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支倉凍砂

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 V ★★★☆   



【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 V】 支倉 凍砂/文倉 十  電撃文庫

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神をも畏れぬ女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争の危機を回避したコルとミューリ。騒動も落ち着く頃、コルは自らを慕ってくれるミューリとの関係をはっきりさせなければとあれこれ知恵をひねり、ある方法を思いつく。そして調べもののため、かつて訪れたブロンデル修道院を目指す道中、コルとミューリは行き倒れの少年ローズと出くわすことに。彼はミューリの尻尾が飛び出るほど高名な聖クルザ騎士団の見習い騎士で、世界最強の騎士団が、悪名高い“薄明の枢機卿”のせいで壊滅状態だと訴えてきて―!?一時の休暇のはずが、またしても大事件勃発のシリーズ第5弾!

おおっ、黄金羊のハスキンズ翁、久々の登場である。ウィンフィール王国が舞台になれば、また再登場あるかな、と思ってはいましたけれどこのタイミングで、という事になりましたか。
ロレンスとホロ相手には塩対応、とまではいかなくても峻厳でどこか動かぬ岩を相手にしているような相対し方をしていた印象のある羊のお爺さん。ホロですら強く出られず、耳を伏せていたイメージがあるもんなあ。それだけに、コルとミューリの年少組がこの寡黙で厳しい老人とお話するのは辛いんじゃないか、と思っていたら……あれあれ? なんだかミューリには対応が柔らかいぞ? というか、ダダ甘だぞ? 羊爺さん、デレてますか? ミューリのこと、孫感覚ですか!?
ハスキンズさん、生意気と称したホロと比べてそりゃあミューリは可愛げの塊みたいな娘で、最初こそビビってたもののすぐに懐いてわりと遠慮なく無邪気に接してくるものだから、お爺さんちょっと嬉しそうなんですけど。
まあ爺馬鹿というだけではなく、ロレンスとホロの行く末がミューリという物証付きでハッピーエンド継続中という形で収まった事が、本当に嬉しかったからというのも大きいのだろうけれど。あの頃はまだホロは厭世的な部分があって、ロレンスと添い遂げようと決心ついてなかった頃なんじゃなかったっけか。だから、ホロの先行きをハスキンズ翁は決して楽観はしてなかったと思うんですよね。それがこうしてミューリがあの時ロレンスにくっついていた子供コルとともに自分を訪ねてきてくれた。
ハスキンズ翁がこうして本音語ってくれるとは予想外だったのですが、ホロたちが訪ねてきた事も彼にとってはとても嬉しいことだったそうで、あれで百年まだ頑張れる気力を得た、と言ってるくらいですから、ミューリたちの来訪はさらに百年重ねられたんじゃないだろうか。

さて、ミューリとの間に確かな絆を形であらわすために、二人だけで使う紋章を定めようと決めたコルとミューリ。兄妹というには実際には血が繋がらず、しかし聖職者になるために結婚はできない。しかし、今更離れることは能わず、きっと死ぬ時は一緒と信じられるほどに共に有り続けたいと願った二人。その思いを確かなものとするための紋章だったのだけれど、逆にその紋章を二人だけで使うためには、二人の関係をはっきりしたものにしなくてはならない、という事実が発覚してしまう。
そう言えば、ホロとロレンスも随分と長い間お互いの関係についてウダウダやってたなあ、とふと思い出してしまった。エルサにお互い好きなのになにウダウダやってんの! と一喝されて色々と関係が一新されたんですよねえ。
ミューリとコルの場合はまたホロとロレンスのときとは事情が違うので何とも言えませんけど。コル個人の信条の問題ですし。それでも、ミューリの求愛に応えれば即座に全部解決じゃん、と思ってしまうのも否めません。
最後に改めてコルってば、ミューリとの新しい関係について見出していましたけれど、さすがにちょっとそれしっくり来ませんよ? ミューリが騎士、というのもねえ。足元が疎かでふわふわしているコルの代わりに、足元に注意し迂闊を指摘しナニカにぶつからないように手を引いて歩くミューリを騎士と呼ぶのは、さて……微妙に色々と丸投げして頼り切りになると言ってるようなものな気がしてきたぞ。まだ兄妹であった方が兄として威厳があったようなw ミューリはこれはこれでご満悦かもしれませんが。

月を狩る熊の謎についても、ミューリによって新たな見解のアプローチが。新大陸に消えた、という話になっていたけれど、そういえばそうなんですよね。前から漠然と感じてはいたんですよ。人ならざる者、ホロたちのような獣の神たちの間では月を狩る熊はまさに魔王さながら、有名なんてものじゃないのに、人間たちの間であの熊の話って一度も持ち上がった事なかったんですよね。伝承ですらほとんど語られていない。ホロにしてもハスキンズにしても、古きものは何かしら伝承を残しているのに、一番有名になりそうな熊についてはあんまり聞かないなあ、と思った事がそう言えば狼と香辛料を読んでいる時にあった気がします。
まさか、そういう方向にアプローチしてくるとは予想外でした。これ、地味にコルにはショックな仮説だよなあ。
いやでも、コルにとって神とは実体のある存在として受け止めているわけではありませんし、彼の信仰の在り方を見れば、発端なんて究極的には気にしてもしょうがないもの、として割り切れる範疇なのかも。でもそうなってくると、教義とかにそこまで拘る必要もなくなってくるよなあ。

コル、すなわち薄明の枢機卿の活躍によって、ウィンフィール王国内で旧来の教会勢力が劣勢となってしまった、その余波でウィンフィール王国からの寄付で運営されていた教皇直属の聖クルザ騎士団、その中のウィンフィール分隊が存続の危機に立たされてしまう。
まさに、コルの影響によるもので、良かれと思ってやっていることでもどうしてもしわ寄せというのはどこかで出てきてしまうという事なんですね。誰が悪いというわけでもなく、しかしその道理をなかなか受け止められる人間は少ないわけで。でも、ウィンフィール分隊の隊長さんはその道理がわかってる人だったんですね。だからこそ、コルを悪者にして王国内の反抗勢力側について立場を確かなものにする、という安易な方法を取らなかった。それは身を挺して周りのすべてを守ろうという騎士としての誇りであり、しかし選んだ方法は茶番を演じることであり、騎士としての誇りを捨てる行為でもあった。つまり、自分だけが貧乏くじを引くことで全部丸く収めようという方法だったんですね。
でもそれは、コルの信条としては受け入れづらい事だったんですね。誰かに負債を押し付けない、みんなが幸いを得る。それが商人でも武人でもない、コルのやり方でエーブからすらも勝利をもぎ取り分配し直したやり方だった。
一時はこらえて隊長の茶番を受け入れようとしたコルだったけれど、まさに起死回生の発想の転換でした。しかしこれで、聖クルザ騎士団からも信頼を受けるようになったわけですから、薄明の枢機卿の名声は揺るぎないものになってしまったなあ。もうここまで来ると、一介の聖職者なんかに戻れないんじゃないだろうか。
ハイランド王子は、何はなくとも後ろ盾になってくれるだろうけど。この人、王族なのに人が良すぎて心配になる。ちょっとイイ人すぎやしませんかね!?


狼と香辛料 XXI Spring Log IV ★★★★   



【狼と香辛料 XXI Spring Log IV】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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湯屋『狼と香辛料亭』を営むロレンスの悩みの種、それは家を飛び出していった可愛い一人娘、ミューリのことだった。憔悴するロレンスを見かねたホロは、湯屋をセリムたちに任せ、娘を訪ねて十数年ぶりの旅に出ることに。そんな旅の途中に立ち寄った町で、さっそくミューリの噂が耳に飛び込んでくる。それは、二人の知るお転婆娘とかけ離れた、“聖女ミューリ”の噂で―!?書き下ろし短編『狼と旅の卵』に加え、電撃文庫MAGAZINE掲載短編4本を収録した、幸せであり続ける物語第4弾!

こうして二人は結ばれ幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。そんなハッピーエンドのその後のお話、というパターンは決して珍しくはないのだけれど、そういう「アフター」を描くストーリーって、やっぱり一波乱も二波乱もあったりするんですよね。現実はめでたしめでたし、では済まなくて世知辛い現実的なその後を描く話もあったりする。
そんな中で、本作に限っては本当にその後も「めでたしめでたし」し続けてるんですよね。ホロとロレンスはずっと幸せに暮らし続けている、ずっと目出度い! そのなんて素晴らしい事だろう。
二人は、二人の物語の中を生きている。
これは至言だなあ。
そんな物語のハッピーエンドの象徴が、湯屋『狼と香辛料亭』であり、お客たちはそんな幸せの結末がずっとずっと続いているのを眺めにくる、確かめに来る。そうやって、幸せのおすそ分けを頂きにくるのだ。という、二人が旅に出た後を預かることになったセリムのお話には、なるほどなあと深く深く頷いたのでした。それが湯屋『狼と香辛料亭』の繁盛の秘訣だというのなら、笑顔と幸せが湧き出る湯屋という評判の根源なら、それはとても素敵じゃないですか。
そんな幸せをみんなが見に来て、笑顔になれるというのなら、この世界も人も捨てたもんじゃないのですから。

さて、十数年ぶりに宿の主人を脱却して旅に出たロレンスとホロ。うん、そうだよね、そんな長い間旅に出てなかったら、あれこれ錆びついてるよなあ。肉体的な衰えだけじゃなく、旅の関する勘所とかもね。まさか、火を付けることまで手間取るありさまになっているとは思わなかったけれど。
かっこ悪い、かっこ悪いよロレンス。でもまあ、そんな格好の悪さで愛想を尽かされるような付き合いはもうとっくの昔に卒業したわけで、というか最初から格好の悪さというのは愛想を尽かされる原因にはなりえない関係だったんですけどねえ。
それでも、若い頃は見栄を張っていたロレンスだけれど、夫婦となりお互いの事を理解し尽くした今となっても、まあ見栄というのははりたいものだし、格好悪い所は見せたくないんだよ、男というものは。それはそれとして、諦めて格好悪いところを曝け出すのもまた夫婦円満の秘訣というのをロレンスもよくわかってるんですよね。
十年以上も夫婦をやっていると、やっぱり以前の旅とは異なってくるという所もある。同じ二人きりの旅でも、年季が異なってるんですよね。かつての旅では成立していた二人の駆け引きが、もう今となってはあんまり機能していないんだなあ。
だって、あんまりにもお互いのこと、わかっちゃってるんだもの。どこまで押せば許してくれるか、どこまでなら引いてくれるか。その微妙な呼吸を、どうしたって自然に合わせてしまうのがこの夫婦なのだ。ほぼ完璧に、押し引きの境界ラインがわかっちゃうものだから、交渉の余地はあんまりなくジャックポットで取引が成立しちゃうんだなあ。
でも、それで無味乾燥になるかというとむしろ逆で、ホロも限界まで存分に甘えて強請るし、ロレンスもホロが気遣う限界点まで甘やかす。おかげで、出来る範囲の最大限イチャイチャしているようにしか見えない。
お互いの気持ちを種銭にして押したり引いたり駆け引きをすることで、まさに愛を交換していたかつての二人だけれど、そういう意味では今回の旅でもイチャイチャは、夫婦のイチャイチャだよなあ、と思ったり。
ほんと、お互いへの気持ちが冷めるどころかむしろ募ってるんじゃないだろうか、というくらいのお互い身を寄せ合い肩を寄せあい頬を寄せ合い囁きあっているような睦み合いは、まったくもってお熱いことで。なんでミューリしか子供生まれてないんですかね!? と、言いたくなるくらい。
今からミューリの妹でも作っていいんじゃないだろうか。

さてのんびりと、とりあえずの目的である娘のミューリとコルに会うためにその足跡を追う二人、と言っても急いで追い回すのではなく、のんびりと旅行気分であっちこっち食べ歩きする気満々なんですよねえ、特にホロ。
そんな旅先で行き合ったのは、なんだか街の大問題を解決して有名になってしまった枢機卿なコルと聖女なミューリの噂。
なにやってんだーうちの子らは、となりつつさらっと自分たちも新たに起こりつつあった街の問題に慣れた感じで首を突っ込んでしまうの、ロレンスが相変わらずちょっと欲をかいてちょっと失敗してしまった補填のため、とはいえ手慣れたもので。
あれこれと四苦八苦して次々と起こる問題に頭を悩ませ、必死に振り回されるのを踏ん張って解決策をミューリといっしょに探り当てていたコルたちとは、やはり年季が違うというかなんというか。
もうでっかい案件にこっそりと一噛みする手練手管は、経験値たっぷり、という感じですよね。
そしてコルたちのように不用意に目立つこともなく、裏方に徹してなるべく皆に得や勝利が回るようにしつつ、自分たちもちゃっかりと……いや、最初からそれが目的、狙ってた報奨をサラッと掻っ攫っていく。
その肝心の報奨品が、ホロが心から欲しがっていたもの、というあたりが本当にロレンスと来たら相変わらずというかなんというか。ホロのためなら、もうどんな不可能案件だろうと簡単にクリアしてきやがりますよね、この商人。凄腕商人、というにはあまりに金にがめつくなく稼ぎも大きくないのだけれど、ホロのため、という冠がついた時なら訳の分からんレベルで軽くホロの望むものを持って来ちゃうんだよなあ。
しかし、日記だけでなく、絵として自分とロレンスの姿が残ってたら、そりゃあ永い永い時間のかけがえのない宝物になるもんなあ。ホロが、あれだけ取り乱して欲しがったのもよくわかる。

シリーズ感想

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 4 ★★★★   



【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 4】 支倉凍砂/文倉 十 電撃文庫

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ウィンフィール王国第二位の港湾都市ラウズボーン。ニョッヒラを出て初めての大都市に心躍らせる賢狼の娘ミューリと、教会変革の使命を胸に燃やすコルだったが、二人を待ち受けていたのは、武装した徴税人たちだった。ハイランドの機転で窮地を脱した二人。どうやら「薄明の枢機卿」と讃えられるコルの活躍が、皮肉にも王国と教会の対立に拍車をかけていることを知る。このままでは、戦争を避けられない。打つ手無しの中、コルに助け船を出したのは、ロレンスのかつての好敵手、女商人エーブだった。神をも畏れぬ守銭奴は、果たして敵か味方か。コルは教会、王国、商人の三つ巴の争いに身を投じる―!
女商人エーブの再登場。ロレンスとホロの物語において最大最強の敵であり味方であった彼女、賢狼ホロを差し置いて狼と呼ばれた女。ミューリは彼女のことを狐呼ばわりしていたけれど、とてもじゃないけれど狐レベルじゃないんですよね。年を経てさらに貫禄と凄みを増した大商人、孤狼と呼ぶに相応しく餓狼と呼ばざるを得ないほどに獰猛に利を欲する。正直、まともにやってはコルとミューリじゃ役者が違いすぎる。ホロと真っ向から張り合えるレベルなんだから。
その意味では、コルがエーブと腹の探り合いをして駆け引き勝負に出てしまったのは大間違いなんですよね。それは完全に相手の分野であり土俵であって、コルはそういうのじゃないでしょうに。コルが図に乗っていたとか調子に乗っていた、というわけじゃないのはわかってます。彼の謙虚さは筋金入りですし自己評価の辛さは頑なですらありますから。
それでも乗ってしまったのはコルの素直さ故なんだと思うんですよね。エーブという人の恐ろしさ、どれほどの大人物かというのを誰よりもわかっているコルですけど、だからこそエーブの恐ろしい部分を意識してしまってそれに対処しよう対処しようと知恵を巡らせ頭を悩ませることになる。それこそ、エーブの土俵に乗っているにも関わらず。ここで、エーブにまず力を発揮させずに封殺しよう、という方向に発想がいかないのが彼の愚直さでも在り素直さでもあるのでしょう。
尤も、状況的にあまりにもエーブは重要人物過ぎて、その力を発揮してもらって利用しなければ八方塞がり、というすでにエーブが状況をほぼ支配下に置いてしまっている時点で手遅れではあったのですが。
ゼロから、エーブの伏せてあった手札も戦略も見事にひっくり返して露わにしてみせただけでも、十分凄いんですけどね。エーブがコルを可愛がっておおよそ目一杯限界まで手加減してくれてたのを加味しても。
しかし、エーブってばかつてロレンスに振られたの未だに引きずってるんだな。引きずっているとまではいかないまでも、未だ拘っているとも言える。自分だけの、信頼できる相方の存在に。エーブを崇拝する人は数いるだろうに、未だに誰にも心許していないのに、コルにあれだけ熱心に誘い掛けてくる、という時点で未だにしこりになってるんだろうな、というのは伝わってくるんですよね。
まあコルに声かけたのは断られる前提だろうけど。誰が見ても、コルはミューリを捨てないでしょうし。コルもその点については誓っていますし……てか、それを決め込んでいる時点でミューリの求婚をコルはどうやったって跳ね除けられないんだよなあ。今回の、実際に捨てられてしまった人たちの嘆きを目の当たりにして、ミューリが縋ってくるのを今までみたいにきっぱりと跳ね除けられなくなってる時点で、今回コルの心境としてもかなり思う所あったんじゃなかろうか。
ともあれ、エーブとの駆け引きはあらゆるところでエーブにマウントを取られ続け、出し抜いたと思ったところですらやっぱり八方塞がりになり、と知恵を巡らすという意味では今回はコルは常に打つ手を潰されてしまったと言えるのでしょう。
ただ、コルのやり方というのはそういう駆け引きとかじゃなかったはずなんですよね。作中でエーブも度々語っていますけれど、コルの戦い方というのは商人のそれでも政治家のそれでもない。
誰かを負かすのでも罰を与えるのでもない。特に今回は、事情を詳らかにしていってみると悪人の類は殆どいなくて、差し迫った各々の事情や感情的なすれ違いが、どうしようもない所まで誰も彼もを追い詰めて何もかもを悪化させてしまったというのが実情だったので、結局そこかを切り捨てるかもろとも破滅するか、しか選択肢がなかったわけだ。
そんな中で、利益を求めるのでも名声を求めるのでもない。正義を執行したいわけでも、間違いを正したいわけでもない、ただ誰かが一方的に理不尽を受けるのが認め難く、報われて欲しいと願うだけ。そんな誠実さと純朴な善意こそが、コルの原動力であり強みなんですよね。エーブだって、コルに甘いという側面とちゃんと利益が出るという未来絵図があったとしても、なるべく誰も傷つかない形で丸く収めたい、というコルの示した結論の素朴な善性にそうそう逆らえるもんじゃないんですから。周囲がそれに乗っかるなら、なおさらに。エーブ姐さんは悪党だけれど、わざわざ自分から人を不幸にしたいわけじゃあないものねえ。

エーブという共通の敵が現れたから、というわけじゃないんだろうけど、不倶戴天だった、というかミューリが一方的に警戒していたハイランドと妙に意気投合しちゃってたのは微笑ましいやら。ハイランドの孤独に対してミューリからおずおずと手を差し伸べてくれたのは、この娘の何だかんだと優しい部分が垣間見えて嬉しかった。複雑な立ち位置にある二人だけれど、これを期に良い友達になれそうで、お互い友達という相手には縁がなかったですしね、よかったんじゃないかな。

シリーズ感想

狼と香辛料XX Spring Log ★★★★   

狼と香辛料XX Spring LogIII (電撃文庫)

【狼と香辛料XX Spring Log掘曄〇拜凖犧宗進諺匳宗‥天睚幻

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湯治客で賑わう短い夏が終わり、湯屋『狼と香辛料亭』はひと時の穏やかな秋を迎えていた。山々に囲まれたニョッヒラの秋の味覚を堪能しようと、いつも以上に張り切るホロとあきれ顔のロレンス。山での散策を終えて、籠いっぱいの土産とともに二人が湯屋に戻ると、入り口にはたくさんの人だかりが。「なんじゃ、よくわからぬが、色々な獣の匂いがしんす」
湯屋『狼と香辛料亭』にやってきた、時季外れの珍客たちの目的とは―。書き下ろし短編『狼と収穫の秋』に加え、電撃文庫MAGAZINE掲載短編4本を収録した、湯屋での物語第3弾。

イチャイチャイチャイチャ。わかった、もうわかったから勘弁してください、と言いたくなるくらいいちゃつくご夫婦。明らかに二人で旅していた時よりもいちゃついている二人である。あの頃はもう少し駆け引きみたいなものを二人して楽しんでいたのだけれど、今のロレンスはホロのこと好きすぎてたまらんというのを抑えも隠しもしないし、ホロが望むものをなんだかんだ言いながらも積極的に捧げまくってる。いやいや、いくらなんでも甘やかしすぎなんじゃないですか? とすら思っていたのですけれど、そうかー、ロレンスお父さんてばミューリがいなくなって寂しくなっていたのか。
その分、ホロを甘やかすことで慰めていたんですね。自分を甘やかさせることで寂しがってるロレンスを甘やかしていたんじゃよ、とドヤ顔のホロさんですが便乗して甘やかして貰っていたようにしか見えないw
いい加減太りますよ、賢狼さま。
久々に登場したミューリ傭兵団の団長さんが、ロレンスに負けず劣らずミューリ贔屓のお父さん的な立ち回りをしていて、ミューリが駆け落ちをしたと知って愕然としている様子に思わずフフフ笑い。頼もしい気のいい兄ちゃんだったのに、この人も何年経っても変わらんなあ。ミューリのこと姫、姫とえらい可愛がってくれているようで。未だに深い交流がある、というのはなんとも嬉しくなりますね。
未だに交流がある、というとホロとロレンスを結びつけてくれたあのエルサの近況も知れて良かったです。エヴァンともちゃんと結ばれているようでよかった。ってか、あっちは3人も子供生まれてるのかー。
でも、こんな風にエルサのように文で近況を送ってきてくれるか、もしくはニョッヒラに湯治に訪れてくれるか、という機会でもないとかつての旅で出会った人たちとの交流はもう無い。ロレンスとホロの旅はもう終わって、このニョッヒラから外に出ない、と思っていただけにラストの展開は思わず胸が高鳴ってしまいました。
いい加減立場も違いますし、帰るべき場所がある身、そしてロレンス自身もう若くはないのですけれど、それでもまだ旅に馳せる想いがあるなら。ただ待つのではなく、自分の足で懐かしい人々に会いに行くという能動を求める気持ちがあるなら、たとえ幸せの最中であっても心残りとして積もるものはあるんですよね。そういう気持ちを押し止めるでも共有してごまかすでもなく、ちゃんと後押ししてくれるホロは、掛け値なしの良妻なんでしょうなあ、こういうのって。
ちゃんと、留守中の宿の手配りについても考えてくれていたわけですし。
でも、このニョッヒラに腰を据えるようになってから以前よりもホロと同じ獣の人たちとの交流が増えているわけですけれど、思っていたよりもずっとたくさんの「獣」が人に混じって暮らしてるんだなあ、と実感しています。人族の隆盛によっていずれ消えゆく儚い存在なのかと昔は思い巡らせていたものですけれど、幾人もの古老たちによる苦労もあったのでしょうけれど、けっこうしぶとく人の世の中に紛れて生き延びていっているようなんですよね。ある種のノウハウやツテみたいなものも構築できているんじゃないでしょうか。獣同士でかなり密接にコミュニティめいた交流があるみたいですし。場合によっては、今後「狼と香辛料亭」はそうした獣たちの交流のハブみたいなものになる可能性もありそうですし。
ミューリの方の話に出てきた羊さんが語る夢の話のような人ならざる者たちによる国、というのは難しいかも知れないけれど、人の世の影で隠然たる影響力を及ぼす結社、或いはコミュニティ的なものが発展組織されて、現代までたくましく生き残ってもなんか不思議じゃない感じだなあ。
いつかの未来に至っても、ホロが寂しくても孤独にはならない想像の余地が広がっていく、というのはどこか安堵のようなものを抱かせてくれる。そういう意味でも優しいアフターストーリーだと思うんですよねえ、本作って。
さて、しかしこうなるとやはり以前の旅で出会った人たちとの再会を期待してしまうわけで。エーヴがバリバリやってるのはミューリ編で伝え聞こえてきているので、あとはやはりノーラが今どうしてるか、だわなあw

シリーズ感想

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 3 ★★★★   

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙III (電撃文庫)

【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 3】 支倉 凍砂/文倉十 電撃文庫

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賢狼ホロの娘・ミューリの旅、舞台は島国ウィンフィール王国へ!

聖職者志望の青年コルの旅の連れは、「お嫁さんにしてほしい」と迫ってくる賢狼の娘ミューリ。海賊の島から出た二人は、嵐に巻き込まれウィンフィール王国の港町デザレフにたどり着く。
教会が機能していないその町で、コルは「薄明の枢機卿」と呼ばれ、まるで救世主のような扱いを受けることに。
そしてコルはミューリの求愛に向きあうべく、自らを「兄様」と呼ぶことを禁止し、関係を変化させようとするのだった。
そんなコルたちの前に、イレニアと名乗る商人の娘が現れる。彼女はなんと羊の化身であり、“ある大きな計画”に協力してほしいと持ちかけてきて――?
……ちょっと待って。ちょっと待って。
長らく行方がわからなくなっていたホロの仇でもある「月を狩る熊」の情報がようやく、思わぬ所から出てきたわけですけれど、なんかスケールが桁違いなんですけど。
「月を狩る熊」って実は熊じゃなくて、ゴジラなんじゃないの? ほら、最近の日米各実写版もアニメ版のゴジラもわりとごっつくなって見方によっては熊みたいだし。
そうだよ、ゴジラだったんだよ、クマーは。でなければ、くまモン。
いずれにしても、新大陸の話が出てきたけれど、これ絶対に踏み入ったらあかん暗黒大陸なんじゃなかろうか。変に刺激してクマーが帰ってきてしまうと、いきなり話が「その日、人類は滅亡した」とかいうたぐいの話になりかねない、とすら思ってしまう馬鹿げた存在なんだけれど。ちょっと話を聞いただけでも。
それくらい、オータムさんが教えてくれたクマーの情報や、新大陸で目撃されたクマーの話って、ゴジラ規模なんですよね。なんで、海底に足跡残ってるんだよ。それも、巨大なクジラの化身であるオータムさんが、長らく足跡と気づかなかった、というくらいのデカさの。
いやだから、ゴジラだって、そいつ。

羊の化身であるイレニアが持ちかけてきた話、或いは彼女の野心であり、人ならざる者たちの夢とも言えるその話は、同時にウィンフィール王国がもくろんでいる国家事業の秘密を明らかにするものでもあり、コルは信仰の問題はどうしたんだ、と戸惑い憤ってるけれど、ぶっちゃけるとコルが最初区別していた2つの問題は決して同時に存在できないものではないんですよね。
どちらか一方の目的のために、片方の目的を踏み台にしてしまおうとしているのではなく、どちらも欠かせない両輪になろうとしていることを、コルは最終的に気づいたようだけれど。
いずれにしても、話は宗教改革や旧来の教会からのウィンフィール王国の離脱という問題に収まらない大きなものになってきてしまった。コルは薄明の枢機卿なんていつの間にか二つ名までついてしまって、中心人物の一人とも言える立場に追いやられてしまったのだけれど、その二つ名が身の丈にあわないとコル自身戸惑っているように、話のスケールもコル自身の身の丈を越えようとしているのではないだろうか。もちろん、それを誰よりも痛感しているのはコル自身なのだけれど。少なくとも、新大陸にまで足を踏み入れるほどの何かを、コルは持っているのか。
ミューリは、世界各地を旅して回りたいという願望はあっても、最終的にはあの両親の待つ温泉宿へと帰るつもりである。狼の化身であるミューリにとって、世界は自分の居ていい場所を見つけられないところではあるんだけれど、でも帰るべき場所はあるんですよね。だから、そこを捨ててまで終わりのない旅を続けることはできないし、新天地を求めているわけでもない。
イレニアが語った夢は、ミューリにとっても心躍るものだったかもしれないけれど、でもそこはミューリがたどり着きたい場所ではない。
でも、コルが行くとなったら、ミューリはどうするだろう。こればっかりはコルの胸三寸でありましょう。今までと同じ関係のままなら、ミューリはもうそこまでついていけない気がする。でも、コルがついてきてくれ、と願えるような関係になったら、ミューリはついていくでしょう。
まあその前に、関係がどうあれミューリを思ってコルがそのような決断をすることは難しいでしょうし、それが自分の役割かというとそこまで思い切るような出来事には遭遇していない。逆に言えば、新大陸を目指すに足るだけの理由を得てしまう展開も、決して否定できないのだけれど。

しかし、この世界における羊さんは、羊の化身は、どの人も覚悟極まってるなあ、と感心させられる。羊は無力どころか、新たな地平を切り開いていく開拓者のようじゃないか。
でも、よりにもよってイレニアさん。羊のくせに、「狼」にあれだけ惚れ込んでしまうなんて。かのオオカミさん、まったくもう相変わらずキレッキレだねえ。全然変わらず元気そうで良かったですよ。

シリーズ感想


狼と香辛料XIX Spring Log供 ★★★   

狼と香辛料XIX Spring LogII (電撃文庫)

【狼と香辛料XIX Spring Log供曄〇拜凖犧宗進諺匳宗‥天睚幻

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賢狼ホロと元行商人ロレンスが営む湯屋『狼と香辛料亭』。幸せと笑いがわき出ると言われる湯屋を舞台に描かれる、旅の続きの物語、第2弾が登場。
コルとミューリが旅に出てしまい、湯屋は慢性的な人手不足に。ロレンスは大勢の客が訪れる繁忙期に向け、スヴェルネルの騒動で出会った女性・セリムを新たに雇うことにする。実は彼女、ホロと同じ狼の化身なのだ。
新参者のセリムの前では、女将としても狼の化身としても威厳を保ちたいホロだったが、なにやら浮かない様子。
一方ロレンスは、そんなホロの気持ちを知ってか知らずか、湯治客が持ってきた特権状に夢中で──?
電撃文庫MAGAZINEに掲載され好評を博した短編3本に加え、書き下ろし中編『狼と香辛料の記憶』を収録!
幸せであるが故の焦燥か。刺激のない同じような日々の繰り返し。それが退屈というわけではなくて、本当に幸せなんだけれど、毎日が同じ繰り返しであればあるほど、飛ぶように過ぎていってしまうことに焦りを感じてしまう。
これは長い寿命を持ってるような種族とか関係なしに、普通の人も感じてしまうものなんですよね。というか、凄く分かる。すごく共感してしまう。現状に特に大きな不満なく、今に満ち足りたものを感じていればこそ、ついつい先のことを、失われてしまうだろう先のことを連想してしまって、どうしようもないのに焦りを感じてしまうんですよね。これって、二十代の若い頃や、逆に晩年に差し掛かった老年期では感じ得ない感覚なのかも。
もっと我武者羅に、日々追い立てられるように生きていれば感じない類のものなのかもしれないけれど、ある程度のんびりと余裕を持っていればいるほど、その余裕を上手く使えていないんじゃないか。もっと面白いことが出来るんじゃないか、と考えてしまう。それは手の届かないことではなくって、ちょっと頑張れば出来ること。ついこの間まで出来ていただろうことだったりするので、焦燥は実感を伴ってしまっているわけで。
ホロほど頭が良いと、そんな未来と出来ることに関して余計に鮮明に思い浮かべてしまえるから、なおさら焦燥は強いのかもしれない。幸せであればあるほど消せない焦り。なかなか解消できないであろうそれを、ちゃんと目ざとく気づいて、解消してしまえるロレンスの、老いてなお人間力が増しているこのいい男っぷりたるや。
そんなロレンスさんが、新たに働くことになった若い狼のメスなんぞにうつつを抜かすはずがない、とホロ自身もちゃんと分かってるにも関わらず、それでも不安にかられてしまうというのはこの人、幾つになっても乙女ですなあ。人当たりは良いくせに、近い位置に来られると途端にムズがるような人見知りなところがあるし。昔はロレンスはそんなホロの弱い部分を把握しきれていなかったのだけれど、これだけ長い間連れ添うと、ホロの強いところも弱いところも全部掴んじゃってるのでフォローが本当に上手いのだ。
そんなロレンスの行き届いた配慮というものも、聡いホロはちゃんと全部理解しているが故に、二人の関係たるや昔よりよっぽど糖度が弥増している。お互い、素直になっているというのもあるんだけれど、ホロ視点だとどれだけロレンスのこと好きなんだよ! と思わず叫んでしまいたいくらい、ベタ惚れな心境を吐露しまくっているので、正直たまらん!!
やたらと歳食ったと強調するロレンスだけれど、あんたまだ年齢的に私と変わらんからね。まだまだ若いんだからね。なので、まだまだ若い娘さん同様のホロさまのお相手をスルに疲れるほど老いてはいないのである。
ミューリが居なくなって、二人の時間が増えた以上、ミューリの妹様か弟が出来てもおかしくないなあ、これ。いや、実際それらしいことしてそうな描写もありましたし。ホロさんが狼になっていらっしゃる!!
けっこうカプカプ噛み付いてるのねー……。
【Spring Log】というタイトルの意味も明らかになり、ロレンスが自分が居なくなったあとも、ホロが幸せであり続けることを、願うだけではなく様々な手立てを講じていることがよくわかるお話でした。愛し、愛されている話だなあ。

シリーズ感想

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 供 ★★★   

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙II (電撃文庫)


【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 供曄〇拜凖犧宗進諺匳宗‥天睚幻

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港町アティフでの聖書騒動を乗り越えた青年コルと、賢狼の娘・ミューリ。恋心を告げて開き直ったミューリから、コルは猛烈に求愛される日々を送っていた。
そんな中、ハイランド王子から次なる任務についての相談が。今後の教会勢力との戦いでは、ウィンフィール王国と大陸との海峡制圧が重要になってくる。そのため、アティフの北にある群島に住む海賊たちを、仲間にすべきかどうか調べて欲しいというのだ。
海賊の海への冒険に胸を躍らせるミューリであったが、コルは不安の色を隠せない。なぜなら海賊たちには、異端信仰の嫌疑がかけられていたのだ。彼らが信じるのは、人々が危機に陥ると助けてくれるという“黒聖母”。不思議な伝説が残る島で、二人は無事任務を遂行することができるのか――。
トート・コルにとっての信仰とは。
前作の主人公ロレンスと今代の主人公であるコルの、商人と神学士という立ち位置の違いを顕著に感じさせられる話でありました。ロレンスの物語というのは、商売によってどうやって儲けるのか、というのが基本路線となり、その中に商人としての姿勢や誇り、現世利益を求めながらも誰もが幸せになれるWin−Winの結末を手繰り寄せようとする、人としての在り方を描くものでもあったのですが、この点コルはまず自分が儲けるという自己欲がなく、みんなが幸せになるため、という漠然とした目的を叶える拠り所として神の教えや信仰というものに人生を費やそうとしているのだけれど、商売ってのが損得がハッキリしている結果がわかりやすいものであるのに対して、コルが拠り所としているものは心の在り方によるものであるせいか、これという目に見える形での結果や実感を伴いにくいものでもあるんですよね。だからか、コルは目的と手段が逆転してしまったり、信仰というものへの拘りが信仰のための信仰、みたいになったり、答えがあるわけではないものに対して正しさ、正解を求めようとしてしまったり、と随分と足元が覚束ないのである。
これに対して、ミューリはコルに対して即物的な自分の幸せを求めるように、悪魔の誘惑のごとく囁きかけてくるのだけれど、コルの地に足の付いてないふわふわした様子を見るとミューリの言いたいこともよくわかるんですよね。でも、ミューリの誘い方だと思いっきりコルのことを甘やかしている、とも思えるわけで、この点常にロレンスに対して甘い言葉をささやきながらその実甘やかすことをしようとしなかった、一廉の男であることを求め続けたホロと比べると、ミューリってけっこう男をダメにするタイプの女なんかじゃないかと思ってしまう。
これ、コルが自分に対してひたすら厳しい人間だからこそ、ミューリがこうなっちゃった気がしないでもないのだけれど。
構図だけ見ると、まさに信仰に身も心も捧げようとする神の僕に甘言を弄して堕落を迫る悪魔の図、なんですよねえ。ただ、コルが厳しく突き詰めようとする信仰の形は、本来彼が求めていたものから外れていきそうなものだったのも確か。そもそも、彼が神学士として生きようと思った生まれ故郷での出来事や、前巻で抱いた世界に居場所を持たないミューリに、幸せと安息を与えてあげたい、という想い。それを叶えるために、神の教えを紐解き、世界に伝え広めていきたい、という目的が、ひたすら信仰の在り方というものに塗りつぶされていこうとしていたピンチでもあったんだよなあ、今回。
かくの如く、求める先も見失って右往左往するコルですけれど、本来賢く聡明な彼はハッキリとした達成すべき目的さえ定めれば、そこに行き着くための方策を、わりと速攻で導き出せるんですよね。その手段も常識にとらわれず、ロレンスやホロ譲りの大胆さでこねくりまわせるのに、その柔軟さを発揮するための土台がふわふわしているものだから、普段はどうしても頑なな固定の道を歩もうとしてしまう。
向いてない、とまでは言わないけれど、コルってわりとわかりやすい利益や具体的な結果を伴う事例の方が得意なんじゃないか、と思えてしまう。ロレンスやホロと旅していた頃もそうでしたし。
でも、だからといって楽な方を選んでしまうと、だめになってしまうというコル自身の気持ちもわからないでもないんですよねえ。この場合、ダメになってもミューリが居てくれたらそれはそれで十分幸せになれるんでしょうけれど、それは幼い頃から志し続けたものを諦めた幸せになってしまう。かと言って、一人で居るとひたすら自分を追い詰めていきそうなだけに、ホロがミューリを彼につけたのは大変によくわかるのである。
今回の一件で、コルも自分の未熟さと危うさを相当に思い知ったんじゃなかろうか。身の程を知る、というのは自分を卑下するという意味合いだけじゃなくて、自分をよく理解することで新しい自分の可能性を見つけることにも繋がると思うんですよね。自分を知れば、これしかないと思っていた範囲がどれほど矮小で固定観念に縛られたものだったかにも気づくことが出来るし、自分にとって何が大切なのか。自分がこれから進もうとしている道に、誰が必要なのか、というのも思い知ることが出来る。
コルの、ミューリを折に触れて故郷に返そうとする姿勢、ミューリを思ってのことなんだけれど、ミューリの気持ちや覚悟を蔑ろにしているのみならず、ミューリにとってコルという男がどれほど掛け替えのない価値のあるものなのかを、コル自身がコルを評価していないようにも見えていただけに、結構不満ではあったんですよね。コルにとってミューリは必要ないというよりも、ミューリに自分は特に必要ないんだ、と思っている素振りが。
それに対して、ミューリは端的に、海に落ちた際の例え話で一切合財を言い表していて、彼女のコルに対しての愛情のみならず、コルに対する危惧を具体的に察知している聡明さがうかがい知ることが出来るんですよね。
こんなん、敵うわけがないじゃない。
このまま行くと、信仰や神の教えに対する変節ではなく、コルにとっての正しい信仰に至ることでミューリが念願を叶える、という形へと物語は流れていきそうだなあ。それがもっとも幸いなんだろうけれど。

1巻感想

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 ★★★★☆  

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 (電撃文庫)

【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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聖職者を志す青年コルは、恩人のロレンスが営む湯屋『狼と香辛料亭』を旅立つ。ウィンフィール王国の王子に誘われ、教会の不正を正す手伝いをするのだ。そんなコルの荷物には、狼の耳と尻尾を持つ美しい娘ミューリが潜んでおり―!?かつて賢狼ホロと行商人ロレンスの旅路に同行した放浪少年コルは青年となり、二人の娘ミューリと兄妹のように暮らしていた。そしてコルの旅立ちを知ったお転婆なミューリは、こっそり荷物に紛れ込んで家出を企てたのだ。『狼と香辛料』待望の新シリーズは、ホロとロレンスの娘ミューリが主人公。いつの日にか世界を変える、『狼』と『羊皮紙』の旅が始まる―!
まさか続編が出るなんてなあ。嬉しい、嬉しいよ。主役はホロとロレンスの旅に同行し、ロレンスの実質的な弟子として、或いは二人の子供のようだったあのコル。見違えるような立派な青年に成長したコル、それこそホロと出会った頃のロレンスと変わらない年齢になってたのか。
聖職者を目指すという夢は変わらないまま、ロレンスとホロの湯屋でずっと働いてたのね。彼のこの素直なままの成長具合を見ると、どれほどホロとロレンスに可愛がられて育ったのかがよくわかって、思わず微笑んでしまった。でも、妙に堅物に育ってしまった、特に女性に対して免疫なさそうな育ち方してしまったのはこれ、多分ホロのせいだよなあ。よっぽど過保護に構ってたんだぜ、きっと。旅の間のコルへの接し方を思い出すと、容易に想像できてしまう。ある意味娘のミューリよりも過保護にしてたんじゃないだろうか。でないと、湯屋
で働いていて相応に女性に接する機会、それも水商売系統の女性とまみえる機会も珍しくなかっただろう境遇であの免疫の無さはないでしょう。ミューリ対応にリソース全振りしてるっぽいもんなあw
そのミューリである。いやあお転婆だ。これぞおてんば娘という天真爛漫さで、容姿こそホロにそっくりだけれど性格はけっこう違いますよね。でもあの強かさと抜け目の無さはさすがホロとロレンスの娘だ、という強者っぷりで、兄貴分のコルを振り回すのですけれど……ホロのように尻に敷くのではなく、結構この娘コルのこと立てるのよねえ。ある意味ホロと違った甘え上手ではあるのですけれど。
そして、ホロとはまた違った意味で拠り所を一人の男性に得ているんですよねえ。ホロの場合は長い長い有給の旅路の中での安息をロレンスに求めたわけだけれど、まだ見た目通りの少女であるミューリは人間と狼のハーフであるという自身の存在の立脚点をコルに得ているのである。人間ではない周りと違う存在である、本性を秘密にし続けなくてはならない自分が、この世界に居て良いのだという許しを、彼女はコルによって得ているのだ。自身の存在の肯定、ミューリをミューリ足らしめたものこそ、コルの絶対味方宣言なんですよね。今のミューリを形作ったものの根源こそは、コルなんですよね。そりゃあ、ミューリにとってコルは唯一無二だわ。
生まれたときから側にいたから自然に、という曖昧な流れではなく、ミューリとしては絶対的な意思と必然によってコルでなければならなかったわけなんですよね。そりゃあ、どこまでもどこまでも、住み慣れた街をあとにしても、愛する両親に別れを告げてもコルと離れられなかったのも理解できる。
時系列が同じロレンスたちが主役の方の番外編で、ミューリの出奔が家出でも物見遊山でもなく「駆け落ち」と認識されてしまっていたのも、これは無理からぬ話だなあ。だって、当事者であるコルと無駄な抵抗をしているロレンスを除けば、誰からどう見てもそして事実として駆け落ちそのものだもんなあw

しかしだ、今のコルは夢追い人。コルを追いかけついてきたミューリだけれど、兄様の視線はいつだって遠くを見つめていて、なかなか自分の方を見てくれない。寂しい思いをすることもしばしばで、このあたりの構い方はまだまだミューリはホロには敵わないなあ、と。いやミューリの場合はコルに対して遠慮と言うか配慮がたっぷりあるうえに、ホロみたいにグイグイと絶妙な押し引きがまだ経験不足で出来ないのだから仕方ないのだけれど。それに、コルってばあれだけいつも夢の方に熱中しているくせにミューリのことは頭の片隅においていて絶対に忘れてないんですよね。ちゃんと、見るべき時にはミューリの方を振り返って彼女のことを見てくれる。
ほんと、出来た青年である。そりゃあね、このちょっと頼りない兄様のためなら、なんでもなんでもしてあげよう、という気になっちゃうわなあ。淡い思いに一杯一杯になってるミューリの可愛いこと可愛いこと。子供っぽいといえばそうなのかもしれないけれど、幼いながらに自分の想いに本当に一途で一心不乱で、この一生懸命さは愛しくなります。
コルの方も、さすがはロレンスの薫陶を受けて育っただけあって、ただ世間知らずの堅物の学者もどきではなく、此処ぞというときには商人視点の視野の奥深さや、純粋さのなかに駆け引きを駆使するクレバーさも持ち合わせていて、まだまだミューリが自分がいないと駄目だなあなんて思ってしまう頼り無さや青臭さだけではなく、決めるときは決める頼もしさも備えていて、ほんと良い青年に育ちましたよ。
さいごの、王子がずっと抱えていた秘密に関してはちょっと反則ですよね。あれはコルが気がつかないのも仕方ないですよ。なんでミューリがあれだけピリピリしていたのかも納得できて、思わず微苦笑。コルさんや、この妹さんまじ可愛いですよ、もう。

シリーズ感想

狼と香辛料 18.Spring Log ★★★★☆  

狼と香辛料 (18) Spring Log (電撃文庫)

【狼と香辛料 18.Spring Log】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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賢狼ホロと、湯屋の主人になったロレンスの"旅の続きの物語"が、ついに文庫で登場。
ホロとロレンスが、温泉地ニョッヒラに湯屋『狼と香辛料亭』を開いてから十数年。二人はスヴェルネルで開催される祭りの手伝いのため、山を降りることになる。だがロレンスにはもう一つ目的があった。それは、ニョッヒラの近くにできるという新しい温泉街の情報を得ることで――?
電撃文庫MAGAZINEに掲載され好評を博した短編3本に加え、書き下ろし中編『狼と泥まみれの送り狼』を収録!
ホロとロレンスの"幸せであり続ける"物語を、ぜひその目でお確かめください。
こ、コルくんてば、ずっとこんなダダ甘夫婦の傍らにいたのか!? 教育に悪すぎる気がするんですが。
いやね、ホロとロレンス、夫婦になって落ち着いたのかと思ったら、こいつら旅してる頃よりも明らかにいちゃつき度が上がってるんですけれど!! 上昇してるんですけれど! 加熱してるんですけれど!!
旅してた頃は、まだこうなんというか、二人の間で駆け引きみたいなのが成立していて、恋の押し引きを楽しんでたんですよね。ところが、夫婦となった今となっては、ロレンスはホロの甘えを全部全部ガバッと両手広げて受け止めちゃってるし、ホロもロレンスを試すようなことはしないで全力で甘えるわ、甲斐甲斐しく世話をしてあげるわ、と新婚か!! もう娘があれだけ大きくなってるのに、まだ新婚気分か!! あかん、想像以上に夫婦生活がうまく行き過ぎてる。お互い、ちょっと相手のこと好きすぎやしませんかね?
ああ、考えてみたらこの本の時期って、もう一冊の娘ミューリとコルが主人公と時系列的におんなじで、つまり息子と娘が家を出て久々に夫婦二人きりになった時期でもあるんですよね。そりゃ、開放感に任せて普段にもましてイチャイチャするかー……いやでも、ニョッヒラの人たちの反応からして、あんまり普段と変わってなさそうだけれど。一応、ホロは殆ど家から出ずに村の人にも姿を見せないようにしているみたいだけれど。
それにしても、それにしてもなあ、まさか若い頃よりイチャイチャしてるとは思わんかったわ。そんな両親見て育ったミューリがどんな娘に育ってしまったのか……。まだ、あっちは読んでないんですけれど、読み切りの方で少しニョッヒラに居る頃のミューリとコルが描かれてるんですけれど、なんかすげえ娘に育ってるなあミューリ。コル、絶対太刀打ちできないじゃん、これw 既に手玉に取られまくってるんですが。
いずれにしても、夫婦として想像以上に完成していたホロとロレンス。特にホロは、賢狼ホロとしてよりも、ただ一人の男を愛する女としてのスタンスを確立して、本当に幸せそうで良かったなあ、と思っていたのですが……そんな彼女を揺さぶる大きな事件がラストに起こってくるわけです。
こういう時、ちゃんとロレンスが頼りになるんだよなあ。力づくではどうやったって解決できないようなことを、ロレンスは何の力もない商人としての立場から、見事に打開していってしまう。ホロはロレンスは自分が育てた、なんて言ってますけれど、ニョッヒラに至るまでの事件もそうだけれど、育てた以上に育ってしまって、もうベタ惚れせざるを得なかったよねえ、これ。改めて惚れ直すはめになっちゃって、羨ましいことであります。
まあ、その代わりというわけじゃないのですが、若いメスを囲うことになってしまって、ホロさんぶーたれてますがw
ニョッヒラの湯宿の主人として、同じニョッヒラの村の人たちにも十年以上経ってようやく仲間と認められはじめ、ベタ惚れの嫁さんとイチャイチャし通りの充実した毎日を送るロレンス。まさに、人生謳歌してるなあ。
それに比べたら娘が駆け落ちしてしまった、なんて些細な事ですよ、うん。……やっぱり、傍目にはあれは駆け落ちなんだよなあ。いいじゃん、相手は可愛いコルなんだから、と割り切れないロレンスの父親としての葛藤が、「おかわいいこと」なのですが。
いつかコルが戻ってきて、宿を継いでくれてしかも娘も貰ってくれるとか、将来設計としても最高のはずなんですけどねえ、理屈じゃないんだなあ、これ(苦笑


シリーズ感想

マグダラで眠れ 8 ★★★★   

マグダラで眠れ (8) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 8】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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クラジウス騎士団の追っ手が迫る中、クースラたちは、フェネシスの一族"白き者"たちが起こした大爆発により、一夜で滅んだという旧アッバスに向かうことに。
空からやってきたという白き者の真相を明らかにすることで、クースラたちは彼らの行方を探ろうとする。空を飛ぶ方法、なぜ町が滅んだのか――全ての謎を解き、真理のさらに奥へ。そしてその先にある、理想の世界「マグダラの地」を目指して。
仲間たちとの実験と研鑽の日々に、心地よさを覚えるクースラ。だが、クースラたちの持つ新たな技術を狙ってアイルゼンが現れたのだった――。

これもうクースラ、フェネシスのこと好きすぎじゃね? とりあえず寝る時は常時抱きまくらなんですね? 眠らない錬金術師を安眠させる抱きまくら、素晴らしい。
あれだけひねくれていたクースラに、これだけ素直に、を通り越して赤裸々にお前が大事だ、大切だ、離したくない、という内容の言葉を連呼させるフェネシスって考えてみると凄いよなあ。クースラ、自分がどれだけ恥ずかしいこと言ってるか自覚がないのか、それとも恥ずかしいとも思わなくなっちゃってるもんなあ。ある意味男をダメにする魔性の女、とも言えるのかもしれないけれど、ダメどころか男としても錬金術師としても柔軟に成長させ、奮起させる燃料になっているわけで、とびきりのイイ女と賞賛するしかない。
とはいえ、アイルゼンに窘められたようにクースラのロマンチストとしての側面は恐らくフェネシスとの出会いの頃からしても、加速してるんでしょうね。あの頃のクースラたち錬金術師の好奇心は業や妄執に近いものだったように感じていたので、質としてはより純粋なものに昇華されてきたのかもしれないけれど。
これだけ非科学的な観念を否定し、現実的な論理に基づいた現象による結果を追求する錬金術師、という生業に勤しみながら、クースラたちって決して現実主義者ではないんですよね。あの、白き者たちの起こした大爆発の理由について、彼らが幾つもの推論を熱く語る中に一度たりとも「事故」という要素が出てこずに、本気で違う土地へと空を飛んで旅立って行ったのだ、というのを信じているのを見てると、こう凄くロマンチストなんだなあ、というのをしみじみと思ったんですよね。そして、今の彼らはまさにその思い描くロマンを実現してきた只中に居たんですよね。だとすれば、自分たちのロマンに酔いしれていた、というのも宜なるかなというものじゃありませんか。
それに冷水を浴びせたのが、アイルゼンだったのですが。
残酷なようですけれどアイルゼンの提案というのは、ビックリするくらい友好的だったと思うんですよね。友好的どころか親密ですらあったかもしれない。現実を見ろ、という彼の言葉は辛辣ではあるものの、提案の内容を含めてクースラたちがショックを受けるほどにはクースラたちをぞんざいに扱ってないと思うんですよね。利用する、駒として使うみたいな冷めたものではなく、もっとこう「自分とも遊ぼうぜ」というような、いつまでも自分たちだけで遊んでいないで、現実を見て、その上で己のフィールド上に舞台を用意するからそこで一緒に遊ばないか、というお誘いだったと思うのである。もちろん、有無を言わせぬ断る余地を持たせないものではあったのでしょうけれど。
だからこそ、最後のクースラの発見であり概念の大どんでん返しであり、堂々としたあの宣言は、アイルゼンの提案に対してあんたの舞台で一緒に遊んでやる、でもその舞台そのものをあんたの知ってるものとは根本からひっくり返してしまうことになるだろうけど、もちろん付き合うよな!?
という、逆にお誘いを掛けるようなものに見えたんですよね。反抗でも対立でもなく、共犯者であり同志であり仲間へのお誘い。固定観念であり生きる上での土台となっていた概念を揺さぶられ、それが覆されていくのを楽しいと思ってしまう業。そう、アイルゼンもこれに乗ってしまう以上、書籍商のフィルさんと同じになってしまうわなあ。

白き者たちの行方。それに大胆な仮説を示し、この世の常識を引っくり返す大勝負に錬金術師として、いや科学の徒として、というべきか。挑む決意を固めたクースラたち。
これにて白き者たちの軌跡を追いかける第一部は完結、という形らしい。どうやらこれで完結ではなく、まだ第二部が続く可能性はあるみたいだけれど、ともあれ人として完全にダメでアウトな人間だったクースラたちが、一皮も二皮も剥けて真っ当な夢追い人になっていくさまは、フェネシスにずぶずぶにデレていく様子も含めて非常に楽しかった。
より大きいスケールの常識を覆す錬金術師としての大勝負となるだろう第二部も読みたいですねえ。

シリーズ感想

マグダラで眠れ 7 ★★★★   

マグダラで眠れ (7) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 7】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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錬金術師たちの次なる目的地は、太陽の召喚により一夜で滅んだというアッバスの町。クースラは、長く旅を続けていく中で巡り合った旅の同伴者たちに、居心地の良さを感じていた。その気持ちを振り払うかのように、天使が残した『太陽の欠片』の調査を始めるクースラの前に、書籍商を名乗る男フィルが現れる。フィルもまた異端審問官アブレアが残した伝説の足跡を追っており、アッバスの町に古くから伝わる『白い悪魔の生贄の儀式』こそがその手がかりではないかと語る。儀式が行われる祭壇を調査するうちに、伝説の真相に近づいていくクースラたち。だがその時、思いもよらない事態が彼らを待ち受けて―?
ああ、この書籍商のフィルってスピンオフ作品の【少女は書架の海で眠る】の主人公だったフィル少年なのか。そりゃ、クースラとも意気投合するよなあ。おんなじタイプの業の持ち主だし。クースラとしても一番共感を持ててしまうタイプの夢追い人なんじゃなかろうか。
しかし、随分とふくよかというか貫禄がついてしまって。すっかり青臭さは消えて強かな商人らしさを纏うようになったけれど、むしろ自信と実力がついた分、思う存分夢を追い掛け回しているようなキラキラしてる感が出ていて、充実してるんだなあ、と。
しかし、フィルがこれだけ大人になっているとなると、あの作品でヒロインだった少女はどうしてるんだろう、という方にやっぱり意識は向けてしまうわけで。その話はあるのかなあ。

さて、クースラたちの旅だけれど本当にクースラは丸くなった。彼だけじゃなくウェランドまでがすごく安定してきてるんですよね。フェネシスのことだけではなく、ウェランドとイリーネの四人をひっくるめてこうして一緒に旅をし、謎を探求する時間を掛け替えのないものと感じ始めたクースラ。餓えた獣のようにガツガツと真理を探求し続けていた危険な男の陰はそこにはなく……しかし、当人たちのメンタルが安定するのとは裏腹に、彼らをひごしてきた神殿騎士団の方がどんどん立場を崩壊させてってるんですよね。竜のカラクリを復活させたことで、現地の北方派遣軍の方は持ち直したものの、現場の勝利だけではどうにもならない大きな事態が本拠の方で起こり、その激動の余波がクースラたちの元まで押し寄せてくることになるわけだ。
クースラが見つけたマグダラは、まだ容易に失われかねない脆いもので、見つけたからこそクースラは必死でそれを守らなくてはいけなくなったのだけれど、それを楽しく嬉しいことと思えるならば、幸せなんだろうなあ。
いや本当に、ちょっと幸せ満喫しすぎてませんかね、クースラさんw
もうフェネシスに対してデレッデレじゃないですか。友達と別れることになったり、色々と心細い環境になることで落ち込むだろうフェネシスに、俺を頼れよっ、なんて言って慰めようと、イリーネにアドバイスまで貰ってキリッと待ち構えていたのに、成長したフェネシスは全然頼ってきてくれなくて、めっさ拗ねてるクースラさんがちょっと可愛すぎやしませんかねw 構ってちゃんか!
でも、変な見栄をはらずに自分をごまかさずに、素直にイリーネに頭さげて助言してもらったり、自分からフェネシスにイチャつきに行ったり、とこの男わりとストレートなんだよなあ。賢さを抉らせて迂遠に自分たちの気持ちを偽りまくっていたホロとロレンスのカップルと比べると、ほんとこのクースラとフェネシスは不器用だけれど分かりやすくイチャイチャしてくれるので……いやまあどっちも同レベルでこっ恥ずかしいんですがw
気持ちに余裕が出来ると、人間関係まで余裕が出てくるのかウェランドとさえ、なんかイチャイチャしはじめるし。なに、この思わず目があったら微笑み合ってしまうような熱々さはw おまえら、もっと刺々しい信頼できるのは錬金術士としての在り方だけで、人間的には殴り合い殺し合い上等、な関係だったのにいつの間に、こんな普通の親友みたいな関係になってたのかしら。
まあウェランドからして、ヤクキメてるんじゃなかろうかというくらい危なっかしい何をしでかすかわからない剥き出しの刃物でお手玉してるようなヤバイ感じがしてたのが、いつの頃からか気心がしれて背中も預けられる、うまいこと気も使ってくれて、フェネシスやイリーネと拗れかけても仲裁してくれたり、と頼りになる人になってたもんなあ。
まったく、恥ずかしいくらいに息の合う関係になっちまって。
人間関係も充実してしまったクースラですけれど、それと錬金術士の業はまた別で、新しい発見を前に実験に嬉々として没頭する姿は以前と何の変わりもなく、本質的にクースラもウェランドも純正の研究者なんだよなあ、と改めて思い知ったり。イリーネも、これまた生粋の鍛冶師だし、自分たちのやりたいことをやりまくれるって、そりゃ充実してるし楽しいし、その上で仕事仲間は同志であり友人であり愛する人であり関係は円満極まる、となったらもう……羨ましいくらいに満たされてるよなあ、これ。
でもだからこそ、今彼を満たしているもののどれかが永遠に失われてしまったら、今度こそ悲しいだけでは済まないんだろう。大事なものを見つけたからこそ、それを守るための必死さを得たのだ。

つまり、クースラがフェネシスを好きすぎてどうしようもないw

シリーズ感想

マグダラで眠れ 6 3   

マグダラで眠れ (6) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 6】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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かつて天使に作られた町で紡がれる、ガラス職人の青年と町娘の恋の行方は――。

異端審問官アブレアの足跡を辿るクースラ達は、天使が降臨し、金銀を生み出す灰を授けたという不思議な伝説の残る町ヤーゾンを訪れた。町の教会でアブレアの署名を見つけたクースラは、町に語り継がれる伝説が真実であると確信を得る。
さらにクースラは、調査のため立ち寄った薬種商の娘ヘレナから、ガラス職人たちが伝説を紐解く手がかりを握っていると訊き出す。だが同時に、町を取り巻くガラス職人達と町の間の確執を知ることとなるのだった――。
かつて天使に作られた町で、眠らない錬金術師が恋に奔走するシリーズ第6弾。
クースラ、なんか色ボケしてないか、こいつ(苦笑
浮かれているとは言わないけれど、今のクースラって満たされてしまっているかのようで、かつてのようなガツガツと貪るように錬金のネタにかぶりついていく飢餓感が感じられない。とはいえ、尖り他を顧みないその生き方は危ういの一言で、夢のためなら自分の身も他者の身もまとめて破滅させかねない危なっかしさがつきまとっていたのだけれど、本当に大事なものを手に入れた彼は、随分精神的にも安定して余裕が出てきているようだ。それが、果たして錬金術師としてプラスなのかマイナスなのかは未だわからない。フェネシスという大事なものを手に入れたあとの方が、彼女を守るために実際に大きな功績を手繰り寄せているわけだし。
ただ、フェネシスを可愛いと言うか言わないかで一喜一憂、悩み落ち込み張り切り満足している様子を見ていると、あの「利子」と自称し忌み嫌われた錬金術士も、丸くなったなあ、と思わざるをえない。
なんか、商人としての強かさを練り上げていったロレンスよりも、クースラの方が随分と甘いんじゃないかと思えてきた。フェネシスのことだけじゃなく、まったく無関係で会ったばかりの街の人間の、内紛に関わるような恋模様におせっかいを焼いてしまうとか、思わず自分とフェネシスの関係をカップルに照らし合わせてしまったとはいえ、肩入れする理由としては随分と大盤振る舞いである。むしろ、夢見がちだったフェネシスの方が、現実の厳しさを理解して、二人が結ばれない事は仕方ないことなのだ、と物分りの良いところを見せていたのに。
フェネシスは、クースラについて幻想を抱かなくなった、という点でむしろよりクースラに深く愛情を抱いているのが見て取れるのに対して、クースラはもしかしてフェネシスにもっと自分に幻想を抱いて欲しいのか、と思うような張り切りっぷりを見せてるんですよね。単純に、好きな娘にいいところを見せたい、というだけなのかもしれないけれど、見栄張りを見栄だけで終わらせずに現実に手繰り寄せてしまうのが、彼の凄いところというか、今回については運も良かったのだろうけれど。材料自体は揃ってたわけですし、イリーネも独自に発見してたわけですしね。これはクースラやイリーネが凄いというだけではなく、内部で完結してしまっていると気づかないことでも、外部からの視点で新たな発見があるケース、というものでもあるのでしょう。技術を内部で抱え込むことで、逆に発展を遅らせてしまう、というのはこの作品内でのギルドの秘密主義でも度々垣間見えてることですしね。
ガラス職人のギルドは必要に迫られていたからとはいえ、新たな技術を得ようという意欲がある分、技術を継承するだけに終始して、何一つ付け加えることも許すまいとしていた、イリーネが居た鍛冶ギルドなんかよりも随分マシにも見えたけれど。あれも、ひとつの街に籠る閉鎖的な組織ではなく、街から街に渡り歩く漂泊の性質を備えていたからこそ、外からの風を受ける素養があったのかもしれないなあ。

しかし、これだけラブ寄せしてくるとは、シリーズ当初からは想像もしなかったけれど、クースラの恋愛不器用さは殆ど成長のあとが見られない! イリーネがやきもきしてあれこれと手をつくしてくれるのをもうちょっと申し訳なく思うべきだと思うよ、クースラくん。あれで彼女、複雑な思いを抱えている部分もあると思うし。ただ、クースラが面倒なままな分、フェネシスの方が大人になったというか、この人は絶対に自分を裏切らないという確信を得たからなのか、あたふたと無意味に慌てなくなって、クースラの無様を鷹揚に受け入れることができるようになってきたのも大きいんだろう。でないと、もっと頻繁につまらないことでこじれてただろうし。段々と主導権取られはじめているの、きづいてるんだろうか、この男。

シリーズ感想

マグダラで眠れ 5 3   

マグダラで眠れ (5) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 5】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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炎を吐く竜を使い、カザンの町から脱出した騎士団とクースラたち。港町ニールベルクで各地から逃れてきた騎士団と合流し、起死回生を図ることになる。しかし、ニールベルクにはある問題があった。神の祝福を授ける教会の鐘楼が無いのだ。製造が上手くいかず、作る度壊れてしまうのだと言う。そんな中クースラは、フェネシスの一族の手掛かりを得る。新たな発見に高揚するクースラだが、騎士団から呼び出され、鐘を作るよう命じられてしまう。鐘の製造の失敗、それは即ち、“破滅”を意味していた―。眠らない錬金術師の本格ファンタジー、神に見放された町を舞台にした第5弾!
やはり前回で、一人で生きるよりもたとえ死ぬかもしれなくても二人で居る事を選んだことで、クースラとフェネシスの「二人で生きる」という在り方がより顕著になった5巻でした。ほんとうの意味で相棒になった、と言う事なんでしょうネ。クースラの考え方の前提条件が最初の頃とまるで違っているのです。何をするにしても、まず自分とフェネシスが一緒に在る事を大前提として物事を考えるようになってきていて、同時にフェネシスの扱いも対等に近い扱いに変わっているのです。勿論、彼女の無知な部分や危ういところ、ダメな部分については前と同じく躾けていってる感じなんですけれど、彼女の考え方や発想、自分には理解が及ばない行動についても、非常に信頼を置いているのが随所に見て取れるのです。もう自分と対等の、自分の身を預けることも出来る相棒として認めている言動が常に見えるようになってきた。
それに呼応するように、フェネシスも自分の言動に対して自信を持つようになってきて、面白いというか可愛いことに彼女の場合、その自信が過信になるのではなく、よりひたむきに努力を重ねるようになるのと同時に、クースラに対してうまく甘える事が出来るように繋がってるのです。クースラの反応を怯えながら伺うのではなく、純粋に楽しみ、擽ったがるように噛みしめるようになってきた。
結果として、出来上がるのはイチャラブカップルである……激甘である。
フェネスシを自分の膝の上に座らせて、一緒に読書とか……どれだけやねん!!

ただ、クースラの場合はフェネシスという守るものが出来てしまった分、姿勢に守りが入ってしまい、それが余計に事態を悪化させてしまう、というこれまでの彼ならばまず選ばないだろう悪手を選んでしまうんですね。危険を回避して慎重に立ちまわったところ、逆に進退の効かないところに追い込まれてしまうという形で。
奇跡は、起こらないからこそ持て囃されるものであり、一度現実に起こしてしまえば、それはもはや消費されていく代物に成り果てる。
結局、クースラは自分たちが作り上げた奇跡のあまりに上手く行ってしまったことに調子に乗っていたのだろう。というよりも、自分とフェネシスが二人で生きて行く事に対して、すべての物事が祝福してくれたかのようにうまく回り出したことに、浮かれていたというべきか。
しかし、浮かれたしっぺ返しは順当に彼らを見舞い、しかし彼らが築き上げたものはすべては空虚な代物ではなく、確かに積み上げられ、祝われたものがあったのだという事実も浮かび上がってくる。
冷徹に自分たちを道具として消費し、使い捨てるだろう立場であり人物であったはずの騎士団の上司アイルゼンが、損得勘定とは別の好意をクースラとフェネシスに示してくれたことなど、その最たるものだろう。彼のよううな人間の好意なんて、それこそ神の奇跡に近しいものに見える。
そして何より、守られる存在だったはずのフェネシスこそが、窮地に陥ったクースラを支え、さらに二人で生きる道を拓いてみせた事でしょう。彼女は、クースラの相棒としての自分への信頼に見事応え、さらに二人の間に芽生えているものが、愛情というものなのだということを、この錬金術士に認可させたのです。ほんと、大した女ですよ、このお嬢さんは。イイ女になったなあ。

さすがに最後の詐術は色々と言い訳がきかないものになってしまっただけに、今度は街を離れて旅の空、となりそうだけれど、イリーネとウェランドはどうするんだろう。

シリーズ感想

マグダラで眠れ 44   

マグダラで眠れ (4) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 4】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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「諸君に、帰る場所はない。故に、進む以外に道はない」
 新天地を求め、クラジウス騎士団と共に、改宗宣言のあった異教徒の町カザンに入植したクースラたち。異教徒の技術を得るため、まずは騎士団の手が伸びる前に、町に残る文献を読みあさることにする。そこでクースラたちは、カザンに残る竜の伝説を知る。そんな中クースラたちは、新たな工房を得ることに成功。カザンの町で、仲間四人での穏やかな生活が始まるかと思われた。だがその矢先、彼らにある過酷な運命が降りかかり―?竜の伝説が残る町で、クースラたちは大きな決断を迫られる。シリーズ第4弾!
やだもう、完全にラブラブじゃないですか、お二人さん。
これまではまだイチャイチャ・レベルだったはずなんだけれど、それってまだお互いの反応を手探りで確かめ合うような伺いあう段階とも言えたんですね。意識せずに相手の反応、相手と触れ合い心の動きを楽しんでいるような。
それはそれで十分甘やかな関係ではあったんですけれど、でもまだどちらかというと少し間をあけて眺めている、というレベルの距離感だったわけです。これはクースラだけじゃなくてフェネシスも。自分がいろんな行動を取ることに対して様々な顔、表情、態度を見せるクースラを楽しんで眺めていた、そんな段階だったと思うのです。フェネシスについては、クースラに自分の存在を認めてもらうのに必死だった頃に比べれば、本当に余裕出来たと思うんですけどね、この段階でも。余程、クースラに一杯食らわし認めてもらったことが良かったのでしょう。
ホントにね、この状態でも十分甘やかだったのに……。
あの、二人が別れ別れにならざるを得ないと覚悟し決断した末に、それでも一人で確実に生きるよりも二人で死ぬ可能性を乗り越えよう、という道をクースラが選び、フェネシスが求めた時、苦闘の道を二人で歩こうと決めた時、二人の関係はさらにもう一段深みを増し、距離がなくなり、本当の意味で寄り添う関係になった気がします。具体的にはラブラブに!!
ラブラブに!!
イリーネ姉さんは本当にいい仕事したなあ。なんか、彼女が加わったことで人間関係がすこぶるよどみなく回るようになった気がします。フェネイスも同性の友人であり仲間が出来たことで随分と心に余裕ができたみたいですし、折に触れて面倒くさいクースラやフェネシスの背中を押し、発破をかけ、水をぶっかけて目を覚まさせ、と七面六臂の活躍でしたし。それでいて、彼女自身は隙だらけで何でもできるお姉さんキャラみたいな嫌味もないですし、何というかウェランド含めて四人で一組というパーツにしっかりハマりこんだ感じです。ウェランドも当初の危なっかしさというか何を仕出かすかわからない危険な感じがだいぶなくなって、丸くなりましたしねえ。

これから入植するはずだった侵略した異教徒の地が、それを治める異教の女王が改宗したことで同じ宗門の街となってしまい、戻る場所もなくハシゴをはずされてしまったかのように見えた前巻の終わり。幸いにして、街への入植はそのまま行われることになり、クースラたちはまだ見ぬ新技術や未知の知識を求めて街へと飛び込むことになるのだけれど、むしろ街に駐屯することが出来たせいで袋のネズミに陥ってしまう、という街に入れないというよりも危機的な状況に。入った段階で長居は出来ないんじゃないか、という雰囲気が漂っていましたけれど、状況はさらに予想していたよりも最悪でした。辺境の異教徒を相手に団結していたはずの同じ宗派の味方が、どんな政治的策謀が渦巻いたのか、異教の女王が改宗したことで敵味方が逆転し、異教徒との対決が気がつけば同じ宗門内の異端を討伐する、という形に敵味方をシャッフルしなおして定まっていたという。これは、騎士団としては青天の霹靂もいいところだわなあ。と、同時に政治闘争において完全に後れを取ってしまった、ということでもあり……この辺りの騎士団が異端とされてしまうのは史実のテンプル騎士団そのままか。騎士団が金を握り財務機関として怪物化している、という情報を聞いた時点でああこれはテンプル騎士団だな、と想像はついていたのですが、隆盛を極めていた騎士団の斜陽の時期がこれほど早く訪れることになるとは。クースラたちは、騎士団の庇護を受けていたからこそこれまでかなり自由に立ち回れていたはずなので、今後騎士団が異端認定されて壊滅への道をたどることになったら、クースラたち錬金術師の立場もかなり見通し暗いんですよね。たとえ、今この場を生き残れたとしても、果たして今度いったいどうなるのか。
クースラがようやく、自分が求めているものの具体的な形が見えてきただけに、この四人がバラバラにならずに思うように生きられる場所を見つけ出して欲しいものです。特に今回、フェネシスはかなり危ない橋を渡ったからなあ。悪い意味で世間に知れ渡ってしまったでしょうし。人間関係の好転と進展とは真逆に彼らの置かれた環境がどんどん最悪の方に流れていくのが、心配でたまりません。

1巻 2巻 3巻感想

マグダラで眠れ 34   

マグダラで眠れ (3) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 3】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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ついにカザンの町への入植を許されたクースラたち。鍛冶屋組合の少女イリーネと共に、グルベッティの町を出る準備を始める。しかしその最中、ウェランドが、“錬金術師ではない”という疑いを掛けられ、入植団に加われない危機に陥ってしまう。最初は放っておくしかないと思っていたクースラだが、「仲間を大事にしたい」というフェネシスの熱意に打たれ、ウェランドを助け出す決心をする。そして、“自分たちが錬金術師であること”を証明する方法を探り始めるのだが、これがなかなか難題で―?眠らない錬金術師と白い修道女が贈る本格ファンタジー、シリーズ第3弾。
フェネシスの耳って、猫耳だったのか!! 今まで獣の耳とは言ってたけれど、猫と明言されていなかったような。改めて猫耳、と言われるとガツンと来るものがありますね。曖昧に獣耳と言われてもピンと来なかったものが、急に具体的になってきた。フェネシスはネコミミ少女!!
さて、今回はクースラとフェネシスがお互いに意地を張って冷戦状態になってしまうという、一見修羅場なんだけれども、よく見るとやっぱりイチャイチャしているようにしか見えないというさりげに難易度の高い糖分補給をやってのけているお話でした。
なんか、ロレンスもそうでしたけれど支倉作品の主人公は、というか頭のいい人は自分に良い訳するのが好きですねえ。【狼と香辛料】の場合はロレンスとホロの両方が自分の気持に色々と勝手に理屈付けて決めつけてしまっていたんで、女神父さんにガツンと直言されるまでえらい遠回りしてしまったものでしたが、コチラのクースラもまた自分を定義付けてしまうのが好きなタチのようで、自分では仕切りと冷たい人間であり、フェネシスだって甘やかさないし、なんでもお願いしたらホイホイと叶えてしまうような気のいい人間じゃないんだよナメんな、と斜に構えてカッコつけてるんですが……いやいや、あんたフェネシスにお願いされたら結局何だかんだと全部叶えてあげてるし、思いっきり甘やかしまくってるじゃないですか。そのくせ、自分はクールだからそういう甘いことはやんねえんだが、仕方ないからやってやっただけで、本当は俺はクールな男だから自分がフェネスシのお願いを聞いてやったなんてのは隠しておこう、知られたらいい気になっちまうからなアイツ、とか気取ってるし。
そのくせ、フェネシスに怒って無視されると、イライラし出すわ気にして焦りだすわさり気なくフェネシスの気を引こうとし出すわ……で、実は全部フェネシスにバレバレだったりするし。

おいおい、もしかして端から見てるとクースラって相当に恥ずかしいやつなのか?(笑

とはいえ、フェネシスももうクースラのそういった部分については概ね把握しているようで、手を引かれて導かれる側だったフェネシスが、クースラの性格を読み切って彼をうまく自分の思うとおりに誘導する、なんてことまで出来るようになっていたとは。今回は人見知りスキル全開で、随分と弱い部分を丸出しにしていたフェネシスだけれど、何だかんだと良い感じで強かになり、クースラにおんぶに抱っこではなく、一端に彼の隣に立てるくらいにはなってきたような実感も伝わってきて、何とも微笑ましい限り。今回の一件って、端的に言うとフェネシスが甘え上手になりました、てなもんだもんなあ。これからより一層クースラの甘やかしが過剰になっていく予感すらするぞ。
ちょっと意外だったというか驚いたのが、イリーネが完全にクースラたちの仲間入りをしてしまったこと。もうちょっと部外者的な立ち位置で、カザンまでの旅程に参加してくるのかと思ったら、まさか工房に住み込んで一緒に行動することになるとは。さすがに未亡人のヒロインというのは珍しいんじゃないだろうか。まあ、クースラとフェネシスの間に割って入るようなことはまずないんだけれど。それどころか、クースラとウェランドしか頼る相手が居なくて、いささか逃げ場というか退避場所がなかった感のあるフェネシスにとって、同性で姉御肌のしっかりもののイリーネの仲間入りは、精神的にも随分助かるんじゃないだろうか。まあ、最初は居場所を取られたみたいに、隅っこに追いやられて小さくなってましたけれど。そのあたり、確かに子猫だなあ。でも、イリーネは本心からフェネシスの全面的な味方になってくれるみたいなので、実に頼もしい限りである。フェネシスの秘密についても知ることになったわけですしね。

とまあ、錬金術師たちもこうして四人組となり、新天地カザンへ向けて出発! となった途端に、大変な出来事が。うわぁ……これって、もろに梯子を外されたようなもんじゃないですか。どうすんだ、これ。

1巻 2巻感想

マグダラで眠れ 2 4   

マグダラで眠れII (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 2】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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『狼と香辛料』の支倉凍砂が贈る、眠らない錬金術師の物語。
伝説の金属を巡る、第2弾登場!


 異教徒最大の鉱山の町カザンに、近々入植があると気づいた錬金術師のクースラとウェランド。二人はなんとかカザン入植の波に乗るべく、手柄を立てようと画策する。そんな二人のもとに、“伝説の金属”の噂が舞い込んでくる。どうやら鍛冶屋組合の若き長である少女イリーネが、その金属の秘密を知っているというのだが──。
 眠らない錬金術師クースラと白い修道女フェネシスが贈る、その「先」の世界を目指すファンタジー第2弾!!
なんというスパルタな過保護。
フェネシスを招き入れたクースラが、はたして彼女をどんなふうに扱うかについては前巻の終わりから気になっていた所だったのですが、厳しくも優しいクースラの振る舞いに思わず「プリンセスメーカー」という単語が脳裏を踊ってしまいました。いや、件のゲームはプレイしたこともないんですけれど……。
いつか自分の手で生み出したいと願っている伝説の武器。その武器を以て守るべきお姫様となるに相応しい素養を持つフェネシスと出会ったクースラなのですが、この男、伝説の武器を作るための金属を追い求めるのみならず、既に手に入れたフェネシスについてすら全然満足していなかったんですな。満足していない、と書くと不満に思っているようにも捉えられるかもしれませんが、多分フェネシスを不満には思っていないはずです、クースラは。ただ、より輝くように、より理想の姫君に近づくように彼女を磨き上げることに余念がない、というべきか。その方向性が、フェネシスを自立した女性に育て上げる、という方に向いていた事にはちょっと驚かされたけれど。もっと蝶よ花よ、とまではいかないけれど宝物のように大事に扱うか、もしくはもっと容赦なく厳しく接していくか、と思ってたんですよね。
それがどうしてどうして。この男、フェネシスをきちんと一個の人間として扱っているんですよ。勿論、彼の教育はなかなか厳しく、甘えを許さない鋭さに終始しているし、また融通の効きにくいフェネシスをからかってばかりいる。でも、彼の指摘は常に的確であると同時に突き放すことなくいちいち親身で、フェネシスが理解し納得しやすいように言葉を尽くしてるんですね。それでいて、押し付けるのではなく彼女が自分の頭で考え判断できるように配慮している。常に彼女に自立を促し、しかし傍でじっと寄り添いながら見守り続けているのです。
その眼差しは、驚くほどに慈愛に満ちているのです。惜しみない愛情を感じさせるのです。もし、クースラにフェネシスへの独占欲などがなかったら、それが師弟愛や親子愛かと錯覚してしまいそうなほどに。
元々、何かに依存しなければ生きてこれなかったフェネシスは、容易に心を絡めとる事の出来る娘です。人間心理に長けたクースラなら、本当に簡単にフェネシスの心を虜にしてしまえるでしょうし、実際何だかんだとフェネシスの心が自分から離れないようにあれこれと手管を使ってもいます。でも、それでもなお、この男はフェネシスが自分で歩ける自立した女性に仕立てようとしてるんですよね……それが、自分が守るに足る姫であると信仰しているように。まったく、難儀なほど女の好みが贅沢な男じゃないですか。
自分が人を愛せる人間なのだと自覚できた途端に、これだけ潤沢に愛情を注げるようになってしまうのだから、全く大した男です。
フェネシスもフェネシスで、意地悪されからかわれる度に美味しすぎる反応ばかりで、ああもう可愛らしいったらありゃしない。なんだ、このホロとロレンスとはまったくベクトルが違うものの、質量的にはまったく劣っていないイチャイチャっぷりは(笑
何だかんだとお互いに愛し合っていることを認めるまでが長くてモドカシイ部分もあった【狼と香辛料】と違って、こっちはクースラがまだ明確な異性への愛情とはまとめきれていないものの「こいつは俺のもの」とハッキリと所有権を主張しているので、その点ではスッキリしていますし、フェネシスも依存ではない信頼から徐々に情感の篭った仕草をクースラに向けつつあるので、多分空気は濃密になる一方なんだろうなあ、とこれ辟易するべきなのかニヤニヤするべきなのか困りますねw

フェネシスに一方的に導きを与えているようなクースラですけれど、彼女を得た事による変化は彼にも訪れているようです。単に自分が人並みの情を持った人間だと自覚した以上に、フェネシスの存在は彼に精神的な余裕を与えているようなんですよね。切羽詰まった場面でも、彼が一旦立ち止まって周りを見回す気持ちの余裕があるのも、今までの彼にはなかった視点で物事が考えられるようになったのも、フェネシスという拠り所が彼の中に生まれているからのような気がします。少なくとも、彼女が傍にいなければ今回の一件ではここまで上手く立ち回れなかったんじゃないかなあ、と。その意味では、彼もフェネシスと一緒に成長していっているのかもしれません。実際、一巻の時よりも一回り魅力的なイイ男になった気がしますし。
これはもう、利子という意味の名前も返上ですなあ。

1巻感想

マグダラで眠れ4   

マグダラで眠れ (電撃文庫)

【マグダラで眠れ】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

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『狼と香辛料』の支倉凍砂が放つ新シリーズ、
“眠らない錬金術師”の物語、ついに開幕!!


 人々が新たなる技術を求め、異教徒の住む地へ領土を広げようとしている時代。錬金術師の青年クースラは、研究の過程で教会に背く行動を取った罰として、昔なじみの錬金術師ウェランドと共に戦争の前線の町グルベッティの工房に送られることになる。
 グルベッティの町で、クースラたちは前任の錬金術師が謎の死を遂げたことを知る。その足で出向いた工房。そこでは、白い修道女フェネシスが彼らを待ち受けていた。彼女はクースラたちを監視するというが──?
 眠らない錬金術師クースラと白い修道女フェネシスが紡ぐ、その「先」の世界を目指すファンタジー、ついに開幕!
【狼と香辛料】の魅力というと、何よりもロレンスとホロの丁々発止の掛け合いの面白さと、男女の駆け引きのニヤニヤさせてくれる度合いでした。とはいえ、幾つかのショートストーリーではロレンスやホロが出ない話もあったのですが、それでも抜群の面白さがいささかも陰りを見せなかったのを思えば、新作への不安など無きも同然でありました。
あとは、いったいどんな話なのか。メインとなる登場人物たちの為人はいかなるものなのか。募る興味の方向性と言えば、そんなものばっかりだったと言えます。なので、最初に本作の表紙とあらすじを見た時には、硬質で鋭く容赦のないタイプのヒロインが、キリキリと錬金術師の主人公を締めあげていきながら、付き合っていくと同時にその厳しい態度に柔らかさが混じりだし、真剣なぶつかり合いの中にもほんのりと温かい交流が生まれ出す、というパターンを想起していたんですよね。特に、女性上位という点については疑いもしていなかったのでした。まあ、完全に思い込みだったのですが。
まさか、こんなにも純真でか弱く疑うことを知らない子羊みたいな娘さんだったなんて。狼さんからすると、ついつい甘咬みしながら甚振ってオモチャにして遊んでしまうタイプの子だよなあ、これ。ホロだったら、これ咥えて離さないぞ。
これには結構驚かされた。思い返してみると、【狼と香辛料】では殆どこうした「弱い」子は出て来なかったんですよね。どんなタイプの人でも、それぞれに生きることへの強かさを懐剣のように握りしめていた強い人達だったように思う。皆が、立場や現状に関わらず、自立して生きるという気概に満ちていた。
その点彼女…フェネシスは常に拠り所を必要とせざるを得ない生き方を強いられてきた子だったと言える。故郷も居場所も、生きる意義も価値も何もかも奪われ、許されず、認められず、生存そのものを否定されてきた子だった。
彼女は、強さなど持ちようのない環境で辛うじて生き延びてきた、弱いことを運命づけられた子だったと言っていい。逆に言うなら、フェネシスは弱いなりにここまで生きてこれるだけの何かを持ってたという考え方も出来るんですよね。諦めに朽ち果てそうになりながらも、今まで生きることにしがみついてこれるだけの執着があった。それでいて、歪むこと無くうつむいて視線を落してしまうことはあっても、人を見るときはまっすぐ見つめることの出来る子で居続けた。考え方は浅慮ですぐに思考誘導を受けてしまうほど単純だけれど、じっと物事の本質を、他人の心の在り様を、その純真さ故に、単純さ故に、深く深く一筋に見抜く事のできる子で居続けたのでした。
その人当人ですら見失ってしまうほどほころびてしまった真実を、歪んで曲がって見えなくなってしまった真理を、見つけてくれるほどに。
何故、異端者で破綻者で探求者である錬金術師のクースラが、こんなか弱く儚い少女に惹かれていったのか。その理由については本編を御覧じろ。しかし、これだけは間違い無いと思うのだ。ここで描かれる恋は勘違いなんかじゃない。幾つものベールに覆われた心の奥底を、本音と本性と真実をチップにして繰り広げられるゲームの執拗な駆け引きと狡猾なやり取り、無意識の選択と無数の決断、容赦のない踏み込みと暴きによって、生まれたままの姿にまで剥き出しにして、そうして見つけた「マグラダの地」が、夢のカタチが、フェネシスの姿をしていたのだ。クースラにとって、それこそが錬金術師としての真理であり、夢を叶えたその向こう側だったのだろう。
その「先」へ。

やはり、支倉さんの物語は素晴らしい。何故、この人の話はこんなにも心をときめかせるのか。多分、常に手探りで、見えない相手の心の内を覗き見ようと手練手管を駆使して行われる、会話や駆け引き。そんなコミュニケーションという摩擦によって生じた化学変化による色取り取りの火花が、パチパチとちらついて、本来なら見えない他者の心の内側を垣間見せてくれるからなんだろう。そして、火花は綺麗なもので、ついつい胸高鳴らせ目を奪われてしまうものなのだ。
そして、そんな火花は背景が深く重く質実であるほどに、よく映える。
重苦しいほど重厚で、どこまでも沈んでいきそうなほど深みを感じる中世の時代感。その狭間で生きる人々の営みと、それを囲う社会の在り様。それすべてが、そこに生きる人々の心の在り様に莫大な暗闇と、光を求める意志を与えてくれる。光とはまた夢であり、他者であり、理解者であり、共に闇を共有してくれる人のことでもある。そんな闇を恐れ、しかし光を求める人達の、強かな切実な飢餓の先に、支倉さんは満ち満ちた想いを用意していてくれるのだ。
だからこそ、安堵に温まり、にやけた笑みが浮かんでくる。困難の果てにある達成感に、心が踊る。それすべてが、ときめきでありきらめきなのだろう。だから、素敵な物語なのだ。

自分の夢の輝きを取り戻した二人の男女。その物語は、まさに今ここに始まったばかり。取り戻したその先に待つ輝きは何なのか。これから始まる素敵な真理の探求に、今から心浮き立つばかりです。
あー、フェネシスは癒し系だなあ。

支倉凍砂作品感想

狼と香辛料 17 Eplogue5   

狼と香辛料 17 (電撃文庫 は 8-17)

【狼と香辛料 17 Eplogue】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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ホロとロレンスの旅、感動の結末とは──
シリーズついに最終巻が登場!


『太陽の金貨』事件から数年。元羊飼いのノーラと女商人エーブは、ホロからの手紙を手に、北へと向かっていた。旅の途中、錬金術師ディアナも同じ馬車に乗り込んできて──。
 果たしてホロとロレンスは、幸せであり続ける物語を紡ぐことが出来たのか? 第16巻の後日譚を描く、ファン必読の書き下ろし中編のほか、電撃文庫MAGAZINEに掲載された短編3編も収録。
 剣も魔法も登場しないファンタジーとして多くの読者に愛された賢狼と行商人の旅の物語が、今巻でついに完結! 二人の旅の結末を、ぜひその目で見届けて下さい。

おめでとう おめでとう

お幸せに 末永くお幸せにっ


完全無欠のハッピーエンド。将来に渡ってもかけらの不安も残さない、本当に本当の「めでたしめでたし」。
長く付き合うことの出来た作品が終わってしまう時は、もう彼らの姿を見られないのかと寂しくなるものなのだけれど、不思議とこの【狼と香辛料】は寂しいと感じることがなかった。ホロとロレンス、この二人のコンビが大好きだったからこそ、二人がこのような最良の最終回を迎えることが出来たという事への嬉しさと幸福感で胸がいっぱいで、寂しいと感じる隙間も残っていないのだ。ただただ、彼らへの祝福ばかりが湧き上がってくる。
おめでとう お幸せに
思えば、ホロとロレンスがこんな幸せな旅路を手に入れることができるなんて、本編がはじまった当初は思いもよらなかった。いや、はじまった当初どころか、それこそ巻数が二桁を数えるまで二人の旅は別れを以て終わるのだと思っていた。それが決定的に変わったのが十巻の老羊との出会いであり、14巻で再会したエルサの強烈な指摘だったのでしょう。物語が実質16巻で終わったことを思えば、本当にギリギリまで二人の関係は何重にも予防線が敷かれたものだったと言える。それだけ、ホロとロレンスの関係というのは不安要素が大きく、悲観的にならざるを得ないものだったのかもしれない。この16という巻数は、理性的で賢明で思慮深く故にこそ臆病だった二人が、勇気を得るために必要な時間だったのだろう。ただ好きで好きでたまらなくていつまでも一緒に居たいという気持ちを一番の最優先にするだけの勇気を。
勿論、抜け目のない二人である。その気持を気持ちだけの空回りとしないだけの担保と見通しを手に入れてからこその勇気だったわけだけれど。

それにしても、見事なくらいのおしどり夫婦っぷりでした。夫婦の仲の秘訣って、旦那さんの献身さなんだよなあ。むしろ旅をしている時よりもロレンスはホロを甘やかすようになっているようにすら見えます。ホロはホロでロレンスの献身に甘え切るでもなく、むしろ旅をしていた頃よりも我侭言わなくなってるんじゃないかなあ。お互いにぴったりと寄り添っているにも関わらず、寄り掛からずに支えあっている様子はまさに仲睦まじい夫婦そのもの。
コルが戻ってきてくれて、二人を支えてくれてたのも嬉しかったなあ。
個人的にロレンスとホロが定住して店を開くとしても、物を売り買いする商家というのはいまいちイメージがまとまらなかったんですよね。それだと、どうしてもホロとロレンスが幸せに過ごしているイメージが出てこない。まあ大店のやり手女将と大旦那、という構図は眼に浮かぶのだけれど、ちょっと日々が忙しなさすぎて、二人の時間もちゃんと取れなさそうという感じがして。
その点、ロレンスが選んだ湯屋、温泉旅館というのは完全に盲点でした。なるほど、これなら人ならざる身のホロが長きに渡って、それこそロレンスが去った後ですらずっと関わり続ける事ができそうじゃないですか。何より、ホロとロレンス二人が一緒になって切り盛りできる。あの冬の街のうら寂しい宿屋などよりもよほど暖かく賑やかな雰囲気の中で。幸せな日々が続いていくのが容易に思い浮かべることが出来る。
旅の中で出会った友人たちを、笑顔で迎える事が出来る。
まさに、最良の選択だったのではないでしょうか。
そして、ラストのとびっきりのサプライズ。ああもう、最高だ。思いつく限り、最高のハッピーエンド。

まさにライトノベルという分野に燦然と輝く「名作」であり「大作」だったと思います。素晴らしい作品を読ませていただいて、ありがとうございました。

って、短編の感想とか、前半の過去の登場女性陣が集まってのガールズトークについてなど書けずに話が終わってしまったw
これ、短編は巻の前の方に纏めておいて欲しかったよなあ。どれも短いながらも素晴らしく、またあとがきで作者が触れているように、どこか終わりを感じさせる内容で、前座としても適切だったと思いますし。
にしても、エーブはロレンスの事結構本気だったんだな。いや、確かにそういう素振りをはっきり見せていましたけど、それ以上に商人としての我が強かったもんなあ。ただ、エーブがそれをしまったなあ、とちょっと悔しい思いをしてるとは思わなかった。6年経った彼女は相変わらず狼でしたけど、以前よりもだいぶ余裕があっていい意味で貫禄ついた感じです。
ノーラの方も深みが出ててさらに魅力的になってたなあ。彼女がディアナに語った話、抽象的なんですけど、後半読むとね、何となく気持ちがわかった気がします。もう一度あの二人に会いたい、ただ会いたいという気持ち。
ホロとロレンスの幸せそうな姿は、見ているだけで幸福を分け与えて貰えるような気がするから。ただ見ているだけで、不安や迷いが晴れていき、目の前が開かれていくような気持ちにさせてくれるから。
だからこんなにも嬉しいのだ。祝福してあげたいのだ。

おめでとう いつまでもいつまでもお幸せに  幸せになってくれて、ありがとう。

シリーズ感想

狼と香辛料 16.太陽の金貨(下)4   

狼と香辛料〈16〉太陽の金貨〈下〉 (電撃文庫)

【狼と香辛料 16.太陽の金貨(下)】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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行商人ロレンスと狼神ホロの旅、本編ついに感動の最終章!!

 デバウ商会によって新貨幣が発行され、自由と希望の町となるレスコ。ロレンスはそこで、ホロと共に店を持つことを決めた。しかしその矢先、コルのズダ袋を持った人物が現れ、二人はデバウ商会の内部分裂による事件に巻き込まれることとなってしまう。ホロは、禁書を得るためキッシェンへ。ロレンスは、デバウ商会に追われミューリ傭兵団とともに雪山を越えることに。バラバラになってしまった二人の運命は!?
 行商人ロレンスと狼神ホロの旅を描く新感覚ファンタジー、ついに本編感動のフィナーレ!

最後の最後に、ロレンスの今後の生き様を問う話になったなあ。
ホロと一生添い遂げる結びつきを得て、商人の町として新世界を拓こうというレスコにて、店を構える。ロレンスが夢見た理想が全部叶おうとした矢先だったからこそ、ロレンス個人の夢ではなく、彼が商人として抱いてきた理想や矜持そのものを否定されるような現実を前にして、彼が今後ホロと生きていく上でどのように人生を歩んでいくつもりなのか。確かに、最後を飾るには、読者としてこの巻のページをめくり終えたあとは、ホロとロレンスの行先をただ思い描きながら見送るしか無い身としては、本当のどん底に陥ったロレンスがその上でどんな選択をするのかを知る事は、安心と確信を得る事になるんですよね。ただ、夢を叶え理想を手に入れただけだと、いつかそれが破れ去った時にもしかしたら二人の人生に不幸が訪れるんじゃないかと一抹の不安が残ってしまう可能性もありますし。途中で、散々ホロとロレンスが煽りあっていた不安でもあったわけで。
でも、こうして先にロレンスが底の底を目の当たりにしてなお選んだ決断を見たならば、そしてホロもまた自分より先に連れ合いが逝ってしまう確実な未来に怯えるだけでなく、あの男を叱責したような想いがあるのなら、もう安心して見送れる。
その意味では、この最終巻はロレンスとホロの旅路の先に見える懸念という懸念を全部払拭する事に終始した巻だったのではないだろうか。
なんとも、実直にして実務的な話じゃないか(笑
まあだからこそ、後日談はやっぱり必要だったと思いますよ。ロレンスとホロのロマンスを見守ってきた身としては、幸せの確信と確約ばかりではなく、余韻みたいなものも欲しかったですしね。庶民としては、契約書だけじゃなくちゃんと現物もしっかり自分の目で見て触りたいものなんですよ。

しかし、ロレンスとホロのラブラブっぷりはもう行きつくところまで行ってしまいましたね。状況が危急続きだった事もあるのでしょうけど、普段みたいな迂遠な言い回しによる想いの駆け引きでイチャイチャという流れじゃなくて、もう直接、ダイレクトに、誤解の仕様のないくらいストレートな愛の言葉をぶつけ合うぶつけ合う(笑
特にホロのデレっぷりときたら。もう繕うの完全にやめてますよ。周りにも隠そうとしないし。それだけ、切実だったのかもしれませんけど。状況的に。
フラフラと深みにハマっていこうとするロレンスを、今回必死に服の裾を掴んで引っ張って、止めよう止めようとしてましたしね。あの「わっちは主のお姫様なんじゃろう!?」発言には、ホロのデレっぷり以上に必死さが感じ取れましたし。
でも、そうした必死さが逆にホロが相棒や恋人を通り越した「奥さん」っぷりを発露しているようで、ちょっと嬉しかったりニヤニヤしてしまったり。
ロレンスとの旅路で色々と考え方の変化を得てきたホロだけど、考えてみると一番彼女のお尻を蹴っ飛ばしたのって、あの教会のエルサになるんですよね。二人の仲を、ごちゃごちゃ言ってるけど結局愛し合ってるんでしょ!? とズバッと指摘して二人を後戻りできなくさせたのもエルサですし、今回ホロに最後の一押しをくれたのも、登場すらしていない彼女だったわけで。エルサ、よい仲人役になるぜ、これ(笑

当初は、いや中盤まで良い別れを以て終わることを予感させていたロレンスとホロの二人の旅が、こんな形で終わりを迎え、伴侶として新たな旅に出立していく様を見送る完結を読むことになるとは、こんな幸せな、最良の形で終わりを見る事が出来るとは思ってもいませんでした。
傑作でしたよね。ライトノベルの中で確かにひとつの金字塔となった作品だと思います。まだもう一つ短篇集が出るようで、そこで後日談の方も伺えるようなので、そこでの余韻を心待ちにしつつ、一先ずページを閉じたいと思います。

シリーズ感想

狼と香辛料 15.太陽の金貨(上)4   

狼と香辛料XV 太陽の金貨<上> (電撃文庫)

【狼と香辛料 15.太陽の金貨(上)】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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 ホロの故郷の仲間の名を冠す『ミューリ傭兵団』。彼らに会うため、ホロとロレンスは鉱物商・デバウ商会が牛耳るレスコの町を訪れることになる。
 デバウ商会は北の地で大きな戦を起こすつもりらしく、その目的は北の地の征服とも、鉱山のさらなる開発とも言われていた。そのため商会は町に武力を集めているというのだが、ロレンスたちが訪れた町には不穏な空気はなく、意外にも人々は活気に溢れた様子だった。訝しがるロレンスたちは、ミューリ傭兵団が滞在する宿屋を目指すことにする。そこで二人を出迎えた人物とは──?
 
 ヨイツの森はもう目前。北を目指す狼神ホロと行商人ロレンスの旅は、いよいよ最終章へ突入する──!


二人の旅も、ついに此処まで来たのかと思うと、ひらすらに感慨深い。ロレンスとホロ、二人の旅が始まったその当初から、旅はいつも終わるもの、とロレンスもホロも自分に言い聞かせるように繰り返してきた。それはまったくの真実でしかなく、彼らの言うとおり、二人の旅は今終わりを迎えようとしている。
でも、その旅の終わりは二人が思い描いていたカタチとは、随分と違うものになってしまった。果たして、ロレンスとホロは二人の旅の終わりがこんな結末を迎えるなど、想像していただろうか。いや、想像はしていたのだろう。ロレンスが、夜もふけた頃に将来持つ店の想像図を絵にして描いていたように。
だが、ホロもロレンスも、その夢のような結末を、望んではいけないものとしてそっと脇に押しやり、見ないふりをしていたのだ。叶ってはいけない夢物語のように。思い描けば苦しくなるだけの、現実から遠く離れたお伽話のように。

だから、これは叶ってしまった夢物語で、覚めない現実の上に顕現した御伽話になったのだ。

確かに、旅は終わるものかもしれない。でも、一つの旅の終わりは、新しい旅の始まりでもあるのだ。新しい旅が始まるとき、二人の進む先は別れているのだと信じていた彼らが、それが故に、今の旅が終わったあとの話を頑なに避けていた二人が、いつしか次の旅路にもお互いが連れ合いとして隣にある事を疑うことすらなくなり、ロレンスがヨイツに付いたその先の事についに踏み込んだ時、あの瞬間にこそ、私は実感したのだろうと思う。
この【狼と香辛料】が終わるのだと。正確には、読み手である自分の目の届く範囲から、遠ざかっていくのだろうことを、取り残されるような寂しさと、親しい人達が行くのを見送るような温かな気持ちと共に。
過去の繋がりのほとんどを失い、新たにまた、旧き友と永遠に再会が叶わないという事実に直面したことで、失意のどん底に陥ったホロ。だけど、ロレンスはそんな彼女につきっきりになって支え続けるのです。お前には、俺がいるのだと、無言で言い聞かせるように。
そんな彼の献身的な愛情に、ホロはやがて立ち直り、いつしか二人が語り合う内容は、ホロの懐旧や、これまでのロレンスとホロの二人の旅の思い出でもなく、これから先の話ばかりになっていく。もう、旅が終わるというのに、先のことばかりを。つい最近まで、先の話を必死に避けようとしていた二人が、過去の殆どを失ってしまったホロが、何の含みもわだかまりもなく、幸せそうな顔を付き合わせて、一緒に未来の話をしているのだ。二人で一緒の未来の話をしているのだ。
だから、終わるのだと実感しても、温かな気持ちになったのだろうと思う。この作品が結末を迎えて、読み手である自分が二人の新しい旅の先を見ることが叶わなくなっても、二人はもう、大丈夫なのだろう。そう、思えたから、だから。

北の地レスコにて、ロレンスとホロは今まで誰も見たことのない新しい時代が到来する瞬間に立ち会うことになる。過去の遺物として置き去りにされてやがて消えていくことを運命として受け入れていたホロの手を、ロレンスは力強く握ったまま離す事無く、自分と共にあることでホロを新たな時代の一員として迎え入れた。
ロレンスと居る限り、ロレンスを伴侶とする限り、ホロは既に滅び去ることが運命づけられた古き時代の遺物という括りからも、抜け出すことが出来たのだ。

「店の名前を考えておけ」
「仔の名前ではなく?」

共に生きるとは、きっとこういう事を言うのだろう。

だからこそ、彼らに訪れる最後の試練は、きっとホロを今を生きるヒトとして、一人の男を愛した女ではなく、滅び去るべき過去の時代の遺物、古き神として葬り去ろうとする意志なのかもしれない。
最後に現れた人物が、ホロとロレンスの旅の始まりに立ち会った人なのだとしたら……。



ロレンスさん、今回ホロのからかい抜きのマジな誘いを片っ端から振っちゃってましたよね。そりゃ、ホロも本気で拗ねるよなあ(苦笑
まあ、当人としては雰囲気にアテられて襲いかかったところ、手痛い反撃をくらってしまった前巻の終わりのアレがトラウマになってしまっていた節があるので、ある意味ホロも自業自得の節があるのですがw
というか、この二人が未だにいたしていない、というのは二人のやりとりからしても、ちょっと信じられないんですけど。

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