんでくる情景描写に、性格正反対の双子の心の動きを繊細に描き出す心理描写、二人に挟まれオロオロとなりながら、中々難しい性格の双子の内側にスルスルと入り込んでいく戸村君。姉妹との距離感の縮まり方がキュンキュンしてしまう丁寧さ。控えめに言って最高!



★★★★☆彡(四ツ星Dash) 3冊

この素晴らしい世界に祝福を! 17.この冒険者たちに祝福を!】 暁 なつめ/三嶋 くろね 角川スニーカー文庫(2020/5/1)
エリスの聖杯 2】 常磐くじら/夕薙 GAノベル(2020/5/14)
友人キャラは大変ですか? 9】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫(2020/5/19)


【この素晴らしい世界に祝福を! 17.この冒険者たちに祝福を!】 暁 なつめ/三嶋 くろね 角川スニーカー文庫

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祝・完結! 掛け値無しに最後の最後までハチャメチャに楽しかった。これで終わりなんてホントかよ、と思ってしまうくらい何時までも彼らのドタバタ騒ぎを遠くから眺めていたかった。これほどひたすらに「楽しい」作品は滅多無いと思うだけに、まだまだ何らかの形で堪能したいものです。


【エリスの聖杯 2】 常磐くじら/夕薙 GAノベル

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マジかーー!! スカーレット処刑の真相があまりにも予想外で、とてつもない衝撃だった。そうか、スカーレットになぜ処刑の時の記憶だけ無いのは理由在る事だったのか。10年前から今に続く暗闘、謀略。徐々に明らかになっていくその壮絶さも然る事ながら、覚悟決めちゃった人が多すぎる。リリィの鮮烈な生き様はどう感じていいかすら迷ってしまう。果たしてスカーレットの復讐を、コニーはどうやって完遂するのか。あの真相を知ってしまうと、この決着はスカーレットよりもむしろ、コニーこそが握っているんだろうなあ。


【友人キャラは大変ですか? 9】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫

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全方位から死角なくあらゆる方向から友人キャラとしての一郎を抹殺して主人公キャラにしようとしているかのように、出自が特殊だったりラスボスと血縁だったり以前主人公に仕立てた旧友が一郎に憧れ目標としていたり、ともうやめて一郎くんの友人キャラHPはもうゼロよ! というくらいに何度も何度もトドメ刺してくる展開には笑うしか無い。テンポもネタもキレキレでこの畳み掛けてくる勢いはホント楽しくて仕方ない。しかし魅怨の正妻ポジ、母親公認どころか一郎くん当人がもう認めちゃってるじゃないですか!


★★★★(四ツ星) 7冊

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 3 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】 タンバ /夕薙 角川スニーカー文庫(2020/5/1)
朝日奈さんクエスト センパイ、私を一つだけ褒めてみてください】 壱日千次/U35 ファミ通文庫(2020/4/30)
魔術破りのリベンジ・マギア 7.再臨の魔人と魔術破りの逆襲術士】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫(2019/8/31)
家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね?】 高木幸一/YuzuKi GA文庫(2020/5/14)
信長の庶子 1.清洲同盟と狐の子】 壬生一郎/土田健太 ヒストリアノベルズ(2019/4/15)
魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫(2020/2/21)
狼と香辛料 XXI Spring Log IV】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫(2019/1/10)

【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 3 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】 タンバ /夕薙 角川スニーカー文庫

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公爵が格好良すぎて男惚れしてしまった。絶対義兄にするならこの人だろう。レオが覇気を見せてくれたけど、かつて体を張ってリーゼを止めるなど、アルと別の所でちゃんと存在感見せてたんですね。本当に兄弟二人で主人公と言えるくらいになってきたなあ。また今回は皇帝の父として家族に向ける愛情を感じさせてくれる回でもありました。アルにとっても皇帝は尊敬し愛する父でもあるんだなあ。一方でザンドラは完全に敵として邪悪な側面を見せることに。むしろ、その母の方が悪そうですが。


【朝日奈さんクエスト センパイ、私を一つだけ褒めてみてください】 壱日千次/U35 ファミ通文庫

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草一って単純にコミュ未経験者なだけで他人と接する事に忌避感も恐怖感も面倒さも抱いていなかったんですね。だから舞からのミッションも面白そうと思えばどんどんと挑戦していける。勇気を振り絞る必要がなく、好奇心で踏み込んでいける。彼の個は既に確立されていて、それは自己変革でなく拡張なのだ。その辺を早期に見抜き草一に惹かれた舞の目は確かで教導の手腕には目を見張るものがあるのに、自身が自爆系ポンコツすぎて本当に可哀想な事に。でもそこがまた愛いのだ。


【魔術破りのリベンジ・マギア 7.再臨の魔人と魔術破りの逆襲術士】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

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今までの登場人物総浚えしての総力戦。というだけでなく、シリーズの帰結としての顛末が今までの集大成となっていて素晴らしかった。かつて復讐者として生きた主人公が、自分と同じ目的、同じ復讐のために生きた人を止める、そこに憎しみはなくお互いにあるのは家族への愛情だった、というのは想像を遥かに上回る真相でした。ちょっと泣けた。ラスボスも、相応しい大物でしたし、それに立ち向かう行程に、鍵となる部分も面白かったですし、ラストとしては期待以上の結末でした。首領の正体はかなり吃驚、その動機も含めて妙ありきでした


【家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね?】 高木幸一/YuzuKi GA文庫

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軽いタイトルとは裏腹に、切実に家族というつながりを希求する子供達のホームドラマでした。熱に浮かされた真の口から溢れた、家族が欲しいという願いは彼の孤独さを浮き彫りにして胸がキュゥとなった。姉妹達もまた両親を喪った虚を抱えて生きていて、それを姉妹で喧嘩しながらも支え合って家族として暮らしてきた中に、真は入り込む事になる。異物になりそうなものだけど、彼女達が自然に受け入れたのは優しさや同情故ではない。家族としてあるべき形に真は相応しかったのだ。美星と波月のデート回で強くそれを感じた。心にじんわり沁み入るお話でした


【信長の庶子 1.清洲同盟と狐の子】 壬生一郎/土田健太 ヒストリアノベルズ

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小説家になろうで掲載された戦国時代を舞台とした作品の中でも屈指の名作。戦国モノの中でも特に登場人物の活き活きしたキャラが見所で、信長秀吉光秀などの有名人物が歴史上の人物でなく生々しくも魅力的な今そこに生きている人として描かれている。中でも出色は主人公の母塙直子のあの破天荒さなのですが、彼女に限らずお市・犬姉妹といい濃姫様といい女性陣がつおいw しかし書き下ろしを見ると事情あって厭世的になってた直子を吹っ切らせ後押ししてあんなイケイケのキャラにしちゃったのは信長なんだよなあ。


【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)5】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

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オルガってあれで凄く真面目な娘なのでミラとは相性良かったんだな。あんなに仲良くなるとは思わなかった。オルガが放浪するに至った悩みに対してもミラは随分と親身になって相談に乗っていたし。これもティグルと出会う事でミラに生まれた変化なのだろうけど。領主としてのスタンスにも余裕を持った視点で向き合っているし。ザクスタン編は、殆ど独立勢力な土豪たちと王家との争いに巻き込まれ、図らずもロミオとジュリエットな展開に首を突っ込むティグルたち。バルムンクはまだなにか秘密がありそうだな。そしてリーザはあれ、前作と立場真逆になるのか


【狼と香辛料 XXI Spring Log IV】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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二人の物語の中に生きている、は至言だなあ。再び二人きりの旅に出たホロとロレンス、十年以上の夫婦生活はよりお互いの押し引きの勘所を掌握させたようで、かつてはわかった上での駆け引きだったのが今度はロレンスの甘さもホロの気遣いも全部どこまでOKか完全に承知した上でのやり取りなんですよね。そこに年季を感じつつ、イチャイチャっぷりでは若かりし頃と全く変わっていないのは流石です。子供らが悪戦苦闘してた一方で、この夫婦と来たらさらっと陰で騒ぎを収めて皆に勝ちを進呈し、ちゃっかり自分たちの一番欲しかったものを確保するのだからまだまだ役者が違うかな。


以下に、読書メーター読録と一言感想


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探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる ★★★★★   



【探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理 なゆた MF文庫J

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私ならその事件・疑問・憂鬱、秒で解決だね——。可愛くて、どこか抜けていて、無邪気でキレッキレな山田さんと、思考フル回転 《本格派》学園ミステリーラブコメ!
新学期——俺は失敗した。
親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺だったが−−

「それさ、そもそも事件じゃないね〜」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村君」

何があっても山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬の対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけど、これ完全に狙ってるよね!?
山田さんたちと俺の少し甘めな、本格派学園ミステリー。

もう好きーーーッ!!

やだなあもう、やっぱり自分て玩具堂さんのお話大好きですわ。もう好きすぎて、途中から心がピョンピョンしだして終盤読みながらゴロゴロ転がりまわってしまった。
相変わらずこの作者さんは情景描写が神がかっている。戸村くんを挟んで両隣に座った山田雨恵と山田雪音。この三人が並んで色んなやり取りをしている光景が、もうありありと目に浮かんでくるのです。ただ話しているだけじゃなくて、特に雨恵なんだけどフリーダムな性格のせいか動きも多いんですよね。机の上に寝転がるわ、靴下脱いで素足でブラブラしてるわ。足の指をくにくにと動かしながらあれこれ考えている様子がまた、なんか好きなんですよねえ。戸村くん、めっちゃ見てるし。爪が小さくて真珠みたいだ、とか思っちゃってるのって相当ガン見してますよね。
こんな風に細かい仕草まで自然な流れで丁寧に描写されるので、ただおしゃべりしているシーンでも誰かしらが情景の中で動いていて、言葉として発せられる以外の部分もそんな仕草や表情から雄弁に語られるのだ。誰かの発した台詞で、聞いていた人の反応から様々な心情が物語られる。
情景描写が、そのまま心理描写へと連結されているのだ。キャラクターの心の動きが、言葉で語られる以上にその人の仕草や表情、声の調子は僅かな反応などからさらに積み重ねられていく。其上で、言葉でもちゃんと心の動きをとても繊細に描いてくれるんですね。

ただ席が隣だった、いや何だかんだ仲の良い双子に挟まれて居心地の悪い思いをしていた大人しそうな戸村くんに、果たしてあの性格正反対の双子がどんな風に興味を持ち、彼といっしょに「探偵」をするのを楽しく感じるようになっていったのか。
このクラスになって初めて会って、話すのも初めてだった男の子、どんな風に仲良くなっていき、段々と彼の存在が自分たち双子の間で無視できないものになっていき、ちょっとした「特別」になっていくのか。
この過程がまた一つ一つ些細な積み重ねなんだけれど、その些細な影響、変化が双子の間で反復していくうちに大きくなっていくんですね。二人一緒、ではなく片方片方にそれぞれちょっとした揺らぎが起こることで相手の様子が気になり、無視できなくなり、段々と揺れ幅が広がっていく。これがほんと素晴らしくてねえ。
この双子、性格が正反対なのです。片や雨恵は天才肌の自由人。博識で真面目だけど人付き合いが不器用な雪音。仲の良い二人だけれど、同時にいつも喧嘩ばかりしていて雪の方は姉にコンプレックスめいたものを抱いているし、雨も不器用な妹のことを気にかけて、同時に何だかんだと自分に内向きだけど充実した高校生活を送っている雪のことを羨んでいる。
そんな二人の間に文字通り割って入ってきた戸村くん。いや、彼に構い出したのは雨であり、それに引っ張られる形で間にいる戸村くんに戸惑いながらも関わりだした雪であって、戸村くんは困ってばかりだったのだけれど、無理やり押し付けられた探偵仕事を推理という形だけれど助けて貰った事もあって、無視するでも拒絶するでもなく、二人の間になんとなくすっぽりと収まる事になる。
単に、席が二人の間、というだけではない本当の意味で二人に挟まれた関係になっていくんですね。それは二人の間に割って入るということでもあり、二人の姉妹の間を繋ぐということにもなるのである。
この戸村くん、お父さんが探偵で、それも名探偵とかじゃなく本当にただの興信所の運営者という意味での現実的な探偵であって、彼自身別に推理好きとか頭がいいとかじゃなく、傍目に見てるとほんとにただの何の特技もない普通の少年、に見えるんですよね。
でも実は……というわけでもなく、いやもう本当に普通、普通の子、のはずなんだけれど……うん、ちょっとおもしろいなあ。雨は、悪意に対する悪意の持ち主、なんて表現をしていたけれど、観察眼が特に人間関係での相手に対する心情、の部分で聡いというか察しがいいんですよね。マリーの彼氏への気持ち然り。美術部での友人関係の複雑な感情の在処然り。そして、実はなかなか難しいところのある山田姉妹のお互いに対する感情然り。
そういう察しの良さは、相手への気遣いにも向いていて、踏み込むべき所と無造作に手を突っ込んでは行けない所をちゃんとわかっているんですね。双子が喧嘩した時、雪の所に話しに行った時。美術部の人間関係に不用意に言及しようとした雪をとっさに止めた時、などにそれが伺えるのだけれど。
その理由というか根源に、上の姉が父親と喧嘩して家を飛び出し、家庭が軽い家庭崩壊になってしまった時の後悔があるようなのだけれど
決してコミュ力が高い、という風には見えないのだけれど、一番肝心な時に間違えずに相手を慮れる本当の優しさがある。山田姉妹って、方向は違うけどかなり難しい性格していて、自分たち二人のテリトリーに余人を踏み込ませる事をしないように見えるんですよね。雪はまずもって他人を寄せ付けられないし、雨は雨で軽く広く付き合いは気安く誰とでも仲良く出来るけど、本当の意味で踏み込んだ関係は煩わしがるタイプ。そんな二人の間に、わずか数週間でスルスルと入り込んでしまった。いや、戸村くん当人からすると入り込んだなんてもんじゃなく、二人に絡まれたくらいの感覚なんだろうけど、終わってみれば二人のこと、名字じゃなく名前で呼ぶ関係になってるんですもんね。
それに、最後のエピソード。姉妹が彼にパンダのアクセをプレゼントしようという話になったの、あれ双子が自分たちの「守護獣」を二人で揃える事が幼い頃からのエピソードからして、本当に特別なんですよね。これに関しては親すら踏み込ませない、二人の特別だったと思うんですよ。
それが、戸村くんの「守護獣」を選んで二人でプレゼントすることにした。これ、双子本人たちも気づいているとは思わないのだけれど、明確な特別なんですよね。双子を挟んで間に戸村くん。これが単なる教室の席順、では収まらなくなった象徴のようにも思うんですよねえ。

さて、本筋である日常ミステリー。作中では3つの事件、いや事件は最後の一つだけで前の2つは「探偵」に対する調査依頼というべき内容だったのですけれど、これがまた3つともべらぼうに面白かった。親が探偵やってます、と初クラスでの自己紹介で口走ってしまったが故に、無理やり頼まれてしまった依頼であり、以降の二人は最初の一件の評判によって持ち込まれた案件だったのですが。
実際の探偵業の後ろ暗さと後味の悪さを知っている戸村くんの心情として、謎を解くことで誰かに不幸になってほしくない、という思いがあり、それが彼に探偵をすることに気が進まないという思いを抱かせていたのですけれど、この3つの案件はどれも……2つ目はちょっと違うか、でもどれも謎を解くことによって誰かの不幸せを遠ざけられ、誰もが笑顔になれる、というエピソードだったんですよね。
なので、推理し謎を解く、という結果がどれも清々しくて、素直にああ良かったなあ、と思える形で終わっているのです。それが、双子と戸村くんに、探偵も悪くない、楽しいね、という共通の思いを抱かせ、より三人のつながりを深めていく所以にもなっていくのです。
発想の面白さとしては、やはり二番目の事件でしょう。表紙カバーだけ残された既に絶版となったライトノベルのミステリー作品。シリーズものの第五巻。それを中身を読まずに(何しろ中身の本がない)、カバーの登場人物紹介と作者の執筆傾向という情報だけでこの巻の事件の犯人とその動機を推理しろ、という内容。いかにも無茶振りなんだけれど、三人寄れば文殊の知恵、のごとく三人でああだこうだ話しているうちに推理が繋がっていく、この展開は面白かった。
この三人、戸村くんが方向性を見出し、雪が知識を駆使して情報を引き出し整理し、揃った材料から雨が閃く、という結構ちゃんとした分担になっているのがまた興味深い。
3つ目の事件は、彼ら三人の前の席の三原さんが依頼してくるのだけれど、前の席に座っている、ということで三原さん、この三人の会話をよく聞いていたから、美術部の事件の解決を彼らに依頼してきたそうなんだけれど、この娘が戸村くんと山田姉妹のこと、ファンなんだ、と微笑むシーン、すっごく分かり味だったんですよね。そうだよね、この三人の会話聞いてたら、好きになっちゃうよねえ。
ちなみに、この三原さんもえらい属性過多というか個性的な娘で、最後のエピソードだけの登場だったにも関わらず、存在感やたらパなかったです。最初にチラッと、自己紹介の時にこのクラス個性的なやつが想像以上に多かった、と印象が語られてたけれど、三原さんみたいなのがわんさかといるのか、もしかしてw

まあそんなクラスの中でも、この戸村くんと山田姉妹はトップクラスに個性的なトリオになっちゃってると思いますけど。あれ、三人の間では雑談してたらなんか真相が見えた、という感じで最初の事件も二番目の事件もあんまり当人たちは深く考えてないかもしれないけど、依頼した側からすると相談した次の日に、あっさりと真相を掴んでくるわ、本の中身のないミステリーの犯人と動機まで僅かな情報から探り当ててくるわ、なにこの人たちガチの名探偵じゃね!? と仰天しますわなあ。
実際、マリーにしても図書館の彼にしても度肝抜かれてましたし。客観的に見ても、訳解んないですよこの三人w

さて、かつて幼い頃に親から貰ったパンダのぬいぐるみは、双子ふたりの取り合いでついにはボロボロになって壊れてしまったそうで。さあ、新しいパンダは、もし双子ふたりの取り合いになったら耐えられるのか。
「ま……ぬいぐるみよりは丈夫でしょ」

なかなか不穏なことをおっしゃいますなあ、雨恵さんw

この三人の顛末、まだはじまったばかりで関係もまた本当の意味で「三人」になったばかり。これがどんな風に転がっていくのか、もう見たくて見たくて仕方ない。
名前で呼べと命令しながら、実際呼ばれると擽ったさに悶てしまう雨恵に、あとになって姉に対抗しようとして挫折して、「雪さん」と呼ばれるようになってやっぱり悶てる雪音。
このあたりの名前呼び関係の話はもうほんと甘酸っぱいというか擽ったいというか、たまらんかった! 名前で呼ぶだけでこれですよ、これ以降どうなるかもうたまらんじゃないですか。

あとがきでは、二巻以降はまだ決まっていないそうですが、絶対見たいです、読みたいですヨ!
そう叫びたくるくらい、素晴らしく面白く最高に素敵なお話でした。これくらい心がピョンピョンしてしまう物語は、滅多ないんですよぅ!

玩具堂・作品感想

 
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