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松智洋

パパのいうことを聞きなさい! 73   

パパのいうことを聞きなさい! 7 (パパのいうことを聞きなさい! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-16)

【パパのいうことを聞きなさい! 7】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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六畳一間で暮らしたあの日を振り返るアットホームドタバタラブコメ第七弾!
莱香が池袋に引っ越して来て騒がしくなった小鳥遊家。
合唱部の副部長に抜擢された空の報告に祐太たちはお祝いを企画する。
ロ研の仲間達もやってきて楽しい時間に、それぞれの心に去来する想い。
両親の事故から、まだ一年も経っていないなんて信じられない。
祐太に手を引かれて八王子の六畳一間にたどり着いたあの日から、池袋に再び戻る日までに起こった様々な出来事が回想される。
三姉妹と祐太が、そしてロ研の仲間達が今のような関係を築くまでの空白の時間。
そこには、誰にいわずともやっぱりあたたかな優しい物語が積み重ねられていた。
大人気癒し系ドタバタアットホームラブコメ第七弾!
第七巻は八王子の狭いアパートで暮らしていた頃の事をそれぞれの視点から描いた短篇集。姪っ子たちを引き取った裕太の奮闘っぷりは一巻で堪能できるとして、引き取られた側の空や美羽たちは一体どんな事を思っていたのか。突然両親を亡くし、引きとってくれた叔父は生活力のない大学生の若造。住まいは一人暮らしでも狭い六畳一間。金銭に余裕もなく、学校も中学生と小学生が一時間半もかけて通わなければならない。ちょっと耐えられないような厳しい環境だったんですよね。それを、彼女たちがどう思ってたのか多少気になるところではあったんですけれど……ホントにこの娘たちはこの生活に、或いは裕太に対して不平や不満は一切抱いていなかったんですなあ。実際、生活は大変でこれまで両親の庇護の元に暮らしていた彼女たちは、自分の無力さを痛感し、辛い思いや苦しい思いを沢山味わい、忘れようとしていた両親の死という痛みも時折突然激痛のように襲いかかってくる。そんな絶望しか無いような環境の中で、でも彼女らはむしろキラキラと輝いている。後ろ向きにならず一生懸命前を向いて自分の出来ることを必死にこなしていく。そこにあるのは絶望よりもむしろ希望だ。まだ幼い彼女たちが、この時の状況がどう頑張っても破綻しかないのだという現実を正確に把握していなかったというのもあるだろう。でも、それ以上に彼女たちにとって一番絶望の底に沈められたのは、三姉妹が引き裂かれ別々に引き取られそうになったあの時だったというのが大きいのだろう。両親が死に、幸せだった日々が失われ、残された姉妹までがバラバラになり何もかも失われそうになった時、裕太が手を差し伸べてくれたことで、姉妹一緒に暮らせるようになった。家族を失わずに済んだ。それは、あの小さな狭いアパートで苦労することなんか何でもないと思ってしまうくらいに、彼女たちにとっては希望そのものだったのでしょう。
裕太の行動はあとさき考えない無謀以外のなにものでもないと今も思うのだけれど、彼女たちの心にこれだけの光を差し込んでいたというのなら、間違いではなかったのでしょう。
でも、裕太視点から見ると、この時の生活は本当に先行き真っ暗なんですよね。絶望感が半端ない。単純に家計だけ見ても、収支が滅茶苦茶なんですよね。一年どころか半年も持たないんじゃないかというレベル。やたらめったらバイトばっかり増やしても、問題の根本的な解決にならないことをこの時裕太はどれぐらい理解してたんだろう。目の前の難題を処理することに精一杯で頭回らなかったんだろうなあ。
それにしても、美羽の早熟性がとんでもない。小学校における社会的な地位の維持の仕方なんか、一人だけ次元が違うんですが。まあそれ以上に小学校で既に女子の集団はああいう目で友達を見て、ポディションの変動の把握に勤めてるのか、と思うと怖いなあw

松智洋作品感想

パパのいうことを聞きなさい! 63   

パパのいうことを聞きなさい! 6 (パパのいうことを聞きなさい! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

【パパのいうことを聞きなさい! 6】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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優しさと温もり満載のドタバタアットホームラブコメ第六幕!
ジュウベエを迎え、平和を取り戻した小鳥遊家。
ペットが来たことでひなの寂しさも和らぎ、笑顔の日々が続いてる二月。
祐太はすっかり忘れていたのだが、バレンタインデーが近づいていた。
空と美羽は祐太にチョコを渡すと決めて、静かに競い合う空気だが
そんな折り、祐太の憧れの人である織田莱香の様子がなんだかおかしい。
鈍い祐太は今ひとつ気づいていないようだが、優しい空は気づいてしまう。
恋敵とも言える美貌の恩人のために空たち三姉妹は一計を案じるが……
小学生に金を稼がせるのは論外だけど、姉妹が望むのはお金の心配をしなくて済むことじゃなくて祐太が無理しないでくれること。大事な日にはちゃんと一緒にいてくれる事だというのを、どうしてこの大学生はいつになっても理解しないんだろう。キミがそうやってムキになってバイト三昧に明け暮れるからこそ、美羽たちが色々と気を回しちゃうんじゃないのかねえ。全く学習しないというのも、傍から見てると疲れてくるものなんですねえ。本人がそれなりに学習している「つもり」なのがまた腹立たしいw
これで、ちゃんと莱香さんのこれまでの鬱積の発露に対してキチンと意図してフォローが出来てたら見直したところなんだが、どうにもあれは特に考えがあっての言動ではなかったから評価し難いんですよね。彼の在り方そのものが莱香の蒙を啓く事になった以上、祐太の性格や人間性そのものが莱香との相性ピッタリ、とも言えるんですが、もう少しちゃんと自分の意志と考えを持って好きな人の内面を鑑みて、動いて欲しかった。今のままだと、祐太は莱香という女性をちゃんと理解していないって事ですしね。将来的に莱香の精神面にナニカ大きな意図せぬ変動があったときに、それが祐太の無意識の言動でカバー出来ないものだったとしたら、彼は為す術を知らずに右往左往するだけに終わってしまうかもしれないんですから、それはどうにも心許無い。
それに比べて、三姉妹の頼もしいこと。むしろ今回に関しては彼女たちの方こそが恐れず怯まず目の前で途方に暮れている年上の女性の内面に踏み込み、それを理解しようとし、膝を抱えて蹲り続けていた莱香さんの手を引っ張って立ち上がらせ、顔をあげさせたのですから、祐太とどちらが活躍したかというと、明らかに三姉妹の方だもんなあ。意外と難しい性格で、その上頑ななところがある莱香さんを、鮮やかなと言っていいほどの手並みで手懐け、心開かせ、勇気を与えたさまには感心するばかりでした。毎日を過ごすのに精一杯で助けられてばかりだったこの娘たちが、回りまわって今やこれまで助けてくれた周りの人達にお返しのように光を与え、振り撒く姿は眩しいばかりです。祐太は、そんな娘たちの支柱になっているというだけで大したものなんでしょうけどね。もうちょっと視野を広く持ってほしいなあ。今のままじゃ柱ではあっても、大黒柱と言えるほどの貫禄が全然無いし。ジュウベエに舐められるのも仕方ないよ。
とは言え、彼の存在が三姉妹にとって掛け替えの無いものであると同時に、今回の一件を通じて莱香にとっても理屈や客観性の向こう側にある、心のままに有らんとすれば自然と欲する存在であることが、莱香さんの中に確かな認識として芽生えた以上、何気にラブコメ的には劇的な進展があったのか、これは。
空と美羽としては完全に自爆なんだが、莱香を家族として受け入れる下地がほぼ完璧に出来上がってしまったわけだし。叔父である祐太をお兄ちゃんと呼んでいるくせに、莱香をお姉ちゃんにしてしまったら、そりゃもうそういう事にしかならないじゃないかw
最初からほぼ独走だった莱香さんが、ラブコメレースでおもいっきり抜けだした瞬間である。ただでさえ大学の同級生で、菅谷さんなんてダークホースが勇躍現れたってのにねえ。
一度限りのすれ違いに終わらず、間髪入れずに菅谷さんがアプローチ掛けてきたのにはちょっと驚いたけど、あそこできっちりと彼女のイラストを宛てがっているあたり、ほんとに侮れないダークホースとして位置づけられているのかもしれない。ぶっちゃけ、思ってたより遥かに可愛らしくて人懐っこいイメージのデザインだったし。あれは、素直に可愛いですよ。

まあ、今回一番可愛かったのは、ブッチギリでよし子伯母さんだったんですがね(笑
この人、あと年齢が一回り、それこそ美羽の母親くらいまで若かったら、菅谷さんどころじゃないダークホースになってたかもしれない、という萌えキャラっぷりで。巻末の漫画でも、見事に主役になってましたしねえ。ジュウベエに絡まれた時の伯母様の愛らしさときたらもう、いったいどうしたらいいものやらw

松智洋作品感想

パパのいうことを聞きなさい! 53   

パパのいうことを聞きなさい! 5 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【パパのいうことを聞きなさい! 5】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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「ジュウベエは、ひなのおともだちだよ!」
小鳥遊家にペット!?
ひなは大喜びだが、そこには微妙な事情が……。
しかも祐太は初めての合コンに誘われて……?
姉が飛行機事故で行方不明となり、血のつながらない三姉妹を引き取る事になった大学一年生の瀬川祐太。
朝食ひとつにも苦労する暮らしをみんなの助けで日々を送り、最近は近所に住む女子高生栞ちゃんも積極的に助けてくれていた。
激変する生活で留年しかけたがなんとか回避してほっとしている祐太を、同じ専攻の学生たちが合コンに誘う。
困惑する祐太は、さらにバイト先から童顔の老犬ジュウベエを預かる。ペットを飼いたいと思っていた三女ひなは大喜び。
空と美羽は、必ず別れる日が来ると心配顔なのだが……
優しさ満載で贈るドタバタアットホームラブコメ第五幕!

普段は聞き分けのいい子にこれだけ抵抗されちゃあ、心が挫けるよなあ。てっきり、もうジュウベエは死にかけてて、飼い主はジュウベエが預けている間に死んだら、責任を問うてきてバイト代どころか慰謝料を請求してくるに違いない、とハラハラしながら見守っていた自分は、どうやら考え方が黒すぎるみたいです(苦笑
でも、ジュウベエをはっきりと老犬、と表記しているのは注目点なんですよね。散歩している時の様子を見ても、元気溌剌どころかえっちらおっちらと大変そうですし、これはもう最晩年じゃないのでしょうか。彼はおそらく、ひなにとって大きな意味を持つ家族になってしまうんだろうな。裕太が何の気になしに呟いた、ひなが両親の身に起こったことを理解する日は思ったよりも近いのかも知れない云々は、決して意味なく挟まれた文句ではないはず。でも、まだ三歳なんですよね、ひなは。子供が一番可愛い頃なんだよな、この頃が。そんな、ただただ愛される事が仕事みたいな時期に、残酷な現実なんか理解するにはまだ早過ぎる。せめて、幼稚園に行くくらいまでは。自然と、いつの間にか事実を受け入れられるようになるくらいまでは、この子に哀しい思いを抱かせないで欲しい。
あんなに寂しい思いをしているだけで、十分酷なんだから。
でも、別にひなが今、不幸せってわけじゃないんですよね。裕太が合コンで自分の境遇を可哀想と連呼されたことに違和と不快を感じたように、哀しい事はあったかもしれないけどそれを乗り越えて、今この家族は様々な障害を乗り越えて本当の家族となり、支えてくれる親族と打ち解け、かけがえの無い友人に見守られているわけで、何の粉飾もなく今の彼らは幸せそうに見えますよ。
憂い少なくなり、頑張りが報われて、安定した穏やかで賑やかで幸せそうなこの子たちの様子を見ていると、よくここまでやってきたなあと感慨深くなります。
空や美羽の恋心は、淡い初恋に終わってしまいそうだけれど。自分は順当に茉香さんと上手く行けばなあ、と思っているので、合コンでの茉香の思わぬ乱入と真剣な態度は嬉しかった。二人の相性って、当人同士が思っている以上にイイと思うんだけどなあ。
それから、仁村くんはマジで買いだと思う。今回も、彼の気配り手配りに助けられすぎだ。裕太も、偏屈な事言ってないで、本気で娘さんたちの将来を考えたら、この得難い友人は絶対に押えておくべきだと思うぞ。
あと、伯母さんのよし子さんの妙に可愛いところが二回も見れたのは眼福(笑
ドレス、着ればよかったのに。あの犬が苦手で、思わずカーテンに包まって隠れてしまうって、どんだけ可愛いんですか(笑
このヒト、少女時代はお固いくせに時折見せるか弱いところが可愛すぎる、とか評判だったんだろうなあ。でも、ジュウベエが居座るんだったら、今度どうするんだろう。簡単に家に来れなくなりそう。いや、こういう犬が苦手な人に限って、むしろ他の人よりわんこに感情移入しちゃうんだよなあ、きっと。

1巻 2巻 3巻 4巻感想

パパのいうことを聞きなさい! 44   

パパのいうことを聞きなさい! 4 (スーパーダッシュ文庫)

【パパのいうことを聞きなさい! 4】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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 bk1

「あたし、家出するから!」
しっかり者の次女、美羽を訪ねて来る突然の来訪者。
新たな事件に新米パパ、祐太の度量が試される!?

大学一年生の瀬川祐太は、姉の事故をきっかけに血のつながらない三姉妹を引き取ることになる。
ひとつひとつの小さな出来事を積み重ねて、次第に家族の絆を強めていく四人は、初めての新年を支えてくれた仲間たちと迎える事になる。
そんな折、小鳥遊家に意外な来訪者が。美羽が三歳の時に家を出た実の母親、サーシャだった。
行方不明になってしまった両親の代わりに、三姉妹を自ら引き取ると言い出すサーシャに、祐太と三姉妹の気持ちは……? そして思い出すらない母親と和解出来ない美羽は、遂にある行動に…。
優しさ満載で送るアットホームラブコメ、待望の第四幕!

「家族の絆に血のつながりは関係ない」という種類の言葉って、往々にして血の繋がりが無くても家族の絆にかわりはない、という風に使われるんだけど、この作品が素敵なのは、先の言葉の文字通りに、血がつながってるつながっていないに優劣、価値の上下をつけずに、たとえ血が繋がっていなくても変わらない家族の絆と、血の繋がりの大切さを両方掛け替えのないものとして扱っているところだな、と今回、美羽の実母であるサーシャが来訪した事で改めて思いましたね。
小鳥遊家の詳しい過去を知るサーシャが色々と話してくれた事で、どうして小鳥遊家に母親の違う三人の娘が集うことになったのか、どうしてこの家庭が今の形になったのか、美羽とサーシャの真実など、こうして詳らかになると件のお父さんの大人物ぶりが透けて見えてくる。きっとこの人も、本来はラブコメの主人公タイプの人だったんでないかねえ(苦笑
何にしろ、血縁関係にない者同士が寄り添って家族という形を為す事の掛け替えのない尊さ、素晴らしさを描きながら、同士に裕太とその姉の関係や、佐原の叔母さんから垣間見える姉の姿、色濃く残るサーシャと美羽の似通った処など、同じ血が通っているが故の繋がりや共感、温かさなんかも丁寧に触れているんですよね。どちらも、足りないところを補うように紡ぎ合っている。そして、見返りなく心から手助けしてくれる友人たち。
ああほんとに、これは家族モノとしては素晴らしいわ。泣けてくるくらいに素晴らしい。

今更なんだけど、美羽がまだ10歳の小学生という事実を、まだ自分はちゃんと認識していなかったようだ。この娘の気配りや生活力、姉や妹への細やかな気遣いや、大味な叔父への適切なフォローなど、最初の頃から彼女がいなかったらこの新しい家族は早々に破綻し、幾度もあった危機もことごとく乗り越えられなかったんじゃないだろうか。それほどにこの一家の要となり、大人びた言動を見せていた美羽が十歳というのは、やっぱり信じられんよなあ。十歳と頭では覚えていたけど、実質中学生か高校生くらいに当てはめてこれまで物語を読んでいたような気がする。
それが今回、彼女らしくない本来の子供じみた理屈に合わない感情に任せた行き詰まったような言動に、美羽は本当に小学生だったんだ、という今更のような認識が襲ってきて、うん、けっこうショックだったんですよね。
こんな子供に、この一家は支えられていたんだなあ、と。
戻ってきたサーシャへの、美羽の複雑で自分でもどう仕様も無い感情の描き方が、まだ繊細で丁寧なんですよね。具体的にこういうものである、と明確な形にしてないんですよ。そっちの方が簡単だろうに。モヤモヤとした曖昧模糊とした、本人にも説明できない不定形のものをそのままの姿で描き出し、不安定になっている美羽の様子をしっかりと浮かび上がらせている。
それに対するサーシャの、強引に押すことも出来ず、さりとて身をひくことも出来ない、親の愛情と申し訳なさなど、様々なものに板挟みにされた苦悩する姿、そんな二人の間であたふたとなりながら、安易に身勝手に踏み込まず、でも家族として当然の心配と二人の想いをちゃんと理解し、その上で二人の仲を取り持とうとする努力に勤しむ裕太や空。
先に結論を用意して、筋書き通りに感情の動きも流していくようなのと違って、一つ一つその場その場できっちりと想いを積み上げていった結果、ハッピーエンドへとたどり着いていくみたいな雰囲気が、今回は特に良く出ていたような気がします。
ぶっちゃけ、サーシャさんは同居でも良かった気がする(笑

松智洋作品感想

パパのいうことを聞きなさい! 34   

パパのいうことを聞きなさい! 3 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【パパのいうことを聞きなさい! 3】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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 bk1

最初の一巻が、裕太と三姉妹が家族になる話だとしたら、二巻は四人が実際の生活の中でどうやって家族として暮らしていくのかを確立するための話だったような気がします。つまり、もう二巻でこの四人は一応なりとも家族として暮らして行く上での安定した日常を手に入れる事に成功しているわけです。
そうなってくると、あとは四人で生活していくことに一杯いっぱいだった中から、徐々に外へと余裕を向けて行くこと。2巻の空の部活のお話で既にその端緒には踏み込んでいたけれど、この巻ではもっと肩肘をはらず自然な形で、幾つかのイベントを経ながら友人たちに、親戚たちに触れ合いを広げていく事が叶ってました。
みんなに余裕が戻ってきたからか、どこか安心してみていられたなあ。切羽詰った中で変にラブ寄せを拗らせてどこか息苦しい雰囲気があった二巻よりも、落ち着いてじっくりとアットホームな展開を追求している感じでもありましたし。
特に良かったのが、一巻から常に厳しい態度で四人の生活を監督してきた伯母さんと、さらに打ち解ける話。言われてみると、裕太たちのためとはいえ彼らの生活態度をきっちりと監視し容赦のないお小言をくれる伯母さんには、裕太たちもどこか腰が引けてたんですよね。伯母さんも、親身になってくれているけれど、どこか一線を引いているみたいなところがあって、ギクシャクした部分があったのも間違いなく、いつも助けてくれる人だっただけにちょっとこの距離感には違和感というほどじゃないんだけれど、親戚同士身内なんだからもう少し打ち解けてくれないかなあ、と頭の片隅で思ってたんですよね。
それを、今回じっくりと、それも思っていた以上に温かい形で両者の距離を埋めてくれたのは、なんだか嬉しかったなあ。考えてみると、お世話されてばっかりで伯母さんの今の生活とか全然知らなかったんだもんなあ。
今回のエピソードを通じて裕太と三姉妹が伯母さんの背中に垣間見たのは、懐かしい姉の姿であり義母の姿。そうなんですよねえ、この人は他人なんかじゃなく、もういない裕太の姉であり三姉妹の母親であるあの人と、間違いなく血の繋がった身内の親戚なんですから。
伯母さんも厳しさは変わらずともどこかあたりが柔らかくなって、三姉妹のことを本当の自分の娘みたいに感じてくれた雰囲気があって、うん、良かったなあ。

二巻では家が離れてちょっと絡みが少なくなった大学の友人達も、今回はしっかりと遊びにきてくれてたし。仁村の頼りになる親友スキルは高騰がとどまるところを知らないなあ! 疲れてる裕太や空たちの代わりに晩御飯準備、朝起きたら翌朝の支度してあって、ってどんな世話好きな幼馴染だよ!(笑
マジでこの男、娘の一人をあてがって義理の息子として引き入れた方がいいぞww
美羽あたり、性格的にも相性良さそうだしさ。まだ10歳の小学生だけど。
うーん、そうなんだよなあ。美羽ってまだたったの10歳なんですよね。思えばこの歳でしっかりしてるよなあ。まだ三歳のひなは当然として、長姉の空だって中学生なのに、というか中学生ゆえか情緒不安定なところがあるので、この三姉妹の精神面を支えているのは間違いなくこの金髪美少女なんですよね。小悪魔っぽい容姿や言動だけど、その実一番献身的で健気で自分を後回しにして周りを助けようとするところがあるし。この娘が凄いのは、そうした部分をほとんど他人に悟らせない所なんだよなあ。そして、周りのことをよく見てる。空や裕太みたいに、責任感の意味を履き違えないし。この家族を屋台骨となって支えてるのはこの娘なんですよね。
その意味では、美羽にはちゃんとした見返りというか、彼女の努力や献身に見合う報いを与えて欲しいと思っていたので、今回きちんとそのあたりをやってくれたのは良かった。

莱香さんと裕太の関係の進展も、ちょっとはあったのかな、これ。空には悪いけど、裕太には莱香がお似合いだと思うよ。超絶美人だけれどその言動は変人な莱香さんの少し寂しい過去と、裕太と出会った意味。うーん、もしかして今回、ちょっとどころじゃない進展、フラグ立ったんじゃないのかなあ。莱香としては自分が気にしている部分をあんなふうに言われたら意識しないわけがないだろうし。あの裕太の発言を聞いたときには、あー、莱香さんにはこいつしか無いな、と思ったもんな。
これは穿った話だけど、美羽に裕太のこと好きなのかと冗談交じりに訪ねられた時、普段の莱香だったらあんな曖昧な答え方するのには少し違和感があるんですよね。もっと惚けた面白い回答をするような。

まあこの作品において全方位から愛でられまくってるのは、ひななんですけどね。さすが凶悪可愛い三歳児。実際、子どもが一番可愛いのはこのあたりだもんなあ……うんうん。

パパのいうことを聞きなさい! 23   

パパのいうことを聞きなさい 2 (集英社スーパーダッシュ文庫)


【パパのいうことを聞きなさい! 2】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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 bk1

祐太くんが一生懸命、パパとして頑張っている、その意気込みや努力はわかるんだが、どうもその父親としての責任の果たし方を履き違えている節がある。
娘となった姪っこたちが祐太くんに求めているのは、そういう事じゃないんだよなあ。いや、これは責められないんですけどね。彼は彼なりに、自分の出来ることを出来る範囲でやろうとしているのはよくわかってる。でも、もっとちゃんと見てあげなきゃいけないところに、顔を向ける余裕が全然なくって、スルーしてしまっているのがもどかしくて仕方がない。
それにやっぱり若さ故か、ついつい大学生であることを優先してしまう場合もある。結局、優先順位を取り違えていて、一番大切な部分を一番後回しにしてしまっているのが、胃に来るんだなあこれが(苦笑
本来ならそれをビシッと指摘してくれる人物が居てくれたらいいんだけれど、当事者である空たちは我侭をいうような性格ではなく、自分たちのために頑張ってくれている祐太くんに意見は出来ないだろうし、祐太くんたちの監督者たる叔母さんは、生活態度などはしっかり監督してくれているけれど、微妙な家族間の人間関係を鑑みて助言をしてくれるほどには、そこまではまだ踏み込んで理解してくれてはいないんですよね。
自分はその役割を莱香さんに期待していたんですが、残念ながら一巻では殆ど擬似家族と言っていいほど親身になって裕太たちの生活をサポートしてくれた莱香さんや二村たちは、裕太たちの生活がある程度安定したことで、ちょっと距離を置いてしまってるんですよね。友人関係としては充分近い距離なんだけれど、一巻の家族的、共同体的な一体感からするとやっぱり離れてしまった感があって、少し寂しいやら残念やら。
そのせいかわからないけれど、莱香さんもそこまで踏み込んでは来てくれず。一巻の時みたいに、裕太たちの家の状況を毎日のように見聞きしていた頃とは違うので、今の裕太の家の様子がどうなってるか知らない以上、これは仕方ないんですけどねえ。
莱香さんとの仲の進展もあんまりなくって、これは残念だったなあ。

ともあれ、新たな生活もある程度落ち着いて過ごせるようになり、新しく家族になった四人が、改めてお互いのことをよく知っていく事になるお話、と言ったところでしょうか、今回は。
一巻の時は、まだお互いを気遣い生活を守ろうとするのに必死で、落ち着いて相手のことを見つめる余裕はなかったですからね。
そこで垣間見えてきた、空の本当の姿。これはちょっと驚いた。彼女、外と内とではこんなに性格違ったのか。というか、内弁慶だったのか。最初からハキハキと意見を言うタイプとして現れたので、これは予想していなかった。あの時は、妹たちと離れまいと、守ろうとしていて、それだけ気を張り詰めていたってことなんだろうなあ。その勢いで、叔父である裕太にも強気の態度で接するようになったと。でも、彼女の細やかな性格の端々からは、確かに外での内気で引っ込み思案な姿が垣間見えるんですよね。これは、なるほどと納得させられた。


正直、裕太は小さな子供たちの父親役をやるには役者不足なのは間違いありません。浅慮だし、子供を育てることの何たるかもちゃんと理解出来ていない。親戚たちとの役割分担もわかってないし、考え方が甘い部分も多々ある。
でも、この物語とはそんなあまりに未熟で足りていないパパさんが、そこを踏まえてなお若すぎる父親として一生懸命頑張り、真摯に娘たちのために奮闘する姿を追うものなのですから、失敗も繰り返すでしょう、やっちゃイケないこともやってしまうでしょう、それでも今後とも温かく見守ってやってあげたい。二巻も、そんな思いを抱かせてくれるに充分な良作でした。

1巻感想

パパのいうことを聞きなさい!4   

パパのいうことを聞きなさい! (集英社スーパーダッシュ文庫)


【パパのいうことを聞きなさい!】 松智洋/なかじまゆか スーパーダッシュ文庫

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 bk1

うああ、もうこれ卑怯。ボロ泣き。
やっぱりこの人、人情モノのホームドラマの方が絶対うまいですよ。ベタといえばベタなんだけど、その描き方のバランス感覚が絶妙と言っていい。
タイトルは【パパのいうことを聞きなさい!】という命令口調ながら、本編ではそんな頭ごなしに怒鳴るようなことは一切そういうことなく、娘たちの方もこの新米パパに変に反抗することもなく、飛行機事故で行方不明になった姉夫婦の娘たちを引き取った貧乏大学生が、一生懸命に協力して家族を形成していく物語なのです。
両親は既に亡く、自分も姉によって育てられた身で六畳間のアパートで暮らす大学一年生。とてもじゃないけど、中学生小学生三歳児という子供たちを引き取って育てていくなんて無理な話なんですよ。実際、懸命にやっていこうとするものの、どこかしらに無理が出てくる。それでもキレる事無くあきらめる事無く、姪っ子たちに辛い様子も見せずに健気にがんばろうとするこの青年がもう愛おしくて愛おしくて、それと同じく、両親を亡くして傷つき、新たな環境で疲れ果てているにも関わらず、自分を守ってくれようとしているこの若い叔父のために辛い顔も苦しい顔も一切表に出さず、悲しみを押し込めて、我慢する子供たちが愛おしくて愛おしくて。
お互いを守り守られ、傷ついた心を癒しあい、いつの間にか離れがたい家族になっていくこの四人の姿には、もう完璧やられました。
この作品の素晴らしいところは、がんばることをその四人の中で完結させてしまわなかったところだと思うんですよね。なに、あの友達! あんなの現実にいるのかよ!
仁村くんのスペックちょっと高すぎです。料理上手、きれい好きで気遣い上手って、どんだけスペック高いんですか。あんな親身になって助けてくれる友達なんてそうそういないですよ。おまけにその親切がぜんぜん押し付けがましくないんですよね。元々部屋に入り浸ってたのもあるし、女好きで軽薄というのが緩衝材になっているのでしょうけど、嫌味無いもんなあ。凄く軽い感じで手伝ってくれているので、助けを受けているほうも深刻になって重たげに感謝せずに済んでいるんですよね。これが変に真面目だったり真剣だったりすると、逆に好意を受け取るほうもどうしてもその助けを負担に思ってしまうものなんですが。
でも、週に何日も飯作りにきてくれたりとか、姪っ子たちと遊んでくれたりとか、掃除しにきてくれたりとか滅茶苦茶ありがたいんだよなあ、実際。そりゃあモテるよ、仁村くん。
それは、先輩の莱香さんも同様で、この人がもっと普通の女性だったらかなり気が引けたはず。何考えてるか分からない突飛な行動ばかりの無表情娘という変人だからこそ、余計な心配を押し付けたりせず、自然とこの急造家族の中にするっと入り込んで、彼らを支える事ができたのでしょうか。なんにせよ、こうやって親身になって助けてくれる友達がいてこそ、どう考えても無理だった家族生活が何とか営めたわけで、その意味では家族と同時に仲間、友人同士の繋がりも非常に重要視して描く作者の特色がよく出た素晴らしい作品だったように思います。
もちろん、若者たちが目の前に次々と押し寄せてくる困難に立ち向かっている間、後ろできちんと大人たちが彼らのことを見守って、いろいろと手配りしてくれていた、という点をキチンと描いているのもイイんですよね。悲劇によって打ち壊された幸福な日常を守ろうとした子供たちを、現実を見据える大人たちは最初嗜め、冷静になって受け入れろと諭すのを、子供たちは必死に抗い、厳しく乗り越える事が出来るはずの無い現実に立ち向かい、離れがたい絆を手に入れていくのを目の当たりにして、心動かされ、彼らが厳しい現実にこれからもずっと立ち向かえるための支えとなってくれる。大人たちが単なる障害ではなく、きとんとした壁として、乗り越えた後には守ってくれる存在にちゃんとなってくれているというのは、ホームドラマとしては最高の着地点なんじゃないでしょうか。

これで完結でもいいんじゃないかと思うくらい、綺麗に終わっているのですけど、どうやらこのシリーズも迷い猫と平行して続いていくみたいですね。あちらはラブコメ寄りなのですし、此方はこのままホームドラマとして路線分けしていってほしいなあ。勿論、莱香さんとの仄かな恋物語は順調に進めつつ。美羽あたりは、仁村くんあたりにあげちゃってもイイ気がするんだけど。まだ小学生ですがw

迷い猫オーバーラン! 7.拾ったらいいじゃないですか!3   

迷い猫オーバーラン!〈7〉拾ったらいいじゃないですか! (集英社スーパーダッシュ文庫)

【迷い猫オーバーラン! 7.拾ったらいいじゃないですか!】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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  bk1

アニメ化に漫画化かー。内容的には構成の堅実さや妙味の部分は小説特有の特徴であって、他の媒体で作用するものではないから、見るべき部分は概略だけど、その点はオーソドックスだし、これは作り手次第になりそう。

自分を好いてくれる女性にふさわしい男になりたい、というのは向上心を高く保ったイイ事なのでしょうけれど、同時に男の自己満足に過ぎないのも確かな話。そもそも自分を高めることに夢中になって、肝心の女性の方をほったらかしにしてしまっているとなれば、まったくもって本末転倒。それどころか、告白に対して明確な答えを返さないまま、女性の側を宙ぶらりんにして待たせて、自分事にかまけているのだから、女性の側としたらたまったものじゃないでしょう、これ。
作中でも文乃たちが寂しそうに呟いていますけど、彼女たちからしたら大事なのは巧の気持ち、自分たちの誰を好きなのか、であって、ふさわしいだの資格云々なんてのは心底どうでもいいはずなんですよ。もうすでに今の巧に、彼女たちは惚れているのですから。
それなのに、巧は自分たちに構ってくれず、新たに現れた迷い猫のお世話に夢中。本当なら寂しい、もっと自分の方を見て、とみゃあみゃあ泣き喚きたいところを、ぐっとこらえて耐える三人が、今回はかわいそうでかわいそうで仕方ありませんでしたよ。

かわいそうといえば、新たに加わった新入部員のうちの一人、柴田くんがまた、かわいそうだったと思うのは異端でしょうか。部員はみんな、手のかかる問題児の部員の心の方にかかりっきりで、柴田くんの方はほったらかし。手のかからない優等生だからって、同じ新入部員、新しい仲間なのに、この放置プレイは可愛そうだよなあ。普通、拗ねるぞ、というか止めてしまいそうなもんだけど。紹介文には何か腹に一物あるぞ、みたいな書かれ方されてしまっていますけど、こういう扱いされてしまうと、腹に一物抱えてしまっても仕方ないような(苦笑 まあ、入部自体が何らかの目論見あって、とも考えられますけど。

そして、肝心の新ヒロイン。仮想あずにゃんこと心は、なるほど見事にこれまでのヒロインズ、文乃に千世、希の三人が抱えていた性格難を重ねて兼ね備えたキャラクター。まさしく最終兵器とも、汎用兵器ともいえるポンテンシャル(笑
でも、毎度思うんだけど、ヒロインのこうした性格の描き方って本当に猫をリアルに想起させるんですよね。迷い猫迷い猫と標榜しているのは伊達じゃなく、猫的な性格の表現はピカイチで、そんな人に慣れていない野良猫をてなづけていくかのような、頑なな心を解きほぐしていく過程の描き方は、オーソドックスだけれどソツがなく、ここまでくると練達の味わいすら感じさせる出来栄え。
でも、これ以上ヒロインはさすがにイイですよ(苦笑
出来れば、メインヒロインは文乃、希、千世の三人衆で譲らないで欲しいなあ。この三人の恋のライバルにして掛け替えのない親友同士という間柄の複雑な心理面での綱引きが、ある意味この作品の醍醐味なので。巧はこの点、恋愛パートでは全く愚鈍で見ていられないというのもあるけれど。

シリーズ感想

迷い猫オーバーラン! 6.拾った後はどうするの?3   

迷い猫オーバーラン! 6 (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-6)

【迷い猫オーバーラン! 6.拾った後はどうするの?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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 bk1

何気にこのサブタイトル、辛辣だよなあ(苦笑
拾った後はどうするの? そう、これは迷い猫を拾った、そのあとの責任と総括のお話。そのサブタイトルが書かれたダンボールに、今回入っているのは委員長。当事者たちから一歩距離を置いた彼女の指摘は、容赦なくなあなあになりそうな巧たちの関係を浮き彫りにする。
結局、文乃たちの協定も外部からの新たな参入者の可能性の前に、もろくも崩れ去ってしまったわけですしね。ぬくぬくとしたぬるま湯の関係を、何時までも無自覚のままに続ける事は難しい。
夏帆の介入は、まさにその隙間を食いちぎるような形で行われたわけですしね。それにしても、夏帆の策謀はおっそろしかったなあ。元来の彼女の思想からしてイカレている上に、それを微塵も察知させずに正論や相手の弱い部分、迷いを突くような言動によって、示唆と教唆を繰り返し、決して前に立たず、表に出ず、自然と皆の意思を誘導していく。皆が夏帆の思惑に気付かず、まるで自発的に思い立ったかのように思いこみながら、夏帆の思い通りに動いていく様は、背筋が寒くなるような不気味さが横たわっていて、夏帆の奸智には身震いさせられた。いやあ、なかなかこんなおっそろしい女、いないっすよ。
正直、こんな女を使用人たちが慕っていたというのが、ちょっと首をかしげざるを得ない。自分たちの名前も覚えるどころか知ろうともせず、そおそも人間として捉えていないような主人に、これほど気持ちを預けられるものなんだろうか。
そんな人間としてどこか壊れている彼女の思惑に気付いた文乃が、今回は健気だったなあ。生来の性格からついつい思っている事と反対の事を口走ってしまう文乃が、必死に本音を語り、真実を叫び、自分をかなぐり捨てて間違った方向へ行こうとする巧に縋りつく姿は、胸を打つものがあった。つっかえつっかえ、慣れない言語を口にするように、思いのたけを叫ぶ文乃。それは舐めらかに虚実入り混じった言葉を紡ぎだす夏帆の口上に比べてば、見っともなく見苦しく支離滅裂で感情のままに吐き出されるだけの代物なのだけれど、それでも、それだからこそ、すべてのモヤモヤを吹き飛ばし、遠ざかろうとする足を止め、胸倉を掴まれるようにその泣き顔に引きずり込まれる、力があった。
普段はそっぽを向いてばっかりの彼女だからこそ、この必死さは魅力なんだよなあ。
誰が何と言おうと、この作品のメインヒロインは文乃で間違いないと思う。希好きだけどw

ところで、乙女姉さんは自信満々に巧が拾ってくれるって明言してたけど、今回夏帆という迷い猫を拾ったのって、巧じゃないよね?(笑
迷い猫同好会というグループそのものに心乱され、文乃の必死さに打ちのめされ、そのまま逃げだそうとした彼女を拾ったのは、確かに家康そのひと。彼の言葉こそが、彼女の混乱と迷いを吹き飛ばしたのは明らか。
散々、巧に粉かけてきた夏帆だけど、これまでの行動は本気の恋からじゃなかったことは明示されたし、そのあとも特に心ひかれた様子も見えなかったし、文乃たちの間に割って入ることはないんじゃないかなあ。それならむしろ、委員長の方が巧の事気にしてる素振りがあるし。
というより、フラグ立ててたのは何の間違いか家康の方に見えるんだけどw 色々と残念な野郎だけど、浮世離れした夏帆だとあんまり気にしなさそうだし、けっこう似合ってると思うんだけどなあ。

みんなの巧への想いが公然のものとなり、対して巧の出した答えは……。
いやいや、そういう問題じゃなくてだね、と頭を抱えたのは自分だけだろうか。その答え方はかなりせこいと思うんだが。

迷い猫オーバーラン! 5.本気で拾うと仰いますの?4   

迷い猫オーバーラン! 5 (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-5)

【迷い猫オーバーラン! 5.本気で拾うと仰いますの?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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4巻の乙女姉さんの主役回で薄々感じてた所だけど、どうやらメインヒロインは文乃・千世・希の三人で完全固定みたいだね。新ヒロインが参入という事態は、恐らくもうない。新しいキャラが出てきても、ゲストかサブで据え置きでしょう。
というわけで、状況はこの三人娘の巧への恋物語に移行してきたわけだ。夏帆さんは、明らかにその辺を引っかき回す役目を振られてるっぽいし。
とはいえ、三人娘、みんながみんな、笑っちゃうほどの恋愛下手なもんだから、進展どころの話ではなく、涙ぐましい努力が空回りしまくり、三人で足絡まってすっ転んでしまっている状態。まー、その辺のドタバタが可愛らしいの微笑ましいの。
私、この娘たちほんとに好きだわ。
素直に告白しちゃえば話は簡単なんだろうけど、それが出来りゃあそもそも三竦みの状態に陥っていないんですよね。それぞれの繊細な乙女心が、何とも可愛らしい。それに、紆余曲折あって家族みたいな関係になってしまった三人だから、単なる友達・恋敵とはいかなくなっちゃってるんですよね。対抗心は売るほどあるけど、変な連帯感も生まれてしまっていて、抜けがけ上等のわりに相手を蹴落として、という風には行かなくなってしまっている。まー、この状態でただでさえお祖母ちゃんシスター仕込の朴念仁に育ってしまった巧を、落とすなんて不可能だわ(苦笑
でも、この恋愛落第生たちも、今回目の前で珠緒先輩の劇的な告白と恋愛成就の決定的シーンを目の当たりにしてしまったわけで、けっこうこれ、刺激になったんじゃないかなあ。なんだかんだと、恋が叶う瞬間って、この娘たち見たことなかっただろうし。
ただ、ほんとにこの娘たち、仲好くなっちゃってるからなあ。文乃の真意とは真反対の事を云っちゃう天邪鬼な性癖、千世も希ももはやいちいち突っ込んだり、訂正したりせず、普通のお喋りの流れの中で、そのまま反対の意味で受け止めてそのままとり込んじゃってるあたりなんか、見てて笑っちゃいましたよ。君ら、どれだけ慣れ親しんじゃってるんだって(笑
まー、個人的な印象ですけど、巧は千世と希を家族同然に扱ってるのと比べてみて、文乃への態度を考えると、やっぱり文乃の事が好きっぽく見えるんですけどねえ。

恋模様も煮詰まってきた所で、黒幕・夏帆さんが本格的に引っかき回す算段を固めてきた模様。こりゃあ荒れるゼ、そろそろクライマックスなんだろうか。

迷い猫オーバーラン! みんな私が拾います♪4   

迷い猫オーバーラン!〈4〉みんな私が拾います (集英社スーパーダッシュ文庫)

【迷い猫オーバーラン! みんな私が拾います♪】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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うーん、じんわりと心に沁み入る温もりかな。やはりこの空気、最高である。この雰囲気、好きなんだなあと改めて実感。
チームや仲間、親友同士というのとは少し違う、それこそ家族のような彼らの関係。それも、普通の家族モノとはちょっと違うんですよね。
血の繋がった家族のそれとは違う、一人一人孤独に生きてきた力のない存在が、寄り添うように集い、たとえ寒空の下でもお互いの温もりで温め合うような優しい関係。その意味では、このタイトルはまさにこれしかないと言わんばかりの最適さ。そしてなにより登場人物の一人一人を迷い猫と称してテーマに据え置いたのは、本当に見事だと思う。何を書きたいか、何を書こうとしているかが実に明快で、なによりそのテーマから一切ぶれず、フルスイングで書き切ってるもんなあ。
仲間内でもちょっと浮いた存在だった千世も、彼女自身が迷い猫として描かれ、迎え入れられてからは金持ちのお嬢様という位置づけにも関わらず、ストレイキャットの掛け替えのない家族として、違和感なく収まってるし。
今回、少しですけど家康と大吾郎、二人の男の親友たちがどうして巧とつるんでいるのかの心情も語られてるんですけど、こいつらもなんだかんだとストレイキャットの内側にいる連中なんだなーと。

そんなストレイキャットの大黒柱。みんなの中心、乙女姉さん。サブタイトルからして、今回は乙女姉さんのお話かと思ってたんですが、クリスとの並列になっちゃったかな。如何にして乙女が人助けをして回る人になったのか、という点はよくわかったんですけどね。でも、この人は足元がおぼつかないよなあ。理由はよくわかったんだが、それでも人助けのために弟たちに苦労を強いすぎている感があるのは否めない。一時期はストレイキャットそのものが潰れかけていたのをほったらかしにしていたわけだし。それでも、巧をはじめみんな、その乙女の人助けによって本当に助けられた人たちだから、そんな乙女を制止できないんだろうけど。いやでも、余裕出てきた最近こそおおらかに構えてるけど、ほんとにヤバいときは本気で乙女の人助け失踪に頭抱えてたからなあ、巧も(苦笑

クリスについて。可愛ければ性別はもうどうでもいいという境地に達しつつある今日この頃なので、ショタでも好し。唇にキスされてしまった巧を、うげげ、ではなく素直に特したなこの野郎、と思ってしまった時点で、いささかどうしようもない所まで至ってしまっていることに気がつかされる。まあいい。
不覚にも彼の父親に関しては本当に最後まで気がつかなかった。彼が英語ペラペラという時点で気づくべきだったのかもしれないけど。あのみんな英語なんかペラペラですよ〜、の流れが上手いこと誤魔化してたからなあ。

さて、クリスの探し人と並行して進行するのが、クリスマス祭を前にしての三人娘の恋模様。お互い、巧への恋心を認め合い、正々堂々真っ向勝負に出ることを誓いあった文乃、希、千世の三人なわけですけど、恋敵という以前に、前にも増して姉妹みたいに仲良くなっちゃったからなあ、この三人。文乃の狼少女な言動を、あの千世が何でもない事のように真意を読みとってるあたりに、あー他人同士という壁がとっぱらわれたんだなあ、となんだか感動してしまったわけで。
そんな三人ですから、勝負も陰惨な形にはならず、でも慣れ合わずに真剣に勝ちにきてるので、なかなかお目にかかれない、火花散る激しさとすっきりとした清々しさを兼ね備えた、気持ちの良い恋の鞘当てになっている。
一番可愛さが凶悪なのは、やっぱり希なんですけどね。以前は意図的に前に出ようとせず後ろから見ているだけだった希が、心を押し殺さず素直に前に出始めると、これほどナチュラルボーンキラーとなり果てるとは。
マジ可愛いんですけどw

ただ、読者視点からすると、明らかに圧倒的に優位なのは文乃なんですよね。見ている限りでは、巧が明確に異性として好意を抱いているのは文乃以外にいないわけですし。希や千世に対しては家族的な親愛はあまりあっても、異性に対する熱はあんまり感じられないんだよなあ。
なので、わりとすっきり決着する可能性もありそうななさそうな……。



迷い猫オーバーラン! 3.……拾う?4   

迷い猫オーバーラン!〈3〉…拾う? (集英社スーパーダッシュ文庫)

【迷い猫オーバーラン! 3.……拾う?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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本シリーズのサブタイトル。一巻からこれ、最初は徐々にデレていってるのかと考えていたんだけど、違うのか。これは、それぞれの巻のメインヒロインの性格からなるセリフだったわけですね。
一巻の【拾ってなんていってないんだからね!!】は文乃。
二巻の【拾わせてあげてもいいわよ?】は千世。
そしてこの三巻の【……拾う?】は希。とくるわけだ。まあ、表紙見たら一目瞭然だったんだろうけど。

私はてっきり第一巻こそが希が迷い猫として主役を張った回だったと勘違いしてましたけど、違ったのか。未だに希にとっては、ストレイキャットは仮宿でしかなかったんだなあ。いや、仮宿というほど突き放してはいないだろうし、彼女なりに家族としてこの家に親しんでいたんだろうけど、でも馴染み切ってはいなかったわけだ。
我が家として帰ってこれる家だとしても、その家の中で自然と隅の方で大人しく丸くなってる猫。借りてきた猫、とでも言うんでしょうか。前の家で負った彼女の心の傷が、自然と彼女にひっそりと息を殺すように、自分の我を、秀でた能力を押し殺してしまっていたんでしょうね。もちろん、ストレイキャットの家族たちを信頼していないわけじゃないんだけれども、やっぱり怖いわけですよ、古傷を抉られるのは。もしかしたら拒絶されるんじゃないか、という不安は消せないわけですよ。
その恐れを押しのけて、彼女が自分の我を張り、能力を解禁し、自分の思うがままに行動しようと決心したのは、その家族のため。思えば、希がパティシエールとしての才能をストレイキャットに提供したのも、この洋菓子店が危機に陥ったとき。眼の前で困っている人がいたら、どうしても手助けせずにはいられないあたりに、この娘の優しさが透けて見えてくる。同時に、そのあたりがとてもストレイキャットの一員らしいんですよね。
今回は激化する文乃と千世の対立を仲裁するために、敢えて独り第三勢力として名乗りをあげる希。その際立った才能を全開にすることで、強引に崩れかけていた秩序を取りまとめ、文乃と千世に対立の落とし所を提供することになるんだけど。その余人の追随を許さない才能は、これまで希を孤立させ、家族だった子らを悲しませる能力でしかなく、強引な手法は家族の意思をねじ伏せるものだとして、希は皆から嫌われる覚悟だったんですよね。
大好きな家族から嫌われることが嫌で、怖くて、今まで隅で大人しくしていた希が、敢えて嫌われることを覚悟して、それでも家族に仲良くしてほしくて頑張った結果は、彼女の恐れていたものとは全然違って、前の家で苦しむ事となった家族との反応とは全然違っていたわけです。
希が家族として飛び込んだ人たちは、彼女が思っていたよりもずっと希のことを家族として大切に思っていたんですよね。
その押しつけがましさのかけらもない、自然で思いやりの在るてらいのない優しい家族関係が、やっぱり素敵な作品ですわ、これ。

文乃もね、巧への分かりやす過ぎるくらいの天邪鬼な態度を除けば、特に希に対する気遣いや心配りは、凄く丁寧で行き届いているんですよね。なんだかんだと一番個々の細かいところまで心配りしているのは、次女にあたる彼女なんですよね。やっぱり好きだなあ、彼女。
そして、今回はじめて乙女姉さんが役に立った気がするんだが…(苦笑
この長姉、愛情だけは目一杯あるんだけど、それが全世界に向いてるおかげで、他の家族に多大な迷惑がかかってるからなあ。それこそ、日常生活を送るのに支障が出るほど。実際、家族に対する責任を果たし切っていないんじゃないかと、これまでちと不信感あったんですよね。捨て猫拾ってきて世話しねーやつ、みたいな。まあ、今回、ちっとは挽回したんじゃないでしょうか。

さて、ラストの「……どうしよう?」には思わずふいてしまった。いや、確かにどうしよう? な状況ではあるんですけどね。当事者にそこまで端的かつ素直に困られると、思わず笑ってしまうほかないんですが。
でも、実際どうしましょうねえ、ほんとに。ここまでしっかりきっかりと、家族としての一体感が出来てしまうと、今更そこから誰か抜けがけ、というのはなかなか難しいのところですよ。その気持を口に出さなきゃ、曖昧なままストンといいところに着地したかもしれないけれど、今回希が笑っちゃうほど綺麗に状況を整理して、皆に突きつけちゃったからなあ。本人まったく悪気なく(苦笑
いや、個人的には女性間がこれだけ絆深く親密だと、ハーレムルートでもよかんべえと思っちゃうんですけどねえw
続刊は早々に四月の模様で。次はだれがメインに来るんだろう。

迷い猫オーバーラン! 2.拾わせてあげてもいいわよ?  

迷い猫オーバーラン! 2 (2) (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-2)

【迷い猫オーバーラン! 2.拾わせてあげてもいいわよ?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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うん、これは良かったなあ。このシリーズ――既に三巻の発売も決定しているようなのでシリーズでいいですよね――、<迷い猫>という一つのテーマを、一貫してブレなく追及しているあたりに、非常に好感が持てる。
特に方向性もなく登場キャラクターがギャーギャー騒ぐだけの仕様だと、どうしても読んでる方もダラダラと眺めてしまいますしね。よっぽどキャラクターが魅力的じゃないと、なにか毎度同じことをしているなあ、という飽きも来てしまいますし。その点、この迷い猫オーバーラン! は、一巻も続編であるこの二巻も、<迷い猫>と<帰る家>という主題からブレることなく、キャラクターの行動原理からストーリー構成の帰着まで一本筋が通って非常にスッキリしているので、読んでいるこっちも前のめりに作品に集中できる。
と、言ってもわりと後半になるまでこれらの主題というのは、意外なほど意識されなかったのだけれど。
千世が皆を呼び集めるばかりで、自分の方から輪に入っていかない、という構造は、ほんと、なんでか気づかされなかったんですよね。みてりゃ明白な構図だったのに。
千世の傍若無人で我儘な性格が前回から強調されていたせいで、彼女が巧
たちを呼び集めてなんか仕出かす、というスタイルに何の違和感も覚えなかったのと、集まったら集まったでみんなワイワイガヤガヤ屈託なく壁らしいものは感じられなかったし、千世は千世で無茶苦茶言いながらも巧たちのケーキ屋<ストレイキャット>の現況はちゃんと理解してくれていて、譲る所は譲ってくれていたからなんでしょうけど。
違和感に気づいたのは、千世が唆されて暴走を始めてから。あれ? なんで彼女、ストレイキャットに顔出さないんだろう。みんなが呼んでもこれないなら、自分から行けば、それだけなのに。
そう、それだけの些細なことだったから、気づけなかったとも言える。その些細な行動が取れないところに、千世がある意味、以前の希と同じ<迷い猫>と呼ぶにたる在り様に囚われていた、と言う事に。
彼女の寂しさや臆病さ。温かさを求めながら、実際それを目の前にするとついつい逃げ出してしまうその姿は、やはり<迷い猫>というに相応しく。
いや、感心させられるんですけどね。この<迷い猫>という名付け方は、ほんとに。上手いこと言うなあ、と。

前回の迷い猫だった希は、見事にストレイキャットの家族として馴染んでいて、いいキャラになってますわ。以前あった人との間に張り巡らされてた壁が取り除かれて、無表情型ほんわか天然少女として時にみんなの雰囲気を和ませ、ときにお惚けかまして。ほんと、この家族たちの欠かせない一員になってます。

そんで、メインヒロインたる文乃。一応、あれ本気で告白のつもりだったんだ(苦笑
自分は告白したんだから、次は巧のターンだ、と意地になって普段どおりに振舞ってるあたり、この娘は本気で不器用だなあ、と微笑ましくなる。確かに、そのロジックは正当性があると思うし、文乃があれだけ言ったんだから、巧は幼馴染としてちゃんと彼女の意を汲むべきだとは思うけど、もうちょっと思わせぶりな態度を取って巧の意識を揺さぶるくらいの芸当はしてみせるべきなんじゃないかなあ。その辺を頑なに、徹底してやらないのが、この娘の可愛げでもあるんだろうけど(苦笑
でも、彼女は彼女なりに頑張ってるわけで、はっきりと自分の巧への好意を自覚し、それを認め、逃げる事も曖昧にぼかすこともせず、彼女なりにだけどしっかり意志表明して立ち向かってるあたりは、とても好ましいんですよね。結果的に二人の関係はあいまいになっちゃってるけど、それは彼女が極度に恋愛下手である結果的にであって彼女のちゃんと行動してるんですから。
多分、最後の迷い猫は文乃になるんでしょうし、その辺は期待しながらじっくり待ちます。不安はなく、ただただ楽しみ。


迷い猫オーバーラン! 拾ってなんていってないんだからね!!4   

迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-1)

【迷い猫オーバーラン! 拾ってなんていってないんだからね!!】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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うわっ、これは思いのほか強烈にハートを撃ち抜かれた、素敵なお話だった。
表紙絵のダンボールに描かれた文句。
拾ってなんていってないんだからね!!

これって、最後まで読んだあとだと単純なツンデレ文句のそれじゃなく、この作品の趣を端的かつ叙情的に表現した味のある文句に見えてくる不思議。
寂しさや孤独に打ち震えながらも、その臆病さから居場所を作れない迷い猫たちの真情だと考えるなら、あれって単なる文乃のセリフというんじゃなく、拾われ猫の希、主人公の巧、そしてヒロインの文乃全員に通じる文句になってくるんですよね。
そう考えると、これってラブコメっていうより家族モノなのかも。
いろんな人から受け入れられ、友達になり、家族になり、自分の居場所を見つける物語。

ヒロインの文乃がまた、可愛いんだ。
素直じゃないのか、不器用なのか、とにかく本当の気持ちとは裏腹の天の邪鬼なことしか言えない女の子。おかげで美人な容姿なのに、周りの人間からは攻撃的でちっと厄介な人間と思われてるんだけど、ただ、その辺を幼馴染の巧は全部ちゃんと理解してあげてるんですよね。どれが嘘で、どれが本当か。彼女が本当はどうして欲しいのかを、しっかり察してあげるわけです。
そんな通じ合ってるところは、幼馴染という関係の醍醐味だよなあ、と。
単純なツンデレじゃないんですよね。彼女がそういう性格になるには、巧の存在が深く作用していて、ある意味彼とのコミュニケーションを至上として生きてきたがために特化した人格形成と言えるのかも。
ツンツンすることがそのまま巧への甘えとなってるようにも見えるんですよね。
だからこそ、あの告白場面。
「……違う。大嫌い。巧のこと、大嫌い! 大好き!」

思わず口を突いて出た彼への本音が、彼女が作り上げてきたモノとぶつかって、あんな支離滅裂な叫びになったんじゃないでしょうか。
あのシーン、めちゃくちゃ好きなんだわ。
幼馴染って、お互い傍にいるのが自然と思える関係と言うけれど、兄弟のそれとは違って、あくまで他人なんですよね。それぞれがお互いに傍にいようと思い、コミュニケーションをとる努力をし続けなければ、案外簡単に疎遠になってしまうもののはず。
その意味では、巧と文乃の幼馴染の関係というのは、それぞれお互いを求めあい、理解しようとする努力によって維持された、ただ流されて続く腐れ縁とは一味違う、しっかりとした絆なんですよね。
だからこそ、あのシーンが映えるわけで。

家康や幸太郎との屈託ない友達関係。姉、乙女との大変な、でもあったかな家族関係。そして、お互いを大切にする文乃との幼馴染関係。
そこに新たに拾われてきた迷い猫の希。
ポッと心があったかくなる、素敵なお話でした。
 
11月26日

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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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11月4日

(ジャンプコミックス)
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(JUMP j books)
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(ジャンプコミックス)
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